資料2-1 認証評価制度に関する改善すべき事項について(案)

【基本的な考え方】
○ 平成16年度から始まった認証評価制度により,徐々に日本においても評価が根付きつつあり,評価結果も踏まえ,各大学においては自主的・自律的なPDCAサイクル(内部質保証)の確立・改善に取り組んでいる。
○ 他方,高大接続改革における大学教育改革の議論では,以前から指摘されている学修成果に係る評価の充実や,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーの三つのポリシーに基づく大学教育の質的転換が求められている。
○ こうした状況を踏まえ,認証評価制度においても,法令適合性等の最低限の質の確認のみならず,評価を通じて,三つのポリシーも取り入れた各大学の内部質保証機能の向上,学修成果の評価を重視した評価への発展・移行が必要である。
○ これに併せ,各大学における内部質保証が有効に機能している大学に対しては評価の一層の効率化を進めていく一方,課題が見られる大学については,認証評価制度の基本的な性格は維持した上で,大学の教育研究の質の維持・向上を図る観点から,評価機関におけるフォローアップ体制の整備・充実を推進する。
○ その他,第2サイクル(平成23年度~)までの評価の実施状況や諸外国の制度の動向も踏まえ,大学の特色の積極的評価・明確化,評価における社会との関係強化,評価の効率化,他の質保証制度との接続についても改善を図る。


【具体的な改善事項】

1.大学教育の質的転換や全学的な改革サイクルの確立を推進するための評価の在り方

<方向性>
各認証評価機関では第2サイクルに当たり,評価項目に内部質保証や学修成果といった観点を導入しているところであるが,これらを大学評価基準の共通項目に位置付けるとともに,評価方法の改善やフォローアップ体制の確立等により,大学の全学的な改革サイクルの確立を推進する。

(大学評価基準の項目に係る改善)
(1) 大学評価基準に共通に定めるべき項目の追加
・ 内部質保証(大学が自ら行う点検・評価・改善)の取組について(学内組織・システムの整備等)
・ 三つのポリシーに基づく大学の取組について(策定の一体性,組織的で体系的な教育の実施,学生の学修成果の評価等)
・ 設置計画履行状況調査における指摘事項を認証評価においても引き継いで評価を実施(その際,改善意見,是正意見,その他意見,警告の取扱いについては要検討)
(2) 重点評価項目の設定
・ 評価において重視すべき事項を法令上新たに設定
(例:内部質保証の機能)
(評価方法の改善)
・ 法令適合性のみならず,よりきめ細かなPDCAサイクルを促す評価の促進
(例:客観的データ・指標等も活用した多面的な評価の促進,重点評価項目における段階別評価の実施)
・ 前回評価で内部質保証の機能(重点評価項目)に関する評価が高い場合の次回評価の弾力化
(例:訪問調査・評価項目の簡素化等)
・ 大学の特色の積極的評価
(例:「特定テーマ」の選択的評価の実施)
・ 法令遵守事項に係る評価方法を簡略化
(評価結果を活用した改善の促進)
・ 評価機関におけるフォローアップ体制の確立
・ 「大学教育再生戦略推進費」等の補助金(大学の優れた取組を重点的に支援するもの)の申請要件として,認証評価において「不適合」の判定を受けていないことを設定
(その他)
・ 各大学における三つのポリシーを踏まえた取組の自己点検・評価の実施,各大学における自主的な分野別評価の受審を推奨


2.認証評価制度の運用の改善・充実

<方向性>
認証評価の質の継続的向上,認証評価の社会的認知度の向上,評価の効率化等により,認証評価制度の安定的運用とさらなる発展を図る。

(認証評価機関の評価の質の向上)
・ 評価機関の自己点検等の義務化
・ 評価機関の自己点検・評価の検証を含め,有識者による定期的な確認の実施
(例:大学分科会の下に置かれる「認証評価機関の認証に関する審査会」における確認 等)
(評価における社会との関係の強化)
・ ステークホルダーを評価へ参画させる仕組みを義務化
 (例:評価結果の決定に参画する,個別大学の評価者に加える,評価の過程でヒアリングを行う,大学側の自己点検・評価において意見聴取を求める 等)
・ 大学の特色の積極的評価・評価結果の明確化
 (例:「特定テーマ」の選択的評価の実施)
・ 各機関における評価結果(優れた取組を含む)の発信方策を改善
 (例:当該年度における評価対象校のうち特に優れた取組と課題を発信)
・ 大学院を含む修了者の進路把握・公表状況を積極的に評価
 (例:就職者等の「数」にとどまらず,より詳細な状況の把握・公表を積極的に評価)
(評価人材の育成)
・ 各認証評価機関共通のセミナー等の実施の促進
 (例:テーマ別,役割(評価統括者,評価実施者)別等きめ細やかなセミナーの実施と修了認定の工夫等について
・ 大学側の評価人材の育成について
 (例:評価機関との人事交流による研修,研修受講や評価実施等を教職員の業績評価等において積極的に評価 等)
(評価の効率化)
・ 前回評価で内部質保証の機能に関する評価が高い場合の次回評価の弾力化
 (例:訪問調査・評価項目の簡素化等)【再掲】
・ 国立大学法人評価等の他の評価結果を取り入れた評価を促進(評価資料,評価結果を活用した評価を実施)
・ 年度間の評価校数平準化の推進
(例:各大学が7年間隔を前倒しして評価を受審する場合のインセンティブの付与 等)
・ 大学ポートレートの情報項目の充実及び機能の拡充を要望


3.他の質保証制度との連携等について

・ 設置計画履行状況調査における指摘事項を認証評価においても引き継いで評価を実施(その際,改善意見,是正意見,その他意見,警告の取扱いについては要検討)
・ 国立大学法人評価等の他の評価結果を取り入れた評価を促進(評価資料,評価結果を活用した評価を実施)【再掲】
・ 専門職大学院を設置する大学に関する機関別評価と分野別評価の合理化の検討


(参考)
【これまでの主な御意見】

1.高大接続改革(大学教育の質的転換,大学入学選抜改革)等を推進するための評価の在り方について
(三つのポリシーに係る認証評価の改善に関すること)
○ 三つのポリシーの策定とそれに基づく取組状況の評価は今後も重要であり,重点的に評価すべきではないか。質保証の仕組みとしてどのように実現できるのかという視点で検討すべきでないか。
○ ディプロマ・ポリシーとカリキュラム・ポリシーの整合性は指摘されるものだと思うが,ディプロマ・ポリシーそのものは建学の精神に基づき大学が定めるもので,認証評価で評価の対象とするのは制度面や方法的なことであることを明確化するべきではないか。
○ 認証評価制度を実質化するためには,一定のガイドラインを中教審のような第三者的な客観的な判断ができるような場で合意したものとする必要があるのではないか。
(大学教育の質的転換と全学的教学マネジメントの確立に関すること)
○ 多様な大学の特性も踏まえ,大学の機能強化を促進させるための評価を行うべきではないか。
○ 法令等の評価と達成度の評価を明確に区分した上で,法令等の評価は簡略化し,達成状況の評価に重点を置いた評価を行うべきではないか。
○ 法令要件に関わる事項についてはデータの提出のみとしてはどうか。その際,法令遵守に努めており,過去に指摘がない大学かどうかを分けて考える必要があるのではないか。
○ 内部質保証を実質化させるため,内部質保証が定着しているかについて重点的に評価すべきではないか。
○ 内部質保証システムが機能しているかどうかは,達成すべき目標やレベルが明確に示されていることが必要であり,かつそれらが適切に設定されているかを評価する必要がある。
○ 学修成果の評価については,各大学の学位授与の方針を踏まえ,課程修了時に修得が期待される能力を身に付けさせているかを重点的に評価すべきではないか。
    また,各大学が学生の学修成果を評価する手法の可視化が必要ではないか。
○ 財務力の評価項目についてもしっかり評価すべきではないか。
○ 大学の評価については,単にアウトカムを見れば良いだけではなく,適切なシステムが整えられているのかといった点も考慮して評価する必要があるのではないか。
○ 日本の教育が入学のレベルで評価されるのではなく,卒業時の学生の成果が広く社会に知られ,評価されるようになるべきではないか。
○ 日本の高等教育の質保証の観点から,各大学のミッション等の目的準拠型の内部質保証を確認することで十分とは言えないのではないか。
○ グローバルな視点,国際的な同等性の中で認証評価も実施していくべきだ。
○ 評価結果に応じた次回評価の弾力化については,慎重な検討が必要ではないか。
○ 分野別評価については,人員の養成・確保がすぐには困難なことから,導入にあっては慎重な検討が必要ではないか。
○ 分野別質保証について,すぐに全領域をやっていくことは難しいが,分野によっては学士段階の評価の取組を奨励していくことが必要ではないか。
○ 日本学術会議の分野別参照基準等も取り入れて検討していくべきである。

2.評価結果を活用した改善の促進
○ 大学評価基準を満たさなかった大学(いわゆる「不適合」「不適格」の大学)に対して,指摘内容を実現化するための法的枠組みの整理が必要ではないか。
○ 仮にフォローアップを義務化しようとすると,現在の認証評価制度の在り方を大きく変えていくことが必要となるのではないか。
○ より良い評価を受けるための大学のインセンティブとペナルティーを検討すべきではないか。段階別評価の導入,課題があった場合の評価の保留・再評価や今より短いサイクルでの受審義務化や,良い評価結果の場合には,評価サイクルを長くすることや,提出資料の軽減等が考えられるのではないか。
○ 評価結果を資源配分に活用するのはまだ早いのではないか。評価の在り方自身がまだ確定されておらず,また評価結果が適合・不適合と中間段階がない。
○ 認証評価で大学の取組をしっかり見るとともに,評価結果の資源配分への活用が必要ではないか。

3.認証評価機関の評価の質の向上
○ 認証評価機関に対する評価の在り方については,評価機関の自主性・独立性の観点から慎重な検討が必要ではないか。
○ 評価機関をどう評価すべきかの検討も必要だが,まずは自己点検・評価に取り組むことが先決ではないか。
○ 評価機関同士での競争原理が担保されているような制度とすべきではないか。

4.評価における社会との関係の強化
○ ピアレビューの原則を確保した上で,評価に社会(ステークホルダー)の声を反映できる仕組みを整備する必要があるのではないか。裁判員制度同様,大学の在り方も一般の人の視点を取り入れることにより大きく変わるのではないか。
○ 一般社会人を評価に加えることは重要だが,大学の実地調査の評価委員になるには相当研修が必要であり,全体評価の検討の際の参加が妥当ではないか。
○ 学生が大学の自己点検・評価に参画するのは良いが,第三者機関の評価活動にまで参画を求めるのは,学修時間の確保の観点から適切ではないのではないか。
○ 社会一般の人に対しても大学の状況をより分かりやすく伝えるため,ポイントをアピールするような形で評価を公表するなど,評価結果の様式の見直しが必要ではないか。
○ 評価制度や評価結果について高等学校や産業界への一層の周知が必要ではないか。
○ 社会が大学に求める情報は必ずしも細かい情報ではない。社会のニーズにあった提供内容を考えるべきではないか。

5.評価人材の育成
○ 設置基準等の法令に関する専門的知識の共通的な理解を深めるため,全評価機関の評価員を対象としたセミナーなどの実施が必要ではないか。
○ 評価人材の育成も人材育成の全体像の中で検討すべきである。大学の専門家として必要な機能を洗い出すことや,また専門人材の流動性の促進の観点から,資格や認証制度等も考える必要があるのではないか。
○ 評価員のインセンティブを高める方策や,評価員を拠出する機関(主に大学)の負担軽減が必要ではないか。
○ 大学側の評価人材の育成も必要ではないか。
○ 認証評価機関に対する支援として,評価員の育成に対する助成が必要ではないか。

6.評価の効率化
○ 大学ポートレートについては,認証評価でも活用できるよう情報量の一層の充実が必要ではないか。
○ 大学ポートレートの情報は各大学が入力しているものにすぎないことから,根拠が曖昧で評価に使用するのは慎重な検討が必要ではないか。
○ 大学ポートレートの掲載内容はもっと充実すべきである。大学のトップページに,当該大学の基本情報が見えるなど,国公私立共通した表示の仕方等も改善すべきではないか。
○ 大学がPDCAのDoをしっかりやることが大切。チェックばかりを精緻にし過ぎると全体のバランスを崩すのではないか。
○ 大学の負担軽減のため,提出資料の電子データ化の徹底や,評価実施期間の短縮を検討してはどうか。
○ 年度間の評価校数の平準化を図るための方策が必要ではないか。
○ 他の評価制度との連携による評価の効率化として,例えば,国大評価との更なる連携や評価結果の相互活用などを進めてはどうか。

7.その他
○ 質保証の観点から,AC(設置計画履行状況等調査)での指摘事項と認証評価制度を連携させることが必要ではないか。
○ ACの結果は,その他意見レベルから是正意見まで様々あるが,認証評価上どのように扱い対処するかが重要であり,かつ影響力があるのでしっかり議論すべきではないか。
○ 設置認可やACでの改善意見等全てを認証評価の際にフォローアップすることは困難である。設置時の条件が大学学部等であれば4年間固定されるのは大学改革の流れからしても困難であるとの視点も踏まえ,認証評価をすべきではないか。
○ 例えば,学生の学修時間などの客観的なデータを集めて,それに基づいた評価を実施することが必要ではないか。
○ 多面的・多元的な評価をするための指標は重要であるが,学修時間の調査だけの検討は,認証評価制度の本質とは異なるのではないか。総合的に検討すべきではないか
○ 大学院修了者の進路状況や活躍状況の把握・公表状況などの評価を促進すべきではないか。
○ 諸外国の最新の状況も参考としながら制度改善を検討すべきではないか。

 

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