ここからサイトの主なメニューです

大学院部会(第51回) 議事録

1.日時

平成22年12月8日(水曜日) 15時~17時10分

2.場所

文部科学省 東館3階 講堂

3.出席者

委員

(委  員)荻上紘一、金子元久の各委員
(臨時委員)有信睦弘(部会長)、今榮東洋子、河田悌一、木村孟、小杉礼子の各臨時委員
(専門委員)梶山千里、桐野髙明、五神真、続橋聡、中西茂、堀井秀之、山田礼子、白井克彦、佐々木元の各専門委員
(意見発表者)中村道治COCN実行委員長(株式会社日立製作所取締役)、松田良夫東レ株式会社研究・開発企画部主幹担当部長、松本紘京都大学総長、大嶌幸一郎京都大学副理事、伊賀健一東京工業大学長、真壁利明慶應義塾常任理事

文部科学省

笠大臣政務官、金森文部科学審議官、磯田高等教育局長、河村私学部長、藤原大学振興課長、澤川専門教育課長、勝野私学行政課長、榎本高等教育政策室長、樋口大学改革推進室長 他

4.議事録

【有信部会長】 それでは、所定の時間になりましたので、大学分科会の第51回大学院部会を開催させていただきたいと思います。ご多忙中のところ、本日ご出席いただきまして、どうもありがとうございます。
 これまでの大学院部会では、分野別にワーキング・グループをつくりまして、特に5年前に出されました大学院答申の検証に基づいて新しい大学院教育振興施策要綱を策定するという前提で議論、検討を進めてまいりました。その結果を大学院教育の実質化の検証を踏まえたさらなる改善についての中間まとめということでパブリックコメントにかけさせていただき、12月2日を締切としてさまざまなご意見をいただいております。大学院部会としては、今後この中間まとめをもとに答申案の策定に向けての議論を進めていくことになります。
 その中で、特にリーディング大学院構想については、中間まとめの中で述べられていることの非常に重要な部分を担うと考えられておりまして、また、先日の事業仕分けでも話題になっております。ただ、これが今後の大学院改革に向けて極めて重要な施策につながっていくという認識でおりますので、本日はこのリーディング大学院構想について集中的に議論を進めてまいりたいと思っています。
 本日は、それに先立って改めて産学の関係者からご意見を伺うということで、産業界から産業競争力懇談会の実行委員長であります中村道治日立製作所取締役、それから、東レの松田良夫研究・開発企画部主幹担当部長。大学側からは京都大学の松本紘総長、同じく京都大学の大嶌幸一郎副理事、それから、東京工業大学から伊賀健一学長、慶應義塾から真壁利明常任理事にご出席いただいております。それから、本日は中教審の大学行財政部会からNECの特別顧問であります佐々木委員にも出席いただいておりますので、よろしくお願いします。
 また、本日は笠政務官が出席予定になっておりますが、来られ次第、少しごあいさつをお願いしたいと思っております。
 それでは、まず事務局よりパブリックコメントでの意見募集の結果と事業仕分けの結果及びリーディング大学院のコンセプト等について説明をしてもらいます。その後、リーディング大学院に関しての産業界及び大学からのヒアリングを行った上で議論を進めたいと思います。
 それでは、事務局から資料の説明を含めて説明をお願いします。

【樋口大学改革推進室長】 まず、配付資料の確認を先にさせていただきます。議事次第をおめくりいただきまして、資料1、これは前回の大学院部会の議事録でございます。ご意見があれば12月17日までに事務局にご連絡いただければと思います。続いて資料2の群が先般まとめていただきました大学院部会としての中間まとめ。まず、2‐1としてポイント版、2‐2として概要、2‐3として本文を記載してございます。また、資料3といたしまして、この中間まとめに基づきます意見募集の結果についてという資料がございます。さらに資料4で事業仕分けの第三弾の評価結果という1枚ものがございます。続いて資料5、これがリーディング大学院のビジョンについてという資料でございます。
 続く資料6以降が今回ご出席いただいております有識者の方々からのプレゼン資料でございます。まず、資料6が中村委員長の資料でございます。資料7が松田部長の資料でございます。資料8、9、10は、グレーのファイルの中にとじてございます。資料8が松本先生の資料でございます。資料9が伊賀学長の資料でございます。資料10が真壁常任理事の資料でございます。ファイルは持ち帰り不可となってございますので、これは後ほど机上に置いていただければと思います。最後に資料11に佐々木委員の説明資料がございます。最後に日本経済団体連合会の資料が資料12という形にしてございます。不足等ございましたら、お伝えいただければと思います。
 それでは、先ほどご指摘がございました、先に今回の会議の趣旨に関する説明を続けてさせていただきたいと思います。まず、資料3に基づきまして、中間まとめに対します意見募集の結果について簡単にご説明申し上げます。先ほど有信部会長からもご説明がございましたけれども、先般、この大学院部会において中間まとめとしてご提言いただいた中身について先月の3日から約1カ月間、意見募集を行いました。その結果、この資料3に掲げてございますとおり、17つの意見がございました。団体から2件寄せられておりまして、1つは私学団体、もう一つは学生の組織ということでございます。個人枠では、今回、お越しいただいていますCOCNからのご意見もちょうだいしてございます。
 全体的な傾向で申しますと、おおむねこの大学院改革の方向性に関しましては好意的な回答が多かったと認識してございます。個別論としては、幾つかご紹介させていただきますと、まず2ページをお開けいただければと思いますが、この下のほうに組織的な教育・研究指導体制というところがございます。この中で大学院の教育に携わる教員の教育と研究のウエイト、あるいは適切な教員の教育評価というものの必要性を訴えるような意見がございました。また、5ページをおめくりいただければと思いますが、ここに産業界等との連携の強化という意見がございますが、ここが意見の件数としては一番多かったわけでございます。中身としましては博士号取得者の処遇、あるいは教育面での産業界との人材交流、そういったものをさらなる進展等を望むような意見がございました。
 また、7ページ、「「(6)優れた学生が見通しを持って大学院で学ぶ環境の整備」について」というところがございますが、これも意見としては多うございましたけれども、日本学術振興会に対し、特別研究員、DCをはじめとする給付型奨学金、修士段階からの給付型奨学金というものを含めての充実を求めるような意見などがございました。私どもといたしましては、これらの意見をもとに答申案を部会長とも相談いたしまして作成し、次回の部会でご議論を賜りたいと思ってございます。
 本日の議題でございますリーディング大学院の件、これに関しまして、まず事業仕分けとの関係についてご説明を申し上げます。資料4を開けていただきたいと思います。先ほどもご紹介のとおり、政府の行政刷新会議による11月の事業仕分けで、いわゆるGP、COEという国公私立を通した大学教育改革支援事業が取り上げられました。この中で博士課程教育リーディングプログラムにつきましては、この裏面をごらんいただければと思いますけれども、予算よりもビジョン、あるいは制度というものが先にあるべきというようなコメントが付されまして、見直しという判定がございました。この博士課程教育リーディングプログラムといいますのは、昨年末来、この部会やワーキング・グループでご議論いただいた今後の博士課程教育のあり方の議論の、ある意味では中核的な部分をなすというところでございまして、今後、答申にまとめていく予定としていたものでございますけれども、急ぎこうした指摘への対応が必要であるということから、このようなセッションを設けさせていただいた次第でございます。
 資料5をお開けいただきたいと思います。資料5を1枚めくっていただきますと、このリーディング大学院のコンセプトという横長の資料がございます。この資料は、これまで大学院部会でおまとめいただいております中間まとめに反映されているこの博士課程教育の改善の中身、リーディング大学院のコンセプトというものにこの8月、私どもが概算要求を出させていただいたこのプログラムの内容を落とし込んで、その全体像を1枚にまとめたものでございます。本日は、これをもとに有識者の先生方並びに委員の先生方のご意見を踏まえて、この全体像を確認、評価するということを想定してこのような資料をつくらせていただいた次第でございます。
 順次ご説明を申し上げますと、すなわちこのリーディング大学院というもののコンセプトは、従来の博士課程教育が研究者の養成というものを基本として、区分型の教育であったという中にあって、グローバルな社会においてリーダーシップを発揮するような高度人材が世界で求められているという状況の中で、特に日本においてこの優秀層が博士というものから流出、進学率が低下するというような危惧もございました。こうした中で、この博士というものの新たな使命に対応すべく広く産学官にわたって成長分野などで世界を牽引する博士を、大学のすぐれた英知を結集して、専攻の枠を超え前期・後期一貫した学位プログラムによって養成する、いわば大学院教育のイノベーションというふうに位置づけられるようなものでございます。
 これをカリキュラムの企画段階から産学官が参画することによって優秀な学生を博士課程に引きつけ、修了者を産学官で確実に採用、処遇していくといった好循環の構築というものを目指そうとするものでございます。具体的にはこの概算要求におきましては、この世界を牽引するリーダーというものを3つのタイプに設けてございます。1つは文理統合型のプログラムのもとで国内外の政財官学界問わず活躍し、まさにグローバルな社会を牽引するようなトップリーダーを養成するもの。2つ目には複数領域を横断した学位プログラムのもとでグリーン、ライフイノベーションといったイノベーションを牽引するリーダー、さらには世界独自のすぐれた資源を生かしたユニークな教育を施し、これを通して新たな分野を開拓していくようなリーダーといった3つの分類でこのリーディングプログラムを構成してございました。
 この右下のところにその全体の図で、このタイプそれぞれを共通するコンセプトを掲げてございますけれども、大きな柱といたしましては、この円錐の中に掲げてございますように国内外から優秀な学生を選抜し、多様な分野の学生が切磋琢磨するような環境を構築。研究施設の壁を破った複数領域を統合するような教育プログラムを提供し、その基礎力というものを包括的に審査、クオリファイというものを施した上でさまざまな国内外の研究経験を積ませ、また、第一級の複数の教員が密接に接する中で研究指導が行われることを通して俯瞰力、国際性、創造性等の備わった博士を養成するというものでございます。
 今回、概算要求させていただいていますこの博士課程教育リーディングプログラムというものは、これを可能とするために、例えば修士段階からの学生の支援、あるいはオーダーメイドに学生のイシューを支援するようなメンター等々の機能を施した財政支援というふうに施してございますけれども、他方でこの大学院部会の中においては、この予算という枠組みのみではなく、クオリファイの導入を可能とするような仕組みの導入、あるいは単位の互換の上限というもののありようといったもの、制度的な対応も検討しているというところでございます。
 私どもこの概算要求におきます博士課程教育リーディングプログラムにつきましては、この3つのタイプをあわせて複数年通して、約60拠点程度の拠点を支援したいと思ってございますけれども、こうした中で予算制度を含めて、この大学院部会で掲げています博士課程教育の改革というものを体現するような形として、私ども全体像を描かせていただいているところでございます。本日は、こうした中で産学それぞれの立場からご意見をちょうだいして、これを確認、消化していきたいと思っています。
 以上でございます。

【有信部会長】 リーディング大学院についてのもともとの考え方については、今説明があったようなところです。そこを踏まえて議論を進めていきたいと思いますし、もう一つは仕分けで指摘されていることに対しても、頭に置きながら議論を進めていきたいと思います。
 それでは、非常にお忙しいところ、本日お越しいただいております方々からのヒアリングを始めたいと思います。最初に産業界から中村取締役、それから、松田部長からヒアリングをさせていただいて、その後、大学から松本総長、大嶌副理事、伊賀学長、真壁理事ということでお願いしたいと思います。
 まことに申しわけありませんが、それぞれのご説明は10分程度としていただいて、全体の質疑は全員の説明が終わった後、まとめて質疑、議論を進めたいと思いますので、ぜひよろしくお願いします。
 それでは、最初に中村取締役、よろしくお願いします。

【中村COCN実行委員長】 COCNの実行委員長を務めております日立の中村でございます。よろしくお願いします。
 国や企業というのは、みずからを環境に適合させることによって生き延びることができるわけです。最近では新興国市場の拡大や、円高などの理由から地産地消に加速度がかかっておりまして、企業で見ますと製造販売面の海外展開のみならず、企画、研究開発を含めた事業活動全体のグローバル展開が加速しております。また、先進国の頭脳とか、モデルマーケットの活用の観点からも優秀な人材を先進国で求める企業は今も続いております。
 図面でご説明しますが、左上に番号を打っておりますので、まずは1枚目を見ていただきたいと思います。このような中で我が国は課題先進国としてのフロントランナーを目指して研究開発及び先端物づくりのハブとしての地位を確立していかなければならないわけです。このために新成長戦略では環境エネルギーや資源問題の解決、あるいは活気ある高齢化社会の実現が重要なテーマになっていると理解しております。
 産業界にとりましては、先ほど言いましたグローバル・オペレーションの拡大にあわせて経営や事業、営業、技術開発などにおいて国際的なリーダーを育成することが焦眉の課題になっております。彼らはグローバルスタンダードで経営する能力が問われるばかりか、複雑に絡み合って進展する高度技術を理解して、数多くの新技術やその組み合わせを取捨選択し、シナリオを描く、あるいは課題を設定するような能力が求められています。
 恐れ入りますが、2枚目、ナンバー2の図面をご覧ください。企業がこれまで社内で時間をかけて行ってきましたOJTと言われる教育は、企業内の優秀な技術者集団を育成することには成功してきましたけれども、今日求められているグローバル・リーダー層の育成は企業自体にとっても新しい課題でございまして、OJTを行うだけの経験も力も不足していると見ております。このため最近では事業本社機能を海外に出して、現地で人材を確保したり、新入社員の過半数を海外研修に出すことを計画しているという企業も出始めており、さまざまな方策が模索されているという状況でございます。これからの大学院教育というのは、このような新しい時代の要請にこたえてグローバルスタンダードの教育と人材の育成に産学官が協力して取り組む必要があると考えております。とりわけ、今日も議論になります産業界リーダー層のキャリアパスとしての大学院博士課程を充実させるということをここでは特に提案したいと思います。
 3枚目でございます。総合電気メーカーの博士課程修了者、これは日立製作所の例でございますが、若干データを持ってまいりました。毎年の学卒採用数のうちの博士課程の修了者は、10年ぐらい前は2、3%でございましたが、現在は5から7%ぐらいに増加してございます。現在、従事している業務につきましても、これはグループ全体でございますが、コーポレートの研究部門が55%、事業部門が約40%、残りが本社管理部門等でありまして、研究部門に数多く配置されているのは当然ではございますけれども、事業の最前線や本社管理機能でも、管理部門でも活躍していることが見て取れます。
 特に最近、採用活動に当たっている現場の幹部の印象では、博士人材の興味の広さ、あるいはリーダーシップ、フレキシビリティ等において大いなる改善が見られるというような声もございまして、これは私自身が携わっておりました十数年前とは大きな変化であります。最近の大学院教育の改善効果が一部出始めているのではないかと見ています。しかしながら、一方で博士の採用に積極的でない企業が依然として多いように見受けられます。
 4枚目をご覧頂きたいと思います。最近の大学院改革のさまざまな取り組みについては、折に触れて企業にも紹介してもらっております。先導的な大学院からは産業界の問題意識を理解し、大学院教育を変えていこうという姿勢を強く感じております。具体的にはグローバルCOEであるとか、グローバル30、スーパー連携大学院などの取り組みは産業界でもかなり認知されるようになっております。さきに触れましたように、博士人材採用時の評価が高いということは、このような努力の結果が反映されているものと推察します。この流れを一層確かなものにするために、大学院の役割が学術研究人材のみならず、産業界、公的機関などへのグローバルスタンダード人材の供給が目的であるということをより明示すべきだろうと考えます。
 5番目でございます。産学連携というのは過去10年間振り返ってみますと、大学におけます研究の成果をいかに早く民間で活用するかという観点の議論が主だったように思いますが、産業界と連携した教育への取り組みはまさにこれからというふうに見ております。スタンフォード大学の西先生がよく言われていますけれども、学生さん1人1人の教育というのは、指導教員の先生だけの責任で行うものではなくて、他の研究室の先生、あるいは他の大学、産業界など多くの関係者の共同作業で行うべきであるというような認識に立つならば、産業界の参加はなおさら重要と考えております。
 具体的には、産学官連携イノベーション拠点の活用による実践的教育の推進を提案したいと思います。現在、産学官は連携してイノベーション拠点を実現し、課題解決型のイノベーションに結びつけようとしておりますが、一例として最近は、つくばイノベーションアリーナの立ち上げがなされております。このような場所で例えばナノテクノロジー分野の研究開発を行いながら、企業の者と一緒に学生さんが勉強する。新しいリーダーとして育っていくというようなことが可能になるのではないかと考えております。
 6枚目をご覧ください。今回、この部会から報告されました中間まとめというのを拝読させていただきました。産業界が期待する大学院教育改善の方向性とよく一致しており、全体としては高く評価させていただいております。グローバル・リーダーの育成、あるいはグローバルスタンダード教育などにも十分配慮していただいていると思います。一例として従来のリーダー層育成のために実績のある大学院中心に重点投資するという今回のリーディング大学院構想が、今回取り上げられたわけでございます。これが具体的な施策として実りのある形で推進されることを期待したいと我々は考えております。
 我々の問題意識は、高度人材育成をいかに確実に実行するかということにございます。これまでもいろいろとすぐれた答申が出されましたが、結局のところ、予算的裏付けが乏しく、竜頭蛇尾に終わるということが少なくなかったのではないでしょうか。繰り返しになりますが、やはり予算措置が重要であります。そもそも教育については国家百年の計で長期的な予算の裏付けのもとに行うべきであって、一過性の重点施策による取り組みだけではなく、通常予算の中で確実に実行できるようにすることが重要であると我々も感じておりまして、これは特に文部科学省さんのほうにお願いしたい点でございます。
 個別課題で見ますと、教育の質の保証を強く望みたいと思います。習得する基礎的能力の審査の仕組み、Qualifying Examinationは不可欠であると考えております。社会の多様なキャリアパスに向けた教育では、基礎的能力をしっかりと身につけていただきたいと思います。
 最後、7枚目でございます。このためには教員の教育・研究における指導能力の向上が重要であろうと思います。そのためには多様な経験を持った教員を採用していただくとともに、教員の教育業績や教育能力を評価する指標を早急に確立し、その評価指標に基づいて各大学が教員を採用、あるいは昇任・昇格等の人事処遇に反映させていくことが重要だと思います。グローバルに活躍できる人材の育成のためには、大学キャンパス自体のグローバル化も不可欠でありましょう。また、海外大学との教育連携も進める必要があろうかと思います。これから産業界と連携した教育の取り組みがいろいろな角度、観点から議論されると思いますけれども、我々としてもぜひ積極的に対応したいと思っております。
 以上、総括しまして最後に3点だけ申し上げたいと思いますけれども、これまで我が国は企業レベルで優秀な人材群をつくるのに成功してきたと思いますが、今、日本に求められている世界レベルで活躍できるリーダー人材の育成という点では問題が多い。多様な分野でのリーダー層育成のための大学院教育の充実が必要であるという点でございます。2点目は、教育という観点での産学連携の議論をもっと深める必要があると思っておりまして、産学官が継続的に人材育成を検討する場の設置を提案したいと思います。3番目はOECD諸国等を見てもやはりGDP比で大きな教育予算をとって、しかも、それを増額しているという中にあって、日本はこれが逆に減少傾向にあると伺っております。しっかりとした予算の確保、継続的な予算の確保を特にお願いしたい。この3点でございます。
 以上です。

【有信部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続き松田部長、よろしくお願いします。

【松田研究・開発企画部主幹担当部長(東レ)】 東レの松田です。本来は委員であります阿部常務が説明するところでございますが、あいにく海外出張に行っておりまして、この関係のサポートをしてまいりました私が代理でご説明いたします。それだけではなく、私自身が現在ここ数年間、技術系採用の専門面接官として100名以上の面接をして、また、アメリカのジョブフェアに行って、アメリカに行っている日本人留学生に関する面接もやっておりますので、その点も踏まえて意見交換できればと思います。
 21世紀に入ってグローバル化、情報化、知識社会への時代の転換、長きにわたる世界的な景気低迷が続いております。この画面で見ていただきますと、これは世界各国のGDPの成長率をあらわしていますけれども、ごらんいただいてわかりますように先進国に比べてやはり新興国が非常に台頭しているというのが顕著であるということがわかります。すなわち、この間、日本はいろいろ先進国のトップを切って人口減少や、急速な高齢化などを経験しています。社会のパラダイムシフトは着実に進展しているということで、我々企業を取り巻く経営環境の不確実さもまた増大していると感じるところでございます。
 次の資料は、21世紀に直面する地球規模の課題を挙げたものでございます。皆さんご存じのように地球温暖化とCO2濃度の増加、人口増加に伴う水不足問題、さらには資源枯渇問題、そして赤で示しますように、これは日本に特に特有なのですけれども、少子高齢化による生産人口の減少、さらには医療費またはお年寄りや子供をターゲットにした感染症の拡大など、または食糧自給力の低下など、こういった非常に複雑な課題に直面していると言えます。私たち企業というのは、このような環境変化に機敏に対応して持続的な成長を遂げるために、イノベーションによって新たな価値を創造し、国の垣根なくグローバルに事業を展開していかなければなりません。
 そういうことで、これは弊社の例ですけれども、産学官連携の取り組み状況ということをご説明しています。東レも2002年のころから自前主義ではなく、大学・公的研究機関または優良企業、ベンチャー、そういった企業と連携することが非常に大事であるということで、さまざまな施策を打ってまいりました。下のほうの円グラフは大学・公的研究機関との連携の例を挙げていますけれども、我々研究本部だけでもトータルとしては約150件の連携に取り組んでおります。そのうちの約4割が大学・公的研究機関であります。ここでは国内にとどまらずグローバルな産学官連携を進めております。
 また、横には棒グラフがございますが、これは国家プロジェクトの積極的参画ということをあらわしております。今から8年ぐらい前は年間10件ほどではありましたが、大学連携、企業連携を進める上でも国家プロジェクトは大きな意味がありました。例えば我々が世界で最も多く生産しています炭素繊維に関しても、その炭素繊維のリサイクルということに関しましては競合各社も共通の課題でございます。こういったものを大学の先生をリーダーとして、競合メーカーが集まって、この課題に業界として取り組む、そういった展開もしております。
 このように我々は自前主義からの脱却ということに関していろいろ手を打っているわけでございますが、この自前主義の弊害というのは大学・大学院の教育にもあると考えております。5ページの左側に大学、右側に産業界と書いて、サイエンスからテクノロジーへ橋をかけるという例を書いてございますが、当然、大学に一番求められるのは、そこには「深は新なり」とありますけれども、やはり本質追求ということは非常に大事であります。ただし、それだけではなく、そこに書いていますように学科、学部横断的な取り組みを行い、学内における自前主義の撤廃、さらにはこの「知」を世界中から集める。そのような仕組みづくりが重要ではないかと考えております。ご存じのように、こういった研究開発というのは国の垣根はございません。こういったところで、それに対応できるような大学及び大学教育というのが必要なのではないかと考えております。
 そこに書いてございますけれども、下の3点です。自前主義を打破し、産学官連携による技術革新力強化を推進ということ。そして、それをやるためには異文化・異分野融合というのが非常に大事だと思います。日本人は漢字を例に挙げるまでもなく、融合による独創というものに非常に長けた民族だと思っています。この点をもっともっと強調していきたいと思います。さらには大学の学生だけではなくて、教員も含めてですけれども、自由闊達に議論できる多様性ある柔軟な環境の構築ということが非常に重大だと思いますし、大学院、大学のほうにも期待しているところでございます。
 次のページで人財育成の現状についてあらわしております。この人財の「財」は通常は材料の「材」と書きますけれども、人は材料ではないということで弊社は人財の確保、育成、教育というところでは宝という意味で「人財」という言葉をよく使います。日本の競争力、イノベーションを支えるものはということで、高度理工系人財(博士)のますますの活躍が期待されています。これは事実であります。育成の拠点は大学・大学院、これも事実でございます。産業界からの要請といたしましては、社会的・世界的課題に着目できる人、次世代ビジネス、技術開発のテーマ設定ができる人、そのモデルを構築し、社会に提供する意欲とリーダーシップがある、そういった人財を求めております。
 しかしながら、そこに書いておりますように現状は、ここ数年、確かに改善はしてまいりましたけれども、ここに挙げてある3点、博士号取得者に対する産業界の、よくミスマッチと言われている話題です。あとは大学院における教育軽視。教育軽視というか、研究にまだ特化しているということでございます。人財流動性や教育の多様性拡大を好まない風潮。これは一昔前に言われておりましたが、最近は大分改善されてきました。しかしながら、まだまだ改善が必要ではないかと考えております。
 次のページです。そこで産業界も産学人材育成パートナーシップということで弊社の榊原会長が全体会議の委員として参加していますけれども、ここに挙げていますような産業界、教育界、産学にわたるさまざまな施策を提案して、現在、実行しているところでございます。
 次ページ、ここに産業界が期待する人財像と大学・大学院への期待という絵を示しています。ただし、ここでは産業界と大きく打っていますけれども、これはあくまでも東レの中で実際に大きな研究業績を上げた研究者の共通点を挙げております。それが青色で示しているところです。1つは基礎科学力に裏付けされた深い専門性、2番目は複数の専門性。これは同じレベルでなくてもいいから、複数の専門性が重要だということです。3番目は未知の分野へのアプローチ、4番目は全体感・視野の広さ、5番目は能動的な考え方・動き方、この5点でございます。
 これに対してそれぞれ大学・大学院への期待ということで下の小さい黒と緑の字であらわしております。そこに書いてございますように、例えば基礎科学を総合的かつ体系的に教える教育カリキュラムが重要である。場合によっては大学院入試方法を見直してはどうか。2番目は研究・教育カリキュラムを整備すべきではないか。これは先ほどの教育をさらに重視してほしいということにつながっております。3番目は、企業に入りますと担当のテーマというのは変わるものです。採用面接の場でも大学のドクター論文を書いている内容と違うことを企業でやってもらうことが多々あると説明しております。大事なのは科学的思考・論理的アプローチです。これがしっかり教育できているかということです。
 4番目は、新事象への多面的なアプローチ法教育が重要ではないか。テーマへの専門家ではなく、領域の専門家、これは具体的に言いますと、例えば有機ELの発光材料の研究をしている研究者は、その有機ELというものだけにとらわれるのではなく、その出口です。いわゆる薄型ディスプレー、そうするとLCD、PDP、FED、いろいろな方式があります。ですから、その競合技術を俯瞰して、今やっている研究の重要性、またはその技術の価値というものを研究していく。そういうことが大事ではないかと考えております。
 さらには発明・発見の真の価値に気づく感性を磨く。研究テーマはそのための道具と書いていますけれども、よく言われていますChance favors the prepared mind、Louis Pasteurの言葉ではございますけれども、やはり常にそのことについて真剣に考えて準備されている。そういった準備ができているような、そのような学生または研究者を育成するべきではないか。
 5番目は大学時代に自分で描いたシナリオで研究推進。テーマ設定は先生から与えることは多々あると思いますけれども、与えられたテーマの中において自分で課題を見つけ、そして壁を突破していくというような、そういったことが重要ではないかと思います。ということを踏まえまして、大学・大学院カリキュラムの見直しを産学官共同で、これが重要だと思いますけれども、産学官共同で実施すべきだと思います。
 例えばということで、修士/博士の一貫教育、ここに就活・修論からの解放と書いていますけれども、こういったことも必要ではないでしょうか。実際に私がアメリカで日本人留学生の面接をしていますと、アメリカには卒論はございませんし、基本的に研究者はドクターを採用しています。ですから、修士というのはほとんど我々の面接にも来ません。しかし、日本では修士を、私どもの会社でも基本的には8割ぐらいは修士を研究者として採用しています。すなわち、修士でも研究者として認められている。アメリカにおいては博士でないと研究者としては認められない。そういったことが日本でなぜそうではないのかということを、根本的なところを考えてやはりカリキュラムに反映していただきたいと思います。
 そこで、最後になりますけれども、このリーディング大学院構想といいますものは、非常に時宜を得たものと認識しております。ただし、これを先ほどの中村委員長のご発言にもありましたように、実効あるものとするために次のことを提案したいということで4点挙げております。すべてここでは言葉では説明しませんけれども、青色のところです。明確な評価軸を設定した上で一定規模の拠点を選定する。中長期的な展望に立った課題領域を設定し、複数の学問分野を統合した課題解決型の教育プログラムを選定する。そして、教育プログラムの企画段階から産学官が関与することが重要であると考えます。最後に産学官のオールジャパンの体制で能力、志とも抜きんでたグローバル・リーダー、エリートと言うと語弊があるかもしれませんけれども、そういったグローバル・リーダーとしての博士の養成と活躍を推進する組織を形成する。このことが日本の国力を上げることに非常に重要だと思います。
 以上で説明を終わります。

【有信部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きで申しわけありませんが、松本総長、お願いします。

【松本京都大学総長】 京都大学の松本でございます。リーディング大学院のコンセプトにつきましては、先ほど資料の5で説明されましたように、現代社会はワールドリーダーを必要としており、そのために大学院のイノベーションが必要だと議論をしてまとめていただいております。私どもも大学としての取り組みというものを検討してまいりましたが、一端をご紹介して、大学が新しい大学院に対して一歩踏み出したいということをお聞き願いたいと思いまして参りました。
 まず、期待することというタイトルでお話をさせていただきます。前に画面が出ておりますけれども、資料の中にA3の資料が1枚入ってございます。この中身を次々と切り取りながら、前に画面を映してまいりますので、このA3の資料に随時目を通していただければ私の話の全貌がわかるようにしてみました。
 その前に一言、二言申し上げたいと思いますが、大学院はやはり全国の大学院を見回しましても、ほとんどが大学院○○研究科という名前になっています。これは研究を深堀するということで、産業界も社会も必要としてこれまでやってまいりました。これ自体は悪くはなかったと思いますし、成果も上がってきましたが、それだけでいいのでしょうか。今のような産業界のお話もあり、考え直す時期が来ていると深く感じています。例えば学問領域だけを見ましても、知的好奇心で学問が枝分かれをし、いろいろな学問領域が出てまいりました。しかし、現状はさらに進んで、非常に細かい学問分野に分かれています。1つの研究室が1つの小枝、その中でまた大学院生がさらに小枝を伸ばす。
 つまり、多様化が進んでいます。したがって、先端の枝葉だけではなく大元の幹を理解できる人材、つまり、物の本質を理解できる人を教育するということが社会から要請されています。これは「務本の学」と書かせていただきましたが、このような大学院をつくる必要がある時期に来ていると思います。高度な専門人材はこの枝葉のそれぞれの専門のところで、いろいろな従来型の大学院で教育が行われています。これは○○研究科のことで、京都大学の例でもたくさん人材を育成しています。しかし、それだけでは不十分であり、もう少し元に戻っていろいろな学問分野を俯瞰し理解できるリーダー人材を育てたい、そのような構想を行いたいというのが私どもの1つの考え方でございます。
 A3の資料に参りますが、タイトルは「京都大学学寮型大学院(思修館)」を案として考えています。この思修館の「思」と「修」ですが、学問は聞思修、聞慧、思慧、修慧と言われますように、先人の知識を得、その後自分で考えて、そして行動に移すというのが聞思修という伝統的なものの学びの手法です。大学院に進学すると、自分で考え、行動する。責任を持って行動する人をつくるという意味で、このような名前を仮につけています。まず、最初に左上の現状分析から説明したいと思いますが、大学院の各専攻で教育カリキュラムを作成しますと、融合分野はやはりどうしても難しくなります。京都大学でも研究科横断型のカリキュラムを組んでいますが、決して十分とは言えず融合分野のカリキュラムはまだごく一部です。
 それに対して新しい大学院ではコースワークによる全方位的な教科の修得、既存科目の履修ではなく、融合科目をつくる必要があると考えています。現状分析の欄の中の2つ目の項目に移ります。現状は学部、マスター、ドクター、3段階の限界がありまして、専門性の深化、つまり、枝葉の先へ先へと上るということはできますが、幅広い経験を得るにはどうしても不向きという問題が残ってまいります。それに対して新しい大学院では複数教員によって指導体制をつくるべきではないか。そしてまた社会のニーズをよく理解した上で学問の専門領域に入る技術を身につけるという意味で、現場研修インターンシップ等が重要であろうと考えています。
 グローバル・リーダーの必要性ということもうたわれておりますので、徐々に英語による教育が浸透していますが、日本語による教育が、大学院においてまだまだ多く行われております。新しい大学院ではやはりすべて英語で提供する必要があると思っていますし、複数の外国語をマスターさせる必要があると思っています。また、ディスカッションやディベートが日本人は弱いと言われますが、そのような場面での協調性、指導性を育成する必要があると考えています。それから、先ほどお話しがございましたが、就活による研究、教育時間の不足というのは現実にございます。この問題をクリアするためには修士、博士の一貫教育で、途中では修士として卒業させないというような5年一貫教育を行う必要があると思います。
 ただし、専門性のない根なし草になっても困りますので、私どものアイディアでは、最初の2年間、学位論文研究をさせたいと思っています。左下の絵を見て頂きたいのですが、この真ん中のほうに薄い絵でスパイラルが書いてあります。5年の計画を構想していますが、1年目には学位論文研究をさせます。論文というのは研究室に入ってやりますが、問題意識を持っていただく必要がありますので、この左下の四角の枠の右手に書いてありますように研究室に入る前に、1年目の最初の1、2カ月に現場を体験させることが必要ではないかと思ってございます。学内外、あるいは海外から募集した人材をいろいろ受け入れて、そして一旦社会の現場を1、2カ月経験してもらい、自分でメンターと相談しながらカリキュラム、研究テーマをテイラーメード仕様で作り上げるというプロセスを経させたいと思っています。
 2年目には、学位論文を引き続き研究させます。いわゆる現在の修士課程では授業が少しあって、そして研究を半年ぐらいやって、それから、就活が半年ぐらいあって、最後にまた卒論に毛の生えた程度の研究をする。これでは非常に研究のレベルが低下していると言わざるを得ません。そこで、ここでは2年半、ほぼ2年みっちりと専門教育と学位論文研究をやらせたいと思っています。資料左の下の2階部分になりますが、そのために必要な高度専門教育は受けますが、それをパスした者に対してスパイラルの図にありますひとつめのゲートとして論文審査をいたします。
 3年目には、社会が要求している、あるいはグローバル・リーダーとして必要な8分野の選択必修科目を学生に選択させ、それを取らせたいと思っています。8分野は医薬・生命、理工、情報・環境、法・政治、経済・経営、人文・哲学、芸術、語学であり、こういったものは本当に世界のリーダーとして活躍するために必要なものばかりです。こういう構想が今までの大学院では必須ではありませんでした。これを3年目できっちりと仕込みたいと思っています。4年目には、海外留学、これは還学と書かせていただきましたが、1年間だけ大学、あるいは国際機関に留学をさせる。これも必須の単位としたいと思っています。
 それを修了して5年目になりますと、今度はやはり社会とのインターフェースを考えなければなりません。リーダーとして十分な資質を与えるためにいろいろなプロジェクトを発案させ、あるいはリーダー教育、組織心理学やコーチングやファシリテーション、チームワーキング等を経験させまして、具体的に産業界、官界、あるいは国際機関、大学、他大学等のインターンをさせる。そういうことを通して全体像として要求されているグローバル人材を育成したいと思っています。
 体制等については、右のほうに書いていますが、このようにしっかりとテーラーメイドの学生を育てるためには、入学定員は多くはできないと思っています。新しい研究科をつくった場合には、入学定員は毎年16名から20名と思っています。専任教員は10名程度で、コーディネーター、プロデューサーとして、教員であり教育を主務としていただきたいと思っています。学生の主査となり、教育キャリアパス形成に対して責任を持たせる。学生1人につき主査1名、副査1名、メンター1名の複数名で指導したいと考えている。また、外国、あるいは産業界、官界など多様な人材を教員として採用したいとも構想しています。もし認められればそのようにしたいと思っています。
 また、兼任教員は現存のいろいろな研究科、研究室の方々に兼任をしていただき、1年目、2年目の研究指導を受け持っていただきます。そして、もちろんメンターもやっていただくわけです。それから、リーディング大学院の教員はメンターとして、これは主務の教員ですが、日常的な教育研究のアドバイス、つまり、手づくりの履修科目を通して、人間というものをつくり出すわけですから、このようなことは必要だろうと思っています。
 学位はドクター・オブ・○○ではなくて、Ph.D.を出したいと思っています。修了要件は複数個ありますが、まずひとつめは学位論文で、この学位論文研究を2年でパスしなければなりません。ここでは学位論文にふさわしい研究をさせる。次いで、高度教育科目の8分野の中から必須のものを選ばせて、そしてそれを要件とする。海外留学も要件です。インターンシップも要件です。そして、外国で国際的に活躍してもらうためには英語のTOEFLはiBTで100点以上を必修としたい。このくらい育成しますとかなり即戦力になるのではないかと思っています。
 そして、最近の学生を見ていますと専門分野は強いのですが、それ以外に、やはり1つのところで教員と学生同士でともに生活をするということは必要であり、学寮制度を設けたいと思っています。教員が兼務する寮長も含めた全寮制を実施して、5年間にわたり同じ釜の飯を楽しみ、卒業後も交流し得る、そのような人の集団を毎年輩出したいと思っています。専任教員のほかに企業や官庁からもゲストを定期的に講師としてお招きし、頻繁な熟議を開催して肌で教養を身につける本気の志に触れる仕組みというものをこの寮の中で実現したいと思っています。
 また、小学生は少し戻ったようですが、最近の学生の体力は著しく落ちています。そこで体育は正課にいたしませんが、学寮対抗戦などを実施して体力・気力ともに充実できるのではないかと考えています。前のスライドを見ていただきますと、左に2つ、運動会のような写真が出ておりますが、実はこれは京都で行われていた三高時代の運動会でございます。京都の三大祭りというと祇園祭、葵祭、時代祭になっていますけれども、明治時代には時代祭がなく、祇園祭、葵祭、そして三高の運動会、これが三大祭でした。ですから、こういったものを国内外の大学の寮で随分やっているようですが、寝食をともにして教員、学生同士、鍛えることが将来のリーダーとしての資質を育成する上で重要ではないかと思っています。
 出口ですが、このスライドの真ん中の赤い両腕を上げた人間、Ph.D.、これは修了要件を満たした者が出ていくわけですけれども、広い知識と深い専門性を両立させた柔軟性ある思考、実効力のある次世代リーダーを育成できるのではないか。これは今までの大学院からもリーダーは一部個人の能力、研究室の能力によって出ていたと思いますが、システマティックに組織として行う制度は非常に少なかったと思います。これをぜひ実現したい。
 実力としては省庁では課長補佐クラスの実力、一般企業では課長クラスの実力、研究機関では講師、准教授クラスの実力、国際機関へすぐ行けるような実力という人が出せればいいと思っています。このような大学院イノベーションを行わない限り、いろいろな社会からの要請にはこたえられないと考え、独立に新しいものをつくって、ただ、ほかの大学院にも敷衍できるようにしたいと構想しているところです。ありがとうございました。

【有信部会長】 ありがとうございました。
 それでは、引き続き伊賀学長、よろしくお願いします。

【伊賀東京工業大学長】 東京工業大学の学長の伊賀でございます。私どものリーディング大学院のタイプ1に相当いたしますものを東工大グローバルドクター教育院ということでご説明を申し上げます。資料の右下にページが打ってありますので、それに基づいてご説明いたします。2ページ目、これが概要でございます。左側が従来の大学院の教育、これを高度にするということも非常にアカデミア・プロフェッションという意味では大事でございますが、今回、右側がグローバルドクター教育院リーディング大学院でございます。この右側の図は適宜出てまいりますので、その都度説明申し上げますが、今申し上げますのはやはり国際政策イノベーション、こういったところへ輩出する人材を養成するスペシャルコースとして位置づけております。
 東工大では1学年、約500名のドクターがおりますが、このグローバルドクター教育課程では、1学年約20名から30名ぐらいということで考えております。修士、博士一貫コースを特徴とし、東工大の卒業生として専門が何もないというのでは責任を持てませんので、それを担保しながら右側の道場と申しますものをつくって要請にこたえたいというのが構想でございます。その下に青い点線、赤い点線がありますが、赤い点線の下が修士の1年、2年、上が従来のドクターコースという位置づけ、およそそういう位置づけというふうにお考えいただければと思います。
 3ページ目をお開きください。この教育院の目的はグローバル化する科学技術や経済のイノベーション、国や組織を超えてリードしていく国際的なリーダー人材の養成を目的としております。その養成される人材のイメージといたしましては、そこに書いてあるとおりでございます。
 4ページ目をごらんください。そのイメージを2、3枚使いましてご説明いたします。国際社会を牽引するリーダーというのはどういうものかということでございます。我が国の世界の文化を理解していること、国際的なコミュニティへの参画、コミュニケーション力、こういったものが考えられます。これを反映する仕組みとしましては、海外の研究機関と連携してプロジェクトに取り組む、オフキャンパス教育を実施するということでございます。既にいろいろなプログラムが走っている中、博士一貫教育プログラムが大学で続いておりますけれども、そこで現在派遣している人数、大学等がそこに書いてありますとおりでございますので、そういったことがこれからも引き続きあると考えます。右側にその詳細を書いておりますが、博士一貫プログラムで事前教育をやり、派遣プロジェクトをやる。こういったイメージでございます。
 5ページ目をお開きください。では、産業界にイノベーションを起こす先導的経営者・技術者とは何かということでございます。これはやはりオフキャンパス、インターンシップ等々を通じまして、企業の皆様方と協力しながら人材を養成することが必須であると考えます。そのプラットフォームとして、下に書いてありますようなプロダクティブリーダー養成機構――PLIP、これを平成20年度から動かしておりまして、これでメンターをお願いしたり、あるいはインターンシップで協力企業に派遣したりしておりまして、中にはそのインターンシップに行った企業にそのまま就職する。これはリクワイアメントではございませんが、うまくマッチングすればそういうことも今まで起こっております。現在、派遣しております企業の群がその下にありますとおりでございますので、これからもこのプログラムを動かせば、当然のことながら引き続きお願いして、これを増やしていこうと思っております。
 それで、6ページ目をお開きいただきますと、もう一つ、さらに広く社会に先端技術、科学技術を浸透させる研究者とは何か。これのイメージといたしまして、一番下に青いところで書いてございますが、例えば電子私書箱というのを大山永昭教授のプロジェクトで進めておりますが、そこに参画している学生はソリューション研究プロジェクトとして、この電子私書箱を社会に敷衍させるべく訓練を受けております。こういうふうなことで社会とのつながりというのも、こういう形で進めておりますのでこれを広げていこうと、これが国際、産業、社会というもののイメージでございます。これらに適用する人材を考えております。
 7ページ目をごらんください。これはこの教育院の基本コンセプトでありますが、やはり東工大の卒業生といたしまして、科学技術に関する深い専門知識、これを核にすべきだということでございます。これを背骨といたしまして科学技術のイノベーションに直接的に関与する、あるいは専門学位修得に相当する教育を実施するということでございます。
 それに加えて国際的リーダー人材としての能力を養うということで右側の図をごらんいただきますと、専門教育、左側の枠、それから、右側の科学技術系の道場、これは例えば私はエレクトロニクスを専門としておりましたが、それに加えて例えば経済学、あるいはバイオの分野、そういった科学技術のところで鍛える。あるいは社会学、人文学、芸術といった人文社会系の道場というものに入りますと、もう少し広い意味での道場で鍛えられる。こういうふうな縦軸。それから、オフキャンパス教育に関しましては、導入教育からオフキャンパス教育に入ってインターンシップ等々、あるいは企業の皆様方と話し合う機会をメンターさんを通じて行う。こういった仕組みでございます。
 次の8ページをごらんいただきますと、人間力の涵養ということで道場を考えております。これは道場主を選びまして、それなりの人材というのをアポイントしまして、そこで鍛えるという形でございます。道場主の指導のもとで専門知識を養うと同時にグローバルな視点でいろいろなところが力を養う、コミュニケーション力をつける。こういうことでございます。学生の志望するキャリアパスに合致したオーダーメイド教育を実現する、メンターを配置する。こういうことを考えております。
 9ページ目をお開きいただきます。リーダーシップ養成のための人間力の涵養ということでございますが、道場科目としては、今詳しくはここに書いてございませんが、イメージとしては単純な座学ではなくて、その下の青い四角から上の丸いところまでということで単位数を書いてございますけれども、例えば国際的な経済学とか、宗教学とかそういったものも含まれるような形で、その単位、ユニットを書いてございますが、こういうものを具体的に教える。こういうふうなイメージでございます。
 それから、10ページ目をお開きいただきますと、社会のかかわりについての意識の涵養ということで、オフキャンパス教育を実施するということでございます。オフキャンパス教育でございますが、右側の図面でまずは最初のあたりは人間力、基礎科目というのが用意してございまして、それから、オフキャンパスの導入教育をやって、それから、実際にオフキャンパス教育をやる。こういう形でございます。派遣先といたしましては先ほども少し触れましたが、想定される連携企業、現在、おつき合いいただいている企業の皆様方にもお願いして、これを増やしていこうかということでございます。導入教育ではインターンシップでのプロジェクト遂行に必要な基礎知識、作法などを訓練する。あるいはIPのような問題もきちんと企業に派遣しますので非常に大きな問題ですが、そういったこともきちんと教える。こういうことを考えております。
 11ページ目をお開きいただきますと、アドミッションポリシーとディプロマポリシー、アドミッション、入学、どういう学生が来てほしいかということで1と2というふうなことを11ページの左の下に書いてございます。それを、教育を経てディプロマ、学位を修得するポリシーでございますが、1、2、3、4と書いてございますような能力、そういったものを見る。ただ単に研究論文を雑誌に投稿して受かったというだけではなくて、多様な能力を見て、社会を変える原動力を生み出す国際的博士リーダー人材ということを考えているわけでございます。
 12ページをお開きいただきますと、これは修士・博士一貫教育でございまして、本学で今やっております数十名の学生がこれに参画して、非常に社会、企業の皆様方からよろしいという評価を得ておりますが、これを拡張して進めていくということであります。右側の図面でいきますと、先ほども申しましたように修士に入りまして2年間で進学審査等々をやりますが、その後、教育を行って学位の審査をただ単に論文ということだけではなくて、いろいろな能力を見る。ディフェンスと呼ばれる審査を経てプログラムの修了審査に入る。こういうことでございます。
 13ページを開いていただきますと、ディフェンスを実施するということでプログラムの修了に先立ちまして俯瞰的な能力が身についたかという審査、専門の分野の論文研究というのはもちろんですが、広い立場での複数分野での教員らによる研究内容と、それから、社会的意義、発展性を納得させられる。こういうことを審査する。学位の認定審査は規定の研究科による専門学位修得、その審査とディフェンスの結果を総合して判定する。学位プログラムとしての視野を持っております。授与する学位としては博士、括弧、例えば理工学であるとか、またはPh.D.というのを想定してございます。
 14ページをお開きいただきますと、本学、学寮は十分とは言えませんが、何がしかの手当てをずっとしてきておりまして、経済的支援、これはやはり運営費交付金が減っておりますので、なかなか厳しゅうございますので、この辺はやはり予算化というのが望まれるところでございます。それから、寮への入寮、そこでの教育効果を考えております。それから、国内外のインターンシップへの資金援助、これは旅費等々がかかりますものですから、やはりこの予算化で育てるのだという援助が必須と考えております。それから、メンターさんによるキャリア相談、それから、企業の皆様方とのマッチング、そういったことを考えております。
 最後、15ページでございますが、東工大のグローバルドクター教育院構想と申しますのは、繰り返しになりますが、国際的な視点で活動できる博士のリーダー人材を養成する。こういうことで3つの点を考えているわけでございます。これで我が国の、これから科学技術を中心とした我が国の将来を見られる、そういう持続的発展に寄与できる人材を目指しております。教育体系も変えて、そこに4つ書いてあるようなことを兼ね備えて考えていきたいと思っております。
 あとの16、17は現在動いております博士一貫プログラムとプロダクティブリーダー養成機構の詳しい状況でございます。ご参考までに後でお目通しいただければと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。

【有信部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、学側からの最後、真壁理事、よろしくお願いします。

【真壁慶應義塾常任理事】 真壁でございます。よろしくお願いいたします。本日、清家塾長が海外の大使とちょうど今の時間お会いしておりますので、私から説明をさせていただきたいと思います。
 最初のページです。復活日本のための人づくりを目指すオールラウンドに活躍できる高度人材育成プログラムと位置づけております。そういった意味で、慶應義塾は非常に学部間及び大学院間の垣根が低い組織でございますので、これを生かしましてリーディング大学院プログラムでは超高齢社会発展のサイエンスといった分野をつくり上げていきたいと考えております。
 ページ2に移ります。次代を担う高度博士人材。この人材の歴史的な役割と使命というものを簡単に私の理解で記載をいたしました。今までに文科省は努力によりまして21世紀COEプログラム、グローバルCOEプログラムを運用しまして、ここでは大学院改革とその大学院の実質化に取り組まれました。慶應義塾としましては、このプログラムを使わせていただきまして、いわゆる大学院生、博士課程の学生を育成するためのプラットフォーム、新しいプラットフォームの構築に努めてきました。それを今回フルに利用したいと考えています。大学から見て、また、入学する学生本人から見て、またさらに社会からの期待から判断しまして、今後の博士課程学生の育成におきます博士のキャリアパス構築というのは非常に重要な段階に来ていると認識をしております。
 その中身は、例えば次の社会をつくる新リーダーであり、高度な研究者であり、あるいは産業界で発展のシナリオを描き、活躍できる人材であろうと思います。これはこの人材に成功しますと、日本再生、復活のプログラムはもとより、世界が直面しております諸課題において世界の公共財になる、その人材を創造することができる。しかも、日本からつくり上げるということには大きな責任と意義があると理解をしております。こういったことで慶應義塾は超高齢社会発展のサイエンスに貢献していきたいと考えます。地球の持続可能性が問われる中で、技術、社会創造立国を牽引する総合力あるトップ人材を大学は人材育成とキャリア形成で支援し、国は制度設定と経済的に支援し、産業界は雇用と大学と産業界を結びつけるキャリアパスで支援しなければならないと考えています。
 ところで、修士からの育成が開始のかぎとなると思います。慶應義塾におきまして修士課程を1.5年程度で終わりまして博士課程に進む学生は、そこで一休みしてしまうんですね。こういった時期を非常に有効に使っていきたいと考えております。また、修士の1年生から現状では就職活動に入りまして、そういった学生が博士課程へ相変わらず入ってくるといったことで大変な時間的なロスがあるというのが現状です。
 3ページに移ります。今問われますインセンティブとは何かということを考えてみたいと思います。現役の博士課程学生の育成の目的から考えて、学生から見てインセンティブとは何かということです。従来型の研究大学院ですと、優秀な学生を集める。また、個人のすぐれた研究を支援するということで、言うなればアカデミア志向の人材育成であろうと思います。これであるならば、奨学金で十分だと思います。また、内向きな学生が育つということも事実でしょう。大学は真理の探求と新しい文明の開拓を問われております。現状ではグローバルスタンダード環境のもとでこれをどう実現するかということでしょう。これは言いかえますと不変のもとでの変化が必要である。多様性の確保が急務となっているというわけです。
 では、多様性とは何でしょうか。そうです。新しいグローバル高度人材育成になるのだろうと思います。卓越した専門スキルを育成すること、また、グローバル課題に対処能力を持っている学生を育成すること。持続発展を科学技術で担うことができ、総合力あるグローバル・リーダーの育成でしょう。また、当然、国際舞台でリーダーシップをとれる人材となると思います。こういった学生に対してのインセンティブは奨学金ではございません。RAに雇用し、キャリアの助走機関に入るというこれこそが彼らにとってインセンティブだと思われます。我々は奨学金で学生を集めるということを試行していましたが、これは有効に働きませんでした。学生を超えた21世紀の地球を支える一員として強い意識を彼らは持つことができるのだと思います。
 また、留学生受け入れの一方的な機関だけではグローバル化できないと考えておりまして、我々が考えます組織では日本を意識しない。言うなればインターナショナルな組織にしたいと考えています。また、こういったところでリーディング大学院グローバルプログラムの基盤としましては、オープンな環境を設けたい。2つ目は卓越した人材の蓄積の場であってほしい。3つ目は知識、情報の集積場であってほしい。4つ目は知の創造空間がここから生まれるといったことを利用して博士人材育成に努めたいと考えております。
 ページ4に移ります。慶應義塾は大学院を14研究科設けておりまして、他大学から、それから、慶應義塾から、また海外の大学から学生を迎え入れております。各研究科が独自に行います入学試験を通って慶應の全研究科へ入学を許された合格者の中から、学生が独自にリーディング大学院プログラムに申請をする制度を考えております。また、我々はこの中から競争的に審査をして採用していく仕組みを考えております。現状では慶應義塾、2,900名程度の修士入学生がおりますので、この中から1学年30名程度を選抜したいと考えます。4つの機能をこのリーディング大学院プログラムには運用したいと考えておりまして、私の能力で表現が十分ではありませんが、ファカルティクラブの機能を充実させたいと考えます。
 我々が若いころ、海外の大学に行きまして例えばファカルティクラブなどでお昼を食べたとき、隣にはノーベル経済学賞をもらった先生がいらっしゃって、そこでいろいろな話が出てくる。額に汗をかいて食事もままならなかったと思います。こういった環境こそ必要だと思っております。そこで、多数分野の卓越学者がつくる融合刺激空間としたいと考えます。また、学生から見て新たな目覚め、意識改革の場となるような、また、ショックを受けるような組織としたいと思います。
 2つ目、グローバルスタンダードの教育をしたいと考えまして、教育研究の連携をしたいと考えます。連携先は慶應義塾が設けております海外240校に上がります海外大学・大学院との連携であります。ここから学生の交換をいたしまして、また、教員の交換をしていきたいと考えます。慶應義塾の教員は現在サバティカル制度を7年に1回とれることになっておりますが、多くの教員はこれをとることができません。このプログラムを運用することによりまして、海外と専任教員のイクスチェンジをしたいと考えまして、先生方にも海外に出ていただきたい。また、学生も修士1年の終わりごろから博士の初めあたりにかけて留学をさせたいと考えております。そういったことで、海外からの皆様方はプロフェッサーとして迎える。
 また、このリーディング大学院プログラムでは所属研究科専門の学位をしっかりと身につけていただきたいと考えております。プラス、リーディング大学院プログラムの学位を出したいと思います。ここでは指導教授と副指導教授を設けたい。副指導教授の中心は海外の先生になっていただきたいと考えています。専任の教員は兼担で20名程度、また、ここには海外からの教員及びプロジェクト専任の教員をプラスとして設けたいと考えます。学生は1学年30名です。また、こうなりますと会話は英語ということになりまして、英語を公用語として講義も、また、セミナー等も開いていくということにしたい。既に慶應大学理工学研究科では6つのコースが英語で常時講義をされておりまして、100名の専任教員がこれに携わっております。
 4つ目に産業界、行政機関と強い連携をしていきたいと考えております。日本を中心ですが、一部米国等も考えたいと考えておりまして、プロジェクト・プロフェッサーとしてお迎えしたり、あるいはプログラムオフィサーとしてお迎えし、大学とその後の博士課程、学生のジョイントキャリアをつくっていきたいと考えております。こうすることによりまして創造能力と先導性に長けた、高齢者社会の分析をすることではなくて、高齢者社会発展の設計シナリオが書ける若手人材を育成したいと考えます。
 次ですが、オールラウンドで活躍できる人材を育成するために21世紀COE、グローバルCOEで構築してきました教育プラットフォームを基盤として、さらにこれを充実、発展させる仕組みを考えます。講義群としましては、全研究科を対象に総合学際性の高い科目群を設置したいと考えます。遠隔講義などを駆使しまして場所と時間を超えた講義、受講体制を確立したいと思います。留学している学生についても海外から受講できるようにしたいと考えます。
 2つ目に全受講生が参加するもとのリーダーシップセミナー、これは英語で行いますが、これを毎週キャンパスで行い、しかも、1カ月に2回程度、合宿で教員とともに行っていきたいと考えています。海外とは現行でつくっておりますネットワーク・オブ・エクセレンスと連携しまして、共同指導のもと海外学生交換、留学、教員交換を通して国際共同教育研究連携の実践をしていきたいと考えます。プログラムでは修士学位、博士学位を基本に考えますが、他研究科、海外大学教員が参加してグローバルスタンダードのもとで専門学士性の高い審査を実施したいと考えます。
 また、教育研究の推進については、そこに記載してございますように人間支援産業学、人間生命活性学、人間支援社会学、こういった3つのグループを置きたいと考えまして、ファカルティクラブの機能のもとで英語を基本とした議論と融合化を実践したい。また、学生には企画力を問うという意味で、現行で行っております国際ワークショップの主催などをもっと数多く行っていきたいと考えます。入学とともに正副指導教授体制を敷きまして、副は海外の連携校を基本としまして、学外連携組織や他研究科から来ていただきたい。ファカルティクラブの機能には企業から実務実績のある教授を複数迎えたいと考えまして、大学と産業界の両方を同時に見ることができる目線で、社会でのキャリアの形成を大学院時代から始めたいと考えております。また、同時にファカルティクラブには行政、官界との人事交流による政策提言体制をこのサイエンスではつくっていきたいと考えております。
 最後になりますが、プログラムの人材育成を図に書きますとそういうふうになりまして、高齢社会の分析ではなくて、高齢社会発展の設計シナリオをつくることができる、そういった前向きで創造能力、先導性がある人材をつくりたいと考えております。これは慶應義塾が持っております理工、医療系、文系を統合したオールラウンド型で垣根が低い形で運用することによって、ニューリーダーを育成していきたいと考えるからにほかなりません。
 以上、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

【有信部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、先ほど申し上げたように本日は大学行財政部会から佐々木委員にも出席いただいておりますので、ご発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【佐々木(元)委員】 ただいまご紹介いただきました佐々木でございます。お手元に説明用の参考資料をお配りしてございます。これはレジュメ的なものでございまして、若干つけ加えた内容の説明をさせていただきたいと存じますが、今までのプレゼンテーションにございましたように、各界、各層でグローバルに活躍できるリーダーを生み出す。伊賀先生のお言葉を拝借しますと、国際的博士リーダー人材ということかと思いますが、今日、ご提示されましたリーディング大学院構想というのは、まさにタイムリーなものと受けとめているところでございます。
 実は弊社のことで恐縮でございますけれども、4月に社長に就任いたしました遠藤でございますが、これは博士課程を修了した人間でございまして、こういった人材が企業のトップに立つこともできる、恐らくそれは環境の整備と、そして本人の自覚というものが相整ったということかと思います。したがいまして、本日、ご紹介のありましたリーディング大学院構想というのは、まさにこの環境の整備というものを実現するものであり、そして、本人の自覚を高めるというのは、これは例えば今年の話題をさらいました「はやぶさ」、小惑星イトカワからサンプルを持ち帰った。その報道に対して、夏休みということもございましたけれども、子供が目を輝かせて展示会に入場するために長い行列をつくっていた。こういう国家的なプロジェクトというものが非常に重要なのではないかと感じた次第でございます。
 そういう前提のもとに(1)の現状分析でございますが、そこに示されておりますように専攻分野別ということで考えますと、博士課程の学生数というのは医・歯学というのが27.3%、次いで工学が18.6%、人文科学が9.5%となっております。また、博士課程を修了した人たちの就職状況を見ますと、そこにございますように人文科学系では59%が教員、理工学系では72%が科学研究者と技術者、そして農医歯薬学系では54%が医師、保健師等ということで、これは具体的な数字はその後についておりますけれども、ここで言えることは、要するにニーズの相違というものに対してどういう配慮をこのリーディング大学院構想の中で、その設計段階において取り込むかということではないかと考えるところでございます。
 そういう点から、これは私が所属しておりますIT、製造業分野ということになろうかと思いますけれども、リーディング大学院構想に求めさせていただくものといたしまして、基本的には科学研究者、技術者及び管理的職業等で産業界としては博士課程修了人材の需要は強い。ほんとうにいい人がいればどんどん使っていきたいというのがやはり基本でございます。そういう周囲条件のもとでスキルの修得のためにどういったプログラムが求められるか。これは若干、一例ということでご理解賜りたいのでございますが、そこにございますエネルギー、新材料等の複合領域を横断した学位プログラム、あるいはサービス工学等の文理融合型の学位プログラムといったようなものが非常に重要になるのではないでしょうか。
 そういうことを考えますと、1つは複合領域型、このリーディング大学院構想で示された複合領域型に対する期待が非常に大きいところでございます。その実現のためには知的クラスターやCOEプログラムの成果を活用するということも重要ではないかと思うわけでございます。また、そこにございましたオールラウンド型、あるいはオンリーワン型というものにつきましては、そういうプログラムを新たにつくるというよりは、現在のものをさらに特徴を出していき、その過程から生まれてくるというようなやり方がよろしいのではないかと考えるところでございます。
 そして、全体としては、最後の黒丸でございますけれども、ぜひ質の向上を期待しているということでございまして、予算化をしていただくということであれば、それは定員増ということに使われるよりは、質の向上に使っていただくことを我々としては期待するところでございます。そして、最後に、ここには書いてございませんが、国公立、私立という枠を超えた全体を通した学位プログラムをどうやってつくっていくか。これは単位の互換性等にも結びついてくるかと思いますけれども、そういった方向性をどうつくり出すか。そしてもう1点は、外国人留学生というものをどう位置づけていくのか。例えばある大学のある研究室でございますと、二十数名いる中で日本人は1名しかいないというような事態も出ているところでございまして、そういうものをどう考えていくかということも、この具体的なプログラムの設計の中からは出てくるのではないかと思うところでございます。
 以上、雑駁でございますが、これで私のプレゼンテーションとさせていただきます。

【有信部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、本日は、議論はこのリーディング大学院に関してのみということになっていますので、どんどん忌憚なくご意見を出していただければと思います。最初に産業界からは、今回まとめました中間報告にある大学院教育の改革については非常に期待をしているということと、それから、リーディング大学院についても産業界サイドから大きな期待を持って見ている旨の発言がございました。これに対して大学サイドからリーディング大学院に対する大学側からの取り組みについて、現在の構想を非常に熱心にご説明いただいたと思います。
 最後に佐々木委員から現在の状況を踏まえて期待が述べられましたが、実際に産業界が持っている期待と大学が取り組もうとしていることが本当にマッチングしているかということも含めて、今日は、大学サイドからのむしろ産業界サイドに対する要求なり期待も含めて、今日出席いただいている、説明をしていただいた大学、産業界の方々もぜひ遠慮なく議論に加わっていただければと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、どなたからでも結構ですので質問、コメント、ご意見等ありましたら、よろしくお願いします。どうぞ。

【山田委員】 それでは、大学側に2つほど質問させていただきたいと思うのですが、大変、学位プログラムとして新しい構想、グローバル人材ということでよくわかりました。1つは、私の認識不足なのかもしれないのですけれども、ご説明の中で、京都大学さんの場合でしたら、学位をPh.D.というようにおっしゃったように思います。その場合、例えば英訳したときにPh.D.in 何々など、やはり何かのこういう学位の分野みたいなものがあるのではないかというように経験上思っておりましたので、そこはどうなるのかということ。
 もう一つは留学というところで、はっきりと4年目というのが出されています。留学というか、海外の体験ですね。これを海外の大学というところに焦点化した場合に、これも私が古いのかもしれないのですけれども、やはり海外の大学院の場合、そういう学位プログラムもあるのかもしれないのですけれども、かなり専門性の高い領域で留学というのがなされるように思うのですが、それは例えばこのプログラムに入られた学生さんが自分でこういうところに行きたいということで選択をしていくのか、あるいはそれこそジョイントプログラムなどで特定の大学院と連携してつくっていくのか、その辺がわからなかったものですからお教えいただければと思います。

【松本京都大学総長】 私ども大学の考えていることの一例としてお答えさせていただきますが、最初に研究をさせます。学部でしてきた研究を引き続きもう少し深めたいという人は、そういう研究科の先生方の指導を受けて2年ちょっとしっかり研究します。それをベースに幅広いPh.D.をつくっていきたいと思っています。今の大学院はドクター・オブ・サイエンス、ドクター・バイオカルチャー、工学博士というような専門分野ごとのドクターがついています。もちろん京都大学では議論いたしまして、例えば工学博士でもPh.D.を名乗りたければ書くのは構わない、しかし、正式名はドクター・オブ・エンジニアリングであるという定義をしております。この新しい大学院では幅広の人材を出したいと思いますので、Ph.D.を出したい。京都大学グローバル・ワールドリーダーの大学院のPh.D.を出し資格を与えたいと思っております。
 それから、海外留学ですが、これは相手校や相手国際機関との交渉がありますから、今一律に決められませんが、できれば自分の専門に近いところに行きたいという学生に対しては、それは行かせます。しかし、自分とは違うところを勉強したいという学生は当然いるわけで、それは単位が取れればいい。取れればそれは付加的に認めますが、取れなくても1年間、大学でいろいろ勉強してくる、あるいは国際機関で勉強してくるというのが4年目の武者修行です。還学と書かせていただきましたが、平安時代には留学生や還学生といった、約20年留学する人と1、2年の短期で帰ってきた人がいました。この場合1年ですので還学と書きました。海外の大学で研究、あるいは現場で何かを経験するということは、単にコースをとるだけ以上の非常に多くの経験が身につきます。そのようなことを期待して1年間はどこか外国の研究室など連携を結んだところへ紹介して、学生に選ばせて行かせるという発想です。

【伊賀東京工業大学長】 東工大の伊賀でございます。私どももPh.D.というのを1つの案として考えております。余りに学位プログラムということについて文部科学省のほうから、今までの学位と違ったものを要求されますと、ドクター・オブ何とか、例えばエンヴァイロンメンタル・アンド・エナジーとか、ものすごく細分化したドクターが出て、これはグローバルに通用しないものを提示することになる。それはちょっと危険ではないかと思っておりますので、あまりスペシファイをしないほうがいいのではないかと逆に思います。例えばドクター・オブ・エンジニアリングの中でもそういったものを取ったというサーティフィケートを出すとか、余りに複雑化するというのを恐れるところがございまして、これについての議論を私どももいたしました。
 それから、留学先でありますが、今のプログラムでやるのも当然そうですし、違ったところの、私ども道場と言っていますが、違ったところに行くというのも当然あろうかと思います。しかし、学生諸君の身になってみますと、これは期限が決まった中でドクターをとるというのは容易なことではありませんし、不安も大きい。やはり大体はスペシファイした自分の領域の専門のところへ行って研究、あるいは勉強するというのが大体のところではないかと思いますが、それは人に応じて考えていったらいいのではないかと思います。ポスドクの場合、違ったところへ放り込むという、そういう段階がキャリアパスとしてはよろしいかと考えます。

【真壁慶應義塾常任理事】 学位について一言申し上げます。私どもが今考えておりますのは、例えばこのプログラムによって専門は医学、この場合、医学博士です。ダブルディグリーを出したいと思っています。もし公共政策のようなことで貢献いたしますと、政策メディア修士というのは出せるかなと思います。それから、両方とも博士というのを出せるかどうか、現在いろいろ検討中ですが、そういった形でやりますと、医療系、理工系、文系についても非常にキャリアを築きやすいのではないかと思っています。

【堀井委員】 資料4でリーディングプログラムに関する評価コメントということで、裏面にその取りまとめのコメントというのがございまして、論点は2点あって、まずビジョンを示せ、教育改革の制度を先につくれというのが1点目の論点かと思いますけれども、これは今日のお話を聞いていても思うことですけれども、大学の高等教育の現場を知らない方のご意見ではないかなと思います。例えば博士教育のビジョンを示して制度を改革したら、それでみんなついてくるのかと言えば決してそうではなくて、本日、3大学から大変魅力的なご提案がありましたけれども、こういう形で提案されてくる、ボトムアップで上がってくるというのが高等教育の1つのいいメカニズムではないかなと思いました。
 2点目は、運営費交付金や私学助成金の中でやれという話ですけれども、これは選択と重点投資という理念から外れているので、これは何か論理的に矛盾しているのではないかなと思いました。それで、リーディングプログラムについてどういうふうに反論していくというか、改善していくかということを考えたときに、私はプログラム自身の透明性を高めるということが大切なのではないかと考えます。まず、各大学に対するこのプログラムとしてのメッセージというものをもう少し伝わるようなものにして、社会からの要請が大学側に伝わり、それが各大学のご提案の中に反映されてくるような、そういうメカニズムをもう少し強化することが必要ではないかと思います。
 それから、ご提案いただいた内容を審査する部分においても、少し透明性を高めて、どういうプログラムが採用されるのかということについて、国民の理解、支持が得られるような、よりそういう側面が強化されるような形を目指すのがよろしいのではないかと思いました。それから、そうして各大学からいろいろなプログラムが提案されたときに、それを制度改革ということにつなげていく、そういう自由度を高める、いいものを伸ばしていくような制度改革が各大学の提案に基づいて、後から行われるというような仕組みを担保しておくということがこのリーディングプログラムに対する理解を深めていく上では重要なのではないかなと考えました。

【続橋委員】 経団連、続橋です。少しコメントを申し上げたいと思うのですけれども、その前に、今日資料12で経団連の提言を配っていただいておりますので、一言だけ触れたいと思います。
 経団連は常にいろいろな提言を出しており、その中に人材育成というのは必ず入っているのですけれども、実は一昨日、米倉新会長になってサンライズ・レポートというのを出しまして、その中でも人材育成、大学・大学院改革というのは入っています。一番詳しいのは去年の10月に出したこのイノベーションの提言でございまして、資料12の8ページの下のほうにIVということで、大学・大学院改革というのがございます。
 いろいろ書いたのですけれども、これは従来から言っているいろいろな問題点が書いてございまして、それで、10ページを少し開いていただきますと、この真ん中の少し上のところの段落で、「その意味で」と始まるところがあるのですが、そこの2行目にリーディング大学院というのが入っています。リーディング大学院、経団連で触れたのはこれしかありません。この提言そのものは10月ですけれども、実際には9月の末ぐらいにできていますので、その段階でリーディング大学院のコンセプト、3類型とか、その話は聞いていましたので、これは少し期待できるかなというようなことで、表現的には「リーディング大学院構想は興味深い」というような表現になっております。結果として、産業界からの意見も聞いていいものにしてくださいというような表現になっております。
 それで、コメントなのですけれども、なかなか具体的なイメージというのは、今日いろいろ大学側の話を聞いて、ああ、こういうことなのかなというのはわかったのですけれども、実は、1つ思っていたのは、我々もいろいろ大学の問題はあるというのはずっと言い続けて、ただ一斉にすべてが変わるわけではありませんので、そうすると、改革する意欲といいプランがあるところがそれをやって引っ張っていくということになると思うんですね。そういう意味ではやっぱり、このリーディング大学院というのは、その1つのきっかけになればと思います。
 その場合に一番大事なのは、ドクター問題もそうなのですけれども、量と質の問題があって、質が大事なのではないかということだと思います。そうすると、このリーディング大学院も、20名とか30名と、一応、定員がありますけれども、何名とるかというのがいいのは別として、要するに質を重視していただきたいなと私は思います。ですから、無理やり定員を満たすということではなくて、だめであれば5人でも10人でも、とにかく成功事例をつくっていくというのが一番大事だと思います。あまり量にとらわれてしまうと、どうしても結局、失敗するということになってしまうと何にもならないので、ぜひその辺はよろしくお願いしたいと思います。

【松本京都大学総長】 ただいまの質の話について少しコメントをさせていただきたいのですが、今の学部、大学院には定員があります。定員割れという言葉も時々出ます。この新しいリーディング大学院について、今おっしゃったように私どもとしては出口の質保証をしっかりやりたいと思っています。年間何人ぐらいという各大学の粗方の数字が出ましたが、私どもは16名から20名と思っており、ケアをきちんと行うためには、現在の教員体制では一学年30人、40人の受入れは難しいと思っています。ですから、質を充分に保証したいと考えております。
 学位は今まではドクター論文の審査をして、ある程度の単位が取れればいい。その単位も実体化、本当にコースワークができているかどうかについては、大学あるいは研究科によってばらばらでした。我々はそれをちゃんとセグメントに分けて、研究はパスしたか、コースワークはとったか、海外経験をやったか、そして自分たちが新しいリーダーシップを持った人材として社会に出ていくための準備をしっかりと自分自身で考えて行う5年目のコースはきちんと実践したかということを段階ごとにチェックをして、その質保証を高めたいと考えているところです。

【有信部会長】 ありがとうございました。
 現実に大学サイドも産業界の期待にこたえるような格好で動いていただいているということはよくわかったのですが、先ほどヒアリングの際の説明にもありましたように、産業界サイドは、要するにこれからの優秀なドクターが輩出されることを実は求めていて、現実に産業界の中でもドクターコースの修了者が活躍しているという事実もある。にもかかわらず、現状はなぜか博士課程の修了者が路頭に迷っているかのごとき状況が喧伝されて、優秀な学生がドクターコースに進まないというような状況があります。
 これは将来の日本の産業にとっても非常にゆゆしい問題であるので、これを何とかしなければいけないというのが、もともと大学院部会の非常に大きな問題意識の1つであったわけです。これに対して現実に将来に向かって産業界側が期待している優秀なドクターというのは、さまざまな質があると思いますが、その中の重要な要素の1つであるグローバルなリーダーを輩出するということを中心に大学側の今の取り組みが示されてきたと理解をしています。
 こういう点で、我々の中で議論した筋道からして、まだ大学サイドにもっと期待すること、あるいは産業界サイドに期待するようなこととしていろいろまだご意見があれば。

【白井委員】 今日のプレゼンテーションを聞いて大変感激しております。そういうふうに大学院教育をやっていくということは、大学のほうもかねてから望んできたことでもあるし、また、産業界からも期待されていたことだと思います。実際、なかなかできなかったのは、手間もないし、人手もいないし、お金もないという現実があったと思います。ですから、このリーディング大学院という構想を実行するに当たって、今お話を伺っていてもわかるとおり、現実問題として、そう大きい数の対応ができないんですね。この前に走っているプログラムが1つあります。実は我々の大学も参加していて経験しているところなのですが、非常に費用と手間がかかります。
 だけど、これは間違いなく産業界からも評価されており、だから、やればできる。産業界からすると、大学はやればできるじゃないかと言われてしまうかもしれない。だけど、やればできるけれども、ほかのプログラムに入らない人は一体どうなるのか。その人数は膨大ですから、では、今後、そういう大学院はやめるのかというなら非常によくわかるけれども、必ずしもそういうことを言っているわけではもちろんないと思います。ですから、もう少しこの大学院というのは、ベストプラクティスで非常にすばらしいと私も感激するけれども、こういうだけの政策で本当にいいのかどうかというのは少し議論しておいていただきたいなと思います。

【五神委員】 非常によく練られた斬新なアイディアで興味深かったのですけれども、今の話にもあったようにこの事業が大学院の改革として定着するものになるためには、これに優秀な学生が興味を持ってきちんと入ってこなければいけない。入ってくる学生にとっては、5年後の社会がどうなっているか、5年後にこのコースを出た人が社会の中に適切に入り込んでいけるような仕組みになっているかということがやっぱり気になると思うんですね。
 ですから、そういう意味でキャリアパスのところを、これはこれだけしっかりしたことをやれば間違いなく就職など困らないということを示せるか、それが22歳ぐらいの学生にそういうふうに伝わるか。今、非常に不安要素がある中で、本当に優秀な学生をアトラクトできるかということを考えますと、やはりこのプログラムだけではなくて、例えば雇用に関しても公務員のⅠ種に相当するようなところでは、こういう人たちをきちんととるのだというような政策をあわせて行うことが重要と思います。そういう中で新しいタイプのエリート教育の場として大学院というのが定着していくという芽が出てくれば、社会の中からも経済的にも支援が集まってくるだろうと思います。
 これは京都大学、あるいは一貫制博士を既に実践されている東工大から出てきているということは、この下地になるようなことについて非常に経験がある。例えば京都大学ですと、理学部が学科を設けずに学習させているという非常にユニークなスタイルを長年とっていて、そういうものについての経験をある程度踏まえた上での提案になっているのかなという気もします。そういう意味で現実味のある提案になるのではないかと期待はするわけですけれども、やはりこれは一過的なプログラムだけではないものをあわせて打ち出せるかどうかということが成否を決めるのではないかと思います。

【松本京都大学総長】 産業界からの熱い期待にこたえて我々が動いているという側面が強調されまして、それは大変ありがたいことだと思っていますが、私どもはグローバル・リーダーというのは産業界だけではないと思っています。官界ももちろんそうですし、ほかの国際機関もそうですし、日本という国を背負ってリーダーとしてやっていく日本人というものを育成したいというのがもともとのこのグローバル・リーダー育成の大学院の構想だろうと理解しています。そういった意味で、今おっしゃった受け皿のようなもの、例えば新卒しかとらないというような制度でも困りますし、それもあわせてご検討をどこかでしていただければありがたいと思っています。
 また、産業界との関係から言いますと、産業界とも少し話をしていますが、集団で奨学金、あるいは寮のサポートをしてもらって、集団の企業の中のひとつへ就職できるというようなギャランティーをとって、それにはもちろん企業側の参加も必要で、面接も必要でしょうけれども、そういう制度も導入する必要があるのではないかと考えています。これは国の制度ではないと思います。産業界と大学の個別の制度になると思いますが、そういったものも考えていく必要があるのではないか。1対1の会社で奨学金をもらいますと、学生も不安ですし、先行きどうなるかという、5年後を決めるというのは難しいですから、あるクラスターでそういうものをしていただければありがたいと考えています。

【真壁慶應義塾常任理事】 先ほど五神先生がおっしゃいましたように、雇用の問題というのは非常に大きいと思います。それから、私どもも京大の松本総長がおっしゃいましたコンソーシアム化して、その中で学生や企業集団、こういったマージした環境をつくるということを行いたいと思っています。1つ、こういうものを現状ではつくっております。
 それから、若手人材の育成という意味では2つのネガティブな点が今現象として存在しているのではないかと私は思っております。1つ目は、就職における青田刈り現象。いわゆる修士1年生から就職先へ訪問している。前向きな学生がここでもしその本人が、将来、日本を担うというようなメンタリティーを持っていただけたら非常に変わるのではないか。ですから、人材は幾らでもいますと私は言いたいと思います。2つ目、こんなことはないでしょうけれども、新聞紙上によりますと、大変内向きなメンタリティーを持った学生が博士課程へ進学しているのではないかといったことも言われているわけでして、この2つのネガティブな現象を改善するにはどうしたらいいかということを私は真剣に考えたいと思いまして、いろいろご説明をさせていただいているところです。よろしくお願いいたします。

【河田委員】 いずれも非常に魅力的な構想で、けちをつけるつもりは全くございませんが、私は、中国のことを研究していますので、京都大学の学寮制度をとり入れた思修館には、還学(げんがく)とか留学(るがく)などといった平安時代の用語が出てきたりいたします。また、東工大の方は道場、道場主という用語が使われていて、いささか違和感をもちます。実は別の会議ではグローバル30の見直しも行われています。だからこの際、もっと普遍性のある、外国人にもわかるような説明が必要な時代にわざわざこんな奇をてらった説明をなさらず、むしろ外国人の方にも理解できる表現形態になさったほうがいいのではないか。これは感想でございます。

【松本京都大学総長】 反論させてください。私は、先日中国の大学100校が集まる会議に招かれて行きました。アメリカの学長が日本の大学、日本の社会のことを悪しざまに言いました。私は耐えられなかったので反論いたしましたが、中国の文化、日本の文化の伝統、それぞれ固有のものがございます。そういうものを主張したらグローバルスタンダードにならないというのは間違いだと思っていますので、もちろん先生がおっしゃるように、英語でちゃんと説明する必要があろうと私も思っていますが、日本固有のものはよくない、だめと言うなら考え直しますけれども、私どもはそういう信念でやってまいりました。

【梶山委員】 今、河田委員が言われたのも、実は京都大学の思修館や、東工大の道場のような組織を仮につくらなくても、本来は今のドクターコースできちんと基礎科目が理解できたかという、そういう透明なプラットフォームの上での評価、試験ですね、それから、リサーチ・プロポーザルのようなディフェンスをやればいいと思います。ところが、これはなかなかできないんです。それをある程度形を変えて提案されているというのは、私は非常に重要だと思っております。

【有信部会長】 まだまだご意見があるかと思いますが、少なくともリーディング大学院に対して、それぞれ具体的な項目についてはご意見があるにしても、目指す方向性についての理解は共有化できたと思います。それから、仕分けで指摘されたビジョンの問題についても、堀井委員からも指摘がありましたけれども、今日のような議論を踏まえれば、ある意味でビジョンという形で示すこともできるのだろうというふうに思います。今日の議論を踏まえて文部科学省のほうでリーディング大学院の構想をもう少し詰めていただいて、ぜひ仕分けに対しては頑張って進めていっていただければと思います。
 今日、政務官が見えられていますので、最後にあいさつをお願いできればと思います。よろしくお願いします。

【笠政務官】 皆様、今日は本当にお忙しい中、大学院部会において活発な議論を行っていただき、ありがとうございました。また、委員の先生方に加えて産学の関係者の方々にもご出席いただいたことに感謝を申し上げます。
 実は、明日から高木文部科学大臣がノーベル賞の授賞式のためにストックホルムに出かけられますもので、今日まさに、政務三役でこの問題も含めて予算編成がいよいよ本格化しておりますので、今、1時間以上その協議をしていたために大きく遅参をいたしましたこと、その点については何とぞご理解をいただきたいと思います。
 今ございましたように、事業仕分けに臨んでまいりましたけれども、ある意味ではこのビジョンについていろいろな議論をする場というよりも、新しく画期的なことをやろうとして、これまでも皆様方の積極的なご議論を踏まえて、我々、今回のこのリーディング大学院というものを自信を持って特別枠で要求をさせていただいたのですけれども、なかなかご理解をいただけていないということで、本日、こうした形で改めて先生方にご議論をいただきました。
 これは6月の新成長戦略の中でもリーディング大学院構想と明記をしており、国家戦略プロジェクトだというふうに私どもは考えておりますので、また今日の議論を踏まえましてしっかりと予算編成で、よりこのビジョンを私どももきちんと認識をしていただけるように、その理解を深めていただけるように努力をしながら、来年度からしっかりこの事業がスタートすることができるように頑張ってまいりたいと思います。
 今後ともまたご指導のほどお願い申し上げまして、御礼のごあいさつとさせていただきます。本日は本当にありがとうございました。

【有信部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、最後に今後のスケジュール等について、事務局からお願いします。

【樋口大学改革推進室長】 次回の大学院部会につきましては、12月16日の午後に開催させていただきます。この中間まとめを踏まえたさらなる検討を深めてまいりたいと思います。よろしくお願いします。

【有信部会長】 どうも司会の不手際で多少時間が押してしまって、出席者の方々にもご迷惑をおかけしました。申しわけありませんでした。
 それでは、きょうの会議はこれで閉会としたいと思います。どうもありがとうございました。 

お問合せ先

高等教育局大学振興課大学改革推進室

大学院係
電話番号:03-5253-4111(内線3312)

-- 登録:平成23年06月 --