資料2-3 障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)(障がい者制度改革推進会議)抜粋

第3 障害者制度改革の基本的方向と今後の進め方

4.個別分野における基本的方向と今後の進め方

 以下の各個別分野については、推進会議の問題認識を踏まえて改革の集中期間内に必要な対応を図るよう、横断的課題の検討過程や次期障害者基本計画の策定時期等も踏まえた改革の工程表を示していくべきであり、事項ごとに関係府省において検討を進め、所要の期間内に結論を得て、必要な措置を講ずるべきである。

2)教育

(推進会議の問題認識) 

 障害者権利条約においては、あらゆる教育段階において、障害者にとってインクルーシブな教育制度を確保することが必要とされている。
 障害の有無にかかわらず、それぞれの個性の差異と多様性が尊重され、それぞれの人格を認め合う共生社会の構築に向け、学校教育の果たす役割は大きい。人間の多様性を尊重しつつ、精神的・身体的な能力を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加するとの目的の下、障害者が差別を受けることなく、障害のない人と共に生活し、共に学ぶ教育(インクルーシブ教育)を実現することは、互いの多様性を認め合い、尊重する土壌を形成し、障害者のみならず、障害のない人にとっても生きる力を育むことにつながる。
 また、義務教育だけでなく、就学前の教育、高校や大学における教育、就労に向けた職業教育や能力開発のための技術教育、生涯教育等についても、教育の機会均等が保障されなければならない。
 なお、現行の教育基本法の第4条第1項の教育上差別されない例示に「障害」が明記されていないところであり、「障害」が除かれる趣旨ではないものの、今後明文化することも検討すべきである。

【地域における就学と合理的配慮の確保】
 日本における障害者に対する公教育は、特別支援教育によることになっており、就学先や就学形態の決定に当たっては、制度上、保護者への意見聴取の義務はあるものの、本人・保護者の同意を必ずしも前提とせず教育委員会が行う仕組みであり、本人・保護者にとってそれらの決定に当たって自らの希望や選択を法的に保障する仕組みが確保されていない。
 また、特別支援学校は、本人が生活する地域にないことも多く、そのことが幼少の頃から地域社会における同年齢の子どもと育つ生活の機会を失わせたり、通常にはない負担や生活を本人・保護者に求めたり、地域の子どもたちから分離される要因ともなっている。
 障害者が地域の学校に就学し、多大な負担(保護者の付き添いが求められたり、本人が授業やそれ以外の教育活動に参加しにくいまま放置されるなど)を求められることなく、その学校において適切な教育を受けることを保障するためには、教育内容・方法の工夫、学習評価の在り方の見直し、教員の加配、通訳・介助者等の配置、施設・設備の整備、拡大文字・点字等の用意等の必要な合理的配慮と支援が不可欠である。
 このような観点から、以下を実施すべきである。

・ 障害の有無にかかわらず、すべての子どもは地域の小・中学校に就学し、かつ通常の学級に在籍することを原則とし、本人・保護者が望む場合のほか、ろう者、難聴者又は盲ろう者にとって最も適切な言語やコミュニケーションの環境を必要とする場合には、特別支援学校に就学し、又は特別支援学級に在籍することができる制度へと改める。

・ 特別支援学校に就学先を決定する場合及び特別支援学級への在籍を決定する場合や、就学先における必要な合理的配慮及び支援の内容を決定するに当たっては、本人・保護者、学校、学校設置者の三者の合意を義務付ける仕組みとする。また、合意が得られない場合には、インクルーシブ教育を推進する専門家及び障害当事者らによって構成される第三者機関による調整を求めることができる仕組みを設ける。

・ 障害者が小・中学校等(とりわけ通常の学級)に就学した場合に、当該学校が必要な合理的配慮として支援を講ずる。当該学校の設置者は、追加的な教職員配置や施設・設備の整備等の条件整備を行うために計画的に必要な措置を講ずる。

【文部科学省】

【学校教育における多様なコミュニケーション手段の保障】
 障害者の人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力を可能な限り発達させるためには、教育が本人にとって最も適当な言語並びにコミュニケーションの形態及び手段によって行うことが確保されなければならない。
 このような観点から、以下を実施すべきである。

・ 手話・点字・要約筆記等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、手話に通じたろう者を含む教員や点字に通じた視覚障害者を含む教員、手話通訳者、要約筆記者等の確保や、教員の専門性向上に必要な措置を講ずる。

・ 教育現場において、あらゆる障害の特性に応じたコミュニケーション手段を確保するため、教育方法の工夫・改善等必要な措置を講ずる。

【文部科学省】


(政府に求める今後の取組に関する意見)

○ 障害のある子どもが障害のない子どもと共に教育を受けるという障害者権利条約のインクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえ、体制面、財政面も含めた教育制度の在り方について、平成22年度内に障害者基本法の改正にもかかわる制度改革の基本的方向性についての結論を得るべく検討を行う。

○ 手話・点字等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、手話に通じたろう者を含む教員や点字に通じた視覚障害者を含む教員等の確保や、教員の専門性向上のための具体的方策の検討の在り方について、平成24年内を目途にその基本的方向性についての結論を得る。

6)虐待防止

(推進会議の問題認識)

 入所施設、家庭内、学校、労働現場、精神科病院等の医療現場等において障害者に対する虐待の例もみられるところであり、虐待の防止やその救済等に関する法整備が急務となっている。立法府においては、障害者の虐待防止に係る制度の法制化に向けた検討がなされているが、今後の法整備に当たっては、政府が行う場合も含め、次の方針に沿って検討されるべきである。

(防止すべき虐待行為)
・ 防止すべき虐待行為は、身体的虐待、精神的虐待、性的虐待、放置、経済的搾取の五つの場合とする。

(虐待行為者の範囲)
・ 障害者の生活場面に日常的に直接かかわりをもつ親族を含む介助者、福祉従事者、事業所等の使用者(従業員を含む。)に加えて、外部からの発見が困難な学校や精神科を始めとする病院等における関係者についても範囲に含める。

(早期発見・通報義務)
・ 虐待の事実を早期に発見できるようにする観点から、障害者の生活に関連する者等に対し、早期発見を促す仕組みとする。
・ 虐待の発見者に対して、救済機関への通報義務を課すとともに、当該通報者の保護のための措置を講ずる。

(救済措置の在り方)
・ 実効性のある救済を行うためには、事実確認、立入検査、一時保護、回復支援等のほか、必要な場合には、強制力を伴った措置を講ずる。

(監視機関の在り方)
・ 障害者権利条約の趣旨を踏まえ、虐待を未然に防止するため、効果的な監視が可能な体制を整える。

【厚生労働省・文部科学省】


(政府に求める今後の取組に関する意見)

○ 障害者に対する虐待防止制度の構築に向け、推進会議の意見を踏まえ、速やかに必要な検討を行う。

 

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課)

-- 登録:平成22年07月 --