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大学院部会(第48回) 議事録

1.日時

平成21年11月18日(水曜日) 12時30分~14時30分

2.場所

文部科学省 3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 「新時代の大学院教育」(答申)の検証について
  2. 分野別ワーキンググループの審議状況について
  3. 大学院教育を取り巻く諸課題について
  4. その他

4.出席者

委員

(委員)金子元久、郷通子の各委員
(臨時委員)有信睦弘(部会長)、今榮東洋子、河田悌一、木村孟、小杉礼子、中西友子(副部会長)、佐々木正峰、丸本卓哉の各臨時委員
(専門委員)梶山千里、桐野髙明、五神真、続橋聡、中西茂、古市喜義、堀井秀之の各専門委員

文部科学省

河村私学部長、土屋総括審議官、辰野政策評価審議官、小松高等教育局審議官、藤原大学振興課長、澤川専門教育課長、中岡科学技術・学術政策局政策課長、榎本高等教育政策室長、今泉大学改革推進室長、浅野専門職大学院室長、神田専門教育課企画官 他

5.議事録

【有信部会長】
 所定の時刻を過ぎましたので、第5期中央教育審議会第48回大学院部会を開催したいと思います。
  本日はご多忙の中、ご出席いただきまして、ありがとうございます。
  本日は、分野別ワーキンググループにおいて実施している大学院教育に関する検証作業の状況及び審議状況の報告、それと大学院教育を取り巻く諸課題についての協議を行うということになっておりますので、よろしくお願いします。
  まず、事務局から資料の確認をお願いします。

 【今泉大学改革推進室長】
 それでは皆様、お手元にございます議事次第をごらんください。議事次第の4に配付資料一覧がございます。それと照らし合わせながらご確認いただきたいと思います。
  資料1-1といたしまして、6月23日の議事録、資料1-2といたしまして、7月10日の議事録、資料1-3といたしまして、7月31日の議事録がございます。
  資料2-1といたしまして、分野別ワーキングの進め方及びスケジュールについて、資料2-2といたしまして、大学院答申の検証方法について、資料2-3といたしまして、大学院答申の検証への協力依頼について。
  資料3-1といたしまして、理工農系ワーキンググループの審議状況について、資料3-2といたしまして、人社系ワーキンググループの審議状況について、資料3-3といたしまして、医療系ワーキンググループの審議状況について、資料3-4といたしまして、専門職学位課程ワーキンググループの審議状況について。
  資料4-1といたしまして、修士課程・博士課程の関係について、資料4-2といたしまして、社会人等の円滑な博士号取得について、資料4-3といたしまして、大学院の評価の確立による質の確保について。
  参考資料1といたしまして、大学院教育振興施策要網に沿った具体的な取組施策、参考資料2といたしまして、大学院の現状についてということで、これは各ワーキンググループに提出した分野別、課程別の状況についての資料でございます。参考資料3といたしまして、専門職大学院の現状についての資料でございます。
  最後に机上配付といたしまして、平成17年の大学院答申と大学院振興施策要綱、そして8月26日に出されました大学分科会の第2次報告がございます。
  以上、不足等はございませんでしょうか。よろしくお願いします。

 【有信部会長】
 はい。どうもありがとうございました。
  それでは議題(1)の「新時代の大学院教育」の検証について、事務局より報告をお願いします。

 【今泉大学改革推進室長】
 それでは、大学院答申の検証について報告いたします。資料2-1をごらんください。
 8月26日に大学分科会から第2次報告が出されております。その第2次報告の中に、大学院の課程、分野別の検証に当たっては、分野ごとのワーキンググループを設けて検証する旨の記載がございます。それを踏まえて9月から10月にかけて、各ワーキンググループがスタートしております。ワーキンググループは、人社系ワーキンググループ、理工農系ワーキンググループ、医療系ワーキンググループと専門職学位課程ワーキンググループの4つのワーキングが既に議論を進めているところでございます。
 ワーキンググループの審議事項といたしましては、大学院に関する諸課題について、課程別、分野別の専門的な調査審議を行う。それによって課程別、学問分野別の人材育成目標とか、教育課程、教育方法の在り方、規模の在り方、キャリアパスの在り方等についてご議論いただくこととなっております。
 このうち、人材育成目標、教育課程につきましては、特に分野ごとに数件の事例を抽出して、その中でアンケート調査等を行いまして、大学院教育の改革の進捗状況について分析していくというような形で考えているところでございます。
 規模、キャリアパスに関しましては、その現状に関するデータをまず整理いたしまして、我が国の大学院教育に係る各学問分野別の現状を整理するとともに、国際的な比較に基づいて、我が国の現状がどうかということも明らかにしていくことを検討しているところでございます。
 具体的には資料2-2をごらんください。資料2-1を踏まえて、資料2-2において、ここでは具体的に検証の方法について書いてあります。
 1ポツ(1)のところでございますけれども、まず書面による検証というのを行ってまいりたいと思います。人社系ワーキンググループにおきましては、文学、史学、言語学、この分野で10ぐらいの学問分野を抽出しております。理工農系ワーキンググループにおいては、物理学、応用化学等、これも10分野ぐらいの専攻分野を抽出しております。医療系ワーキンググループにつきましては、医学、歯学、薬学、看護の4分野について、各専攻を抽出しております。
 この各学問分野別、例えば文学で13専攻から15専攻ぐらい、史学で13専攻から15専攻ぐらい、それぞれ分野ごとに13から15ぐらいの専攻を抽出していくこととしております。
 これら13から15ぐらいの専攻については、国公私別、規模別・地域別に配慮いたしまして、括弧書きに書いてあるような分類で抽出していくことを考えております。また、博士課程を置く大学院だけではなくて、修士課程のみを置く大学院も抽出しようと考えております。これによりますと、320専攻程度を抽出することになります。これは我が国の全専攻が4、000ぐらいありますので、その8%ぐらいを捕捉する形になります。
 これによって抽出された専攻に対して、後ほどご説明いたします資料2-3にあります調査を依頼いたしまして、その調査をご記入いただくこととしております。ご記入いただいた調査について集計した後、各ワーキンググループの委員の方々に、それぞれ専門のご担当がございますので、そのご担当を決めて分析をしていただく。その分析していただいた内容について、ワーキングの場面で議論していくという形で考えているところでございます。
 またさらに、そのヒアリング等による検証も行ってまいりたいと考えております。
 スケジュール感といたしましては、その調査票については既に10月29日に抽出した各専攻に発出しております。調査票の回収は明日、11月19日締め切りにしております。その後、集計作業に入りたいと思います。12月中下旬ぐらいにその集計結果をワーキンググループに報告して、委員による分析をそこから始めていただきたいと考えています。1月中下旬には、委員によるその分析結果をワーキンググループに報告していただいて、その後、検証結果に基づいた審議を行っていくというスケジュール感で考えております。
 資料2-3をごらんください。これがただいま申しました、書面による検証の調査票の様式でございます。これについて詳細には申し上げませんが、平成17年の中央教育審議会の答申、「新時代の大学院教育」、この記載事項の中で各大学において行うべき事項を抽出いたしまして、その抽出した事項についてどれぐらい各専攻において取り組みが進んでいるのか、そういう調査をしているものでございます。
 検証方法については以上でございます。

 【有信部会長】 
 どうもありがとうございました。
 それでは続きまして、議題(2)の分野別ワーキンググループの審議状況について、各ワーキンググループの座長の方々から報告をお願いしたいと思います。
 最初に、私が理工農系ワーキンググループの座長で、私から理工農系の審議状況についてご報告申し上げたいと思います。
 資料3-1をご覧ください。議論されているということを、箇条書きにしてあります。
 最初に大学院教育の実質化についてということで、最初の2つは修士課程と博士課程で、具体的に目標、教育内容等について、あるいは育成の議論を分けるべきではないかという議論をしています。
 それから、企業が求める人材と、アカデミアの中で活躍する場合で、教育内容に差があるのではないか。あるいは学位の授与要件についての議論。
 それから、学位そのものが、単純に研究の成果としての学位ということではなくて、一人前の研究者・教員として自立して研究、教育を進めていくことができる能力が身に付いたかどうかということを見なければいけないという議論も行われています。
 特に日本の中で博士号取得者が活躍できないのは、専門性の高い研究はできるが、分野的な広がりを持った研究ができない、あるいはチームワーク等の問題があるということで、結果的に言うと、ここではPh.D.というのは研究論文が書ければいいわけではなくて、やはり学位を出す要件を少し考えたほうがいいのではないかという議論が行われています。
 特に工学系では社会人コースの活用が増えていることもあって、社会人の割合が増えていて、これが論文博士の代替になっているようなところもあります。ただ、社会人コースを別枠でやっていては、学位そのものの質に問題があるかもしれないということで、できるだけ一体として運営をしていくべきではないかという議論もされています。
 次のページをご覧ください。学生の支援については、特にバイオ系について、ポスドクの数は多いにもかかわらず、受け入れ企業が少ないので、ポスドクが問題になっていることと、特に理系では大学院には普通に行っている中でも、やりたいテーマの研究室に進めない等の具体的な問題もあるということで、これをどうやっていくかということについても検討されています。
 それから個別の話題と具体的な課題も挙げられていますし、特に留学生の就職では日本の大学では不十分だが出身国の出身大学ではきめ細かく対応してくれること、日本では修了者の進路が捕捉されていない等の話もあります。
 大学院の適正な規模についてはその下に書いてありますように、アメリカでは外部資金の獲得を前提として学生の受け入れキャパシティが決まるので、規模というのは必然的に決まってくるところがあるけれども、日本の場合はどういう形で規模の在り方を検討していくかということを、よく検討しなければいけない。それから18歳人口をよりどころにし過ぎているのではないかという議論からむしろ年齢層を拡張すべきではないかということ等です。
 工学系の場合は修士での就職率が高いために、本来ドクターに行ってほしい人がドクターに行ってくれないという問題がある。
 社会人ドクターが急速に増えていて、平均では3割、工学分野でも3割以上いるという状況になっていて、これをどう今後取り扱っていくかということも議論する必要があります。
 それでは続きまして、人社系について、金子委員から報告をお願いします。

 【金子委員】 
 資料3-2です。人社系は全般的に就職がよくないということで、かなり空気は暗いわけでありますけれども、その中で幾つか論点を挙げております。
 まず大学院教育の実質化の4つの○ですが、基本的にカリキュラムについては、中教審答申ではコースワークをしっかりしろと言われているわけですが、一部の専門分野、例えば経済学ではかなり体系的なコースワークをつくっている例もありました。これに対して、あまり社会科学系で標準化を進めるのはよくないのではないかという意見もありました。それからほかの分野では、そういった標準化というのはほとんどやっていないのではないかという議論もありました。
 それから次に組織面では、その標準化が進まない一つの原因としては、教員と学生が縦関係になっていて、グループでグループを教えるという関係になっていないために、標準化が進まないということもあるのではないか。したがってそういった意味で、グループでグループを教えるという考え方もあるのではないかという意見も出ました。
 その次、前期課程、後期課程云々のところで基本的に問題となっていますのは、選抜の問題です。修士課程でどの程度選抜するのか、あるいは修士課程から博士課程、前期課程から後期課程へ行くときにどういう選抜をやるのか、そこで明確な選抜をやるべきではないかという議論もあります。
 もう一つは、そこでそれ以上進めない人をつくってしまった場合に、そういう人たちは特に人文社会系の場合には、どういうところに就職できるのかが問題になるという議論であります。
 裏に行きまして、学生支援についてですが、基本的には学生と教員との関係が1対1というか、縦の関係になりがちであるので、そこで人間関係が悪くなると、後で修復できなくなってしまうという例も少なくないということです。そういう意味で行方不明になる学生がいるということは、やはり構造的に処理していかなければならないという意見でした。
 それから大学院に進んだ学生が、限界を感じてやめるといいますか、ほかの進路を探すときに、どのような形の支援が必要なのかということも問題になりました。やはりフォローが必要である、例えば大学院の授業において、研究のマネジメントといったことも積極的に教えれば、企業で役に立つこともあるのではないかというような議論もありました。
 ただ、ここで問題になりましたのは、特に人文社会系については、大学院修了者がどこに就職しているかをきちんと把握できていない。多分結構就職しているのだろうが、どういうところでどういう能力を発揮しているかが、今のところ把握できない。それが非常に大きな問題であるという議論もありました。
 それから大学院の規模については、やはり大学院に入っても、その後の将来が不明確でリスクが大きいために優秀な学生が来なくなっているという傾向が見られるのではないか、これは深刻な問題であるという指摘がありました。
 一方で人文系の場合には、リタイアした人がもう一回入学するという需要は結構あるという意見もありました。ただその場合には、社会的にそれがどういう意味を持つのかということについて、考え方は幾つもあるという意見もありました。
 以上です。

 【有信部会長】 
 ありがとうございました。それでは医療系について、桐野委員より説明をお願いします。

 【桐野委員】 
 資料3-3に従ってご報告します。
 医療系は医学、歯学、薬学、看護学の4つの分野を含んでいます。まず全体としまして、大学院教育の実質化に関しては、競争的資金、大学院GPなどの財政支援を受けて、大学院が次世代の人材を育てる場であるということを認識して、教育の実質化に努力している大学もありますが、それはほんの一部であり、対応できていない大学もあるということで、その違いが出ているのではないかという指摘がありました。
 それから下のほうの、大学院教育の在り方については多少問題点の違いがありまして、医学では臨床系にも問題はあるのですが、基礎系の大学院が非常に衰退しているということで、各大学院が目標を決めて、基礎系の教員の後継者の養成を考えていかなければならないという意見がございました。
 歯学系の場合は、キャリアパスの面で、医学、看護学、薬学系とは違い公的機関への就職場所が少ないので、様相が違うという指摘がありあました。
 薬学系は平成18年に6年制薬学部が導入された一方、4年制も併存しており、今後この2つのシステムをどうしていくかということが、まだ十分成熟していない状態であるということであります。
 看護系は大学そのものが非常に急激に増え、大学院もかなりできてはいますが、まだ発達段階にあるということでありました。
 それから大学院の適正な規模、キャリアパスなどについては、医療系ではそれぞれ共通の似たような問題がありまして、どの分野も専門職を養成するという面が強い。一方で、研究者の後継者を養成していくという面もあって、かつては特に医学系などでは、この両方が混然となって動いていたわけですが、特にこの近年、専門職を目指す教育の充実が非常に図られてきたために、若干の問題が生じているのではないかということが指摘されています。
 裏面に全体のまとめがありまして、共通的な課題としては、先ほど述べましたように、大学院GP等の財政支援により、大学院教育改革に取り組む大学と改革が進んでいない大学との格差をどう考えるかということで、これは現在計画されている調査の中にもこのような観点が含まれております。
 分野ごとの課題としては、いずれも先ほど述べたことと同様の、医学系では学位取得の魅力が薄れる中で、専門医資格との連携をいかに図り、すぐれた博士課程進学者を確保するかということが課題であり、歯学系では研修の必修化によって、これまで学部卒業後に直接進学し、その後診療主体であった臨床系大学院生のキャリアに変化が出る可能性があるということ。薬学系は、6年制の導入が修士課程に与える影響をどう考えるか。看護系は、看護の大学、大学院が急速に増加する中で、養成目的に応じた教育の質をいかに確保するかが問題になっている。以上でございます。

 【有信部会長】 
 ありがとうございました。それでは専門職学位課程については、荻上委員が今日ご欠席ですので、事務局から説明をお願いします。

 【浅野専門職大学院室長】 
 それでは専門職学位課程ワーキンググループの審議状況について、資料3-4に基づきましてご説明させていただきます。
 専門職学位課程ワーキンググループにつきましては、前の3つのワーキンググループと異なりまして、平成17年の「新時代の大学院教育」の答申、それから大学院教育振興施策要綱、こういったものがあまり専門職学位課程には言及がないものですから、そこの検証というよりは、むしろ今の専門職大学院制度の現状を分析し、今後の検討課題を整理していくという作業を始めたところでございます。
 第1回目につきましては、専門職大学院の在り方に関する検証・検討の論点の整理、それからそのための実態調査について審議をいただいたところでございます。
 ご意見は資料3-4でございますが、専門職大学院の役割・機能の明確化という点について、例えば○の3つ目の、特に本日の資料の参考資料3ですが、専門職大学院の現状についてを見ますと、定員の充足ができていない専門職大学院の分野等もあり、そういった状況を見て適正規模の観点から、全体の供給量の検討が必要ではないかといったようなご議論、それから次の、専門職大学院の質の向上のための方策につきましては、○の2つ目におきまして、国家資格等の資格との関係と、専門職大学院の教育について議論を進めることが必要ではないかというようなご議論、それから裏側でございますが、下から3つ目の○のところで、これは企業側の委員からご指摘があったわけですが、専門職大学院の目的に、企業側からの見方を加えた場合に、教えるべき基礎的な知識というものが必ずあるというようなご発言であるとか、あとは○の最後でございますが、特に専門職大学院については博士課程を持たないということで、後期の博士課程との関係、在り方についてきちんと議論をしないと、将来的な専門職学位課程の教員養成の問題に支障が出てくるのではないかといったようなご議論がございました。
 今後につきましては、現在、さらに詳細な分析を行うための実態調査を行っており、その結果を踏まえて12月に、また論点の整理を行う予定でございます。
 以上でございます。

 【有信部会長】 
 ありがとうございました。それではこれから「新時代の大学院教育」に向けてという答申の検証作業及び今報告いただきました各ワーキンググループでの議論の進行状況について、いろいろご議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 検証作業は、それぞれの専門分野の方々がかなり深く読み込むという形で、今回は具体的な内容というか、現状を明らかにしようという試みで進めていまして、担当いただいた方にはこれからご苦労をかけることになると思います。

 【小杉委員】 
 人社系の学生支援のところで、大学院に進んだ学生が限界を感じてやめる際のフォローで、そこで教養教育が必要になるという、その流れがよくわからなかったのですが。教養教育でフォローができるということなのでしょうか。

 【金子委員】 
 この教養教育というのは、少し広い意味で言っていて、全体としてやはり人文社会系では、最初から非常に専門に特化したことをやっている。そのために、その研究でもうその先に進めないと感じていた学生が就職しようと思っても、その基盤がない。その基盤になるようなものが何か必要だという意味で、教養教育という言葉を使っていると思います。

 【小杉委員】
 なるほど。教養でフォローができるのかというのが、疑問だったものですから。

 【金子委員】
 人文社会系において教養とは何ぞやという話をすると大変難しいのですが、先ほど言いましたように、やはり人文社会系は最初から専門分化してしまうということが議論の前提にあって、もう少し幅広い教育とか、研究を進める上で必要となる、あるいは養成されるコンピタンスのようなものを幅広く身に付けさせることが必要ではないかというニュアンスだったと思います。

 【小杉委員】 
 ありがとうございます。

 【梶山委員】 
 理工系の審議状況について、すばらしい審議をされていると思いました。ただ私は工学系ですから、そういう意味で2つのことを特にきちんとしてほしいのです。その第一は、大学院の共通教育にどのような科目を選ぶかということです。多分先ほどの人社系も同様と思いますが、大学院共通教育として、倫理感を涵養する教育は、きちんとコースとしてとらせるべきだと私は思っています。
 それからもう一つは、特に博士号の授与に関してです。専門分野に対する能力が優れていることは、博士号を取得するためには当然のことで、それに加えて基礎能力、基礎学力があることが不可欠です。それと、自分で提案し、回答を見つけるデザイン教育は、一人前の研究者になるために必要で、その能力のチェックをきちんとやっていただければ、私は外国から見ても企業から見ても、質の保証された博士課程の学生が育っていくのではないかと思っています。
 以上です。

 【河田委員】
 教える側のことが少し必要だと思います。3つ目のところで、大学においてアカデミアを養成する場合と実社会の企業で活躍する人材に分ける、おそらく修士ぐらいで分類するのでしょうが、そういうことが必要です。それから人文系の大学院の適正な規模のところでも、一般的に教員の側の資質に問題があると言われています。
 おそらく日本の大学院教育で今一番問題なのは、大学の助手からずっと大学にいる人が大学院担当の教員をしている場合が非常に多いということです。もちろんCOEとかGPができて、いろいろな教員を客員教授や特別任用教員で採用したりして、以前よりは大学院でもいろんな経歴と資質の先生が増えていますが、まだ90何%は実社会での勤労経験がなくずっと大学で育った人ばかりが教員をしているということが、1つ大きな問題だと思います。
 アメリカであるならば、企業にいた人がプロフェッサーで大学に来る場合もあるし、あるいは政治の分野にいた人が、民主党の政権になったら今度は大学で政治学や経済学の先生をしたりして、非常に流動性があると思います。身分移行のできるところがアメリカの大学院の強いところだと思います。
 ですからそういうことを考えて、もちろんある程度企業に行く人とずっとアカデミーに残る人とを区別する必要もあるでしょうけど、実社会、企業、研究所にいた人が大学の先生になれるような制度や環境をつくらない限り、日本の大学院は諸外国に負けてしまうと思います。わざわざ日本の大学院に行かなくても、そういう意味ではアメリカに行ったほうがずっといいということになって、優秀な中国、韓国、台湾の留学生は日本に来ないで、アメリカの大学院に行ってしまっています。
 私立大学の学長をしていた立場としては、東京大学でも京都大学でも大阪大学でも、教員で純粋培養された人が多過ぎるということが、教員の質にもかかわると思うので、ぜひこの各ワーキングであわせて議論いただけたらありがたいという願望でございます。

 【郷委員】
  理工系の資料3-1を拝見して、「日本で博士号取得者が活躍できないといわれるのは」という文章なんですけど、これはおそらく企業でということだと思います。
 それが多分落ちていると思うのですが、その前に企業で活躍する人材、それからアカデミアで活躍する人材とある。ここで、おそらく専門性の高い研究はできるが、分野的な広がりを持った研究ができないということを指摘されていると思いますが、例えばアカデミアで、それこそノーベル賞級の研究をしようと思う人は、本当に専門性を詰めていくということがなければ、決して世界一の研究は出ませんので、このあたりは違ってくるのかなと思います。何もかも幅広くということになってくると、サイエンスの先端の、世界一のことというのはなかなかやりにくいのではないかなと思います。
 それから、今、河田委員がおっしゃったことですが、理系もやはり同じで、大学だけでずっとやってこられた先生方だけでは、企業で活躍する人材を育てるというのは多分なかなか難しいだろうと思います。ですから実社会と大学を教員が移動できるような、それが全部ではないのですが、そういう仕組みがあるということは大事だと思います。

 【桐野委員】 
 医療系に関しては、「新時代の大学院教育」の85ページに、医療系大学の目的とそれに沿った教育等の在り方についてという、前の医療系ワーキンググループの報告書が出ておりまして、非常に重要なことが書いてあります。多分同じ議論を我々は延々とやっているのではないかと思いますが、ここには医療系大学院の果たすべき機能が多様化しているので、研究者養成を目的とする、そこに重点を置いた大学院と、それから医療系の研究を担うような人材を養成することを目的とするような教育課程を分けて考えてはどうか、そしてそれぞれの教育内容については、前者はバイオメディカルな研究手法、研究遂行能力を修得、後者については、人を対象とした臨床研究の遂行能力の習得ということを重点にしてはどうかというようなことが書いてあります。
 だから、こういうことが実際に進行しているのか、それともそれが停滞しているのか、難しいのかということを検証するだけでも非常に大きな意味があって、それがなかなか進まないのは、我が国において何が問題なのか、できない理由は何なのかということを知ることだけでも大きな意味があると思います。

 【有信部会長】 
 ありがとうございました。ほかにご意見はありますでしょうか。
 郷先生のご指摘について、この議論は「専門性の高い研究はできるが」と、ここをネガティブに書いているのですが、これは前提で、それを前提とした上でなおかつ、ある意味で広がりを持った研究ができないとか、チームワークに欠点があるというところがやはり問題ではないかということだろうと思います。
 これは別に企業に限らず、アカデミアでもそういうところがあって、もちろんすべての人がこういう要件を満たせと言っているわけではなくて、研究というのは1つのことを極めるという話と、そのことがある意味で普遍性を持った知識の高みに移るという部分とそれぞれあって、あれもこれも手を出せと言っているわけではないわけで、その辺の議論は多分踏まえた上でやっていると思います。

 【木村委員】 
 これは前も申し上げたような気がしますが、今の郷先生のご指摘についてです。日本で博士号を取得した者が企業で活躍できないという件です。英国の事情しか知りませんが、私が在籍していた研究グループは大きなグループで、30人ぐらいのリサーチスチューデントがいました。修士課程はありませんからドクターコースの学生だけですが、ストレートで来た学生はゼロでした。
 すべて何らかのプラクティカルエクスピリアンス、大体は企業、エンジニアリングですから、コンサルティングカンパニーで働いていた者が多いのですが、彼等が戻ってきて学位を取るというケースが殆どです。この中から、そうそうたるアカデミッシャンも出ていますが、ドクターを取ると企業へ就職していく者も多く、それには全く抵抗はないようです。 ですから、ドクターコースのやり方が悪いから企業へなかなか就職できないというのと、かなり社会的な背景が違うと思います。これはアメリカでも多分同じだと思います。英国の工学系では過年度学生が圧倒的に多く、社会的なバックグラウンドが違うということでしょう。ですからこの問題も大学院そのものの問題としてとらえないほうがいいのかなという気もします。

 【今榮委員】
 この理工農系の審議状況の中に入っていないのですが、今日本では論文博士という制度があって、これは多分日本独特だと思います。これを廃止するというようなこともちらほら出ていますので、この社会人コース以外にこういうものをきちっと残すべきかどうかという議論もどこかでしておかないと、突然その話が出たときに、こちらのほうで対応できなければ廃止になる。もちろん廃止になる方向でよければそれでよろしいのですが。ですからその社会人コース等を考えるときに、これができたから論文博士の制度は必要あるのかないのか、どこかで議論しておいたほうがいいかもしれません。

 【有信部会長】 
  その点についてはまた後半で議論することになっています。

 【今榮委員】 
  わかりました。それで結構です。

 【有信部会長】 
 金子委員にお聞きしたいのですが、理工系だと、学位を出す基準がある程度平準化されてきたというか、Ph.D.レベルの出し方というので、学位を3年間で取得する割合も増えてきているのですが、人文社会系は昔はものすごく学位を取るのが難しいと言われていた時期があって、それは大体標準化されてきているのですか。

 【金子委員】
 これは多分今度の調査で一部、そういうポリシーがあるのかないかということも結果として出てくるのではないかと思いますが、前の「新時代の大学院教育」は、学位をなるべく出す方向で考えるべきだと、非常に強いトーンで書かれています。
 それ以降、大学評価をする際に、学位をどれくらい出しているかというのは一つの観点になっていますから、かなり努力はされていると思いますが、私はまだ低い段階にあるのではないかと思います。
 それからもう一つ、やはり教育内容の標準化が進んでいないといいますか、かなり個別でありますから、どうも個別に指導しているとだんだん相互監視をして厳しくなるという構造は、まだ変わっていないのではないかと思います。
 それからもう一点は、博士を取得するとかえって後が困るという状況も率直に言ってあると思います。博士を取ってしまえばもう大学院に在籍していられませんが、人文社会系の博士は、大体大学関係に就職するしかありませんので、たまたま自分の専門があいていればいいですけど、そうでない場合に非常に困ってしまう。ですから、わざと学位を取るタイミングをおくらせるというケースも結構あるように思います。そういう意味で、一番人文社会系が昔の大学院の姿をまだ保存しているのかもしれません。

 【中西副部会長】 
 全体にかかわることですが、大学院が重要であるという考え方を皆がきちんと共有できれば、非常に議論が進みやすいと思います。これから大学院はますます重要になってくると思います。私たちの社会が発展してきた大きな理由は、主に理工系の人が中心となって、物をきちんとつくってきた、つまりすばらしい製品をつくってきたからです。ですが、これから50年後、さらにずっと先を考えると、ただ製品のマスをつくるだけではもう勝てないわけです。高度な知識、専門性を身につけた人を、社会のあらゆる箇所に入ってもらう仕組みが必要だと思います。あらゆるところに組み込まれた人が中心になって、日本全体の知識レベルを上げ、その高いところから新しい発想でいろんなものをつくるということが、これからの社会で重要な要素になってくると思います。
 そのためには、もう少し高度な知識を持つ人の数が必要だと思います。何も博士号とかマスターを取った人は特殊な人間ではないわけです。そういう人が社会で必要な人材だという意識が広がれば、何も研究者にならない大学院生がいたっていいと思います。まずは、日本全体の知識レベルを上げることは非常に大切だということを考えるべきだと思います。ただ現状では、このような人と社会とのマッチングなどいろんな問題があると思いますが、この基本となる考え方をしっかり持つことが必要と思います。

 【有信部会長】 
 ありがとうございました。今の点はすごく重要だと思います。いろんなところで中途半端に専門性のない議論がされていますし、今と関係ない例ですけど、例えば二酸化炭素の排出量を減らしましょうというときに、車が大体4分の1を出している。その車の二酸化炭素を減らすのにはどうすればいいか。車の重量を軽くすれば減ります。あるいはエンジンの効率を上げれば減ります。
 だけど、実際には車の平均速度を、今東京都内ですと20キロぐらいですけど、これを40キロに上げることができるとドラスティックに減るわけです。技術開発としては、強度の高い材料を開発して車を軽くする、それからエンジンの効率を上げる。これは技術屋が向かう方向です。
 だけどそれよりも、都内の平均速度を20キロから40キロに上げたほうが、はるかにCO2が減るということになると、今度はトラフィックコントロールをどうやるかという話であって、これは技術屋だけの問題ではなくて、全体の道路システムをどうするかとか、心理学的な効果がどうであるかというような話を含めた視野が必要になります。こういう観点に立つと、全体をトータルで見渡せるような知性がいろいろなところにいるかというと、これまた大問題になってくるわけで、こういうことを日本として全体的に進めていけるような国になっていなければいけないと思いますが、今のままだと一生懸命エンジンの効率を上げましょう、強い材料をつくりましょうと、資源を投入することになってしまうことになります。
 これらの技術開発もほかのところへの波及効果がありますから、もちろんそれはそれで重要ですが、そういうことを全体として考えられるような社会になっていないと困るということもあり、中西先生が言われたように、日本全体の知性、知識を上げるというのは非常に重要で、その中で大学院がどういう役割を果たさなければいけないかということを、よく考えていくべきだろうと思います。
 それぞれワーキンググループで突っ込んだ議論を進めていただいていて、今ここに箇条書きにしただけでは十分酌み取れない部分もあるかと思いますが、今度の検証作業を踏まえてもう一度議論を詰めて、その上でまたこの場で全体的な議論をしたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、次の大学院教育を取り巻く諸課題についてということで議論をしたいと思います。先ほど今榮委員からご指摘がありました、論文博士の問題も含めて議論をしたいと思いますので、まず事務局より説明をお願いしたいと思います。

 【今泉大学改革推進室長】 
 失礼いたします。資料4-1、4-2、4-3についてご説明申し上げます。いずれもワーキンググループでは落とし込めないような、分野を横断して議論しなければならない内容でございます。
 まず1つ目の資料4-1でございます。この資料4-1は、修士・博士の関係についてでございます。平成17年の大学院答申でどういうことが言われているのかというと、博士前期については大学院設置基準上、修士課程として取り扱うこととされております。ただ、本来修士課程と博士課程の目的、役割は異なることがあります。そういう中において、この博士前期と修士について位置づけと関係を検討する必要がある。こういうことが答申の中では言われております。
 その後、この部分については実は6月に木村先生からご発表はあったものの、十分な審議がされてきたわけではございません。その観点でもう一度、この部分について横断的にご議論いただきたいと思って用意いたしました。主な論点を事務局側から3つ挙げております。
 1つ目は修士課程の人材育成目的をどうするのか。答申で書かれているものの紹介をいたしましたが、修士と博士前期の異同が明確ではない。この両者の関係をどう整理すべきなのか。また平成14年から専門職大学院の仕組みができましたが、その専門職大学院の仕組みができたがゆえに、さらに修士課程との位置づけが明確ではない部分ができましたので、修士課程と専門職学位課程との関係をどう整理すべきなのか。これが1つ目の論点であると思います。
 2つ目の論点は、修士課程と博士課程の関係。特に博士後期への接続をどう考えるのかということでございます。区分制博士課程においては、前期修了前の段階で、修士論文の作成が課せられております。その一方、同じ博士課程であっても一貫制博士の場合には、特段のそういう規定はございません。ここの部分については、一貫制博士課程でありながらも学生のことを鑑みて、修士修了段階の要件を満たしていれば修士号を出すという一貫制博士も、中にはあるやに聞いております。そのため、同じ博士課程でありながらも、学位の取得の方法が二重の仕組みになっているとの指摘がこれまでもございました。そういうことについてどう考えるのかということがあります。
 またその一貫制博士課程の場合には、規定上は、もし博士号を取れない場合、そのまま学士卒、学士号のみという場合も十分考えられます。ただ大学によっては、修士の修了要件を満たしていれば修士号を出すというところもあります。つまりその取り扱いがあいまいになっています。そういうことについてどう整理するのかということが、論点としてあると思います。
 3つ目の論点は、修士の修了要件と博士の修了要件についてでございます。修士の修了要件については、平成17年の答申を踏まえて、18年3月に大学院設置基準の改正が行われています。そこにおいては修士論文の作成のかわりに特定課題の研究成果等、一定の学修成果でもよいという形の見直しを行いました。その後、こういう制度改正がどういう成果を及ぼし、どういう課題があるのか、これをお聞きしたいと思います。
 あと、現行の修士の修了要件と博士の修了要件についてどう考えるのか。さらに修士及び博士それぞれに短期修了の制度がございます。これまでの短期修了の制度の成果と課題をどう考えるのか。これらが論点としてあると思います。
 2ページ目以降はそれぞれご検討の際の参考となるように、修士課程、博士課程それぞれの目的と修了要件等を整理したものと、あとは大学院制度、学位制度の明治以降の制度の変遷、さらに諸外国の学位に関して整理をしたもの、それを用意しているところでございます。
 続きまして、資料4-2をごらんください。これが先ほど今榮委員からもご指摘がありました、論文博士についての資料でございます。
 論文博士については大学院答申において、現在の授与状況、学位に関する国際的な考え方、課程制大学院制度の趣旨、そういうものを念頭に置いて、その在り方を検討することが適当であると書かれております。さらにその検討に当たっては、相当の研究経験を有している社会人等に対して、大学院が研究指導を行う仕組み、その充実などをあわせて検討することが適当ということが記載されております。
 それを踏まえた論点として、まずその是非を語る前に、論文博士の実態が今どういうものなのか、論文博士についてはどのような需要があるのか。この点をいま一度押さえる必要があるだろうと考えております。その上で、論文博士に関する成果と課題について考えることが必要だと思います。
 この部分の論点の2つ目の、どのような需要があるかについて事務局で調べたところでは、2枚目以降のデータがございます。論文博士の授与の推移で見ますと、平成7年から過去10年の間、実数、授与件数全体に占める割合ともに減少傾向にございます。分野別で見ると医療系、医学、歯学、薬学、看護を含んだ保健が5割を占めております。次いで工学、農学でございまして、保健、工学、農学、この3分野で論文博士の全体の8割を占めている状況でございます。
 次の資料をごらんください。これは国立大学の論文博士の授与状況について調べたものでございます。1ポツのところで見ると、人社系においてはやはり、論文博士を取得した者では大学教員が多くなっています。理工農系では公的機関の研究者及び民間企業の研究者が多くなっています。保健の分野では医療従事者が多いという状況になっております。
 さらに2ポツのところでございます。マル1の部分が、博士課程に在学していたことはあるけれども、いろいろな理由によって標準修業年限内に学位取得に至らなかった者が、その後論文審査に合格して学位を取得した者が該当します。人社系の分野では、この部分の割合が多い状況です。
 一方、理工農系と保健の分野についてはこのマル2でございまして、博士課程に在学したことがない者で、研究経験と成果をもとにして学位を取得した、そういう論文博士でございます。理工農系と保健はこの部分が多い状況になっております。
 次に先ほど金子委員からもご紹介がありましたが、博士の標準修業年限での学位授与率を学問分野別に示したものでございます。17年と18年の状況を見ると、18年のほうは微増している状況でございます。ご覧いただくとおり、理工農系、保健については5割を超えておりますけれども、人社系については標準修業年限内での学位授与率は低い状況が見て取れると思います。
 次のペーパーをごらんください。論文博士号取得者に対する支援事業として、日本学術振興会で、1億6、000万の予算で、アジア・アフリカ諸国の研究者がこの論文博士を提出することによって博士の学位を取得する、それを支援する事業がございます。
 実はこの事業の中で幾つかコメントが寄せられておりまして、例えば、ある研究者からの声によると、もう既に自国の大学において重要なポストにある。ただ博士号の学位を取得していないので、それについて非常に強い関心があった。ただ、大学において重要なポストにあるので、年単位で留学することはできない状況にあると。そういうときに、この我が国の論文博士という仕組みが非常に効果的だったというコメントが寄せられております。
 あと、別の国の人でも同様のことがありまして、既に職を得ている中で、最低3年間職を離れるということはとてもできない。ただ日本の優れた研究環境のもとで実験できたり、または一般の留学生とは違って、授業料や年間を通じた生活費、これを手当てする必要がない。その中で博士号を取得できる仕組みというのに魅力を感じるということがございます。
 需要については今申したとおり、論文博士については実数、割合ともに減少傾向にあるものの、まだ4、000人いる現状があるということ。さらに標準年限内では学位授与に至らなかった、特に人社系について、その後論文博士に合格して学位授与した者が多くいるということ。理工農系について言えば、企業や公的機関の研究者で、その研究成果をもとに取得した者がいるということ。保健分野についても医療従事者を中心として、その研究成果をもとに取得している者がいるということ。調べたところそういう需要がございました。
 次に資料4-3が大学院の評価についてでございます。この部分について、平成17年の答申では、大学院の特性に応じた適切な評価が多様な観点から行われる体制を整えていく必要があるということが言われております。
 特に大学評価の基本である自己点検評価において、専攻単位を基本とする専門分野別評価の促進と、その定着を図る。こういうものを行うために、専門分野別の第三者評価の基盤の確立を図っていくことが適当ということが記載されております。
 それを踏まえた論点といたしまして、現状の大学院に関する評価の仕組み、その成果と課題はどうであるか。
 また大学院において、それぞれ自主的・自律的に設定した課程の目的に即して、体系的な教育内容・方法が構築されているのかどうか。これを専門分野別評価においてどのように評価していくのか。
 また、学協会等の専門分野別第三者評価を行う機関、これをどう育成していくのか。こういう論点があるだろうと考えております。
 次に現在の大学院の専門分野ごとの評価の現状を示したものでございます。専門分野別の自己点検評価については取り組みが進んでおります。平成18年のデータが一番内側の円で、平成20年度の取り組みが一番外側の円でございますが、すべての研究科、専攻で、この専門分野別の自己点検・評価を実施しているところ、また一部の研究科、専攻で実施しているところ、合わせて18年度では49%のところが、20年度では77%になっております。
 また、専門分野別の第三者評価を実施しているところで言うと、全体で6割ぐらいになっているような状況でございます。
 そのほか、諸外国の質保証のシステムについて資料を用意させていただいております。
 資料の説明は以上でございます。

 【有信部会長】 
 ありがとうございました。前から議論になっている修士課程、博士課程の問題、それから先ほど今榮委員からもありましたが、論文博士をどうするかということと、大学院の評価をどうやっていくかと、3つの論点があります。よろしくお願いします。
 特に修士課程、博士課程については、制度上は決められているが、大学の教える側が明確にその辺の意識を、例えば博士一貫コースと、それから前期課程、後期課程があるコースと、この差が多分理解できていないのではないかという気がします。明確に差があるとすれば、修士論文を課す必要があるかないかという点だけですか。

 【今泉大学改革推進室長】 
 この部分についてはいろいろとあると思います。一番重要なのは、各課程の人材育成目的をどこに置くのかということだと思います。それに応じてどういう修了の際の知識、能力の確認方法があるのかという話になりますので、それぞれの課程がどういう人材育成目的を持っていることが明らかになるのか、その部分の議論が中心になってくると思います。

 【有信部会長】
 前の答申では、修士課程については明確に記述がありました。それから博士課程についても明確な記述があって、前期、後期だとか、一貫制だとかいうところについては、内部で修士論文を課す必要がないという可能性を記述してあったのですが、多分、それは大学サイドの運用の仕方で今のところは決められているという話ですよね。この辺は明確にする必要があるかどうかということです。
 それともう一つは、いわゆる修了年限の話で、昔、博士課程の修了者を企業が採用しないとさんざん言われていたときに、その理由は何かという議論を随分やりましたが、そのときの一つの大きな理由は、やはり5年が長過ぎるということでした。
 例えば、3年でドクターを取る人と、それから2年で修士を取る人と、どちらを採りますかといったら、当然3年でドクターを取った人を採りますということで、単純に企業が採りやすい、採りにくいという観点だけだとそういう議論になって、そこからすると、博士一貫制のほうがそういう施策はとりやすいという形になります。
 ただし博士一貫制だと、先ほど説明がありましたように、学位が取れないと最終学位が学士ということになる、こういう問題は残るということですね。
 それからアメリカもイギリスも、修士課程と博士課程は全く独立で、もちろん修士課程を終わってから博士課程に行くことはできるのですが、修士課程を経る必要は全くないということになっていて、この辺が日本はある意味では非常にあいまいなままになっている。運用上あいまいということで、制度上は同じような形式にはなっているという話ですね。
 次にいわゆる論文博士について、ここにいろいろデータが示されていて、18年度で22.3%。現在もう少し減っているかもしれませんが、その内訳の半分が、いわゆる保健を含む医療系で、あとは工学が多いということになっています。
 それで結局、理工農系ワーキングの中の議論では、先ほどの報告の中で詳しくは説明申し上げませんでしたが、やはりドクターというのは研究だけできればいいわけではなくて、独立した研究者というのが何であるかという定義にもよるわけですが、先ほど梶山先生からもご指摘がありましたように、基本的な研究能力、独立して研究できる能力が必要なので、単純に研究成果だけを評価して学位を与えるというやり方はどうかというような方向の議論でした。
 理工農系のメンバーで何かありますか。

 【五神委員】
 博士がどういうものかという定義を考えると、独立して研究ができるとともに、広い意味でのリベラルアーツも含めて、教養があって学識がある者ということだと思います。そういう人を育てるときに、課程というものと相補的な仕組みとして、いろいろな情況において多様なキャリアを積みながら、この定義に匹敵する要件を満たす人物がいたときに、例えばその人を大学の教授として将来迎えるなど、博士という学位を与えておくことが妥当な場合もあるので、学位を授与する仕組みは必要だと思います。ただし、現在の場合、博士というものがどういうものであるか、あるいはそれがどう社会から期待されるものであるかというところがあいまいな状況の中で、論文博士という制度を使って学位を与えているということが並行して行われており問題が生じています。博士の定義の明確化は、課程の議論とかなりリンクしたものになるだろうと私は理解しています。
 ですから課程のところで、きちんとコースワークの中で博士というものに定義するにふさわしいものが、その課程を経なければ身につかないというような条件が整ってくる場合には、その迂回ルートみたいなものが別に存在することは、おかしいという議論になるはずです。

 【桐野委員】
 保健系と医学系はかつて大学院にあまり入らない時代があって、それでも世間的には医学博士が必要だという風潮が強いために、こういう状況がずっと続いてきました。現在でもこんなにいるというのは少し驚いたのですが、多くの大学院では原則として、課程を経ないで博士号を与えにくくしているんではないかと思います。
 それで、これを全く閉じてしまうことがいいかどうかは、また別の議論で、それはそれぞれの大学の見識の範囲内で、どうしても論文博士ということで認めなければならない、例外的な方がおいでになるということはいいのですが、これが相当な数に上っているというのは、ほんとうにふさわしい方を認定しているのかどうか、知りたいという気もしまして、一部やむを得ない側面と、一部甘い認定をしている可能性があるのではないかなという心配とがあります。

 【河田委員】 
 私は人文科学で中国学をやっております。我々の年代の者は大体、主任教授から60歳ぐらいで、定年になる頃に研究業績を集大成して博士号は取ったらいい、ということで教育されてまいりました。この3ページのところで、国立大学における人社分野の博士号取得者は大学教員が多いと書いてありますのは、そういう状況を反映しています。ですから、論文博士は2つのタイプに分ける必要があると思います。
 我々の世代のように、修士課程と博士課程で5年間やっていながら博士号を取っていない人に与えるのを論文博士と言う場合もありますし、それから全くその大学を卒業しておられないが、あるいは何かの教授の縁で、あるいは外国人の場合にはその大学に来られてご縁ができて、博士号を取りたいということで審査する場合があると思うのです。そこを整理する必要があると思います。
 しかし、それはやはりその大学の見識に任すべきです。アメリカでも博士号を売るという大学もありますから、それはもう自然と淘汰されるので、そこは大学の質、大学の見識にお任せになったほうがいいのではないかと、人文科学を専攻する私は思っております。
 中国あるいは韓国、台湾の大学では、博士号を持っていないと昇進できません。しかし、中国の場合には文革世代で大学院には行っていないけれども本も数冊出しておられて立派な学者だという場合には、我々の大学でもきちんと審査して博士号を出させていただく。ですから、禁じるのではなくて、論文博士という制度は残しておくほうがよいと、私は人文科学の学者としては考えております。

 【梶山委員】
 工学系の論文博士というのは、普通2タイプあると思います。一般に企業に勤めている人が論文博士を出されるんですが、一つは、自分自身で企業の中で研究して論文を書かれる方と、もう一つのタイプは、部長とか研究担当者が、部下の研究者が行った研究のデータを集めて論文としてまとめられる場合があります。
 ただいずれにしても、企業の方が博士号を持ちたいという意欲を持たれるのは悪いことではありません。企業と大学の間の、人の流動ということを考えたときに企業の方が博士号を持っておられるほうが、やはり大学に職を見つけ易いということもありますので、そういう意味では論文博士というのは、むげになくす必要はないと思います。
 ただ、今から10年から20年前に大学関係者が非常に心配したのは、課程博士をたくさん養成しなさいと言いながら論文博士を認めていると、博士課程修了までに授業料を払うのは大変なため、課程博士のコースに行かず、企業に入った後に、論文博士として学位を取ったほうが経済的にも有利ではないかという議論を随分したんです。
 ただ、2ページ目のデータを見ますと、平成7年が50対50ぐらいだったのが、だんだん論文博士が少なくなっているということを考えると博士がいろんなコースで取得できるというのを残しておくほうがいいかなと思っています。

 【古市委員】
 企業研究者が学位を取るということに関しまして、企業でのいろんな研究成果、実績を踏まえて、論文博士のシステムというのは、我々にとってみれば非常に重要なシステムです。特に企業の場合ですと、皆様ご存じのように、人材育成の一環として海外の大学などに留学させるケースというのは多々ありますが、そのときに基本的に学位を持っていないと受け入れられないということがありますので、将来有望な研究者並びに意欲のある研究者が学位を持つということは、企業研究者としてのモチベーションを維持する、高めるという意味では非常に重要なことです。
 したがって、論文博士のシステムがなくなっていくという傾向に関して、企業の研究者は非常に危機感を覚えています。それに代わるシステムとして、産学連携大学院のシステムのコースなども大学によっては出てきているようですが、我々もその産学連携大学院の特任教授などとして大学院講義をすることもありますが、その中での交流でも、通常の研究をしながら企業の研究員がそういうコースに参加して学位を取るというのも、非常に難しいという現状があります。
 よほど意欲のある者でないと、なかなかそういうコースをとれないという現状ですので、もし論文博士のシステムを完全になくすのであれば、それに代わるような、もっと企業の研究者が学位を取れるようなシステムがあると、非常にありがたいというのが実感でございます。

 【丸本委員】
 大学院の質の充実、あるいは質の維持という点から考えても、論文博士の人たちの審査基準は、実は大学院の中でも非常に厳しくなっております。特にコースに来た人は、大体私どものところでも、レフェリー付きのちゃんとした論文2報以上という審査基準ございますが、論文博士の場合は5報以上となっており、これは大変な基準だと思います。そういう基準をある程度整えておけば、私はこのシステムは非常に重要だろうと思います。
 その重要なもう一つの論点は、先ほど河田先生からございました、教員の流動性をもう少し高めなければならないのではないかという観点から見ましたときに、一応大学の教員採用の基準というのは、特に理系の場合は学位があること、それから論文の数が何報といった、民間の方がそういう大学へ、教授あるいは助教授として行こうとしたときに、非常に厳しい基準があるわけです。
 しかし本当は企業でやられていても、大変能力がある人を、もっと大学の教員としてどんどん流動化しながら交流してレベルを上げていくためには、私は企業からの方でも頑張った方は論文博士や資格を取れるような、要するにチャンスを広げておくことは、今後必要ではないかという感じがしております。その辺、またご意見があればお聞きしたいと思います。

 【木村委員】
 私がおりました東京工業大学は多分、最近の状況は知りませんけれども、課程博士と論文博士のプロポーションを比べると、論文博士のプロポーションはかなり高いと思います。多いという意味じゃなくて、相当高いと思います。それはいいことで、東京工業大学の特徴がよく出ているからだと思います。
 それで、確かに先ほどご指摘がありましたように、私が若い助教授だったころは、功成り名遂げた人、こんな人はドクターを取らなくてもいいのにという人が、はっきり申し上げて、部下に書かせて持ってくるというようなことがありましたが、私がやめるころは、毎回学長は授与式に出て実際に自分で授与するわけですが、圧倒的に若い人が増えました。
 今企業のほうからご発言がありましたように、やはり企業にいるとなかなかドクターが取れず、この社会人コースというのはなかなかくせ者で、実態がないというか、実態をわざとつくるために、社会人コースに入ってもらうよう、大学から頼んでやっているというケースがかなりありますので、それならば、論文博士を堂々と生かして、ただし、今丸本先生のご指摘がありましたように、条件を厳しくするというのがいいと思います。東工大でも、ルールに書いてありませんけれども、少なくともかなり長い間指導教官の指導を受けることという条件で出しています。
 それからもう一つ、ソシオエコノミック的な立場からすると、社会の片隅で非常にいい研究をされている方、例えば高卒の方にも東工大はたくさん出してきております。ですからそういうことから言うと、そういう方はもう課程博士ということは無理ですから、そういう方にも日を当てる機会ということで、私はシステムとしては、乱用してはいけませんけれども、最近の状況を見ていると、かなりよくなってきているのではないかと思いますので、今のやり方を完全に残すかどうかは別として、やはりシステムとしては残したほうがいいと。
 それから、外国にないかというと、英国の大学の中にもそういうことをやっている大学があります。例えばロンドンにあるシティーユニバーシティーは、もともとインダストリーのリンクが強い大学で、サンドイッチプログラム、つまり2年外へ出て、帰ってきて、5年ないし6年大学に、トータルすると滞在することになるわけですが、それで学士を取るという大学なんです。
 そこは、数は多くありませんけれども、やはり日本的な論文博士をやっておりまして、それでそのシステムでお取りになった方、2人とも、2人というのはいずれも研究者ですけれども、そういう方はいらっしゃいますので、やはり河田先生がおっしゃったように、その大学の特徴によってシステムを全部閉じるというんじゃなくて、残していったほうが、私はいいのではないかと思います。

 【小杉委員】
 私は独立行政法人の研究所におりまして、うちの研究所では論文博士で、実際に私自身もそうなんですけれども、研究をマネジメントするだけのことをやっている人間が、こういう仕組みを利用して学位をもらうということは、私どものような研究所でも大変重要なモチベーションの一つになっておりますので、ぜひこの道は閉ざさないでいただきたいと思います。

 【小松高等教育局審議官】
 事務方としてちょっと補足的なことを申し上げさせていただきます。議論の方向についてはいろいろとお示しいただきながらと思いますけれども、前回、17年の大学院の答申が出たときの議論の論点をちょっと申し上げますと、まず論文博士についてはかなり批判的な意見が多かったということがございます。
 その批判的な意見は3点ほどございまして、最終的な修了要件として学位論文があるということは標準ではございますが、いわゆる戦前からの碩学泰斗というか、完成した論文を書いたらそれを評価して学位を与えるということから、戦後の課程制に移って、その課程制の中身の充実がなかなかできずに問題になっているということであるから、論文の価値で学位を与えるということについては課程制の趣旨とそもそも合わないということで、本来的にはおかしいのではないかという点が1点です。
 それから2点目が、世界的に見たときに、コース制の証明としてではなくて、論文の水準の証明として学位を与えるというのは非常に少数派ではないかということで、この点が世界から見たときに、日本は一体コース制についてどのくらい保障されているのかということが問題になるので、この点で世界的信用の問題として批判が出てくるということから問題であるということです。
 それから3点目は、そもそも今現在の、これは何年か前のお話でございますが、コース制の、特に後期博士課程が既に論文博士的なのではないか、それはよくないことではないかという批判でございました。例えば修士を取るにも博士を取るにも単位は30単位あればいいわけですが、そうすると修士のときに取っておりますので、博士では単位は必要なく、あとはただ論文を書けばよいということから、ほとんど体系的な教育や論文へ行くまでの一人前の研究者として、何が必要かということは問われずに、論文の質だけどんどん高めていくということになっていて、このことの改善を妨げる要因になっているのではないかということです。
 大きく言うとこの3点が批判の主要な論点でございました。だから廃止すべきだという意見が結構ありましたけれども、それに対しまして、本日の議論になっておりますようなさまざまな意味で、社会人等の円滑な博士号の授与という観点から、そういう道が閉ざされるというのは問題であるという反発がかなりありまして、とりわけ審議経過が途中で外へ出たときには社会的に大反響でございまして、ほとんど仕事がストップするぐらいの激しい反響でございました。大学院のラインは何日か仕事がとまったのではないかと思います。
 それはやはり道を閉ざすということに対する反発でございまして、そういう意味で本日の資料も、私ども事務方として用意するときに、この4-2というのは「論文博士の取り扱いについて」という題にしようかと思いましたが、その前回のご議論を考えますと、今日のご議論にも出ていますように、これを廃止するか否かということよりも、その取り扱いを含めて、社会人になられた方がどのように、今の制度と矛盾しない形で学位の授与ができるような仕組みを担保したり、つくったりできるのか、できないのかということをあわせて、今後も議論いただいたほうがありがたいと思っております。
 最後に1点だけ、3点目ですが、学振で論文博士を出しているわけですが、これは留学生の方たちに非常に人気がございます。それから博士論文の質が高いものですから、丸本先生もおっしゃられたように基準も高いので、むしろ日本帰りの留学生の間では、一般の博士号以上に論博が高く評価されるという傾向もあり、わざわざ自分の博士号、ドクターという後に、ローマ字で「RONPAKU」と名刺に書いたりされるくらいのステータスがございます。この点はちょっと配慮しなければいけないと思います。
 それで、この議論のもう一つと、それと派生して出てきたのが、論文博士と博士というのは同じ博士号の中でも一応分けるか、あるいは別の学位にするかという議論でございます。ただこれは下手をすると、かつてフランスで起こったことですが、国家博士と博士に分けて、こちらは留学生用でこちらは国内用といったような区分けをした結果、市場価値のような、奇妙な差が出てきて、信頼性に問題があるということで、やっぱりうまくいかないということがございましたので、今の論文博士は通称であって、同じ博士号の中ですから、その中でやはりやるべきだろうという議論がありました。
 長くなりましたが、この3点ほどありますので、今後のご議論についてこの点についても整理していただきたいと、事務方は思っております。

 【有信部会長】 
 前回は今紹介がありましたようなことで、論文博士についてはワーキンググループの中、特に理工農系のワーキンググループの中では相当ネガティブな方向で結論を出しました。つまり廃止の方向で検討するという結論だったようです。それはその後の経過で変わったようですが、今紹介がありましたように、かなり突っ込んだ議論のもとで、その方向を出したということであります。
 もう一つは、大学分科会のほうで大学院の博士課程の中で、基本的にはその要件として、途中で研究遂行能力についての認定をやるべきであるという指定があります。そういう議論があって、それを書き込んだはずです。つまり研究遂行能力についての評価を踏まえて、それを取り込んだ上で、最終的に学位を出すプロセスに結びつけるべきだという議論になっていたように思います。
 ということは、つまり新しい制度としての大学院では、博士というのはいわば到達度で評価をするのではなく、これから研究者としてひとり立ちできるということで進むという位置づけに変わってきているわけです。したがってその点で博士を評価すべきだと。
 ところが論文博士はもともと到達度評価のような色彩が強く、一方大学によっては当然、コースドクターは指導教員が責任を持って育成しなければなりませんが、論文博士は要するに評価をきちんとやらなければならないということで、結果的には論文博士の評価のほうが厳しくなるのは当たり前の話です。ですからそういう差もあって、その辺の評価のところがかなり混乱していると思います。
 五神委員が言われたように、要は博士課程での在り方、本当の意味での独立した研究者を育てるという視点で、博士課程の設計がきちんとできていれば、それにあわせて例えば論文博士の道を残すにしても、論文博士としての評価基準が新たに決められるだろうということです。
 ですから、そういう視点でやっぱり検討するということで、結局はまたドクターコースをどう設計するかという問題に戻るような気がします。
 それから木村委員が言われたように、大学卒の学位がなくて、非常にいい研究をやられた方に学位を出すというケースもございますが、この辺をどう扱うかということと、それからやはり高等教育機関としての大学、大学院の在り方として、責任をどう果たすかという話と、それを全部考えていかなければならないと思います。

 【五神委員】 
 まとめていただいたとおりだと思いますが、このようにコースとしての大学院を重点化して強化するという施策が打たれている中で、産業界のニーズに対応する人材育成についても、この課程博士育成システムの中に吸収できる性質のもののはずであると思います。博士を取ってから、企業で活躍するというパスを確立することです。
 そういう意味で、この論博の要件が課程博士の要件よりも緩いということはあり得ないことで、論博の要件も課程博士と整合するものであるかどうかということをチェックするべきです。そして学位としての統一感を担保しつつ、論文博士を例外的なものとして残すことになると思います。大半のものがコース博士として、きちんと学位が取れるような仕組みに改善していくという方向で議論するのが正しいのではないかと思います。

 【丸本委員】 
 先ほど小松審議官がおっしゃったことは、新時代の大学院教育にとって非常に重要なことですが、その中で今問われているのは、大学院の中でも特に博士後期課程における大学院教育の実質化だと思います。国際化、あるいは企業からのニーズにもこたえ得るだけの大学院教育をきちっと行っているかが問われており、それがこれからの大学院課程博士の重要なポイントになると思いますので、そこを我々がきちんとやっていくという形で、新時代の大学院教育の実質化を行うということが一番大事ではないかと思います。

 【有信部会長】
 ありがとうございました。質の話で、もう一つの話題であります評価の話ともかかわってくる話ですが、関連してご意見はありますでしょうか。

 【河田委員】 
 私も全くそのとおりで、論文博士の制度を残したために課程博士がおろそかになってはいけないわけです。しかし4年前の「新時代の大学院教育」がこのように方向性をつけたために、それをそのまま踏襲しなければならないとは思いません。やはり今の時代に合わせて、企業の方も論文博士に存在価値があると言っているわけですから、その制度を残していけばどうでしょうか。
 私はいつも学生諸君に、課程博士というのは研究者としての出発の免許状で、あなたたちはその出発の免許を取得しただけだと言っております。

 【有信部会長】 
 ありがとうございました。どうしても議論が理工系中心になってしまいますが、人社系を含めてこの議論を全部カバーするのは難しいかもしれませんが、人社系だと論文博士というのは相当また大変なんですよね。

 【金子委員】 
 今まではそうでしたが、少しあいまいになりつつあるのかなと、今お話を伺っていて感じました。ただ人社系の場合は、1つは大学院の課程を全然とっていない人は、実は少ないのではないかと思います。大部分は大学院を修了している人が論文を出さないで、修了後2年でしたか、3年でしたかのうちに出さないと、これはもう論文博士を出せなくなりますので、その人たちがかなり出しているケースだと思います。
 例えば私などは論文博士を5人ぐらい出していますが、多分みんなそうだと思います。ですから、理工系の場合で企業で働いていた方が取るのと少しケースが違うのではないかと思います。真ん中くらいのケースになるのではないかと思います。
 ただ、お話を伺っていて思いましたのは、研究能力の確認といいますか、課程を修了した内容に相当する部分の証明を、口答試問のようなテストをしなければいけないことになっております。審査結果にそれをつけなければならないのですが、その部分が多少形骸化していますから、先ほどから出ていますような懸念が全体的にあるのであれば、論文博士について、どういう能力が必要であるかということをきちんと書く、論文のみを提出する場合には、論文だけでなく、どういった要件が必要なのかということを、同じ博士でも、ある程度きちんと明記するという手はあるかと思います。

 【有信部会長】 
 ありがとうございます。
 あとは評価の問題がありますが、ここまで行くと話がかなりばらばらになるので、評価の話はまた改めて議論ということでいかがでしょうか。いずれにしても、評価も大学院答申の中で具体的に大学院の評価を行うという方向づけが出されていて、これも最終的には分野別に評価を行うという方向になっています。
 現在、専門職大学院についての評価が始まっていて、これは当然ながら分野別評価ということになりますし、新たに認証評価機関も手を挙げてきていて、4件ほど近々審査をするという段取りになっています。したがって、大学院の評価というのが専門職大学院から順番に始まっていくということになると思います。
 論文博士については、むしろ博士課程の在り方の議論をきちんと詰めていく中で、それに対応して論文博士の在り方が決まるという形で最終的に詰めていければと思いますし、博士課程の在り方を詰めるということは、結果的に言うと博士課程と修士課程をどう切り分けるかということにつながりますので、この辺の制度設計をきちんとクリアにしていく必要があると思います。
 例えば英国や米国のように、博士課程と修士課程を全く独立にしてしまうという考え方がありますが、博士課程と修士課程を全く独立にしてしまうと、修士課程そのものは、ある意味では専門職大学院により近くなり、修士課程では特に研究能力を涵養する必要はないということになります。教養的な知識であれ、専門的な知識であれ、それぞれが必要な知識をそこで身につけて、身につけたことの証明として修士の学位が与えられるということです。
 それなりの専門的な知識を身につけた分だけ、社会的につく職業のクラスのレベルが上がり、結果的に収入に結びつく、これはもうある意味ではいわゆる専門職大学院の課程と基本的には同じ構図になります。
 博士課程は基本的に研究者を育成するコースで、この中で高度な研究者を育成するということ。従ってこの年限は自由に設計もできるし、その中で、その研究者育成の研究者とは何かというベースに基づいて必要な要件が決められていて、例えばアメリカだと、みんなすべてが同じというわけではありませんけど、Ph.D. candidateとなるための要件、試験、関門というのは、やはり共通に非常に難しいということになっているようですので、この辺の設計をどういうふうにするかと言うことになるかと思います。
 今の日本だと博士課程前期、あるいは修士課程では、必要な単位数はさっき審議官がおっしゃったように30単位で、博士課程はおそらく10単位ほどあったと思います。ただ修士のときに40単位全部とってしまえるということで、ドクターコースに行ったら、昔だったら全く単位をとらなくてもよかったということだったと思います。そのような設計でほんとうにいいのか、それはまた見直さなければならないという話になると思います。
 この辺をだれが見直すかという話ですが、それぞれまた分野別のワーキンググループの中で検討し、分野ごとに詰めていただいた結果を、どういう形で共通化できるかということだと思います。そのときにやはり見なければならないのは、グローバルな視点での折り合いをどのようにつけていくかということです。
 いずれにしても、学位というのが共通に評価をされなければならないということに、必ずつながっていきます。国際的な職業に就こうと思うと、そこで要求される学位はリファレンスとして国際的に共通性を持つということが、当然先々要求されてくる。今は前提としてみんなPh.D.はPh.D.で各国暗黙に認めていますが、これがだんだんシビアになってくると、そこの部分はお互いに折り合わせなければならなくなってくる可能性がありますので、そこも一応視野に入れて、各ワーキンググループで議論していただければと思います。
 医療系は特にまた、資格制度が全然違うという中で、どうやっていくかという問題もはらんでいますので、この辺を含めてご検討いただければと思います。

 【梶山委員】 
 ちょっと質問させてください。私がアメリカでPh.D.を取ったとき、大学事務局から電話がかかってきました。君は、修士号は要るかと。もし欲しければ、事務手続きのため20ドル支払えばもらえる、というわけです。結局、博士課程の資格を得たときには修士課程の要件も満たしているわけです。そのとき日本の場合どのようになっているのでしょうか。

 【小松高等教育局審議官】 
 一貫制の場合は、通常は両方取得できます。取得しないと言うこともできますが、通常は2年目に将来の就職のことや、3年後にうまくいかなかったことを考えると、出すという例が多いと聞いております。いずれにしても、博士課程といっても純粋に修士を出さない博士課程というのは、医学などは別としてほとんどありません。そういう意味では一種両立て、修士の上に博士が乗っているのにかなり近い制度が圧倒的ということだと思います。

 【金子委員】 
 修士、博士の関係について、幾つかのワーキンググループのお話を聞いておりますと、今の修士はかなり活用されており、工学系のように、修士での就職についてはあまりが問題なく、問題は博士課程であるというところもありますし、あるいは、就職はしているけれども、さらにその先が難しいところもあると思われます。
 しかし、人文社会系は今の段階では、定員が過剰になっているのではないかという感覚は否定できないのではないかと思います。これは博士課程と修士課程の相対的な関係もありますが、修士課程の段階自体で既にかなり過剰である可能性はあると思います。ただ実際これをどのように考えるかというのは問題でありまして、それは自分で選択しているわけですからいいではないかという考え方もありますし、ただそれに対して本当に情報が公開されているのか、そこについてはちゃんと情報公開すべきではないかという議論もあるだろうと思います。
 ただ、これは幾つかの違った状況が徐々に明らかになっているわけですが、総数についてどう考えるかというのについては、どういう態度で示すのか、幾つか考え方はあると思いますが、例えば評価のときに、定員が充足していないとマイナスでつけるのかどうか。これはつけられる場合もあるわけです。
 また様々なランキングでは、これはマイナスについてしまう場合があり、一生懸命充足させようと思って頑張る先生もいるわけです。不幸を増殖させると言っている部分もあったりするわけですが、そういうことについて、評価ではどう考えるのか。
 それからもう一つは、情報公開をどの程度するのかといった問題も、行政的にはやっぱり出てくるのだと思います。これは文科省にお聞きしたいんですが、ここから議論としては、どこら辺に最終的にはつながっていくとお考えなんでしょうか。

 【小松高等教育局審議官】 
 それは今の規模感の問題でしょうか。

 【金子委員】 
 それはあるということです。

 【小松高等教育局審議官】 
 内容、方法論については、前回の「新時代の大学院教育」はかなりそこに集中して、それが喫緊の課題だということで、今現在の見直しもそこが中心ですから、そういう意味では今のご議論の流れからすると、まずやはり内容、方法中心ということだろうと思います。その上で今回の諮問の中には、分野ごとの規模というようなことも入っておりますので、それを議論すると言うことだと思います。
 ただ、今おっしゃったように、現時点でどのくらいのスパンで過剰であると考えるか、そうでもないと考えるか。あるいは社会的風潮も今いろいろ違ってきていますけれども、入ってくる人が例外を除いて、一番若い人でも22歳というのが基本ですから、その場合に情報の非対称性、つまりちゃんと伝わっているかという問題は大いにあるわけです。その一方で各大学でも出し方もまたいろいろ、たくさん出しているところもあまり出していないところもあるというのを、今から少し前ですと、入学するかどうかを決める人が成人の社会構成員である以上、自分で判断するということがかなり強く言われておりましたし、今現在、非常に経済情勢、雇用情勢が悪い中で言うと、むしろ何らかのプロテクトを考えたほうがいいのではないかという、社会的な議論がかなり強くなっておりますので、その辺を見ながら最終的にどういう結論を出すかというのをご相談というか、ご審議いただくということになろうかと思います。今現在はそこまでかと思います。

 【金子委員】 
 ちょっとよろしいですか。1つ私が気になりましたのが、大学を認証評価機関が評価をする場合、充足率が低いと、やはりかなりマイナスに評価する例が多いようだということです。私はもうマイナス評価する必要はないのではないかと思いますが、そのような信号はどこがどのように出せばいいのか。放っておけば、認証評価機関は今までの考え方からすれば、そんなに学生が来ないんだから価値がないという判断をすると思います。しかし私は、そのように考える必要は必ずしもないのではないかと思っています。

 【小松高等教育局審議官】 
 そこは当然政策論としてご議論があるところだと思います。ただ、今までの仕組みで申しますと、定員と、例えば教員の配置の最低基準などが結びついており、またそれと公費助成というようなものも結びついており、これが国民から強制徴収する税源をどのように配分するかということにつながっておりますので、賛否はあると思いますし、今回の諮問にもありますように、組織というものを中心に大学を見ている部分と、それから学位プログラムという内容の固まりで見ている部分と、どういうバランスにするかということは、諮問の中でも議論はございますが、後者の場合ですと組織ではないので、定員というのは関係ありませんし、今おっしゃられたとおりだと思います。
 それから今までの議論は、学位プログラムの中身をしっかりさせるという議論が進んでいますので、先生がおっしゃるような方向というのもあり得なくはないと思いますが、他方で先ほど申し上げましたような社会的な制度として公的な支援、これは例えば逆に言うと、税制優遇なども含めてですが、そういったものと、どのくらいの量の教育を供給するかということが結びついているという点からいたしますと、その定員と充足率というのは基本だという考え方も当然ありますので、その間をどのように調整するかということではないかと思いますが、今現在ちょっとそれは事務方で、こちらとは誘導しにくいと思っております。

 【有信部会長】 
 定員規模の話については、現状でどうだという議論に対して、もともと定員を拡充するときの基本的な問題意識があり、日本の大学院の在籍者数は、欧米諸国に比べて一般論として圧倒的に少ないということがあげられています。これは人文社会系の定員を増やすときも、当然それを見ているはずだと思います。
 それが充足しないのは、日本社会の特殊的な状況ということはあると思いますが、将来的なことを考えると、今理工系で、例えばドクターを持っていないと大学の先生にはなれないであるとか、あるいはどこかの職に就こうとするとそれに就けないというような状況が起きており、これは人文社会系でも、逆に言うと国際機関で特定の職に就こうと思うと、それなりの学位を要求されるということがありますので、そのようなことを鑑みる必要があります。なぜ定員が充足されないかということは、やはりよく検討する必要がありますが、詰まるところミスマッチだろうと思います。
 しかしそのミスマッチには、かなり深い根があり、これを一気に解消するわけにはいかない。だからといって、定員を単純に縮小するということで解決していいかというと、これもまた将来に禍根を残すだろうと思いますので、やっぱりちゃんとした方向づけをしていかないといけないと思います。
 理工系のドクターの場合もやっぱりそうで、今たまたまこういう状況にはなっていますけど、さっき五神委員が言われたように、普通はほんとうにそういう職に就こうと思えば、まずドクターコースを出て就く。それ以外にも、ある意味での救済策は一定の期間残すということはやっても構いませんけど、そういう方向でやっぱり本質的なところをよく議論していく必要があると思いますので、各ワーキンググループにおいて、もう少し議論を続けていただければと思います。
 それでは今日の議論は一応ここで打ち切りということにして、事務局の連絡をお願いします。

 【今泉大学改革推進室長】
 次回の大学院部会の日程でございますが、後日調整の上、連絡いたします。

 【有信部会長】 
  お忙しい中ありがとうございました。これで終了させていただきます。

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-- 登録:平成22年07月 --