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大学院部会(第43回) 議事録

1.日時

平成21年4月28日(火曜日) 17時~19時

2.場所

文部科学省 3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 産業界から大学院教育に期待するニーズについて
  2. 博士課程修了者と企業のニーズとのマッチングについて
  3. 産業界からの大学院に対するニーズの大学院教育への反映方策について
  4. その他

4.出席者

委員

(委員)荻上紘一
(臨時委員)阿部晃一、有信睦弘(部会長)、今榮東洋子、河田悌一、木村孟、小杉礼子、中西友子(副部会長)、の各臨時委員
(専門委員)梶山千里、桐野髙明、五神真、菅裕明、続橋聡、中西茂、古市喜義、堀井秀之、山田礼子の各専門委員
(意見発表者)府川伊三郎旭化成株式会社顧問、山下晃一東京大学大学院工学系研究科教授、中尾真一工学院大学工学部教授

文部科学省

(文部科学省)坂田文部科学審議官、布村文教施設企画部長、久保高等教育局審議官、戸谷高等教育局審議官、藤原会計課長、岡文教施設企画部技術参事官、小川文教施設企画部計画課長、義本大学振興課長、下間学生・留学生課長、榎本高等教育政策室長、今泉大学改革推進室長 他

5.議事録

(1)事務局より配布資料の説明を行った。
(2)事務局より参考資料3-1、3-2、3-3に基づき補正予算案について説明を行った。
(3)その後の議事は以下のとおり。

【有信部会長】
 本日は大学院教育と産業界のニーズとのマッチングに関してのヒアリングを進めたいと思います。まず、経団連の続橋委員、製薬系企業の立場から古市委員、化学系企業の立場から阿部委員の3名より、産業界が大学院教育に期待する人材育成ニーズについてプレゼンテーションをしていただきます。次に府川旭化成顧問より、日本化学会が実施した博士課程修了者と企業のニーズとのマッチングについての調査研究の結果をプレゼンテーションしていただきます。さらに、産業界のニーズに応えて、大学院教育をどのように具体化していくかということについての発表を、工学院大学の中尾先生と東京大学の山下先生からプレゼンテーションしていただきます。まず、全てのプレゼンを1時間強にわたって行っていただいた上で、残り1時間弱、議論を進めていきたいということで、よろしくお願いします。それでは、最初に続橋委員からお願いします。

【続橋委員】
 経団連の続橋です。資料といたしまして、資料の2-1-1から3種類ほど種類があります。
 まず、資料2-1-1、競争力人材の育成と確保に向けてということで、これは4月に経団連の提言として出されています。この提言そのものは、実は私が担当しています産業技術本部とは別の本部がつくったものですが、その部署はもともと外国人労働者の問題を扱っていまして、外国人労働者に関しまして、少子高齢化で、だんだん労働者の人口が減っていく中で、やはり移民を受け入れなくてはならないといった思想のもとに、これまで第一次提言、第二次提言と出してきました。その中で今回は、グローバル競争に勝ち抜くためにそういった優秀な国外の人材と当然国内の人材も含めて、いかにしてその人材を育成し確保していくかという観点からこの方策をまとめています。
 表紙のところに概要がありまして、右側のところが外国人材の育成・確保ということで、基本的には理系や文系といったものを問わずに、優秀な外国人材を確保していこう、とりわけ、外国人材といっても単純労働者ということではなくて、何かの資格を持つぐらいの優秀な外国人を積極的に確保していこうということです。そのためには、外国人が来て、日本に住んでいきたいと思うような環境整備が必要であり、そうした中の一環として、優秀な留学生も確保していかなくてはいけない、そんな中身です。
 次の資料2-1-2、イノベーションの推進に向けてという提言ですが、これ以降は私が担当している本部でまとめたものになります。ちょうどこの提言は、昨年の5月付けでまとめておりまして、第3期科学技術基本計画も踏まえまして、産業界として今後の科学技術イノベーションについてどう考えるかというようなものをまとめたものです。
 1ページめくっていただきまして、ここにポイントを書いております。オープン・イノベーションという言葉がありまして、これは別に国内だけではなくて海外も通じて、いかにして優秀な人間を集めてイノベーションをしていくかといった発想ですが、その中で、当然産学官というのが協力してやるんですけれども、とりわけ産は、いかに社会に役立つものをつくっていくかということで、産が中心的な役割を果たしていく必要があるのではないかということで、産学官協働のプラットフォームの形成というものを示しています。それが一体何なのかというのは、今詰めているところで、その問題提起をしたというのが、この昨年の提言です。
 さらに概要をもう1枚めくっていただきまして、ここの4(3)に大学等における人材育成の強化という項目があります。当然、いろんなイノベーションをやるためには、やはり、いかにして優れた人を育てていくのかというのが大事になるわけです。とりわけ、ここは理工系の高等教育、大学院の教育をどうしていくかというのが一番の中心的な課題です。この中で、特にこの1ですけれども、そもそも日本における修士課程というのは何だといった問題提起をしています。修士課程というのは2年で終わりですけども、逆に言えば博士の前期課程でもあります。そうすると、博士の後期課程につなげるために修士課程をやっているのかというのと、そうはいっても、実際には大企業の理工系の採用の7割は修士卒が占めているということで、修士を卒業して産業界に行ってしまう人間がかなりいる、つまり、修士で終わりというのが実態としてあります。そうすると、大学の修士課程というものは、そもそも何だという問題提起につながります。結論とすると、例えば修士は当然産業界に行く人と、博士に行く人と分かれるというのもありますけれども、例えば最初の1年は共通プログラムみたいなものでやって、1年かけたところで私は博士に行くとか、私は産業界に行くというようなことで、その辺でコース分けをすればどうかといった提案をここでしています。ただ、これを踏まえてどこまで詰めているかと言われると、なかなか進んでいないというのが現状ですけれども、一応そういった大学院の課程の改革といったものを提言しています。
 もう一種類の資料がありますが、資料2-1-3、IT人材育成に向けた取り組みです。実は、経団連の中に情報通信委員会というのがありまして、そこはITの問題とか、あと最近で言いますと電子行政の問題等を扱っています。経団連は、いつもは総論でいって、あとは例えば日本化学会にお願いしますみたいな話で、各論は扱わないんですけれども、ITだけは別の分野でして、ここだけは各論について突っ込んでやっています。
 1枚めくっていただきますと、活動の経緯などがいろいろ書いてあるんですけれども、2007年4月モデル拠点開校と書いていますが、実は、筑波大学と九州大学が、経団連や経団連傘下の企業と組んで、修士課程を対象にしまして、それぞれ1学年20名から30名、2つ足して50から60名という感じになるんですけども、その学生に対して支援をしようという取り組みです。2007年4月に開校していますので、ちょうど2年たって、今年の3月に修士課程の卒業生が出ています。
 もう1枚めくっていただきますと、ここに問題意識みたいなものが書いてありますけれども、実際にソフトを使っていろいろやっていく人をつくらなくてはいけないというのがこの問題意識でございます。時間がないので飛ばしますけれども、3ページ、4ページでは外国で何をやっているかということを書いています。
 5ページ目に飛んでいただきまして、大学で教えているものと産業界が求めるものはギャップがあるのではないか、要するに大学のほうは理論を中心にやって、産業界のニーズとどうも違っているのではないか、というのが、今回我々が支援に立った経緯です。
 さらに、6ページ目にいっていただきまして、どんな支援をやっているかということですけれども、経団連から企業教員を派遣したり、それから一緒にカリキュラムをつくったり、あるいは奨学金をやったり、それからインターンを受け入れたり、そんな活動をしています。
 さらに、7ページ目に飛んでいただきまして、要するに、そういうことをやるとどうなるかという話ですが、ここの2つ目の山に書いていますけれども、本来企業が新入社員を受け入れたら一からやらなくてはいけない教育が、大学のときにかなり行われ、結果、ベースができるということです。
 例えばどんなことをやっているかというと、8ページ目の上に書いていますけれども、プロジェクト・ベース・ラーニングということで、実際のプロジェクトに即した実践的な教育をやっているというのが一つのポイントです。それから、大学によっては修士論文をやめたということで、実学を中心にしてやっているというものです。
 9ページ目になりますけれども、ではこれは実際にどのような評価を受けているのかというと、実は文科省のIT支援プログラムがありまして、これが今6大学参加されていますけれども、そのうちに採択されているものに、筑波大学も九州大学も入っています。その6大学の中間評価を昨年やったんですけれども、その上位1番目、2番目に、筑波大学も九州大学も入り、高い評価を受けています。その理由は、実践的であるということです。
 次の10ページ目になりますけれども、たまたまそうは言いましても、2大学で年間50から60人しか出していないということで、我々としますと年間1,500人というのが最終的な目標です。そこにいくためには、ナショナルセンターという、もっと全国の大学を対象にしていろいろ人を派遣するようなステージに行かなくてはならないということです。
 11ページ目ですが、経団連でやるのはなかなか限界がありますので、NPOをつくろうということで、今申請中です。首尾よくいけば、今年の7月にできます。これは企業が中心ですけれども、ここが母体になっていずれはナショナルセンターに飛躍していくということを期待しています。

【有信部会長】
 ありがとうございました。それでは、引き続き古市委員、お願いします。

【古市委員】
 アステラス製薬の古市です。私のほうからは、企業における大学院教育に対するニーズということで、最初に、企業サイドとして大学院教育の人材育成に求めたい資質・能力についてお話しをさせていただきます。
 私ども研究部門において、企業研究員としてどういった能力を一番に求めるのかということですが、基本的には、高度な専門的な知識や技術があるというのが、当然学部卒業と違いまして、大学院を修了した学生に求めることです。
 2番目としては、これもよく言われることでありますけれども、やはり創造性を発揮できる、さらに研究工学として新しい製品を出していくという上では、ある程度オリジナリティのあるものを見出していかなくてはいけないわけですので、そういった意味での創造性を発揮できる学生を求めるということです。
 3番目には、課題解決力にすぐれている学生です。
 4番目は、やはり国内に限らず、海外の製薬企業とも非常に競合が激しいので、自分が担当している分野で、他の競合企業より常に先を行くスピード感を持つ、スピードを持ってやり遂げるという能力というのも非常に重要であり、またこの製薬業界は研究を始めてから製品が出るまでに非常に長く、10年から15年と言われておりますので、研究開発をやっている間に、環境が非常に変わっていくということもございますので、こういった環境変化に対応するような、変化を先取りし必要なリスクをとれるということが重要であると考えています。
 また、自分たち、あるいは社会にはどういった脅威があるのか、そういった、そういう行政からの情報なりを科学的に分析する能力、ただ分析するだけじゃなくて、その情報を活用できる力ということが重要になってきます。
 それから、当然企業も日本国内に限らず、欧米でグローバルな研究開発を展開しているという状況にありまして、私どもも実際にアメリカに人材開発の本部があるという状況で、常に日米欧でコミュニケーションを図るという方針の中で、グローバル化に対応できる英語でのコミュニケーション能力というのも求められます。したがって、採用面接に当たっては、必ずTOEICに関して、どの程度の点数を持っているかということも、昨今では活用するような状況になっています。
 それから、やはりいろいろ議論していく中では、建設的な議論ができるというのが企業の中では重要になってきます。
 それから、資質面・人格面でのキーワードというようなところは、やはり優れた研究者でも、最初から1人でやるというのはとてもできません。したがって、同じ部門でもほかの研究者とのチームワークとか、あるいは他部門とのチームワークということが非常に重要になってきますので、そういう意味での協調性ということは極めて重要だというふうに思っています。
 あとは、積極性ですとか、ポジティブ思考、チャレンジ精神、リーダーシップ等も重要ですし、またコンプライアンスなどもあります。
 それから次に、少なくとも私どもだけではなくて、企業の研究部門では他も同じような考え方をとりますけれども、修士号取得者に関しましては、まず能力重視で、専門性は参考程度で考えています。逆に、博士号取得者の場合には、能力に加えて、専門性を重視するということになります。私ども研究部門では、修士号取得者と博士号取得者はほぼ半数ぐらいの割合で毎年採用しておりまして、今後割合というのは大きくは変化しないのではないかなというふうに思います。
 また、博士号取得者と修士号取得者というのは、入社当初はやはり3年間の専門的な能力の違いがありますので、どうしても最初は博士号取得者については、本人の今までやってきた専門性を生かす形で配属する形になります。したがって、最初は処遇にある程度差はあるわけですけれども、その後は基本的には個人の能力次第というようなことです。
 最後に、私ども企業研究者として、どういった大学院教育を望んでいるかということで、いろいろあるとは思うんですけれども、3つ挙げております。
 1つには、やはり企業の研究者という観点からは、非常に多岐にわたって創造性が発揮できるということが極めて必要かなと思います。あるいは、英語でのコミュニケーション能力の観点もあります。大学院の学生を面接して感じることとして、出身の研究室によって、外国からの研究者がある程度いるところでは、非常にコミュニケーションが図られているということで、非常に学生には厳しい環境ですが、外国人の研究者とか、あるいは当然、自分と同じ専門の人との議論は行われていると思います。ただ、専門外の研究者との交流を盛んにやられているというような状況は、非常に少ないように感じます。
 もう一つ、面接して感じるすごく重要な視点としては、所属する研究室の指導教官との議論が非常に重要なのではないかということです。やはり活発な議論がそこで行われていることによって、課題解決能力が育っていくと思います。
 最後に、当然我々は企業研究者として、大学院の学生を採用するわけですけれども、やはり大学院教育の中で、企業で研究するということをある程度理解していただくためにも、企業経営者や企業研究者から、企業の研究とはどういうものかということを理解するような機会を設定することも、一つの方法ではないかというふうに思っています。

【有信部会長】
 ありがとうございました。それでは、続いて阿部委員からお願いいたします。

【阿部委員】
 東レの阿部です。本日は大学、大学院への期待ということで、まず、2ページが東レの売上高と事業構造になっています。
 それから3ページの、社会との連携・融合の強化ということで、我々は今、大学・公的機関との連携を活発にやっています。約4割が大学・公的研究機関ということで、これは中国と韓国、米国も基礎研究の拠点を持っておりますので、ワールドワイドに約150件の連携をやっています。
 4ページは、日本発PAN系炭素繊維の登場ということで、1961年に進藤博士がPAN系炭素繊維製造の基本原理を発見して、我々東レとの共同研究を通じて1971年、東レが世界で最初にPAN系炭素繊維の生産を開始したということです。
 5ページは、我々のPAN系炭素繊維研究開発の歴史ですけれども、先ほど申し上げましたように、研究開始から約半世紀を通じて、ようやく市場が立ち上がってきたということで、今我々東レグループがトップシェアホルダーですけれども、日本の3社で世界シェアの80%を占め、航空機などの軽量化にも繋がり、CO2削減に大きく寄与するということで、まさに日本が世界に誇る環境改善産業です。
 欧米の化学会社で開発をやっていなかったのかといいますと、6ページの上に示しましたように、ほとんどのケミカルカンパニーもやっていましたけれども、やはり研究開発投資の重みに耐えかねて、ことごとく収束または撤退をしております。日本企業が世界を制覇した理由1、2、3とありますけれども、長期間にわたる研究開発投資を継続したということと、それから、やはり日本政府から20年以上にわたってかなりの額の支援をいただいたというところが非常に大きいのではないかということです。
 7ページが、産学官連携による技術革新です。一つの基本技術の発明・発見だけで経済効果につながる、イノベーションにつながるかといえば、決してそうではありません。やはり発明・発見の後の産学官連携も非常に大事かと思います。炭素繊維も、基礎研究、工業化研究を通じて産業化されたということで、こういう産学官の連携というのは非常に大きな力だと思います。
 それから、8ページが水資源の現状で、これも皆さんがご存じの通り、今、水不足が非常に深刻になっておりますけれども、さらにこれからも深刻になっていくだろうということで、9ページに、海水を真水に変えるRO膜の研究開発の歴史を示しておりますが、これも1968年に東レが研究を開始して、これからまさに市場が立ち上がるということであります。
 10ページですけれども、この水処理の場合も、オールジャパンのこういうコンソーシアムを作って、大学に非常に積極的に参加していただいております。新たな水ビジネス産業を育成して輸出産業にしていくという体制を構築して、これが現在の「海外水循環システム協議会」の設立につながっており、まさに産学官連携の一つの例だと考えます。
 11ページは、水循環システム協議会の内容でございますけれども、まさにオールジャパン、産と学、そして官が連携してやっています。
 こういうことを踏まえて、12ページですけれども、人材育成における産学官連携の取り組みということで、これも教育再生会議の分科会などの場で申し上げていることが多くて、もうほとんど今まで出たような意見ばかりかもしれませんけれども、やはりサイエンスからテクノロジーというところで、産学連携の効果は非常に大きいと考えております。14ページですけれども、日本の競争力、イノベーションを支えるものをここに書いていますけれども、やはり人材については、産業界の要請と現状が、ここに示していますように、かなりギャップがあると言わざるを得ないと考えています。
 15ページは、これは東レの例ですけれども、我々の会社において、非常に大きな産業につながって独創的に大きな研究業績を上げた研究者の共通点ということですが、やはり一番は狭い専門性だけではなくて、基礎科学力に裏づけられた深い専門性を持っているということが1点目に挙げられます。それから、同じ深さではなくても、複数の専門性を持っているということが2点目です。そして、やはり未知の分野にアプローチするときの「ツボ」を知っているということです。その下に、修士と博士、我々の採用の比率を示しております。大体これぐらいの比率で採っております。そういった中でも修士であれ博士であれ、やはり新しいものへのアプローチ法を知っているという人が大きな成果をあげています。
 それから16ページですが、全体感・視野の広さを持っているということが4点目です。5点目は、いわゆる能動的な考え方ができることです。これは、やはり大学院時代に能動的な考え方、動き方ができるような仕事を、自分で書いたシナリオでどれだけやったかということだと思っています。
 17ページが、大学・大学院改革ということで提言、これもいろんなところで申し上げておりますが、修士の年数の問題であるとか、教員の教育面における成果・貢献の評価でありますとか、あるいは企業等へのブーメランローテーションということを提言しています。
 18ページは、この前の大学分科会でも申し上げていますが、国立大学の分野別のランキングを示すことや、国立大学改組の促進、あるいは、19ページにあるように、学会の大くくり化などが考えられます。

【有信部会長】
 ありがとうございました。それでは、続いては府川顧問からお願いいたします。

【府川顧問】
 旭化成の府川です。資料3-1に従って説明していきます。
 資料3-1の3ページ目を最初に開いていただきますと、「博士セミナー」というのを日本化学会主催でやっております。インターンシップというのは、ご存じのように各企業で学生が教えを受けるという形ですが、博士セミナーというのは、学生70人ぐらいを1度に日本化学会に集め、企業のほうも約20社の委員が集まりまして、そこで企業からの講師、パネリストが出まして、博士課程の学生、あるいは博士課程へ進学予定の修士、そういう人を対象に、東京、大阪で2日ずつやっているというのが博士セミナーのかたちです。
 その前のページに写真が出ておりますが、それが2007年度に行ったときの写真でして、このパネリストは、博士卒の企業の若手の研究者の方から先輩としてのアドバイス、あるいは今何をやっているかという話をしている、そういう状況です。
 1ページ目に戻っていただきまして、この博士セミナーというのは、平成19年度より行っておりまして、文科省から先導的大学改革推進委託事業ということでご支援いただきまして、それから2年間計6回、受講者総数350人、日本化学会主催ですので、化学系の学生対象ですが、東京と大阪で2日ずつやりまして、あと年会でも、今年は半日行っております。セミナーのポイントとしましては、博士課程に進む方に産業界のことをよく知ってもらおうということが一つのポイントでして、産業界で働く意義、楽しみ、やりがい、そういったものをまず伝えたい、それから、産業界が期待する博士の期待像、例えばイノベーションを担う博士人材の期待像をこのセミナーで話をしてもらいます。会社によってあるいは講師によって意見は変わりますが、多様性はそのままにしておいて、学生にも答えが一つではなくて、いろんな期待像があるということを知ってもらうということをやっています。言ってみれば、博士卒の付加価値はどこかというような議論にもなります。それから、もう一つの柱は、研究開発の事例、これを詳しく説明しまして、大学と企業の研究の違いを知ってもらうということをしています。さらに、学生としては非常に知りたい、博士卒の採用のときにどんなことがポイントになるのか、あるいは入社した後、最後定年になるまでどういうキャリアパスになるかということを、小さい10名から15名のグループに分かれまして、委員と議論し、その後懇親会もやっています。受講者からは、従来なかなか企業の人から話す機会がなかったのが、複数の会社の人と一度に話をすることができるということでした。懇親会も非常に盛り上がっており、いいコミュニケーションの場になっていました。正式な形ではございませんけれども、こういう博士セミナーをやることによって、化学企業が約20社も参加しておりますので、優秀な博士はどんどん採用するというメッセージを、このセミナーを通じて出すということを心がけております。
 4ページ目にありますが、野依フォーラムというところで、博士人材が企業へより多く就職するために何をしたらいいかということを企業の方にアンケートをとりましたら、やはりアカデミア単一志向ではなくて、企業というものでの活躍の意義を早目に知らせることということが重要ではないかという結果が出ておりまして、なるべく博士課程に入りたての人に、このセミナーを受けてもらうということを心がけております。
 5ページ目は、この博士セミナーがどういう議論の中から出てきたのかという全体像でして、最初は野依フォーラムで始まりまして、これが経団連の博士課程検討会に出まして、経団連の提言に盛り込まれたということです。それで、正式な組織であります日本化学会でこの博士セミナーを引き受けさせていただきまして、2年間続いているということであります。JCIIの中では、東工大で企業出張講座ということで、研究開発事例を中心に今講義をやっています。博士1年生に必修科目でやっております。
 次の6ページ目は、産学人材育成パートナーシップ事業というものですが、化学のほうは、やはり採用の倫理憲章のようなものが非常に大きい問題となっています。
 7ページ目は、最近の化学業界の採用状況でございますが、これはあまり数が多くはないのですが、化学の大手16社の2007年度の学位別採用数で言いますと、修士が86%、博士が11%となっております。総合化学の大手3社では博士が20%を超えます。博士の採用は企業の大きさといいますか、やはり中堅企業になると、急激に博士卒の採用比率が下がるという傾向があります。これを解消していかないと、なかなか全体の博士卒の採用数は増えていかないのではないかなというふうに思っております。
 8ページ目に、これはセミナーで私が話している内容ですが、博士にはイノベーションを期待しているということを言っています。私が企業に入ったときはまだ技術導入時代でありまして、導入技術を勉強し身につければそれで済んだ時代でしたが、だんだん学生に期待が高まっているということを書いています。
 9ページ目は、それをより詳しく書いたものであります。この辺が博士に期待される人材像です。幅広い知識であるとか、ゼロから問題を設定できる能力、あるいはπ型人材といったようなことを書いています。
 最後に10ページ目ですが、これは昨年3月に、アメリカ化学会議で非常に博士セミナーと近いもの、ほとんど同じようなプログラムで「Preparing for Life After Graduate School」というセミナーをやっていました。アメリカの場合も博士がメインですが、「博士課程を卒業した後その準備ができていますか」という質問に対しては、企業のPh.Dケミストからは「一流大学だったけど、卒業についてのトレーニングが全く準備されていなかった」との意見がありました。また、ある企業の人の話では「最近のPh.Dコース卒は企業の研究がどんなものであるか、全くわかっていない」ともあり、そういう意味では、アメリカでも日本と状況は一緒であると思っています。
 アメリカでも、やはり2日間でPh.Dケミストのキャリアの説明、技術以外のスキルとナレッジ、人間力的なものの教育をしていますが、さらに親切に、就職先をどう見つけるかとか、模擬面接と履歴書の書き方、チェックまでしてくれるという、非常に手厚いワークショップになっています。
 あと、添付資料は、昨年度の実施報告を抜粋したもので、実際どんなプログラムでやっているのかはこれを見ていただければわかると思いますが、若手の企業の技術者、博士卒の技術者、経営トップの社長、会長、あるいは研究所長や中堅クラスといった、なるべく大勢の人にお話ししていただいており、学生がいろんな人の話を聞くことにより、大体会社でのキャリアパスはこういうふうになるんだなというのがわかるような工夫をしております。2日間のスケジュールというのは学生がきついようですので、本年度はまず1日に短縮して、それから東京、大阪だと地方の人がなかなか参加できないので、名古屋大学、九州大学と場所を変えまして、従来出席できなかった地域の方にもなるべく多く出席していただくということを考えております。 

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。それでは最後に、山下先生、中尾先生、よろしくお願いします。

【山下教授】
 東京大学の山下です。現在、化学システム工学専攻の専攻長を務めておりますが、我々の専攻では、大学教育改善への取り組みというのを今から6年前に始めまして、ようやく昨年度の4月から新カリキュラムで授業を行っているところであります。検討の間、5年間に渡りまして検討委員会の委員長を務めておられたのが中尾先生でありまして、この4月からは工学院大学のほうに移られましたが、今日は中尾委員長のほうからお話をしていただきたいと思っております。

【中尾教授】
 ご紹介いただきました中尾です。時間が限られておりますので、要点だけ説明させていただきます。資料の4-1は、このカリキュラム改革の報告会をやらせていただいたときのもので、中身がどうなったかということを大分書いていますが、今日は企業の要望をどのように教育に取り入れていくか、どのように企業とのコンタクトをつくるかというようなところに重点を置いてお話しさせていただきます。
 1枚めくっていただきまして、2ページ目ですが、なぜこういうことを始めたかというところですが、東大の化学システム工学専攻では、従来から学部ではいろいろカリキュラムを考えて、体系的にきちっとつくってきていたのですが、大学院の教育、特に修士の教育ですが、これは、私が学生であったころから全く変わっていませんで、基本的にはアカデミアに残る人を何となく育てていくということで、カリキュラムをきちんと考えたことは、私の知っている範囲では存在せず、各先生が勝手に自分の得意なところを話しているという状態でした。しかし、それではいけない、修士の人は大学の業界に少し残りますが、多くの方は企業に行きますので、やはり大学院で企業に就職する人の教育をしないといけないということで、そういう共通認識が教員の間でとれたわけですが、ほとんどの先生は産業界に籍を置いたことがないので、産業界がどういう人材を望んでいるかがわからないということが起こりました。
 それから、どういうふうにそういう人材を教育したらいいか、そこを理解するところから始めようということで、2004年にアクションをスタートしたわけです。どういうふうにしようかということで考えたんですが、とにかく産業界も我々も化学系ですので、化学系の企業の皆さんからいろいろご意見を承りたいということで、2004年の10月ですけれども、化学系の企業5社、その当時過去5年間ぐらいで卒業生がたくさん行っているところの上から5社ですけれども、その5社のトップのほうにいて、研究開発・技術開発を十分経験されてきた方5名の方にお願いいたしまして、アドバイザー的にいろいろ意見をいただくという機会をつくりました。それからもう一つは、各教員いろいろ講義しているわけなんですが、その講義の内容というのが、本当に卒業後産業界に役に立つだろうかというところを大規模にアンケートしまして、これは詳細を書いていませんが、学部から大学院修士までのすべての講義にかかる、学生に理解させるということで教えている基本的なキーワードを20くらい書いてもらいまして、それを企業のアドバイザーの先生方と比較整理し、学生に対しては、ちゃんと理解しているかということを聞きました。その結果は後ほどお話しします。それから、やはり産業界で大事なマネジメント系の技術教育をどういう内容でどう教育したらいいかというところは、先ほどの5社から参加していただいた5名の委員の方を中心に、その周辺の考えを言っていただくということで、アンケートを取りました。
 4ページ目はいろんな検討内容が書かれていますが、基本的にはどういう人材を修士卒として送り出すかということをきちんと決めましょうとか、そういうことすら無かったわけですが、それを社会に公表しました。それから、教育の中身を、我々縦軸・横軸と呼んでいるんですが、一つは専門力を強化し、アドバンスな学問体系を教育するということ、もう一つは、展開力、応用力というふうなところ、そういった2つの軸で教育していくカリキュラムをつくろうというふうに考えました。それから、プログラムを世の中の動きと合わせることも考えました。それから、体験・動機付け型、課題解決型教育の充実ということで、産業界に一定期間行きまして、企業の中で研究開発がどのように行われているかということを実際に体験するという、そういう講義をしてみようという大きな方向を作りました。
 次の5ページ目は、一応今、我々のホームページに書いてありますが、育成を目指す人材像ということで、当面はその人材像で教育をするというふうに考えています。
 もう一つ、次のページで表になっていますが、これが縦軸・横軸と言っているもので、まず専門力と応用・開発力というふうに書いてありますが、それぞれグレードを4グレードつけようということで、レベル1から4まで、ここに書いてあるような内容でレベル分けをしまして、現状をそれぞれ学士、修士、ドクターということで、現状の認識をしまして、それをそれぞれ1ステップずつ上げましょうということで、当面は1ステップずつ上げるということを目標にしました。
 その次の7ページ目がアンケートの結果ですが、5社にご協力いただきまして、大体70名ぐらいの方から回答をいただきました。それから、学内の学部の4年生と修士の1年生を対象にしました。どんなキーワードが出てくるかというのはたくさんあるので、ここはほんの一例ですけれども、こういうキーワードに対して学生がどのくらい理解しているかということを書いていただいたんですが、1枚めくっていただきますと、産業界の若手と学生とでは、キーワードの理解度に非常に大きな差があるということがわかりました。学生の理解度が高いワードというのは、先生たちがそういうところを一生懸命教えているからです。ただ、産業界に行って、数年たちますと、実は企業が大事とするワードは少し違うことだということがわかるようになります。これは我々も見ますと、確かにそうかというところも随分あって、これは全部表にして、講義担当教員にフィードバックしています。
 その次のページは、反対に学生がよく理解しているけれども、産業界にとっては余り意味がないというのがこの表です。これはただ点数を書いただけですが、11ページにありますのは、個別に産業界の方から自由にいろいろな意見を書いていただいたんですが、わかったのは、当然なんですけれども、大学で教えていることと企業に入って必要とすることにミスマッチがあるということについて、産業界の多くの方から指摘を受けました。
 それではということで、特に縦軸の専門力を深めるというのは、教育の得意とするところと考えていいのかなと基本的には思っているのですが、横軸系の応用・展開力をどういうふうに育成するかということで、これはいろんな方法があるのですが、12ページにありますが、例えば我々のところでは「中・短期就業体験」を重視しています。プラクティススクールとインターンシップ、これは一般に企業が公募しているインターンシップよりかなり密度が濃いんですが、この2つを重視しておりまして、それぞれについて詳細は資料4-2のほうに別に書かれたものがありますので、後ほど読んでいただければおわかりいただけるかと思います。
 それから、マネジメント系の講義について、ここが一番大学の教育でわからないところなんですが、先ほどの5人の委員の方、その周辺の方から、こういうものが大事ということをいろいろ挙げていただきました。しかもそれを、大学院修了後の進路、ここに4つ書いてありますが、それぞれどこへ向かうにはどういう要素の教育が必要かということを書いていただきまして、点数の多いものをマネジメント系のコースの中に取り込むということを行いました。また、新カリキュラムでの試みですが、当面修士論文の単位数を圧縮しています。それから、集中講義は廃止し、演習科目を充実しました。
 また、体験型の教育を拡大・充実するということで、学生に各コースがどういう位置づけになっているかということを理解させるということも非常に大事ですので、15ページのような表をつくりました。学問領域による分類というところが、どういう教育を最終的に選んだかというところです。我々の専攻では、反応系と材料系は専門的に掘り下げ、それから、応用・展開力のところでは、プロセスシステムデザイン、それからグローバルサステナビリティ、化学システムマネジメント領域、この辺を強化するということで、コースの位置づけをやりました。
 次のページは、学部からのカリキュラムの流れです。17ページ目は、どういう講義をとったらいいのか、選択科目の例をつくって、それを学生に示しています。新カリキュラムは20年度の4月からスタートしたんですが、昨年度は修士の必要単位数が、修士論文以外16単位だったのを、とりあえず20単位に上げました。この4月からは、修士論文の単位をゼロにしまして、必要な32単位は全部コースで取るというふうに変えました。同時に、博士の必要単位は18単位なんですが、とりあえず半分は講義で取るということで、ゼロだったものを9単位は講義で取るというふうに変えました。
 そんなに変えて学生はちゃんと講義を取るのかということなんですが、19ページ目は、昨年度の例ですが、履修状況をアンケートしまして、ここに書いてある講義を取っているかということで、一応学生は色々講義を受けないといけない、単位を取らなくていけないということは理解しているというふうに見ています。
 今後の課題ということで、最後に書いてありますが、産業界との連携をもう少し強化したいということと、体験型の学習は非常に効果を上げているんですが、その辺の産業界からの支援がないとこれ以上強化できないので、その辺をお願いしたいと考えています。それから最後は国際的なポイントになるんですが、ここは比較的長期の課題になります。

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。さまざまな視点からのプレゼンテーションがあったのですが、最初に続橋委員からは、外国人の雇用促進という観点、それからオープン・イノベーションという観点、それから最後に、日本で特殊な位置づけにあるIT人材育成について、教育サイドに対する要望を含めてコメントをいただきました。古市委員からは、卒業生に要求する資質の部分についてのコメントがありました。阿部委員からは、企業の中での具体的なキャリア活動の例について、大学院教育の今のシステムまで踏み込んだコメントがあったと思います。府川委員からは、具体的に日本化学会で行われている博士課程人材に対する取り組みの紹介があり、最後に中尾先生から大学サイドで行っている体験型教育のプレゼンがありました。今日は基本的にはいわゆる理系についての話がありました。次回以降に、実はもっと深刻な問題だと思っていますけれども、いわゆる文系についてのヒアリングを予定していると聞いていますので、今日は主として理系についての議論を深めていきたいというふうに思いますので、これからちょうどあと50分ぐらい時間がありますので、どんな視点からでも結構ですので、議論をしていきたいと思います。

【今榮委員】
 私は、化学専門ですので、今日のお話は非常に理解できました。2点だけコメントをさせていただきたいのは、一番最初のご発表で、留学生の待遇をもっと良くしてということがありますが、実はこれは日本人の学生の、特に博士課程の学生から見ると、留学生の待遇に比べて自分たちの待遇は非常に悪いという現場の声がありますので、日本人の学生がそういう考えで、自分たちは余り博士課程に行きたくないというような意見が出ないようにしていただきたいと思っております。それからもう一つは、修士の2年間について、最初の1年は十分に講義等々をやって、後の1年で就職するか進学するか考える機会をというようなご意見があったと思うんですが、現状は、実は最初の1年の後半時点で、もう就活が始まっている状況にあります。学生がゆっくり進路を考える以前に、進路を決めておかないと就活に乗りおくれるという現状ですので、そのあたりの解決策を企業側としては考えていただきたいと思います。

【有信部会長】
 ありがとうございました。就活の件については、経団連でもやっているとは思いますけれども、続橋委員の話で、今の修士課程についての話で重要だと思うのは、そもそも修士課程とは一体何なんだという話でありまして、修士課程を修了した人の大半が就職するにもかかわらず、修士課程の大学院教育がいまだに研究者育成という路線で行われていることについては、経団連としては非常に疑問があるということだと思います。中教審が以前出した答申の中でも、たしか修士課程についての議論があって、博士課程と修士課程については、明確に分けた議論をするという話になっていたと思います。その辺のところが、まだまだきちんと行われていないということだというふうに感じています。

【梶山委員】
 学生がなぜ大学院に行くかという原点に戻って考えなければいけないと思います。今日は、随分そういう話があったと思います。大学院に学生が行くのは、勉強するためであって、先生の研究の手伝いのためではないということです。私も大学で教員をしていましたけれども、その辺の意識が非常に欠けています。今日の東大の化学システム工学専攻の話は非常にすばらしいと思います。東大の取り組みには、学生側から見た教育というのがあると思うんです。これからの大学院教育で何が必要かというと、大学院の共通科目、昔の学部の教養教育と同じものをきちんとやるべきだと思います。例えば工学倫理や知財などの基礎を、きちんと教えるということが欠けています。本日の議論で、専門基礎の話が随分あったと思いますが、専門基礎とは一体何かというものも議論をしないといけないと思います。学校で教えているのはほとんど基礎だということでまとめられていますけれども、そうではなくて、必須かつ将来役に立つ科目は何かという視点で、議論をしないと、何でもかんでも教えてしまうことになります。そういう議論をやった後に、今度は大学院を修了するときに能力があるかないかという、あえて言うと専門基礎をきちんと理解できているか、基本学問を理解できているか、そのチェックをきちんとしないといけないと思います。例えば博士課程でも、学位論文を書いたとか、論文を何報発表したとかだけが博士号取得要件であってはいけないと思います。基礎をどれほど理解しているかという、資格試験をやらないと、博士号の質の保証のチェックになっていないと思います。自然科学の場合でしたら、基礎学問が何かということを決めて、それが理解できているかということをきちんとチェックして、社会に送りだすというシステムが、今の日本の大学にはほとんど無いと思います。例えば、大学院で基礎、共通教育をやるということや、大学院修了時のチェックをどういうふうにするかというのは、内容は大学に任せてもいいですが、制度としては、きちんと資格試験をやるとか、リサーチプロポーザルを義務付け、単位をとらせるとか、これらのことを大学院制度として確立すべきと思います。創造性がある学生は、企業でなくても大学でも欲しいので、そのような学生を生み出す人材育成制度を議論しないと、いつまでたっても同じことばかり話し合っているような状況になります。そのためにも、博士号のための資格制度というのを日本で早く確立すべきだと思います。

【有信部会長】
 ありがとうございました。

【河田委員】
 私自身は文系ですが、わが関西大学の工学部は、今までは1学年1,015人の大きな一つの工学部でありましたが、平成19年4月からシステム理工学部、環境都市工学部、化学生命工学部の3つの学部に分け、拡充いたしました。現在1学年、3つの学部で1,065人の学生がいます。いわゆる修士課程には約3分の1、毎年350名余りが進学します。が、博士課程に行くのは、正確な数字は忘れましたが、多分20数名です。修士を終えますと多くは、企業に就職します。あとの残りは、恐らくこれは多くの大手の私立大学がそうなんですが、国立大学の博士課程に行きます。良い学生は国立のほうが奨学金も豊かですし、就職の場合も、我々の大学院の博士課程に行って博士号を取るよりも、国立大学に行って取る方がいいと考えています。理工系を持っている多くの私立大学は、マスターまで育てた後は学生を国立にやったほうが学生にとっては有利かなとは思っているんですが、しかしながら、自分の大学としてもきちんとドクターを養成しなければいけない、そういう実情であります。それから、もう一つは、今日お話しいただいて非常に私にとっては参考になりました。例えば、古市委員の製薬会社のご報告に出てくる条件は、これはまさに企業のトップに必要となる条件であり、あるいは学長にふさわしいような人物としての条件であります。それから、東京大学大学院化学システム工学専攻の取り組みも、理工系すべてに取り上げられる課題が出てきているのではないかというふうに思います。阿部委員の独創的な研究業績を上げる研究者の共通点5つというのも、恐らく企業のトップであったり、大学で学長であったりするには必要な条件だと思います。ここに列挙されているものは、分野は違いますが、理工系、あるいは文系の大学院教育にも使えると思います。これをまた、共通のものとして取り組んでいけば、今日のご発表一つ一つが有意義に結びついていくのではないか、と思いながら聞かせていただきました。

【有信部会長】
 ありがとうございました。

【菅委員】
 まず、4つほど、コメント及び質問がありますので、順次、皆さんからお答えしていただければ幸いです。まず、最初の留学生に関することですが、結局留学生が日本に定着しないと、なかなか日本人の国際化というのが生まれないということもありますので、これもいろんな委員会で申しているんですが、ぜひ経団連側からもう少し、大学が留学生に日本語教育をしてほしいということを発信していただけたらと思います。特に、いわゆる生活に必要な日本語だけではなくて、専門用語に関する日本語、留学生が将来日本企業で働いて活躍できるような日本語教育について、そういうところを強調するような形で発信していただけたらと思うのですが、それについてコメントをいただければと思います。 それから、古市委員の資料ですけれども、これはそのまま学生に渡してもいいかなと思っています。実を言いますと、これは企業のニーズとして非常にすばらしいことが書いてありまして、これは、そのまま「企業」を「アカデミア」にかえても良いと思っています。結局求めている優れた人材というのは、企業とアカデミックでは同じであるということが、恐らく共通意見ではないかと思います。そういう意味でも、是非これは重要なコメントでありますので、いろいろなところで発信していただければと思います。それから、東大の化学システム工学専攻については、実は私はすぐそばにおりますので、感動いたしました。こんなにすばらしい変革をされているとは、私自身存じておりませんでした。これも修士向けにほぼ標的を絞ってやっていらっしゃるんですが、企業に行けるようにということで、その結果として博士課程に行く学生も最終的には今後ふえるかもしれない、もしくはそういう感触を持っていらっしゃるかどうかというのも、知っていたら教えてください。最後ですけれども、これも同じようにいろんな委員会で申しているのですが、博士のキャリアパスについて、私は自分のところで博士に行っている学生には、かなりの経済的支援を出しております。ですが、なかなか私の修士の学生も博士課程には進まない状況です。それはなぜかと言いますと、基本的に博士に行くことについて、キャリアパスが見えないんです。要するに、博士に行ってその後企業に行く、あるいはアカデミックに行くという、その先のキャリアパスが非常に不明瞭で、それゆえに博士課程に行くメリットが見えないというのが現実です。したがって、博士課程の学生をふやすというのは、一つの我々の今後の課題ではあると思うんですけれども、そのときに、まずは経済的支援というのが非常に重要であろうと思いますし、その後に博士課程の学生がキャリアパスをイメージできるような何か方策を、今後行政側で練っていかなくてはいけないのではないかというふうに考えております。

【有信部会長】
 ありがとうございました。

【続橋委員】
 今のご質問で、日本語教育の件ですけれども、資料2-1-1の18ページ目の一番上のほうに、日本語や日本文化に関する教育の充実という項目があります。要は、結局留学生を日本人と区別して採用しているわけではないので、人物本位ではあるんですけども、やはりある程度実際に会社に入ると、日本語が全然で英語だけでやれるかというと、そういうわけではないので、ある程度日本語教育は充実してほしいということをここで言っております。今日は出していないんですけれども、実は産業技術委員会の産学官連携部会というところで、今年の3月に留学生に関する報告というのを出して、これは経団連のホームページにも入れていますけれども、そこではもっと明確に、そもそも留学生は日本に関心があるから来たのではないか、日本の文化なり言葉なりに関心があるから来たのではないかということを書いています。留学生が、例えば英語だけで大学を卒業できるというのも、それはそれでいいんだけれども、そうではなくて、ある程度日本語を磨いて、さらに日本に定住するのであれば日本語を使って実際に企業で活躍していくということで、日本人には英語が必要なんですけれども、逆に留学生にとっては日本語教育がキーであるということを言っております。それと、今の質問の前にご質問があった、留学生ばかりに奨学金を手厚くやっているということなんですけれども、実は2年前にドクターに対する提言というのをまとめまして、そのときはやはり日本人のドクターにいろいろ問題があるにしても、金銭的な面で特に奨学金は手厚くしなくてはいけないというのが、基本にあります。ですから、あくまでもドクターまで行く人は、日本人で当然奨学金を手厚くしようという状況の中で、今はフォーカスを絞って留学生ということをやっていますんで、留学生の6割ぐらいは中国人ですし、中・韓・台湾を入れると8割以上になりますんで、日本より彼らは経済的には厳しいですので、そういった方にはより奨学金を手厚くするというような感じで言っております。

【中尾教授】
 この新カリキュラムは昨年の4月から始めたところですから、まだ博士の修了者は出しておりませんけども、我々の専攻では、従来からできるだけ早く修士の方に企業を見せるという、囲い込みではなくて、実際に企業に行って研究をやるという理念の下で、プラクティススクールという取り組みをやっていました。そうしますと、学生は、実は企業に行って自分自身に自信を持てた、なぜ自信を持ったかというと、大学でやっているようなことが役に立ち、企業の問題に対して何らかの解決策を与えることができると、非常に自信を持って帰ってきました。そういう学生は、その企業に行くのではなくて、今度は自信を持って、どこかのドクターに進学していきます。そういうことで、各スクールに行った学生の博士の進学率というのは非常に高いと言えると思います。

【有信部会長】
 ありがとうございました。

【小杉委員】
 私は、労働市場という観点から見ているので、企業の方に3つ質問をさせていただきます。博士課程の採用の場合、研究者としての採用も可とおっしゃられていましたが、今採用したときに、需要を満たすだけの十分な供給量があるのでしょうかというのが1つ目です。2つ目は、博士課程に対して、企業研究者以外の活用についてのニーズはあるのでしょうか。最後に3つ目は、採用に当たって、年齢という条件はどのぐらい考えられますか。例えば40歳で初めて卒業するというタイプの人たちは採用の対象になりますか。あるいは実際にかなり高齢の方を採用したことがありますか。

【有信部会長】
 最後の質問に関して言うと、一つはいわゆる中途採用というのがあって、この前、どこかの新聞に細かく公表されていましたけれども、たしか三菱重工では数百人というような規模を対象にしています。ただ、それが中途採用ということで、ある程度の経験を持った人を採用するということなので、今問題になっているのは、PDが、経験を持った人として評価されるかどうかというところなんです。現実には、中途で採用する割合は相当ふえています。

【小杉委員】
 いわゆる中途採用というと、他でキャリアがあって、そのキャリアが評価されてのキャリア採用をイメージしますが、そうではなくて、大学院で勉強するとか、企業で就業したことがないタイプの人たちを採用するかどうかということを聞いています。

【有信部会長】
 それは、会社によって違うと思いますけれども、そのときの条件の問題だと思います。ですから、大学に長くいた人を、例えば私たちの会社の例で言うと、基本的には採用しますけれども、そのときには大学院にいた経験をどういうふうに見るかということで、この辺は非常に難しいところです。企業の人事制度というのは、基本的には大学の学部を何年に卒業したかということに換算して全体を見るので、高校卒だとマイナス4年、短大卒だとマイナス2年、逆にドクターコースを普通に出てきた人は、通常で言えばプラス5年になりますので、一番いい条件の位置に格付けはされます。ただ、これが例えば8年かかって出た人が一番いい条件でプラス8年に格付けされるかどうかというと、その保証はありません。ただし、経験がない部分がマイナス評価をされる可能性はあると思います。それはその後企業に入った後の活躍次第という気がします。ただ、そういう部分について、入口が現実的に言うと狭くなっているのは確実だと思います。外で経験した人と、大学にずっといた人と、採用面接を受けるときには同等に受け付けますが、面接のときの印象は多分違うのではないかと思います。

【阿部委員】
 博士の供給が十分かということに関しては、十分だと思います。ですから、我々も求人募集し、選ぶということになります。それから、ずっと大学におられて、年齢がだいぶ上になられた方で、これはものすごくレアなケースですけれども、採用がないことはないという感じです。研究でもマネジメントを行って所長になるようなタイプと、研究専門職として、その専門性で給料をもらうという2タイプがあると思います。6年前に先端融合研究所という、新しい研究所を設立しましたが、大学の先生をされていたような方々を、多く採用させて頂いています。

【有信部会長】
 ありがとうございました。

【中西副部会長】
 大学院教育と企業ニーズということで、大学院の学生を、例えばインターンシップに送り、どう教育するかということに取り組まれていると伺いました。しかしそれに加えて教員と企業の研究者との間の交流ももっと深めるべきだと思います。そのためには両者の間の溝を低くすることが必要だと思います。今は企業からかなり大学に研究者が来ている状況ですが、大学の教員も積極的に企業に出かけていくという交流がないと、根本的な情報のすり合わせが難しいのではないかと思います。企業におられる研究者の中には、分野によっては大学より優れた方もおられると思いますから、そういう人たちのノウハウを、教育の面でもっと活用するべきかと思います。この交流の大きな障壁は環境原因と思われます。以前、科学雑誌に書いてあったと思うのですが、大学の人が一度どこかに出て戻ってくると、年金や退職金がかなり違ってくるということを計算していた人がおられました。これはつまらないことかもしれないのですが、仕組みをきちんと整えて、もっと人の行き来が簡単にできるようにすることが必要ではないかと思います。

【有信部会長】
 ありがとうございました。日本の賃金体系は、年功序列もくずれてきてはいますが、今のような話をもう少し統計的に詰めていけば、何かいい方向性を見出せるかもしれないと思います。

【木村委員】
 府川委員の資料の7ページに、化学系5社に関してのアンケート結果が掲載されていますが、博士の採用割合が11%と出ております。ほかの専門分野と比較してみると、相当高い割合だと思うのですが、11%が博士課程修了者で、学部卒がほとんどいないので、あとは修士修了者ということだと思いますが、これがもし米国のように博士課程が3年制になったら、化学系の会社の採用はどうなりますでしょうか。

【府川顧問】
 3年だったら、みんな博士卒を採ると思います。

【木村委員】
 私もそう思います。やはり5年という期間の長さが大きなネックになっているのではないでしょうか。今の博士課程が3年間の単一システムになったら随分違うと思います。英国を見ていると、博士課程修了者を雇入れすることに対して社会的にほとんど抵抗がない。賃金体系についても、一度企業を辞めて、大学に行ってドクターを取って再び企業に帰ったとしても、賃金が変わらないどころか、むしろ上がる社会になっている。英国の場合は3年ですから、リサーチスチューデントとして戻ってくることについても、それほど抵抗がないようです。日本では理論的には3年で博士号を取れるのですが、やはり5年が圧倒的に多いので、そのような状況がこの採用の数字に出ているような気がするのですが、山下先生はどうお考えですか。

【山下教授】
 確かに、3年の単一システムですと、ストレートで大学院に入ったときに、学生はドクターに行くと決めているわけですので、学生にとっても良いし、教員にとっても教育しやすいです。

【菅委員】
 私も同じような考えを持っているのですが、博士が3年では少し短いかなというのが、実際に教育する場の人間にとってはあります。今は修士の後にドクターがあるという形ではなくて、やはり修士コースとドクターコースというのが並列であります。ドクターは例えば4年、修士は2年というような形で改革ができるのであれば、その制度で博士に行った学生たちにはできるだけ経済支援を出すというような形にして、ドクターをインセンティブあり、キャリアパスに魅力ありという形をつくっていけるならば、大学院の学生にとって非常に魅力的であると思います。

【木村委員】
 確かに菅委員のおっしゃることもわかりますが、ターゲットの置き方の問題ではないでしょうか。分野にもよるのですが、英国では特に応用系の分野では、ストレートでリサーチステューデントになる学生はほとんどいません。企業に勤めてから入ってくる学生は非常にインセンティブを持ってくるので、3年だと短期間に集中的にやれるということで、そういう構造にすれば日本も相当変わるのではないかなと思っています。

【有信部会長】
 一つ非常に重要な部分だと思います。中教審の答申の中で、基本的には博士課程の中で修士論文を省略してもいい、また、修士課程と博士課程とそれぞれ並列で論じられているということもあって、今言われたようなことは多分やれるような気もしますが、やれないとすればどこに問題があるかということをチェックしたほうがいいと思います。以前、グローバルCOEや21世紀COEのプロジェクトにかかわっていて、ドクターコースの学生をどうすれば企業で採用できるのか、企業の人たちと集まって話をしたことがあるのですが、木村委員が言われたように、3年で修了するのであれば採るという企業はいっぱいあります。今ほとんどドクターを採っていない企業でも、3年で大学を出てくれれば良いと言っています。一番問題なのは、学部を卒業してから5年もかかってこられても困るということです。特に、今まで新卒中心の採用形態をずっと守っている企業はそういう感覚なんです。それからもう一つ、今言われたように、途中で企業から派遣してドクターを取らせるのに、やはり5年も会社からいなくなってもらっては困るというところがあります。ですから、そういうことも考えれば、今言ったようなことはもう少し良く考える必要があるような気がします。

【木村委員】
 その場合に、大学のカリキュラムや講義の仕方も徹底的に考え直す必要があると思います。今のままで3年にするというのではうまくいかないと思います。特に、リサーチステューデントの1年時は徹底的にコースワークをやるとか、そういうような改革は絶対に必要です。

【有信部会長】
 ありがとうございました。

【山下教授】
 修士を3年にするという案がありましたが、修士を3年にするのは少し勘弁してほしいなと思います。博士を取得して3年で卒業できる方が良いかと思います。企業もやはり、なるべく若い段階で企業に来ていただきたいという気持ちがありますので、1年でも2年でも若く、博士の学位を取れるということになれば、非常にウエルカムだと思っています。

【有信部会長】
 ありがとうございます。阿部委員のプレゼンにあった修士3年の意図は何でしょうか。

【阿部委員】
 私がここで申し上げたかったのは、しっかり学生に教育してほしいということであり、修士3年というのは一例として出させていただいたものです。今のお話を聞いていると、やはり学部3年プラス3年というのも非常にいいアイデアだと思います。そうすると、もう基本的に教育のカリキュラム全体を変えないと、おそらくはできないと思います。非常に効果的なドライビングフォースになるように思います。

【有信部会長】
 ありがとうございます。

【荻上委員】
 今は、企業では基本的には新卒を採用するというのがベースだと思いますが、それをむしろ逆にして、企業が必要なときに大学院に人材を派遣することを基本にするというふうに発想を転換することは難しいのでしょうか。そうなれば、大学院のあり方もおのずから変わってくると思います。どうしてもやはり日本は年齢主義が基本になっていますから、ストレートで来た人がベースということはなかなか変わらないように思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

【有信部会長】
 これは続橋委員に聞きたいのですが、以前私たちの会社で議論をして、基本的に採用は、中途採用を主として新卒採用を従とするというやり方に変えようということで、走り出したことがあります。それが今どうなっているのかはわかりませんが、人事サイドはもう先を見ながらそういうことに手を打っています。また、それに合わせて、ここも非常に難しいのですが、年功序列の賃金体系についても見直そうとしています。これは評価体系と表裏一体になっていて、日本の企業というのは人材育成という観点で人事制度を持っていますので、一度それをいじると育成がぶつ切りになってしまい、いわゆる成果主義の弊害等と言われている問題もあり、一朝一夕にはいかず、少し時間はかかるかもしれませんが、企業サイドはそういう感覚に変わりつつあるという印象を受けています。

【続橋委員】
 正直言って、私のところでは余りそこは検討していないんですけれども、議論をしたときにそういう話は出ます。やはり世の中の流れからすると、企業に入っても、必要に応じて大学院に戻って教育を受けるというのは、これから増えてくると思います。ただ、実態がどうなっているのかは分からないのですが、企業のほうから大学に行って必要な教育を受けようと思っても、社会人コースがあることはあるのですが、なかなか企業の思ったようなコースが十分にあるわけではないという話は聞いたことがあります。ただ、それが具体的に、何がどう違うのかというところまでは、少し把握しておりません。

【有信部会長】
 ありがとうございました。

【荻上委員】
 東大大学院で大きな改革をやられた中で、今言われたような、企業から必要なときに大学院に派遣されるような学生を受け入れやすいような体制は整えられていますか。

【山下教授】
 理工系のほうでは、社会人ドクターというシステムがありますので、そういう中で門戸を開いているところです。

【有信部会長】
 そこが実は問題なんだと思います。つまり社会人コースということで、一般の学生と区別をしたコースをつくって、特別な教育をやっていますが、区別無く、インセンティブの条件も全く同じように扱うということにならないと駄目だと思います。

【中尾教授】
 社会人コースはもちろんありますが、いわゆる社会人ドクターとして全く同じ課程に入れるというのはあります。工学系の全部の専攻がやっているわけではないですが、例えば我々のところでは、企業の方々には、海外に出さないで我々のところに出してくださいといろいろ頼んできましたが、3、4人くらいは来ましたが、あとはほとんど来ません。我々は博士後期で3年間というノルマを課しているので、企業側は3年間も会社を休ませられないということです。2年ぐらいにすればもう少し来るというのはあると思います。

【有信部会長】
 この前出ていた意見で言うと、例えば中小企業でドクターコースに派遣してドクターを取らせたいけれども、虎の子の優秀な人材を派遣するにもかかわらず、社会人コースだと奨学金は出ない、授業料免除の制度を受けられない、こういう状況になっていて、これは大変なわけです。そういうことが無いようになっていかないといけないと思います。

【堀井委員】
 今、東京大学の工学研究科にある大学院教育問題検討委員会というところでは、今の社会人博士の問題を検討していまして、改革の方向としては、今おっしゃられたとおり、正規の博士課程に社会人が在籍するのが当たり前というような方向を目指すべきであろうとなっています。例えば週に1回しか大学に来ないで博士が取れるというようなことは、やはり不適切ではないかと思います。ですから、期間短縮の制度があるので、少し期間は短縮するけれども、博士課程ではフルタイム在籍する、そういう社会人の博士の形態を増やしていくことが、今後の博士課程の一つの方向性ではないかと思います。

【有信部会長】
 ありがとうございます。

【五神委員】
 続橋委員にお聞きしたいんですけれども、先ほど、大企業の理工系採用は70%が修士卒いうことでしたが、その70%というのは大体何人くらいの数になるんでしょうか。

【続橋委員】
 今、全体の数字は覚えていないんですけど、3年前に我々の提言をまとめたときに、経団連の会員企業の主だったところを対象にしてアンケートをして、採用についての状況を調べたところ、70社ぐらいの大企業からの回答があり、そこの理工系採用の全体を100とすると、そのうちの70%が修士卒、あと二十数%が学部卒、残り数%がドクターやその他という状況でした。ですので、70%と言った意味は、経団連を代表するような大企業の理工系の新卒採用人数の中で、7割が修士課程卒という意味です。

【五神委員】
 その7割というのは、何万人なのかという全体の規模感をお聞きしたかったんです。例えば、理工系バチェラーが19万人ぐらいいると、そのうちマスターに行く理工系は5.3万人という数字だと思います。つまり、日本人の18歳人口130万人があって、その人たちを理工系人材としてどういう形で養成していって、どういう形で産業力に資するような形の人材にしようかという話の中で、例えば理工系が19万人いるというベースの中で、その人たちのどれくらいを、どういう高度人材として、どういう教育を何年間でやるのかという、大学院を教育という視点を盛り込んで設計、改革をしていかなければいけないときに、全体の規模感というのを知っておく必要があります。19万人の理工系バチェラー全員が修士に行くわけではなく、またそのうちの大半がドクターに入るというわけではない中で、きちんとした設計をするためには、規模感が必要になるということです。

【有信部会長】
 例えば、経団連傘下の企業の理工系採用の総数が書いてあると思います。これは調べればわかる話で、そういう意味では、しっかりとした設計のベースにはなると思います。ただ、もう一つの議論は、要するに単純に今までのように修士課程の延長に博士課程があるという設計も合わせて見直さなければいけないと思います。

【五神委員】
 博士課程は1.3万人ですけれども、東京大学はそのうちの10%という規模感を持ちながらやっています。修士については、19万人のバチェラーから5.3万人が修士に進学する中で、何を身につけさせるべきか教育内容をきちんとニーズをとらえて、正しい設計に持っていく必要があるだろうと思います。

【山田委員】
 少し違う視点ですが、グローバル化の中での理工系の方々のプレゼンスは非常に大きいと思います。日本の英語教育ということに焦点を当てると、なかなか問題と課題が多いところなんですけれども、理工系、これは医学部も含めて、一般的に企業に入った方々でも英語でプレゼンテーションする機会も普通より多いと思いますし、また、研究開発型の方々ですと、学会などいろんなところで発表される機会というのは、人社関係よりも多いはずです。そういうときに、いろいろ理工系の先生方にお聞きするんですけれども、大学院や大学において、英語教育というのは非常に先生方が個別で苦労されて、教えていらっしゃるということがあり、京大などは理工系そのものの教育制度に結構独特なものがあるかと思うんですけれども、その理工系の英語教育を、体系的に大学院や大学の中での英語教育として共通的にできれば、かなりコストは下がり、レベルは上がるのではないかなと思っています。そのあたり実態がわからないので、教えていただければと思います。

【堀井委員】
 私どものところで言えば、語学教育推進機構というものをつくって、学部からですが、英語教育にはかなり力を入れてやっております。全てを自前でできないこともあるので、企業として英語教育しているところの協力を、うまくアレンジして、非常に効率的に英語教育を行っております。

【有信部会長】
 東大は、条件がいいから余り参考にならないかもしれませんけど、ほかの大学で何かコメントはありますか。

【梶山委員】
 私は、化学ですけれども、私自身がテキストを自分でつくって、「化学英語」というものを教えました。そうしたら、卒業から5年ぐらいたった卒業生にたまたま出会って、一番役に立ったのが大学で習った化学英語だったということでした。化学英語は、3年生と4年生で教えました。化学の専門の単語や文法、論文の書き方を教えましたが、企業に行ったら非常に役に立つというんです。時間的には、週に2時間とたいしたことはないんですけど、専門英語は高学年で教えるよりも、もっと低学年でコースをつくるべきだと思います。多分各大学は結構この様な授業をやっておられると思いますが、先生がどれほど熱意を持ってやるかというのが重要であって、きちんと教えたから成功するのではないと思います。その辺はやはり先生たちの熱意と資質にかかわってくると思います。

【有信部会長】
 ありがとうございました。社会科学に比べると、技術系のほうは多分英語の能力もそれほど高度でなくて済むというところはあると思います。

【堀井委員】
 中尾先生、山下先生のお話を伺って、同じ大学の話なので、薄々いろいろいいことをやっておられることは知ってはいたんですけども、ちゃんと話を聞いたのは、実は今日が初めてでありました。そこで、やはり情報交換の不足というのが結構あるのかなと思いました。もう少し「見える化」を進めて、大学としてもどんな努力をしているのかというところが伝わるということが大事なのかなと思います。企業と大学との間で、大分誤解もあり、理解不足に基づく不毛な対立的な議論というのもあったような気がするんですけれども、もう少し情報交換をしないといけない、そういう意味では、本日の会議は非常にいい機会だったと思います。企業の方の話は、大体よく聞かせていただいていた話でしたが、一番そばにいた化学システム工学専攻の話は全然知らなかったということは、やはり大学の情報発信不足ということを現しているのかなと感じました。大学改革推進のための施策というのを考えたときに、情報交換をもう少し進めて、見える化がどんどん加速するということが、かなりパフォーマンス的にいい施策なのではないかなというふうに、今日は感じました。

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。そろそろ時間になりましたので、議論の内容も良くなってきていたような感じなんですが、次回以降、さらにお話を聞いた上で、今後これをまとめていく方向の予定としております。本日は、どうも貴重なご意見ありがとうございました。それでは、最後に事務局からお願いします。

【今泉室長】
 それでは、次回の大学院部会の日程について申し上げます。次回は、5月18日月曜日、13時から15時までを予定しています。場所は金融庁13階共用第1特別会議室を予定しています。部会長からご紹介がありましたとおり、次回は、人文社会系あたりを中心に、またヒアリングを行って議論をしていきます。

【有信部会長】
 本日はどうもありがとうございました。

お問合せ先

高等教育局大学振興課大学改革推進室

大学院係
電話番号:03-5253-4111(内線3312)

-- 登録:平成22年07月 --