資料5 今後検討すべき法科大学院教育の改善・充実に向けた論点整理(案)

今後検討すべき法科大学院教育の改善・充実に向けた論点整理(案)

本特別委員会として、平成25年7月に行われた政府の法曹養成制度関係閣僚会議決定を踏まえ、今後、法科大学院教育の改善・充実に向けた検討を実施するに当たり、以下のような基本的な方向性を前提に、検討すべき事項を整理し、議論していくこととする。

  •  「点による選抜」から「プロセスによる養成」へという司法制度改革の基本理念の下、法曹養成の中核的な教育機関として法科大学院が位置付けられていることを踏まえ、法科大学院教育の改善・充実方策をまとめるものであること。
  • 今後、法曹有資格者の活動領域や今後の法曹人口の在り方とともに、法曹養成制度の在り方として「法曹養成課程における経済的支援」「法科大学院」「司法試験」「司法修習」について政府全体の議論を前提にすること。
  • このうち、法科大学院については、法学/法学以外の様々な学部教育を受けた者を対象に、専門的な法知識の習得をはじめ、創造的な思考力、事実に即して具体的な法的問題を解決していくため必要な法的分析能力等の育成、法曹としての責任感や倫理観の涵養等に向けて、プロセスとしての法曹養成の中核的な教育機関として大学院レベルの教育をより充実した形で提供できるよう、その改善・充実を図ること。
  • 具体的には、今後目指すべき法科大学院の姿を念頭に置きながら、入学定員・実入学者数の動向や司法試験の合格状況などの現状分析を行った上で、規模の適正化、教育の質の向上、優れた先導的な取組を行う法科大学院の支援に加え、養成に係る時間的コストの軽減、実務基礎教育の充実、継続教育の充実、職域拡大への関与など、総合的な検討を行うこと。
  • なお、「組織見直し促進に関する検討ワーキング・グループ」及び「共通到達度確認試験等に関する検討ワーキング・グループ」の調査検討経過報告のうち、公的支援の見直しの更なる強化策の具体化や共通到達度確認試験(仮称)の試行に向けた準備などについては、文部科学省及び大学において速やかに取り組むこと。

[検討事項1] 今後目指すべき法科大学院の姿について 

(1)現行制度を基本とした法科大学院を中核的機関とする安定的な法曹養成制度の確立を目指す

  • 法廷活動のみならず、企業、公務、地域の様々な場において多様な貢献ができる存在としての法曹を養成することを前提に、法科大学院は、法律基本科目や法律実務基礎科目のみならず、基礎法学・隣接科目や展開・先端科目を含む多様な教育課程を編成し、これまで一定の成果を挙げている。
  • また、法曹養成の中核的機関が大学院に置かれていることについては、大学院入学前に学部教育あるいは社会での実務経験において人間的な成熟や幅広い教養、一定の専門基礎教育を受けていることを前提としている。
  • このように法科大学院は、幅広い領域で活躍できる法曹として必要な能力の育成を目指しているため、仮に司法試験に合格できなかった場合でも、法務博士(専門職)を取得し、法律実務に関する一定の素養を持った人材として多様な活躍の場がある。
  • 更に法科大学院の役割やこれまでの成果を積極的に発信し、男女を問わずより多くの有為な人材が法曹を志望し、プロセス養成の途に進むことを目指すべきである。
  • 一方、法科大学院の目指す本来の役割を果たすことができない課題が深刻な法科大学院については、その改革の基本的な方針として、当面は公的支援の見直しの強化策をはじめとした「運用上の取組の徹底」を通じ、法科大学院の組織見直しに向けて自主的・自律的な経営判断を促すとともに、教育の質の向上に迅速に取り組むこととする。

(2)今後目指すべき「規模」の在り方を提示

  • 法科大学院全体でこれまで司法試験合格者を相当数輩出してきた事実を踏まえ、組織見直しWGより経過報告された通り、法科大学院全体の入学定員について当面3,000人程度を目途に見直しを促進することとするが、現在、政府全体で議論されている法曹人口の在り方の検討結果が出た場合はそれを踏まえ見直す。
  • 改善状況調査WGのこれまでの調査結果報告で指摘されているように、入学者数が著しく少ない法科大学院の授業や学修環境に対する懸念が示されているため、著しく学生が少ない中で教育が行われている状況の改善を図る。

(3)今後目指すべき「教育方法・内容」の在り方を提示

  • プロセス養成の中核的な教育機関である法科大学院の教育の質保証を行う観点から、法科大学院の教育課程においてこれまで以上に充実した教育を行い、司法試験における合格状況の改善はもとより、修了生が社会の様々な分野において活躍できるよう、学生が安心して法科大学院で学修に取り組めるような環境作りに向けた取組を推進する。

[検討事項2] 今後検討すべき改善・充実方策について 

(1)優れた先導的取組の推進を通じた法科大学院教育の充実方策の提示

  • 当初の司法制度改革で目指されていた法学未修者教育の充実、国際化対応、職域拡大など、改めて推進すべき優れた先導的な取組を促進するための方策を推進する。


(2)法科大学院の規模の適正化に関する改善方策の提示

  • 公的支援の見直しの強化策などを活用し、課題が深刻な法科大学院に対する連携・連合、改組転換を促進するとともに、「適格認定の厳格化」など認証評価結果に応じた組織見直しの促進を図るための方策を推進する。
  • 今後提示される予定である法曹人口を踏まえ、今後の法科大学院の総定員の在り方や法的措置を含めた組織見直しの更なる促進方策の在り方を整理する。

(3)法科大学院教育の質の向上に関する改善方策の提示

  • 共通到達度確認試験(仮称)の基本設計・試行、共通的な到達目標モデルを活用した教育課程編成の徹底等を図る。
  • 法学未修者に対する教育については、社会人や法学以外の学部出身者など多様なバックグラウンドを持った人材を法曹に育てるという本来の趣旨にのっとり、法律基本科目をより重点的に学べる仕組みの具体化をはじめ、より良い教育課程の在り方について検討する。
  • また、法学未修者に対する教育課程において、学部段階で法学を学んでいるが、法科大学院への進学を想定した場合の学修が不十分である者がいることを踏まえ、学部段階における法学教育の強化策を検討する。
  • 実務家教員のFD活動など法律実務基礎教育の充実、研究者教員と実務家教員の割合の在り方など法科大学院における教員体制の充実を図る。
  • 学生に対する教育上の効果を踏まえ、各法科大学院の適正な規模の在り方について検討する。
  • 学生の希望や適性を踏まえ、法曹以外の法律関係専門職や企業法務、公務部門など進路変更への対応とともに、時間的コスト軽減も視野に入れた法学部と連携した教育も検討する。

(4)法科大学院認証評価に関する改善方策の提示

  • 法科大学院の適格認定をはじめとする認証評価が形式的な評価に陥らずに、法科大学院として求められる成果を挙げられていない場合にはそれらの課題を厳格に評価し、法科大学院の教育改善に向けた取組をより適切に評価できるようにするため、WGの議論を踏まえつつ、評価期間、基準、評価方法等の見直しを行う。

(5)法科大学院の教育力を活用した法曹養成の支援方策の提示

  • 各大学における積極的なエクスターンシップの展開など教育内容の充実とともに、展開・先端科目群の弁護士への積極的な提供や弁護士に対する研修機能の充実など法曹有資格者に対する継続教育の提供機能の充実を図る。

 

[検討事項3] 法曹養成制度の改革全体との関係について

  • 本特別委員会として、上記検討事項で提示した法科大学院の教育の改善・充実に向けた方策について今後更に検討を深めるとともに、政府全体で行われている法曹養成制度の改革全体との関係において、プロセスとしての法曹養成が真に機能するよう、法科大学院の立場から司法試験・司法修習との有機的な連携の在り方について引き続き検討する。
  • 特に、司法試験予備試験については、プロセスによる法曹養成を推進するという司法制度改革の基本的な理念を踏まえつつ、プロセスとしての法曹養成の中核的な教育機関である法科大学院の教育に与える影響を、顕在化しているものだけでなく潜在的にあるものも含めて、速やかに把握・分析する。

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高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

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