ここからサイトの主なメニューです

資料5‐1 法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善・充実方策について(提言案)

はじめに

  • 法科大学院制度については、我が国の司法制度改革の柱の一つとして、従来の「点による選抜」から「プロセスとしての養成」の中核的な教育機関として創設され、司法試験・司法修習との有機的な連携の下、21世紀の司法を支えるにふさわしい質・量ともに豊かな法曹を養成することを目指して平成16年度から学生受け入れを開始して以降、現在、約10年が経過したところである。
  • この間、新しい法曹養成制度を通じて養成され、法曹で活躍する者は、1万人を優に超える相当数にのぼるとともに、法科大学院教育による成果は、法科大学院修了生や受入れ側の法律事務所・企業等からも一定の評価を受けてきている。しかし一方で、課題が深刻な法科大学院が一定数存在するとともに志願者全体が減少傾向にあるなど、法科大学院が当初期待された役割を充分に果たせているとは言い難い状況が続いていることも事実である。
  • 以上のような状況の下、中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会(以下「本特別委員会」という)では、これまでも法科大学院教育の改善・充実に向けて、平成21年「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)」、平成24年「法科大学院の更なる充実に向けた改善方策について(提言)」を取りまとめ、その改革を促してきたが、更に法科大学院の抜本的な組織見直しを進め、その教育力の向上に向けた不断の改革に取り組むことがなお必要であると考える。
  • 特に、平成25年7月、政府の法曹養成制度関係閣僚会議において決定された「法曹養成制度改革の推進について」の中では、法科大学院をはじめとする法曹養成制度改革に関し、政府として講ずべき措置の内容及び時期が示されたところである。これを受け、同年9月以降、本特別委員会においても、改めて法科大学院の規模や教育の質の向上の在り方等について更なる議論を重ね、
    • 「法科大学院における組織見直しの更なる促進方策の強化について」(平成25年9月)
    • 「組織見直し促進に関する調査検討経過報告」及び「共通到達度確認試験等に関する調査検討経過報告」(平成25年11月)
    • 「各法科大学院の改善状況に係る調査結果」(平成26年2月)
    • 「今後検討すべき法科大学院教育の改善・充実に向けた基本的な方向性」(平成26年3月)
    など個別論点ごとに提言・報告を随時行ってきたところであり、現在、法科大学院が直面している極めて困難な現状を打開すべく、制度全体を俯瞰して、今後の法科大学院改革をより一層強力に推進していく観点から、今般、法科大学院の目指すべき姿を実現するための抜本的かつ総合的な改善・充実方策を提言することとする。
  • 本特別委員会としては、文部科学省において、本提言を踏まえた実効性のある改革を推進するための方策の企画立案及びその実施に早急に取り組むとともに、各法科大学院及び関係機関において、抜本的な組織見直しや教育の質の充実に向けた取組を加速させることを強く求めるものである。加えて、我が国の司法を支える有為な人材を安定的かつ継続的に養成していくためには、法科大学院の改革と同時に、法科大学院、司法試験、司法修習の有機的な連携が真に図られるよう、法曹養成に関わる全ての関係者が協力してプロセスとしての法曹養成制度の改革に取り組み、社会からの揺るぎない信頼を確立することも強く期待するところである。

1.これまでの改革の成果と現状

  • 法科大学院におけるプロセス教育を経た者が、法曹をはじめとして民間企業や公務部門など社会の様々な分野で活躍しはじめている一方、司法試験の合格状況や入学者選抜状況などに深刻な課題を抱える法科大学院も少なからず存在している。
  • 上記課題の解決に向けた取組の結果、入学定員削減や学生募集停止といった抜本的な組織見直しが進むなど一定の改善が見られる。しかし、志願者の減少傾向が続くなど、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度はなお危機的な状況にある。
  • 法科大学院においては、理論と実務の架橋を通じて、真に法曹として必要な能力を身に付けるための体系的な教育課程が編成されるとともに、多様なバックグラウンドを持つ人材に対し、少人数かつ双方向・多方向の授業や実践的な学修機会が提供されてきた。
  • この結果、法科大学院を修了し、法曹をはじめとして民間企業や公務部門など社会の様々な分野で活躍する者は増加しており、例えば、弁護士の全登録者数のうち約三分の一近くを法科大学院修了生が占めるまでになってきたところである。
  • また、法科大学院修了生からは法科大学院で修得した法的思考力等が実務の様々な場面で役立っているとの声があるとともに、弁護士事務所・企業・地方公共団体等の受入れ側からも法科大学院修了生が調査能力やコミュニケーション能力を含め、法的知識を活用する能力を身に付けているといった報告がなされるなど、教育の質の向上にも一定の成果があると評価を受けているところでもある。
  • しかしながら、その一方で、司法試験の合格状況や入学者選抜状況などに深刻な課題を抱えた法科大学院も少なからず存在し、弁護士の就職難や司法試験合格者数が当初の目標数に達していないことなどと相まって法科大学院離れ、法曹離れといった事態が生じていることもまた事実である。
  • このような状況に対し、これまでも文部科学省及び各法科大学院では、抜本的な組織見直しや教育の質向上に取り組み、特に組織見直しでは、平成27年度の入学定員はピーク時(平成17~19年度)の5,825人からおよそ半減の3,175人となる見込みであり、また、学校数についてもピーク時に74校であったもののうち、その約3割に当たる20校の法科大学院が学生募集停止を公表するなど、改革の取組は着実に進んでいると言うことができる。しかしながら、法科大学院入学者選抜における適性試験の受験数は近年減少の一途を辿っており、直近試験の受験者は4,000人近くまで減少するなど法曹離れに歯止めが掛かったと言える状況にはなく、なお、我が国の法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成が危機的な状況にあると言わざるを得ない。

2.今後目指すべき法科大学院の姿

  • 我が国におけるあるべき法曹像やその規模についての共通理解を確立した上で、法科大学院の目指すべき姿を早急に実現すべく改革に取り組むべきである。
  • 高い教育力を持つ法科大学院が全国的に配置され、多彩な教育を展開することで、学生が司法試験合格のみならず、将来の実務を視野に入れた教育を享受できる環境の整備を通じて、法廷活動はもとより民間企業や公務部門等のニーズにも応え、グローバルに活躍できる法曹や、地域の司法サービスやADRを担う法曹など、法律実務に関わる高度専門職業人が多数輩出されることが望まれる。
  • また、法学未修者が法律を着実に学ぶことのできる取組の充実や、学部教育の充実と併せて優秀な学生がより短期間で法曹になることのできる途の確保、経済的事情等を有する学生に対する経済的支援の充実が図られることが望まれる。
  • 我が国の法曹養成制度が直面している危機的な状況を打開し、質・量ともに豊かな法曹を安定的・継続的に社会に送り出していくためには、我が国におけるあるべき法曹像やその規模についての共通理解を確立し、それに基づいて、法科大学院の目指すべき姿を早急に明らかにした上で、その実現に向けて全力を挙げて改革に取り組むべきである。
  • すなわち、当初理想とされたように、修了者の7~8割が司法試験に合格できるような高い教育力を持つ法科大学院が全国的に一定のバランスをもって配置され、それぞれの強みを活かした多彩な教育が展開されることで、学生が単なる司法試験合格のみならず、将来の実務も視野に入れた特色ある教育を安心して受けられる環境を整備する必要がある。その結果、法廷活動を中心とした我が国の司法を支える法曹の養成はもとより、国際条約や国内法、契約などルールを形成し、それに基づく紛争解決や交渉、調整の能力が求められる民間企業や公務部門における様々なニーズに応え、グローバルにも活躍できる法曹や、福祉・教育分野をはじめとする地域における司法サービスや裁判外紛争手続(ADR)を担う法曹の養成など、社会の様々な分野で活躍できる法律実務に関わる高度専門職業人が多数輩出されることが望まれる。
  • また、多様なバックグラウンドを持った法学未修者が法律を着実に学ぶことのできる取組の充実を図るとともに、プロセス養成の趣旨を損なわない範囲で学部段階における教養教育・法学教育の充実と併せて優秀な学生がより短期間で法曹になることのできる途も確保されることが期待される。さらに、関係者が、それぞれの立場で協力しながら、経済的事情を有する学生や居住地近辺に法科大学院がない学生も法科大学院で学ぶことができるような経済的支援の充実等が図られることが望まれる。
  • 以上のような姿を早期に実現することこそが、法曹志願者を増やし、法科大学院に受け入れて有為な人材として法曹界に送り出す唯一の途であり、そのため、以下に提案する方策を着実に実行・実現する必要がある。

3.今後取り組むべき改善・充実方策

1.組織見直しの推進について

  • これからの組織見直しについては、その目的を法科大学院全体の体質強化に改めた上で更に推進していくべきである。
  • プロセスとしての法曹養成の安定化を図るため、我が国の将来的な法曹需要に基づき、累積合格率7~8割を目指せるような定員規模を検討し、明示することを目指すべきである。それまで当面の間は、入学定員と実入学者数の乖離を縮小するため、公的支援の見直しの仕組みなどを通じて、全体の入学定員を3,000人から更に削減する方向で取り組むべきである。
  • 上記目標に基づき、法科大学院に対し、これまでの実績に応じて抜本的な組織見直しを更に促進するとともに、その際、地方在住者や社会人が法曹を目指すことのできる環境の確保にも配慮すべきである。
  • これからの法科大学院の組織見直しについては、その目的を、課題が深刻な法科大学院の組織見直しの促進から、法科大学院全体の体質強化に改めた上で、更に推進していくべきである。
  • 具体的には、適正な定員規模を目指すことにより、将来のキャリア形成への見通しを立ちやすくし、志願者の減少と入学定員・実入学者の減少を繰り返す負のスパイラルから脱却して、多様なバックグラウンドを有する多くの者が、法科大学院を安心して志願できるよう、以下の事項に取り組む必要がある。
    • 各法科大学院の取組が着実に進んだ結果、平成26年6月末時点において、平成27年4月の入学定員総数は3,175人程度になる見込みとなっており、「基本的な方向性」において示した「法科大学院全体の入学定員について当面3,000 人程度を目途に見直しを促進する」という目標はほぼ達成する見込みが立ってきたところである。
    • しかしながら、プロセスとしての法曹養成の安定化を図るためには、我が国の将来的な法曹需要に基づく法科大学院全体の定員規模について明示する必要がある。具体的には、現在政府で調査が進められている今後の法曹人口の結果を踏まえ、可及的速やかに提示することを目指すべきである。この定員規模については、法科大学院全体として、例えば累積合格率7~8割を目指すことが可能となる規模とすることが望ましいと考える。
    • それまで当面の間は、入学定員と実入学者数の乖離が解消できていない状況を踏まえ、現在、文部科学省が実施している「公的支援の見直し」の仕組みを通じて各法科大学院の自主的・自律的な組織見直しを引き続き促進し、3,000人から更に削減する方向で当面取り組むべきである。
    • このような適正な定員規模を目指すべく、法科大学院に対し、これまでの司法試験結果や教育成果等に応じて、課題解決に向けた実質的な連合をはじめ抜本的な組織見直しをより強力に推進するよう求めるべきである。なお、その際には、地方在住者や社会人の法科大学院へのアクセスに支障を来たすことのないよう、経済的支援の充実やICTの活用等の方策についても検討すべきである。
    • また、これらの取組を進めるに当たっては、必要に応じ、「公的支援の見直し」の仕組みを更に見直すことも検討すべきである。

2.教育の質の向上について

  • 法科大学院教育における「プロセス教育の確立」のため、以下の方策を実行することを通じて、法曹として不可欠な基礎・基本に関する教育を徹底するとともに、幅広い教養と豊かな人間性の涵養に必要な教育の質向上を図るべきである。
    • 飛び入学等を活用した時間的負担の軽減、法曹養成に特化した経済的支援、ICTを活用した教育連携・教材開発及び広報活動の展開などを通じた優れた資質を有する志願者の確保
    • 法学未修者に追加が認められている法律基本科目の配当年次の拡大やその単位数の更なる増加を可能とするなど法学未修者教育の充実や、法学既修者も対象とした共通到達度確認試験(仮称)の導入、指導における司法試験問題等の活用や若手実務家の協力などを通じた法曹として不可欠な基礎・基本の修得の徹底
    • 法律実務に関する基礎教育の充実、国際化への対応など特色ある教育活動の展開、法科大学院の教育資源を活用した継続教育の実施などのプロセス教育を活かした教育内容の充実
    • 教育環境の充実につながる設置基準等の見直し、客観的指標を活用した一層厳格な認証評価の実施、FD活動の充実や法学分野における教員のキャリアパスの在り方の検討などを通じたプロセス教育の質の確保
  • 我が国の将来を支える法曹として不可欠な基礎・基本に関する教育を徹底するとともに、幅広い教養と豊かな人間性の涵養に必要な教育の質向上を図ることで、法科大学院教育における「プロセス教育の確立」を目指していくべきである。

(1)優れた資質を有する志願者の確保について

  • 優れた資質を有する志願者が、法科大学院教育を通じて法曹として必要な学識や応用能力等を着実に修得することができるよう、法科大学院では、授業の充実や自学自習のための指導に努めるなど、一人一人の学生に応じたきめ細やかな教育指導を行うことが必要である。
  • 特に優れた資質を有すると認められる学部学生については、その習熟度に応じて、学部3年修了後、法学未修者コースだけでなく、2年の法学既修者コースに飛び入学させ、法曹として必要な学識や応用能力等を効果的かつ効率的に身に付けさせることを通じ、法曹になるための時間的負担の軽減にも配慮した取組を促進すべきである。その際、学部教育と法科大学院教育の円滑な接続に配慮した教育課程上の連携に取り組むことで、高等教育における一貫した法曹養成教育の確立に向けた検討も重要と考える。
  • なお、飛び入学の活用については、学部を卒業するために必要な単位を全て修得しているとは限らないことから、入学者の質を担保するために、各法科大学院は、GPAの活用等により学部時代に優秀な成績を修めていることを出願要件とするなど、法学既修者の認定に際して適切な方法を用いなければならない。また、法科大学院において飛び入学が適切に運用されているかどうかに関し、認証評価を通じて的確に判定するような取組を進めることも必要と考える。
  • また、優れた資質を有する志願者が、経済的理由により法科大学院への進学を諦めることのないよう、無利子奨学金の充実や、返還月額が修了後の所得に連動するより柔軟な「所得連動返還型奨学金制度」の導入に向けた取組など、独立行政法人日本学生支援機構が実施する大学等奨学金事業の充実等を図るとともに、必要に応じて、他の専門職業人養成における取組も参考にしつつ、関係機関との連携による法曹養成に特化した経済的支援の充実方策についても検討すべきである。
  • 加えて、働きながら法曹を目指す社会人や地方在住者の実情を踏まえ、ICTを活用した教育連携・教材開発についても検討を進めていくべきである。
  • さらに、学生が、法科大学院修了後に、その希望に応じて、法曹のみならず民間企業や公務部門を含めた幅広い分野で高い法的素養を備えた高度専門職業人として活躍できるよう、各法科大学院は就職支援を更に充実させていく必要がある。
  • 以上のように学生のニーズにきめ細やかに対応する取組と併せて、国や各法科大学院は、法科大学院教育を通じて得られる成果や学修することの意義、修了生の活躍状況等を志願者に対して分かりやすく丁寧に伝える広報活動に努める必要がある。
  • なお、多様なバックグラウンドを有する者を法科大学院に受け入れて養成し、質・量ともに充実した人材を法曹に送り出すという理念を達成する観点から、法学未修者の受入れは重要であるが、現在は、本来期待されていた法学未修者の志願者が相当減少している実態があることを踏まえ、入学者選抜の質保証を前提に、他学部出身者や社会人等の志願者増加に適切に取り組む必要がある。

(2)法曹として不可欠な基礎・基本の修得の徹底について

  • 法学未修者に対して、法曹として共通に必要となる法律基本科目を確実に修得させるため、国においては、法学未修者に追加が認められている配当年次の拡大やその単位数の更なる増加を可能とするなどの法令の運用の見直し及び明確化を行っており、各法科大学院は、これを活用するなどして、法学未修者にとって最適と考えられる教育カリキュラムを編成するなど、法学未修者教育の充実を図ることが必要である。
  • また、法曹に必要となる法的な知識や思考力等については、全ての法科大学院生が修得することを求められるものであることから、法学未修者はもとより法学既修者も対象に、法科大学院が共通して客観的かつ厳格に進級判定を行う仕組みとして、学生に対する学修・進路指導を充実させるとともに、学生が全国規模の比較の中で自らの学修到達度を把握し、その後の学修の進め方等の判断材料に活用できる共通到達度確認試験(仮称)の導入を推進することが必要である。
  • このため、本年度中の試行の実施に向け、国の支援とともに各法科大学院もこれに積極的に協力していくことが必要である。
  • さらに、法曹として不可欠な能力を身に付けさせるために、司法試験問題等を活用した指導を行うことは、決して不適切とされているものではなく、単なる受験技術指導に陥らないよう留意しつつ、指導の充実を図る必要がある。その際、若手実務家等の協力を得ることも有効であると考えられる。

(3)プロセス教育を生かした教育内容の充実について

  • 法曹として不可欠な基礎・基本の確実な修得を前提に、理論と実務の架橋を図るため、各法科大学院の実情に応じたエクスターンシップやリーガルクリニック等の積極的な実施、法律実務に関する基礎教育を担う教員を対象としたFD活動の充実など、法曹実務家を目指す者に必要な法律実務に関する基礎教育の充実を図る必要がある。
  • 各法科大学院において、社会の様々な分野におけるニーズに対応できる特色ある教育活動を展開するため、留学促進・受入れなど国際化への対応、教育力の高い教員の派遣・学生受入れなど法科大学院間の連携などを行う必要がある。
  • 法科大学院生を対象とした上記取組に加え、法科大学院の教育資源を活用し、法曹有資格者を対象としたビジネスローや外国法等ニーズの高い研修プログラムや講座の開設・提供と、それらに係る情報の積極的発信など継続教育の充実や職域拡大への貢献を行う必要がある。
  • これらの取組を進めるに当たっては、必要に応じ、優れた先導的な取組を行う法科大学院に対して支援する必要がある。

(4)プロセス教育の質の確保について

  • 法科大学院の認証評価については、教育研究の質を確保し、その水準の向上を図るため、重要な役割を担うものであるが、判定のばらつきの是正や厳格化など一層の改善が求められており、客観的指標も勘案した一層厳格な認証評価の実施と評価結果の活用方策を検討すべきである。
  • また、法科大学院教育の課題の現状や認証評価結果を精査し、必要に応じて教育環境の充実につながる設置基準等の内容についても見直しを検討することが必要である。
  • 質の高い教育の提供のためには、教員の資質が重要な条件となることから、必要に応じて基準の見直しや、FD活動の充実など法科大学院教育を担う教員の質・量の充実方策に取り組む必要がある。
  • 特に、法科大学院設立後、我が国全体の法学教育・研究を担う人材の確保の在り方が課題となっており、法学分野における教員のキャリアパスの在り方などについて、早急に検討する必要がある。

4.法科大学院教育と司法試験・司法修習との有機的な連携の在り方

  • 法科大学院改革を実効性あるものとするため、プロセス養成の基本理念に立ち返った改革も同時に進めることが不可欠。
  • 特に予備試験については、運用実態が制度創設時に想定されていないものとなり、法科大学院教育への影響が顕著であることから、制度改正を含めた抜本的な見直しを速やかに進めていくことが望まれる。
  • また、法科大学院の教育内容と司法試験や司法修習との有機的な連携が更に図られていくことも望まれる。
  • 司法制度改革の理念に基づき、法科大学院がプロセスとしての法曹養成の中核的な教育機関として機能するためには、まずは何よりも、法科大学院において自らが提供する日々の教育の更なる向上に努めるとともに、組織の見直しを含めた抜本的な取組を進めることが急務である。
  • また、個々の法科大学院の取組のみならず、現在検討が進められている共通到達度確認試験(仮称)の導入など、法科大学院全体として大胆な改革にもいとわずに取り組むことも不可欠である。
  • 以上のことを前提とした上で、これら法科大学院改革に実効性を持たせるためにも、司法制度改革の当初の理念に立ち返り、司法試験予備試験(以下「予備試験」という)の抜本的な制度改革とともに、法科大学院教育と司法試験や司法修習との更なる連携にも同時に取り組むことが不可欠であることから、政府全体における検討が促進されることを強く期待する。

(1)司法試験予備試験との関係

  • 予備試験は、昨年6月、政府の法曹養成制度検討会議取りまとめでも確認されたように、司法制度改革審議会意見書において、「経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも法曹資格取得のための適切な途を確保すべきとされたことから導入された制度であり、予備試験は、法科大学院修了者と同等の能力を有するかどうかを判定することを目的として行われ、その合格者には、司法試験の受験資格が与えられる」仕組みとして設けられたものである。
  • この予備試験は、平成23年から実際に試験が実施されており、現在までに、3回の予備試験合格者を出すとともに、その合格者が平成24年の司法試験から受験し、現在までのところ3回の司法試験合格者を出しているところである。
  • このように実際に運用がはじまった予備試験に関しては、本特別委員会においても、本年3月にとりまとめられた基本的方向性の中で、
    • 「法科大学院修了生と同等の学識・能力を有するかどうかを判定するものとして適切に機能しているかを注視」するとともに、
    • 「試験という「点」のみによる選抜ではなく「プロセス」により質量ともに豊かな法曹を養成するという司法制度改革の基本的な理念を踏まえつつ、司法試験予備試験が法曹養成プロセスの中核的な教育機関である法科大学院における教育に与える影響や、更にはそのプロセス全体に及ぼす影響を、例えば、法科大学院在学生が予備試験を目指すことによる法科大学院における授業欠席や、休学・退学の動向、学生の学修・履修の仕方等への影響のみならず、学部在学生をはじめ法科大学院志願者への影響なども含め速やかに把握・分析し、政府全体の取組に資する」
    こととされていることを踏まえ、次に掲げるとおり、法科大学院教育の観点から、予備試験の在り方について検討を深めることが必要である。

1.プロセスとしての法曹養成における予備試験の位置付けについて

  • 法科大学院は、プロセスとしての法曹養成における中核的な教育機関である一方、予備試験は、経済的事情や実務経験を有するなどの理由により法科大学院を経由しない者に限定した法曹資格取得のための途として構想されたものである。
  • 予備試験制度の本来の趣旨や、法科大学院が大学院レベルの正規の教育課程として位置付けられていることを踏まえ、予備試験の受験対象者の範囲について制度的な対応を速やかに検討していくことが望ましいと考えられる。
  • 予備試験の合格者数の増加は、これまで実績を挙げている法科大学院を中心に影響を与えており、早急な対応が求められる状況である。現在、法科大学院教育の質の向上に向けた改革が進捗しつつあり、今後、更にこれを加速させるためにも、制度的な見直しの検討と併せて、合格者の質という観点から、当面の試験の運用による対応についても検討していくことが望ましいと考えられる。

2.法科大学院教育と予備試験の内容等について

  • 法科大学院における教育は、高度の専門的な法的知識、幅広い教養、国際的な素養、豊かな人間性及び職業倫理等を備えた法曹を養成するため、そもそも司法試験で課されている科目以外に、模擬裁判、リーガルクリニックなどの法律実務基礎科目や、政治や経済といった隣接科目、外国法、先端的な法律科目まで含めた幅広い学修を求めている。また、法科大学院では、学部教育を前提に、適性試験を受けて入学した法曹を目指す者に対し、原則3年間の教育課程の中でGPA等に基づく厳格な進級判定や修了認定が行われている。一方、予備試験では、基本的な法律科目を中心とした科目に関する1回だけの試験によって判定が行われており、両者が「同等」とされていることについて速やかに検討していくことが望ましいと考えられる。
  • 具体的には、予備試験の試験科目については法科大学院教育と密接に関連付けるとともに、試験になじまない科目は別途法科大学院等で学修させる仕組みの可能性も含めて検討していくことが望ましいと考えられる。
  • また、制度的な対応に関する検討とともに、法科大学院教育との同等性を確保する観点から、予備試験の出題内容を工夫したり、時間をかけて試験を実施したりするなどの運用上の改善策も検討していくことが望ましいと考えられる。

3.法科大学院教育に与える影響について

  • 予備試験の受験者及び合格者の中に、学部在学生や法科大学院在学生といった本来プロセス養成を経て法曹を目指すことが期待されている層が大きな割合を占めていることについて、学部教育や法科大学院教育に与える影響や、予備試験の受験資格も含めて、その在り方を速やかに検討していくことが望ましいと考えられる。

(2)司法試験及び司法修習との関係

  • 法律実務家として活躍する際に法科大学院での学修成果をより一層活用できるよう、司法試験の在り方については法科大学院の教育内容を踏まえて改善を図っていくことが必要である。
  • したがって、法科大学院生が在学期間中に司法試験受験対策に傾注することなく、その課程の修得に専念できるよう、3.2.(2)に記載した共通到達度確認試験(仮称)の結果に応じて司法試験の短答式試験を免除するなど、司法試験科目や試験内容の在り方を検討することが望ましいと考えられる。
  • また、実務教育については、従来、法科大学院と司法修習との役割分担の下で実施されてきていることから、引き続き、プロセス養成の理念を踏まえ、両者の連携をより一層図っていくことが望ましいと考えられる。

お問合せ先

高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)

-- 登録:平成26年10月 --