資料3-2 「小中連携、一貫教育に関する主な意見等の整理」に関する意見募集の結果について

意見募集の期間
平成24年7月20日(金曜日)~平成24年8月10日(金曜日)


御意見総数
115件


頂いた御意見のうち主なもの
(●は、特に多く寄せられた御意見)


【小中連携、一貫教育推進の目的、効果に関する御意見】
●一貫教育に関して、受験競争の低年齢化、教育への市場原理・競争主義の導入につながることのないようにすべき。
●市町村での効果として、都道府県独自の学習到達度調査や全国学力・学習状況調査における平均正答率の上昇が挙げられているが、数値化された学力向上を重視するのではなく、子どもが主体となる豊かな学びを通して子ども一人ひとりの学力保障を大切にすべき。
●小中連携、一貫教育の目的のひとつに中1ギャップの解消が挙げられているが、この移行期(学びと成長の段差)は子どもの発達を促す再チャレンジの機会ともなり、必ずしもネガティブな面のみ強調することはできない。
○小中連携、一貫の目的として掲げられている中1ギャップの解消等がなされても、本質的な問題である学力レベルの低下を防ぐことはできない。
○小中連携、一貫教育を実施している県においても、中1ギャップは問題となっている。今回の報告の中ではふれられていないが、中1ギャップの大きな原因のひとつは、小学校と中学校におけるテスト(小学校では単元ごとであったのが、中学校では定期試験等となり、テストの占める地位が急に重要なものになる)、通知表(小学校では一つの教科に4~5ある評価の観点ごとに3段階で評価、中学校では教科ごとに5段階の評定があり、自分の学力が相対的にわかるようになる)の違いである。
○ 中1ギャップを回避するよりも、小学校6年生と中学校1年生の節目をつけ、小学校6年生としてしっかり自覚を持てる教育をした方が、子どもたちは育つ。中1 ギャップとは正反対に小学校で不登校だった生徒が中1 に入学して改善できたという事例もある。
○ 小中連携により、中学校の教員が、各生徒が小学校でどのような指導をされてきたのか、どのような生活の様子であったか等の情報を得ることは、中学校での学習指導や生徒指導の参考となるので、小中連携は子どもたちの健やかな成長のために必要である。
○ 小中一貫校に実際に勤務しているが、子どもの中1ギャップが解消されていると感じる。また、小中の教員の交流によって、教員の指導力が向上したり、教員が子どもの9年間の成長を実感することができる。
○ 管理職を含め小・中学校教職員が、(自らの学校における教育の成果のみならず課題にもきちんと向き合い、)目先の「成果主義」に陥らないことが肝要であるし、行政による各学校の評価もその視点を持ったものにならなければならない。
○ 「一貫教育」の実施による「中学生と小学生の触れ合い」による「生徒の暴力行為や不登校、いじめの解消」が目的とされている例が示されているが、この点については慎重な評価がなされなければならない。触れ合いが児童・生徒の自主性によってなされる場合と学習の一環(教職員からの指導)としてなされる場合とでは、表面上はともかく、深化の度合いに著しい差が出るであろうことは容易に想像できる。学校の形態に左右されない、子どもたちの内面へ迫る指導の研究、実践に力点を置くべきである。
○ 「小中連携、一貫教育」の効果として「中学生の不登校出現率の減少」が挙げられているが、保健室登校や不登校とは規定されない欠席状況についても調査した上で効果という評価をすべきである。

【教育課程、指導方法に関する御意見】
●小中連携に関して、子ども・学校・地域の実態をふまえ、子どもの育ちや学びの連続性を重視したカリキュラムのあり方やインクルーシブ教育の観点から十分に検証する必要がある。
○小学生と中学生のそれぞれの発達段階に応じたカリキュラムを考えることが重要である。
○小学校から中学校まで先を見通した教育課程が編成され、授業が少人数指導で行われ、中学校の教師が小学校に乗り入れて専門的な授業をすることができれば、学力向上に貢献するのではないかと思われる。
○一貫教育は教育の機会均等が大前提であり、日本の教育制度やカリキュラムを変えない限りは、一部の地域や生徒のみがその恩恵を受けることになり問題がある。
○教育課程が学校によって大きく変わることは、教育の機会均等の観点から問題がある。63制を432制にするなど、考え方としてはより柔軟な発想で教育活動を進められる良さもあるが、現行制度においても実現は可能と考える。
○全ての学校において子どもや地域に寄り添った教育課程が編成できるよう、教育現場の裁量権を認めることが極めて重要である。
○学習や人間関係などに適応できない児童が数多く存在する可能性があるので、様々な子どもが無理なく学習し、適応できるようなインクルーシブ教育を基本理念にすることが必要である。
○9年間の義務教育の中で良好な人間関係を築くには、ともに活動し、体験を共有しあう機会を意図的・計画的に設定することが重要である。
○小中教職員の乗り入れ授業については、教職員が互いの良さや改善点を見付ける上で効果がある。
○日常的に小中の教員が交流したり授業を見せ合うことで、指導力の向上や9年間の育ちを意識できる教員が増えている。
○学習指導に関する「小中連携」は、モデル校や指導者の成果ばかりが発表される場になりがちで、「どのような課題が発生し、その対処はどのようにするか?」といった「課題解決」について深く考え議論しようとする姿勢に乏しい。指摘のとおり「小・中学校教職員間の違いを教職員同士が認めた上で互いに学び合い」という姿勢が必要で、「義務教育9 年間で児童生徒を育てる発想」にも共感する。
○小・中の連携・接続の推進の中心的な狙いは、学校段階にかかわらずその生活や学習状況等について、適時・適切に継続的な対応や指導が行われることであり、特に小・中学校の校長・教職員、児童生徒、教育課程の三つの視点が重要である。
○教育課程の特例について、小中9年間の質保証を担保した上で、設置者の判断で小・中学校の教育課程を柔軟に編成できるような制度にすることが肝要である。
○小・中の接続部分のギャップを乗り越えるための、教育課程、指導方法の工夫改善の例として、以下のようなものがある。
(1) 中学入学後1~2 週間のうちに国語・数学・社会・理科の4 教科についてテストを行い、小・中学校の両校の教師で採点・分析を行い、両校で生徒の学力に関する詳細な情報を得て、双方とも今後の指導に役立てている地区の例もある。
(2) 入学式の翌日「進級テスト」を実施する。その準備のため「進級テスト用学習プリント」を春休みの宿題として課し、学力を早期に把握することと併せ、学習への意欲低下を防ぐことも狙い、中学校への学びの接続を図っている中学校の例もある。
(3) 3 月の段階で小学校において「入学プレテスト」を行い、担当教科の教師が採点・分析を行い新入生の学力把握に努め、指導計画にも反映させている中学校の例など、教育課程面での課題解決のヒントがある。


【推進体制、地域との連携等に関する御意見】
●小中連携、一貫教育の実施にあたっては、子ども・学校・地域の実態を踏まえる必要がある。
●教育課程を小・中学校が協働して編成し、教材を連携して開発することが効果的であるとされているが、協議や協働作業を行う時間を生み出すためにも条件整備が必要。
●教職員の過度な負担の解消をどのように図っていくかについて検討する必要があるとされているが、現在の業務量を丁寧に見直し、過度な負担の解消につながる具体的改善策を早急に進めるべき。
○小中連携、一貫教育の実現にあたっては、小学校と中学校間の調整を行うコーディネーターが必要である。
○小中連携教育の導入により教職員の負担が増え、生徒指導上の問題への対応や解決が遅れることが懸念される。中学校には、小学校にはない部活動があるが、その指導に時間をとられている一方で、新たに小学校への指導に対応することが可能か、疑問である。現行制度のもとで築いてきた、それぞれの校種のエキスパートを充実させ、その中で課題を解決することを諦めてはならない。
○再任用、非常勤の教員ではなく、正規採用の教員を増やす必要がある。
○地方自治体任せの加配ではなく、国が教職員定数を増加させる必要がある。
○小中連携、一貫教育を新しく始めることが、現状の業務量・業務内容を見直すよいきっかけとなる。
○現状では教職員の人数が不足している学校が、小中併設することで教師の人数不足が解消される可能性がある。
○小中がそれぞれの立場・視点で率直に議論する場はほとんどないのが現状であり、中学校区単位で、課題について小中間の率直な意見・情報交換を行う場を設定することが、実のある「小中連携」の具体策になる。
○「中1 ギャップ」の問題は、中学校入学当初の丁寧なオリエンテーションと、職員集団の情報共有(小学校側との緊密な情報交換が前提)、子どもたちどうしのコミュニケーションの促進、子どもたちと教職員とのコミュニケーション作りが現場で不十分なことが原因の一つになっているのではないか。
○小中連携、一貫教育のカギを握るキーパーソンは校長であり、小・中学校の校長間相互のコミュニケーション、先を見通したビジョンと具体的な計画性の共有である。学校の自主性・自律性を高める観点から、教育課程の編成をはじめ、人事・予算に係る校長の裁量権を拡充することも必要である。校長は豊かな経験を基に教育活動をプラン化し、予算化する経営能力を磨くことが求められる。生徒指導や学習指導面において、小学校時代には表面化しなかった問題が、中学校で顕在化してくることも多いので、特に中学校の校長はリーダーシップを発揮し、学区・近隣の小学校へ積極的に働きかけるなど、9 年間を見通した子どもの成長・育成を図ることが重要である。
○小・中学校それぞれの文化は尊重しながら、学習内容・指導方法や児童の扱いと生徒の扱いの差を共有し合い、小中連携・一貫教育の意義と目指す子ども像の共通理解を図る教職員間の連携・交流が必要である。生徒指導担当者の連絡会や研修会による情報交換を密に行うこと、各教科や領域等でも各主任会の合同実施、授業実践による研修も取り入れ、継続的に相互の理解と認識を深めることである。日々多忙な業務の中での教職員の連携・交流は時間的に限られるため、長期休業期間の有効活用を図ることが必要である。
○中学校入学当初の学習習慣や激変緩和のためにも、小学校での専科担当をはじめ教科担任制を推進する必要がある。特に音楽・図工・家庭・体育の実技教科を中心に、高学年の理科や英語活動などにも、担任以外の専門的な教師との接触の機会を増やすことが、中学校入学後の学習不適応の緩和にもつながる。この場合、近隣中学校で小学校免許状保持者の兼務辞令や乗り入れ指導の導入も積極的に行うことが効果的である。このことは当該教員の職能成長にも資することになる。
○中学校では、一般的に3 年生を卒業させた学年教師が新1 年生の担任や教科担当として任命されるという運営がなされている場合が多い。教師は3 年生の複雑で緊張した卒業業務の冷めやらぬうちに、新入生を迎えることになる。不安と緊張感の中にある新1 年生を迎え、その対応・指導に対し、受け入れ側の教師自身にもある種の“中1 ショック”すらあるのではないか。新入生を迎えるに際して、教師としての細かな配慮、気配り、デリカシーの不足が新入生の“中1 ショック”を助長しかねないことも注意していく必要がある。新入生を愛情を持って受け入れ、スムーズな中学校生活に移れるように、中学校側の新入生担当者としての細やかな配慮と心配りを期待したい。
○小学校は地域とのつながりを確保することで、地域から児童の安全・安心を見守ってもらうことができている。よって、中学校のように学区を広くすると地域とのつながりが薄れ、児童の登下校の危険が増える。
○子どもの発達段階を見据えて子どもの自主性をはぐくむことは、地域と学校が一体となってはじめて可能となることである。
○地域・集落にとって、コミュニティ形成や防災等の観点から学校は必要なものであるので、小中連携、一貫教育校をつくる際は、小学校の学区を基本とすべきである。
○小中連携することで、中学生が年長者として地域の良きリーダーとなり、地域づくりに貢献することが可能となるという効果が期待できる。
○日常的に、生徒会による学校説明会や部活動交流、小規模校では運動会等の合同実施、児童会・生徒会合同企画による地域奉仕活動の定期的な実施のほか、授業の進め方や家庭学習の手引書を小学校高学年から中学校1 年生まで連続・発展性を持たせて作成し、「地域の子どもは地域で育てる」との理念のもと、家庭との連携も図っていく必要がある。

【教員人事、教員免許に関する御意見】
●教員免許に関して、養成・採用・研修を一体的に改革し、現行の研修体系を抜本的に見直し、大学・大学院等の教育機関と教育委員会との連携はもとより、校内研修や地域における研修、勤務地を離れた研修など、教員が主体的に研修できるよう多様な機会を設けるべき。
●免許法認定講習の弾力的運用について、養成・採用・研修を一体的に改革する中で制度設計すべきである。
○異校種間の人事異動による弊害について、配慮が必要である。
○隣接校種の教員免許取得について、免許法認定講習を免許法更新講習として位置付けるなど、教員の負担軽減を図る必要がある。併せて、講習内容及び受講後の評価を厳密に行い、安易に講習を受講すれば取得できるということにならないよう十分な配慮が必要である。

【校地、校舎等に関する御意見】
○施設一体型の小・中学校では、体育、部活、クラブ等で使うグラウンド、体育館、特別教室の割り振りが難しいため、施設面での条件整備が必要である。
○小学校と中学校を同一敷地内に併設し、地域・集落から「地域の学校」として今後も期待され、その使命を全うできるようにすべきである。
○既存の施設をそのまま使用する施設併設型の小・中学校であるため、職員室を多数設けなければならなかったり、中学校1年生の教室移動に時間がかかる等の課題がある。小中一貫教育のための施設改修費の補助金の検討が必要である。
○施設一体型の小中一貫校では、人間関係が固定化されたまま9年間続くため、新しい人間関係が構築できるよう、施設分離型の方がよい。
○小中一貫カリキュラムには意義があり、各市区町村においては統一したカリキュラムを実施すべきであるが、施設一体型である必要はない。その理由は、以下の4点である。(1) ある程度の区域で統一した一貫カリキュラムを実施していれば、施設は分離していても教科担任性などの仕組みは中学入学前に経験でき、その点で入学後のギャップはない。(2) 小学校は地域とのつながりを確保することで児童の安全・安心、地域で児童を見守る精神が得られる。したがって、中学校のごとく学区を広くしてしまうと、児童の登下校の危険も増え、地域とのつながりもうすれる。(3) 施設一貫型の場合、施設のリーダーとなるのは最高学年(中学3年生)まで先延ばしになる。一方、6年生はカリキュラム上は一貫教育の中間点であるが、施設のリーダーとしての自覚・行動が成長の過程において重要となる。(4) 中学に入学するときに新たなメンバーが加わることによって、新しいグループが作られる。施設一体型では固定化した人間関係が9年間続く。リフレッシュする機会が必要である。
○校舎の一体化整備改築への国庫補助率を、小学校同士・中学校同士の統合の場合と同等程度の1/2 まで補助率を上げる必要がある。

【義務教育学校制度(仮称)創設の是非に関する御意見】
●義務教育学校制度の創設にあたっては、地域コミュニティーの核としての学校の役割や、災害時に学校が果たす機能を十分に配慮し、安易な学校統廃合につながらないようにすべきである。
○学校現場や教育関係団体等による十分な議論を踏まえ慎重に対応すべきである。
○地域の実情によって、義務教育学校制度を創設し、各学校や設置者による判断に任せるしくみは、望ましい面もあるが、地域間格差を生むことになることが懸念される。
○保護者の経済格差が教育格差をもたらしていることを考えると、義務教育学校制度(仮称)の導入では子どもが希望する進学を実現することはできない。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係)

-- 登録:平成25年03月 --