法科大学院特別委員会(第25回) 議事要旨

1.日時

平成20年12月5日(金曜日) 18時15分~19時45分

2.場所

文部科学省 東館3F 2特別会議室

3.議題

  1. 法科大学院教育の改善に関するヒアリングの実施について
  2. その他

4.出席者

委員

臨時委員)田中委員(座長)、木村委員(座長代理)
専門委員)磯村委員、井上委員、小幡委員、小山委員、鎌田委員、川端委員、川村委員、小島委員、瀬戸委員、中谷委員、永田委員、林委員、諸石委員、山中委員

文部科学省

久保高等教育局審議官、藤原専門教育課長、浅野専門職大学院室長、神田専門教育課課長補佐

5.議事要旨

事務局より法科大学院教育の改善に関するヒアリングの実施について説明が行われた後、意見交換が行われた。

【委員】
 資料2の(1)の1の下から3行目に「合格率の向上」とあるが、「司法試験合格率の向上」と書くべき。また、2番目の適性試験については、相関関係が高くなく、適性試験の低い点数の者を入学させざるを得ないという趣旨か。

【事務局】
 そのような趣旨である。競争倍率が低いところほど適性試験が低い人が入らざるを得ない状況だが、そのような法科大学院は、このヒアリングの中では、相関関係が高くないと回答している。

【委員】
 適性試験の点数が低い人こそ、入って成績がいいとか、司法試験に受かっているということはあるのか。

【事務局】
 例えば適性試験の点数が40点を切っているような方でも司法試験に合格した例があるという回答もある。

【委員】
 入学定員削減について具体的な検討を行うという数が意外に多いと思うが、これは、いつまでに検討し、いつ結論を出すのか。

【事務局】
 その点については、具体的な言及はなかった。

【委員】
 この委員会で、検討するならば早く検討して、いつまでに結論は出すべきであるなどといったコメントをすることはできるのか。

【委員】
 ヒアリングの結果を見て、中間まとめを修正することはあり得るだろう。要するに、最終的にまとめる際には、各法科大学院に対して、なるべく早く対応するようにという方向でお願いする必要があるということだろう。

【事務局】
 大学によって、検討すると言っているところや、平成22年度に向けて検討していると言っているところ、それから全体が動けば動けるように検討すると言っているところもあり、さまざまな状況である。

【委員】
 少なくとも平成22年度に結論を出すのでは不十分であるため、もっと早く検討して結論を出すように指導をするということをここで議論することはできないのか。

【委員】
 他の法科大学院はどう対応するかという様子見が多い。平成20年度に入学定員削減案を、できるだけ早く検討するべきであるということは、特別委員会の場でまとめられると思う。

【委員】
 平成22年度から入学定員の削減を目指すとすると相当早く結論を出して着手する必要がある。国立大学は概算要求の時期が決まっているから、あまり時間はない。私立大学は、経営本部と交渉しないといけないので、かなり前倒しで検討する必要がある。

【委員】
 そのうちに減らす方向というだけでは不十分であるため、早く検討して入学定員削減の結論を出すように促すことが必要ではないか。

【委員】
 入試要項の発表時期は早いので、実際は随分早い時期で決断をするところが出てくるのではないか。そういう意味では、それほど悠長に構えている事態ではないというのは多くの法科大学院でも認識していると思う。

【委員】
 入学定員の削減を検討する理由は、1つは母数になる学生数を減らさないと、入学者選抜の競争倍率が上がらないと同時に、司法試験の合格率が上がらない。そのために、それぞれの法科大学院が入学定員の削減を検討する必要がある。これだと、おつき合いの論理もある。本来はそういう観点で入学定員の問題を考えるべきではないと、個人的には思っている。やはり、教育の質とか教育の内容の向上のための構想の1つとして考えるべき。設置から5年経とうとしているときに、自分たちの教員体制や学生の実状・実態を踏まえて、単に司法試験の合格率を上げるということだけではなく、より教育の内容を充実させ教育効果を上げていくために、最初に構想とした入学定員が、本当に自分たちの法科大学院にとって適正なのかどうかという観点で入学定員を削減するという結論を出すべき。私は少なくともそういう考え方を持っており、それで臨みたい。ただ、私の大学がそこまで議論を行っているかどうかは、今この段階では申し上げられないが、多分そういう方向で皆さん考えているのではないかと思う。

【委員】
 今の意見は非常にもっともだが、今お見合いをしているという状況があり、根本問題として司法試験の合格率がこのままではさらに毎年低下していく。それを急いで入学定員を見直しても、入学定員を減らした結果が出てくるのはさらに先になり、その間に法科大学院に2年ないし3年、高額の授業料を払って学んでもしょうがないという評価が定着してしまった場合のことを恐れる必要もあると思う。そうなると、それぞれの大学がきちんと自己評価をして、各法科大学院の入学定員の削減を待っているだけでは、効果のある施策はとれないのではないかという心配をせざるを得ない。お見合い的な状況を解消するためには、どこかが音頭をとって、やはり全体の入学定員について相当具体的な提言をするということも考えてもいいのではないかと思う。 

【委員】
 仮にそうしたとしても実現は2年後ぐらいになるので、早くそれぞれの法科大学院が結論を出す姿勢を示すことができるよう、そのような提言等を行うことは必要であり、その限りでは賛成である。

【委員】
 司法試験と合格者数等の甘い見通しから、各法科大学院が自分たちの教育能力を超えたサイズとレベルのアクション形成ということが各法科大学院の教育のやりにくさの原因でもある。横を見るよりも自分のところの教育能力を踏まえて、入学者を選ぶレベルを再度見直していくというのがベースだろうと思う。たくさんの修了生を出せば合格するだろうというような問題のある大学に対し、悪貨が良貨を駆逐するといった現象でバッシングが出てきたというのが現在の構図ではないかと思う。

【委員】
 能力が足りないと皆が思っているけれども、自分だけそう思わないというところをどうするのか。これくらいに減らさなきゃ無理じゃないかという指導・助言をする機関がないだろうか。

【委員】
 我々が直面している問題は、合格率が年々低下していって、制度全体としてのミスマッチが大きくなっているということである。そうすると、これから良質の受験生が法科大学院を受けようとしない。そうした状況のもとで司法試験合格者を出すとなると、それは社会全体としては非常にロスが大きい。それに対して、制度としてどういう仕組みを考えるかということが、今の問題の重要な点である。でも、同時に、今の仕組みで考えていって、応答できないもう一つの枠組みがあるということも同時に踏まえて、例えば当面の合格率を上げるという一つの目標、これは共有されていると思う。同時に、法科大学院制度が日本の独自の制度として社会に定着して、社会にとって優良な機能を果たし得るためにはどういうことをしなければならないかということも、当面の措置だけではなくて、重層的に対処しなければならない責任を我々は持っている。
 当面の逆風の中で、苦しいながらも入学定員の削減という一定の措置を講じざるを得ないと思う。同時に、こういう枠組みの中で何が失われていくのかということも考えておいて、それに対しての中期的な視野に立った対応をしなければならない。例えば、本当の未修者3年制というものが制度の理念だったら、それが果たして育っていくのか。どんどん質が低下していくのではないだろうか。それに対して何も対応しなければ、法務省も文部科学省も、責任としてはやや足りない。この場でも同時に考えなければならない。これは歴史的な審判を後に我々は受けることになると思う。今、本当の純粋未修者という者をどうやって一定数受け入れて育てていくかというのは、質を上げるための絶対的な要件。また、国際競争の中で、法曹世界でもアメリカやイギリスの法曹がほとんどのところ、要衝を今握ってきている。日本の法曹も中国、アメリカへ進出し、互角に戦っていくことが絶対の必要事項だが、ほとんど惨憺たる状態になっている。だから、早くから外国法などをきちっとやっていくなど、国際的に通用性のある法曹を育てるにはどうしたらいいかということを同時に考えないといけない。

【委員】
  文部科学省が行ったヒアリングに法務省の担当職員も同席したと伺っているが、頑張っているところもあるけれども、やはり問題のあるところもあって、また入学定員削減についても様子見のところも相当あるということを聞いている。法科大学院制度は重要な制度であるというメッセージを強く出していく必要がある。また、今、司法試験委員会の予備試験の制度設計も検討中だが、やはりこれも法科大学院の修了者と同等の学識等を判定する試験となっているので、結局は法科大学院の修了者の質というものがしっかりしているところは、予備試験等にもはね返ってくるので、そういう点も考慮が必要かと思っている。やはり当面のものとしては、座長からでも、問題が多かった法科大学院に対しては、何らかのメッセージなどで促す発言をしていただく必要があると思う。

【委員】
  本特別委員会では法科大学院の教育の質の向上をメインにした改善を考えており、制度的なミスマッチという話を必ずしもここで検討しているわけではない。法科大学院制度をつくるときに想定していたようなレベルの教育が行われて、そういったレベルの学生を生み出しているかどうかということについては、相当数の法科大学院においては制度的な理想に沿って教育が行われていて、法曹界には今まで目も向けなかった学生が法曹界に来るようになったという意味では、法科大学院が法曹に適した優れた人材を受け入れ、法曹界に送り込む中心的な機関として機能しているということは間違いないと思う。ただ、制度的な理想に沿ってきちんとした教育が行われているか、成績が厳格に評価されているかという観点から見ると、やはり問題があった。本来良い方向に進んでいる制度もおかしくなってしまったということにならないように、何とかして早急に解消するため、この中間まとめを踏まえて文部科学省のヒアリングが行われたのも、そういう趣旨だと思う。

【委員】
 法科大学院の立場として、率先して最初に入学定員を減らしますというのは出しにくい。だから、現実は打開しようということはあるけれども、どうやっていったらいいのかと検討しているのではないか。ヒアリングで、入学定員を減らすというよりも、ある意味で柔軟な対応を検討されている事例はあるか。

【事務局】
 今までも入学定員が割れていた法科大学院があるので、そういう法科大学院については適正な入学定員にするというところもあった。合格者を少なく取るというような法科大学院は特にはなく、むしろきちっと入学定員を見直すという答えの方が多かった。

【委員】
 入学定員を減らし教員数は現状のまま維持した場合に、教員数について学内の手当てをするとか、あるいは大学経営側からすると、入学定員を減らしたら教員も減らせという話になるから、そういうことにはならない手当てを考えるとか、入学定員を削減することが即教育力の低下にもつながっていくことにならない方策も考える余地がある。

【委員】
 その点については全く同感で、現実問題として、そういうことを心配しているところもあると聞いている。それにつけ加えて、ある年とかその次の年ぐらいはこのぐらいの人数なら十分教育できると思っていても、教員が目いっぱい活動すると、いずれ疲弊してきて教員の教育力が落ちていく。研究者は研究時間でも非常に切り刻まれて、もう目いっぱい教育をしており、このままでは続かないと思う。そうすると教育の質がだんだん落ちてくるという話になるので、入学定員を減らしても教員を減らせば同じ状況が続く。そういう点も含めて、自分たちが教えられる適正な学生の数はどれくらいかを考えてみようという話はしている。そういう観点から、適正サイズというのは自ずと出てくると思っているので、他がどうであろうと、結論が出れば、うちはこうしますと言うべきだろうと思うし、言ってくれるのではないかと思っている。

【委員】
 大規模の大学と、中間まとめで指摘したような問題のある大学と、それ以外の大学とでは、事情は違う。だから、あまり画一的にするのではなく、自分たちの教育環境を良くするために適正な規模、適正なレベルの学生ということがまずベースになっていくと思う。それと中間まとめで具体的に指摘したような問題点があるところは、もっと客観的に見てきちんと見直してもらい、それ以外のところは広い視点から考えて見直していくということだと思う。

【委員】
  全てを教えようということを目指したら、なかなか2年ないし3年でやっていけないという現実もあって、何を最   も重要なものとして考えるかということになってくる。その設定の仕方いかんによっては、法科大学院の教員に非常に過度な重圧がかかって、研究の時間もなく、数年以上は続けられないからやめさせてほしいというようなことになりつつある。その際に、多くの方が指摘されることは、一つは考える力を中心にして、余り従来のようにオールラウンドの知識を記憶力で獲得していくことは抑制していいのではないかという話だったが、現実には新司法試験において択一式試験が存在して、しかもそれが現実に必須科目の全域に渡って行われている。そして、それが総合評価されるということで、未修者を中心にして考えた場合にハードルになって、教員もそれに対応しなければならないところから大変になっている。短答式試験はなぜやるのかということは、法曹の質的なものとして必要だというとらえ方で、現在の制度では説明されているが、現実には2段階選抜の要素が非常に大きい。そこを少し抑えていかないと、新司法試験の持つ重圧というものを、ある意味では非常に高めるという危険は、制度的に存在するのではないか。これは多くの人の現場の意見だと思う。

【委員】
   資料2の(2)の1では、多くの法科大学院で到達目標は設定しているが全国的にスタンダード化するというニュアンスになっているが、これは、各法科大学院で今到達目標と言っている内容と全然違うので、抽象的には設定されているけれども、というようなニュアンスを示すよう表現を工夫したほうが誤解を生じないと思う。

【委員】
  今、世間で司法試験の合格者の数を抑えようというような論調があるような気がする。司法試験委員会でも、今年は何人とるというようなことは、試験を見て合格にふさわしい答案があった数だけとると言ってもらえれば両方からの批判を解消できるのではないかと思う。

【委員】
  本来、資格試験という、要するに一定の成績のある者を合格させるのが本来の司法試験ということは言っている。

【委員】
   今、3,000人という目標値を出して、審議会の意見書を踏まえて、それに向けて段階的、計画的に増やしていく。まだ途中なので、それをどうやって増やしていくかという計画は司法試験委員会で既にある程度まで出されており、それに従ってやっている。それと世間の一部の批判はどういうふうに結ぶのかはよくわからないが、その批判については既に座長から発言をした。

【委員】
  3,000人という話にしても、法科大学院の今の入学定員は5,800人あるわけで、合格者を3,000人送り出せないということは法科大学院の教育の質に何%か問題があるということは否定できないと思う。だから、合格者3,000人を送り出せないという理由として、法科大学院の質に対してあちこち批判をしている人もいる。
  それでは、中間まとめに従って文部科学省がヒアリングを行ったが、法科大学院の質の向上のための改善を行うという点から、文部科学省がヒアリングを再度やるときに留意していただきたいことを私見としてまとめる。
  ヒアリングの結果報告によると入学者選抜の競争性の確保という点、厳格な成績評価・修了認定の実施、それから、入学定員の見直し、質の高い教員確保が課題となっている法科大学院の意見もあったということが判明しており、そういったことは早急に改善を図る必要がある。ただ、厳格な成績評価・修了認定については、やはり各大学とも問題を認識して取り組んでいるようである。
  やはり問題になるのは入学定員の見直しだが、特に中間まとめで指摘したように、質の高い教員の数の確保が難しい、あるいは入学者の質の確保が難しい、それから、修了者の多くは司法試験に合格していないという状況が続いている状況にある法科大学院については、平成22年度を目途とし、できるだけ早く抜本的な入学定員のあり方の見直しの取組に向かいつつあるのではないかと考えている 。
  また、それにあわせて、具体的に中間まとめで特に指摘したような深刻な問題点がない大学でも、教育体制や入学者の質をより良くするという観点から、自分たちの教育力に見合ったレベル・サイズの学生数となるように入学定員の見直しに取り組むことが求められる。いろいろな教育改善をする方策があるが、やはり入学定員の適正化が重要な前提条件であると思う。全体をどう見直しするかについては、当初から指摘されているように、全国的な適正配置の問題が深刻になってきていることが伺えるので、いろいろな検討をしていかなければいけないと思う。
  各法科大学院に対しては、自分たちの教育現場をきちんと点検し、教育の改善の処置を早急に進めていただくよう、今日のこの特別委員会の議論を踏まえた上で、そういう趣旨をしっかり踏まえてしかるべく対応してほしい。
  その際、やはり制度としては認証評価で指摘されている事項なども踏まえて対応をしてもらいたいと思うが、やみくもに減らすのではなくて、円滑に減らしやすいような条件を整理して、それによって本当に教育の環境が改善・向上するという具体的な処置を検討していただきたいし、こういう方策も考えたらどうかということは冊子などにまとめたらどうかと思う。多くの大学はやっぱり減らさないとうまくいかないと認識していると思うので、それを円滑に支援・促進するような形でヒアリングを今後ぜひやっていきたいと思う。

【事務局】
   ただいま座長から総括的なお話をいただき、今日の審議会のご意見をしっかり受けとめ、文部科学省としてしっかりと、各法科大学院に対し早急な改善策をさらに求めてきたいと思っている。

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高等教育局専門教育課専門職大学院室

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