資料9 PISAデジタル読解力調査の結果等について 関係資料(2)

平成23年度以降の全国的な学力調査の在り方に関する検討のまとめ(概要)

全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議 

1.調査目的

  • 平成22年度全国学力・学習状況調査の調査目的は、今後も極めて重要であり、このような調査目的を実現するための全国的な学力調査の実施は今後も継続すべき
  • 経年変化や教育格差の分析など新たな視点に立った調査も必要 

2.対象学年・実施時期

  • 小学校第6学年及び中学校第3学年の児童生徒を対象とすることが適当
  • 過去4回の調査で定着してきた4月下旬を基本とすることが適当

3.対象教科

  • 「国語」、「算数・数学」に加えて、平成24年度から「理科」を追加することを検討することが適当
  • 「社会」、「英語」については、理科の検討状況、準備状況を踏まえつつ、改めて検討

4.調査方式

  • 当面、平成22年度調査と同様の調査方式を継続し調査の意義・目的の実現を図る
  • 今後、経年変化の分析や教育格差の分析を重視した新しいタイプの調査方式の開発や、全国的な学力調査と地方独自の調査のデータを結合することにより、全国的な学力調査の役割の一部を地方独自の調査が担うことが可能となる仕組みについて具体的検討の継続が必要
  • 上記の検討にあわせて、国として教育格差等の状況を把握・分析し、関連する施策の検証を行うとともに、教育委員会等や学校が行う教育改善に資するために、数年に1回は、「きめ細かい調査」を実施することを検討することが必要

5.実施頻度

  • 「国語」、「算数・数学」について、毎年度、調査を実施することが適当
  • 「理科」の実施頻度については、児童生徒や学校の負担増を懸念する意見に配慮し、3年に一度程度とすることが妥当 

 (参考)

全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議について

1.設置の趣旨

 文部科学省における今後の全国的な学力調査の在り方等についての調査検討に資するよう、専門家による専門的な観点からの意見交換等を行うため、「全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議(以下「専門家会議」とする。)」を設置する。

2.専門家会議において取扱う事項

(1)平成23年度以降の全国的な学力調査の目的について
(2)対象教科・学年、調査方式、実施頻度等について
(3)その他

3.実施期間

平成22年6月4日から平成23年3月31日とする。

4.委員

(50音順、敬称略 (◎:座長、□:座長代理))

   相川 敬      日本PTA全国協議会長
   天笠 茂      千葉大学教育学部教授
□荒井 克弘   独立行政法人大学入試センター入学者選抜研究機構長
   有馬 守一   千代田区立番町小学校長
   岩田 一彦   兵庫教育大学大学院特任教授
   小川 正賢   東京理科大学大学院科学教育研究科教授
◎梶田 叡一   環太平洋大学長
   小宮 賢治   世田谷区立芦花中学校長
   柴山 直    東北大学大学院教育学研究科教授
   志水 宏吉  大阪大学大学院人間科学研究科教授
   清水 静海   帝京大学文学部教育学科教授
   清水 哲雄   鷗友学園常務理事
   高木 まさき 横浜国立大学教育人間科学部教授
   田中 博之   早稲田大学大学院教職研究科教授
   土屋 隆裕   統計数理研究所データ科学研究系准教授 
   根岸 均      秋田県教育委員会教育長
   耳塚 寛明   お茶の水女子大学理事・副学長
   渡部 良典   上智大学外国語学部教授

全国学力・学習状況調査の調査方式について 

 平成23年7月8日(金曜日)の定例記者会見において、髙木文部科学大臣から以下の方針を表明した。

 ○ 全国学力・学習状況調査の調査方式は、本年3月の専門家会議の検討のまとめなどを踏まえ、
  (1)平成24年度調査は理科を追加して抽出調査及び希望利用方式とすること
  (2)平成25年度調査はきめ細かい調査が行えるよう、必要な経費を平成24年度概算要求に盛り込む方向で調整すること
 を決めた。 

 ○ 平成25年度の調査については、平成23年度は震災の影響等により調査を見送ったこと、専門家会議の検討のまとめにおいて「数年に一度はきめ細かい調査を実施することについても検討する必要」と提言されていることなどを踏まえ、国として教育格差など様々な状況等を把握・分析し、関連する施策の検証を行うとともに、教育委員会等や学校が行う教育改善に資するためにも、なるべく早くきめ細かい調査を行うことが必要と考えたところである。

 (参考)

「全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議」の検討のまとめ(抜粋)(平成23年 3月31日)

(理科教科の追加について)
3.対象教科
 「教科ごとに意義・効果及び各教科における問題作成の課題等を総合的に検討した結果、平成24年度から調査に追加することを検討する教科については、小学校及び中学校の「理科」とすることが適当であると考えられる。」 

(きめ細かい調査について)
4.調査方式
 「なお、検証改善サイクルの構築に向けた信頼性の高いデータの蓄積の観点からは、少なくとも数年に一度は、市町村や学校においても、それまで蓄積されたデータに加え、最新のデータが得られるようにする必要があると考えられる。」
 「国として教育格差等の状況を把握・分析し、関連する施策の検証を行うとともに、教育委員会等や学校が行う教育改善に資するために、数年に一度は、市町村、学校等の状況も把握することが可能なきめ細かい調査を実施することについても検討する必要がある。」

平成23年度以降の全国的な学力調査の在り方に関する検討のまとめ

  平成23年 3月31日
全国的な学力調査の在り方等
の検討に関する専門家会議

1.調査目的

 平成22年度全国学力・学習状況調査の実施要領において定められた調査目的は、今後も極めて重要であり、このような調査目的を実現するための全国的な学力調査の実施は、今後も継続すべきであると考えられる。多くの教育委員会や教育関係団体等がこのことを期待している。

 ※平成22年度調査の調査目的
「 義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図るとともに、そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する。
 また、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる。」

(1)平成19年度の調査発足以来、全国学力・学習状況調査は、行政調査としての役割(国全体における児童生徒の学力等の状況を把握し、国の教育施策の企画立案の参考にするという役割)を超えた役割を果たしてきた。
 すなわち、全国学力・学習状況調査は、全国及び都道府県別のデータ等を得て、児童生徒の学力や学習状況を把握・分析することによって、国及び地方の教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図ること、また、学校における児童生徒への教育指導や学習状況の改善に調査結果を生かすこと及び教員の指導力を向上することに貢献してきた。

(2)平成17年の中央教育審議会答申においては、義務教育の在り方を議論した成果として、「義務教育の機会均等とその水準の維持向上」という基本的な理念を実現する方策の一つとして、全国的な学力調査の必要性が提言された。文部科学省における今後の検討においても、この答申の趣旨を踏まえて検討を行う必要がある。
 その後、平成20年に閣議決定された教育振興基本計画においても、全国的な学力調査の継続的な実施が盛り込まれている。

(3)学習指導要領においては、学校教育法に定める義務教育の目標を達成するよう、各教科の目標が明示されている。
 「義務教育の機会均等とその水準の維持向上」という観点から、これら各教科の目標の実現、子どもたちのより確実な習得に資するよう、全国的な学力調査がその役割を果たすことが期待されている。
 特に、確かな学力の育成を目指した新学習指導要領が全面実施の段階を迎えることから、全国的な学力調査には、
 ・「確かな学力の育成」を目指した学習指導要領改訂の趣旨、とりわけ、知識を活用する能力を高めるための思考力・判断力・表現力等をはぐくむ教育の充実、個に応じた指導の充実などの普及・定着
 ・教育委員会や学校における学力向上に向けての積極的かつ具体的な取り組み
 ・全国の教育委員会、学校等が、全国的な状況との関係において、それぞれの児童生徒の学力等に関する状況、教育条件の整備状況、児童生徒の学習環境や家庭における生活状況等を知り、その特徴や課題などを把握し、さらに、広い視野にたって、主体的に指導改善等につなげていくこと
 ・学習指導要領の改訂の趣旨等を踏まえた学力向上の取り組みの成果等についての、国、地方、学校の各段階における把握、検証
を、それぞれ支援していく役割が期待されており、その重要性は、ますます強くなってきている。

(4)これまで4回の全国学力・学習状況調査においても、このような全国的な学力調査の本来の目的、ねらいとするところが継続されてきた。
 平成22年度調査においては、このような調査の本来の目的を実施要領において整理、規定した。その上で、悉皆調査ではなく、調査方式の切り替えを行っても、調査の目的は十分実現できると考え、抽出率約30%の抽出調査及び希望利用方式に切り替えられたところである。
 3年間の悉皆調査の結果、信頼性の高いデータが蓄積され、教育に関する検証改善サイクルの構築も着実に進んできており、調査方式を切り替えた平成22年度調査においても、これを継続する趣旨で本調査が実施された。その結果、調査のねらいとしてきた政策効果が十分発揮され、積極的な取り組みが全国で展開されている。今後、当面、このような取り組みを継続することが必要であり、また、強く期待されていることを十分考慮する必要がある。

(5)なお、先般政府が閣議決定を行った新成長戦略においても、「国際的な学習到達度調査において日本が世界トップレベルの順位となることを目指す」とされており、具体的な成果目標も示された。今後、その実現という観点からも、全国的な学力調査の果たす役割が期待されるところである。
※「新成長戦略」について(平成22年6月18日閣議決定)
 「国際的な学習到達度調査において日本が世界トップレベルの順位となることを目指す」
 「2020年までに実現すべき成果目標OECD生徒の学習到達度調査等で世界トップクラスの順位

  • 最上位国の平均並みに、低学力層の子どもの割合の減少と高学力層の子どもの割合の増加
  • 「読解力」等の各分野ごとの平均得点が、すべて現在の最上位国の平均に相当するレベルに到達
  • 各分野への興味・関心について、各質問項目における肯定的な回答の割合が国際平均以上に上昇」

(6)以上のことから、平成22年度全国学力・学習状況調査の実施要領において定められた調査目的を構成する各要素は、今後の全国的な学力向上に必要とされる方向性を考えた場合、いずれも欠かすことのできない必要な要素であると考えられる。

(7)なお、調査目的のうち、「教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図るとともに、そのような取り組みを通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する」という点に今後は力点を置き、例えば、1.時系列による学力水準の比較(経年変化の分析)のための調査、2.教育格差の分析及び関連する施策の検証のための調査、3.発達段階に応じた学力等の状況の変化を分析するための調査、といった新しい視点に立った調査について検討していくことが必要と考えられる。 

2.対象学年・実施時期

 対象とする学年については、義務教育における各学校段階の最終学年における学力等の状況を把握するため、当面、小学校第6学年及び中学校第3学年の児童生徒とすることが適当である。
 実施時期については、児童生徒に対する学習改善に役立てるため、年度の早い時期に調査を実施し、できるだけ早い時期に学校等へ結果が返却されることが必要である。過去4回の調査で定着してきた4月下旬の実施を基本とすることが適当と考えられる。

(1)対象とする学年については、これまで、義務教育における学力等の状況を把握するため、小学校第6学年及び中学校第3学年の児童生徒とすることが適当であるとされてきた。

(2)対象学年を追加すれば、問題作成の業務量及びそのための体制を拡充する必要が出てくるだけでなく、対象となる学校数、児童生徒数も、その分拡大する。今後、教科の追加を目指すとすれば、対象学年は、当面、現状のままとすることが適当と考えられる。

(3)義務教育段階のすべての教育内容を調査の対象とするのであれば、最終学年の年度末近くに調査を実施することが最適であるが、児童生徒に対する学習改善に役立てるため、調査の対象となった児童生徒の結果を、本人に対する教育指導等にフィードバックする必要性を考慮すれば、これまで同様、年度の早い時期に実施することが適当と考えられる。

(4)将来的には、高等学校段階における学力等の状況を把握し、教育施策の検証や教育改善に資するために、全国的な学力調査を実施することが検討課題となることが考えられるが、これを検討するに当たっては、大学入学試験との関係など、様々な課題があるという指摘があった。また、入学試験により形成される特殊な学力の影響を考慮する必要があるという指摘もあった。 

3.対象教科

 全国学力・学習状況調査には、義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図り、そのような取組を通じて、教育に関する検証改善サイクルを確立するという役割とともに、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てるという役割が期待されている。このことを踏まえ、これまでの「国語」、「算数・数学」に加え、対象教科を追加することを検討していくことが適当である。
 あらかじめ、文部科学省(国立教育政策研究所)において、問題作成の体制づくりを行うことが必要となること、通常、問題作成に1年以上の期間を要すること等を考慮すれば、教科の追加は早くとも、平成24年度調査からということになる。
 小学校の「社会」「理科」、中学校の「社会」「理科」「英語」の各教科について、対象教科に追加することの意義や課題等について検討した結果、平成24年度から追加を検討する教科については、「理科」とすることが適当であると考えられる。
 「理科」における教科の特性を踏まえ、出題方法等の具体的な方策については、問題作成の過程で検討することが適当である。
 なお、「社会」「英語」については、理科における具体的な方策の検討状況や準備状況を踏まえつつ、望ましい調査問題の在り方などを含め、改めて検討することが適当である。

(1)対象教科の追加について

 ○ 平成19年度の全国学力・学習状況調査の発足時においては、対象とする実施教科について、まずは、小学校の国語・算数、中学校の国語・数学とすることが適当であり、その他の教科については、将来的な検討課題とされたところである。
 これは、本調査により、国の責務として果たすべき義務教育の機会均等その水準の維持向上という観点からの学力等の把握が必要であること、大規模な調査を確実に実施する必要があるといったことに加え、
 ・読み・書き・計算など、日常生活やあらゆる学習の基礎となる内容を教える教科であること
 ・本調査発足前の時点までの国際学力調査や教育課程実施状況調査の調査結果においてあきらかとなっていた課題(読解力の低下等)
等を考慮したものである。

 ○ 全国学力・学習状況調査には、義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図り、そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立するという役割とともに、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てるという役割が期待されている。このことを踏まえれば、平成23年度以降の全国的な学力調査の在り方を検討するに当たって、望ましい対象教科を考えた場合、国語、算数・数学のみならず、他の教科についても対象とすることを検討することが適当と考えられる。

 ○ 都道府県が独自に行っている学力調査においては、社会、理科、英語といった教科について実施している例が相当数あるので、これらの教科の学力等の状況について把握したいというニーズが存在するものと考えられる。

 ○ あらかじめ、文部科学省(国立教育政策研究所)において、問題作成の体制づくりを行うことが必要となること、通常、問題作成に1年以上かかること等を考慮すれば、教科の追加は早くても、平成24年度調査からということになる。

 ○ 以上のことから、対象教科は、これまでの「国語」「算数・数学」に加えて、小学校は「社会」「理科」、中学校は「社会」「理科」「英語」を追加することを検討していくことが適当である。

 ○ その上で、これらの教科を追加することについて、教科ごとに意義・効果及び各教科における問題作成の課題等を総合的に検討した結果、平成24年度から調査に追加することを検討する教科については、小学校及び中学校の「理科」とすることが適当であると考えられる。    

(2)「理科」の追加について

 ○ 平成24年度調査から「理科」の追加を検討すべきこととした背景としては、
 ・ 「知識基盤社会」において、次代を担う科学技術人材の育成がますます重要な課題となっており、新学習指導要領においては、国際的な通用性、内容の系統性の観点から理数教育の授業時数及び教育内容の充実が図られたところであること
 ・ さらに、「理科」については新学習指導要領において、科学的な見方や考え方の育成、科学的な思考力、表現力の育成、科学を学ぶ意義や有用性を実感させ科学への関心を高めることなどの観点から充実が図られており、その方向に沿った学習指導の充実が求められていること
 ・ 児童・生徒の「理科離れ現象」が指摘されていることを踏まえ、学力や関心・意欲・態度など学習状況を把握・分析し、実態の把握や課題の改善に向けた取組につなげていくことが必要であること
 ・ 政府の新成長戦略において「国際的な学習到達度調査において日本がトップレベルの順位となることを目指す」とされ、具体的な目標も示されていることから、その実現のため、TIMSSの「理科」、PISAの「科学的リテラシー」と関係が深い「理科」を対象教科とすることは有意義であること
などが挙げられる。

 ○ 「理科」においては、観察・実験が重視されるが、その測定にあたっては、実技面に焦点を当てた「パフォーマンス・アセスメント」を実施することが想定される。その場合には多大な労力を必要とすることから、大規模学力調査に馴染まないことや、調査の結果得られたデータの妥当性・信頼性の確保に留意する必要がある。これについては「特定の課題に関する調査」などの異なる方式の調査を充実し、全体として目的の実現を図っていく必要があると考えられる。

 ○ 「理科」における教科の特性を踏まえ、また、児童生徒や学校の負担増への配慮から、理科については、国語、算数・数学のように「主として『知識』に関する問題」と「主として『活用』に関する問題」のように分けて問うのではなく、一体的に問うことや、一度の調査ですべての領域について出題するのではなく、領域を限定して出題すること、また、他の教科の調査時間等の見直しなどの工夫を検討する必要性が指摘されている。これらを含め、「理科」における出題方法等の具体的な方策については、問題作成の過程で検討することが適当である。

 ○ なお、「社会」「英語」については、理科における出題方法等の具体的な方策についての検討状況や準備状況を踏まえつつ、望ましい調査問題の在り方などを含め、改めて検討することが適当である。

 ○ 「理科」を追加する場合においても、全国的な学力調査により測定できるのは学力の一部分であることについて引き続き留意が必要である。

 ○ ここでの整理は、当面、平成22年度調査と同様の調査を継続する場合を前提としていることに留意する必要がある。

(3)調査問題の質の向上や学習状況等の調査項目の改善について

 ○ 対象教科の調査問題については、今後とも問題の質の一層の向上に向けた取組を進めていく必要がある。また、学習状況等に係る児童生徒質問紙調査や学校質問紙調査の調査項目についても継続的な改善を図っていく必要がある。

4.調査方式

(a)調査方式については、平成22年度においては、都道府県が教職員の給与費を負担するとともに、広域での人事を行うなどの役割と責任を有していることなどに鑑み、公立の都道府県別の結果までを統計上有意なレベルで把握できる約30%の抽出率で全国的な抽出調査を実施した。

(b)平成22年度調査において、抽出対象外となった学校の約6割が、希望利用方式の利用を希望したところである。このことは、市町村や学校におけるニーズを反映しており、当面、抽出調査を調査方式とするのであれば、希望利用方式を併用することが必要である。

(c)平成23年度以降の当面の調査については、平成22年度調査で用いた調査方式により、現在求められている調査目的の実現を図るとともに、毎年度の調査実施後に、事業評価に基づいた継続的な見直しを行う。
  併せて、経年変化の分析等を重視した新しいタイプの調査方式の開発や地方独自の調査との役割分担などについて具体的な検討を継続し、よりよい調査方式を目指すことが必要である。

(d)これらの検討にあわせて、国として教育格差等の状況を把握・分析し、関連する施策の検証を行うとともに、教育委員会等や学校が行う教育改善に資するために、数年に一度は、市町村、学校等の状況も把握することが可能なきめ細かい調査を実施することについても検討する必要がある。

(1)調査方式については、当面、対象学年の全児童生徒を対象とした調査ではなく、抽出調査とし、国全体、国公私別、公立の都道府県別の児童生徒の学力等の状況を把握・検証することが適当である。あわせて、抽出調査の対象外となった学校も、学校設置者が希望すれば、抽出調査と同一の調査問題の提供を受け、調査を利用することができる「希望利用方式」を併用する必要があると考えられる。 

  • 全国的学力・学習状況調査の目的・意義を踏まえれば、教育に関する検証改善サイクルの構築に向けて、全国的な学力調査を活用し、今後とも、引き続き、教育活動の結果を検証していく必要がある。
     3年間の悉皆調査の結果、児童生徒の学力等の状況について信頼性の高いデータが蓄積され、教育に関する検証改善サイクルの構築も着実に進んできていることを踏まえ、都道府県が教職員の給与費を負担するとともに、広域での人事を行うなどの役割と責任を有していることなどに鑑み、当面、平成22年度調査と同様に、公立の都道府県別の結果までを統計上有意なレベル把握できる約30%の抽出率で、全国的な抽出調査を実施し、併せて、希望利用調査を実施することで、本調査の目的を実現することができると考えられる。対象学年の全児童生徒を対象とした悉皆調査でなくとも、必要なデータを得ることは可能である。
     なお、検証改善サイクルの構築に向けた信頼性の高いデータの蓄積の観点からは、少なくとも数年に一度は、市町村や学校においても、それまで蓄積されたデータに加え、最新のデータが得られるようにする必要があると考えられる。
  • 抽出調査では、市町村別や全学校別の結果を統計上得ることは困難である。平成22年度調査において、調査方式を切り替えた時点では、市町村や学校によっては、過去3年間の調査に引き続き、児童生徒の学力等をより詳細に把握、検証したいとの声があった。
      この点については、過去3年間の調査の結果や地方独自の調査の結果を、抽出調査の結果に合わせて活用することを可能とするとともに、更に必要があれば、学校設置者の希望に応じて本調査を利用できるようにしたところである。実際に学校設置者からの希望を受け付けたところ、抽出対象外となった学校の約6割が、希望利用方式の利用を希望したところである。
     このことは、市町村や学校におけるニーズを反映しており、これを踏まえれば、当面、抽出調査を調査方式とするに当たっては、希望利用方式を併用することが必要であると考えられる。
  • 以上のことから、平成23年度以降の当面の調査においては、平成22年度調査と同様の調査方式を継続するとともに、検証改善サイクルの構築に向けた信頼性の高いデータの蓄積の観点から、数年に一度、市町村や学校においても最新のデータを得ることにより、全国学力・学習状況調査の意義・目的は実現できるものと考えられる。

(2)また、今後は、経年変化の分析等を重視した新しいタイプの調査方式の開発や、地方の実情に応じ、全国的な学力調査と地方独自の調査のデータを結合することにより、全国的な学力調査が担ってきた役割の一部を地方独自の調査が担うことが可能となる仕組みの検討を進め、様々な調査の組み合わせにより、全体として目的の実現を図ることについて具体的な検討を継続し、よりよい調査方式を目指すことが必要である。

(3)これらの検討に併せて、国として教育格差等の状況を把握・分析し、関連する施策の検証を行うとともに、教育委員会等や学校が行う教育改善に資するために、数年に一度は、市町村、学校等の状況も把握することが可能なきめ細かい調査を実施することについても検討する必要がある。     

5.実施頻度

(a) 実施頻度については、当面、平成22年度調査の調査目的や調査方式を継続する限りにおいては、「国語」、「算数・数学」について、毎年度本調査の実施を続けることが適当である。

(b)「理科」を追加する場合の実施頻度については、児童生徒や学校の負担増を懸念する意見に配慮し、3年に一度程度とすることが妥当と考えられる。

(1)「国語」「算数・数学」について

 ○ 実施頻度については、義務教育における検証改善サイクルの構築に向けて、教育活動の結果検証を継続的に実施する必要があるため、毎年度実施とされてきた。

 ○ 実施頻度については、調査目的や調査方式の在り方との関係で今後とも継続的に検討する必要がある。

 ○ 当面、平成22年度の調査目的や調査方式を継続する限りにおいて、「国語」「算数・数学」は、毎年度実施することが適当である。

 ○ なお、実施頻度についての検討に当たっては、検証改善サイクルの構築という観点から、市町村や学校のニーズも考慮する必要がある。

(2)「理科」について

 ○ 「理科」を追加する場合、実施頻度については、国語、算数・数学のように毎年ではなく、3年に一度程度とすることが、実施面からも妥当と考えられる。また、解答類型の設定や採点上の課題などの検証等のための予備調査を行うことも考えられる。 

6.教育課程実施状況調査等との関係

 教育課程実施状況調査については、学習指導要領の目標・内容に照らした教育内容全般にわたる全国的な状況の把握を通じて、学習指導要領や指導の改善のための基礎データを得るという意義・目的を明確にすることが適当と考えられる。
 教育課程実施状況調査、特定の課題に関する調査、全国学力・学習状況調査の特性を生かしつつ、適切な役割分担のもとに組み合わせて実施することにより、全国的な学力調査の目的の実現を図る必要がある。

(1)教育課程実施状況調査については、学習指導要領の目標・内容に照らした教育内容全般にわたる全国的な状況の把握を通じて、学習指導要領や指導の改善のための基礎的なデータを得るという意義・目的を明確にすることにより、全国学力・学習状況調査との役割分担を図る。このため、その実施の方法などを今後十分に検討する必要がある。
 ※教育課程実施状況調査
 (目的)学習指導要領に基づく教育課程の実施状況について、学習指導要領における各教科、科目の目標や内容に照らした学習の実現状況の把握を通して調査研究を行い、今後の教育課程の基準の改善等に資する。
 (内容)各学年の学習指導要領全体の定着状況を把握するため、複数の問題冊子により出題し、抽出率を絞って国全体の調査結果のみ集計。学習指導要領の改訂に合わせて、約10年に一度実施されている。

(2)なお、教育課程実施状況調査、特定の課題に関する調査、全国学力・学習状況調査については、それぞれの調査の特性を生かしつつ、必要に応じ、適切な役割分担のもとに組み合わせて実施することにより、全体として全国的な学力調査の目的の実現を図る必要がある。 

7.経年変化の分析等を重視した新しいタイプの調査方式の開発や、地方独自の調査との役割分担について

(a)今後、調査目的の検討と関連させながら、経年変化の分析等を重視した新しいタイプの調査方式の開発を進める必要がある。

(b)また、今後は、地方の実情に応じ、全国的な学力調査に求められてきた調査目的の要素の一部を、地方独自の調査が担っていくことが可能となる仕組みの検討を進める必要がある。

(1)経年変化の分析や教育格差の分析を重視した調査

 ○ 全国学力・学習状況調査においては、調査の出題の一部において、過去の調査で課題の見られた内容に関係する類似の問題を出題し、改善の状況を検証するなど、経年的な分析も配慮されている。    
 また、全国学力・学習状況調査においては、児童生徒質問紙や学校質問紙による調査を併用し、その後の追加分析も含め、教育格差の分析や関連する施策の検証など、多面的な観点からの分析が行われてきた。
 全国学力・学習状況調査は、児童生徒への指導の充実に活かすため、実施後に調査問題をすべて公表していることから、同じ問題を用いた調査を行うことが難しく、各教科の平均正答数や平均正答率による厳密な経年比較を行うことは、制度設計上困難であった。
  しかしながら、今後の全国的な学力調査においては、児童生徒の学力等の状況及びその経年比較に資するような調査や、発達段階に応じた学力等の状況の変化を分析するための調査、教育格差の実態把握・分析及び関連する施策の検証に資する調査を重視すべきであるとの指摘がある。
 このため、今後は、これらの課題を踏まえ、最新の調査理論や調査技術を駆使し、個々の受験者や学校の負担を増やさずに、幅広い領域を多角的な側面から測定したり、学力等の状況の経年変化の分析や教育格差の分析を重視した新しいタイプの調査について、諸外国の学力調査の取組状況等も踏まえつつ、研究開発を行う必要があると。

 ○ なお、将来、新しいタイプの調査方式が導入されるなど、全国的な学力調査が発展していくことに伴い、調査の実施体制の充実確保、専門的人材の育成、養成・研修を視野に入れた教員の調査に関するリテラシー向上等に取り組むことが期待される。これらの取組みを進めるためにも、先ずは、保護者や教員等に向け作成するリーフレットの内容を充実すること等により、調査の目的や調査設計の考え方に対し一層幅広い理解が得られるように努めることが重要である。

(2)地方独自の調査との役割分担

 ○ 都道府県や市区町村が独自に実施している学力調査は、対象学年、実施教科、調査内容に関し、地域の特色を生かしつつ、全国学力・学習状況調査とは異なる視点に立って実施されることが期待されている。
 また、全国学力・学習状況調査の抽出調査により集計される調査結果が、国全体、国公私別、公立の都道府県別、調査対象となった児童生徒別の結果に限定されることになったため、地方独自の調査は、市町村や学校において、より詳細なデータを得る場合の有効な手段の一つとして期待されているところである。

 ○ 全国学力・学習状況調査に求められてきた調査目的の中の、調査結果を「学校における児童生徒の教育指導や学習状況の改善に役立てる」という要素については、全国的な学力調査をきめ細かく実施し、これと地方独自の調査が有機的に機能することで、一層効果が期待できるとの指摘がある一方で、全国的な学力調査よりも、地域や学校の実情に則した指導が可能な地方独自の調査の役割に期待すべきであるという指摘もある。
 このため、今後は、、地方の実情に応じ、全国的な学力調査と地方独自の調査のデータを結合することにより、全国的な学力調査に求められてきた役割の一部を、地方独自の調査が担うことも可能となる仕組みの検討を進め、様々な調査の組合せにより、全体として目的の実現を図ることについて具体的な検討を継続する必要がある。    

8.調査結果の取扱いに関する配慮

 ○ 平成22年度調査においては、調査結果を集計する場合の調査結果の取扱いについて、調査により測定できるのは学力の特定の一部分であること、学校における教育活動の一側面に過ぎないことなどを踏まえるとともに、1.教育委員会や学校は、保護者や地域住民に対して域内の教育及び当該学校の状況について説明責任を有していること、2.情報公開条例等との関係、3.序列化や過度の競争につながらないようにすること、4.各児童生徒の個人情報との関係、について十分配慮すべきことを実施要領において求めている。
 このような調査結果の取扱いに関する配慮は今後とも必要であり、当面の調査においても引き続き求めていく必要がある。

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文部科学省 初等中等教育局 参事官付

(文部科学省 初等中等教育局 参事官付)

-- 登録:平成23年08月 --