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大学院部会(第57回) 議事録

1.日時

平成23年10月26日(水曜日) 13時~15時

2.場所

文部科学省 東館13階 13F1~3会議室

3.出席者

委員

(委員)金子元久委員
(臨時委員)有信睦弘(部会長)、川嶋太津夫、河田悌一(副部会長)、田中成明、中西友子、深尾京司、山田信博の各臨時委員
(専門委員)有川節夫、板橋英之、伊丹敬之、荻上紘一、桐野髙明、小泉潤二、五神真、菅裕明、角南篤、続橋聡、本間謙二、松田良夫、吉川裕美子の各専門委員

文部科学省

小松私学部長、常盤高等教育局審議官、伊藤生涯学習政策局審議官、杉野生涯学習総括官、藤原大学振興課長、樋口大学改革推進室長 他

4.議事録

【有信部会長】 それでは時間になりましたので、第57回大学院部会を開催させていただきます。
 本日は、ご多忙中のところを出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日は、まず平成24年度の概算要求の内容について文部科学省のほうから説明していただいて、その後で大学院設置基準等の一部改正の方向性について審議をしていただきたいと思います。
 大学院設置基準等の改正の方向性については、今後、大学分科会での審議をいただいて、その後、パブリックコメント、それから法令改正手続等がございますので、大学院部会としては、可能であれば本日、方向性の決着をつけたいというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局から配付資料の説明をお願いします。

【樋口大学改革推進室長】 失礼いたします。お手元の議事次第をめくっていただきまして、資料1といたしまして、大学院部会の56回の議事録の案でございます。これに関しましては、ご意見がございましたら、11月4日までに事務局までご連絡いただければ幸いでございます。
 続きまして、資料2-1といたしまして、先ほどもご紹介ありました「大学院設置基準等の一部改正の方向性について」、それから資料2-2といたしまして、「博士論文研究基礎力審査の導入について」という資料がございます。
 それから、参考資料1-1といたしまして、平成24年度概算要求(大学院関係)についての資料がございます。それから、参考資料1-2は、「高等教育局主要事項」と掲げています、縦の資料でございます。
 それから、参考資料2といたしまして、「博士論文研究基礎力審査に関する参考資料」というものを付してございます。
 過不足ございましたら、事務局までご連絡いただければ幸いです。

【有信部会長】 資料については、もし過不足あれば、事務局にお願いします。
 それでは、先ほど申し上げましたように、審議に入る前に、来年度予算の概算要求について、文部科学省から説明をしていただきます。

【藤原大学振興課長】 失礼いたします。参考資料1-1でございますが、こちらのほうで、大学院に関連する予算の一覧という形でお示しをしてございます。全体として幾つかの柱があるわけでございますけれども、博士課程教育リーディングプログラムのほか、アカデミック・パイオニアの養成、それから、大学の国際化のための体制整備や、世界に通用する全学的な教学システムの確立などといった、予算の柱立てがなされておるところでございます。
 1枚めくっていただきまして、博士課程教育リーディングプログラムでございます。こちらは、現在、初年度ということで日本学術振興会において審査が行われているところでございますけれども、来年度の予算につきましては、今年度のオールラウンド型、複合領域型の環境、生命健康、安全安心、オンリーワン型の追加採択に加えまして、複合領域型の物質や情報、多文化共生といった分野をさらに追加をしたいという内容になっているものでございます。
 また、次のページがアカデミック・パイオニア養成支援事業でございます。これは、リーディング大学院とは違って、左下のところに事業の概要を書いてございますが、まさにアカデミアの後継者養成ということに焦点を当てた事業でございます。そうした博士の学生をアカデミアの後継者として養成するような教育システムの構築とキャリアパスの一層の明確化を図るということを目指して、大型の競争的外部資金の獲得実績を有するような卓越した専攻・専攻群を選定していく。そして、そこの優秀な学生に対してリサーチ・アシスタント等の経費を、5年を単位に支援し、そうしたアカデミアの後継者を持続的に輩出する教育システムを構築するといった内容になっております。
 それから、次のページが大学教育改革新展開推進事業でございます。これは、大学全体ということでございますが、主眼としては、学部の教育改革ということがございます。それも含めて大学全体としての教学システムの改革ということでございますが、一番下のところで書いてございます、学長がリーダーシップを発揮していただいて、大学としての使命を明確化する。そして、学部や、さらには大学の垣根を超えたような教育改革を断行する。そして、それらを実施するための全学的な教学ガバナンスの確立をする。こういったことを一体的にやり、これまでいろんな教育改革が行われてきたわけでございますけれども、一部の個々の取り組みということではなくて、全学的なシステムの改革につなげる、そういった大胆な改革構想を支援する、そういった事業として構想しているものでございます。
 それから、1ページ飛ばしていただきまして、グローバル関係の事業が2つございます。1つは、Global30+というふうに銘打ってございます。その左下に書いてございますけれども、これまでGlobal30という事業がございまして、13大学が選定をされているところでございますが、この事業というのは、ご承知のように、主として留学生の受け入れを中心とした事業ということであったわけでございますけれども、新たな30+では、日本人学生をどうやって海外に送り出しをしていくのかと、そして、そのための環境の整備はどうやっていくかというところに主眼を当てた事業ということでございます。そして、新たに60大学を採択し、支援したいという内容になっておるところでございます。
 それから、その次のページ、1枚めくっていただきまして、大学の世界展開力強化事業でございます。これも今年度からスタートしているものでございますけれども、キャンパス・アジア構想というものに基づきまして、日中韓を中心とした共通の学生交流のフレームワークをつくっていこうということで事業を推進しているわけでございますが、来年度につきましては、そこに1、2、3と書いてございますけれども、1つは、対象を日中韓以外のASEAN諸国に広げていくという内容。それから2つ目でございますけれども、今回の震災を契機としてさまざまな交流の輪が広がっているわけでございますが、そうしたものをさらに発展をさせていくような教育システムの支援というもの。それから3つ目は、日本語・日本文化の世界展開と書いてございますけれども、留学生交流の枠組みを使いながら、日本人の留学生が派遣先において日本語や日本文化の展開を図っていく、そういった事業を進めていきたいといった内容が新たに盛り込まれているところでございます。
 それから、9ページでございますけれども、これはそういった留学生の交流を進めていく上で既存の施策をさらに充実するということで内容を盛り込んでいるものでございますが、左のところで、短期派遣ということで3カ月以上1年未満の学生数を760人から3,000人にする、それから1年以上の長期派遣を100人から200人に拡大するといった内容でございます。今年度は、ショートビジット・ショートステイということで3カ月に満たない、非常に短い期間の受け入れと派遣というものを事業化しているわけでございますけれども、来年度はより長期のものをさらに充実を図りたいということで要求をしているところでございます。
 それから、最後のページ、グローバルCOEでございます。こちらは、既存予算でございますけれども、来年度につきましては、19年度採択、初年度採択のものが今年度限りで終了いたします関係で、その部分を落とした額が来年度の要求となっているということでございます。ただ、今申し上げたCOE以外の事業につきましては、基本としていわゆる要望枠という形で首相枠のほうに要望されているという内容になっているわけでございますけれども、COEプログラムにつきましては要求枠ということで、既存の枠の中で既定の予算を要求しているという内容でございます。
 以上、簡単でございますが、説明申し上げました。

【有信部会長】 それでは、ただいまの説明に対してご質問あれば、よろしくお願いします。

【川嶋委員】 大学院振興についてこれまで様々な補助金等が支出されておりますが、どちらかというと理・工・医関係のところに重点的に予算づけが行われてきたように思いますので、先ほどのアカデミアの後継者養成ということで言うと、人文社会系の大学院をいかに日本の高等教育の中で充実していくかというのは、非常に大きな課題だと思います。特に人文社会系の研究者・教員というのはある意味、学士課程で教養教育を中核的に担う人材になるということもあるので、ぜひ人文社会系にも何か振興できるような施策を考えていただきたいと思います。

【藤原大学振興課長】 おっしゃる点は、アカデミック・パイオニアの事業の中で十分考慮していきたいと思ってございます。この分野の設定というのも、これから予算の作業がございますけれども、ご指摘の人文社会系も含めて対象にしていきたいというふうに考えております。

【有信部会長】 今の点に関連して、別のところでも申し上げたことがありますけど、ここの事業概要に書いてあることが非常に気になります。というのは、今の博士課程の問題で大きな問題の一つに、ポスドク問題があります。ポスドク問題の一つの遠因は、大学の教員が、アカデミック・キャリアに行く人は合格、それ以外は落ちこぼれという感覚で振り分けてしまうため、ポスドクがどうしても、アカデミック・キャリアに行けない人はみんな落ちこぼれだという感覚を持ってしまうことにあります。こういう感覚を助長するような方向で施策がとられるのは今の問題に対してあまり好ましくないので、この説明文をよく考えていただきたいということと、2番目は、日本の大学のもう一つの問題点として昔から言われているインブリーディングの問題があって、ここに書いてあるとおりのことをそのまま読んでしまうと、大学の教員が自分たちのところでの優秀な人たちを囲い込んでしまう、これを助長するということに資金をつけるというようにも読めるということで、これは今盛んに必要だと言われている人材の流動化に対しては逆向きに働く可能性があります。それについてもやはり配慮が必要だと思います。アカデミック・キャリアの中に優秀な人間をすくい上げなければいけないという、この問題意識は非常によく理解できますが、こういう書き方をしてしまうと、日本の大学にとって問題だと言われていることがある意味で無反省に助長されてしまうという可能性があるので、今、川嶋委員が言われたように、これは例えば人文社会系に限ってやるというのであればまだ話はわかりますが、人文社会系も考慮しますというような答えでは少し問題があるのではないかと思いますが、この辺はどういう意図でしょうか。

【樋口大学改革推進室長】 これまで大学院部会でもご議論していただいているとおり、博士号取得者がグローバルに産学官問わず活躍していくというような形にするために、さまざまな改革をしなければならないという話がございました。そういうことから、リーディング大学院の枠組みがございます。リーディング大学院は、大学の英知を結集し、第一級の教員を集めて、そこで優秀な博士をリーダーとして送り出していくということでございますけれども、他方で英知の部分をどうつくり出していくか。これは、大学の教員の力量といいましょうか、拠点性というものがやはり影響してくるということもございます。そのような意味で、こうしたリーディング大学院のような枠組みと、今回要望させていただいていますようなアカデミックの人材育成というものが二本柱として大学院の博士の人材養成の形という形でついていくということが、やはり必要なのではないかということでこのようなことを要望させていただいているということでございます。これはやはりリーディング大学院の役割も含めてトータルとしてご説明していきませんと、片一方だけだとそのような誤解を招きかねないという話は、ご指摘のとおりだと思ってございます。
 また、先ほどインブリーディングの問題というものがございましたけれども、私どもとしては、この事業をもってインブリーディングを助長するということをよしとしているわけではございません。ただ、よく言うプロジェクト経費が、博士を養成するという名のもとにプロジェクトの労働力として博士を使用しているという側面があるということがございまして、優秀な人材を引きつけて、その力量を最大限まで高めるという観点に立てば、そうした博士の養成の仕方ではない、しっかりとした形にしていく必要があると考えております。つまり、博士となった人間の将来を見据えながら育てるという観点で、どういうような拠点形成をしていくかという観点がやはり必要だということがございまして、このような形にしておるわけでございます。おっしゃるようなご指摘は、予算が実際に通ればという話にはなるわけですけれども、旧来型の徒弟的な大学院教育というものを助長することが絶対にないように、そこは留意していきたいというふうに思います。

【山田委員】 私も人文社会系をぜひとも、もっと応援をしていただきたいと思っておりまして、特にこれからの国際化や我が国の国際的プレゼンスということを考えたときに、人文社会学系が相当な努力をされているというのはよくわかりますが、まだまだこれからのような印象があるのではないかと思いますので、ぜひとも人文社会学系を勇気づけるようなプロジェクトというのもお考えいただくとありがたいと思っております。

【中西委員】 私も、今おっしゃったことに大賛成で、理系の人でも文系の素養が育つようなシステムは、是非作り上げてほしいと思います。
 ただ、システムづくりと同時に、教員についても考えていく必要があろうかと思います。ヨーロッパやアメリカでは教員の教育に対する情熱が、日本と全く違うように思われます。日本では研究面の教育は大学院生を手足のように使うという批判もあるくらいよく行われているのですが、一般の教育に対する情熱は日本ではかなり低いと思われます。そこで、どういう施策の下でこうなったのかなどについて少し長いスパンで調査をして、探っていただければと思います。例えばグローバルCOEなどで外国でセミナーをする場合、外国の先生方は、まずどう教えるかということについて得々と議論を始め、日本人の先生はそれに引きずられてしていくというような場面が多いと思います。そこでこのような教育面の改革もぜひお願いしたいと思います。

【五神委員】 ここでも度々議論してきたことですが、博士の学生を着実に支援していくということが、21世紀COE、GCOEの10年でかなり制度として定着している中、学生はGCOEが終わるということから、就職が厳しいこともあって非常に不安になっているような状況です。そのような中アカデミック・パイオニア養成支援事業で安定した支援をすることを安定的な継続として打ち出すのは賛成です。一方で、今ご指摘があったように、今までの漫然としたものを続けるということではないことがきちんと伝わることが大事です。これまでにも21世紀COEからGCOEに向かってかなり厳しい選別をしました。前期の大学院部会の検証でも、21世紀COEのときにかなり努力をしていいものが立ち上がったけれども,惜しいところでGCOEにつながらなかったところは、GCOEがなくなったということによってかなりパワーダウンしているということが見てとれました。今回提案されている事業が21世紀COEとGCOEの中間ぐらいの数であるということだとすると、より厳しい選別を行うことを前提とするものであるというメッセージを出すことが、この予算を国民に納得してもらう上で重要ですし、学生に対するメッセージとしても必要だと思います。この1枚紙は、一方的に要求しているだけのように見えるかもしれません。この事業を応援したい立場としては、心配だなあと感じます。

【藤原大学振興課長】 今、先生からご指摘いただいたような話は、十分留意していきたいと思っております。予算のいろんな仕切りもございまして、制約もございますので、今後、査定の過程の中でより明確化を図っていく部分も当然あろうかと思っておるわけでございますけれども、その趣旨とするところは、まさに五神先生がおっしゃった、きちんとした人材養成をするシステムとしてそれが確立されて安定的に継続していくというところが大きなポイントでございまして、そこに十分焦点を当てた形で事業をやっていきたいという考えでおります。

【小泉委員】 私も、人社系の強化については強く賛成させていただきたいと思います。この予算自体というよりは、先ほど中西先生がご指摘になった、教員の教育に対する情熱や熱意が低いという点についてのコメントです。1つは、欧米の大学では教員が教員として訓練されているということがあります。あるいは教員としてのミッションが植えつけられているといったこともありますが、そういう個人的なこととは別に、制度的な問題として、日本の大学では教員の負担がますますふえてきているということも非常に大きいと考えております。COEやリーディング大学院など、そのようなプログラムにかかわろうとする、あるいはそれを牽引していこうとする人たちに対する負担がどんどん重くなって限界に近づいているという状況があります。つまり、教員のほうも支援しなくてはならない。学生を支援するのは当然ですが、同時に、教育の改革を担おうとする教員に対してどのようなよい環境をつくり、あるいはどのようなインセンティブが得られるようにするかという点も視野に入れて一緒に考えていただきますと、システムとしてより有効になるのではないかと思います。

【樋口大学改革推進室長】 実は、今回、アカデミック・パイオニア養成支援事業を要望させていただいていく議論の中で、これまでグローバルCOEが果たしてきた利点と、また仕分けなどで指摘されてきたようなことも含めて、検討をさせていただいておりました。グローバルCOEというのは、博士の人材養成であるとともに、研究プロジェクトに取り組むという側面もございます。こうしたことで、実はGCOEの申請に際して、拠点のリーダーあるいは中核になる先生方がこういう取り組みをすると一生懸命作文をされて、その結果として通った。そのプロジェクトをどう進行していくかということがその後の中間評価・事後評価で問われるというような話になりまして、拠点の先生方を忙しくしている一つの要因ではないかという部分もございました。研究面においては、COEが果たしてきた実績が、外部獲得資金なども含めて、かなり根づいてきているという面もございまして、どういうプロジェクトをおこなっていくかということで審査するということではなくて、ここに科研費というふうに掲げてございますが、科研費と書いたのは、人文社会系も含めてオールラウンドに学術研究を見ている研究資金の指標としてはやはり科研費しかないだろうという認識のもとにここに書いているということでございますけれども、そうした実績を見つつ強いところに支援するわけですが、その強いところが教育に対するしっかりとした体制を組んでいるかどうかというところをむしろ重視して選び、研究プロジェクトを立てたがために、それを着実に実行しないと評価が悪くなるというような形にすることからは、やはり我々は一定程度卒業していかなきゃいけないというふうなことが背景としてございます。そういうことで我々としても、我々のできるところで、少しずつではあろうかと思いますけれども、そういう中核になる先生方の忙しさというものを少しでも軽減したいというふうな思いは共有してございます。

【小泉委員】 今の教員は、例えば欧米と比べたときに、よく雑用が多いと言われます。要するに、すばらしい教育ができる、あるいは研究ができるというのは、本当に教育と研究だけにすべてを集中してできるという、そういう環境が事実としてあるからだと思いますので、こうした拠点ではそれを目指していくことが必要ではないかと思います。

【河田副部会長】 私立大学に属する者として申したいと思いますが、4ページの、大学教育改革新展開事業の「学長のリーダーシップによる全学的な教学システムの一体的推進」で、学長にリーダーシップを与えるということは非常にいいことだと考えます。101億円要求していただいているということは、ありがたいことだと思います。大学分科会でも3つの課題があって、その3つ目の課題として、ガバナンスの強化ということが問題になっております。今、私学事業団のほうでも、全国6カ所で大学の学長あるいは理事長を集めて、建学の理念をもとに中長期計画や経営戦略を策定するといった、ガバナンスをきちんとすることということの重要性を論じております。昨年は金子先生にもご講演いただきましたし、今年は、先々週、名古屋で有信部会長にお話しいただきました。国立大学の場合は、法人化ということで学長なり総長の力がかなり強くなってきたと言えると思います。しかし、私立大学はいろんな形があって、慶應や早稲田のように塾長・総長で理事長と学長を兼ねているものもあれば、理事長がいて、学長がいて、あるいは総長がいるとか、キリスト教系の学校の多くは3人体制でありますし、多くの私立大学は学長と理事長の2人、いわゆる両輪体制であります。学長は、大学の会計のこと、あるいは財政のことは全然無知で、勝手なことを言っていればいいということではなくて、特に今、私立大学は大変な時代ですから、学長がきちんとそういう財政的なことが理解できるということが必要だと思いますので、この4ページの新展開事業は、非常にありがたいものをつくっていただいたと感じています。ただし、これを選ぶときに、旧帝大や国立大学に偏るのではなく、ぜひとも、私立大学にも目配りをしていただきたいというのが、副部会長でなく河田個人としての意見でございます。

【有川委員】 参考資料1-1の4ページの下に「大学の機能別分化を推進するとともに」と書いてあります。これは7つのカテゴリーが示されていたかと思いますが、よく考えてみますと、分化を推進するというよりも、大学の機能を本来期待されているように強化していくことではないかという気がします。私どもは別な場所では「機能強化」という言い方をしているところです。資料の他のところを見ますと、「大学としての使命の明確化」などの表現もありますので、ここは機能を何か分けてしまえということではなくて、強化を推進するということでいいのではないかと思いますが、やはりあの7つのカテゴリーにこだわるべきだということなのでしょうか。

【藤原大学振興課長】 それについては、これまでもさまざまな議論が行われてきたと思いますけれども、もともと中教審で平成17年に機能別分化ということを答申していただいたわけでございまして、そのときから、7つの機能に色分けしていくということではなく、各大学は当然それぞれさまざまな機能をあわせ持っているわけであって、それを前提にした上でのそれぞれの機能の強化ということだと思いますので、それを前提にした上での書きぶりになっております。ですから、機能別分化という言葉が確かにそういうふうに若干間違って受け取られてきたという経緯はあるわけでございますけれども、もともとそういう趣旨のものであったという前提でここは書いているところでございます。

【有川委員】 その次のところが「世界に通用する教育」云々となっておりますが、7つの中には世界ということはあまり意識しなくてもいいようなカテゴリーもあったわけですから、ここは文章の中で整合しません。ですから、そういう意味では、「機能強化を推進する」としておけば、問題はないのではないかと思った次第です。

【藤原大学振興課長】 世界に通用する教学システムというのは大学教育部会でも大きなテーマだと思いますが、これも機能別分化と必ずしもリンクさせて考えるということではないと思いますが、これだけグローバル化が進んでいる中で、国際交流というのはいや応なく進んでいくと。その中で各大学は、互換性があるような基本的なシステム、それから、交流がもっと展開・進展できるような形でのいろんな意味での教学システムの改善ということが求められているのではないかという問題意識で書いているものでございます。いずれにいたしましても、今ご指摘いただいたようなところは十分、私どもとして配慮をして、意をとめて事業をやっていきたいというふうに考えております。

【有信部会長】 いろいろ貴重な意見が出ましたので、具体的に予算取りのためにいろいろ表現を工夫されたのはわかりますが、実行に当たってはぜひ、今出たような意見を配慮しながら、いい方向に動くような実行形態に落とし込んでいただきたいと思います。それから、1つだけコメントしたいんですが、今、教員の時間がどんどんなくなってきているというのは、法人化のせいだとか、そうではないとかいう議論はありますが、一様に私立大学も国立大学も教員の研究・教育に対する時間がなくなっているということが金子先生たちのやられた統計でも出ています。この問題は、単純に雑務に教員が振り回されているということだけではなくて、いわゆる教職の仕事の割り振りという意味での大学内でのマネジメントの問題と、それから外部資金の中である意味でどうしても、研究そのものに振り向けられるお金にみんなこだわって、研究を遂行するに当たって必要なさまざまな附帯的な業務に割り振られるべき資金の手当てができてない、これを一般的に担保するためにいわゆるオーバーヘッド30%というガイドラインがあったわけですけど、これが今はなし崩し的になってしまっている。したがって、共通にそういうことが担保できない中で、具体的に教員の負荷を主として研究や教育に振り向けられるようにするために必要な雑用・雑務、あるいはそれに必要なインフラに振り向けられる部分の資金というのが、実際の予算組みの中で考えられていないんですね。ですからそれは、外部資金としていわゆる競争的資金を提供するサイドとしての文部科学省においてもよく配慮をお願いしたいというふうに思いますし、大学サイドは大学サイドで内部のマネジメントをもう少しよく議論をしていく必要があるというふうに思っています。
 それでは、非常に貴重なご意見がいろいろ出ましたので、これを具体的に、予算が認められたら、この実行上でぜひ有効に活用できるようにしていただければというふうに思います。
 それでは、議事に入りたいと思います。前回までの大学院部会で、いわゆるQualifying Examinationの導入について、その制度的な取り扱いの議論をしていただきました。本日はより具体的に、大学設置基準等の一部改正の方向性について、議論を進めていきたいと思います。
 資料2-1及び2-2について、事務局から説明をお願いしたいと思います。

【樋口大学改革推進室長】 資料2-1をおあけいただければと思います。「大学院設置基準等の一部改正の方向性について」と題する資料でございますけれども、これは、本年1月31日に大学院答申でご提言いただいた趣旨を実現するために、8月に今後5カ年の第2次大学院教育振興施策要綱を策定いたしまして、その中で種々の制度改正の事項というものを記載してございます。これまで、先ほど部会長からご発言ございましたけれども、主に、Qualifying Examination、今回、博士論文研究基礎力審査というふうに題してございますが、これに関して、ヒアリングを行い、論点の整理などを行ってまいりましたけれども、今後の分科会、それから、そのパブリックコメント、その改正といったことを経て、この施策要綱においては今年度中に改正という方向を示してございますので、このような話の中で、今年度中に改正すべく、同時に、改正しようとする事項とともに、一連のものとして改正の方向性として、資料2-1の形で2枚にまとめたところでございます。
 構成している要素は、大きく2つございます。1番といたしまして、博士論文研究基礎力審査の導入ということでございます。これに関しましては後ほど資料2-2で詳しく説明させていただきますので省かせていただきますが、裏をおめくりいただきますと、2番目といたしまして、大学院入学者選抜に関する規定の整備というものがございます。これにつきましては、平成15年に設置認可にかかわる事項の準則化というものをするために、今まで内規等で定めていたものを大学設置基準などで法令上明記するという作業を行ったわけでございますけれども、この中で、入学者選抜について、大学設置基準においては、「入学者の選抜は、公正かつ妥当な方法により、適当な体制を整えて行うものとすること」という規定が設けられております。これは、大学に関しましては大学入学者選抜の実施要項というものを毎年策定している、この根拠となっているものでもございます。他方で、大学院につきましては、大学院設置基準には同様の規定はございません。ただ、大学院の入学者選抜の実施要項というものは、直近でありますと平成20年に通知の形で発出しているというような形になっております。大学院に関しては、入学者のアドミッションポリシーというものを明示するとともに、公正な入学者選抜を行うということの必要性は大学院、学部とも変わりはないところでございまして、こうした実施要項というものを出していくという観点からも大学設置基準と同様の規定というものをこの際整備する必要があるのではないかということで、まとめてございます。これが、一つ、入学者選抜に係る規定の整備でございます。
 一旦省かせていただきました博士論文研究基礎力審査の観点につきましては、資料2-2をご覧ください。この2-2を1枚おあけいただきますと、「博士課程(前期)の修了要件に博士論文研究基礎力審査を加えることについて」と題するものがございます。この説明に入ります前に、まず我が国の博士課程の現状につきまして若干ご説明申し上げなければならないところがございますが、博士課程というのは、博士論文の作成というものを集大成とする課程でございますけれども、現在、5年制の課程のうち、一貫制というものはわずか2%にすぎないということで、ほとんどの5年制の博士課程というのが前期2年と後期3年の区分制博士課程という形をとってございます。この区分制博士課程の前期は修士課程として取り扱われるという形になってございまして、その修了要件は、修士課程と同様、修士論文または特定課題の研究成果の審査と最終試験の合格となってございまして、いずれにしても一定の研究成果の提出をもって修了を審査するという形になってございます。
 これに対して、これまで中央教育審議会大学院部会では、優秀な学生をすぐれた博士に導くために、プログラムとして一貫した博士課程教育を確立していくべきだということを提言しておりまして、そのために専攻分野や関連分野の専門的知識というものの基礎が確実に修得されて、それをもとに博士論文研究を主体的に遂行するために必要な能力が備わっているかということが包括的に審査されることが重要であるというふうに提言されているところでございます。
 したがいまして、今回、我が国の博士課程の構造というものを念頭に置きながら、中央教育審議会の趣旨を実現するためには、区分制博士課程における修士論文、あるいは特定課題研究成果の審査という、研究成果評価型の現状の修了要件との整理というものがやはり必要となってくるところでございまして、先ほど申しました包括的な審査というものの合格というものを前期の課程の修了要件に組み入れていくことが妥当ではないかということが、全体の論旨でございます。
 3枚目に博士論文研究基礎力審査の仕組みと対象を書いてございます。これに関しましては、中央教育審議会の答申にございます専門分野や関連分野の専門的知識の基礎が確実に修得されて、主体的にその研究を遂行するために必要な能力が備わっているかということを包括的に審査するということを実現するために、これを博士論文研究基礎力審査というふうにした上で、この構成要素を、一つには、博士論文研究に係る分野、あるいは専攻分野、あるいは幅広い関連分野の専門知識及び能力というものを筆記により確認する部分とともに、博士論文研究に係る背景やその意義、あるいは展望に関する認識や課題を設定し、研究を推進していく能力というものを研究報告あるいは口頭試問によって確認するという部分の2段階で構成するものとして、研究能力の基礎を問うという修士課程前期の修了要件というものにふさわしい構成となるようにしたいと考えてございます。
 一方、その適用関係を真ん中あたりに書いてございますけれども、今回の改正は、博士論文を集大成とする博士課程の研究能力の基礎をはかる仕組みであるということから、修士課程しか持たない専攻、博士後期課程を持たない専攻には適用しないこととしますが、前期から後期への接続に関しましては、他の大学院への進学、あるいは就職後一定期間の実務経験を経て社会人ドクターとして入学してくるケースなど、さまざまな流動性というものがあるということを考慮いたしまして、博士論文あるいは特定課題研究成果の審査と最終試験というものに加えた第三の類型といたしまして、博士課程前期の修了と一貫制博士課程の修士号授与の要件としてこの仕組みを組み入れ、修士号の授与ということをもって後期の課程への入学資格を付与するということとしたいというふうに考えてございます。これによって、これまで修士課程のシステムをそのまま適用させてきた博士前期課程に、当たり前ではございますが、博士の前期としての本来のその性格を踏まえた独自の修了要件を付加するということになるというふうに考えてございます。
 なお、マル2番がございますけれども、学校教育法の施行規則上、後期の入学資格は修士号の取得ということを要件にして設計されております。アメリカの一貫制の博士課程の方が後期の日本の大学院に編入学をしたいという場合、Qualifying Examinationが不合格で修士を得て修了している者には、修士を持っていますので入学資格がございますけれども、Qualifying Examinationの合格が修士の学位の取得というものを伴わない場合は修士号を持ちませんので、個々の大学院の判断で博士後期への入学資格を付与するかどうかということが決まってくるという現状がございます。したがって、今回、博士論文研究基礎力審査というものに相当するようなレベルのQualifying Examinationに合格した者で、その合格が修士の学位を有する者と同等以上と位置づけられる場合には、そうした者に後期の課程の入学資格というものを付与することとしたいというふうに、あわせて考えてございます。
 このページの下のところに、適用関係を図で示してございます。なお、修士号を授与することによって後期の課程への入学資格が付与されることになりますけれども、個別の入学者選抜ということにつきましては、先ほど入学者選抜の規定のところでご説明しましたが、各大学が妥当な方法により行うということになります。今回の改正に伴って、特に他の大学院の後期課程に進学する者への入学者選抜については、今回の改正が専門分野の枠を超えた体系的な教育によって修得された知識・能力というものをもとに主体的に研究ができるかということを見るという質保証のシステムであるということにかんがみまして、さらに前期の課程で博士論文研究基礎力審査をパスした者が入学者選抜に応募してくるということがありますので、こうしたことに対して適切に対応されるよう、施行の通知などでそれを求めていくということにしたいというふうに考えてございます。
 なお、さらに1枚めくっていただきますと、博士論文研究基礎力審査の導入イメージというものを書いてございます。これは一貫したプログラムの体系のイメージとして書いたものでございますけれども、ここをごらんいただきますと、博士論文研究基礎力審査というものが、この審査の下にございますように、複数分野の知識や研究の動向などを集束させるような研究室ローテーションなどの取り組みを促進するということであるとともに、この幾つかの段階を経て主体的に独創的な研究ができるようになるというような、一発試験ではなくて面的なプロセスを持っているということをイメージとしてあらわそうとしたものでございます。
 以上が概要の説明でございまして、ご審議のほど、よろしくお願いしたいというふうに思っております。

【有信部会長】 これが本日の主要な議論の対象になりますので、議論を進めていきたいと思います。質問、あるいは、コメント、ご意見ありましたら、どうぞよろしくお願いします。

【中西委員】 質問ですが、これとあわせて、論文博士はどういうふうにとらえていくのかというのも考えていくのでしょうか。

【樋口大学改革推進室長】 実は、論文博士の問題といいますのは、17年の大学院答申の議論の中で言うと、論文博士のかなりの割合は、社会人が満期退学してしまった後に論文を書くことによって博士を取得しているという側面もございます。そうした社会人になっている学生が博士課程をきちんと実習できるような魅力あるプログラムをどうやってつくっていくのかという話とリンクしている部分が多分にございます。そうしたことも踏まえて、施策要綱ではそうした社会人ドクターをどう扱っていくのかというような観点の中でこの問題も含めて取り扱っていくこととしたいというふうにフォーカスされてございまして、これは課程博士を目指すシステムなので今回の改正と直接的にリンクするものではございませんけれども、施策要綱の順番に従って議題を進めておりますが、当然、今期のうちに議題の中に入れていくというような話にはなってございます。

【有信部会長】 17年の答申ではっきりと論文博士は廃止の方向ということが打ち出されていて、それが実際にはパブリックコメントの中で大もめにもめたと伺っていますが、それで最終的に廃止ということが明確には記述されなかったという経緯があります。それで、今回の答申の中でも論文博士は廃止という方向性を明確に書こうとしましたが、これもまだ十分に議論が尽くせないということで、相変わらず継続検討ということで落ち着いています。もともと、17年答申で論文博士は将来的に廃止という方向で検討しますということを結論づけた背景には、博士というのは単純に研究結果にだけ与えていいのかということがあります。博士という学位の持っている内容についての議論が随分行われました。やはり博士という学位は、社会的な責任も含めて、責任を持って研究遂行をなし得る資格として与えるという側面があって、その部分を考えるとやはり一定程度の教育は不可欠であるということで、企業サイドにとっては論文博士というのは非常にありがたい制度ではあったわけですが、基本的に納得をして17年答申の方向性に同意をしたという経緯があります。ですから、現実には、博士という学位の議論をまた蒸し返すつもりはありませんけれども、17年答申の精神にのっとって今後の方向を定めていくべきだろうというふうに、個人的には思っています。

【樋口大学改革推進室長】 ここは、実際、入試の運用でございますので各大学院のご判断というところになろうかと思いますが、完全に重複するということのみの視点ではありませんので、おそらくそのような形で前期課程の段階でどのようなことがはかられていたかということを、全く同じことを問うということではなくて、角度を変えて問うとか、何が問われてきたかということを確認するとか、要するに入試の仕方においては、過度に学生の負担にならないような運用の仕方というものの工夫が考えられるのではないかというふうに思います。

【有信部会長】 要するに、各大学はそれぞれの大学独自の基礎力認定試験というのを持っているので、例えば前期から後期で大学院を移る場合には、新しく移る先の大学院の基礎力の試験に合格しなければ少なくともそこの後期課程の論文を完成するという資格は与えられないという認識でいいんですね。

【樋口大学改革推進室長】 基本的にはそのとおりです。

【有川委員】  修士については修士論文と特定課題の研究成果ということでそれは終わっている。そして、博士論文研究基礎力審査は、他の大学に行くときは入試を受けるわけであって、そこは行った先で必ずやる。そうすると、入試の中にそういったものを入れておくという整理の仕方でもいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

【樋口大学改革推進室長】 結局のところ、他大学に移るという者の対応ということを見ますと、現実的には、実は入試というものは制度で我々が規定できているものではございませんで、先ほど申しましたように、入試そのものは各大学がおこなっていくという性格であるということと、アメリカのクオリファイというのは確かに、博士論文を書けるかどうかということをクオリファイしているので、その観点に立ってみると、採る側である後期の側がどう判断するかということが優位に立つということは、そのとおりだというふうに思っていますけれども、日本の場合は、前期、後期の区分制が大半です。そこに修士論文というものがフィルターとしてかかっています。これは日本がアメリカなどと違うところでございます。ここの部分をこのままにしておきますと、実際、入試というのは、修士論文が完成する前に、大体夏ごろに行われているという実態がございますので、入試は課してそのクオリファイというものはするんでしょうけれども、その後、移る前の前期課程の修了要件がそのままになっていますと修士論文が非常に過度な形で要求されるというようなこともありまして、修士論文とクオリファイというものが二重にかかってしまっているという現実もあるところでございまして、そういう意味で我々は、入試のところでそういう対応が求められるということは当然のこととしながら、修了要件のところについても、やはり日本ならではの形なんでしょうけれども、修了要件のところに博士論文研究基礎力審査というシステムを導入していくということがやはり必要なのではないかということから、このような形に至っている背景でございます。

【有信部会長】 少し単純化していくと、要するに、ある大学の博士の前期課程の修了要件としては、Qualifying Exam.をパスするか、修士論文を書くか、この2つの条件があります。それから、博士の後期課程に進学するためには、Qualifying Exam.をパスすることが必要条件になります。後期課程に入学させるかどうかの判断については、これはまた別途入学試験として各大学が判断してくださいと。これが今の説明の内容だったと思います。それに対して、後期課程の入学試験をその大学のQualifying Exam.でやってもいいのではないかという考え方もあるわけですね。

【藤原大学振興課長】 先生がおっしゃったとおりでございまして、前回の議論で、各大学、前期課程のクオリファイの話と、それから、流動していった場合に受け入れ先でどうするのかというところはかなり議論になったわけでございまして、それを踏まえて今回は、基本的にそこは切り離そうという前提で制度を組み立ててございますので、理論的にはまさに今種々ご指摘あったように全く別の形で、一応、修了は修了、入試は入試という形で考えていくということでございます。その上で、例えばどんな配慮事項が必要なのかというのは、さらにご意見があれば、いただければというふうに思う次第でございます。

【金子委員】 今の場合も、自分の大学の修士課程から博士課程に行く場合には、修士課程での学位論文、要件の試験を受けていれば、もう一度その人に対して要件の試験をやる必要は必ずしもないわけですね。それはそれでよろしいでしょうか。

【有信部会長】 はい。

【金子委員】 その場合にはむしろ、一貫制と同じ形になるということだと思いますが。

【有信部会長】 Qualifying Exam.は一応あります。

【金子委員】 ただ、今の議論を聞いて、この場で議論を重ねてきていても相当まだ混乱しているところもあって、しかも、それに対していじれるところは設置基準の改正のところが主で、要するに卒業要件のところを変えるというのは、制度上の改正になります。しかし、本当にやりたいことは先ほど言われたようなことであり、この大学院部会での議論はもともと、修士課程ないし博士課程で初めから早期の専門化が進んでしまっているために、必ずしも体系的な基礎的な知識を持たず、視野が狭くなる。それと同時に、企業に入る場合にも、あまりに専門化し過ぎて、受け入れ手がないということがあります。そういった意味で一種の、少し幅広い基礎的な研究能力といいますか、基礎的な知識を身につけさせるというのが重要だというのが基本的な話の筋で、そのときに、一種の標準的な知識というのを目に見えるようにするために、資格要件試験のようなことを重視するというのが重要ではないかと、そういう趣旨だったと思うんですね。ただ、それを徹底させるときに、制度上いじれるのは設置基準のところで、入学資格に関しては本来個々の大学が決めることなので、これについて制度改正ができるわけではない。
 というような話で、制度論になると話が非常に錯綜してしまうという状況になっているわけですけど、私が申し上げたいのは、教育振興計画、基本計画もできるわけで、そういうメッセージをきちんと出す、そういう中でこういう改正が行われるということをよくわかるようにするというのは、今までの議論の筋からいって非常に重要ではないかということです。

【有信部会長】 今のご指摘、全くそのとおりだと思いますので、できるだけそういう趣旨が明確に伝わるように、結果的に制度は変わったけれど中身は何も変わらないということにならないように、ぜひ進めていきたいと思います。

【松田委員】 先ほど面で審査を行うということだったと思いますが、そうすると、審査というからには、合格・不合格があるわけですが、基本的には、これは通すためのアシストという意味合いもあるんですか。

【樋口大学改革推進室長】 当然、法規の上では合否を決めるということだと思いますけれども、一般的にどの大学院でも、修士論文で合格させるということにしても、そのための研究指導というものはしっかりやって、要するにその要件に足りるように研究指導をされる先生が導くというのは、おそらく同じだろうというふうに思います。今回の場合も、面というふうにとらえている背景の中で、コースワークがきちっと、専門外の関連分野も含めて幅広いところの知識というものがあることを確認できた人間に対して、その人間が実際に研究のプレゼンテーションをするに至る過程では、当然、しっかりとした博士になってもらえるような研究指導というものがなされてしかるべきであって、導くというのは、実体上はそのとおりの話だというふうに思います。

【松田委員】 結果的に不合格になったとき、その時期というのは、いつごろを想定しているのでしょうか。要は、不合格になった学生は、少なくとも志として博士課程に行こうとしている。ある程度のポテンシャルが認められてコースに入るわけです。でも、やはり審査したけど、不合格だと。そうすると、その学生はその後どうするのかというところなので、時期というのは非常に意味があると思いますが、それはどういうふうにお考えですか。

【樋口大学改革推進室長】 面としてとらえている体系の一番ボトムの部分、つまり、コースワークなどがちゃんと身についているかどうかというところで見る仕掛け、この部分でどのぐらいの、要するにちゃんとそれがパスできているのかどうかというところが一つのポイントになろうと思います。最終的には、合否の部分というのは、制度上は前期の課程は2年ですので、その2年の最後の段階で合否が決まるというのが基本だと思いますけれども、面としてとらえていますので、かなり早い段階でそういうものに着手するという話になろうと思います。その上で、博士の後期に進むという形ではなかなか難しいという者に対して、修士で卒業して社会に出るという者に対しては、やはり一定の修士論文を書くとか、そういうようなもので対応して、修士を得てそのまま外に出るような形ができるようにその道を開いていくということが、現実的な対応かというふうに思います。

【板橋委員】 前回の議論のところでQualifying Exam.は3つあって、最後の3つ目というのは、入学後、後期課程に入った後に幅広い視野を身につけるために、Proposal DefenseやResearch Proposalなどを行わせる。そこでいろんな分野の幅広い視野というか、専門外のことも、問題解決能力等を含め身につけさせるようなものをやるというのが一つあったと思いますが、今議論している博士論文研究基礎力審査というのはその一歩手前のことだというふうに考えればよろしいでしょうか。要は、どちらかというとUCバークレーのPreliminary Examinationのようなイメージでよろしいでしょうか。

【樋口大学改革推進室長】 前回の議論は、アメリカのQualifying Exam.を日本に導入するという、ある意味ではそういうものをパラレルにして議論をしてきたということで、アメリカのクオリファイというのは、1段階ではなく、3つぐらいの段階を全部セットにしているようなものだというふうに申し上げました。今回は、修士、あるいは前期の修了相当としてどうかというところで議論をしておりますので、言ってみればResearch Proposalのような話というものはおそらくその後の対応というふうに考えておりまして、Research Presentation SynopsisやPreliminary、あるいはComprehensiveというところまでをここでスコープとして、アメリカの話を持ち出すのであれば、そういうものであろうというふうな認識がございます。
 ですから、今回は制度というものをある意味フォーカスして議論をさせていただいていますので、Research Proposalというものを制度として導入するということはどうかという点は博士の後期の課程の中でどう区分けするかという話になりますので、これは新しい制度として組み込むというのはなかなか難しいと思います。教育の真ん中のところに線を引くという話ですから、それは大学の中のカリキュラムをどうするかという話になると思いますけれども、全体、先ほど金子先生も言われたとおり、今回の改正の趣旨というのは、もとを正せば、中教審などで議論をしているとおり、幅広い知識をもとに独創的な研究ができるような形にして質の高い博士を出していくという、こういったメカニズムにございますので、そこは、先ほどわかりにくいと言われたところをわかりやすく説明する中では、当然そういうことをモデルとして示させていただくということで対応させていただきたいというふうに思っています。

【菅委員】 各論になるとほんとうにややこしくなるので、質問も含めて私なりに整理して話をしてみたいと思います。 まず、Qualifying Exam.は入学試験と同一ではない。これはそういう認識で正しいですか。 それで、意識の中には、Qualifying Exam.をすると、修士論文と同等のものであると。つまり、修士論文は書く必要なくて、それをパスすることによってドクターに行けるという理解でよろしいですか。そこら辺はクリアだと思います。
 では修士論文とQualifying Exam.は何が違うかというと、修士論文は自分の研究についてまとめて出す。それに加えて、その人のポテンシャルを見ていくというのがQualifying Exam.であるというふうな認識を私は持っているんですけれども、アメリカでそれが定着している心は、それに不合格と「不」とつく場合でも、必ずしもそれですぐに首を切るわけではないんですね。必ずその後にもう一度、プリベンションと言うんですけれども、仮釈放ですね、仮釈放をして、もう一度勉強して、もう一遍やり直しなさいと。1カ月後にもう一度トライをしなさいと。それでもってクオリティーを担保していこうというのが、心だと思うんです。ですので、そういう理解でこのQEをどういうふうに見るかというのがちゃんとここで認識されて制度上の中に言葉としてうまく書き込めれば特別大きな問題はないんじゃないかなというふうに私は思うんですけれども、その辺、皆さんからコメントをいただければと思います。

【有信部会長】 今のところが日本の中で制度化すると、特別大きな問題になりそうな気がします。つまり、プリベンションのような考え方が基本的にないんですよね。ですから、今の制度上の考え方は、私の理解では、Qualifying Exam.に不合格であれば、修士論文を書いて修士として修了するという道を選ぶ。ただし、一旦修士として修了した後、1年後にもう一度チャレンジするという道は当然あり得る。しかし、1カ月後に再チャレンジするほど、多分、寛容な制度ではない。

【菅委員】 多分、QEと試験がごちゃごちゃになっているとそういう考え方になるんですけれども、例えば入学試験はみんな夏ごろにやるわけですね。夏ごろにやって、それを入学試験として、入学したと。例えば、外部の学生さんが入ってきて、入学をした。それでコミットしたのはいいんですけれども、その後に、例えば夏が終わって冬ぐらいにもう一度、QEに当たるものを合格した学生に課したときに、実はそれほどちゃんとクオリファイできてなかったということになれば、そこでその学生にQEをもう一度やりなさいというような寛容なシステムを今後構築していくことでドクターのクオリティーをどんどん担保していこうということであれば、とてもいいシステムになっていくんじゃないかなと思うんですね。今回こうやって何を議論してこういうことに書き込もうかというのは、ドクターの学生がどうやってクオリティーを担保できるかというシステムを今後どうやって日本の博士の大学院の中に入れていくかということが重要だと思うので、そこの認識をしっかり持って何か制度化するのが一番大切だろうというふうに思います。ですので、あまり細かい各論になってしまうととてもテクニカルなことに走ってしまって本質がわからなくなってしまうので、できるだけ心の本質のところをしっかりとらえながら議論できたらいいんじゃないかなと思います。

【松田委員】 先ほど私がアシストと言ったのはまさにそのとおりで、もうちょっとで行けるかもしれないというところは、1回だけではなく、アシストしてあげるということによって、全然ポテンシャルがなくて博士課程の前期に入っているわけではありませんから、もう少しアシストすれば上がるのであれば、アシストできるような、そういったことも必要なのではないのかなと思います。そうしないと、そこでぱっと切ってしまうと、ポスドクではありませんが、ポストマスターのような、優秀だけど家庭の事情により途中で辞退した人がいたという事例紹介がありましたが、この制度がどんどん定着していったら数がふえていくわけですから、やはりそこは、先ほどの質の確保という意味も含めて、さっき言った再チャレンジじゃないですが、そういった制度が海外にあるのであれば、そういうのを参考にしてもらえたらいいと思います。

【金子委員】 今のお話について、私は反対ではありませんが、しかし趣旨は、先ほどおっしゃったように比較的幅広い領域での知識を持っているということを、また研究能力を持っているということを何らかの形で確かめるというプロセスを導入しようということだと思うんですね。今度導入しようとしている規則改正は、少なくとも博士前期課程の修了要件にそういった試験を入れるということも一つのオルタナティブとしてあり得るということを言っているわけで、それに関しては、もし2回目のチャンスを与えようということが必要だという判断をするのであれば、その試験をもう1回やってもおかしくはないのではないかと思います。ただ、もう一つ、このことの議論でも非常に大きな問題になっていたのは、全く審査なしで上に上げてしまうと後で困る人が出てくるということも一つのかなり重要な点だったので、その辺についても一定の配慮が必要だということだと思います。
 それから、博士課程に入ってもう一つ別な意味での資格試験をやるというのも一つのチョイスで、その場合にはもうちょっと寛容に、博士課程に入ってからの資格審査は何回繰り返しても、それは大学の方針であっていいと思うんです。そういう意味で、それだけの幅はこの制度改正の中には一応入っていると思いますが、繰り返すと、そういった精神を、根本はそれぞれの大学がこういった精神をどう生かすのかというところを自分でどう工夫するかということで、率直に言って、今度の設置基準の改正はものすごいインパクトをそれだけで与えると私はとても思えないので、むしろ重要なのは、そういったメッセージを個々の大学がどうやって受け取って、自分のところでどういう資格を入れるかということだろうと、私は思います。

【本間委員】 これはあくまでも5年一貫の話であれば、5年一貫の話としてきちんとしていただいて、私どもの大学のように、ドクターに行くときには必ず他の大学に行かなければならない大学もありますので、5年一貫の制度と他大学のドクターを目指すものとはぜひきちんと分けて議論をしていただけるように、お願い申し上げます。

【五神委員】 やりたいことを修了要件の制度改正ということだけで伝えることは無理であることと、それから、制度改正だけが伝わると、ここで議論してやりたいと思っていることと違うことが起こってしまうのではないかと思います。やりたいことは博士をきちんと育てたいということです。博士を育てるには一貫制的な育て方がより望ましいわけですが、区分制がこれだけ定着し、しかもトップ大学でも大多数が修士で就職するという現状の中で、区分制をとりつつ一貫制に近い運用を促すようにするために制度的改正が必要であって、そのために修了要件を少し直しておこうということと理解しています。
 しかし、予想されることは、やはり区分制の大半の修士は修士で修了して就職していく状況になるんだと思います。そのときに、この改定によってどういう効果が起こるかというと、例えば、QEを取って前期卒業し、会社に行く人が大量に出る。それがいいことか、悪いことか。もしそうだとすると、QEで修了し会社に入った人は、社会に出た後で、いつかは博士を取るんだというような意識と、そういうメリットを付与するような形でこの制度が運用されればいい効果が出るとは思うんですけど、それがないとすれば、卒業の仕方が変わっただけだということになるわけです。ですから、この修了要件を改正するということのメッセージの出し方、それからどのような運用法を各大学に促すかということを考えておかないと、間違ったことが起こってしまうかもしれません。
 それで、一貫制的な運用を促すということは正論だと思いますが、それは容易ではありません。理工農で言えば博士定員は一学年あたり6,000人ですけど、6,000人分は全部一貫制にするということをやろうとしても、多分、これだけ修士卒で定着していて、産業界のほうも博士よりは修士のほうがいいという考え方が定着している中で、理工農で5万人ぐらいの修士定員に対して博士の部分だけ一貫制の方向に向かうような流れになるとも思えないのです。区分制が定着している前提の中で、日本独自のモデルで、ハイクオリティーの博士はきちんと確保し、育てる。あるいは、優秀な人のかなりの部分は修士で社会に出ているという現状の中で、一部をうまく呼び戻すような仕組みをこういう制度改正の中からいかに実効性のあるものにしていくかというところを工夫しないといけないということだと思います。
 まず、本当にやりたいことは何かというポイントが、ここの委員会では8割ぐらい共有できていると思いますが、外に行ったらまず全くわからくなると思うので、そこをきちんと伝えることが現実論としては一番重要な問題なのではないかと思います。

【川嶋委員】 今のご発言と関連していますが、先ほど、こういうQualifying Examination的なものを導入するのは、今ご発言があったように、区分制の中でいかに博士をきちんと育てて論文を書いて社会に送り出すかという幅広く学ばせるということのほかに、特に文系ですと、修士論文は学生にとって非常に負担が重いので、なかなか博士論文までたどり着けない、だから、そこを少し軽目にして、最終的な到達点である博士論文をきちんと書かせる、そういう指導ができるような体制にしようというのも、一つの大きな趣旨だったと思います。そういう点では、こういう改正がなされれば、特に人文社会系の大学院においては、これまで非常に博士の修了率が低かったのが、きちんと運用していただければ高まるのではないかと私は期待しています。
 一方で、今のご発言、区分制というものがなぜあるのか。つまり、マスターで出ていく学生がほとんどなのに、なぜ博士の前期・後期という区分制が存在しているのかということを考える必要があるのではないかと思います。私は、極論で言えば、区分制というのは徐々にやめてTerminal M.AとPh.D.というコースに収れんさせていくということをしない限り、さまざまな問題は依然として残ったままだろうと思います。その間のトランスファーの問題は、また別の仕組みを考えればいいんだろうというふうに思います。

【有信部会長】 17年答申のときにも似たような議論があって、あのときは明確に今のような言い方はしませんでしたが、あそこに書いてあることをじっくり深読みすると、今言われたような方向性が一応は示されていると理解できないことはないんですね。ですから、方向性としてはそうだと思いますし、それから、今、五神委員が言われたように、現実の問題はいろいろあると思います。その上で、ちょうど過渡期ということもあって、かつては指導教員が責任を持って見ていたので、博士課程に進学して学位が取れるかどうかというのは修士課程の段階で見ていればわかるので、そこのところである程度選別をしていたわけです。博士課程に進学しても仕方がないというような人たちはそこでそれとなく、あまり落胆しないように修士課程で終わらせたということが現実に行われていましたが、いわゆる大学院重点化を契機に博士課程の定員が大幅にふえて、逆に言うと大学側は定員を充足させる方向に動いてしまった。とすると、定員を充足させるという圧力のもとに、教員の側はある意味で選別がやりにくくなった。しかも、一方で、修士課程で出ていく人たちを埋め合わせるというような格好でドクターコースで新たに大学を移る人たちがふえてきたというような事情があって、実はこれも本来の趣旨と違うところでおかしくなっているわけです。こういうものをできるだけ本来の姿に戻そうと。それから、現実にドクターコースの修了生として、今の数が昔の判断で決めているような数では足りないと。だから、今の条件の中で、しかも昔よりはもっときちんと指導をして、それなりの学位にふさわしい人を育てられるような仕組みにしようと。つまり、従来の教員の指導も不十分であったという、こういう反省にも基づいているわけでして、こういうことをきちんとやるために今のような制度改正をもくろんでいるわけなので、従来の修士課程に入ってから一貫して特定の指導教員が全部面倒見るというようなシステムは基本的に変えましょうというのも前提になっているわけです。ですから、一気には変わりませんが、まずリーディング大学院の中にそういう仕組みを埋め込んで、それを実際には横展開していく過程で今の制度改正につなげていく。こういう流れでうまく動くようにしていきたいというようなことで、ここにいる委員の先生方は大体理解されておられますが、今言われたように、制度改正だけが外に出ていったときに、この理解がどこまで行くかということをぜひ考えてほしい。

【藤原大学振興課長】 今の点につきましては、種々ご指摘いただいたとおりでございまして、結局、修了要件という話とアメリカ的なPh.D.candidateというものとを一旦制度的には分けて考えるという整理で、今、省令改正の案を考えておりますので、そういう形になると、おっしゃるとおり、かなり断片的な制度改正というところは否めないわけでございますけれども、そこは、ご指摘いただいたように、全体として何を目指しているのかということを何らかの形でメッセージが伝わるようなものをしっかりつけて、それから、さらに言えば、まさにリーディング大学院、今、審査中でございますが、そういった内容もメッセージとしてあわせて発信していけるような、そういう形を工夫していきたいというふうに思っています。

【金子委員】 先ほどの五神先生のお話ですが、こういった試験というよりは、少なくとも修士課程の終わりに何か試験をやるということはあり得るということが広がれば、川嶋先生がおっしゃったように、文系では少なくともある程度幅を広げることに非常に役に立ちますし、理系でもある程度そういった効果はあるのではないかと思いますし、博士課程の進学者が少ないというのも、ここで昨年から延々と議論をしているわけですが、やはりこれはいろんな意味で幅が少し狭いのではないかという議論はあるわけで、そういう意味で一定の試験みたいなものを導入することは決してマイナスにはならないのではないか私は思います。
 博士課程と修士課程の区分制の問題は一段後の問題で、要するに大学院の制度自体を、有信部会長がおっしゃったように、学生の定員を割り振るというような形で今は管理しているんですが、こういうやり方自体が本当にいいのかどうかという問題は、もうちょっと後の問題としてあると思います。
 それからもう一つは、議論されていませんでしたけど、修士課程は今、要求単位は30単位ですが、これは実は修士論文にかなりウエートがかかっているため30単位でいいという話で、学士課程はご存じのように124単位ですけれども、1年30単位ですから、修士課程というのは半分なわけです。1単位というのは、計算してみますと1日8時間やることになっているわけで、このまま試験だけで修士課程を出て要求単位30単位だけだと、要求されたのは半分になってしまうというような問題も実はこういう改正には含まれているので、それは、大学の裁量というか、大学は基本的なことを考えるので、それを今はあまり細かく言うことはないとは思いますが、しかし将来に関しては、そういった想定の仕方自体も少し考えなければいけないかもしれないと思います。
 さらに加えて言うと、先生の担当時間は、先ほどお話に出ましたが、大学院と大学で、今、ほとんどエフォートを合算して考えておりません。ほとんど二重人格で、両方できるような想定になっているわけで、本当にそれでいいのかということについては、私は問題があるのではないかと思って、長期的な大学院のクオリティーコントロールというのをどういう形でやるのかというのも、今、そういうのがあるために当面の問題になっているようなことがやりにくいという現象が既に起こっているわけですから、そういったクオリティーコントロールのやり方自体についても考えるというのは、長期的にはやっぱり必要になってくるのではないかなと思います。そういう意味で、当面できることと長期的にやることを少し区別していかないといけません。

【五神委員】 Qualifying Exam.のようなものを導入し、一定の学力試験をやるということは、教育上、修士修了者にとってもプラスになるということは、そのとおりだと思います。しかしながら、修士修了者のクオリティーをどういうふうに上げていくかという議論はこの場ではほとんどしていません。そのような状況でそこに大きな影響が一番出るようなことをやっていいかということについての配慮が必要だということを私は述べたのです。つまり、4万7,000人が修士を出て博士は6,000人という理工農の比率でいったときに、修士のクオリティーをどう担保すべきかという議論は、別にきちんとやらなければいけないと思います。中村委員が以前、産業界から見たときに修士修了者の学力があまりにひどいレベルになっていることが問題だということを指摘されていました。ここでは博士をどうするかということが中心な論点でしたので、議論は広がりませんでしたけれども、そこはそこで大きな問題があるわけです。大半が区分制で、修士で出ていくという事実があるわけですから、そこの効果についてもきちんと時間をかけた精度ある議論をしなければならず、方向性としてプラスだからそれでいいんじゃないかというわけにはいかないと思います。

【有信部会長】 今の話はそうではなくて、修士課程についても17年答申で大学院についてはちゃんと分野別評価をやるという方向で評価の導入がきちんと明記されているはずです。したがって、修士課程なら修士課程の質の担保はそういう形で、修了要件という意味でレベルの評価というのはやりようがないので、修士課程の中でどういう教育が行われ、どういう条件で修士の学生を出していて、それが社会から見てきちんと評価をされているかという観点では、外部評価が入るという全体の流れになっているはずです。これは、五神委員がおっしゃるように、これからもう少し議論を詰めないといけないので、詰めていくことになると思います。だから、質の話はこれからまた先の話です。

【伊丹委員】 私は、この話を聞いたときに、コンセプトの上での混乱が起きていて、混乱はある意味で意図的に起こしておられるような節もありますが、二兎をねらって一兎も得ずということにならないかと。今の五神委員のお話にあったように、修士課程だけで出る人たちのクオリティーをどうやってちゃんと保証するかという問題と、博士論文を書く人の質をきちっとしましょうという問題は、2つ違う問題なんですよね。

【有信部会長】 違います。

【伊丹委員】 これは博士論文研究基礎力審査という博士後期課程であるべきタイプの審査をなぜ修士課程の修了要件にするのかというところで基本的な問題があって、問題が2つあるのであれば、2つ対策をとるべきで、Qualifying Exam.という名前で修士課程にもいい影響のあるものをやろうってやるから、話がおかしくなる。私は、これは博士後期課程の中の審査として明確に位置づけたほうが、後々の混乱を招かないと思います。

【有信部会長】 それは伊丹委員のおっしゃるとおりで、基本的には博士課程のクオリティーを保つということです。基本的に博士課程に関しては外部評価を受けるという仕組みの導入は考えられていませんので、もちろん大学院全体としての質をどう担保するかという意味ではそれも入ると思いますけど、そういう意味ではそのとおりですし、修士課程の修了要件、つまりQualifying Exam.をパスした人は修士論文を書かなくても修士課程を修了させてもいいというところで多少混乱が入っているということだろうと思います。
 だから、ここの部分については、当初説明がありましたように、もう一つ別の問題があって、いわゆる区分制の学位の出し方をしているというところで、ドクターの質を担保するためにこういう試験を導入したことによって、あわせて修士論文もその人たちに課すかどうかというところの判断で、そこでもう一つ、5年一貫制の課程のイメージが入ってきていて、5年一貫制ではあえて修士論文を書く必要がないという構造になっていますので、そこの兼ね合わせを含めると、そこのQualifying Exam.をパスした人は修士卒業同等と認めてもいいのではないかという考えが出てきています。
 だから、ここでは、ドクターコースを中心に考えるか、マスターコースを中心に考えるかによって観点が分かれるわけで、例えばイギリスのケンブリッジでは、Ph.D.コースの中で、今言ったQualifying Exam.という明確なものではありませんけれども、Ph.D.candidateになり得ない人たちにはM.Phil.という学位を与えてそのまま修了させるというやり方をとっている例もあります。
 ですから、ドクターを中心に考えるか、マスターを中心に考えるかというところで多少観点が変わるわけですけれども、ここの議論は基本的にはドクターで優秀な人たち、基本的にポテンシャルを持った人たちに必要な学位を持って社会で活躍してもらうシステムをどうつくっていくか、こういうところに議論の焦点を置いているので、今のような方向になったと理解しています。

【伊丹委員】 私は、その目的には全く異論はありません。ただ、関門の置き方を、後期側ではなく、なぜ前期側に置くのかということです。

【菅委員】 QEを入れることによって修士のクオリティーが落ちるという論理が私はよくわかりません。なぜかと申しますと、一応、Qualifying Exam.はドクターに行きたい人が修士論文を書かずともドクターに上がれるためのある程度の担保をするということだと思うんです。修士で出る人は、修了する以上は何かの論文を書いて卒業しなければならないと思いますので、そういうことを考えると、修士のクオリティーがこの導入によって下がるという論理は成り立たないはずだと、私は思うんですけれども。

【有信部会長】 そこをどう考えるかで、今、2つ問題があって、QEを後期側に置いて、後期に進学した人についてそこで振り分ければいいと。そこで振り分けられて資格なしとした人はそこであきらめればいいと、こういう考え方があります。実際にはアメリカでは多分そういうふうになっているんだろうと思いますけど、日本の中で前期課程・後期課程という区分制があるがゆえに、しかも大学院の入試が8月という、まだ修士論文ができ上がってない時期にほとんどの大学で大学院の入試が行われる。後期課程の入試もあわせて行われる。これに合致させなきゃいけないということもあって、そこで博士課程に進学できるかどうかという判断をしなければならないので、そこのところにQEの切れ目を入れなければならない、これが日本の事情になっているわけです。そこにQEの切れ目を入れたときに、QEに合格した人にまで、今度は菅委員がさっきおっしゃったように、ドクターコースに進学できるという条件を確保した人になぜ修士論文まで課さなければならないのかという問題意識があるわけです。ですから、そこは課さなくてもいいという判断でいいと思うんです。要するに、ドクターコースに進学できる要件をその人はクリアしたので、修士論文は書かなくてもいい。クリアしなかった人は修士を出る。だから、修士だけで出る人に対してQEをパスしているからといって修士という学位を与えるや否やというところがまた問題になっているわけです。そこについて言うと、伊丹委員は、そこの部分については全く別問題であるからはっきり分けろと、こういうご意見です。

【金子委員】 私はこれを導入しても、少なくとも悪い結果はあまりないのではないかと思います。修士で出る人が一定の試験を受けて、それはそれでこの範囲が一定のスタンダードであるということを了解した上で受けるということは、そんなに悪いことでは必ずしもないと思います。おっしゃったように、博士課程に行く人が非常に少ないという現状をどうにかしなきゃいけないという長期的な問題に積極的にこたえるかといえば、そのままではあまりこたえないかもしれません。ただ、私が先ほど申し上げたのは、常に問題になってきた、博士課程ではあまりに専門化が過ぎているので、それに対して幅を広げるというのは必要だということに関しては、私は一定の効果があると思います。そういう意味では間接的な効果はあり得るのではないかというのが一つの議論です。
 それから、伊丹委員のおっしゃったことですが、2つの問題とおっしゃいますけど、今までさんざん議論して、これは2つの問題ではないからこれだけ錯綜した議論をしているわけで、特に区分制の大学院では、博士課程の入学資格の審査が論文に偏っているために、非常に修士論文に力が入ってしまう。そのために過度の専門化が早期から起こってしまう。それが問題であるという議論はずっとこれまで行われているわけで、そこのところを何とか改善をするのにはどうしたらいいのか。1つの案として、修士課程の修了要件に試験を入れると。それだけでも一応は上に入れるということは制度的にもあり得るということにしようというのが今回の議論の趣旨で、そのために設置基準の改正で修士課程の修了要件に一部手入れをしようということだったと思います。
 博士課程の入学要件については別に設置基準でも決まっているわけではないので、これは大学が独自に決めればいいことで、そういった資格の入学試験を各大学がやればいいわけです。特にほかの大学から博士課程に入るような人たちに関しては形式的な試験しかしてない大学が結構多いですけれども、そういった人たちにもきちんと試験をするというのは、私は非常に重要だろうと思いますが、いずれにしてもそれは制度改正でできることではないので、先ほどから議論があるように、ここでやりたいことのすべてが制度的に表現できるわけではないと。そういった意味でメッセージをはっきりさせようというのが、先ほどからの議論だと思います。

【有信部会長】 問題が混乱している理由がちょっとわかりました。1つは、17年答申で修士課程の修了要件として修士論文を課す必要は必ずしもないということをが明記されていて、修士課程の修了要件は各大学の判断で行えるということになっているはずです。したがって、必ずしも修士論文を書かなくても修士という学位を出すことはできるというのが前提にあって、もう1つは、QEが8月に行われたとして、QEの合格者に修士の学位を与えるか、あるいは、QEに合格したとしても、修士論文を書かないと修士の学位を与えないかということはおそらく、大学の判断に任せることはできると思います。社会的通念からすれば、博士課程への進学要件を備えている人が修士という学位を持っているか、持ってないかということについて大学がどう判断するかによって、その人に修士の学位を与えるか、与えないかというのは大学の判断で決めても構わないかもしれないという気はします。

【有川委員】 お話を聞きながら私自身も整理できてきましたが、一つ通すべきものは、この図で言いますと一貫制かと思いますが、あるいは区分制であっても修士から博士に行くときには一貫制と同じようにQEをきちんと位置づける整理の仕方をしておく。そして、そうでない例外的なものが結構あり、あるいは圧倒的多数が修士で終わるということもありますが、それは、今の議論の中では、そういった場合にどうするかということを考えていけばいいだろうと思います。
 それから、先ほど金子委員が非常に大事なことをおっしゃっていたと思いますが、今、修士で言いますと、30単位ぐらいで、修士論文のウエートがものすごく大きいのです。ですから、通常は大体1年のときに論文以外の単位は取ってしまって、2年になったら修論に没頭するといったやり方をしているのが実情だと思います。そういうことで、もともとこういったことを考え始めたのは、ドクターを取っているけれども、視野は狭く、あまり役に立たないということに対する反省から来ているわけで、そういうことが「広範なコースワーク等を通じて」となっているわけです。そういうことを考えますと、単位をもう少し増やして、例えば、私どものITスペシャリスト育成プログラムなどではかなり多くの単位を課しております。そうすると、授業も増え、しなければいけないことが増えて、色々な意味で幅も広くなるわけです。そういうことをやっていって、ごく自然にQEができる。もちろん審査をしますが、それが実際にできるということをやっていけばいい。極端なことを言いますと、例えば48単位ぐらい取るということにして、論文を書いた人は、その論文が例えば10単位や12単位になる。論文を書かない人は、きちんとコースワーク的なことでそれだけ取らなければいけないこととする。そうすると、このそもそものところに書いてあるようなことが達成できて、いわゆるQEもスムーズに行く。先ほど例外的に考えればいいのではないかと言ったところも、そういうことで対応できるのではないかという気がいたします。

【荻上委員】 中教審としては、ここにも書いてありますが、質の保証された博士号を授与するプログラムとして一貫した博士課程教育の確立を提言してきているわけです。その立場からすると、今議論している博士論文研究基礎力審査というのは、その博士課程のクオリティーを保つための仕組みであると、私は理解します。やはり目指すべき方向は、授与する学位のプログラム、マスターを授与するためのプログラム、ドクターを授与するためのプログラムに基づいて考えると私自身は非常にすっきりするのですが、考え方としてはそういうふうに考えていいんですね。

【有信部会長】 それで結構だと思います。今、そういう方向で説明しようと思ったんですが、過去の制度をいろいろしがらみを踏まえて説明されたためにかえって混乱をしていますが、今、荻上委員が言ったようなことで結構だと思いますし、最終的に誤解がないようにもう一度まとめますけど、博士課程にQualifying Exam.を導入する、これについて、今のさまざまな諸制度が混在している中で、博士課程の進学要件としてのQEについては、この合格者について、修士課程はさっき言ったように別プログラムですから、修士課程の修了要件としてこれを認めるか、認めないかということについては大学の判断に任せて構わないと思うんですが、ただし、認められるという可能性を残すために、QEの合格をもって修士課程の修了要件とすることができるというところまで踏み込んでおけば、あとは大学の判断で、そうはいっても、それプラス修士論文で修士プログラムの質を私たちは保つんだという大学はその両方を課して質を保てばいいし、自分たちのところの博士課程の進学判断の条件は修士課程の修了要件を含んでいる形で行うという形の制度設計をやるのであれば、それはQEの合格をもって修士の学位を与えることができるということで、基本的には事務局の提案した内容で、そういう理解をきちんと書いておけばいけるような気がします

【有川委員】 「広範なコースワーク等を」とありますが、これを少し具体化する必要があるのではないのかと思います。そうしておけば、他のことにもきちんと対応できる気がします。先ほどありましたように単位数も少し大きくするなど、要するに、「広範なコースワーク」ということをただ適当にお題目として言うのではなく、今、例えば20単位ぐらいしか取ってないところを、30単位あるいは45単位ぐらい取らなければいけないなど、そういった目安を入れておいたほうがいいのではないかと思います。そうすると、あとの例外的なことに対してかなり整合性のある対応ができるように思います。

【有信部会長】 昔は、ドクターコースに進む人は、修士のときにドクターの単位もみんな取っていました。だから、逆に言うと、具体的に単位数を幾ら増やすということを今から盛り込むことはできますか。

【樋口大学改革推進室長】 大学院設置基準はミニマムリクワイアメントを書いてございますので、そういう意味で、ケース・バイ・ケースでプラスしてほしいというところを書けるかどうかというところは、相当慎重な検討をしなければなりません。ただ、そうはいっても、先ほど有川先生がおっしゃったような趣旨というのは当然、大学に対してのメッセージという形で盛り込むことは可能だというふうに思います。

【有信部会長】 広範なコースワークというところに必要単位数の増加も含めてというような言い方をすれば、それは各大学の判断で、30単位を40単位にするのか、50単位にするのか決めてもらえばいいと、そういうことでいいんですよね。せめてそれぐらいのところまでは考えていただければ、基本的にはそういうことでまとめていただけますでしょうか。
 ということで、今のところで最終的な方向性をまとめて次のステップに進んでいただければというふうに思います。よろしくお願いします。
 それでは、本日の議論はここまでとして、今後の予定等々について、事務局からお願いします。

【樋口大学改革推進室長】 ありがとうございました。
 次回の大学院部会は、11月24日10時から、場所は、霞が関ビルの東海大学校友会館になりますので、どうぞよろしくお願いします。

【有信部会長】 それでは、本日も非常に多様で貴重なご意見ありがとうございました。本日の審議は、これで終了としたいと思います。どうもありがとうございました。

 

 

 

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