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1 大学が養成する人材像,教育内容(教養教育等)の在り方

1  総論

   大学教育の改善について(答申)(平成3年2月8日 大学審)
 
 一般教養の理念・目標は,学生に学問を通じ,広い知識を身に付けさせるとともに,ものを見る目や自主的・総合的に考える力を養うこと。
 一般教育と専門教育との有機的関連性に配慮しつつ,4年間一貫した,調和のとれた,かつ,効果的なカリキュラム編成に取り組むための学内の仕組みを整える。
 一般教育の理念・目標は,大学の教育が専門的な知識の修得だけにとどまることのないように,学生に学問を通じ,広い知識を身に付けさせるとともに,ものを見る目や自主的・総合的に考える力を養うことにあり,入学してくる学生や諸科学の発展の現状から見て,このような理念・目標を実現することが一層必要。
 現状では,改善・工夫の努力が行われているが,一般教育の理念・目標と授業の実際との間には,しばしば乖離が見られ,専門教育との関係でも,有機的な関連性が欠如している傾向も見受けられる。
 このような一般教育の理念・目標が大学教育全体の中で実質的,効果的に実現されるよう,カリキュラム及び教育体制の改善が求められている。
 専門教育のカリキュラムについても,各専門分野の研究の進展,学際領域への展開,社会の多様化・複雑化等に対応して,内容の現代化,国際的な水準の維持,専攻領域の広がりが求められている。
 設置基準の大綱化に伴い,大学の自主的団体や学会等によって,各大学が参考とし得るような学部教育のハンドブックや内容に幅を持たせた学則の準則等が提供されることが有益。
 これらの指針は,教育内容面等については専門分野別に作成され,かつ,学問の進展等に応じ,不断に改訂されることが期待。
 各大学がカリキュラムを自由に設計し得るようにするためには,大学が順守すべきカリキュラムの枠組みとしての開設授業科目と卒業要件に関する基準を大幅に簡素化することが適当。
 また,これを契機に,一般教育等の理念・目標を大学教育全体の中でどのように実現するかを各大学が真剣に検討し,取り組むことが期待される。
 大学設置基準上開設授業科目の科目区分を整理することについて,これにより一般教育等を軽視する大学が出てくるのではないかと危惧する向きもある。本審議会としては,一般教育等の理念・目標は極めて重要であるとの認識に立ち,それぞれの大学において,授業科目の枠組みにこだわることなく,この理念・目標の実現のための真剣な努力・工夫がなされることを期待するとともに,この点についての大学人の見識を信ずる。
 大学のカリキュラムの枠組みに関する大学設置基準の大綱化に伴い,今後,各大学において,一般教育と専門教育との有機的関連性に配慮しつつ,4年間一貫した,調和のとれた,かつ,効果的なカリキュラム編成に取り組むための学内の仕組みを整えるとともに,常にカリキュラムの点検を行い,その現代化に努めるなど改善への努力を行うよう,自己点検・評価の実施体制を確立することが重要。
 大学教育の量的拡大に伴い,学生の教育の必要上,専攻分野を超えた多様なカリキュラムの設定や幅の広い教育という要請がある。その一方で,学部教育において,専攻分野の学問的基本をしっかり教えることも必要。
 授業科目区分の整理等の大学設置基準の大綱化により,4年間を通じての一貫したカリキュラムの編成,一般教育等担当教員と専門教育担当教員の固定化の解消等が期待されるが,これに伴い,各大学において,教養部の改組転換を含め,一般教育の実施組織の在り方について,再検討が行われることが望ましい。また,文部省においても,このような趣旨に沿った改革の具体化を積極的に支援することが望ましい。

 平成12年度以降の高等教育の将来構想について(答申)(平成9年1月29日 大学審)
 
 大学の学部教育については,各大学が,それぞれの理念・目標を明確にする中で,教育研究分野の特質に応じ,その位置付けを明確にする必要あり。また,今後予想される一層の学生の多様化に対応するため,各大学において,学部の教育機能を組織的・体系的に強化していくことが重要。

 高等教育の一層の改善について(答申)(平成9年12月18日 大学審)
 
 学部教育の位置付けや今後の在り方についての議論が必ずしも十分でない。すなわち,1学部教育と大学院や他の高等教育機関との関係をどう考えるのか,2学部教育を,幅広い教養や学問修得の方法を目的とする,言わば基礎教育と考え,高度の専門教育は大学院で行うこととするのか,3学士の学位を授与する学士課程教育という観点から,学部教育の質やその確保をどう考えるのか,4それぞれの学部にどのような学生を受け入れるのか,5教育内容の高度化・専門化と,その多様化・総合化の要請をどのように調和させるのか,6生涯学習の観点からは学部教育をどのようなものと位置付けるのか,等々の事柄について,各大学における改革推進のための基本的な考え方は必ずしも明確になっていないのが実情。
 教養教育は高等教育全体の大きな柱であり,全教員の責任において担うべきものであるとの認識を徹底することが必要。現在,多くの大学等においてカリキュラム改革や教育研究組織の見直しが進んでいるが,その際,まず第一に教養教育によって学生にどのような知識あるいは能力を身に付けさせるのか,その目的を明確にすることが必要。明確な目的意識と適切な方法による教養教育を実施することが必要。また,教養教育は,従来からの専門学部の教員を含め,全教員が責任を持って担うべきものであるという認識の下,その実施・運営に責任を持つ組織を明確にするとともに,一部の教員に過度の負担が集中したり,学部・学科間の連絡が稀薄なために,学生の教育研究に支障を来すことのないようにする必要あり。
 現在,多くの大学等で,いわゆる教養教育と専門教育との有機的な連携に配慮した一貫教育に向け,カリキュラム改革が進められている。しかしながら,その過程で,教養教育が軽視されているのではないかとの危惧があるほか,教養教育を行う目的が不明確なまま,単に専門教育の入門的な授業を行うことを教養教育と呼んでいるのではないかとの指摘もある。
 専門教育に興味を抱いて入学してくる学生を対象に1,2年次から専門科目を開設するなど,教える側の視点だけでなく,各学年における学生のニーズを視野に入れた検討を行うことが重要。また,これまで1,2年次に教養・基礎科目を開設し,本格的な専門科目は3年次以降という積み上げ方式を取るのが一般的であったが,それにこだわることなく,4年間の中で,各大学の理念・目標の実現に最も効果的なカリキュラム編成を工夫することが期待。

 21世紀の大学像と今後の改革方策について(答申)(平成10年10月26日 大学審)
 
 大学は,高等教育の中核的機関として,社会の各分野で活躍できる優れた人材の養成・確保という役割を果たすことが期待。
 我が国の状況や将来の社会状況の展望等を踏まえると,今後,高等教育においては,「自ら学び,自ら考える力」の育成を目指している初等中等段階の教育を基礎とし,変化が激しく不透明な時代において「主体的に変化に対応し,自ら将来の課題を探求し,その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力」(課題探求能力)の育成を重視することが求められる。さらに,自主性と自己責任意識,国際化・情報化社会で活躍できる外国語能力・情報処理能力や深い異文化理解,さらには高い倫理観,自己を理性的に制御する力,他人を思いやる心や社会貢献の精神,豊かな人間性などの能力・態度のかん養が一層求められる。
 学部(学士課程)教育については,21世紀における社会状況等を踏まえ,各大学の理念・目標,専門分野によって違いはあるものの,今後,自ら主体的に学び,考え,柔軟かつ総合的に判断できる能力等の育成が重要であるという観点に立ち,幅広く深い教養,高い倫理観,実践的な語学能力・情報活用能力の育成とともに,専門教育の基礎・基本等を重視するなどの方向で学部の教育機能を組織的・体系的に強化していくことが必要。
 生涯学習社会への移行が一層進展する中で,今後,学部段階の教育では,初等中等教育段階からの円滑な移行の観点から,教養教育及び専門分野の基礎・基本を重視した教育を行うことにより専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力や生涯学習の基礎等を培うこと,また,大学院では継続的な専門性の一層の向上を行うことを基本として考えていくことが重要。
 「学問のすそ野を広げ,様々な角度から物事を見ることができる能力や,自主的・総合的に考え,的確に判断する能力,豊かな人間性を養い,自分の知識や人生を社会との関係で位置付けることのできる人材を育てる」という教養教育の理念・目標の実現のため,各大学において教養教育の在り方を真剣に考えていくことが必要である。
 各大学においては,教養教育の理念・目標の実現のため,かつての一般教育のように独立の科目を設ける,あるいは,専門教育科目の中で学際的な科目を開設するなど,各大学の工夫により教養教育を実施することが必要である。また,教養教育は専門教育と対置されるものではなく,専門教育においても教養教育の理念・目標を踏まえた教育が展開されることが専門教育の充実・強化の上でも一層重要となることを十分に認識しなければならない。
 教養教育の実施方法等については,学際的・総合的視野に立って,自ら課題を探求し,柔軟かつ総合的な思考,判断によって解決する能力を育成することが重要であることを踏まえ,例えば,環境問題などのような複合的視点から検討が必要な課題を探求,設定して考えるという課題探求型学習の推進が重要である。

 初等中等教育と高等教育との接続の改善について(答申)(平成11年12月16日 中教審)
 
 高等教育段階にあっては,初等中等教育段階で身に付けられた「自ら学び,自ら考える力」を基礎として「課題探求能力」の育成を図ることが重要。
 高等教育においては教養教育を重視することによって,学生に幅広く深い教養や高い倫理観を醸成するとともに,学生生活全般を通じて豊かな人間性を身に付けさせることが必要。これと併せ,職業倫理の基礎となるべき部分を育成することも必要。
 専門教育については,大学院において継続して専門性の向上が図られるものであり,学部段階においては特定分野の完成教育よりも,生涯学び続ける基礎を培うより普遍的な教育が求められている。基礎・基本を重視しつつ,関連諸科学との関係,学問と個人の人生及び社会との関係を教えることなどを通じて,学生が主体的に課題を探求し解決するための基礎となる能力を育成する観点から見直すことが必要。

 大学における学生生活の充実方策について(報告) (平成12年6月 大学における学生生活の充実に関する調査研究協力者会議)
 
 総体として教員の研究に重点を置く「教員中心の大学」から,多様な学生に対するきめ細かな教育・指導に重点を置く「学生中心の大学」へと,視点の転換を図ることが重要。
 真に実効ある組織改革やカリキュラム改革の取組は,教育を提供する立場の論理だけではなく,学習する側である学生の立場に立ったものとして進められることが必要。しかし,それが学生の短期的な満足のみに応えるような迎合的なものであってはならないよう十分留意。

 グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について(答申)
(平成12年11月22日 大学審)
 
 新しい時代の教養とは何かを問い直し,これを重視する方向で学部教育の見直しを検討することが望まれる。
 各大学の理念・目標に基づく主体的判断により,米国におけるリベラルアーツ・カレッジのような教養教育を中心とした幅広い教育プログラムを持つ学部への改組転換を促進し,これらの学部等から様々な分野の大学院に進学する機会を与えることについても検討する必要。
 学部段階において,広い視野を持った人材の育成を目指す教養教育を中心とした教育プログラムの提供を推進。
 学生の募集単位を大くくりにし,入学後一定期間をおいて,学生の進路に対する考えがより明確になった段階で希望に応じて専門に分けたり,学部間の移動を行いやすくしたりするなどの工夫を行うことも必要。

 教育改革国民会議報告(平成12年12月22日 教育改革国民会議)
 
 学部では教養教育(リベラルアーツ教育)と専門基礎を中心に教育を行うこととする。大学院へは優秀な学生が学部の3年修了から進学することを大幅に促進し,このようなことがごく普通にみられるようにする。なお,学部で卒業する者は4年でさらに専門的な学習をし,社会に出てすぐに活躍できるよう,産業界などとの連携交流を図るインターンシップ(企業や行政機関,教育機関,NPOなどにおける就業体験)などを積極的に実施する。
 過去の教育改革においても,「教育は社会の基盤」「最も基本的社会資本である教育・研究に積極的に投資すべき」と幾度となく言われてきた。少子化が急激に進展し,21世紀は知識社会と言われる中,教育への投資を国家戦略として真剣に考えなければならない。
 教育への投資を惜しんでは,改革は実行できない。教育改革を実行するための財政支出の充実が必要であり,目標となる指標の設定も考えるべきである。この場合,重要なことは,旧態依然とした組織や効果の上がっていない施策をそのまま放置して,貴重な税金をつぎ込むべきではないということである。計画の作成段階及び実施後に厳格な評価を実施し,評価に基づき削るべきは削り,改革に積極的なところへより多くの財政支援が行われるようにする。さらに,納税者に対して,教育改革のために税金がどのように使われ,どのように成果が上がっているのかについて,積極的に情報を公開するようにする。

 新しい時代における教養教育の在り方について(答申)(平成14年2月21日 中教審)
 
 教養教育の実施に当たり,大学間の連携・協力を積極的に進めていくことが有効。新たなカリキュラムの体系の構築,先進的な授業方法の研究開発などの教育課題に対し,複数の大学が共同して取り組む教育プロジェクトに対する積極的な支援が必要。
 新しい時代を生きるための教養としては,社会とのかかわりの中で自己を位置付け律していく力や,自ら社会秩序を作り出していく力が不可欠。
 他者や異文化,更にはその背景にある宗教を理解することの重要性が一層高まるなど,世界的広がりを持つ教養が求められている。我が国の伝統や文化,歴史等に対する理解を深めるとともに,異なる国や地域の伝統や文化を理解し,互いに尊重し合うことのできる資質・態度を身に付けることが必要。また,世界の人々と外国語で的確に意志疎通を図る能力も必要。
 新たに構築される教養教育は,学生に,グローバル化や科学技術の進展など社会の激しい変化に対応し得る統合された知の基盤を与えるものであることが重要。従来の縦割りの学問分野による知識伝達型の教育や,専門教育への単なる入門教育ではなく,知識や思考法などの知的な技法の獲得や,人間としての在り方や生き方に関する深い洞察,現実を正しく理解する力の涵養など,新しい時代に求められる教養教育の制度設計に全力で取り組むことが必要。
 教養教育の改善充実に先導的に取り組み,他の大学の模範となる国公私立大学に対し,「教養教育重点大学(仮称)」として思い切った重点的支援を行う仕組みの導入されることに期待。
 各大学において教養教育の責任ある実施体制を確立するとともに,より充実した教養教育の実施のため,大学間の連携・協力を促す仕組みを検討することが必要。
 質の高い授業を実現するための授業内容・方法等の改善においては,学際的なテーマの授業科目を複数の教員で担当したり,実験や実習などを取り入れるなど,学生の知的好奇心を喚起するための工夫が必要である。

 我が国の高等教育の将来像(答申)(平成17年1月28日 中教審)
 
 各高等教育機関の個性・特色の相対化,各機関ごとの人材養成目的の曖昧化,教育機能軽視の傾向,度重なる規制改革の中での「大学とは何か」という概念の希薄化,他の先進諸国に比べて必ずしも十分とは言えない高等教育の経済的基盤など,むしろ,我が国の高等教育は危機に瀕していると言っても過言ではない。
 このような現状を打破するため,大学における教養教育や大学院の充実,短期高等教育の多様化,国際化への積極的対応など,我が国の高等教育を時代の牽引車として社会の負託に十分にこたえるものへと変革していかなければならない。
 学士課程教育では教養教育及び専門分野の基礎・基本を重視し専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力等を培うこと,修士・博士・専門職学位課程では専門性の一層の向上を目指した教育を行うことを基本として考えることが重要となろう。
 新たに構築されるべき「教養教育」は,学生に,国際化や科学技術の進展等社会の激しい変化に対応し得る統合された知の基盤を与えるものでなければならない。各大学は,理系・文系,人文・社会・自然といった,かつての一般教育のような従来型の縦割りの学問分野による知識伝達型の教育や単なる入門教育ではなく,専門分野の枠を超えて共通に求められる知識や思考法等の知的な技法の獲得や,人間としての在り方や生き方に関する深い洞察,現実を正しく理解する力の涵養に努めることが期待される。
 社会が複雑かつ急激な変化を遂げる中で,各大学には,幅広い視野から物事をとらえ,高い倫理性に裏打ちされた的確な判断を下すことができる人材の育成が一層強く期待されている。各大学には,大学における「教養教育」や「専門教育」等の在り方を総合的に見直して再構築することにより,現状よりさらに充実した学士課程教育を展開することが強く求められる。
 学士課程段階での教育には「教養教育」や「専門基礎教育」等の役割が期待される一方で,職業教育志向もかなり強い。したがって,今後の学士課程教育は,「21世紀型市民」の育成・充実を共通の目標として念頭に置きつつ,教育の具体的な方法論としては,様々な個性・特色を持つものに分化していくものと考えられる。例えば,学士課程段階では,教養教育と専門基礎教育を中心として主専攻・副専攻の組合せを基本としつつ,専門教育は修士・博士課程や専門職学位課程の段階で完成させるもの(言わば「総合的教養教育型」)や,学問分野の特性に応じて学士課程段階で専門教育を完成させるもの(言わば「専門教育完成型」)等,多様で質の高い教育を展開することが期待。
 学士課程は,基本的役割として,学生の人格形成機能や生涯にわたる学習の基礎を培う機能を担っており,内容の充実した教養教育や専門教育を行うことが不可欠である。そこで,学士課程教育の充実のため,分野ごとにコア・カリキュラムが作成されることが望ましい。また,このコア・カリキュラムの実施状況は,機関別・分野別の大学評価と有機的に結び付けられることが期待。
 単位の考え方について,国は,基準上と実態上の違い,単位制度の実質化(単位制度の趣旨に沿った十分な学習量の確保)や学修時間の考え方と修業年限の問題等を改めて整理した上で,課程中心の制度設計をする必要がある。
 学士課程教育の修業年限については,国際的通用性の確保や単位制度の実質化等に十分留意しつつ,検討していくことが必要。従前どおり学士課程を4年かけて卒業する経路のほか,修士・博士・専門職学位課程との関係では,学習経路が多様化するものと考えられる。この場合,世界的研究・教育拠点及び高度専門職業人養成機能を重視する大学が学士課程教育を総合的教養教育型にする場合においては,学士課程3年修了による大学院進学を積極的に活用することが考えられる。
 高等教育機関のうち,大学は,全体として1世界的研究・教育拠点,2高度専門職業人養成,3幅広い職業人養成,4総合的教養教育,5特定の専門的分野(芸術,体育等)の教育・研究,6地域の生涯学習機会の拠点,7社会貢献機能(地域貢献,産学官連携,国際交流等)等の各種の機能を併有する。各々の大学は,自らの選択に基づき,これらの機能のすべてではなく一部分のみを保有するのが通例であり,複数の機能を併有する場合も比重の置き方は異なるし,時宜に応じて可変的でもある。その比重の置き方がすなわち各大学の個性・特色の表れとなる。各大学は,固定的な「種別化」ではなく,保有する幾つかの機能の間の比重の置き方の違い(大学の選択に基づく個性・特色の表れ)に基づいて,緩やかに機能別に分化していくものと考えられる。
 世界的研究・教育拠点や高度専門職業人養成の機能に特化して大学院の博士課程や専門職学位課程に重点を置く大学もあれば,総合的教養教育の機能に特化してリベラル・アーツ・カレッジ型を目指す大学もある。こうした大学全体としての多様性の中で,個々の大学が限られた資源を集中的・効果的に投入することにより,各大学の個性・特色の明確化が図られるべき。
 大学院教育は,学士課程における教養教育と,これに十分裏打ちされた専門的素養の上に立ち,専門性の一層の向上を図るための,深い知的学識を涵養する教育を行うことが基本。
 専門職学位課程における教育は,大学の学士課程段階の幅広い教養教育等を基礎として,特に「理論と実務の架橋」を重視し,高度の専門性が求められる特定の職業を担うための知識・能力を高い学問的水準において養うもの。
 学位取得のための教育と技能・資格取得のための教育の性格の違いを内容面から特徴付けるのは教養教育であり,短期大学における教養教育は,4年制の学士課程における教養教育と同様に,自己の人間としての在り方・生き方にかかわる教育であると考えられる。短期大学の課程の教育上の特色は,こうした「大学における教養教育」を幅広い学習需要に的確に対応したアクセスしやすい形で提供する点にあると考えられる。
 早急に取り組むべき重点施策(「12の提言」)
 
3 高等教育の質の保証についての関連施策
(大学等の設置認可や認証評価等における審査内容や視点の明確化)
 
 事前・事後の評価の適切な役割分担と協調による質の保証に関し,大学等の設置認可や認証評価等における審査の内容や視点の明確化を図る必要がある。
(例えば,…教養教育の実施方針の明示…)
4 各高等教育機関の在り方についての関連施策
(教養教育や専門教育等の在り方についての関連施策)
 教養教育や専門教育等の在り方の総合的な見直しを通じて,「21世紀型市民」の育成を目指し,多様で質の高い学士課程教育を実現する。このため,充実した教養教育の実施や分野ごとのコア・カリキュラムの策定等を支援する必要がある。

2  外国語教育,情報教育

   大学教育の改善について(答申)(平成3年2月8日 大学審)
 
 流動的で複雑な社会や学術の新たな展開,さらには国際化・情報化の進展に適切に対応し得る知的・身体的能力の育成が重視されるべきであり,この意味で,自ら考え,判断させる教育,幅広く深い教養及び学問の基礎を重視したカリキュラムの編成,情報処理能力・外国語能力・表現能力等学問の基礎となる能力の訓練等が重要。

 グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について(答申)
(平成12年11月22日 大学審)
 
 英語をはじめとする外国語によるコミュニケーション能力を重視して,外国語で討論したりプレゼンテーションを行ったりできる能力を育成するための教育内容・方法の工夫改善が必要。また,TOEFL(トーフル),TOEIC(トーイック)等国際的通用性の高い試験の成績に応じて単位の認定を行ったり,これらの試験の成績を各大学の教育目標に応じて入学者選抜に利用することなども考えられる。
 大学教育においては,学生に,グローバルな広がりで,主体的に情報を収集し,分析し,判断し,創作し,発信する能力を養うことが不可欠。その際,情報モラルや,情報機器及び情報通信ネットワークの機能にかかわる基本的知識や能力の習得を重視することが必要。

 新しい時代における教養教育の在り方について(答申)(平成14年2月21日 中教審)
 
 新しい体系による教養教育のカリキュラムづくりにおいては,それぞれの教育理念・目的に基づき,新しい時代を担う学生が身に付けるべき広さと深さとを持った教養教育のカリキュラムづくりに取り組むことが必要。その際,外国語によるコミュニケーション能力や,コンピュータによる情報処理能力などの新しい時代に不可欠な知的な技能の育成についても重視することも必要。さらに,各大学には,自らの教養教育の理念を教職員や学生に簡潔かつ明確に示す努力を期待。
 他者や異文化,更にはその背景にある宗教を理解することの重要性が一層高まるなど,世界的広がりを持つ教養が求められている。我が国の伝統や文化,歴史等に対する理解を深めるとともに,異なる国や地域の伝統や文化を理解し,互いに尊重し合うことのできる資質・態度を身に付けることが必要。また,世界の人々と外国語で的確に意志疎通を図る能力も必要。
  (再掲)

3  キャリア教育

   初等中等教育と高等教育との接続の改善について(答申)(平成11年12月16日 中教審)
 
 学校教育と職業生活の円滑な接続を図るため,望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身に付けさせるとともに,自己の個性を理解し,主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育(キャリア教育)を発達段階に応じて実施することが必要。

 大学における学生生活の充実方策について(報告)
(平成12年6月 大学における学生生活の充実に関する調査研究協力者会議)
 
 大学では学生に対して,望ましい職業観や,職業に関する知識・技能を涵養し,自己の個性を理解した上で,主体的に進路を選択できる能力・態度を育成するキャリア教育を,大学の教育課程全体の中で,明確に位置づけて実施していく必要がある。

 グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について(答申)
(平成12年11月22日 大学審)
 
 学生が将来への目的意識を明確に持てるよう,職業観を涵養し,職業に関する知識・技能を身に付けさせ,自己の個性を理解した上で主体的に進路を選択できる能力・態度を育成する教育(キャリア教育)を,大学の教育課程全体の中に位置付けて実施していく必要あり。

 教育改革国民会議報告(平成12年12月22日 教育改革国民会議)
 
 中学,高校,高等専門学校,大学などでは進路指導の専門家(キャリア・アドバイザー)を積極的に配置し活用する。職業能力の向上を図る観点から,ものづくり教育,職業教育や起業家精神の涵養のための教育内容を充実する。また,職場見学,職業体験,インターンシップ(就業体験)などの体験学習を積極的に実施する。

4  高等学校との接続(補習教育を含む)

   高等教育の一層の改善について(答申)(平成9年12月18日 大学審)
 
 各大学等においては,高等学校との関連にも留意することが必要。高等学校のカリキュラムの動向や学生の実態を踏まえつつ,当該大学の授業を受けるために必要な科目については,高等学校での履修を求めるなどの方法により,入学前に学生が学習すべき内容に関する情報提供に努めるとともに,入学後,必要に応じて学生の履修歴等に対応した補習教育を実施するなどの工夫を通じて,中等教育から高等教育への移行を円滑に進めることが求められる。

 21世紀の大学像と今後の改革方策について(答申)(平成10年10月26日 大学審)
 
 大学は,このような高等学校教育の動向や入学希望者の変化を常に的確に把握し,従来の「現在大学で補習教育を行っている内容は,本来高等学校が行うべきである」という大学中心の考え方から,「高等学校の教育内容が多様化していることを前提として履修歴の多様な高等学校卒業生を受け入れる以上は,大学の教育も当然その変化に対応した内容に変わるべきである」という初等中等教育の現状を見渡した考え方へ発想を転換することが必要。

 初等中等教育と高等教育との接続の改善について(答申)(平成11年12月16日 中教審)
 
 高校教育から高等教育に円滑に移行させていくかという観点から,接続の問題を考えるべき。入学者選抜の問題だけではなく,カリキュラムや教育方法などを含め,全体の接続を考えていくことが必要であり,初等中等教育から高等教育までそれぞれが果たすべき役割を踏まえて,一貫した考え方で改革を進めていくという視点が重要。
 高校教育におけるカリキュラムの多様化や,新学習指導要領において,高等学校段階でのカリキュラムに大幅に選択制を取り入れられることにより,学生の履修歴等の多様化が今後一層進むことから,学生に対するきめ細かな配慮や様々な工夫が必要。

 大学入試の改善について(答申)(平成12年11月22日 大学審)
 
 入学後は必要に応じ学生の履修歴等に対応して大学教育の基礎を教えること。特に,学生が高等学校で履修していない科目等についていわゆる補習授業を実施するだけでなく,文献の読み方や議論の仕方,レポートの作成の仕方等についての授業を入学後すみやかに行うことにより,大学教育への円滑な移行を図ることも期待。

 新しい時代における教養教育の在り方について(答申)(平成14年2月21日 中教審)
 
 大学での学習や将来の職業とのつながりを意識させるための取組の推進としては,高校生が大学で学んだり,大学の教員が高校で教えたりする「高大連携」の推進も必要。

 我が国の高等教育の将来像(答申)(平成17年1月28日 中教審)
 
 高等教育と初等中等教育との接続に留意することは,今後ますます重要。その際,入学者選抜の問題だけでなく,教育内容・方法等を含め,全体の接続を考えていくことが必要であり,初等中等教育から高等教育までそれぞれが果たすべき役割を踏まえて一貫した考え方で改革を進めていくという視点が重要。
 幅広い職業人養成,総合的教養教育,地域の生涯学習機会の拠点の機能に重点を置く大学にあっては,例えば,充実したリメディアル(補習)教育の実施や,就職や他大学の学士・修士・専門職学位課程等への円滑な進学・編入学を特色とすることも考えられる。
 今後の高等教育においては,初等中等教育を基礎として,「主体的に変化に対応し,自ら将来の課題を探求し,その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力」(課題探求能力)の育成が重視されよう。

5  正副専攻(メジャーマイナー)

   グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について(答申)
(平成12年11月22日 大学審)
 
 科学技術の分野を専門としていない学生にも,自然科学に関する基礎知識とともにそれに基づく広い視野からの判断力を養うことが必要であり,また,科学技術の分野を専攻する学生に対しても,その専攻分野に限定されない広い科学的知識と判断力を身に付けさせることが不可欠。

 教育改革国民会議報告(平成12年12月22日 教育改革国民会議)
 
 幅広い知識と理解力を身につけるために,また国際化の観点から語学教育の充実にも活用できるよう,分野の異なる複数の専攻科目(主専攻,副専攻)を選択するダブルメジャー制度を導入する。

 我が国の高等教育の将来像(答申)(平成17年1月28日 中教審)
 
  1近年の学問分野の学際化・融合化や,2幅広い知識と柔軟な思考能力を持つ人材等の,社会において求められる人材の多様な要請等に対応する手段として,主専攻・副専攻制(主専攻分野以外の分野の授業科目を体系的に履修させる組織的な取組)やジョイントディグリー(一定期間で複数の学位を取得できる履修形態)は有効な方策と考えられる。
 学士課程段階では,教養教育と専門基礎教育を中心として主専攻・副専攻の組合せを基本としつつ,専門教育は修士・博士課程や専門職学位課程の段階で完成させるもの(言わば「総合的教養教育型」)や,学問分野の特性に応じて学士課程段階で専門教育を完成させるもの(言わば「専門教育完成型」)等,多様で質の高い教育を展開することが期待。(再掲)

 新時代の大学院教育−国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて−(答申)
(平成17年9月5日 中教審)
 
 近年の学問分野の学際化,融合化や,幅広い知識と柔軟な思考能力を持つ人材など社会において求められる人材の多様な要請などに対応する手段として,主専攻分野以外の分野の授業科目を体系的に履修させる主専攻・副専攻制や,一定期間において複数の学位を取得できる履修形態であるジョイントディグリーは有効な方策であり,各大学の自主的な検討に基づき,積極的な導入が期待される。なお,これらの取組を導入するに当たっては,教育目標や理念の明確化,専攻分野に関する教育の課程の充実が前提であり,また,課程の修了までのプロセスが複雑になることによる学生の履修相談の体制整備など教育を受ける側への一層の配慮も求められる。

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