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資料 3-3

アメリカにおける大学の質の保証のシステム【その1】
−州政府による設置認可−

   アメリカ合衆国においては、高等教育の質の保証は、1州政府による大学の設置認可(資料:その1)と2民間団体であるアクレディテーション機関によるアクレディテーション(適格認定)(資料:その2)によって行われている。
 
1   ニューヨーク州の例
   ニューヨーク州において学位授与権を有する私立大学として高等教育を実施しようとするものは、州教育法上、ニューヨーク大学区理事会(The Board of Regents,The University of the State of New York  以下「大学区理事会」という。)による教育法人としての認可(Charter)を受けるとともに、その実施する教育プログラムについて同理事会の登録(Registration)を受けなければならないこととされている。
 
(1)教育法人認可及び教育プログラム登録のプロセス 
    1 州教育省大学評価局による書面審査
    2 職員及び専門性を有するコンサルタントによる実地調査
    3 実地調査に基づく報告案の作成及び申請者による意見申立
    4 地域内の全ての大学に対する意見聴取等の計画審査
    5 教育省副長官から大学区理事会に対する報告
    6 大学区理事会による認可及び登録の決定
       
    教育法人として新設されるまでには、一般にまず「暫定認可」(1年以上5年以下)を受け、その後「正式認可」を受けるという過程を経る。
 
(2)教育プログラム登録に係る主な基準 
    1 教育資源及び財源
     
機関の使命及び登録カリキュラムの目的を達成するのに必要な財源を有していること
    2 教官
     
全ての教員が教育課程の提供等教育上の責任を果たすための能力があることを証明していること
学士までのカリキュラムについては、少なくとも教員の一人は適切な分野における博士号を有していること
大学院レベルの学位に結びつくカリキュラムを指導する全ての教員は、担当する分野の博士号その他の最終学位を有していること又はその他の特別の能力があることを証明していなければならないこと
    3 カリキュラム及び学位
     
準学士(associate degree)のプログラムは、原則として2年間のフルタイムの学習又はこれに相当するパートタイムの学習によって、少なくとも60単位履修時数の履修によって修了することができるものであること
学士(baccalaureate degree)のプログラムは、原則として4年間又は5年間のフルタイムの学習若しくはこれに相当するパートタイムの学習によって、少なくとも120単位履修時数の履修によって修了することができるものであること
修士(master's degree)のプログラムは、原則として1年間のフルタイムによる大学院レベルの学習又はこれに相当するパートタイムの学習によって、少なくとも30単位履修時数の履修によって修了することができるものであること。修士のプログラムには研究若しくはこれに相当する専門的な経験を含むものとし、修士号の要件は、原則として総合的な試験への合格又は独立した研究等に基づく論文作成のいずれかを含むものとする。
博士課程(doctoral program)は、学部レベルの学位を修得した後、少なくとも3年間のフルタイムの学習又はこれに相当するパートタイムの学習を必要とする。博士課程には、独自の研究による相当のレポートの作成、特定テーマに関する独自の調査、適切な独創的研究の成果又は高度職業的技術に関する明確な進展を含むものとする。
 
(3)必要提出書類
    …別紙参照
   財源、施設、設備、教育課程、教員、学校管理等
 
(4)認可・登録の変更
    1 認可は以下のような事由が生じた場合に変更を必要とする。
     
新たな学位の称号の創設、別レベルの学位の創設
住所の変更又は支部キャンパスの設立
認可状で認められている範囲を超える活動
    2 登録プログラムについて以下のような変更を加える場合には認可が必要。
     
学部レベルのプログラムにおいて15以上の必須単位を変更する場合
単位数に関わらず、プログラムの焦点(focus)に変更を加える場合
当該プログラムが属する学問分野(disciplinary area)の変更(例:犯罪学(社会科学)→法医学的科学(物理化学))
プログラム実施場所の変更
教育手段の変更(例:遠隔教育)
学位の名称の変更(例:BS→BBA)
二つの登録プログラムから短縮型二重プログラムへの変更(例:BSと2年制のMSを統合して5年制のBS/MSに変更)
 

 
別紙
 
必要提出資料
 
   以下のリストは最低限必要な情報である。申請に係る審査において、さらなる情報が必要となり得る。
 
【一般的事項】
1    申請の概要
2    当該機関の総長又は所有者(President or Owner)によるサインのある文書
3    当該申請に関して助言を行っているコンサルタントの名前及び履歴書
4    大学評価局によって承認されている外部審査員2名以上による報告書
5    当該機関又はその所有者によって運営されている学校がある場合には、当該学校の名称及び住所
6    申請者によって過去に運営されていた学校がある場合には、当該学校の名称及び住所
7    私立学校監査局(Bureau of Proprietary School Supervision)、ニューヨーク州高等教育サービス会社(NYS Higher Education Services Corporation)、連邦教育省、州会計監査局及びアクレディテーション団体のうち、ふさわしいものについて、これらの団体と当該教育機関とが何の顕著な問題も有していないことを表明している文書
8    第4章ローンの延滞状況
9    申請に関する事案に関して職員が過去に重大犯罪に関する履歴が無いことについての書面
10    係争中の裁判について全て公にされているということに関する文書
 
【財源、施設、設備、図書館】
11    過去3年間の資格のある検査員による財務上の書面
12    現存するスペースについて、住所、位置、面積、設計及び部屋の使用法についての記述
13    新規又は追加のスペースについて、上記の詳細及び占有時期及び新規及び既存の建設契約及び(又は)賃貸契約書
14    現存するコンピュータのリスト及びこれに係る維持・修繕契約書のコピー、種類、設置場所及び使用方法
15    予定している新たなコンピュータについて上記と同様の情報及び設置日時
16    申請プログラムを実施するために必要な医療及び工学設備のリスト及びその種類、場所及び使用方法
17    新たに設置しようとする設備に関する同様の情報
18    図書館に関する面積、書棚、司書の机及び仕事場所、学生の座席の設備に関する記述
19    専門の司書が存在している時間帯及び図書館の開館時間
20    図書館に存在するコンピュータの数及び種類、学生がアクセスできるデータベース、これらの機能を高度化する計画の詳細、日程及び費用
21    図書、雑誌、ソフトウェア又はその他の工学系のマニュアル及びスライド等の購入に係る過去3年間の支出目録
22    当該教育機関において雇用されている専門の司書の氏名及び履歴、その者の研究業績及びその他の論文又は彼らが提出した自己推薦状のコピー
23    当該教育機関において雇用されている図書館のコンサルタントの氏名及び履歴、その者の研究業績及びその他の論文又は彼らが提出した自己推薦状のコピー
24    他の教育機関又は図書館との間で交わされている収集物の使用に係る契約書のコピー。学生及び教員に対していかなるサービスが提供されることとなっているか、提供するプログラムをサポートする観点からどのような資料を注文することができるか、これらのサービスを提供するに当たっての財政上の寄付及び協力図書館における担当職員の氏名及び電話番号
 
【教育課程】
25    課程学位及び資格のプログラムのリスト及びこれらに係る正式な名称、学位の称号及び必要総単位数
26    現在私立学校監督庁の下で活動している学校が継続して非学位プログラムを実施する場合、そのリスト
27    申請プログラムに係る教養(liberal arts)及び自然科学科目(science work)の単位数及びこの課程を満たすためのコースのリスト
28    伝統的教室モデル以外の教育方法により提供されるプログラム又はコースに係る詳細な記述
29    提供しようとするフィールドワーク又はインターンシップについての詳細な記述、単位としての扱い、それが必修か任意か、就職情報、監査及び評価
30    一年の学期の構成及び学期を構成するフルタイムの日程
31    各学期中の各単位に必要とされる教室における指導の時間及び教室外での課題学習時間の総数
32    申請するプログラムと類似又は同一のプログラムを実施しているニューヨーク州又は北東部地区の他の教育機関の名称
33    ニューヨーク州又は北東部地区で、当該教育機関が申請しているプログラムを教授するために教員を用意して修士号又は博士号のプログラムを有する教育機関の名称
34    申請コースに関するシラバス。(当該コースを構成するトピック、読み物・書き物の課題、課程修了基準、当該シラバスを作成した個人の名称を含む。)
 
【入学要件】
35    特定の足切りとして利用している、高等学校資格、GED、又はテストのスコアなどの入学基準及び当該テストの名称
36    必要とされる特定の足切りに関する診断テスト。補習授業の単位としての取扱及び卒業要件。ESL(English as a Second Language)を含む。
37    各申請プログラムに関する当初5年間のフルタイム及びパートタイム学生の受入計画
 
【教員】
38    現在又は予定するフルタイムの教員のリスト、過去2年間に教えたことのあるコースを示す履歴書;もし当該学科に関して学位を有しない場合には当該教員の任務に係る根拠、及びフルタイムの定義
39    パートタイム又は補属する教員の同様のリスト
40    1学期間において許容される単位に係る最大の責任授業時数及び当該教育機関外で職務を有する教員についての責任授業時数の方針及び調整方法
41    過去2年間のいずれかの学期において15時間以上授業を担当した者のリスト、コースの課題研究及び登録者数
42    フルタイム教員について、必要学位、教育に係る任務、日付及び雇用に関する教員の追加あるいは昇格に関する計画
43    39に係るパートタイム教員の情報
44    現存する全てのフルタイム教員の契約書のコピーで、教育その他の専門性に関する必要事項、契約期間及び報酬の記載されているもの。
45    学問上の助言に関する教員の役割、指導学生の数及び勤務時間に関する記述
46    前年度のリストの上位8人のフルタイム教員及び10人のパートタイム教員(アルファベット順)に関する職員及び学生の評価のコピー
47    過去2年間のフルタイム教員の大学管理上の学部レベル又は全学レベルの役割、委員会の構成員総数、委員会の議事録及び教授会の議事録
48    ファカルティ・ディベロップメント支援方策の記述。地域の研修会、大学院研究の支援、専門的研究及び出版の支援、特定個人に関する支援の水準及び日程に関する例
49    学位授与権のある大学において指導したことのある教員についてはその者の氏名、当該大学の名称、指導したコース、日時及び経験、フルタイム又はパートタイムの別、及び当該教員のスーパーバイザーの氏名及び電話番号
 
【学校管理】(Administration)
50    主要な大学管理担当者の履歴、学問的業績及び現在の職務の準備のための過去の経験
51    過去2年間の管理担当者としての研修についての記述
52    卒業生に対して提供された職業指導、これに係る費用及び職業指導の記録についての記述
53    過去2年間の学生在籍率及び修了者率
 
【出版物等】
54    入学及び奨学金に関する様式のコピー
55    成績証明書の完全なコピー(氏名を除く)及び現在計画中の変更点がある場合には、それについての記述
56    学生及び教員用のハンドブックのコピー
57    現在の大学便覧のコピー又は申請が認可された場合の便覧の原案のコピー
 
【ニーズ】
58    申請プログラムの卒業生に対するニーズの証明。教育に対する出費を正当化できるだけの当該分野における給与を示す雇用データ
59    地域内の他の教育機関においては未だ供給を満たしていないことについての証明
 
2   カリフォルニア州の例
   カリフォルニア州において、学位授与権を有する私立大学として教育サービスを提供しようとするものは、州教育法上、私立中等後教育・職業教育局(以下「当局」という。)による認可を受けなければならないこととされている。
   ただし、地域別アクレディテーション団体である西地区基準協会による適格認定を受けている教育機関については、この法律は適用されない。
 
(1)認可のプロセス
1 学校活動計画書(operational plan)の申請
2 書面審査及び一時的認可(temprorary approval)
  当局は学校活動計画書等に基づき問題がないと判断した場合には、90日以上360日の範囲で一時的認可を与える。
3 現地調査
  当局は、申請機関が一時的認可から教育活動を開始してから90日〜180日の間に調査団を組織し現地調査を実施させ、その報告を受ける。
4 再審査・認可の決定
  当局は、現地調査の報告を踏まえ、90日以内に、15年を超えない範囲の認可(approval)、22年を超えない範囲の条件付き認可(conditional approval)、3不許可(deny)のいずれかの措置をとる。
   
   当局は、当該機関が認可基準を逸脱していると認める場合には、当該機関を24ヶ月を超えない期間、特別観察下に置くことができる。特別観察期間中には、当該機関は定期報告を提出しなければならず、また当局による特別視察を受けなければならない。特別観察期間終了時において改善が見られない場合には、当局は学位授与に関する認可を取り消すことができるとともに、活動停止を通告することができる。
 
(2)主な基準
1 申請された教育プログラムを実施するのに十分な施設・設備、財源、管理事務組織、教員等を備えていること
2 教員が、担当する教育段階、領域を指導できる資格あるいは学位を有していること。また、教育サービスを提供するに足る十分な人数の教員がそろっていること。
3 カリキュラムや教育サービスは、提供される教育プログラムと整合性がとれていること。
4 施設設備は教育目標の達成に適切かつ教育サービスの質の維持に十分なものであること。
5 学位取得につながる課程において、取得学位が保障する学力水準に到達できるようなカリキュラムが提供されていること。
6 在学生に対する学習・研究上の指導助言体制が整備されていること。
7 学生の職業経験や学習経験に対して単位を支給する場合、十分な体制が整備されていること。
 
(3)認可にあたっての審査事項
1 機関の目的、使命及び目標
2 管理運営
3 カリキュラム
4 教育指導
5 教員。その資格を含む
6 物理的施設
7 人事管理
8 教育の記録保管の過程
9 授業料、納付金及び返還金の一覧
10 入学資格
11 奨学金政策及びその実際
12 学則及び卒業要件
13 倫理的目標及びその実際
14 図書館その他の学習資源
15 学生活動及びサービス
16 提供される学位
 
(4)認可の変更
法令上、当該教育機関において次のような変更が生じる場合には、当局の認可を受けなければならないこととされている。
 
1 当該教育機関の所有権又は管理権に関する変更
2 当該機関の所在地の変更
3 教育場所の追加
4 当該機関の使命、目的、目標又は主要な教育手段の変更

 

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