法科大学院特別委員会(第51回) 議事録

1.日時

平成24年9月20日(木曜日) 13時~14時30分

2.場所

文部科学省中央合同庁舎7号館東館3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 現状報告
  2. 法科大学院の改善状況調査について
  3. 平成24年司法試験の結果について
  4. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)田中成明委員
(専門委員)磯村保、井上正仁、樫見由美子、鎌田薫、木村光江、椎橋隆幸、杉山忠昭、土屋美明、土井真一、永田眞三郎、長谷部由起子、日吉由美子、松並孝二、山本和彦の各委員

文部科学省

常盤高等教育局審議官、内藤専門教育課長、今井専門職大学院室長、佐藤専門教育課課長補佐

5.議事録

【田中座長】  
 開催予定時刻も過ぎましたので、第51回中教審大学分科会法科大学院特別委員会を開催させていただきます。
 それでは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

 

【今井専門職大学院室長】  
 配付資料の御説明をさせていただきます。
 資料1は、前回の第50回の議事録の案でございます。内容を御確認いただきまして、御意見等がございましたら事務局まで頂きたいと存じます。それから、資料2-1、2-2、2-3につきましては、前回の第50回の会議以降、法科大学院制度にまつわる関連でいろいろ動きがございましたので、御報告いたします。資料2-1は「法科大学院教育改善プラン」、資料2-2は「法科大学院の組織見直しを促進するための公的支援の更なる見直しについて」、そして資料2-3につきましては、政府全体の検討体制が整いましたので、「法曹養成制度関係閣僚会議及び法曹養成制度検討会議について」の御報告でございます。続きまして資料3は、改善状況調査ワーキング・グループで、本年の夏に関係の法科大学院にヒアリング調査をしていただきました。その改善状況に関する調査結果の御報告のための資料でございます。そして資料4-1から4-6までは、今月11日に発表がございました平成24年司法試験の結果に関する資料でございます。
 以上、配付資料でございます。特段何か欠けているものがございましたら、事務局までお申し出いただきたく存じます。
 以上でございます。

 

【田中座長】  
 ありがとうございました。それでは、議事に入らせていただきます。
 まず前回の会議、7月19日ですけれども、それ以降の法科大学院に関する動向について、事務局より説明をお願いいたします。

 

【今井専門職大学院室長】  
 それでは資料2-1、2-2、2-3に基づいて御説明させていただきます。
 まず資料2-1でございます。前回7月19日には、この特別委員会におきまして、「法科大学院の教育改善に向けた更なる充実に向けた改善の方策」について御提言を頂きました。本日は緑色の冊子で整いましたので、机上に置かせていただいております。お持ち帰りいただけたらと存じます。
 この提言を踏まえまして、文部科学省におきましては、資料2-1でございます法科大学院を中核とする法曹養成の好循環への転換を目指しまして、直ちに法科大学院の教育改善プランを策定し、20日の段階で公表をさせていただきました。
 内容につきましては、1枚目にございますように、まずプランの趣旨でございます。策定の趣旨につきましては、文部科学省といたしまして、この特別委員会の提言を踏まえ、法科大学院の教育改善プランを策定し、法科大学院を中核とする法曹養成が好循環に転換することを目指すという観点から、成果目標の設定、そして具体的に取り組むべき改善方策を明記し、かつ、その取り組むべきスケジュールについても明記した上で、その計画を明らかにして取り組むということで公表をさせていただいたものでございます。
 その具体的な内容につきましては、2ページ目を御覧いただけたらと思います。柱はローマ数字大文字の1、2、3、4の4本柱でございますが、これは中教審の特別委員会の提言の柱に沿った形になっています。「1法科大学院教育の成果の積極的な発信」、「2課題を抱える法科大学院を中心とした入学定員の適正化、教育体制の見直し等の取組の加速」、そして3ページ目の「3法学未修者教育の充実」、そして「4法科大学院教育の質の改善等の促進」で、それぞれ私どもとして取り組むべき改善方策について記載をし、実施年度等を入れて対応させていただいたところでございます。
 このうち、特に2ページ目のローマ数字2の(2)でございます。「法科大学院に対する公的支援の更なる見直し」につきましては、より具体的に施策として打ち出しましたので、その点を資料2-2に基づきまして、御説明、御報告をさせていただきたいと存じます。
 資料2-2でございます。「法科大学院の組織見直しを促進するための公的支援の更なる見直しについて」と題しまして、今月7日に発表させていただいたものでございます。この公的支援の更なる見直しにつきましては、基本的な考え方は7月19日に、この特別委員会の場において御提言を頂きましたものをベースに、私どもとして施策に落とし込む作業をさせていただいた状況でございます。概要にございますように、深刻な課題を抱える法科大学院につきましては、その自主的・自律的な組織見直しを更に促進するため、この公的支援の更なる見直しを行わせていただけたらと考えて発表させていただきました。基本的には、新たに入学定員の充足率を指標として追加するなどの措置を講じさせていただいたところでございます。
 2番の対象、3番の具体的措置につきましては、若干文章では分かりづらいところがございますので、一番最後に付けた資料を御覧いただけたらと存じます。カラー刷りで補足説明資料と題した資料でございます。法科大学院への公的支援の更なる見直しの対象範囲、そしてその見直しの比較でございます。
 まず左側の絵を御覧いただけたらと存じます。「法科大学院の組織見直しを促進するための公的支援の更なる見直し」はそもそも平成22年9月に発表させていただきまして、平成24年の予算から、現在適用しております。その具体的な仕組みといたしましては、青い六角形をした箱にありますように、3年連続で司法試験合格率が全国平均の半分未満等の指標に該当した場合であり、かつ右側の緑の六角形でございますが、直近の競争倍率が2倍未満であった場合につきまして、この青い塗られた場所に該当してしまった場合には、公的支援の見直しの対象とさせていただくということでございます。平成24年、本年度は6校の大学が該当しておりますが、実は平成25年につきましては、今月の11日の司法試験の合格発表をもちまして、合計で4校、国立が島根大学、それから私立大学が3校でございまして、大東文化大学、東海大学、愛知学院大学がそれぞれ該当したという状況でございます。これら四つの大学におかれましては、この公的支援の見直しに該当したことをしっかり受け止めていただいて、その改善に向けた取組を今後加速させていただけたらと考えているところでございます。
 こういった現行の仕組みに対しまして、右側の赤い四角で囲ってある更なる見直しの状況でございます。現行の仕組みにつきましては、この24年度、25年度予算までとして対応させていただきたいと存じますが、平成26年度以降は、この赤い中にある更なる見直しの指標に基づいて対応させていただけたらと考えております。この右側の赤い四角の中にありますように、今回新たに赤い六角形の概念、指標を追加させていただきました。これは2年連続で入学定員の充足率が50%未満ということでございます。この2年連続につきましては、やはり単年度だけですと、いわゆる歩留りの読み方がなかなか難しいところがございますので、大学のそういったところの現場を配慮いたしまして、2年連続で50%未満であった場合ということで指標を設定させていただきました。
 その結果、三つの指標の適用状況がこの図に表されているとおりでございます。文部科学省といたしましては、この入学定員の充足率を入れる観点から、二つ大きく適用ルールを考えさせていただきました。
 一つは、この三つの課題を示す指標が二つ以上、つまり複数重なった場合には公的支援の見直しをするということでございます。その結果、ここにありますように、従来から青い塗りつぶしの部分でございます合格率と競争倍率の指標の重なりに加えて、黄色の塗りつぶしの部分にございます司法試験合格率と入学定員の充足状況で重なった所に該当した場合には、やはり同じように公的支援の見直しを、また競争倍率と入学定員の充足率に重なったこの赤い塗りつぶされた所に該当した場合にも、公的支援の見直しの対象ということで考えさせていただくことにいたしました。
 これに加えまして、二つ目の適用ルールでございますが、それぞれの指標は、法科大学院におきまして課題を抱えている指標ということでございます。そういった指標で、特に厳しい状況、課題が大きいと思われることにつきましては、先ほどの適用ルールのように複数の指標に該当しなかった場合であっても、このところの指標で、特にオレンジ色に塗りつぶした所に該当した場合には、同様に公的支援の見直しの対象にさせていただくということで、今回考え方の整理をさせていただきました。
 それぞれオレンジ色の所の御説明でございますが、まず青の六角形につきましては、3年連続で司法試験の合格率が全国平均の半分未満であり、かつそのうちの直近の合格率が平均の4分の1未満という、合格率がかなり下がってきてしまっているという状況に該当した場合には公的支援の見直しの対象に、また、競争倍率2倍未満の緑の六角形の中で、特に2年連続で競争倍率が2倍未満になってしまった大学につきましては、単独の指標だけであったとしても公的支援の見直しの対象として整理をしております。
 そしてまた、赤の六角形の入学定員が充足率50%未満の所でございますが、これも2年連続で該当した場合であり、かつそのうち直近の充足率が25%未満、つまり4分の1以下という状況に該当した場合にはやはり公的支援の見直しの対象ということで、単独の指標であっても状況が極めて課題が大きいと認められる場合には公的支援の見直しをするという、二つ目のルールを設けさせていただきました。
 以上、公的支援の見直しの対象となるルールは、大きくは二つでございます。
 それに加えまして、赤枠内の下段にある米印の赤字での記載部分でございますが、今回、入学定員の充足率と新しい指標を追加したことによりまして、整理すべき点として競争倍率との関係を整理する必要が生まれてまいりました。具体的に申し上げますと、仮に大学に対しての志願者が増えない状況におきましては、この競争倍率と入学定員の充足率というのはやはりトレードオフの関係になってしまいます。その概念としては具体的には二つございまして、一つは、志願者が増えない中で競争倍率は2倍以上に保とうといたしますと、どうしても合格者を絞らなければいけないという観点から、結果として入学定員が極めて数が減ってしまうという状態が生まれるということ。一方で、入学定員充足率を高めようといたしますと、どうしても志願者がいない中でありますと競争倍率を割に諦めて対応するということが考えられるという状況でございます。
 そういったことを前提といたしまして、やはり私どもといたしましては、合格率の指標、それから競争倍率の指標というのは、教育の質の担保の確保を考えている指標でございますので、この緑の競争倍率の指標をやはり重視していただく必要があろうということを考えております。その結果、赤字で書いてございますように、その趣旨を各大学にも御理解いただくために、また、そういった形の運用ができるように対応させていただいた特別な補足を追加しております。それはここにありますように、ある当該年度の入学者選抜における競争倍率が2倍未満であった場合には、その年度の入学定員の充足率がたとえ50%以上であったとしても、そこは50%を超えていないというみなしをさせていただくということでございます。こういった補足のルールを追加させていただくことによりまして、各大学におきましては、まずは競争倍率2倍を確保するように動いていただく。その2倍を確保した上で、入学定員の充足率をどうやって50%に上げていくかという努力をしていただく。こういうことをお願いしていくということを考えさせていただいたところでございます
 以上が、今回の公的支援の更なる見直しの大きなルールの整理でございました。
 それにあわせて、対象の具体的な措置でございますが、基本的にはこの青い塗りつぶした所でございます。一番下の用例にございますように、公的支援の見直しに該当した場合の削減額は、現在実施をさせていただいているとおり、つまり現行どおりとさせていただきたいと考えております。その上で、この青色の部分から黄色、赤色、オレンジ色の部分へ行くごとに、それぞれ半額ずつ、その公的支援の見直しの額を減額して対応していきたいと考えております。結果、黄色に該当した場合につきましては、青色に該当した場合に対して2分の1の減額幅、また赤に該当した場合につきましては黄色に該当した場合に対しての半額、つまり青色に対しての4分の1の減額幅、そしてオレンジ色の部分に該当した場合には赤に対しての更に半額、青色に対しては8分の1の減額ということで考えさせていただくことといたしました。
 以上、これが指標の適用の関係、それから具体的な見直しの状況でございます。
 また資料2-2に戻っていただきまして、3ページ目の4番の実施時期についてでございます。
 実施時期につきましては、26年度の予算から対応でございますが、それぞれ指標1、2、3、そして先ほどの単独での状況が悪い対応のローマ数字小文字の1、2、3がございます。その上で、指標3及びこのローマ数字小文字の3につきましては、一つ特例を設けさせていただいたところでございます。米印5番の所でございますが、平成26年度の予算の見直しに限りましては、以下の特例を設けさせていただくことといたしました。
 一つは、まず原則としては、2年連続で入学定員の充足率を見ますので、24年度と25年度の入学定員の数字をとり、判定をいたします。ただこのうち、25年度の入学定員の充足率を算出する際の入学定員につきましては、平成25年度の6月末、つまり来年6月末までに平成26年度の入学定員の見直しを行っていただき、文部科学省に御報告いただいた場合には、その26年度の入学定員の数字を用いて25年度の入学定員の充足率を適用するものとして考えさせていただくことができるということにしております。
 この趣旨につきましては、現在、25年度の入学選抜につきましては、もう実施が行われております。つまり各大学が募集定員を示し、そして現在、例えばA日程という形で既に着手しておりますので、学生若しくは大学におきましては来年の募集定員、また入学定員を念頭とした形でセットされておりますので、この点につきましては各大学の御判断で見直すということもあろうかと思いますが、やはり現場での混乱を招いてはいけないという観点から、26年度の入学定員の見直しをこれから時間をかけてしっかりと検討していただいて、来年の6月末、つまりおよそ各大学で26年度の募集人員をかける前までに、私どもに御報告を頂ければ、その数字を用いた対応させていただくということでございます。
 この結果から、大学では、25年度の見直しも当然でございますけれども、大きくは恐らくは26年度の入学定員をしっかりと見直していただくような方向で検討が進むことが想定されるという状況で考えた特例でございます。
 さて、公的支援の見直しについてはやや複雑ではございますが、以上のような形で今回更なる見直しを9月7日に発表させていただきました。私どもといたしましては、この指標に基づいて、各法科大学院が自主的、自発的にその見直しに着手していただくこと、これを更に促進をしていくことを進めていきたいと考えているところでございます。これが2点目でございます。
 最後に、資料2-3でございます。今後の法曹養成制度の検討体制について御報告をさせていただきたいと存じます。
 今後の法曹養成制度の検討に関しましては、先の通常国会におきまして、裁判所法等の改正が行われたところでございます。この裁判所法等の改正の中で、この法曹養成制度の在り方につきましてしっかりと検討することというのが、その改正案の中に盛り込まれております。この法律の成立を受けまして、政府全体では、この1ページ目の上にありますように、8月21日に法曹養成制度関係閣僚会議が閣議決定に基づき設置をされ、第1回目の会合が行われたところでございます。その構成につきましては、議長が内閣官房長官、そして副議長が法務大臣、文部科学大臣、そして議員が総務大臣、財務大臣、経済産業大臣ということでございます。この閣僚会議のもとに、更に法曹養成制度検討会議が設置をされております。ここの構成メンバーにつきましては、関係政務、それから有識者ということになっておりまして、一番下でございますが、この検討会議では、この5月にまとめられました法曹の養成に関するフォーラムによる論点整理の内容も踏まえつつ検討を行い、1年以内に検討結果をまとめるということで作業が進められることになっております。
 具体的には、ページをおめくりいただきますとその構成メンバーが出てまいります。これが検討会議の構成でございますが、ここにございますように関係政務の方々と有識者ということでございまして、私どもの法科大学院特別委員会にも委員として参加を頂いている井上委員、それから鎌田委員が参加をされているという状況でございます。
 また、一番最後の所でございます。検討の予定でございますが、第1回の会議が8月28日に、第2回につきましては、つい先ほど会議が開催をされまして、その検討が着実に進んでおります。なお、第3回、4回、5回につきましては、法曹養成制度の正に全体論、総論、そして、年末に予定されております第4回、第5回では、法科大学院について議論がされる。そういった形で検討が進んでいくという状況でございます。
 以上、7月19日以降の法科大学院制度を取り巻く環境についての御報告でございました。
 以上でございます。

 

【田中座長】  
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明につきまして、御意見、御質問がございましたら御発言をお願いいたします。

 

【長谷部委員】  
 公的支援の見直しにつきまして、若干複雑なものですから教えていただきたいと思います。2ページ目の米印1と書いてある所でありますが、ある年度の入学者選抜における競争倍率が2倍未満の場合、当該年度の入学定員の充足率が50%以上であっても、50%未満とみなすということになる。この規定はどう効いてくるのかということを伺いたいのですが、そうしますと、例えば2倍未満の場合は指標1に該当するということになりますけれども、かつこれで充足率が50%未満とみなされるとしますと、1ページ目の方の指標1と指標3に同時に該当するということになるかと思います。そうなりますと、先ほどの図に出てきましたオレンジ色の所というのはなくなってしまうのかなという気がしたのですけれども、ここはいかがでしょうか。

 

【今井専門職大学院室長】  
 御説明をさせていただきます。
 先ほど申し上げましたこの補足のルールにつきましてですが、今、正に長谷部委員が御指摘のとおり、特に直近の競争倍率の2倍未満で、かつ2年連続で競争倍率2倍未満という条件に対して、この制度に適用させていただいておりますが、この補足のルールを入れることによりまして、確かにオレンジ色に該当した場合には、その補足のルールの結果、ピンク色の所にある意味移動していくということになるというのが、この仕組みのルールになるところでございます。それだけ競争倍率をしっかりと2倍には守っていただきたいということで考えていた仕組みでございますので、理念的にはここにあるような形での公的支援の見直しを、更に競争倍率を入学定員の充足率との関係でしっかりと守っていただくという意味で、補足ルールを入れたことによって、結果として三つあるうちのオレンジ色の一つ、競争倍率を2年連続2倍未満というのは、該当した段階で補足のルールによってピンク色に移動するということになるのは、この仕組みの中でそうなるという状況にあります。
 また、具体的には、先ほど申し上げましたように、その数字につきましては、例えば競争倍率が本年度の入学試験で1.8倍であったのですが、そのときの充足率は0.8を維持した、若しくは0.6を維持したという状況であったとすると、競争性が確保されない中で一応0.5以上は確保しているということになりますが、この補足ルールによって、充足率は0.6は確保しておりますけれども、この公的支援の見直しを適用する際にはそこは達成できていなかったというふうにみなさせていただくということになります。そうしますと、例えば次の前の年が、競争倍率が同じように1.7であるとか1.6であって、かつ充足率が例えば0.4とかという場合には、2年連続で入学定員の充足状況が悪かったというふうな認定をさせていただくという考え方になるところでございます。

 

【長谷部委員】  
 そうしますと、かなり極端な例を申しますと、例えば競争倍率が2年連続1.9ぐらいであったという場合で、充足率も2年連続0.9であったという、そういう場合であったとしても、ピンク色の所に該当するということになりますか。

 

【今井専門職大学院室長】  
 考え方としては、それに該当いたします。そこはこの特別委員会でもいろいろ御議論いただいておりますが、競争倍率2倍というのは十分な条件なのかというと、それはもっと頑張っていただくということを念頭に置かれておりますので、公的支援の仕組み上、どこかで線を引かなければならないという意味では、競争倍率につきましては厳格に対応させていただくということを考えているところでございますので、今、先生が言われたとおりに、もし仮に数字がなればそうなってくるという状況でございます。

 

【長谷部委員】  
 よく分かりました。そういう御趣旨であれば、この図のオレンジ色の部分は、ピンク色の方に入れていただいた方がよろしいのではないかと思いますが。

 

【今井専門職大学院室長】  
 御指摘はごもっともだと思っておりまして、まず恐縮でございます。今回7月19日にこの特別委員会で御検討いただいて、その基本的な考え方に基づいて整理をしていくと、やはり三つの指標の組合せというのは大変難しい状況が生まれてきたというのがございまして、この趣旨はイメージということでございまして、何に対応するかをまず分かるようにした上で、更に緑色と赤色の関係がどうしてもトレードオフの関係になってしまうというところに赤字の補足部分を入れたということなので、先生御指摘のとおりで、本当は緑色の六角形の中のオレンジ色の部分はある意味、ピンク色になるということなのですが、一応絵としてはそのまま描かせていただいて、結果としてはこのオレンジ色の所に該当した場合には即ピンク色の方になってしまうということは、この仕組みにおいてあり得るという状況でございます。

 

【田中座長】  
 なかなか分かりにくい図ですけれども、それぞれ法科大学院以外のいろいろな文科省の助成のポリシーの基準との整合性を考えていくと、こういうややこしい処理になるということのようです。

 

【長谷部委員】  
 あともう一つ。御説明自体は一貫していると思うのですが、競争倍率2倍というのは、確かにそれを維持できないのは低い、非常に悪いというのは、数年前まではそうだったと思いますけれども、法科大学院の受験者が非常に減ってきているという状況を考えますと、また、入学試験の日程などについても以前よりも更に過密な状況になっておりまして、ぶつかる場合が多くなっている。そういうことを考えますと、2倍をキープするのはなかなか現実的には厳しい状況にあります。そうした中で、2倍を少しでも切ると、即充足率も0.5を満たさないというふうにみなしてしまうというのは、実質的にいかがなのかなと思います。

 

【今井専門職大学院室長】  
 今の御質問の点でございますけれども、確かに志願者の方はどうしても今、減少傾向にある中で、恐らく各大学担当の方がそこは苦しまれるかと思います。そのときに、私どもといたしましてここを考えるべきは、2倍未満にする、少ないパイの中で規模を縮小していくと、要はどうしても入学者が減ってしまうというのはあろうかと思います。
 ただ、そのときに、やはりその中でも競争性をしっかり担保していただくというのが大事だと思っていると同時に、その際に、この公的支援の見直しを見ていただくと、入学定員の所をしっかり見直していただくことで、規模を、例えば100とか80とか60とか、40というのもございますが、そういった数字は果たして、今、適切な状況であるのかどうかを大学に考えていただくことで、仮に競争倍率を守るために入学者を絞っていくという作業と同時に、そもそも大学として用意をされている入学定員の規模自体が適切なのかどうかということも併せて見直していただく中で、より各大学の現状に合った見直しを進めていただければというのが本心でございまして、私どもとしては、先ほどの、例えばオレンジ色がピンク色に行くとか、今の先生の御指摘も含めて、各法科大学院に対していろいろな場を使って、しっかりとメッセージを出していきたいというふうに考えていきたいと思います。

 

【田中座長】  
 競争倍率の問題は、各法科大学院でいろいろな入試の仕方を考えて、形の上では一応競争率を2倍以上とする方式にしているのですが、この点をクリアすると、また、それに伴って新たな問題が生じているということでして、今おっしゃったように、やはり入学定員自体はきちんとしていただきたいということも重要なので、何か小手先の数だけ合わせる入試の方法を考えて対応している所をチェックする必要があるということです。その辺り、また追加的に検討する必要があるかもしれません。

 

【永田委員】  
 今の点は、改善状況の調査のワーキング・グループでも、それを指標にして指摘をしているわけでございますけれども、総志願者数が減ってきているということで、相対的に2倍という意味が変わってはきていますけれども、しかしながら、どの法科大学院も大抵は複数、あるいは三つ、四つを志願しているわけですから、それほどなお厳しいルールではないということと、もう一つ、私どもも考えまして、トップクラスが敬遠されて、非常に優秀な学生で1.3倍しかないというような大学もありますけれども、そういう状況は全くない。やはりパフォーマンスが優れている法科大学院は非常にまだ厳しい状態にありますので、もう一度、競争倍率を割っているという大学については、やはり学生に選ばれていない。そういう法科大学院であるという状況がありますから、我々も競争率2倍というのはなお維持すべき基準かなというふうに考えて、調査してまいりました。
 以上です。

 

【田中座長】  
 ほかにございますでしょうか。今御指摘がある点については、また各法科大学院の対応状況などを見ながら、引き続き検討していくことにして、この文科省の方針でまずやっていくことにしていただきたいと思います。
 それでは、続きまして、改善状況調査ワーキング・グループの主査である永田委員より、各法科大学院における教育の改善状況に係る調査結果について、御報告をお願いしたいと思います。

 

【永田委員】  
 資料の3で、6ページにわたる調査結果をお渡ししておりますけれども、それにしたがいまして説明します。少し長くなります。
 まず、冒頭の報告書の1ページ目からですが、経緯及び趣旨につきましては、本日は、本年6月に開催されました本特別委員会における平成24年度の入学者選抜に係る審議を踏まえまして、改善状況調査ワーキング・グループで実施した各法科大学院の入学者の質の確保に関する取組に係る改善状況調査の結果について御報告いたします。
 平成22年以降、入学者選抜に関しましては、過去2回の調査を実施いたしました。この間、多くの法科大学院において競争的な環境の整備が進み、入学者の質の確保に努めるようになってきております。しかしその一方で、依然として競争性の確保が不十分である、あるいは適性試験の点数が著しく低い者を入学させているという法科大学院も、一部ではございますが、存在する状況が確認されております。
 この状況を踏まえまして、今回の調査ではこれまでどおり、平成24年度の入学者選抜に関しまして、その競争性の確保や適性試験の適正な位置づけがなされているかという調査をするとともに、今回の調査から新たに入学定員の充足状況や入学者数に課題があると考えられる法科大学院を対象に調査を実施いたしました。
 調査の概要でございますが、報告書の2ページ目ですが、それについて御報告いたします。
 今回の調査では、書面調査を41校に対して、ヒアリング調査を25校に対して実施いたしました。
 まず、書面調査につきましては平成24年度の入学者選抜の結果を踏まえまして、競争倍率が今問題になっておりました2倍未満の法科大学院、適性試験の点数が下位15%未満の者を合格させた法科大学院、入学定員の充足率が5割、50%に満たない法科大学院に対しまして、その理由や入学者の質の確保に向けた今後の取組について報告を受け、調査を実施いたしました。
 さらに、書面調査の回答を分析いたしまして、ワーキング・グループにおける審議を行った結果、入学者選抜における競争倍率が2倍未満である、適性試験の点数が下位15%未満の者を合格させている、又は、平成23・24年度の入学定員の充足率が50%未満である、この3条件を指標にいたしまして、二つ以上に該当した法科大学院、あるいは平成24年度の入学者数が一桁となった法科大学院を対象として、入学者の質の確保に関する取組の状況、入学者が少数になった場合の今後の運営方針、双方向的・多方向的な授業の実施への支障がないかなどを確認するため、ヒアリング調査を実施しました。
 調査の結果でございますが、次のような内容の所感をワーキング・グループとして御報告いたします。
 総論といたしまして、報告書の2ページから3ページの所でありますが、法科大学院が法曹養成の中核的機関として優れた人材を輩出するためには、質の高い入学者の確保、質の高い効果的な教育の実施、厳格な成績評価・修了認定による修了者の質の確保といった、教育課程全体を通じた取組が必要であります。その意味で、まず入り口段階にある入学者選抜において入学者の質を確保することは極めて重要であります。したがって、修了者の司法試験の合格状況など、依然として多くの課題を抱える一部の法科大学院では、入学者の質を確保するために、競争性の確保や入学者選抜における適性試験の結果の取扱いの厳格化とともに、一定規模の学生の確保に向けた努力が強く求められるということを指摘しております。
 次に、4ページから6ページにわたりまして、法科大学院の説明とそれに対する本ワーキング・グループの所感を御報告いたします。
 まず、競争倍率の確保については、2倍未満となった理由について、先ほどもございましたが、全国的な志願者数の減少や他の法科大学院との競合などを挙げる法科大学院が多く、その改善方策として、広報活動の強化や入学者選抜の内容・方法・日程・会場設定等の工夫をしている旨が示されました。しかし、入学者総数の多寡にかかわらず、入学者の質の確保は重要であり、そのための競争性の確保は不可欠であるということから、全国的な志願者数が減少しているということが競争性の確保を軽視するという理由にはならないということを指摘しています。
 また、競争倍率が2倍を下回ったことについて、入学定員の充足や入学者の確保を重視したために下回ったとする法科大学院や、前年までの入学者選抜に比べて合格水準を下げているわけではないことから、入学者の質は確保できているなどを説明する法科大学院もございました。しかし、競争性の確保を軽視して一定数の入学者を確保しても、最終的に修了できない者や、司法試験に合格できない者を多数出す結果になります。また、前年と比べて合格水準を下げていないという説明についても、それは説得力があるものとは言えないというふうに指摘しております。
 さらに、先ほど座長からありました複数回行った入学者選抜全体を通じて、競争倍率が2倍を上回ることを目標としたが、各回の競争倍率2倍を堅持しなかったために、結果、競争倍率が2倍を下回ったと説明する法科大学院もございました。しかし、入学者選抜全体で競争倍率2倍を上回ったとしても、各入試日程や試験区分により選抜機能に差がある状況は望ましいものではないことから、入学者選抜全体のみならず、各回でも競争倍率は2倍を上回るように努めることが求められるということを指摘しております。
 次に、適性試験についてでありますが、今後は総受験者の下位15%を最低基準に設定するということを表明する法科大学院が幾つか見られました。その一方で、下位15%よりも低い点数を最低基準として設定している法科大学院、あるいは面接試験の結果や社会人としての職歴を加味して、下位15%未満にある者でも合格することがあると説明する法科大学院もございました。また、適性試験の成績と、従来からある議論でありますが、入学後の成績や司法試験の成績との間に有意な相関関係が認められない、あるいは適性試験の点数が著しく低い者であっても入学後の学力が伸びる可能性があることから、入学者選抜の段階で絞り過ぎるのは適切ではないという法科大学院もございました。
 確かにこれまで得られた検証結果から見ますと、適性試験の点数が高い者は、入学後の成績あるいは司法試験の成績が良いという正の相関関係が顕著に認められるとまでは言えませんが、これまでも指摘しておりますように、適性試験の点数が著しく低い者は、ごく一部の例外を除くと、一般に法科大学院の入学後の成績も良くなく、仮に修了しても司法試験に合格していないという状況にあります。このために、入学者選抜における質の確保のための最低ラインとして、適性試験の下位15%を基本として最低基準を設定し、受験生にその旨を開示し、厳格に運用することが必要であることを指摘しています。
 次に、今回新たに指標といたしました入学定員の充足率につきまして、平成24年度の入学定員充足率が低い理由として、これも全国的な志願者数の減少に原因があると説明する法科大学院が多数見られました。しかし、志願者数の全国的な減少傾向の中でも、高い競争倍率と入学定員充足率の両方を維持している法科大学院も多数あることから、全国的な傾向だけに原因を求めるのではなくて、個々の法科大学院において、法科大学院間の競争に耐え得る組織的な力量を養い、教育力の向上に努め、志願者確保に向けた取組、あるいは入学定員の見直しなどの改善に早急に取り組むことが求められるということを指摘しております。
 それから、入学者数が著しく減少していることにつきまして、特に入学者が一桁になったこと、それが望ましい状態ではないという認識を、該当する法科大学院の大半が持っており、双方向的・多方向的な授業の実施等が著しく、あるいは少なくとも多少は困難になるという可能性を懸念する幾つかの法科大学院が見られました。一方で、むしろ少人数指導による充実した教育を行うことができるので問題ないとする法科大学院や、教育の工夫などで対応できると説明する法科大学院も見られました。
 確かに学生数が少ないことによって少人数指導による充実した教育が行えるという見方もできなくはないものの、このような状況が特に複数学年にわたって継続いたしますと、双方向的・多方向的な授業は効果的かつ継続的に実施できているか、あるいは異なる意見や見識を有する複数の学生が切磋琢磨する学習環境となっているかということに関して、大いに疑念が生じるところであります。教育の質の確保の観点から、一定規模の学生の確保に努めることが必要であるというのをここでは指摘しております。
 最後にまとめでございます。6ページです。今回の調査を通じまして、課題を抱える多くの法科大学院から、入学者の質の確保の重要性を認識し、今後は競争倍率2倍以上の確保や、適性試験の最低基準の設定に取り組んでいく旨の表明がなされました。しかしながら、その一方で、全国的な司法試験合格率の低迷や志願者数の減少という状況の中で、個々の法科大学院の努力には限界があると説明する法科大学院も一部見られました。
 本ワーキング・グループでは、これら一部の法科大学院の問題意識が、法科大学院全体、さらには法曹養成制度全体の信頼性を失わせかねない旨を指摘しております。質の高い修了者を送り出すという責務を果たすためには、入学者の質の確保は極めて重要であり、平成25年度の入学者選抜に向けて、各法科大学院において更に徹底した改善の取組を期待するということを指摘しております。
 また、入学定員充足率が50%に満たない法科大学院や、入学者数が一桁となった法科大学院では、その現状を重く受け止め、より多くの学生から選ばれる法科大学院となることを目指して、質の高い教育の提供や取組を進めるとともに、現状を踏まえた入学定員の更なる適正化や、組織の見直しなどの取組を速やかに進めることが強く望まれるということを指摘しております。
 最後に、今後は、先日発表されました平成24年の司法試験の結果を踏まえながら、各法科大学院の改善状況について、本ワーキング・グループでは引き続きフォローアップを実施し、その結果について、またここで特別委員会に御報告させていただく予定であります。
 以上をもって、今回の調査結果の報告とさせていただきます。ありがとうございました。

 

【田中座長】  
 どうもありがとうございました。
 特に、今回、ヒアリング調査における各法科大学院の説明と、それに対してワーキング・グループがどのように判断したかということをかなり詳しく指摘していただいているので、法科大学院も何が問題にされているのかということを認識して、しっかり対応していただけることを期待しております。
 ただいまの調査報告につきまして、御意見とか御質問がございましたら、よろしくお願いいたします。

 

【樫見委員】  
 5ページの所の、最初の丸の、要するに競争倍率の問題なんですけれども、先ほどの所で、要するに競争倍率2倍を切ると、交付金の削減というかなりのペナルティがあるわけなんですけれども、先ほどお話がありましたように、現在、法科大学院の多くの大学は入試を複数回実施しているかと思います。そのときに、ここにも書いてございますけれども、複数回のそれぞれについてこの2倍の競争倍率を確保しなければならないのか。交付金を、先ほどの指標の点で言うと、複数回は実施しても、総受験者数と、それから総合格率で2倍を言うのか。それとも例えばA日程、B日程で、Aは2倍を切ったけれども、B日程は2倍以上だったというときには、これはどのように考えるのでしょうか。ここの文章でいきますと、各回とも2倍を確保というふうに書かれているわけなんですけれども、その点は志願というか、日程の調整によってはやはり受験者数の人数、かなり状況に差があるかと思うんですけれども、この点はどのようにお考えなんでしょうか。

 

【井上座長代理】  
 考えるというのは、どちらのことでしょうか。

 

【樫見委員】  
 つまり、総受験者数で先ほど。

 

【井上座長代理】  
 御質問の「考える」というのはどちらが考えるという御趣旨なのかということなのですが。

 

【樫見委員】  
 この委員会もそうですけれども、先ほどの指標の問題も。

 

【井上座長代理】  
 経済支援の方は文科省の指標ですね。

 

【樫見委員】  
 そうですね。

 

【今井専門職大学院室長】  
 まずは公的支援の関係でございますが、公的支援の指標はあくまでその年全ての結果でございますので、今のように、A日程、B日程、C日程とかで2倍を切るということの考え方はとらない形で整理をさせていただいているところでございます。

 

【永田委員】  
 若干、先ほどの説明で分かりにくかったと思いますが、最終的には総じて2倍を上回っているかどうかという判断ですが、上の説明とのつながりで、いろいろこちらで調整しながら、何とか2倍をキープしようと思ったけれども結局下回ったというような、そういう説明に対しまして、本来、競争倍率というのは個々の試験ごとに2倍を確保するという努力をされるべきであるということで、求められるという表現は、努めることが望ましいということかもしれませんが、そういう形にしないと、結果的に2倍を切ってしまったことになるという説明をせざるを得なくなるので、ですからこのワーキング・グループの最終的な判断も、そして文科省の今回の指標も、それは総合的にその年度の倍率で計算するということになっています。これは個々やっていくうちに、調整していくうちに駄目になったんだというのは、それは説明にならない。それぞれやはり2倍を確保できるように努力してほしいということでございます。

 

【井上座長代理】  
 いろいろな実例があるのですけれど、例えばA、B、C、Dという4回選抜日程を設けているところで、A~C日程では2倍に達しなかったというか、それを下回る結果となるほどの合格者を出し、しかしD日程で一定数の受験者があれば、トータルで2倍を上回るはずであった。ところが、D日程は受験者がゼロだったので、結果として2倍を下回ってしまったと説明される所が幾つかあったのですけれども、D日程で一定数の受験者がいても、計算上、その受験者を全員を落とさないと2倍に達しないというような場合も出てくる。そのような入学者選抜というのは、数合せだけのためにやるというだけのことになるので、適正とは言い難いと思うのですね。
 何回か選抜日程を設けたとしても、やはりそれぞれの回ごとに質の高い選抜をやっていただく。必要があるという意見をワーキング・グループからも申し上げています。

 

【樫見委員】  
 分かりました。

 

【磯村委員】  
 今の議論に関係して、全体として競争倍率が2倍と言うときの全体の受験者の数え方なんですけれども、例えばA日程とB日程と言うときに、A日程の受験者とB日程の受験者を単純に足すということになると、実際上は両方の試験を受けている受験者が結構多いので、全体だけで2倍というのは、実はかなり甘いという数字になるのではないかと思います。そういう意味でも、恐らく個別の入試ごとに競争倍率という考え方ができたのではないかと思うのですが、その点はもし、永田先生の方から御説明があれば。

 

【永田委員】  
 そのとおりでありまして、それを一つ計算して精査するということも考えられましたが、結局それは総じて2倍という甘い方の基準になりますので、それで進めるということでやってきております。実際はもう少し厳密に精査するともっと問題があろうかと思いますが、この範囲で計算してもおかしいのではないかという指摘になっています。
 ですから、そういう意味も含めまして、個々の試験で2倍を確保するように努めるということが求められるという表現になっています。御指摘のとおりです。

 

【杉山委員】  
 5ページの二つ目の丸なんですけれども、私、企業というバックグラウンドにありますので、ここの基準を厳格に運用するというのは全く同意なんですけれども、その一番最初の3行目ぐらいにある、面接試験の結果や社会人としての職歴その他を加味してという大学側の説明について、私の読み方としては、これはもう全く考慮する余地がないと切り捨てられてしまうのかなというような懸念を持って、お考えをお聞きしたい。
 その意図としては、一つは、私が所属する企業とか社会人と言われるところの法曹希望の人たちをできるだけ多く拾ってあげたいという点が1点。それと、実際に入学した後の皆様方、法科大学院でも、その後の司法研修所でも、やはり実務社会との接点ということで、エクスターンシップをカリキュラムに入れたりという努力をしていることと、ちょっと相反するのかなと思う点。それと、先行している米国のロースクールなんかを見ても、私なんかもそうですけれども、やはりいろいろなそういう畑から来た人を勉強の中で実際に切磋琢磨していきたいということで、外国人の枠を確保していたり、社会人の枠を確保していたりという学校があるというふうに理解しておりますけど、その点で、本当にこれは全く考慮の余地がなく、切り捨てるという理解なのか、お考えをちょっとお聞かせいただきたいんですけれども。

 

【永田委員】  
 特別枠を設けて、様々なバックグラウンドから法曹を養成していくということは、今回の司法制度改革の一つの目的でございますけれども、制度としてそれはどの部分をどうするかということは抜きに出発しておりますので、今回の調査ではそういう現在の制度を前提に、今、進めているということが1点。
 それから、社会人が比較的、適性試験に成績が良くないという点がございますけれども、この下位15%というのは、この委員会で何度も説明しておりますように、15問中2問できたらほぼそこに入る。ある意味で推理力とか、基本的な、基礎的な力量ですので、せめてそれはというところであります。統計的にも15%で通常、上位15%、下位15%を外して状況を把握するのが一般的でございますので、そういう点から見ましても、適性試験をやっている以上は、これを実は察してほしいというところから、これを吟味していってきております。
 それから、米国も適性試験は足切りだと思います。それはもう少し高いと恐らく思いますけれども、そういう意味で、もちろん企業の社会人が必ずしも得意な試験じゃないかもしれませんが、通常の社会ではすごくできる能力をお持ちの方が、1週間でも勉強されたらそれはクリアできる、そういうようなものだと思いますので、そうとは言い切れませんけども、そういうものでございますので、極めて低い線で考えておりますので、これはクリアしてほしい。そういう意味で、それをクリアしていなくても、こういう実績があるからというようなことは、やはりこれはなさるべきではないということを指摘した。そういう趣旨でございます。

 

【杉山委員】  
 ありがとうございます。分かります。要するにそういういろいろな多様な方針というのは原則どおり持っているけれども、それをもってしても、少し言葉遣いが悪いですけれども、拾えないところの者はしようがないなというふうに理解しました。ありがとうございます。

 

【永田委員】  
 各法科大学院で差はあると思いますが、社会人の実績とかそういうものを加点にして、それを前提にしながら、15%は前提としながら、様々な法科大学院がございますので、その点は現在の法科大学院はそれぞれ努力されていると思います。

 

【井上座長代理】  
 それとは別に、社会人経験者と他学部出身者を併せて全入学者の3割を超えるのが望ましく、2割を切ると黄色か赤の信号がともるということになっておりました。各法科大学院それぞれ、その方向で努力されていると思います。
 そのことと適性試験の最低基準というのは別の話であり、最低基準の方は、法科大学院に入学し、勉強して力をつけ、法曹資格を取っていく、そのための最も基礎的な最低基準ということなのですね。もちろん例外的に適性試験の成績はそれを下回っていたけれども入学後学力が伸びて司法試験にも合格するということもないわけではなかったのですが、そういう例外もほとんどなくなってきて、現在ではどこの法科大学院の関係者に聞いても、適性試験の成績が著しく低い人は入学してもなかなかうまくいかないというのが、共通認識になってきていると言ってよいと思います。
 そういう中で、原則として15%という定めを置いていながら、実際には例外を多く認める、毎年相当入学を認めているところがある。理由を聞いてみると、地元の企業ないし行政機関なりに長年勤めており、なかなか良い人で、面接すると良かったので、入学させたと、そういったことなのですね。しかし、それが毎年のように続くとか、複数合格させているということになりますと、やはり首を捻らざるを得ないということです。

 

【田中座長】  
 よろしいでしょうか。

 

【永田委員】  
 この報告をお読みいただいたら分かりますように、我々のワーキング・グループから指摘している幾つかインデックスにつきましては、ごく一部の例外はございますが、ほとんどの法科大学院がもっともであるというふうな理解になってきております。しかしながら、現状からすれば難しいんだというような説明をされているんですけれども、それはやはり少し普通の企業では考えられないことだと思いますので、それをどういうふうに克服するか。あるいは組織的にどうするかというところが問題なので、どこも、この合理性を認めながらも、うちは、現在はこの状況は難しいんですというような説明は、これはやはりあってはならないことだと思います。それはそれぞれの法科大学院に御検討いただいて、その質の向上を、あらゆる意味で、出口も入り口も中身も図っていただくとともに、あるいは組織的な統合、あるいは撤退も含めて考えていただく。そういう時期であろうというふうに考えています。調査しておりまして、そういう感じがいたしました。
 以上です。

 

【田中座長】  
 どうもありがとうございました。
 この調査結果報告書にもありますように、法科大学院をめぐる状況は非常に厳しい状況で、各法科大学院においても、徐々に問題が深刻だという認識が深まっていますけれども、特にヒアリングの対象になっている法科大学院においては事態を深刻に受け止めて、改善に取り組んでいただく必要があると思っています。
 ワーキング・グループの先生方には本当に申し訳ないのですけれども、今回の司法試験の結果を踏まえて、引き続きフォローアップをお願いしたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 続きまして、先週11日に平成24年の司法試験の結果が法務省より報告されましたので、松並委員より説明をお願いします。

 

【松並委員】  
 では、御手元の資料4をもとに簡単に御説明させていただきます。
 タグ等が付いていないので、見にくくて申し訳ないんですが、資料4-1が1枚目の概略を書いたペーパーで、その後、相当数のペーパー、一覧表、分布表が付いています。その後、途中から資料4-2、3、4、5と続いておりますので、順次見ていただければと思います。資料4-1は、法務省のホームページに記載された資料です。資料4-2が、法科大学院別の合格状況を合格者数の順に並べたものです。資料4-3は法科大学院別の合格状況を合格率順に並べたものでございます。資料4-4は、法科大学院別のこれまでの司法試験に関するデータをまとめたものでございます。資料4-5は、本年の司法試験について、受験回数や既修・未修別、あるいは法科大学院修了年度別などのデータをまとめたものです。最後に、資料4-6が、法科大学院別に各年度の修了者の司法試験合格状況を整理したものですので、順次御覧いただければと思います。
 まず、最初の資料4-1を御覧ください。今年の合格者数は、報道等でも御存じかと思われますが、2,102人で、昨年の合格者数2,063人より39人多くなっています。受験者数は8,387人で、昨年の8,765人よりは減少しております。受験者数に対する最終の合格率は約25.06%になります。昨年が23.5%ですので、約1.5ポイント上がっていることになります。
 次に、法科大学院別の状況を見て御説明したいと思いますが、先ほどの資料4-2を御覧ください。これが合格者数順に並べたものでございますが、今年から予備試験合格者が司法試験を受験しておりますので、予備試験合格者についてはその枠を設けて記載しております。ちょっと見にくいですが、ピンク色を付けている部分が50名以上の合格者を出しているところで、法科大学院の11校と予備試験合格者となっておりまして、これらの合計をしますと1,347人、全体で言えば約64%の数を占めています。これに対して、青色を付けているのが合格者数5名以下のもので、20校ございます。
 次に、資料4-3を見ていただきたいと思います。これが同じく合格率順になるかと思うんですが、ピンク色で色付けしたものは、全体の平均合格率でございます約25.06%以上の合格率を上げている法科大学院で、14校となっています。合格率を見ますと、予備試験合格者が68.24%と最も高くなっているところでございます。なお、このピンク色を付けたロースクール14校と、予備試験合格者からの者を合計しますと、1,384人の合格者になりまして、全体の約65%を占めることになります。逆に合格率が全体平均の半分未満、つまり約12.5%になりますが、これを満たない合格率だったのが青色で色を付けた所で、31校ございます。これを見ましても、歴然と法科大学院ごとの合格率のばらつきが見られる結果となっております。
 次に、資料4-4を御覧ください。既修・未修別の結果について御説明いたしますと、今年で7回目の試験となるため、データが多くなり、2枚にわたって見にくいのですが、御了承ください。各法科大学院ごとに各年の受験者、合格者、合格率の全体と、それから、既修・未修別に分けて示しています。まず、上から2段目の欄を見ていただきますと、既修者が水色、未修者が薄いピンク色で色を付けています。2枚目を見ていただきたいと思いますが、一番右側が今年のデータになります。その一番下の合計欄を見ていただきますと、水色の既修者の合格率が36.24%ですが、薄いピンク色の未修者の合格率は17.22%となり、これだけの差がついております。平成24年全体の欄でピンク色と青色で色付けしている部分がありますが、先ほどの資料4-2、4-3で合格者数順、率順の表で色を付けた各欄がありましたが、それと同じものを色付けしていきますと、こういう形になるというところでございます。
 次に、資料4-5を御覧ください。今年の司法試験受験状況について、修了年度別などのデータをまとめているものです。受験回数の欄を御覧ください。今年受験した者のうち、受験回数が3回となっているのが1,786人います。そのうち合格した者は371人ですから、今年の受験で3回受験して合格できなかった人というものがこの差になりますので、その結果、資格喪失者が1,415人ということになります。この中に旧司法試験と併せてて3回受験した者も含まれていることにはなります。なお、資料には記載しておりませんが、受験資格の喪失者の既修・未修別を申し上げますと、既修者が414人、未修者が1,001人ということになっております。
 次に、修了年度別の合格状況について御説明いたします。同じく資料4-5の真ん中付近から下に、修了年度別の既修者・未修者別の合格率が記載している欄がありますが、一番右の欄に合格率が記載されておりまして、青色を付けているのが修了年度別の合格率です。平成23年度修了者、いわゆる直近の修了者全体の合格率を見ますと32.90%であるのに対しまして、今年で修了後5年目となります平成19年度に法科大学院を修了した者の合格率は5.81%となっております。法科大学院修了後すぐの受験者ほど合格率が高いのが見てとれます。年数が経るごとに合格率が低くなり、特に修了後4年目、5年目は相当低くなっている状況が見られます。これを未修者について見てみますと、平成23年度の修了者が21.91%であるのに対しまして、22年度修了者は22.32%、それから修了後1年目及び2年目が少し高くはなっております。これをどう見るかというのは更に分析が必要かと思われますが、3年目、4年目、5年目に目を向けますと、やはり年数を経るにしたがって合格率が下がっております。もっとも、直近の合格率が良いと申しましても、これについても法科大学院ごとにばらつきがあります。
 次に、資料4-6を御覧ください。これは修了年度別に各法科大学院ごとの合格者数の合格率をまとめたものでございます。一番右側の平成23年度修了者、つまり直近修了者の合格状況を御覧ください。その中の一番右側の欄に、直近修了者の対受験者合格率が記載されております。この中でピンク色の色を付けたのが対受験者合格率50%以上のもので、6校あります。これに対して青色を付けておりますのは、直近修了者の対受験者合格率が10%未満の法科大学院で、全部で29校ありました。その中でも、直近修了者の合格者がゼロだったのが19校になります。
 最後に、累積合格者数の状況を説明したいと思いますので、資料4-6を御覧ください。真ん中より少し右、一番上に水色を付けている平成21年度修了者の欄を御覧ください。この平成21年度修了者が初めて受験してから今年で3回目の試験となって、本年までに3回の受験が可能だということになります。一番下の水色を付けた合計欄を見ていただきますと、平成21年度修了者の数が合計4,792人、その中の修了者数のうちこれまでの3年間で合格した累積の人数では2,121人ということになります。修了者数に対する合格率が44.3%となっております。また、左側の欄の平成20年度修了者は、修了者全体の46.1%が累積で合格し、翌年で修了後5年目となる平成19年度修了者につきましては46.3%が合格しています。
 なお、19年度から21年度修了者について、黄色っぽい薄いグレーの所で色を付けておりますが、各年度の累積合格率上位10校です。これを見ますと、上位10校は修了者の数のおおむね6割以上が合格していることが分かると思います。
 最後に、予備試験合格者の司法試験合格状況について御説明しますと、ちょっと戻っていただいて申し訳ないんですが、資料4-1の一番最後のページを御覧ください。先ほど御説明しましたとおり、今年の予備試験合格者が初めて司法試験を受験しておりまして、85人が受験、58人が最終合格しております。年齢別のデータを見ますと、受験者、合格者とも20歳から24歳の間が最も多く、31人が受験して、30人が合格しています。また、職種別で見ますと、大学生が最も多く、28人が受験して26人が合格しております。この職種別と次の最終学歴のデータは、出願時の自己申告によるものですので、若干、人によっては受験時や合格発表時にはそれが変わっている可能性はありますが、ここはちょっとデータは追えないところですので、御了承願いたいと思います。
 以上です。

 

【田中座長】  
 どうもありがとうございました。
 あわせて、机上配付資料につきましても、事務局から説明をお願いいたします。

 

【今井専門職大学院室長】  
 簡単に御説明をさせていただきます。
 机上配付資料、2番と付いているものでございますが、ただいま松並委員が御説明のありましたものを、少し私どもの観点から見やすくした資料で、階段状になっている資料があろうかと思います。
 ここで御報告申し上げたいのは、先ほどの平成19年度修了者の学生につきましては、5年3回の試験期間が終わったということでございます。今、御報告がございましたように、合計で結果、累積の合格率は46.3%ということで、平成18年度の修了者が49.5%でございましたので、若干その数字が下がっているという状況です。ただ、既修・未修で確認をいたしますと、既修者につきましては最終的には65.4%、平成19年度の修了者の合格率でございましたのに対しまして、未修者は32.6%の累積合格率ということで、19年度の修了者の方々のデータが出たというのが状況でございます。
 以上でございます。

 

【田中座長】  
 ありがとうございました。
 それでは、以上の御二人の御説明につきまして、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。御覧のような厳しい状況です。
 特にございませんでしたら、こういった司法試験の結果を踏まえまして、従来も談話をまとめさせていただいたところですが、今回は特に司法試験予備試験経由の合格者が初めて出たということもありまして、従来の談話の趣旨を踏まえて、今年の司法試験の結果と法科大学院の教育の更なる充実について、座長としての所感をまとめさせていただきたいと思います。
 従来と同じく、主として各法科大学院の関係者に対するメッセージですけれども、併せてこの特別委員会で7月19日にまとめた提言の最後にもありましたように、政府の方で法曹養成制度検討会議などで検討をなさっているところですので、そこに対する提案も含める形でまとめさせていただきました。従来指摘してきたことと基本的に余り変わらないのですけれども、予備試験経由者の合格状況について少し意見を述べたのですが、どういう書きぶりにするか難しいところがあり、恐らくこの辺りならば御賛同いただけるのではないかというソフトな表現にさせていただいております。個人的にはもっといろいろ言いたいところがあるのですけれども、ここではやめておきました。
 このような談話を従来と同じように公表させていただいてよろしいかどうか、御意見を伺いたいのですが、何かこういう表現はやめた方がいいとか、あるいはこういった点を是非付け加えるべきだというようなことがございましたら、併せてお願いいたします。
 既修・未修の合格状況の格差の問題について言及するかどうかはちょっと迷ったのですけれども、この特別委員会でワーキング・グループを設けて検討を始めていただいたところですので、その結果を踏まえて改めて意見を述べることにして、今年は新しく予備試験経由受験者の合格状況についてだけ付け加えさせていただくことにしています。

 

【土井委員】  
 表現はこれでよろしいと思うんですが、付け加えていただいたように、予備試験の部分はやはり今後十分検討していただく必要があるのかなと思います。現在、法科大学院の中で合格者数をそれなりに維持して、合格率を維持している法科大学院があるわけです。予備試験は、本来、経済的事情等によって、法科大学院を受験するのが困難な者に対して道を開くという趣旨でつくられたわけですが、その合格者の年齢を見た場合に、学部在学者がバイパスの形でそれを利用していく。結果としてそういう学生たちが予備試験の合格グループを占めていくということになると、本来の趣旨が打ち消されることになります。そういう学生は本来、法科大学院に来て、更に教育を施して法曹に出していくというプロセスを抜けていくわけですので、その層が予備試験に走った結果、法科大学院に来る層が更に低下するというようなことになれば、これは本来の趣旨の逸脱になってしまいますので、この点については十分、どういう合格者の属性があるのか等々を含めて御検討いただいて、本来の趣旨が維持できるような在り方をしていただくというのが本筋だと思いますので、この点は今後強調していただければと思います。

 

【井上座長代理】  
 私も基本的には同感で、この文章はこれで結構だと思うんですが、今、土井委員が触れられた点は、恐らく今日御報告のありました法曹養成制度検討会議でも話題になるかと思うのですね。この点は、今、土井委員が言われたことのみならず、私自身、最近、学生たちと話していて、非常に憂慮していることでして、法科大学院教育全体について深刻な影響を与えるのではないかと思っています。というのは、ここで予備試験経由の合格者の属性を見ますと、在学生に加えて、法科大学院生、それと無職と書いていますが、この人たちの多くも法学部在学中に予備試験に受かった人たちだと思います。この人たちが法科大学院に進んだ人もあれば、進まないで司法試験を受けた人もいる。まだ4年に在学中で受けて合格する人もいる。そういう人が私の周囲には相当数いるというのが実態です。
 今回はまだ初年度で、数も限られているので、これを一般化してどうこう言う段階ではないのかもしれませんが、今年、法科大学院に進学してきた人たちの間の傾向というか、雰囲気をみますと、学部生のころから予備試験というものが念頭にあって、そのための勉強をしてきている。そして、法科大学院に入ってきても、予備試験在りきということで、その姿勢を維持している人が多い。
 これがほかの法科大学院の学生にも影響を与えるのですね。7月末に予備試験があるわけですが、それがちらちらするため、夏学期の法科大学院の授業に今までのように集中して取り組めているのか、その辺が危惧されるような傾向が出てきている。これは私の大学特有の現象なのかもしれませんけれども、遅かれ早かれ、ほかの大学、法科大学院でもそのような傾向が強まってくるのではないか。これで果たしてよいのかということです。
 司法制度改革が目指したのは、それまでのように一発試験で試験さえ通れば法曹資格を与えられるというのはやめよう。試験科目に限定されず、幅広く教育を受けて、豊かな能力・素養を身につけてもらう。そして、そのうちの一部の能力を司法試験で測って、法曹となってもらう、ということであったはずです。そのような目標が根本から崩されてしまうのではないかという恐れを持っていまして、本委員会で直接検討できることではないかもしれませんけれども、そういう問題状況が進行しているということは、是非認識していただきたいと思います。
 法曹養成制度検討会議では私も委員に加えられていますので、機会を見て、そういうことも問題提起していきたいと考えています。

 

【田中座長】  
 今、土井委員がおっしゃったこと、全く私も同感でして、それは最後の5番の所で、法科大学院を中核的な機関とするプロセスとしての法曹養成制度という観点を重視していただきたいということに含めることにして、2番の所でそこまで触れるのは少し言い過ぎるかなと思って止めた次第です。

 

【磯村委員】  
 今の両委員の意見と基本的に同じ方向なのですけれども、法科大学院の修了者と、予備試験の受験者の合格率が違うというところだけが、数字で一人歩きしている状況にあって、法科大学院の修了というのは、法律基本科目については必修単位科目としては3分の2以上を履修してはいけないという制度設計の中で、それ以外の授業科目の学修についても法科大学院でちゃんとやって、修了認定を受けるということを前提に司法試験に向かう。ところが予備試験の試験科目というのは、基本的には法律基本科目に関する法律試験一本ということになります。実務基礎科目はもちろんありますけれども、法科大学院においては、法律実務基礎科目についても10単位以上の履修が求められていることから考えると、これも随分比率としては抑えられている。そういう状況の中でどう見るかということが一つ。
 それから、全体の合格率とともに、短答式通過者の合格率というのを見ると、その差というのは、合格率だけを見ても随分相対的に違ってくるというところがあります。予備試験通過者の評価については、これからそのルートを経由して合格した人が、実際の修習あるいは実務に入ってどういうパフォーマンスを示すかということを見定めて考えるということが必要で、法学部の学生諸君にとっては、法律基本科目の勉強をすることは、法科大学院の受験にとっても全然無駄になりませんので、余計にそういう傾向を助長するということがあるのではないかと思います。座長談話になると、そういうところを全部踏み込んで書くというのはなかなか難しいんですけれども、そのような点も踏まえて、これからどう考えるかということを、いろいろな関係の場所で検討していただけるといいのではないかと感じているところです。

 

【田中座長】  
 ありがとうございました。

 

【樫見委員】  
 よろしいでしょうか。基本的には私もこれでとは思うのですが、少し気になりますのは、この2番目の予備試験のところで、2番の項目の3行目、この事実を各法科大学院、予備試験の合格率が高いということを事実として重く受け止めてという文言のところは、やはりちょっと引っかかりがありまして、予備試験の受験対象者と言いますか、あるいは設定された目的と、それとあとそのプロセスで選定する法科大学院教育、これを両方同じような形で並べて、合格率という事実を重く受け止めるというのはどういう趣旨があるのかというので、私自身はどうもこの、重く受け止めということについてはやや異論がないわけではございません。

 

【田中座長】  
 そこのところをどう表現するか、いろいろ考えたのですけれども、私が危惧しているのは、予備試験経由者の合格率が非常に高いことから、これは絞り過ぎだから、法科大学院修了者と同じような合格率にすべきだという意見があることです。これは私の個人的な意見かもしれないのですけれども、今回の予備試験の合格者の絞り込みの結果は現在の司法試験の仕組みから見れば極めて適正だと評価しています。予備試験の合格者が短答式試験にはほとんど合格し、最終的に70%近く合格するという状況も、もともと法科大学院と司法試験の連携の在り方として想定していた理想に近く、本来、法科大学院の修了認定自体がこれぐらいの状況であるべきなので、法科大学院の修了認定が基本的には甘過ぎるわけです。やはりこのことが、法科大学院制度が信用されない一番大きな理由で、法科大学院修了者についても、試験ですから、すんなり行かない人もありますけど、そのほとんどが修了後すぐに短答式試験には当然受かり、論文式試験にも1、2回で合格するという程度の修了認定をするのが本道なので、予備試験経由者の合格率を法科大学院の平均合格率と同じようにするというのは、法科大学院制度の崩壊につながるという意見を、間接的に少しソフトに表現したものです。
 今、やはり法科大学院の修了認定が甘過ぎるということが法科大学院の教育に対する不信感の根幹にあるので、この事実は特に法科大学院関係者には是非とも重く受け止めていただきたいと思っています。この点を是正しない限り、法科大学院制度がシステムとして安定することはあり得ないと思います。

 

【鎌田委員】  
 今、座長がおっしゃったことは非常に大切だし、基本的に大賛成なんですね。ただ、予備試験、司法試験の在り方というんですか、ちょっと考えてもらえるのかどうか分かりませんけれども、司法試験は先ほど御指摘があったように、法科大学院での幅広い学習を経た上で、その中のごく一部のものについて、実務に接続できるような形で試験をして、効果測定をしているだけなんですけれども、しかしその試験のみを目指している人にとっては、こういう言い方はあれかもしれませんが、見ようによっては旧試験よりもはるかに予備校教育になじみやすい形式なんです。その試験に通ることだけを勉強しようというふうに決めると、そこに向かっていける。
 そして、予備試験が、これも実際に試験を作る側になるとやむを得ないんですけれども、法科大学院で全般的な教育を受けたのと同じようなリーガルセンスを持っているかどうかの試験じゃなくて、正に司法試験予備試験で、形式も出題の精神も方式もみんな同じですから、ここに通った人が司法試験に通るのが極めて高い相関性を持つのは全く当たり前ですね。そういうものを単純に2回繰り返して、しかも非常に試験対策がしやすい形の試験の形式を続けていくということが、そっちの側面から言うと、本来の制度趣旨に合っているのかというのを見直さなくてはいけない。予備試験の合格者の司法試験の合格率と、法科大学院の修了認定を受けた者の司法試験の合格率とが、本来同等であるべきだけど、少し法科大学院がハンディを負ってしまうというのも、構造的にやむを得ない部分を持っているんだと。
 それを法科大学院の側ばかりが反省するのではなくて、予備試験制度、新司法試験の在り方というのにも、本当なら問題提起をしていかないといけない。これで多分固定して動かないというふうなところへ、年を追って、司法試験の方は少なくとも総数で来ているわけで、予備試験も同じ歩みになってしまうということには懸念を持っています。これを文章に表現することは難しいし、不可能に近いと思うんですけれども、何らかの形でそういったものに対応する問題提起みたいなのができればというふうに思います。
 座長のお考えで、ある意味でもう少し直接に書いた方が伝わりやすいと思います。

 

【田中座長】  
 私の意見も、磯村先生、鎌田先生がおっしゃったことを、どちらも前提にしたものです。現行の制度を前提にすれば、こういう差が出るのはある意味ではやむを得ないところがあるということにも触れたいのですけど、なかなか書き方が難しい所です。

 

【井上座長代理】  
 「も」と書いてある。修了認定を厳正化しないといけないというのは、それ自体として正解で、それが関係していないということはないわけですね。だから、それはそれとして載せていただいていいと思うのです。
 確かに前段の受け止め方が少し重いものですから、そこからストレートに来ているように見えるんですけれども、この文章は座長の責任で出されるものですので。

 

【田中座長】  
 このような合格率の差になるのは当たり前で、それを理由にして、法科大学院の方が低過ぎるので、それに合わせて予備試験の合格者を増やすべきだという議論は、これは困るということに触れておきたかったので、それをどういう形で表現するかということから、こういう表現になった次第です。

 

【土井委員】  
 基本的には後半部分で、予備試験の在り方について一応言われていて、ここのところは、現在の予備試験がきちんと本来の趣旨に即しているのかどうかということを言っていただいた後で、それはそうなんだと思います。
 前段の部分は、座長がおっしゃっておられるように、本来、その予備試験の合格率、多分これが最初なので、予備試験も同じように不合格者が滞留してくると、合格率は下がってくる。この状態でも少し下がってくるというのはあろうかと思います。法科大学院と同じことにはなるとは思うんです。
 ただ、それにしても、予備試験が示している合格率というのは、本来、司法制度改革を目指している合格率であることは確かで、合わせていくべきはどちらなのかというふうに、合格率の数字だけを言いますと、基本的には法科大学院の数字を予備試験の数字に合わせていくのが本来で、法科大学院側の平均合格率に合わせるように予備試験を拡大していくというのは最悪の選択になるわけですから、それはやはり重く受け止めなければいけないことがあるのは事実だと思いますし、なかんずく、少し厳しい言い方をするようですけど、先ほど資料の4-6の中でも、直近合格者がいないという大学がここまで出てきたときに、以前も申し上げましたけど、なぜ受験資格を法科大学院修了者に限定するのかという議論はもう正面から出てくることにならざるを得なくなってくるんだと思うんですね。
 その意味では、十分合格率を出せていないところは、やはり重く受け止めていただく必要があるんだろうというふうに思いますので、いろいろな前提があった上で読まないといけないという形にはなろうかと思いますけれども、方向性としてはこういう形でいいのではないかと思います。

 

【磯村委員】  
 先ほどの座長の感触と、それから鎌田委員の御意見を踏まえて、むしろ2番の後半のパッセージの「しかしながら」の後が、これだけですと、ちょっと経済的事情等々にややウェイトがかかり過ぎる感じがあるので、「その反面」の後に、例えば「予備試験の在り方についても」という文言を挿入して、もう少し一般的に予備試験の在り方を考慮する余地があるというニュアンスを入れてはどうかという気もするんですけれども。

 

【永田委員】  
 先ほどの議論の所ですけれども、合格率を上げているが、この事実を受け止めというのは、これは直接的過ぎるので、それを直ちに概して論じることは適切ではないがというような、やはり一遍否定してという、それを入れておけば、この事実の受け止め方が、何かそういう文言、今は申し訳ないけど、いかがでしょうか。直ちに概して論じることは適切ではないが、やはりこの事実をというような、そういうような趣旨で、今、思いつきですけども、やはり一遍否定的なフレーズを入れておくといいますか、ちょっとヘジテートするといいますか、ちゅうちょするものがあるという、グレーがかっているのはいかがでしょうか。

 

【田中座長】  
 私もその点は気になっていて、最初は、こういう高い合格率になるように予備試験の合格者の数を絞られたことは適正であるということをはっきり言おうかとも思ったのですけど、それを言うと、制度そのものの意義付けも問題になるので、それには触れずに、法科大学院側の反省を求めるだけにとどめた方がいいのではないかと考えた次第です。

 

【永田委員】  
 こだわりません。

 

【田中座長】  
 「この事実も」という形で、少し間接的な表現にしたのですけれども。この事実を多面的に検討する必要があることを理解していただければ、それでよいのですが。

 

【磯村委員】  
 「上回る高い合格率を上げているが」の後に、「単純に合格率を比較することは適切でないとしても」というようなニュアンスを入れると少しマイルドになるかなとは思いますが。

 

【樫見委員】  
 よろしいでしょうか。疑問を呈した私が言うのはあれなんですが、この「高い合格率を上げているが」の後に、「その反面、予備試験にも少し問題がある」と書いて、改行して、「しかしながら、各法科大学院においてはこの事実を重く受け止め」というふうに、上の1番目の所とちょっと同じような書き方になるんですが、法科大学院としてはやはり自分たちの教育、修了認定をきちんとしなければいけないということを、別改行しまして、独立した文章として書いたらいかがでしょうか。我々としてはむしろここが大事だと思うという提案でございます。

 

【磯村委員】  
 今、いろいろ議論が出ていますが、最終的には、井上委員がおっしゃったように、座長談話として出していただくときに、いろいろな意見を踏まえて、座長に最終的に御判断をしていただくというのが一番いいかなと思います。こういう文章を修文し出すと、恐らくきりがなくなってしまうので、そういう形でお任せということではいかがでしょうか。

 

【松並委員】  
 直さいには御説明できませんが、PTとか、日頃いろいろなところでの風当たりを経験している者といたしましては、この談話の目的はそういうところではないので、シンプルにこういう形の方が、予備試験の改革だ何だというところに話が及ぶかのような感じを避けられるんですね。私はこの座長の原案がとてもちょうどいいのかなと思っております。予備試験を変えていくべきだという声は反対方向で相当大きいですので。

 

【土屋委員】  
 私も少しそれに似た感触があるのですが、この案そのものに別に反対するわけではありません。予備試験に言及されるのはいいとは思うんですが、この法科大学院特別委員会で予備試験を議論して、それについていろいろ議論を生み出していこうというような方向というのは、余りとらない方がいいのかなと。そういう議論をすべきなのかということをちょっと疑問に思いますね。その意味では正面切って、予備試験のことを取り上げてコメントするような形というのは余りとらない方がいいのかなと。スタンスとして感じます。
 予備試験の結果について、例えば今日配っていただいた資料についても、法科大学院別の人数だとか、そういうところの中に予備試験合格者という、いわば法科大学院扱いのグループが一つつくられたんですけれども、これなんかも私は組み込まない方がいいだろうと。つまり、予備試験合格者の数だとか受験者の数だとかというのはあくまで参考資料であって、別枠に入れるべきではないかと私は思うんですね。予備試験合格者を一つのグループとして考えてしまうと、それは合格率のトップであり、どこの法科大学院にも及ばないそういうグループ分けとして存在するというような、そういう書き方になってしまうでしょうけれど、そういう統計のとり方も正しいのかどうか。まとめるのはいいのですが、資料としてつくったときの組み込み方に、私はちょっと違和感があります。
 予備試験グループは予備試験グループというふうに考えたらいいのかなと思っておりまして、そうすると、座長の談話で率直に法科大学院の側から見たときの予備試験の在り方について、簡単に触れられるのはよろしいかとは思うんですが、余り微に入り細にわたって意見を述べられない方が、むしろよろしかろうという気がします。
 私の懸念しているところは、先ほど鎌田先生がおっしゃったのと同じなんですが、来月予備試験の合格者が決まりますね。そうするとこれが2回目になるわけですから、この段階で一定の意見というのを述べておく必要はあるんだろうと思います。座長として述べられる、意見を表明されることは、私はとても大事なことだと思いますが、そういう状況を考えると、今年の合格者が決まる、また来年の合格者が決まるということになれば、その決め方について一定のルールというか、慣行ができてしまう。今年2回目ですので、来月にはもう一定の慣行ができて、それにしたがって合格者の数がプラスされるということに恐らくなっていくだろうと思います。そうすると予備試験のレールというのは、今年ある程度固まってくるということがありますので、その点についての懸念を表明されるというのはいいと思いますが、ただ、そのことを法科大学院教育の結果と考えてみたときに、どうするかですね。司法試験予備試験の結果について詳しいことは余り言及されない方がいいのではないでしょうか。むしろ突き放して見ている方がいいんだろうという気が私はします。それから統計の書き方もそうですけれども、別枠でトータルで見た方がいいかなと思ったりもします。

 

【田中座長】  
 私も、今おっしゃられたように、要するに法科大学院修了者の合格率が非常に悪い状況だから、それと同じぐらいの合格率に予備試験経由者についてもすべきだという論調が結構強いので、それはちょっと話が違うのではないかということだけ、歯止めをかけたいというのが主たる狙いです。法科大学院の方できちんと合格率を上げる方向で調整するのが本来の在り方なので、現在の問題のある法科大学院修了者の合格率に合わせて、予備試験の合格者数を調整するということは、制度上おかしいということだけは、何らかの形で触れたかったわけです。

 

【鎌田委員】  
 私は先ほど自分の考えを申し上げましたけど、それをここで審議するとか、ましてや座長の談話に入れていただくのが適切な場所だとか思っていないので、ここの中にそのことまで書く必要はないと思っています。むしろ逆に、第一印象としては、「しかしながら、その反面」以下だけ、非常に細かいことを具体的にむしろ書き過ぎている。何かここにだけ焦点を当てているという感じで、例えば、予備試験を経た合格者の年齢・職種などの公表された情報をどう用いてというのは余り要らないのではないかと思います。談話の趣旨は、予備試験が本来の制度趣旨に適合するような形で運用されていってほしいということですよ、全体としては。

 

【田中座長】  
 ええ。

 

【鎌田委員】  
 2番の前半が法科大学院側としては一番ポイントになるんだけど、「しかしながら」以下は、文章は長いけど、言っていることの内容はそんなに大きくはないとしたら、後半は少し縮めて、むしろ前段の文章にウェイトがあるような方がいいのかもしれないなという気はします。

 

【永田委員】  
 先ほど磯村委員が言われたように、座長談話でその意見を踏まえて、少しずつまとめますので、この委員会でまとめているわけではない。御意見を踏まえて、最終的には出すと。

 

【田中座長】  
 そうですね。2番の前半部分はやはり1番の補足になっているところもあって、それと併せて予備試験にも言及していくということにして、予備試験そのものにストレートに言及することは避けております。「その反面」という表現をやめるという方向にしたいと思います。
 しかし、基本的に法科大学院の修了認定はきちんとやっていただきたいということには、やはりこの事実が大変問題にされているので、これは含めたいと思います。基本的に、細かなことは省いて、「しかし、その反面」ということではなくて、こういう差が出ている部分も含めて、予備試験についていろいろ検討いただきたいという形に、文章を整理させていただくということで、お任せいただけますでしょうか。
 では、文章を終了後すぐに修正しますので、それを委員の先生方にメールででも確認いただいた上で、事務局から、各法科大学院に対して周知をお願いしたいと思います。どうも時間をとって申し訳ありません。
 本日の議事は以上でございます。
 事務局から今後の日程について、説明をお願いします。

 

【今井専門職大学院室長】  
 今後の日程につきましては、また日程を調整の上、後日改めて御連絡させていただきたいと存じます。

 

【田中座長】  
 それでは、本日の議事はこれで終了させていただきます。

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