資料4-1 学位論文の「公表」に係る法令上の取扱いについて

【概要】

  • 学位論文は、大学院において学生の課程の修了認定に際し審査対象となる論文であるが、著作物であることから、その公表にあたっては、原則として、作成者の許諾が必要である。

 学位論文のうち博士論文については、学位規則(昭和28年文部省令第8号)により、大学による「公表」と作成者による「印刷公表」が義務付けられている。

  大学による「公表」については、博士論文内容の要旨と論文審査結果の要旨のみ公表(学位規則第8条)。

  作成者による「印刷公表」については、本文を印刷公表(学位規則第9条)。

  • 作成者による「印刷公表」とは、「単行の書籍又は学術雑誌等の公刊物に登載すること」を意味することとされている(昭和28年大学学術局長通知)。(ここで、「印刷公表」とは、インターネット等での電子的公表だけでは足りず、印刷が義務付けられているという解釈により運用を行っている。)

【国立国会図書館における保管、公表】

  • 博士論文については、昭和49年までは学位規則により文部省に送付することとされており、これらの博士論文については、文部省から国立国会図書館に送付していたところ、学位授与数の増加等に伴い、文部省への送付を不要とした。その後、昭和50年、国立国会図書館の求めにより、各大学から国立国会図書館に送付、保管することとされた(昭和50年大学局長通知)。

【「印刷公表」の状況について】

  • 実態としては、学位授与大学の図書館等において保管・閲覧させるほか、国会図書館での保管・閲覧をもって、「印刷公表」としている例が多い。
  • 国立国会図書館の蔵書に占める学位論文の割合は1.5%である一方、来館閲覧の全申込数の6%が学位論文の閲覧という高い需要がある。
  • 各大学においては、それぞれの学術機関リポジトリ等において、博士論文を公開している場合もあるが、その公開に当たっては、作成者の個別の許諾を取る必要があり、網羅的な公表は難しい現状。

(参考)

学位規則(昭和28年文部省令第9号)(抄)

(論文要旨等の公表)

第八条 大学及び独立行政法人大学評価・学位授与機構は、博士の学位を授与したときは、当該博士の学位を授与した日から三月以内に、当該博士の学位の授与に係る論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨を公表するものとする。

第九条  博士の学位を授与された者は、当該学位を授与された日から一年以内に、その論文を印刷公表するものとする。ただし、当該学位を授与される前に既に印刷公表したときは、この限りでない。

2 前項の規定にかかわらず、博士の学位を授与された者は、やむを得ない事由がある場合には、当該博士の学位を授与した大学又は独立行政法人大学評価・学位授与機構の承認を受けて、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものを印刷公表することができる。この場合、当該大学又は独立行政法人大学評価・学位授与機構は、その論文の全文を求めに応じて閲覧に供するものとする。

 

学位規則の制定公布について(抄)

(昭和28年5月2日文大大第283号 文部省大学学術局長通知) 

(前略)下記の点にご留意の上遺漏のないようにお取り計らい願います。

 4 規則第7条の公表とは、公刊物(学報等を含む。)に登載して行うことが望ましいこと。

 5 規則第8条の印刷公表とは、単行の書籍又は学術雑誌等の公刊物に登載することを意味すること。

 

博士の学位授与に関する報告等について

(昭和50年3月18日文大大第150号 文部省大学局長通知)

 学位規則の一部を改正する省令(昭和49年文部省令第29号)の施行に伴う博士の学位授与の報告については、昭和49年7月17日付け文大大第375号において通知したところでありますが、このたび、国立国会図書館より別添(写)(略)のとおり依頼がありましたので昭和50年4月1日以降の学位授与に係る報告については、下記により取扱われるようお願いします。

 なお、各大学におかれては、求めに応じて学位論文を閲覧に供することができるように整理、閲覧等に関する体制の整備を図られるようお願いします。

1 文部大臣への報告は、改正後の学位規則第十一条の規定によるものとし、各二部提出すること。

2 学位論文等については次の要領により、直接国立国会図書館へ送付するものとすること。

  (1)・(2) (略)

 

お問合せ先

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