資料3 法科大学院における組織見直しの更なる促進方策について(案)

平成24年7月 日
中央教育審議会大学分科会
法科大学院特別委員会

1.現状の取組について

(1)本特別委員会では、課題を抱える法科大学院に対する組織の自主的・自律的な見直しを促す観点から、平成22年3月に「法科大学院における組織見直しの促進方策について」をとりまとめ、文部科学省は、課題を抱える法科大学院に対する組織の自主的・自律的な見直しを促すために、法科大学院に対する公的支援の在り方について見直しを検討すべきとの考え方を示した。

(2)文部科学省においては、これらの考え方を踏まえ、課題を抱える法科大学院の自主的・自律的な組織見直しを促進するため、公的支援の見直しを行う旨を平成22年9月に発表した。

(3)具体的には、平成24年度予算より、競争倍率や司法試験合格率等を指標として国立大学法人運営費交付金や私立大学等経常費補助金の減額を行うこととし、平成24年度予算においては6校の法科大学院が公的支援見直しの対象となっている。
(なお、平成24年7月現在において、5校の法科大学院において学生の募集停止を実施、又は停止することを表明している。)

 

2.法科大学院特別委員会における意見の概要

【公的支援の更なる見直しの必要性】

(1)今般の司法制度改革では、司法試験において、受験技術偏重の傾向が受験者の間に顕著になってきたこと等の問題点が認められたことから、点のみによる選抜ではなく、プロセスとしての法曹養成制度を新たに整備し、その中核的機関として法科大学院を創設することとした。

(2)具体的には、司法試験の年間合格者数3,000人を目標として明示した上で、法科大学院は、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約7~8割)の者が新司法試験に合格できるよう、法曹養成に特化した実践的かつ体系的な教育を行うべきものとされた。また、法科大学院の創設目的および果たすべき役割に鑑み、司法試験の受験資格は、原則として法科大学院修了生に限定されることとなった。

(3)現在、法科大学院修了生の司法試験の合格状況については、高い合格率を維持し、当初期待された目的や役割に応えている法科大学院がある一方で、一部の深刻な課題を抱える法科大学院では、司法試験合格率が極端に低い状態が続いており、このような状況を看過し続けると、法科大学院が多様かつ優秀な人材を引き寄せる力を失い、ひいては法科大学院を中核とする法曹養成制度全体に対する信頼を揺るがしかねない状況にある。

(4)こうした法科大学院制度を取り巻く厳しい現状を踏まえれば、深刻な課題を抱える法科大学院に対して、自主的・自律的な組織見直しを更に促進することが喫緊の課題と言える。

 

【更なる見直しの観点】

(1)現行の公的支援の見直しについては、各法科大学院において組織見直しの促進や入学者選抜における競争倍率の改善が図られるなど一定の成果が見られ、例えば、入学者選抜における競争倍率が2倍未満であった法科大学院は、平成22年度は40校、平成23年度は19校、平成24年度は13校と年々減少しており、その状況は着実に改善されてきている。

(2)しかしその一方で、深刻な課題を抱える法科大学院において、入学定員と実入学者数の乖離が大きくなるという状況が見られる。具体的には、入学定員充足率が50%未満である法科大学院は、平成22年度は12校、平成23年度は21校、平成24年度は35校と年々厳しい状況となっている。

(3)このような状況を改善するため、文部科学省においては、各法科大学院への入学者選抜における競争倍率と司法試験合格率の二つの観点の指標に加え、現在の入学定員と実入学者数が大きく乖離する実態を是正する観点から、法科大学院の入学定員の充足状況を新たな指標として追加する措置を講じる必要がある。

(4)この新たな指標の導入をきっかけに、実際の入学者数が定員より大幅に下回っている法科大学院においては、その理由を分析し、質の高い教育を提供できる体制となるよう、入学定員の削減を含めた組織見直しに直ちに取り組むことが期待される。

 

【新たな指標の導入にあたっての留意点】

(1)新たな指標の導入の際には、入学定員の充足状況を指標に追加する場合に、課題を抱える法科大学院において競争倍率の確保も同時に図られるよう、指標の組み合わせ方などに工夫が必要である。 

(2)また、入学定員充足率には歩留りが関係するため、大学が予期できない大幅な変動が起こりうることに配慮する必要がある。

(3)さらに、既に平成25年度入学者選抜の学生募集を開始している法科大学院があることに鑑み、新たな指標の導入にあっては、平成25年度入学者選抜における混乱を招かないよう配慮が必要である。

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