法科大学院特別委員会(第27回) 議事録

1.日時

平成21年3月19日(木曜日) 13時~15時

2.場所

文部科学省 東館16F 特別会議室

3.議題

  1. 第1ワーキング・グループの検討結果について
  2. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘、田中成明の各臨時委員
(専門委員)稲田仁士、井上正仁、小山太士、笠井治、鎌田薫、木村光江、椎橋隆幸、土屋美明、松村和徳、山本和彦の各専門委員

文部科学省

久保高等教育局審議官、藤原専門教育課長、浅野専門職大学院室長

5.議事録

 (1)事務局から配布資料の説明があった。

 (2)議事は以下のとおり

【田中座長】
  それでは議事に入らせていただきます。法科大学院の質の向上に関する検討のために、第1ワーキング・グループにおきまして、入学者の質の向上に関する検討を行っていただいておりました。本日はその結果について主査のご報告をいただきたいと思いますが、よろしくお願いします。

【鎌田委員】
  第1ワーキング・グループの主査の鎌田でございます。
   お手元の資料2に従いまして、第1ワーキング・グループにおける検討結果の概要をご報告申し上げます。検討の報告といたしましては、1の共通性の確保から4の多様な人材の確保までの4つの項目に分かれております。まず第1点、競争性の確保でございますけれども、枠の中で書かれておりますように、現時点で競争倍率、これは受験者数に対する合格者数の割合でございますが、2倍を下回っているなど、競争性の確保が困難になっている法科大学院については質の高い入学者を確保するため、早急に入学定員の見直しなど、競争的な環境を整えることが不可欠である等を内容といたしております。
  現在の入学者選抜の状況につきましては、その下に記してございますように、平成16年度におきましては7万2,800名の受験者がいたわけでございますが、平成17年度以降は4万人台で推移しており、そして平成20年度になりますと4万人を割り込むという状況でございます。平均志願倍率も、平成16年度は13倍でございましたけれども、平成17年度以降は7倍前後で推移しており、3倍を割っている法科大学院が13校に達しているという状況でございます。
  現在74校5,795名の入学定員でございますけれども、平成16年度を除きまして、入学定員に対して実際に入学した者の数はそれを下回る状況が続いております。平成20年度では46法科大学院で388名の定員割れを起こしているということでございます。
  19年度、20年度、2年連続で入学者が定員に満たない法科大学院は28校あって、そのうち入学定員の8割を満たしていない法科大学院が10校あるということで、入学者の確保に一定の困難を感じている法科大学院も相当数存在するようになってきたというのが現状でございます。
  こういう中で、競争倍率が2倍を下回るという状況におきましては、入学者選抜における適正な選抜機能というものが作用していないというふうにも考えられますので、こういった法科大学院におきましては特に、早急に入学定員を見直すなど、その競争的な環境を整えることが不可欠であるというふうに認識いたしております。
  第2の課題が適性試験の改善でございます。先ほど室長からご指摘がありましたように、お手元のグレーのファイルの4の3に記されているとおり、現在まで大学入試センターと日弁連法務研究財団との2つの実施機関において2種類の適性試験が実施されております。いずれにしましても、この適性試験を受験することが法科大学院に入るための不可欠のものとして運用されてきているところでございます。それに関連しまして、囲みの中にあるとおり、適性試験は、法科大学院入学時に高度専門職業人として備えるべき不可欠の資質・能力を計るものでもあるため、法科大学院の入学者選抜においては適性試験を重要な判定資料として活用することが求められる。適性試験を課している制度趣旨を無意味にするような著しく低い点数の者を入学させないよう、統一的な入学最低基準点というものを設定する必要がある。3つ目の丸ですが、統一的な入学最低基準点については、その受験者の下位から15%程度の人数を目安として試験実施機関が毎年の総受験者数や得点分布状況などを考慮しながら、当該年度の具体的な基準点を設定すべきである。
  次に認証評価において、各法科大学院における入学者適性試験の得点状況を調査し、当該年度の入学最低基準点に照らして、適正に運用されているか否かを評価することが必要であるとしています。
 次に、適性試験はすべての法科大学院に有効に活用されるよう適切な内容・方法について、さらなる改善が図られる必要がある。最後に、適性試験の公平かつ安定的な実施を図るため、法科大学院関係者の主体的な参画のもとに、適性試験の統一化が図られる必要があるという提言をいたしております。
  この背景にございますのは、上のほうの2つ目の丸に書いてございますように、適性試験を統一的に受験するよう課してはおりますけれども、著しく点数の低い者を合格させている法科大学院がないわけではない。そうだとすると、適性試験を受験させることに一体どういう意味があるんだという問題が起きてくる。そのことが入学者の質の確保という観点から見ると、必ずしも好ましいことではないという背景がございます。
 そのことと関連しまして、適性試験の点数が低くても、最終的に司法試験に合格できる人がいるじゃないかという議論もあるわけでございますけれども、適性試験が測定しようとしている能力は、法的な素養、法的な知識、法的な判断能力の問題ではなくて、それ以前の高度専門職業人として備えるべき不可欠の資質・能力であるわけでございますので、法律ができるかできないかというのとは違う観点でその社会的な要請にこたえるためには、法律だけではなく、高度専門職業人としての能力を備えていることが求められるという観点からの試験でございますので、試験はしたけれども、その評価結果は入学者選抜に関係ないというような運用はやはり避けられるべきであろうという認識でございます。
  その結果、全国的なレベルでも統一的な入学最低基準点というのはやはり設定すべきじゃないかという提案をさせていただいているところでございます。その具体的な水準は、先ほど室長からご紹介のありました平成18年度の大学入試センター及び日弁連法務研究財団の適性試験の、それぞれの得点分布状況の表がございますが、これで見まして大体下位15%くらいの人は高度専門職業人としてふさわしい能力を備えていない、最低限の水準をクリアしていないということは言えるんではないかと、こういうことを提言させていただきました。
  そのような活用をするとなると、同時に、適性試験の側もそれにふさわしい内容を備えていただきたいというのが囲みの中の下の2つの丸でございます。試験内容についてさらなる改善を求めるとともに、現在2つ実施機関がございますけれども、将来的に大学入試センターはこの業務をやめるということが予定されているところでございますので、日弁連法務研究財団とこれまで実施してきた大学入試センターの実績と、この両方をうまく統合できるように両者で十分討議した上、望ましい統一化を図っていただきたいという、こういう提言をさせていただいたところでございます。
  3番目が法学既修者認定の厳格化でございます。法学既修者認定につきまして、各法科大学院ごとに個別に既修者認定を実施し、法律学について一定の素養があると認められた者につきましては、法科大学院の在学期間1年の短縮、それから30単位を限度とする単位修得の免除ということが行われているところでございますが、これも非常に安易に行われますと、余り能力の高くない人が、本来3年の課程で学修すべきものを2年で学修を終えているという事態が生じかねないということでございますので、これについても現状を背景として以下のような提言をさせていただいたところでございます。
  囲みの中でございますが、法学既修者の質を確保し、修業年限の1年短縮という制度が適切に運用されるために、各法科大学院で実施される法学既修者認定試験の試験科目と履修免除科目の関係につき、統一的な運用を図ることが必要である。その統一的な運用方法として、具体的に以下のようなことが考えられるということでございます。
  第1に、法学既修者認定試験で課す試験科目は、履修したものとみなす、つまり法科大学に入ってから履修することが免除される、そういう科目のすべてを対象とすることとし、その合格者については原則として対象となる1年次配当の必修科目すべての単位を一括して免除すべきである。第2に、各法科大学院において、法学既修者認定試験の各試験科目について最低基準点を設定すべきである。第3に、法律基本科目のうち、少なくとも、憲法・民法・刑法については法的な文章の作成能力を評価するため、論文試験を課すべきである。こういう提言をさせていただいております。
  この点につきましては、お手元の、法科大学院における教育の実施状況調査結果をごらんいただきますと、各法科大学院ごとに既修者認定のやり方は相当多様な方式をとっているところでございます。けれども、理念としましては、法科大学院で1年の教育を修了したのと同程度の能力を持っている人には重ねてもう1年履修させる必要がないという趣旨でございますので、1に書かれておりますように、1科目ごとに認定して、この科目は受けなくていいということよりも、総合的に法律の科目についての能力があるかないかという一括認定を基本とすべきであるということが第1点でございます。第2点は、総合点で一定のレベルに達していれば、極端に言えばある科目は0点でも1年間の短縮を認めるということをされますと、やはりそれぞれの科目について単位修得を免除しているわけですから、本来の理念から言えば、すべての科目が合格点に達しているという考え方をとるべきところでございますけれども、百歩譲っても、各科目ごとに合格最低基準点、この点を割り込んだら、総合点がどんなによくてもやはりもう一度学修し直さなければいけないという、こういう最低基準点をそれぞれの科目について設定すべきである。それから択一試験のみで既修者認定をしているというところもあるようでございます。あるいはその他の資料のみに基づいて既修者認定をするということも可能性が開かれているところでございますけれども、少なくとも憲法・民法・刑法については論文・筆記試験を課して文章作成能力を計るという方向をとるべきである。こういう提言をいたしております。
  これらの提言に基づいた適正な運用がされるかどうかということにつきましては、先ほどの適性試験の場合と同様、その実施状況について認証評価機関における厳格な評価を通じて、その実施を担保すべきであろうというふうに考えているところでございます。
  第4に、多様な人材の確保ということで、幾つかの点を掲げてございますが、6ページの囲みの下に現状についての解説を書いてございますが、社会人入学者の割合が平成16年度におきましては全入学者の48.4%という高い割合でございましたが、平成17年から20年度にかけましては30%前後で徐々に減りつつあるということでございます。他学部出身者の割合も平成16年度は34.5%でありましたけれども、平成17年度に30%を割り、その後は20%台後半で推移しているというように、当初の理念といたしましては、非常に幅広いバックグラウンドを持った有為な人材が法科大学院で学修をし、法曹の世界へということが想定されていたんですけれども、法学部出身者以外の者、あるいは社会人経験を有する者の入学が非常に減りつつあるということでございます。こういったことを背景に、多少なりともこれらの人たちが法曹界を志望していただけるような方策のうち、法科大学院側の努力でできるものとして何があるだろうかということで3点を書かせていただきました。
   第1に、今後、より多くの多様な経験を有する優秀な社会人学生の法科大学院への入学を促進するため、入学者選抜方法における社会人に対する一定の配慮のみならず、夜間コースの設定や長期履修コースの運用により、働きながら学修できる環境を整備するとともに、より一層、社会人、他学部出身者を法科大学院に受け入れるためには、法学未修者コースにおけるカリキュラムや授業方法の改善にさらに努めるべきである。これは、現実の問題として、未修者コースに法学部出身者と純粋の未修者とが混在しているという状況が生じつつあります。特に純粋の未修者にとりましては、1年間で法学部出身者に追いつくということがかなり困難であるという声も聞かれていることから、そういった純粋未修の人たちが取り残されないようにするためのカリキュラム面での改善ということを要望しているところでございます。
   第2に、社会人等の多様な人材を確保するため、奨学金の充実が求められ、社会人入学者につき、大学院の課程全体における家計基準の合理化など、公的奨学金制度のさらなる充実が図られるべきである。これは多少わかりにくい表現になっているかと思いますが、下の7ページのほうに少し書いてございますけれども、現在の法科大学院の公的奨学金に関する家計基準は、修士課程入学者と同様の扱いになっております。実態として、先ほどのように社会経験を有する者の入学を奨励いたしますけれども、例えば夫婦共働きの人のうちの1人が会社をやめて法科大学院に来ようというときの家計基準が、夫婦の収入を合算して考えますので、その際、400万円台後半の収入がありますと、公的奨学金が受けられないことになっております。そうなると、家族、子供がいて、1人が働いていて、1人が退職をして、奨学金を受けずにやっていきなさいといったことが法科大学院の高額な学費を考えると非常に難しい。その一方で、独身の自宅通学者は親との家計を切り離して、収入ゼロということで、親がいかに高額所得者であっても公的奨学金の貸与を受けられるというような点で、やはり十分にこの法科大学院の現状に即応した制度になっていないのではないかという問題の提起をさせていただいたところでございます。
   3番目が、これは少し違った観点でございますけれども、司法試験の合格率の向上のためにすぐれた合格者を確保することを意図して、法科大学院間で、奨学金や授業料免除の拡大などの競争が生じつつある中で、公的助成や学生納付金を財源として奨学金の充実を図ることによって、奨学金の特典を受ける学生と受けない学生との間に、過度の不均衡を生じさせることがないよう配慮することが求められる。これも決してわかりやすくない表現であるかもしれませんけれども、入学者のかなり多くの人に授業料全額免除だとか、授業料総額を超える奨学金を与えるというようなことでの学生集めの競争が、一部では学生の負担を減らすという観点からは好ましい面も持っておりますけれども、しかし本来の教育内容での競争以外の部分での競争の過熱化ということ、そしてここに書いてありますような公的助成、学生納付金の流用であったり、あるいは奨学金を受けられる人、受けられない人との格差が非常に大きくなっているという現状について少し注意を払うべきであるということを提言させていただきました。以上でございます。

【田中座長】
  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの報告につきまして、ご意見ご質問がございましたらお願いします。

【土屋委員】
  前回発言しておくべきだったことだと思うんですが、議論の前提となる現状の認識の部分なんです。今のご報告にありましたように、資料2の4に当たる、多様な人材の確保のところに、社会人学生の入学の促進というところがありまして、その中で、今後も社会人の潜在的なニーズは少なからずあるものの、入学志願者数はほぼ一定した水準で推移していくと考えられるとなっております。数的なデータの根拠があって言うのではないですが、共同通信というところで仕事をしておりますと、社会人の入学志願者数はほぼ一定した水準で推移していくという前提がどうも違うかもしれないなという感じを持っているんです。特に去年の秋以降、経済危機が深刻化して、社会人の雇用情勢が悪化したために、社会人の転職が非常に難しくなってきた。そういう状況が生まれているんじゃないかと思っています。共同通信でも実際、記者の仕事から転職しまして弁護士になった人間がここ数年おるんですけれども、以前は転職希望者がかなりありまして、どう思うか相談を受けたこともあったんですが、最近はとんとなくなりました。つまり、転職して法科大学院に進むことが経済的にかなり難しい部分があるということと、法科大学院を卒業した後も、法曹になれるという保証がそれほど強くない。自分だったらなれないかもしれないというような危惧感を持っていて、転職をためらうような同僚たちが結構おります。去年の秋以降の事情をみると、雇用環境の悪化もありますので、今後ある程度一定数の水準で推移していくという、非常に幅を持たせた見方をされていらっしゃるので、特にそのことについて異議を申し立てるつもりはないんですが、むしろ、入学志願者数は減少する恐れもあるくらいな認識で私は考えております。

【鎌田委員】
  土屋委員のおっしゃったとおりではないかなとも思っておりますが、これは法科大学院志願者総数の減少傾向もありますので比率に直ちに反映するかというと、比率的には社会人だけが激減しているという形では、どうも数字的には出てきていないという点が1点と、もう1つは、社会人という言葉の中に含まれる幅がかなり広いものですから、委員が想定されていますような、しっかりした会社に勤務をしている方だけが社会人ではないということで、私どもも土屋委員と同じような印象を持っておりますが、数字を見ると、それほど激減という形になってはいないということではないかと思っています。

【井上座長代理】
  文章の意味なのですけれど、資料2の4ページの下から3行目の末から4行目、「すべての当該科目が試験の出題範囲に含まれている」というのは、出題のベースとなる範囲を意味しているのか、具体的な試験に必ずそのすべての当該科目が含まれていないといけないという意味なのかどちらなのでしょうか。いずれにしても、当該科目が含まれているか否かは、教科によってはかなり判断が難しい場合があるように思いますが、どこまでのことをここで意味されているのか、もう少し明らかにしてください。

【鎌田委員】
  ここはあえて少々微妙な表現になっているところでございますけれども、何を意図してこういう表現になっているかと申しますと、法律基本科目も従来から基本六法と言われているもの、それから新司法試験では行政法も必須になっておりますから、法科大学院によっては7科目が法科大学院1年で学習すべき必修科目というふうにされているところでございます。実際の試験日程の都合であったり、それから現在の法科大学院における教育の方法も複合的な学修をさせているということで、6科目の試験とか7科目の試験という方式をとっているところと、それから刑事系、民事系、公法系というふうに系統別に出題をしているところがある。後者の場合に、公法系とはいいながら、憲法だけしか出ていないとか、刑事系といいながら刑法だけで刑事訴訟法が出ていないとかいうこともある。そういう場合に、刑事訴訟法の問題が出ていないから不適切な選択方法だと、余り堅くやられますと、出題方法について非常に大きな制約を課することになる。明確に第1問が刑法で、第2問は刑事訴訟法としなくても、刑事訴訟法の要素と刑法の要素が含まれており、試験としてはどちらも試されるから、受験生は必ず両方を勉強して臨まなければいけない。全く、能力判定にその要素が反映していないと少し問題ではありますけれども、こと細かに6科目だったら6科目の試験という形ではやらなくてもよく、試験出題範囲の中に、適切にそれが配置されていればよいということを表現したい文章として書かせていただきました。

【山本委員】
  2の適性試験の改善のところですが、その数値基準として挙げられている総受験者の下位から15%という数字にどのような根拠があるか伺わせていただければと思います。

【鎌田委員】
  この水準を下回った人は高度専門職業人には絶対に適しないということが論理的に明確に定められるかというと、非常に困難であるということは大前提でございますが、先ほど言及しましたこの2つの表を見ていただきまして、何通りかの考え方がある。おおむね、現在の受験者総数の中で下から何番目くらいまでの人は一定水準の大学院においては入学をさせていないだろうという人数の観点からの判断が一つと、それからもちろん総合判定方式でございますから、これだけではなく、特別の要素をつけ加えてもなお限界だという線ではございますが、それともう1つは、平均点から平均点の上下に標準偏差の範囲での広がりを見ている。その下限の下の人たちというのはどのくらいになるかというと、適正な得点分布を念頭に置くと、おおむね7割くらいの人が入る範囲というのが標準偏差の範囲ですから、逆に言えば当然のことですけれども、おおむね15%くらいの人が幅広く見た標準の範囲から外れた人だという言い方もできるだろうということで、15%くらいの線ということを一つの基準として出させていただきました。これは、全体的な最低基準点として画一的に決めることは、それぞれの試験の実施をしてみた結果を見ないと何とも言えない。他方で、試験実施機関に、毎年独自の判断で最低基準を設定するように言っても、何を求めてこの試験を使うのかというのは、法科大学院側の問題ですので、それをお願いすることもできない。しかし最終的には試験の結果を見ながら試験実施機関が、今回の試験でいえばこの辺のところが最低の基準であると定める、その目安をこの審議会で与えておかないと、実際には運用できないだろうということで、先ほど申し上げました点等を総合的に勘案して、おおむねこの辺のところで線を引いてもらえるようにしてはどうかという提案をさせていただいたところです。

【田中座長】
  具体的にどの程度の者は、本来ならば入るべきじゃないということが判断できるようなデータはありますか。

【鎌田委員】
  大学入試センターの試験は100点満点ですから、素点が得点率になりますけれども、40点以下の人を入学させている大学は何校か、30点以下の人を入学させる大学は何校というデータは事務局のほうで把握していらっしゃると思いますが、それほど多い数ではありませんけれども、しかし40点以下の人を入学させる学校というのは一定数、毎年のようにございます。

【浅野専門職大学院室長】
  お手元に、中間まとめを参考に配付させていただいています。その基礎資料集の10ページ目をご覧いただきますと、平成20年度の入試において合格者の適性試験の最低点が何点くらいの人が入ってきているか各法科大学院の現況で把握できております。ただ、これの具体的な人数について調査を行っているわけではありませんので、全体でどのくらいの人数の方が入学しているのかというのはわかりません。

【鎌田委員】
  今の資料の10ページによると平成20年度の大学入試センター適性試験で50点未満という人を入学させている法科大学院が24校あるということでございますが、これに対応する平成19年度大学入試センター適性試験の得点分布でご覧いただきますと、下から15%というのはちょうど51点になり、2297人が該当します。平成20年度入試にこの基準をあてはめて、この51点以下の人は入学させることは好ましくないとした場合、そういう人を入れている法科大学院が少なくとも24校、40.7%存在するということになります。

【松村委員】
  今のと少し関連するんですけれども、多分、本学ですと、ここで適性試験の成績と法科大学院の成績とは相関関係がないというのですけれども、多分、適性試験の下の部分では、相関関係が出てきているという傾向は少しあるんです。そういった面ではある程度、下位のほうから線を引くというのはあり得るという気がします。もう1つが、こういうふうに人数で切るとなってくると、ある程度総数を制限してくるような形になるんですけれど、最初に高度専門職業人として備えるべき不可欠の資質というのは、この問題だとこの点数とらないとだめだというような最低線の検討はされなかったんでしょうか。もう1点、その内容との関係で、。適性試験で問うているのは、本当に高度専門職業人としての能力を有しているかどうかというのは、どうもよくわからない部分があります。その部分をどういった形で改善していくか、どこが主体となってやるのか、その辺の検討があったら、お聞かせ願いたいと思います。

【鎌田委員】
  先ほどの説明の中で、適性試験とその後の成績あるいは新司法試験との間に相関性がないというふうに申し上げたかもしれませんけれども、そういう主張があるということでございます。この相関性の有無については非常に判断が難しくて、例えば、適性試験の非常に点のいい人だけが入学している大学では、その中で相関を見ても相関関係は出るわけがないですけれども、全法科大学院の学生あるいは予想曲線的に法科大学院に入学できなかった人はどうなるだろうかという予想をすると、全体としてみればやっぱり一定の相関は考えられるわけです。松村委員がおっしゃられましたように、下位のほうになれば、それはそれで相関性が出てくるということはございますので、相関性がないというふうに私の説明を受けとめられたとしましたら、そこは訂正をさせていただきたいと思います。
  それから、一定の能力を計る試験であるなら、新司法試験のようなものですと、絶対点で、これで40点取れない人はだめという測定の仕方があるんですけれども、このような一般教養的なものや、あるいは基礎的な資質そのものを計るという試験について、絶対点を設定するのは性質上難しいというのがひとつございます。それから、先ほどの平成18年度大学入試センター適性試験という資料を見ていただきますと、2枚目が平成19年度で、3番目が平成20年度でございます。平成19年度大学入試センター適性試験の上の枠で平均点を見ていただきますと、67.47ということになります。平成20年度を見ていただきますと、57.08となっており、平均点で10点のひらきがございます。こういう点はそれぞれの試験実施機関で原因を究明して安定的になることを今後とも検討していただくとは思いますけれども、それが受験者集団にどう反映してくるかということは必ずしも安定的ではございませんので、絶対点での最低基準の設定は非常に難しいだろうと思います。実際に行った試験の結果を見ながら、それに連動した最低基準の設定しかできないだろうということで、そうなると平均点からどれくらいのところに線を引くかという考え方でいくか、あるいは人数の側から見ていくかということしかできないわけで、その設定のしやすさということから、人数的な観点を出させていただいたということでございます。ただ、それは相対的な評価になりますので、松村委員ご指摘のとおり、受験者集団が変われば全体的な観点からみると基準がずれてくるということになりますので、これは恒常的なものではなくて、やはり何年間かの推移を見て、受験者集団の特性に応じて、また基準のつくり方を変えていくということが必要であろうというふうに考えております。
  第3点の試験問題の改善は、それぞれの適性試験の実施団体が専門家を集めていらっしゃいますので、能力測定試験のあり方についての総合的な検討を毎年行っていただいているところでございますが、同時に先ほど申し上げましたように、組織面でも統一化の必要が出てきておりますので、その2ページの囲みの中の一番下の丸にありますように、適性試験の統一化に当たりましては、法科大学院関係者の主体的参画のもとに、法科大学院関係者と実施団体との協議の下で、双方の専門家が入って実施された試験についてのレビューを行いながら改善を図っていこうと想定しているところでございます。

【稲田委員】
  受験者が一貫して減っているということのようですけれども、その減少の理由について調査されたようなことはあるんでしょうか。

【鎌田委員】
  これは、私がお答えすることが適切かどうかわかりませんが、やはり幾つかの要因があって、1つは当初喧伝されたほど合格率が高くないということと、それからどこまで実態に即しているかわかりませんけれども、合格した後でもそんなに夢のような生活が待っているわけではないのかもしれないということ、それとやはり法科大学院の学費がかなり高いというようなこと、さまざまなことが絡んでいるんだろうと思います。とりわけ社会人の場合は、現在かなり満足すべき職を得ている人であればあるほど、それを辞めることのリスクがかなり高いのだという点についての判断がある。それと初年度は、それまでにたまっていた人たちが一気に出たということですから、初年度と比べて2年度以降が見かけ上激減しているというのは、これはある意味自然な現象じゃないかと思います。このような要素が全部絡み合っているのではないかと考えております。

【井上委員】
  私も同じような感想を持っています。たまたま昨日夜、弁護士等になって2年目の人を含めて、修了した人達にカリキュラム等についてインタビューをしたのですけれども、その際、社会人出身者の志願が減っている、数が減っているだけではなく、中身においても細っているという現象があるのだけれども、率直に言って原因は何だと思うかと聞いたら、やはり司法試験の合格率との関係で、リスクを負えないということだろうという答えでした。それなりにニーズはある、そういう関心ないし希望はあるけれども、今の生活をうち捨てて、賭けてみるというのはリスクが大き過ぎると言うのですね。
  もともと合格率については、最初から冷静に見れば、一部で喧伝されていたような数字にはならないことは分かっていたわけですけれども、当初はこれにかけようという情熱がわっとまき起こった。それが2年目以降、冷めてきている。ある意味では2年目以降、落ちついたといえば落ちついたわけです。それともう1つは、未修者の中身ですが、純粋未修者でない人たちが半数、あるいは半数を超えて入ってきている。そうすると、授業をやってみると、片一方はある程度の基礎知識があって、体系的な見通しもある程度利く。そういう人と純粋未修者が最初から競うというのは非常に大変で、そういう話も伝わっているみたいです。そこのところについて、未修者でも純粋未修の人たちに配慮したきめ細かな対応をしていかないといけないのではないかと思います。最初つまずくとなかなか立ち直れないらしいので、その辺のところをケアをすれば、伸びる人はいっぱいいます。私どものところでも、ここのところ最終成績で1位を取っているのは純粋未修の人ですので。

【田中座長】
  今のお話とも関連するのですけれども、司法制度改革のときに、多様な人材を法曹に吸収するということが言われたときには、社会人というよりもむしろ、他学部出身者、例えば知財などに関心を持つ工学系の人を中心に検討されていたと思われます。社会人というのは非常にあいまいな概念で、制度ができた当初はかなり厳格に、大学を離れて3年というようなルールもあったんですけれども、有職経験者も司法試験浪人などもみんな社会人に含めて各大学が受入れたというところがあるので、だんだん社会人が減っているわけです。要するに再チャレンジ的な人を法科大学院に受け入れるという点と、法学部以外の出身者を受け入れるという点があって、有職者とか有職経験者を受け入れるためには、財政的な問題もあると思うんですけれど、非法学部出身者をどうするかということと対応する仕方が違ってくるんじゃないかということがある。そのあたり何か一緒に議論していることから、どういう対応をしたらいいかということと、何が問題なのかということがごっちゃになっているところがある。法科大学院自体については社会人とか非法学部出身者を一定パーセンテージ以上受け入れるということをやっている。司法試験のほうでも、例えばかつて若年層枠を設けたのと同じように、非法学部あるいは社会人について、枠を設けることにでもなれば、それに応じて法科大学院も受け入れるということはやりやすいんですが、法科大学院だけで受け入れとか教育方法を工夫して対応できるには限度がある。多様だということは何かということと、対応策を考える場合に、認識を共通にしておいたほうがいいんじゃないかという感じがしている。

【有信委員】
 今回の報告は、競争性の確保と質の確保、それから多様性の確保と3点で、競争性に関しては定員の見直しを考えたらどうかと思います。質の確保については法学履修の問題と適性試験の問題。ある程度のやり方をきちんとしたらどうかと。多様性については今の社会人も含むという話です。1つは競争性の確保というときに、本来の目的は高度職業人の養成というときに、これも試験は競争試験という位置づけなのか、資格試験という位置づけなのかというところがやっぱり重要なような気がするんです。今、多分、司法試験合格者の定員という考え方は、本来は、要は教育のキャパシティの関係から定員を限るという考え方が多分正しいんだろうと思うんです。でなければ、ある年には法曹に優秀な人がいて、ある年には優秀ではない人がいるという、ばらばらになるのを許すと、こういう話になるわけですから、基本的にはやっぱり資格をどうするかという問題であって、定員を絞ることによって競争性を確保するという考え方は、余りなじまない。これは、もちろん法科大学院の定員の考え方に絡む話ですから、そこをどうこうしなければいけないという問題も起こるんですけれども。それからもう1つは、多様性の確保というところで、今、座長から別枠を考えたらどうかという話も出ているんですけれども、実は工学系の場合には、いわば博士課程の人材に優秀な工学系人材を確保するために、社会人をとにかく入れようということでずっと長年かけていろいろな制度をやっているんですけれど、これは基本的にはいわゆる社会人コースという形で別枠でやられてきているようです。そこの問題は何かというと、結局大学にとって、その人たちはある意味でお客さんなんです。したがって学生といろいろな意味で同等になっていない。何が問題かというと、例えば大学サイドで言うと、社会人というのは会社から派遣されるんだから、とりあえず3年間で何とか学位を取らせて出してしまう。そのためには、逆に言うと奨学金等々の制度は平等である必要はないから、社会人に対しては奨学金等々の、学生と区別をするとか、つまり学生と扱いが違うというような運用上の扱いが違うというようなことがあらわれていて、これが送り出すほうにとっても、実は余り歓迎する話ではないんだというのですね。特に、例えば中小企業からドクターコースに学生を送ろうとすると、中小企業は非常に優秀な人材をドクターコースに送って訓練させたいというような気があっても奨学金を受けられないとかであれば、送れないとかいう話になる。
 したがって私が言いたいことは、私はむしろ学生と社会人が、ここに書かれてあるように、実質的に同等な扱いを受けるような仕組みを確保する。これは、社会人の側から見ると学生に対しても異議があって、例えば夜間コースというようなものを別扱いにせずに、全く同等の形で幅を広げてやることによって、社会人も学生も同等に教育を享受できるということを徹底していくことによって、実際に教育現場では年齢とか経験のバリエーションが非常に高い教育効果を発揮するというのは、外国の例なんかでも非常にはっきりしているわけですから、できるだけそういうことを確保するというのが重要だろうということです。

【鎌田委員】
  他学部あるいは社会人の入学志願者をどう確保するかという点について、現役で他学部から入ってくる人たちの問題と、社会人の問題とは全く別の問題だというのは座長ご指摘のとおりで、その他学部からの進学者がやはり減りつつあるというのは、多様性の確保という観点からはかなり重要な問題として受けとめなければいけないというふうに考えております。
  個別の大学では、私どもも以前からやっておりますけれども、今年はもっと本格的に、各学部に回って法科大学院への進学を考えてもらうというキャンペーンをやろうと思っています。これは大学を出てすぐに法科大学院に来ることを考えますと、大学4年生になったらすぐに適性試験の受験の出願をしないと、法科大学院に進学できないんですね。そういう意味で早い時期から法科大学院に行くことを意識の中に入れてもらわないといけないが、それが今、他学部の学生たちにとってみると、そこが法律の世界は大変らしいねという印象くらいしか広がっていないのが、かえって進学をためらわす方向に作用しているのかもしれないと思っております。この点は、制度としての対応は難しく、個別の掘り起こしみたいなことをやっていかないと、親しみにくさが拡大していく危険性があるなというふうに感じているところです。
 それから、これも現在も設置基準で要求されている3割あるいは最低でも2割を下回ってはいけないというこの社会人、他学部出身者枠を維持することは実は非常に困難になりつつありますので、入り口の段階で入りやすさとかあるいはその他の優遇措置、あるいは少しでも仕事を若干でも続けながら勉強しやすい環境を整えることをしてやらないと、なかなか3割の線を維持することは困難になっていく。しかし、座長がおっしゃられたように、そうやって優遇されて法科大学院に入った後は、出口では何の優遇もないということとか、それから現実にはこれは2つの側面があって、実際に資格を取るところまでいっても、その後就職する時になると、それまでのキャリアが法曹としての就職に有利に働くケースと、有利に働かないケースがある。だから資格は取ったけれども、やはり年齢が高いとか、それまでのキャリアもそれほど売り物にならないとか、あるいは逆に障害になるという、出口の方ではうまい対応ができていないというのが大きな問題ではないのかというのは座長のご指摘のとおりだと思います。これは法科大学院だけで対処できる問題ではないので、もうちょっと幅広い観点から検討していく必要があるだろうと思います。

【井上座長代理】
  私のところでは、「理系枠」と「社会人枠」というのを設けていまして、その枠の出願者の中で優秀な人から、トータルで100人のうちの15人優先的に採っていまして、、それは今後も維持するつもりです。それ以外の人も、もちろん一般的の選抜方法で採用され得るわけですが、そのときに未修者については特に、答案の書き方などでも文系と理系だと書き方が違いますので、それによって差がつかないような配慮をしています。そういうことで、不当な差別をしないということです。それと、我々としては、受け入れた以上は、全く対等に処遇しています。その上で、法科大学院に入りにくい、勤務を続けながら勉強したいという人にさらに拡大して機会を与えるために夜間コースをつくったり、長期履修制度を活用したりというご提案をしているわけなのです。

【有信委員】
 少し違う話ですけれど、今は基本的には法曹を育てるという観点でずっと話がされているんですけれど、最近の企業の環境から見ると、いわゆる弁護士ではなくても、会社には法務部というのがありますけれども、その法務部の果たす役割がどんどん重要になっているんですね。これを例えばすべて弁護士にやってもらうかというと、高度に専門的な部分については弁護士にお願いするしかないけれど、逆に言うと会社的な判断を法律的な次元でやらなければいけない。一番の原因は、従来の商習慣と法律の運用とが、コンフリクトを起こすようになってきているわけですね、いろいろなところで。法律というのは、もともと過失というか、責任体系の演繹上に法律があったと思っていたら、突然瑕疵責任という話になってきてしまって、これの取り扱いをどうするかとか、そういう問題については、会社の従来の仕事のやり方の定型に基づいて判断をやっていたのでは、確実に間違える。常に進んでいく法律の状況をよく見ながら、それに対して適切に会社の中の事業運営をきちんとして正規の軌道に乗せていかなければいけない。もちろん、会社の社会的責任が大前提としてありますから、そこでこういうわけにはいかないというのがあって、非常に重要になっている。ですから、そういう人たちをどうやって育てていくのかという視点は、もちろん、司法試験で司法研修を修了した人たちがそういう職についていただいても、会社の中で言うと、専門的な知識を持ちながら、逆に言うと会社の経営に関わっていくというよりも一段広い立場を獲得していく人たちと、徹底的に専門性を磨き上げてそこで生きていく人たちと、二手に分かれるわけですよね。今の法科大学院の議論は、どちらかというと徹底的に専門性をみがき上げるような方向の議論が多いのですけれど、もう1つの別の経路の人たちの進路については、法科大学院というパスは、単純に法学部を出ていればいいということなのか、法科大学院を出ていればいいということなのかというのを少し考えてみたほうがいい。会社で採用を考えるときは、とにかく法務従事者が非常に逼迫しているので、これの採用をどうするかと言っているときに、法科大学院を修了して司法試験を受けた人をとにかく探そうという話になっているくらいですから。

【鎌田委員】
  現在の法科大学院は、基本的には新司法試験に合格できる教育ということが基本になっておりますけれども、先ほど来、断片的に出ていますように、就職状況全体の問題があるのと、それからもう1つは、やはり授業自体も現在の法実務の状況に対応しなければいけないという意識が非常に強いです。ですから、法科大学院におきましても、弁護士でいえば、訴訟専門に弁護士事務所で働く方だけを養成しようというふうには必ずしも考えておりませんで、私どもの法科大学院でも、企業法務に耐えられる人、あるいは国家公務員、地方公務員として働くことのできる人というのも教育目標の中に入れておりますので、新司法試験科目だけじゃなくて、企業法務の中で必要となるものについての教育もやりますし、民間企業の法務部あるいは官公庁の法律担当部署へのエクスターンシップを希望する学生も非常に多いです。それから修了生でも、司法試験終了後、合格発表前に企業に就職を決めるという人も増えてきています。企業の側も、法学部から直接採用したほうがいいというご判断のところもあれば、法科大学院を修了した人、それも司法試験に合格したことを要件にするところもあれば、司法試験の合否を問わず、法科大学院で一定の素養を身につけていることで足りるとするところもある。しかも、それ以前に法律以外のことについての十分な教養も備えていたというような人が数は少ないですけれども一定の積極的な評価を受けて企業や官公庁に就職をしていくという動きも出ていると認識いたしております。

【稲田委員】
  企業ごとに考え方がいろいろあると思うのですけれども、一般的にそういうことを言われているけれども、私個人的にはどうかなと思っているのが、先ほどお話があったように、弁護士としての専門性を徹底していく部分と、企業に入っている部分、これが違う道としてあるかなという点です。確かにそういう点があるんですけれども、私どもの実感で言いますと、企業内法務としても専門性の徹底というのは非常に必要です。なぜかと言いますと、我々が必要とする法務的なスキルというか専門性というのが、少なくとも日本では弁護士のマーケットというところで、そもそもアベイラビリティがないということがございます。日本の弁護士は、いろいろな方がいらっしゃいますけれど、大きく言ってやはり裁判実務が前提になっていますから、今日の非常に国際化して多様化した、複雑化している企業活動というものを支える法務的な力というのを日本の弁護士マーケットでは利用可能でないということがあって、その部分を企業の法務が補っているということがございます。
  私の個人的な期待としては、弁護士の数が増えることによって、ニーズに応じたアベイラビリティというのが出てくるというのを期待しているということなんですけれども、申し上げたい点は、企業として、あるいは企業の法務として必要とする人材というのは、私は弁護士として成功しそうな人材と、全く変わりがないと思っております。むしろ、その中で今、盛んに法科大学院の修了生の質という議論がされていますけれど、この質の定義を、具体的にどういうふうに考えているんだろうかと。これは恐らく人間をものさしで計るというのは無理で、結局は、知識もあるいはそれ以前の人間力とか、いろいろな意味の折衝力とか、人を慮る力とか、そういったことも含めて総合的にやはりいい人材が社会で成功するということじゃないかと思っているんです。質というときに、裁判実務に応じた知識とかあるいはそれについてのものの議論の仕方ということに特化する余り、広い意味で企業も、弁護士も、あるいは裁判官としても検事としても、知識も人間性も、あるいはわからないことをわからないとちゃんと認識して調べたり人に聞く、そういうことも含めた能力をどう調えるかということだと思います。余り企業の欲している人材と弁護士として期待される能力の間に差があると私は思っていないということだけ申し上げたいと思います。

【椎橋委員】
  法科大学院は、法曹だけに特化されない、いろいろな分野に進んでほしいというねらいで設置されていると思うんですけれども、ただやはり、入学してくる学生諸君は、未修者、社会人を含めて、企業法務に行きたい、だけど、やはり法曹資格を取った上でそういう方向に行きたいということです。民間企業にも行きたいし、あるいは役所にも行きたい、それも法曹資格を持って行きたいという考えを持っているのがほとんどの入学生の意識ではないかなと思います。そういう意味で、未修者は、どうやってどういう人をとるのが一番いいのかということで、やはり適性試験の問題に戻るんですけれども、その適性試験の成績と法科大学院での成績との関連性についてはなかなか難しい問題があって、未修者で来られる方はすごくいい筋を持っている人がいる。ただ、やはり、法曹にはなりたいけれど、勉強を始めてみたら、どうも法律はやろうと思っていたことと違う、なじめないという人も多くて、むしろ、数としては後者のほうが多いかなという気がするんですね。ですから、やはり適性試験の成績と、それから法科大学院の成績との相関性、これは非常に重要だと思います。場合によっては、適性試験の点数がいいのに、思ったほど法科大学院で成績が伸びない、あるいは新司法試験に受からないなど、我々の教育が間違っているのかなとか、あるいは新司法試験のやり方が間違っているのかなと心配するような事態というのもあるわけです。それで、アメリカの場合は、LSATで、実施機関が毎年検証して、半世紀以上の歴史があるので、かなりLSATと法科大学院の成績との相関性があると言われておりますので、LSATの成績が相当重視されているけれども、我が国の場合はまだそこまでいっていない。そこで、5年間一応経験があるわけですけれども、適性試験の実施機関におかれては、この5年間通じて何か見えてきているものがあるのかどうか、教えていただきたいと思います。

【鎌田委員】
  これは適性試験実施機関のほうから、いずれヒアリングの機会を改めて作っていただくほうが、正確になるんだろうと思いますけれども、全体としてはやはり一定の相関性はあるけれども、そんなに非常に強い相関性があるとは言えないというのが現状だろうと思います。法的な能力を計っているわけでは全くございませんから、適性試験の点がよければ必ず法律ができるかというとそうではなく、全くだめな人がいるということは、先生方も経験上お感じだろうと思います。ただ、基礎的な判断力とか論理力については大まかな傾向を見ることができているのではないかと考えております。

【田中座長】
 多様な人材の最後のところで、奨学金の話が付け加わっているのですけれども、どういう修正をするか微妙な問題があると思うので、どういう議論でここに入ってきたのか、ご説明いただけますか。

【鎌田委員】
  この奨学金や授業料免除等の問題については、座長がおっしゃられるような懸念が、ワーキング・グループの中でも出されました。要するに太枠の囲みの中にわざわざ出すことは、無用に物議をかもすだけだというご指摘もあったところでございますので、特別委員会としての報告として最終的にどうするかは判断をお任せしたいとは思います。ただ、質の低下等を強く問題視される方々の中には、教育の内容での競争でなくて、ともかく金銭面で優遇することで学生を集めて見かけ上の合格率を上げるというような競争を始めているように見受けられる部分がある。それは非常に好まくないので、もっときちんと教育内容での競争というところに戻すべきであるという声もあるところですし、同時にかなりの方々に授業料免除をするというのは、それだけ通常経費を食いつぶしている形にもなるわけで、公的助成金であったり国の予算を使いながら教育をしている機関として決して望ましい現象ではないだろうという側面もあるので、あえてこのポイントは維持したまま報告させていただいたということでございます。あえてこのほかのものと同列に並べて強調するほどのものでないというご判断は、特別委員会の方でしていただければと思っています。

【田中座長】
  問題があることは事実で、鎌田委員のおっしゃったとおりだと思うんですが、こういう指摘をすると、議論が変な方向へ向かうおそれもあり、更に議論をしなければならないと思います。

【土屋委員】
  私も実はこの部分の記述にちょっと違和感を受けたんです。というのは、奨学金の適切な運用という太字で書いてある見出しの部分なんですけれど、こういう書き方を通常するときは、現状が不適切であるということですね。それから、本文の中に、適切な運用という言葉はないんですね。非常に苦労されたということがわかるんですが、奨学金の適切な運用という、見出しの立て方はちょっと考え直していただいたほうがいいように私は思います。中から柱を立てるとすれば、奨学金制度のさらなる充実とか、いろいろな立て方はあろうかと思うんですね。こういうことをなぜ書かれるかということは十分わかりました。
   ただ、何らかの形で奨学金制度あるいは授業料の減免制度を設けている大学院に対して、足を引っ張るような効果を及ぼしかねないなというのが心配です。現実的に非常に希望がありながら、経済的な事情で法科大学院に行けない人たちというのは結構いるはずなので、そういう人たちがそのことだけで断念してしまうということがないように、そういうメッセージを送ってほしいと思うんですね。これをそのまま読むと、何か、例えば過大な奨学金の付与という言葉とかありますと、私なんかは、実はもっと奨学金を充実してほしいと思っていましたので、それが悪いことだからやめなさいというメッセージだと受けとめられてしまう恐れがあるなということが心配です。外部に出たときにどう読まれるか、どういうメッセージとして認められるかということに配慮していただきたいと思います。
  問題は、バランスの是正だと思うんですけれど、そういった、経済的にいろいろ優遇する制度をつくることによって学生を集めて、司法試験の合格率のアップにつなげていくことによって法科大学院の信用を図るというところがあって、それが不当であるというふうにおっしゃりたいんだろうなと思うんですが、そのこと自体についてもいろいろ議論はあるだろうという気もしまして、ちょっと感想として違和感を受けたということであります。

【鎌田委員】
  ご指摘のところはそれぞれまことにごもっともですが、全く仮定の話で言えば、例えば入学時に成績がいい人が、経済的に能力があろうがなかろうが、ともかく上位者は3年間一銭もお金を払わなくていいですよ、司法試験に合格すれば、お祝い金も上げますというふうな形で入学者を集めるとか、それから、これからそういう人はいないんですけれども、旧司法試験を何度も受けてもうすぐ合格しそうな人人だったら、授業料を全学免除しますから、うちに来てくださいというふうな形だと、おっしゃられたような意味での奨学金授業料免除とは、全然趣旨が違う。一所懸命頑張れば奨学金がもらえて、親に負担をかけないで済むから頑張ろうというような形での奨学金とか、経済的な負担力がないので、法科大学院に入学をあきらめている人たちに、一定の条件を調えれば、入学金も免除するし、授業料も優遇するからぜひ勉強してくださいというのは、非常にいいと思うんですけれども、それとは違う趣旨で運用するのが目立ち過ぎるとちょっとおかしいという問題の提起なんです。ただこれをここに書いたら、そういうことをやっているところがやめますと言うかというと、これも多分すぐにはやめないんだと思いますので、これを書くことによってプラスの効果がそれほど出ないで、逆にマイナスのイメージを全体として持たれる、あるいは奨学金制度の拡充に対して、非常にマイナスに作用するという懸念があるということもありうることは、ご指摘のとおりだと思いますので、処理につきましては特別委員会のご判断にお任せするということにさせていただきます。

【田中座長】
 現実問題としてみんな問題視されていることはわかります。

【鎌田座長】
  事務局として何か、ご見解はございますか。

【浅野専門職大学院室長】
 この点については、前回の特別委員会において、法科大学院のヒアリング結果の概要というのをご紹介させていただいたんですけれども、法科大学院によっては、こういったことをやめさせてくれという要望もあるんですね。そういうような状況を少しでも改善していくためにご検討していただいたのかなと思っております。

【田中座長】
 以前の特別委員会でもそういう意見をおっしゃる委員がおられたので、問題としてあるのは事実のようですね。 

【椎橋委員】
 既修者認定のところですが、、論文を課す科目ですけれども、少なくとも憲法・民法・刑法については、論文を課すべきだとあります。これは、あるべき形としては、7科目課すべきだという、そういう基本的考えとして受けとってよろしいでしょうか。あるいは7科目全部論文を課すと受験生に負担がかかり過ぎるという心配もされたのでしょうか。

【鎌田委員】
  ここは必ずしも、そんなに厳しく詰めてはいないのですけれども、実態として論文を全科目に課しているところと、他方で、論文は全く課していないところがあって、それから先ほどのように3系列にまとめてやるという形もありますけれども、これはそれぞれ教育理念、あるいは適性、既修者認定の試験のあり方としてどうあるべきかという議論が一方であると同時に、かなり短い期間内に多くの法科大学院の入学試験が集中している。そうすると、既修者認定のために2日間拘束することはもうできない。1日で最も効率的に有効な試験を実施するにはどうしたらいいかというさまざまな判断が含まれておりますので、そういう中で最も有効な方法をそれぞれの法科大学院は選んでいらっしゃると考えておりますので、なるべく論文試験をやるべきだというふうなことまでガイドしているわけではありませんが、ただ、他方で択一だけで6科目7科目一気に免除するというのはそれはやっぱり既修者試験のあり方としては妥当ではない。そうだとすれば、法科大学院に入って既修者の認定を受けた後で2年生、3年生で学ぶべきものの基礎になっているところについての法律文書作成能力くらいは備えていてもらわないと、既修者認定の最低のニーズにこたえたことにはならないだろうということで、少なくとも憲法・民法・刑法は論文を課すべきであるとしました。

【木村委員】
  大変細かい点で恐縮なんですけれども、4ページ目の、今の話にもつながりますけれど、どういう科目を課すかということで、括弧内なんですけれども、下から3行目の、履修免除とならない科目についても試験科目に含めることをというふうに書いてあるのは、これは具体的にはどういうことをお考えということでしょうか。

【鎌田委員】
 これは、全く仮定の話でいいますと、例えば1年生に設置されている民法の科目は全部免除します。だけれど、民法の中でも家族法だけは2年でやりますというときに、既修認定試験の民法科目の試験範囲の中に家族法が入ってはいけないということまでは言わないということです。あるいは商法についても、1年生で商法をやっているところもあれば、会社法だけやっているところもあれば、手形小切手法までやっているところがあるときに、その既修者認定試験で手形小切手法まで出しているけれど、おたくは会社法しか免除していないとか、こういうことがのちのちの認証評価の際に問題になってしまうことを避けようということです。既修者認定試験の出題範囲の方が、免除科目よりも広くても、そっちは文句は言いません。逆はやっぱりチェックしていただかないと、何も能力を測定していないのに単位免除するようなことがあってはいけないということが言いたいので、表裏が1対1で固く結びついていなければいけないということを言うつもりではないということを、この表のほうでは系列別の出題でもいいですとしましたし、裏のほうは、既修者認定試験の方が免除科目より範囲が広くてもいいですと、そこまでいちいち硬く考えないで判断できるように、かなり用心深く表裏から、そこは柔軟に考えていますということを表現する趣旨でこういう表現にさせていただきました。

【木村委員】
  ありがとうございました。

【笠井委員】
  先ほど稲田委員から、企業として必要な人材というのと、裁判官・弁護士・検察官で必要な人材、トータルで見るならば、全く差がないという話があって、非常に力強く感じたんですけれども、しかしそうは言っても新司法試験に通るか通らないかということで、実際上はどうも雲泥の差が、結果としてはあるような気がするんですね。ですから、問題としては多様な社会人経験のある優秀な人材を、やっぱり受け入れて、修了させて受からせていくというシステムでないといけないのではないかと思う。それが本来の趣旨ではないかなと思うのです。
  ですから、先ほど井上委員の方から、東大では理系枠があって、それなりの配慮をしているというお話もありましたけれども、どういう配慮をするかというのは難しい問題があるのですけれども、結果としては、入り口もそうですが、出口としても受からせるようにしなければいけない、3年間で。純粋未修者を受からせるようにしなければいかんということだと思うんですね。そこでそういう大きい問題を提起しながらいきなり生々しい具体的な話で申しわけないんですけれども、定員割れを2カ年連続でしている法科大学院があるというようなお話だとか、入学定員の8割を満たしていない法科大学院も結構あるという話なんですけれども、調査としてはそういう定員割れを起こしている法科大学院で、既修者、未修者の割合というのは調査されておられますか。

【浅野専門職大学院室長】
  中間まとめの基礎資料集3ページのところの総括表ですが、既修者コースの括弧の中が前年度ですが、既修者コースが前年に比べると103人減っています。他方、未修者コースが213人減っているということは、それだけ定員の数が急に枠が減って、19年から20年にかけて未修者コースが20人くらい定員数が減っていますけれども、基本的には定員数は変わっていないので、既修者の方も定員割れしているということだと思います。合計欄右の388人が全体の定員割れの数値となります。

【笠井委員】
 具体的なものではないけれども、定員割れを起こすという意味では、とりわけ未修者の社会人入学の人数が減っているということを意味しているということになるのでしょうか。

【浅野専門職大学院室長】
 そういうわけではなくて、既修者も未修者もそれぞれ定員が割れている状態であるということでございます。ただ、定員割れを起こしているのが必ずしも悪いかというと、実は、もしかしたら場合によっては定員を埋めている方が質を下げている場合もありますので、必ずしも実は定員割れの状況というのは、その大学の入学者の質について判断する材料にはならないので、客観的な数値として考えていただきたいと思います。

【井上座長代理】
 厳しく厳正な判定をして、定員割れをするというのは、定員のほうが適切ではないということに恐らくなるのだと思います。そういう意味で、これまでの議論に関係している。とにかく受け入れて合格させないといけないというのはやっぱり志が低いと思うのですね。そうじゃなくて、合格できる程度の能力を身につけさせるということであり、必ずしも司法試験科目だけじゃなくて、いろいろな科目をやっているわけです。司法試験科目に集中しないように、カリキュラム上も履修上限が設けられているわけで、多様な科目をどこもやっていると思うのですが、それらを十分身につけてくれれば、恐らく企業に行っても官庁に行ってもどこに行っても大成できる人材は育つはずです。ただ、試験ですので、一定割合は落ちる人も出てくる。その辺をどうやって手当てしてくかということだと思うのですね。

【松村委員】
 定員割れの点で言いますと、本学の入学定員は60名なんですけれども、初期の頃は定員分を合格させても、入学手続きの途中で、やめますという学生が結構多かったですね。社会人の学生は、そういうのがやっぱり多かったんです。最近は少し違ってきていますが。
  もう1つは、本学の場合は全員面接するのです。面接した上で合否を決めますので、とろうと思えばとれる人もここまでで切るという場合があるんです。例えば成績が物すごくよかった方でも、面接を見て、これはちょっと法曹として教育していく上でどうかなという学生がいて、最終的に不合格になった学生がおります。この方は、他の法科大学院に行かれて、既に司法試験に合格したようですが、それで、質がいいのかという感じがしているのです。

【田中座長】
  競争倍率も問題ですが、なかなか難しい問題があると思います。倍率だけの問題ではないと思うんですね。やっぱり受験者の層が問題だと思います。一律に競争倍率だけで見るということではなくて、実態を見ないといけない。

【鎌田委員】
 それはご指摘のとおりだと思うのですが、競争倍率もこの資料の一番最初のところでは、受験者等と入学者の競争倍率、入学定員の競争倍率じゃなくて、実際何人合格させたかというところで倍率を見ていますので、それで2倍を切っているということです。全員合格すると1倍というふうになるのですが、調査結果を見ていただくと、2倍に達していないところもある。その中には、現在の学部入試のように、難易度のランキングがはっきりしてきたから入学できそうもない人は受けなくなったというケースもあるかもしれませんが、受験者を確保するのに非常に苦労しているだけでなく、その中から定員をはるかに超える数の合格者を出しても、なかなか入学してもらえないという法科大学院もある。そういうところは、結果的に、非常に出口の成績も悪い。競争倍率と最終結果との相関が一定の強さをもって見られるものですから、そうなるとそういうところはもう無理して人を集めても、実績の改善にはつながらないというふうな背景が1点あるということです。それから定員のことで別のことを申し上げさせていただきますと、私どもの法科大学院は創立以来1度も定員を充足したことがないのです。それは、定員を超えるよりは、要するに1クラスの人数を50人以下に抑えるには、定員割れをしていたほうがいい。それに、近時では、第2ワーキングの議論と関係するかもしれませんけれども、入学させたあとの厳格な成績評価と進級認定、修了認定を厳格にしろということで、今年度もうちは1年から2年への進級に際して約50人の留年者が出ていますので、定員いっぱい新入生を入れておいて50人留年されると、1クラスふやす必要がある。ということは教室だけでなくて人件費に物すごいはね返ってくるわけで、そうなるとやっぱり進級認定を厳しくすればするほど、定員割れは起きてくる。それを踏まえて定員管理をしなさいということにつながっていくんだと思いますので、定員割れ自体が直ちにマイナスということではないケースと、本当に入学者の確保に非常に困難を感じているところと二通りあるのだと思います。
  話は少し戻って、稲田委員から提起された問題で言いますと、司法試験にやっぱり合格させなければいけないという課題を法科大学院は抱えているからという話もありましたし、司法試験の合格率が低いという指摘がありますけれども、旧試験と比べると10倍以上通りやすくなっている。全体の合格者数も非常に増えているということで、2年または3年で司法試験で合格しなければいけない、その期間中に受験生の勉強する範囲とか活動の範囲が非常に広がってきているのですが、私どもの法科大学院でも、3年間で留年せずに修了するんだけれども、その間にアメリカに1年行って、ちゃんと弁護士資格を取るという人が毎年複数名出ていますので、そういうのは従来司法試験との関係では、勉強中にそんなことをやっているなんていうことは想像もできなかったんでしょうけれど、そういう人もどんどん司法試験に合格できるような制度となってきていますので、従来よりも多様な人材が法曹に育ってきているということは間違いないと思います。ただし、下のほうにはやはり従来と同じで、どんな手を使ってでもいいから試験に通ろうということだけを必死になって考えている人たちも、一定数いることは避けられないので、全員が均質ではないですが、その中で非常に柔軟な発想を持っている優れた人がやっぱり増えてきているというのが、法科大学院の一つの成果であると思います。

【稲田委員】
  これだけ皆さんご熱心に質の問題をご議論されている、問題意識を持ってやっておられるというと、かなり直観的なところでものを言っているのですけれども、適性試験の下から15%というのは、法曹というのは知的な職業であるというのは間違いないので、いかにも低過ぎないだろうかと。あと、適性試験の成績というか計る能力と、法曹として能力は別だというお話もありましたけれど、これは皆さんのご専門なんですけれど、私の感覚で言うと、法曹としての能力というのは別にロジカルにものを考えるとか、そういった基礎的な、理論的にものを考える、公平にものを見るといったことの延長にあるものだとすれば、本当は相関関係があるべきじゃないかなというふうに思っております。そういう中で、この15%というのは、いろいろな事情でやむを得ないのかもしれませんけれども、将来的にはもっと上げていくということが必要なんではないかなと思います。入り口で余り緩くしてしまって、将来的に合格しそうにない、あるいは合格したとしても現実に活躍する場面が限られているという人を入り口でとってしまうということはいかがなものかなという気がします。

【鎌田委員】
 そのこともごもっともではあるのですけれども、最低基準というあたり、これもある意味でいうと最低基準点を下回るような人をそれだけでアウトというわけでもなく、第三者評価の判断基準を提供しているだけではあるんですけれども、例えば既修者として入るときに、法律の試験を課し、法律試験は非常によくできたしても、適性試験の成績が低いときには、絶対入れてはいけないというような考え方をとり入れるのかという問題。それから未修者の人たちを選ぶときには、判断の材料が余り多くないですから、かなり適性試験にかけられる割合は大きくなると思うんですけれども、私どもの経験で申しましても、社会人の人たちは適性試験の点が余りよくない。とすると、その適性試験の点は少し低いけれどもほかの点を全部加味して総合判断で引き上げるとか、それから外国でずっと活動していて、帰ってきて受験するという人も余り適性試験の点がよくなかったりする。今、外国からの出願者も増えて、入学者も出てきているような状況になりますと、総合判断をして多様な人材を確保したいというときに、形式基準での線引きを余り厳しくしてしまうと、総合評価では何とかしてやりたいのに、ここの形式基準に引っかかって後で認証評価で不適合と言われたくないという作用は働かせたくない。しかし全体としての統一適性試験を無視してまでやってもいいんだという雰囲気をやっぱり是正するというようなところから、まずこの辺から始めてみようというところで、今、このやや低い線を原案としてご提案させていただいているということです。

【有信委員】 
 いろいろ議論を伺っていて、結局、質を確保するためにその入り口で管理するか、出口で管理するか、あるいはトータルにしてもどういうふうに評価するかと、こういう問題になると思うんですね。結局、入り口の管理を厳しくすれば、乱暴な言い方をしてしまえば、いい材料を使ってものをつくればいいものができるのは当たり前だと、こういう話になってしまうわけで、その入り口管理と出口管理の関係の中でその機能が正常に働いていれば、その教育システムの質はある程度確保できる。その確保できた質の中で教育された人の質がどういうふうに確保されてくるかについて言うと、結局、そこを出た人たちが、例えば司法試験に受かるか受からないか、受からないとすると、その原因が教育のシステムにあるという判断をするのであれば、それを教育システムの中にフィードバックする。例えば司法試験だけを基準にするということではないと思うんですけれども、こういう人たちを育てる教育システムが有効に機能していなければ、当然育たない。
 有効に機能していることをきちんと確保するためには、少なくとも、何でもいい人たちが入ってきたら、そのシステムが動いているかどうかもわからない。したがって、最低限のところはきちんと決めないといけない。だけど、出るところはそれとは関係なく、きちんと決めた目標を達成して出なければいけない。その結果の一部は司法試験の中である程度試される。こういう仕組みの中で、入り口の管理をやるという考え方がいいんではないかという気がしました。

【田中座長】
 予定された時間が来たのですけれども、今日、ご意見をいただいたので、私のほうで、鎌田委員とも相談しながら、修正させていただいたものをご検討いただくということになると思います。次回は第2ワーキング・グループより、その検討結果を報告いただき、審議を行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。事務局から、今後の日程などについてご説明をお願いします。

【浅野専門職大学院室長】
 次回のこの委員会は4月3日金曜日の14時から16時でございます。よろしくお願いいたします。

【田中座長】
 それでは、本日の議事はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

 

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