資料1-4 三つのポリシーに基づく大学教育の実現に係るこれまでの主な御意見

1.ガイドラインの位置付け等について
1 ガイドラインの策定主体について
・ 高大接続システム改革会議「中間まとめ」においてはガイドラインの作成主体は「国」とされているが,「国」が何を指しているのかはっきりしない。
・ ガイドラインの策定主体についてさらなる検討が必要。
2 ガイドラインの位置付けについて
・ ガイドラインがないと,学内で合意を得る過程で,三つのポリシーが非常に漠然としたものになりかねないので,ガイドラインはあった方がよい。
・ 三つのポリシーは諸外国にはない概念であることも踏まえ,ガイドラインは大学が理解できるよう易しく,分かりやすく示すべき。
・ ガイドラインは必要だが,多様性,大学の機能分化に沿う形で各大学がどういう機能を持つのかということを考えた上で策定すべき。
・ 三つのポリシーやそれに基づく大学教育の具体的な内容については,各大学の建学の精神や機能の在り方を考えた上で,各大学が主体的に考えていくべき。

2.三つのポリシーの一体的な策定の意義について
・ 三つのポリシーの策定の最終目標は,大学における教育の質の向上や,それによる学生の学修成果の向上である。
・ 三つのポリシーの策定は,大学の理念や建学の精神から,具体的なディプロマ・ポリシーを通して,計画的なカリキュラムを設計し,個々の授業の実施と成績評価に至る「学士課程教育の一貫性構築」の営みである。
・ 一貫性のある学士課程を構築することに最終目標がある。
・ 大学教育に組織的に取り組むためには,学士課程教育に携わる全ての教職員がディプロマ・ポリシーや他の科目の到達目標,位置付けを意識して取り組む必要がある。
・ 三つのポリシーの一体的な策定により,「入り口」「中身」「出口」の一貫したマネジメント体制を構築していくことが必要。
・ 三つのポリシーの一体的な策定の義務付けについて,学校教育法施行規則に規定するのか大学設置基準に規定するのか検討することが必要。

【高大接続システム改革会議「中間まとめ」(平成27年9月15日)より】
○ 各大学が教育を行う上で基本とすべきは,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーの三つのポリシーとそれらの間の緊密な関係である。特に,各大学のアドミッション・ポリシーは,ディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーと一体的であると同時に,当該大学の入学者選抜方法に具体化されるものでなければならない。各大学では,これらのポリシーを,全学的なものとして,さらには個々の学部や学科等において,一体的に,かつ明確な内容を持つものとして策定するとともに,三つのポリシーに基づく充実した大学教育の実現に取り組み,責任を持って卒業生を社会に送り出す必要がある。
○ 個々の大学において,どのような力を持つ学生を受け入れ,彼らが大学においてどのように学び,どのような力を身に付けて社会に巣立つこととなるのか,社会に対する明確なメッセージとして可視化し,発信する必要がある。
○ 大学教育の充実のためには,各大学における三つのポリシー,及び入学者選抜方法を一体的に,充実したものとして策定することが重要であり,そのためには,三つのポリシーについて,その策定を法令上義務付けることとあわせて,国において三つのポリシーの策定と運用に関するガイドラインを策定することが効果的と考える。
○ 各大学において三つのポリシーを策定するに当たっては,当該大学の持つ様々な資源をどのように重点的に配分すべきかについて,十分な戦略を持つことが重要である。また,大学教育と,高等学校教育,卒業後の人生の舞台となる社会,すなわち地域社会,国際社会,産業界等との関係を一貫した視点で捉え,それらとの関わりを重視する必要がある。


3.三つのポリシーの策定について
1 三つのポリシーの策定のための組織・体制について
・ 学長や教学担当副学長を中心とした全学的な策定方針,あるいは支援体制が必要。
・ エビデンスベースで議論するために,教育IRチームのような組織が必要。
2 三つのポリシーの策定単位について
・ 三つのポリシーの策定単位は学位プログラムとすべき。
・ 学位プログラムという語の定義がなされていないので,きちんと定義してから使用すべき。
3 三つのポリシーの策定に関わることについて
(総論)
・ 全学のディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシーから,それぞれの学位プログラムのカリキュラム・ポリシーという流れが重要。
・ 「一体的な策定」のためには,まずディプロマ・ポリシーを検討し,それを踏まえてカリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーを策定するという方法が適切である。
・ アドミッション・ポリシーでどういうレベルを要求するのかを示し,入学後はどういうところを補っていくのかをカリキュラム・ポリシーで示し,どういう人材が育つのかをディプロマ・ポリシーで示すべき。
・ まず国からは「大学はアドミッション・ポリシーを示すべき」という方針が出されたが,その後三つのポリシーを,しかもディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーの順で策定すべきという方針が出されることになるので,大学がこれまでのアプローチとは逆方向でポリシーを検討しなければならなくなることに留意すべき。
(ディプロマ・ポリシー)
・ ディプロマ・ポリシーは,個々の授業科目の学修成果を総合したもので,学修成果が測定可能であることはもちろん,ディプロマ・ポリシーも測定可能でなければならない。
・ ディプロマ・ポリシーは,学位プログラムとしての到達目標である。
・ ディプロマ・ポリシーは,社会に対する説明責任を果たすものと捉えるべき。
・ ディプロマ・ポリシーの策定に当たっては,育成を目指すコンピテンスを重視すべき。
・ 均質な人材育成ではなく,多様な人材育成を大学教育で行うことを意識する必要がある。
(カリキュラム・ポリシー)
・ 大学教員は教養教育に関心を持たない傾向があるが,教養教育,専門教育等を体系的に構築・実施する必要がある。
・ ディプロマ・ポリシーに基づいてカリキュラム・ポリシーを具体化することによって,他大学との共通性が明確になり,大学間の協力が成り立つことが考えられる。
・ カリキュラムの整合性を可視化するツールとして「カリキュラム・マップ」,体系性・系統性を可視化するツールとして「カリキュラム・ツリー」が有効。履修系統図やナンバリングもこれらを可視化し,学生の学びを促進するツール。
・ 計画的な教育プログラムとは,ディプロマ・ポリシーと個々の科目の関係性,整合性,体系性を整理した教育プログラムであり,カリキュラム・ポリシーの本質になる。
(アドミッション・ポリシー)
・ 「学力の3要素」は重要であり,これを踏まえ,かつ各大学がどういう学生を必要としているのかに基づいて入試の在り方を考えるべき。
・ アドミッション・ポリシーは,学生を主語にして具体的に記述する必要がある。
・ アドミッション・ポリシーの中で,AO,推薦,専門高校用の入試それぞれでどういうレベルまで要求するかということを書くべき。
・ アドミッション・ポリシーにおいて,あらゆる入試の形態について,それに対応したカリキュラムや,最終的に学生をどのレベルまで育てるのか,ということを全て書くことができるのか疑問である。

【高大接続システム改革会議「中間まとめ」(平成27年9月15日)より】
※ガイドラインにおいて示すことが考えられる方向性
<総論>
・ 当該大学におけるディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシー,及び入学者選抜方法の間の緊密な関係が外部者に理解できるように表現すること
・ 当該大学に関心を持つ人,入学希望者,社会人,外国人等,三つのポリシーを理解しようとする多様な人々が十分理解できるような内容と表現であること
<ディプロマ・ポリシー>
・ 当該大学が卒業生を社会に送り出す上で,どのような能力を身に付ければ学位を授与するのかという方針を具体的に示すこと
・ 大学教育の質を担保し,授与される学位の信頼性を高めるため,当該大学における学修成果の可視化を図るとともに,在学の水準に合わない学生の退学の基準等,具体的な基準を示し,それに基づく厳格な成績評価・卒業認定を行うこと
・ カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーとの関係を具体的に示すこと
<カリキュラム・ポリシー>
・ 当該大学におけるディプロマ・ポリシー及びアドミッション・ポリシーを踏まえたカリキュラム編成,そのカリキュラムによる学生の学修方法・学修過程の在り方等を具体的に示すこと
・ 上記において特に,主体性を持つ多様な学生に対して,個々の学生が「自分がどうすれば何を身に付けられるのか」を理解することのできる,カリキュラム編成,学生の学修方法・学修過程の在り方等を具体的に示すこと
・ 主体性を持つ多様な学生の入学・在学を前提として,ディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーとも関係し合う教育を,カリキュラム編成,学生の学修方法・学修過程の在り方等に具体的に位置付けること
・ 多様な入学者のそれぞれが自ら学修計画を立て,学修の実践に入っていくための初年次教育を具体化すること
<アドミッション・ポリシー>
・ ディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーを踏まえるとともに,「学力の3要素」を念頭に置き,入学前にどのような多様な能力をどのようにして身に付けてきた学生を求めているか,入学後にどのような能力をどのようにして身に付けられる学生を求めているか等を,具体的に示すこと
・ 入学者選抜において,多様な入学希望者に対してアドミッション・ポリシーに明示された様々な能力や入学者に求めていること等の水準を判定するために,どのような評価方法を多角的に活用するのか,それぞれの評価方法をどの程度の比重で扱うのか等を具体的に示すこと


4.三つのポリシーの運用について
1 三つのポリシーに基づく全学的なマネジメントの確立
・ 三つのポリシーをつくっただけでは駄目で,それを動かして実体化していくことが重要。自己点検・評価においても,これが実体化をされているかどうかを評価すべき。
・ 問題点が発見され,到達目標や科目の内容を含めた見直しが多くの科目に求められ,それが次回のカリキュラム改訂に生かされる。これが内部質保証であり,これが本当に動いているかどうかが肝腎。
2 組織的で体系的な教育の展開と学生の学修成果の評価
・ 全学的な意識改革と,学部・学科の執行部に対する具体的な策定のための学習会,研修会が必要。
・ 教員がポリシーに沿った教育をしているのかを確認することが重要。
・ パフォーマンス評価等の定性的な評価は重要。
・ パフォーマンス評価は時間と労力を要するので,一部をサンプリングすることが考えられる。
3 三つのポリシーに基づく大学の取組の自己点検・評価と改善,情報の積極的な発信
・ 個別学生のアセスメントと,教育プログラム評価をきちんと識別しないで評価をしていることが,現在の高等教育における評価の混乱の最大の原因。
・ 評価(学生の学修成果の評価,教員の教育活動の評価,教学マネジメントの評価など)に関することは,各大学の主体性に基づくべきであり,ガイドラインに入れるかどうかは慎重に検討すべき。
・ 三つのポリシーに基づく大学教育の実現のためにはアセスメントは必要。ガイドラインにおいてアセスメントに言及しなければ,各大学における大学教育の成果の証明は達成できない。
・ ディプロマ・ポリシーの測定や検証には,学生調査やパフォーマンス評価などが有効。
・ 三つのポリシーは常に見直しが必要で,教育を日々動かしながらも,学生や受験生に理解されやすいよう,またその達成度の評価がしやすいよう改訂していかなければならない。
・ ディプロマ・ポリシーは簡単には変えられない。
・ 卒業生の評価や卒業生による出身大学の評価という観点も必要。
・ 国は各大学の情報の公表を促進すべき。

【高大接続システム改革会議「中間まとめ」(平成27年9月15日)より】
○ 特に,今後大学においては,多様な背景を持つ高等学校卒業生だけでなく,留学生や学び直しを希望する社会人を含め,これまで以上に多様な学生を受け入れ,教育を行い,社会に送り出すことが重要であり,そうした多様な学生の存在を前提とした大学教育の充実に向け,学長のリーダーシップの下,三つのポリシーを全ての教職員が共通理解し,連携して取り組むとともに,その成果を実証的に把握し,不断の改善につなげることが重要である。

5.三つのポリシーに基づく大学教育に対する認証評価の在り方について
・ 認証評価で評価すべきは,大学の教育活動そのものではなく,大学の自己点検が適切に行われているかどうかである。
・ これまで多様性を重視してきた大学教育が,今回の改革で画一的な評価に向かうことのないようにすべき。ガイドラインにより固定された一元的な基準で大学が評価されるべきではない。

【高大接続システム改革会議「中間まとめ」(平成27年9月15日)より】
○ ついては,中央教育審議会においても,高大接続システム改革の議論と連携を図りつつ,例えば次のような観点を踏まえた検討を進め,認証評価制度改革を実現する必要がある。
・ 高大接続システム改革の目的と内容を実現する新しい認証評価制度の具体化
・ 新たな時代潮流を見据えた各大学の大学教育改革や大学入学者選抜改革の取組を適切に評価し,更なる取組の充実につなげるための評価方法の具体化(特に,各大学の三つのポリシーが,国のガイドラインも踏まえ適切に策定されているか,各ポリシー間の整合性や一体性が確保されているか,大学入学者選抜方法がアドミッション・ポリシーの求める学生を選抜する具体的な方法になっているか,大学教育や大学入学者選抜の実態が各ポリシーに即したものとなっているかなど。)
・ 学修成果や内部質保証を重視した評価への発展・移行
・ 地域社会,国際社会,産業界,高等学校等からの多様な視点を取り入れた評価の具体化
・ 評価の結果の効果的な発信や活用


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高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

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