法科大学院特別委員会(第78回) 議事録

1.日時

平成29年2月13日(月曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省(中央合同庁舎7号館東館)3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 法科大学院教育状況調査について
  2. 法科大学院法学未修者等選抜ガイドラインについて
  3. 法科大学院特別委員会における今後の審議について
  4. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)井上正仁,有信陸弘の各委員
(専門委員)磯村保,上田信太郎,大貫裕之,笠井治,樫見由美子,片山直也,鎌田薫,木村光江,佐伯恒治,杉山忠昭,染谷武宣,土屋美明,長谷部由起子,日吉由美子,松下淳一,山本和彦,山本弘の各委員

文部科学省

常盤高等教育局長,浅田大臣官房審議官(高等教育局担当),浅野専門教育課長,大月専門職大学院室長,川﨑専門職大学院室室長補佐,真保専門教育課専門官

5.議事録

【井上座長】
 所定の時刻になりましたので,第78回中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を開催させていただきます。
 本日は,法科大学院教育状況調査の結果および法学未修者等選抜ガイドラインの検討結果について御報告を頂くとともに,前回の特別委員会における法学部長等の方々へのヒアリングをも踏まえまして,法曹志願者に対する教育に関して,今後議論すべき論点について議論していただきたいと考えています。よろしくお願いいたします。
 まず,事務局の方で異動があったということですので,御報告をお願いします。

【川﨑専門職大学院室室長補佐】
 それでは御報告いたします。平成28年12月6日付けで,高等教育局担当の審議官,義本博司が大臣官房総括審議官に異動となり,後任に浅田和伸が着任しております。

【浅田大臣官房審議官】
 浅田でございます。平成17年から18年にかけて専門教育課長をやっておりました。10年ぶりぐらいだと思います。よろしくお願いいたします。

【川﨑専門職大学院室室長補佐】
 それから,平成29年1月20日付けで,専門職大学院室長の塩田剛志が初等中等教育局財務課高校修学支援室長に異動となりまして,後任に大月光康が着任しております。

【大月専門職大学院室長】
 大月と申します。よろしくお願い申し上げます。

【井上座長】
 それではよろしくお願いします。
 事務局の方から配付資料の確認をお願いします。

【川﨑専門職大学院室室長補佐】
 それでは,議事次第にございますとおり,配付資料につきましては資料1から3,参考資料といたしまして3点,御用意しております。不足などございましたら事務局までお願いいたします。以上です。

【井上座長】
 不足等がございましたら,適宜お申し出いただきたいと思います。
 議事に入りたいと思います。まず法科大学院教育状況調査につきましては,文部科学省が主体となって行う調査を,本特別委員会の下に設置したワーキング・グループが協力して実施するという形で行われておりますが,このたび調査結果がまとまったということですので,事務局の方から説明をお願いしたいと思います。

【川﨑専門職大学院室室長補佐】
 本状況調査につきましては,昨年2月の本委員会におきまして実施方法などについてお諮りした上で,先ほど座長から御発言がございましたとおり,文部科学省が行う調査に御協力いただくということで,ワーキング・グループを設置していただきまして取り組んでまいりました。本委員会の委員をはじめ法曹三者などの方々に御参画いただき,実施いたしました。大変お忙しい中,御協力いただきまして,どうもありがとうございました。
 それでは,資料1に基づきまして御説明いたします。1ページ目でございます。こちらは,調査方法について記載したものでございます。記載にございます三つの客観指標に該当する28校を対象に,書面調査を実施したというものでございます。
 (2)はヒアリング調査についてでございます。書面調査の結果を踏まえまして,記載の四つの客観指標に該当する14校に対しましてヒアリング調査を実施いたしました。ただし,書面調査の結果,更なる調査が不要と判断された大学については,対象校から除外しているところでございます。
 (3)は実地調査についてでございます。ヒアリング対象校の中から,課題に対する自己評価が不十分であるなどと判断された4校につきましては,実地調査を行い,改善に向けた助言を行ったところでございます。
 続きまして2ページをお開きいただければと思います。こちらは,調査結果の概要についてでございます。冒頭にございますとおり,多くの法科大学院におきまして課題の原因分析及び自己評価が行われており,改善に向けた取組に着手している一方で,十分でない法科大学院も一部確認されたということとしております。
 まず,一つ目の(1)「志願者確保及び入学者の質の確保について」でございます。一つ目の段落におきましては,学生数の減少により,結果として効果的な学修への影響が懸念されるという指摘がなされております。二つ目の段落でございますけれども,志願者確保のため各種取組が行われていることが確認されたこと。特に自大学の法学部との連携を行っているということが確認されているところでございます。三つ目の段落でございますけれども,競争性の確保により,入学者の質の向上に努めることが求められるとされ,最後の段落では,課題を再度検証し,志願者確保に向けた取組の一層の強化を図るとともに,入学者の質をより一層向上させるため一定の競争性を確保することが期待されるとされているところでございます。
 3ページ目でございます。こちらは,教育の質の向上についてでございます。一つ目の項目でございますが,こちらはカリキュラムの見直しについてでございます。複数の法科大学院におきまして,科目配置に課題が見受けられましたことから,他の法科大学院等を参考にしながら,効率的な学修が可能となるための見直しを行うことが期待されると指摘されております。
 二つ目でございますけれども,学修状況の把握及び共有についてでございます。こちらに記載されているような取組が行われていることが確認されたものの,情報共有が不十分となっているため,より適切な支援体制を確立することが期待されると指摘されております。
 三つ目でございますが,進級判定の厳格化についてでございます。こちら,進級判定の厳格化の取組が確認された一方で,基準を緩和した法科大学院なども確認されたため,進級判定の厳格化などによる学生及び修了生の質の向上に努めることが期待されると指摘されているものでございます。
 四つ目は,修了生等に対する支援についてでございます。修了後1年目に司法試験合格者が出ていない,又は極めて少ない法科大学院につきましては,在学中の指導を抜本的に改善するとともに,修了生に対する支援の一層の強化が期待されると指摘されております。
 それから次のページの五つ目でございますけれども,こちらはロール・モデルとなる修了生との交流についてでございます。こちらは,身近に司法試験合格者が少ない場合は,他の法科大学院の修了生を含め,交流の機会を設けるなどの取組を行うことが期待されると指摘されているものでございます。
 それから六つ目でございますけれども,こちらは他大学との連携についてでございます。学生数が小規模化しているため,双方向性・多方向性を確保した授業の展開が困難となるといった懸念や,単位互換を行っていても,展開・先端科目に限られているなど,十分な効果が期待される連携に至っていない様子が確認されました。学生の基礎学力向上の観点から,法律基本科目など,基礎学力向上に資する連携が期待されると指摘されているものでございます。
 続いて,(3)「組織的な連携の必要性について」でございます。こちらは,個々の教員による課題の改善に向けた取組は行われているものの,組織全体としての取組に至っていないというような状況が確認されたものでございます。このため,法科大学院長などの責任者の下に,法科大学院全体として組織的に改善に取り組むことが期待されると指摘されているものでございます。
 最後,5ページ目は,まとめでございます。各法科大学院においては,今回の調査における所見を参考に,早急に原因分析を行うとともに,改善策を組織的に講じていくことが期待されるということ。それから今後も改善状況を注視していくことが指摘されているものでございます。
 その裏面でございますけれども,こちらは各法科大学院への所見を記載しているものでございますけれども,かなりボリュームもございますので,御説明は割愛させていただきたいと思います。それから最後の資料には,各法科大学院の指標に関わる資料を参考として添付しております。御説明は以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。ワーキング・グループの方では磯村委員が主査でございますけれど,もし補足説明があればお願いしたいと思います。

【磯村委員】
 内容的には,今,室長補佐から御説明いただいたとおりかと思いますが,簡単に,どういう形で御協力したか,その結果,どういう問題があると感じられたかという点について簡単に御報告したいと思います。
 ワーキング・グループとしては,文科省の書面調査の結果を踏まえて,とりわけヒアリングと実地調査に関与いたしました。実地調査については井上座長にも参加いただき,厚く御礼を申し上げます。
 全体として,先ほどの室長補佐からの御報告と重なりますけれども,多くの法科大学院において,課題自体については十分な認識があるのだけれども,それをどのように克服するかという取り組み方についてやはり問題が残るというところがありました。とりわけ,組織として迅速に対応できるかという点で,例えばカリキュラムに問題があるというときにも,改革をすることについてのハードルが高いというようなことで,先送りしているというようなケースもあり,そういう悠長な状況にはないということを助言の中で申し上げたというケースもございました。
 また,カリキュラムの内容とか,あるいは教育方法等について,学生諸君の主観的な満足度は比較的高いという傾向にあります。問題はむしろ,学生諸君が学修においてどこまで到達すれば十分であるのかということについての大学側の情報提供とか,あるいは到達度をチェックする体制に十分ではないところがあり,そういうことも含めて,法科大学院の組織として,とりわけ研究科長あるいは教務主任等々のリーダーシップの下に改善が必要であるというような感想を抱きました。以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。それでは,ただいまの御説明につきまして御質問等があれば,どなたからでも御発言をお願いします。どうぞ,山本(弘)委員。

【山本(弘)委員】
 2ページ目にあります,「自大学法学部との連携を行う法科大学院が多く確認された」とありますが,連携の具体的内容,どのようなものなのか,情報を頂ければと思うのですが。

【井上座長】
 これは事務局の方からですか。

【川﨑専門職大学院室室長補佐】
 こちらでございますけれども,例えば法科大学院に,加算プログラムでも評価されているものがございますけれども,遠隔地の法科大学院間でICTなども活用して,お互い,学生間交流を行いますとか,ここに記載されているような,合同の説明会などをやったりしているといったような事例が確認されているところでございます。ただし,なかなか実質的には,指摘のこの資料にございますとおり,それぞれの置かれている法科大学院の課題に直接,効果的にいい影響を及ぼすような,例えば基本科目での連携といったような取組まで発展するまで,もう少し議論は必要なのかなと思っておりまして,報告書にあるような記載がされているということでございます。

【浅野専門教育課長】
 今のは法科大学院間の連携の話で,自大学の法学部の話は,自大学の法学部から法科大学院に進学する学生が非常に少ないという認識を,各大学,持っておられる大学が多くて,そういう大学においては,例えば法学部の中で法科大学院の教員が,入門,ガイダンスみたいな授業をやったり,それから実務家の教員が法学部でそういったガイダンスの授業をやったり,それから,そういった法曹に進む方,学生に向けた説明会みたいなのをやったり,そういった連携を始めているという状況にございます。

【山本(弘)委員】
 私どもの大学でも,法科大学院の教員が学部の授業を担当するということは決して珍しいことではなくて,そういうことではなくて,やはり法科大学院の模擬授業みたいなものを学部生を相手にやるとか,そういうことなのでしょうか。

【浅野専門教育課長】
 模擬授業という形で,完全にいわゆる双方向型のメソッドによる授業というよりは,むしろ法科大学院でどのようなことを学修できるのかといったような説明であったり,あとはいわゆる法律基本科目や実務基礎科目の入門的な授業をやっているような形が見られます。

【井上座長】
 この点,恐らく国立大学系は,法学部と法科大学院とが組織として一つのまとまりを構成しているところがほとんどですけれども,それ以外の大学では,学部と法科大学院が組織的にも独立しているところが少なくありませんので,それによっても事情は大分違うのではないかと思います。しかも,実際上も,これまでのいろいろな経緯から,法学部と法科大学院とが相互に連携するというところまで,恐らくまだいく状態にはなっていない。むしろ,法曹というのはこういう魅力がある職種なので,法科大学院にどんどん進学してくださいと法学部の学生に宣伝活動に属するようなことをやっているのがせいぜいではないでしょうか。それをやることだけでも,一定数の人が確保されている。もともと入学定員が小規模のところでは,それだけでも。入学者が実質的に増えるという効果を生んでいるところもあるようですけれども。
 今回の実地調査には私も参加させていただいたのですけれど,以前,本特別委員会の下に置かれていた第3ワーキング・グループが主体になって改善状況調査をより広い範囲で集中的にやったことがあるのですが,そのときの認識と比べても,学生の満足度はそれぞれのところでそれなりに高くなっているように思います。ただ,前と共通しているのは,全国レベルで見た場合に自分たちの力が本当に到達ラインに達しているのかどうかというところがなかなか分からないでいる。以前も「一種の温室状態」という表現を使ったことがあるのですけれど,それぞれの法科大学院の中にいる限りでは満足度は高いのですけれども,温室から外に出ると北風がビュービュー吹いていて,そこで本当にやっていけるのか。そこのところが,組織的あるいは制度的に,学生に認識させられるような形にはなっていないのではないかという印象を今回も持ちました。
 ほかにご発言はありませんか。それでは,この議題については,この程度でよろしいでしょうか。
 調査に当たられた事務当局,それに協力されたワーキング・グループの方々には,お疲れさまでした。今後ともよろしくお願いします。
 次に,法学未修者選抜ガイドライン等検討ワーキング・グループの方でガイドラインの案が固まったということですので,松下主査より御説明をお願いしたいと思います。

【松下委員】
 資料の2を御覧ください。法学未修者等選抜ガイドラインにつきましては,前回,11月30日の法科大学院特別委員会で骨子案を報告いたしました。その節は貴重な御意見を頂きありがとうございました。頂いた御意見を踏まえまして,更にワーキング・グループで議論を深め,このたびガイドラインの案をまとめたので御報告いたします。
 最初に1ページですが,「1.はじめに」では,このガイドラインを策定する趣旨や考え方について言及しています。本ガイドラインは,統一適性試験の利用が任意化された後でも,法科大学院の入学者選抜が,公平性,開放性,多様性という理念を踏まえつつ,同時に受験者の適性を適確かつ客観的に判定できるよう,その留意点をまとめて指針として示すものです。また,統一適性試験の利用が任意化されることは既修者選抜にも共通していることから,本ガイドラインの最後に既修者選抜についても言及することとしています。後ほど出ますが5ページ以下です。
 2ページから4ページが,2ぽつの「法学未修者選抜の方法と留意点について」です。ここでは,2ページから,具体的な選抜の方法と留意点について記載してあります。2ページの一つ目の矢じりにありますとおり,法学未修者の選抜方法としては,丸1「小論文・筆記試験」,丸2「対面による審査」,丸3「書面による審査」,丸4「統一適性試験に類似した試験」などが考えられるところです。まず,小論文・筆記試験については,少なくとも1,000字程度の記述を求めることによって,法科大学院における履修の前提として要求される資質の多くを判定することが可能と考えられ,文章作成能力が必要となる法曹を養成する法科大学院においては,この方法を用いること,つまり小論文・筆記試験を用いることが基本であると考えられます。丸2「対面による審査」や「書面による審査」も,工夫次第で受験生の能力を判定することが可能と考えられます。
 3ページからは,未修者選抜において適切と考えられる選抜方法の組合せについて記載してあります。なお,この組合せはあくまでも例示であって,各法科大学院が受験生の適性を適確かつ客観的に判定できることを説明できるのであれば,ここに示された組合せ以外によっても入学者選抜を実施可能と考えます。
 3ページ中ほどより下ですが,ローマ数字小文字の1から3にありますとおり,未修者選抜においては,小論文・筆記試験を課すことが基本です。また,どのような場合であっても,書面による審査によって,受験生の学部成績や活動実績等を確認することが必要と考えられます。
 4ページへ行きまして,4ページの上の方にローマ数字の小文字の4がありますが,社会人や他学部出身者を対象にして,特にすぐれた資質を有する者を選抜するための入学者選抜を実施する場合には,受験者がそれまでに身につけている専門性が多様であることも踏まえて,必ずしも小論文・筆記試験を実施する必要はないと考えられます。ただ,この場合であっても,ここで実施する対面による審査は,一定程度の長文を読ませた上で口頭試問を行うなど,受験生の適性を適確かつ客観的に判定するための工夫が必要です。
 4ページ中ほどからですけれど,3ぽつで,「法学未修者選抜における客観性の確保について」です。専門職大学院設置基準との関係では,入学者選抜における客観性の確保が極めて重要となります。客観性を確保するため,各法科大学院においては,少なくとも,実施する選抜方法によってどのような能力を測ろうとしているのかを公表することが必要です。また,機械的な採点を可能とするような採点基準の設定までは求めないものの,客観的な判定が可能となるように,選抜方法の特性を考慮しつつ,配点や採点基準を内部で定めることを求めることといたしました。また,これらの配点や採点基準,出題趣旨については,可能な範囲で公表することを求めることとしましたが,公表しない場合には,各法科大学院が任意に実施している第三者評価の場などを活用して事後的に外部者の意見を聞き,継続的に入学者選抜の質を高める取組を求めています。そのほかにも,試験の前後に出題内容の適切さを検証するためのチェック体制の構築が必要であることも指摘しています。また,受験者数の増加や,共同での問題検証等によって客観性を高めることを狙いとして,法科大学院間で連携した入学者選抜の実施などにも言及しております。これらの取組によって入学者選抜の透明性を高めていくことは,受験生の利便性を高めることにもつながると考えられます。
 5ページから6ページが法学既修者選抜ですが,冒頭に御説明しましたとおり,統一適性試験が任意化されることや,受験生の適性を適確かつ客観的に判定する必要があるという事情は法学未修者と共通でありますことから,5ページでは,法学既修者選抜について触れています。法学既修者選抜においては,未修者選抜と異なりまして,法律科目試験によって受験性の適性を一定程度評価できると考えられます。ただ,しかしながら,少なくとも憲法,民法,刑法に関する科目については,論点の暗記のみによっては対応できない記述式の試験を用いるなどして,資質を適確に判定し得る形で出題することが必要であります。また,法律科目試験のほか,未修者と同じですが,小論文・筆記試験や対面による審査,書面による工夫などを組み合わせることによって,様々な方法・観点による入学者選抜となるように工夫が必要となります。また,入学者選抜の客観性確保については,法学未修者選抜と同様ですけれども,既修者選抜については法律科目試験の出題趣旨の公表を求めることといたします。法学既修者選抜につきましても,客観性を高めるための様々な工夫により入学者選抜の透明性を高めていくことは,受験生の利便性を高めることにつながると考えられます。
 6ページ,最後のページで,「おわりに」ですが,この「おわりに」では,ガイドラインの見直しに関することを盛り込みました。ここは,統一適性試験の利用が任意化されてしばらく時間が経過した後に,各法科大学院の入学者選抜や認証評価の運用状況を見つつ,実態に即してガイドラインを改定する必要が出てき得ることを想定したものであります。
 平成31年度入学者を選抜するための入学者選抜が,来年,つまり平成30年の夏頃から実施されることになります。各法科大学院では,このガイドラインを踏まえた入学者選抜が実施されることとなりますが,各法科大学院とも,各大学の創意工夫による入学者選抜を行うことによって,受験生の適性を適確かつ客観的に判定するようにお願いしたいと思います。また,認証評価機関においては,各法科大学院が実質的に受験生の適性を適確かつ客観的に判定できているかを評価するとともに,入学者選抜における各法科大学院の創意工夫が委縮することのないように適切に御対応いただきたいと存じます。私からは以上です。

【井上座長】
 ありがとうございました。これまでも御意見を承って,それを適切に反映していただいているものと承知しておりますけれども,ただいまの御説明に基づきまして御意見あるいは御質問等があれば,御発言をお願いしたいと思います。

【松下委員】
 いいですか。

【井上座長】
 どうぞ。

【松下委員】
 私の方から立て板に水で御説明してしまいましたけれど,ワーキング・グループに参加された,ほかの委員から,もし何か御意見等があれば是非よろしくお願いします。

【井上座長】
 いかがでしょうか。

【樫見委員】
 よろしいでしょうか。

【井上座長】
 どうぞ。

【樫見委員】
 一つは,最後に松下委員がおっしゃったのですが,1ページのところにありますように,今回のガイドラインは平成31年度入学者選抜,つまり平成30年夏頃実施と。これは時期を定めてということが一つと,それから,なかなか明らかにできなかった点は,統一適性試験が今後どうなるのかという点は私どもちょっと分かりませんので,その点は微妙な表現になっているかと思います。

【井上座長】
 これは一定期間後に検証して見直すということなのですけれど,これが実施された後,認証評価が続くとしますと,その認証評価を少なくとも1回は経た後ということになりますか。

【松下委員】
 短期間では,検証に必要な材料がそろうとはちょっと思えないので,恐らくそのぐらいの,数年というスパンになるのではないかと思います。

【井上座長】
 それも,早くてそのくらい,ということでしょうね。ほかに御意見等,いかがでしょうか。
 これまで皆様から頂いた意見は大体反映されているのではないかと思いますので,特に御発言がなければ,これについてはの議論はこれで終結ということにさせていただいてよろしいでしょうか。
 ただ,なお細かな表現ぶりとか,そういうことの調整が必要になるかもしれませんので,そういう場合には,座長である私と,ワーキング・グループ主査の松下委員に御一任いただければと存じますけれども,それでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【井上座長】
 ありがとうございます。
 それでは三つ目の議題ですけれども,これについては本日,少し時間をとって,実質的に御意見を賜ればと思います。御承知かと思いますが,中央教育審議会は2年ごとに更新されることになっていまして,今は第8期ですが,その任期が,明日2月14日をもって満了となり,本特別委員会も,その中央教育審議会の大学分科会の下に設けられている機関ですので,中央教育審議会と運命をともにするということになるため,本日の会議が,この法科大学院特別委員会として,今期における最後の会議になります。これまでも特に法学未修者に対する教育の在り方をめぐって何度か御議論いただきましたし,またこれと連動する形で,法学部教育との連携・連動をも視野に入れて,法学部長等の方々に来ていただいてヒアリングを実施したところですが,そういったこれまでの議論等を踏まえまして,次期の第9期において今後議論されるべき点,特に法曹志望者に対する教育の在り方という点について,本日,今期の締めくくりとして,皆さんから御意見を頂き,意見交換をさせていただきたいと思います。
 その議論の手掛かりとなるものとして事務局の方で資料を用意していただきましたので,これについて事務局から御説明をお願いしたいと思います。

【浅野専門教育課長】
 それでは,まず参考資料1を御覧いただければと思います。これは前回の会議でお配りさせていただいたものですが, 14ページ目・15ページ目に,新たに飛び入学や早期卒業による法科大学院入学者数や,それらの者の司法試験の合格の状況について,新たにデータを加えさせていただいております。飛び入学・3年早期卒業につきまして,法科大学院に入学する者というのは,年々,今,拡大している傾向にあるということでございます。
 それから参考資料2でございます。参考資料2は,前回の会議で各大学の法学部長の先生方に来ていただいてヒアリングを行いました。そのときの説明資料でございます。これは同じものを配付させていただいております。
 それから,続きまして参考資料3,これが今回初めてお配りする資料でございます。昨年の秋に,文科省と法務省の共同により,平成27年司法試験で合格者数が上位20校以内であった法科大学院を置く大学の法学部1年生から4年生,約4万2,000人を対象として,志望動向等に関する意識調査を実施いたしました。対象大学の協力の下,5,096人から回答が得られまして,そのうち無効25人でありましたので,5,071人のアンケート結果をまとめております。
 おめくりいただきまして,2ページ目から4ページ目でございます。法学部生の考える将来の職業について,現在の第1志望を尋ねたところ,「法曹等」を志望している者は,いずれの学年でも約3割で,一番志望の先が高いという結果が明らかになっております。一方,4ページ目にございますように,学年が進むにつれて「国内企業」の志望する割合が急激に伸びているという状況が見られております。
 9ページ目をおめくりいただければと思います。9ページ目には,法曹を志望した時期について記載がございます。約6割から7割の学生が,「中学生以前」若しくは「高校生」と回答しております。
 それから,19ページ目から21ページ目で,法曹を志望している学生の不安等についてお聞きしております。現在法曹を志望している学生に対して不安や迷いを尋ねましたところ,21ページ目には結果を学年別に集計しております。これを見ますと,学年が進行するにつれて,不安要素が,自身の能力や適性といったものから,経済的・時間的負担や将来の就職・収入など,現実的なものに変化していく様子が見てとれております。
 22ページ目から28ページ目でございます。法曹を志望しない理由について聞いてございます。これを見ますと,いずれの学年でも,「他の進路に魅力を感じたから」が最も多くなっております。第2位以下は,自身の能力や適性への不安や,経済的・時間的負担への不安となっております。
 32ページ目・33ページ目では,予備試験の受験希望について聞いております。32ページ目を見ますと,予備試験を受験する,又は受験したことのある者は,全体で約6割となっております。学年別に見ますと,1年次では約4割でありますが,この割合は学年が進むにつれて高まり,3年次,4年次では,約7割5分に達しております。
 34ページ目・36ページ目では,予備試験を受験する理由について,上位3つまで選択可として,法学部生にお聞きしております。大学在学中に予備試験を受験する理由について,「少しでも早く法曹資格を取得し,実務に就きたいから」が最多の60.3%であります。続きまして,「経済的に法科大学院に進学することは不可能ではないが,経済的負担を少しでも軽減したいから」というのが54.0%。「予備試験に合格しておいた方が就職等の面で有利であると考えているから」,35.8%となっております。「経済的余裕がなく法科大学院に進学できないから」と回答した学生は15.0%にとどまっていることが見てとれます。以上でございます。法学部生に対するアンケートの結果ではございました。
 それでは資料3を御覧いただければと思います。前回のこの委員会での御議論,法学部長からのヒアリング等を踏まえて,指摘された主な論点としていくつか掲げさせていただいております。一つ目は,「法学未修者コース入学者に対する教育の在り方」ということで,法学未修者コース入学者に対してどのように教育を行うべきか。法科大学院間での効果的な教育方法の共有などを通じた質の高い教育が必要ではないか。二つ目が,法学未修者コース入学者に対して,2年次以降の学修に耐えられるだけの法律学の学識を身につけさせるためには1年間という期間で十分であるのか。その次が,法学未修者コースで双方向・多方向で行われる教育のみならず,法学部の講義形式のような授業の活用というのも考えられるか。
 それから二つ目のぽつですが,「学部教育の在り方」でございます。法科大学院特別委員会ですので,法曹をまず目指す学生に対して,学部段階でどのような教育を行うべきか。その次が,学部入学時点で一定程度存在する,今の調査結果でもありました,約3割の学生が法曹志望ということですが,この法曹へのモチベーションを維持するためにはどのような教育を行うべきか。三つ目では,法曹以外の進路について,前回の法学部長の先生方からも,法曹だけではなく官公庁や民間企業等と多様である法学部生の進路先について,法学部においては育成すべき人材像というのも検討が必要ではないかということです。
 それから3ぽつでございます。学部と法科大学院の連携でございます。法学部・法科大学院の連携の話が出ておりますが,現在は法学部・法学系修士課程と法科大学院は組織的に独立している場合が多く,連携が十分行えない場合があるとの指摘もあります。今後,法学部・法学系修士課程と法科大学院の連携体制をどのように考えるか。その次が,まさに法学部・法学系修士課程と法科大学院で連携して,法科大学院の教員や研究者の育成が,どのように行う必要があるのかということでございます。その次が,学部教育と法科大学院教育の有機的な連携が必要との指摘も踏まえて,どのような教育課程が考えられるか。その次が,地方における法科大学院の学生確保が困難になっている状況を踏まえ,地方における法学部や法科大学院の連携による法曹養成機能の在り方はどのように考えるのか。それから最後に,先ほどのアンケートにもございました,法学部や法科大学院においての予備試験の影響について懸念する声が上がっておりますが,予備試験が法学部・法科大学院教育に影響を与えるという指摘をどのように考えるかという点について,これまでの議論を踏まえて論点を設定させていただいております。以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。それでは,この用意していただいた資料と,ただいまの御説明に基づいて,御自由に御意見,あるいは今の御説明に対する質問でも結構ですけれども,どなたからでも御発言をお願いできればと思います。どうぞ,笠井委員。

【笠井委員】
 今日,お配りいただいた参考資料3というのは,大変興味深いアンケート調査結果だと思います。もっとも,対象となる学生数が4万人を超えるところ,回答総数が5,000人で,回答率12%です。信憑性は間違いないとは思いますが,もう少したくさん回答があったらいいなと思いました。
 中身は非常に興味深く,事前にメールでお配りいただいたものを拝見しました。これを見ての,やや抽象的な私の感想ないしは意見なのですけれども,参考資料3では,20校のうちの学部学生について,1年次から4年次に至るまで法曹志望者が約3割あり,ずっと安定的に志望している。4年次について見るとやや違うところがあるようですが,他の官公庁や国内企業を見た上で考えますと,20校については法曹志願者が強くずっと存在し続けているということが言えると思います。そうすると,抽象的な言い方になりますが,学部とロースクールの連携において,素質のある学生をここで捕まえるということが非常に重要になってくるのではないか。その意味で,法学部と法科大学院の連携強化が,未修者教育の状況を踏まえ強く認識されることになりましたが,連携強化,連携を強化する意義は極めて明白ではないかと思います。
 他方,連携の強化というのは,これまで法科大学院制度が目標のひとつとした,多様性の確保に対立するものであってはならないと思います。法学部と法科大学院の連携強化といった場合に,実際にそのような多様性の確保に対して障害となるものなのかどうなのかを考える必要があります。法律屋だけを取り込むというのであれば極めて問題ですから,そうならないように,法曹専門職としての養成コースを考えなくてはいけない。そのための教育を考えていかなければならない。その意味で,資料3に摘示されたいくつかの考慮すべき問題点というのは,前回の法学部長,6大学の学部長からのヒアリングも踏まえて,これから検討していくべき重要な論点をはらんでいるだろうと思います。
 これは既修者教育の問題ですが,他方で未修者教育の問題も,当然これまで考えてきた以上に考えなくてはいけない。未修者の受入れが,社会で活躍する多様な人材を法曹界へ獲得していくという本来的な目標に沿ったものだからですし,法曹界の人的基盤整備のための重要な一つであるからです。未修者教育についても,抽象的ですが,重大な関心を払いつつ行っていかなければならない。既修者教育も未修者教育も双方ともにやっていかなくてはいけない。と同時に,既修者教育においては法律屋だけを育ててお仕舞いという発想ではなくて,リベラルアーツについてもしっかりと勉強してもらう,身につけてもらうという教育をするということが必要であろうと思います。
 もう一つは,観点が違いますが,先ほどの資料で示された,法曹志望または法科大学院の志望を忌避するという理由として,一つは,法律家になるための時間がかかり過ぎる。お金がかかり過ぎるという点もありました。時間がかかり過ぎるという意見がかなりの程度を占めていたと思います。それは一方で,予備試験を受験する動機でもあって,アンケート調査等によると,1位を占めているという結果もあるようです。「少しでも早く法曹資格を取得し,実務に就きたい」というものが挙げられているわけです。かつて共通到達度確認試験の論議が最初に行われていた頃に,そのような試験をもって司法試験に代替させてしまうのはいかにも乱暴な意見でしたが,法科大学院在学中にそのような一定の認定ができるような形での制度を作ったらどうかという議論が多少行われた。私もちらっと言ったことがあるのですけれども,そのようなことを考えてみると,在学中に,ギャップターム,今問題になっていますから,その点を考えた上で,法科大学院在学中に,司法試験に当たるようなものの一部を終えてしまうということが,時間を詰めるという意味で役に立つのかなと。これは将来的な議論の問題であることは重々承知した上で申し上げたいと思いました。以上です。

【井上座長】
 ほかの方はいかがでしょうか。どうぞ。

【磯村委員】
 一つは,参考資料3の統計データの受け止め方の問題にも関わるのですけれども,41ページにアンケート内容が載っていて,そのタイトルが,法学部に在籍されている皆様に対する法曹志望に関するアンケートとなっています。これは,今,笠井委員が御指摘になられたように,回答率がかなり低い中で,法学部生全体の10%の動向を本当に表しているのか,あるいは法曹志望ということで,法曹に対してかなり関心を持っている学生が反応しているというように見るかによって,そのデータの意味が少し違うのではないかと思います。したがって,例えば3割の学生が法曹を志望しているというデータは,全体の平均よりはやや高い数値になっているのかもしれないという見方があり得るかもしれません。
 それから資料3について,いろんな問題点があると思いますが,まず1ぽつの「法学未修者コース入学者に対する教育の在り方」というところの前提問題に関わるところなのですけれども,従来から法学未修者は,いわゆる純粋未修者と,法学部の学修を経たけれども法学既修者には入学するレベルにはない学生が混在しています。それを当然の前提として考えるのか,あるいは法学未修者というのはもともと社会人であるとか非法学部系を中心としたコースとして設定するのかということが,未修者の教育についてもかなり大きな影響を及ぼすのではないかと思いますので,そのコンセプト自体も考えてみる必要があるのではないかと思います。
 もう一点付け加えますと,従来,法科大学院の入学試験については,公平性,開放性が最も重要な理念としてうたわれてきました。これは,競争倍率がかなり高いという状況の下では,そういう理念の堅持が強く求められると思いますけれども,現在の状況の中で,自大学の法学部と連携を深めるという中で,ある程度,自大学の学生の進学を促進するというような制度を容認するかどうかということも,大きな問題点の一つではないかと思います。それが,結論的にどういう方向に向くかどうかは別として,検討課題としては重要なポイントではないかと感じております。以上です。

【井上座長】
 ありがとうございます。ほかの方はいかがでしょうか。どうぞ,日吉委員。

【日吉委員】
 今の磯村委員の意見に関連して,私も意見を申し述べたいと思います。参考資料3のアンケートというのは,母数が少ないということで,その信憑性をどう評価するかという問題はあると思いますけれども,いずれにせよ,これは今の法科大学院に引き移して考えますと,恐らくですが,既修のクラスに問題なく試験を受けて入ってきて,かなりの確率で司法試験に受かるだけの能力をもともと持っている上位20校ということですから,その人たちの意識・認識が反映されているものと受け止めていいのではないかと思っています。そうしますと,既修の学生,しかも最終的には司法試験にきちんと合格していくような人たちが何を考えているのかということを非常に端的に表して,だからこそ予備試験への関心,それから予備試験への傾斜というのも,より顕著に出ていると受け止めていいのではないかなとは思っています。
 それで,今,問題に挙げられている,法学部と法科大学院との連携をどのように考えていくかということは,とりもなおさず法学部の学生の,そういった法曹志望の関心の高い人たちをどのようにすくい上げていくのかということに流れやすく,ということは,結局,連携を考えるときというのは,今で言う既修者クラスをどのように改善していったらいいのかということについては,非常に制度設計も組みやすいし,それからいろいろなアイデアが湧くところでないかと思います。
 他方,今,磯村委員も指摘されましたけれども,今ある言葉で言いますと未修者コースに入ってくる人たちというのは,法学部との連携を考える中で,今後どういうふうに考えていったらいいのかというのは,非常に重要な問題として残る。そのときに,まず確認する,あるいはもう一回検討し直さなければいけないのは,法科大学院を最初に作ったときの理念あるいは制度趣旨というのを,そのまま全く何も変えずに堅持するのか,それとも実態に合わせて一部修正していくということを容認するのかというのが,まず出発点で確認されなければならないのではないかと思っています。
 今のコースは,あくまでも未修者が原則になっておりまして,未修者3年というコースを一番最初の出発点にして,その一部の学生については,学修レベルがそれなりにある,達しているということを確認して,2年というふうに短縮してよろしいというような制度設計になっているわけですけれども,その制度設計自体をどのように考えていくのかという,そのまず前提として,今申し上げたように,趣旨をどういうふうに,理念と趣旨をどのように考えるかというのをまず整理した上で,今ある未修・既修の制度設計というものをどのようにしていくのかということは,どうしても外せないということだと思います。
 私自身が,いわゆる純粋未修者で3年間勉強した経験から言いますと,やはり未修者コースの非常に難しいところは,こちらのいらっしゃる委員が皆さん感じておられるように,いろいろなバックグラウンドの,それこそいわゆる「隠れ」と言われている法学部出身の学生から,本当に六法全書も見たことがありませんというような,今は数が少なくなりましたけれども純粋未修者というものも,当然入ってくるということを大いに趣旨として理念として設定した上で作ったコースです。それを今後どうするのか。それがこの10年間,非常に教育を受ける側も教育を授ける側も非常に苦労して,いまだにどのような教育を行うべきかというふうに,10年たって結論も見えていないし,確立した手法というようなものもないという状況にあるということを正面から見据えた上で,制度の見直しというのを当然しなければならない。その中で,今,俎上に上っている法学部と法科大学院の,それを連携の強化というのか,一体化というのか,それはいろいろな可能性を秘めているとは思いますけれども,いずれにせよ,そもそも理念としては未修が原則であると言われた理念をどのように考え,そして未修コースというものがもし今後もあるとすれば,それはどのような在り方で設定すれば,みんなが最初に想定した,いろいろなバックグラウンドを持った,様々な経験を持った,才能豊かな人たちが,法曹の世界にチャレンジしてくれる,行きやすいような制度になるかということを考えていくべきではないかなと思っております。

【井上座長】
 ありがとうございます。では有信委員,どうぞ。

【有信委員】
 いろいろ話を伺っていて,門外漢として意見を言わせていただくと,やっぱり法学部の教育と法科大学院の教育との間の関連性の問題がかなり重要なような気がします。今,議論になっている未修・既修というときに,例えば既修者の前提としてどれだけのレベル・知識を要求しているのかというところのコンセンサスが,法学部の教育と法科大学院の側とできちんととれているかどうかという問題ですよね。それから,あとの資料3の中に出ている,上位20校で非常に優秀な学生がいる中で,しかも意識の高い人がアンケートに答えていて,なおかつ30%が法曹志望であるとなっている。これを多いと見るか,少ないと見るかということなのですけれども,こういう中で,では法学部の中で一体何を目的に教育していくのかという問題と,例えば法曹の部分の教育をやるとしたときに,では法学部で,法曹の在り方というイメージがきちんとできて教育をやっているのかという問題。もちろん,個別の教育内容はそれに合わせて考えるべきだと思うのですけれども,本来,法曹というのはこうあるべきだという概念が,法学部と法科大学院で共通に認識されているのか。あるいは法学部で教育をして送り出す学生が一体どういう範囲で活躍することを想定しているのかによって,多分,法学部の教育内容がやっぱり考え直されないといけないという気がします。
 はっきり言って,さっき,最初に笠井委員からもありましたけれども,リベラルアーツのような問題もありますが,法学部を出た人たちが,今,例えば大企業の中で法律に関係する仕事に就く人は極めて少ないわけですよね。多方面で活躍している。そうすると,彼らが活躍しているベースになっているのは,法律の勉強を通じて培われた論理的な思考の仕方や問題に対してどういう形でアプローチしていくか,そのときにどういう知識が必要になっていくか。こういう部分で,個々具体的な法律の知識は,こういう範囲にこういう法律があるという程度の知識があればいいわけですよね。したがって,多分,法学部の教育そのものを,やっぱり法科大学院ができた中できちんと見直さなければいけないところを,恐らくは十分見直されていないというところも一つ重要な問題だと思いますので,是非今後,議論を続けていただければと思います。

【井上座長】
 今の点は,司法制度改革において法科大学院を作る際に,法曹養成というのが,graduate schoolレベルの法科大学院に移るとなると,既存の法学部は100近くあったわけですけれども,その法学部では,どういう人材を育成することを目標にして,どういう教育をするのかということを見直す必要がある,見直していただきたい。そういうメッセージをも発していたのですけれども,大学によって差がありますが,必ずしも十分に意識的な検討がなされてこなかったように思われます。それまでの法学部というのは,よく言えばゼネラリストの養成,ありていに言うと「潰しが利く」,法学部に入れば,卒業後はどんな職業でも何とかやっていけるだろうと,そういった社会的なイメージなり受け止め方があって,法学部の方でも,特にこういう人材を育成するんだということで,何か特定の職種などに特化して目標を定めて教育をしていなかった。ところが,法科大学院ができますと,法曹の養成はロースクールの方に中心が移りますので,それとの対比で,では法学部として独自にどういう目標を持つべきなのかということを,意識的に検討し,整理しなければならなかったし,その好機だったのですが,様々な事情から,必ずしも十分にやられてこなかた。それを,今からでもやっていただかないと,法科大学院との連携といっても,法科大学院の側の片思いに終わってしまうのではないか。その意味で,今,有信委員がおっしゃった点というのは,非常に重要な点ではないかなと思いますね。
 大貫委員どうぞ。

【大貫委員】
 2点申し上げます。一つは,法学未修者に対する教育の在り方の問題。もう一つは,この委員会でも随分議論になっていますけれども,予備試験の問題について,繰り返し言われてきたことをちょっと確認したいと思います。
 まず,未修者教育は,先ほど笠井委員,磯村委員,日吉委員からも非常に重要な御指摘がありましが,非常に重要な課題だろうと思います。ただ,本委員会も決して手をこまねいてきたわけではなくて,法律基本科目の単位数の上限の引き上げなど,様々な方策をとってきたところであります。しかしながら,委員の方も御存じのように,現在の客観的な数字で見ますと,現在の司法試験において,未修者として誰を構想するのか非常に難しいのですけれど,私は日吉委員のような純粋未修者を想定したいのですけれど,その方を想定して3年で司法試験に受かるというのは極めて困難であるというのは現実に分かると思うのです。随分前に司法試験と法科大学院の成績の相関を調べた連携検証というものがあって,久しぶりに引っ張り出してみますと興味深い数字が出てます。法科大学院の成績が未修・既修で大体同じような成績の人が,司法試験を受けると未修の方の合格率が極端に悪いということが出ております。これは何を意味するのかというのは御想像にお任せしたいのですが,要するに,結果的に,未修者は受からないという現実があるということを前提にして,つまり現在のシステムを前提にして純粋未修の方も受かるようにするためには,やはり教育の在り方を考えないといけないのだろうと思うのです。
 いろなやり方があると思いますけれども,アイデアの一つは,連携という枠で考えるならば,例えば,ほかの学部を卒業した方が法学部に学士入学して,きちっと勉強して法科大学院に来ていただくなどというやり方も考えられる。ただ,この構想については多様性の確保という点でいかがなものかという議論は当然あると思いますけれども,現状の制度を前提にすると,相当抜本的なことを考えないと,未修者,とりわけ純粋未修者の司法試験合格率は上がらないだろうと思いますので,そのことを踏まえた上できちっと議論した方がいいだろうというのが1点であります。
 次は予備試験のところです。先ほど笠井委員から御指摘があったのですが,ロースクールを避ける要因の一つとして,法曹になるための時間的・経済的コストの高さというのがあるだろうと思います。確かにアンケートからも出ております。それはかなり大きいのだろうと思います。ではそれに対して,ロースクールに来てもらうためにどうしたらいいかということを考えたときには,やはりロースクールの教育の時間的短縮というのは一つ考えられるということで,いわゆる飛び級あるいは早期卒業をして既修コース2年に行くということで,5年で法曹になれるコースというのを更に拡充する必要性はないのかということも検討した方がいいのかなという気はしております。ただ,笠井委員が言われた,こんなに短くしていいのかという議論は当然あるのだろうと思いますけれど,そこがもう大変なジレンマなのですけれども,きちっとリベラルアーツもやってくれよといいつつ,短縮でいいよというのを,どのように折り合いをつけるかという論点は当然あるだろうと思います。予備試験との関わりで,いろいろなことを考える必要があるだろうというのが,まず1点です。
 もう一点が,これは鎌田委員がよくおっしゃることだと思うのですけれども,予備試験というのは,法科大学院修了者と同等の学力を有しているということを認定する試験になっているわけです。ところが御承知のように,予備試験において必要とされるのは,法律基本科目7分野と法律実務基礎科目のほか一般教養科目だけです。一般教養科目を除けば,法科大学院において必修科目として履修する科目の一部にすぎないということです。例えば,基礎法学,隣接科目,展開・先端科目の学修は全く問われていない。エクスターンシップ,リーガルクリニックも全く問われていないというのは,同等性を問う試験としていかがなものかというのは,当然議論されてしかるべきだろうと思います。予備試験はなかなか困難な課題で,ここの所管ではないということはよく存じ上げていますけれども,法科大学院教育に甚大な影響を与えている予備試験について,こちらからできる議論はしていただきたいなと思っております。以上です。

【井上座長】
 では片山委員。

【片山委員】
 二つの点を申し上げたいと思いますが,第1は,次期の中教審においても本格的に学部教育とロースクール教育との関連について議論していただけるというのは,必要なことだと思いますし,是非積極的にやっていただきたいと思いますけれども,やはり中途半端な議論をするというのは非常に危険といいますか,いかがなものかなと思いますのは,やはり法科大学院は連携法を存立基盤としておりますが,学部には今の連携法は関わっておりませんので,連携法の対象となっていない組織との連携については,やはりかなり慎重に論じる必要がありますし,日吉委員の御発言もありましたとおり,その意味では制度のやっぱり抜本的なところから見直しをしっかりやっていく必要があるのではないかとは思っております。
 その意味では,議論の仕方としては,例えば三つが想定されるわけであります。一つは,連携法自体をやっぱり見直していくことも考えていかなければいけないということになりますと,学部の中に今のまま連携法の網をかぶせることは到底不可能で,大教室での講義形式の授業を聞いて単位を取らせるというものに連携法の網をかぶせるわけにはいかないわけですから,そこは,しっかりとした,学部の中での法曹養成コースのようなものが確立されることを前提とした上で,連携法の網をかぶせていくということにあるかと思います。
 それからもう一つの考え方としては,やはり学部は連携法の対象になっていないわけですから,ロースクールの中で考えていくということになりますと,一種の先取り学修のようなものを積極的に行って,学部生をロースクールの中に取り込んでいくというのも一つの方向かと思います。
 それから三つ目の方向は,未修教育については学部に渡してしまうというのも一つの考えられ得る選択肢の一つだと思います。類似の発言は,今日もございましたが,既修教育にロースクールは徹する。そうすると,未修自体の教育は連携法の網からは外れますけれども,そこは自由な競争に委ねて,より合理的な教育をやっていただくということになります。
 いずれにしましても,抜本的な変革を伴って学部との連携の議論をしないと,中途半端な形で学部と連携しましょうということでは,恐らく今の連携法の趣旨が抜本的に見失われてしまうということになるので,そこを是非慎重に御検討いただければというのが第1点です。
 それから2点目は,ロースクール制度,特に私学において,既存の学部,法学研究科と独立した形で法科大学院を立ち上げて,この12年間やってきたという点であります。それはある意味,組織を小さくして意思決定も軽くなりましたので,いろいろ新しい改革ができたという意味で大きなメリットがあったと思いますし,それから何よりも理論と実務の架橋という意味で,実務家の先生方に多く入ってきていただいて先進的な教育ができたというのは,この12年間の一つの大きな成果であったとは思うのではありますけれども,他方,やはり他国の制度などを見ておりましても,恐らく法曹養成の教育が,全く研究・教育と分離した形で行うというのはそう多くはないかと思いますし,やはり全く組織を切り離してしまうということはロスが多く,法律学という研究学問の発展にとっては大きな足かせになっているという事実は,やはりこの12年間の経験から明らかな点かとは思います。ですから,やはりその点でも,これは今後,特に私立大学においては,ロースクールの独立化という視点で今までやってきましたが,逆に法学部,それから法学研究科との一体化ということを真剣に考えていって,研究者養成等をしっかりと見直していくという必要もあるのではないかというのが2点目となります。以上,2点を申し上げさせていただきました。

【井上座長】
 今,最後に言われた点は,社会的にはそれほど関心を持たれていないのかもしれませんが,本委員会では,これまでもたびたび皆さんから御意見が出た点で,法律学の研究という意味でもそうなのですけれども,法科大学院にとってより現実的な問題として,後継者養成ですね。法科大学院についても,教員を更新し補充していかなければならないわけですけれど,そのための後継者養成が十分できていないのが現状です。恐らく,このことが,現実問題としては相当大きな問題になっていくのは間違いないだろうと思います。今はまだそれなりに確保されていますけれども,私の世代,団塊の世代の教員がもう去っていきつつあり,その次の世代の教員もやがて退職していくのに,それを補充できるだけの人材が若い世代からは十分な数,育っていない。そうなっていくと,どんな高邁な理念を掲げ,効果的なカリキュラムを工夫を重ねて組んだとしても,教える人がいないのでは,そうしようもないわけで,ここはかなり早急に手を打たないといけないと思っています。
 ほかの方はいかがでしょう。

【樫見委員】
 よろしいですか。

【井上座長】
 どうぞ。

【樫見委員】
 ちょっと視点が違うのですが,今回の資料にはなかったのですが,法科大学院の修了者,それから司法試験の合格者の就職状況,先ほどの資料のデータでも,志望者が少なくなるというか不安感を覚える一つの要素が,将来の就職が大丈夫かと。合格したならば合格したとして,法曹として一人前にきちんと職を得て,かつ給料をもらって生活をしていけるのか。仮に合格はしないまでも,修了してその先がきちんとあるのか。こういう点について,やはり法学部あるいは他学部出身者の法科大学院への志望を高めるためには,出口のところをやはりしっかり確保するというのが一つ大事であろうと思います。それで,前にも出たかもしれないのですが,予備試験はともかく,例えば法科大学院の修了の資格を持った場合に,法曹になればもちろんいいわけですけれども,資格を取得すると。修了した段階で,例えば各種の法律関係の資格がいろいろあるかと思いますけれども,その全部というのではないのですけれども,科目的にこれらは免除するとか,何かの資格取得に利するような工夫ができないのかというふうなことで,やはり出口の問題を確保しないことには抜本的なところにはつながらないですし,一時いろいろ報道等で言われて,最近余り,職域拡大ですとか,あるいは就職状況についてマイナス的な報道は見られないようになってまいりましたけれども,やはりここの実態がどうなのか。これはやはりきちんと捉えなければいけないだろうというのが一点です。
 もう一点は,当たり前のことのようなのですが,データ集の参考資料の1の11ページですか。ここには,「既修・未修,法学部・非法学部別司法試験合格率の推移」というのがありまして,冒頭のところに書いてありますが,法学既修コースの修了者の合格率が最も高いというのは何となく分かるのですが,なぜ法学部出身の未修者,法学部で勉強している人間が法科大学院の未修に入って,それで成績が振るわないのかな。というより,ここのところは原因が分かるようで,実はよく分からない。なぜ合格率が最も低いのか。法学部で,まさに教育的な問題があるかと思うのですけれども,彼らはイロハは習ってきたはずなのに,法科大学院へ入った途端に通常の一般未修者よりも合格率が低くなるのはどこに問題があるのか。ここら辺も,未修者向けの教育,あるいは法学部の現在の教育のところで少し分析が必要なのではないか。分かりやすいといえば分かりやすいのですが,なぜそうなるのかというのは,やはり少し分析の必要があるのかなと思っております。以上,二点です。

【井上座長】
 ありがとうございます。どうぞ,大貫委員。

【大貫委員】
 今,樫見委員の御発言に関係して一つ情報提供を致します。ロースクールを修了した方が,その後,法曹になったのか,あるいは受からずに法曹にならなかったかというのは,統計的にちゃんと追わなければいけないのですけれど,なかなか追いにくいのです。ですが,法科大学院協会で,全校ではないのですけれども,修了者がその後どうなったかということについてアンケート調査をして,こんな厚い冊子を作って,電話帳と言われて非常に評判が悪いのですけれども,そこを見ますと,やはり非常に多様な領域で活躍しているというのが出ていると思うんです。ですから,反省しましたけれど,電話帳と言われて批判されても,いろんなところで,きちんと活躍しているというメッセージを出さなければいけないなと改めて思ったところです。
 弁護士会の調査を拝見すると,いわゆる就職状況は相当改善しているのだろうと私は思っているので,マスコミの方にも是非そういうプラスの面も報道してほしいなという気はいたしております。以上,コメントでございます。

【井上座長】
 土屋委員,どうぞ。

【土屋委員】
 マスコミの弁明をしようとは思っておりません。今日の議論,資料の中で,未修者等選抜ガイドラインということで資料には出ておりますけれども,それを見ていてちょっと考えたことなのですが,法学部生のアンケートの中にも,非常に比率が高く出ているのが,自分に適性があるかどうかということが分からないという学生の悩みです。これまで全国統一の適性試験をやってきたことによって,特に未修者は,ある程度,この試験を受けることによって,自分がどの程度の法曹としての適性があるのかという物差しになったと思うのですけれど,それが任意化されるということになって,その任意化の報道の仕方も問題がありまして,いわばこれは廃止であるというニュアンスをすごく強く出した報道もありますし,任意化なのだから,それは自由な判断なのだということを強くまたうたっているところもあって,そういう意味ではちょっとマスコミの方も消化不良の状態というのか,そのようなものが見られるような感じがするのです。
 それはともかくとして,これから先,適性試験はどうなるのかというところが,このガイドラインを策定するに当たっても微妙なところがあるという,先ほど樫見委員のお話でしたけれども。入学者選抜でこれから大事になるのは,やはり未修者の適性を持った人の確保だと思うのです。法科大学院は法学部の修了生をもう一度たたき直してやればいいというものではないのだろうと私は思います。社会人として経験を持った人がまた改めて法曹への志を立ててチャレンジしていく場でもあるべきだし,それから他学部出身者の人たちがいろんなところで壁にぶつかっていく中で,法律問題との直面せざるを得ないところがあって,それで法曹になりたいと思ったりする,そういう動機付けもたくさんありますから,そういう人たちにとって道を開くことが必要だろうと思う。
 あまりいい案はないのですけれど,今日のガイドラインの資料2を見ていて,入学者選抜について,適性試験の成績を加味する方向がもっとあっていいのではないかと思いました。つまり,自分の費用でもって適性試験を受けて,それでその結果を見て,どうしようかななどと迷っている人もいるでしょうし,成績がよければ大いに元気付けられる人もいるでしょう。問題は,そういう人たちをどうやって法科大学院の中にすくい上げていくかという,道の開き方だと思うんです。ここにあるガイドラインの4ページなのですけれど,ガイドラインとして,中段に,「統一適性試験が任意化後も引き続き実施される場合は,従前どおりの方法によって入学者選抜を行うことも可能である」とありますから,それ以上言うこともないかとは思うのですけれど,私は,そうやって適性試験をこれから受けようという人には,一定のメリットを与えることが必要なのではないかと思います。例えば,適性試験で成績上位の人に対しては,法科大学院の入学試験の中で,例えば1次試験を免除したり,いろんな形で入りやすくする道を講じるというようなことが具体的にあれば,チャレンジしてみようという社会人もいるかもしれないというようなことを感じますので,そこの入学者選抜の審査方法の組み合わせのところに,一番最後でもいいのですけれど,統一適性試験の成績を加味して選考するというようなあたりはあってもいいのかなと思いました。もうその議題は終わっているのは承知の上ですが,最後ですので述べさせていただきました。

【井上座長】
 議題としては,先ほど既に議論していただいたことですので,今後,次期の特別委員会で,そういうことの可能性も含めて議論していただくというにさせていただきたいと思うのですが,ご承知のように,適性試験とその後の成績との相関については,いろんな御意見があるところなのですけれども,法科大学院の現場での実感としては,適性試験である程度の成績を取って法科大学院に入ってきたとして,それだけでロースクールの教育に適合していけるといえるのか。さらにその先の司法試験に合格するだけの学力をつけることができるといえるのかというところが,,どうも確信をいだけない。それだけ,多種多様なバックグラウンドを持つ人から適格者を選抜するのは難しい。十何年,現場で苦労してきたのですけれども,正解はまだまだ見つからないというのが正直なところなのです。
 むしろ,そういった試験の成績よりは,1学期とは言いませんけれども,少なくとも数回,授業をやり,個々の人と問答をしたり文章を書いてもらうと,法律学ないし法曹として適性があり非常に伸びそうな人と,反対に,向いていない人,その両極の人は,ほぼ分かります。しかし,入学者選抜の段階でそれを見分けることは,極めて難しいのです。特に未修者については,データが非常に少ない。既修者については,法学部などでの成績と法科大学院の授業,それに司法試験というのは,ある程度,親和性があるので,未修者の場合より選抜の確度が相対的に高いところがある。むろん,それでも,適性があるかどうかは確実には言えないのですけれども,未修者の場合は,そのようなデータすらないので。より難しいということだと思います。

【磯村委員】
 先ほどの樫見委員の御指摘の件については,証拠に基づく推測ではないのですけれども,法学部である程度の時間かけて勉強したにもかかわらず,既修者のレベルに達しなかった人が,あとどれだけ伸びるかというときの伸び率が,もしかするとそれほど高くないということが,そういう結果に表れているのではないかという推測は成り立ちそうです。いわゆる純粋未修者の場合には,法律の勉強に向いていない人もいるけれども,実はぴたっとはまる人もいるというので,むしろかなり高度のレベルに達する人もいるという可能性が,より高いのかもしれないという気がします。
 それとの関係で,参考資料1で非常に興味あるデータが15ページのところにあります。先ほど浅野課長から御指摘を頂いた点なのですけれども,早期の卒業,飛び入学で入ってきている学生諸君が,例えば全体の合格率もそうなのですけれども,法科大学院修了後1年目の司法試験合格状況についても既修者の平均の合格率にほぼ匹敵するような高い合格率を示しています。これは,どういう人が早期卒業,飛び入学で未修者に入ってきているかというデータをちょっと詳しく分析すると,非常に面白い結果になっているのではないかと感じます。法学部の中で未修者しか行けないので入っているのか,あるいは他学部の人がこの制度を利用して未修者に入ってきているかで,随分読み方が違ってくるのではないかと感じました。
 それからもう一点,資料3の2ぽつの「学部教育の在り方」についてですが,これは法科大学院制度を作った当時の議論を思い出すことになるのですけれども,法科大学院が必要であるということの大きな理由の一つとして,学部で行う授業というのは,先ほど井上座長もおっしゃいましたようにゼネラリスト養成なので,なかなか専門家養成のための特化した授業ができない。それを学部で特化してやろうとすると,今度はほとんどの学部生諸君にとっては,細か過ぎたり,内容が難しくなり過ぎる授業になって,余り学部教育としては適当ではない。その議論をかんがえると,今後,法科大学院教育と学部教育との連携を考えるというときに,仮に未修者教育は学部教育とできるだけ密接に連携させるというスタンスをとったときに,その学部教育はどうあるべきかということが非常に難しい問題として出てくるのではないかと思います。私自身,今,法科大学院に所属している一方で,学部の民法の専門科目の大講義も担当しているのですけれども,法科大学院の既修者試験に合格するようなレベルの民法の話をしたいと考える一方で,そのレベルは,多分,多くの学部生諸君にとってはやや高度過ぎることにもなります。しかし,そういう話をしなければ,今度は既修者として法科大学院に入学したいという学生は,学部の講義では十分勉強できないので,他の制度を利用するということになりかねない。そういうジレンマが,また繰り返されることになるかもしれないので,学部教育の在り方については,連携先の内容がどうかということを確かめていかないと,非常に難しいなと感じています。以上です。

【井上座長】
 どうぞ,杉山委員。

【杉山委員】
 学部と法科大学院という縦の連携の他,これまで連携強化という意味で法科大学院間の横の連携について,公的支援見直し強化・加算プログラムなどで支援をしてきました。各大学において校風があり,各法科大学院の特徴というものがあって,ここから排出される卒業生の方が,皆さんそれぞれ個性を持って多様な人財となる,余り連携が過ぎますと,金太郎あめになってしまう。これから活躍してもらう企業法務という場にいる私にとっては,横であれ,縦であれ連携強化が余り全面に過ぎると,個性・多様性の要素を失ってしまうのではないかということを懸念しています。
 もう一つ,先ほど就職市場が一時と比べ好転しマスコミが就職難について取り上げないというお話がありましたが,採用側にいる自分としても間違いなく好転しているという肌感覚を持っています。法律事務所もそうですし,我々,企業法務もそうです。好転しているという以上に,人財市場における法曹需要がこの10年余で大きく膨らみ肥大化しました。しかし,この数年で我々は当初とは逆方向に輩出人数を極端に圧縮する方策を実施しました。企業法務のメンバーと,早晩,人財の取り合いになる。法律事務所の需要を含め,どうやったら各社・各事務所が質量を確保できるかという話をしています。我々は質の確保のため養成人数を絞るだけ絞ってきましたが,そろそろ当初の考えを達成すべく反転攻勢すべきではないでしょうか。需要人数に見合う排出数に戻すには時間がかかります。早く反転しないと,後手後手になるということを懸念していいます。以上2点申し上げておきたいと思います。

【井上座長】
 ありがとうございます。どうぞ,上田委員。

【上田委員】
 学部教育の在り方についてということで一つだけ申し上げたいのですが,各学部の法学部で,やっぱりカラーというのはあるのではないかなと思います。たとえば,合格実績を上げているロースクールの法学部の学生は問題意識も高くて,ロースクールではこういうことをやっている,こういう最低限の知識は必要であるというようなことを,学部の授業を通じて話をすると,非常に食い付きがいいというようなことがありますので,一つ大きく学部教育の在り方といって一まとまりにしても,各大学法学部の実情によってちょっと違いがあるのではないかなと思うので,そのあたりは少し細かに議論していく必要があるのではないかなと思います。
 それからもう一つ,未修者の教育についてなのですが,司法試験の在り方についても,どこかで見直していくというか,検討するということが必要なのではないかと思います。現在の司法試験の合格者が1,500人ということになりますと,これは旧司法試験の最終段階の合格者数とほとんど変わらないということでございまして,合格者数を増やしていくとか,あるいは合格率を上げていくというような形で,未修者に対する司法試験自体の魅力を上げていかなければ,未修者教育を充実させる,あるいは未修者を取り込んでいくということをやったとしても,各法科大学院の努力だけではどこかに限界があるのではないかと危惧しているところでございます。以上です。

【山本(和)座長代理】
 それでは,皆さんの御意見の繰り返しになるかもしれませんが,最後ということですので,私も一言発言させていただきます。
 まず未修者教育につきましては,私自身もこれまで何度かワーキング・グループの中で未修者教育について考える機会を持ってきました。ただ,従来の議論は,先ほど日吉委員が言われたように,創設のときの基本理念,未修者の3年が基本であって,既修者はそれを1年短縮するものであるという,それを前提としたマンデートとして改革を論じるということでありましたので,基本科目の単位増とか,共通到達度確認試験等の中でどういう工夫ができるかということでありました。ただ,やはり私も未修者を毎年教えていて,ここ何年か思うことですけれども,未修者の中のレベルの違いというのは以前からかなり大きなものがありましたけれども,最近では,特にやはりかなり下の方のレベルになると,1年で追い付くということは到底難しいわけです。3年でも,これは到底追い付けないだろうというような感じの,それをひしひしと感じられるような学生がかなり出てきていて,相当これはきめ細かい対応というのが必要になってくる。そういう意味では,この基本理念という,ある意味でのこの建前の維持も含めて考えて,抜本的にやはり考え直さないといけない時期にまさに来ていると実感しております。ただ,実質的な問題としては,やはり法科大学院制度によって,従来,法曹に来なかったすばらしい人材が多く法曹に,様々な分野で活躍しているという事実があるわけですので,その実質の部分を何とか維持しながら,あるいはそれを維持するために抜本的な改革ということを考える必要があるだろうと思います。
 それから,既修者の部分ですけれども,私のホーム校の一橋大学でも,学部の卒業生は必ずしも一橋の法科大学院に来てくれないという問題があって,実は今年度から,学部1・2年生向けのゼミをやって,先ほどちょっとお話がありました,法科大学院の教育の模擬授業みたいなものをやるということで,私が1・2年生の授業をゼミ的な感じでやっているのですけれども,それで非常に感じたのは,そういうゼミに入ってくるわけですから,彼らはもう当然,法曹を明確に志望しているわけですけれども,それでもやっぱり法科大学院というものは非常に遠いものに見えているといいますか,具体的なイメージが全く持てていないように思いました。法科大学院の授業などを見学させてやると,非常に感激するというか,なるほど,こういうことをやっているのですかと言うわけですけれども,頭の中では分かっているのかもしれませんけれども,やはり法科大学院は非常に遠く思えて,結局,大学へ入ってくると,その志望者は何をするかというと,それは予備校に入って,予備校の中では予備試験を受けるものだと言われ,予備試験という確たるルートができてしまって,法科大学院はずっと遠いままに学部生生活を過ごしているということは,非常に実感的によく分かりました。
 そういう意味では,やはり学部に入った段階,まさに1年生の段階から,将来に向けたルート,法科大学院を通って法曹になっていくルートというのを,しっかりと学生,学部生に見せてやるということが非常に重要かと思います。そういう意味で,今,何人かの委員からも出ましたけれども,学部教育,それぞれの学部で事情が違うと思いますので,御指摘のとおりきめ細かい議論が必要だと思いますけれども,ここもタブーなしに議論していくということは必要なのだろうと思います。次期の法科大学院特別委員会というのは,恐らく法科大学院制度を抜本的に立て直すための最後のチャンスだと思いますので,本当にいろんなことを含めた抜本的な議論を是非やっていただきたいというふうなことを希望したいと思います。

【鎌田委員】
 これまで各委員のおっしゃられたことについて,まず何点か断片的にお話しさせていただきます。適性試験は入学後の成績等と相関性がないというのは,適性試験を実施していた側から言うと,そんなことはないと考えておりまして,そういうデータもあるわけです。しかしながら,この改革がなされた後で適性試験を各法科大学院がどう入学資格の中に使うか次第ではありますけれども,適性試験があるために受験者が少なくなったという勢いでこの改革がなされたことを踏まえると,適性試験を維持していくことは極めて困難な状況に立ち至るのではないかとは思っております。
 それから,早期卒業・飛び入学制度を活用した方が大体未修に入って高い合格率を維持しているというのは,少なくとも私の経験から言えば,法科大学院制度が始まった当初,早期卒業・飛び入学の人を既修に入れてはいけないという縛りがありましたから,早期卒業,飛び入学する人は学部でトップクラスの人なのですけれど,みんな未修に入らざるを得なかったということで,結果的に未修者の合格率が非常に高くなったというのは自然の成り行きだろうと思います。
 それから就職状況ですけれども,弁護士の就職しようと思ってもできない数が増えてきたと一時期言われていましたけれども,これは経済状況を反映しているわけで,大手弁護士事務所が,法科大学院ができた頃の採用人数まで復活することはないだろうと思いますけれども,仮にそれが復活すれば,多分,1事務所か2事務所で,就職できないと言っていた人の数は吸収できるぐらいの状況です。そういう意味で,この委員会でも入学者を厳格に絞ってはきましたけれども,法科大学院の定数自身はそれよりも少しバッファーのあるところに置いて頑張ってきたというのは,慧眼であったと思います。先頃からの経済状況の改善次第では法曹を志望する人がどんどん増えていく,あるいは司法試験に通っても,あるいは通らなくても,狭い意味での弁護士以外の進路にどんどん人が進出してきて,ようやくその成果が表れてきたところですから,そういった部分の拡大というのはなお視野に入れた上で改革をしていただきたいと考えています。
 そうはいいましても,未修でも3年あれば法曹になれるという想定で出発したものが,今は未修どころか既修の人も,学部,法科大学院を通じて5年は必要というのは,当初の構想が失敗したのか,あるいは日本人の能力が低かったのかということかもしれないですけれど,ここは何度も申し上げていますように,出口で想定している法曹像が,新しい制度を作ったときにイメージしていた法曹像と,実際の司法試験で合格させている人との間のずれが非常に大きいということなのではないかと思うんです。私は,有信委員が一般的におっしゃられたようなことが目指されていたのだと考えていて,問題の所在を発見して,どこに問題があって何を調べればいいかということを見通して,自分でちゃんと調べる能力があって,それに基づいて議論を立てて,プレゼンテーションをしてネゴシエーションができる人を想定していたわけで,ありとあらゆる法律に詳細な知識を詰め込んでいるのではない人を作ろうというのがこの制度だったはずですけれども,司法試験はそれに応じた改革がなされていないということであれば,結局,司法試験に通るための準備に四年,五年は最低掛かりますというふうなことになっていくのはやむを得ないのかなと思う反面,そこの目標に達するための手段として,法科大学院に行くほかに予備試験があるという制度が存在しているとしたら,法科大学院というのは一体どんな役割を果たすのか。それぐらいだったら,学部で四年,五年,しっかりやればいい。そこに,なぜ法科大学院が上に乗らないといけないのかの説明が,ますます難しくなってきているのだろうと思いますので,その辺のところをきちんと正当化できるような議論と組み合わせてやっていただくと同時に,未修者が,もう未修の法曹資格者を日本社会は期待していないのだというふうな感覚を持たないで済むような説明のできる新しい制度というのを是非作っていただきたいということを,次の期の委員会には期待したいと思います。

【井上座長】
 論点ペーパーの中にも出ているところですが,次期の特別委員会で,現実的にはおそらく非常に大きな問題になってくるのは,このアンケート調査の結果からも分かりますように,学生の方は,できるだけ短い時間で,時間と経済的な負担を最小限にして,法曹になりたいという意向が強いし,社会的にもそういう方向でのプレッシャーがますます強くなっていくだろうと思うわけですが,そういう方向がどんどん進んでいくと,先ほどから話題に出ている法学部との連携あるいは一貫ということが,ますます求められるようになっていくだろう。そうなると,今は,未修と既修の2本立てになっているわけですが,今でも両者の間で本当に整合性がとれているのかが問題で,これまで理念としては二つ併用ということでやってきたのですけれども,現実その理念通りにはなっていない。理念と現実とがますます乖離してきているわけですが,法学部との一貫ということが強調されると,そこの不整合性がよりあらわになっていくだろうと思われますので,そこにまで立ち返った抜本的な見直しというのが必要になるのではないか,と思われます。
 その場合に,多様性,開放性というのは当初の理念の一つで,これは二つの意味があった。一つは,当時の司法試験の状況を思い起こしていただきたいのですけれども,激烈な受験競争で,3%を切るぐらいの合格率で,しかも,何年も専ら受験勉強していないと受からない。その結果,タコつぼ化といいますか,受験勉強だけの頭になってしまう。そういう人が法曹になって本当に大丈夫かという懸念があって,やはり受験科目以外の多様な教育を受け,多様なことを学んでもらって,豊かな法曹になってもらいたい。そういうのが趣旨の一つであったわけです。
 もう一つは,司法試験自体が制度としては非常にオープンなもので,法学部を出ていなくても受けることができたわけです。それに対して,法科大学院を作るときには,原則として法科大学院を修了することを司法試験受験の資格とすることにしましたので,受験資格を独占した形になるため,それだと他からの参入の可能性を封じてしまい,従来オープンであったことの良さを失わせてしまう。そこで,開放性,多様性ということが強調された。それを,法科大学院の入口と,入ってからの教育の中身で補おうとしたわけですが,現実はそのとおりにはいっていない。それで,見直さざるを得ないということになっているのだと思うのですが,今度は,見直すとして,多様性とか開放性をどこで確保していくのかが問題となっていくだろう。それが今まで御議論になったことだと思うのですが。
 もう一つ心配されるのは,船体として短縮の方向になるとしても,出口というか,法曹となる段階で要求される学力ないし専門的学識が相当レベルの高いものであり,それがそのまま維持されたままですと,学力不足とされる人が増えることになるおそれが出てきます。そして,それがまた,ロースクールを出ても役に立たない,ロースクールは役割を果たしていない,といった評価に走らせかねませんので,その辺のところをやはり十分注意深く考えていく必要があると思のんです。一つは,個々のニーズに応じた柔軟な教育課程の組み方を可能にするということで,短縮してもやっていける人はそれでいいのですけれども,今の2年,あるいは3年の教育課程でも学力不足という人が実際かなりいるわけで,そういう人にはむしろ,もっと時間を掛けた教育をしないといけない。そういうことが可能なような制度の組み方を考えていかないといけないということです。もう一つは,短縮ということを本当にやろうとするなら,出口の方の司法試験もそれに適切に対応して変えてもらわなければならないということです。もちろん,法曹となって利用者に適切な法的サービスを提供できることを担保するためには,最低限一定レベル以上の学力,学識があることを確認することが不可欠ですから,それよりレベルを下げろということではないのはもちろんですけれども,やはり,それに先立つ教育期間の短縮ということを踏まえて,司法試験の範囲や問題内容,その難度をについて見直すことをやっていただく必要があるだろうということです。そういうふうに私自身は思っています。
 ほかにご発言はありませんか。
 御発言がないようですので,このぐらいにしたいと思います。次期の第9期の特別委員会におきましては,ただいま御意見いただいた内容をも踏まえて,未修者に対する教育の在り方や,法学部教育との連携の在り方,法学部教育それ自体等々について,立ち入った検討をして頂かなければならないだろうと思います。本日を含め皆様から頂いた御意見等につきましては,事務局の方で整理をして,第9期特別委員会に向けて適切な対応を取っていただければと思います。
 本日の議事は以上ですけれども,最後に事務局の方から御挨拶があるということですので,お願いします。

【常盤高等教育局長】
 第8期の法科大学院特別委員会の最後でございますので,一言御挨拶を申し上げます。高等教育局長,常盤でございます。
 今期の法科大学院特別委員会では,この2年間でワーキング・グループを含めまして計26回の会議をしていただきました。大変精力的な御審議を頂いたことに感謝申し上げたいと存じております。
 法科大学院制度は引き続き厳しい状況に置かれている中でございます。今期は,法科大学院の当面目指すべき定員規模,当面2,500人程度ということを決めていただく。あるいは統一適正試験の在り方について御審議を頂いたところでございます。これらの御審議を踏まえて,法科大学院の充実・強化という方向での取組を,文部科学省としても進めてきたところでございますが,特に定員規模につきましては,平成29年度の入学定員の見込みが2,566人ということですので,目標としている数字と,ほぼ達成される状況ということだと思います。
 ただ,この定員規模の適正化,私も実は局長の前で担当の審議官もさせていただいていたので,ずっと長くこの会議での御議論をフォローさせていただいているのですが,定員規模の適正化というのは,ある意味,現在のシステムをどう安定化させるかということで,この三,四年取り組んできたものだと思います。その中で,公的支援の見直しであるとか,そういう行政的な手法を使いながら,何とか規模の問題で安定化させたいということで取り組んできたと思いますが,今申しましたように,その目標はほぼ達成されてきているという状況でございますので,次のフェーズでは,やはり,今日もいろいろ御議論いただきましたけれども,現在の法曹養成のシステムをどう改革していくのか。そして優秀な修了者をどれだけ増やしていけるのか。あるいはその前提として志願者を呼び込んでこれるのかということが重要なフェーズになっているのだろうと思っています。
 その中で,今日も,就職の問題であるとか出口の問題,それから入口の問題として適性試験の問題もございましたし,未修者の受け入れの問題,それから法学部との関係。法学部との関係については,今日の統計,アンケート調査では,母数が限られていますけれども,3割の人は法曹に向けての考えを持っている,そういう目標を持っているということですが,逆に言うと残りの7割の方,数で言えば数万いるわけですので,こういう方々についての法学部教育がどうあるべきなのかということも,この場で議論するかどうかはともかくとして,重要な問題としてやはり課題としてあるのだろうと思っています。それから,入口と出口をつなぐ修業年限,時間的なコストの問題ですね。ここをどういうふうに考えるか,今日も御議論がいろいろありましたけれども,その問題もあろうかと思っております。それから,このシステムを支える教員とか指導者の問題についても,議論が今日出たわけでございます。
 そういう意味で,現状の法曹養成システムを改革するにつきましては,非常に広範にわたり,抜本的なという言葉が,今日,各委員から聞かれたわけですけれども,抜本的な改革を要するという認識は広く共有されているのではないかなと思います。そういう意味で,司法試験の問題,法務省にも是非,御理解,御協力を賜りながら,法曹養成の抜本的な改革ということについて,次期のこの会議では議論を深めていく必要があるのだろうということを,今日実感させていただいたわけでございます。
 文部科学省といたしましても,これまでに引き続いて,更にこのシステム改革の議論を深め,また行政的な手法で対応できるところはどんどん進めていきたいと思っております。
 今期の最後でございます。この2年間,先ほど申しましたように,非常に精力的な御審議を頂いたわけでございますけれども,そのことについて改めて感謝を申し上げまして,御礼の言葉とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

【井上座長】
 私の方からも,御礼申し上げたいと思います。
 私はどうも不規則発言が多く,不必要に議論を乱してしまったところもあったかと思いますが,皆様の御理解と御協力を頂きまして,2年間という限られた期間ながら相当思い切ったことができた,あるいはできつつあると考えております。どうも本当にありがとうございました。
 それでは,本日の会議をこれで終了いたします。

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