資料1-4 初等中等教育分科会(第99回)議題に関する意見

横浜市長 林 文子

「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」

 今回の中間まとめで示された「チームとしての学校」の考え方については、学校における様々な課題解決及び教職員の負担軽減のためには大変有効な考え方であると思います。
 以下の5点について、国におけるご検討をお願いしたいと思います。

1 小学校の児童支援専任教諭の定数化、法令への位置付け

 学級担任制をとる小学校の教職員定数は、教科担任制をとる中学校の教職員定数と比較すると少なく、また、中学校は以前より生徒指導担当教員分の定数が措置されてきたのに対し、小学校は十分に手当されてきていません。
 しかし、いじめや不登校などの児童生徒指導上の課題は小学校においても深刻化しており、発達障害の子どもへの対応などの特別支援教育は小学校の早い段階からの適切な指導が大切です。
本市においては、いじめや暴力行為、不登校、発達障害など児童が抱える諸問題への対応の中心的役割を担うとともに、児童相談所などの関係機関・地域との連携を進める対外的な窓口として児童支援専任教諭を独自に配置し、特別支援教育コーディネーターを兼任させています。日常的に児童と接している教員の立場で諸問題への対応に当たり関係機関との連携を担うことで、大きな効果を上げています。((参考)参照)
こうした実績を踏まえると、本市としては、まずは児童支援専任教諭の定数化を実現していただき、あわせて、学校教育法施行規則における中学校の生徒指導主事に相当するものとして、小学校にも同様の規定を置いていただくよう、お願いしたいと考えております。
「チームとしての学校」の検討に当たり、児童支援専任教諭のような特定の役割を担う教員を教職員定数に位置づけることの重要性についてもご理解をいただきたいと思います。

(参考)児童支援専任教諭の配置による効果

児童支援専任教諭…22年度より段階的に配置し、26年度から全小学校に配置

≪横浜市におけるいじめの状況≫

グラフ1 横浜市におけるいじめの状況

児童1000人あたりの認知件数が4.7倍増加
(21年度2.6件→25年度12.3件)

グラフ2 横浜市におけるいじめの状況

いじめの解消率が8.2ポイント向上
(21年度88.9%→25年度97.1%)

2 スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーとして優れた人材の確保

「小中一貫型カウンセラー」の取組について

 学校現場において、居所不明や子どもの貧困の深刻化、虐待を受けている子どもや障害のある児童生徒が増加している現状を踏まえ、学校が福祉と連携できる具体的な仕組みを早急に整えることが必要です。
 中間まとめでは、将来的にスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーを正規職員として位置付けるとされています。そうした専門職の処遇の改善、配置の充実が必要であり、早急な対応をお願いしたいと思います。また、あわせて、優れた人材確保のための取組を行っていく必要があります。スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーになる方は、学校現場をしっかりと理解し、教育に関する正しい情報・知識を持った心理・社会福祉の専門家であることが必要です。
 そのため、国においては、大学における養成段階の課程の充実や、自治体が採用した後の研修に対する支援など、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの養成から採用後の育成までを見通した支援をお願いしたいと思います。
また、スクールカウンセラーについて、横浜市独自の取組として中学校と同一学区の小学校に同じカウンセラーを派遣する「小中一貫型カウンセラー」の配置を進めており大きな効果を上げていますので、今後の制度設計の参考にしていただきたいと思います。

(参考)小中一貫型カウンセラーの配置効果

  • 小学校で相談したカウンセラーに進学先の中学校でも相談できるため、
    • 進学時の不安や戸惑いが緩和
    • 児童生徒や保護者のカウンセラーに対する安心感や信頼感の向上
  • 小・中学校が同じカウンセラーを介して情報共有することで、
    • 小・中学校間の連携が促進
    • 中学校での不登校の予防

3 「学校課題解決支援チーム」について

 横浜市では、学校だけでは解決が困難な課題に対応するため、市内4カ所の学校教育事務所に「学校課題解決支援チーム」を設置し、弁護士や医師等の専門家にも学校の支援にご協力いただいています。中でも、学校において問題が起こった際、弁護士に法的な相談ができるのは学校にとって大きな助けとなっています。
 「チームとしての学校」を考えるに当たり、学校単位のチームに加え、教育委員会が主体となって専門家とともに支援チームを組むことも有効な方法です。国においては、全国の自治体で行われている学校支援のための優れた事例について情報収集・提供いただけると各自治体の参考になるかと思います。

※ 「学校課題解決支援チーム」の概要については別紙1参照

4 部活動支援員について

 現行の学習指導要領において、部活動は「学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意する」と明確に示されており、部活動が学校教育において果たす役割は大きいものと認識しています。また、学校教育の一環として部活動を行うのは国際的にも珍しく、日本の学校教育における特徴的な取組となっています。
 一方、本市が平成25年度に独自に行った教職員の業務実態に関する調査の結果、中学校の教職員の部活動に関する時間的・心理的負担が大きいことが明らかになりました((参考)参照)。
 そこで、今回の中間まとめで述べられているとおり、「部活動支援員(仮称)」を法令上位置付けていただき、各部活動の指導に加え、「顧問や単独での引率」を行うことを職務として規定することで、中学校の教員の業務負担の軽減が図られ、今以上に、本業である授業準備や生徒指導等に専念できる環境が整うことになると思います。
 また、支援員の職務として、特定の部活動の顧問を担うだけでなく、担当する部活動以外の部活動中の生徒への安全指導や活動に対するアドバイス、学校の部活動全体の安全管理や運営の連絡調整・補佐をあわせて規定することについてもご検討いただきたいと思います。
 学校組織全体での部活動指導体制の構築の観点から、例えば、部活の練習方法や休業日など効果的・効率的な部活動の推進のあり方、体罰防止に向けた取組などについて、支援員が連絡調整を行い学校長をサポートしていく仕組みにすれば、よりバランスのとれた運営と指導が実現できると考えます。

(参考)横浜市「教職員の業務実態に関する調査」(平成25年度実施)結果 より

  • 中学校における部活動に関する時間的・心理的負担が大きい
    • 朝練に携わる教職員…31.3%(29歳以下では53.8%)
    • 月8日以上休日出勤している教職員…22.2%(20代では40.5%)
    • 休日に行っている業務として「部活動」…65.6%
    • 部活動を多忙と感じる原因…「土日祝日対応」(60.5%)「他の業務ができない(42.0%)」
      「経験や知識がない」(32.8%)

5 保護者・地域の協力を得た学校運営について

 「チームとしての学校」の検討に当たっては、地域の方のご協力を学校経営に生かす視点が大変重要です。
 先日、「平成26年度優れた『地域による学校支援活動』推進にかかる文部科学大臣表彰」をいただいた横浜市立宮谷小学校「みやがや応援隊」(別紙2参照)を訪問し、日頃学校支援に携わってくださっている保護者・地域の皆様からお話をうかがってきました。宮谷小学校(30学級、児童数915名【平成27年5月現在】)には学校・地域コーディネーターが7名いらっしゃり、その方々が173名の保護者・地域のボランティアの皆様をまとめており、「チームとしての学校」の重要なサポートの役割を果たしてくださっています。
 本市では、学校・地域コーディネーターが市内181校に配置しており、保護者・地域の皆様のご協力を得て力強く運営している学校は多くありますが、そうした学校に共通しているのは、保護者・地域の皆様が自律的に学校を支える体制を構築しているということです。
 中間まとめで提案されている「地域連携担当教職員(仮称)」の法令上の明確化とあわせて、教員に更なる役割を担わせることとならないよう、学校・地域コーディネーターなどによる学校支援活動への助成の拡大や表彰制度の充実をしていただくことで、学校教育の質の向上が大いに図られるものと思います。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

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(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成27年11月 --