3.当面の改善方策 ~教育委員会・学校と大学の連携・協働による高度化

1.基本的考え方

○ 大学における教員養成が教育委員会、学校関係者からの信頼をより一層確立するため、課程認定大学は、教育委員会・学校との連携・協働をこれまで以上に深め、下記の改革に積極的に取り組む。

○ 修士レベル化に向け、修士レベルの課程の質と量の充実、教育委員会と大学との連携・協働による研修の充実等ステップを踏みながら段階的に取組を推進する。そのうち、主要な取組は、教育振興基本計画に盛り込み、計画的に取り組む。

○ 修士レベルの教員養成の質と量の充実を図るため、修士課程等の教育内容・方法の改革を推進する仕組みを早急に構築する。

○ 「学び続ける教員像」を確立するため、教育委員会と大学との連携・協働により、現職研修プログラムを改善し、高度化する。

2.教員養成、採用から初任者の段階の改善方策

(学部における教員養成の充実)
○ 教科と教職の架橋の推進、全学的な体制整備の構築、個性化・機能別分化の推進、質保証の改革により、必要な資質能力の育成を徹底する。

(修士レベルの教員養成・体制の充実と改善)
○ 教職大学院制度の発展・拡充、実践力向上の観点から修士課程のカリキュラム改革を推進するとともに、専修免許状の在り方を見直す。

(初任者研修の改善)
○ 教職大学院等との連携・融合により、初任者研修の高度化を図るとともに、長期的な新人教員支援システムを構築する。

(採用の在り方)
○ 選考方法を一層改善するとともに、中途採用を推進する。

(1)国公私立大学の学部における教員養成の充実

○ 修士レベル化を想定しつつ、平成18年中央教育審議会答申も踏まえ、教員としての基礎的な資質能力を確実に育成するため、国公私を通じて学部における教員養成の改革を更に推進する。

1.教員養成カリキュラムの改善

○ 修士レベル化の前提として、学部段階で、教職実践演習を中心に、必要な資質能力の育成を徹底することが重要である。

○ 教科に関する科目については、学校教育の教科内容を踏まえて、授業内容を構成することが重要である。そこで、例えば、「教科に関する科目」担当教員と「教職に関する科目」担当教員とが共同で授業を行うなど、教科と教職の架橋を推進するなどの取組が求められる。併せて、教科教育学の更なる改善も必要である。特に、教員養成系以外の課程における教科に関する科目については、全学的組織である教員養成カリキュラム委員会等の組織を活用し、担当教員に対し、教職課程の科目であることを意識して展開することを徹底することが必要である。

○ 修士レベル化への段階的な移行を目指して、修士レベルの課程への接続を念頭に置いたカリキュラムの開発や継続的な学校現場での実習・体験活動の在り方を検討するなど、改革を一層推進する。

○ 学校ボランティアや学校支援地域本部等での活動など、教育実習以外にも一定期間学校現場等での体験機会の充実を図る。また、教員を強く志望する者に対し、学校への長期インターンシップなどの実施も考えられる。

○ 学校ボランティア等を教育実習の参加要件としたり、実習前に教職への意志と自覚を確認するための面接やレポートを課すことなどにより、教員を志望する者が教育実習を受講するよう工夫し、いわゆる「実習公害」を是正する。

○ 国立大学附属学校について、担当スタッフの配置など実習の拠点校としての機能強化を図り、大学と連携しつつ、地域の公立学校の実習指導教員の指導力向上、実習における公立学校との協力体制構築などを図る。

2.組織体制

○ 教職課程の担当教員については、当該研究分野における研究実績のほか、教員養成に対する関わり方についての明確な考え、実践的指導力育成への寄与の観点から、教員審査や教員評価を進める。実務経験者については、教職大学院を修了した現職教員等、指導者としてふさわしい教育研究実績を有する者の登用を促進する。

○ 教員養成の質を全学的に高めるため、一部の総合大学では「教職センター」等の全学的な体制を整備し、教員養成カリキュラムの改善等に積極的に取り組んでいる。こうした取組は、総合大学の有する資源・機能の教員養成に対する活用、教育学部の有する資源・機能の全学的活用等の観点からも極めて有効であり、多くの大学で同様の取組を推進することが必要である。

○ 各大学の強みを生かしながら大学を超えた連携を深め、多様かつ質の高い大学教育を提供することは、社会の多様な課題を解決に導く高度な人材を養成するために必要不可欠である。
 自らの強みや個性を生かした教員養成を推進するとともに、それに留まらず、大学が相互に連携し、地域や社会の要請に応える教員養成を進めるため、大学の特色や強みを生かした大学間連携や、教育課程の共同実施制度等を活用した教育システムを構築することにより、機能別分化を進め、更に質の高い教育を提供する。この場合、教職課程のプログラムとしての体系性が維持され、課程認定大学としての教員養成に対する責任を全うし、質の向上につながるよう、留意する必要がある。

3.教職課程の質保証

○ 近年の大学教育改革に見られるように、教職課程においても、学生が修得すべき知識・技能を明確化し、「何を教えるか」よりも「何ができるようになるか」に重点を置くべきである。学位プログラムとしての体系と同時に教職課程としての体系の確立に向け、各大学の参考となるコアカリキュラムの作成を推進する。また、実習前の学生の質保証の観点から、医師、歯科医師、薬剤師等の養成において行われている共用試験を参考に、教育実習前に学生の知識・技能等を評価する取組を推進する。

○ 教職課程の認定については、カリキュラムの体系性や履修時期等必要な科目が適時・適切に開設されているか、指導力を有する実務経験者の登用など実践的指導力を育成できる教員が確保されているか、教員養成カリキュラム委員会の設置、教職指導の体制整備、教育委員会との連携等教員養成の実施体制が適切かなどの観点から厳格に審査を行う。また、これに伴う審査体制についても充実し、設置審査との適切な調整を図る。

○ すべての課程認定大学について、教育の質向上及び社会に対する説明責任を果たす観点から、教員養成の理念、養成する教員像、教職指導の体制、教員組織、カリキュラム、学生の教員免許状取得状況や教員就職率等、情報の公表を検討する。

○ 事後評価に関し、課程認定委員会による実地視察については、訪問校を増やすとともに、評価の観点についても、認定時の水準の維持向上が図られているかに加え、学生や卒業生からの聞き取り、学校や教育委員会の評価も加えるなど、更なる改善を図る。これに加え、教員養成教育の評価システムや大学間コンソーシアムを活用した相互評価システムの取組等新たな事後評価システムの構築を推進する。

○ 実地視察の評価等が著しく低かったり、一定期間当該課程の卒業生について教員への就職が全くなく、その後の改善が見られない場合には、教職課程の認定を取り消すなど、是正勧告・認定取消のプロセスを明確化することについて今後検討が必要である。

(2)修士レベルの教員養成・体制の充実と改善

○ 修士レベル化に向け、教職大学院や修士課程の教育の改革、新たな学びを展開できる実践力育成モデルの構築等、段階的な体制整備を着実に推進する。

○ 今後、国立教員養成系大学・学部及びこれに基礎を置く教育学研究科については、より一層、高度専門職業人としての教員養成へと役割を重点化していくことが求められる。

1.教職大学院の拡充

○ 教職大学院は、新しい学校づくりの有力な一員となり得る新人教員の養成、現職教員を対象としたスクールリーダーの養成の双方において、成果を上げつつあり、当初の目標として掲げられた「教職課程改善のモデル」としての役割を果たしつつある。
 最初の設置から約5年を経過し、新たな学びに対応した教科指導力や教科専門の高度化を達成し得るカリキュラムの在り方、学校における実習を勤務に埋没させず、理論と実践の往還により理論に裏付けられた新たな教育実践を生み出していく方法の開発など、更に追求すべき課題も残されている。従って、今後はこれまでの機能に加え、こうした機能を併せ持つ制度としていくことが求められる。

○ 今後は、これまでの教職大学院の成果を踏まえつつ、様々な学校現場のニーズにも対応できるよう、教職大学院の制度を発展・拡充させる。
 その際、共通に開設すべき授業科目の5領域について見直しを図り、学校現場での実践に資する教科教育を行うものや、グローバル化対応、特別支援教育、ICT活用、学校経営など特定分野の養成に特化するものも含め、教職大学院の制度に取り込んでいけるよう制度改正を行うべきである。

○ こうした制度の発展・拡充を図った上で、現在、教職大学院の設置されていない都道府県においては、大学と教育委員会との連携・協働により、教職大学院の設置を推進することが望まれる。

○ 指導に当たる教員については、実践的指導力の育成に寄与できるかの観点から評価をし、学生が、新たな学びを展開できる実践的指導力などを身に付けることができる教員組織体制の構築を図る。さらに、実務家教員については、学校現場での最新・多彩な経験を有するだけでなく、これを理論化できる基礎的な素養を求めるとともに、現在4割以上とされている、必要専任教員数全体に対する割合の見直しを検討する。

○ 教科に関する科目担当教員については、理論的アプローチにより、学生に対し実際の教育活動に直接生かすことができる指導を行うことにより、教職大学院における担当教員となることが期待される。

○ 教職大学院修了者について、初任者研修の一部又は全部免除、教員採用選考における選考内容の一部免除、採用枠の新設等の取組を進め、教職大学院で学んだことを適切に評価するとともに、教職大学院への進学を促進するため、教員採用選考合格者の名簿登載期間延長等の取組を進め、教職大学院で学びやすい環境を整備する。

○ 教育委員会においては、現職教員の教職大学院への派遣について、研修等定数の有効活用や所属校への支援体制の充実などにより、将来の教育界を担うリーダーを積極的に派遣することが望まれる。

○ このほか、教職大学院出身の初任者を実習した学校に配置するなど、教育委員会においては、教職大学院修了者に対するインセンティブの付与等について積極的に検討し、教職大学院制度の発展・拡充に協力していくことが望まれる。

2.国立教員養成系の修士課程の見直し

○ こうした教職大学院制度の発展・拡充を図るに当たり、国立教員養成系大学・学部及びこれに基礎を置く教育学研究科については、学校現場で求められている質の高い教員の養成をその最も重要な使命としていることに鑑みれば、今後、教職大学院を主体とした組織体制へと移行していくことが求められる。

○ また、教職大学院が修士レベルの教員養成の主たる担い手となっていくことを踏まえ、国立教員養成系の修士課程について、今後どのような方向を目指すべきか、その在り方についての検討が必要と考えられる。

○ その際、専門職大学院が質保証の観点から、教育に専念する教員組織を充実することを制度創設の趣旨としていることに留意した上で、今後の修士レベル化を進め、学部との一貫性を確保する観点から、教職大学院の専任教員のダブルカウント(設置基準上必ず置くこととされている専任教員を他の学位課程の必置教員数に算入すること)の在り方について検討を行う必要があると考えられる。

○ また、教員養成系の修士課程については、大学院設置基準において、教科等の専攻ごとに置くものとする教員の数が定められており、組織の柔軟な見直しや、他大学・学部との柔軟な連携、機能分担の支障になっているとの指摘もあることから、これを大括り化するなど、教員養成機能の充実・強化に資する教育研究体制の構築が可能となるよう見直しを行う。

○ これからの教員養成は、学習科学、教科内容構成の研究の推進及びその成果の活用、経験知・暗黙知の一般化による理論や方法の開発など、学校現場での実践につながる教育学研究の成果に基づき行う必要がある。このため、こうした研究を推進する体制について拠点的に形成するなど、カリキュラム改革の理論的支柱となる実践的な教育学研究を推進することが期待される。

3.国公私立大学の一般の修士課程の見直し

○ 中・高等学校教員の養成については、国立教員養成系以外の国公私立大学の一般の修士課程の役割が大きい。このため、一般の修士課程において教員養成のカリキュラム改革を図り、修士課程のカリキュラムとのバランスに配慮しつつ、学校現場のニーズに応え得る実践性を備えた教育を提供する体制の整備が必要である。また、教職大学院との連携プログラムなどにより、理論と実践の架橋を重視した実習や実践科目を導入するなどの取組も有効と考えられる。

4.専修免許状の在り方の見直し(一定の実践的科目の必修化推進)

○ 現在の専修免許状は、一種免許状を有する者が、教科又は教職に関する科目を大学院等において24単位以上修得することとされ、必ずしも実践的指導力の向上に結びつくものとなっていない。今後、教員免許状が、教員としての専門性を公的に保証し、可視化するものとして再構築していくためには、専修免許状の課程認定を受けている修士課程において、例えば、理論と実践の架橋を重視した実習ベースの科目を必修化するなどの取組を推進していく必要がある。また、「専門免許状(仮称)」で示した区分を参考に、修得した専門分野を記入できるようにするなど、専門性を明確化する。

○ 教科と教職を架橋する新たな領域の展開を推進するため、例えば「教科内容構成に関する科目(仮称)」を新設することや、「各教科の指導法」を各教科の内容と方法を総合した内容に改善することが考えられる。

5.国公私立大学の学部・修士課程間、大学間の連携の推進

○ 複雑化・高度化する教職への社会の要請に応えつつ、修士レベルでの養成規模の拡充を図っていくためには、学部・研究科や大学を超えた、様々なレベルでの柔軟かつ多様な連携体制を構築していくことが不可欠であり、例えば、次のような類型が考えられる。その際、今後の修士レベルの規模拡大の観点からすると、国立大学だけでなく、公私立大学についてもこうした多様な大学間連携により、修士レベルにおける教員養成において積極的な役割を担うことが期待される。
 (1)国公私立大学の大学間連携による修士課程の設置
 (2)教職大学院を中心とした他の国公私立大学の修士課程との連携
 (3)国立教員養成系の教職大学院、修士課程間の連携
 (4)総合大学内における教職大学院と他学部の修士課程との連携

(3)教職課程担当教員の養成の在り方

○ 教員養成系大学・学部の教育研究の充実及び教職課程の質の向上を図るためには、これを担う大学教員の養成システムを整備していくことが必要である。

○ 国立教員養成系の博士課程は、現在4大学設置されている。今後、全国の教員養成系の大学院のリソースを結集し、教科と教職を架橋する新たな領域や学習科学の分野など学校現場での実践につながる研究を深め、必要とされる大学教員を養成する体制整備の推進方策について検討が必要である。その際、米国の教育大学院(スクール・オブ・エデュケーション)において行われている、学校管理者や行政担当者を対象としたEd.D(博士レベル)を授与するコースについても参考としつつ、実務家教員志望者の学修の場としての役割も含め、検討が必要である。

○ 教育学系大学院の博士課程を修了した後、教職課程担当教員になる者について、教職大学院と連携し、学校現場でのフィールドワークなど実践的な教育研究を経験できる取組を推進する。

(4)初任者研修の改善(採用直後の「一般免許状(仮称)」取得を想定した取組の推進)

○ 修士レベルの教員養成カリキュラムを視野に、教職大学院等と連携・融合した初任者研修の在り方について、教育委員会と大学との連携・協働の取組を進め、初任段階の研修の高度化を図る。その際、初任者が配属される学校が毎年異なるため、学校に初任者研修のノウハウが蓄積されず高度化が進みにくいなどの指摘がある。そのため、初任者研修の拠点となる学校を教育委員会が指定し、初任者研修を重点的に行うことにより研修のノウハウの蓄積や体制の整備などを進めていくことも考えられる。
 授業力のみならず、様々な教育課題に的確かつ柔軟に対応できる力量を確実に育成するため、初任者研修に加え、採用前研修、2年目、3年目の教員に対する研修を行っている教育委員会もある。こうした取組を参考に、初任段階の教員を複数年にわたり支援する仕組みを構築する。

○ これに伴い、「目標・内容例」について、修士レベル化を想定しつつ、内容の改善を図るとともに、拠点校指導教員や校内指導教員の在り方、いわゆる「団塊の世代」の教員の知見の活用推進、指導力の高い校長の学校に初任者を配置するなど指導体制の充実方策についても検討が必要である。また、臨時的任用教員や非常勤講師としての経験のない初任者については、精神的なケアも含めて手厚い支援や研修が必要である一方で、臨時的任用教員等の経験者については教員としての経験を有することから、一律の研修を実施することは実態に合っていないとの指摘もある。そのため、個々の初任者の経験に応じた研修の在り方について、検討が必要である。

○ また、複数の先輩教員が複数の初任者や経験の浅い教員と継続的、定期的に交流し、信頼関係をつくりながら、日常の活動を支援し、精神的、人間的な成長を支援することにより相互の人材育成を図る、「メンターチーム」と呼ばれる校内新人育成システムを構築している教育委員会もある。こうした取組は、初任者の育成だけでなく、校内組織の活性化にも有効である。初任者研修と「メンターチーム」の取組を有機的に組み合わせることにより、初任者のより効果的な育成を図ることも考えられる。

(5)教員採用の在り方

○ 任命権者においては、教員としての適格性を有し、個性豊かで多様な人材を確保するため、選考方法の改善に努めているが、今後も、優秀で意欲のある人材を教員として確保するため更なる選考方法の改善に努めることが期待される。

○ その際、例えば、受験者の身に付けた資質能力を採用側が適切に評価するための手法の開発や、大学での学習状況や教育実習の状況について採用選考の際の評価に反映する方法の検討などが考えられる。さらに、養成段階で長期インターンシップを経験した学生について、インターンシップ時の評価において、教員としての適性が認められると判断された場合の、採用選考実施方法について研究することも考えられる。

○ 任命権者においては、採用年齢の上限を撤廃するなどの取組により、あらゆる世代の優秀な人材を確保する工夫を行っているが、特に、年齢構成上少なくなっている30代、40代を積極的に中途採用する方策について、資質能力を担保しながら、更に進め、教員の年齢構成の改善に努める。

○ 地方公務員法に抵触しないことに留意しつつ、臨時的任用教員や非常勤講師としての勤務実績の評価方法について検討し、教職経験者の中から優秀な人材の確保に努める。

○ 近年、大都市圏の教育委員会において、優秀な人材を確保するため、教員採用選考試験の倍率の高い教育委員会と連携したり、複数回選考試験を実施するなどの動きが見られる。優秀な人材を全国レベルで教員として迎え入れるため、採用選考の共同実施、複数回実施を推進することが考えられる。その際、例えば、共同実施する教育委員会や一次試験の実施時期が同一の地域単位で、筆記試験問題の共通化を進めることも考えられる。

3.現職段階及び管理職段階の研修等の改善方策

(現職段階)
○ 教育委員会と大学との連携・協働による現職研修のプログラム化・単位化や、講習の質向上など教員免許更新制の必要な見直しを推進する。

(管理職段階)
○ マネジメント力を身に付けるための管理職としての職能開発のシステム化を推進する。

○ 教員個人に着目すると、養成の期間よりも、その後の教職生活の方が圧倒的に長いことから、現職段階における資質能力の向上方策について、どのように制度設計していくかは極めて重要である。
 そのため、教育委員会と大学との連携・協働を推進し、養成段階で獲得した資質能力の保持・向上を図る。

○ 教育委員会は、「専門免許状(仮称)」を想定しつつ、教職生活全体を通じて学び続ける教員のための多様なキャリアプラン(系統立てた学びの方向性)の在り方を検討することが望まれる。

(1)現職研修等(教員免許更新制、10年経験者研修を含む)の改善

1.国や任命権者が行う様々な研修の在り方

○ 任命権者が行う研修については、地域の実情に応じ、様々なプログラムが提供されているところであるが、指導伝達方式のものが多く、細切れになっているとの指摘もあり、より一層教員の質の向上につながる研修とするための工夫改善が求められる。

○ そのため、任命権者においても、所属教員の資質能力向上のため、10年経験者研修やその他の任命権者が実施する研修等について、教育委員会と大学との連携・協働により、現職研修のプログラム化・単位化を推進することが求められる。また、将来の「専門免許状(仮称)」創設を念頭に、このような研修を免許法認定講習としても開設を進め、より多くの現職教員が専修免許状を取得できるよう工夫する。

○ 教員免許更新制については、適切な規模を確保するとともに、必修領域の内容充実、受講者のニーズに応じた内容設定等講習の質を向上するなど、必要な見直しを推進する。なお、指導が不適切な教員については、指導改善研修の実施等が行われているところであり、引き続き、各教育委員会において適切に運用されることが期待される。

○ 独立行政法人教員研修センターについては、各県のトップリーダーを育成する管理職研修の実施、教員のライフステージに応じた研修内容・方法等に関する先端的プログラムの研究開発、教育委員会と大学等の連携・協働による研修の組織化・体系化を実現する方策の検討等教員の資質能力向上のナショナルセンターとして機能強化を推進する。
 都道府県等の教育センターについても、大学との連携・協働により、地域における教員の資質能力向上の中核機関としての機能を充実させる。

○ 現職教員がスキルアップしやすい環境を整備するため、研修等定数の活用や休業制度の活用促進、長期履修制度やeラーニングの充実等現職教員が学びやすい環境整備を進める。

○ 将来の「専門免許状(仮称)」創設を想定しつつ、国や独立行政法人教員研修センター、教育委員会、大学などが連携を図りながら、一定のまとまりのある研修プログラムの研究開発を進めるとともに、こうしたプログラムを認定するような仕組みの研究や、これを担う組織の在り方等について調査研究を行う必要がある。

2.校内研修や自主研修の活性化

○ 教員は、日々の教育実践や授業研究等の校内研修、近隣の学校との合同研修会、民間教育研究団体の研究会への参加、自発的な研修によって、学び合い、高め合いながら実践力を身に付けていく。しかしながら近年では学校の小規模化や年齢構成の変化などによってこうした機能が弱まりつつあるとの指摘もある。教育委員会においては、こうした校内研修等を活性化するための取組を推進するとともに、組織的かつ効果的な指導主事による学校訪問の在り方の研究など、学校現場の指導の継続的な改善を支える指導行政の在り方を検討していくことが求められる。

○ 校内研修の質・量の充実を積極的に支援する視点から、教育委員会や教育センターは、指導体制の確立、組織的・計画的な学校への指導・助言、教育委員会・学校と大学との連携・協働や近隣の学校との合同研修など、取組を推進する。また、指導主事や大学教員、指導教諭、教職大学院を修了した教員などが、校内研修の企画等に効果的に関わることも重要である。このため、指導主事等の指導力向上のための取組を推進するとともに、指導教諭の育成システムについて検討する必要がある。

○ 将来的には、校内研修等についても、大学、教育委員会との連携・協働等一定の要件を満たせば、「専門免許状(仮称)」の取得単位の一部として認定を可能とするなどの取組も考えられる。

○ 教育センターや身近な施設において、カリキュラム開発や先導的な研究の実施、教員が必要とする図書や資料等のレファレンスや提供などを行うことにより、教員の教材研究や授業研究、自主的研修の支援などを推進するとともに、多忙化の解消など教員が研修等により自己研鑽に努めるための環境整備が必要である。また、今後は実績のあるNPOや民間企業等が主催する研修への参加も期待される。

(2)管理職の資質能力の向上(「専門免許状(仮称)」を想定しつつ、管理職としての職能開発のシステム化)

○ 組織のトップリーダーとしての管理職の役割は極めて重要である。マネジメントに長けた管理職を幅広く登用するため、教職大学院、国や都道府県の教員研修センター等の連携・協働による管理職、教育行政職員の育成システムの構築を推進する。この場合、管理職だけでなく、管理職候補者である主幹教諭を対象とした研修を重視する。

○ 特に、教職大学院のカリキュラムや独立行政法人教員研修センターの学校経営研修等を活用しつつ、管理職、教育行政職員に求められる資質能力をもとに、マネジメント力を身に付けるための管理職、教育行政職員育成プログラムを開発する。

○ また、管理職選考においては、このような管理職育成プログラムの成果を評価するなど、選考方法の一層の改善を図ることが求められる。

4.教育委員会、大学等の関係機関の連携・協働

○ これまで述べてきた取組を実効あるものとするためには、教育委員会、大学等の関係機関がそれぞれ責任を果たしながらその連携・協働により、教員の養成、継続的な学習に対する支援を行うことが重要である。特に、教職大学院と教育委員会との連携・協働を率先して行い、他の具体的なモデルとなることが期待される。主な役割としては以下のことが考えられる。

  • 管理職や教員に求められる資質能力を協働で明らかにすること。
  • 実践的指導力を育成する教員養成カリキュラムを協働で開発すること。
  • 教員養成段階の学習評価基準を協働で作成すること。
  • 教育実習や学校現場体験の効果的な実施方法の検討。
  • 大学と教育委員会、特に教職大学院と都道府県の教育センターとの一体的な体制の構築。
  • 現職研修プログラムを協働で開発すること。
  • 校内研修プログラムを協働で開発し、支援体制を構築すること。

5.多様な人材の登用

○ 複雑・多様化する教育課題に対応するためには、教職に関する高度な専門性と実践的指導力を有する教員に加え、様々な社会経験と、特定分野に対する高度な知識・技能を有する多様な人材を教員として迎え、チームで対応していくことが重要である。今後、社会の中の多様なルートから教職を志すことができるための仕組みを検討する必要がある。

○ ICTの活用やグローバル化に対応した教育など、新たな教育課題に対応するには、社会人経験者をはじめ当該分野に関する知見を有する外部人材を幅広く登用することが必要である。特別免許状や特別非常勤講師制度の活用等により、こうした取組を一層推進する。

○ 理数系の人材や英語力のある人材等多様な人材が教員を目指せる仕組みを構築するため、例えば、博士課程修了者等高度の専門的知識を有する人材について、履修証明制度等を用いて、教職に関する基礎的素養の修得や、学校現場の体験等により一定の教職専門性を身に付けた上で特別免許状の活用を促進する仕組みの構築や、理科支援員としての勤務実績の評価など今後更なる検討が求められる。

6.特別支援教育の専門性向上

○ 特別支援学校における特別支援学校教諭免許状(当該障害種又は自立教科の免許状)取得率は約7割であり、特別支援学校における教育の質向上の観点から、取得率の向上が必要である。このため、養成、採用においては、その取得について留意する。特に現職教員については、免許法認定講習の受講促進等の取組を進める。

○ 特別支援学級、通級による指導の担当教員は特別支援教育の重要な担い手であり、その専門性が、校内の他の教員に与える影響も極めて大きい。このため、専門的な研修の受講等により、専門性の確保・向上を図る。
 通常の学級の教員についても、特別支援教育に関する一定の知識・技能を有していることが求められている。このため、特別支援教育に関する研修の受講等により基礎的な知識・技能の修得を図る。

7.学校が魅力ある職場となるための支援

○ 今後とも教員に優れた人材が得られるよう、また、一人ひとりの教員が教職へのモチベーションを持ち続け、能力を最大限発揮できるよう、これまで述べてきた教員の資質能力向上方策とともに、教職や学校が魅力ある職業、職場となるようにすることが重要である。そのため、教員の給与等の処遇や、教職員配置、学校の施設、設備等引き続き教育条件の整備を進めることが必要である。また、新たな教育理念を実現するため、校舎づくりの段階から教育委員会と大学とが連携し、学校現場の課題解決や教員同士が学び合う環境づくりに成果を上げている例もあり、このような工夫を促進することも重要である。

8.その他

○ これまで、大学によっては養成すべき教員像を具体的に明示したり、教育委員会においても、教員採用選考の際、求める教員像を示しているが、関係者が合意できる、専門性向上のための基準が十分に整備されてこなかった。今後、教員養成関係の団体においては、教職生活の各段階で求められる資質能力について、更に整理し、教員養成や研修プログラム策定の際の参考となる、教員の専門性向上のための専門職基準策定に向けた検討を進めることが求められる。

○ 小学校教員資格認定試験の在り方については、教員養成の修士レベル化、実践的指導力重視の方向性を踏まえ、再検討する必要がある。

○ また、当面の改善方策の取組を推進するため、国として大学や学校・教育委員会等に対し、先導的な取組に対する支援、大学院への派遣の促進や初任者研修の実施体制の充実を図るための研修等定数の効果的な活用等の支援を行う必要がある。

○ これまで、教員の資質能力向上のため、様々な施策が行われてきたが、今後、各施策について不断に検証を行い、検証結果に基づき取組を進めていくことが必要である。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係)

-- 登録:平成24年09月 --