法科大学院特別委員会(第29回) 議事録

1.日時

平成21年4月10日(金曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省 東館3階3F 1特別会議室

3.議題

  1. 法科大学院教育の質の向上について
  2. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘、田中成明の各臨時委員
(専門委員)稲田仁士、井上正仁、小山太士、笠井治、鎌田薫、 木村光江、椎橋隆幸、土屋美明、長谷部由起子、林道晴、松村和徳、山本和彦の各専門委員

文部科学省

久保高等教育局審議官、藤原専門教育課長、浅野専門職大学院室長、小代専門教育課課長補佐

5.議事録

【田中座長】 
  所定の時刻になりましたので、第29回の中教審の法科大学院特別委員会を開催いたしたいと思います。それでは、事務局からまず配付資料の確認をお願いいたします。

【浅野専門職大学院室長】
  配付資料の確認をさせていただきます。配付資料1といたしまして、修了者の質の保証について(案)、これは前回の第2ワーキング・グループのとりまとめを加えたものでございます。それから、資料2といたしまして、教育体制の充実について、資料3として、質を重視した評価システムの構築について(案)。以上でございます。もし過不足等ございましたら、事務局にお申しつけいただければと思います。机上には第1ワーキング・グループの検討結果報告も配付させていただいております。

【田中座長】 
 それでは、議事に入らせていただきます。まず、「法科大学院教育の質の向上について」を議題といたします。事務局から資料1、修了者の質の保証について(案)の説明をお願いいたします。

【浅野専門職大学院室長】
 それでは、資料1に基づきまして説明させていただきます。前回の先生方の意見交換に基づいて若干変更させていただいております。3ページ目の法律基本科目の基礎的な学修の確保という枠の中の下から2つ目の丸でございます。前回の議論の中で、今回は法学未修者にかなりスポットが置かれておりましたけれども、やはり法律基本科目の基礎的な学修の確保という点は、法学既修者の教育においても必要であるというご意見がございました。その中で、基礎的な学修を確保するために修了要件単位数を超える部分については、現在でも充実は可能であるという観点が述べられまして、この文章を入れさせていただいております。
 あわせて、法学既修者の教育においても、法律基本科目の基礎的な学修を確保する必要があり、そのために、修了要件単位数を超える部分において法律基本科目の授業を量的・質的に充実させることが考えられるとしております。これと同種の内容についてが、5ページ目に法学既修者教育の充実という部分が一番下のパラグラフにございます。ここでは、同様の内容について、現状として、法学既修者の一部についても、法律基本科目の基礎的な学修が十分でないとの指摘が司法修習の担当者などからなされていることから、法学既修者認定の厳格化を図るとともに、法律基本科目の基礎的な学修を確保する必要がある。そのために、修了要件単位数を超える部分において法律基本科目の授業を量的・質的に充実させることが考えられるとしております。
 以上が前回の第2ワーキング・グループのとりまとめ後に修正した点でございます。

【田中座長】 
 それでは、ただいまのご説明について、ご意見ご質問ございましたらお願いいたします。
 修了要件単位数を超える部分において法律基本科目の授業を量的・質的に充実させることが考えられるということですが、こういう表現で、内容や言おうとしていることがわかりますかね。

【林委員】 
  よろしいでしょうか。前回かなり時間も使わせていただきまして、既修者の法律基本科目、教育の重要性を述べさせていただきましたので、そのあたりもご配慮いただいてこういう一節を入れていただいたのだろうと思います。表現については専門家の皆さんにお任せしたいと思います。こういう形で、既修者を含めた法律基本科目の教育の重要性をメッセージとして出していただくのが非常に重要だと思いますし、ぜひこの形でも最終まとめに盛り込んでいただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 前回申し上げなかったところを追加的に申し上げます。現在、法科大学院の第3期修了生が新62期として修習をしていますが、依然として法律基本科目に関する基礎的能力の不安という声が、研修所の教官だけではなく、現地の実務修習指導官からもあがってくる部分もあります。この案の表現によりますと選択科目を中心にということになりますから、法科大学院生の自己責任ということになるかもしれませんけれども、やはり後に控えている修習というプロセスを有意義に過ごすためにも、法律基本科目に関する学習をしっかりやってほしいというのが修習を扱っている立場の本音部分でもありますので、ぜひこういう形で表現を入れていただければありがたいかなと思います。

【笠井委員】
   やはりこの意味するところが必ずしもよくわからない。今、林委員から若干の説明があったので必要性については理解したのですけれども。要するに、法律基本科目を量的に充実させるということは、法学既修者においても学修する単位数を増やしていこうということなのかなと感じたのですが、そういうことでよろしいのでしょうか。
 それから、林委員からのお話にもありましたように、基本的には学生の自主的な判断に任せられるべきだということですが、その選択科目の中で増加されるものであるということでしたので、必ずしもその選択科目を基礎科目とすべきという影響を与えるものではないというニュアンスも感じられたのですが。

【井上座長代理】
 この前の議論の中でも、展開・先端科目と基礎科目とのバランスに配慮して、修了要件単位数の中でその配分を変えるとすると、そもそも論になってしまうので、そうせずに、93単位を超える部分についていろいろな組み方を考えるということであったかと思います。
 ここの書き方も、必ずそうしなければならないということではなくて、そういう工夫も考えられるということで、必要と感じる法科大学院では、そういう科目を設けて、必要と思われる人がそれを取ることができるようにするという意味だと思います。わかりにくいのは質的という部分で、質的というのは修了要件を超える部分についてのみのように見えるのですけれども、本来的には修了要件の枠組みの中の必修科目の内容を充実させて、それによって法律基本科目の基本的な部分はしっかり理解できるようにするということだと思います。ただ、基礎的な理解が足りない人もやはりきちんとやってもらわなければ困るということでしょうが、そういう人にどう対応するか。量的にというところに重点があるのかもしれないですけれども、同時にそういう人のために何か質的にも工夫が必要というふうに理解しています。

【鎌田委員】 
  私も法学既修者の法律基本科目についての教育をさらに強化する必要は現実にあると思います。あと、修了するために必ずとらなければいけない法律基本科目、実務基礎科目、基礎法学、展開・先端科目等の配分がどこまで固まっていたのかなということと関係するのですけれども、「93単位を超える部分に」というこの限定が本当に必要なのかどうか。前回の磯村先生のご説明を思い出すと、93単位の枠内でも法律基本科目その他の必ず取らなければいけない科目、それから認証評価機関で例えば日弁連法務研究財団ならば法律基本科目以外を33単位取らなければいけないということで、そこにすき間があるので、そのすき間の部分ではかなり自由度があるというご説明だったと理解していたのですが、この書き方では、93単位の中に法律基本科目の増加分を入れてはいけないというふうに逆に読めるのですけれども。今何を93単位とらなければいけないかということが正確にわからないので、自信を持っては言えないのですが、逆に固くなりすぎてないかなということが少し心配です。  

【浅野専門職大学院室長】
 設置基準では明確には法律基本科目とそれ以外の科目についてのバランスについては、バランスのとれたカリキュラムにするということは書いてありますけれども、何単位以上が必要かということは明確に書いてございません。評価機関によっては修了要件単位数の3分の1以上を法律基本科目以外に充てるということを求めている評価機関があるので、そこまでを全部いじるということではなくて、修了要件の上に乗せるという形で。それを変えるとなるとバランスが全部崩れる心配ありますので、93単位の上に乗せた形であれば、対応できるというのが前回の磯村先生のお話だったと思います。

【松村委員】
 法学既修者の法律基本科目も含め拡充していくというのは賛成ですけれども、例えば履修の条件などにより、実際どこまでとれるかという問題というのは結構出てくるのではないかと思います。それと、あまり修了単位を多くしていきますと、それこそ本来自分で勉強すべき時間がかなりなくなっていく。今でもかなり法学既修者はきつきつの状態でやっていますので、そのあたりはどう解釈すればいいかというのは、少しわかりづらい部分があるのですけれども。そこは柔軟にやれということなのか、いかがでしょうか。

【田中座長】 
   実際問題として法科大学院の教育の現状を見ますと、法律基本科目の力が弱ったと言うけれども、学生の側から見るとほとんど司法試験科目だけで頭がいっぱいでそれ以外の基礎法学・隣接科目などは、私はそれを担当しているのですけれども、かなり手抜きでやっているところがあります。残りの時間は全部司法試験科目につぎ込んで、なおかつ、先ほど林委員がおっしゃったような状況だというのは、もうシステムの問題よりも学生の能力とか教える教員の能力の問題で、単位数をいじったからと言ってどうしようもないという問題のようにも思われます。ほとんど司法試験科目しか勉強しない、余裕がある学生はそれ以外のこともやりますけれども、そういう状況が一方では現実ある中で、こういうメッセージの発し方は非常に難しいと思います。
 学生が一所懸命やってもなおかつ能力が足りないということを言っているわけなのですが、要求水準が高いから、学生が本来期待されているところまでいかないのではないかという問題をどう判断するかということもからんでいて、単位数を増やしたからそれでカバーできるという問題では基本的にはないと思われるところもあり、このメッセージの意味をどう理解するかは難しいと思います。
 1つ問題は、認証評価機関が評価をするときに、展開・先端科目の中で法律基本科目の補充となっている科目があるという指摘をすることがあるのですが、それは少し厳しすぎるような感じがします。展開・先端科目というのは基本的には法律基本科目の展開で、補充しながら展開していくという部分もあるので、そのあたりを内容的に考えれば、重なる部分だけでもあるような気がするのです。消費者保護などという科目は、ある意味では契約法の発展バージョンで、民法の契約の勉強をしながら消費者保護に特化した授業だというふうなところはありますので、認証評価の問題だということかもしれないのです。そのあたりが、一体どう対応したら良いかというところがあります。

【林委員】
 ご指摘は非常によくわかりますし、私もこの表現ぶりに問題があるということを申し上げたわけではなくて、質・量ともに法律基本科目の履修をしっかりやってほしいということです。直接的には必修単位数を動かせない、あるいは選択科目についても限度があるということになるとすれば、むしろ法律基本科目の学修の重要性をうたった上で、それを受けた形で下に認証評価の話が書いてあるわけです。この文章だけ見ると、上を受けているように見えますが、認証評価の部分を読むと法学未修者だけに限定しているように読めます。
 むしろ法律基本科目の履修の重要性を改めて再確認した上で、田中座長が言われたように、認証評価のあり方を見直していく際にどう扱っていくのか。それを展開・先端科目の中で法律基本科目に関わるものを取り上げている科目をどう認証評価で取り扱っていくのか、そこの見直しにつながっていくという形のメッセージにもつながっていくものであってもいいのかなと思っています。だから、単位数のところは手を加えられないということは十分理解しているところでありますので、いろいろな意味で誤解を招く部分があるとすれば、表現を工夫していただくことをお願いしたいと思います。

【井上座長代理】
 前提としているところが人によってかなり異なっていまして、法律基本科目が直面している状況が、どこにでもあるものではないということと、もう1つは、法律基本科目の量的な充実と言っても、それをどのように増やすのかということ。認証評価機関も、展開・先端科目でも法律基本科目の本当の展開先端にあるというものばかりではなくて、隠れて純粋未修者のための内容を、別の看板をかけてやっているということもありますので、そこのところを厳しく見ているのです。それが、本当に展開・先端的な内容のものであるものまで、そういうふうに厳しく見られているというところはちょっと行き過ぎているのだろうと思いますが、そこを厳しく見ないとなると、看板だけ展開・先端科目としておいて、実は内容は違うことをやっているというところも出てきて、やはり全体が崩れていく。そこのところが非常に難しいところだと思います。もし93単位を超える部分というところがあまりにも目立つとすると、むしろすっきりと、「法律基本科目の基礎的な学修を確保するためにその授業を充実させる必要がある」と記述するだけでもいいのではないかと思いますが、「量的に充実させる」ということを林委員は強調したいわけですね。

【林委員】 
  できればそうしたい部分もあります。

【鎌田委員】
 法律基本科目以外の科目を修了に必要な総単位数の3分の1以上設けなければいけないという基準にしている認証評価機関があったような気がします。そうだとすると、例えば96単位を修了要件にしていると、64単位しか法律基本科目ができないということになります。それを超えて法律基本科目をやることはできないので、例えば民法総合や応用演習など、展開・先端のような形で入れてカウントするといったやり方をしているところがあります。今までの枠はそのままにしておいて、それを超えたところは自由ですよというのが今回の提案ですね。だから、93単位を超えたところでしか法律基本科目を増加できないというと、展開・先端科目の中に民法の応用演習とかいうのを入れ、それを修了要件単位の中に読み込んでいるのだとしたら、それはこの説明からいくと、いけないことをやっていることになるということになるわけですね。言わないようにするのがいいのか、そういうふうに言うのがよいのかわかりませんけれども、その辺に関しては配慮が少しいるかもしれない。

【田中座長】 
  認証評価の問題と絡んでいるところもあって、各大学のカリキュラムを見ても、うまく法律基本科目との関係で膨らませているところと、非常に変な膨らませ方をしていて認証評価に引っかかっているところとがあるようです。そのあたりについては、何が問題でどうしたら良いかということを聞かれて、例えばこんな方法がありますよというようなことが伝わる文書にしないといけない。

【井上座長代理】
   展開・先端とあわせることによってというふうに言われたわけですけれども、それでは恐らく林委員の言われることには適合しないのではないかと思います。林委員は、展開・先端を発展させていくのではなくて、充実させていくという話ですよね。ですから、それすら展開・先端だということを認めてしまうとやはり大きな考え方をなし崩しにしてしまうことになるで、それはやはり違うものと位置づける必要がある。本当に基本的な部分が必要ならば増やすことも可能にするというのが筋だと思います。

【笠井委員】
 表現ぶりとしては、先ほど井上委員が言われたようなものが一番いいのではないかと思います。ただ、そうしますと林委員が意図されるところの充実ができるのかというふうにも思いますので、やはりもう少し工夫していただきたい。それから、これは意図的な話ではないと思うのですけれども、非常に細かいことで申しわけないですが、1番目の丸の中では、質的・量的とあるのに対して、下から2番目は量的・質的にと入れ替わっています。

【鎌田委員】
 前回も質問させていただきましたが、この結果、法学既修者については修了要件単位数を超えた部分で少し自由な部分がありますけれども、法律基本科目を従来より多く必修科目として勉強させるというのは、法学未修者として入学した人にだけ適用になって、未修として入学した人と、既修として入学した人は修了に必要な単位数が変わるということになりますか。現在だと修了に必要な最低単位数は、未修者が93単位で、既修者が93マイナス30単位ですけれども、今後は、未修者は99単位、既修者は93マイナス30になるという趣旨でしょうか。

【井上座長代理】
 そうしなければならないというのではなく、どちらでもよいということですが、規定上、あるいは仕組み上、前回鎌田委員がおっしゃったような問題はあると思います。未修者の修了要件単位数を基本にした上で30単位修了済みと認定するという仕組みですので、そこのところは何か技術的な手当てをしなくてはいけないのではないでしょうか。

【田中座長】 
   全部設置基準は動かさずにできるのだと思うのですが、そうなるとかなりきちんと説明をしないと、認証評価のやり方も関連しているところがあるので、認証評価機関に趣旨をきちんと説明して対応してもらうということが必要ではでないかと思います。

【長谷部委員】
 今座長がおっしゃいましたところで見ますと、もともとの文部科学省の平成15年に出ている告示にある基準、ほかの基準は全部動かさないでということになりますと、1学年に履修登録できる上限もそのまま36単位が標準だということになっていますけれども、これは動かさないという前提でしょうか。

【浅野専門職大学院室長】
 36単位は標準ですので、評価機関によっては3年次は44単位までとなっています。告示にある基準は特に動かしていませんので、標準で見込めるということです。  

【長谷部委員】
 そうだとしますと、3年間で上限は今より多くなるということはないというそういう前提ですか。

【浅野専門職大学院室長】
 3年間の修了要件単位は、設置基準では93単位以上ということになっていますから、上限は特にありません。

【長谷部委員】
 ただ、そうではあるけれども、1年ごとに20単位の上限はありますから、実質的にはそこで絞られますよね。その範囲内で93単位を超える、その上で上限以下の部分で法律基本科目をかなりとっても構わないということになると、そういう理解でよろしいでしょうか。

【浅野専門職大学院室長】
  そういうことです。

【長谷部委員】
 仮にそうだとして、実際何単位分法律基本科目を受けられるのかがあまりイメージがわかないものですから、そのあたりも算出していただけるとありがたいなと思うのですけれども。
 その単位には、算出したその単位を全部法律基本科目に充てられるとして、93単位プラスその加算した単位の中での法律基本科目の割合がそんなに過度に偏っていないというふうに見ていただけるのであれば、それはそれで結構だと思います。私は決して制限しようと思っているわけではなくて、林委員がおっしゃるように法律基本科目はもっと増やしたほうがいいとは思うのですけれども、この部分は、93単位を超えるところで法律基本科目を増やしても構わないということでしょうけれども。93単位以下のところで過度に法律基本科目に偏らないということはこの告示にもあるのですけれども、先ほど来ご指摘がありましたけれども、3分の1は法律基本科目以外のものをとらなければならないという認証評価基準がありますが、その3分の1というのが適当なのかどうかということもちょっとあるかなと思っています。そちらを見直していただくというのも1つの考え方なのではないかと思っています。

【井上座長代理】
 それはまさにそもそも論のところに関わってくる問題です。しかも、各認証評価機関が評価基準を勝手に作ったわけでではなく、司法制度改革推進本部の検討会だったと思いますが、認証評価基準のモデルとなる項目を議論して作り、各認証評価機関はそれに基づいて各自の評価基準を策定したのです。それで一応整合性がとれているわけですから、そこのところには踏み込まず、93単位の枠の外では、もともと法律基本科目を入れてはだめということではないはずなので、そこのところで対処すればよい,ということにしたのでしょう。

【松村委員】
 うちの場合まさにそこのところが認証評価でちょっと引っかかったところですけれども。実際的に言いますと、法律基本科目、展開・先端科目を増やしてはいない。法律基本科目のところで選択科目として増やした形をとっています。それはなぜかといえば、学生がそちらをとってしまうと、基本的には履修のバランスだと考えていたのですけれども、形式要件として修了要件の3分の1以上は法律基本科目以外をとらなければならないと認証評価機関から言われまして。
 先ほど長谷部委員が言われたように、3分の1という部分はやはりある程度議論した上で、柔軟に認証評価をするような形の体制が整うようにしてもらわないとなかなか難しい部分があります。量的には今までの法学部の教育から見ても少ない単位数しかでき上がってないものですから、全くの純粋未修者の場合足りないということなのです。既修者でも少し足りない部分ができますので、その部分等を考えると、やはり認証評価に働きかけるような形の文章というものが必要ですし、3分の1というところもちょっともう一度考慮するような形がいいのかなと思います。実際そのあたりが、認証評価ではかなり形式的に判断している部分があるように感じます。

【井上座長代理】
 認証評価機関は勝手に評価をしたわけではなく、議論の末、それが望ましいということになって、それに併せて認証評価機関も認証評価基準を作ったわけです。法律論だけに凝り固まらない多様な見方のできる法曹を養成していくことが必要だという理念があり、それを受けて基準が設けられ、認証評価もそれに従って行われているのです。それをまたもう一度そもそも論に戻るなると、そう容易には決着はつかない。それでは、当面差し迫った問題には対応できないので、3分の1ルールを見直すというのは、私は今の時期では手続的にも時期的にも適切ではないと思います。

【田中座長】 
  3分の1ルールの議論は基本的に難しいところがあります。もともとは全体を120単位ぐらいで考えられていましたが、1年間に原則30単位しか履修できないはずだという単位の基本的な考え方についてのそもそも論が出てきて、それでは120単位を3年間でやれるはずがないということで、もともと考えられていたモデルがかなり圧縮されていることは事実です。
  この表現の仕方については、誤解が生じないような書き方にするとか、あるいはもう少しつけ加えるというように工夫しますかね。

【笠井委員】
  未修者1年次に対する6科目増加ですが、教官を増やしたとしても果たしてこの問題は解決できるのかという、そんなことはきっとないだろういうふうに感じるところですが。
  5ページの「法律基本科目の単位数を変更することなく、45時間の学修量を1単位とする枠内で」という部分ですが、これは制度設計上、授業1時間について前後各1時間の計30時間自学自習ということになるのですが、ここでは、15時間の授業時間数を弾力的に運用することや、授業形態に応じて授業時間数の計算方法を区別することも考慮の余地があるということが言われています。これは、先ほど井上座長代理がおっしゃったそもそも論に結びついてくるのでしょうか。やはり今回の趣旨からすると、学生の自学自習を大切にしようということであって、そこを授業時間に組み込ませる形で補習授業や補講で受験対策のようなことをすると、本来の趣旨から逸脱してくるのではないかと思いますが、このあたりはどのようにお考えなのでしょうか。

【浅野専門職大学院室長】
 この問題については、最後の文章を読んでいただきますけれども、これはもう単位の考え方自体をこの法科大学院の問題に限らず、大学の単位の考え方自体に関わる問題であるので、導入に当たっては慎重に検討すべきと、かなり慎重な書きぶりになっています。

【山本委員】
  今の考え方が予習・復習と授業を併せた時間配分になっているとすると、必ずしも予習を多く求めるというのはなかなか難しいところがあって、自分で勉強できるようになれば予習にかなり時間をとってもらってやるということは可能になると思いますが、なかなかそこは難しいのではなかろうかと思います。そういう意味で、授業時間数が占める割合というのが既修者2年次以降に比べても多くなるということは、考え方としてはあり得るのではないかということだと思います。ただし、室長が言われたように、かなり根本的な問題にかかわるのでなお慎重な検討が必要だろうという議論の流れだと思います。

【田中座長】 
 各法科大学院の実態を見てみると、やはり1年次の配当科目については、本来の授業時間に加えて補講などによってカバーしておられるところが非常に多くて、そういう形態をやめて普通の授業と同じような扱いにするにはどうしたらいいかと考えた上で、こういう案でとりあえず対応してみようかということになった面もあると思います。  
 単位とは何かという話は非常に難しい問題がありますけれども、現実問題として法科大学院の1年生というのは法的思考の学び方の訓練をやっていただくことが重要だということから考えると、未修者についてはこういう形で少しケアをするということは、制度の基本的な姿勢にも反しないということでこういう形になったと理解しています。

【鎌田委員】
  「法科大学院の教育内容・方法等に関する中間まとめ」を見ますと、標準系のカリキュラムについては、法律基本科目54単位と書かれています。そうすると、残りが39単位で、93の3分の1、三十数単位は必ず法律基本科目以外にしていくとなかなか入るスペースが少なくなります。増加分はこの93単位の外に出さなければいけないのかどうかというのが先ほどの議論との関係では問題が少し残るかもしれないというふうに思います。
 もう1点は、この段階で林委員のおっしゃったことにも少し関連しますが、民法などを考えるときに、1年次だけ授業数を増やすのではなくて、3年間で時間をかけてもう少し手厚くするほうが本当は良さそうな気もします。今回の提案は1年次にだけ増やしていいというものですけれども、3年かけて法律基本科目をゆっくり、たっぷりやるというのがいけないということはないと思いますので、そこのところは将来的にはご検討いただければというふうに思います。

【井上座長代理】
 2年の始まるところではなく、例えば1年半後に合流するという形だとその考え方だと思うのですけれども、全く別の形だとすると、そこがちょっと難しいところかなと思います。

【田中座長】 
  他にも議題がありますので、一応これはこういう形にして、次に移らせていただきたいと思います。それでは、事務局から資料2の教育体制の充実についての説明をお願いします。

【浅野専門職大学院室長】
 資料2の教育体制の充実について(案)についてご説明をさせていただきます。これは、9月30日にまとめられた中間まとめの内容から、それ以降この委員会で議論したことやヒアリング等の結果、座長発言等を踏まえながら修正を加えたものでございます。
 まず1番目の、質の高い専任教員の確保につきましては、基本的に中間まとめの内容そのままでございます。1つは専任教員を適切に法律基本科目をはじめとする主要科目に配置するということです。それから2点目に、平成25年度まで認められているダブルカウントの暫定措置は延長しないということ。それから3点目に、認証評価機関による評価においては、教員の資質・能力・実績について適切に評価を行うことが期待されるという内容でございます。
 次に、おめくりをいただきまして2ページ目でございます。2番目の入学定員の見直しと法科大学院の教育課程の共同実施・統合等の促進でございます。
 1つ目でございますが、法科大学院教育の質の向上のため、例えば以下のような状況が見られる法科大学院については、自ら主体的に平成22年度入学者からの入学定員の見直しを個別に検討する必要があるということです。座長発言にもありましたが、平成22年度の入学定員から見直しを個別に検討するということが明確に入ってございます。まず、入学定員の規模に比して質の高い教員の数を確保することは困難という状況。それから、志願者が減少し競争倍率が低いため質の高い入学者を確保することが困難という状況。これは第1ワーキング・グループの報告に合わせておりまして、競争倍率が低いということも文言として新たに加えてございます。それから、修了者が多く、括弧書きで例えば半数以上、が司法試験に合格していない状況が継続といったような形で、修了者の多くということも明確にさせていただいております。
 それから、2つ目の丸であります。また、これも座長発言にございましたが、上記のような状況にない法科大学院においても、教育体制の充実、入学者の質の確保や大量の司法試験不合格者の削減、などの観点から、平成22年度の入学定員の見直しに主体的に取組むことが望まれる。
 それから3つ目の丸ですが、小規模の法科大学院や地方の法科大学院で、今後、単独では教育の推進や体制が維持できない懸念が生じている場合に、教育課程の共同実施・統合等を図ることを検討する。これはそのまま中間まとめに入っています。
 入学定員の見直しについては先ほど申し上げたような内容のものが加わっているとともに、2ページ目の下から3つ目のパラグラフで、なお、これらの定員の見直しが教育体制の強化を目的としていることに鑑みれば、その見直しに当たっては、教員数の削減により教育体制が脆弱になることのないよう配慮されるべきであるとしています。入学定員の見直しとともに教員を減らして体制が弱くならないようにという趣旨です。
 それから、その次の、法科大学院の入学定員の見直しに当たっては、地域における法曹養成機関としての機能・実績を分析・評価し、適切な規模に留意しながら、全国的な適正配置にも配慮する必要があるという内容でございます。以上のような内容がこの入学定員の見直しについて新たに加わった部分でございます。3ページ目の法科大学院の教育課程の共同実施・統合等の促進については、特に変更はございません。
 それから、4ページ目でございます。3番目の教員養成体制の構築ということで、これも内容的には中間まとめから変わってございません。1つ目は、法科大学院の教員がダブルカウントの暫定措置終了後も、博士後期課程の研究指導ができるように制度的な配慮が必要であるということ。それから、法科大学院のカリキュラムで、法科大学院の教員を志す学生のために、外国法や研究論文の作成などの選択的な学修ができるような科目配置を行うことが望まれるとしています。それから3つ目は奨学金等、経済的な充実を図るべきという内容で、これは変更がございません。
 5ページ目の教員の教育能力の向上でございます。この点についてもファカルティ・ディベロップメントの充実、それから教員の教育能力の評価について、これらについては特に変更がございません。ただ、文章の中で2つ目のパラグラフで、やはりヒアリングを行う中でも単独でFDをやっていることにかなり限界がございまして、法科大学院が連携した形でいわゆる全国的なFDのようなことも理論的には進められているわけですけれども、こういったことを通じて自らの法科大学院の教育水準や方法のあり方について再確認・再検討するような機会が提供されることが期待されるとしています。
 以上が中間まとめ以降、議論等に基づいて付加した内容となってございます。

【田中座長】 
 それでは、ただいま説明についてご意見ご質問がありましたらお願いします。
   私からよろしいでしょうか。 平成22年度から入学定員を見直すというのは、時期的にはぎりぎりですか。

【浅野専門職大学院室長】
 そうですね。時期的に、もう既に見直しの検討に入っている法科大学院が多いわけですけれども、募集要項を出す時期によってまだ6月ぐらいまで間に合うところと、もう既にある程度決定をしているところがあると思います。

【田中座長】 
  中間まとめから加わったような部分が入ったということ以外は基本的には余り変わってないと理解してよろしいでしょうか。
  修了者の合格状況については、前回データを出していただいていましたがどの程度ですかね。

【浅野専門職大学院室長】
  半分ぐらいです。

【田中座長】 
  素直に読めば、この数値が達成できるようにというメッセージがあるのですけれども、そういうことでよろしいかどうかということですね。

【浅野専門職大学院室長】
  例えば18年度の修了者もまだ司法試験を3回受けておりません。だから、次の司法試験で大体結果が出るということになると思うのですけれども。平成16年に入った1期生の既修者についてはもう既に7割近くが司法試験に受かっていますので、そういう意味ではほとんどの法科大学院でクリアできていると。ただ、18年の未修者については2回の試験が終わって35%程度で、既修者については59%通っています。

【山本委員】
  先ほどの資料1の9ページに、室長から言われた法学既修者の3年間の司法試験に合格が50%に満たなかった法科大学院は8校であるということが記載されております。

【田中座長】 
  こういう数値目標を挙げると、これだけが一人歩きするということがあるので。平成22年度からということは、そういう結果が出ていないという点でちょっと早過ぎるというようなところがあると思うのですけれども。今年の試験の結果を見て、初めて1回の結果わかるということです。入学定員の見直しを要請する趣旨を理解してもらわないと、相対的には問題はない法科大学院が見直しをきちんとやって、むしろ問題のある法科大学院が余り検討しないというところも多少はあるのではないですか。

【浅野専門職大学院室長】
 全く逆の状況です。状況の悪いところはこれに基づいて見直しをしております。逆に状況のいいところはあまり進んでいません。  

【椎橋委員】
 すみません、ご説明の中で、修了者の多く、半数以上が合格するというのは、なかなか難しいものがあると思うのですけれども、既修者と未修者を分けてというようなお考えでもあるのですか。もし未修者の場合ですとそれに達していないということも極めて多くあるわけなので、それだと数値目標を達成するために、未修者はなるべくとらない方向で行こうということになると多様化するという方向性には逆の方向に働く恐れがあります。そのあたりのところは、やはり数値をどういう形で出すのがいいのかという難しい問題があるという印象を持ちました。

【浅野専門職大学院室長】
 報告の中で多様性の確保ということは言っております。それから、入学定員の見直しの状況を伺っていると、必ずしも未修者ということではなくて、やはり既修者全体の質自体も下がっている法科大学院もありますので、そういうところは既修者も定員を見直すということもある程度見られるということでございます。

【田中座長】 
  トータルのイメージとして、多様性の確保の問題は最終的な司法試験合格者の未修・既修の比率の問題もありまして、法科大学院だけでいくら努力しても受からなければどうしようもないという問題でして、法科大学院だけに要求している今の状況自体が問題になってくる可能性はあるのですね。

【土屋委員】
 入学定員の見直しについて、見直しの方向性が書いていない。3つ書いてある要因というのは、現状で非常に困難な障害要因ですね。そうすると、これを根拠にして考えて見直せということであれば、言わなくてもわかるということだと思うのですけれども、メッセージとしてはどういう方向性をとるのかということをやはり言うべきだろうという気がちょっとしています。例えば、入学定員を削減するなどの適正化の方向に向けた見直しとか、そういうような表現をする必要性があるのではないですか。現状はやはり入学定員が多すぎると思っています。問題は方向性だと思います。非常に難しいところだと思いますし、言わなくてもわかると言えばわかりますけれども。

【田中座長】 
  減らす方向だということが前提になって議論してきたところがあったと思うので。何か適当な表現はありますでしょうか。

【浅野専門職大学院室長】
 もしほかの先生方も同じようなご意見でしたら、表題ではなくて、枠囲みの中に、定員の見直しを踏まえとかそういう言葉を加えさせていただくということでいかがでしょうか。

【田中座長】 
  見直しは基本的に削減の方向だという前提だということですかね。

【久保審議官】
 枠外の一番下のところに、これらの取組によって入学定員が一定程度削減されと書いてありトータルで削減するということが書かれています。

【土屋委員】
  書かなくてもわかると言えばわかります。

【田中座長】 
 それでは、資料3の質を重視した評価システムの構築について(案)に移りたいと思います。事務局から説明をお願いします。

【浅野専門職大学院室長】
 資料3、質を重視した評価システムの構築について(案)に基づいてご説明させていただきます。
  1の教育水準と教員の質に重点を置いた認証評価です。中間まとめでは今後検討を継続していくという形になっていましたけれども、前々回の論点整理の内容を踏まえて内容を盛り込んであります。1つ目は、認証評価においては、次の2巡目のサイクルに向けて、これは平成22年度から開始になります。質の評価に軸足を置いた評価基準・方法などへの改善が求められる。2つ目が、認証評価の基準においては、法科大学院教育の質の保証の観点から、例えば、適性試験の統一的最低基準の運用状況、共通的な到達目標の達成状況、厳格な成績評価・修了認定の状況、教員の教育研究上の業績・能力、修了生の進路(司法試験の合格状況を含む)などの観点を、重点的に行う必要がある。3つ目に、「不適格」の認定については、社会(特に入学を希望する者)に混乱を与えないような運用を図るよう、上記の重点評価項目を踏まえながら、基準・方法について見直しを図る必要がある。4つ目の点は、認証評価機関間で不適格認定の基準・方法については、3つの認証評価機関の間で調整を図り、共通認識を持つ必要があり、3つの認証評価機関が主体的に協議機関を設置することが望まれる。
 枠外の内容でございます。認証評価基準についてでありますけれども、ご説明させていただいた内容が下の文章でも盛り込まれております。特に前回の議論を踏まえて、質の評価に軸足を置いた評価基準を行うとありますが、その際、評価基準は、数値で杓子定規で測るものとならないよう十分に精選されるべきであり、特に法科大学院教育の質の保証の観点から、重点的な事項として定められるべきであるとしております。
 それから、2つ目の不適格認定についてでございますが、これも前回のご議論を踏まえて、これまで適格と認定されなかった理由は、入学者選抜から教員の組織体制まで広範かつ多岐にわたっており、そのレベルも法令違反に抵触するおそれがあるものから、評価機関独自の求める高い基準に達していないものまでかなりの幅が見られる。また、いわゆる「不適格認定」を出す際も、評価項目が1つでも「不適格認定」が出る場合には、全体として「不適格認定」を行う機関、複数の項目の「不適格認定」をもって、または法令違反などの重大な評価項目において「不適格認定」が出た場合に、全体として「不適格認定」を出す機関と、認証評価機関の出し方に大きなばらつきがある。また、「不適格認定」は法科大学院としての適格性を有さないとのイメージが社会的に先行し、認証評価機関が法科大学院に改善を勧告するといった実態とイメージのギャップが生じている。そして、なお以下の、評価の重複の効率的な実施については、前回の論点を踏まえて記載をしてございます。
 以下、参考として、先ほど申し上げたように、各評価機関では不適格、認定の方法がそれぞれ違います。日弁連法務研究財団は幾つか不適格となるレベルの評価基準がございますし、評価機構は54のうち1つでも満たされていない場合は不適格となるとなっております。大学基準協会もレベル分けをして不適格認定を出しているということになってございます。
 それから、3ページ目でございます。積極的な情報公開の促進ということです。これも中間まとめの内容を踏まえて少し内容を入れ込んでありますが、各法科大学院からのヒアリングも行いまして、内容を充実しております。法科大学院の修了者は、司法試験の受験資格が付与されることから、法科大学院の教育の活動状況について社会的な関心が高い。また、優れた法曹になることを志望する法科大学院入学希望者にとっても、どの法科大学院に入学するべきか選択する際に、各法科大学院の教育の活動状況に関する情報は必要不可欠である。現在、各法科大学院においては、入学者選抜の状況、教育内容・方法や修了者の進路などについて、社会に対して一定の情報提供がなされているが、なお十分ではないとの指摘もなされている。このため、今後、各法科大学院においては、例えば以下のような情報を一層、積極的に提供していく必要があるということです。入学者選抜に関するもの、それから教育内容等に関するもの、司法試験に関するもの、教員に関するもの、それから修了者に関するものと、細かく情報を公開すべき内容について記載をしてございます。それから最後に、このような各法科大学院における情報については、総合的に、法科大学院の自主的な組織が集積・管理しておくことが期待されるという文章になってございます。
 それから、4ページ目でございます。フォローアップ体制の構築につきましては、既に2月にこの委員会の中に第3ワーキング・グループを設置いたしまして、フォローアップを行うための組織を構築したところでございます。この内容については中間まとめから変更はございません。

【小山委員】
 意見と質問です。このような評価は本当に必要なことだと思っておりますので大賛成です。それで、事務局にお尋ねしたいのですが、この認証評価基準の重点があるわけですね。そのところについては、これを実施するためのシステムとして、こうやってメッセージを出すことによって実際の法令、例えば省令レベルのものの改正もお考えなのか、ちょっとお考えをお聞かせ願いたいと思います。

【浅野専門職大学院室長】 
  机上に配布させていただいております大学設置審査要覧の151ページをお開けいただければと思います。平成16年3月12日に文部科学省令において、認証評価に関する細目を定める省令が定められてございます。この中で、法科大学院に係る認証評価につきましては、第4条で法科大学院の認証評価において評価するべきものについて定められております。これがいろいろ幅広く多岐に渡って定められているわけでございます。今後この最終的なとりまとめをいただきましたら、この省令の見直しが必要であるかどうか、文部科学省においても検討させていただいて、その上できちっと評価機関とも十分協議しながら評価基準についての改善を図っていきたいと思っております。

【鎌田委員】
 資料3の最初の囲みの一番下の文章ですが、冒頭の認証評価機関間でといのはなくてもよいのではないでしょうか。

【浅野専門職大学院室長】
 認証評価機関間という言葉が2回出て来ますので、改めて見直します。

【田中座長】   
  協議機関を設置するということですが、協議する機関を作るということは必要ですかね。

【浅野専門職大学院室長】
 もう既に連絡会というのはある程度できていますので、それをきちっとした形で、システムとして構築する必要があるという趣旨です。  

【田中座長】 
  評価機関というのは協議する場を設けるぐらいでいいような気がするのですけれどもね。協議機関を作るというよりも、協議する場を設けて検討してもらったらいい。

【林委員】
 この資料の3ページの積極的な情報公開の促進の最後のところで、各法科大学院における情報について総合的に法科大学院の自主的な組織が集積・管理するとありますが、この組織は具体的にはどういうイメージですか。そういう自主的な組織というのはもう既にあるイメージなのか、あるいはそういうものが作られるべきだということになるのでしょうか。

【浅野専門職大学院室長】
 基本的にはもう自主的な組織はでき上がっていると認識しております。

【田中座長】  
 最後のフォローアップ体制の構築の2つ目ですけれども、必要に応じて法令違反の場合は、学校教育法に基づく措置等の適切な対応が取られることが望まれるというところですが、望まれるということだけではなく、それに対応できる仕組みを整えるべきであるということにした方がよいのではないですかね。

【浅野専門職大学院室長】
 これは、既に文部科学省が対応する体制となっています。

【鎌田委員】
 この資料3の3ページの「進路先」という表現は、進路か就職先かどちらかに直した方がよいという気がするのですけれども。
 これに関連して、前回も議論になりましたが、修了者が司法試験にこだわらずに民間企業や官公庁に就職されるということもある程度それなりに定着しています。今の時点では、もっぱら司法試験合格率ということに関心が向いていますが、そういう人が多く出れば出るほど、修了者の合格率は100%になりません。そうなるとその多様性をある程度定着させるようなことを将来的には考えていただいたほうがいいかもしれないし、そういうものを前面に打ち出してもらったほうがよいと思います。司法試験の合格者数に見合った法科大学院の入学定員ということとの関連では、マイナス要因ではありますけれども、就職率と司法試験合格率とでは違ってくる部分がありますということも積極的に説明していく上では、将来的にはそれを反映させることもお考えいただければという要望だけさせていただきたいと思います。  

【久保審議官】 
  非常に大事なことですし、将来的にはそのあたりがどうなったかという実態を調べるという要望も強くなるでしょうから、何かそれがわかるような方向で何か記述できればと思います。

【田中座長】 
   学位授与機構の認証評価では、進路の中で司法試験だけでなく、その他の例えば国家公務員1種試験とか企業法務なども進路として全部書くという方式にしたところですけれども。

【稲田委員】
 今のお話は、かなり現状問題だと思います。私は部外者でこの法科大学院の考え方というのは完全に理解してない部分があるのですけれども、法科大学院制度は、法曹を養成するための機関であるという前提が前面に出ていますので、そうだとすると、法科大学院だと3年間も余計な時間とお金を使って勉強したという方の進路として、企業や官公庁、あるいは法律と全然関係ない場で活躍しているということを堂々と宣伝して、こんなに多様な進路があって元気ですよというのが本質的な法科大学院のあるべき教育の目的だろうかと、あるいは法科大学院に入った人の目的であろうかと思います。
  ここは会社によっても違いがありまして、法科大学院を出て司法試験を受けなくても、あるいは合格しなくても採用するという企業もたくさんあるように理解していますから、今のお話にもあったように、ないことはないかなとは思っています。
 ただ、一方でそういうことであれば、学部から採用すればいいということもあって、何も3年間お金と時間をかけて勉強してもらうということが本当に必要なのか。たまたま私のところはそういう人は採用の対象にしていなくて、やはり司法試験に合格した人ということにしていますけれども。そういう意味で、合格率がそもそも低いからやむを得ずそうだということもあるのでしょうけれども、法科大学院に入って法曹にならなくていいのだろうか、ということを最初から考えるようなことだとすると、ちょっと趣旨と変わってくるのかなという気もします。

【有信委員】
 今の話は基本的にそのとおりだと思います。ただ、問題は、やはり司法試験が日本の中で極めて特殊な状況になっているということが非常に大きいと思います。もともと専門職大学院は、一般的に言うと特定の高度な専門職を養成するという目的を持っているわけで、高度な専門職とは何ぞやということであれば、その高度な専門職としていわゆる社会、企業、さらに言うとステークホルダーが要求している高度な専門性をそこできちんと養成しているかどうかということになるわけですね。それを保証するのが職業資格であるという観点に立つと、その職業資格を与えるのが、例えば法曹であれば司法試験だということです。
 したがって、今の司法試験の特殊性を前提にしたままで議論をすると、今のような形になってしまう。結局専門職大学院を出ても資格が得られないということであると、その専門職大学院そのものの存在意義がなくなってしまうということになりますので、あるべき法曹とは何かということを考えながら司法試験のあり方を考えるということになると思います。もともと多様なバックグラウンドを持った法曹を養成するという、社会の要請がそうだからということが盛り込まれてロースクールの原形が作られたわけですから、それに則った形で資格を与えるシステムもきちんとしていかなければいけないということだろうと思うのですね。
 その中で、それを保証していくのが認証評価機関の役割ということになります。そういう意味で認証評価機関と、資格を与える司法試験とがやはり連動していなければいけないということになってくるのだと思います。一方で、認証評価そのものの観点は、司法試験だけを見ているということではなくて、その認証評価の基準が普遍性を持ってなければいけないということで、グローバルな意味での共通性を図っていかなければいけないという話につながってくるのだと思うのです。
 例えば、エンジニアリングプログラムに関して言うと、認定機関がすべて共通化されているわけではありませんが、国際的に認め合った認定機関の認定を受けた教育プログラムの修了生はそれぞれの国で同等であると認めるというところまできています。例えば、アングロサクソンの国でワシントンアコードというものを作っています。もちろんエンジニアリング課程そのものがもともとある意味で普遍的だというところもあるわけだけれども、そういうふうになると何がいいかというと、このまま学位そのものの国際的な共通化にもつながってくるわけであります。そのプログラムの修了が共通であるということであれば、国際的に共通な学位がそこで出せるというところにも自動的につながっていくことになるわけですね。非常に面倒な各国の文部科学大臣相互の協定を結ぶ前に、そういうことで可能になっていくという流れにもなるわけであります。
 したがって、認証評価機関は非常にこれから重要になってきますし、法曹のあり方を含めて、試験のあり方もこれから重要になってくると思いますので、その点についてはこれからも少し検討を進める必要があるだろうと思います。

【井上座長代理】
 今の点については、現実と理想に少しずれがあって、もともと制度設計時に念頭に置いていた法曹というのは、現在のような狭い意味の法曹ではなく、社会のいろいろな分野で法律的な専門学識を身につけた人が活躍するという、そういう意味の法曹であったはずです。
 そういう意味で、いわば将来的には、必ずしも狭い意味での法曹にならなくても、いろいろなところで同等の専門的学識を有する人がそれちゃんと活かせるということになることが目標なのですが、現在の段階では、修了と法曹資格を得ることとの間にかなりのギャップがあり、修了したけれども法曹資格がない人もかなりいる.そこが、想論とはずれてきているわけです。
 法科大学院のシステム作る際にも同種の議論があって、何も法曹資格を得る人ばかりを養成するのではなく、他の専門職を養成する機能も持たせててもいいのではないかというような意見もあったのですが、そうすると法科大学院という特殊なものを作る意味がだんだん薄らいでくる。やはり法曹資格を得て、あるいはそれと同等な学力やノウハウ力をつけて、それを活かして活躍するような人を育成するというのが本来の筋だろうということになったのです。

【有信委員】
 私の言い方が不足だったのですけれども、エンジニアリングプログラムでのそれについては、プロフェッショナルエンジニアの資格を取れない人たちは多くいるわけだから、それはそれで別の評価を社会的に受けてそれなりに活躍しています。ただし、プロフェッショナルエンジニアという資格自身はないということです。ですから、今は司法試験に受からなければそのプログラムを修了した意味がないということではない。だけれども、今の日本の司法試験は資格の与え方が極めて特殊なものだから、そこの部分でもともと目指してきたものとずれた部分があって、それがある意味では認証評価との齟齬にもつながっていくというふうに感じています。

【田中座長】 
  今の点に微妙な問題があるということはそれぞれ認識しながら認証評価をやっていると思うので、現状でやむを得ない部分もあるわけですけれども。

【土屋委員】
 今のところに、1つ学生生活の項目をつけていただけませんか。多様な人材の確保という意味では社会人から転身しようとする人が法科大学院でどういう支援をしてもらえるのかという情報がないと選択できませんので。  

【田中座長】 
 それでは、情報提供する項目の例として。ここはこれぐらいでよろしいでしょうか。
 先ほど議論になった資料2の2ページの入学定員の見直しのところで、「修了者の多く」の後に、括弧して「例えば半数以上」という数値を入れたことについて、ご意見をお伺いしたいということでございますがいかがでしょうか。確かに1つの目安として、これぐらいの目安は挙げても悪くはないと思いますが。非常に厳しい基準になっていることはありますが、それがまたここでこういう意見をとりまとめしたという前提でいろいろな議論が出てくることも予想されます。

【藤原専門教育課長】
 今座長がお話になった点ですけれども、資料1の例えば9ページであれば、幾つかの例を挙げておるわけでございますけれども。3回の新司法試験において合格しているのが50%に満たなかった法科大学院の数や、直近の司法試験に合格している割合が全国平均の半分にも満たない法科大学院の数を例として挙げております。そうした幾つかの現状分析の中で、ここでは例えばということで書いてございますけれども、先ほどの議論の中で、この3つのポツに該当する場合は個別に入学定員を減らすことを検討する必要があるというふうにずばり書いておりますので、そういった関係でどういった記述が適切かということについてまたもう少しご議論いただければということでございます。

【田中座長】  
  以前は、継続的に合格者が少ないというような表現でしたか。   

【鎌田委員】 
   枠の囲みの中の表現と下の説明とが少し中身が違うといいますか、同じことかもしれないけれども、読んだ感じが違います。下の説明のほうの趣旨で書いているなら、そういうふうに書かないと、括弧だけでいくと、各回の司法試験で判断するということになるのではないでしょうか。 
 それと、資料1の9ページのほうは、毎回の司法試験の平均合格率の半分にも満たない状況が続いているというふうに幾つかの指標が並んでいます。ここに挙げられているものが、定員削減という効果の前提の肝心なところだから、やはりこれが評価基準としては一番妥当というのが、ほかの2箇所とも通じて平仄が合うような形にしておいたほうが説得力はあり得ると思います。

【浅野専門職大学院室長】 
  そこは記述ぶりを直させていただきます。

【井上座長代理】
 資料2の枠囲みは、これは3回の司法試験を経てということでしょう。
 あと、少し気になるのは、平成22年からと書いてよいのかなと。今の段階で、1回しかデータがないので継続という判断になるかもしれないので、そこのところを少し配慮しておかないと、揚げ足をとられるかもしれない。

【松村委員】
 この関係で、資料1の9ページのところで、アスタリスクで、修了者数と実際の受験者数が違うということが書いてありますよね。こういう部分も記述に含めたほうがいいのではないかと思います。実際司法試験を受けてない人にも、就職してから受けるとか、いろいろ経済的な事情とかがあるようですけれども、いわゆる投げている人とかが出てきていますし、そういう含みを持たせる形であってもいいのかなという気がしないでもないですけれども。どうでしょうかね。

【井上座長代理】
 恐らくそれを含み入れようとしても、それはそもそも定員のほうが多すぎるからだということにはなると思っています。修了した人のうちでどれだけチャレンジしてどれだけ法曹になっているかということとの見合いで、そもそも適正な定員というものを考えてもよいのではないか。要するに最初からチャレンジしないという人を含みとして入学定員を設定するというのは、考え方としてはやはりおかしいということだろうと思います。結果としてはそうなっていくのは仕様がないのですけれども、その状況がずっと続いたとすれば、やはり入学定員の設定のほうに無理があるという理屈がこの資料2の2ページの理屈だと思います。資料1の9ページのほうは、その都度の合格率だけ見たのではいけないということで、むしろ母数をもっと広いとすると、そのうちで多くの人が法曹になっていないというのは問題だということですね。

【田中座長】 
  他の目安だったほうがいいとは思うのですけれども、ちょっとどういう目安が適切かというのは、まだ結果が出たばかりのところですから、移行期のデータをベースにするというのは無理な面もあると思うので、どちらをベースにしてするかというのはなかなか難しい。

【浅野専門職大学院室長】
 また書きぶりについてはご相談させていただきたいと思います。

【田中座長】 
 この点は、何か適切な表現があればご意見をお知らせいただければと思います。これまでにいただいている意見もあわせて、今日出ました意見も含めて、それぞれワーキングの主査の先生方とも相談しながら表現を調整して、次回までに案を整理したものを委員の方々にお送りして、それであらかじめ意見をいただくか、あるいは次回意見をいただくという形で進めさせていただきたいと思います。

【浅野専門職大学院室長】
 次回は来週金曜日、17日金曜日の14時から16時で開催を予定しております。今田中座長からお話がありましたように、今日いただいたご意見を踏まえて、関係の先生、座長、それからワーキングの主査の方々と相談をして、最終的なまとめの原案をつくりまして、先生方に来週ご意見をいただくようにいたしますので、よろしくお願いいたします。

【鎌田委員】
 先ほどの未修者1年次の単位数が変わるというのは、来年度からのことになる見込みがあるわけですが、来年度からということになると、入試要項等に入学後のカリキュラムの概要を書くときにどうすべきかを急いで判断しなければならないと思っています。来年度からカリキュラムが変更できる可能性があるかのかどうか。

【浅野専門職大学院室長】
 もちろんこのとりまとめが出た段階である程度効力が出ますので、そういう意味では来年度のカリキュラムに反映していただく必要があると思います。

【田中座長】 
  多くの大学は最近2年ぐらいいろいろ検討してやっとカリキュラムを改定したところで、そこにこの報告が出たということで、責任者は大変だと思いますけれども。ある程度は各大学で検討しているから、特に1年次の法律基本科目は何とかしてほしいという要望が強かったようですし、それはそれで対応されるのではないですかね。
  それでは、今日はこれで終了させていただきます。

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