法科大学院特別委員会(第37回) 議事録

1.日時

平成22年1月22日(金曜日) 15時~17時

2.場所

文部科学省 3階3F 1特別会議室

3.議題

  1. 第3ワーキング・グループの審議状況について
  2. 認証評価の見直しについて
  3. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)田中成明 委員
(専門委員)磯村保、井上正仁、稲田仁士、小山太士、笠井治、笠井之彦、鎌田薫、木村光江、土屋美明、椎橋隆幸、永田眞三郎、松村和徳、の各専門委員

文部科学省

德永高等教育局長、小松高等教育局審議官、澤川専門教育課長、浅野専門職大学院室長

5.議事録

【田中座長】
 所定の時刻になりましたので、第37回中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を開催します。事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【浅野専門職大学院室長】
 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。資料1といたしまして、前回の議事録でございます。資料2といたしまして、「平成21年4月中央教育審議会法科大学院特別委員会報告を踏まえた各法科大学院における改善状況(まとめ)」。資料3といたしまして、「法科大学院における自主的な組織の見直しの促進」。資料4、「専門職大学院設置基準及び学校教育法第百十条第二項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令の一部を改定する省令案に関するパブリック・コメントの結果の概要」でございます。そのほか、机上の配付資料といたしまして、共通的な到達目標の第1次案をお配りをさせていただいております。それから、各法科大学院の現況ということで、フォローアップの基礎資料を配付させていただいております。それから、「法科大学院の入学定員の見直し検討状況について」ということで、平成22年度に入学定員の見直した法科大学院の状況と、それから23年度に新たに入学定員を見直す予定であるという回答をされている法科大学院、それを一つの表にしておりまして、その丸がついている法科大学院は22年度既に見直したところ、それから23年度に新たに見直しをするというところが含まれております。以上が机上配付資料でございます。

【田中座長】
 ありがとうございました。それではまず、第3ワーキング・グループの主査である永田委員に、第3ワーキング・グループのフォローアップに関する審議状況についてご報告いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【永田委員】
 第3ワーキング・グループの主査を務めております永田でございます。このワーキング・グループは、昨年4月17日の特別委員会報告を踏まえまして、各法科大学院と連携協力を図りながら、各法科大学院の現状、改善計画とその実施状況についてフォローアップをしてまいりました。本日は、すべての法科大学院について一巡目のフォローアップを実施いたしました結果を、資料2に基づきましてお話ししたいということでございます。これまでもこの委員会で説明をしてまいりましたとおり、このワーキング・グループでは各法科大学院にご協力を得まして、提出いただきました改善計画の内容を確認いたしました。その結果、資料2の2ページの囲みでお示ししております4つの観点に該当し、かつ不明な部分を把握する必要がある、あるいは改善のための取り組みについて実効性を確認する必要があると判断した法科大学院に関してはヒアリングを実施することとし、40校を対象といたしました。
 ヒアリングの結果、法科大学院に現状あるいは改善のための取組をより詳細に確認する必要があると判断した法科大学院に関しましては、在籍中の法科大学院生との面談や授業の見学等による実地調査をすることといたしまして、それには26校を対象校といたしました。以上のような各段階を踏んで実施したフォローアップの結果を分析すると、資料2の3ページお示ししたとおりでございますが、すべての法科大学院が改善の取組に着手し、多くの法科大学院が意欲的に取り組んでいるということがうかがえました。また、個々の法科大学院において、教員の極めて周到な準備により、わかりやすく展開される講義や、学生の積極的な参加により多方向の議論が活発に行われている演習などが多く見られたところであり、教員・学生の双方が日々の教育・学習に対して真摯に取り組んでいるということを実感いたしました。
 しかし、残念ながら、一部ではありますけれども、課題を抱える法科大学院もございまして、中には、入学者選抜において受験者のほとんどが合格し、競争倍率2倍どころか、入学者選抜機能が実質的に機能していないと言わざるを得ない状況にあるなど、入学者の質の確保の重要性について認識が欠けているのではないかと懸念される法科大学院が見られました。また一部には、厳格な成績評価・修了認定などに問題があるのではないかと考えられる法科大学院も見られました。このような課題を抱える法科大学院は一部ではございますけれども、入学者選抜における競争性に問題のある法科大学院は、概して、同時に厳格な成績評価・修了認定についても課題を抱えているという共通の傾向にあるように感じられました。
 次に、資料2の別表をごらんいただきたいと思います。これは、実地調査を実施した個別の法科大学院に対するワーキング・グループの所見を報告しておりますが、これはあくまで本ワーキング・グループが実地調査を実施した際に認識した個別の法科大学院の課題などを所見としてまとめたものであります。個別の内容については、大部分が資料2の3ページでお示しした課題内容と同じでございます。また、所見にありますが、「継続的」あるいは「重点的」なフォローアップという表現についてでございますが、継続的にフォローアップを実施するとした法科大学院は、改善に向けた取り組みの実効性の有無を見きわめ、当面は今後の改善状況を見守ろうという法科大学院でございます。今後ヒアリングなどを通じて、定期的に改善状況を把握していくことを考えております。重点的にフォローアップを実施するとした法科大学院は、特に早急に改善することが望まれる課題を抱えていると思われる法科大学院でございます。引き続き実地調査や、法科大学院側との密な意見交換等を行うことによって、早急な改善が図られるよう強く促していくことを考えております。
 この中でも、別表の第45番目でありますが、日本大学につきましては、机上資料にあるとおり、平成22年度までに入学定員の見直しが実施されておりません。平成23年度も見直しの予定がないということでございます。修了者の合格者の比率と入学者の質の確保に課題があるにもかかわらず、認識が十分でないという旨の所見を記述しております。また、56番目の愛知学院大学につきましても、これは前回ご報告申し上げましたように、予備校を法科大学院教育に引き入れているということについて、新たな法曹養成制度の理念を損なうものということを記述しております。
 今後、平成22年度入学者選抜状況などを踏まえつつ、本ワーキング・グループでは引き続きフォローアップを実施していく予定でございます。
 フォローアップの結果自体の報告は以上でございますが、次に、資料3をごらんください。これは、今回のフォローアップを通じて、本ワーキング・グループとして感じたことをまとめたものでございます。本ワーキング・グループは、新司法試験の合格状況だけで法曹養成機関としての法科大学院の機能を測るべきだと考えているものではありませんが、今回のフォローアップの結果として、概して、新司法試験の合格状況が低迷している法科大学院の多くは、教育内容や教育体制に多くの課題を抱えているにもかかわらず、組織のあり方について抜本的な見直しが進んでいないのではないかという感想を持ちました。そのような状況は早急に打開されなくてはならないと考えております。 
  そのため、昨年9月の本委員会の座長談話でも指摘されたとおり、質の高い入学者の確保や教育体制の充実のために、入学定員の見直しをはじめとした組織の自主的・自律的見直しを一層促進するべきですし、さらに加速させる必要も多いと思われます。そのため、新たな促進策を講ずることも必要ではないかと考える次第でございます。

【田中座長】
  どうもありがとうございました。ただいまの永田委員からのご報告につきまして、ご意見・ご質問がありましたら、特別委員会として、個々の法科大学院の教育体制あるいは組織の見直しを一層促進するような方策としてどのようなものが考えられるかということも含めてご意見をいただければと思います。

【笠井(治)委員】
  永田委員からのご報告で、資料3は「自主的・自律的な見直しの促進」という標題となっています。これは見直し策を提案されたものだということですが、さらにそこに記述されていることについて具体的にお尋ねしたいと思います。
 昨年9月の座長談話は、新司法試験と法科大学院教育の連携に関するものでありますけれども、国における法科大学院に対する支援、すなわち公的支援のことだと思いますけれども、これについてはどういうことをお考えになっているのでしょうか。今回のペーパーですと、第4項で座長談話の内容が記載されていますが、そこで求められていることなども踏まえて対応策の提言があるわけですが、一体どういうことを考えておられるのでしょうか。
  それから、「引き続いて新たな促進策を講じる必要がある」とありますが、その促進策の具体的な中身は一体何なのかということについてもお伺いしたいと思います。
   さらに、合格率が2年連続して平均合格率の半分にすら満たない法科大学院の数がかなりの数字が出ているということで、もちろん、新司法試験の合否のみによって成果のすべてを評価することは適切でないという前置きがありますが、その前置きの中で、この指摘にある合格率が2年連続して平均合格率の半分にすら満たないということが重要な基準になるのかということなどについて、教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【田中座長】
  今のご質問に関してですけれども、この第3ワーキング・グループには改善状況を把握するということが目的でして、具体的な促進策はこの特別委員会でこれから検討していただくということになるので、その中身は、第3ワーキング・グループの調査の対象になっているわけではないのです。

【笠井(治)委員】
 それは了解しておりますが、大体どういうイメージでおられるのかということと、それから一番最初に質問させていただいた田中先生の座長談話ですけれども、国における法科大学院に対する支援のあり方の検討ということについて、その中身が一体どういうものであるのか、どういうものを想定してこの検討をされているのかについてお伺いしたいと思います。これから大事な検討をしていくということですから、どういう方策があり得るのかについて、事務局はどういうお考えなのかなどについてお話しいただいてもよろしいかと思います。

【永田委員】
  田中座長からお話がありましたように、私どもは改善計画書に基づいて状況を把握し、問題点を明らかにして、法科大学院が何を課題として抱えているかということを、場合によってはその各法科大学院の面談の中で指摘するという作業をしてまいりました。その中で、やはりなかなか難しい問題ではあるわけでございますし、定員問題等もそうでありますが、私どものワーキング・グループはこのようなフォローアップを引き続きやっていきますけれども、それだけでは克服できない問題もあろうかと思います。先ほど座長がおっしゃったように、第3ワーキング・グループの所管ではございませんので、具体的な内容は考えてはおりません。ただ、市場に任せて自然に淘汰されていくという当初の一つの考え方については、かなり以前の状況から見て難しいものがあるということで、やはりこの委員会で抜本的な促進策をご検討いただきたいという趣旨です。

【井上座長代理】
  趣旨としましては、各法科大学院においては、それぞれ改善を進めていただいているところですが、深刻な認識をお持ちでない、あるいはどうも十分取り組んでいただいていないと思われるところもあって、もちろん今回指摘させていただいているんですが、ただそれだけでいいのか、ということです。やはり、もっと改善を促すような何か方策があれば、それを考えるべきではないかというのが全体の趣旨であって、具体的にワーキング・グループとして、こういう方策をとるというふうにイメージをしたというわけではなくて、特別委員会で検討していただくことが必要だということです。

【笠井(治)委員】
  第3ワーキング・グループの目的趣旨は、今おっしゃったとおりであろうかと思います。その上で提言がなされているわけですが、改善のための促進策が必要ということだけでは必ずしもイメージできないものですから、そういう趣旨の質問をしたつもりです。例えば、先ほどの法科大学院に対する公的支援には、国立大学法人で言えば運営交付金、私立大学で言えば私学助成などの財政支援があるかと思います。そういったものについて、何らかの措置をとるということもその一つの施策であり得るのかということについて、第3ワーキングではなくて、むしろ事務方に事務的なご説明をいただいたほうがいいかなとも思います。

【浅野専門職大学院室長】
  一般論で申し上げますと、この国における法科大学院に対する支援というのは、現在、笠井委員がご指摘のように、国立大学法人の法科大学院に対しては運営交付金という形で支援されていますし、それから私立大学の法科大学院に対しては私学助成が行われています。そのほかに、法務省及び最高裁判所から実務家教員の派遣という形で、一般的に法科大学院に対する支援は行われてございます。

【德永高等教育局長】
  法科大学院ではありませんけれども、一般的に、文部科学省における、特に高度な専門職業人を育成をしている大学の教育活動に対する支援の中で、例えば私立大学の私学助成の中には、学生入学定員や教員数といった基本的に私立大学の教育を支えている部分に対して、一般分として助成しているわけですけれども、同じ私学助成の中でも、さまざまなことを勘案した特別分がございまして、例えば医学部につきましては、医師国家試験の状況等を勘案して配分しているという例もございます。

【田中座長】
  具体的な方策は、まさにここで検討されたいということですけれども、実態がどうなっているかということがまず問題です。各法科大学院の自主的・自律的な見直しを促進するには、どのような支援をすれば適正な法科大学院教育が展開されるようになるかを認識する問題がまず最初にあるわけです。そして、実態について部分的にデータが公になっていて、それが適切な形で整理されているかどうかという問題もあるわけですけれども、状況を把握した上で理由を考え、理由との関連で支援のあり方を検討していくということが考えられるわけです。例えば、入学定員がなかなか減らないということであれば、例えば今の私学助成は学生定員をベースにして算出しているが、法科大学院の教育体制の充実を重視するという観点からするならば、例えば教員数をベースにするなど、さまざまな工夫の仕方があるわけです。どういう形であれば各法科大学院の自主的・自律的な見直しを促進できるかということを考えて検討していければ、と思いますけれども、そもそもなぜこの状態がスムーズに改善できないかということをまずつかまないと、適切な改善策にはならないと思います。

【德永高等教育局長】
  国立大学について申しますと、法人化ししてから第1期の中期目標期間がこの3月に終了いたします。この4月からは第2期中期目標期間になりますが、中期目標期間が終了するに際して、文部科学大臣が各国立大学法人に対して組織、業務の見直しについて意見を述べることができます。そこで私どもは、国立大学法人評価委員会の意を得まして、昨年の春の時点で、各国立大学法人に対しては組織、業務全般にわたる見直しを促したのですけれども、特にその中で組織の見直しにつきましては、もちろん教員養成学部や附置研究所についても見直しを促していきますが、法科大学院につきましても具体的な事項として見直しを促しています。
  各国立大学法人では、組織の見直しを行った上で第2期の中期目標の原案を文部科学省に提出し、そしてまた、文部科学大臣の定めた中期目標に従って中期計画を策定するわけでございます。いわば各国立大学法人の見直しの結果を踏まえた中期計画に沿うような形で運営費交付金を算定いたします。国立大学法人評価委員会では、各法人が出した原案に対し、例えばこういった点について見直しが不十分ではないかということで、もう一度再考していただくような作業を現在しているわけでございます。そういう意味で、国立大学法人の組織・業務の見直し、そしてそれに伴う中期目標の策定及び中期計画の認可という作業の中でも、法科大学院の入学定員については真摯な見直しを求めているということでございます。

【永田委員】 
   新司法試験の結果をどう扱うかは慎重を要することでありますが、著しく低い法科大学院については、法曹養成機関としての責務に鑑み、やはり考えるべきであろうということとなりました。結果といたしまして、この新司法試験の合格率が著しく低い法科大学院では、入学者選抜における競争性の問題、授業内容、成績評価・修了認定等につきまして、それぞれ問題があるというところが大半でした。そして、各法科大学院も、そのことに非常に悩みながら改善策を検討しておられます。
   合格率そのものを問題にしているわけでありませんけれども、先ほど申しましたように、フォローアップ対象校としてあがってきた法科大学院は、入学者選抜の問題、そして成績評価の問題も、両方の問題を抱え、それが最終的なパフォーマンスにつながっていないというところが多いです。

【稲田委員】
  基本的な質問なんですけれども、法科大学院の中には非常に合格率等が低いという大学があり、かつそれが1年だけでなく傾向的に低いという大学が相当ある。普通の大学であれば、学生なり受験者の立場では、とりあえず行っておこうという気持ちになるのも理解できるんですけれども、法科大学院のは大学を出てから2年あるいは3年という期間、あえて就職しないで進学するということになると、当然目的意識を持った学生が受験するということになります。そうなると、合格率が低い大学には自然に学生が集まらなくなるだけではないかと思うのですが、少ないながらも、依然としてそうした法科大学院に学生が集まるということが私はなかなか理解しにくいのです。学生のヒアリングをされて、あえて合格率が非常に低い、あるいは相対的に低い法科大学院に入学する学生さんの目的とするところはどのようなものであるのか、お感じになったことがありますでしょうか。

【井上座長代理】
  私もまさに今のご指摘のような問題意識を持って、現地でかなり多くの学生さんとお話ししました。ここの法科大学院を選んだ理由は何か、ここの法科大学院は、残念ながら新司法試験合格率という意味では成績が上がっていないですけれども、それは認識を持って選ばれたのですか、という質問をしました。もちろん、他の法科大学院に入りたかったけれども不合格となったからという人もいましたが、むしろ、司法試験に合格するかどうかは自分の努力の問題であると認識し、自分さえ頑張れば何とかなるという方のほうが多かったのではないかと思います。それで、私たちは一様に少しびっくりしたというわけです。
   世間では、法科大学院のは国家的詐欺ではないかとも言われていますが、それはわかっていたということでした。比較的自分の置かれている状況にそう厳しい意見を持っておられない方もいるんですが、かなり厳しく考えている人でも、自分さえ頑張れば合格できるという意見がありました。そういう方に、法科大学院にどういう期待をしているのかと聞くと、これも人によってさまざまでした。非常に極端な例では、去年の司法試験の合格率が低かったので、先生たちも発奮して、教育をよりよくしてくれるだろうと思い、それに期待しますという方もいました。また、ある程度期待して自分で頑張るという方と、余り期待していないという方もいました。個人的な感想としては、自学自習に力を入れているという感じの人がかなり多かったように思います。

【永田委員】
 基本的に同じような印象を持ちました。正確にその法科大学院の情報を知って受験したかどうかということについて聞くと、概ね知りながら入学してきたということでした。法科大学院を修了しないと新司法試験を受けられないわけですから、そのチャンスとして、自分の法科大学院の合格率が必ずしも芳しくなくてもそのチャンスはあるという認識でした。しかしながら、これは私どもの感想ですけれども、法科大学院の教育の中で、十分にこの法科大学院の修了を得るというのはこういうものであって、それに沿った試験問題を出して、それぞれの学生をそのレベルまで引き上げようということが明確に示されている大学は余り問題がないのですが、それが示されていない、あるいは学生の層によっては示しにくいというところが、一番私どもは問題だと感じているところであります。大半の大学は、きちんと示していおり、大学側も学生側もしっかりと認識して、そして一定の成果を上げています。今回のフォローアップの対象となった法科大学院の大半は、その点に問題があるというふうに理解しております。

【磯村委員】
 所見のところを拝見して、例えば成績評価の問題や、あるいは法科大学院のレベルとしてはどうかというようなご指摘がいろいろありますが、こういう問題は、設置後3年間については設置計画履行状況調査の形でフォローをしていたと思いますし、その後は認証評価の中で、こういう点についても重点的に認証評価の対象とされてきたのではないかと思うのですけれども、それでは十分にこれは改善されていなかったということなのでしょうか。

【井上座長代理】
 そういうことではなくて、我々が現地で見せていただいた範囲でこういう所見を持ったということです。ですから、我々が見せていただいたものは対象も限られていますし、これが一般化して言えるかどうかというところについては、我々も留保をしています。

【土屋委員】
 重点的にフォローアップが必要だという表現と、継続的にフォローアップが必要だという表現と、大別すると2つ見られると思いますけれども、この意味合いの違いはどこにあるのでしょうか。

【永田委員】
 これは先ほど報告をしたところでございますけれども、1点は、その客観的な状況として競争性が保たれているかどうか、あるいはその成果が上がっているかどうかという客観的な情報。それから、その状況についての各法科大学院の認識の問題、その認識に基づく改善策が説明されているかどうか、あるいは一定のその改善策が一部成果を上げているかどうかという点から、特に、認識が十分でなくて、改善策も十分に立てられていないというところを中心に、重点的なフォローアップが必要としております。

【井上座長代理】
 答案や授業の問題についても、今申し上げたように、限定された対象について見た限りでこういう所見を持ったということなのですが、共通した我々の印象としては、特に入学者選抜の競争率が低いところは、入学者選抜の実質的機能が機能しておらず、学力がかなり低い人が入ってきているのではないかと思われ、その結果が、レベルの低い答案に反映されているのではないかと思われます。それに対する成績評価も、可とはいえないものを可にしているような例もかなり見受けられ、そういう人が修了していきますと、自信のないまま修了してしまいますので、どうしても司法試験の受験を控えたり、あるいは挑戦してもなかなかうまくいかないということになります。そうなると、合格率のところがますます低くなり、優秀な志願者を集めるのは極めて難しく、入学者選抜の競争倍率がますます低くなるというマイナスのスパイラルが起こっているのではないかということが、実地調査に行った法科大学院に共通して感じられました。この感想は率直に先方にも申し上げ、我々の印象が間違っているかもしれないし、限られた範囲ですので一般化できないかもしれないけれども、どうもそういう懸念が感じられるということはお伝えしました。

【田中座長】
  全般的な印象をお伺いしたいのですけれども、授業内容や成績評価や非常にきちんとしているにもかかわらず、司法試験や入試の状況が悪いということはなく、基本的には問題が並行しているということですね。入学者の選抜状況、教育内容、成績評価に問題があると、最終的には司法試験の合格状況も良くないというふうに、基本的にパラレルであると認識しておられると理解してよろしいでしょうか。

【稲田委員】
  今の話に少しつながるのですけれども、井上先生がおっしゃったように、少なからずの学生がそういった法科大学院の実情を認識していながら入ってきているということですね。したがって、詐欺とも言えないというのが実感だと思うのですけれども、一方で、詐欺と言えないということは、逆に言うと、少なくともその特定の法科大学院に対する期待度が極めて低いということで、期待しないで来ているとも思います。
  ただ、これはその本人の人生に対する考え方次第ということになるかもしれませんけれども、3年間という時間と多額の授業料、その間の生活費というものをかける場として、法科大学院に期待をしないで行くということは、自分がしっかりやりさえすればよいと思っているということですね。本来学校としては、目標を持って法科大学院を目指してもらいたいはずなのに、とりあえずという程度で多大なコストをかけて法科大学院を受けるということがなぜ起きるのでしょうか。システムとして、どうしてそういう人たちが入ってきてしまう仕組みになっているのか、私はどうしても理解できないのですが。。

【井上座長代理】
 私も完全に理解できているわけではないですし、誤解をしていただかないほうがいいと思うのですが、多くの法科大学院、あるいは実地調査の対象となった法科大学院でも、少なからずの数の学生は、高いモチベーションを持って入ってきます。それは、法科大学院に期待をしているということだろうと思ういます。しかし、実地調査の対象となった法科大学院の中には、無視できない数の、そうではない方がいる。ただ、その場合には、司法試験の結果について厳しい状況にあるという認識を持って入学されたのかという質問をしたら、それはわかっていたということです。しかし、教育の内容だとか方法だとかについてはもちろん入ってみないとわからないので、それについてはやはり一定程度の、あるいは相当の期待を持って入ってきている人がかなりいるわけですね。
 最初から全く期待していないという人もいるかもしれませんが、多くの人は何がしかの期待はしているのですね。それから、厳しい状況であるということはわかっているけれども、自分は別で、努力すればチャンスがつかめるという方が多かったように思います。非常にまじめに取り組んでおられることは確かです。
 ただ、なぜそういう人が入ってくるかと聞かれても、それは何とも答えられない。しかし、最低限言えるのは、本当に基礎的な学力が十分でない方であれば、入学者選抜で選抜すべきだということです。そこをいかに厳しくできるかということが、第一関門です。その上で十分な教育をして、成績評価も厳格にすれば、修了時には、大学側も学力を保証できるし、本人も自信を持って修了できます。そういう学生が司法試験を受けて、その実力を発揮して法曹になるというプラスのスパイラルに転換しないと、なかなかこの状況は改善できないと思っています。

【永田委員】
 そのとおりです。今回の報告では問題点が目立つ結果になっていますけれども、調査をした対象の中でそういう問題のある部分があったということであって、法科大学院全体としては、教員も学生も非常にまじめに取り組んでおり、その成果をあげていることを強調しておきたいと思います。
 もう一点、従来の旧司法試験は数パーセントの合格率なのだから、10パーセントぐらいの合格率であれば上出来だという認識もないことはないです。しかし、それは問題がありまして、法科大学院を修了した人だけに新司法試験の受験資格が与えられるわけです。したがいまして、入口で資質を確保し、そしてきっちりした教育と修了認定をしてもらわないと、極めて歪んだ不公正な法科大学院制度になってしまうと思います。そういう意味で、このワーキング・グループもそういう形で、ある程度合格させれば良いでは済まない制度であるということを強調して、解決策等のお話をして参ったつもりです。
 競争性が低い法科大学院のなかでは、所属する院生全体をみると、まじめに取り組んでいるんだけれどもついていけない層が生じており、学力の二層化、二極化というようなことも、限られた大学ではありますが起こっています。やはりきちっと教育できる対象を入学させて、そしてそれをきちっと教育・修了認定をしていくということが非常に重要だと思います。

【笠井(治)委員】
 細かいことですけれども、この資料の中で、56番の愛知学院大学に「特に重点的にフォローアップを実施する必要がある」という記述があります。これは、他の「重点的にフォローアップする必要がある」というところとは異なる所見を持たれたということなのでしょうか。その点はどういう経緯があったのでしょうか。

【永田委員】
  これはどういうことかと申しますと、教育内容の問題ですけれども、その教育を自分たちで十分に責任を持ってやろうとしていないという部分が見られるということでありました。司法試験受験予備校との提携の問題は、それによって設置認可されなかった大学もあるわけでございますので、競争性や成績評価・修了認定の問題の以前に、司法制度改革審議会意見書にもありますように、予備校から大学に教育を戻すという法科大学院の理念に関わる問題です。早急にこの部分については改善をしていただきたいということでこの「特に」がついております。他の法科大学院は、入口の問題、その中の評価の問題、修了の問題等について指摘しておりますが、基本的な法科大学院の制度に反するような仕組みを取り入れているということで、これは早急に改善をしていただきたいという意図での記述です。

【鎌田委員】
  大変念入りにヒアリング等をしていただいたと思いますが、一覧表としてはよくわからない部分もあって、一覧表に書いてあることと、この報告書は本当に一致しているのかどうかも判断しなければいけないと思います。我々の利害に一番かかわるところでご質問させていただきたいのですが、資料3の4番目に「このような取り組みを一層促進するためには、引き続き各法科大学院に対して」とありますが、この新たな促進策の対象となる法科大学院の範囲はどこになるのでしょうか。これは、全部の法科大学院と読むことも可能だと思います。
 しかし、その前の3番目では「2に該当する法科大学院」となっていて、それに該当する法科大学院は18校ですね。ところが、このフォローアップ一覧表で大幅に改善が必要とされたのは14校、改善努力の継続が必要なのは12校、合わせて26校となっています。どこがこの4番目の対象になる法科大学院なのかということが決まっていれば、教えていただきたいと思います。

【永田委員】
 基本的には、今回調査した対象校は、引き続き調査を継続することを考えております。望ましいことではございませんけれども、新司法試験の合格者数や、未合格者の数などを念頭に置いて対象にしておりますので、対象校が増えることもあり得ないことではございません。

【井上座長代理】
 鎌田先生のご質問は、新たな促進策は法科大学院全体にまで及ぶのか、それとも今回のフォローアップ対象校だけに限定されるのかという趣旨だと思うのですけれども。この調査結果はヒアリングや実地調査を直接行った対象についてだけこういう所見を得たわけで、他のところは、また別問題ということです。書き方として、対象にしたところ以外の全体にも及ぶと読めるということでしょうか。

【鎌田委員】
  はい、そうです。望んではいませんけれども、入学試験の競争倍率が低いとか、新司法試験の合格率が低いとか、そのようなデータがあれば、どの法科大学院でも新たな促進策の対象になってくるということなのだろうかということです。

【井上座長代理】
 改善の努力をしてくださいということは4月の本委員会の報告で提言して、それに基づいて改善にどう取り組んでいるのか、その効果はどのくらい上がっているのかということをフォローアップするというのが第3ワーキング・グループの作業です。そのときに、どういう視点でフォローアップの対象校を絞り込んできたかということは、この報告でお示ししたとおりです。対象校とならなかったところについては、概ねデータを見る限りは改善に取り組んでいるし、改善が進んでいるように見えるということです。さらに、ヒアリングや実地調査を実施した結果、特に、早急にかなり大がかりな見直しというか、改善の努力をしていただかないといけないというところが重点となって、改善の取り組みをされているんだけれども、実効はもう少し見てみないとわからないので、それを見守るべきだというところが継続です。ですから、これ以外のところは改善しなくていいということではなくて、今まで続けられている改善の努力を一層促進していただかないと法科大学院制度全体の改善には結びつかないのです。特に大規模校については影響が大きいので、もう改善しなくても良いということまで我々は言っているつもりはなくて、改善は4月の報告書に基づいて進められているでしょうけれども、それが進められていないということがわかれば、もちろんこの対象になるわけです。

【鎌田委員】
  大体わかりました。一方では、本日の新聞記事では、名指しされた大学院は補助金が削られるかもしれないという書き方なので、その名指しされたことが重要なのかということになります。他方で、このフォローアップの考え方からは、井上委員がおっしゃられたように、この26校にとどまるわけではなく、今後も継続してフォローアップするということになるわけです。4番はどちらにも読めるので、そこを少しはっきりさせておいたほうがいいと思います。全てが対象になるということになると、例えば、司法試験の合格率が70%のところは50%よりも補助金が高いというふうに思われかねない。だとしたら、今後は何をおいても司法試験に合格させることに専念するのが法科大学院の最大の使命だという雰囲気が醸成される危険性がある。そういう意味で、非常に柔軟に対応できる表現にはなっているけれども、それだけにいろいろな誤解を生みやすいと思いますので、少し共通のコンセンサスができるようにしていただければというふうに思っております。

【井上座長代理】
 鎌田先生のご指摘で、私も気になったのですが、この3番目のところは「2に該当する法科大学院の多くでは」となっていますが、これは18校しかないのですね。重点と継続を合わせるとそれより数が増え、また、4番目の対象はもっと広いかもしれない。趣旨はご理解いただいたと思いますので、誤解を招かないような表現にさせていただいた方がよいかとも思いますので、そこだけは留保させていただきます。

【浅野専門職大学院室長】
  補足させていただきますと、4月にこの委員会で出されました報告で、これまでの試験において合格者が全くまたはごく少数しか出ない状況が見られる法科大学院については、そのあり方について抜本的な見直しが必要であるという提言がなされております。今回、第3ワーキング・グループで実地調査等を行って状況を確認させていただいた中で、改善は全体的に進んでいるけれども、抜本的な見直しというのはほとんど行われていないというのが現状でございます。それを促進することを考えるべきだということで、鎌田先生がご指摘されたように、このフォローアップの結果とこの4番の内容は必ずしも直接リンクしないということです。

【松村委員】
  具体的な見直しの中身についてはまだ決まっていないということですけれども、スケジュールを少し教えていただければと思います。また、このフォローアップの対象となっているところを見ていると、ほとんどが地方の法科大学院です。合格率と入試の状況は、かなりリンクしている部分があると思います。地方においては、もともと法曹を志す学生がかなり減ってきていることが一つ大きな問題になっていると思うのですけれども、学部学生も法科大学院を受験する学生自体がかなり減ってきている状態です。そういったところで、母数が減ると東京とはかなり状況が違います。だから、一部の見方かもしれませんけれども、どうしても東京中心になってくる部分はあるのではないかという気がしています。
  それと、もう一つ気になるのは、所見の部分で、新司法試験の合格状況について指摘して継続的あるいは重点的にフォローアップという形になっていますけれども、余りこれを強調しますと、先ほど鎌田委員がおっしゃったように、新司法試験の合格だけを目的とするというふうになってくる。今もそのような形にかなり流れている部分がありますので。それともう一つは、特に地方は、改善の努力を各大学がしても、数字として目に見えるような形ですぐに出てくるかというと、非常に厳しい部分があると思います。そういった意味では、何年かのスタンスをとって見るのか、あるいはここ数年の形でこのフォローアップを見ていくのかという、その辺のスタンスを少し教えていただければと思います。

【田中座長】
 それは、本日のご意見も踏まえて、これから検討するということになろうかと思います。

【永田委員】
  本日の新聞では「警告」という表現があったのですが、今回の報告は、各法科大学院の改善計画書に基づいてその協力のもとに進めているヒアリングと実地調査の結果であって、それを踏まえて、改善の促進を示唆するものです。補助金削減というようなこともその報道では書かれていましたが、それは、ワーキング・グループとしては対象外の問題でありますし、この作業が具体的にそれを念頭に行われたわけでもございません。何もすぐに個々の法科大学院がどうこうなるということではなくて、本当に改善計画が実行されているかということを、継続的に見ていかなければいけないというのが、現段階の認識です。

【井上座長代理】
 単に一時的な数字を問題にしているわけではなくて、そういう傾向が続いているということをとらえて、それは理由となっているところに問題はないのかという物の見方をしました。新司法試験の合格率についても、鎌田委員からもご意見がありましたけれども、50%か70%かということを問題にしているのではなくて、4月の特別委員会の報告でも提言されていますが、著しく振るわない状態が継続しているというのは、やはりそれは一つの兆候だと見ざるを得ないのですね。それは確かめて見ないとわからないので、いろいろ見せていただき、こういうところに問題があるのではないかという点についてもっと意識を持って改善に取り組んでいただいたほうがいいのではないかと申し上げているということで。それが本当にベストの解であるかどうかはわかりませんし、非常に厳しい条件であるということは我々も認識しています。ただ、もう本当に悠長なことを言っていられない状況で、法科大学院制度全体が非常に危機にあるわけですが、その中でも特に厳しい状況にあるということです。当事者の先生方も多くは認識されていて、必死で努力されているところもあるようですけれども、まだその認識が足りないのではないかと感じたところもありました。我々として申し上げられるのはそういう点ですので、こう改善すべきだということは言えないのですね。

【田中座長】
 いろんな要因があって、地域の要因も確かにあると思いますけれども、やはり教育体制そのものに問題があるというところもあると思います。むしろ、法科大学院長の状況認識や、教育内容あるいは教育を提供するシステムなどの制度そのものが適正かどうかが、中心になると思います。単に新司法試験の合格状況や入学試験の状況だけではなくて、実際に見てみると教育体制そのものに問題があるのではないかということで、それを踏まえて対応していく必要があるということですね。

【井上座長代理】
  地域の問題について申し上げますと、もちろん全般的に法科大学院の志願者は減っていて、その中でも地方に所在する法科大学院が苦戦をしていますけれども、その中でもやはり濃淡があるのですよね。それなりの努力をして学生を集めているところもありますし、教育内容や教員組織についても、問題があるとご自分たちで認識すれば教員組織を更新していくなど、そういう努力をされているところもあるのです。ところが、そのような努力をまだ余りやっておられないのではないかと思われるところもあります。教員体制についても、設置当初からそれほど変わっていないところもあるのです。その辺りは、いろいろな要素やファクターを総合して見せていただいたつもりです。もちろん、限られた時間で限られた資料を見て意見を言っていますので、間違っているという可能性は十分認識して、責任を持って意味のあることを言おうという覚悟でフォローアップをしています。

【田中座長】
  引き続き、第3ワーキング・グループでのフォローアップをお願いしたいと思います。今回の調査結果も踏まえまして、特別委員会として、このような状況をどうやって改善していくか、それから個々の法科大学院の教育体制、その他の組織の見直しを一層促進する方法について具体的に検討する必要もあると思います。ですから、フォローアップを進めていただくと同時に、そういう促進対応策も早急に検討して、できれば年度内を目途に一定の結論を得られるように、次回の本委員会におきまして引き続き議論していただいて、もう少し具体的な方向性、対応策が出せるような形にしたいと思っています。
 次に、法科大学院の認証評価の見直しを議題としたいと思います。これまでご議論いただいた内容を踏まえて、改正案の内容をパブリックコメントにかけていたところでございます。事務局からその資料及び今後の予定の説明をお願いいたします。

【浅野専門職大学院室長】
  資料4に基づいてご説明をさせていただきます。これまで、この委員会でご議論いただきました専門職大学院設置基準及び認証評価に関するいわゆる細目省令についての改正案について、昨年の12月17日から本年1月15日までパブリックコメントを実施しました。提出意見としては9件ですが、これは1人の個人と2つの機関から複数の意見があったということでございます。
 提出意見の内容でございますが、専門職大学院の設置基準の一部改正につきましては、法学未修者の法律基本科目の充実を図るということで賛成であるというようなご意見、それから逆に、純粋な法学未修者に対しては負担が過重につながることも懸念されるという意見もございました。もう一つのいわゆる認証評価に関する細目省令の改正ですが、入学者選抜に関する適性の的確かつ客観的な評価に関する評価の実施の点につきまして、4月の報告書で提言された、競争倍率や適性試験の入学最適基準点など、数的な基準が機械的に評価されることにならないように、認証評価機関の自主性が損なわれないような配慮が必要だというようなご意見がありました。それから、改正には賛成であるが、やはり法科大学院の成績と新司法試験の成績や適性試験が相関しているかどうかを示すべきであるし、適性試験の性能も高めていく必要があるというご意見をいただきました。
 それから、教員組織に関する体制の点でございますが、認証評価機関が機械的に評価することにならないように配慮が必要だというようなご意見や、省令レベルの基準でさらに明確化・厳格化を提案したいというご意見をいただいております。3点目の、教育上の目的を達成するために必要な授業科目の開設及び体系的な教育課程の編成に関する評価につきましては、日本国憲法23条は学問の自由を定めており、教育の自由は定めていないが、高等教育機関における教育は学問の自由に裏打ちされたものであることが期待されている。よって、このような省令改正は避けるべきであるということで、いわゆる共通的な到達目標を評価の項目の中に入れるのはいかがなものかというようなご意見がございました。それから、今回の改正には賛成だけれども、1年次の法律基本科目だけが対象になっていることが危惧されるというようなご意見がございました。
  それから4点目の司法試験の合格状況を含む修了者の進路に関する評価の実施について、これが一番意見が多かったわけでございますが、やはりこれは受け控えであるとか、受験対策などを助長する恐れがあり、合格者数や合格率を直接的に評価することには慎重であるべきであるというご意見がありました。また、それらの情報を適正に開示しているかという間接評価にとどめるべきであるといったご意見や、そもそもこの項目は削除するべきであるという強いご意見、修了者の進路が専ら法曹三者への進路と誤解され理解されてしまうのではないかといった危惧をされているご意見がありました。それから、改正には賛成であり、この基準については、もっと省令で明確化・具体化すべきであるということで、具体的な数値的な基準を入れるべきではないかというご意見もございました。
  最後に認証評価の方法についてでございますが、重点的・総合的評価とする方針については異論はないが、そのような評価のあり方にしなければ各法科大学院が評価基準の細かな解釈指針を形式的に免れるといった運用により対応するおそれがあるというご意見が寄せられました。
  今後は、1月29日の大学分科会におきまして、諮問及び答申案を審議する方向で進めさせていただきたいと思っております。

【田中座長】
 それでは、以上の説明につきまして、ご意見かご質問ありましたら、ご発言をお願いします。

【磯村委員】
  2ページ目の2つ目の丸ですけれども、実質的なカウント方式とすべきであるということの趣旨がややわかりにくいのですが、その点についてお伺いしたいと思います。
  もう一つは、3の最初の丸のところで、学問の自由という議論がされておりますが、これは恐らく教育の質の確保と関係するので若干の意見を申し上げますと、もちろん学問の自由というのは、少なくとも高等教育間における教授の自由を含んでいるというのは憲法上よく言われているところで、それは十分に承知しているところであります。ここでは、例えば法科大学院において厳格な成績評価が必要である、あるいはその履修が偏ってはいけないという前提で、教育カリキュラムのあり方の中でどういう形でどういう教育を行い、どういうレベルに達していれば法科大学院の修了にふさわしいと言えるかどうかという観点で、修了生がどういうレベルに達しているかということの具体的な尺度を提示して、それに従って評価するというのが今回の改正の趣旨であろうかと思います。したがって、各研究者がその研究の自由の延長として、どういうことを教授するかという自由とこの問題とは、直接関わるという認識は私は全く持っておりません。

【浅野専門職大学院室長】
  カウント方式については、学部や法科大学院それぞれ教員をしっかり置いて、それぞれの教育に専念させるということで、そういうカウントの方式をとっていただくという趣旨です。

【井上座長代理】
  学問の自由、教育の自由についてですが、これまでも法科大学院のカリキュラム編成については認証評価の基準で定められております。それは、専門職大学院として特に法曹資格全般の範囲の教育を担当する機関であり、新司法試験の受験資格が与えられることに見合った教育をしないといけないという要請があるためです。それもこの教育の自由に反して憲法違反だというご趣旨なのか、あるいは新たに評価の実施に当たって重点を置くことが問題なのか、よくわからないと思いますね。
  コア・カリキュラムについてだけ申し上げますと、これまでも確認してきましたように、法科大学院で最低限理解した上で修了してほしいという事柄で、それが法曹となるに当たっての前提ということです。それを、各法科大学院において、どのような方法で、どういう内容で教えるかは、各法科大学院ないし各担当教員の創意工夫に委ねられます。それでもなお教育の自由を侵害するということになるのかどうかという点ですが、その前提に誤解があるのではないかと思います。教える内容まで押しつけるということだとすると、確かに懸念されるようなことになるけれども、そのような考え方ではないのです。その前提に誤解があるのではないかと思いました。

【田中座長】
  ほかにご意見はございますでしょうか。
  それでは、このような形で、省令の改正について必要な手続を進めていただきたいと思います。
  次に、第2ワーキング・グループの主査である磯村委員から、共通的な到達目標に関する現在の審議状況について報告していただきたいと思います。

【磯村委員】
  お手元の机上配付資料に沿って説明させていただきます。ごく一部の部分を除きまして、昨年の12月下旬に、第1次案の具体的な内容及びそれに関する基本的な考え方を公表し、各法科大学院を含む法曹養成に直接、間接に関わる関係機関に、意見照会をしているところでございます。寄せられた意見を踏まえて、さらに確定案に向けて作業を進め、最終的には3月13日に法科大学院協会と共催でシンポジウムを開催し、そこで確定案の公表を予定しております。
  とりわけ民事系については少し分量が多くなっている一つの理由が、ひし形の黒いものと白抜きのものと両方がございますが、作業グループの中では、その黒のほうはコア・カリキュラムで共通的到達目標に含まれる項目内容であるということについてほぼ意見が一致しています。それに対して、もう少し広く拾い上げる可能性があるとすると入り得るかもしれないという形で、白抜きのものがかなり多く含まれております。最終的には、この白抜きのものでコア・カリキュラムに含まれるというものはそれほど多くないと思いますので、分量的には民法あるいは商法については、現在のこのページ数よりは相当部分減少するということになるかと思います。まだ十分にどういう意見が寄せられているかということは承知しておりませんけれども、恐らく各機関からはいろいろ意見があると思いますので、それをさらに検討した上で確定案に向けての作業が行われるというのが現在の状況でございます。

【田中座長】 
  どうもありがとうございました。それでは、事務局から今後の日程案についてご説明をお願いいたします。

【浅野専門職大学院室長】
 次回は、2月5日金曜日、14時から15時の開催を予定しております。詳細につきましては、改めまして事務局よりご案内をさせていただきます。

【德永高等教育局長】
 政権交代が行われ、いろいろ新しい形でやっている中で、やはり法曹養成をどうしていくのかということは大きな課題であるということは関係者に一致したことでございます。この問題について、法曹養成に関わる方々、あるいは直接関わらない方々からも強い高い関心が示されております。私どもとしては、法科大学院特別委員会でさまざまなご議論いただいていることを踏まえまして、法科大学院が主体的に自らを改革、改善し、プロセスとしての法曹養成の実質を実現していくということを文部科学省として応援していくことによって、新しい法曹養成制度についてより多くの関係者の理解を得る努力をしていきたいと思っております。
 ただ、大変残念ながら、文部科学省がいわば大学制度の中で思いついて、法科大学院制度が突然できたかのようなイメージさえ持っていらっしゃる方も中にはいるわけでございます。私どもは、これからも、政府全体として取り組んだ司法制度改革、司法制度改革全体の中での法科大学院ついては、きちっと取り組んでいきたいと思っております。ぜひ先生方からも、それぞれのお立場で一般の人たちの理解を深めるような努力もお願いしたいと思います。

【田中座長】
 それでは、本日は以上で終了させていただきます。どうもありがとうございました。

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高等教育局専門教育課専門職大学院室

(高等教育局専門教育課専門職大学院室資料1)