光市立浅江中学校 校長 伊藤 幸子
○評価を充実させようとすれば、それだけ負担が増えるのは仕方がない。しかしながら、その前提として、教員が本来の業務に集中できるような働き方改革が着実に進んでいくことが必要である。また、教員の人数を増やすことができれば、その分、評価の精度も高まっていく。
○現場の実態に即した、より効率的で現実的な評価の在り方を検討するとともに、わかりやすく、負担を感じさせない示し方を工夫することが重要である。
○学習評価の研修を通じて、教員が評価をより効果的・効率的に行うための知識やスキルを身に付けることは、長い目で見れば教員の業務改善につながってくる。
○情意領域の評価は難しさはあるが、一方で「主体的に学習に取り組む態度」が評価項目として存在することが、その重要性を子供や保護者に伝えるための有効な手段となり、一つのメッセージとなる。
○評価されるからこそ、多少の背伸びをして成長が促されるプラスの作用は見逃せない。学習意欲を喚起するためには、外発的な動機付け、内発的な動機付けの双方が必要であり、外発的な動機付けによるものも、内発的動機付けに発展することにより、主体的に学習に取り組む態度が本物になる可能性を有している。
○「知識・技能」等において低位な状態であっても、課題に向かう意欲は高いというケースもある。情意領域を評価しない場合、そのような子供のモチベーションが失われてしまう可能性がある。
○観察による評価は、一人の教員では十分な評価はできない。教員数を増やし、複数の教員で授業を行う(評価者を増やす)ことで、評価の信頼性を高めることができる。なお、場面によっては、子供の性格や集団における他の子供との関係性などを考慮に入れて評価を行う必要がある。
○「授業の振り返りシート」(スライド資料は例)を作成し、これと併せて、学習の軌跡(学習の成果物等)を継続的にみていくことが、一つの評価方法として考えられる。
「授業の振り返りシート」(現在使用しているもの)
◆目的 ◆構成 ◆記入者 ◆記入時間 ◆実施教科 ◆参考(生徒アンケート) |
学びの振り返り及び授業改善 ・本時の学習内容 ・授業に関する評価(5項目) ・本時のキーワード ・記述欄(分かったこと、疑問に感じたことなど) 全ての生徒 約3分(各授業の最後) 全ての教科 ・「振り返りシートは自分の学習に役に立つと思う。」 「よくあてはまる」「あてはまる」の合計 80% ・「学習内容を理解できたと思えることが多くなった。」 「よくあてはまる」「あてはまる」の合計 83% |
○評価は、子供、保護者にとって、わかりやすさが大切である。通常、評定を確認した後に、その根拠となっている観点別評価に視線を移し、観点等に応じたフィードバックがなされる。評定がなければ、成果や成長の度合いもわかりにくくなり、達成感や成就感を得ることが難しくなる。
○評定は、子供や保護者に対して学習への動機付けを強める上で効果的であると感じられる。
○ABABで評定が4もあれば、ABABで3もある。観点別評価と評定がセットになってはじめて詳細な情報となっている。
○評定が、高等学校等の入学者選抜の資料としてして使われている。
○「社会に開かれた教育課程」の実現のためには、学習評価の考え方もまた、これまで以上にオープンにされるべきである。コミュニティ・スクールや地域学校協働本部の取組の中で、地域住民が教員とともに授業に入り、学習支援を行うといった場面が増えてくることが予想されるが、学習支援を行っている人からの情報を評価の参考資料として生かしていく工夫も必要である。
○小中一貫教育等が進む中、学習評価の在り方も、校種を越えた一貫性をより重視するべきである。
初等中等教育局教育課程課教育課程企画室