3.高等学校教育に期待されるもの

(後期中等教育段階における生徒の特性)

○ 後期中等教育段階は、思春期の混乱から脱しつつ、大人の社会を展望し、自分は大人の社会でどのように生きるかという課題に出会い、進学や就職といったそれぞれの人生の岐路に立って、葛藤の中で将来を描いていく時期と言える。この間、生徒は、「思想的(哲学的・精神的・心理的)な自立」を果たして、自他を尊重しつつ、自らの「観」を自己形成できるようになるとともに、「社会的(経済的・政治的・生活的)な自立」を果たして、大人として社会的な貢献を自覚し、信用される行動がとれるように修養を重ねていくことが期待されている。

(高等学校の位置付け)

○ 義務教育における普通教育は、全ての国民にとって共通に必要とされる基本的な資質を養う教育であり、全ての児童生徒に共通した内容を教え、身に付けさせることを目指すものである。これに対して、高等学校では、中学校までに比べて、生徒の興味・関心がさらに多様化・具体化してくる。また、大学等への進学率が50%を超え、専修学校・各種学校への進学率が約23%となっている一方、約16%の生徒は就職していく状況にあるなど、生徒の進路が進学する者と就職する者に大きく分かれることから、求められる教育内容も多様なものとなる。

○ これらを踏まえ、高等学校においては、中学校において行われる普通教育を基礎として、大学への進学や就職等にあたって必要とされる能力を身に付けさせる教育(高度な普通教育)と職業への準備としての専門的な知識・技能を身に付けさせる専門教育が行われる。

○ このように高等学校には、義務教育を修了した生徒に対して、高等学校卒業後、直ちに社会に出ることを念頭に置いて教育を行う一方、高等教育機関への進学に向けた準備教育を行う役割が期待されている。

○ 同時に、高等学校は、進学や就職といった生徒の進路にかかわらず、中学校卒業後のほぼ全ての者に対して、社会で生きていくために必要となる能力を共通して身に付けさせることのできる最後の教育機関であるとの位置付けを再確認する必要がある。

○ 一方で、生徒の学びの在り方は、生徒の興味・関心、能力・適性等により、異なってくることや、生徒一人一人が置かれている環境に影響を受けることから、生徒一人一人に応じて、できる限り幅広く柔軟な教育を実施する必要がある。

○ このような観点から、今後の高等学校教育は、どの高等学校においても、生徒の自立に向けて、全ての生徒に最低限必要な能力を身に付けさせるとともに、生徒の適性や進路等に応じて必要となる資質・能力を身に付けさせることが期待される。特に生徒の適性や進路等に応じた課題に対応した教育を行うにあたっては、これからの時代が、経済を中心とするグローバル化や少子高齢化、情報化といった急激な社会の変化の中、労働市場や産業・就業構造の流動化などによって将来予測が困難になっていることを見据えて、各学校が地域の実情や生徒の希望や実態等を踏まえ、目標とする人間像を明確にした上で、それぞれの生徒の個性や能力を伸長させる教育を行うことが期待される。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係)

-- 登録:平成24年09月 --