3.学習評価の在り方について

  • 学習評価は、学校における教育活動に関し、子供たちの学習状況を評価するものである。「子供たちにどういった力が身に付いたか」という学習の成果を的確に捉え、教員が指導の改善を図るとともに、子供たち自身が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにするためには、この学習評価の在り方が極めて重要であり、教育課程や学習・指導方法の改善と一貫性を持った形で改善を進めることが求められる。
  • 子供たちの学習状況を評価するために、教員は、個々の授業のねらいをどこまでどのように達成したかだけではなく、子供たち一人一人が、前の学びからどのように成長しているか、より深い学びに向かっているかどうかを捉えていくことが必要である。
  • また、学習評価については、子供の学びの評価に留まらず、下記4.(1)に述べる「カリキュラム・マネジメント」の中で、学習・指導方法や教育課程の評価と結び付け、子供たちの学びに関わる学習評価の改善を、教育課程や学習・指導方法の改善に発展・展開させ、授業改善及び組織運営の改善に向けた学校教育全体のサイクルに位置付けていくことが必要である。

評価の三つの観点

  • 現在、各教科について、学習状況を分析的に捉える観点別学習状況の評価(※1)と、総括的に捉える評定とを、学習指導要領に定める目標に準拠した評価として実施することが明確にされている。評価の観点については、従来の4観点の枠組みを踏まえつつ、学校教育法第30条第2項が定める学校教育において重視すべき三要素(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」)を踏まえて再整理され、現在、「知識・理解」「技能」「思考・判断・表現」「関心・意欲・態度」の四つの観点が設定されているところである。
  • 今後、小・中学校を中心に定着してきたこれまでの学習評価の成果を踏まえつつ、目標に準拠した評価を更に進めていくためには、学校教育法が規定する三要素との関係を更に明確にし、育成すべき資質・能力の三つの柱に沿って各教科の指導改善等が図られるよう、評価の観点については、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に沿った整理を検討していく必要があると考える。その中で、観点別学習状況の評価と、それらを総括した評定との関係についても、改めて整理していくことが求められる。
  • 観点別学習状況の評価の観点は、各教科における教育の目標と表裏一体の関係にあることから、今後、各教科において、育成すべき資質・能力を踏まえて教育の目標を検討する際には、評価の観点の在り方と一貫性を持った形で検討を進めていくことが必要である。
  • その際、2.(2)1.3)(「学びに向かう力、人間性等」)に示された資質・能力には、感性や思いやりなど幅広いものが含まれるが、これらは観点別学習状況の評価になじむものではないことから、評価の観点としては学校教育法に示された「主体的に学習に取り組む態度」として設定し、感性や思いやり等については観点別学習状況の評価の対象外とすべきである。
  • なお、観点別学習状況の評価には十分示しきれない、児童生徒一人一人のよい点や可能性、進歩の状況等については、日々の教育活動や総合所見等を通じて積極的に子供に伝えることが重要である。

  • ※1 補足資料39ページ参照。

評価に当たっての留意点等

  • 現在の「関心・意欲・態度」の評価に関しては、例えば、正しいノートの取り方や挙手の回数をもって評価するなど、本来の趣旨とは異なる表面的な評価が行われているとの指摘もある。「主体的に学習に取り組む態度」については、このような表面的な形式を評価するのではなく、2.(3)2.3)に示した「主体的な学び」の意義も踏まえつつ、子供たちが学びの見通しを持って、粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげるという、主体的な学びの過程の実現に向かっているかどうかという観点から、学習内容に対する子供たちの関心・意欲・態度等を見取り、評価していくことが必要である。こうした姿を見取るためには、子供たちが主体的に学習に取り組む場面を設定していく必要があり、「アクティブ・ラーニング」の視点からの学習・指導方法の改善が欠かせない。また、学校全体で評価の改善に組織的に取り組む体制づくりも必要となる。
  • なお、こうした観点別学習状況の評価については、小・中学校と高等学校とでは取組に差があり、高等学校では、知識量のみを問うペーパーテストの結果や、特定の活動の結果などのみに偏重した評価が行われているのではないかとの懸念も示されているところである。義務教育までにバランスよく培われた資質・能力を、高等学校教育を通じて更に発展・向上させることができるよう、高等学校教育においても、指導要録の様式の改善などを通じて評価の観点を明確にし、観点別学習状況の評価をさらに普及させていく必要がある。
  • また、三要素のバランスのとれた学習評価を行っていくためには、指導と評価の一体化を図る中で、論述やレポートの作成、発表、グループでの話合い、作品の制作等といった多様な活動に取り組ませるパフォーマンス評価を取り入れ、ペーパーテストの結果に留(とど)まらない、多面的な評価(※2)を行っていくことが必要である。さらには、総括的な評価のみならず、一人一人の学びの多様性に応じて、学習の過程における形成的な評価を行い、子供たちの資質・能力がどのように伸びているかを、例えば、日々の記録やポートフォリオなどを通じて、子供たち自身が把握できるようにしていくことも考えられる。
  • こうした評価を行う中で、教員には、子供たちが行っている学習にどのような価値があるのかを認め、子供自身にもその意味に気付かせていくことが求められる。教員一人一人が、子供たちの学習の質を捉えることのできる目を培っていくことができるよう、4.(2)に示すような研修の充実等を図っていく必要がある。
  • このような評価の在り方については、本「論点整理」を踏まえ、審議まとめに向けて引き続き専門的な検討を行うことが求められる。

  • ※2 補足資料40ページ、203ページ参照。

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-- 登録:平成27年11月 --