資料1‐2 今後の教員養成・免許制度の在り方について(答申)(案)の概要

1.教員養成・免許制度の改革の基本的な考え方

1.これからの社会と教員に求められる資質能力

 (略)

2.教員をめぐる現状

 (略)

3.教員養成・免許制度の改革の重要性

  • 現在、教員に最も求められていることは、広く国民や社会から尊敬と信頼を得られる存在となること。このためには、養成、採用、現職研修等の改革を総合的に進めることが必要であるが、とりわけ教員養成・免許制度の改革は、他の改革の出発点に位置付けられるものであり、重要。

4.教員養成・免許制度の現状と課題

  1. 教員養成に対する明確な理念の追求・確立がなされていない大学があるなど、学生に身に付けさせるべき資質能力についての理解が十分でないこと。
  2. 教職課程が専門職業人たる教員の養成を目的とするという認識が、大学教員の間に共有されていないため、教職課程の組織編成やカリキュラム編成が、十分整備されていないこと。
  3. 学校現場が抱える課題に十分対応した授業ではない、指導方法が講義中心、教職経験者が授業に当たっている例も少ないなど、実践的指導力の育成が十分でないこと。特に修士課程に、これらの課題が見られること。

5.教員養成・免許制度の改革の方向

  • 「大学における教員養成」及び「開放制の教員養成」の原則を尊重しつつ、現在を我が国の教員養成の大きな転換期と捉え、以下の方向で改革を推進。
    1. 大学の教職課程を、教員として最小限必要な資質能力を確実に身に付けさせるものに改革する。
    2. 教員免許状を、教職生活の全体を通じて、教員として最小限必要な資質能力を確実に保証するものに改革する。

2.教員養成・免許制度の改革の具体的方策

序 教員に対する揺るぎない信頼を確立するための総合的な改革の推進

 (略)

1.教職課程の質的水準の向上

(1)基本的な考え方

  • 学部段階の教職課程が、教員として必要な資質能力を確実に身に付けさせるものとなるために、大学自身の教職課程の改善・充実に向けた主体的な取組が重要。
  • 今後は、課程認定大学のすべての教員が教員養成に携わっているという自覚を持ち、各大学の教員養成に対する理念等に基づき指導を行うことにより、大学全体としての組織的な指導体制を整備することが重要。

(2)「教職実践演習(仮称)」の新設・必修化

  • 今後、教職課程の履修を通じて、教員として最小限必要な資質能力の全体について、確実に身に付けさせるとともに、その資質能力の全体を明示的に確認するため、教職課程の中に、新たな必修科目(「教職実践演習(仮称)」)を設定することが適当。
  • 当該科目には、教員として求められる事項(1使命感や責任感、教育的愛情等に関する事項2社会性や対人関係能力に関する事項3幼児児童生徒理解にや学級経営に関する事項4教科・保育内容等の指導力に関する事項)を含めることが適当。
  • 役割演技(ロールプレーイング)やグループ討議、事例研究、模擬授業等により実施することや、教科に関する科目と教職に関する科目の担当教員が、共同して実施に責任を持つこと、学生の状況等に応じて、個別に補完的な指導を行うこと、全ての科目を履修済み、あるいは履修見込みの時期に設定するなど、履修方法等を工夫。
  • 最低修得単位数は2単位程度が適当。科目区分は、現行の科目区分とは異なる新たな区分(「教職総合実践に関する科目(仮称)」)を設けることが適当。

(3)教育実習の改善・充実

  • 大学は、教育実習の全般にわたり、学校や教育委員会と連携して、責任を持って指導に当たることが重要。
  • 実習内容については、個々の学生の履修履歴等に応じて、内容の重点化も考慮。その場合でも、十分な授業実習の機会の確保に努めることが必要。
  • 大学の教員と実習校の教員が連携して指導に当たる機会を積極的に取り入れること、また、実習校においては、複数の教員が協力して指導に当たることが必要。
  • 大学は、教育実習の円滑な実施に努めることを、法令上明確にすることが必要。教育実習の履修に際して満たすべき到達目標をより明確に示すとともに、事前に学生の能力や適性、意欲等を適切に確認することが必要。教育実習に出さないという対応や、実習の中止も含め、適切な対応に努めることが必要。
  • いわゆる母校実習については、できるだけ避ける方向で、見直しを行うことが適当。
  • 各都道府県ごとに、教育実習連絡協議会を設置し、実習内容等について共通理解を図るとともに、実習生を円滑に受け入れていく具体的な仕組みについて検討。

(4)「教職指導」の充実

  • 学生が主体的に教員として必要な資質能力を統合・形成していくことができるよう、今後は、どの大学においても、教職指導の充実に努めることが必要。法令上も、教職指導の実施を明確化。
  • 学生が教職課程の履修を円滑に行うことができるよう、入学時のガイダンスを工夫するとともに、履修期間中のアドバイス機能を充実することが必要。
  • 同学年や異学年の学生による集団学習の機会を充実するとともに、インターンシップや、子どもとの触れ合いの機会、現職教員との意見交換の機会等を積極的に提供することが必要。

(5)教員養成カリキュラム委員会の機能の充実・強化

  • 教職課程の運営や教職指導を全学的に責任を持って行う体制を構築するため、教員養成カリキュラム委員会(平成9年の教養審第一次答申等で提言)の機能の充実・強化を図ることが必要。
  • 学校現場や社会のニーズを取り入れた教職課程の改善を不断に行っていくシステムを構築することが必要。

(6)教職課程に係る事後評価機能や認定審査の充実

  • 大学の教職課程について、専門的な見地から事後評価を行い、問題が認められた場合には、是正勧告や認定取り消し等を可能とするような仕組みを整備することが必要。
  • 引き続き、各大学の自己点検・評価や学外者による検証を促進することが必要。
  • 教職課程の認定に係る審査の充実を図るとともに、実地視察の一層の充実や課程認定委員会の体制整備を図ることが必要。

2.「教職大学院」制度の創設

(1)「教職大学院」制度の創設の基本的な考え方

1.「教職大学院」制度の必要性及び意義
  • 様々な専門的職種や領域において、大学院段階で養成されるより高度な専門的職業能力を備えた人材が求められていることを踏まえ、教員養成の分野についても、専門職大学院制度を活用した教員養成教育の改善・充実を図るため、教員養成に特化した専門職大学院としての枠組み(「教職大学院」制度)を創設することが必要。
  • 力量ある教員の養成のためのモデルを制度的に提示することにより、学部段階をはじめとする教員養成に対してより効果的な教員養成のための取組を促すことを期待。
2.主な目的・機能
  • 教職大学院は当面、次の2つの目的・機能とする。
    1)学部段階での資質能力を修得した者の中から、さらにより実践的な指導力・展開力を備え、新しい学校づくりの有力な一員となり得る新人教員の養成
    2)現職教員を対象に、地域や学校における指導的役割を果たし得る教員等として不可欠な確かな指導理論と優れた実践力・応用力を備えたスクールリーダー(中核的中堅教員)の養成
  • これ以外の幅広く教員の資質能力の向上に関連する目的・機能については、各大学の主体的な検討により、一般の専門職大学院としての設置も含め、先導的・意欲的な取組を期待。

(2)制度設計の基本方針

 (略)

(3)具体的な制度設計(主として設置基準に関連する事項について)

1.課程の目的
  • 「専ら教員の養成又は研修のための教育を行うことを目的とする」などの共通的な目的規定を整理することが適当。
2.標準修業年限
  • 一般の専門職大学院と同様、2年とすることが適当。
3.修了要件
  • 必要修得単位数は、45単位以上とすることが適当。そのうち10単位以上は学校における実習によることとし、10単位の範囲内で、大学の判断により、教職経験をもって当該実習とみなすことができるようにすることが適当。
4.入学者選抜
  • 各教職大学院の責任において、入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)を明確にし、将来の中核的・指導的な教員に相応しい資質能力を適確に判断し得るような工夫等を行うことが重要。
5.教育課程
  • 理論と実践の融合を強く意識した体系的な教育課程を編成すべきことを明確にすることが必要。
  • 具体的には、1)教育課程の編成・実施に関する領域、2)教科等の実践的な指導方法に関する領域、3)生徒指導、教育相談に関する領域、4)学級経営、学校経営に関する領域、5)学校教育と教育の在り方に関する領域のすべての領域にわたり授業科目を開設することが適当。
6.教育方法・授業形態
  • 少人数で密度の濃い授業を基本としつつ、理論と実践との融合を強く意識した事例研究、模擬授業、授業観察・分析等の教育方法を積極的に開発・導入することが必要。
  • 授業形態として、単なる講義にとどまらず、ワークショップ、事例研究、フィールドワーク等の新しい教育方法を中心としたものとして展開されることが必要。
7.履修形態
  • 現職教員が職務に従事しながら履修できるよう、昼夜開講制、夜間大学院など、弾力的な履修形態を可能とすることが適当。
8.教員免許状を保有しないで入学する学生の扱い
  • 教職大学院在学中に所定履修単位のほか、一種免許状の取得に必要な所要単位を修得することが必要。学部での開設科目の履修のほか、教職特別課程(教職に関する科目の単位を修得させるために大学が設置する修業年限を一年とする課程)での履修も可能。
9.教員組織
  • 最低限必要な専任教員数は11人とするとともに、うち実務家教員の比率はおおむね4割以上とすることが適当。実務家教員の範囲は、学校教育関係者・経験者を中心に想定されるが、医療機関や福祉施設など教育隣接分野の関係者、民間企業関係者など、幅広く考えられる。
  • 実務家教員の要件は、一定の勤務経験を有することにより優れた教育実践を有する者であるとともに、高度の教育上の指導能力を有すると認められる者とすることが必要。
10.連携学校等
  • 附属学校の積極的活用は当然の前提としつつ、附属学校以外の一般校の中から、連携協力校を設定することを義務付けることが適当。
11.大学院の形態
  • 連合大学院制度や連携大学院制度などの仕組みを活用することが考えられる。また、従来とは異なる新しい教育方法が中心に展開されることから、いわゆる通信制の課程は想定されない。
12.学位の種類
  • 「教職修士(専門職)」等の専門職学位を学位規則において定めることが適当。
13.認証評価等
  • 中核的・指導的な教員の養成・研修の場としての水準の維持・向上を図るため、大学としての自己点検・評価や認証評価が重要。大学関係者、学校関係者、地方教育行政担当者等による認証評価機関を創設し、不断の改善を促すシステムを構築。

(4)その他(設置基準以外の関連事項等について)

  • 教職大学院の整備に当たっては、各大学の主体的な設置構想の検討が前提となるが、国立大学については、特に優れた実績を有し、意欲的で、真に他大学のモデルとなる設置構想と計画を実現し得る大学から整備を行うことが必要。
  • 修了者に授与する教員免許状の種類については、現行の専修免許状とすることが適当。
  • 任命権者の判断により、初任者研修の全部又は一部を免除することができることとすることが適当。
  • 修了者の給与面の処遇については、修了者の実績等を勘案しつつ、各任命権において検討。新人教員の採用についても、都道府県教育委員会等の責任で適切に検討することを期待。

3.教員免許更新制の導入

(1)導入の基本的な考え方

1.導入の必要性及び意義
  • 教員として必要な資質能力は、本来的に、時代の進展に応じて更新が図られるべき性格を有しており、教員免許制度を恒常的に変化する教員として必要な資質能力を担保する制度として、再構築することが必要。
  • 教員免許状に一定の有効期限を付し、その時々で求められる教員として必要な資質能力が保持されるよう、必要な刷新(リニューアル)を行うことが必要であり、このため、教員免許更新制の導入が必要。
  • 更新制導入の意義としては、すべての教員が必要な資質能力を確実に修得することで、公教育の改善・充実と信頼の確立。また、専門性向上の促進も期待。
2.更新制の基本的性格
  • 更新制は、いわゆる不適格教員の排除を直接の目的とするものではなく、教員が、更新後の10年間を保証された状態で、自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ていくという前向きな制度。
  • 免許更新講習の受講により、教員としての専門性の向上も期待。また、講習を修了できない者は、免許状は失効するため、問題のある者は教壇に立つことがないようにするという効果。
  • 更新制を導入し、専門性の向上や適格性の確保に関わる他の教員政策と一体的に推進することは、教員全体の資質能力の向上に寄与するとともに、教員に対する信頼を確立する上で、大きな意義。

(2)具体的な制度設計

1.基本的な考え方
  • 更新の要件は、必要最小限のものとし、客観性を担保するとともに、更新のための負担も合理的な範囲内のものとすることが必要。
2.教員免許状の有効期限
  • 一律に10年間とすることが適当。
3.更新の要件と免許更新の実施主体
  • 教員免許状の有効期限内に、免許更新講習を受講し、修了の認定を受けることとすることが適当。免許の更新は、免許管理者である都道府県教育委員会が行うこととすることが適当。
4.免許更新講習の在り方
1)講習の開設主体と国による認定
  • 課程認定大学のほか、大学の関与や大学との連携協力のもとに都道府県教育委員会等も開設可能とする。一定水準が維持されるよう、あらかじめ国が認定基準を定めて認定するとともに、認定後も定期的にチェックを行うことが必要。
2)講習内容と修了の認定
  • 講習内容については、
    • 教職実践演習(仮称)に含めることが必要な事項と同様の内容を含むものであること
    • その時々で求められる教員として必要な資質能力に確実に刷新(リニューアル)する内容を含むものであることが必要。また、学校種や教科種に関わらず、およそ教員として共通に求められる内容を中心とすることが適当。
  • 修了の認定は、あらかじめ修了目標を定め、受講者の資質能力を適切に判定した上で、修了の可否を決定することが適当。
3)受講時期と講習時間
  • 有効期限の満了前の直近2年間程度の間に、最低30時間程度、受講することが適当。
4)講習の受講の免除等
  • 教員としての研修実績や勤務実績等が講習に代替しうるものと評価できる場合には、受講の一部又は全部の免除を可能とすることが適当。
5.教員免許状の失効と再授与の在り方
  • 更新の要件を満たさない場合、教員免許状は更新されず、失効する。ただし、免許更新講習と同様の講習(回復講習)を受講・修了すれば、再授与の申請を可能とすることが適当。
6.教員免許状の種類ごとの更新制の取扱い
  • 更新制は、すべての普通免許状に、同等に適用することが適当。
7.複数の教員免許状を有する者の取扱い
  • 複数免許状の保有者については、原則として、一の免許状について更新の要件を満たせば、他の免許状の更新も可能とすることが適当。
8.教員となる者及びペーパーティーチャーの取扱い
  • 更新制は、制度導入後に教員となる者を主たる対象者として想定した制度。ペーパーティーチャーは、免許状の再取得が必要となった時点で、回復講習を受講・修了することが必要。

(3)現職教員を含む現に教員免許状を有する者への適用

1.適用についての基本的な考え方
  • 現に教員免許状を有する者についても、一定期間(10年間)ごとに免許更新講習と同様の講習(定期講習)の受講を法的に義務付け、当該講習を修了しない場合は、免許状が失効することとすることは、必要性と合理性があり、更新制の基本的な枠組みを適用することが適当。
2.現職教員及びペーパーティーチャーの取扱い
  • 現職教員は、定期講習を受講・修了しなければ、免許状が失効し、失職となることから、10年ごとに定期講習を受講・修了することが必要。
  • ペーパーティーチャーは、免許状の再取得が必要となった時点で、回復講習を受講・修了することが必要。

(4)更新制等の円滑な実施のために

  • 現職教員が計画的に定期講習を受講できるよう諸準備を進めるとともに、「免許管理システム」の整備を速やかに行うことが必要。

4.教員養成・免許制度に関するその他の改善方策

  • 小学校の教員養成について、教員養成を主たる目的とする学科等以外の学科等においても、可能とすること等について、検討。
  • 我が国の教員養成システムを、将来的に大学院修士レベルまで含めた養成へとシフトしていくことについては、今後の課題として、検討。
  • 上進制度について、免許法別表第三の「良好な成績で勤務」の評価がより適切に行われるよう、適切な運用に努めることが必要。
  • 二種免許状を保有する教員に係るいわゆる12年指定制度については、今後は、幼稚園の教員も対象とすることが適当。
  • 二種免許状については、当面は存続させることが適当。ただし、一種免許状の早期取得が強く求められている近年の状況等も踏まえ、引き続き検討課題とすることが適当。
  • 分限免職処分を受けた者について、明らかに教員としての資質能力に問題がある場合には、免許状の取上げを可能とすることが適当。

5.採用、研修及び人事管理等の改善・充実

  • 中長期的な視点から退職者数の推移等を分析・把握して、計画的な採用・人事を行うことが重要。採用スケジュールの早期化、受験年齢制限の緩和・撤廃、社会人経験者の登用促進等、多様な人材登用のための一層の改善・工夫が必要。
  • 10年経験者研修は、法定研修として引き続き存続させるものの、更なる指導力の向上や、得意分野づくりに重点を置いた研修としての性格を明確にするとともに、実施時期や研修内容を柔軟化の方向で見直すことが必要。
  • 問題のある教員が教壇に立つことのないよう、引き続き、条件附採用期間制度の厳格な運用や、指導力不足教員に対する人事管理システムの活用による分限制度の厳格な適用等に努める。
  • 新しい教員評価システムの構築を一層推進するとともに、評価の結果を任用や給与上の措置などの処遇に適切に反映することが重要。

6.教員に対する信頼の確立に向けて

 (略)

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成21年以前 --