資料2 第57、58回法科大学院特別委員会における主な委員意見(まとめ)

第57、58回法科大学院特別委員会における主な委員意見(まとめ)

1.組織見直し促進方策について

(1)組織見直しの目標の扱い

  •  合格率「7,8割」や入学定員「3,000人」といった目標数値を示すことに関して、これまでも目標が達成できず、失望感が生まれるなどの状況を生んできた経緯がある。今後、司法試験の受験資格が5年5回に改められた場合には、さらに合格率の目標が達成しにくくなることも想定されるので、目標数値の扱いについては注意が必要ではないか。

(2)公的支援の見直しの更なる強化

  • 私立大学では発足時に特別補助があるという前提で安い授業料を設定しているため、公的支援の加算の上限を引き上げないと経営的に成り立たなくなる危険性があることから、理想的な教育をしているところにはより励みになるような形にしていくべきではないか。
  • 先導的な取組を通じた予算獲得に当たり、恐らく教育プログラムの作成やカリキュラムの変更など外に見えやすい取組が出てくるだろうが、一番大事なのは、中身の教育をどうよくできるかということであるため、それのチェックできるように審査等で工夫していくべきではないか。

(3)認証評価の見直し

  • 認証評価について、設置認可や受験資格と結び付けることを今の仕組みの設計当時に考えたが、ギブアップした経緯がある。今回の改善策を講じる場合、今の仕組みでは難しく、別の認証評価の仕組みを作らなければならないかもしれないが、それもまた至難の業。
  • 教員資格については、法科大学院の質そのものに関わるので、三つの評価機関で、ある程度文部科学省と調整をしながら、運用をどうするかを調整する必要があるだろう。
  • 勤務している大学、法科大学院において、修了生の若手弁護士や助教の任期満了者が未修者の学修をサポートする科目を設け、正課の授業として単位化したが、認証評価で教員不適格との指摘を受け、来年度以降は開設しないことを検討している。サポート科目の担当者にまで一般の教員の基準を当てはめるのはどうか。認証評価機関が各法科大学院の創意工夫の足を引っ張らないような体制作りが必要。
  • 認証評価では、国際プログラム展開や、夜間開講・地域配置など、積極的に改善しようとする法科大学院に水を浴びせないようにしてほしい。
  • 修了して実務法曹となり数年の実務経験を有する者を必須科目のサポート要員として使い、それを訓練として実務法曹の教員としての教育力を高めていくことを期待しているが、年限不足などその他の視点から教員不適格の指摘を受けた。これでよいのか、真剣に考えていくことが必要。
  • 認証評価と公的支援の見直しについて、それぞれ判断基準は異なるが、第3類型の法科大学院にはきちんと不適格が出てほしい

2.共通到達度確認試験(仮称)の基本設計など教育の質の向上方策について

(1)共通到達度確認試験(仮称)の基本設計

  • 確認試験を導入するにあたっては、法科大学院の教育内容等について、具体的に何が教えられているかということだけではなく、それが身に付けられるように教えられているかということも確認すべき。
  • 短答式的な勉強よりも、本来、法科大学院で身に付けるべき思考力を身に付ける方が重要ではないか。
  • 2年次の確認試験で一定の成績を得ることで短答式免除とつながれば、未修者にとっては膨大な知識を求められることなく能力評価がされることになり望ましいのではないか。
  • 法学既修者に対して確認試験を受けさせる必要性については要検討。質の保証の意味では、3年次終了直前に実施して短答式試験の免除と結び付けてもいいのではないか。

(2)法学未修者が基本的な法律科目を重点的に学ぶことができる仕組み

  • 法学未修者教育の充実を行うためには、認証評価機関との連動が必要。
  • 法律基本科目の授業時間数を増やすことは、学生の予習・復習の時間も増えることになるので配慮が必要。

(3)学生の適性等に応じ法曹以外への進路を目指す者に対する取組の充実

  • 法学未修者の多くが法学部出身者になりつつある中、社会人や他学部出身者を中心に受け入れるコースを考えるならば、法科大学院に安心して入ってこられるよう、別の方向への転換も可能とするなど、今の法学既修者や法学未修者に対する教育とはある程度分離した社会人や他学部出身者に特化した教育システムが必要ではないか。

3.その他改善方策について

(1)時間的コストの短縮

  • 飛び入学や早期卒業については、学部でどのような単位を取ったかも要件の一つとして考える必要がある。教養科目について必要な単位だけをそろえ、あとは法律の勉強ばかりをするというのは、もともと避けられるべき状況として考えられていた。
  • これからの法曹に幅広い教養が必要なのは言うまでもないが、養成期間が短ければだめということはないのではないか。学部3年の段階で必要単位を取り終えていることも多く、語学等のインテンシブコースを取っている学生はかなり幅広い教養を身に付けていると思われる。
  • 飛び入学の場合、学生は学士号を得ていないため、仮にそのような者が法科大学院を中退した場合を考えて、例えば、在籍期間によって学士号等を授与することはできないかといったことを含めて検討していく必要があるのではないか。就職に当たり、法科大学院中退よりも学部卒の方がまだ企業にとって印象がよいだろう。

(2)法律実務基礎教育の充実

  • 司法研修所に入る者の実務基礎の能力にばらつきが多いことを前提に、一番程度が低い者の水準に合わせて導入教育が行われると、実務基礎については司法研修所で面倒を見てもらえることから、司法試験に合格するため法律基本科目の勉強に専念するようになり、法科大学院が予備試験に対して持つ大きなメリットの一つを失う上、法科大学院教育を法曹養成制度の中核とした制度の根幹が揺らぐことを懸念。
  • 分野別実務修習に円滑に入るため書式が書けるよう導入教育を行うべきという主張もあるが、法科大学院と実務修習の分担を完全に組み替える危険性がある上、法科大学院でマニュアル的な勉強だけをすればよいといった方向になることを懸念。法科大学院側からも考えを発信しなければならない問題。
  • 実務基礎教育の充実に当たり、現在、臨床科目を充実させる方向で各法科大学院が動いていると思うが、実務修習との関係や連続性について更に配慮し、実務と対話しながら、どういう部分を充実させていくかを考えるべき。
  • 大学教員の不祥事が目立つようになってきているが、これは、大学での教育が不十分で、成績や研究パフォーマンスといった限られた部分の評価により採用しているためではないか。法曹についても、専門知識に加え、法曹として備えているべき教養を育て、採用の在り方につなげていかなければならない。

(3)法科大学院修了生の活動領域の拡大

  • 法曹資格を持っていない修了生の位置付けを定義し直す必要があるのではないか。積極的な評価ができるよう枠組を議論していく必要があるのではないか。また、法曹有資格者の職域拡大と修了生の職域拡大との間にはずれがあり、法曹という概念の捉え方も議論していく必要があるのではないか。
  • 企業は利益追求のため採用面においてもコスト優先ということで、大量効率採用の域に入る法科大学院生は、今のスケジュール感、卒業時期、司法試験時期、合格発表時期を考えるとなじまない。しかも、無理に内定を出しても、司法試験合格により辞退され得るので、企業としては非常に内定を出しにくい。
  • 企業によれば、司法試験に失敗した学生は、なかなか採用できないとのこと。加えて、学生の立場では、在学中から組織的な就職支援の取組をしても、ほとんど参加しない。

(4)継続教育の充実

  • 法曹リカレントの継続教育に法科大学院が積極的に取り組むことには賛成。それを更に推進すると、展開・先端科目について、最初に全て法科大学院で扱い、その後、司法試験、司法研修に進むという形から、最初に一部分だけ法科大学院で扱い、司法試験後に法曹リカレントで残り部分を扱うという形も考えられる。

4.その他について

  • 今年度の予備試験出願者数について、法科大学院2年次では在籍者の約半数が受験していると考えられるが、これは想定していた事態なのか重大な懸念を感じる。
  • 時間的コストの短縮、実務基礎教育の充実及び活動領域の拡大については、予備試験の在り方と密接に関連している。これらの充実は、司法試験との関係上、法科大学院生に重い負担となるが、その種の負担を伴わない予備試験と法科大学院を司法試験合格率で競争させることは適切ではなく、法科大学院で学修させるという姿勢を示すなら、法曹養成の在り方全体の舵をその方向に切っていくべきではないか。
  • 予備試験受験者は若年層に偏っており、予備試験について、本来の意味での在り方として、法科大学院制度を潰さないような制度設計を考えるべきではないか。
  • 予備試験について、大学・法科大学院在学中の受験者・合格者が増えており、司法試験合格のショートカットになっており、予備試験の前には、法科大学院生の授業欠席が多くなるといった影響も出ているので、その在り方を考えるべきではないか。

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