資料5-1 「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)」中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会(平成21年4月17日)(抜粋)

2.適性試験の改善

○ 適性試験は,法科大学院入学時に,高度専門職業人として備えるべき不可欠の資質・能力を測るものでもあるため,法科大学院の入学者選抜においては,適性試験を重要な判定資料として活用することが求められる。
○ 適性試験を課している制度趣旨を無意味にするような著しく低い点数の者を入学させないよう,統一的な入学最低基準点を設定する必要がある。
○ 統一的な入学最低基準点については,総受験者の下位から15%程度の人数を目安として,適性試験実施機関が,毎年の総受験者数や得点分布状況などを考慮しながら,当該年度の具体的な基準点を設定すべきである。
○ 認証評価において,各法科大学院における入学者の適性試験の得点状況を調査し,当該年度の入学最低基準点に照らして適切に運用されているか否かを評価することが必要である。
○ 適性試験は,すべての法科大学院において有効に活用されるよう,適切な内容・方法について更なる改善が図られる必要がある。
○ 適性試験の公平かつ安定的な実施を図るため,法科大学院関係者の主体的な参画のもとに,適性試験の統一化が図られる必要がある。

〈適性試験の在り方〉

 法科大学院の入学者選抜では,適性試験,小論文,面接などの総合判定で合否が決定されているが,適性試験の成績と法科大学院の成績の間に強い相関関係は認められないため,年々,適性試験の成績の配点の比重を下げる法科大学院が増えている。
 適性試験は,法科大学院入学時に,法科大学院における学修の前提として要求される法律以外の能力を測るものであり,法律そのものの試験ではないので,必ずしも法科大学院の成績や司法試験の成績と相関関係が強くないが,そこで測定される一定程度の判断力・思考力・分析力・表現力等は高度専門職業人として備えるべき資質・能力である。このため,法科大学院の入学者選抜においては,他の成績と合わせた総合判定の考慮要素の一つとして,または,もっぱら入学最低基準点として,適性試験を重要な判定資料として活用することが求められる。

〈適性試験の統一的な入学最低基準点〉

 適性試験の得点も含む総合判定方式で合否を決定する場合であっても,適性試験を課している制度趣旨を無意味にするような著しく低い点数の者を入学させないよう,統一的な入学最低基準点を設定する必要がある
 統一的な入学最低基準点については,総受験者の下位から15%程度の人数を目安として,適性試験実施機関において,毎年の総受験者数,平均点,得点分布状況や標準偏差など諸要素を考慮しながら,当該年度の具体的な基準点が設定されるべきである。この目安については,将来的に,受験者の状況等を踏まえながら,適切な時期に再度の検証をすることが求められる。
 認証評価において,各法科大学院における入学者の適性試験の得点状況を調査し,当該年度の入学最低基準点に照らして適切に運用されているか否かを評価することが必要である。
 このような適性試験の運用の厳格化に伴って,適性試験の年複数回の実施などの工夫により,法科大学院の入学希望者に幅広い受験機会を付与することを確保するとともに,将来的には,各年の試験の難易度を調整し,試験結果の複数年の利用についても検討することが望まれる。
 各法科大学院においては,入学者の適性試験の平均点や最低点などの状況を公表し,入学希望者や社会に対して適切に情報を提供することが求められる。

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