資料3‐2 連続して欠席し連絡が取れない児童生徒や学校外の集団との関わりの中で被害に遭うおそれがある児童生徒の安全の確保に向けた取組について(通知)

26文科初第1479号
平成27年3月31日

各都道府県教育委員会教育長 殿
各指定都市教育委員会教育長 殿
各都道府県知事 殿
附属学校を置く各国立大学法人学長 殿
小中高等学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法第12条 殿
第1項の認定を受けた地方公共団体の長 殿

文部科学省初等中等教育局長
 小松 親次郎

(印影印刷)

 標記については、これまでも「学校と警察との連携の強化による非行防止対策の推進について」(平成14年5月27日付け14初児生第6号初等中等教育局児童生徒課長通知)等に基づき、学校において、警察をはじめとする関係機関と連携しながら、児童生徒の非行防止や被害防止等に積極的に取り組んでいただいているところです。
 しかしながら、最近においても、川崎市において前途ある中学生が被害者となる痛ましい事件が発生しました。学校、行政、地域社会などの努力により事件を防げなかったかという思いや、同様な危険にさらされている児童生徒が身近にもいるのではないかという危機感などを社会共通に抱かせる事件であり、それゆえに、全国の学校や教育委員会においても、この事件を踏まえた緊急の対応が求められるところです。
 このため、政府として、今回の事件の検証を行うとともに、これを踏まえた再発防止策を検討するため、丹羽秀樹文部科学副大臣を主査とし、関係府省庁と連携の上、「川崎市における中学1年生殺人事件に係るタスクフォース」を立ち上げ、本日、「川崎市における事件の検証を踏まえた当面の対応方策」をとりまとめました。
 貴職におかれては、1.4月の新学期に向けて進める緊急点検の実施及び2.平成27年度に特に力を入れて取り組む方策に係る下記の事項について御留意いただき、都道府県・指定都市教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等に対して、都道府県知事にあっては所轄の私立学校に対して、国立大学法人にあっては附属学校に対して、株式会社立学校を認定した市町村担当部課にあっては認可した学校に対して、周知を図るとともに、適切な対応がなされるよう御指導をお願いいたします。

1.4月の新学期に向けて進める緊急点検の実施

(1)学校においては、連続して欠席し連絡が取れない中で、又は学校外の集団との関わりの中で被害に遭うおそれ(以下「被害のおそれ」という。)がある児童生徒の安全の確保に向け、日頃から教職員が組織として情報共有し対応できる体制を構築しておく必要があり、具体的には、以下の状況等を4月の新学期に向けて確認し着実に対応を進めること。

学校における緊急点検項目(例)

  • 学級の中に「被害のおそれ」のある児童生徒がいないかを各担任が確認しているか。
  • 特に支援が必要な児童生徒やその家庭に係る状況は適切に引き継がれてい
    るか。
  • 組織的対応を行うための校内の体制は整えられているか。
  • 担任等から管理職等に情報共有を行うべき事案が校内で明確に整理されているか。
  • 警察への相談・通報や、市町村・児童相談所等への相談・通報を要する事案が校内で明確に整理されているか。
  • 警察をはじめとする関係機関の連絡窓口は把握しているか。校内の担当者は明確か。
  • 児童生徒を見守る地域との連携体制は整えられているか。
  • PTA等に対し児童生徒を地域で見守る必要性を説明しているか。

(2)設置者においては、学校からの連絡に基づく迅速な対応ができるよう、日常から学校との情報共有とそれに基づく対応、関係行政機関等との連携協力のための体制を整えておく必要があり、具体的には、以下の状況等を4月の新学期に向けて確認し着実に対応を進めること。

設置者における緊急点検項目(例)

  • 学校から設置者に報告を行うべき事案は明確に整理されているか。
  • 警察をはじめとする関係機関の連絡窓口は把握しているか。
  • 学校警察連絡協議会に基づく学校と警察の連携が十分に機能しているか。
     学校と警察の間で子供を守るための情報共有ができる体制となっているか。

(3)これらの緊急点検を通じ、別添「児童生徒の「被害のおそれ」に対する学校における早期対応について【指針】」に示す、1.所在不明の場合、2.家庭の協力が得にくく連絡が取れない場合、3.学校外の集団(成人が主な構成員であると思われるものを含む。)との関わりがある場合、4.欠席が続く場合のそれぞれの状況に応じた対応が円滑に実施できる体制の構築に努めること。

2.平成27年度特に力を入れて取り組む施策

(1)学校や教育委員会における組織的な対応の充実

  1. 学校においては、連続して欠席し連絡が取れない児童生徒等に対する組織的な対応を推進する観点から、校務分掌の見直し等により、例えば、不登校児童生徒の支援を中心に担当する教員を明確に位置付け家庭を訪問する体制を構築することや、地域や関係機関との連携を担当する教員を明確に位置付け学校と地域や関係機関との連携を一層促進する体制を構築することを積極的に検討すること。
     教育委員会等においては、こうした学校の取組について、先進事例の紹介等を通じ、積極的に支援すること。また、スクールソーシャルワーカーの配置の促進とその円滑な運用により、経済面をはじめとした様々な課題を抱える家庭の状況等、児童生徒を取り巻く環境に対し教育と福祉とが協働しながら働き掛ける条件を整備していくこと。
  2. 学校においては、地域ぐるみで子供を守り支える、開かれた学校の推進の観点から、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)や学校支援地域本部等の活用を通じて、日頃から地域住民や関連機関等との連携・協働体制を構築すること。
  3. 教育委員会においては、平成26年の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正により全ての地方公共団体に設けることとされた総合教育会議を活用し、政策上の課題、また、個別事案への対応を進めること。
     具体的には、貧困などの課題を抱える家庭への支援については、学校・教育委員会だけでなく、生活保護や生活困窮者支援等を担当している部局との連携、保護者の監護能力等の観点から支援が必要な家庭に対しては、福祉事務所等、児童福祉法等の対応を担っている担当部局との連携が考えられること。

(2)学警連携協定等、学校と警察をはじめとする関係機関との連携の促進

  1. 学校においては、学校警察連絡協議会等の枠組みを通じ、警察と連携し、非行防止や犯罪被害防止等に関する情報を積極的に交換し、協働して取り組むべき具体的措置について協議を行い、これを計画的に実施するなどの取組が行われてきたところであり、これを一層促進すること。
     また、この協議会等による連絡体制は、個々の学校と警察との連携の基礎になるものであることから、学校及び設置者においては、この協議会の運営や、これに基づく学校と警察との連携が実質的なものとなっているか、円滑に機能しているかを不断に見直しその改善充実を図っていくこと。
     このような協議会等の枠組みができていない地域においては、子供の安全を守るという観点からその必要性について改めて検討すること。
  2. 学校と警察の連携に係る協定等は、警察が学校に連絡する事案や、学校が警察に相談又は連絡する事案等を整理し、学校と警察は、この協定等に基づき、連絡等の対象となる事案について、児童生徒の氏名等も含めて情報交換を行うものであるが、いまだこのような協定締結等を行っていない教育委員会等にあっては、当該教育委員会等が所管等する学校における学警連携状況を検証しつつ、協定締結等に向けて積極的に取り組むこと。また、協定等に基づく個別事案の情報交換を促進するため、都道府県公安委員会と都道府県教育委員会等において、意見交換や合同視察の機会を設けるなどにより、学校と警察の連携強化について認識の共有を図ることも必要であること。
  3. スクールサポーターは、警察官として長年培った知識、経験を活用した活動により、学校における困難事案への対応能力の向上に寄与するものであり、その配置が十分でない地域においては、各地方公共団体等において、その配置等の促進と十分な活用を進めること。
  4. 少年サポートセンターは警察における少年問題に関する専門的知見を有する機関であり、学校等関係機関との連携の一元的窓口となるよう体制の充実を図ることとされていること等を踏まえ、学校においては、少年サポートセンターと連携し、個々の児童生徒の状況に応じた少年サポートチームの結成等による支援に積極的に取り組むこと。
  5. 学校・教育委員会と福祉部局・児童相談所等との関係についても、例えば、教員の研修に児童相談所・市町村の職員を招くなどして、教員の児童福祉に関する制度等の理解を深めるとともに、相互に信頼感を醸成する機会等の充実を図ること。

(3)課題を抱える家庭に対する、教育と福祉が連携した支援の充実

  1. ひとり親家庭も含め、経済面を始め様々な面から見て困難な状況等にある家庭では、子育てに当たり様々な課題を抱えていることも多く、学校の立場から働き掛けていくことも重要であり、教育委員会においては、スクールソーシャルワーカーの配置による早期の課題対応や、家庭教育支援チーム等の組織化による、身近な地域における子育てや家庭教育に関する相談体制の充実に努めること。

(4)子供のSOSを受け止めるための窓口の充実等

  1. 都道府県・指定都市等においては、「24時間いじめ相談ダイヤル」を「24時間いじめ・子供安全相談ダイヤル(仮称)」等に改編し、いじめに限らず子供のSOS全般を受け止める窓口であることを明確化すること。
  2. 文部科学省においては、「24時間いじめ・子供安全相談ダイヤル(仮称)」と併せ、「子どもの人権110番」、「児童虐待対応を念頭に3桁化される児童相談所全国共通ダイヤル189番」、ヤングテレホンコーナー(警視庁・道府県警察本部が整備している相談窓口)等、様々な子供のSOSの受け止めに係る窓口について周知するポスターを作成することとしており、各学校等においては、これを校内に掲示するなどを通じ、児童生徒に対して、日頃から培う教職員との信頼関係を基礎に、自身や友人について「被害のおそれ」があるとき等は、教職員をはじめとする身近な大人によく相談するよう指導していくこと。
  3. 内閣府等と連携の下、平成27年度は、7月の「青少年の非行・被害防止全国強調月間」や11月の「子ども・若者育成支援強調月間」、8月のPTAの全国会議等においても、子供のSOSの受け止めに係る窓口の周知等を図ることとしており、学校・設置者においても、そのような取組と連動した保護者・地域ぐるみの活動を推進すること。

3.「被害のおそれ」がある児童生徒に対する早期対応

(1)1や2の取組を通じ、学校・設置者における組織的な対応のための体制を整備するとともに、別添「学校における早期対応について【指針】」を踏まえ、学校や地域の実情に応じた早期対応の指針を作成し、学校内や学校と設置者間の情報共有、状況に応じた具体的な対応についてあらかじめ整理し、事案に応じた円滑な対応が行えるよう備えること。

4.その他

 文部科学省においては、平成27年度早期に、緊急の生徒指導担当者連絡会議を開催することとしており、このような機会を通じ、この通知に示す事項に係る好事例を紹介していくこととしていることから、学校・設置者においては、そのような事例を参考に年度内においても取組の改善を図っていくこと。

別添 児童生徒の「被害のおそれ」に対する学校における早期対応について【指針】(平成27年3月31日)

日常の体制

  • 学校における早期対応を円滑に進めるためには、日常から組織的な対応、学校外の組織との連携を進めておく必要がある(この通知の2を参照)。
     また、児童生徒に対しては、日頃から培う教職員との信頼関係を基礎に、自身や友人について「被害のおそれ」があるとき等は、教職員をはじめとする身近な大人によく相談するよう指導していくことが必要である。

連続欠席等により「被害のおそれ」が生じたときの早期対応

  • 病気やけがなどの正当な事由がなく児童生徒が連続して欠席している場合、担任教諭・養護教諭等がチェックをした上で、3日を目安に校長等へ報告を行うこととする。
     また、正当な事由がなく7日以上連続して欠席し、児童生徒本人の状況の確認ができていない場合は、学校は設置者へ報告を行うこととする(※1)。
     いずれの段階にあっても、担任や養護教諭等は、原則として対面で児童生徒本人と会い、状況を確認する必要がある。
  • ここに示している日数は目安であり、事案によってはこの日数が経過するのを待つことなく、速やかに設置者に報告することが必要である。
  • また、出席していたとしても、学校外の集団(成人を構成員とするものを含む。)との関わりの中で、児童生徒に危険が及ぶおそれがある場合についても、学校は設置者へ報告を行うものとする。
  • なお、いずれの段階にあっても、事件性が疑われる場合には直ちに警察に相談・通報する必要があり、児童虐待が疑われる場合には直ちに市町村・児童相談所等へ相談・通告する必要がある(※2)。

  • ※1 学校教育法施行令は、第19条において、校長は、常に、その学校に在学する児童生徒の出席状況を明らかにしなければならないとし、同第20条において、義務教育段階の児童生徒については、校長は、休業日を除き引き続き7日間出席せず、その他その出席状況が良好でない場合において、その出席させないことについて保護者に正当な事由がないと認められるときは、速やかに、その旨を当該学齢児童又は学齢生徒の住所の存する市町村の教育委員会に通知することとしている。これらは就学義務に関連して定められている規定であるが、本指針では、この規定を念頭に置き「7日間」とした。
  • ※2 児童虐待の防止等に関する法律第6条においては、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所に通告することとされている。平成16年の同法及び児童福祉法の改正により、市町村が虐待通告先に追加される等、市町村の役割が明確化されている。

学校・設置者による速やかな支援体制の構築

  • 設置者への報告後、学校及び設置者等は速やかに当該児童生徒に対する支援体制を構築する必要がある。その際、「所在不明の場合」「家庭の協力が得にくく連絡が取れない場合」「学校外の集団との関わりがある場合」「欠席が続く場合」と状況に応じた支援体制を構築し、適切な対応をとる必要がある。

1.所在不明の場合

  • 児童生徒本人と連絡が取れない場合については、学校、家族、他の児童生徒、地域の人々等からの情報収集に努めるとともに、必要に応じて担任教員やそれ以外の当人が信頼を寄せる教員・大人、さらにはスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、スクールサポーターを活用し、必要に応じて児童福祉等の関係部門や警察等の関係機関とも連絡しながら、その所在を明確にし、当人が家庭に戻るよう働き掛ける必要がある。
     上記のような対応を取った結果、家出や行方不明が疑われる場合には、引き続きその所在の把握に努めるとともに、個々の事案に応じて速やかに警察に相談するものとする。
     また、電話や家庭訪問等により連絡・接触できない家庭に属する児童など居住実態が把握できない児童については、平成26年12月26日の副大臣会議取りまとめ及びこれを踏まえた通知(「居住実態が把握できない児童への対応について(通知)」(平成27年3月16日付け総行住第33号、26初初企第53号、雇児総発0316第1号))や「義務教育諸学校における居所不明の児童生徒の把握等のための対応について(通知)」(平成25年3月1日付け24初初企第68号)に基づく対応により、市町村内及び市町村間での情報提供や、関係機関等との連携によりその所在確認を行っていく必要がある。

2.家庭の協力が得にくく連絡が取れない場合

  • 保護者との間で、教員(担任教員でなくとも保護者が信頼を寄せている教員)、スクールソーシャルワーカー、教育委員会職員等により、当人の「被害のおそれ」を取り除くという観点から十分な話合いを行い、早急に連絡が取れる体制を組むよう努力する。
     その際、スクールソーシャルワーカーを十分活用し、市町村の福祉部局や児童相談所等の関係機関等から情報収集を図り、必要に応じて、当人や家庭に対する支援体制の構築についても検討する。その上で1.と同様の対応を進めていく。
     なお、上記1.、2.を通じて当人の所在が確認されたものの、学校外の集団との関わりの中で「被害のおそれ」が残る場合には3.の対応に移行する。

3.学校外の集団(成人が主な構成員であると思われるものも含む。)との関わりがある場合

  • 少年サポートセンターやスクールサポーターが、少年警察ボランティア(少年補導員、少年指導委員、少年警察協助員)等と連携して、少年、保護者、地域住民等の元に出向き、少年からのSOSにつながり得る情報を幅広く収集するなどアウトリーチ型の少年サポート活動を推進する。
  • また、警察では、学校等関係機関、地域住民等の協力を得て、情報を収集し、集団的不良交友関係の実態を把握する。その上で、SOSを発している少年の発見・救出はもとより、少年のたまり場対策、集団的不良交友関係に代わる居場所づくり等を通じた集団的不良交友関係の解消に向けた対策を推進する。
  • 学校としては、こうした警察の取組と連携を図ることが重要である。
  • また、学校として他の児童生徒、保護者、地域の人々等から情報収集を進める必要がある。
  • その上で、少年サポートチームを招集するなど学校と警察等との関係機関が連携し、体制を組みつつ、「被害のおそれ」を取り除くようにしていく必要がある。
     また、学校、PTA、地域の人々、関係機関等が連携して当該集団に属する若者を指導し、被害を防止していく必要がある。上述の少年サポートセンター、スクールサポーターとの連携のほか、スクールガードリーダーの十分な活用も考えられる。
     なお、当面の「被害のおそれ」はなくなっても、欠席が続く場合には4.の対応に移行するものとする。

4.欠席が続く場合

  • 「欠席が続く場合」について、ここで示しているのは「被害のおそれ」がある場合のものであり、例えば、完全に自室に閉じこもり両親も十分に状況を把握できない場合や自傷行為の危険性がある場合などが想定される。
  • これらについては、担任教員、生徒指導担当教員、養護教諭等の関係教員が管理職の指示の下、組織的に関わりながら、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー等も適切に活用し、当該児童生徒の安全を確認しながら状況に応じた支援を実施する必要がある。さらに、教育相談センター等による訪問支援を行うほか、教育支援センター(適応指導教室)やフリースクール等の民間機関、福祉、医療の関係機関などとも連携し、組織的・計画的な支援を推進していく必要がある。
     必要に応じ、他の児童生徒や保護者等から情報収集することも重要である。

資料1 児童生徒の「被害のおそれ」に対する学校における早期対応について【指針】(平成27年3月31日)(概要)

  • 日常の体制
    • 教職員が「組織」として情報共有し、対応できる体制を構築する。
    • 子供のSOSを受け止める信頼関係を構築するとともに、相談窓口を周知する。
    • 自身や友人に「被害のおそれ」があるときは信頼できる身近な大人に相談するよう指導する。
    • 警察署や少年サポートセンターとの連携体制(学警連携協議会)を整備する。都道府県警本部と教育委員会等との間で学警連絡協定の締結等を行う。
    • 学校と保護者や地域住民等との連携・協働体制を構築(コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)、学校支援地域本部、家庭教育支援チーム等を活用)する。
  • 欠席時の対応※原則として対面で安全を確認する。
    【連続欠席3日(目安)】
    • 連続欠席等が3日間になった場合、担任・養護教諭等がチェックし、管理職へ報告する。
    【連続欠席7日】
    • 連続欠席等が7日間になり、正当な事由(児童生徒の病気や事故等)がない場合、管理職は速やかに設置者に通知する。
  • 学校・設置者は速やかに支援体制を構築するとともに、以下のような場合等に応じて、関係機関とも連携しつつ対応する。
    1. 所在不明の場合
    2. 家庭の協力が得にくく連絡が取れない場合
    3. 非行グループ等と関係がある場合
    4. 欠席が続く場合

 ※ 事件性がある場合は直ちに警察へ相談・通報、児童虐待が疑われる場合は直ちに市町村・児童相談所へ相談・通告する。

資料2 川崎市における事件の検証を踏まえた当面の対応方策(概要)

1.新学期に向けた緊急点検

学校

  • 学級の中に「被害のおそれ」のある児童生徒がいないかを各担任が確認しているか。
  • 特に支援が必要な児童生徒や、その家庭に係る状況は適切に引き継がれているか。
  • 組織的対応を行うための校内の体制は整えられているか。等

教育委員会

  • 学校から設置者に報告を行う事案は明確に整理されているか。
  • 学校警察連絡協議会に基づく学校と警察の連携が十分に機能しているか。学校と警察の間で子供を守るための情報共有ができる体制となっているか。等

2.平成27年度特に力を入れて取り組む施策

(1)学校や教育委員会における組織的な対応の充実

  • 不登校支援の中心となる教員・地域連携を担当する教員の明確化等
  • 地域ぐるみで子供を守り支える、開かれた学校の推進(コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)や学校支援地域本部等を活用した取組の推進)
  • 総合教育会議を積極的に活用した教育行政の推進等

(2)学警連携協定等、学校と警察をはじめとする関係機関との連携の推進

  • 学警連携協定の締結の促進、スクールサポーター(警察官OB等)の配置促進と活用、警察における少年サポートセンターの体制充実及び当該機関と学校等との連携による少年サポートチーム(個別の事案に対応)結成促進【警察庁と連携】
  • 少年鑑別所における非行・犯罪防止の相談【法務省】
  • 福祉関係機関との連携【厚生労働省と連携】

(3)家庭による子供の見守りの重要性と、課題を抱える家庭に対する、教育と福祉等が連携した支援の充実

  • スクールソーシャルワーカーや家庭教育支援チーム等の配置の促進と活用
  • 保健、福祉の機関等間の連携の徹底、地域の身近な相談拠点の拡充【厚生労働省】
  • 「児童虐待防止対策等について」(平成26年12月26日児童虐待防止対策に関する副大臣等会議)等を踏まえた取組の推進【厚生労働省を中心に各省庁連携】

(4)子供のSOSを受け止める窓口の充実と、社会全体でアンテナを高く保っていくための啓発活動の実施【内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省と連携】

  • 改編し創設する「24時間いじめ・子供安全相談ダイヤル(仮称)」、児童虐待対応を念頭に3桁化される児童相談所全国共通ダイヤル「189番」等、子供のSOSを受け止める窓口の周知(ポスターの作成・配布等)
  • 「青少年の非行・被害防止全国強調月間」(7月)やのPTA全国会議等の活用(8月)
  • 少年警察ボランティア(少年補導員等)と連携した情報の受け止めと啓発活動【警察庁】

3.早期対応の指針の策定

 文部科学省が新たに定めた指針等を踏まえ、学校・教育委員会等において早期対応の指針を定め、円滑な対応の実施を図ること。【特に、警察庁、厚生労働省と連携】

関連する具体的取組

  • 少年サポートセンターやスクールサポーターによるアウトリーチ型の少年サポート活動の推進【警察庁】
  • 集団的不良交友関係の把握と解消に向けた対策の推進【警察庁】

4.今回の事件に関連したその他の課題と対応する施策の推進

  1. 高校中退防止策等、学習や学校生活に困難を抱える児童生徒への支援
    • 学校における教育相談体制の充実、学び直しの支援等
    • 学校とハローワーク、地域若者サポートステーション等が連携した就労支援等【厚生労働省と連携】
  2. 非行防止やいじめ防止、生命を尊重する態度の育成等に向けた指導の充実
    • 非行防止教室の推進や道徳教育の充実【警察庁と連携】
    • 少年警察ボランティア等との連携による少年の立ち直り支援活動の推進【警察庁】
  3. 情報モラル等を育む指導の充実
    • 情報モラルや情報に対する責任に関する指導の充実
  4. 欠席が続く児童生徒に係る状況等の把握
    • 欠席が続く児童生徒への対応状況等の継続的な把握
  5. 更に信頼される教育行政の推進に向けて

資料3 川崎市における事件の検証を踏まえた当面の対応方策

平成27年3月31日
川崎市における中学1年生殺人事件に係るタスクフォース

  • 平成27年2月20日、川崎市の中学1年生が殺害された。前途ある中学生が被害者となった痛ましい事件であり、今も事件現場には献花が絶えない。
     この事件が大きな関心を集めるのは、学校、行政、地域社会などの努力により事件を防げなかったかという社会共通の思いとともに、今回の被害者と同様の危険にさらされている児童生徒が身近にもいるのではないかという危機感などによるものである。
  • 政府として、今回の事件の検証を行うとともに、これを踏まえた再発防止策を検証すべく、平成27年2月27日、丹羽秀樹文部科学副大臣を主査に「川崎市における中学1年生殺人事件に係るタスクフォース」を立ち上げた。
     タスクフォースでは、同日、川崎市と同様の事件を防ぐため、緊急調査を開始し、全国の小・中・高等学校等の児童生徒の安全について確認・点検を行った。また、3月9日には、新たに内閣府、警察庁、法務省及び厚生労働省を正式の構成員として加え、4月からの新学期を前に実効性ある再発防止策等の検討を進めてきたところ、今般、政府として以下の内容を取りまとめたところである。

構成

  1. 事件の検証
  2. 新学期に向けた、学校・教育委員会等における緊急点検
  3. 平成27年度特に力を入れて取り組む施策
    (1)学校や教育委員会における組織的な対応の充実
    1. 不登校支援の中心となる教員・地域連携を担当する教員の明確化や、スクールソーシャルワーカーの配置等による、組織的な対応のための体制の整備
    2. 地域ぐるみで子供を守り支える、開かれた学校の推進
    3. 総合教育会議を積極的に活用した教育行政の推進等
    (2)学警連携協定等、学校と警察をはじめとする関係機関との連携の推進
    (3)家庭による子供の見守りの重要性と、課題を抱える家庭に対する、教育と福祉等が連携した支援の充実
    (4)子供のSOSを受け止める窓口の充実と、社会全体でアンテナを高く保っていくための啓発活動の実施
  4. 被害のおそれがある児童生徒に対する早期対応
  5. 今回の事件に関連したその他の課題と対応する施策の推進
    1. 高校中退防止策等、学習や学校生活に困難を抱える児童生徒への支援
    2. 非行防止やいじめ防止、生命を尊重する態度の育成等に向けた指導の充実
    3. 情報モラル等を育む指導の充実
    4. 欠席が続く児童生徒に係る状況等の把握
    5. 更に信頼される教育行政の推進に向けて

1.事件の検証

  • 事件の発生から11日が経過した平成27年3月3日、川崎市において、教育委員会事務局検証委員会等が立ち上げられた。
     3月31日にとりまとめられた同委員会の中間取りまとめでは、本事件に係る事実関係及び再発防止策として以下のことがとりまとめられている。

 川崎市教育委員会事務局検証委員会による中間取りまとめ(概要)

  1. 事実関係の把握
  2. 検証と考察
    1. Aさんの行動の変化に対して、組織として共通認識をもって適切に対応していく体制について
    2. 生徒が登校できない状況になった時、それぞれの状況に応じた適切な働きかけやかかわりをもつための体制について
    3. Aさんの危機的状況を把握し、対応するチャンスについて
    4. 教育委員会の協力や支援について
    5. 検証と考察のまとめ
      (1)適切な対応ができていた面(教職員間における情報共有など)
      (2)課題としてとらえ、今後改善すべき面(本人・家族と直接会う必要性や、日常的な交友関係・動向の把握等)
      (3)警察との情報共有
  3. 再発防止策に関して
    1. 教育委員会としての取組(教育委員会(区教育担当)による不登校連絡票の活用、事務局組織体制の強化(学校支援等の総合調整担当の配置)等)
    2. 学校に求められる取組
      (1)各学校の指導体制の点検・強化と教育活動の改善・充実(児童生徒一人一人の学校内外での状況をできる限り広く把握するよう努めること、得られた情報の整理と的確な分析・考察、それを元にした対応体制の構築など)
      (2)校内職員研修の充実
    3. 関係局区との連携推進
    4. 警察との情報連携の推進
  • これは川崎市の教育委員会事務局により整理されたものである。中間取りまとめであり、また、被害者等のプライバシーに配慮し非公開とされている部分も多い。川崎市としては、4月以降、外部の視点を入れた検証を行うとのことであり、タスクフォースとしても必要なフォローアップを行っていく。
  • 川崎市に対しては、学警連携の在り方を改善する必要性を踏まえ、外部の視点を入れた検証を行うに当たって警察の協力を得るようにすること、また、外部の視点を入れた十分な検証を踏まえ、今回のような事件が二度と起こらないよう実効性のある再発防止策を実施していくことを強く求めたい。
  • 一方、現時点でまとめられた中間取りまとめ等を踏まえれば、今回の事件に関し少なくとも以下の課題が指摘できると考える。
    • 学校の組織としての対応が情報共有にとどまり、教育委員会も含めた組織的な早期対応に結びつかなかったこと
    • 課題を抱える家庭に対する、教育と福祉が連携した支援に結びつかなかったこと
      (教育の面から見れば、スクールソーシャルワーカーの活用等がなされていなかったこと)
    • 被害者に危険が迫っている可能性について、学校をはじめとする周囲の大人が気付かなかったこと
    • 学校と警察の間で、非行少年等に係る個人情報の円滑なやり取りがなされる仕組みが整えられていないこと
  • タスクフォースとしては、このような今回の事件に関する個別の状況とともに、今回の事件が、同様の危険にさらされている児童生徒が身近にもいるのではないかとの危機感を社会共通に抱かせるものであること等を踏まえ、連絡が取れない、又は学校外の集団との関わりがある状況の下、児童生徒の生命・身体に重大な被害が及ぶおそれ(以下「被害のおそれ」という。)がある場合に対応するため、川崎市だけでなく全国的に推進する必要がある取組をまとめることとした。
     具体的には、1.4月の新学期までに進める緊急点検の実施、2.平成27年度特に力を入れて取り組む施策、3.学校における早期対応の指針の策定、4.今回の事件に関連したその他の課題と対応する施策を示している。
  • なお、児童生徒への「危険」としては、事故や災害に遭う場合、通学路等で犯罪に巻き込まれる場合、欠席はしていないもののいじめの可能性がある場合や自傷行為等が見られる場合など、多様な場合が考えられるが、これらへの対応に当たっても、組織的な対応や外部との連携を進め対応していくことが重要である。

2.新学期に向けた、学校・教育委員会における緊急点検

  • 今回、全国の学校・設置者(公立学校の場合は教育委員会、国立学校の場合は国立大学法人、私立学校の場合は学校法人等)等において実施していただいた、児童生徒の安全に関する緊急確認調査においては、「被害のおそれ」がある児童生徒の存在が全国的に確認された。
  • このような状況に対応していくためには、学校においては、まず、日頃から、教職員が組織として情報共有し対応できる体制を構築しておく必要がある。その上で、管理職のもと、学級・HR担任の教員はもちろん、主幹教諭、生徒指導担当、学年主任、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等が役割分担をしながら、状況に応じて学校や設置者からスクールサポーターを介するなどにより警察へ連絡すること等も含め、組織的かつ迅速に動けるようにしておくことが望まれる。
  • 学校の設置者においても、学校からの連絡に基づく迅速な対応ができるよう、日常から学校との情報共有とそれに基づく対応、警察をはじめとする関係行政機関等との連携協力のための体制を整えておく必要がある。
  • こうしたことを踏まえ、学校や設置者、教育委員会をはじめとする行政機関においては、新学期を迎えるに当たり、以下の状況等を確認し着実に対応を進めていただきたい。

新学期に向けた緊急点検項目

学校
  • 学級の中に「被害のおそれ」のある児童生徒がいないかを各担任が確認しているか。
  • 特に支援が必要な児童生徒やその家庭に係る状況は適切に引き継がれているか。
  • 組織的対応を行うための校内の体制は整えられているか。
  • 担任等から管理職等に情報共有を行うべき事案が校内で明確に整理されているか。
  • 警察への相談・通報や、市町村・児童相談所等への相談・通報を要する事案が校内で明確に整理されているか。
  • 警察をはじめとする関係機関の連絡窓口を把握しているか。校内の担当者は明確か。
  • 児童生徒を見守る地域との連携体制は整えられているか。
  • PTA等に対し児童生徒を地域で見守る必要性を説明しているか。
設置者
  • 学校から設置者に報告を行うべき事案は明確に整理されているか。
  • 警察をはじめとする関係機関の連絡窓口を把握しているか。
  • 学校警察連絡協議会に基づく学校と警察の連携が十分に機能しているか。学校と警察の間で子供を守るための情報共有ができる体制となっているか。
  • これらの緊急点検に当たっては、4に示す早期対応指針についてもよくその趣旨を踏まえていただきたい。
     また、取組の実効性を高める観点から、学校や教育委員会をはじめとする行政機関においては、特に平成27年度、3の施策について力を入れて推進いただきたい。

3.平成27年度特に力を入れて取り組む施策

(1)学校や教育委員会における組織的な対応の充実

1.不登校支援の中心となる教員・地域連携を担当する教員の明確化や、スクールソーシャルワーカーの配置等による、組織的な対応のための体制の整備
  • 学校における組織的な対応を推進する観点からは、校務分掌等を見直し、例えば、不登校児童生徒の支援を中心的に担当する教員について、授業負担を軽減して家庭を訪問する体制等を構築することが必要である。このような取組を教育委員会として支援している例もあり、このような先進的な取組等を参考に他の地域でも対応の充実を進めることが重要であり、あわせて必要な指導体制の充実を図ることも重要である。
     また、地域や関係機関との連携を担当する教員についても、同様の観点から、負担を軽減しつつ分掌として位置付け、学校と地域や関係機関との連携を一層推進することも考えられる。
  • また、多様な社会的背景により課題を抱える児童生徒に対する教育相談を充実していくためには、教育と福祉をつなぐ専門家であるスクールソーシャルワーカーの配置を一層促進していくことが重要である。
     スクールソーシャルワーカーについては、近年、配置拡充に向けた取組が進んでいるが、いまだ配置がなされていない地域もある。教育委員会等においては、その積極的な配置に努めるとともに、より円滑な運用につなげていく必要がある。
     学校においては、問題行動の背景にある子供を取り巻く環境にスクールソーシャルワーカーが教職員と協働しながら働き掛けることが有効である。
2.地域ぐるみで子供を守り支える、開かれた学校の推進

(開かれた学校の推進)

  • 今回のような事件を未然に防止し、また、緊急に対応していくに当たっては、学校や教育委員会だけで問題と向き合うことは難しい面があり、学校と地域住民や関係機関等との連携が必要不可欠である。
  • このため、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)や学校支援地域本部等の活用を通じて、日頃から地域住民や関連機関等との連携・協働体制を構築し、学校運営や学校支援を進めていくことが重要である。
     さらに、地域住民と連携した、放課後の子供の居場所づくりや、学習が遅れがちな中学生を対象とした原則無償の学習支援等の取組を進めていくことも重要である。
  • また、学校における早期対応を円滑に進めるためには、日常からの学校と警察をはじめとする関係機関との連携も重要である(※3)((2)参照)。
  • さらに、学校と保護者や地域住民との連携・協働体制(PTA等)の下、学校内外において子供のSOSを受け止める取組を推進する必要がある((3)、(4)参照)。
     特に、保護者については、日常から学校として信頼感の醸成に努めることが緊急の際の協働した対応を行う上での基盤となるものであることは言うまでもない。

(子ども・若者支援地域協議会)

  • 地域にあっては、子ども・若者育成支援推進法に基づき、子ども・若者支援地域協議会等を活用して、社会生活を円滑に営む上での困難を有する子供・若者を支援するネットワークが整備されている例もある。地域の実情によっては、こうした制度を活用していくことも考えられる。
3.総合教育会議を積極的に活用した教育行政の推進等
  • 学校が地域に開かれ、また、学校や教育委員会が関係機関と連携していくためには、平成26年の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正により全ての地方公共団体に設けることとされた総合教育会議を活用することが有意義である。
  • 例えば、貧困などの課題を抱える家庭への支援については、学校・教育委員会だけでなく、生活保護や生活困窮者支援等を担当している部局との連携が欠かせない。
     また、保護者の監護能力等の観点から支援が必要な家庭に対しては、市町村・児童相談所等、児童福祉法等の対応を担っている担当部局との連携が必要となる。
  • このような観点から、政策上の課題、また、個別事案への対応も含め、総合教育会議を通じた施策・対応の充実が望まれるところである。

(第三者的視点を取り入れた事実関係の検証と対応策の検討)

  • 今回のような児童生徒の痛ましい事件が起こった際は、事実関係の検証と対応策の検討を進める必要がある。
  • 順序としては、まず、事案の発生後速やかに、情報を時系列にまとめるなどして整理するとともに、教育委員会等に検証のための組織を立ち上げるなどして対応を進める。検討のための組織については、専門的知識及び経験を有する第三者の参加を得ることにより、専門性・公平性・中立性を確保するよう努める(※4)。
  • これらの検証の実施には児童生徒及びその保護者等の理解と協力が不可欠であり、できる限りの配慮と説明を行うことが必要である(※5)。
  • 事実関係の究明の段階にあっては、学校現場は疲弊し混乱しているケースが多い。このため、事実関係の究明、マスコミ対応等は教育委員会等が行うことが考えられる。
     児童生徒の心のケア等の観点からは、スクールカウンセラー等を緊急に派遣することは当然必要である。また、学校の敷地等にマスコミが無秩序に立ち入る事態等を回避することも必要なことである。
     その際、併せて、教育委員会の職員等のうちから窓口(報道担当)を設定し、その者による一元的な対応を徹底すること、正確で一貫した情報発信を心掛けること、事実の説明についてはあらかじめ児童生徒やその保護者等の意向を確認することなど適切なマスコミ対応を行うことも重要である。
  • 事実関係の究明の段階にあっては、教育委員会等も疲弊し混乱しているケースもある。その際は、当該教育委員会等は、上位の機関等に対し第三者的視点を伴った助言・指導を適宜求めていくことも考えられる。

  • ※3 例えば、大阪教育大学を中心として進められている「セイフティプロモーションスクール」では、学校とPTA、保健所、警察、消防、専門家等からなる学校安全委員会を組織し、学校安全計画を策定するなど、地域と学校が一体となった学校安全確保とその評価のための取組等が行われている。子供に対する「被害のおそれ」をなくしていくために開かれた学校づくりを進めるに当たっては、その手法の活用を検討することが考えられる。
  • ※4 先行事例においては、まず内部組織において事実関係と対応策を整理し、その後、第三者性の高い検証委員会等を立ち上げ、更なる事実関係の整理と対応策の改善を図っている例もある。
  • ※5 「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)」や「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成25年10月11日文部科学大臣決定)を参照。

(2)学警連携協定等、学校と警察をはじめとする関係機関との連携促進

  • 学校と警察との連携については、学校警察連絡協議会や非行防止教室等の開催を通じ、警察署や少年サポートセンター等との間で日常から信頼感を培うことが重要である。また、非行に係る児童生徒の個人情報等のやり取りを円滑に進める観点からは、学警連携協定等による都道府県警察本部等と教育委員会等の間の連携を更に進める必要がある。

(学校警察連絡協議会)

  • 学校と警察の連携については、昭和38年より学校と警察が少年の非行防止等に関して連携強化を図る目的から設置された、学校警察連絡協議会等の枠組みを通じた連携が行われている。具体的には、地域において学校等と警察が協議会を設け、この場を通じて非行防止や犯罪被害防止等に関する情報を積極的に交換し、協働して取り組むべき具体的措置について協議を行い、これを計画的に実施するなどの取組が行われている。
  • このような協議会による連絡体制は、個々の学校と警察との連携の基礎になるものであることから、学校及び設置者においては、この協議会の運営や、これに基づく学校と警察の連携が実質的なものとなっているか、円滑に機能しているかを不断に見直しその改善充実を図っていくことが求められる。
  • なお、このような協議会の枠組みができていない地域においては、子供の安全を守るという観点からその必要性について改めて検討することが望まれる。

(学警連携協定等)

  • このような学校と警察の連携をより実効的に行っていくため、全国の多くの地域において、学校警察連携に係る協定等の学校警察連絡制度が設けられている。これは、児童生徒の非行、問題行動及び犯罪被害の防止並びに健全育成を推進するため、都道府県警察本部等と教育委員会等が協定の締結等を行うものである。
  • 協定等においては、警察が学校に連絡する事案や、学校が警察に相談又は連絡する事案等が整理される。学校と警察は、この協定等に基づき、連絡等の対象となる事案について、児童生徒の氏名等も含めて情報交換を行うことになる。
  • このような協定については、個人情報の保護意識の高まる中、青少年の健全育成・非行やその被害の防止の必要性等の観点から、児童生徒の個人情報等の円滑な共有を図るため、平成14年以降、各地で締結が進んできた。
  • 協定等を締結し、それに基づく情報提供を行うことは、学校の責任を放棄することではなく、学校と警察が連携して取り組む契機を作っていくものである。また、教育委員会等として協定を締結することは、対応を学校現場任せにすることなく、学校と警察が相互に連絡すべき事項等をあらかじめ明確化しておく意義もある。
     このようなことを踏まえれば、いまだこのような協定締結等を行っていない教育委員会等にあっては、当該教育委員会等が所管等する学校における学警連携状況を検証しつつ、非行防止や犯罪被害防止等の観点から協定締結等に向けて積極的に取り組むべきである。また、協定等に基づく個別事案の情報交換を促進するため、都道府県公安委員会と都道府県教育委員会等において、意見交換や合同視察の機会を設けるなどにより、学校と警察の連携強化について認識の共有を図ることも必要である。
  • もちろん、学校と警察の連携は協定の締結をもって終わるものではない。学警連携をより実効性のあるものとするためには、不審者情報を含めた学校安全全般に係る情報交換等、日常から学校と警察署・少年サポートセンター等との連携を行うことが重要である。

(スクールサポーター、少年サポートセンターと学校等関係機関との連携)

  • スクールサポーターは、担当する学校への訪問活動等により、校内における児童生徒の問題行動等への対応、巡回活動、相談活動、児童の安全確保に関する助言等を行うなど、教職員では対応に苦慮する困難事案について、警察官として長年培った知識、経験等を活用した活動により、学校における困難事案への対応能力の向上に寄与している。
     今後は、非行や犯罪被害のおそれのある情報について、適時適切な情報共有が図られるよう、スクールサポーターが有する学校と警察の橋渡し役としての機能を強化する必要がある。
     スクールサポーターの配置状況が十分でない地域もある。各地方公共団体等においても、スクールサポーターについて、その配置等の促進と十分な活用を進めていただきたい。
  • 少年サポートセンターは警察における少年問題に関する専門的知見を有する機関であることから、学校等関係機関との連携の一元的窓口となるよう体制の充実を図るとともに、個々の少年の状況に応じて少年サポートチームの結成を積極的に働き掛けるなど、関係機関が連携した対応を一層推進する。

(少年鑑別所における非行・犯罪防止の相談)

  • 各都道府県に設置されている少年鑑別所では、地域社会の非行・犯罪の防止のため、児童・生徒のほか、子供の問題で悩みを抱える保護者や学校の教職員等からの相談に応じており、その活用も考えられる。

(福祉部局等との連携)

  • また、学校と市町村の福祉部局、児童相談所等との連携については、例えば、教員の研修に児童相談所・市町村の職員を招くなどして、教員の児童福祉に関する制度等の理解を深めるとともに、相互に信頼感を醸成する機会を設けることが考えられる。
  • 学校において顕在化する児童生徒の問題行動については、その背景に貧困等の家庭の問題が潜んでいることもあると指摘されている。学校において福祉機関と連携を進めるに当たっては、その前提として、児童虐待等に係る研修や、新しい生活困窮者自立支援制度に係る啓発等を通じ、教員が、児童福祉や、家庭支援に係る社会福祉についての基礎的な理解を深めていくことも重要である。
  • なお、国立学校及び私立学校については、各設置者において、子供の安全確保、関係機関との連携の推進を図ることが望まれる。この際、設置者の求めに応じて、関係行政部局(私立学校の場合は都道府県、株式会社立学校の場合は特区認定市町村、国立学校の場合は文部科学省)や関係団体が、警察や福祉関係機関との連携等に関して支援を行うことが求められる。

(3)家庭による子供の見守りの重要性と、課題を抱える家庭に対する、教育と福祉等が連携した支援の充実

  • 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有する。保護者は、子供に生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努める必要がある。
  • 一方、ひとり親家庭も含め、経済面をはじめ様々な面から見て厳しい状況にある家庭では、子育てに当たり様々な困難を抱えていることが多く、学校の立場から働き掛けていくことも重要である。

(学校・教育委員会からの取組)

  • このため、文部科学省では、子供の貧困対策大綱等を踏まえ、教育と福祉等をつなぐスクールソーシャルワーカーの配置充実を進めている。スクールソーシャルワーカーが子供やその家庭が抱える問題について、学校と関係機関を積極的につなぐ支援体制を構築することにより、課題の早期対応に取り組んでいく。
     また、家庭教育支援チーム等の組織化を促進し、身近な地域における子育てや家庭教育に関する相談対応、親子で参加する様々な取組や講座などの学習機会の提供、訪問型家庭教育支援等の取組を充実していく。
  • 各地方公共団体等においても、スクールソーシャルワーカーや家庭教育支援チーム等について、その配置等の促進と十分な活用を進めていただきたい。

(保健、福祉の機関等間の連携の徹底、地域の身近な相談拠点の拡充)

  • また、地域で様々な支援が行われているにもかかわらず、どのような支援が受けられるのか、どこに相談すれば良いかといったことが子育て世帯に十分に知られていないため、結果として支援を受けるに至らず対応が遅れるといったことがないようにしていく必要がある。特に、困難な状況にある子供や保護者の置かれた厳しい状況に鑑みれば、自ら適切な相談拠点にアクセスすることが容易でないことがあり得ることは想定される。このため、厚生労働省においては、子供や保護者が状況に応じた支援機関と接点を持つための一つの取組として、家庭と関わる機会の多い地域の保健、福祉の機関(※6)やNPO等の民間組織などの関係機関側が、接点のあった子供や保護者の課題を把握できた場合には、関係機関同士で連携して、子供や保護者を適切な支援機関につないでもらえるよう関係機関に徹底する。例えば、児童扶養手当の現況届の提出窓口において、現況届提出時等に家庭の課題を把握できた場合には、必要な支援を提供する機関に橋渡しを行うことを推進する。この他、地域若者サポートステーションにあっても、本来業務を実施していく過程で支援が必要と思われる子供・保護者に気付いた場合は、関係機関への橋渡しに努める。あわせて、地域で専門性の高い相談支援を切れ目なく実施する「子育て世代包括支援センター」や身近な場所で気軽に相談できる子ども・子育て支援新制度における利用者支援事業(基本型)などの地域における相談拠点を拡充することとしている。
  • このような対応に当たっては守秘義務や個人情報保護に留意する必要があり、要保護児童対策地域協議会や子ども・若者支援地域協議会の仕組みを活用するなど、適切な支援に必要な情報共有を検討することが必要である。
  • さらに、児童虐待や居住実態が把握できない児童への対応については、平成26年12月26日の児童虐待防止対策に関する副大臣等会議の取りまとめを踏まえ、居住実態が把握できない児童の所在把握のための取組のほか、児童虐待の未然防止、重篤化防止のための早期発見等に資する対応策として、厚生労働省を中心に、予防や軽度な支援が必要なケースにおける子育て支援事業の積極的な活用や、児童等の最新情報を要保護児童対策地域協議会の関係者が共有し得るモデル事業の実施等の取組を推進することとしているところである。

  • ※6 想定される主な保健、福祉機関:子育て相談窓口、利用者支援事業や地域子育て支援拠点事業の実施施設、保健センター、保育所、児童館、放課後児童クラブ、障害児通所支援事業所など

(4)子供のSOSを受け止めるための窓口の充実と、社会全体でアンテナを高く保っていくための啓発活動の実施

  • 子供たちのSOSを受け止め、適切に対応していく取組を教育行政として、また、社会全体で推進していく必要がある。そのためには、(1)から(3)までで示した取組等を進めていくことを通じ、学校、設置者、関係機関、家庭が子供たちのSOSを早期に発見していくことも重要であるとともに、保護者や地域社会の大人たちが子供たちのSOSを見逃さないようにしていくことも強く求められる。
  • このことを踏まえ、文部科学省をはじめ、国・都道府県等においては以下の取組を進めることとする。

子供のSOSを受け止めるための窓口の充実と、社会全体でアンテナを高く保っていくための啓発活動について

  • 「24時間いじめ相談ダイヤル」を「24時間いじめ・子供安全相談ダイヤル(仮称)」に改編することとし、都道府県等において順次必要な取組を進める。
  • その上で、まず4月に、緊急の生徒指導担当者を集めた会議を開催し、本対応方策について周知するとともに、
    • 改編した「24時間いじめ・子供安全相談ダイヤル(仮称)」、「子どもの人権110番」、児童虐待対応を念頭に3桁化される児童相談所全国共通ダイヤル「189番」、ヤングテレホンコーナー(都道府県警察本部が整備している少年相談窓口)等、様々なSOSの受け止めに係る窓口を周知
    • 学校と警察をはじめとする関係機関との連携(少年サポートチーム、スクールサポーター等)に係る具体的取組を紹介
    • コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)、学校支援地域本部、家庭教育支援チーム等において、様々な大人が関わり子供を見守る具体的な取組を紹介することとする。
  • また、必要な啓発用のポスターやカード等を作成し全国で配布する。
  • さらに、新年度より、都道府県担当者等を集めた関係各種会議で周知するとともに、7月の「青少年の非行・被害防止全国強調月間」や11月の「子ども・若者育成支援強調月間」、また、8月のPTAの全国会議等を活用し周知を図ることとする。
  • 各学校等においても、これらの取組を踏まえつつ、児童生徒が自分や友人の安全に関する不安や懸念があったら、躊躇(ちゅうちょ)することなく、周囲の信頼できる大人に相談できるようにする観点から、校内におけるSOS窓口の周知や、PTA等との連携を進めていただきたい。
  • また、少年のSOSを社会全体で受け止めていくため、警察では、居住地域の実情に精通し、少年問題に高い関心を有する少年警察ボランティアとの連携を一層密にして、少年警察ボランティアが日常生活を通じて把握した少年のSOSにつながり得る情報を受け止めるとともに、保護者、地域住民等に対する啓発活動を推進する。

4.被害のおそれがある児童生徒に対する早期対応

(早期対応の指針)

  • 学校から連絡が取れない状況、また、学校外の集団との関わりがある状況の下、児童生徒に「被害のおそれ」がある場合における、学校とその設置者が行う組織的な対応の円滑な実施に資するよう、文部科学省として、「被害のおそれ」がある児童生徒に対する早期対応の指針を以下のようにとりまとめる。これを基に、設置者の指導・助言のもと、各学校において早期対応の体制を構築しておくことを望みたい。

児童生徒の「被害のおそれ」に対する学校における早期対応について【指針】(平成27年3月31日)

(日常の体制)

  • 学校における早期対応を円滑に進めるためには、日常から組織的な対応、学校外の組織との連携を進めておく必要がある(2や3(1)から(3)までを参照)。
     また、児童生徒に対しては、日頃から培う教職員との信頼関係を基礎に、自身や友人について「被害のおそれ」があるとき等は、教職員をはじめとする身近な大人によく相談するよう指導していくことが必要である。

(連続欠席等により「被害のおそれ」が生じたときの早期対応)

  • 病気やけがなどの正当な事由がなく児童生徒が連続して欠席している場合、担任教諭・養護教諭等がチェックをした上で、3日を目安に校長等へ報告を行うこととする。
     また、正当な事由がなく7日以上連続して欠席し、児童生徒本人の状況の確認ができていない場合は、学校は設置者へ報告を行うこととする(※7)。
     いずれの段階にあっても、担任や養護教諭等は、原則として対面で児童生徒本人と会い、状況を確認する必要がある。
  • ここに示している日数は目安であり、事案によってはこの日数が経過するのを待つことなく、速やかに設置者に報告することが必要である。
  • また、出席していたとしても、学校外の集団(成人を構成員とするものを含む。)との関わりの中で、児童生徒に危険が及ぶおそれがある場合についても、学校は設置者へ報告を行うものとする。
  • なお、いずれの段階にあっても、事件性が疑われる場合には直ちに警察に相談・通報する必要があり、児童虐待が疑われる場合には直ちに市町村・児童相談所等へ相談・通告する必要がある(※8)。

(学校・設置者による速やかな支援体制の構築)

  • 設置者への報告後、学校及び設置者等は速やかに当該児童生徒に対する支援体制を構築する必要がある。その際、「所在不明の場合」「家庭の協力が得にくく連絡が取れない場合」「学校外の集団との関わりがある場合」「欠席が続く場合」と状況に応じた支援体制を構築し、適切な対応をとる必要がある。
1.所在不明の場合
  • 児童生徒本人と連絡が取れない場合については、学校、家族、他の児童生徒、地域の人々等からの情報収集に努めるとともに、必要に応じて担任教員やそれ以外の当人が信頼を寄せる教員・大人、更にはスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、スクールサポーターを活用し、必要に応じて児童福祉等の関係部門や警察等の関係機関とも連絡しながら、その所在を明確にし、当人が家庭に戻るよう働き掛ける必要がある。
     上記のような対応を取った結果、家出や行方不明が疑われる場合には、引き続きその所在の把握に努めるとともに、個々の事案に応じて速やかに警察に相談するものとする。
     また、電話や家庭訪問等により連絡・接触できない家庭に属する児童など居住実態が把握できない児童については、平成26年12月26日の副大臣会議取りまとめ及びこれを踏まえた通知(「居住実態が把握できない児童への対応について(通知)」(平成27年3月16日付け総行住第33号、26初初企第53号、雇児総発0316第1号))や「義務教育諸学校における居所不明の児童生徒の把握等のための対応について(通知)」(平成25年3月1日付け24初初企第68号)に基づく対応により、市町村内及び市町村間での情報提供や、関係機関等との連携によりその所在
    確認を行っていく必要がある。
2.家庭の協力が得にくく連絡が取れない場合
  • 保護者との間で、教員(担任教員でなくとも保護者が信頼を寄せている教員)、スクールソーシャルワーカー、教育委員会職員等により、当人の「被害のおそれ」を取り除くという観点から十分な話合いを行い、早急に連絡が取れる体制を組むよう努力する。
     その際、スクールソーシャルワーカーを十分活用し、市町村の福祉部局や児童相談所等の関係機関等から情報収集を図り、必要に応じて、当人や家庭に対する支援体制の構築についても検討する。その上で1.と同様の対応を進めていく。
     なお、上記1.、2.を通じて当人の所在が確認されたものの、学校外の集団との関わりの中で「被害のおそれ」が残る場合には3.の対応に移行する。
3.学校外の集団(成人が主な構成員であると思われるものも含む。)との関わりがある場合
  • 少年サポートセンターやスクールサポーターが、少年警察ボランティア(少年補導員、少年指導委員、少年警察協助員)等と連携して、少年、保護者、地域住民等の元に出向き、少年からのSOSにつながり得る情報を幅広く収集するなどアウトリーチ型の少年サポート活動を推進する。
  • また、警察では、学校等関係機関、地域住民等の協力を得て、情報を収集し、集団的不良交友関係の実態を把握する。その上で、SOSを発している少年の発見・救出はもとより、少年のたまり場対策、集団的不良交友関係に代わる居場所づくり等を通じた集団的不良交友関係の解消に向けた対策を推進する。
  • 学校としては、こうした警察の取組と連携を図ることが重要である。
  • また、学校としても他の児童生徒、保護者、地域の人々等から情報収集を進める必要がある。
  • その上で、少年サポートチームを招集するなど学校と警察等との関係機関が連携し、体制を組みつつ、「被害のおそれ」を取り除くようにしていく必要がある。
     また、学校、PTA、地域の人々、関係機関等が連携して当該集団に属する若者を指導し、被害を防止していく必要がある。上述の少年サポートセンター、スクールサポーターとの連携のほか、スクールガードリーダーの十分な活用も考えられる。
     なお、当面の「被害のおそれ」はなくなっても、欠席が続く場合には4.の対応に移行するものとする。
4.欠席が続く場合
  • 「欠席が続く場合」について、ここで示しているのは「被害のおそれ」がある場合のものであり、例えば、完全に自室に閉じこもり両親も十分に状況を把握できない場合や自傷行為の危険性がある場合などが想定される。
  • これらについては、担任教員、生徒指導担当教員、養護教諭等の関係教員が管理職の指示の下、組織的に関わりながら、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー等も適切に活用し、当該児童生徒の安全を確認しながら状況に応じた支援を実施する必要がある。さらに、教育相談センター等による訪問支援を行うほか、教育支援センター(適応指導教室)やフリースクール等の民間機関、福祉、医療の関係機関などとも連携し、組織的・計画的な支援を推進していく必要がある。
     必要に応じ、他の児童生徒や保護者等から情報収集することも重要である。
  • なお、欠席が続く場合への対応については、不登校児童生徒への対応の一環として、「不登校に関する調査研究協力者会議」において、一般に欠席が続き始めたときの早期対応の在り方や、「人間関係型」「遊び・非行型」「無気力型」「複合型」などの不登校の類型に応じた対応策を検討していく中で、更に詳細な検討を進めていくことを望みたい。
  • 上述のとおり、学校・設置者においては、学校や地域の実情に応じた対応方針を定め、学校としての責務を果たしていく必要がある。
     その際、それぞれの場合ごとに、まずは被害のおそれをなくすべく、当人の状況の把握に努めることが最優先の課題となるが、その状況が把握された後は、その状況に応じ、学校・設置者と関係機関がケース会議を開くなどにより役割分担をしながら支援を進めていく必要がある。

  • ※7 学校教育法施行令は、第19条において、校長は、常に、その学校に在学する児童生徒の出席状況を明らかにしなければならないとし、同第20条において、義務教育段階の児童生徒については、校長は、休業日を除き引き続き7日間出席せず、その他その出席状況が良好でない場合において、その出席させないことについて保護者に正当な事由がないと認められるときは、速やかに、その旨を当該学齢児童又は学齢生徒の住所の存する市町村の教育委員会に通知することとしている。これらは就学義務に関連して定められている規定であるが、本指針では、この規定を念頭に置き「7日間」とした。
  • ※8 児童虐待の防止等に関する法律第6条においては、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所に通告することとされている。平成16年の同法及び児童福祉法の改正により、市町村が虐待通告先に追加される等、市町村の役割が明確化されている。

5.今回の事件に関連したその他の課題と対応する施策の推進

  • 川崎市における事件の検証を踏まえた当面の対応については、上記にまとめたとおりである。また、今回の事件を踏まえて検討が必要なその他の課題や、上記取組に関連する課題についてもここで提起しておきたい。
  • これらの課題については、関係省庁における施策の推進及びその不断の改善に向けた検討等が必要である。

1.高校中退防止策等、学習や学校生活に困難を抱える児童生徒への支援

  • 今回の事件に関係して、学校外における若者のグループの存在がクローズアップされた。これらのグループの中には、高校を中退するなどして、学校から離れてしまう一方で、定職に就いていない者も多い。こうした青少年については、非行を行う危険性、犯罪に手を染めてしまう危険性も高い。
  • 青少年の健全育成の観点からは、高校生が安易に不登校や高校中退等に至らないよう施策を講ずること、また、高校中退者等が社会からドロップアウトしないような施策を講ずることが必要である。
  • 具体的には、不登校や高校中退を防止する観点からは、学校における教育相談体制を充実していく(※9)。また、高等学校等における中退者等に対する就職や進路支援に関する情報提供の充実、学び直しの支援等を推進する。
     また、就職希望を持つ中途退学者に対する職業的自立に向けた支援としては、政府として、ハローワークや地域若者サポートステーションと学校との一層の連携を進めていくとともに、中途退学者も含めた若者の就職支援等を盛り込んだ若者雇用促進法案を今国会に提出したところである。
  • また、中学校卒業時の進路選択でミスマッチが起きないようにすることも重要である。中学卒業時の進学先としては、いわゆる普通科等に加え、職業教育を主として行う専門高校や高等専修学校等、生徒の個性・能力に応じた多様な選択肢が存在する。中学校の進路指導担当者にあってはその重要性を改めて理解し進路指導を行っていくことが必要であり、国や都道府県等においても情報提供を充実していくことが考えられる。
  • さらに、非行少年への指導に当たっては、学校と少年院、少年鑑別所、保護観察所等との連携も進めていく必要がある(※10)。

  • ※9 文部科学省としては、「チーム学校」の考え方の下、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の専門人材、補習指導員等の外部人材の配置充実を進める。
  • ※10 平成27年6月施行予定の少年院法においては、社会復帰支援が少年院の責務とされ、少年鑑別所法においても、少年鑑別所の業務として非行及び犯罪の防止に関する援助業務が規定された。

2.非行防止やいじめ防止、生命を尊重する態度の育成等に向けた指導の充実

  • 非行防止の観点からは、警察と連携した非行防止教室等の実施により、発達段階に応じた、いわゆる初発型非行への対策や、飲酒・喫煙・薬物対策等を進めていくことも重要である。
  • また、改めて、全ての児童生徒に対して、小学生の段階から、いじめ防止や生命尊重等の指導の充実を進めていく必要がある。これについては、学習指導・生徒指導等、学校生活全体を通じて指導を行うことが必要である。例えば、文部科学省が作成し、全国の小・中学校に配布している副読本「私たちの道徳」は、いじめへの対応や生命尊重に係る指導内容が盛り込まれており、今後とも、このような指導を充実していくことも必要である。
  • 警察では、少年警察ボランティア等と連携して、問題を抱え非行に走る可能性のある少年に対して、社会との絆(きずな)を実感し、心の拠(よ)り所となる居場所を作るための立ち直り支援活動を推進する。

3.情報モラル等を育む指導の充実

  • 他人の写真をインターネットに無断公表するなど、他人の情報の取扱いに関する児童生徒の理解について課題があることが指摘されている。
     このため、小・中学生のうちから情報モラルや情報に対する責任についての指導を充実していくことが必要である。

4.欠席が続く児童生徒に係る状況等の把握

  • 「被害のおそれ」がある児童生徒への対応状況等については、今後、定期的な把握を進める必要がある。
     具体的には、例えば、7日間連続して欠席している児童生徒に係る設置者への報告状況や、学校と警察との連携状況等について、継続的に把握し、その結果等に基づき各学校・地域において適切な対応を進めていくことを検討すべきである。

5.更に信頼される教育行政の推進に向けて

  • 学校が外部と連携を進める前提として、教育行政を更に信頼される体制へと整備していくことも必要である。
  • 具体的には、教育委員については、年齢、性別、職業等に著しい偏りが生じないよう配慮することとされている。例えば、学校の状況等を外部の目で検証し課題の改善を進めていくためには、当該学校を設置する市町村における教員経験がある教育委員に偏るのではなく、より多様な人材を任命する方が望ましいことは明らかである。
     また、教育委員についてどのような者が選ばれているか、その経歴等をホームページで公開することも、社会や住民の信頼感を獲得していく上で重要なことである。
  • なお、子供の安全を守るという観点からは、学校や教育委員会のみでの対応では不十分であることは上記に示したとおりである。本報告書で示した様々な取組を進めていくに当たっては、首長部局の関連機関との密接な連携体制の構築が欠かせないところであり、こうした観点から、平成26年の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正により新たに設けることとされた総合教育会議も活用しつつ、各首長におかれても積極的な取組を推進されるよう望みたい。
  • このような取組を通じ、外部に開かれた教育行政、学校を実現していくことが、結果として、教育の質の向上、教育に対する信頼の醸成につながっていくと考えている。

おわりに

 子供は国の宝である。また、総理の国会答弁にあるとおり、子供を守る責任は大人にある。このような考え方の下、政府として、今回の事件を教訓とした再発防止策を上記のとおり取りまとめた。
 ここに掲げた施策・取組は、子供たちを危険から守るために、文部科学省をはじめ、関係府省庁、都道府県、市町村、学校設置者、学校において積極的に推進されなければならない。同時に、文部科学省は、その状況を継続的にフォローアップしていかなければならない。
 このような取組が真に有効なものになるかどうかは、文部科学省・関係府省庁の施策、学校や警察をはじめとする関係機関の努力とともに、保護者や地域の大人が一丸となって子供を守れるかどうかにもかかっている。
 この対応方策の公表を、家庭やそれぞれ地域で子供の回りに危険が迫っていないかどうか、不安や心配な状況がないかどうかを振り返る契機、あるいは子供たちを今回のような事件の被害者にも加害者にもしないような方策について改めて考える契機としていただきたい。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成27年07月 --