資料3‐3 アメリカ合衆国のチャーター・スクールについて

1.チャーター・スクールの概要

 従来の公立学校では改善が期待できない,低学力をはじめとする様々な子どもの教育問題に取組むため,親や教員,地域団体などが,州や学区の認可(チャーター)を受けて設ける初等中等学校で,公費によって運営。
 州や学区の法令・規則の適用が免除され,一般の公立学校とは異なる方針・方法による教育の提供も可能。ただし,教育的成果をチャーター交付者により定期的に評価され,一定の成果を挙げなければ,チャーターを取り消される。
 なお,アメリカ合衆国では教育に関する権限は州にあり,チャーター・スクールに関する制度は州によって異なる。このため,チャーター・スクールの設置許可の主体や設置許可数の制限の有無,教員免許を持たない教員の任用の可否などは,州によって様々であるが,これを概略的にまとめたのが以下のもの。

設置者の多様性

 教員,親,地域団体など。公立学校・私立学校からの転換も可。

独自の教育方針・方法

 多くの法令・規則の適用が免除され,一般の公立学校と異なる方針・方法による教育の提供も可。州によっては,教員免許を持たない者もフルタイムの教員として教壇に立つことを容認。

公費による運営・無償制

 公費によって運営,授業料の徴収なし。

契約制・チャーターの取消

 州,学区と設置者の間で児童生徒の学力等の改善に関する契約を締結。成果が挙がっていないと判断されればチャーター取り消し。

学校選択制

 通学区域を超えて児童生徒を集める。

無選抜制

 一般の公立学校と同様,原則としてすべての希望者を受け入れる。

2.設立の背景

地域(学区)間格差の問題

 人種や所得階層の住み分けによる教育条件の地域間(学区)間格差。

学力の低下

 基礎学力の低下。

学校の荒廃

 薬物,暴力,ドロップアウトなど。

3.経緯

 1991年,ミネソタ州で設置を認める法律が成立。翌92年に同州で全米最初のチャーター・スクールが設置された。これに続き,92年にはカリフォルニア州で,93年にはコロラド州やジョージア州など6州で同様の法律が制定され,設置を認める州が増えるにともない,学校数も増大した。
 1997年の一般教書演説でクリントン大統領は,西暦2000年までにチャーター・スクールを全米で3,000校にまで増やすことを提言した。
 2001年に就任したブッシュ大統領も就任直後に発表した教育改革方針(No Child Left Behind)においてチャーター・スクールを支持することを明らかにした。

4.設置・運営

設置を認めている州

 2001年秋時点で37州及びワシントンDC

設置数の制限

 多くの州は,設置数を制限

財政

 経常費は学区が公費を配分。施設,設備費は設置者が負担(ただし,連邦の補助金有り)

チャーターの期限

 多くの場合数年(5年程度)

5.実態

設置状況

 2,150校(2000年12月:全米の公立学校の約2%)
 [(参考)日本における私立学校全体の比率:小学校0.7%,中学校6.1%]

在学者数

 約52万名(2000年秋:全米の公立学校在学者の約1%)

学校の規模

 一般の公立学校に比較し小規模。

教育プログラム

 非常に多様。

在学者の特徴

 個別の学校の人種構成をみると偏りがみられる学校が多い。

設置形態

 新設:約7割/公立からの転換:約2割/私立からの転換:約1割

チャーター取り消し状況

 これまでに全体の4%の学校で取り消し

6.チャーター・スクールに対する評価

 評価は定まっていないが,一般的には以下のことが指摘されているところ。

(1)長所

  • 独自の理念・方針に基づく教育の実現
  • きめ細かな指導
  • 学力の維持・向上

(2)批判・問題点

  • 学校閉鎖等による教育機会の均等への悪影響
  • 学校運営費(公財政)の適正な運用を保証する仕組みの欠如や財政運用の失敗によって負債を抱えた場合の対処等の財政的な問題
  • 教育の質の低下に対する懸念
  • 一般の公立学校との摩擦
  • 学校評価の不徹底による学力向上への貢献に対する疑問
  • 人種分離に対する懸念

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初等中等教育局初等中等教育企画課

(初等中等教育局初等中等教育企画課)

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