資料2-3 今後の学級編制及び教職員定数の改善について(提言)(骨子)

※【】内の数字は、資料2-4「基礎資料」の資料番号

はじめに

○ 「教育は人なり」であり、優れた資質を持つ教員が子ども一人ひとりに目を配り、適時適切な指導ができる仕組みへと改善していくことが必須。この様な基本的視点に立ち、中教審初等中等教育分科会として提言。

1.これまでの取組

(1)学級編制及び教職員定数の改善の経緯【資料1~8】

○ 数次にわたる教職員定数改善計画により学級規模の縮小・複式学級の解消等を推進し、第5次改善計画で40人学級が完成。

○ 第6次改善計画以降は、生活集団としての学級の規模は変更せず、加配定数の拡充等により学習集団の小規模化を推進し、きめ細かな教育を実現。

(2)学級編制の弾力化【資料9~11】

○ 平成13年度から、都道府県が児童生徒の実態を考慮して特に必要があると認める場合には、国の標準を下回る学級編制基準の設定が可能。

(3)総額裁量制の導入【資料12~14】

○ 義務教育費国庫負担金について、平成16年度から、各都道府県ごとの標準定数と各都道府県ごとの平均給与単価に基づき算定される国庫負担金限度額の範囲内で、教職員定数等に関する都道府県の裁量が拡大。

(4)市町村負担による教職員任用の導入【資料15】

○ 平成18年度から、市町村が給与費を負担することにより独自の教職員任用が可能。市町村独自の少人数学級の取組も実施。

2.今後の学級編制及び教職員定数改善の基本的な考え方

(1)新しい学習指導要領への対応【資料16~24】

○ 新しい学習指導要領では、基礎的・基本的な知識・技能の習得と、それらを活用する思考力・判断力・表現力等をはぐくむ学習活動を充実。また、コミュニケーションや感性・情緒、知的活動の基盤である言語活動や体験活動などの充実を図るとともに、理数教科をはじめ指導内容や授業時数を増加。

○ 質・量両面での充実が図られた新学習指導要領を円滑に実施するためには、個々の児童生徒の興味・関心、理解や習熟度に応じたきめ細かな指導の一層の充実が不可欠。教員には一層高度な指導が求められており、中教審答申(平成20年1月)が指摘したように、教職員定数改善が喫緊の課題。

(2)生徒指導・学級経営面の課題等への対応【資料25~34】

○ 我が国の教員は、学習指導だけでなく規範意識や社会性の育成など生徒指導に関しても大きな役割を果たしている。学級という共同体を形成し様々な活動を通してこれらの指導を行うことにより、全人的な教育に成果。

○ 一方、暴力行為、いじめ、不登校など生徒指導面の課題も、近年、特に増大。様々な障害のある児童生徒や日本語指導が必要な児童生徒など、特別な支援を必要とする児童生徒も急速に増加。

○ 課題解決のためには地域・家庭との連携が必要だが、地域・家庭の教育力の低下や保護者等の学校に対する対応困難な要求等も指摘されており、学校が直面する諸課題は、近年著しく困難化・複雑化。

○ 上記のような状況の変化により現行の学級規模では生徒指導・学級経営とも困難となっており、教職員定数改善が急務。

(3)子どもと向き合う時間の確保【資料35・36】

○ このような状況を反映して、平成18年に文部科学省が実施した教員勤務実態調査によれば、教員の残業時間は大幅に増加しており、多くの教員が「授業の準備をする時間が足りない」、「教員が行うべき仕事が多すぎる」と認識。

○ 学校の教育力の向上のためには、教職員が子どもと十分触れ合いながらきめ細かな指導を行う時間をより多く確保することが不可欠であり、教員が子どもと向き合う環境づくりのためにも、教職員定数の改善が必要。

(4)教育委員会・学校の主体的取組の促進【資料37、60】

○ 学校が抱える教育課題は地域や学校により様々であり、全国的に達成すべき教育条件を国が担保した上で、地域や学校の実情に応じたきめ細かい運用が必要。

○ 学級編制に関する都道府県教育委員会と市町村教育委員会の権限関係について、学校の設置者である市町村教育委員会の権限を拡大する方向で見直すことが必要。

3.具体的改善方策

(1)学級編制の標準の引下げ

<1>小・中学校の単式学級の学級編制の標準【資料38~44】

○ 以下の理由から、現行の40人の学級編制の標準を引き下げることが必要。

[1]言語活動・体験活動等を重視する新学習指導要領の実施のため、全教科においてよりきめ細かな指導を充実することが必要
[2]生徒指導上の課題が深刻化し、児童生徒への個別対応の重要性が増加
[3]児童生徒の変化等により、現行の学級規模では学級経営が困難
[4]地方独自の少人数学級の取組が進むとともに、その効果のデータが蓄積
[5]国際比較の観点からみて、日本の学級規摸は大きく専門的スタッフは少ない
[6]教育関係者、学校現場、保護者は少人数学級を圧倒的に支持
[7]児童生徒数の減少、教員の若返りにより、少人数学級にむけた環境が整備

○ 小学校低学年については、さらなる引下げも検討が必要。

○ 学級編制の標準の引き下げにより20人未満の小規模学級を画一的に編成しなくてもよいような柔軟な仕組みが必要。

<2>その他の学級編制の標準【資料45~47】

○ 小・中学校の単式学級以外の学級編制の標準を、以下の方向とすることについてどう考えるか。

・小・中学校の複式学級については、二学年を同時に指導する困難性や小規模校の機能確保の観点から、学級編制の標準を引き下げることが必要。

・小・中学校の特別支援学級については、引き続き在籍児童生徒数の増加が見込まれることから、通級指導など特別支援教育全体の教職員定数の改善も踏まえて、学級編制の標準の在り方について検討することが必要。

・高等学校については、学級とは別の学習集団を形成して教育活動を行う場合が比較的多いこと、多様な課程・学科等の実情に応じた学級編制や教職員配置を行うことが適当と考えられることから、一律の学級編制の標準の引下げより、各学校の実情に応じて必要とされる教職員定数を確保することが重要。

・特別支援学校については、引き続き在籍児童生徒数の増加が見込まれること、施設整備が課題となっている現状等を踏まえ、学級編制の標準の引下げより、センター的機能の強化など必要とされる教職員定数を確保することが重要。

(2)教職員定数の改善【資料48~50】

○ 国が教育条件整備の責務をしっかりと果たし、都道府県等が計画的かつ安定的に教職員の採用・配置を行うことができるよう、早急に新たな教職員定数改善計画を策定し、確実に実施することが必要。検討に当たっては、我が国の教員が授業だけでなく学校運営や生徒指導・部活動指導、教材研究・研修等、幅広い職務を行っていることに留意。
 なお、教員研修等のための定数措置については、教員の資質能力の総合的な向上方策に関する中教審の審議を踏まえて、今後適切に対応することが必要。

<1>基礎定数の充実【資料16~24、51】

○ 改訂前の学習指導要領の授業時数・指導内容を前提としている現在の教職員定数では、知識・技能を活用する学習活動や言語活動・体験活動の充実など指導水準を向上させながら、授業時数・指導内容の増加に適切に対応することは困難であり、基礎定数の充実が必要。

○ 学級編制の標準を引き下げる場合にも、ティーム・ティーチングや20人程度の少人数指導などについて引き続き実施できるよう教職員定数を措置するとともに、その基礎定数化を進めることが必要。

○ 新学習指導要領で授業時数・指導内容が増加する理科等について専科教員の配置を進めることができるよう、基礎定数の充実が必要。

<2>学校運営体制の整備【資料52】

○ 教職員の間で有機的な連携を行い、学校が組織として複雑困難化する諸課題に対応できるよう、副校長・主幹教諭・指導教諭等の配置を進め効果的に活用するための教職員定数の改善が必要。

<3>特別支援教育の充実【資料28・29、45~47】

○ 特別支援教育の対象となる児童生徒が近年顕著な増加傾向にある中で、特別支援学校が地域のセンター的機能を十分に果たしながら特別支援教育を充実させることや、通級指導など特別な指導を必要とする児童生徒への支援のための教職員定数の改善が必要。

<4>外国人児童生徒への日本語指導の充実【資料30】

○ 日本語指導を行う必要のある外国人児童生徒が急速に増加する中で、きめ細かな指導を行うことができるよう、日本語指導を行う教職員定数の改善が必要。

<5>児童生徒の心身両面の支援【資料25~27、53】

○ 子どもたちの生活習慣の乱れ、不登校やいじめに起因するメンタル面での支援の必要など、児童生徒の心身両面にわたる支援の必要性が高まっていることを踏まえ、養護教諭の定数を改善することが必要。

<6>食育の充実【資料54】

○ 偏った栄養摂取など食生活の乱れ、肥満・痩身傾向など、子どもたちの健康を取り巻く問題が深刻化していることを踏まえ、学校給食管理及び食育の充実のための栄養教諭・学校栄養職員の定数を改善することが必要。

<7>事務処理体制の充実【資料55】

○ 教員が子どもと向き合う時間を確保しながら学校業務を適切に遂行するため、学校における唯一の行政職員である事務職員の役割が重要となっており、事務職員の定数を改善することが必要。

<8>読書活動の支援【資料56】

○ 学校教育の中で学校図書館が十分に活用され読書活動が推進されるよう、学校図書館業務の充実に向けた教職員定数の改善が必要。

<9>キャリア教育の充実【資料57・58】

○ 学校から社会・職業へ円滑に移行し社会人・職業人として自立することが重要な課題となっていることを踏まえ、キャリア教育の充実の観点からの教職員定数の改善が必要。

<10>高等学校における教職員定数の改善【資料5~7】

○ 高等学校段階の生徒の興味・関心、能力等は極めて多様であることを踏まえ、生徒の進路希望達成に向けたきめ細かい指導や義務教育段階の学習内容の定着、特別な支援を必要とする生徒への対応などの諸課題に対応するための教職員定数の改善が必要。

(3)制度的改善事項等

<1>学級編制権限の市町村教育委員会への移譲【資料37、59・60】

○ 小・中学校の設置者である市町村が主体的にその設置する学校の教育条件整備に取り組むためには、学級編制に関する権限はできる限り市町村教育委員会に移譲されることが望ましく、都道府県教育委員会による学級編制基準の設定や市町村教育委員会から都道府県教育委員会への同意を要する協議の義務づけを廃止し、市町村立学校の学級編制は市町村教育委員会の責任で行うことが必要。

<2>加配定数の基礎定数化【資料3・4、6・7】

○ 加配教員の配分は、毎年度各都道府県からの申請に基づいて国が決定するため、計画的・安定的な教職員配置を行う上で支障があるとの指摘や配分の客観性・透明性を高める必要があるとの指摘。学校現場は、加配定数の申請事務手続きの簡素化や活用目的を限定しない教職員配置の要請。このため、加配定数のうち、指導方法工夫改善定数などについては基礎定数化を検討。

<3>教職員定数算定方式への児童生徒数の反映【資料3】

○ 僅かの児童生徒数の違いで学級数が大きく異なることがないよう、学級数を教職員定数算定の基礎としつつ、児童生徒数の要素もある程度考慮した算定方式導入を検討。

<4>地域や学校の実情を踏まえた教職員配置等【資料3、6、60】

○ 標準法における教職員定数の算定基準は、各都道府県又は高等学校等の設置者が置くべき教職員の総数を算定するためのものであり、各学校への具体的な教職員配置を制限するものではないことや、学校の判断により学級以外の多様な学習指導の設定が可能であることをさらに周知。

(4)その他

<1>義務教育費国庫負担制度の堅持【資料12~14】

○ 必要な教職員が確実に学校に配置されるよう、その財源を国の責任で担保することが極めて重要であり、義務教育費国庫負担制度を堅持。

<2>教員の事務負担の軽減【資料55、61】

○ 子どもへの指導に関する業務であっても、事務職員の方が効果的・効率的に対応できるものについては、教員との適切な役割分担により事務職員が積極的に役割を果たすことが必要。また、学校のICT環境・事務用機器の整備や校務情報化の一層の推進が必要。

<3>専門的スタッフの配置充実【資料42】

○ 教員が教科指導・生徒指導の両面で主要な役割を担う我が国の指導形態を基本としつつ、標準法に基づき措置される教職員以外の専門的スタッフを地域や学校の実情に応じて充実することで学校の教育力をより向上させるため、財政措置の改善・充実を図ることが必要。

<4>正規教員の配置促進【資料62・63】

○ 近年、臨時的任用職員や非常勤講師など正規に採用されていない者が増加傾向。教職員定数改善計画の策定・実施、加配定数の基礎定数化により、都道府県が計画的・安定的に教職員の採用・配置を行いやすくなることを期待。

<5>少人数学級に伴う施設整備

○ 国が学級編制の標準を引き下げて少人数学級を実施する場合、新たに必要となる教室等の施設整備について全国で教育条件に格差が生じないよう、国として所要の財源確保が必要。

<6>教育委員会・学校現場の取組への期待

○ 新たな教職員定数改善計画によって、教職員配置がどの程度改善されたかなど、各地方公共団体の教育条件整備の状況が適切に情報公開されることが期待される。また、学校・教職員が緊張感を持って、学級編制や教職員定数の改善の効果を最大限に発揮するための教職員の組織的協力体制や指導方法の在り方について、不断の検討・検証が必要。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課)

-- 登録:平成22年07月 --