大学院部会(第83回) 議事録

1.日時

平成30年3月13日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 科学技術・学術審議会人材委員会・中央教育審議会大学分科会大学院部会合同部会の設置について
  2. 中央教育審議会大学分科会将来構想部会の議論の状況について(報告)
  3. 大学院部会における今後の審議について
  4. 博士課程教育リーディングプログラム(平成23年度採択プログラム)の事後評価結果の報告
  5. その他

4.出席者

委員

(委員)
有信睦弘(部会長)

(臨時委員)
天野玲子、大島まり、樫見由美子、加納敏行、川嶋太津夫、川端和重、車谷暢昭、小西範幸、佐久間淳一 、迫田雷蔵、高橋真木子、田中明彦、永里善彦、沼上幹、藤原章正、堀切川一男、宮浦千里

文部科学省

小松文部科学審議官、義本高等教育局長、瀧本大臣官房審議官、信濃大臣官房審議官、中川総括審議官、藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官、三浦大学振興課長、小山国立大学法人支援課長、平野大学改革推進室長、石橋高等教育政策室長 他

5.議事録

【有信部会長】

  それでは,一応定刻になりましたので,第83回の大学院部会を開催させていただきます。御多忙中の中,御参集いただきまして,ありがとうございます。
  今回は,第9期の中央教育審議会大学分科会で大学院部会が設置されてから3回目で,実は懸案が山積みになりそうでちょっと危ないと思っているんですけれども,今回3回目です。天野委員が今回初めての出席なので,済みませんが,御挨拶をお願いします。


【天野委員】

  済みません,1回目,2回目と来られませんで,天野です。元鹿島建設で,今,防災科学技術研究所の方にいます。よろしくお願いします。


【有信部会長】

  本日は,五神委員,室伏委員,井上委員,池尾委員,岡島委員,神成委員,湊委員が御欠席と承っています。
  それでは,配付資料の確認ということで,事務局から配付資料について確認をお願いします。


【平野大学改革推進室長】

  配付資料につきましては,机上の議事次第に記載のとおりでございます。大部でございますが,抜けている資料などがございましたら,お気付きの際にお声掛けください。


【有信部会長】

  それでは,お手元の議事次第に従って議事を進めていきたいと思います。
  最初に,議題1,科学技術・学術審議会人材委員会,それから中央教育審議会大学分科会大学院部会合同という,非常に長い名前になりますけれども,学術審議会の人材委員会と大学院部会で合同の部会を設置するように進めたいという話が来ております。
  事務局から説明をお願いします。


【平野大学改革推進室長】

  失礼いたします。大学改革推進室長の平野でございます。
  資料1から4を使って御説明をさせていただきます。
  先ほど御紹介いただきましたように,科学技術・学術審議会人材委員会・中央教育審議会大学分科会大学院部会合同部会の設置についてということでございます。資料1を1枚めくっていただきますと,参考というものが付いてございます。ここに基礎科学力の強化に向けて(議論のまとめ)ということで,基礎科学力の強化に関するタスクフォースの関連部分抜粋というのがございます。
  ちょっとこれだけだと分かりにくいですので,参考資料2-1をごらんください。
  参考資料2-1がタスクフォースの議論のまとめの抜粋になってございまして,2-2が本体でございます。参考資料2-1,このタスクフォースは,文部科学省に大臣政務官をヘッドとして設けられましたタスクフォースでございまして,この中で基礎科学力の強化に向けてということについて検討してまいりました。

  ページで申し上げますと,大変小さくて見にくいんですが,右下の1ページ目という部分でございます。このタスクフォースにおいては,日本の基礎科学力の揺らぎということで,研究費・研究時間の劣化,若手研究者の雇用・研究環境の劣化,研究拠点群の劣化,このような3つの危機というものを取り上げて,それぞれについてどのような対応をしていくのかということを検討してまいったところでございます。
  めくっていただきまして,3つの危機についてそれぞれテーマがあるわけでございます。今回のこの部会に関係するものが,ページで申し上げますと,3ページ目の次代を担う研究者をめぐる危機への対応策という部分でございます。ここでは,現状・課題といたしまして,若手研究者の雇用が不安定化しているということ,研究者が短期の業績作りや事務作業に追われ,独創性を発揮しづらいということ,キャリアパスの不透明さや経済負担への不安があること,優秀な学生が研究者への道を躊躇・断念していること,このような課題を踏まえまして,取組の方向性として,優秀な者が博士後期課程や研究者を目指せるようなサポートを行うとともに,若手研究者が安定かつ自立して研究に打ち込める環境を実現するという方向性を打ち出してございます。
  この下の部分に対応策が3つございまして,優秀な者が研究者を目指すための支援の充実,すぐれた研究者が安定かつ自立して研究できる環境の創出,これに加えまして,今回人材システム全体に係る取組というところがございます。この1個目の丸の部分に,科学技術・学術審議会において,中央教育審議会と連携し,多様な人材の育成・活躍促進に向けた方策を検討し,「研究人材育成総合プラン(仮称)」を策定し,推進するということがタスクフォースの提言として掲げられているところでございます。
  資料1に戻ってください。こちらは,このような背景に照らして,今回設置について議題にさせていただいているところでございます。設置の趣旨は,大体今申し上げましたところに包含されているわけでございますが,この部会においては,科学技術イノベーション人材のキャリアパスや大学の人事システム改革について集中的に調査審議するということで,合同部会を設置するということに,1ポツ,趣旨が書かれてございます。
  2ポツ,審議事項としましては,科学技術イノベーション人材のキャリアパス及び大学の人事システム改革についてということでございます。
  1枚めくっていただきまして,3ポツの設置形態につきましては,人材委員会と大学院部会の合同設置ということでございます。これは今申し上げたテーマというものが,科学技術イノベーション人材の全般の審議を行う人材委員会と,とりわけ博士課程人材という点等の審議を行う大学院部会,それぞれが集まって議論することが適切ということからでございます。
  合同部会の委員,また,人員については,人材委員会の主査と大学院部会長が合議により指名する。合同部会の主査を置き,これも合議により指名するということ。また,合同部会の主査に事故があるときには,主査があらかじめ指名する者が職務を代理するということでございます。この部会の審議内容というのは,適宜,この大学院部会の方にもバックしていただくということを検討しているところでございます。
  6ポツの方,合同委員会の庶務につきまして,大学振興課の協力の下,科学技術・学術政策局人材政策課の方で処理をしていただくことになってございます。
  資料2をごらんください。資料2につきましては,合同部会を設置するに当たっての委員名簿となってございます。こちらにつきましては,各委員さんにはお話をさせていただいているところでございますが,このような構造を考えているところでございます。
  資料3をごらんください。この合同部会の審議スケジュールでございます。合同部会の設置につきましては,人材委員会で既に御審議を頂いているということで,本日の大学院部会の審議をもって合同部会を設置させていただいた上で,合同部会を5月中旬頃までに3回程度開催し,先ほど申し上げた研究人材育成総合プラン(仮称)の審議を行っていくと。その上で素案等作りまして,5月下旬から6月上旬にかけましては,プラン案を作り,ここではまた大学院部会においても審議を頂くということでございます。6月下旬にはこのプランを取りまとめていく,このような短いスケジュール感の中で集中的に議論をしていくということを想定しているものでございます。
  資料4をごらんください。これからこの合同部会でどのような議論をしていくのかということでございます。もちろんこれから議論することでございますので,ここでは論点という形で掲げさせていただいてございますが,特に赤丸がついた部分が合同部会で議論するということを想定しているものでございます。
  まず,1ポツ,研究人材の育成・確保の意義の再確認について。研究人材の育成・確保というものがなぜ必要かということを再確認するということでございます。2ポツ,研究人材の育成・確保の現状・課題への対応についてということで,括弧で囲ってあるものが5つございます。1つ目は,研究人材をめぐる国際的な動向。研究人材をめくる国際的な動向というものが我が国にどのような影響を及ぼすのか,第4次産業革命の進展や人口減少を踏まえ,どのような対応が求められるのかといったことでございます。
  2つ目が,博士課程への進学状況ということで,これは先生方,御案内のとおりでございますけれども,博士課程の進学率,進学者数の減少が続いている状況,また,若年人口のさらなる減少が見込まれる状況,こういったことを踏まえて,どのように第4次産業革命の進展,人口減少を踏まえて人材を確保していくのかということでございます。ここは特に部会で御議論いただく1つのテーマでございます。
  裏側でございますが,研究人材のキャリア形成状況でございます。研究人材のキャリア形成状況というものがどういったような形で研究人材の確保に影響を及ぼすことが考えられるのかということで,具体的には菱形が3つぐらいありますけれども,修士課程から博士課程へ進学した上で,修了した者の就職率は6割にとどまっているという状況であるとか,博士課程への社会人入学者数も増加傾向にあり,一方で,社会人学生の修了者の就業率は8割と高い状況にあるということとか,ポストドクターであり続ける者が一定程度存在する状況,このような状況も踏まえた上でキャリア形成状況について審議を行うということでございます。
  次の括弧,若手研究人材の研究・雇用環境の状況でございます。菱形の方でございますが,本務教員における40歳未満の若手教員の割合が低下し続けている,任期なし教員ポストというのはシニア化しており,若手教員の任期付きポストの増加が進んでいる状況,また,大学教員の全職務時間における研究時間の減少がある,こういったような研究・雇用環境が,我が国の研究人材の育成・確保にどのような影響を及ぼすのかということを考えていくということでございます。
  最後,研究人材の多様性・流動性の状況でございます。これは菱形の方にありますように,博士課程への社会人入学者の増加,女性教員の割合の上昇,一方で,上位職の女性の教員の割合は少ないということ,大学院在学者に占める外国人学生の割合が増加傾向にある状況,また,海外の派遣者というものについては,短期派遣に比べて中長期派遣はピーク時の7割ということで減少している,このような多様性・流動性という状況の下で,我が国の国際競争力や研究人材の育成・確保にいかなる影響を及ぼすことが考えられるのか,こういったところから議論を説き起こしてまいりまして,先ほど申し上げましたスケジュールの中でプランをまとめていくと,このような審議を行っていただく予定でございます。
  私からの説明は以上でございます。


【有信部会長】

  それでは,今,説明をしてもらいました資料1から4に関連して,何か御質問等がありましたらどうぞ。


【川嶋委員】

  よろしいですか。


【有信部会長】

  どうぞ。


【川嶋委員】

  いろいろ課題や論点は整理されていますけれども,これを見ていると,一番根本的で重要な要素である財源問題というのが全然どこにも触れられていません。研究費が総額では増えているという主張もありますが,基盤的経費が減って,その分補助金が増えているだけではないでしょうか。若手研究人材が減っているとか,資料4にいろいろ書かれているんですけれども,こういう問題の背景にあるのはリソースというか,お金の問題で,これについて国としてきちんと今以上に投資するということをしていかないと,幾らここで論点を上げて議論しても絵に描いた餅になってしまうソリューションしか出てこないような印象を受けました。
  それから,最後の研究人材の多様性・流動性で,例えば,大学院在学者に占める外国人学生の割合は増加傾向にある状況というのを,これは事実だけがここに書いてあるんですけれども,そのインプリケーションはどういうことなんでしょうか。多様性ということで言えば,留学生が増えるのは何ら問題なくて,日本のイノベーションとか科学技術の進展ということを考えたら,何も日本人の研究者だけがそれを担うという必要はないわけで,もっと国際化を進めるとか,そういうことが必要なのではないかと思います。
  以上。


【有信部会長】

  今の点に関して事務局から何かありますか。
  お金の話は,実際には国の財政状況を踏まえてという話とか,今の川嶋委員の話の中には,いわゆる競争的資金と基盤的経費との関連をどういうふうに考えるかとか,それに関しては,産業サイドと多分アカデミックサイドでは多少意見が違うところもあるかもしれない。こういうところで少しきちんと議論をするということで,総額を増やせ増やせというのは掛け声としては必要なんだけれども,余り期待ができないかもしれないという境界条件の下で議論を進めるということ,余り最初から議論に枠をはめる必要はないと思うんですが,それぞれ自由に意見を出してもらえればいいと思います。
  事務局,お願いします。


【平野大学改革推進室長】

  今,部会長からお話しいただきましたように,こういった問題立てでどのように我が国の研究人材の育成・確保というものを適切に図っていくのかというところが大テーマでございますので,その中において,一定の状況というのは理解しつつということがあるわけですが,これはあらかじめお金に関わる話をしないとか,そういう枠組みを設けて議論するものではありませんので,当然議論した中で,そのようなところに本質があるということであれば,これはそういったものを当然含めて議論していくということかと思います。
  また,点々の中の増加傾向にある状況というのは,まさに今,事実を書いているということでありますので,もちろん多様性・流動性というものの中で,我が国の博士課程,大学院において外国人学生の割合が増加してきているという現状をしっかり踏まえた上で議論をするということが必要ということ以上ではございませんので,これをネガティブに評価するかと,このようなことの意図で入れているものではございません。


【有信部会長】

  ほかに質問等ありますでしょうか。議論していただく委員は,今のところ7人ということになっていますので,相当集中的な議論をやっていただけると思っています。そういうことで,是非,この中にも指名された方はおられますけれども,よろしくお願いします。
  ほかに,特にないようでしたら,議題の2番目に移りたいと思いますが,少なくとも,合同部会を作るということをここで了承いただかないといけないので,了承いただけますでしょうか。


(「異議なし」の声あり)


【有信部会長】

  どうもありがとうございました。この案のとおり,資料1の案と,委員について,一応,この予定されている方々を指名させていただくことになると思いますけど,よろしくお願いします。
  それでは,議題の2番目で,中央教育審議会大学分科会将来構想部会の議論の状況についてということと,議題3の大学院部会における今後の審議についてということで,議論に移りたいと思います。将来構想部会では,将来の高等教育の在り方について議論が進められていますけれども,大学院に関しては大学院部会で議論しますということになっています。では,説明を事務局からお願いします。


【平野大学改革推進室長】

  失礼いたします。この(2)番の議題と(3)番の議題,関連いたしますので,一括して説明させていただきます。
  主眼といたしましては,(2)の将来構想部会との関係で,今,部会長がおっしゃいましたとおり,大学院部会としてどのようにスケジュール感を見て対応していくのかという話と,あと,これは大学院部会全体として,今後,将来構想部会抜きにして,最後までどういう議論をしていくのかということでございます。
  資料5-1と5-2をごらんいただきたいんですが,5-1と5-2は将来構想部会の関係の資料でございます。特に資料の5-2が,昨年の12月28日にまとめられた今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理となってございます。これをちょっと説明すると,時間が限られておりますので,資料5-1のポンチ絵を使って大方の流れを説明させていただきます。
  この論点整理における背景でございますが,一番上のポンチ絵の左上,社会全体の構造の変化ということで,学術研究や教育の発展,また,第4次産業革命,Society5.0,人生100年時代,グローバル化,地方創生,こういったような世の中の変化ということを踏まえて,高等教育には一体どのようなものが求められるのかということで,これは矢印の右肩にあるように,学際的・学融合的な研究,文理融合的な教育,またAIと様々な分野を掛け合わせたような,分野を超えた専門知と技能の組み合わせが必要ではないか,多様な年齢層の学生というものが人生100年時代に当たっては必要ではないか,グローバル化ということであれば,多様な国籍の教員,学生が結集できるような大学が望ましいのではないか,地方創生という観点から,地方の産業の生産性向上,高付加価値化に貢献できるような大学,このようなものが求められるのではないか,このような問題意識で大きな方法が作られてございます。
  その上で,右上の高等教育における人材育成という部分でございます。これから人材育成の基本的な方向としてどういうところを考えていくのかというのを18歳で入る伝統的な学生と,社外人として入ってきた上でリカレント教育という観点で大学で学ぶ,こういったところに分けて記述があるわけでございます。18歳で入学する伝統的な学生については,やはり社会が急速に変化する中でも陳腐化しないような,普遍的なスキル,リテラシーというものを一般教育と専門教育を通じて汎用的な能力を育成していくということが必要ではないか,また,汎用的な能力のみならず,強みとなる専門分野と幅広い視野をしっかり兼ね備えた人材の育成が必要ではないかということでございます。また,第4次産業革命ということになってまいりますと,これは数理・データサイエンス,このような部分というのが非常にこれからは必要になってくるのではないか,このような方向が上げられてございます。
  一方,社会人については,18歳で入学する伝統的な学生とはちょっと違った観点で書いてございまして,学術的な背景を持つ教員がしっかり最先端の実践を理論化して,実務経験のある教員が最先端の実践例を提供していく,このようなサイクルを作り上げていく必要があるのではないかということでございます。
  こういった背景を踏まえまして,真ん中の部分,高等教育機関の教育研究体制をどのようにいくのかということでは,将来の人材需要というものが固定化しない,様々変わっていく中で,教育研究体制自体が,変化に迅速かつ柔軟に対応していくという必要があるという問題意識でございます。また,社会の変化,先ほど説明させていただいたもののキーワードが多様性でございますので,多様性というものを踏まえた大学の在り方,多様な価値観が集まるキャンパスであるとか,自前主義から脱却した,学部を超えた,大学を超えた多様な人的資源の活用であるとか,このようなものを少子高齢化の中で実現していくというところが基本的な方向であるだろうということでございます。
  この具体的な手法といいますか,手掛かりとしては,多様な教育研究分野ということで,学部等の枠を超えたプログラムの構築ができるような学位プログラム,このようなものをしっかり位置付けていくこと,また,円滑な撤退という部分も含めて,大学間の連携・統合というものをしっかり大学の機能強化につなげていくということ。
  左下の方,多様な学生ということで,社会人という部分をしっかりリカレント教育という形で大学が存在感を発揮していくこと,外国人の留学生を受け入れというものに関してしっかり戦略を打ち立てていくこと。
  右上の多様な教員ということで,学外の自前主義を脱却して資源を活用していくという観点から,学位プログラムのみならず,実務家とか若手とか女性,このようなものをどのように大学に置いてしっかり取り入れていくかということ。多様性を受け止めるガバナンスということで,他大学,産業界,地方公共団体等,1つの大学にとどまらない連携体制というものを構築していくこと,また,実際の運営の点においても,学外理事等がしっかりと役割を果たしていくこと,このようなことが必要ではないかということが上げられてございます。
  また,18歳人口の減少を踏まえまして,大学の規模の問題,これは2033年には進学者の推計というものが,これは学部段階でございますが,47都道府県平均で約85%まで減少するということが見込まれていると。一方で,リカレント教育において,学生が増加する,こういう状況を踏まえまして,どのように大学の規模を考えていくのか,また,大学の将来を考えていく上で,やはり各地域において客観的なデータというものに基づいて,地域の国公私立大学が地方自治体とか産業界とかを巻き込んで,将来像をしっかり議論し,連携し,交流を行えるような仕掛けを作っていく必要があるのではないかということでございます。
  また,最後の部分,教育の質の保証と情報公開でございます。これは実際に学位プログラムを確立して,教学マネジメントを確立していくという観点から,教育課程,指導方法を改善する,また,学修成果の可視化,情報公開をするということは重要でございます。そのため,各項目について今後どのような形で進めていくのか,また,認証評価という部分について上げさせていただいているわけでございます。
  こういった論点整理があるわけでございますが,資料5-1の一番右下の部分に青い四角のようなものがあるかと思うんですが,ここが今後検討する論点になっているわけでございます。具体的に申し上げますと,右上から行きますが,Society5.0に向けた人材育成の在り方について,また,短大,高専,専門学校,大学院についての特有の検討課題,高等教育機関相互の接続関係,学位・称号の国際通用性,そして,一番右下でございますが,大学院教育の在り方や大学等における研究の関係,高等教育機関の機能別分化,高等教育を支える支援方策の在り方,このようなことについては今後検討していって,最終的には将来構想部会でまとめることになる答申に取り込んでいくということが想定されているわけでございます。その大学院部分というものについては,この大学院部会の審議というものを中心に検討していくということになるわけでございます。
  続いて,資料5-3をごらんください。これが今後の審議事項ということで,今申し上げたような,大学院教育の在り方ということが書かれているということについて御確認をいただければと思います。
  続いて,資料6-1でございます。きょう,資料6-1は今後の大学院部会の審議の進め方ということについて書かせていただいています。実は資料6-1のほかに,審議事項として上げさせていただいている案に関係するデータがまとめられたものが6-2でございます。資料7が,これから大学院部会で議論するに当たって,将来構想部会は2040年の大学の在り方を前提に議論することになってございます。その上で,大学院部会としても,これまで平成17年の答申,平成23年の答申,27年の審議まとめというような,審議の蓄積というものでございます。また,これまでのものがどれだけ進んで,また,どこが達成できていないのかといったところも,今後審議が必要になると思いますので,資料7につきましては,これまでの答申ないし審議まとめとの対応関係というものを用意させていただいた資料でございます。
  資料8につきましては,昨年の5月30日に大学院部会で出させていただいている資料でございますが,最新バージョンの第3次大学院教育振興施策要綱のフォローアップとなってございます。この資料7と8については,論点はこれから御説明させていただきますが,その際,必要に応じてごらんいただければと思います。主に資料6-1と6-2を対応させながら,御説明をさせていただきたいと思ってございます。
  また,この資料6-1の審議事項につきましては,今まで2回議論をする中で,各委員から自由発言を頂いて,その中のエッセンスを取り上げ,論点として取りまとめたものでございます。
  過去の大学院部会でどのような議論があったかということにつきましては参考資料4,また,参考資料5という形で第81回と第82回の大学院部会での議論というものをまとめさせていただいてございますので,必要に応じて,そちらの方もごらんいただければと思います。
  それでは,資料6-1の審議事項の説明をさせていただきます。審議事項として,大きく(1)番から(7)番まで,7つ上げさせていただいてございます。また,データというものと照らし合わせて御説明をさせていただきます。
  まず1つ目の審議事項でございます。これは従来の大学院部会の答申,審議まとめでも重要な柱として取り上げられてきましたところのリーディングプログラムの成果の普及をどのように図っていくのかということでございます。
  データ集の方を開いていただきますと,6ページ,7ページ,2アップになっていると思います。6,7と縦に並んでいるかと思いますが,ごらんください。リーディングプログラムの就職状況,また,リーディングプログラム受講生による主観的評価というものが上げられてございます。特に就職状況はよくごらんいただいている先生もいるかと思いますが,一般の博士課程学生の就職者に比べて,リーディングプログラムについては,民間企業,官公庁に就職した割合が高いといったような成果,また下の方でいいますと,これはせんだって発表された博士人材追跡調査でございますが,リーディングプログラムの支援を受けた者については,様々な項目について主観的に能力が身に付いているという評価,特に国際性の向上についての差が大きいということなんかが一端として示されてございます。
  このような形で,リーディングプログラムはどのような成果が上がったのか,また,継続状況というものをフォローアップしていく,このようなことが必要ではないかということを前提にいたしまして,リーディングプログラムと一般の課程というのがどのように違ってきているのか,また,先ほど申し上げた就職の好事例の評価,これはデータの方の9ページ,10ページのような就職の好事例も含めまして,どのような形で企業,社会から評価をされているのか,また,こういったところに加えまして,リーディングプログラムの成果の普及というものをどのように図っていくのか,課題はいかなるところにあるのか,このようなことについて検討していただくということを考えているわけでございます。
  データ集の12ページと13ページをごらんいただきますと,実はリーディング大学院プログラムというところで,これは想定をしていたようなところです。幅広い俯瞰力,独創力というものを身に付けるための科目の設置であるとか,複数専攻の実施であるとか,ラボローテーションのような,研究室ローテーションの仕組みであるとか,このようなものについては,実は非常に実施率がまだ,一般の課程を通して全体的に低いという状況にあるわけでございます。リーディング大学院で効果があったとされる取組について,この調査はまだ平成26年の現状ということでございますので,最新の数字というのはもっと変わっている可能性があるわけでございますけれども,実際にリーディングプログラムの成果をどのように普及していくのかというところについては,これから考えていく必要があるということでございます。
  (2)番の論点でございます。大学院の有する価値及びストックの可視化という観点でございます。従来から博士人材に関しましては,文部科学省といいますか,大学院部会の方でもどのような課程,どうその役割分担をするのか,また,どのような博士人材というのは価値を有しているのかということについては議論をしてまいったわけでございますけれども,論点としては,博士人材の価値をどのように可視化していくのか,また,修士課程と博士課程後期,これは博士課程前期も含むわけですが,差別化をどのように図っているのか,人材養成目的に応じた各課程の目的というものを再度このタイミングで考えてみる必要があるのではないか,大学院における3つのポリシーについてどのように考えていくのか,最適な定員管理の在り方に関する検討というものも考えていく必要があるのではないか,このような論点でございます。
  データ集の方をごらんいただきますと,主要なところでございますが,例えば18ページとか21ページを見ていただきますと,博士号の取得者というものは,非常に高い能力を有している,期待を上回る,ほぼ期待どおりといった割合が高いということで,能力の高さというものは一定の実証がされている一方で,20ページにありますように,企業の方からすると,博士というものは特定の分野の専門的知識を持つが,企業ではすぐに活用できない,こういったようなところがあるわけでございます。こういった社会通念というものがある中で,博士人材というものをどのように可視化していくのかということでございます。
  ページを飛ばさせていただきまして,32ページをごらんください。32ページ,33ページ,このあたりになってくるわけですが,博士課程,修士課程の役割というものをこれからどう考えていくのかという上で書かせない要素となってくるのが,いわゆる3つの方針でございます。大学院につきましては,今,ディプロマ・ポリシーが97.1%,カリキュラム・ポリシーが97.1%,アドミッション・ポリシーが99.4%となってございます。
  御案内のとおり,大学院につきましては,アドミッション・ポリシーは義務化されているという現状があるわけでございますが,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシーというものは,これはまだ法的にはそのような位置付けになっていないわけであります。この博士課程,修士課程というものを,しっかり役割を定義していく,目的というものを再評価していくという中では,この3つの方針との関係性をしっかり考えて,どのような形で在り方を考えていくのかということが重要な論点になってまいるかと思います。
  36ページ以降が,いわゆる小規模専攻の問題も含めました専攻別入学者分布のデータでございます。専攻数で見ますと,ゼロ人,1人,2人,こういったような専攻というのがかなり数があるということでございます。3人未満の修士課程というのが16%,579専攻存在するという現状でありまして,そういった課程の入学定員充足率につきましては15.1%というところにとどまっているという現状があります。小規模専攻の問題は,教育効果,その他の面から様々問題が指摘されているところでありますが,このような点をどのように考えていくのかということでございます。
  39ページでございます。39ページは同様のものの,博士課程でございます。博士課程におきましても,2,665専攻という調査に回答したもののうち,約23%の専攻においては入学者がゼロであるという状況でございます。私学においては特に37%,3人未満まで含めると72%という状況でございます。こういったものの取り扱い,どのようにこのような課程を考えていくべきなのかということも論点の1つになろうかと思います。
  44ページをごらんください。国立大学についてのみ掲げさせていただいてございます。国立大学の大学院の専攻の設置数・廃止数につきましては,廃止数が新設数を上回っているという現状にあります。平成28年度は特定の大学で大規模な改組が行われたということで,若干異常値めいた数字になってございますけれども,一般論で申し上げれば,廃止の方が新設よりも多いということは大くくり化というものが行われているということが推定されるわけでございます。
  続いて,論点の3でございます。これは先ほどの合同部会にも関わってまいりますが,博士課程への進学率の減少,修士課程学生が減少しているという問題について,入学者選抜をしっかり改善していく必要があるかどうか,また,志願候補者,これは修士についてもそうですし,博士後期についてもそうですが,そのような者に対して適切に大学院に関する情報が発信されているのかどうか,また,大学として主体的にリクルーティングが行われているのかどうか,このような点を考える必要があるのではないか。
  また,実際に,大学院,博士後期課程に進学する上で非常に問題視されているのが,これは志願者の側からしますと,キャリアパスの問題と経済的な問題でございます。経済的支援の在り方,新しいタイプの学内のワークスタディー等も含めてどのように考えていくのか,今までもJSPS,日本学術振興会さんのDC,若しくは日本学生支援機構の奨学金返還免除,授業料減免と様々な施策があるわけでございますが,このようなものと大学,地域,企業による支援,寄附等を組み合わせ経済支援体制をどのように確立していくのか,このような点についても論点になると考えてございます。
  データ集の方には関係するデータを用意させていただいてございますが,51ページ,52ページあたりを見ていただきますと,修士と博士について,入学志願者と入学者でどれぐらい数字が,比が出ているのかということが書かれてございます。修士の方で申し上げますと,人・社系については非常に倍率が高い,2倍を超えているということでありますが,ほかの分野は大体1.3倍から1.4倍の倍率,博士につきましては,全分野で2倍を下回っていると,このような状況でございます。
  また,ページをめくっていただきますが,60ページ以降は経済的支援の状況について様々なデータを載せさせていただいてございます。特に62ページをごらんいただきたいんですが,科学技術基本計画では,博士後期課程学生の約2割が生活費相当の支援を受けることを目標とするということになってございますが,62ページを見ていただきますと,平成27年度現在で,生活費相当額を受給している者は5,326人,10.4%という現状でございます。これは平成24年度とほぼ変化がないという状況にあるわけでございます。これは国費等も限られている中で,どのようにこのような経済的支援の充実を図っていくのかということも論点の一つになるかと思ってございます。
  続きまして,論点4でございます。博士人材のキャリアパスの多様化と活躍状況の可視化でございます。博士人材というのは必ずしも研究者ということではなくて,様々な社会,あらゆるセクターを牽引していくということが期待されているわけでございます。そのような観点から,キャリアパスを多様化する,活躍状況を見える化していくということは重要な課題であると思ってございます。
  1つ目は科学技術・学術政策研究所の方で設けていただいている博士人材データベース,J-GRADというものがございます。これをどのように活用していくのかということ,また,国内外の博士人材の企業における処遇に関して情報収集を行っていく必要があるのではないかということでございます。ここにつきましては,81ページ,82ページ,83ページ,このあたりに博士人材の処遇に関する基礎的なデータを設けさせていただいてございます。
  この中で,実は81ページの数字を見ていただきますと,内部収益率という観点でいいますと,大学院に行った方が収入は増えていくということがあるんですが,修士の方が博士よりも内部収益率が高い,つまりは元が取りやすいといった状況があるわけでございます。日本はこういう状況である一方で,82ページにあるように,アメリカの方は見て分かるように,明らかにドクターの平均年収が変わっていると,このような社会状況があるわけでございます。
  また,83ページを見ていただきますと,このデータも大分古くなってきている部分はあるわけでございますけれども,日本の企業の研究者における博士号取得者の割合というものは低いということ,また,日本の企業役員の博士号取得者というものは,これは1つのデータでございますが,明らかに米国に比べて少ないだろうと,このようなことがあるわけでございます。
  論点の方に戻っていただきまして,アカデミックセクター以外で活躍する博士人材をどのように把握していくのか,また,人文・社会科学系大学院における教員以外のキャリアパスの多様化をどのように図っていくのか。
  すいません,ちょっとページが,私が申し上げたものとずれていたかもしれません。アメリカとの差が82ページで,博士号取得者の状況が83ページでございます。大変失礼いたしました。
  その上で,人文・社会科学系における教員以外のキャリアパスの多様化,そして,先ほど(2)の方で上げましたが,各課程の人材養成目的というものをしっかり再評価していくという中で,それに応じたキャリアパスをどのように支援していくのか,このような点も考えるべきかと思ってございます。
  (5)番は,今日お配りしているのは古いものでございますが,大学院振興施策要綱のフォローアップをしっかりしていく必要があるということでございます。
  (6)番が教育の中身の本丸といいますか,充実ということでございます。修士課程の教育をどう充実していくのかということ,QEの運用状況をどのように検証していくのかということ,裏に行っていただきまして,前回の大学院部会でも御議論ございましたが,武者修行ということも含めたような学生に多様な経験を積ませるための仕組みというものをどう構築していくのか,教育のグローバル化というものをどのように構築しているのか,また,これは特出ししてございますが,人文・社会系大学院における教育というものをどのように充実していくのか,プレFD,このようなものをどう位置付けていくのか,また,先ほど将来構想部会で御説明したように,学位プログラムというものをこれから位置付けていく中で,実際に専攻横断的な取組を行っているリーティングプログラム,また,今後行われることになる卓越大学院プログラムというものも考えながら,大学院における学位プログラムをどのように具体的に位置付けて振興していくのか,これによって大学院の姿が変わっているというところも含めて示していくことができるのかということでございます。
  データの方,関係するところで主要なものだけ御説明させていただきたいと思うわけですが,ページでごらんいただきますと,103ページからごらんください。
  こちらはQEの運用状況となってございます。QEの導入率は,理学,工学において高いわけでございますが,104ページを見ていただきますと,それぞれの課程というか,分野ごとにQEでどのようなものを課しているのかという調査でございます。これはよく調べる必要があるわけでございますが,丸1,丸2番,研究報告書の提出,後期課程進学後の研究計画の提出というものを両方とも求めていないという大学が12.2%あるわけであります。また,口頭試問と筆記試験というものについても,両方実施していない大学というのが20%あるという現状がございます。このQEというものについては,また当初のコンセプトというものに立ち返って,適切に行われているかどうかということについて検証するということも考えられるんではないかと思ってございます。
  また,ページで言いますと,107ページ,108ページあたりが,いわゆる日本人大学院生の留学者数でございます。修士につきましては,工学分野の入学者数が増加傾向であるということでございますが,博士については,工学分野については1.8倍程度ということがあるわけでございますけれども,かなり上下はしているという現状があるわけでございます。
  110ページをごらんください。大学院生の多様な経験ということで,インターンシップでございます。修士のインターンシップというものは,この2年間においてもかなり増加が見られるということであります。専門職についても,かなり増加が見られるということでありますが,博士については横ばい傾向でございます。
  続きまして,大学院のリカレント教育の在り方ということに関係いたしまして,123ページ以降にデータを用意してございます。修士課程への社会人の受け入れ数というのが124ページに上げられてございますけれども,大学院の拡充に合わせて大幅に拡大いたしましたが,社会人は,近年は減少傾向にあるということ,博士課程については,社会人の受け入れ状況というのは,またこれも大学院の拡充に合わせて大幅に拡大したわけでありますが,近年はほぼ横ばい傾向と,こういう傾向にあるわけでございます。
  また,社会人というもののリカレント教育を進めていく上で,非常に時間的な制約に直面している社会人ということから言いますと,夜間開講・昼夜開講・通信教育,このようなものも1つ論点になってくるわけでありますが,129ページを見ていただきますと,夜間部・昼夜開講・通信教育を実施している大学数,これは修士課程でございますが,ほぼ横ばいという状況でございます。また,博士につきましても,ほぼ同様の傾向となってございます。
  残り時間が限られてございますが,138ページをごらんください。138ページはプレFDの状況でございます。プレFDの必要性につきましては,従来より大学院部会の方でも御提言を頂いているわけでありまして,また,今後大学において,しっかり外から教員を連れてくるということも考えると,このような機能の充実が期待されるのではないかと思ってございますが,プレFDを大学院生対象に実施しているというところについては,平成25年度の4.3%に対して平成27年度は3.9%ということで,減少しているという現状がございます。このようなところも考えまして,修士課程及び博士課程における教育の充実というところについて議論をしていく必要があると思ってございます。
  最後の(7)番,高度専門職業人養成の充実でございます。修士課程の在り方との整理を含めたような,大学院全体としてどのように高度専門職業人を養成していくのか,このような点について議論が必要かと思ってございます。また,実際に,要件にもかけられていますところの実務家教育をどのように活用していくのか,また,専門職大学院を学び終わった後に,さらに上位に進んでいくという観点から,博士課程との連携,これは教員面での協力ということもあると思いますけれども,どのように連携を図っていくのか,このような点についても,論点の一つとして上げさせていただいてございます。
  このように,様々,多様な論点を上げさせていただいたところでございますが,スケジュールにつきまして上げさせていただいているのは丸1番から丸9番でございます。これは当然議論の状況によって変更の可能性はあるということでございますけれども,おおむね(1)番から,それを何回か繰り返す形で議論をしていきたいということでございます。見通しを一定お示しをして議論をしていければと思ってございますが,5月上旬には中間取りまとめというものに対する対応というところをどのように考えていくのか,最終的には,これは将来構想部会の方に,最終取りまとめに,大学院の部分も合流できればいいという認識でいるわけでございますけれども,秋口にはまとまるわけでございますので,9月上旬までにはしっかり1周議論をさせていただいて,その上で将来構想部会の打ち込みを考えていく,また,そこで全てというわけではありませんので,大学院部会としての審議のまとめ方というものについても,任期があるところでございますので,冬までに考えていくと,このようなことを事務局としては考えさせていただいているところでございます。
  先ほど申し上げましたとおり,資料7と8につきましては,御説明申し上げませんでしたけれども,この論点に関わる資料というものが掲げられておりますので,必要に応じてごらんいただければ幸いでございます。
  私からの説明は以上です。


【有信部会長】

  ということで,今回3回目ですけれども,今後はかなりの急ピッチで議論を進めていかなければいけないということの御理解を頂けたかと思いますが,あとは,少し御意見等頂くということで進めていきたいと思います。どなたからでも結構です。
  はい,どうぞ。


【天野委員】

  すいません,初めて参加ということもあるんですけれども,今の説明を聞いていて全く分からなかったんですが,要するに大学部会で,今後の高等教育の将来像の提示というのをなさるんですよね。


【平野大学改革推進室長】

  将来構想部会。


【天野委員】

  大学院のなんですか。それで,よく分からなかったのは,大学教育全体みたいなものの方向性がある中で,大学院部会というのは大学院の方向性を出せばよくて,大学院部会と一言で言っても,リーディングプログラムとか卓越大学院とか,それは全部別で,いわゆる普通の大学院に関してだけ,ここでリーティングプログラムとか卓越大学院の成果を横に見ながら議論していくという理解でよろしいんですか。


【平野大学改革推進室長】

  すいません,私の説明が少し分かりにくかったかもしれないんですけれども,将来構想部会の方では,秋口をめどに高等教育セクター全体についての,2040年を見据えた将来像というものをまとめてまいります。


【天野委員】

  ごめんなさい,将来構想部会というのが,さっきの合同部会と一緒なんですか。それはまた別にあるんですか。


【平野大学改革推進室長】

  別でございます。


【有信部会長】

  ちゃんと説明すると,中教審は,大学分科会と,初等中等教育分科会と大きく2つ分かれていて,大学分科会が高等教育全般の審議をするということになっています。それで,将来構想部会は,2040年ぐらいをめどに,実際には17年答申ということで,以前に出た高等教育の在り方に関する答申をずっと実行してきたわけですけれども,今後は2040年を見据えて,新しい答申をまとめようということで進んでいます。
  それを具体的に審議する部会として将来構想部会というのが組織されていて,将来構想部会の中に,例えば,質保証に関する検討委員会だとか,そこだけで全てが議論できないので,幾つかの小委員会に分けて,個別の議論をやっているものを将来構想部会でまとめて,それを大学分科会で高等教育全体としてまとめる。
  大学院の在り方に関しては,将来構想部会で審議し切れないので,大学院部会で審議した結果を将来構想部会で取りまとめの審議をして,最終的にはまた大学分科会で審議をした結果として高等教育の全体像というのをそこで明確にするという構図なんですね。
  個別個別の議論を全て1つの分科会なり部会でやるわけにもいかないので,それぞれ分担して審議をしたものを最終的に取りまとめて,取りまとめる中でお互いに矛盾があってはいけないので,そこで当然また審議が行われると,こういうことになっています。


【天野委員】

  ありがとうございます。実は2回サボったので,事前に説明を受けたんですが,そのときに,多分今委員長がお話しになったような,全体の委員会の位置図みたいなものを見せていただいたような気がするんですけれども,何となく,今回,それ,どこにあるかしらと思って探したんですけど,なかったので確認させていただきました。
  参考資料,せっかく置いていただくので,ああいうものも置いてあると,何となく自分の現在の立ち位置を確認しながらディスカッションできるかなと思いますので,よろしくお願いします。


【有信部会長】

  それではほかに,どんなことでも結構です。いろいろここで上げられていたことに関して,これでは足りないとか,ほかにこういう議論が必要だとかいうような議論もあるかと思いますが,よろしく。
  何せ大層な,将来構想の部分については,相当広大なスコープで議論しなければいけないということになっていますので,大学院の在り方ということで,一応事務局中心に,審議の進め方ということでここにまとめていただいていますけれども,これで尽くせているかどうかという話もありますので,是非忌憚のない御意見を頂ければと思います。


【川嶋委員】

  よろしいですか。


【有信部会長】

  はい,どうぞ。


【川嶋委員】

  この資料6-1を見て思ったことは,これまで複数期にわたって大学院の問題を議論してきたんですけれども,これだけの課題がまだ残っているというのは何か虚しい感じもしないわけではないのですが,全部についてコメントすることは難しいので,幾つか気付いた点だけコメントしたいと思います。
  1つは,先ほど,定員未充足とか倍率のお話がありましたけれども,大学院の定員についてはどういうふうに国として考えておられるんでしょうか。つまり,定員充足率とか倍率というのは,定員を少なくすればある程度数字はよくなるわけです。今と状況が変わらなければという前提ですが。ですから,定員の再検討というものについて,これは個々の大学院だけではなくて,国全体として,大学院の規模を今後どう考えていくのかということについてはどういう検討の方向性があるのかということを議論する必要がある。
  それから,具体的な論点で言えば,修士課程については基本2年ですけれども,例えば,イギリスでは、1年のトートコース(taught course)と,2年のリサーチコース(research course)というような形で,機能分化というか,修士課程の中でもきちんと役割を分けていますが、今後の我が国の方向性として、修士課程への進学者を増やす方策としてはあるのではないかと思います。
  また収益率のデータの紹介がありましたけれども,一般に先ほど御紹介があったように,日本以外の国では学歴が高くなればなるほど社会的なメリットと金銭的なメリットが高くなるということが明らかなんですが,博士人材よりも修士が高いというのは,年数とかコストの問題でそういう逆転現象が起きているんでしょうけれども,これも何回も議論してきていることですが,やはり先ほどあったように,博士の能力に対する評価は修士よりも高いにも関わらず,社会といいますか,より具体的に言うと,雇用する側が十分価値を目に見えるような形でリワードしていないということになります。これもずっと産官学の連携の強化ということで,いろいろ議論してきたんですけれども,なかなか明るい社会,状況が見えていないということで,やっぱり大学院の学歴のメリットがないのか,あってもそれが社会や個人にとって見えないのかということで,このあたりもきちんと社会に対して数字で示していく必要があるんだろうと思います。
  それから,今回,ここには必ずしも出てきていないんですが,私は専門職大学院の議論に関わっているので最後の7番目のところで言うと,例えば,将来構想部会の中間経過報告には触れられていましたが、専門職大学院のところは,認証評価が非常に複雑で,1つの新しい分野の専門職大学院が出てくると,基本はそれに対応した評価機関を作らなきゃいけないということも現状にはありまして,もう少し合理化して,割と広い分野で中核的な評価基準を作って,それプラス個別の分野別評価をしていくような,そういう合理化も必要だろうと感じています。
  あと,卓越大学院のことも書かれていますけれども,さっきの最初の質問というか,意見にも関わるんですが,やっぱり投資が必要だと思います。卓越大学院も,聞くところによると,最終的には補助金がゼロになると。あとは全て自前で賄えというような制度設計になっているというふうにもお聞きするんですけれども,そうなると,大学としてもなかなか手を挙げづらいところがあるのではないかと思います。
  大学としても、ない袖は振れないということもあるので,こういう政策を議論する際には,それを実現するためのリソースということについても,文部科学省だけでは決められないかもしれませんが,それはきちんと議論していただきたいと思います。
いろんな論点に飛んでしまった意見ですけれども,以上です。


【有信部会長】

  ほかに御意見ありますか。
  じゃ,迫田さんから。


【迫田委員】

  すいません,いろんなデータを見ながら考えていたんですけれども,どうも研究機関としての大学院と,教育機関としての大学院の議論が交じってきているような感じがしまして,そういう意味では,今のリワードのお話とかは教育機関としてどうかという観点で言えば,社会が求められているものを提供できているのかという観点が重要になってくると思いますし,また,研究機関としてということであれば,研究成果がどうなのかという比較の中で議論がされていかなきゃいけないと思うんですけれども,どうもここがずっと入り交じっているような感じがしまして,この辺を整理していかないと,なかなか方向感が出てこないのかなと感じました。
  以上です。


【有信部会長】

  じゃ,川端委員。


【川端委員】

  少しだけ。今,審議事項というのは本当にいっぱい課題があると。その一方で,一番最初にお話があったように,研究時間の劣化というのがあって,今,大学の中でただ研究しているだけじゃなくて,教育があって,コンプライアンスがあって,いろんな話が起こって,さらに,教育のやり方自体,今までは余りに手抜き過ぎたからという部分もあるんですけれども,それをしっかりというのを,さらに管理型でやっていけばいくほど手間が猛烈に掛かったり,書類が山のようにできたり,こういうようなスキームが結局は研究時間の劣化という,要するに一定の人数でやっているんですから,そういう話になっていくと。だから,大学院教育という,ここだけ切り出して,それを一生懸命やろうとすれば,もう際限なくやることはいっぱいある。でも,やればやるほど研究者というか,教員と研究者は一緒ですから,その中での時間の差配というものが,バランスが崩れていくという,両者を,誰がバランスを取るのか,それが例えば,組織なんだといえば,今度は大学の経営の話に入っていってという,ただ,その観点の議論はなかなかなされていなくて,その調整も是非,議論の中に入っていくといいかなと思いました。


【有信部会長】

  今の最後の話はそのとおりですね。大学の経営の問題というか,マネジメントの話がほとんどやられていないというのもありますし。
  はい,どうぞ。


【永里委員】

  今のお話なんですけど,今回の将来構想の中に,大学経営の改革とか,そういうことが含まれているのかどうか。川嶋委員のお金の問題というのは,そこと密接に絡んできます。外部資金の獲得というのは,産業界がアメリカの大学に対してお金をたくさん出していて,日本の大学に出していないという,この現状を踏まえたときに,大学の経営そのものの在り方,産業界の望んでいる大学というのと密接に絡んでいるので,その辺のことも議論すべきじゃないかと思います。


【有信部会長】

  それは大いにあり得る話だと思います。少なくとも国の予算は,もうある意味で本当に限られていて,それの取り合いという中で,日本の全体の研究開発費の7割は多分,民間企業が負担しているという部分を,どういう格好で日本国内で考えていくかというところはありますし,別に日本だけで考える必要はないわけですね。海外からどういう形でお金を入れるかということもあり得る話で,それを単純に,日本国政府に金くれ,金くれといっても,それは無理な話だというのはあると思います。
  ほかにどなたか。どうぞ。


【佐久間委員】

  この審議事項の中にリカレント教育ということが書かれておりますけれども,人文系の立場からいうと,これからどんどんそういったことに取り組んでいかないといけないとは思っているんですが,ただ,先ほどの御説明の中で,この社会人の受け入れ,必ずしも伸びていない,むしろ減っていると。だから,これはやはり社会の中で,このリカレント教育というのがどういうふうに位置付けられているのか,なかなか根付いていない部分があると思うんです。一方で,先ほど高等教育の将来像の方で,人生100年時代ということで,多様な年齢層を受け入れるということが言われています。それは非常に結構なことだと思うんですけれども,現状で,さらに多様な層を、ということになると,どう対応したらよいのかということがあると思いますので,そこら辺の社会との関わりですよね,そこをやはり整理する必要があるのではないかと思っておりますので,よろしくお願いします。


【有信部会長】

  いや,それもそのとおりだと思います。資料5-3の論点整理の一番最初に,高等教育機関の規模という話が出ていますけれども,この規模はもう明らかに18歳人口のことしか考えていない。18歳人口のことだけ考えて,今の規模で多過ぎるんではないかというのは言外に匂わされている。一方で,高等教育の修了者の人口に占める割合は,日本は決して高くない。というのは,要するに社会人が高等教育を受けていない部分があって,日本だけ際立って18歳から22歳の在学者数がピークになっているわけです。ほかの国はもっとなだらかに,かなりの年齢層の人たちが大学で学んでいるという状況を考えると,この論点整理もまだ不十分で,そういうことも含めて,恐らく日本国内での人材の養成をどういうふうにやっていくのか,その中で,それぞれの高等教育機関がどういう形で,大学院,学部を含めてでもいいですけど,あるいは,国公私という切り分けでもいいし,中央,地方でもいいし,そういう中で,どういう形で人材育成を進めていくのかという視点をもう一方で見ておかないといけないと,こういうことだろうと思うんです。
  どなたかほかに,どうぞ。


【車谷委員】

  ネガティブなお話が多いんですけれども,私はいろいろネット企業とか,TMTの大きい企業とお付き合いがありますが,彼らはエンジニアを何人採れるかによって,ほぼ成長の度合いが決まるという状況です。今,大変なエンジニア不足で,一部の大学の大学院の生徒さんについては,数千万を卒業した時点でお支払いして集めるようなこともあります。これは日本の企業だけじゃなくて,海外の企業も東京に採りに来ているんです。日本の企業はベトナムにも行っていますけれども,非常にグローバル化しているということです。日本の大学院の中でも,非常に競争力がある人材を作っていますし,競争力は,僕は結構あると思います。キーワードとしてはトランスファラブルといっていまして,要は日本だけで通用するようなものではなくて,明日ロンドンに行っても使えるということになると,グローバルなトライシングが付きます。まさにそういう人材を輩出するところに,今,企業はどんどんお金を付けるというふうになります。やはり成功している海外の大学院のモデル,日本でも成功しているところはあるわけです。何か袋小路にあるわけじゃなくて,いろいろな実例を見ながら,そのままいいところを伸ばしていくというようなポジティブな感じで議論を進めるのもいいんじゃないかと思っております。


【有信部会長】

  ありがとうございます。市場原理で物事を動けば,必ずそういうふうになるはずなんですけどね。現実にアメリカで,田舎の大学でAIに関するPh.Dプログラムを作って,Ph.Dの学生が卒業したら,その指導教員の2倍ぐらいの給料で雇われていって,指導教員ががっかりしているという話はありましたけど,現実に今,人材不足はそういうところなんです。ただ,今,AI,AIといって,AIだとか,データサイエンスだとか,サイバーセキュリティだとか,そういう分野の人材が払底していて,ここはもう本当に草刈り場で,それこそトランスファラブルな技術,知識を持っている人たちは,恐らく引く手あまただろうと思います。ただ,実際に人材育成の観点で考えると,こういう分野が永久に引く手あまたというわけではない。ただ,これを言いわけにしてはいけなくて,そういう様々に変化する必要な知識,技術を身に付けることができるようなコンピテンシーをどうやって若い人たちに付けさせるかとか,あるいは今,既にある種のコンピテンシーを持っている人たちに,そういう,今要求されている知識をいかに効果的に学んでいただいて,さらにそのコンピテンシーを上げさせるかというような,そういう視点も多分必要なんだろうと思います。


【車谷委員】

  付け加えますけれども,要素技術の面ではやはり日本は,スタンフォードの人たちと話しても,物すごくレベルが高いと,評価しています。ところが,全体をビジネスモデルというか,モデル化して,それをマネタイズするという力が,日本は弱いというので,その部分で負けているということです。何も日本の大学院のレベルがすごく低いというわけでは,私は全然ないと実は思っていまして,海外からも評価は高いと思うんです。ですから,実際,大学院の人たちにマネジメントも含めてグローバルな価値を付けてあげるかという点は,いろいろ改善すべき点が,僕は結構あると思います。


【有信部会長】

  どうぞ,田中委員。


【田中委員】

  さっきからお答えがあったマネジメントの観点も少し入れていただくということと,それから,大学院レベルでどういう収入拡大の道があり得るのかというようなことはやっぱり,運営費交付金くれくれというのは言いたいんですけど,それ以外の形として,どういう可能性があるのか,あるいは企業との関係でいくと,どういうふうな仕組みをもっと利用していくと資金獲得ができるのかということも課題になります。
  それから,リカレント教育との関係でいうと,大学は必ずしも学位プログラムだけやる存在では多分ないので,そうすると大学院レベルで,ある種の民間と協力したような高度研修プログラムみたいなものを作るということがどのぐらい可能で,それはどのぐらい収入獲得源になるのかとか,そういうところも少し,今後の議論の中で入れていってもらえるといいかなと思います。
  それから,今回のこの大学院部会の審議の進め方は,どちらかというと,博士課程,修士課程が社会にどういうふうに役に立つかという観点が非常に強いと思うんですけど,さっき話のあった,基礎科学力の方,これはもう大学院をちゃんとしなきゃ基礎科学力は付かないわけで,日本の基礎科学力を,今後,今の衰退状況を反転させるために,大学院の教育と研究の在り方というのはどうなっていかなきゃいけないのかということですね。QEとかっていうのは,形式的にはこういうふうにやるのはいいんだというのは分かるんだけど,やっぱり基礎科学力ということになると,ひょっとすると,ある種の理科系分野だったら研究室中心の徒弟奉公みたいな方がいいのかもしれないという分野も,これは分からないですね。今回の検討でいうと,学問分野別には,人文社会科学系が特出しされていて,これは人文社会科学系がいかにだめかということを社会が思っているのかということかもしれないけれども,人文社会系の中にだって,そんなにだめなものばっかりじゃないだろうという感じもするし,それから,人文社会系の中には基礎科学力といった面でいえば,日本の文化,あるいは日本は世界の文化に貢献する,学術に貢献する様々な分野というのがあって,世界最高水準の学問をやっているところもあるわけですよね。基礎科学力との関係でいうと,大学院の教育研究はどうなるのかという,その検討のところをもうちょっとどこかに入れていただければと思います。


【有信部会長】

  ありがとうございます。そのとおりだと思いますが,要するに今,これから検討しなきゃいけないのは,2040年というか,40でも50年でもいいんだけど,要するにそれぐらいをめどにした将来の高等教育をどうしていくかということが重要なのではなくて,2040年に日本が,本当に確固たる,何と言えばいいんだかはよく分かりませんが,基礎科学力でも,イノベーション力でも,あるいは人々の生活を豊かにするという点でも,いわば先頭を走るために2040年を目指して,どういう人材育成が必要か,その中で高等教育がどういう役割を果たせるか,その高等教育の果たす役割から考えると,どういう仕組みというか,構造になっているのがいいかという,こういう方向は常に頭に入れながら,今,ここに書かれてあるようなスタートラインでの問題意識を検討していただければと思うんですよね。これだけにとらわれてしまうと,どうしても近々の話になってしまうので,今,田中委員が言われたように,基礎科学力を高めるのが何で必要なのかって,つまりこれを高めないことには,将来の,いわば日本のイノベーションという言葉を使えば簡単ななんだけど,新しいものを生み出す力の源泉,新しいものを生み出す知識の源泉が枯れてしまうわけですよね。常に新しい知識が獲得され続けるということが将来の日本の在り方を大きく左右すると。知識というのは何も直接イノベーションの役に立つばかりが重要なわけではなくて,国民を豊かにするという意味での知的資産という考え方もありますし,それが様々な形で日本の将来に役に立っているような議論もあり得ると思うんですよね。そういうことを踏まえつつ,我々のところは大学院部会ですから,高等教育の中でも,さらに上澄みの部分というか,そこがどういう役割を果たして,どういうふうにやっていけばいいのかということを考えていただければと思っています。ちょっと余計なことを言い過ぎました。


【小西委員】

  審議事項の中から2つばかりお願いがあります。1つはリカレント教育についてです。既に話題に上っておりますが,これは,広義には,社会人の学び直しですが,狭義にいうと,有資格者に対して,例えば,弁護士に対して,公認会計士に対しての継続的な専門教育です。本日,お願いしたいのは,まずは,狭義のリカレント教育に関してです。例えば,法曹人や職業会計人は,アメリカの例でいいますと,学部あるいは大学院での教育が前提となって,法曹人や職業会計人を生み出しています。これに対して,会計に関していいますと,公認会計士のリカレント教育は,アメリカ公認会計士協会が行っています。それはCPE(継続的専門教育)という形で義務化されています。日本の場合は,育成に関しては少し言い過ぎかも分かりませんけれども,専門学校がすごく大きな役割を担っていると言えます。日本でのリカレント教育も当該職業専門協会が実施していますが,決して有効に実施できているとは言えません。個人的な意見ですが,このリカレント教育と専門職大学院での教育をリンクさせて,つまり何らかの協力体制を築いて,世界をリードできるリカレント教育を実施できればと思っているのですが,なかなかうまく運びません。つまり,狭義のリカレント教育を大学院が担うのか,職業専門協会が担うのか,それとも協力体制を築くのかという,そういう制度設計のところをここで話し合わないと,いくらリカレント教育を大学院がやりますよといっても,有名無実なものになってしまいます。職業専門協会あるいは大手の法律事務所や監査法人は,大学院なんかは行かなくていいよ,自前で育てるよということになってしまうので,そういう枠組みをここで議論していただきたいのです。それが1点目です。
  あともう1点は,資料の152ページの専門職大学院と博士課程の連携で,専門職から博士課程に進む学生,進学者が非常に少ないという説明がありました。現在,専門職大学院は早期卒業制度がありません。つまりストレートマスターの場合は,2年間,通学せざるを得ないということです。それを1年に短縮できないかというお願いです。現行では,5年で学部と大学院を修了しようと思えば,3プラス2しか考えられないということになります。それを他の修士課程等と同じように,早期卒業の1年か1年半を認めていただくと,4プラス1(1年半)に加えて,修士課程が1年(1年半)で,博士後期過程が3年という形で,修士と博士の連携が可能となります。いずれにしても,専門職大学院におけるリカレント教育の枠組みについて,是非とも検討していただきたくお願い致します。


【有信部会長】

  今の最初の方の話は,アメリカではそれは必須になっていて,受けないと,いわば資格を失ってしまう。日本でもそれを導入しようという方向でやっているんだけど,全くおっしゃるように,いわゆるプロフェッショナル・クオリフィケーションをやっている専門職の団体,例えば,日本で言えば技術士会だとか,そういう団体があるんだけど,ここが実はそれほど力を持っていない。だから会計士であれば会計士協会というのがあって,アメリカの場合は,そういう専門家のグループが,基本的にはその専門家の行動指針だとか,倫理規約だとかいうことを全部決めて,それでやっています。日本でもそれぞれ同じようにはやっているんだけど,そこの部分が,これからどういうふうに変わっていかなきゃいけないか,こういう議論は大いにあり得て,そこの専門家のプロフェッショナルの団体と,それから,プロフェッショナル教育をやる教育プログラムというのは,本当は連動していなきゃいけない。これが実は日本の場合は連動していないんですよね。アメリカの場合は,基本的には全部連動していて,その教育を受けていなければ,そのプロフェッショナル・クオリフィケーションを受ける資格がないということになっているので,かなり密にタイアップをしているという状況があって,こんな話をしても仕方がないんだけど,そういうふうな違いが,例えば,2040年の段階になったときに,日本だけそういう特殊な状況でいられるかという視点から,今のような議論をやっていただければいいと思うんですよね。だから,それをどういうふうに変えていかなければいけないかという話で,後半は何でしたっけ,それで。


【小西委員】

  後半は早期卒業制度の件です。


【有信部会長】

  早期卒業は,多分,難しい話なんだけど,これもどういうふうにやっていくかと。つまり専門職大学院の枠内だけで考えると,極めて厳しい教育をして,本当のプロフェッショナルを育てるような設計をしちゃったんですよね。現実にそれがまたうまく回っていないというので,今,議論をしていますけれども,それをどういうふうに今後やっていくかと。
  ただし,それを考える上で,もう一つ考えてほしいのが,結局,日本の中で,人材の育成をどういうふうに考えるか。今は大学院部会の中では,高度な知のプロフェッショナルということで,博士人材が本当に不足しているので,いかに優秀な人間を博士として育てて世界に送り出すかという,ここに重点的に力を注いでいるんだけど,日本全体から見ると,その人たちも当然必要なんだけど,それ以外に必要な人材がいるわけです。いわば,中堅のプロフェッショナルがないことには全体を支えきれなくて,船頭だけがいても舟は進まない。舟を漕ぐ人もいなきゃいけない。本当に日常的に,そういう専門家が世界の状況から見て日本の中でどうなっていて,将来的にはこれをどういうふうにしていかないと日本としてはやっていけないか,それをちゃんとやらないと日本の労働者の中で,プロフェッショナルな労働者は外国人ばかりという話になりかねないというようなことも,多分,議論していただければいいと思うんですけど,そういう視点でいろんなことを,日本の高等教育の在り方を多分,考えていかなきゃいけない。その中で大学院の担うべき役割をきちんと整理していくということだろうと思うんですけど。
  どうぞ。


【樫見委員】

  よろしいでしょうか。これはお願いなんですが,資料の中に,やはり博士課程の進学者が少ないということで,知りたいなと思いましたのは,10年とか20年ぐらいのスパンで,大学における教員のポスト数ですよね,全体の。これはどこかに資料があれば,博士を出たけれども,なかなか研究者になれないというようなことを把握し,かつ,任期制教育の割合が増えているというのも,少ないポストをめぐって多くの若い教員といいますか,任期付きの教員で競わせて,いわゆる任期なしに持っていく,これはデータとして,できれば大学における教員のポスト数は一体どういうふうな形で増減しているのか,それはやはり大学,若しくは大学院において教員が有益な教育をするためには,教員数,昔に比べると確実に業務増えていますので,の割に我々は何となく人数は少なくなっているなというのを実感しているので,その点は単なる思い込みなのか,現実にデータとして増えているのか,その点は若い人たちが研究者を目指さなくなった,これは外部的に見て,どうも彼らも何となく大学のポストが少なくなっているよなという感触を得ているのがデータ的に示されているのかどうかを,まずちょっと資料として教えていただきたい。これが1点です。
  それから,もう一つは,まず例えば,ヨーロッパなんかですと小中高とかの教員は学士卒ではなくて,大学院卒が当たり前,あるいはアメリカですとか,諸外国で法曹関係者,公務員,こういった方たちは,博士はともかくとして,修士は当然のように出ていると。ところが,日本ではむしろ学士なり,若いうちに取得を取るなり就職をすることが非常にいいような,そういう風潮があるのですが,やはり大学院への進学者を増やすためには,大学院を出る,修士を出る,あるいは博士を出ることによって,若い人たちに何らかの付加価値が明確に,これは可視化のところがあったかと思うんですけれども,そこが明確に分からないと,とてもモチベーションにはならないだろうと。
  なので,企業におけるお金の点だけ書いてあるのですが,例えば,小中高の教員であるとか,公務員の皆さんであるとか,こういった点の表れ方がデータとして出てきた方がいいということと,あと,この部会の話ではないかもしれないのですが,じゃあ,その大学院の高度な人材を養成したときに,日本はどういうふうな将来を考えていくのか,大学院の多くの人たちが出ることによって。そこら辺の点の基本的な理想といいますか,将来像みたいなものですよね,この点,どこかで議論はしているんだと思うのですが,これから短い年限ではなくて,まさに寿命が100年となっていくと,日本の社会はどういう形で知的基盤が備えられて,どういうような学歴といったら言葉に語弊がありますけれども,人たちによって日本が構想されていくのか,そういうことについて一般的にどこかで議論していただくといいかなと思います。
  以上でございます。


【有信部会長】

  どこかというか,ここの関連……。


【樫見委員】

  そうですね。


【有信部会長】

  じゃあ,藤原委員。


【藤原委員】

  関連しますので,お話しさせていただきます。教育のグローバル化のところで,やっぱり教員の国際競争力というのは触れておかなきゃいけないんだろうと思います。もし書いてあったらいいんですけれども,教員のプライシングはとても深刻な問題でして,給料が違うだけではなくて,年金とか,社会保障の関係をトータルで見て,日本の大学は蹴られています。私のような小さな大学でも,世界有数の研究者を採ってこようとすると,研究環境ではイエス,教育環境でもイエス,だけども,サラリーと,プラス年金ですね。要するにキャリアを継続してもらえるかどうかの,その国としての仕組みのところでノーになるわけです。学生たちの国際化とか,就職とか,グローバル化ということもそうですけれども,大学全体のグローバル化を進めるためには教員の流動性,国を超えた流動性をできるような仕組み作りというのはやっぱり重要で,できればこの部会のようなところから,例えば,A国とはキャリアの相互認証をやっているけれども,B,C,Dとやっていないようなことが事実としてあるのであれば,あるんですが,その事実をまとめていただいて,できれば声を上げるような組織になる必要があるんじゃないかなというのが一つです。
  それから,もう一つは小さなことで申し訳ないんですけれども,今,文科省はオンラインを使った国際連携学習システム,COILがえらいはやっているように見えるんですけれども,グローバル化の一つの手だてとしていいのかも分からないんですけれども,長期的に見たときに,本当に教育のグローバル化につながると思っているのかどうかというところが,物すごく素直な疑問なんです。はやり言葉で,ここのところ,えらい促進されようとしているんですけれども,長い目で見たときに,本当にそういうことなのかということについて,もし分かれば教えていただきたいという,2つ。
  以上です。


【有信部会長】

  COILの話は何か分かる? 分からない?


【平野大学改革推進室長】

  ちょっと今,直接の担当がおりませんので,その辺は説明できない,申し訳ございません。


【藤原委員】

  そうですか。すいません,失礼しました。


【有信部会長】

  じゃあ,それは次回にでも。
  それでは,宮浦委員,どうぞ。


【宮浦委員】

  将来的な議論に関連してなんですけれども,特に理系では,もう修士は当たり前になってきていて,今の民間企業では,実質的にかなりリーダーは修士の方の割合が圧倒的に多い中で,博士課程の人材を23歳から27歳ぐらいをターゲットとして議論をするのはちょっと現実的でないと思いますので,博士前期の修士の議論と,博士後期の博士の議論を,ある程度差別化をして,5年以下の議論は,それはそれでいいんですけれども,前期課程と後期課程の議論をある程度差別化して議論するのが将来構想としては重要かなと思っております。


【有信部会長】

  どういう意味ですか。


【宮浦委員】

  博士後期課程について,もう少し柔軟に,若手だけではなく,各世代でPh.Dを採るということはどういうことかということに踏み込んだ議論をするという,修士課程については,もう相当数が進学していますので,一貫教育の重要性は,それはそれであるんですけれども,博士後期は20代,30代,40代,50代,あるいは90代で入学した方がいるっていう話題が出るぐらいですから,少し幅広い議論で,産業界の中でマスターを持っている方がPh.Dコースを取るのが当たり前で,それが大きなメリットになるような仕組みを作るとか,少しどういう形でできるかどうかは分からないんですけれども,一歩踏み込んだ差別化した議論をしてもいいのではないかと思います。


【有信部会長】

  それもかなりセンシティブな議論になると思うんですけれども,つまりPh.Dというのが日本の教育の中でどれだけ差別化されているか。だから,例えばアメリカにいれば,Ph.Dとマスターで明らかに初任給が違う。つまり,Ph.Dを持っているということはそれだけの資質,知識を持っているとみなされているので,それがそのまま働くときの武器になるわけです。ところが,日本の場合は,単なる称号の差にしかなっていないということを1つは御指摘になっているのと,そういう問題をそのままにするか,あるいはもうちょっと本質的に,どういうふうに変えていくかという観点で,やっぱりきちんと議論した方がいいと思います。
  恐らく,マスターという称号は,通用する国と通用しない国があって,これを日本が後生大事にいつまでも守っていくかという議論も本当は必要なんです。プロフェッショナル学位としてのマスターはMBAのように通用しますけれども,それ以外に,例えば今,最初に川嶋委員からありましたが,イギリスでマスターというと,ある意味で特別な意味になってしまうケースもありますし,だからこの辺は,やっぱり少し国際的に見ながら日本の体制を考えていった方がいいような気もしています。それも是非これからよく議論していただければと思います。
  どうぞ。


【大島委員】

  今の点を申し上げたかったのです。2点ございます。
  1点目は,今の議論と似ていますが,実際に博士課程への進学が,特に日本人は,この議論が始まっていてもまだ歯止めがかかっておらず,どんどん減っているという状況です。特に優秀な学生は企業に就職されますので,10年後の中堅になったときに,その人たちがどうなるかについて今から考えることは非常に大事だと思います。
  その意味でリカレント教育が出てきているのだと思います。実際に今,企業の方で30代の方は社会人ドクターとして,大学院に入り直して実際にドクターを取得していますので,多分需要はあるのだと思います。しかし,流動性は非常に低くなっています。理解のある企業には3年間,授業料も払って,企業で丸抱えで面倒を見ていただけるというところはありますが,そのような企業は珍しいんです。やはり学生としてある程度勉強して戻ってキャリアアップしたいという人たちが,気軽と言うと語弊がありますが,自分の今の職に対して,リスクを冒さないで学べるような仕組みを,企業と大学と両方で検討していくのは1つ大事な点ではないかと思います。特に中小企業は基本的にすべて面倒を見ることはできないので,やはり優秀な人材に大学で再び勉強する機会を与えたくてもなかなかできないということも具体的に言われています。その点は是非検討していただきたいと思います。
  もう一点,先ほど若手の博士人材で,リーディングプログラムは,比較的若い,学部からそのまま修士,博士課程に進学する,いわゆる22から27歳の学生が中心です。このような学生に自分たちの要素技術だけではなくて,グローバルな,全体を俯瞰して見るという力を育成するには非常に良い。また、企業が参加するいろいろな事例が出てきており、成功していると思います。これを,全体の博士課程にどのように浸透させていくかというのが1つ課題なのではないかと思っています。リーディングプログラムは,例えば学科とか,学科共同で申請したものしか対象としていないので,例えば私の研究室は,複数の学科から来ているのですが,ある専攻の学生は対象になっていないという場合があります。
  しかし,蓋を開けてみると,リーディングプログラムを受講していない学生が就職に困っているかというと,そういうわけではありません。ですから,学生個人と教員とプログラムを全体として統一して,難しいのは分かりますが,考えていただけるとありがたく思います。是非検討していただければと思います。
  以上です。


【有信部会長】

  どうもありがとうございました。いろんな観点からいろいろ意見を出していただきました。事務局は,今後精力的に議論を進めていくということになっていますので,今回出た御意見をそれぞれ踏まえながら,次回以降の論点設定をよろしくお願いしたいと思います。
  ちょうどリーディングプログラムの話が出たところで,議題4が博士課程教育リーディングプログラムの事後評価結果の報告をまずしていただいて,いろいろ意見交換できればと思っています。
  それでは,長澤部長,お願いします。


【長澤日本学術振興会人材育成事業部長】

  それでは,博士課程教育リーディングプログラムにつきまして,事務局を担当しております日本学術振興会の方から,資料9に基づきまして事後評価の結果についての御報告をさせていただきたいと思っております。
  一番はじめは,前書きとして役割等が書いてあるわけですけれども,1枚おめくりいただきますと,2ページのところに,まず,事後評価の目的ということが書いてございます。リーディング大学院自体は,専門性を追求したプログラムではなくて,より幅広い色々な経験をすることによって,産学官民における博士号取得者の活躍を促すということを目的としておりますので,そのような観点でこのプログラムが実際に機能しているかどうかというところでございます。
  実際の実施方法,対象は23年度から25年度までに採択した62プログラムのうち,23年度に採択いたしました20プログラムについての事後評価でございますけれども,その実施方法といたしましては,2.の「1.実施方法」のところにございますが,「(1)総括評価」といたしまして進捗状況を,まず,申請があった計画に対してどうかという観点で,絶対評価を基本として,他のプログラムとの相対評価とするものではないという形で行っております。その基準としましては,計画を超えた取組はS,計画どおりはA,概ね計画どおりがB,計画未達がCというようなカテゴリーでございます。
  次の3ページに評価のポイントが書いてございます。事後評価におきましては,「(2)コメント」とありますけれども,特にこの事後評価におきましては,プログラムの構築がどのようにちゃんとできているかということをウエイトとしては10%,それから,修了者がどのようにして成長されたのか,キャリアパスがどう構築されたかということを,やはり出口として50%,それから,事業として,大学のマネジメント関係で定着・発展についてどういう配慮がされているかということが40%という割合で評価をしていただいております。
  特に中間評価との違いにつきましては4ページをご覧いただければと思いますけれども,中間評価というのは,やはりその進捗段階でございますので,学位プログラム構築のための取組に主眼を置いた観点からの評価ということを行っております。どういうプログラムが形成されているかという観点でございます。事後評価につきましては,先ほど申し上げました終了後ですので,実績,継続性といった観点での評価を主眼として行ったというところで,違いがございます。
  実際の評価結果の概要でございますけれども,「3.事後評価の概要」のところをご覧いただければと思います。8ページでございますけれども,20プログラムありましたうちの,S評価が4件,A評価が13件,B評価が3件,C評価が0件という形でございます。
  その内容でございますけれども,1枚めくっていただいて9ページでございますが,評価の分布につきまして,特に「中間評価結果と事後評価結果との比較」という丸の2番目をご覧いただければと思いますけれども,評価の視点が異なりますので,単純に比較はできないですが,S評価を受けたものが3件から4件,A評価は9件から13件と増えておりますし,B評価は8件から3件ということで減っておりまして,全体的に評価は大幅に高くなっているところが見られます。これは,このプログラムに対する大学の理解というものが中間評価のときは定まっていなかったわけでございますけれども,年々プログラムオフィサー等の評価も入れまして,大学の方が努力をされた結果,その評価というものが高くなるような,より良い学位プログラムになるような改善が図られた結果というように認識しております。各プログラムにおきまして,毎年度,プログラムオフィサーがきめ細かな提案をしたり,フォローアップをしておりますので,こういったことがプログラムの支援については非常に有効に機能しているのではないかと考えているところでございます。
  次の10ページに,実際の総括した見解としまして,全体として,どのような点が評価されて,どのような点が課題で,どのような点が期待されるかという評価のコメントをまとめていただいたものがこれでございます。まず,全体的に,リーディングプログラムとして評価される点としましては,1番目としましては,このプログラムによりまして,横展開とか組織再編といったもので,全学規模での大学院改革につながったところが発生している。
  2番目としましては,専門教育だけではなくて,社会の諸課題の解決ということを両立するような仕組みに学位プログラムの構築がなされているところがある。
  3番目としましては,特に分野横断的な学位プログラム改革ということで,様々な,アカデミアだけではなく,産学官いろいろなところで通用するような学生さんの育成につながっているところがある。また,中間評価での指摘を踏まえまして,大学の方で積極的な改善が図られておりまして,実際に望んでいるような学位プログラムへの展開が図られているところがあるというのが,事後評価におきまして評価されているところでございます。
  一方,課題につきましては,1番目としましては,中間評価の際にも多かったわけですけれども,参加している一部の教員のみが尽力されておりまして,それ以外の教員の方々はあまりよく理解していないところが見受けられると。
  2番目としましては,専門教育と俯瞰するような教育というものを併存したカリキュラムになっておりますので,学生への過度な負担への配慮というものがやはり必要になるだろうというところがまだあるところでございます。こういう点に対する配慮というものが,プログラムを実施する側に求められるだろうという点ことでございます。
  それから,3番目としましては,補助金の交付を受けて実施していますので,支援期間終了後にこれをどうやって継続していくかという形で考えますと,初めから補助金を前提にしたプログラムを構成しておりますと,なかなか継続性が担保できないというようになっておりますので,実施段階から無理のないような形での定着・発展をどうするかということを,やはり大学において積極的に考えていただくことが必須だろうというところがあるということでございます。
  それから,期待される点といたしましては,1番目としましては、学生さんのモチベーションを高めるという観点からしますと,リーディングプログラムのブランド化ということで,ここに入ることに対する優位性というものを構築していくことが望ましいのではないか。その結果,博士人材全体の価値の向上につながっていくのではないかという点でございます。
  2番目としましては,やはり人材育成事業でございますので,支援期間終了後すぐに終わりということではなくて,長期的に追跡調査をしまして,終了後の成果,実績については検証していくことが重要だろうということでございます。
  それから,3番目としましては,グローバルに活躍できるリーダー人材を育成するという観点で行っておりますので,こういった視点での今後の発展も,やはり是非やってほしいというのが期待される点としてコメントが上がっております。
  もう一つ,4番目としましては,学長のリーダーシップを基に継続・発展させて,大学としてこれを生かしていくということ,特に補助金による支援期間が終了した場合は学内予算の集約というものが必要になってくるわけでございますけれども,そういったことを考えていただいて,より自らの視点で発展をしていただきたいというところでございます。
  それから,5番目としましては,文部科学省に対してですけれども,補助金事業が終了しますが,何らかの形でのサポートをしてほしい,それから,この事業の成果というものを今後継承していくような制度設計をしてほしいというのが,総括的なコメントでございました。
  それ以外に,事後評価の観点ごとに,一部,個々のプログラムごとのコメントについても12ページから記載しているところでございますけれども,概ねよくやっていただいているところを前半書いているわけですけれども,「一方」の下の不十分という評価を得ている点についてだけ御紹介させていただきますと,「プログラム、体制等の構築」という観点からしますと,募集定員に満たなかったプログラムということで,定員割れしているとか集まらなかったプログラムがあるというところ,それから,自大学の出身者とか学生さんの専門性というところに偏りがあった。オールラウンド型や文理の融合等と言っておきながら理系だけ,といった形の偏りが生じたところもあった。それから,プログラムに対する理解不足というものがあるところがあった。それから,海外での実習とか,産業界でのインターンシップというものを義務付けているわけでございますけれども,その体制に不十分なところが見受けられたところもあったことは残念だといった点が不十分なところでございます。
  それから,次のページの「修了者の成長とキャリアパスの構築」に関する不十分な点という評価を得たところの例示でございますけれども,キャリアパスの多様化が少なくて,アカデミア志向の学生さんが結局多かったとか,出口戦略が不十分,就職先の斡旋といった努力がなされていないとか,そういうところが見受けられたプログラムもありましたし,その次のポツですけれども,修士,博士一貫でありながら,前期課程修了後に就職する方が多く見受けられるという形で,実際には2年で修了してしまうというようなプログラムもあったところでございます。それから,グローバルリーダー育成という観点の意識付けが不足しているために,専門性を重視したような研究者養成につながっているというようなプログラムも見受けられたというところは,少し残念な点としての例示でございます。
  それから,その次のページの「(ウ)事業の定着・発展」における不十分な評価を得たものの例示でございますけれども,経済的支援についての給付額,これは実際には,当初に比べると補助金の交付額が減ったということもあるわけですけれども,それにおきまして,直結してプログラムに在学する学生さんの経済的支援が半額になるとか,そういう形の現象が見受けられたところもありますし,継続性が担保されていなかったり、不明確であったりというプログラムが多々あったというところもございます。その結果,定員を減らすようなプログラムも見受けられたというところは,少し残念なところでございます。
  それから,継続はお願いしているわけですけれども,獲得の見込みは立っていないような外部資金獲得というものを前提にして継続性を説明するプログラムがありまして,不安定な点があったというところ。それから,後継となる組織や体制について,どのようなマネジメントで,この博士課程リーディングプログラムをそのまま大学の方で責任を持って継続していく,どのような形になるかということがまだはっきりしていないプログラムも多数あるということでございます。
  それから,若手教員に対する業務負担の増加とか質保証という観点で,そういったプログラムの負担の一部の教員への集中という点は,特に若手教員に負担が多くなっていることがあったというところが残念な点で,問題であったというところもございましたので,御紹介させていただきます。
  この事後評価の前段階といたしまして,次のページですけれども,事前にアンケート調査をしまして,修了者,学生,プログラム担当者について,このリーディング大学院に対するアンケートを行っていろいろ聞いたところでございます。
  丸2番目で,回答数が1,732名という形で,ほぼ加入している方々から回答を頂いたところでございますが,そこのポイントだけかいつまんで御紹介しますと,次のページの4番目,「プログラムに対する感想」というところがございますけれども,当然経済的な支援を頂いたということとか,他の分野の学生さんとの交流とかインターンシップとか,そういったものを得られたということに対しては非常に皆さんが高く評価をしているところでございます。
  それから,次の,「プログラムで受けた指導」ですけれども,研究室のローテーション,それから,メンターとかによる授業外のサポート,企業,その他学外者からの指導,助言についても非常に有効だったという回答を頂いております。
  それから,7番目のところにございますけれども,国内外の研修・インターンシップ,留学,その他の学外活動に対しては,これも有効だったということで,専門分野とともにいろんな付加的なプログラムが多数用意されていて,必須になっているものですから,負担が大きいんですけれども,概ね学生さんは満足されていて,このプログラムは高く評価しているというところがアンケート結果で見受けられるところでございます。
  結果的には,次のページの10番の,「プログラムの効果・負担」ですけれども,後輩にもこのプログラムを勧めたいかどうかということを聞きましたところ,多くの方々が「そう思う」と回答しているところでございます。
  一方で,これは感想ですけれども,補助金の支援期間終了後の対応が未定の大学が多かった関係もありまして,特に学生さんが不安を持っておりまして,自分たちは入ったけれども,後輩が入ってこないとか,そういったものはどうなのかといった意見がありました。
いろんな観点に対して,特に大学はこのプログラムを開始するに当たりましては,やはり責任を持って継続性をしっかりと担保していただくということは必須かなと思っております。特に,事前にこのプログラムで採択されたいから応募しているというふうなところで,大学が大学院改革を行いたいという観点で応募したものに補助金が付いてきたというようなイメージで考えて取り組んでいないところは,補助金の支援期間が終了すると維持できないという形に陥っているところが結構ございますので,発想を変えていただくということは非常に重要かなと認識をしているところでございます。
  おおむね,御説明は以上でございます。


【有信部会長】

  どうもありがとうございました。いろいろ多岐にわたって事後評価の説明を頂きましたけれども,何か御質問等ありましたらどうぞ。


【天野委員】

  ここの中にもリーディングプログラムの審査・評価部会委員をされている方が何人かいらっしゃると思うんですけれども,私もオンリーワン型の委員をやらせていただきました。先ほど,どなたかの委員からお話があったと思いますが,このプログラムは教育というところに非常に力点が置かれたプログラムだったと思っています。それで,とにかくグローバル人材を育成するということで非常に効果も出まして,うまく先生方が一致団結して実施されたプログラムは非常に良い効果があがったと思います。
  ただ,委員の立場でいうと,とにかくこの審査・評価は大変でした。5年間で,1年ごとぐらいに大学に行って,学長をはじめ先生方に向かって,全然違いますよ,何考えているんですかということを委員が言い続けるんですね。とにかく先生方が補助金の交付を受けて,これであとはもう自分たちのやりたいようにやるというふうにお考えになった大学はほとんどうまくいっていません。やっぱり言い続けることによってお変わりになった大学はそれなりの成果は出ていたと思います。
  現地に行ったときには,必ず学生さんたちともお話しさせていただきます。この事業はこういう趣旨のものだけどという話をさせていただくと,学生さんたちは,あっ,そうだったんですかと,先生からはそういう話は聞いていませんというふうにお話しになる学生さんが,プログラム数としては結構多かったんです。5年間フォローアップし続けまして,かなり成果を出していただいたプログラムも多かったと思いますし,このリーディングプログラムの成果として,研究員だけを目指していただくのは事業の趣旨ではありませんと初めに申し上げたんです。けれども,良い学生が出てくるとどういうことが起こったかというと、先生方が抱き込みに入ったのです。グローバル人材として外に輩出するのではなくて,この学生を置いておきたいというような話になって,でも,それも1つの答えかなという気はしましたけれども,学生さんたちはかなり認識を深く持っていただいていて,いいんです,今は研究に打ち込みますと。ただし,いずれ世界に出ていきますというふうにお答えいただいた学生さんが結構多かったのが印象的でした。
  今ご説明にあったように,これは良いところ,悪いところがあったと思いますので,是非分析していただいて,大学院教育に生かしていただくとよろしいかと思います。
  ただ,最後に付け加えますが,大学側の意識改革が必要だということを,私は切に感じました。


【有信部会長】  先生が囲い込みやっちゃいけない。それが一番問題で。
  どなたかほかに質問等ありますでしょうか。今いろいろ5年間御努力いただいた天野さんから補足のような説明がありましたけれども,大体そんな感じかなというふうに思います。
  どうぞ。


【永里委員】

  これは非常にいいプログラムで,産業界もおおいに歓迎しております。これを補助金がなくなった後も継続してやるところは出てきていると思うんですが,その際について,割合は幾らぐらいですか。


【長澤日本学術振興会人材育成事業部長】

  振興会としましては,全ての大学に継続してくださいというふうに言っておりまして,大学によりましては,自己財源を何とか集めて継続します,若しくは寄附金とか基金を作ったりというところも出てきておりますので,何らかの形で継続していただけるものだと思っております。


【天野委員】

  ごめんなさい,言い忘れました。実は私,産業界の一部上場企業のある方たちとの勉強会というのに参加しているんです。このリーディングプログラムの内容をそこでお話ししたら,結構乗ってくる会社があったんですよ。なので,せっかくこういうものをお作りになっているので,これは文部科学省かもしれませんけれども,この成果を狭いところに閉じ込めておくのではなくて,広く産業界にもアピールすべきだろうなというのを感じています。


【有信部会長】

  「AERA」にも載せたんだけどね。
  どうぞ。


【迫田委員】

  一応経団連に入っているような会社は大体認識はしていると思います。むしろ奪い合いになっていまして,1人採るのが非常に大変な状況になっていますので,それは十分浸透してきているんじゃないかなというふうに感じます。


【有信部会長】

  ありがとうございました。そういう意味では,かなり評判が良いケースを耳にすることが多いと言った方がいいんですかね。産業界サイドからも非常に評価が高いということを。あまり産業界サイドから悪いうわさは聞いていないですね。大学サイドはいろいろ問題あると思っているかもしれませんけど。
  どうもありがとうございました。それでは,本日の議題はこれで一応終了ということで,次回からかなりまた詰めた議論を進めることになると思いますので,よろしくお願いします。
  それでは,今後の日程について,事務局からよろしくお願いします。


【平野大学改革推進室長】

  失礼いたします。今後の審議のスケジュールについては,先ほど資料の方でお示しさせていただきましたところでございますが,具体的な日程につきましては,また調整をさせていただきまして,追って御連絡をさせていただきたいと思います。
  また,本日の資料につきましては,いつもどおりでございますが,郵送を希望される先生につきましては,机上に置いてございます付箋などに郵送希望ということを御記載いただいて,机の上に残していただければ,御勤務先の方に,特にお断りがない限りは送らせていただくということで考えてございますので,よろしくお願いいたします。
  本日はありがとうございました。


【有信部会長】  それでは,どうも本日は活発な議論,ありがとうございました。しゃべり損ねた方もおられるかもしれませんが,申し訳ありません。こちらの不手際でした。
 それでは,これで閉会とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。


―― 了 ――

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