新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ(第3回) 議事録

1.日時

令和元年9月24日(火曜日)13時00分~16時00分

2.場所

経済産業省別館3階312各省庁共用会議室

3.議題

  1. 新しい時代の高等学校教育の在り方について
  2. その他

4.議事録

【荒瀬主査】  ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループの第3回会議を開催いたします。本日は御多忙の中、お集まりいただきましてありがとうございます。
それでは、会議に入ります前に、本日の配付資料について事務局から御説明よろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】  失礼いたします。本日の配付資料でございますが、議事次第にございますように、資料1から5まで、また、参考資料1から3までを御用意させていただいております。
資料につきましては、審議会等のペーパーレス化の取組を推進するため、お手元のタブレット端末に格納しておりますので、そちらを御参照いただければと思います。
なお、参考資料を除きます資料につきましては、委員の皆様には紙の資料も併せてお手元に御用意させていただいております。
また、併せて委員の皆様には、本日ヒアリングをお受けいただきます滋賀県立玉川高等学校様より、教育目標に関する資料と研究成果報告書に関する冊子も併せて机上に配付させていただいております。
また、傍聴者の皆様におかれましては、本日、資料1及び2につきましては当日配付とさせていただいておりました。座席上に資料1及び2を配付しております。過不足等ございましたら、事務局にお申出いただければと存じます。
以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。資料よろしいでしょうか。
本日は3時間の会議であります。よろしくお願いいたします。
まず、授業改革や学校改革の取組やその成果等に関する理解を深めるために、きょうは2校の御発表をお願いしております。1校は滋賀県立玉川高等学校、もう1校は福井県立若狭高等学校でございます。
まず、滋賀県立玉川高等学校の中村校長先生から20分程度御発表いただきまして、その後に15分程度を目安に質疑を行いたいと思います。
それでは、中村先生、よろしくお願いいたします。
【中村玉川高校校長】  皆様、こんにちは。滋賀県から参りました、滋賀県立玉川高等学校の校長の中村と申します。どうぞ本日はよろしくお願いいたします。このような場で発表するのは不慣れであるため、うまくお伝えできるか分かりませんが、よろしくお願いいたします。
それでは、座って説明をさせていただきます。失礼します。
さて、早速ですが、簡単に私どもの学校を紹介させていただきます。滋賀の琵琶湖の南部、湖南地域の13万人規模の都市、草津市に学校があります。草津市は、京都や大阪のベッドタウンとして発展してきました。また、市内には自動車や家電等の工場も多くあります。大学のキャンパスも近くに3つほどありまして、若い人や若い世帯も多く暮らしている地域です。
本校は、全日制普通科高校で、今年度、創立37年目を迎えています。3学年とも8学級の比較的大きい規模の高校です。部活動も活発で、フェンシング部や空手道部は今年もインターハイに出場しました。創立37年目ということで、一昨年に卒業生は1万人を超えました。
さて、本校の生徒ですけれども、学力的には中堅のボリュームゾーンに位置する生徒が多いですが、努力して3年間で大きく伸びる生徒もいます。進路としては、例年約7割が4年制大学へ進学、約2割が短期大学と専門学校への進学となっており、就職は数名となっています。
本校生徒の特徴は、生徒の自己分析や教員の実感として集約してみますと、「真面目、穏やか、心優しい、指示にはよく従う」という言葉が挙げられます。確かにそんな感じです。ですから、学校生活全体としては安定感があります。
ただ一方で、自分の考えは控えめに発信するとか、受け身であるという傾向があり、自ら問いを発したり疑問を持つことは余りない、という側面も見られます。教員が指示したことは真面目に取り組むが、生徒が「なぜ学ぶのか」などの根本的なことへの問いを持つ機会が少ないためか、目標が立てにくかったり、意欲が湧きにくい、という実態があるのではないかと思っています。これは私どもの大きな課題と受け止めております。
さて、ここからは、平成28年度から平成30年度まで文部科学省の「高校生の基礎学力の定着に向けた学習改善のための調査研究事業」の指定校として、試行錯誤しながら取り組んできたことを御紹介させていただきます。
この事業指定では、学力向上、そのためのPDCAサイクルでの改善システムの構築、カリキュラムマネジメント、「高校生のための学びの基礎診断」の実施などを実践研究の軸として取り組んでまいりました。私自身は指定を受けてからの2年目に赴任しましたので、1年目の歩みを聞いてみますと次のようなことでした。
口頭で申し上げますが、まず、この指定を受けて問題作成をすることになりました。そのときにどんな問題を作ればいいのか、また、基礎学力とはどんな問題で測ればいいのかということにまず悩んだということがありました。そして、学んだことがしっかり身に付いていれば定期考査で測れるだろうということで、考査を基礎学力定着という視点で重視し、再認識していこうということになりました。そして、学力が身に付いたことを測るためには、評価を見直す必要があるという議論になり、当然評価はどんな指導、授業をしたかということと深い関わりがある。また、その授業には年間計画や単元の狙い、目標があり、付けたい力がある、というふうに議論が発展していったということです。つまり、目標-指導-評価の一体化が本校なりに解釈され、それも評価の議論から出発したように思います。
大きく変化する社会、知識基盤社会を生きるためには、主体的に自ら問いを持ち、生涯学び続ける学習者を育てたいということで、右のような概念図を作成しました。生徒の現状を踏まえた上で、どんな取組をしていけばいいのかを話し合いました。概念図は、3年間、毎年更新していますが、14ページから16ページに載せてありますのでそちらを併せてご覧いただければと思います。
1年目は、まず、カリキュラムマネジメントを意識し、授業などの実践を評価し、改善していくPDCAサイクルをどのようにすればうまく回していくことができるのか、実践的に追究しようと考えました。推進組織「学力向上研究委員会」を各教科代表、教務課、進路指導課、管理職で構成し、月1回程度話し合いました。また、年間3回程度、有識者の先生方から指導、助言を頂きました。生徒たちが知る、覚えるのみではなく、学ぶ方法や姿勢を身に付けたり、自分なりの考えを導き出したりすることができるよう取り組んでいくことを確認しました。
まず、課題意識や取組の方向性を確認する意味でも、現行と次期の学習指導要領のポイントを学習しました。学力の3要素をはじめ、資質・能力をいかに育むか等について話し合いました。なお、表示しているスライドの左上のDos①というのは取り組んだ内容でよかったと思われるものに番号を振ったものです。また、この後逆に反省点や改善点はDon'tsというので表示をしています。
先ほどの繰り返しにもなりますが、外部講師の招聘、先進校視察、外部研修への参加奨励などの機会を持ち、各教員には「学びが大変革期にあること」、その中で本校はどうしていくべきなのか等について考えるきっかけとしてもらいました。
「学力向上研究委員会」では、若手、中堅、ベテランがそれぞれ含まれていますので、授業の進め方等についても交流し、若手の人材育成の場にもなりました。さらに、現状を把握するためのアンケートを生徒や教員に行い、成果と課題を整理しました。
これまでの実践のいいところはさらに工夫して進めていこう、「思考力・判断力・表現力」の力を付けるため、定期考査で毎回、10点から15点程度の記述式問題を採り入れていこう、FBというのはフィードバックの略ですけれども、各教科や全体でできるだけ早くフィードバックして共有していくようにしよう、授業研究会を実施し、ワークシートを通したフィードバックをしようなどのことに取り組みました。
さて、指定研究2年目です。1年目の実践を踏まえて生徒たちがよく考えるようになるためには、様々な場の設定が重要であり、そのような環境や場づくりが大切だと感じるようになりました。そのため、「大学や社会につながる学び」ということを意識して実践しようと考えました。
2年目の調査研究の視点として、「学校教育活動を通した大学や社会につながる学び」、「明確な教育ビジョンに基づいた組織的で継続的な取組の推進」という2点を挙げました。授業を中心としながらも、生徒の学校生活全般に着目していこうということです。右側の図が2年目の推進のための概念図です。
2年目は授業研究会、公開授業を数回開催しました。また、高大連携研修やICTの導入にも取り組みました。ICT環境がよくなかったので、授業でパソコンにつないで提示するための大型モニターを十数台、iPadを40台ほど購入しました。
「高校生のための学びの基礎診断」の試行調査を実施しました。1人1台のタブレットとヘッドセットを使用してのスピーキングテストも行いました。毎年度、2学期末か3学期末に実施しました。
さて、PDCAの改善サイクルについてですが、これを進めていく上で、2年目の中盤あたりから、目標-指導-評価の一体化や学びの意義・目的の共有、それも生徒と教員の共有ということが重要であり、そこの取組を深化させる必要性を痛感しました。それが後で例を御紹介いたしますけれども、教育目標の再設定であり、評価指標の作成でした。
右側には主にCからA、P、Dにつながるものと、主にPからD、C、Aにつながるものに分けて整理をしました。特に改善サイクルが成立するためには、CからAが大切であることを認識し、Cから出発、あるいはCの分析を重視しようと考えました。
これはよりよい授業づくりに求められるものとして、事業指導委員の山岡先生から教えていただいたことです。これらのポイントを授業改善に生かすよう努めてきたところです。
さて、2年目の調査研究の視点の一つとして先ほど御紹介させていただいた、「大学や社会につながる学び」についてですが、希望生徒を対象に関西大学で高大連携研修というのを実施させていただきました。29年度と30年度に1回ずつ実施しています。これは生徒が大学での学びを体験し、現在、高校で学んでいることと結び付けながら、生涯を通して主体的に学び続ける姿勢や態度を身に付ける機会とするために実施しました。
関西大学さんには教授と学生の架け橋となる存在のラーニングアシスタントという方がおられます。本校生徒のモデルともなるその学生さんたちに主にファシリテーターとなってもらい、活動を通して大学での学び方を教えてもらいました。
2チームに分かれ、A先生の班は思考の仕方について、B先生の班は表現の仕方について学び、後で全体での振り返りをして学びを共有しました。
生徒の感想はこのようなものでした。また、研修の満足度はご覧のとおり、非常に高かったです。
研修ノートに書かれていたことはこのようなことでした。「会社員になったときに自ら問題を探し、それの対策を考えたいです。」「日常でも大切な情報を見落とさないように気を付ける。」などという感想もありました。高校の授業の中ではなかなか出てこない感想です。
「先生が教える授業じゃなく、生徒が学ぶ授業」という言葉などが印象に残ったとして挙げられていますし、「このような授業もあるんだな。早く大学に通いたいと思いました。」というのもありました。高校でも考えて学ぶ授業スタイルをどのように採り入れていくべきか、考えさせられました。
この大学での学びを参加生徒が友達に伝えたり、高校での学習につなげていくことが必要ではありますが、なかなか難しいのが現状です。
指定2年目の取組の一つとして、校内授業参観月間というのを設けました。互いの授業を見て気づいたことを伝え合おうという趣旨ですが、試行的に、異教科、世代ミックスの3人組を作り、この3人で授業を見せ合おうということになりました。教科も世代も異なる3人が授業を見せ合ったらどんな化学反応を起こすのかということもありました。
結果としては、生徒への関わりや見方が様々あることが分かり、いい意味での刺激がありました。例えば、ICTを使ったことのないベテラン教員が若い教員に使い方や活用方法を教えてもらったり、主に座学中心の教科だった教員が体育などの実技教科の授業を見ることによって、観点や声掛けのタイミングを学んだりするということもありました。
各授業内でペア学習やグループ学習などの活動や、対話的学習などが日常的に行われるようになってきましたが、活動があっても質はどうなのか、また、主体性や深まりがどうなのかといったことは慎重に検証していくことは大切だと感じています。
よりよい授業づくりには様々なスキルも重要であり、授業者の腕を磨くことも大切です。これは本校の事業指導委員の小林先生から教えていただいたものです。これからもこれらを実践化して努力をしていきたいと考えています。
事業指定3年目には、左のような概念図で推進することにしました。具体的には、「本校で育てたい生徒像」と学習活動をつなげていくことをより意識して進めていこうということにしました。
3年目の取組として、4月の初めに目標設定を明確にしようと考えました。教員は5月に研修を実施しました。生徒にも学ぶ目的や目標設定の大切さなどについてガイダンスを実施しました。
そして、「つなぐ、つなげる」をキーワードにして、ここに挙げたことを重点化しました。私自身としては、長い間見直されてこなかった教育目標を再設定しました。2年目の終盤から考え、3年目の初めに職員と生徒に明示し、説明しました。
お手元の別紙をご覧ください。「将来に展望をもち、人間性豊かで自立した学習者」に育てたい、という願いからそのようにいたしました。また、これに合った教育方針というのを5点挙げました。これらは今年度も引き継いでいます。一生懸命日々の学校生活を送っている目の前にいる生徒、その活動の実態、この事業指定で目指す生徒の姿、また、新学習指導要領に記載されていることなどを考え合わせながら作成しました。
それではお戻りください。次に、「生徒の成長モデル」についてですが、本校では資質・能力を見取る評価指標をこう呼んでいます。冊子の後ろの方に折り込んでありますので、そちらを広げてご覧ください。
2年目の中盤あたりから着手し、まず左側縦の生徒に付けたい力の項目6つを考えました。また、それが学力の3要素で分類するとそのようになりました。
次に、上側の横に0段階から発展段階までの分類をし、大まかに入学時から1年、2年、3年修了時の力を見取るものとして考えました。
そして、各段階の共通指標と教科での具体化を入れていきました。その後、アドバイスを頂いて、一番右側の各教科等でのアプローチの表をつなげました。その表の丸は、各教科で重点化した項目を示しています。この表は、いわばコンピテンシーベースの評価指標ですが、これらを実践するために、各教科での具体化をまとめたものが冊子の74ページから78ページに掲載されています。また、これらを年間の学習計画シラバスにも載せました。今年度はこれに基づいて授業を進めています。
またお戻りください。授業参観時のワークシートにもこれらの視点を入れるようにしました。
さて、総合的な探究の時間についてですが、事業指定3年目あたりからコンピテンシーベースでの学びの中核は、やはり総合的な探究の時間で育むべきではないかということになりまして、本校で今後どうしていくかという話し合いを何度かしました。ここから少し、冊子に掲載されていないスライドです。
学校教育目標と生徒の成長モデルをベースに、今年度の全体計画を昨年度末に考えました。まだまだ着手したばかりで、取り組みながら考えていきたいと思います。
これまで本校では、主に各学年の学校行事などの事前・事後学習等を総合的な学習の時間で実施してきました。それぞれ各学年の目標がありますので、その目標達成のために各行事をどのように計画的に取り組んでいくのかということを中心に考え、実施してきました。今回、育てたい生徒像を軸にして学年目標を再認識し、さらに各学年の山場を具体的に何にするかを話し合いました。つまり発表の場を設け、その場に向けた取組をすることで生徒の資質・能力を伸ばしていこうということです。
1年生はこれまで取り組んできたビブリオバトル――ビブリオバトルというのは、自分の読んだ本を友達に読みたくなるように紹介するゲーム、知的書評合戦です。2年生は台湾修学旅行に向けた取組、3年生は進路実現に向けた自己PRなどの自己表現でいこうということになりました。現在この考え方で進めているところです。
さて、3年間の事業指定の取組の成果と課題はまだしっかりと整理できていません。成果の見える化はできているかと問われたら、なかなか数字で表せるものはありません。あえて成果としての数字を挙げるとしますと、事業指定の終わり頃に取ったアンケートがありますので、それを少し御紹介いたします。
事業指定1年目と3年目の比較をしてみますとその変化が分かります。今、画面には生徒のものが載っていますが、生徒にアンケートで聞いたところ、そのような結果となりました。今までは非常に率が低かったのですけれども、これは3年目の終わり頃の結果なんですが、かなり目当ての明示、他者との協働、考えを深める授業ができるようになってきたことがわかります。これは教員が行った授業を生徒が評価しているわけですけれども、このような比較的高いパーセンテージを生徒が答えてくれました。
また、教員が授業参観で相互評価している中に、ここにあるようなよい点が書かれていたり、生徒自身の自己評価でもここにあるような実感が書かれていたりします。資質・能力の評価は、生徒自身が自分の成長を実感することと大きな関わりがあると思いますので、さらに学習意欲を高めるためにも評価の多様化が必要になっていると感じます。
うまくまとめられず一度に多くのことを急いでお話しさせていただきましたので、分かりにくい点も多々あったかと思いますが、御容赦いただければと思います。御清聴まことにありがとうございました。
【荒瀬主査】  中村校長先生、ありがとうございました。3年間のお取組を非常にコンパクトにお話しいただいたわけですが、委員の皆さんからの御質問を受けたいと思います。どなたからでも結構です。いつものように名札を立てていただければ御指名いたします。よろしくお願いします。
では、岩本委員、よろしくお願いします。
【岩本委員】 ちょっと質問で、最初簡単にですけど、大学や社会につながる学びを行うということで、大学との話があったんですが、社会につながる学びのところをもう少しどういった取組だったのかというのを教えていただけたらと思います。
【中村玉川高校校長】  社会とのつながりの取組例としましては、本校ではこれまで、2年生が滋賀県の長浜ドームで毎年開催されているBtoBの商談会、琵琶湖環境ビジネスメッセというのがあるんですけれども、それの会場に入らせていただいて、生徒が企業の方に製品や商品に関する質問をしたり、インタビューして様々なことを教えていただいたりという取組を行ってきています。半日程度ですけれども、事前学習もしながら、環境、消費、流通等、社会の仕組み、そして職業人の仕事に対する思いなども教えていただき、非常に気づきの多い学びとなっています。今学んでいることと将来の自分とをつなげて考えてほしいなというふうに願っています。
【荒瀬主査】  いいですか。
【岩本委員】  今言われたのは、教科とかどういう流れの中でそれが位置付けられて取り組まれたりされているんでしょうか。
【中村玉川高校校長】  今御紹介させていただいたのは、家庭科と総合学習の時間でカウントしています。
【荒瀬主査】  よろしいですか。
【岩本委員】  はい。
【荒瀬主査】  ほかにございませんでしょうか。
長塚委員、どうぞ。
【長塚委員】  御報告ありがとうございました。
生徒も先生も主体的に改善するための取組をしているということが非常に伝わる御報告でございましたが、学校としてはいわゆる目標準拠というような意味合いで、基礎学力というのをどのように捉えて、どういう目標だったということについて、もう少し何か具体的なことがあれば御説明いただければありがたいなということと、それから、学びの基礎診断が今年から始まったわけですが、いわばテストというのでしょうか、そういうツールの御利用の考えについては予定があるのかどうか、その2点についてお願いしたいと思います。
【中村玉川高校校長】  ありがとうございます。まず、基礎学力をどう捉えるかということなんですけれども、学力の捉え方としては、従来の知識・技能のみではなくて、資質・能力に関する部分も評価していかなければいけないということですので、従来の授業の形態にプラスして、今お話しさせていただいたような評価指標を基にした生徒の意欲であるとか、あるいは学びの過程みたいなものをできるだけ評価していこうということで取り組んできています。
なかなか目に見えるような形での評価というのは難しい面もあるんですが、できるだけ教員が意識して、そのような評価をしていこうということで共通理解をしてやってまいりました。
それから、学びの基礎診断ということでございますけれども、これにつきましては、生徒には診断結果を返却し、自分の課題を把握して、今後取り組んでいくよう指導しました。ただ、これを基に個別面談をするなどの取組までは実施できていません。
また、診断結果については、主に教員が教科内で分析、検討し、基礎学力定着のための授業改善につなげていけるように取り組んでいるところです。具体的には、問い方や問題を解いていく過程に着目して、より基礎学力が定着するために授業をどう進めていくべきかなどの授業改善のためのCの位置付けをしています。
また、定期考査は短期的な学力の定着を測るツールとして、学びの基礎診断は長期的な学力の定着を測るツールとして捉えて活用しているところです。
以上です。
【長塚委員】  ありがとうございました。
【荒瀬主査】  基礎診断は今年度も続けてらっしゃるということですか。
【中村玉川高校校長】  その予定です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
では、続いて、跡部委員、清水委員、角田委員、香山委員の順番でよろしくお願いいたします。
【跡部委員】  きょうはどうもありがとうございました。
高大連携のところに興味があるのですが、高大連携の流れの中で2チームに分かれた研修を行ったというお話でしたが、これは学年全体が2つに分かれてというイメージでしょうか。これが終わった後のシェアの仕方に課題がとおっしゃっていたと思うのですが、もしよろしかったらどんなところに課題がと思われたのか、あるいは今後どんなふうにそれを改善されるご予定なのか見通しみたいなものがおありでしたら伺えるとありがたいと思いました。
【中村玉川高校校長】  ありがとうございます。この取組は学年全体ということではなくて、希望生徒を募ってバス1台分程度、四十数名の生徒を引率していきました。その生徒たちを2グループに分けてワークをしてもらったのですが、そのときに学んだことのシェアは、行った者の中ではできたのですが、それを校内に帰ってきてからより多くの生徒に伝えたいなと、こんな学びをしたよということを伝えてほしいと思っていたのですが、なかなかそれができていないということで、先ほど課題として挙げさせていただきました。
ですから、日頃高校で授業を受けている生徒たちが大学へ行って新たな発見をしたというその気づきがあったので、それをみんなに伝えて、大学へ行くためにはこういう意識で行かないといけないよということをみんなに伝えてもらえたらありがたいなということがありました。今それもまだ課題として考えていかなければいけないなと思っているところです。
【荒瀬主査】  よろしいでしょうか。
【跡部委員】  はい。ありがとうございました。
【荒瀬主査】  では、清水委員、よろしくお願いします。
【清水委員】  参考になるすばらしい発表、ありがとうございました。
今、とじた資料の中を拝見させていただきましたが、13ページの一番下に調査研究事業検討会議というものが、外部の組織のような形で書かれているかと思いますが、17ページの中には玉川高校さんの中に調査研究事業検討会議というものが内部組織のようなイメージがあるんですけれども、この調査研究事業検討会議というものはどのような組織であるのか。また、指導、助言と書かれていますが、この中でどのような指導や助言があったのか、もし御提示できるものがあれば教えていただきたいなということが1点。
もう一つは、45分間の授業ということで、7時間ということで授業を組まれておられますが、これはもともと45分の授業でスタートされている学校なのか、この授業のために45分という、7時間というものを新たに作った状態で始められているのか、その点教えていただけるとありがたいんですけれども。
【中村玉川高校校長】   後の方からお答えさせていただきますと、当初より45分ということで実施をしております。
それで、先ほどの会議の構成なんですが、校内の教員で構成しておりますのは学力向上研究委員会というものです。またそれとは別に事業指導委員の有識者の先生方に年間3,4回来ていただいておりまして、そのときに県の教育委員会の指導主事等の先生方も来ていただき、当時の高校の授業改善等の取組状況と、今後の方向性みたいなものをお話しさせていただいて、そこで指導、助言を頂くような会議が調査研究事業検討会議というものです。そこで教えていただいたことや協議したことを学力向上研究委員会に持ち帰って、それを実践に反映するというふうな形で取り組んでまいりました。
【清水委員】  ありがとうございました。
【荒瀬主査】  よろしいですか。
では、角田委員、よろしくお願いします。
【角田委員】   すばらしいお取組の発表、どうもありがとうございました。
私、聞き逃しているかもしれないので、もう一度教えていただきたいんですけれども、DosとDON'Ts、よかった点とそれほどでなかった点というのがこのようにくっきりと整理されてすばらしいなと思ったんですが、Dosの方がすごく多くて、DON'Tsが少ないようです。そうなのですか?この取組を進めていくに当たって、先生方の大変さといいますか、働き方といいますか、そんな状況はどうだったのかをお聞きしたいです。また、学校教育目標を見直して再設定されたとのことですが、再設定の方法について教えてください。
以上です。
【中村玉川高校校長】  1点目なんですけれども、ここには載せていないですが、Don'Tsも数え上げれば切りがないほどございます。課題の方が多いといえば多いんですけど、このようなことに取り組んで、少しだけ成果が出ましたということを中心に発表させていただいたということです。
それから、教育目標なんですけれども、長年変えてこなかったということがございまして、今目の前にいる生徒と、普遍的に目指すことというのがありまして、私の中で、やっぱり今ここで教育目標を変えてみんなが一緒になって取り組んでいかなければいけないということを強く思いましたので、再設定ということをさせていただきました。
少し具体的ではないのですが、授業改革を進める上でどういう生徒に育てたいかということがございましたので、「自立して学べる人」ということを中心に私自身は考えました。ですから、そのような教育目標に再設定させていただいたということです。
【角田委員】  先生方の忙しさについて教えてください。
【中村玉川高校校長】  会議の数はかなりありましたので。会議は月1回以上あったり、研究授業もあったり、指導案の検討とかもありましたので、確かに忙しいというのはありました。けれども、生徒たちが変わっていく様子もありましたので、それ自体、特に何か不評であったとかいうことはなかったと思っています。とにかく会議が多い分だけ集約した形で、できるだけ短時間で終われるようには努力はしました。
【角田委員】  ありがとうございました。
【荒瀬主査】  よろしいですか。
では続いて、香山委員、お願いします。
【香山委員】  失礼いたします。このワーキンググループ3回目なんですが、1回、2回に共通して、あの人だから問題という言葉がありまして、いわゆる属人的な、あの人がいるからできるんだよねという問題を超えていかないといけないというふうな議論があったんですけれども、先生の学校の授業づくりBookというのは、そういう意味では、属人性を超えていくいいツールになっていくんだろうなと感じました。
さて、スライドの方にももちろんあるんですけれども、冊子の21ページの指定1年目の取組からという中で、評価問題(記述式)の作成・分析継続というのがございます。思考力・判断力・表現力を問う記述式問題を定期考査で出題していこうという取組をなさっていて、本校でも基礎的な知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力を付けるには、定期考査で――定期考査というのは授業でやったことをまた出して、生徒が覚えている、思考力・判断力・表現力とは違う記憶力を試すような問題を高等学校では多く出してきているんです――それを乗り越えていかないといけないという課題意識でやっているんですが、なかなかこの問題を作るのが大変なんですけども、先生のところで1年目からされていて、今、2、3年目と来て、どのあたりまで先生方が作ってこられてステップアップされてきたのかというあたりを教えていただきたいんですが。
【中村玉川高校校長】  どの教科にもお願いをしまして、思考力・判断力・表現力を測ってほしいと考えました。その結果は、定期テストごとに分析シートというのがあるんですけれども、それに入力しまして、その中の特に2クラス程度の対象クラスについて、その変化を追うこともやりました。
評価シートには出題の狙いとか評価基準とか、あるいは感想や評価問題の妥当性等の分析というのも入力をしてもらいました。
それから、思考力・判断力・表現力の素点とか無答率とかについても入力をして、それらを基に各教科内で分析をしてもらうということまではやっておりますが、それもどう改善していけばいいのかということはまだ多く課題がございまして、限られた時間の中で生徒たちが解答していく。どれぐらいの量でどういう質の問題を作ればいいのかというのは、今も頭を悩ませているところです。
【荒瀬主査】  よろしいですか。ありがとうございました。
では、佐藤委員、よろしくお願いいたします。
【佐藤委員】  きょうは御発表ありがとうございました。
先生方の授業改善の取組についてお尋ねしたいと思います。3人1組での相互授業見学は、実は本校でも実施しておりまして、そのことでお伺いいたします。アクティブ・ラーニングを授業の中で導入しなければいけないということで、今のお話の中では、若い先生の授業を見て年配の先生が刺激を受けたり、実技の科目の授業を見て座学の先生が影響を受けたりということでした。
埼玉県では10年ほど前から、東大のCoREFと教育委員会が連携をして、ジグソー法というアクティブ・ラーニングの一種の手法を県全体で学んでおります。初任者が全員、研修のときに学んでくるので、本校でもそういう手法を若い人が実践を示してベテランが学ぶ、ということで、3人1組の授業観察が非常に役に立っております。
玉川高校さんの授業改善の取組において、何か教員の研修であるとか、あるいは県全体として何か進めていらっしゃるアクティブ・ラーニングの手法の研修はあるのでしょうか。よろしくお願いします。
【中村玉川高校校長】  アクティブ・ラーニングの手法というのは、特にはよく分からないのですけれども、生徒の活動場面を効果的に各授業の中で採り入れていこうということで、ペア学習であるとかグループ学習であるとか、生徒が発表する場面を作ったりとか、あるいはレポートを書いたり実験したりということももちろんありますけれども、生徒が活動して考えるという場面をとにかく作っていこうということで、いろんな各教科での取組があると思います。
授業改善という意味では、年間2,3回教員研修を行いまして、有識者の先生方に御講演いただくなどして、新しい気づきがあったりして、それを各年代の教員がそれぞれ各教科で採り入れながら改善してきました。その改善した結果を協議したり共有したりというのは教科会議であり、学力向上研究委員会であったということで、やり方自体は別に、何かこういうやり方でということはないのですが、できるだけそういう活動場面を増やしていこうということでは取り組んでまいりました。
【佐藤委員】  ありがとうございます。
【荒瀬主査】  よろしいでしょうか。ありがとうございました。1年目のお取組というところで、学習指導要領をみんなで読み込んだとおっしゃったのは、とても重要なことだと思って伺いました。学習指導要領を読み込む中でいろんなことが見えてくるということが事実かと思いますので、非常にベーシックなお取組をなさったんだというふうに思いました。
時間があればまた、DON'Tsは切りがないとおっしゃったんですけれども、その中でも幾つかお聞かせいただければと思いましたし、あるいはまた分析シートという、そういう独自のものをお作りになっているようですので、そのあたりもまたお聞かせいただきたいとは思ったのですが、ちょっと後の時間もありますので、時間があればまたお尋ねするということにしたいと思います。中村先生、どうもありがとうございました。
【中村玉川高校校長】  どうもありがとうございました。
【荒瀬主査】  それでは、続きまして、福井県立若狭高等学校から御発表いただきたいと思います。先ほどと同様、20分程度で御発表いただきまして、その後、御質問を伺いますので、よろしくお願いしたいと思います。
若狭高等学校の中森校長先生、よろしくお願いいたします。
【中森若狭高校校長】  若狭高校校長の中森です。それでは、早速発表させていただきます。よろしくお願いいたします。教育目標の実現に向けた若狭高校の挑戦ということで資料を作ってまいりました。
本校は創立122年目、定時制普通科4クラス、全日制4学科26クラスがある地域の総合高校でございます。地域の中学生の約3分の2が入学してきまして、多様な生徒が在籍しています。生徒数は約900名ということです。
それで、ここにあります門ですが、これは順造門といいまして、小浜藩の藩校である順造館の正門を移籍しました。順造館からは杉田玄白であるとか梅田雲浜とかを輩出しております。また、近年では伊藤忠商事の小林栄三会長が本校の同窓会の関東支部の会長を務めていらっしゃいます。
まず、定時制についてですが、定時制は単位制の普通科です。在席は23名。少人数でアットホームな授業を展開しております。また、定時制はボランティア活動に非常に力を入れておりまして、25年以上にわたって、学校祭での収益金等を地域の社会福祉団体に車椅子等を購入して寄附するという活動をずっと続けております。また、全日制と合同で学校祭に向けた取組等も行っております。
全日制です。全日制は普通科、国際探究科、理数探究科、海洋科学科の4学科がございます。このうち海洋科学科につきましては、小浜水産高校と5年前に合併をして新しく設置をした学科でございます。本校の生徒は、医師を目指す生徒から、海洋科学科を出て地元で漁師として働く生徒まで、まさに多様な進路、多様な能力を持った生徒が学んでいる、そういう学校でございます。
近年の本校の取組を少し紹介させてください。まず、こちらにございますのは、今年、全国高校生SBP交流フェアで入賞しました普通科の生徒の取組でございます。この生徒は、5月に行われました地元の「内外海田烏 海のステージ」というイベントで、みずからテーマソングを作曲して、それらを大会のときに歌って地域を盛り上げたという活動をしました。普通科の探究活動もようやく地についてきた感があります。
続いて、右側の上と下ですが、これは本校が4年前から指定を受けておりますOECDイノベーションスクールネットワークの取組です。上の取組については、5月にカナダでOECDの2030高校生会議がございました。そこで本校の2年生の女子生徒が日本を代表して世界の高校生と会議をしてきたと。
下の方は、去る9月5日に行われましたG20教育関連イベントにおいて、本校の2年生の同じく生徒と、ここにおります渡邉教諭が発表してまいりました。G20に向けて本校の教育を発信したということになります。
それから、こちらですが、これは今年ではありませんが、昨年の10月に世界で初めて高校生が開発したサバの缶詰が宇宙日本食として認証を受けたときのものです。これは実は12年と書いてありますけれども、2007年から7年間、小浜水産高校で、その後、本校で5年間、生徒約300名が関わって研究開発を進めて、昨年認証を受けたと。
本校の教育目標について御紹介いたします。「異質のものに対する理解と寛容の精神」を養い、教養豊かな社会人の育成を目指すという、ちょっと変わった教育目標でございます。約70年この教育目標ですが、この教育目標は教員はもちろんですけれども、卒業生のほとんど全員が生涯覚えていて、絶対忘れることのない教育目標です。特に、この教養の部分が実は最近クローズアップされているかなと私は思っていまして、まさにSTEAM教育のAに当たる部分、Artsというのは単なる芸術だけではなくて、教養の側面も含むということで、本校の教育活動が下にありますけれども、授業はもちろんですが、学校行事、それから部活動などの特別活動、それら全てトータルとしてはカリキュラムデザインの中で、その中でさらにアートというものを意識していく取組の中でこの教育目標を達成していく、そうしたデザインをしております。
続きまして、本校は、実は3つの研究指定を受けております。1つ目はSSHでございます。今、2期3年目を迎えます。2期の研究開発としては、地域資源活用型探究学習による地域と世界を結ぶ科学技術人材の育成を目指しております。
2つ目は、先ほど申し上げましたOECDイノベーションスクールネットワーク2.0です。これは21世紀型に求められる資質・能力を涵養するための新しいモデルの開発です。特に本校では、カリキュラム開発、授業改革等、それから評価の3つを中心に行っております。SSHについては特に理系の勉強が中心になりますし、OECDについては普通科の文系、それからカリキュラム開発的な要素がありますので、授業改善も含めて学校全体のカリキュラムをデザインしていくというのがこのOECDの果たす役割です。
それから3つ目は、いわゆるAL研究、去年と今年、文科省の方からAL研究の指定を受けておりまして、ここでは国語科、家庭科、社会科といった文系分野についてのアクティブ・ラーニングの研究をしております。去る7月31日のALカリマネサミットにおきまして、一橋講堂で発表させていただきました。ありがとうございました。
トータルとして、共通の目標としまして、Society5.0で求められる資質・能力を育むためのカリキュラム開発、それをさらに個人ではなく組織としてどのように作っていくか、さらに、SSH等も含め、海外とどのようにつながっていくかというあたりを中心にこの3つの研究開発をしております。
よく言われるのは、3つもやって大変ではないんですかという質問を受けるんですけれども、これにつきましては、今申し上げましたように、まずそれぞれで担当する分野が少しずつ重なりながらも微妙に違っているというのと、あとは後ほど申しますけど、渡邉がやっておりますSSH・研究部が中心になってこれらをコントロールしておりまして、全体としてバランスよく取り組めるような仕組みづくりをしております。
では、続いて本校の課題に入っていきたいと思います。
まず、普通科の特色づくりということで、本校は探究科、海洋科学科といった専門学科と比べまして、やはり普通科の生徒の目的意識が低いという問題があります。進路希望も多様であると。そうした生徒に対してどのようなカリキュラムを開発していくと有効であるのかというのが1つの大きな課題です。
それからもう一つは、開かれた学校づくりということで、地域の学校ということもありますので、しかも田舎の学校ですので、できるだけ外部から多くの方を呼び込んで、また、できるだけ多くの生徒を外へ出させて、郊外の方を本校のカリキュラムにうまく巻き込んでもらえるような仕組みづくりを今、心掛けています。
普通科のクラス編成についてです。普通科1年生は、入学当時は習熟度に応じて、大きくAdvanceとStandardというクラス編成にしておりまして、Standardクラスの数学については少人数に分けて、より理解が進むようにしております。
2年生になりますと緩やかな進路希望と習熟度に応じてということで、理系と文系に分かれますので、それと進路希望に合わせて再度クラス分けをして、その1年間の学びの様子を見ながら3年次に微調整ということで、生徒の伸びとか希望進路に応じて再度クラスを分けていくという形をとっております。
普通科をどう変えていくのかということで、本校が今一番大事にしているのは、やはり何といっても授業を変えていくということです。授業を変えないで生徒を変えることはできないというのが、我々学校の教職員の一番の思いです。
特に、これについてはAL研究で得た知見がありますので御紹介しますと、具体的には、教科の本質を意識して目の前の生徒の状況に応じて、生きて働く学力を育む授業を行う、これが普通科改革の本丸ではないかというふうに考えております。こちらの方は、別資料、AL研究の方でも紹介させていただきました。家庭科と地歴・公民科。家庭科では、生徒たちが地元の食材を生かしたメニューを考案して、食材も自分たちで購入して調理実習を行ったものです。地歴・公民は、社会科の教員がグループを組んで学校設定科目「社会探究」の中で、生徒が地域活性化のアイデアを練り合うというような活動をしております。
先ほどの、学力をいかにして高めていくかということで、具体的にAL研究において3つの研究課題を設定しております。1つ目は、どんな力を目標として措定するのかということです。その授業の中で教科の本質を踏まえた上で、どんな力を目標として措定するのか。あくまでやはり目の前の生徒の状況に応じて、それに基づいて教科の本質を目標設定していくということです。
それから2つ目は、その目標に対してどのような教材や活動でその力を付けていくのかということです。具体的には、ここにありますけれども、まず、個人のワークがあって、認識から思考、全体でシェアする思考から表現へ、再度個人に戻っていく表現から省察へという、個人と集団の往還といいますか、そういうものが学ぶ上では非常に大事かなと。
そして、何より一番の課題は、どのように評価するのかということです。評価に関して一例を挙げますと、若狭高校の国語科の事例ですけれども、先ほどからもありましたが、定期考査で国語科では、基本的に初めて見る文章を読んで、指定された条件に基づいて意見文を書くというようなパフォーマンス評価を行っております。もちろん習ったことを全く出さないわけではないですけれども、ここに書いてあります、授業で扱った教材をそのまま考査として出題をして、暗記すれば点数が取れるというような考査の出題方法はとっていないというか、そういうふうに心掛けているということです。この評価をいかに変えていくのかというのが授業改革のポイントになると思います。とはいえ、これを個人のレベルで継続していくのは学校にとってはなかなか難しいので、学校全体で組織的に授業の向上を図るということをしております。
ここに具体的に3つ挙げました。1つ目の若手授業力向上塾についてです。この発足の経緯は、ちょうど2014年に新採用が5人やってきて、20代の若手教員が教員の3分の1を占めるようになりました。若手教員の授業力向上が喫緊の課題になったときに、若手とベテランの指導者を組み合わせて6つのグループを作りまして、まずは指導教員が恥をかくということで率先して授業を行って、その後若手教員が順次授業を行うと。授業を行ったら、その日のうちに30分間だけということでお菓子と飲み物等を出して、お互いに励まし合うような、認め合うような形で評価研究、授業評価を行っていきました。
このとき私、定時制の教頭として同じようにやりました。これが互見授業の振り返りになります。いろんな教員が交じってやっております。
それで、昨年までこうした取組をやってきて出された感想等についてなんですけれども、まず、若手の評価としては、他教員の授業、生徒との関係が見られるとか、ベテランの授業に対する技術を学べるとか、それから、他教科の授業を見ることで、やっぱり教科を超えた大切なものが学べるといったような感想。指導者側としても若手の教員がどこでつまずいているのか、悩んでいるのかということも知れますし、また、ICT等の技術が非常に卓越していますので、そういう学ぶ面もあると。
ただ、課題として、これを継続してやっていくのはなかなか難しい。やっぱり負担が大きいという問題があったのと、若手とベテランはいいけど、中堅が抜けているのではないかということがあって、今年は全教員を絡めて、全教員で、それから実習助手も含めまして16のグループを作りました。1か月間の期間を置いて互見授業を行いました。
感想として、例えば、実習教員が言うのは、私は教科の細かいこと分からないんだけど、保護者の視点で授業を見ていますと。私が親だったらこの授業どう思うかなと、そういう評価をします。あるいは、私は生徒と同じ気持ちで授業を受けて、生徒だったらここが分かるとか分からないとか、そういうふうに授業を見るようにして評価をしていますという話をしています。
続いて、各教科の教科会の充実です。教科会は連絡調整に終わりがちなところを、そうではなくて、教科会の中で教員の意識を高めていく、授業力を高めていくという取組をしています。例えば理科では、基礎科目において共通の教材を作って、それを一緒に実施をして、その生徒の反応を見ながらさらに教材を変えていくという工夫。数学科では、毎回1人の教員が大学入試問題等を持ってきて、具体的にその問題の解法であるとか、それをどういうふうに解説していくといいのかとか、そういうことを、具体的にはスキルのレベルのやりとりをすると。英語科では2年連続でディベートの全国大会に出場しておりまして、英語科全体でディベートの能力をどう高めていくのかということも研究をしております。あとは、毎年やっている公開授業や研究会に多くの方をお招きして勉強するということです。
2点目に入ります。開かれた学校づくりということで、本校では先ほど申し上げたように、多くの方を呼び込んで生徒もどんどん出ていって、皆さんが本校のカリキュラムに参画してくださるような組織づくりを進めております。同窓生、保護者、地域の老人の方、それから行政の方、大学研究者、民間企業、ありとあらゆる方に来てもらうようにしております。
例えば、これも国語科になりますけれども、国語科の取組では、短歌を作ろうという単元で、地域の短歌の同人の方をお招きして直接指導してもらう。生徒が作った短歌をまた授業研究会のときに見に来てくださった先生方に公表して指導いただくという場面とか、探究においては、マイクロプラスチックというのは日本だけの問題じゃなく、世界の話題の中心なので、本校がこの汚染に関する台湾やアメリカの生徒を招いての国際フォーラムを今年7月に京都大学で開催しました。その場で成果研究発表会等を行う。あるいは2018年、昨年度、フィリピンや台湾の高校と研究の連携協定を結びました。
また、先ほどちらっと触れました行事ですけれども、本校の学校祭は、毎年土日を完全一般公開としておりまして、今年も1,668名の地域の方がお見えになりました。何をするのかというと、クラス企画ということで、各クラスでミニ探究的なものを作って、それを来てくださった地域の方にプレゼンテーションします。1人につき10分ぐらいかかるので、廊下の前にはたくさんの人が並んで、さながらちょっとしたテーマパークのような様相を呈していまして、そこで定時制の生徒も発表するんですけれども、定時制の生徒は不登校の生徒が多くて、なかなか自分を表現できない、ふだんほとんどしゃべれない生徒たちが、一般の来場された方には生き生きと大きな声で発表するんです。それを見た定時制の教員が、この子がこんなふうにしゃべるなんて思ってもみなかったということで、地域の方をお招きして、その場で発表の機会を与える、プレゼンテーションする機会を与えるというのが生徒の変容には大きな力があるということを改めて認識した次第です。
特に探究に関して言いますと、本校が探究を3年間通して育成したい力としましては、ここに書いてあります、地域の多様な資源から課題を設定する能力を付けたいということが前提にあります。その上で、その課題について様々な地域の方等と協働しながら、その課題を粘り強く解決する能力を身に付けていきたい。先ほど御紹介しましたサバ缶の研究は12年間にわたって継続研究したものです。まさにこれなんかはその最たるものではないか。また、マイクロプラスチックなんかもそうではないかと思っております。
これが本校の3年間の学びを模式化したものです。特に課題設定能力に関する評価、5つ注目しているんですけれども、そこは何かというと、どうしてその課題を設定したのか、その課題は科学的に解決は可能なのか、本当に課題のことを分かって課題を設定しているのか、そして、その課題はSDGs、持続可能な開発に役立つものなのか、最後、責任のある主体性を持って取り組もうとしているのかということで、まさにこのあたりはOECDによるエージェンシー、責任を持って主体的に取り組む資質・能力を養う、そういうものにのっとった評価を設定しております。
本校の課題研究は全学科で3年間行うんですけれども、普通科につきましては1年のときに探究1、2年で探究2、3年で探究3、今年初めて探究3までやることができました。探究3のまとめとしましては、これまでの2年間の探究活動のまとめを英語の論文で表現をして、それをプレゼンテーションで発表するというような形で探究3のまとめを行いました。
探究については、特に課題設定に関しては生徒だけでは到底できないことが多いので、地域の方をまずお招きして、今年で5年目になります定期的なミーティングをやります。地域の4つの市町とミーティングを行っております。
なぜこれを始めたのかというと、本校は実は2016年度から始めて5年目なんですけど、ちょっとここに書いてあるんですが、まさに危機意識から生まれたものです。それはどういうことかというと、まず、勉強が実際の社会と全く関連付けてできていないという問題、それから、自分自身で課題を発見したり解決する能力はほとんど育っていないという問題、そして最後に、地域のことを全く知らないまま、9割近くの生徒が県外に出ていくという問題、こうした問題に直面して、何とか地域の方にお願いして生徒を育てていきたいということで始まりました。
今、様々な取組をしていますけれども、その結果として現時点で、やはり地域の方と社会課題を解決していくことで、今言いました、生きて働く問題解決力を育成できつつあるのではないか。それからもう一つは、地域をより深く知ることになるので、地域への愛着は間違いなく強まっています。そして様々な職種の方と触れ合えますので、キャリアに関する意識も向上しております。ということで、市町の方には定期的にサポートしていただいておりますし、また、それ以外の同窓生の方とか専門家の方もお招きしております。
この探究活動の中で特に大事なのは、どのタイミングでどういう方に来ていただくのか、タイミングと招く方が非常に大事になってくると思います。本校は大学生、大学院生にも来てもらっていますが、特に探究の初期の段階で大学生や大学院生をお招きすると、生徒が、お兄さん、お姉さんの感覚で気軽に相談できて、生徒目線での探究が少し深まっていくと。専門家の方には、もう少し探究が回ってきた段階で、より高度な専門的な指導、助言を頂くというような形をとっております。
これもそうです。民間企業の方、教育関係者の方。どのタイミングでどなたをお招きするかということがポイントです。
でも、お招きするばかりではおもしろくないということで、先ほど言いました、どんどん生徒を外に出すようにもしております。こちらにありますのは、おおい町の地域政策コンテストで審査員として出ていった事例、それから、先ほどのSBPの地域の行事への参加、海外へ研修に出ていく、それから、日本地球惑星科学連合の高校生セッションにて昨年度、優秀賞を頂きました。マイプロジェクトアワードでも決勝に2組が進出したということで、自分たちのやっている探究をどんどん発信して、それを皆さんに評価していただく、それによって、さらに生徒の探究への意欲、学習への意欲が高まるという仕組みづくりをしています。
定時制の生徒もどんどん出ていきます。定時制では、託児所での保育体験とか、福祉施設の方の買い物ボランティア、買い物のお手伝いをしたりということで、社会性を育み、自尊感情を培う、そういうふうにして定時制の生徒を育てています。
これは先ほどのSBPを取った生徒の入賞したものです。
それから、今年の2月には、シンガポールから高校生を招いて、本校の生徒と協働で地元の海岸でマイクロプラスチックを採取しまして、その分別方法とか、ここからの研究方法について意見交換をしました。
ということで、こうした多様な取組をしているんですけれども、その中心となりますのが、組織としてSSH・研究部というのがございます。その部長は、今ここにおります渡邉がしておりますけれども、SSH・研究部がそれぞれ各学年の探究主任を決めて、各学年、各教科等と連携しながら学校として探究学習を進めていっているという状況です。
まさにSSHは本校の心臓とも言える部分で、学校内に血液を送り出して、学校内からいろんな意見を吸い上げて、トップダウンではなくボトムアップで、先生方の意見とかつらさとか悩みとか聞きながら、よりよい探究を目指していく、そういう役割、教員としてのコミュニティを作っている、そういう部署です。
昨年から新たに、データに基づくカリキュラム評価を開始しました。質的なアプローチと量的なアプローチという2つの側面から評価をしております。質的なアプローチとしては、教師とか生徒の振り返り、それから、卒業生のインタビュー、量的なアプローチとしては、本校独自の質問紙を作成して、それをデータ収集して分析をすると。これは横浜国立大学、それから内田洋行さんと連携して進めさせていただいております。
質的アプローチの例を1つ挙げますと、本校の2年生の生徒、最初は海外の子とコミュニケーションできればいいだろうという気持ちだったのが、データとか目的を共有していく中で、やはりしっかりした行動を起こさないといけないと気持ちが変わってきて、さらに、やっぱりきちっと取り組んでいく、責任を持って取り組んでいくことが大事だというふうに意識がどんどん変わっていっております。台湾の生徒の変容を見ますと、自分ができることを行うという意識でやったのが、例えば交流相手とのコミュニケーションをすることを通して、世界の人々に感心を持ってほしいというふうに意識が変わってきています。そういう分析結果も出てきます。
あと、量的なアプローチにつきまして、今まさにこれはやっている段階なんですけれども、1つだけ少し見えてきたのは、生徒が課題を設定するときに、社会に貢献する課題を設定するのか、それとも自分がやりたい課題を設定するのかという、そのどちらかに振れるというわけではなく、生徒の中では、社会貢献もしたいけれども自分のやりたいこともやりたい。当たり前かもしれないですけれども、そういうことを考えながら生徒は課題を設定していっているという事実も次第に見えてまいりました。
そういう探究活動をして5年目ぐらいになるんですけれども、今その成果が徐々に現れております。今春のAOと推薦を利用した大学入試の結果ですが、国際探究科においては、難関大等100%合格をしました。全員推薦・AO合格しました。また、理数探究科につきましても難関大等に多数合格をしました。京都大と書いてあります生徒は10月まで探究学習をやっていた生徒で、その後、京都大学の特色選抜を受けて合格をした。あと、普通科においても、例年なかなか受からないようなところへも多数合格をし始めている。海洋科学科においても、海洋以外の分野にも進学実績が出始めているということで、今まさに5年目を迎えて、ようやく取組が成果として現れてきた時期であります。
最後になりますけれども、私が何をしているのかというと、多様な取組を、やはり教員自身が実は全員が分かっていない、あるいは生徒も余り分かっていない、もちろん地域の方も分かっていないということで、まず私としては先生方に、本校が今こういう立ち位置でこういうことをしているということを生徒にも話をします。話したことは全てホームページで上げていまして、4月から23本ほど校長だよりというのを上げて、地域の人にも本校の取組を紹介しております。そうすると、読んでいてよく分かるというお話も頂きますので、そういう形で広報もしているということです。
以上、発表を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。それでは、ただいまの御発表につきまして御質問を。
山口委員、どうぞ。
【山口委員】  大変すばらしい発表、ありがとうございました。たくさんの取組をされているので、たくさん聞きたいことがあるんですけれども、私は1つだけ絞って順番にお願いいたします。
今、御発表にありました普通科改革の本丸は授業改革という、ここが非常に私は印象に残りまして、授業の中身のところで先生御指摘されていました若狭高校の危機意識のところで、各教科の学習で学んだことが実社会と関連付けて考えられていないというところから、例えば定期考査で、国語でしたでしょうか、授業でやっている教材をただ行うだけではなくてということのお話を聞きました。大変参考になりました。
これ、ほかの教科であったり、普通科の中でも4学科あると思うんですけれども、全てで実施されているのかとか、又は定時制でもそういうことはやれるのかとか、もしお聞かせいただけたら、よろしくお願いいたします。
以上です。
【中森若狭高校校長】  ありがとうございます。この形のテストとしては、まず国語科は完全にやっていますと。英語科でもそれをやり始めました。あと、どうしても一番難しいのは社会科がちょっと難しいんですけれども、社会科の中でも少しずつ授業の中で、必ず自分で記述してまとめる時間を振り返りで持つとか、これは全体としての取組にはなっていないんですけど、一部の教員が定期考査一発で測るのではなくて、単元が終わるごとにきちっと記述をさせて、それを評価しているという事例が次第に広がっております。
定時制につきましては、そもそも基礎学力を付けるという部分が非常に大きいんですけれども、特に数学科の教員なんかは、きちっと授業でやったことを振り返りでしっかり確認すると、不登校だった生徒なんですけれども、それをしっかり学んだことを自分でもう一度学び直して、違う問題で解けるときにすごく喜びがあるということで、全日制のときには得られなかった教える喜びを実感しているというのが、ついこの間、面談したときの数学の教員の話でした。ですから、定時制においてもこれに近い形の学びを実践しているということです。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。よろしいでしょうか。全日制は全部同じようにやっていらっしゃるということですね。
【中森若狭高校校長】  そうです。ここは少なくともそうですし、英語も始めました。他教科も少しずつ今始めております。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
それでは、清水委員、佐藤委員、香山委員、鍛治田委員、岩本委員、内堀委員の順番でお願いいたします。
【清水委員】  それでは、よろしくお願いします。
本当に多様な御発表ありがとうございました。非常に勉強になりました。
2点ほど伺いたいと思います。1点は、本当に様々な取組をされていて、AL研究というキーワードも挙がっていたかなと思いますが、こういったAL研究の、例えば学校としての手法的なこと、こういったものが学校として手法を取り決めてやっておられるのか、各教科とか各教員に任せてやられているのかどうかということが1点。
もう一つは、先ほども外部の方を招くにはタイミングというものが非常に大切だというお話もいただきましたが、そういったタイミングというのは、先生方の嗅覚が非常に発達していかないと、このタイミングで呼べば効果が生まれるんじゃないかなということをいろいろ考えながらタイミングを計っておられるのかと思いますが、そういったところの教員の研修的なことであるとか、こういった参考になることがあれば教えていただきたいなと思います。どうぞよろしくお願いします。
【中森若狭高校校長】  まず、ALにつきましてですが、もちろんALは学校として、先ほど申し上げましたように、まずSSH・研究部が中心となってAL研究のデザインをしております。具体的には、先ほど申し上げたように、SSHが理系教科であるのに対して、ALでは文系教科に、さらに探究学習と親和性の高い家庭科。しかも家庭科は各学校に1人ぐらいしか教員がいなくて、非常に孤独な教科でもあるんです。家庭科の学びというのも非常に大事にしたいという思いもありまして、学校として家庭科をみんなでしっかりやっていくと。家庭科の学びはほかの教科にもつながっていくというふうに考えております。
また、社会科につきましては、どうしても社会科というのは、高校の教員は専門性が高くなって、一人一人が自分の授業を作り上げていく傾向がありますけれども、そうではなくて、科として協働して生徒を育てていくという、そういう協力体制を作るという意味と、それから探究においては、社会探究というのを設定して、地域の課題に社会科としてしっかり取り組んでいくということが1つ大事であるとして、学校として設定しております。
 国語科につきましては、今申し上げたみたいに、渡邉を中心として、学校のリーダーとして、学校全体のほかの教科を引っ張っていくという意味合いもありまして設定しているということで、学校全体として設定して、各教科の取組については、最初に申し上げました各教科の本質というものを、まず学習指導要領のそこをしっかり踏まえた上で、本校の生徒の実情に応じてどういう力を付けていくのかという、そこを絶対大事にして、各教科は取組をしていただいております。
それから2点目、SSHの探究についてですが、これもSSH、1期目の当初は、やはり教員がリードするような形で探究のテーマを設定する傾向もありました。そうすると生徒はやっぱりおもしろくないんです。与えられたものに対しては熱意が出てこないと。じゃあということで、生徒に自主的に選ばせたらどうか、決めさせたらどうか。そうすると、今度はテーマが拡散してしまったり、先ほど申し上げたような科学的なこととか、持続可能性とか、いろんな意味で探究のテーマ自体に問題が出てくる。じゃあどうするのかというと、地域課題にしっかり目を向けさせるということで、まず地域の現状にしっかり目を向ける上での地域の方からお話をいただいて、そういう中で生徒が自分自身でやりたいテーマを考えていく、地域のためになるようなテーマを考えていく、そういう中で回し始めたところ、いきなり専門家に来ていただいて、これはこうですねと言われると、ぺしゃんとなってしまいますので、そうではなくて、最初に身近な大学生とか大学院生にアドバイスをもらって、自分自身の探究として活動を回していく。ある程度充実してきたときに、さっき言いましたように専門の方に来ていただいてアドバイスを頂くことで、さらに探究の深度が深まる。そういうふうにして、ようやく5年目ぐらいにして探究がうまく回り出したというところです。
しかも、その探究が1回だけではなくて、途中で失敗する場合もありますので、そういう場合はもう一度探究を設定し直して、テーマを設定しまして、生徒は探究を回していく、そういう活動をしております。
これでよろしいでしょうか。
【荒瀬主査】  今のお答えですけれども、要は、そういうことに取り組んでいかれる中で先生方が学んでいかれたというふうに理解すればいいんでしょうか。
【中森若狭高校校長】  はい。すいません、言葉足らずで。そういうことでございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。
では、佐藤委員、よろしくお願いします。
【佐藤委員】  御発表ありがとうございました。
私も地域との連携のところを教えていただきたいなと思っております。伝統校ということもあって、地域との連携を時間をかけて深めていらっしゃったという印象がありますが、例えば、コミュニティスクールのような組織とか制度とかを活用していらっしゃるということはありますでしょうか。また、各教科の先生方が長年にわたって地域との関係を深めてきた、強化してきたというお話ですが、例えば学校の中あるいは外に、コーディネーター的な組織が何かおありでしたら教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【中森若狭高校校長】  コミュニティスクールのような組織や制度はございませんので、学校独自に地域の皆様と連携して進めています。
それから、学校の中では、先ほど申しましたSSH・研究部がまず中心になってコーディネーター的な役割は果たしますが、そもそも探究活動は校長を除く教頭以下、全教員が担当しておりまして、全ての教員が何らかの生徒の探究活動をやっております。ですから、そもそも専門的なものを見られるという教員はごく一部でして、ほとんどが自分の知らない部分を探究するということで、探究活動に関しては教員がリードするというのではなくて、どちらかというと今申し上げたみたいに、地域の方とか外部の方からもいろんなことを教えていただく中で生徒自身が設定していくと。教員も生徒と一緒に学んでいくと、そういうふうに御理解いただければいいかと思います。ですから、特定の教員に探究活動によって大きな負荷が掛かるということではなくて、むしろ専門的な知識ではなくても生徒と一緒に学んでいく、そこで教員の成長もあると。
あと、コーディネーターとしてのSSHですけれども、かといって教員任せにするわけにはいかないので、ちょうど毎週水曜日にロングホームの時間がありまして、担任は生徒指導に行きますけれども、副担任とかそれ以外の先生方をその時間、探究の協議の時間に充てていまして、授業時間内にちゃんと探究のこれから先の進め方等も意識の共有をして進めていっているという状況です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
それでは、香山委員、お願いします。
【香山委員】  失礼いたします。さっきもあの人だから問題という言葉を出したんですが、若狭高校のSSH・研究部、今ちょうどスライドが開かれていますけれども、この心臓部を中心とする仕組み、組織というのは属人性を超えていく有効な手だてだなというふうに思う一方で、実はあの人だから問題の議論の中で、たしか牧田委員だったでしょうか、いやいや、あの人をいっぱいつくれよと、それもいいんじゃないかという発言がたしかあって、なるほどと思ったんですが、若手塾とかそういう仕組みも使いながら、一人一人の授業力であるとか指導力を上げていくという、それもやっていらっしゃって、包括的に取り組んでいらっしゃるなというので感銘を受けました。
その中で一、二点質問したいんですけれども、社会に開かれた教育課程という概念、地域との連携・協働とかといったような意味があるわけなんですが、一方で先生の学校でもやられています、いわゆる教科において社会のリアルな課題に生徒を向き合わせるといったことが求められていると思うんですけれども、その観点から、教科の取組としてテストの中で暗記力を試す問題ではなくて、初見の問題で、かつ社会、日常生活で必要なそういう力を試すといいますか、学んだ教科の見方・考え方を活用していく、あるいは知識を活用していく、そういう課題を学力テストで出していくといった取組がなされていると思うんですが、それ以外も、例えば教科の様々な単元でそういう社会に開かれた、社会のリアルな課題を扱うようなことを意識的にやられているような実践がおありなのかどうか。大学入学共通テストでもそういった問題を一、二問は出していこうという方針が全国学力・学習状況調査や大学入学共通テストなどで貫かれていると思うんですけれども、そういった方向で学習材の開発をされているのかどうかというあたりをもう少しお聞かせください。
それから、評価につきましても、ペーパーテストの一部にパフォーマンス課題を入れるというだけではなくて、ペーパーテストの評価とはまた別に、パフォーマンス課題で一定程度の総括的な評価に持っていくといったような実践がなされているのかどうか、そのあたりお聞かせいただけたらと思うんですが。
【中森若狭高校校長】  まず1点目の、教科において実際的な社会の問題、課題等取り上げた実践をしているのかということにつきましては、まだ本校全体としてそういう取組はできていないというのが現実です。
ただ、科目によっては、特にここにいる渡邉なんかは地域の課題等に目を向けて、国語であれば、地域の出した、先ほどの短歌であれば、山川登美子という作家がいますので、そういう人に目を向けて、実際に地域の偉人等を取り上げていくとか。
あとは、これは教科とはちょっと離れるかもしれないんですけれども、実は福井県の教育委員会で、福井の100人の偉人を取り上げた教育の冊子を作っていまして、それについては中学校のときから3年間でまず学んで、高校に来ても学ぶということで、社会科においては地域の偉人に学んで地域のよさを見詰め直すというような、そういう地域に基づいた授業に取り組んでおります。
ただ、今、先生がおっしゃいましたように、まさに地域の課題に教科として取り上げていくというのはできていないんですけれども、実は教科で大事なのは、地域のことを取り上げることでなくて、さっきから申し上げていますように、学習指導要領にのっとって、教科の本質を見詰めて、今の生徒にどういう力を付けていくのかということが何より大事ではないかなというところがございます。まして探究で十分地域のことに入っていきますので、あえてそこには踏み込まないというふうに申し上げてもいいかもしれないです。
あとは、探究での学びは教科に生きていないのかというとそうではなくて、探究的な手法を実は教科の授業でも取り入れています。各生徒が各教科の授業の中でみずから課題を設定して、自分ができていないこと、自分が学びたいこと、それについてみずから問いを立てて、それを探究していくという、教科の中で探究的な学びは入れております。それが1点目になってくると。
もう1点は、すいません、しゃべっているうちに。
【香山委員】  総括的評価のところです。ペーパーテストだけじゃなくてというあたりです。
【中森若狭高校校長】  これも各教科もちろんやっておりまして、例えば国語でいうと「こころ」なんかを2年生でやりますけれども、論文を書かせまして、それについては中間テストをやらないで論文をもって評価に代えるとか、今申し上げました、先ほどのALで言うと、家庭科なんかも単にペーパーテストだけじゃなくて、まさに地域の食材を使った調理実習等をきちっと評価をしていくとか、そういうことで、もちろんペーパー以外の提出物とパフォーマンス評価も取り入れております。
【荒瀬主査】  香山委員の御質問は、パフォーマンス課題でもって総括的評価をしているのかという御質問ではなかったんですか。評価の中に組み入れているのは、これは当然そうだと思うんですけれども、そうではなくて、もう一歩踏み込んで、いわゆるテストの評価ではなくて、パフォーマンス評価でもって総括的評価をしているのかどうかという御質問のように受け取ったんですが、そうではないんですか。
【香山委員】  いや、そうなんですが、今お話をお聞きしながら、恐らくされているんだろうなというふうに私は受け取りました。
【荒瀬主査】  いや、今のはなさっていませんよね。それも1つの参考として評価をなさっているわけですよね。
【中森若狭高校校長】  先ほど例として挙げました、「こころ」を論文として書かせるということは、それ自体を総括的な評価として行っておりますので、実施しているということになります。
【荒瀬主査】  あっ、そうなんですか。
【中森若狭高校校長】  はい。そういうふうにお考えいただければと思います。
【荒瀬主査】  それは大変失礼いたしました。総括的評価をその形でしていらっしゃるというわけですね。分かりました。ありがとうございます。
それでは、鍛治田委員、お願いします。
【鍛治田委員】  すばらしい発表をありがとうございました。
全ての活動が教育目標に沿ったもので、皆さんがこちらに向かってされていると思うんですけれども、大変これは興味がございます。「異質のものに対する理解」ということで、この異質というのが物なのか人なのか、具体的にどういうものを指されていらっしゃるかお尋ねしたいと思いました。
また、地域の課題という点で、私たちは地域の課題といいますと、貧困や子供、外国人、家族といった人間相手の課題をいつも学校としてはしていたんですけれども、こういうことをされているんだなと本当に興味深く思いました。新しい先生方が多いということや、また異動してこられた先生方が、この若手授業力向上塾で十分に育っていらっしゃるかどうか、そのあたりをお尋ねしたいと思いました。よろしくお願いします。
【中森若狭高校校長】  本校の教育目標に御理解いただいてありがとうございます。私も大好きな目標でして、異質のものというのは、物ではなく人を表していると私は理解しております。これがまず1点目です。特にそれが生徒の中で落とし込まれるのは、実は本校の行事を全て縦割りで行っていまして、1年生から3年生が縦のグループ、8色でチームを組んで、そういう中で学年も縦になりますし、学科も交ざり合う、異学科、異学年が1つの集団として全ての行事を行っていきますので、そういう中で本校の教育目標、まず生徒の中に実体験として、下級生とか上級生の付き合い方とか考え方とか、いろんなことを実体験として学んでいくということがございます。これはちょっと蛇足になりました。
それから、本校の特徴は、若手の教員が思ったことを言うという風土があります。上の教員が言うことをはいはいと従うのではなくて、先ほど申した教科会等においても、若手の教員が、自分はこれについてはこう思うんだというようなことで、しっかり自分の意見を述べられるような、そういうシステムというか環境づくりをしております。
さっきちょっとありましたけれども、会議をただ単に物を決めるだけにするのではなくて、お互いの意見を聞き合う、お互いの悩みを聞き合う、そうやってお互いに1人の教師として若狭高校の生徒を育てたいという、その思いを聞き合って、そこから教育を始めていくというのがありますので、若手の教員が生き生きと活動できる学校だと思っています。
あとは、チャンスも与えています。若手の先生方中心にアメリカ等の研修にも行ってもらって、そこで、いかに探究学習で生徒を育てているのかという教員の立場からの研究発表等も行っていますし、まさに今来た先生、去年来た先生、そうした先生方が本校の中核教員になって働いてもらわないと生徒が育っていかないので、若手の教員こそ本当に育てていきたいと思って力を入れている部分です。
【荒瀬主査】  よろしいでしょうか。
アメリカ研修というのは、独自に、先生だけを行かせる研修ですか。
【中森若狭高校校長】  いや、これはSSHの研修で。
【荒瀬主査】  その付き添いという。
【中森若狭高校校長】  それもありますし、それ以外にOECDの世界授業研究のところで本校の教員が行く機会を与えていただきまして、そこで発表させていただきました。
【荒瀬主査】  分かりました。ありがとうございます。
それでは、岩本委員、お願いします。
【岩本委員】  ありがとうございました。非常に刺激を受ける発表でした。
ちょっと1つ深く聞かせていただけたらなと思うのが、今回、探究を通して育成したい能力というところで、課題設定能力というのを学校として挙げられていて、それの中でということではないですが、教育目標の実現に向けた若狭高校の課題というので2つ挙げられていまして、1つ目が普通科、2つ目が開かれた学校づくりというところを大きく2つ出していたかと思います。
質問はこの2つ目の方なんですけれども、この開かれた学校づくりという、そこの課題の設定の仕方が、カリキュラムに巻き込んでいくシステムの開発というふうになっていて、これが非常におもしろいなと思って。普通、校外の方を巻き込んでいくカリキュラムの開発みたいな形だったらよくありそうだけど、カリキュラムに巻き込んでいくシステムの開発だというふうに設定を書かれていて、ここら辺のシステムについて少しお伺いできたらなと思います。
その背景としては、地域連携とか社会との連携というのをやればやるほど教員は忙しくなっていくと。探究も生徒たちが自発的に動けば動くほど、特に呼び込むだけではなくて、今回、生徒を地域に出すみたいなことも書かれていて、生徒たちが地域に飛び出せば飛び出すほど、その時間は大体放課後とか土日になったりとか、これに教職員が付き合っていくということで、こういった動きが主体的に動きが起きれば起きるほど教員の多忙度というのが高まる傾向があると。多忙感は感じないかもしれないですけれども。
そうした中で、今の教員の働き方改革というような大きい流れもある中で、こうした探究とか地域連携とか、地域に生徒たちが飛び出していくというのを、持続可能な形で、学校としてちゃんとやっていくためのシステムというのは一体どんなものなんだろうかというところで、工夫されていることとか、若しくは、今後こういう形でやっていこうと思っているといった、そこら辺のシステムの話をお伺いできたらと思います。
【荒瀬主査】  申し訳ありません。大変興味深いお話なんですけれども、相当今、時間を取っておりまして、大変申し訳ありませんが、端的にお答えいただけると非常にありがたいです。御発表いただいたにもかかわらずこんな失礼なことを申し上げますけれども。
【中森若狭高校校長】  システムで言いますとまさにそうで、教員が代わっても学校としてのシステムを維持して探究を回していくということです。そのために、今申し上げたようにSSH・研究部がコーディネート等を行ってやっていきます。
それから、探究は大きく取り上げていますけれども、実は週に1時間しかやっていません。ですから、探究ばかりやっているわけではなくて、あくまで教科の授業を中心にして、探究は週1時間の取組としてやっていると。さらに会議等は授業時間内等を活用しているということで御理解いただけたらと思います。
【荒瀬主査】  では、御質問のあった外に出られるとかいったようなことの時間というのはほとんどないということでよろしいんでしょうか。
【中森若狭高校校長】  一部あると思いますけど、基本的には、生徒が直接アポイントを取って、生徒が直接出ていくことも多いですので、決して多くの教員が外に出ていくというわけではございません。
【荒瀬主査】  特に引率などは必要が。
【中森若狭高校校長】  ほとんどそれはございません。探究の時間内の活動の際に引率しています。
【荒瀬主査】  分かりました。ありがとうございました。
それでは、内堀先生、お願いします。
【内堀委員】  ありがとうございました。興味深くまた楽しく聞かせていただきました。すばらしい実践だというふうに受け止めました。
質問を端的に申し上げます。2つお願いします。1つは、授業と探究活動のリンケージとか、外部との連携とか、本当によくできた仕組みだと思うんですけれども、お聞きして、ここはどうなのかなと思ったのは、中学から3分の2ぐらいの層の子たちが入ってくるといったときに、本当にすばらしい仕組みなんですけれども、こういう形で本当に全部の生徒ができているんだろうかと正直思いました。もしできているとすれば、どのような要因というか、どのような理由によって、こういった探究的な学びですとか、あるいは例えば授業で、比較的中学までの学力が身に付いていない生徒たちに対しては、まずは知識・技能を身に付けさせてみたいな発想になって、ちょっと言い過ぎ覚悟で言うと、知識ばかりを問うつまらない試験問題を作ってしまう傾向があると思うんですけど、それを、授業で学んでいないことについてテストを行い評価するという部分ですとか、その辺が成立する理由は何なのかなというのが1点です。
それから2点目は、県立の高校でここまでできると、他の学校への波及効果はどうなんでしょうかということです。特に中学から3分の2の生徒が入ってくるような学校でできていることが周囲に広がっていけば、ここをモデルとして相当に全県の高校が変わっていくのではないかと考えるんですが、その辺の波及効果とか、県全体の動きだとか、そんなのはどうなんでしょうか。2点お願いします。
【中森若狭高校校長】  普通科の改革につきましては、取り組んできて、ようやく少しずつ形が見えてきた状況で、全ての生徒が同じように初見の問題にきちんと対応できるかというと、なかなか難しいというのが実情としてあります。中学校までの基礎学力が十分付いていない子も入ってきていますので、そこは本当に教科の本質的な学習と探究的な学び、初見の問題等を含めて考えていかなくてはいけないと思っております。
それから、波及効果につきましては、OECDにつきましては県の指定も受けておりまして、全体で6校受けまして、まずそこで意見交換、交流しながら波及を目指しておりますし、いろんな形で県の教育委員会と連携して、県内の各校に波及をしているところであります。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。本当に時間を制約しまして申し訳ありませんでした。
今のお話を伺っていましても、先ほどの玉川高校のお話もそうですけど、難しいからしないのではなくて、難しいことだけれどもやっていこうとお取組になっていらっしゃるということですね。僭越ながら、2校に共通するところは、あくまでも学校が主体になってやっていらっしゃるということではないかなと思います。誰かに言われてやるということでなく、主体的になさっているということが非常に印象的でありました。
玉川高校も若狭高校もこれから是非、このお取組をどんどん進めていただきまして、全国に波及していただくということでよろしくお願いできればと思います。ありがとうございました。
そういたしましたら、さっきも申しましたように、きょうは4時までということになっておりまして、今、そこの柱の時計で2時43分ぐらいです。10分後、2時53分から再開させていただきます。
暫時休憩いたします。
( 休憩 )
【荒瀬主査】  それでは、再開させていただきたいと思います。
この後、意見交換をする時間ということで、4時までなんですが、その前に、事務局の方から幾つか資料を御用意いただいていますので、その説明をお願いしたいと思います。
酒井参事官補佐、よろしくお願いします。
【酒井参事官補佐】  失礼いたします。本日、事務局から資料3及び資料4を新たに御用意させていただいております。この両資料につきまして、簡単に御説明させていただきたいと思います。
まず、資料3でございます。こちらは、前回の会議におきまして、牧野委員より、これまでの中央教育審議会の御提言頂きました内容について、文部科学省において何がどこまで実施されているのか、また一方で、何が実施されていないのか整理すべきではないかという御指摘を頂いたところでございます。この御指摘を受けまして、取りまとめさせていただきましたのが本資料でございます。
本資料は、平成26年に中央教育審議会の高等学校教育部会におきまして、審議のまとめを取りまとめていただきました。そのお取りまとめいただきました御提言の主な施策についておまとめしたものが、左の欄でございます。その御提言頂きました内容につきまして、実際に文科省において取り組ませていただいている内容が、右の欄でございます。簡単に概要を御紹介させていただきたいと思います。
この26年の審議のまとめでは、大きく5点、御提言を頂いてございます。その中で、1点目が、学習成果や教育活動の把握・検証といったことを御提言頂いておりました。そして、具体的には達成度テストの導入といったものを御提言頂いていたところでございます。これにつきましては、右欄の実施施策というところをごらんいただければと思いますが、高大接続改革の御議論を経まして、高校生のための学びの基礎診断制度が創設されたところでございまして、今年度から、各学校において利活用を開始させていただいているという状況でございます。
また、次の段をごらんいただきますと、幅広い資質・能力の多面的な評価といったことも御提言頂いておりました。具体的には、技能試験等の活用の促進でありますとか、育成すべき資質・能力を一層重視した教育課程の見直しでありますとか、様々な学習成果・活動実績の評価の推進といったことを御提言頂いてきたところでございます。これらにつきましては、昨年告示いたしました高等学校新学習指導要領におきまして、育成を目指す資質・能力を三つの柱で整理させていただいたとともに、カリキュラムマネジメントの実現等をうたった内容となったものでございます。さらには、本年通知をいたしました、児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等についての中では、高等学校における観点別学習状況の評価について充実するとともに、外部試験や検定等の学習評価への利用についても明記したところでございます。
次でございますが、大きな2番目は、学校から社会・職業への円滑な移行促進といったことも御提言頂いた内容でございます。一番上段でございます。この中では、社会を生きる上で必要な力を身に付ける教育の推進といったことが御提言頂いてきたところでございます。この中では、学校全体で組織的な取組を推進しないといけないといったことでありますとか、学校内部において外部との連携・協働を行う職員の配置の促進、さらには、教育委員会に中核となる人材を配置、拠点となる学校を整備するといったことが御提言頂いてきたところでございます。これにつきましては、高等学校新学習指導要領の中で、特別活動を要としつつ各教科・科目等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図るといったことを明記するとともに、今年、キャリア・パスポートの導入ということで、児童生徒が自らの学習活動等のプロセスを記述し振り返ることができる教材「キャリア・パスポート」につきまして、様式例と指導上の留意事項を記した例示資料を作成・周知させていただいたところでございます。さらには、今年度、地域との協働による高等学校教育改革推進事業も創設させていただきました。この中では、地域課題の解決等の探究的な学びを推進する高等学校を指定させていただきまして、高等学校が自治体や産業界とコンソーシアムを構築し、学校内に専門人材を配置するといった事業を取り組ませていただいているところでございます。
さらには、下の段、実践的な職業教育の充実といったことでございます。専門学科における取組の充実でありますとか、専攻科における大学への編入学の制度化といったことを御提言頂いておりました。この中でも、法改正において対応したものが、専攻科における大学への編入学の制度化でございます。平成27年に学校教育法の改正を行いまして、専攻科修了生に対しまして大学への編入学制度を創設させていただいたところでございます。
次のページをごらんいただければと思います。御提言の内容の大きく3点目でございます。多様な生徒の学習形態や進路希望に対応した教育活動の推進といったことを御提言頂いておりました。この中で、まず1点目が、定時制・通信制課程等における困難を抱える生徒等のための支援・相談の充実といったことが御提言頂いたところでございます。個々の生徒の状況に応じた生徒指導を行うための教員の資質向上でありますとか、学校間連携の促進や学校外教育機関等の連携の促進といったことが御提言頂いてきたところでございます。これにつきましては、文部科学省では平成27年度から多様な学習を支援する高等学校の推進事業、また、昨年度から、高等学校における次世代の学習ニーズを踏まえた指導の充実事業といったモデル事業に取り組んでいるところでございます。平成27年度からの事業の中では、例えば、定時制・通信制課程における支援・相談体制の構築に向けた検証という中で、進路アドバイザーでありますとか、キャリアカウンセラーなどの外部人材を活用した、また、外部機関との連携を通じて、進路未決定で卒業する生徒数の減少でありますとか、原級留置退学者数の大幅な減少といった成果が見られるところでございます。後ほど資料4でまた御説明させていただきますけれども、定時制・通信制課程の今後の在り方について、実際の今後の制度化等について、さらなる御議論をお願いできればと考えているところでございます。
また、次、高等学校段階における特別支援教育の推進といったことも御提言頂いておりましたが、こちらは平成28年の学校教育法施行規則の改正によりまして、高等学校における通級による指導の制度を創設したところでございます。
さらには、ICT等の活用による学びの機会の充実といったところで、全日制課程における遠隔教育の実施に向けた検討の実施といったことも御提言頂いておりました。これも平成28年に学校教育法施行規則の改正を行いまして、高等学校におけるメディアを利用して行う授業の制度化、いわゆる遠隔教育の制度化を図っているところでございます。
大きく4点目が、教員の資質向上と学校の組織運営体制の改善・充実といった御提言がございました。この中では、指導力のある教員の育成というところで、教育委員会と大学との連携・協働等による養成・採用・研修の各段階を通じた取組の充実といったことを御提言頂いておりました。このことにつきましては、平成28年に教育公務員特例法の改正を行っていただきまして、任命権者が教育委員会と関係団体等で構成する協議会を組織しまして、校長及び教員としての資質の向上に関する指標と、指標を踏まえた教員研修計画を設定することが法制化されたところでございます。
また、学校の組織運営体制の改善・充実といったことにつきましては、長期的な方針に基づく学校運営が可能となる柔軟な人事配置のことも御提言頂いていたところでございます。ただ、この人事配置の点につきましては、各任命権者で御対応いただくものでございまして、国として、この後、御提言でありますとか制度化といったものの対応を特段行っているわけではないという状況でございます。
最後に5点目、広域通信制課程の在り方の検討というところで、ガイドラインの作成・周知を図ることや、第三者機関による評価等の仕組みの創設に向けた検討といったことを御提言頂いておりました。この中では、平成28年に高等学校通信教育の質の確保・向上のためのガイドラインを策定させていただくとともに、広域通信制高校への指導方法、点検調査、評価及び研修の効果的な在り方に関する調査研究事業といったところで、第三者評価の在り方等を調査研究してきたところでございます。
続きまして、資料4について御説明させていただきたいと存じます。資料4は、議論のための論点メモでございます。こちらにつきましては、前回の会議で本ワーキンググループの検討事項1及び検討事項2に関することにつきまして、論点メモを御提出させていただいておりました。前回の会議では、事務局から検討事項3、定時制・通信制課程の在り方につきましては、少し準備ができておりませんでした。この検討事項3を新たに追加いたしましたので、追加部分について御説明させていただきます。
資料4の5ページをお願いできればと思います。検討事項3に関します問題の所在でございます。高等学校の定時制・通信制課程につきましては、従前は就業等のために全日制課程に進学できない勤労青年に対しまして、高校教育を受ける機会を保障するために制度化されたところでございます。
しかしながら、こうした定時制・通信制課程におきましては、近年においては、勤労青年の数が減少する一方で、全日制課程からの進路変更に伴う転入学・編入学者であるとか、中学校までの不登校経験者など学校生活への適応に困難を抱える者、特別な支援を要する者、帰国生徒・外国人生徒、社会人など、様々な困難や課題を抱え、多様な背景や学習歴を持つ生徒が増え、そういった様々な生徒のニーズの受け皿としての役割を果たしているといった状況でございます。
加えて、高校全体の学校数、生徒数が減少する中で、高等学校の通信教育の普及・発展等により、通信制課程を置く高等学校の学校数及び生徒数は増加傾向にあるところでございます。
こういった中で、二重括弧の中、課題の特定のところをごらんいただければと思います。申し上げましたとおり、勤労青年のための教育機会を保障するために制度化された定時制・通信制課程が、近年ではその役割が大きく変わっているところでございます。こうした様々な学習ニーズに応じまして、特色ある教育活動をこれまで以上に実施することを考えた場合、現在の教育環境は十分なものとなっていると考えるべきかどうかといったところが課題としてあろうかと考えております。
特に、通信制課程でございます。通信制課程におきましては、近年、先端技術を効果的に活用いたしました教育活動を実施している学校がある一方で、添削指導のみならず、様々な学校教育活動の場面において、どのような機器をどのように利活用することが効果的なのかが明らかでないことによりまして、情報通信技術の発展に対応した教育活動が十分に実現できていない学校が存在するのではないかと受け止めております。さらに、広域通信制高等学校につきましては、一部の学校で極めて不適切な学校運営、教育活動が行われてきたという実態がございます。これまでも、高等学校通信教育の質の確保・向上のガイドラインに基づく運営改善を推進してきたところでございますけれども、学校、設置者、所轄庁において、ガイドラインの理解が必ずしも浸透しているとは言えないことによりまして、適切な教育の質の確保が十分に実現されていないのではないかといったところが問題としてあろうかと考えております。
これを踏まえまして、恐れ入りますが、9ページをごらんいただければと思います。今後の御検討の枠組みといったところで御紹介させていただければと存じます。繰り返しになりますけれども、定時制・通信制課程におきましては、非常に多様な生徒が入学している実態にきめ細かく対応して、個々の生徒の状況に応じた学習活動や日々の生徒指導、教育相談、将来を見通した進路指導など、多様な生徒の学習形態や進路希望に対応した教育活動をより一層推進していくことができるよう、定時制・通信制課程の在り方について、それぞれの実態を踏まえて検討を進めていくこととしてはどうかと考えてございます。
特に、通信制教育に関しましては、その地理的・時間的制約を乗り越えて学ぶことができるという特色を最大限に生かしながら、多様な生徒の多様なニーズに応えるために、先端技術の効果的な利活用を含めて、これからの時代の通信教育の在り方を御検討いただくこととしてはどうかと考えております。通信教育の質の確保・向上に向けては、国、所轄庁、設置者がそれぞれ果たすべき役割を整理しつつ、高等学校通信教育の質の確保・向上のガイドラインの実効性を高めることを含め、必要な方策を検討することとしてはどうかと考えてございます。
なお、通信制課程につきましては、従来から、広域通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議を設置して、通信教育の質の確保・向上方策についてこれまで御議論を行っていただいておりました。この高等学校通信教育をめぐりましては、広域通信制高校に対します、いわゆる点検調査の結果を踏まえた通信制高校のさらなる質の向上に向けた方策でありますとか、サポート施設の在り方、さらには狭域通信制高校の在り方など様々な論点があるところでございます。このことを受けまして、文部科学省といたしましても、来月から、新たに通信制高校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議を設置して専門的な御議論を進めることとしており、通信制課程をめぐる具体の議論については、協力者会議の議論も踏まえながら、併せて御検討をお願いしたいと考えているところでございます。
説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
今、資料3と資料4につきまして御説明をいただきました。資料3は、前回の御質問に対する御回答ということでありますが、具体的にこれをどうしていくのかというのは、まさしく今、各設置者、ないしは学校に委ねられている部分が多くあるのではないかと思いながら承りました。
あと、資料4でありますけれども、これは今までの議論のための論点メモに、二重枠の下のところに新たに前回の議論の概要なども付け加えていただいておりますので、こういったことも御参考いただきながら、あるいはまた、前段で大変充実したお話を伺いましたが、ヒアリングの内容も踏まえながら、残りの時間で皆さんの御意見を頂戴したいと思っております。
御意見のある方は、また札を立てていただきます。牧田委員、お願いします。
【牧田委員】  説明いただいた資料に対する質問が1つあるんですけれども、今、高等学校教育部会審議のまとめに基づく施策の実施状況というのを御説明いただいたんですが、これは新しくやったことを御説明いただいたんですが、逆にやめたことというのはあるんですか。やっぱり世の中、スクラップ・アンド・ビルドが主流だと思うので、何かビルド、ビルド、ビルドばっかりになっていると、それこそ学校の先生方の多忙感が減っていかないのかなと思ったりして。これは次回で結構ですので、もしあれば、何を減らして何を増やしたかということが分かるようになるといいかなと思います。それが1点。
あと意見なんですけれども、実は私、昨日までドイツに行っていまして、複線型教育制度の職業教育からの観点で1週間ぐらい見てきたんです。ドイツには2回行ったんですが、前回行ったときはギムナジウムの実態を見てきました。そのほかにも、アメリカの東も西も行きましたし、シンガポールも見てきたし、北欧3国のICT教育も全部見てきたんですけれども、それを見た上で、複線型の教育制度というのは、我々日本の今の単線型教育にやっぱり確実に足りないというか、落ちこぼれていく子供たちに対するケアというのが、どうしても足りない。
そんなようなことで、やっぱり習得するまで学ばせるとか、職業教育についてもデュアルシステムを導入しているとか、言うならば、先ほど御発表いただいた若狭高校さんの取組に非常にベースが近いところがあって非常に心強く思ったんですけれども、例えば、AdvanceコースとStandardコースをお作りになっているとか、多様化に対応するという姿勢は、まずは大事なんだろうなと、我々が今議論していることのベースがそこにあるんだなということを感じたということが1つ。
それから、もう一つ。ドイツは複線型をやっているんですけど、実は、単線型のいいところも取り入れようということを今進めていまして、ドイツは日本みたいにがっちり初等教育から教育しないんです。そうすると、やっぱり上に行くと、本当に勉強しない子は勉強しなくなっちゃうので、それは困るなということで、今、複線型と単線型の融合化を図っている。これも、まさにこの若狭高校さんの取組に表れているのかなと思いました。余計なことなのかもしれませんけど、ドイツ視察と重ね合わせ意見させていただきました。
それから、若狭高校さんの発表で気づいたことが2点あって、PDCAが非常にうまく回っていると。前回、PDCAの問題が出ましたけれども、ミーティングとか会議とかというものを非常にうまく活用されています。実はここがポイントではないかなと思っていて、これはまさに、それをリードする校長先生がうまく、今回の会議は、これがチェックする会議なのか、何をする会議なのかということを明確にシステムとして分けておられるので、これは参考になると思いました。
2つ目の参考になるところは、前回、サラリーマン校長とオーナー校長みたいな話になりましたけど、実は、中森校長は若狭高校に関わられて13年なんです、教頭先生も経験されています。つまり、校長として2年、3年しかできないのであれば、その前にその学校に関わってもらうという方法もありかなというのを感じました。
以上、意見です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。まさにPDCAを回すというのは、今回、学習指導要領で特に強調しているカリキュラムマネジメントをしっかりやっていきましょうということと、本当に一致するものではないかと思います。校長先生の年数というのも前からいろいろと話題になっているところで、教育再生実行会議の第11次提言でも、そういったことも含めてなされているところであります。
ほかにいかがでしょうか。長塚委員、どうぞ。
【長塚委員】  事務局の方でこの高等学校教育部会のまとめを大変分かりやすくしていただきましてありがとうございました。
大きく言うと2つあるのですが、先ずはこの高等学校教育部会で議論していたことの後に学習指導要領が固まって、いよいよ高校はこういう教育をするんだということになりました。そういう意味では、特にこのまとめで1点目の学習の成果や評価の問題などについてのところが一番課題だったんだと思うんです。新しい指導要領においてもまさにそうですよね。
ですから、ここで、新しい時代の高校教育というのは、一体、その先を言っているのか、この指導要領の目指しているところをしっかりやろうということなのか、その辺が少しはっきりしないなと思いながらこの会議に出ておりました。
それはともかく、まだこれからというこの指導要領ですが、資質・能力のコンピテンシーベースで高校もやるんだということになったわけです。高校は、とりわけ集団準拠のテストの結果だけで大学進学につながるようなことだけが意識されていたけれども、目標準拠でどういう資質・能力を身に付けるかということが大事なんだということを、まずしっかり押さえようじゃないかということになったと思うんです。そして観点別評価もいよいよやるという、高校が実態としてやっていなかったことを、ここ2、3年後でしょうか、やることになるわけで、実は、本当にこれは大変なことだと思っているんです。
資質・能力の観点別評価について、高校現場には余り経験がないんです。これをやるには相当の準備が必要だろうと心配をしています。しかし、きょうの御発表の中にもそういう実績がある学校さんがあるので、多くの学校がこれを見習いながら取り組んでいかないと、これは間に合わないなと思います。
一方で、基礎診断をやろうということになりましたが、その達成度に関しては、評価の仕方も各学校に委ねられているわけです。本当はどういうことができるようになるかということについての、達成度に関しての標準化のようなことが必要なんじゃないかと思うのですが、残念ながら、それがまだできていない。英語においてはCEFRのような物差しができているんだけれども、どういうことができるようになったかということを、お互いに共通の物差しで語れるようにならないと、社会や大学も生徒の学習の成果をしっかりと受け止めてくれないんじゃないかなという気がしております。
いずれにしろ、高校生の多様な資質・能力を評価するということにつながるような、様々な評価の開発を進めることが先決だろうなと思っております。ペーパー試験ではほとんど測れないという探究が多く取り入れられるわけでから、ルーブリック化する、パフォーマンスを評価するというような仕組みを、現場でしっかり取り組まないと、いわゆる資質・能力ベースの高校教育というのは実現が難しいんじゃないかなということを心配しております。
そして大きくもう一つは、これからAI時代に必要なものとしては、子供たちには創造性と社会性ということが一番大事じゃないかと考えます。AIロボット君には新しいものを創り出せない、また、人と同じような思いやりは持てないということから、どんどん仕事が変わるような中でも、AI化されていく中でも、人ができることは創造性と社会性であると考えられています。経産省の調べでは、日本の産業構造の中で、創造的な仕事ができている分野で成功しているのは、アニメとロボットの一部だけだという報告を聞いたことがあります。あらゆる分野において創造性が必要なので、そういう学びの基礎を高校のときにさせてあげられたらなと思います。
それから加えて、PISAの最近の調べで、協働性は日本の子は世界で第2番目だったと出ましたが、これは、同質化社会の中での協働性であって、求められているのは、いわゆる異質の中の、多様性の中の協働性であるわけです。同質化の傾向や、同調圧力があるという日本社会ですが、先ほど御発表の学校目標にもありましたが、いかに異質の中で、多様性の中で協働性を見出していけるか。この辺は今、大学も求めるようになっていますけれども、主体性、多様性、協働性というくくりをもう一度しっかりと捉えていく必要があるんじゃないかなと思います。
長くなりましたので、通信制のことはまた後ほど触れたいと思います。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
それでは、清水委員、佐藤委員、内堀委員、香山委員、岩本委員の順でお願いいたします。
【清水委員】  それでは、よろしくお願いします。
本日、玉川高校さん、若狭高校さんのお話を伺いまして、先ほど岩本委員からもお話があったとおり、今回の学習指導要領改定に向けて、それを形作っていく中で、いろいろな取組がどんどん行われ始めているというのが事実であって、成果もたくさん上がってきているかなと思っています。
その中で、先ほどお話があったとおり、働き方改革というものがかなり大きく考えなきゃならない観点。いろんなことを取り組んでやっていこうとすると、どうしても外部との連携も含めて、人を外に出していったりとか、校内で様々な研究をしたりとか、本当に多忙な状態にさらに拍車がかかっているのが事実かなと思っているわけなんですけれども、そのほかに、今、定時制課程、通信制課程ということで、私の学校にも定時制課程があります。本当に多様な子供たちが学んでおりますし、ここに書いてあるとおりの子供たちが学んでいるほかにも、外国にルーツがある生徒もかなりの割合で、学んでいるということもあって、教員の数が全く足りないというのが現状です。1クラス40人という数、こういった人数をもっともっと少ない人数にできないものか。また、特に私どもは工業科の定時制課程もありますので、危険が伴っていきます。本当にマンツーマンでやっていかなければ、いつけがをするか分からない状態の中で、緊張しながら、本当に毎日毎日が行われて、今日は何もなくてよかったというのが本音のところです。
そういったところで、例えば、定時制課程は40人の生徒が枠になっている。これは正直言って、40人いたら成り立たないというのが現状です。新しい高等学校教育を考える上において、教員の定数であるとか、あとは1クラスの人数であるとか、そういったものは盛り込んでいただかないと、なかなか理想には近づけられないというのが現場の校長として申し上げたいところということであります。
以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。何かありましたら、後からまた文科省からもお願いいたします。
それでは、佐藤委員、内堀委員、香山委員、岩本委員、鍛治田委員、山口委員の順でお願いいたします。では、佐藤委員、お願いします。
【佐藤委員】  私も、この前申し上げたように、昼夜開講3部制の定時制の学校の校長として、その定時制、通信制のところを申し上げたいと思います。
きょう御説明いただいた、この5ページの検討事項3関係の上から2つ目の丸のところにあるような問題、勤労青年が減少していて定時制高校がいろいろな生徒の受け皿になっているというところに関してです。本校も埼玉県でも1校しかないようなシステムで開校して15年たって、大分その成果が見え始めてきたところと、新しい課題に飲み込まれるような形で非常に苦労している部分があります。
例えば、その勤労青年というのは、本校の在籍生徒630人中、1人もいないのです。アルバイトをしている者はたくさんおりますが。
それで、やはり小中学校時代に不登校経験のある生徒が約半分を占めていると思われます。このことへの対応は、開校以来、本校の使命でもあります。
先ほど清水先生がおっしゃったように、教員の数が足りないということはありますが、例えば、本校では教育相談員さんとか、スクールカウンセラーさんとか、スクールソーシャルワーカーさんというのを県で配置していただいて、すごく助けていただいています。これは、多分ほかの学校にも必要な方たちですが、全体から見て配置されている学校はとても少ないです。本校はそういった方たちに助けていただいて、生徒も保護者も学校も、とても救われていると思います。
それから、新しい課題として4点申し上げます。
1点目、特別な支援を要する生徒についてですが、本校は同じ敷地に、令和3年度開校予定で高等部普通科の特別支援学校が開校いたします。こちらはインクルーシブ教育を通じて、いろいろな支援が相互にできるのではないかと考えております。今、いろいろな可能性を探っているところです。普通高校と特別支援学校との連携といったところで、今後、新たな成果が見られていくと思っています。
2点目、子供の貧困といった家庭的な背景については、例えば、児童相談所であるとか、先ほど申し上げたスクールソーシャルワーカーさん、市町村、警察といったところと多彩に連携させていただいております。これも最近の世の流れと申しますか、世の中で大きく問題に取り上げられていることで、連携がスムーズにいく部分が増えてきたように思っていますので、ありがたいことだと思っています。
3点目、一方で、ちょっと困ったなと思っているのは、やはり日本語を母国語としない生徒についてです。日本語が通じない、日本語が全くできないという生徒については、本当に困っています。
授業以前にまず日常の諸連絡等のために、今年度、POCKETALKを学校で2台購入しました。また、スマホに翻訳アプリをダウンロードして、保護者、生徒と教員とが、お互いにスマホを介して会話をするという工夫もしております。
しかし、授業は日本語で行われるものです。日本語が分からなければ、授業の内容を理解できません。
生徒の生活空間に日本語を勉強する環境が十分ではないという状況もありますので、日本語ができない生徒をこれからどうやって教育していくのか、大きな課題だと思います。
また、これは外務省さんとか法務省さんとかとも連携をしていただきたいなと思っているところがあります。本校は昼夜開講3部制の定時制、総合学科、単位制ということで、定時制の学校ですけれども、就労せずに、自部でない他部の時間帯に選択科目を取れば3年間で卒業できる場合がございます。日本語を母国語としない生徒で本校に入学してくる生徒は、そのことに魅力を感じている場合が多いです。しかし、海外から本校に転校したいという方で、定時制の学校では在留資格が得られないので転校をあきらめた、という方がいらっしゃって、私も校長をして初めてその問題に気がつきました。
丁寧に学校側から説明をすれば、もしかすると認めていただけたのかもしれないと思い、外務省とか法務省のホームページを見ましたが、その件については良くわかりませんでした。法律相談事務所のホームページなどでは、やはり定時制高校では在留資格を得られないという説明がはっきり載っているものもありました。新しい教育システムの定時制高校もある、ということについて、他の省庁さんとも連携、情報共有していただきたいなと思います。
最後に4点目、やはり通信制高校さんの実態がつかめないというのが、私どもも非常に不安に思っているところです。せっかく本校に入学しても、やはり不登校経験のある生徒は続かないで通信制高校に転学したいという者もおります。生徒のためにはその方がいいのかということで手続を進めることもありますけれども、その先どうなったのか、無事進級・卒業して次の進路につなげることができたのか、というのがよく分からない部分があります。実態を明らかにして、情報を開いていってもらえればありがたいなと思っています。
以上でございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。在留資格の問題とかは、今でなくても御確認いただいて、これ、今のお話は相当深刻な話かと思うんですが。
【塩川参事官(高等学校担当)】  ちょっと整理して、またお答えできればと。
【荒瀬主査】  はい、お願いいたします。
ありがとうございました。
それでは、内堀委員、お願いします。
【内堀委員】  前回の会議では発表をさせていただいたので、その後はしゃべらないようにしていたのですが、そうするとしっかり皆さんの意見を聞くことに専念できまして、学びに関しては、議論が大きな方向ではだんだん一致をし始めているという印象を持ったところです。また、きょうの2校の発表を聞いていて、大きな方向としては、国もそうですし、長野県もそうですが、同じような方向に進んでいる中でのお取組だと思いました。
それでなんですが、このワーキンググループのタイトルが新しい時代の高等学校教育の在り方というものですので、手元の検討の方向性と直接的に関わるかどうかわからないんですが、2点どうしても触れさせていただきたいと思っていることを話したいと思います。
1点目は、前回、長野県の高校改革が、新しい学びと学校づくりの両方を一体的に推進しているという話をさせていただきました。推進する中で、学習空間デザイン検討委員会というものを立ち上げて、例えば、探究活動をしていくときに、校舎内には教室から廊下までを一体化したようなオープンスペースがほしいとか、あるいは、長野県の高校は、これまで子どもたちの学習空間としての機能ばかりを優先してきていて、生活空間としての視点が欠けていたのではないかとか、教員の執務空間としての視点が余りなかったんじゃないかとか、あるいは、地域との連携ということを考えると地域協働連携室みたいなものも必要じゃないかとか、あるいは、地域にある施設等を学校と共用することによって、校舎をコンパクト化することができるのではないかとか、いろいろな議論をしています。
で、いざこれからの新しい学びとか地域連携、地域協働につながるような施設として学校を造っていくという話になると、これまでどちらかというとハーモニカ型の教室と廊下しかないような空間に比べると、どうしても建設費が上がってしまうという問題がある。ところが、地方財政は非常に厳しいので、結局、理想形と現実との落とし込みというところで、場合によっては非常に乖離が生じてしまうというようなことが起きてしまう。また、これから施設が80年、場合によっては100年と、長寿命化される中で、今後、新しい学びの在り方とかがまた新しく出てきたときにも対応できるような、フレキシブルな空間にしておくといったように、新しく造る校舎に関しては将来も想定したものを考えていかなきゃいけないのにそれができにくいという問題もあると思います。
さらには、地域との協働による学びとか、地域の人たちが学校に入ってきて学校の施設を使ったり、あるいは、防災とか避難の場所としての学校施設という視点もあると思うんです。高等学校を核にした地域づくりということを、文科省だけではなくて国全体が考えておられるということを考えると、地域づくりの拠点みたいな意味合いもあったりすると。
 そういう中で――これだけ前ふりをしていると、もうそろそろ本題を言わなきゃいけないんですが――要は、県の一般財源だけで高等学校の施設を造るのは非常に厳しいということなんです。つまり、国の方で、例えば、地方創生の枠組みでも結構ですし、これからの新しい教育を創るという観点でも結構なんですけれども、やはり補助をしていただかないと施設として不十分なものができてしまう可能性が、特に地方ではあるのではないかと考えています。それを是非検討していただきたいというのが1点です。
2点目は、前々回ちょっと触れましたけど、部活動の問題であります。これからの新しい高校教育を考えるときには、部活動の問題は絶対避けて通れないと思っています。なぜならば、例えば、教員の超過勤務のかなりのパーセントが部活動指導です。どうしてそういうことが生じるかというと、教員の勤務時間は8時半から5時、若しくは5時15分だと思うんですけれども、部活動というのは、その8時半の前、それから5時15分以降も日常的に行われ、かつ土日にも行われているからなんです。そうすると、教員が部活動に関わるということを前提として組み立てた場合には、超過勤務というのが絶対生じる仕組みなんです。というのが1つ。
それから、もう一つは、本来、生徒の主体的活動であるべき部活動なのに、ほかの要因が長年の積み重ねによって加わってきていて、その結果、学校づくりの一つの柱になっていたり、教師あるいは学校主導の活動になっていたりということがあって、現状は、様々な問題を含んでしまっていると思います。
私は、高校生が高校時代に自分の好きなことや興味のあることにものすごい時間を掛けることは否定しないんです。むしろそうあるべきだと思っています。ただ、それは学校の中で行うべきものなのか、あるいは、一定の枠を越えて行うものについては学校の外で行うべきものなのかということはしっかり考えなければいけない。そうしないと、こういった超過勤務の問題とか、あるいは、生徒が学校にいる時間がものすごく長くなっていて自分で自由に使える時間がほとんどない問題とか、生徒が本当は途中でやめたいと思っても、その顧問が自分の授業その他の評価者である教員であるためにやめられない問題とか、そういった様々な問題が解決していかないだろうと考えているんです。
ですので、すぐには無理かと思いますけれども、でも、できるところからだんだん学校の外にこういった活動を、特にコンクールとか大会で上位を目指すというような部活に関しては、出していかなければ、いろんな問題が解決しないと考えています。これからの新しい時代の新しい高等学校ということを検討するのであれば、学校建築への国の補助と部活動という2つの問題について絶対に考えていかなければ、本質的な部分が何も解決されずに教育システムの改変だけでまたこの先進んでいくということになっていくんじゃないかなと考えているところです。
以上、2点お話をさせていただきます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
では、香山委員、お願いいたします。
【香山委員】  3点申し上げたいと思います。
1点目は、佐藤委員が先ほどおっしゃった中で、日本語教師という存在は、本当にこれからますます必要になってくるだろうなと感じております。本校にもフィリピン人の生徒が何人かいるんですが、今後、在籍する生徒の数によって、日本語教師の常勤を何名とかといった形で標準法を変えていくことも視野に入れながら対応していかないと、特別な支援を要する生徒という概念の中に外国人生徒も入っていますので、是非進めていただけたらなと改めて感じました。
それから、内堀委員のお話をお聞きしながら、今、岡山県の状況を申し上げますと、私学助成の額がぐっと増額されて、公立と私学の3年間に掛かる経費がほとんど変わらなくなってきている状況があって、私学は理事長等のオーナーシップで、資金の選択と集中を図って、岡山市内の、もう全てと言っていい私立高校が建物を非常にきれいにしました。一方、県立高校はほとんど手が着かず、トイレは昭和みたいな、そういった学校も多々あって、これでは太刀打ちできない。同じ教育をやっていくのに、これだけの差が生じるというのはいかがなものかというのが岡山県の実情であります。岡山県の実情ということは、恐らく地方のどの県にも当てはまるのではないかなと思います。ここをどうしていくのかというのは本当に大きな問題なんですが、是非視野に入れていただけたらなと思いました。
3点目ですが、これは長塚委員がおっしゃったので屋上屋を架すのですけれども、私も評価の部分にしっかりと仕組みを付けていくということが必要かと思います。やはりまだまだ普通科の評価といえば、ペーパーテストオンリーと言っていいような評価が横行していると思います。残りは、提出物を何回出したかとかといったような実態がまだまだあるんじゃないかと思います。
その中で、きょう、若狭高校の実践の中でパフォーマンス評価といったことが出てまいりました。50分、60分のペーパーテストではなかなか対応し切れない子供たちが、時間をしっかり掛けてやり、異年齢のサポートもあったり、先生のサポートもあったり、同年齢のサポートもあったりしながらすぐれた成果を残していけば、それが自己有用感を高めることになりますので、そういう意味で、ペーパーテスト以外の部分でしっかりと評価をしてやる、それがもう常態化し、その評価をもって進路を開拓できるといったような仕組みが必要かと思います。
併せて、前回、イギリスのロックザム小学校のラーニング・レビュー・ミーティングの事例を申し上げましたが、先ほど文科省の方で整理をしていただいた高等学校教育部会の2番の実施施策の中のキャリア・パスポートの導入と非常に親和性があるものと思うんです。ただ、このキャリア・パスポートが、じゃあ、高等学校まで、小、中、高とパスされているのかといったら、これも先ほどのペーパーテスト同様、ほとんどパスされていない、しかも、それが値打ちのあるものとして認知されていないのではないかなと思うんです。ところが、学力の三要素の学びに向かう力とか人間性等を評価するというところでは、このポートフォリオ評価というのは非常に有効ですので、そういう意味では、これこそが小、中、高、大、社会人というところで、入社試験でも使えるものではないかと思いますので、これについても、公私を問わず仕組み化していけばいいなと思います。
以上、3点です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
それでは、岩本委員、お願いします。
【岩本委員】  私も3点ほどです。
1つ目が、事務局の方で作っていただいた資料3のところです。審議のまとめに基づく施策の実施状況というのが非常に分かりやすくてよかったなと思いました。きょう、牧野市長がいらっしゃらないんですけど、牧野市長が前回言われたときの文脈は、たしかPDCAのサイクルの中で、この施策のPDCAとか回していく必要があるというところでここの話があったのかなと思っていて、恐らく牧野市長が求めていたものは、これに加えて、実際どうだったのか、いわゆる成果と課題とか、この部分は施策でできたけど、この部分はできていない、なぜなのかとかという理由などがあって初めてその次の議論ができるんじゃないかみたいな御意見だったのかなというのを、牧野市長の顔を思い浮かべながら聞いていました。ということで、それが1点目です。だからどうこうしてくれということは一切ありません。
2点目が、今日出していただいた資料4の検討事項3関係ということで、定時制・通信制のことが書かれています。私、この通信制というところに関しては、ここでも書かれていますが、当然様々な課題もあって、その課題を解決したり、質の確保・向上というのも必要だろうと思いますが、それに加えて、やっぱりこれからのSociety5.0という時代を見据えたときに、実は通信制というのは新しい学びとか高校教育の可能性を開いていくポテンシャルを秘めた部分も結構あるのではないかと。最近の通信制の動きを見ていると、新しいイノベーション、例えば、個別最適化とか、そういったところも含めて、遠隔、ICTの活用、非常にそのイノベーティブな動きも、その一部も生まれつつあるのかなということを感じていますので、この検討事項3のところ、特に通信制のところ、質の確保みたいなところも絶対やらなきゃいけないところはやりながら、その闇の部分をより光に変えていきながら、ただ、その光とか可能性みたいなところにも、もしかしたら少し焦点を当てていくといいのかなと思いました。
例えばなんですけれども、我々の中でも結構出てくるのが、高校生が海外留学をしたいというので、高校2年生のときに1年間とか海外にいきますといったときに、その間、本来受けている高校2年生でやるような学習というのは、海外に行っている場合はできないというので、帰ってきてもう1年やるという選択肢もあれば、例えばなんですが、広域の通信制を使いながら、海外にいながらも卒業や受験に必要な科目を通信の中でも学んでいくというところで、帰ってきても1年遅らせずにちゃんとその学びをしていくとか。私たちは地域留学という形で、国内でもいろいろな学校とか地域を越えて学び合っていくというのをやっていますけれども、そこでも高校2年生のときに、例えば、大規模校に行きたいといって、今までずっと小規模校で同じ人間関係でやってきたところを、2年生のときに1年ぐらいそういった大規模校で、全然違う環境で多様な価値観とかと出会いたいといった生徒の声も非常に多く出てきていますが、なかなかこれは単位の問題とかで難しいと、そういう他校に1年行って帰ってきて3年で卒業するというのが。ただ、例えばですけど、この通信制を活用しながら、必履修とか受験に必要な科目で取れない部分をこの通信制の方で単位履修みたいな形ができて、ちゃんと3年間で終えられるとか、通信制の持っている可能性というのは本当にいろいろあると思いますので、そういった部分も、今後の検討の中で一部入ってくるといいかなというのが2点目です。
最後が、内堀委員の方からあった部活動の話で、私も部活動というのは本当に重要なテーマだなと思っています。今回の検討にある地域社会との連携・協働の在り方というところと部活動というのはやっぱり大きな意味でつながってくるのではないかと思っています。
内堀委員の指摘があったみたいに、いつまでも学校が部活動を抱え続けるのか。いきなりは難しいと思いますけれども、少しずつでも地域社会の方でそういった部活動的な活動を担保していくと。やっぱりそういった部活動を指導したいという熱い思いのある、指導力のある教員は5時以降、場合によっては社会教育というか、そちら側の立場で指導するとか、土日もそちら側の立場でやっていくとか。でも、その部活動をやりたくないとか、そうじゃないという教員は教育課程の方に全力で集中できるとか、だんだんそういったことも本質的な在り方として、今後、検討もひとつ、こういった中でも高校からしていければいいのかなと思いました。
以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。海外留学は単位認定がされますので、日本の教育を学べないというのは事実ですけれども、ただ、必ず1年延びてしまうということはないですので。
【岩本委員】  はい。
【荒瀬主査】  すいません、余計なことを言いました。
鍛治田委員、お願いいたします。
【鍛治田委員】  通信制のことが何人かから出ておりますので、大阪府の例をお伝えしたいと思っています。
大阪府認可は、学校法人立で広域4校、狭域4校ございます。私たちは、質を担保するために定期的な会合を持っておりまして、他府県認可に比べまして大阪府は認可基準が高いですので、私たちは協力してやっていこうとしております。例えば、中学校教員向けの研修、8月に200人ほど来られました。来月は合同説明会、そして、8校の生徒のための合同就職説明会など協力してやっております。
本校では500人いるような通信制ですけれども、既存の学校に合わない生徒が来ています。100%に近い生徒が不登校でした。学校に合わないという子がいることは当然であって、その子たちが認められる、受け入れられる社会が大事かと思っています。ただ、普通科から排除されたシステムとして、この定時制、通信制が機能しているのではないかというような、そういうことを問うことも必要かと感じています。
ずっと出ておりますように、通信制を希望する生徒たちが増えています。これから高校改革の話をする中で、この事実については、意識をしながらやっていかなければいけないと思っています。小学生の時間割を見ていますと、毎年1コマずつ増えていく、これを見たときに、また通信制に来る子が増えるだろうという心配をしています。多様な子を誰ひとりこぼさないという共通の視点がある中で、このことは議論する上で意識していきたいと思います。
前に、通信制は全日制より支援が必要だというふうに言っていただいたかと思います。先ほど清水委員から、1クラス40名だということを伺ったんですが、私どもは、1クラス24名の教室が普通になっております。その中で、やはり支援が必要な生徒たちは担任を2人制にし、ボランティアが入り、常駐のスクールカウンセラーがいて、特別支援コーディネーターが合理的配慮をしていますけれども、実はまだまだ足りない状況です。外国籍の子供たちのためにも、これから取り組みます。今は担任の努力の中でしていまして、来年度から学校でやりたいと思っていますが、私学ですので、持続可能にしていくために予算を見ながらやっています。
先端技術のこともずっと言われておりますけれども、本校でもスタディサプリやeラーニングなども取り入れていますが、やはり勉強が苦手な子はそれに取り組めないというところで、動機付けとして必ず人が要ると思っています。教育は手間暇が掛かり、人が要る、人が介在しないと成り立たないと思っています。通信技術は、場合によっては人を分断する側面があることを十分に意識しないと、今後、国の将来のリスクになっていくんじゃないかと危惧しています。
もう一点、先ほどの在留資格の件なんですけれども、私たち高等専修学校の方も全日制でしていますが、在留資格が取れないので、去年、文科省に要望書を出しました。
以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
それでは、山口委員、お願いいたします。
【山口委員】  皆さんと同じようなところなので、端的に申し上げます。5ページの検討事項3の関係です。
私としては、教員だけですべての対応をするのは、無理だと思っておりますので、外部人材を活用すること。神奈川県の例でございますけれども、外国につながりのある外国籍等の生徒さんは、NPO法人等の支援をいただいております。日本語の支援、通訳支援、様々なことで、先ほどの在留資格の問題で支援していただいたりしています。在留資格に関するホームページ等を見ても専門用語がどんどん出てきますので、そこのところはどんどん外部のお力をかりる必要があると思います。また、医療の部分が必要であったりとか、中途退学者であれば、学校から出たときに、その次の段階で、例えばサポートステーションであるとか、今、学校から離れた生徒を、また次どう社会につなげていくかとか、そういう視点が私は必要だと思っておりますので、特別な支援を要する生徒さんもそうですが、明らかに学校だけで抱えきれない、外部人材の活用というのが私はまず必要だと思っております。
もう一点、通信制に関してですが、もう18万7,000人を超えている生徒さんが、広域、狭域、また、私立、公立、株式会社立、様々な形態の通信制に在籍しています。その中で、先ほどの御意見でありましたが、ICTの技術というのは、私は非常にこの後重要だと思っております。それはもう全日制も定時制も通信制もそれぞれの課程の生徒さんにICTを使って授業改革することで、分かったとか、自分の自尊感情が高まったりとかというのを、このICTを使いながら、高校の新しい姿というのを怖がらずに、新しい波として、授業をICTで変えるんだぐらいのつもりで変えていかないといけないと思います。
ただ、第11次提言でも書かれておりました、幾らICTがあっても、また、様々な外部のものがあったとしても、最後は教員です。先ほど来、皆さんおっしゃるように、先生方のアドバイスによって再生していく生徒たちをたくさん見ておりますので、最後は人だと思います。人間の対応と外部の力とICTを使って、いきたいなと思っております。
以上でございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
それでは、長塚委員、お願いいたします。
【長塚委員】  通信制の前に、先ほど公立からみると私学はいいなと、うらやましいというお話があって、そうかなとちょっと一言。
平均的なこと言いますと、高校の生徒1人当たりの年間教育費というのは、例えば、東京あたりですと公立、都立が約130万円、私立は約120万円です。この様な公私格差は全国同じなんです。1人当たりの教育費は公の方が高いんです。その辺が意外と誤解されていまして、私学というのは、最初に創立者が寄附をして設置し、その後は基本的に保護者が負担するしかないわけで、就学支援金が支給される様になった現在でも、保護者負担の公私格差は解消されていないんです。決して私学は有利だという状況ではない。見た目というよりは、私学はしっかりと効率よく使うとでもいうんでしょうか、結果的に言えばそういうことになっている気がいたします。
それから、通信制の問題なんですが、昔の通信制の場合には、レポートだけでなくてラジオとかテレビだよと言っていたのが、まさにインターネットになったわけです。そこでバーチャルな世界とリアルな世界という区分でいいかどうか。今はそれらが一体化しているような、融合しているような技術が通信の世界でも最先端だとは思います。しかしながら、バーチャルの世界だけにとどまってしまうようなことがあってはいけないというのが、私ども全日制の学びを生徒にしている者からすると、大変危惧するところなわけです。ただ、全日制でも探究活動でICTをどんどん使っていますし、その手段としては、全日制も通信制もないような状況になりつつあるんじゃないかと思います。一方で通信の生徒も、実はサポート校に通っているという実態があって、何かその外形的な違いがなくなりつつあるような気がしています。
その上で、あえて言えば、物理的な学校の空間から、まさにバーチャルな閉鎖的な空間に行ってしまって、人間としての社会性を養う場がなくなってしまうようなことがあってはいけない。たとえば、友達同士の中での成長というのは、この高校生という成長段階では大事じゃないかと強く思います。
大学にも通信制はあるんですが、大人が通っても数パーセントしか卒業できないようです。通信という手段だけで卒業するのは本当に大変なことで、一緒に学ぶという場がないと実はできないんだろうと思います。そういう意味では、このモチベーションを上げるためには、不登校の子も含めて、もっとしっかりとした配慮が必要なので、これは、実は全日以上の費用も人手も掛かる話だと思うんです。そこをどうするかということが大事ではないでしょうか。
危惧しておりますのは、この通信制は狭域と広域があります。公立学校の通信制は1校を除いて狭域です。隣接する3県までの生徒を対象にしているのが狭域ですので、スクーリングの際に通学できる範囲です。つまり広域が問題なんです。広域が全体の3分の2を占めている私立及び株立です。こちらは全国にサポート施設という形で広がってしまい、その施設が、全国に今や千二、三百あるというわけです。そこで、文科省もガイドラインを作って、ある意味、視察をして指導するということになったんですが、これも費用と人手の関係で極めて限られてしまうわけです。はっきり言えば、今困ってしまっているという実態があると思うんです。そういうサポート校などでの生徒の学びが本当に求められているものになるのかどうか、ここが肝ではないかなと思います。
最後に部活動の問題もちょっと言いたいと思いましたが、時間がありませんので、これは次回にいたします。以上です。
【荒瀬主査】  御協力いただきありがとうございます。
事務局から何か今おっしゃることはありますでしょうか。じゃあ、また整理していただきまして。
ありがとうございました。時間が参りましたが、1つだけ申し上げたいことがございまして、学校における働き方改革の問題であります。皆さん御承知のことかと思うんですが、働き方改革というのがあって、学習指導要領の改訂があってとかという、それらが別々にあるんじゃなくて、そもそも働き方改革というのは、学校とは何をする場所なのかということを考える、原点に戻るというところから、もう一度学校を見直していきましょうということであります。それを忘れないで、新しい時代の高等学校教育の在り方について、次期学習指導要領もいよいよ始まるという段階でありますので、その円滑な移行も考えながら、今後議論を進めてまいりたいと思っております。
では、きょうはここまでとさせていただきまして、次回のワーキングの日程をよろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】  失礼いたします。次回のワーキンググループの日程は、10月15日の火曜日、13時からを予定しております。
以上でございます。
【荒瀬主査】  それでは、本日はこれまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。2校の先生方、ありがとうございました。(拍手)

―― 了 ――


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