戻る


参考資料1




平成13年11月15日国立大学長懇談会配布資料
  平成13年11月
  文部科学省高等教育局
   
大   学   (国   立   大   学)   の   構   造   改   革   の   方   針   に   つ   い   て
 
1 方針の策定に至る経緯、方針の趣旨・ねらい
 
1.大学改革の推進
   
     大学改革なくして21世紀の日本の発展はないと言っても過言ではない。
   
     これまで、大学改革については、昭和62年に発足した大学審議会の答申等を受け、教育研究の高度化、高等教育の個性化、組織運営の活性化の旗印の下に、諸制度の大綱化、弾力化等が図られ、各大学においては、これらを踏まえて、改革に向けた種々の取組を行ってきた。

  このような各大学における自主的な努力により改革が着実に進められ、文部科学省としても、大学の努力を積極的に支援してきたところであり、今後ともその基本的姿勢は変わらない。
   
     なお、教育や研究等の一層の向上のためには、引き続き不断の努力が必要とされている。
 
 
2.方針策定の経緯
   
     「知の時代(Knowledge-based Society)」とも言われる21世紀に入り、人材大国・科学技術創造立国を目指す我が国にとって、「知の創造と継承」を行う大学の役割は極めて重要である。
   
     また、社会が大きく急速に変化している時代には、大学も旧来と同じ手法では、対応困難であり、新しい時代に、国民の期待に応え、「知の再構築」を図っていくことも、大学の責務である。
   
     特に、国費によって運営される国立大学は、これまでも学術研究、人材育成、地域への貢献等の各面で我が国の発展に寄与してきたが、他方、国立大学の在り方に関し、各界からも種々の問題提起がなされるなど、必ずしもタックスペイヤーたる国民の期待に十分に応えきれていない状況もある。
   
     また、国立大学の法人化の検討も進む中で、引き続き国立の大学として国民の支持を得て国費の投入を受け、その使命を果たすためには、最先端の研究推進や優れた人材育成等の上での我が国の大学全体の牽引役としての矜持を持ちつつ、より一層の改革に努めることが必要である。
   
     国政全般にわたり聖域なき構造改革の断行が求められている中で、本年6月に、経済財政諮問会議において「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(いわゆる「骨太の方針」)が取りまとめられるに当たり、これからの大学(国立大学)改革の基本的な方向を提示したものが、「大学(国立大学)の構造改革の方針」である。
   
   
3.方針の趣旨
   
     この方針は、「大学の構造改革なくして日本の発展と再生はない」との認識の下、これまでの大学改革の流れをさらに加速し、我が国の大学、中でも多額の国費で支えられている国立大学が、その課せられている重要な役割を果たすため、それぞれの特徴を生かしつつ、教育や研究等の上で、より一層活力に富み、国際競争力のあるものになることを願ってのものである。
   
     高等教育に係る公財政支出の充実を図る上でも、各大学の一層の努力と国民各層の幅広い支持が必要なところであり、これまでの大学審議会等での議論の積み重ねを十分踏まえつつ、これからの大学改革の方向について、広く各方面の理解を得べく策定したものである。
   
     なお、方針の3施策のみが大学改革の全てではなく、これまで真摯に取り組まれてきた諸改革についての継続的な努力のほか、教育研究基盤の整備や教育機能の充実、国際化への取組、学生への支援など、他の多様な課題への取組も必要であることは言うまでもない。
 
 
2 国立大学の再編・統合についての基本的考え方
   
1.再編・統合を推進する理由
   
     我が国が人材大国・科学技術創造立国を目指す上で、国立大学が国際競争力のある大学として、一層活性化していくことは重要な課題である。
   
     各国立大学は、戦後、その時々の必要性にも応じて整備され、これまでそれぞれの理念、目標や伝統の下に、学術研究・人材育成、地域への貢献等の各面で我が国の発展に寄与してきた。
   
     しかし、「競争的環境の中で個性輝く大学」として、教育や研究等をさらに発展させ、より大きな役割を果たすためには、新しい世紀において我が国の活力の源泉たる「知の拠点」としての自覚の下に、より広い視野と長期的展望に立って、教育研究基盤を整備して足腰を強化したり、教育研究分野の厚みや広がり、特色の強化を図ることが必要である。
   
     また、国立大学の法人化を控え、全学的視点で資源を最大限に活用した戦略的な経営を進める上で、ある程度のスケールメリットを確保することも有効であろう。
   
     このため、これまでの経緯にとらわれず、将来の発展を見通した再編・統合を大胆に検討することが必要とされている。
   
     国立大学の再編・統合は、大学の数の削減自体を目的とするものではなく、従来の各大学の枠内では不可能であったような教育や研究等の抜本的な改革・発展と、それらを通じた社会への積極的な貢献を目指し、国民からの支持を確保しつつ、国立大学全体の再生と新たな飛躍を期するものである。
   
 
2.再編・統合を検討する際の視点の例
   
     上記1の考え方に基づき、各大学で再編・統合を検討する際には、どのような教育上、研究上等のメリットがあるのかということが重要であり、その視点の例としては、たとえば次のようなものが考えられる。
   
    1 教育研究体制の充実強化
     ○ 再編・統合により、各大学の機能を相互に補完・充実したり、新たな可能性の創出を目指す視点
      ・教養教育等、教育面の充実のためのカリキュラムの抜本的な見直しと、そのための体制整備
      ・学術研究分野の深化や再構成、新分野の開拓等、研究推進体  制の強化 等
     ○ 計画的な人材養成(教員養成等)への対応、高度専門職業人 の養成など、社会的要請に対応し得る優れた人材の養成機能を 強化する視点
 
    2 地域貢献、社会貢献の機能強化
     大学が知的文化拠点として、地域及び社会の発展に貢献する機能を充実強化する視点
      ・地域の人材養成や発展への貢献
      ・産業界との連携・協力の推進
      ・社会人のキャリアアップ 等
 
    3 経営基盤の強化
      国立大学の法人化等をにらみ、組織としてのスケールメリット を確保して経営基盤を強化する視点
      ・各大学の有する人的・物的資源の有効活用や戦略的再編成
      ・共通の教育研究組織や事務部門の簡素・合理化 等
   
3.再編・統合の検討の方向
   
(1) 個性と特色ある大学づくり
   
     2の13で例示したメリットのすべての充足を一律に追求したり、いたずらに総合大学化を目指すのではなく、それぞれの大学の特徴や地域の事情等に応じて、個性と特色ある大学づくりのため、多様な可能性を検討することが重要と考えている。
   
(2) 再編・統合の形態
   
     地理的な近接性も考慮すべき要素の一つではあるが、教育上、研究上等のメリットがある場合には、県域を越えた再編・統合も大胆に検討すべきであろう。
   
     また、大学単位の統合のみならず、例えば、大学間における学部レベルの機能分担の観点からの再編・統合、さらには公私立大学を含む近隣の大学間の役割分担や連携協力の強化、可能かつ適切な場合の地方移管等の検討も必要である。
   
(3) 教員養成系大学・学部
   
     教員養成系大学・学部の在り方については、有識者による懇談会の報告書がまとまりつつある(平成13年11月(予定))。そこでは、活力ある大学・学部を実現し、新たな教育課題に積極的に対応するとともに特色ある教育や研究等を推進するため、近隣の複数の都道府県を単位として、教員養成大学・学部を再編・統合することが必要であるとしており、この報告を踏まえた真剣かつ早急な対応が必要である。
   
(4) 国立大学にとって実りある再編・統合
   
     これらを通じ、教育や研究等の豊富化・高度化、新たな学問領域への展開、人材の流動化、資源の重点的投資等を可能にする、国立大学にとって実りある再編・統合を志向することが重要である。
   
4.再編・統合の今後の進め方
   
(1) 再編・統合の進め方の基本認識
   
     再編・統合の目的が各大学の教育や研究等の発展と基盤強化にあることから、まず各国立大学において、各々の将来の発展という視点から、また、更なる活性化の好機として、幅広く検討がなされることが肝要である。
   
     文部科学省としては、これまでと同様、各大学における検討を尊重しつつ、積極的に支援や助言を行っていく考えであり、その意味で、国立大学の再編・統合は、文部科学省と各国立大学のいわば「共同作業」によりつくりあげるものと言えよう。
   
(2) 今後のスケジュール
   
     今後、各大学において、この「基本的考え方」も参考に、再編・統合について更に検討が深められることを期待したい。
   
     平成14年度中を目途として、各大学における検討状況を踏まえ、全体的な再編・統合の計画取りまとめを予定している。
   
     なお、国立大学の再編・統合は、既に概算要求したり、統合に合意した大学が見られるように、一律にではなく、諸準備の整ったものから、段階的に、かつ、速やかに推進していくこととなるものである。
 
 
3 国立大学の法人化
   
1.法人化の意義
   
        国立大学の法人化は、昭和46年の中教審答申以来の検討課題であった。しかし当時は気運も盛り上がらず、むしろ現行制度下で最大限の改善措置を講じる方向で、これまで大学審議会の答申等を踏まえた大学改革が推進されており、それなりの大きな成果を挙げてきている。
   
     他方、欧米諸国では国立大学・州立大学を含め大学には法人格が付与されているのが一般的であるのに対し、我が国の国立大学が依然として国の行政組織の一部として位置付けられ、独立した法人格がないことから、現行設置形態の下での改革には限界がある。
   
     ○ 文部科学大臣の広範な指揮監督の下に置かれ、大学自らの権限と責任において運営に当たることに自ずから限界
 
     ○ 予算、組織、人事等の面で、国の行政組織としての様々な規制が残るため、教育研究の柔軟な展開に制約 など
   
     今日、学術研究の推進や高度の人材育成、さらには社会経済の活性化等の各側面で、国立大学への期待と関心はかつてないほど大きくなっている。
   
     こうした状況の中で、大学運営上の自律性を拡大し、それぞれの創意工夫による「個性輝く大学づくり」や世界最高水準の教育研究の展開のためには、各国立大学が独立した法人格を持つことは大きな意義がある。
   
     このため、独立行政法人制度が発足したのを好機として、国立大学にふさわしい制度設計の検討を進めてきたところである。
   
2.法人化の検討の観点
   
     国立大学の法人化は、大学の自律性を拡大し、優れた教育や研究の展開という国立大学の本来の機能を充実するためのものでなければならず、その制度設計に当たっては、予算、組織、人事などの諸規制が大幅に緩和され、自己努力が報いられるという法人化のメリットを最大限に活用して大学改革を促進する、との観点が重要である。
     先般公表された「調査検討会議」からの中間報告(平成13年9月27日)でも、同様の観点からの検討が行われ、
    1 各種権限の明確化をはじめ「民間的発想」のマネジメント手法の導入による戦略的大学運営の実現
     2 役員等への「学外者の参画」による運営システムの改善
     3 任期制・公募制の積極的導入など「能力主義」に立った人事の実現
     4 「第三者評価」の導入による事後チェック方式への移行
     などの方向で具体的な制度の在り方が示され、新しい「国立大学法人」への移行を提言している。
     なお、管理運営組織の在り方や教職員の身分取扱等については、今後さらに検討を深めることとされているところである。
     提言された「国立大学法人」と既存の独立行政法人との主な相違点は、
     1 役員への招聘等も含め「学外者の運営参画」を制度化
     2 客観的で信頼性の高い「独自の評価システム」を導入
     3 学長任命や目標設定で「大学の特性・自主性」を考慮の諸点である。
     今後、各界からのパブリック・コメントを受けた「調査検討会議」としての最終報告を待って、「国立大学法人法」(仮称)を制定し、できるだけ早期の新しい法人制度への移行を目指していきたい。
   
 
4 第三者評価による競争原理の導入
 
1.競争的環境の醸成
     21世紀において、我が国の大学が、世界のトップレベルの大学と伍して、教育及び研究の水準向上や活性化、世界をリードする創造的人材の育成をしていくためには、競争的環境を一層醸成し、国公私を通じた大学間の競い合いがより活発に行われることが重要である。
   
     このため、第三者評価による競争原理により、世界的水準の教育及び研究を展開し得る大学を重点的に支援していくことが必要と考えている。
   
     この一環として、国公私を通じた競争的環境の下で、活力に富み、国際競争力のある大学づくりを支援するため、平成14年度から、「世界最高水準の大学づくりプログラム」(いわゆる「国公私トップ30」)の実施を予定している(211億円を新規概算要求中)。
     なお、優れた学術研究を推進するための競争的研究資金としては、これまでも、また今後とも、科学研究費補助金がその中心との認識は言うまでもない。
 
2.第三者評価による重点的支援措置のねらい
 
   主として研究上のポテンシャルの高い大学の教育研究組織に対する重点的支援を企図している。科学研究費補助金のような個人やグループに対する研究助成に比べ、高度な人材育成機能も加味した組織面への支援を目指すものである。
   
     「トップ30」との字句は、重点性を表明したもので、30という数字はあくまでもシンボリックな意味合いのものである。したがって、あらかじめ大学を選んだり、大学のランク付けを行うものではなく、申請に基づき、いわばピアレビューによる審査結果により、大学内の教育研究組織等を支援することとし、しかも、選定の結果は固定化せず、その後の評価に応じて変動し得る仕組みを予定している。
   
     各大学の個性や特色の明確化が図られ、国公私を通じた競い合いにより、我が国の大学全体の水準向上や活性化につながることも期待している。
   
     なお、大学改革には他にも様々な課題があり、教養教育の重視や地域への貢献など、各大学の「個性輝く大学づくり」の努力については、別途、各種の支援措置を講ずるとともに、研究面への他の支援措置等についても、充実に努力していきたい。
 
3.仕組みの概要等
   
     選定の仕組みの在り方については、中央教育審議会大学分科会及び科学技術・学術審議会学術分科会の委員から成る大学改革連絡会で検討中であり、予算の査定状況等に応じて変更もあり得るところである。
   
     ただ基本的には、学問分野別に、大学院博士課程レベルの組織を対象に、大学からの申請を受け、審査の結果、選定された優れた組織に、一定の支援経費を5年間程度継続的に配分することを予定している。
   
     審査は、文部科学省自身が行うのではなく、科学研究費補助金の審査方式に準じて、専門家・有識者等により、教育研究活動実績や今後の発展の可能性等について、客観的で公平・公正な第三者評価を実施することを考えている。なお、我が国における大学についての第三者評価システムの育成・定着状況により、審査機関の位置付け等については、今後さらに検討していきたい。


ページの先頭へ