ここからサイトの主なメニューです

大学院部会(第44回) 議事録

1.日時

平成21年5月18日(月曜日) 13時~15時

2.場所

金融庁 13階 共用第1特別会議室

3.議題

  1. 産業界等から大学院教育に期待することについて
  2. 産業界で即戦力となる博士の育成に関する大学院教育の在り方について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員)荻上紘一、金子元久、郷通子の各委員
(臨時委員)有信睦弘(部会長)、今榮東洋子、小杉礼子、丸本卓哉の各臨時委員
(専門委員)井上正仁、延與秀人、梶山千里、桐野髙明、五神真、角南篤、続橋聡、中西茂、古市喜義、堀井秀之の各専門委員
(意見発表者)加藤康之野村證券株式会社シニアエグゼクティブオフィサー、稲塚俊一キヤノン株式会社人事本部採用センター所長、宮代隆夫キヤノン株式会社人事本部採用センター部長、神居隆秋田県教育委員会教育次長、遠藤金吾秋田県立大曲農業高等学校教諭、大塚義孝財団法人日本臨床心理士資格認定協会専務理事、直井勝彦東京農工大学教授

文部科学省

坂田文部科学審議官、河村私学部長、布村文教施設企画部長、土屋政策評価審議官、久保高等教育局審議官、戸谷高等教育局審議官、藤原会計課長、小川文教施設企画部計画課長、片山高等教育企画課長、義本大学振興課長、藤原専門教育課長、下間学生・留学生課長、榎本高等教育政策室長、水田大学設置室長、今泉大学改革推進室長、浅野専門職大学院室長 他

5.議事録

【有信部会長】
 これより大学院部会を開催いたします。前回に引き続き、それぞれの分野における大学院教育と産業界とのマッチングについてのヒアリングを行いますが、その前に、以前各委員の方々からいろいろ要望のあった資料についても説明させていただきます。
 それでは、事務局から資料の説明をいたします。

【榎本高等教育政策室長】
 まず、資料1は文科省の追加資料でございます。資料2に関しては、4つの資料が、2-1から2-4まで入ってございます。後ほどヒアリングで使う資料でございます。それから、資料3も同様にヒアリングの資料でございます。資料4が、この部会の当面の論点を説明しております。資料5が法科大学院特別委員会の報告、1枚の概要とピンク色の冊子でございます。参考資料が2つございます。それから、お手元にピンク色の冊子があろうかと思いますが、この後ヒアリングをいただきます臨床心理士資格認定協会の大塚様よりご提供いただいております冊子でございます。
 以上です。

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。それでは、今回新たに提出されました資料につきまして、説明をお願いします。

【今泉大学改革推進室長】
 それでは、資料1をご覧ください。1ページ目から8ページ目でございますが、これは前回議論がありました学問分野別・学位レベル別の大学院に関するデータでございます。
 まず1ページ目をご覧いただきますと、人文科学系の博士の状況でございます。学生数のキャパシティーで見れば、旧帝大と大規模私学、そのほかの私学が高い割合を示しております。就職率は30%のところで推移しております。入学定員については微増している反面、充足率については減少傾向が続いているという状況でございます。進路状況で言えば、就職者31%、非就職者43%、死亡・不詳25%という形になっています。うち、この就職者31%の中でどういう内訳かと申しますと、約半数が大学教員、そして大学以外の学校の教員も含めると、大体3分の2を占めるという状況でございます。
 続きまして、次のページが人文の修士でございます。
 人文の修士は、キャパシティーが博士とは少し違いまして、私学だけで3分の2を占めるということでございます。就職率、進学率の推移を見ますと、ここ最近の傾向としては、就職率は上がっているけれども、博士への進学率は減少している傾向がございます。入学定員については微増でございますが、充足率は減少傾向という状況でございます。就職者45%の内訳は、大体、専門的・技術的職業と販売・事務業務、これで既に70%を占める状況でございます。
 続きまして、社会科学系の博士の状況でございます。
 社会科学系の博士については、大きな割合を占めるのが、旧帝大以外の国立大学と大規模私学でございます。就職率は40%台のところで推移しております。入学定員については微増している反面、これも充足率は減少している状況でございます。就職者は41%ですが、そのうち約半数が大学教員という状況でございます。
 続きまして、社会科学系の修士でございます。
 これについては、博士の状況とはまた少し変わりまして、私学だけで7割を占めている状況でございます。就職率、進学率については、先ほどの人文系と同じ傾向でございますが、特にこの両者の差が広がっている状況です。つまり、就職率については上昇傾向にある反面、博士への進学率については減少傾向にある状況でございます。また、入学定員、充足率については他と同様の傾向でございます。就職者57%のうち、6割近くが販売・事務系の業務に従事しているところでございます。
 続きまして、理学でございます。
 理学の博士について言えば、国立大学だけで84%を占めております。就職率は61%です。入学定員は横ばいですが、充足率については減少しております。就職者の進路としては、研究者、技術者で約4分の3を占める状況でございます。
 続きまして、理学の修士でございます。
 理学の修士で言えば、国立大学が約7割のシェアを占めております。就職については上昇の傾向にありまして、75%が就職している反面、博士に進学している者は減少傾向にあって18.1%となっています。ちなみに、他の学問分野、学位レベル、それぞれについて充足率は減少傾向にありますが、理学の修士は105%であり、充足率が伸びているところでございます。就職者76%の内訳としては、研究者と技術者、これで約7割を占めているところでございます。
 続きまして、工学の博士でございますが、これも国立大学で82%のシェアを占めているところでございます。就職率については約7割となっております。入学定員については増加しておりますが、充足率については減少している傾向がございます。就職者約69%のうち、研究者と技術者で約4分の3を占めている状況でございます。
 最後に工学の修士でございます。
 これもシェアで言えば国立大学で65%を占めております。非常に特徴的なところは、就職率91%、博士への進学率が約6%という形で、圧倒的に就職をしている状況が見られます。入学定員については増加傾向にある反面、充足率については減少している。ただし、100%は超えている状況でございます。90%に及ぶ就職者の行き先としては、技術者が大半となっております。
 9ページからは、人社系、理工系、医療系の進路のフロー図でございます。これは前回の大学院部会の中で、各学問分野でどういう形で人が動いているのかがよくわからないというご指摘がありましたので、それを整理したペーパーでございます。
 12ページ目、13ページ目でございます。
 現在の、企業における研究開発者の分野別構成を、パーセンテージだけではなくて、人数の規模別で示したものでございます。特に13ページ目について言えば、どの学問分野から研究者に進んでいるのか、研究者の学問分野別の傾向が見てとれるかと思います。
 次に14ページ目でございますが、これは前回の大学院部会で企業、公的機関、大学等の人的な流動性がどうなのかというご質問がございました。ご覧のとおり、各機関から大学等に流入する者は非常に太い棒線でありますが、各機関に大学から流出する方については非常に細い線というふうになっている状況が見てとれます。
 続きまして、これは大学院部会の中では特段ご指摘がなかったのですが、事務方から入れさせていただいた資料で、教員の専門分野別の年齢構成でございます。これで見ると特徴的な点が、35歳以上40歳未満のところと、あと55歳以上60歳未満のところが大きく2つ高くなっておりまして、2こぶラクダのような状況になっています。その反面、50歳以上55歳未満のところが少しへこんでいる状況です。工学については若いうちから教員になっている反面、それ以外の分野では、教員というのは助教以上でございますけれども、助教以上の職に就くのはなかなか時間がかかっているという状況でございます。
 次は国公私立大学別の年齢構成でございます。これで見ると、どの年齢が多いのかがよく見てとれると思います。主に60歳前後と64歳前後のところで2つ高くなっております。国公立については65歳が定年であるところが主ですので、65歳のところでゼロになりますが、私学については70歳以上でまだ2,000人くらいの人たちがいます。このデータからも高齢化の状況が見てとれるかと思います。
 続きまして、次の17ページでございますが、前回の大学院部会で国家公務員における大学院修了者の採用状況についてご指摘がありましたので、それを用意したものでございます。
 国家一種試験において、申込者のうちの大学院修了者の割合は10%でありながら、採用、合格している者の割合については4分の1になるという状況でございます。
 次に、国家公務員採用試験において、今後大学院修了者をどう扱っていくのかという人事院の報告書でございますが、18ページ目、2の2のところで、大学院卒にふさわしく、かつ院卒者が受験しやすい試験となるよう、総合職試験、院卒者試験を設けるということが記されているところです。
 次の19ページには、院卒者試験については、大学院修了者にとってなじみやすい試験として実施されるものであるということが記載されております。ただし、初任給は別として、それ以外については優遇的な措置が行われることはないということも記載してあります。さらにその2行下で、院卒者試験を設けるに当たって、政府全体として、大卒者とは区別した院卒者の採用予定数を計画していく必要があるということが記載してあります。
 なお、この報告については、今年度中にも方向性を決定いたしまして、22年度に詳細を検討し、23年度に公表する準備を行い、24年度から実施するというスケジュールでございます。
 20ページのところで、最近の文部科学省における大学院修了者の採用状況のデータがございます。一種採用職員の中で、21年度においては56%が既に大学院卒の採用者になっています。特に理系で言えば86%が大学院卒となっており、文系においても35%という状況でございます。二種採用職員についても、理系については33%で3分の1が大学院卒という状況でございます。
 最後に、前回の大学院部会において社会人学生に対する経済的支援のご指摘がございました。基本的に奨学金や授業料減免については、社会人学生も学生である限りにおいては、一般学生と同じ取り扱いになっております。それから、社会人学生に限らず勤労学生に対しては、収入が130万円以下であれば、学費の所得控除の仕組みがあるところでございます。
 以上でございます。

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。これらの資料で、いろんな点がデータとして明確になってきたと思いますが、これらの資料について質問があるという方はいらっしゃいますか。もしいなければ、これを頭に入れながらこの後の議論を行っていきたいと思います。
 それでは、本日の議題の(1)に入ります。前回から引き続いて、産業界サイドが大学院教育に期待することについてヒアリングを行いたいと思います。
 今回のデータにも示されていますが、特に社会科学系や人文科学系の学生の就職先は、大半がアカデミアとなっています。伝統的にそういう傾向があるということかもしれませんが、今の時代からすると、大学院において大学教員を養成することだけを目的にしては困るということがあります。そういう観点で、様々な分野における大学院教育に期待することを伺っていますが、高度な専門的知識を持った人たちを育成し、その人たちの一部はアカデミアで研究を追求し、一部は産業界で活躍する、また、産業界以外の行政機関等の社会で幅広く活躍できるような人材を育成するということを大学院には期待したい訳であります。
 前回は経団連、製薬企業、化学系企業等の立場から提言を行っていただきましたが、今回はどちらかというと人文社会系に関わるところで、金融、証券関係企業の立場から、野村證券の加藤シニアエグゼクティブオフィサーに来ていただいています。それから、前回とは違う種類の企業ですが、メーカー企業の立場からキヤノン株式会社の稲塚人事本部採用センター所長と宮代同センター部長に発表をお願いします。それから、少し立場が違いますが、博士課程の修了者を教員として多数採用している、秋田県教育委員会の神居教育次長及び遠藤秋田県立大曲農業高等学校教諭にお話をしていただきます。さらに、臨床心理士の資格認定の立場から、財団法人日本臨床心理士認定協会から大塚専務理事に来ていただいております。
 それから、議題(2)では、産業界で即戦力となる博士の育成に関する大学院教育のあり方について、東京農工大学の直井先生にご発表いただきたいと思います。産業界で即戦力になる学生を養成しろという企業側の希望があると思いますので、前回と同様に大学院サイドからの発表をいただきたいと思います。一通りプレゼンテーションが終わった後で、質疑応答、意見交換をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、最初に加藤様からプレゼンテーションをしていただきます。

【加藤シニアエグゼクティブオフィサー】
 野村證券の加藤でございます。私からは、大学院教育に期待することというテーマで、簡単に報告させていただきます。
 資料の2ページ目、野村證券における大学院修了者の採用状況でございますが、とりあえず新卒のみを対象としております。新卒全域型総合職と申しますのは、通常の総合職であり、地域間の転勤があるものです。もう一つの形態として地域型総合職というのがありますが、これは地域に密着して転勤もせず、どちらかというと女性が相対的に多いものです。
 この全域型総合職の1割程度、約30名程度が修士となります。それから博士は、特に枠を考えているわけではありませんが、結果的には毎年一、二名程度採用しています。一、二名で少ないと思われるかもしれませんが、なかなか応募していただけないというのが実情でございます。
 出身の専門分野でございますが、大体3分の2が理科系・技術系でございまして、残りが文科系、いわゆる社会科学系ということになります。これは、もっと昔は100%理科系・技術系だったのですが、最近数年は社会科学系が増えているということでございます。
 配属先でございますが、市場取引部門、いわゆるトレーディング部門、それからリサーチ部門、投資銀行部門、資産運用部門など、相対的に高度な技術を必要とする部門に配属しています。
 なお、私どもはこれ以外にも中途のいわゆるキャリア採用も行っておりますけれども、大学院卒の割合はもっと高くなっております。ここではデータは省略しております。
 ページをめくっていただきまして、大学院教育に対する期待の前に、そもそもビジネス環境にどういう変化が起きているかを確認すると、まず、競争環境が大変激化しております。グローバルな競争が激化しておりまして、付加価値の高いサービス・商品へのシフトが起きています。大昔は金融業界も左から右へというビジネスも多かったけれども、そういったものは、ほぼ主力ではなくなっておりますので、付加価値をつけてサービスを提供する必要があります。それから、マネジメントの高度化、例えばリスクマネジメント、あるいはマーケティングといった点も高度化していかなくてはいけないというニーズが生まれています。
 それから、調査・分析環境の変化という部分について、調査・分析するための環境が飛躍的に向上しているということがあります。端的な例がPCやインターネットで、それらの活用により、分析データのアベイラビリティが飛躍的に向上しています。それから、分析技術の急激な向上といった環境変化が起こっております。
 以上のように、ビジネス環境の大きな変化とともに、あらゆる業務におきまして、より高度な分析が要求されるようになっております。以前、私が入社したころは、データを集めてくるくらいで良かったのですが、今では当然あり得ません。高度な研究能力を持つ人材へのニーズは年々高まっているということでございます。
 ページをめくっていただきまして、学部と大学院の差に対する私どもの認識でございますが、基本的に修士の方が多く在籍していますけれども、この2年の差が結構大きいと認識しております。そこに質的な差があると私どもは考えております。つまり「研究する」という能力と意思について、学部の卒業生と比べると、明らかに違ったものが備わっているという認識を持っております。
 次のページですが、そういった大学院修了者に期待する能力であります。まず、当然ですが、例えば薬学、原子力、電子工学といった特定分野での高い専門性です。金融では扱う対象範囲が非常に大きいので、そういった各分野での高い専門性は、当然期待しているということでございます。私どもが企業を分析するときなどに、特にこういう専門性が必要となってまいります。
 それからもう一つが関連領域の知識です。大学院生は当然ある分野を深堀りしていくわけでございますが、やはり実際のビジネスに応用するに当たっては、新しい応用分野への展開力がどうしても必要となってきます。例えば、化学の会社が、どうやってバイオに展開していくのか、そういったような議論です。あるいは、確率解析といった純粋数学の分野から金融工学、デリバティブへの応用、あるいは認知心理学といった分野からマーケティング理論への応用、というようなことが最近とても着目を浴びるようになってきております。いわゆる関連領域の知識がとても重要になってきていますので、こういったものを大学院修了者に期待したいと思います。
 それから、自分で新しい研究企画をマネージできることです。どんどん新しいテーマが出てまいりますので、言われたことをやるのではなくて、自ら新しいテーマを見つけ出して、それを自分でマネージして、テーマを決めて研究して結果を出す、そういったような研究をマネージできる能力を期待しています。
 それから、実証分析の能力・技術ですが、私どものようなところに来ていただくと、実務上、実際のデータを使った実証分析がとても量的に多くなりますので、その実証分析を自分でできる能力・技術というものを大変期待しています。
 それから、当たり前のことを言うのも恐縮ですが、英語のコミュニケーション力です。英語で業務が進められる能力がないと、特に金融の場合は、グローバル競争で海外のスタッフもとても多いので、実務上かなり致命的になります。これはとても重要ということでございます。
 ページをめくっていただきまして6ページ目です。大学院教育に期待することでございますが、新しい研究テーマへの挑戦を是非していただきたいと思います。つまりイノベーションを起こす力です。大学院の場合、先輩から受け継いで、その受け継いだものを1メートルくらい進めるというのが割りと多いのですが、それはそれで重要であるということは認識しておりますが、新しい研究テーマへの挑戦を是非していただきたいと思います。それから、研究の一連のプロセスを是非経験して生かしていただきたいと思います。これは先ほど申し上げた自らマネージする能力ということですが、そのテーマ設定から分析、レポート執筆、プレゼンといった一連のプロセスを是非経験していただきたいと思います。
 それから、これも先ほど申し上げましたが、実証分析がとても比率としては高くなりますので、このトレーニングを是非していただきたいと思います。昔、私も米国の大学院生の採用をやっておりましたが、日本の大学院生と米国の大学院生とを比較すると、多分この能力の差がとても大きいと感じました。
 また、他流試合ということで、学会での他分野・他大学との交流の実施していただきたいと思います。
 先ほど申しました英語力の充実については、英語でのゼミ、海外での学会発表などにより、是非英語でのコミュニケーション能力を身に付けて欲しいです。
 優秀な留学生の受け入れについては、切磋琢磨することにより質の向上につながると思います。私どもも米国の大学に留学生を送っておりますが、一つ大きなメリットは、いろんな留学生が来ている中で切磋琢磨するということがあります。
 ページ7ですが、日本のアカデミックスに期待することとして、是非国際競争力の向上を図って欲しいと思います。特に社会科学系において優秀な大学院生を惹きつけるためにも、国際競争力を高める必要があると考えております。厳しい国際競争の中、産学共闘は必須です。アカデミックスの国際競争力は、産業の国際競争力を左右すると言わざるを得ないと思います。アメリカは随分進んでいますが、日本は是非アジアのハブを目指ししていただきたいです。
 次のページですが、是非強調させていただきたいのは、学会の振興についてです。アメリカには例えばASSAといった合同社会科学学会、非常に大きいプラットフォームがあります。例えばこれのアジア版みたいなものをやっていただきたいと思います。というのは、研究のための環境整備ということで、分析するためのデータベースを整備することが重要なのですが、日本の社会科学系はどうしてもここが落ちていて、したがって論文の数もこれに影響をされていると思います。アメリカでは例えばシカゴ大学にCRSPといった機関があって、研究者のためにデータベースを整備して、安いコストで、とても使いやすい形で、論文がとても書きやすい形になっています。こういったものも是非日本でも検討していただいて、レベルを上げていただければいいなと思っています。
 以上でございます。ありがとうございました。

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。それでは、稲塚所長、お願いいたします。

【稲塚所長】
 キヤノンの稲塚と申します。これから資料を中心としてお話しさせていただきますが、今日はあくまでもメーカーの立場から、ものづくり、技術系中心のお話をさせていただきたいと思いますので、あらかじめお断りしておきたいと思います。
 まず資料2-2をご覧いただきたいのですが、弊社が新入社員に求めている能力ということで、2つに分けて記載させていただきました。
 まず、教育歴にかかわらず、すべての入社者に共通して求めている能力ですが、3つの要素があります。1つ目が三自の精神というものです。これは当社独自の考え方ですが、自発、自治、自覚、この3つの頭文字をとりまして三自の精神と呼んでおります。自発、何事にもみずから進んで積極的に行うこと。自治、自分自身を管理すること。自覚、自分が置かれている立場・役割をよく認識することということで、これが弊社の採用並びに人材育成の基本方針になっております。それから2つ目が広い意味でのコミュニケーション能力ということで、特にチームワークを我々は重視しております。集団の中で周囲を巻き込みながら自分を生かし、周りも生かすということをできる力が欲しいと思っております。それから3つ目が「創造力」と「想像力」ということで、英語に直しますと、クリエイティビティとイマジネーションという言葉になります。技術系ですので、特に仮説をしっかり立てて、その仮説をさまざまな手段を用いて検証していく力というのをお持ちいただきたいと思っております。
 2番目に、修士及び博士に個別に求めている能力ということで記載させていただきました。まず、修士ですが、研究者としての学問的な知識、それに加えて製品開発・設計といった企業活動における実務の担い手として必要な「ものづくりの基礎能力」を持ってきていただきたいと思っております。それから、博士については、何といっても、新しい未知の分野の開拓者として、指導者がいなくとも自ら率先して課題を抽出して、自らの高度専門知識を用いて解決することを期待しております。一方で、技術マネジメントのできる方であれば、さらに良いと思っております。
 それから、弊社の新卒採用活動における教育歴の捉え方についてご紹介をしたいと思います。まず採用時ですが、教育歴別に意識した採用活動は行っております。さらに付け加えますと、初任給、これは日本独特の制度ですが、初任給についても教育歴別に分けております。それから、入社後の仕事の割り振りですが、時間軸でいうと、我々は研究、開発、設計、あるいは製品技術/生産技術という形で4段階に分けていますが、研究部門については、専門知識をベースに新しい分野の開拓者としての役割を担うことから、博士または修士を積極的に配属しております。また、開発部門や設計部門といった実務が主体となる部門には、主に学部・修士の方を配属しております。
 次のページ、今後の新卒採用活動における展望についてですが、短期的スパンでは、とにかく日々の企業活動を支えて生き抜くことが大事ですので、それを支える製品開発を行うことができる実務的な人材を積極的に採用したいと考えております。中長期的スパンでは、将来、企業活動の発展の基盤となる新しい分野を開拓することができる研究者も、継続して採用したいと考えております。
 いずれにしても、事業は生き物でございますので、特定の教育歴に偏って採用するのではなく、経営の状況を鑑みながら、弊社内での需要に基づくバランスのとれた採用活動を行うことを考えております。
 それから、大学院教育に関する受入企業側としての見解でございます。現状では、我々受入企業側の期待に対して、多少不足する部分があると感じております。具体的に言いますと、多くの大学院生が企業への就職を選択するという状況の中で、弊社も含めた多くのものづくり企業が期待している製品開発・設計といった企業活動における実務の担い手として必要なものづくりの基礎能力が、体系的・組織的に教育されていないのではないかという認識を持っております。
 また、企業が求める高度な専門知識を有する人材についてですが、これは弊社としては博士号を取得したレベルと考えております。入社の段階で高度な専門知識を必要とする研究職は、日々の企業活動を担う製品開発職に比べて需要は多くありませんので、採用数は学部生、修士に比べてかなり少ない人数となっております。したがいまして、大学院教育に関しては専門知識をもとにした研究職志向の学生だけではなく、学部・修士課程を通じて企業活動の実務に必要な「基礎能力」にたけた学生を育成する役割を大学側に要望したいと思っております。
 以上です。

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。それでは、引き続きまして、神居次長、お願いいたします。

【神居次長】
 秋田県教育委員会の神居と申します。
 本県の特別採用等で採用した博士号取得教員の活用についてご説明したいと思います。
 資料の1番について、博士号教員活用の背景と経緯を3点記載しておりますが、根本的には2の地域振興のための産業振興、地場産業の振興のために地域に根差した独自技術の開発を支える人材の育成が求められていること、これが本県における非常に喫緊の課題で、将来にわたって非常に大きな課題になっているところでございます。そのため、平成19年度に大学、産業界等の外部委員から構成される「県発展戦略会議」において、博士号取得者などの優れた人材を中等教育の教員として採用し、その専門性をもって、児童生徒はもとより教員にも刺激を与えてはどうかという提案がありました。それで、平成20年2月に博士号を取得している方を対象にした採用試験を実施したところでございます。
 2番の博士号教員要請派遣事業の目的について、現在のところ、3番の表に示していますが、博士号教員は7名おり、うち教諭が6名、非常勤講師が1名で、県内の県立高校に配置しています。その学校において授業、もしくは実験、演習を行います。場合によっては、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けた学校において、いわゆる課題研究等で生徒を指導します。様々な手法がございますけれども、普通の授業の他にそういう授業を行い、また近辺の小中学校から要請がありますと、そちらに出向いて、基礎的な実験を行い、科学への好奇心を芽生えさせ、それを育ませるということも行っています。
 資料の2番目に、そういうような内容を事業の目的として記載しています。
 資料の3番でございますが、博士号教員採用選考の状況です。先ほど申しました20年2月の試験の際には志願者57名、1次合格が18名、2次受験者が18名、最終合格者が6名という結果で、5名を教諭、1名を非常勤講師として採用しました。最初の年は、一般の採用試験は19年の7月に行っていますが、この試験は若年退職等を考慮して、20年の2月に急に募集しました。この下の段の21年度は一般の採用試験と同じ日程で7月に採用試験を行いましたところ、志願者は12名、1次合格者は3名、2次試験を3名が受験しまして、最終合格は2名でしたが、1名は他の職業に就いたということで辞退されております。
 実際の業務状況ですが、資料の4番に博士号教員の派遣状況を示しています。平成20年度は1年間で合計61回、これは他の学校や研究会、研修会等も含めますが、61回派遣されております。
 資料の5番は、博士号教員採用をめぐるQ&Aです。一般的な質問に対する答えをまとめたものでございます。
 資料の6番は、博士号教員の派遣の成果と課題ですが、1から4まで記載してございます。授業を受けた児童生徒の感想から明らかなように、着実に理数系分野への興味関心を高めています。今までと比べて、やはり子供たちのいわゆる知的好奇心が、非常にかき立てられているということは、はっきりいたしております。
 それから、授業はもとより、課題研究、補習授業でも力を発揮しています。農業や工業における専門的な力量は、特に課題研究等に深みと広がりを与えているということが報告されています。
 なお、この採用試験は、教員免許を取得見込もしくは所有ということを前提にはしておりません。ただ、合格された先生方の中には、高等学校、中学校の免許を持っている方もいらっしゃいますし、そうでない場合もございますので、これも状況に応じますが、審査会を開いて特別免許を発行することもしています。また、免許がなくてもできる授業はたくさんございますので、その部分をうまく割り振りながら、やっていこうということで始めたものでございます。
 課題1に記載していますが、これは県単独の予算で措置しており、予算の継続的な確保という点が問題となっています。また、先生方が長く勤めている場合には、最先端から外れて中等教育もしくは初等教育の現場にいますので、研究分野での遅れというものが出てしまいます。研究もしくは研修を1年間なり大学に戻っていただくというようなことができるかどうか、その場合に、文部科学省でそういう部分に研修等定数加配で手当していただけるかどうか。そういうようなことがこれからの課題ではないかと考えております。
 それでは、実際に教壇に立っております遠藤教諭から、様々な現状と要望等に関してお話しいただきます。

【遠藤教諭】
 秋田県立大曲農業高校に勤務しております遠藤と申します。よろしくお願いします。
 私がこの秋田県の博士号教員の採用試験をそもそも受験しようと思ったきっかけは、大学院に在籍しているときに、ティーチングアシスタントという学部生の実験授業の補助ですとか、あるいは高大連携の授業でサイエンスパートナーシッププロジェクトといって、高校生対象に実験などを大学でやったりしたのですが、そういった経験をしたことにより、教育分野に関心を持ったのがそもそもの始まりです。教育に関心を持ったので、教員採用試験を受けて先生になろうと思ったのですが、教員免許を持っていなかったので、まず教員免許をどこか通信の大学で取得して、かつどこかの県の採用試験を受けて教養試験などを突破した上でないと採用にはならないので、そこがネックとなっていましたが、秋田県の今回のこういった採用があるということを聞きつけて採用していただいたという次第です。特別免許状を発行していただいて、昨年度1年間授業しましたが、本年度は、通信の大学で正規の教員免許を取得いたしました。
 現在の業務に関してですが、先ほども説明があったように、通常の教員としての勤務校での日々の授業や学校運営の仕事のほかに、博士号教員としての特別な業務として、出張授業を行っております。私の専門分野は、博士号のカテゴリーは理学で、分野は分子生物学という勉強をやっております。小学校や中学校に授業に行く際には、余り難しいことをやっても仕方がないので、DNAを取り出してみようなどといった簡単な実験をやって、理科に対して興味関心を持ってもらう、テレビで言いますとでんじろう先生的な活動をしております。高校に出張授業に行く際には、それとは少し違って、本当に高度な実験、本物の分子生物学の実験を体験してもらいます。例えば最近の例で言いますと、インフルエンザに感染しているかどうかを判定するためのDNA鑑定に用いられているPCRなどの実験を実際に高校で実施しております。そういったことを体験してもらって、理系の高校生に対して、研究の世界は遠い世界ではない、夢は自分の手の届く近いところにあるというように夢を膨らませてもらうということをやっています。また、自分が今まで大学、大学院での進路選択をどのように考えて行ってきたかということを話したり講演したりして、ロールモデルの提示、進路選択支援ということもやっております。
 1年間活動をしてみて思ったことは、確かに自分の分子生物学の専門性も多少生かされることはあるのですが、それはごく一部であって、ほかの能力が必要になる場面が非常に多い。例えば授業をするにしても、学会発表などのプレゼンとは少し違うわけです。コミュニケーション能力も必要になってくる。あるいは一般の教員として必要な能力というのもやはりある。例えば学校内で仕事をこなすのにも、企画立案の能力ですとか行事の運営、あるいは組織を運営する力、クラスとか学校の仕事の役割分担のグループを運営する力、あるいは事務処理能力も必要になってきます。あと、先ほどの資料の中にもありましたが、高度な実験の授業を行うにも、やはり資金の確保が必要です。財政が厳しいので、私の場合は独自に資金を調達するために、理科教育の助成にいろいろ応募したりしています。実際、学術振興会の奨励研究のカテゴリーで今年度予算をいただきまして、そういったところでは、例えば大学で研究をやっていたころに、研究費の申請をした経験などが非常に役に立っています。
 以上でございます。

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に大塚専務理事、よろしくお願いします。

【大塚専務理事】
 資料の2-4と「新・臨床心理士になるために」という赤い本をご覧いただきながらお話しさせていただきたいと思います。
 今日は、大学院を修了した人をどのように受け入れるか、また、大学院においてどういう教育改革をして、さらに発展させるための授業、カリキュラムを構成して欲しいかという大学院教育に対する要望について、中央教育審議会において述べさせていただきます。
 ご案内のように1988年、昭和63年に、お亡くなりになった河合隼雄元文化庁長官などを代表として、心を支援する専門家を育てるということで、修士課程修了を一つのモデルの教育カリキュラムとして、今日までやってきました。お手元の資料では、現在登録されている臨床心理士は、1万8,906人であります。こういう方々を世に送り出し、また我々がそういう方々を雇用している立場でもございますので、どういう教育をしていただいているかということを申し上げたいと思います。
 それで、この本の18ページを見ていただきますと、表3で指定大学院の前期課程のカリキュラムがございます。現在、この指定大学院の他、専門職学位課程の制度ができまして、専ら実務家の心理臨床家を育てるための専門職大学院も設置されております。
 次に、200ページを見ていただきますと、現在、日本に臨床心理士を養成する大学院がどのくらいあるか記載しております。西から順に書いていますが、大分大学、九州大学から一番下の弘前大学まで29校の国立大学の大学院に臨床心理士養成のためのコースがあります。大学の組織については、我々の理想は臨床心理学研究科臨床心理学専攻ということになりますが、教育学の分野から発展してきたところ、人間学から発展してきたところ、本家の心理学から発展してきたところ、いろいろありますので、こういう形の専攻名、領域(コース)になるところでございます。その次に、公立大学が2つありまして、32番目の沖縄国際大学大学院から私立大学です。
 210ページを見ていただきますと、臨床心理士養成のための専門職大学院、いわゆる専門職学位課程の大学院を記載しています。修士論文、学位論文なしで、実務家教育をうたっているところでございます。最初に九州大学において、実践臨床心理学専攻を平成17年に設置いたしまして、その後、鹿児島大学、帝塚山学院大学、広島国際大学にも設置されています。今年の4月から新しく関西大学が臨床心理士養成に特化した専門職大学院を設置しています。現在、日本には約160校の大学院に臨床心理士養成のシステムがあるということをご理解いただきたいと思います。
 18ページの表3に戻って、指定大学院のカリキュラムについては、32単位を2年間で取得して修士論文の審査に合格することが修了要件ですが、少なくとも必修科目を16単位、選択必修科目を10単位の計26単位以上取得していなてはなりません。
 次に、19ページに記載した専門職大学院のカリキュラムについては、心理臨床の実践的学習を行うということで、修了要件が50単位でございます。九州大学は44単位で認定されております。2年間でこれだけの単位をどう取得させて、養成していくかという点が問題となります。 臨床心理士とはどういうものかというと、結局は人が人にかかわり、人に影響を与える専門家です。医者は患者さんにかかわり、患者さんに影響を与える専門家でございます。学校の先生も児童生徒にかかわり、児童生徒に影響を与える専門家でございます。臨床心理の専門家も、人が人にかかわり、人に影響を与える専門家でありますが、最終的な目標が違います。医者の場合は、病んだ状態をもとに戻す専門家でございますが、人間の一人一人の価値観をどう正当に評価して、その人の自己実現にどのように寄与するかというところに心理臨床の特性があると思います。
 この特性の実際の専門行為の核心であるもののひとつが面接技法といえましょうが、大学院において正確に2年間の中で教えていただきたいと思いますが、このカリキュラムで申し上げますと、臨床心理面接と臨床心理査定演習の2つをしっかりやっていただきたい。臨床心理士の現在の分布の状況は、医療領域が31.5%、教育関係が24.9%、大学・研究所が18.2%、児童相談所など福祉の領域に12.2%となっています。将来的には産業界においても、うつ病や自殺の問題への対応もございますので、産業界の要望にも応えられるような専門家を養成したいとお願いしているところです。

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。それでは、直井先生、よろしくお願いいたします。

【直井教授】
 それでは、資料3をごらんください。
 我々の大学で取り組んでおります科学立国人材育成プログラムについてご紹介させていただきたいと思います。
 最初のページでございますが、これは我々の大学の基本理念でございまして、MORESENSEということで、地球環境の持続と使命志向型教育研究、我々の大学ではその実現を重んじた内容を実施しているといった状況であります。
 その次ですが、我々の大学では、大学院教育の改革についてワーキンググループをつくりまして、数年かけて議論しております。その中でここに示す3つですが、1つは大学院教育の実質化ということで、我々の大学独自の再組織化を行っております。2番目に国際的な適用性の確保ということで、大学院教育の質の向上のための日本語力・英語力の強化を行っております。それから3番目になりますが、真に役立つ博士の育成を目指した教育特別拠点の形成とありまして、現行のシステムと並列するスーパー大学院構想というものを実施しております。
 次のページですが、大学院の農学系研究院、工学系研究院を再組織化しました。その中で選択と集中により教育特別拠点というものをつくりました。教員はこの拠点と各部門を兼務できるようにしました。
 その次のページですが、平成14年から18年にかけて、21世紀COEプログラムに選定されたナノ未来材料研究拠点の形成として、生命工学、応用化学、電子情報工学の3つの専攻を横断的、有機的に融合して、3専攻横断型の特別拠点を実際に組織化しております。この科学立国人材育成プログラムは、その中で特にナノ教育に特化して、M1からM2に進学する際に学生を選抜し、これをD0と名づけまして、4年間一貫したナノ教育を行った実績を踏まえたものであります。
 次のページです。この教育プログラムの新しい点は、D0という概念の導入です。これは応用化学、電子情報、生命工学の3つの専攻、それぞれからD0特待生を選抜しまして、これは博士0年生という概念ですが、そこから4年間積み上げて徹底した「ナノ教育」を行うということです。
 次のページです。そのナノ教育の概念ですが、これは平成14年から18年に21世紀COEプログラムの中で試行したいろいろなカリキュラムを踏まえて、特に日本語力、英語力、グラントプロポーザルの書き方、ナノ材料研究倫理・安全特論を増強したものです。それから、D2に入ると企業研修があり、これはインターンシップ、短期のインターンシップ、それから海外の研修も含みます。そういったようなものを盛り込んで、より実践的な計画を実施しているところであります。
 その次のページです。別の新しい点として、本プログラムにおいては、ターゲットを明確化しようということがあります。従来、博士に要求されているものは左側に記載した、高い専門性、研究力、応用力です。それから、プレゼンテーション、コミュニケーション能力などが従来の博士に要求されていたことですが、我々の目指すものは、さらにリーダーシップ、ティーチング能力、現場力・知財戦略能力・ビジネス感覚、それから実践的な文章力です。さらに、情報収集力、ITスキルなどにも関心を持って、あるいはプロジェクトベースドラーニングにも通じるようなスキルの評価というものを考えております。そういう意味で、論文の延長ではない実践的な高度専門人の育成を目指しています。
 次のページです。これは我々の拠点の経済的なバックグラウンドですが、国からの支援のほかに農工大教育ファウンデーションをつくって、これで支援しています。
 その次のページです。我々の大学は東京都多摩地区にありまして、多くの企業の研究所、事業所が存在しております。その中で大変活発に産学連携のプロジェクトを推進しておりまして、そういったようなことがベースになっております。
 次に11ページをお願いいたします。我々の大学でもう一つ特徴的なことは、産業界に対して多くのドクターの人材を輩出しているということです。往々にして、ドクターを修了するとアカデミアに行きたいという方が多いのですが、我々の大学では39%が企業に就職しています。そういう意味で、我々の大学は産業界との連携が非常に強く、実際に多くの共同プロジェクトを実施する中、そのまま産業界に行って活躍している人が多いということであります。
 次のページをお願いします。本拠点では我々の大学の中で特にリーダーシップのある方、生産力のある方、非常に活発に研究を行っている教官とメンバーをセレクトしております。我々の大学で特徴的なことは、1人当たりの外部資金獲得力が非常に高いということであります。もちろんグロスで言うと大手の大学には到底及ばないのですが、1人当たりの教官で言いますと非常に高い値を示しております。
 次に13ページをお願いします。工学府にはいろいろな組織がありますが、その中でも我々の所属している特別拠点である科学立国のところをご覧いただきますと、教官1人当たりの外部資金の獲得額が3,500万円ということで、ほかの組織に比べて非常に高い値になっています。
 その次のページも同様ですが、これは科研費部門別採択数です。これは我々の大学の内部的な資料ですが、一番下の科学立国研究拠点は非常に高い採択率です。
 次に15ページですが、我々の行っている教育支援をサポートするために、外部資金を還流するシステムをつくるということです。
 その次のページです。幅広い支援対象者ということですが、学費をベースに考え、60万円の倍数の60、120、180、240万円を、それぞれの学生の貢献度・期待度に応じて支援しています。1年ごとに指導教官と契約を結び、この教育の支援をしていくというシステムをつくり上げました。
 その次のページは実際の状況ですが、平成19年度のD0が7名、RAが30名、平成20年度ではD0が6名、RAが29名で、実施の成果も上がりつつあります。
 それから、カリキュラムですが、特に企業研修教育、海外研修教育というものに力を入れております。それと、研究の提案、研究倫理、安全に関する教育を強化しております。初めてこのプログラムの中で「グラントプロポーザル特論」ということをやりまして、実践的かつ具体的な研究提案書の作成といった教育をしております。
 最後のページになりますが、実際のカリキュラムを記載しています。
 以上でございます。

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。
 本日は、証券会社、メーカー企業、教育委員会、臨床心理士の資格認定協会から報告を受け、あわせて東京農工大学で行っている科学立国人材育成プログラムの紹介をしていただきました。これから後、2時50分ぐらいまで自由に質疑あるいは討論を行っていきたいと思います。どなたからでも結構ですので、どうぞよろしくお願いします。

【角南委員】
 今の直井先生のお話ですが、自然科学だけでなく社会科学でも、D0という制度は非常にやりやすい博士課程カリキュラムだと思います。アメリカでもマスターを1年やって、その中で優秀な学生が博士課程に選ばれます。選ばれなかった人は、マスターを取ってマーケットに出て行くということで、キャリア選択が非常に明確で、割と早い段階で博士課程の学生が選別され、理解されやすい仕組みになっていると思います。
 お伺いしたいのですが、他の学部でもD0という制度に対する考え方は受け入れやすくなっているのかということが1点と、それからもう一つは、基本的にはまだ始めたばかりだとは思いますが、D0に入った学生は博士まで全員行くということがある程度前提になっているのか、それとも途中で何かドロップアウトさせるような、選別するための試験のようなものがあるのかどうか、つまり、Ph.Dの候補者になって、論文を書く前にもう一回考え直して、研究職をあきらめて仕事に就くとか、別の途を歩む選択もあるのか、その2点についてお願いします。

【直井教授】
 我々のところでは、マスターを卒業して、それからドクターになるという今までのコースと、それ以外に、早目にドクターに上がりたいという意思を持った人に関して、飛び級という制度で、できるだけマスターの期間を短くしてあげるというコースがあります。それを実現する一つの方法論として、このD0というのが位置づけられました。これは分野によって非常に認識の差があると思います。社会に出ていった後の出口の状況が違うということもありまして、例えば、生命工学科とか応用化学という分野では、非常にこのD0に応募する人が多いのですが、逆に機械系とか電気系は少ない状況です。これは、社会に先に出たほうが価値があるというようなことでして、分野によってこれが成り立つかどうかを考えなければいけないところがあります。
 それから、D0に応募したいという気持ちが高まるのは年に何回かあります。M1を卒業した時点ですぐにD0に入りたいという人は、半数ぐらいしかおりませんで、実際に周りの様子とか、あるいは就職活動を一旦経験してみて、その後やはり自分はドクターに進みたいというような決断をして、途中で入ってくる人たちもいます。そういう意味で、D0をリクルートする時期を年に何回か設けてやっているというような状況です。
 それから、このD0とは別に、日本学術振興会の特別研究員制度もあります。そちらは、どちらかというとアカデミアを志向している人たちです。そういった人たちにも応募してもらっています。このプログラムのD0というのは、どちらかというと博士を卒業して、企業で活躍してみたいという人たちに我々がキャリア指導しているという状況でございます。

【有信部会長】
 それでは、次お願いします。

【梶山委員】
 大学を卒業した学生をいかに使うかという点ですが、キヤノンの方からのご説明の中で、一般にここに書いてあるように確かに博士課程を出た学生は非常に専門的だから研究に使う、それから修士を出た学生は開発に使うという考え方があります。これは大学院学生を、有効に使っていないと思います。研究は博士でもいいですが、余り常識的な博士のコースを出た人に研究をさせないほうが私はいいと思います。
 それともう一つは、開発についてです。開発それから設計までの仕事は、博士課程の学生でないとできないと思ます。というのは、開発に関しては、経験とか能力がないと、オーバーオールの問題を見ることができず、いい製品ができないと思います。ですから、研究はある程度狭い範囲の知識や経験でやれますから、これは修士でも博士でもできますが、開発とか設計というのは本当に能力のある博士課程修了の研究者でないとできないと思います。
 大学の研究はできても、最終的に製品化することは応用であり、そのための高度の教育を受けた人に担わせるべきではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。

【有信部会長】
 要望のミスマッチが顕著に出ていたと思いますが、何かご意見ありましたらどうぞ。多分いろいろな学生を採用した結果を見ておられると思いますが、今のご意見に関して何かございますか。

【稲塚所長】
 技術系の責任者をしております宮代から答えさせていただきます。

【宮代部長】
 キヤノンの宮代です。よろしくお願いします。
 直接的なお答えになるかどうかわかりませんが、私どもの会社では、採用については基本的に職場の要望を受けて行っています。職場ごとにどのような人材が欲しいという要望をまとめて採用しています。こういうやり方ですが、多分これは他の会社も同様だと思います。
 残念ながら現状は、職場から博士の要望が少ないという状況です。特に今お話のあった開発・設計からは皆無と言っていいぐらい少ないです。そもそも、開発・設計の仕事のイメージは、皆でテーマを分担してプロジェクトチームで協力しながらやっているというものです。そう考えますと、博士レベルというよりは、広く浅くいろいろな経験をしてきた実践的なエンジニアのほうが製品のものづくりという観点では、職場から求められているという状況になっています。

【有信部会長】
 ありがとうございました。
 ちょっと補足しますと、私もドクターを出て会社に入りましたが、今の梶山委員のおっしゃったことが非常によくわかります。ドクターを修了した人を同じ分野で研究に投入すると、そこからほとんど出ないので、発想が広がっていかないということがあります。同じ方法論で進めていくということですが、もちろん短期的にみると研究成果を出すという意味で有利なので、企業にとっては役に立ちますが、長期的に見ると本当にそれがいい使い方かどうかという疑問もあります。ある時点からは、何か別のところに転身させるということをしております。ただ、企業サイドから見ると、まだまだ数が多くないので、やはり開発部門にはドクターが来たら一体どうするのだろうという不安があるわけです。だから多分、希望が出てこないのであろうと思います。ただ、使ってみれば何とかなるというのはありますが、それではもったいないのではないかというふうにも思っています。もう少し入ってからの使い方について、お互いに議論が進めば、もうちょっとよくなるのではないかという期待はあります。
 それでは、お願いします。

【延與委員】
 野村證券の方やキヤノンの方のお話を聞くと、かつて大学院教育にも携わりましたが、大学院生について結構きついことを言われています。外国の例を理学の分野から見ますと、企業における学位保持者のウエイトが日本より大分高い印象を受けていて、それは体制が違うのか、あるいは日本の修士、博士のできが悪いのか、企業同士が国際的に勝負をしようと思うと、そういう数字が割と出てくるのではないだろうかと長く期待していたのですが、その辺どうでしょうか。

【有信部会長】
 加藤さん、何かご意見ございますか。

【加藤シニアエグゼクティブオフィサー】
 実は、私ども最近、米国の投資銀行のリーマンブラザーズという会社と合弁しまして、今私の部下にその社員だった者が沢山いますが、はっきり言って博士率は圧倒的にリーマンブラザーズのほうが高いです。製造業とは状況が違うと思いますが、必ずしもリサーチ、研究部門ではなくて、例えば実際にトレーディングをしているとか、いわゆる現場で業務をしている人たちの中に博士課程の人が結構多いというのが特色になると思います。
 私もそういう人たちと最近よく話したりもしますが、どういう言い方をしていいのか躊躇するのですが、優秀な人が多いです。もちろん日本の人も優秀ですが、トレーニングされていると言ったらいいのか、とてもよく勉強しているというか、例えばあちこちの学会ですごい発表をしているとか、論文を書いているだとか、要するに実際に手を動かしている量が相当違うような感じが明らかにします。やはりその差は大きいのではないかという感じがします。採用する博士が少ないとさっき申し上げましたが、それは来ていただけないというのもありますが、もう一つ、たまに来ていただきますが、当然、博士に対しては修士よりはきっちりとした選定基準を適用するのですが、そうするとなかなかクリアできないというか、そういう状況もあるということでございます。

【有信部会長】
 ありがとうございました。なかなか非常にシビアな話ではあります。次お願いします。

【丸本委員】
 野村證券その他からお話があって、私も厳しいなと思っていますが、大学院生を指導した経験からしますと、やはり修士の学生よりはドクターを出た学生のほうが相当に能力が高いと思います。それから、最近はやはり国際コミュニケーション能力だとか、かなり能力が上がってきておりますが、多分アメリカあたりの教育制度と少し違うために、まだ実力を発揮できていない部分がかなりあるのではないかと思います。ですから、民間の研究職や開発職にも行きたいという学生がたくさんいますが、就職先が余りない状況です。先ほどのキヤノンの方からもありましたように、ドクターの学生が欲しいという要望が余りないということがあります。それは即戦力につながらないという判断をしているのではないかと思いますが、実は、ドクターの学生に対して少し長期的な視点で見ていただければ、必ず能力を発揮できるだけのものを持っていると私は思います。だめな人もいるかもしれませんが、是非そういう点で、産業界からも積極的にドクターコースの学生を採用するようなあり方を少し考えていただくと、今のオーバードクター問題などの問題ももう少し解決が進むのではないかと私は思います。私の教え子でドクターを取って大変優秀だった者は、職がなくて、ポスドクをとって農林水産省に2年ほどいましたが、それから先が続かず、とうとう小さな会社の研究職に入りました。私から見ると、能力が発揮されない状況になっていると思います。だから、学生をしっかりと鍛えていただくといいのではないかと思いますが、何か産業界から将来展望のようなものに対するご意見が伺えれば大変ありがたいと思います。いかがでございましょうか。

【有信部会長】
 今、丸本委員がおっしゃった点が産業界とアカデミアとのドクターの採用に関する一番典型的な理解のミスマッチです。この部分については、いろいろ検討を進めてきていますが、何かございますでしょうか。

【桐野委員】
 農工大が提案されたプログラムは、PI、ひとり立ちの研究者を育てていくというプログラムとしては大変面白いし、良いのではないかと思います。それがそのまま企業への就職にもつながるということになれば大変結構だと思いますが、キヤノンの方がこのレジュメの一番最後に書いている、学部・修士課程を通じて企業活動の実務に必要な「基礎能力」にたけた学生とは何を意味するのでしょうか。農工大のようにPIを、つまりひとり立ちして新しいことを発明、発見できるような人を育てて、それが企業でも活躍できるということをお考えなのか、それとは違って、企業向けの大学院教育、アカデミア向けの大学院教育というものがあるのでしょうか。企業活動の実務に必要な即戦力教育をせよということであれば、もちろんそれが必要な面もあるかもしれませんが、そんなことをしてはいけないという意見も一方であり、そういうものはすぐに役に立つが長い目で見れば役に立たないというようなことを言う人もいます。
 この企業活動の実務に必要な「基礎能力」が、どういうことを意味しておられるのかを教えてください。

【稲塚所長】
 確かに今おっしゃった矛盾は感じております。大学は何も企業のためにあるものではないので、大学なりの教育をすればいいのではないかというようなところもありますが、我々が何故「基礎能力」というような話をするかというと、例えば我々はメーカーですから、機械ですと何か図面を書かなければいけないですし、電気ですと回路を読む、あるいは回路を書かなければいけません。ソフト、情報系ですと、プログラムを書かなければいけません。もっと言うと、アプリソフトだけではなくファームウエアも知っていなければいけないというのがあって、そういう点で見ると、今大学院卒で入ってくる方は、どちらかというとシミュレーション的なものが多く、実務的な能力が低いです。私は大学がそういうところは最低限教えてくれているものと思っているわけですが、どうも欠けているなという感じです。
 基礎学力は当然大学で教えていただきたいのですが、もっと実験や実習も含めたプラクティカルな面の教育をやってもらいたい、そういうカリキュラムをつくってもらいたいということです。

【有信部会長】
 他にいらっしゃいますか。

【五神委員】
 キヤノンさんの大学院生の質の問題についてのご指摘は大学院の現場に携わる者として良く理解しておかなければならない問題と思いました。私が教育をやっているところは東京大学の物理工学専攻というところで、東大の中でも優秀な学生が集まるところですので、少し違った感覚で今の学生を見ています。しかし、全体的に見れば、学部教育の到達度の水準が低下しているということは否定できないと思います。戦後の新制大学発足のときに旧制の研究教育大学モデルにならって工科系大学や工学部を増設しました。これは、高度経済成長期に、高品質大量生産という日本の生産モデルを支える優秀なエンジニアを学部卒でたくさん養成したということに大いに貢献しました。この人材養成の仕組みは我が国の資産ですが、それが現在、理系、理科離れと少子化という中で弱体化が進んでいるのだと思います。
 現在、国立大学において多くの理工系学生が修士に進むという中で、修士教育が旧来の研究室ごとの個別的な教育にゆだねられているという状況で良いのかという課題であると理解しています。日本ではアメリカのマスターぐらいのレベルのカリキュラムが学部の標準として設定されていたわけですが、それをきちんと学部でこなすことが出来ていれば、促成栽培的な意味もあり、日本の優位性とも言える力強い教育システムのはずです。それが大学院修士の大衆化によって、大学院入試での学部の到達度管理の効果の低下もあり、ギャップが生じ、転換がうまくいっていないのだと思います。現在の大学院定員の規模相当のインフラを揃えているわけですが、そのインフラをきちんと活用して、どういう資質を持った人をどのくらいの規模感で育てていくかという定量的な設計が必要ですが、質と量の設定にもミスマッチがあるのだと思います。
 研究や開発において新しい分野を開拓するような高度な博士人材も、少数かもしれませんが、ある絶対数を着実に確保することが必要です。今どういう状況になっているかといいますと、アカデミアではなく産業界で活躍する志向をもった野心のある学生が、博士課程で自分を鍛えたいと考えた場合、その学生は博士進学を選択しにくいという状況になっています。その理由は、博士の教育が対応できていないというだけではないと思います。工学系の多くの研究室は個別に見れば産業志向の学生向けの対応ができていますが、学生から見たときに必ずしもそのように見えないということがあります。博士についても定員規模は、一学年の中の1%以下という少数ではありますが、総数規模で1万何千という数の博士を育成できる基盤的なインフラを我々が既に持っているわけですので、それを無駄なく活用していくという発想をもって改革の設計をしていくべきであると思います。博士の質と量を定量的にマッチさせる仕組みを確立することが、国としての投資効果という意味でも賢い選択なのではないかと考えます。

【有信部会長】
 ありがとうございました。

【今榮委員】
 秋田県の教育委員会の試みですが、理科離れを防ぐための理数系の博士教員採用の成果の話に非常に私は感心いたしまして、可能であれば他の県でも始めることができればいいかなと思いました。
 それに関して3つ質問させていただきたいのですが、例えば秋田県の場合、どれだけ生徒がいらっしゃるか分からないのですが、こういった博士号の教員は何人ぐらいいれば理想的なのでしょうか。また、まだ2年しか経過していませんが、資金の確保が県としては難しいということであれば、そういう博士号の教員は、1人当たりどれくらいの資金が必要なのでしょうか。
 それから、実際に教員になられた方に質問ですが、今大学を出たばかりで、かなり先端的な研究を身に付けて出ていますが、それが例えば10年、20年になると、現場から離れるということで、新しい研究からは少し遅れてくることになると思います。その場合に、どうすれば新しい10年、20年後の研究というのを身に付けられるのか、その方法について何かお考えがありますでしょうか。

【神居次長】
 お答えいたします。
 県に何人必要かということは、実際の数字は算出しておりませんが、本県には理数科を持つ高校が8校ございます。また、農業系で、生物科学等の実験、実習を強化している専門的な学科を持つ学校が2校ございます。それから、中高一貫校で工業系の学科を持っている学校が1校ございますし、その他に国公立大学に30名程度進学する工業系の学校もございます。ですから、今のところそういう学校に1人ぐらいをバランス良く配置して、その地域で小中学校も含めて、いわゆる理科離れを防ぐようなことをやっていただきたいと思います。そうすると、配置された学校ではその専門性が非常に役立ちますし、地域の学校もそれに応じて理科教育の面で充実するのではないかと考えています。
 2点目の1人当たりどのくらいの予算が必要かということですが、大体、教員の平均給与は年収800万円台となっています。正規の教育職の給与表があり、学部卒よりも2年分給与が高いという形で優遇されています。年齢その他、経験給も加算いたしますので、まずは1人当たり約800万円必要であろうと思います。それを全額県で負担するのは、なかなか難しいところもございます。それに各個人の先生方が研究する場合の政策的な予算というのも、数十万程度見積もる必要がありますので、1,000万円弱ぐらいの予算は欲しいと思います。
 3番目に関しては遠藤教諭のほうから説明させていただきます。

【遠藤教諭】
 先ほどの最新の知識を常に維持していくにはどうするかという質問ですが、確かにおっしゃるとおりで、私もどうすれば良いかなと考えているところですが、最初のプレゼンの際に本県の神居から説明があった、大学や研究機関との人事交流、あるいは大学へ行って研修を受けるなど、そういった方法が考えられます。あるいは、この資料2-3の2ページ目の「6 博士号教員派遣の成果と課題」の4番で「出身大学や赴任していた国との交流の架け橋となり」という一文があるのですが、いろいろなカリキュラムを学校で授業する際に、物品等が不足する場合があって、そういった場合に大学院の指導教官の研究室を頼りにすることがあります。大学院に所属していたときの指導教官や、そのとき知り合ったいろいろな研究者とのコネクションといいますか、つながりを今でも維持しているので、それをこれからも続けていくことで、さまざまな知識を手に入れたり、情報交換をしたりということも可能かなと考えております。

【有信部会長】
 ありがとうございます。では、郷委員お願いします。

【郷委員】
 今のお話の続きですが、秋田県の教育委員会の精力的な試みをお話しいただいて、大変うれしく思いました。実は今朝、中教審の初等中等教育分科会の教員養成部会に出ていましたが、そこで議論されたことと相反することが出てまいりました。
 それは何かといいますと、先ほどの遠藤先生のお話ですが、教員免許を取られたけれども、小学校の免許はお取りにならなかったのでしょうか。今朝の部会では、社会人受験者の合格者の減少等の幾つかの理由により、小学校教員資格認定試験を見直そうという話が出てまいりました。まだ議論が始まったところで、決まったわけではないのですが、今のお話とは逆の方向の話になってきているというように感じました。
 それで伺いたいのが、先端生命科学の実験を小中学校や高等学校で行うことで、現場の先生方に対する影響はどうなのかということを聞きたいと思います。
 それからもう一つは、最先端の知識を受け入れて維持していくためには、今朝の部会でも申し上げましたが、10年目の教員研修で、例えばそういう要望があったときに受入れができないかと思っておりまして、私は大学で免許更新のことも担当しておりましたが、そのことを伺いたいと思います。
 それから教育委員会にお伺いしたいのは、平成20年度に比べて平成21年度の志願者が減っています。このことは、従来から教員試験の時期は夏ですが、採用決定が学部の学生の場合、3月の卒業試験が終わったころになり、そのころには優秀な学生は他にも企業の試験を受けて内定が決まっているので、教職につきたいけれども内定した企業に行くという例を聞きまして、もしかしてそういったことも関係があるのかなと思っていますが、いかがでしょうか。

【有信部会長】
 それではお願いします。

【遠藤教諭】
 今のご質問にお答えします。
 まず1点目の小学校の免許に関してですが、私が取得した免許は、採用になったときの高等学校の理科の特別免許状です。その後、通信の大学で必要な単位を取得して、高等学校の理科の専修免許状を取得いたしました。小中学校の免許は所持しておりません。その運用に関しましては、後ほど神居から説明があります。
 2点目の他の先生への影響ということですが、平成20年度に秋田県内で行われた教員の研修会において、その理科の部会で先生に対して実験演習の発表を行いました。対象は高校の生物の先生で、先ほど私が説明したような、通常高校では予算等の関係で絶対実施できないような実験を体験してもらいました。通常は大学に生徒を連れて行って、例えば高大連携授業で体験してもらうような内容の実験です。
 私の担当している理科の生物に関しては、他の教科よりも内容の発展が目覚ましく、新しい内容が次々と高等学校の生物の教科書に入ってきます。現行の指導要領に変わってからはそれが特に著しくて、私が受けた教育課程では大学院入試でやるような内容が、今は高校の教科書に普通に入ってきています。ですので、高校の生物の先生は知識を維持するのが非常に大変です。特に分子生物関連の内容の更新が著しいのですが、そういった内容はどうしても高校では学ぶことができなくて、高校の理科の先生も自分自身で体験したこともないし、生物の先生といっても、私のような分子系の人もいれば、生態系出身の人もいるように、いろいろなバックグラウンドの方がいるので、そういうのをやったことがない方もいます。そういう先生方に実験を体験してもらいアンケートを取ったのですが、自分でやったのとやっていないのとでは、やはり生徒に対しての教え方が違ってくる、今回の研修に参加して非常に良かったというような感想がたくさん書かれていました。
 このように、先生に対して研修会を開催し、活用していただければ良いと思いまして、秋田県の教育委員会に提言し、実現していきたいと思っています。
 それと、3点目の10年目の先生の研修に関しても同様で、この定期研修の際にも生物の教員だけでなく、物理とか化学の先生も、例えば教員免許としては理科となるので、物理の先生が学校の事情によって生物の授業を受け持つことも考えられますので、そういった先生にも受けていただくと、やはり教え方は全然違ってきます。特に私が専門でやっている分子生物の内容というのは、次の指導要領になったときは、またカリキュラムが少し変わって、生物2から生物1という科目に変わるので、より多くの生徒が受講するようになります。そういった面で、たくさん活用していただきたいと思っております。
 以上です。

【神居次長】
 それでは、引き続いて小学校の免許等に関してのご質問ですが、基本的には小学校免許は特別な教育課程を踏まないと取れないものですので、小学校に行って活動する場合には総合的な学習の時間に実施します。もちろん小学校の先生がその授業の主体であって、チームを組んでアシスタント的な働きをするという形を基本的にとっておりますので、免許問題には抵触することはないと思います。
 それから20年度、21年度の採用の違いですが、20年度は年度後半になって話が本格化し試験を実施したものですから、4月から勤務するところの2月の採用試験ということで、非常に短期間の試験でこういう結果となっています。21年度は平常の日程で、学部卒業生と同じ時期に実施していますが、受験資格を区別してやっています。各企業の採用は、ほとんどその年の4月、5月に済んでしまっているでしょうし、また教員になるために残っている博士の方はまずいないと思いますので、そのときの家庭の事情や、さまざまな自分の課題など条件が合う場合には、7月でも受けていただくのかなと思っています。ただ、教員の採用試験というのは、次年の3月末で退職する人数とその次年度の生徒数を勘案して決めるものですから、どうしても4月から5月ぐらいまで計算する時間が必要です。それで積算したものを定数として文科省とも調整しますので、どうしても募集要項を出すのが5月過ぎ、試験実施が7月ごろという形になってしまいます。

【有信部会長】
 荻上委員お願いします。

【荻上委員】
 秋田県の教育委員会にお尋ねしたいのですが、秋田県には県が設置している大学が2つあります。特に秋田県立大学は農学、工学といった分野をお持ちですが、先ほど課題と言われた最新の知識を維持していくという観点からすると、秋田県立大学を研究の場に活用するということが可能ではないかと思います。教育委員会と知事部局との違い、役割の違いという点もあるかもしれませんが、秋田県として何かそのようなことを検討しているのか、あるいはおやりになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

【神居次長】
 お答えいたします。
 県内には理工系の大学が国立の秋田大学と秋田県立大学の2つございます。また、国際教養大学もございます。それに教育委員会と一緒の形で高大連携、中大連携、さまざまな授業を行っております中で、教職員の研修もお引き受けいただいております。学長や担当の先生方からは、このような職を続けていくとすれば、5年から7年くらいの期間で1回は大学に戻って、研究活動に1年間没頭する形にして、また戻っていくというようなシステムを置かないといけないということを伺っております。もしそういう制度が必要になれば検討したいと思います。

【有信部会長】
 議論も尽きないと思いますが、時間がまいりました。この後、法科大学院の報告を井上委員からしていただきます。
 いろいろ議論が出ていまして、大学院での教育の内容の話、それから博士課程を修了した人に対する大学内部からの評価と企業からの評価の違い、博士課程修了者の資質・知識に対して企業からさまざまな要求が出ているということについて、もう少し双方で議論していく必要があります。大学院の教育プロセスが十分機能していないことについては、日本とアメリカとの比較、アメリカ流が必ずしも良いとは限りませんが、そういうことを含めて少し詰める必要があります。
 最後に井上委員から、4月17日の中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会で決定された、法科大学院教育の質の向上のための改善方策について、説明をお願いいたします。

【井上委員】
 法科大学院特別委員会座長代理の井上でございます。
 ただ今ご紹介のありました4月17日の特別委員会で出されました最新報告について簡単にご報告いたします。お手元の資料5-1と5-2ですが、5-1に最終報告の概要を説明しておりますので、それに沿ってご報告し、その上で事務局から補足説明をしていただこうと思っております。
 この特別委員会におきましては、平成20年3月から審議を開始しまして、認証評価機関による評価結果、各法科大学院に対する実態調査、関係機関の見解などの検討や、法曹関係者からのヒアリングを行いました。その結果として、全体としては多くの法科大学院において、理論と実務を架橋する教育課程の整備が着実に進み、法科大学院を修了し既に法曹となった人たち、あるいは司法修習生の素質・能力につきましても、多数の優れた点が認められる。総体としてはそういう認識でございますが、その一方で、法律基本科目に関する基礎的な理解や、法的思考能力が十分身についていない修了者が残念ながら一部に見られるということや、各法科大学院における法律実務基礎教育の内容が不統一であるなどの問題点も見られることから、それらの速やかな改善が必要であるということも認識したところであります。このため、特別委員会におきましては、法曹関係者を含めた幅広い関係者の参画を得まして、2つのワーキンググループを設けて集中的に審議を行い、昨年9月に中間報告をまとめ公表しました。それを踏まえて、その報告で示された改善の方法を中心に各法科大学院における状況について、文部科学省からヒアリングを行い、さらに検討を重ねた結果、出された報告でございます。
 この報告の中で提言された改善方策には主として4つの柱があります。1つ目は、入学者の質と多様性の確保ということでありまして、競争性の確保を目的とした入学定員の見直し、適性試験の改善などを内容としております。特に入学者選抜の際に、適性試験を必ず受けてもらいますが、この適性試験の改善につきまして、統一的な入学最低基準点を設定すべきであるとしまして、その具体的な水準の目安を適性試験実施機関、これは2つありますが、その機関に対して提案をしたところであります。
 2つ目は、修了者の質の保証ということでありまして、共通的な到達目標、いわゆるコアカリキュラムですが、それを設定することや、教育内容の充実、厳格な成績評価、修了認定の徹底ということなどを内容としております。このうち共通的な到達目標につきましては、現在、精力的に策定に取り組んでいただいておりますが、引き続き今年度いっぱいをかけてつくり上げていくということになっております。
 3つ目は教育体制の充実でありまして、質の高い専任教員の確保とともに入学定員の見直しや、法科大学院の教育課程の共同実施・統合等などの促進を各法科大学院に対して求めていくということが主要な内容であります。また、いわゆるダブルカウントの暫定措置は平成25年度までで終了する予定ですので、それ以降、法科大学院の教員が博士後期課程を研究指導できなくならないように、特段の配慮を要望するということも提言しております。これは研究者の養成あるいは法科大学院を含めた教員の育成について配慮したことを示しております。
 4つ目は質を重視した評価システムの構築ということでありまして、教育水準と教員の質に重点を置いた認証評価とすることなどを内容としております。ご承知かもしれませんが、平成18年度から法科大学院の認証評価が開始されておりまして、ほぼ1巡目が終わります。あと数校残しておりますが、この報告におきましては2巡目に向けて評価項目の見直しや評価機関の間、つの評価機関がありますが、その間での不適格認定の内容・方法の調整など、速やかな制度改正といった評価のあり方の見直しが求められております。
 審議の経過及び報告の概要につきましては、以上のとおりでございますが、特別委員会としましては、すべての法科大学院関係者に対してこの報告で提言された改善方策を真摯に受けとめていただいて、法科大学院教育の質の一層の向上に直ちに取り組んでいただくということを強く要望してまいるつもりであります。
 以上でございます。

【有信部会長】
 ありがとうございました。事務局から補足があります。

【藤原専門教育課長】
 事務局より若干の補足を申し上げたいと思います。
 内容につきましては、井上委員からご紹介がありましたとおりでございますが、法科大学院におきましては、特に法曹養成の数といったものに関連いたしまして、その質の確保というのが非常に大きな問題となってきております。
 そういった状況にありまして、この報告が取りまとめられておりまして、現在、文部科学省では74あります各法科大学院に対して、その改善策を取りまとめていただくようにお願いをしているところでございます。法科大学院特別委員会におきましては、2月に既にフォローアップのためのワーキンググループを立ち上げておりますが、そちらで各法科大学院の改善計画書について、状況のフォローアップをしていくということを想定しているところでございます。
 それからまた、ただいまご紹介がありました博士課程の後期課程の研究指導のあり方につきましては、何らかの配慮が必要であると考えているところでございますが、これにつきましては、専門職大学院全般にかかわるテーマでございますので、今後、当大学院部会におきましても審議をしていただくことが必要になろうかと思っているところでございます。
 以上でございます。

【有信部会長】
 ありがとうございました。それでは次回の日時の説明をお願いします。

【今泉大学改革推進室長】
 次回の大学院部会につきましては、6月10日の水曜日15時から、場所は未定でございますが、開催したいと思います。正式なご案内を追って連絡させていただきたいと思いますので、皆さんよろしくお願いいたします。
 なお、次回のテーマにつきましては、大学院教育の実質化の観点から、事務局で調査した結果を発表します。あと、同じ観点から大学院における基礎能力に関すること、国際的に卓越した教育拠点のあり方について、提言をしていただきたいと考えているところでございます。

【有信部会長】
 それでは、本日の審議は終了させていただきます。 ありがとうございました。

お問合せ先

高等教育局大学振興課大学改革推進室

大学院係
電話番号:03-5253-4111(内線3312)

-- 登録:平成22年07月 --