法科大学院特別委員会(第30回) 議事録

1.日時

平成21年4月17日(金曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省 東館3階3F 1特別会議室

3.議題

  1. 法科大学院の質の向上について
  2. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘、田中成明の各臨時委員
(専門委員)磯村保、稲田仁士、井上正仁、小山太士、笠井治、鎌田薫、 木村光江、椎橋隆幸、土屋美明、永田眞三郎、松村和徳、の各専門委員

文部科学省

久保高等教育局審議官、藤原専門教育課長、浅野専門職大学院室長、小代専門教育課課長補佐

5.議事録

【田中座長】 
 それでは、所定の時刻になりましたので、第30回中教審大学分科会法科大学院特別委員会を開催させていただきます。まずは、事務局から資料の確認をお願いいたします。

【浅野専門職大学院室長】
 配付資料の確認をさせていただきます。
 資料1といたしまして、前回の第28回の議事録(案)でございます。ご意見等がございましたら、4月24日までに事務局にご連絡をお願いいたします。それから資料2は「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)(案)」でございます。それから、机の上に会議資料集ということで、今回パブリックコメントに出てきた意見についても配付をさせていただいております。
 以上でございます。過不足等がございましたら事務局のほうまでお申しつけいただければと思います。

【田中座長】 
 ありがとうございました。それでは、「法科大学院教育の質の向上について」を議題としたいと思います。今日は、昨年度から審議を進めてきました法科大学院教育の質の向上のための改善方策のまとめをお願いしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。まず、事務局から、資料について説明をお願いします。

【浅野専門職大学院室長】
 それでは、資料2に基づいてご説明をさせていただきます。
 これまで、昨年3月27日から、この特別委員会におきまして、法科大学院教育の質の向上のための改善方策についてご審議をいただいたところでございます。本日、最終的な取まとめの案がまとまってきましたので、その案についてご説明をさせていただきたいと思います。
 おめくりをいただきまして、1ページ目でございます。以下、この説明については、9月30日にこの委員会でまとめられました「中間まとめ」からの変更点を中心にご説明をさせていただきます。
 1ページ目でございます。「はじめに」のところでございますが、基本的には「中間まとめ」を踏まえまして、内容の修正を一部行っております。例えば、前回のこの委員会では、認証評価機関からのヒアリング等を行いましたので、それについても、この「はじめに」の文章の中に「認証評価機関による評価の結果」という言葉を入れさせていただいております。それ以外の点については修正ございません。
 それから、2ページ目でございます。2ページ目の3番目の点、3ポツでございますが、「今後、引き続き、法科大学院における共通的な到達目標の策定に向けて、審議を継続していくとともに、本報告に基づく各法科大学院における改善計画及びその履行状況について、適切なフォローアップを行っていくこととしている。」という文言を新しく入れてございます。4、5については「中間まとめ」の内容と違いはありません。
 3ページ目でございます。3ページ目からは、第1ワーキンググループを中心に審議をいただきました「入学者の質と多様性の確保」の問題でございます。
 1つ目のポツの競争性の確保のところでは、「中間まとめ」から、競争性の確保が困難という目安として競争倍率が2倍を下回っているという考え方が新たに加わってございます。
 それから、4ページ目でございます。「適性試験の改善」につきましては、3つ目の丸の、統一的な入学最低基準の考え方、総受験者の下位から15%程度の人数を目安としているという設定の考え方について新たに盛り込まれてございます。それから、その下の丸でございます。入学最低基準について認証評価において評価をしてもらうということが盛りこまれてございます。
 それから、5ページ目でございますけれども、2つ目のパラグラフでございます。適性試験の運用の厳格化、最低基準の導入に伴いまして、適性試験の年複数回の実施などの工夫により、法科大学院の入学希望者に幅広い受験機会を付与することを確保するという内容、それから、その下の適性試験の内容等の改善のところでは、3つ目のパラグラフで、表現力の評価について、論文試験、多肢選択式試験の組み合わせについて提案がなされてございます。
 それから、おめくりをいただきまして6ページ目でございます。3の「法学既修者認定の厳格化」ということで、これも「中間まとめ」の中には入ってございませんでしたが、新たに今回、法学既修者認定の方法等について、統一的な運用を図ることが必要であるということで、その統一的な運用の方法として、1つ目は1年次配当の必修科目すべての単位を一括して免除するということ、それから2つ目にそれぞれの試験科目について最低基準点を設定することと、それから3つ目に、法律基本科目のうち、少なくとも憲法、民法、刑法については、法的な文書作成能力を評価するため、論文試験を課すべきであるという内容となっています。
 それから、6ページ目の統一的な運用の具体的な本文の中には、この委員会でもご議論いただきました、法学既修者認定を厳格化することによって履修免除されない科目を6単位まで認めるという考え方が、さらに審議されたということでございます。そのほか、7ページ目の内容の中には、法情報基礎などの教育の考え方等も盛り込まれてございます。
 それから、おめくりをいただきまして8ページ目でございます。多様な人材の確保の点につきましては、奨学金の充実、特に家計基準の合理化など公的奨学金制度のさらなる充実というような内容が含まれてございます。その具体的な内容については9ページ目に記載がされてございます。
 それから、10ページ目でございます。第2の修了者の質の保証、これは第2ワーキンググループを中心に検討いただいたわけでございますが、10ページ目の枠囲みの丸の4つ目でございます。「中間まとめ」から新たに「共通的な到達目標の内容は、法改正などの法的状況や社会的環境の変化あるいは学問分野の進展などに応じて適宜変更されるべきであり、少なくとも5年ごとに1回程度の見直しが行われる必要がある。」という部分が入りました。さらに、その次の丸でございます。「各法科大学院は、修了者の共通的な到達目標の達成度を評価するため、厳格な成績評価による単位認定・進級判定及び修了認定に取り組むとともに、各認証評価機関においては、法科大学院修了者の共通的な到達目標の達成に向けた各法科大学院の取組みを適切に評価することが期待される。」という考え方が新たに盛り込まれたわけでございます。それから、11ページ目については、同枠囲みについてその説明が加えられたわけであります。
 それから、13ページ目でございます。教育内容の充実と厳格な成績評価・修了認定の徹底であります。1つ目の法律基本科目の基礎的な学修の確保については、新たに13ページ目の枠囲みの2つ目の丸として「法学未修者1年次における法律基本科目の基礎的な学修を確保するため、各法科大学院が法律基本科目の単位数を6単位程度増加させ、これを1年次に配当することを可能にする必要がある。」ということで、法学未修者1年次については、現在の36単位の履修科目の登録上限を最大42単位とする弾力的な取り扱いが必要であるという内容が盛り込まれたわけでございます。枠囲みの3つ目の丸では、法学未修者1年次における教育方法について、双方向・多方向の授業を基本としつつ、講義形式による授業方法との適切な組み合わせを行う授業方法の一層の工夫が必要であることが盛り込まれています。
 それから、丸が1つ飛びまして、法学既修者の教育におきましても、法律基本科目の基礎的な学修を確保するため、法律基本科目の一層の充実が必要であるという内容、それから、その次の最後の丸でありますけれども、認証評価機関における評価に当たっても、この枠囲みの中の考え方に従って、評価の基準や解釈指針、その適用のあり方について、今後の検討が必要であるという内容が盛り込まれたわけでございます。
 その13ページ目の枠囲み以下につきましては、今説明をさせていただいた内容について詳細に盛り込まれたわけでございます。特に14ページ目の一番下の行、「法学未修者教育の充実」の内容の一番下の行では、新たに「また、増加した単位数の枠内などで、将来的に法曹として求められる法的なリテラシーを醸成する観点から、単に技巧的な答案練習とは区別された、法的文書の作成のための基礎教育が十分に行われるよう努めることが期待される。」という内容が盛り込まれたわけでございます。そのほか、1年次の未修者の学修の充実について、単位数の変更でなく、時間数の変更については慎重な検討が必要であるという内容が15ページ目では書き込まれてございます。
 16ページ目につきましては、先ほどの枠囲みの法学既習者の教育の充実につきまして具体的な内容が書かれてございます。前回ご議論いただきました内容を踏まえまして、法学既修者教育の充実の書きぶりの中の4行目でございます。「法律基本科目以外の科目の履修単位数の維持・拡充に配慮しつつ、修了要件単位数を超える部分におけるカリキュラム編成や履修指導などの工夫により、法学既修者が履修する法律基本科目についても、質的充実はもとより量的充実を図ることが考えられる。」という内容に変更されてございます。
 それから、16ページ目の(2)の法律実務基礎科目の在り方につきましても、「中間まとめ」から具体的な内容が盛り込まれたわけでございます。1つ目の丸におきましては、法律基本科目の共通的な到達目標の内容を踏まえつつ、法律実務基礎科目の到達目標の設定が必要であること、それから、それを超えるさまざまな工夫、充実を検討することが望まれるとか、そして次の2つ目の丸では、研究者教員と実務家教員の緊密な連携教育が必要であることが新たに盛り込まれたわけでございます。16ページの枠囲み以下はその具体的な内容について記述がわたっているわけでございます。
 特に17ページ目につきましては、最後のパラグラフの「なお、」以下で、臨床系科目についての言及も新たに盛り込まれているわけでございます。
 それから、19ページ目でございます。(3)の厳格な成績評価・修了認定の徹底でございます。これにつきましては「中間まとめ」以降の検討において、審議においては具体的な審議・検討は新たにはやっておらず、基本的には「中間まとめ」の内容を表した形になってございます。
 それから、20ページ目の司法試験との関係でございます。これにつきましては、2つ目の丸のところで「これまでの司法試験において、合格者が全く又はごく少数しか出ない状況が見られる法科大学院については、その在り方について、抜本的な見直しが必要である。」という内容が新たに「中間まとめ」以降加わったわけでございます。
 そのほか、20ページ目では、前回のご議論を踏まえまして、枠囲みの外のパラグラフの2つ目のところで「法科大学院は、新たな法曹養成制度の中核的な教育機関として、」ということで、3回の司法試験の受験の結果、修了者のうち、司法試験に合格し、法曹として活躍できる者の割合が相当に低い状況が継続(その見通しも含む)して見られる法科大学院について、入学定員数の見直し等を含めた適切な現状の改善を図る必要があるという内容が、修正されてございます。
 それから、21ページ目でございます。これは第3「教育体制の充実」ということで、前々回ご審議をいただいた内容でございます。基本的に1の質の高い専任教員の確保につきましては「中間まとめ」の内容を踏襲した形になっております。
 それから、おめくりをいただきまして、22ページの入学定員の見直しと法科大学院の教育課程の共同実施・統合等の促進でございますが、枠囲みの中におきましては、新たに平成22年度という具体的な年限が、入学定員の削減などの適正化に向けた見直しの必要があるという形で書かれたわけでございます。
 それから、枠囲みの中の2つ目の丸でございます。これも「中間まとめ」以降に新たに入りまして、この3つの状況にないような法科大学院においても、教育体制の充実、入学者の質の確保や、大量の司法試験不合格者数の削減などの観点から、平成22年度の入学者からの入学定員の見直しに主体的に取り組むことが望まれるという文言が新たに入ってございます。22ページの枠囲み以下につきましては、具体的な内容、枠囲みの内容について言及がされているわけでございますが、枠囲みの内容にさらにつけ加わった内容としては、22ページ目の一番下のパラグラフでありますが、「なお、」以下、「これらの定員の見直しが教育体制の強化を目的としていることに鑑みれば、その見直しに当たっては、教員数の削減などにより教育体制が脆弱になることのないよう配慮されるべきである。」とされています。それから、23ページ目で、「法科大学院の入学定員の見直しに当たっては、地域における法曹養成機関としての機能・実績を分析・評価し、適切な規模に留意しながら、全国的な適正配置にも配慮する必要がある。」という内容が盛り込まれてございます。
 それから、おめくりをいただきまして24ページ目の教員養成体制の構築でございます。これについては「中間まとめ」の内容と大きく変更はございません。
 それから、25ページ目の4の教員の教育能力の向上、これにつきましても内容的なものに変更はございませんが、枠囲みの外に一番下のパラグラフでございます。ヒアリング等を行った結果、各法科大学院でそれぞれFDについてはかなり活発に行われているということでございましたが、さらに活性化を図るために法科大学院の教務担当者などの横の連携を構築することや、各法科大学院に優れた教育内容・方法をフィードバックしていくことを目的として、全国的な、横断的なFDというものの取組も期待されるという内容が主にカバーしてございます。
 それから、26ページ目でございます。これについても、前回、前々回でご議論いただきました。第4の「質を重視した評価システムの構築」でございます。1つ目の教育水準と教員の質に重点を置いた認証評価ということでございまして、この枠囲みの中は、前回、前々回に議論していただいた内容に即して、評価の重点評価項目の設定、それから不適格認定についての評価基準・方法の見直しの必要性、それから4つ目の丸では不適格認定の基準・方法についての3つの認証評価機関の調整のための主体的な協議の場の設定といった内容が盛り込まれているわけでございます。「中間まとめ」では認証評価の結果、平成20年度の認証評価結果が出るまで検討を継続するという形で書かれていたわけでございますが、新たにこの内容が具体的にこの「中間まとめ」以降盛り込まれたわけでございます。26から28ページ目がその内容となってございます。
 それから、29ページの2つ目の積極的な情報公開の促進ということで、これも前回、前々回ご審議いただきまして盛り込まれた内容でございます。前回のご議論の中で、学生の生活支援、奨学金制度等の情報公開も促進する必要があるというご指摘をいただきましたので、最後「学生への生活支援に関するもの(奨学金制度など)」という内容を追加してございます。
 それから、おめくりをいただいて30ページ目でございます。3の「フォローアップ体制の構築」ということで、この内容については「中間まとめ」以降、変更点はございません。
 以上がこの最終的な報告の内容でございまして、以下、付属資料として審議経過、これは第1回平成20年3月27日から9月30日までの「中間まとめ」から、それ以降、12月5日から4月17日までの検討を経た審議の経過について記述が追加されてございます。
 それから、その次、おめくりいただきまして、ちょっとページ数が入っていないので恐縮なのですが、第4期の中央教育審議会の法科大学院特別委員会の名簿、そして今の委員の皆様が入っておられる続きのページには第5期の法科大学院特別委員会の名簿が書き加えされてございます。
 その次は、おめくりいただきますと、第4期、第5期のワーキンググループの名簿が記載されております。
 おめくりをいただきますと、参考として基礎資料が添付されてございます。これも「中間まとめ」等の変更点についてご説明させていただきます。
 おめくりをいただきまして、「法科大学院入学者選抜実施状況の概要」1ページ目、これについては変更ございません。
 それから、おめくりをいただきまして、6ページ目でございます。「入学者選抜方法について」ということで、これについても変更はございません。
 それから、11ページ目の「法学既修者の認定について」は、新たに今回、既修者認定の法律的な運用の考え方の審議の際に利用した各法科大学院から集めた調査の結果について記載をさせていただいてございます。 それから、13ページ目の修了認定の状況の概要は変わりございません。
 それから、おめくりをいただきまして16ページ目でございます。適性試験の最低基準点のラインを検討する際に使用されました適性試験の得点分布について、16ページ目から21ページ目に適性試験の成績分布について新たに資料を追加させていただきました。
 22ページ目の「新司法試験結果の分析」については変更ございません。
 それから、23、24ページ目については、新たに修了者の司法試験の合格状況についての資料を追加させていただいております。
 それから、25ページ目の「平成20年度法科大学院における教育体制について」、この資料につきましては前回と同じでございます。
 それから、29ページ目から始まります「法科大学院における教育内容等について」、これは今回新たに具体的に審議がされました未修者教育等の内容について、調査を各法科大学院にご協力をいただいて、その結果について新たに今回29、30ページに追加してあります。
 それから、31ページ目につきましては「法科大学院の認証評価について」ということで、これも「中間まとめ」以降、新たに加わったものでございます。
 それから、32ページ目でございます。今回、法律基本科目の単位のあり方についてご検討いただきました。これについて、各評価機関、それから各大学がどのような科目バランスを設定しているかという資料を32ページ目でつけさせていただいております。
 それから、33ページ目でございます。これも「中間まとめ」以降、文部科学省が行いました法科大学院のヒアリングの結果について、33ページ目から35ページ目に新たに添付をさせていただいております。
 それから、36ページ目、37ページ目の20年度の入学定員は変更はございません。38ページと39ページ目の平成21年度の入学定員につきましては、今回、新たに添付をさせていただいております。
 以上で資料2の説明を終わらせていただきます。

【田中座長】
  どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明につきまして、ご意見、ご質問がありましたら、ご自由にご発言をお願いいたします。前回までにご議論いただいた点について、お気づきの点がございましたらご意見をいただきたいと思います。

【磯村委員】 
  一点だけ、文章の内容というよりも、資料の13、14ページに関係するところで、とりわけ、法学未修者について6単位程度増加させて、履修登録上42単位にすることに関係するのですが、14ページの最初の段落の真ん中あたりに、現在の修了要件単位に法学未修者1年次の法律強化をうたった増加分の単位数を上乗せするという書きぶりのところがございます。これは趣旨としては、法学未修者の修了要件単位について6単位を従来の単位数の中に含めて、他の修業科目の単位数を減らすということが、法律基本科目への関わりを生ずるということで、それを避けようという趣旨ではありますが、しかし、これが例えば、仮に93単位であったものが99単位になるというときに、法学既修者のほうがここから30単位を引くという計算になってしまいますと、法学既修者の単位数も自動的に6単位増加するということになりますが、そこの取り扱いをどうするかというのは、ここでは直接は触れていないということをちょっと留保させていただきたいというように思います。

【笠井委員】 
 磯村委員のお話とも若干の関連性があると思いますが、報告書の13ページから15ページに関連する問題としてちょっと考えさせていただいたのですが、これは、第2ワーキングの議論の内容を逐一、また、つぶさに知っているわけではないので、不適切な点はあるかもしれません。
 これから私が述べようとするものは、机上資料の後ろのほうから3番目のパブリックコメントに対する意見、これは日弁連の意見書だと思います。特に、法学未修者1年次に6単位増加させることを許容するということについて意見をまとめさせていただきまして、その点についてのご説明などを差し上げようと思います。それは、未修1年次の学生に6単位を量的に増加させることを許容するという報告書案が提出された後ですけれども、それに対して、それだけではなくて、既修者の基本法に対する理解、思考力も問題だという指摘がありまして、仮にそういうふうに考えると、未修1年次生のみ6単位の増加を許容するという形で1年次に6単位を、言葉は悪いですけれども、詰め込んでしまうようなことを認めていいのかなというのがそもそも異論の出発点であります。
 それは、今さら、ここにいらっしゃる方々に話さなければ、話をするようなことではないと思うのですけれども、法科大学院の発足当時の当初の設定の理念という点からいいますと、平成14年1月22日に教育内容・方法に関する中間まとめというのが発表されておりますけれども、そこには、1年次修了者の学力が2年次入学者と同レベルであるという考え方を必ずしもとる必要はない。それから、各法科大学院がそれぞれの教育方針に従って法科大学院修了時点で全員が同じレベルに達するような教育を行うという考え方のもとに、カリキュラム編成や入学試験等を行えば十分であるというふうにされていたわけです。そうした考え方のもとに、とりわけ、3年次においては法律基本科目にはない選択科目の履修が大変になるということから、3年次については履修登録科目の上限を44単位に増加させることを許容したという経緯があるので、逆に未修1年次生に6単位を増加させることを許容するというのは、その考え方とは対置するのではないかというふうに思ったわけです。そうであるとするならば、3年間かけてきっちりした教育をするというふうに考えるのであれば、6単位を3年間にばらけさせるというほうが正しくはないのかなというふうに考えたわけです。
 その点で言いますと、例えばこれは1年次から2年次に上がる成績評価との関連ですけれども、たしか3月末か4月の頭の議論の際に、例えば理学系の未修者の答案について、論証方法が非常にシンプルでなかなか社会科学なり法学を学習してきた者とは違うものについて、伸び代が非常に大きくあるという点について鑑みると、1年次から2年次に進む段階で成績評価を厳格にやっておくことについては、もう少し弾力的に考えてみて、むしろ適切に行われるという弾力的な取り扱いもされてよいのではないかというご意見もあったかと記憶しているのですけれども。そうした観点から見て、3年間に6単位、つまり修了時点でとれているようにということと、法学既修者の質についても、未修者と完全に区別していいかという点で言えば、やはりそこも考えなければいけないのではないかと思ったものですから、第2ワーキングでの議論がどのようなものであったかについて、ご説明をいただきたいと思ったのです。

【磯村委員】
 私も、今紹介された平成14年の中間まとめのワーキングに入っておりまして、基本的な考え方がここから変わっているというわけではないという前提で少しご説明をさせていただきたいと思います。
 まず、法学未修者1年次に6単位を集中的に場合によっては増加させることができるという考え方の背景にある認識は、やはり法学未修者が1年間で学習をするというときに十分な導入教育を行えないままに、未消化に終わっているという部分が非常に多いのではないか。そういうものを現在の体質の枠の中で実現するというのが非常に難しいとすれば、場合によっては各法科大学院のご判断のもとで、それを少し膨らませるということがあっていいのではないかというように考えたというのが出発点でございます。
 それから、法学既修者についても同様の問題があるではないかというのは、もちろんそのとおりですけれども、法学未修者と法学既修者が同じような状況にあるかというと、またこれが少し違っているようではないかと思います。
 今回の13ページの枠囲みの中の一番下から2つ目の丸印におきましても、法学既修者の教育についてもやはり同じように十分な手当てが必要であるということを指摘しているところでありますけれども、その単位数の問題については、現在の設置基準の制度のもとで、いろんな制度的な限界がある。とりわけ法律基本科目等の単位数を増加させるということは、それこそ、履修のやり直しをするという問題点があるというように思われます。そこで、修了要件単位数を超えた範囲でそういうものについても対応が可能ではないかということで、14、15ページ以下のところでも説明をしているところであります。
 それから、42単位まで法学未修者1年次について増加させるというときの最初に重要な留意点が、その単位を使って詰め込み的にやるということではなくて、従来の行われていた教育コースの枠を使って、さらに導入教育を含めた形で基礎的な力をつけさせるという形で使うということが重要であって、これによって、例えば予習の範囲がさらに増大することによって、過剰な予習・学習を要求するということになってはならないという趣旨を含めているつもりであります。
 それから、とりわけ法科大学院制度が導入された初年度、2年度ぐらいまで強く言われてきた考え方ですが、非常に多くの法科大学院において、十分な力がついていないまま、法学未修者が2年次へ進学するということになると、その次の該当学年における授業について、授業に十分についていくことができない。そうすると、基礎的な力がないままに単に断片的な知識だけを積み上げて、結局、最終年次に至っても、場合によっては十分な体系的な理解ができないままに終わってしまう。こういう弊害のほうが、最初は多かったというように考えられているのではないかと思います。そうであるとすると、もちろん、どこまで伸びるかというのをよく見定めるというのは非常に重要でありますけれども、やはり1年生の段階でどこまでの到達度を考えるかということについては、少しリジッドに見直す必要があるのではないかというように考えます。
 それから、この発想は、法学未修者中心から法学既修者の中心への発想に移るということではなくて、あくまでも法学未修者が3年間でどこまで到達する必要があるかということを基準にするというのは冒頭に申し上げたとおりですけれども、多くの法科大学院において、現実においては法学未修者だけの独自のプログラムを作るということではないということになると、とりわけ2年次に進級する時点がどのレベルかというときに、全く同じ授業を受けながら、履修する学生のレベルが明らかに違うということでは十分な授業が組み立てられないというところもあり得るかと思います。そこで、進級における判断基準というのも、法学既修者と同じレベルという発想ではありませんけれども、同じ授業を受けるにふさわしい程度という形で表現を少し工夫したつもりであります。
  ご質問いただいた点について、今の点で十分にすべてお答えしているかどうかわかりませんが、説明としては、以上とさせていただきたいと思います。

【井上座長代理】 
  司法制度改革の時の考え方としては、骨格や基本理念は非常に大事で、あくまでそれに基づいてやっていくということであったのはもちろんですが、同時に、具体的な形については、やってみていろいろ問題が出てきたら柔軟にそれを見直していこうということでした。これも司法制度改革の提言に盛り込まれていた一つの理念なのです。ですから、骨格部分や基本理念のところを大きく変えるということでない限り、柔軟に考えていくべきだろうと思います。その点から、資格のある法曹として国民の方々に法律サービスを提供すべき資格の資格を備えさせるだけの教育をしないといけない。そういった要請に照らしみて問題があれば、手直しをしていくということだと思います。     
 林委員のご発言は、既修者教育にも課題があるということですが、未修者教育の問題と全く同じだというふうに言われたわけではありません。既修者にも問題がある。しかし、未修者は、さらにいろいろ問題を抱えているということで、それについて答えられた。
 もう一つ、法律基本科目の増加分を3年かけてとればいいではないかというご意見ですけれども、やはりそれは現実からは乖離したアイデアだと思います。これも司法制度改革の理念ですけれども、多様なバックグラウンドを持った人たちが同じところに集って、一緒に勉強するということが強調されていたわけですが、完全に3年間別立てで教育すればいいというのはやはりその理念に反する。また,法律基本科目の教育というのは、基本から積み上げていく必要があるので、やはり2年次から融合していくということをやらざるを得ないのです。

【笠井委員】 
  今、最後に井上委員がおっしゃったことについては、一つの考え方としてそういう選択肢を今回とってみようではないかということだろうと理解しています。

【鎌田委員】 
  よろしいですか。これは前回もお話しさせていただいたところですけれども、笠井委員のおっしゃられたことに一部共感するところもありまして、法学未修者の力が不足しているという点は、多分、今後さらに年々心配は大きくなってくるだろうというふうに思っています。この6単位を増加して法律基本科目の学習を強化するというのは大変評価できるのですけれども、本当に1年間でそれを消化し切れるのかというところには若干の不安も残るわけです。と同時に、法学既修者のレベルも若干低下の兆しがないわけではない。となると、6単位分を必ずしも1年生で全部消化しないで、1年生、2年生にまたがって消化させる。その1年生に配当された増加分については、既修者認定を受けたものも一緒にそこでやらせるという選択肢はあり得るのかなと思います。例えば民法で言えば、担保法のようにかなりテクニカルな部分が大きいものについてはなかなか未修者ではすぐに対応し切れないような要素があって、本当に十分に理解しているかどうかわからないという部分があります。そういうのは2年生において別にするという方法もあるかなと考えますので、これは今回、井上委員がおっしゃられたように、現実に対応しながら、ある程度柔軟に見直していくということ、これは今後とも続けられるべきことだろうと思いますので、改革をした上でさらに実態に応じて次のステップということで一つご検討の対象にしていただければと思います。

【磯村委員】 
  6単位という単位数が多いか少ないかというのは、恐らくかなり微妙なところであって、刑事法、民事法、公法と考えると、実は各分野について2単位程度の増加ということになりますので、その後どうするかということも含めて、もちろんいろいろな問題はあると思いますが、法学未修者について、ある程度緩めるというときに、こういう単位数を示してはどうかということで、今ご指摘いただいたように、これが最初で最後ということではないと思いますので、引き続きその点での検討は必要ではないかと考えております。

【田中座長】 
  それは、コアカリキュラムを作ってそれを実際に実施してみたら、従来のやり方でいいかどうかということがわかってくると思うので、それはそれで今後検討するということでいかがでしょうか。

【井上委員】
 コアは、授業で全部カバーするということを想定していない。カバーしないといけないということになると、枠外ではなくて中の配分を変えないといけないということになり、理念とか骨格に関わってくるので、そこはかなり慎重でなければならないと思います。

【木村委員】 
  26ページの評価システムの構築のところで、重点評価項目として挙げられるものに、「適正な入学定員の規模」というふうに書かれているのですけれども、これは従来の議論ではどういうような扱いで規模という言葉が使われているのでしょうか。
 どういうことかと申しますと、22ページに、小規模や地方の法科大学院は、統合ということも考えられるのではないかという議論がなされているのですけれども、それと併せて読みますと、例えば50人以下は自動的に入学定員の規模からいって適正ではないと言われてしまうとか、そういうような議論があるのかという確認ですけれども。

【浅野専門職大学院室長】
 ここで言われている適正な入学定員の規模というのは、十分に質の高い教員が確保されていないにもかかわらず、大きく定員を設定しているようだったら、設定されている定員が多いか少ないかという問題ではなくて、教育体制に見合った形での定員規模がしっかり整っているかどうかという観点です。

【木村委員】 
  わかりました、ありがとうございました。

【田中座長】 
  今の入学定員がどうのこうのということではなくて、それぞれの規模に応じて教員を配置していると思いますけれども、教育能力と比べてちょっと多過ぎる法科大学院もあるという話で、やはり教育能力、教育環境がベースになるということをこの場で強調しているということです。 客観的に、これはもうどの観点から見ても問題があるというところは具体的な事例を挙げて、あとは、それ以外の全般的な広い観点から適正な規模を考えたらどうですかという中身になっております。

【鎌田委員】
 先ほどの法学既修者の能力も問題があるという点ですけれども、今回の報告はこの形で提起されるということに異論はありませんけれども、法学既修者の力について疑問が出てきているのは、旧司法試験受験組で、知識偏重かもしれませんが、知識をある程度蓄積していた層がいなくなってきたということと、もう一つは、法科大学院ができたことで、旧司法試験に現役で合格させることを念頭に置いていた法学部が、法科大学院入学後に単位を取れるというようなことになって、ある意味で教育の密度がやや下がってきているのではないかというふうに思います。そういうところがあって、既修者の能力について懸念されるところがあると思いますので、今後、この委員会の役割かどうかわかりませんが、もう少し抜本的に、法学部の教育と法科大学院の教育の関係というものを詰めて検討していく必要があると思います。
 ただ、私ども第1ワーキンググループで、既修者認定における基礎的な能力についてのチェックの必要性は提案しておりますので、今の学生あるいは今の大学はそういう入試に向けて内容が変わってくるというところもございますので、そういう形で、既修者認定をきっちりやるということで、ある程度は法学既修者の資質というものが変わってくるかもしれない。あるいは、法学部の教育もそのうち変わってくるかもしれないという期待が持てると思いますので、少し様子を見て、この法科大学院の側から法学部教育にどういうメッセージをするかということは今後考えるべきかとい思います。

【田中座長】 
   法学既修者の中身というか層が変わってきているようですから、今の段階では確定できないところがありますね。ですから、将来どういうふうになっていくか、既修者の動向は、これは様子を見ないと、今の過渡期の段階では、とにかく既修者認定をきちんとやるということしか言いようがなく、中身の方は言いにくいところがありますね。
 いろいろご指摘があった点は、そういう誤解が生じないように文章を修文してきたのですけれども、修文した結果、読んだだけではわかりにくいところも多少出てきたような気がするので、そのあたりは少し丁寧に説明する必要があるかなと思います。

【鎌田委員】 
   内容に関わることではないのですけれども、実際上、この報告に基づいて各法科大学院でカリキュラムの組みかえ等をやっていかなくてはいかないので、できるだけ早く全教員の共有のもとにしたいというふうに思っているところでございますので、できるだけ早期に周知方を図っていただきたいと思います。

【田中座長】 
  今日、明日中にホームページに載せるというような形での対応は可能でしょうか。

【浅野専門職大学院室長】
 できるだけ早く載せるようにいたします。

【田中座長】 
  この報告が出たら、すぐ対応しても問題がない項目と、やはり設置基準関連のルールを少し変えないと対応できないところがありますね。これはこのまま対応しても問題ないと思います。     

【浅野専門職大学院室長】
 カリキュラム関係は、基本的には制度的な改正はございませんので、これは速やかに各法科大学院にお取り組みいただければと思います。

【田中座長】 
  なければこれでよろしいでしょうか。
 この報告につきましては、5月13日の大学分科会で井上座長代理から報告いただくということになると思いますのでよろしくお願いします。

【田中座長】
  それでは、事務局から今後の日程をお話ししていただきたいと思います。

【浅野専門職大学院室長】 
  本日おとりまとめいただきました「報告」の内容につきましては、各法科大学院、認証評価機関等の関係機関に速やかに周知するとともに、引き続き、各法科大学院が報告の内容に沿った改善が促進されるよう、本特別委員会のご協力をいただきながら、文部科学省としても尽力していきたいと思います。

【田中座長】 
  この報告のとりまとめに当たりましては、ワーキング・グループの先生方には大変なご苦労をいただきまして、どうもありがとうございました。文部科学省からもご挨拶をしていただきますので、よろしくお願いします。

【久保審議官】 
  ちょうど昨年の3月から1年1カ月の間、非常に濃密なご審議をいただきまして、この報告をおまとめいただきましたことに対しまして厚く御礼申し上げます。
 法科大学院制度ができて6年目に入りました。いろいろな利害関係が錯綜する中で、こういう制度を作っていただいて、その制度創設のときから携わっていただいた田中座長を初めとする先生方あるいは法曹関係者の皆様方のご協力があってお取りまとめいただいたものと感じています。
 そのおかげで、法科大学院の先生方は大変忙しいことになっていると思いますし、逆に言えば非常に充実した教育を受けられることになっていますし、また歴史的に今ほど評価を受けておられることもないのではないかと思います。私も30年遅く生まれていれば、より充実した法学教育を受けられると思っているところもございます。
 しかし、まだいろいろな意見がある中で、皆様方をはじめ、大学の先生のみならず法曹関係者、私ども、そして企業の皆様方が一致協力してこれを育てていただく必要があると思います。まだまだ審議されていない事柄あるいは課題となっている事柄、大きな問題でありながら目をつぶってとりあえず質の向上に一生懸命やっているという部分も多いと思います。今後もいろいろな議論を続けていただきながらこれを絞っていただきたいと思っております。
 そして、学生にとってどういい教育ができるかという点で、私どもはこれからも対応させていただきたいと思いますので、引き続きご協力をお願い申し上げまして、お礼のごあいさつに替えさせていただきたいと思います。どうも大変ありがとうございました。

【田中座長】 
  それでは、本日の議事は終了します。次回は日程調整の上開催させていただきます。どうも本日はありがとうございました。

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