教育課程部会 児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ(第2回) 議事録

1.日時

平成29年12月11日(月曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 児童生徒の学習評価の在り方について
  2. その他

4.議事録

【市川主査】  それでは,定刻になりましたので,ただいまより教育課程部会児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ第2回を開催させていただきます。
  初めに,本ワーキンググループの審議等については,初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づきまして,原則公開により議事を進めさせていただきます。それとともに,第6条に基づきまして,議事録を作成いたします。これも原則公開するものとして取り扱うことにさせていただきます。よろしくお願いいたします。
  なお,本日は,報道関係者より会議の撮影及び録音の申出があり,これを許可しておりますので,御承知おきください。
  それでは,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
 【白井教育課程企画室長】  お手元の議事次第にもございますとおり,本日,資料1から資料4までをお配りしております。資料の1から3までは委員によるプレゼンテーションの資料でございます。なお,関谷委員の御発表資料については机上資料として配付をしております。不足等ございましたら,事務局にお申しつけください。
 【市川主査】  資料の方,御確認いただきまして,よろしいでしょうか。
  それでは,これより議事に入ります。
  本日は前回に引き続きまして,事務局から提示した論点に基づきまして,委員からの意見発表をお願いしたいと思います。本日は学習評価を専門的に研究していらっしゃる髙木委員,小学校,中学校の校長を務めていらっしゃる関谷委員,伊藤委員から意見発表を頂きます。その後,論点に沿って意見交換を進めたいと思います。
  それでは,まず髙木委員,お願いいたします。
 【髙木委員】  髙木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは,学習評価の現状と課題につきまして,前に提示しております投影と,それからお手元の資料のシートを御覧下さい。投影するシートと,お手元の資料とは,全く同じものでございますが,枚数が多いので,ポイントを絞りながらお話をいたします。
●「学習評価の現状と課題」(シート1)。
  まず新学習指導要領が小・中3月に告示され,高等学校も本年度中に告示されるように今進んでおりますが,その中で特に注目したいのは,学力という言葉が学習指導要領上なくなり,全てが資質・能力という言葉で表現されているということは,評価ということからも重要で押さえておかなければいけないことだと思います。
  参考資料(シート55~61)にもございますが,今日行われている評価は,実は昭和23年の学籍簿によって相対評価,いわゆる集団に準拠した評価が行われ,評価というと5,4,3,2,1という形のものにすることが,いわゆる評価ということに定まり,それ以降今日に至るまで世の中でも,それが多く使われております。しかし,平成10年版の学習指導要領に伴い,平成13年度,これは小・中学校でございますが,目標に準拠した評価ということ,高等学校においては平成16年から学習指導要領の目標,内容を評価項目としたものが行われるようになったにもかかわらず,今日も依然として,昭和23年に始まった5,4,3,2,1の相対評価がいまだに多く行われているという現状がございます。
  学習指導要領に示されている内容が入り口だとすると,出口は評価になると私は考えております。今回改訂された学習指導要領が学校で,さらに学校の授業に生きて働くものになるよう,評価について少し考えてまいりたいと思います。
  評価(シート2)というと,いわゆる成績付けと理解されることが多く,通知表に示された評定の結果にこだわる現状があります。さらには相対的評価,今申し上げたとおり,昭和23年からの70年前の評価がいまだに,序列をつけることという思い込みで行われている現状があるということ。高等学校においては評定平均値,平成32年からなくなりますが,いまだに大学入試で求められるために,本質的な観点別学習状況の評価が進められていないという現状もあります。まさに評価が授業内容の,そして授業内容や学習の進め方の妥当性を検討して,授業改善に生かされるものとしての捉え方がなされていない現状というものがあると,私は認識しております。
●「現在行われている観点別学習状況の評価と評定」(シート3)
  それでは評価の観点です(シート4・5)。観点別評価ということが昭和55年から導入され,さらに平成14年から目標に準拠したという評価が導入されました。現行は,シート5の図の左側ですが,新学習指導要領では右側になります。これは,また後の資料でも出てきます。
  現行の評価規準は,規準として。これ,我々は「のりじゅん」と呼んでいるんですが,質的な評価として「A,B,C」で示す。一方,量的な評価として数値に示すのが評価「もとじゅん」と言います。A,B,Cという段階で,Aは青天井,Aの具体は示さないという形になっています。一方,量的な評価として数値に示すのが評価「もとじゅん」(基準)と言います。
  それが小学校では観点別評価として,十分満足できるものをA,おおむね満足できるものをB,努力を要するものをCとして,指導要録では総括として3,2,1という評価が現行では行われています。(シート6)
  ところが中学校になりますと,このA,B,Cの三つの段階が5段階として評定になります。Aの段階が5,さらには一層努力するものとして4ということで,数値として5,4,3,2,1に評定として示す形になっています。(シート7)
  特に中学校においては,これは後ほど中学校の事例でも出てきますが,「AAAA」が4又は5とか,こういった質を量に変える評定が行われています。(シート8・9)この評価の評定への付け替えは全く実は根拠がないと言い切ってもいいかもしれません。この評価を評定へ付け替えるところで,中学校の先生方が大変苦労されているという現状をこれからお話し申してまいりたいと思います。それは,観点別学習状況の評価を評定にすること,要するに,5,4,3,2,1という数値に表すことの困難さということがあります。
  ●「学習評価の現状と課題」(シート10)
 (シート11・12・13)では,現状を少しお話しします。小学校は,いわゆる教科書に基づいて授業を行っています。小学校の先生は,全教科を担当します。評価はほとんど教科書準拠の問題としてのテストで行うことが多いのが実情です。最近,教師自らの評価問題の作成をするところが少しずつ出てきておりまして,これが,これから新しい学習指導要領になりまして,更に期待されるところです。
  特に一番小学校で問題になっているのは,表現することが上手な子,表現することが下手,上手でない子,この辺りをどう評価していくかが難しい問題となっております。特に,後ほど申し上げますが,個人内評価,道徳でどういうふうに評価をするかということ,そういったことと関しまして,大変問題があると思っております。状況の蓄積,さらには評価に対して用いる時間,妥当性・信頼性,こういったことが課題として出ています。
  (シート14)道徳について本日はここで特に説明しませんが,現在,新学習指導要領では,こういった形のものが今,提示されています。そして,道徳の学習評価の課題に関しましては,特に学習評価の記述の教師の負担,指導要録,通知表をどうするか。指導要録は年1回ですが,通知表は,学期が三つありますと3回の評価を行わなくてはなりません。そこでの記述が大変問題になってくると思います。
  (シート15・16)次に中学校ですが,中学校からは現行の観点別学習状況の評価を評定として付け替えることに,大きな問題を抱えています。中学校の先生ですから,どちらかというと評価は学校や教師独自のものということ。そして教師用指導書にもテスト例が出ていますが,実は中学の先生が教師用指導書のテスト例や市販のものを使えないというのは,学習塾が一人一人の先生方の問題を収集していまして,先生が転勤するたびに,そのテスト問題が移動していって,同じテスト問題を出せないということで,先生方は,そこで,ある意味やむなくという言い方はちょっと言い過ぎになりますが,試験問題をそれぞれの試験ごとに新たに作っているという現状があります。
  特に中学校は,高等学校への内申書の問題で,観点別学習状況の評価がBBBCで3になったりBBBAで3になったりする現状があります。この17・18・19のシートに書いてあることをお読みいただきたいのですが,ここに書かれているように,簡単に成績が上がる教科に力を入れて,上がりそうもないのにはそのままというような現状も実は出てきているという,こういったところに中学校教育の本質的な問題が含まれていると感じています。
  (シート17・18・19)目標に準拠した評価です。ある中学校長は,私が聞いたら,つぎのことを,本日,この席で話してほしいということでした。簡単に申し上げます。保護者や生徒からは,どうしたら3を4や5にできるんですかという質問をされます。観点別状況評価よりも序列の何番目にいるということが一番の問題となっています。要するに学習指導要領の内容をどうしたら実現するかということではなくて,序列に重きが置かれているということです。
  校長先生は将来的には初等中等教育の学習評価から評定,5,4,3,2,1がなくなることを期待されています。それは入学者選抜ということに保護者や生徒の関心があり,それに対しての評価のあり方が問われているということです。そこにポイントが一番置かれている現状があるということ。この辺は,これからこの委員会でも考えていかなければいけないことだと思っています。
  (シート20)特に最大の問題は,「関心・意欲・態度」の評価です。次のシートの中の中学校長は,さらに関心・意欲・態度のことを言っていました。保護者や生徒には,「関心・意欲・態度」の評価が理解されていないということでした。提出物を出すとか,ノートをきれいに使うとかではなくて,授業での取り組む状況を評価していると言っているんだけれども,保護者はその回答に納得しないので先生方は非常に苦慮されているということです。特に採点業務に時間をかなり今とられているということ。先ほど申し上げましたAAAAを5,4,3,2,1に付け替える作業に非常な労力を要しているという現状があります。
  (シート21)高等学校ですが,観点別評価を行おうということで動いていますが,現実はほとんどがペーパーテストで評価しているのが実状です。現状を聞いてまいりましたら,つぎのようでした。形は観点別にしているけれども,それを日々の授業で強引に観点別学習状況の評価の観点に結び付けるといって,いろいろパーセントに合わせて,最終的な形として観点別評価のような形にしていると言われていました。
  まとめますと,知識詰め込みの授業を正すという観点別学習状況評価の意味は承知していますが,センター試験や模擬試験,そういったものがある限り,書類上はいかにも観点別教育が成立しているかのように作成せざるを得ないという状況であるということです。それはなぜかというと,生徒や保護者がそれを望んでいるという,そういったこともあるということです。
  (シート25)先ほど申し上げた昭和23年のいわゆる相対評価,集団準拠した評価で平均点という評価方法が行われるようになりました。実は,平成13年から平均点を用いなくても良いことになっています。一人一人の子供を大事にしようという観点別学習状況の評価になったにもかかわらず,いまだに全国の,特に中学校,高等学校では平均点を出し続けているという,今の評価とは全く矛盾した評価が,ある意味で行われているということも,やはり私たちは知っておかなければいけないんだということです。
  幸いなことに,神奈川県のある市では,全市で26中学あるんですが,全中学校で平均点をなくしましたら,その平均点に誰が一番いろいろ疑義を表したかというと,これは保護者と,それから塾であるということが現実に出ていました。平均点を示さなくなった今,平均点がないことが定着して,その後何ともない,何も問題が起きていないということも言っておられました。
  さらに高等学校は,いわゆるこのシートに書いてあるように,目標に準拠した評価が本当に行われているかどうか。点数によって序列を付けることが目的になっていないかどうかということ。まさに言い方換えますと,値踏みの評価ということが,いまだに行われていないかどうか。これは大学入試があるからという,これまでの評価に対しての言説はもう通用しなくなってきておりますので,その辺りも含めまして検討する必要があるだろうと思います。
  評価の客観性ということが言われていますが,数値が客観的かどうかも,もう一度考えておかなければいけないということになります。
  序列を付ける評価については,参考資料に,大ざっぱではありますが,明治以降どういうふうに評価が変わってきたということをまとめてみました。今の5,4,3,2,1が評価として行われるようになったのは,たかが70年前です。評価の客観性を求めるということの中で出てきたことですので,今,再度検討する必要があるのかなと思います。
●「学習評価に願うもの」(シート26)
  (シート27・28・29)これは中央教育審議会の答申に書かれていることを,評価の充実ということで3つほどお示ししました。評価は何のために行うかという,この原点回帰というか,本論にもう一回,ここで示されている内容に立ち返りたいなと思っております。
●「新学習指導要領における観点別学習状況の評価の在り方」(シート30)
  (シート31・32・33)では観点別評価,具体的に。これは皆さん御覧になっている文科省のものです。これは中央教育審議会教育課程部会総則・評価特別部会に出た3観点の示し方です。これを,例えば新学習指導要領の小・中学校の国語の観点別評価の項目に置き換えてみますと,まさに学習指導要領の目標に書かれている知識・技能,思考・判断・表現の内容をそのままは倒し込むことができます。言葉を換えて言いますと,コピペで,この評価を行うことが可能になります。新しい学習指導要領のこの構成の仕方は,大変よくできていると考えております。
  主体的に学習に取り組む態度は,この後お話しします。
  (シート34・35・36)まさに,これからはこういった形で,ここにそのやり方は書いたんですが,指導事項を引用できるということ。そうすると知識・技能と思考・判断の評価規準がそのまま単元の評価規準として作れるということ。こういったことができます。
  まさに,この知識・技能はどういう評価をしたらいいかというと,文章で説明する,それから知識の概念の結び付きを論じさせること等で評価をすることができると思います。今までのこれまでのペーパーテストとは少し変わった形でも評価できます。知識・技能はペーパーテストだけではなくても評価を行うことはできるということです。
  (シート37)それから思考・判断・表現は,これまでも扱ってきた言語活動を用いて評価することが可能です。さらには教科の表現に係る活動。特に今回,理科の学習指導要領の内容の指導事項には,イの項目に表現ということがきちんと明示されています。そういったことが既に新学習指導要領では示されています。
  そして,それらはパフォーマンス評価,ポートフォリオ,それから全国学力・学習状況調査のB問題と同様な問いによって行うことが可能となります。
  (シート38・39・40・41)主体的に取り組む態度ですが,主体的に取り組む態度は,これまでも,実は「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」で,平成22年3月に,他の観点に係る資質や能力の定着に密接に関係する重要な要素ということが示されておりますので,これは「知識・技能」,「思考・判断・表現」を「主体的に学習に取り組む態度」にそのまま倒し込めば,主体的に学習に取り組む態度の項目になるということになります。
  主体的に取り組む態度の項目は,単元を通して全体を見ていくということで,単元の始まり,単元の中盤,そして振り返りの段階で,これは見取ることができるだろうということになります。
●「学習評価のさまざまな方法」(シート42)
  (シート43)方法としては,パフォーマンス評価やポートフォリオ評価,前回の学習指導要領の評価規準でもこれは出てまいりました。そういったものをこれからも継続して行うと同時に,さらに児童生徒の多様な考えを評価するペーパーテストの開発ということも併せて行っていかなければならないと考えています。
  (シート44)パフォーマンス評価の具体例は,次のようなことが考えられます。これを具体に行いますと。例えば,記述の分析ですけれども,実際に行っている学校の例をご紹介いたします。
  (シート45・46・47)評価の観点,三つに示してありますが,シート46の例に示している生徒は,この三つの観点の自分の思いが書けていて,優れた表現ができていて,歴史的な様子が書けていますから,おおむね満足できる状態,これはBの状況と言います。次のシート47の生徒は,三つの評価の観点の中の二つしかできていません。これはCの状況ということになり,努力を要する評価と判断するということになります。こういった記述の中で,日常の授業の中でも評価は,することが可能なんだということです。
●「新学習指導要領に向けての学習評価の在り方」(シート48)
  (シート49・50)これからの評価に向けてですが,教師にとって過度な負担とならない手だてをどういうふうにしていくかが大事だと思います。いわゆるシンプルにしていくということ。特に総括の部分,ここが一番問題になると思います。評定,それの総括の見直しというのが問われてくるのではないかと思います。
  さらには個人内評価も,ここでは,その考え方を周知徹底するということの必要性が出てくると思います。
  そういう見方を児童生徒や保護者にも,きちんと明示化して,そしてそれを示すことによって納得していただかないと,それまでの自分の体験や経験に依拠した評価観でしか評価を捉えることができない状況が続くと思います。要するに,自分がかつて受けてきた学習評価としての5,4,3,2,1という評定をいまだに背景として背負いながら評価というものを考えていることからの転換を図らない限り,新学習指導要領に合った評価というのは難しいと考えています。
  (シート51・52)さらには教科横断的なことに関しては,ここに書いてあるとおりです。特に言語能力は思考・判断・表現のところと関係いたします。特にそこの関係は,各教科等横断的な資質・能力の育成として,各教科で共通する内容やテーマを横断的とするのではなく,資質・能力の横断を図ることが重要になります。
  (シート53)問題解決についても,ここに書いてあるとおりです。
  (シート54)最後になりましたが,学習評価は一人一人の子供たちの資質・能力を伸ばせるか,これが評価だと私は考えております。学習指導要領に示されている内容が学校の教育活動の入り口であるとするならば,出口としての評価によって,今回の新しい学習指導要領が学校で生きて働き,子どもたちの資質・能力を育成することができるものになっていくようになることを期待して,私の発表といたします。
  御清聴どうもありがとうございました。
 【市川主査】  どうもありがとうございました。それでは次に関谷委員,お願いいたします。
 【関谷委員】  それでは,よろしくお願いいたします。白幡小学校の校長,関谷と申します。
  私の立場からは,現場の一校長として,小学校で今悩んでいること,それから現状はこうである,そういったことから学習評価についての捉えをお話しさせていただきます。
  今,髙木先生がおっしゃったことが現実,我々の現場で,いろいろな課題として表れております。そして今,努力していることもあります。
  まず,本日,15分間お話をさせていただくに当たり,大きく三つのこの流れでお話しさせていただきます。学習評価の考え方,現実,いつ,どこで行っているのか。二つ目,現状の課題。三つ目,今後の取組。この流れでお話をさせていただきます。
  まず最初の授業のデザインの中で。今お話しした,いつ,どこでという場面の中で,今やっている取組を,どう新学習指導要領に取り込んでいくか,盛り込んでいくか。新たなことを新たに始めるということではなく,今やっていることをどうやっていくか,そして自分ごとにしていくか。そういった観点で,まずお話をします。
  言うまでもなく,指導事項と評価は一致しています。そして子供に与える学習課題と振り返りも一致しています。この一貫性,整合性が授業の要であるということが,正しい評価のまず考え方の大前提であると捉えております。
  そして,その授業のデザインの中で,思考・判断・表現に主に関わろうかと思いますけれども,その中で,何を教えるというよりも,学び方をどのように,どのような道筋でということで,今お話しをします。
  例えばなんですけれども,並べるとか,つなげる,比べる,照らし合わせる,分ける,取捨選択,関連付ける,統合する,それから見付ける,選ぶ,思い浮かべる,書き換える,様々な学びのプロセスがございます。その中で,どんなふうにして選んでいくのか。
  例えば授業の構想と1時間の流れの中で,今お話のあった中で,大きな流れの中で,振り返るということ,これを大事にしております。どのように大事にしているかというと,この自己評価を価値付けるということ,それと定性的な意味もありますけれども,例えば子供目線でいくと,足りないことが分かる,次にやりたいことが生まれる,分かったことやできるようになったことが分かる。つまり,指導者と学習者が同じトーンで,同じような価値観で,同じスケールで,ずっと流れが進んでいるということ,それを大事にしなければいけないなと思います。
  これはよくある指導案なのですが,本時目標があり,そして子供たちの課題,それが青印,赤印になっております。
  例えば,この先生が狙っている,指導者が狙っている,この本時の目標,それが,このような評価規準として,例えば今回だと,思考・判断・表現の中で「関連付ける」ということに着目したならば,それで一致するだろうか。そして,子供の学習課題が振り返りの中で,それとリンクしているだろうか。そしてさらに,教師側が求めている評価規準と子供の振り返りが一致しているかどうか。これが先ほど髙木先生がおっしゃったことと同じだと思います。
  そして三つ目ですけれども,グループワークで。グループで子供たち活動することは多くございます。特に30人,40人でやっているよりも,少人数の中で,どんなふうにして効率的に,効果的にやっていくかといったときに,例えば先ほどと同じものがありますけれども,こういった学び方のプロセスを,どれを使っていくかということ。
  例えば,この子供たちは,「選ぶ」という操作を行っています。国語のキャッチコピーを作るに当たって,こんな言葉が使えるねということで,4人で話をしております。
  それから,こちらの方でいきますと,「比べる」ということ。これインタビュー,社会の学習になります。社会の学習で,どんなことを聞いたらいいかなということで,子供たちが左側と右側で,こんふうにして比べ合っているということを,このように視覚的に見ることによって,我々が一人で指導するに当たって,7グループ,8グループを,さっと瞬時に,今どんなことを考えているのかという瞬時に,これも評価に一つの要素として大切なのではないかなと思います。
  これに関しては「統合する」ということ。これ1年生の自動車比べをやっているんですけれども,子供たちが一つの救急車というものを捉えた中で,このように,どれがいいかなって,3人の子供たちが,自分たちの視点で話をしています。そして真ん中に統合したものを,どんなふうにしていくのかということを,次に展開がされています。
  これも同じような「統合する」という形で,洗い方。昔の洗う,洗濯の仕方ということを,こんなふうにいろいろな子供たちが考えたものを視覚的に。ですから指導者としては,これを見た瞬間に,今,誰が何考えているのかということが,瞬時に授業の中で見ることができます。
  四つ目ですけれども,ワークシートで。これはいろいろ手作りで小学校と今やっているんですけれども,こうやってぱっと見通しを持てるような,学びのプロセスが,あっ,こんなふうにして最終的に,自分の考えがこんなふうに変わったということが自覚できるような,そんなワークシートを工夫することによって,我々も子供の見取り,学習評価ができるのではないか。そして,これに関しては,例えば関連付けるというものを使いながらキャッチコピーを考えていきましょう,こんなワークシートも工夫したりしています。
  相互評価,これも大変大切になってきます。これは英語のスピーチを,友達にどんなふうに評価してもらうかと。観点をこのようにチャートのようにやって,そしてそれを生かして,メタ認知した中で,自分の中のどんなものが大切なのかということを振り返り,次の課題を決めるという,こんなものも一つの方法ではないかと努力をしています。
  最後,五つ目ですけれども,振り返りで。これは先ほど冒頭にお話しをしたこととリンクしますけれども,この大きな流れの中で活用できる知識や技能や学び方などをワークシートに記述することによって,最終的な自分自身の評価,自己評価というところに考えています。
  例えば,身に付いた力と課題をメタ認知して,次につなげるために,100文字で振り返りを書くということをやっている先生がいらっしゃいました。そのときに,ここに発見,工夫,やりたいというふうに具体的に子供の言葉で書いてございますが,こちらとしては学んだ内容,学び方,これからの自分,この三つの要素を必ず入れると。やるべしみたいなことを書いてありますけれども,そういうことを子供にしっかりと伝えた上で,それの基に子供が書くという,これも指導していることと,それから子供のやっていることと評価を一致させるための一つの表れです。
  例えば,現実どんな姿に表れるかということで,こんな姿がありました。これ,体育の授業の後なんですけれども,終わるとすぐに1人の子がさっと出てきて,きょう,どうでしたか,きょうのボール運動どうでしたかと友達に問うています。こんな姿が,いろいろな,国語や社会や理科や算数でやっていることが,こんなふうにして,何も紙はありません。でも,こんなふうな動きが子供たちの中に自然にできます。
  それから,これは応援団です。運動会の前のリハーサルのときです。赤組がリハーサルをし,その後,白組が出たときに,何も誰も言わない,ここに指導者がいないんですが,赤組の応援団がさっと来て,白組の邪魔をしないように,物陰に隠れるわけですね。そしてここで,きょうはどうだったか。そのときに,この応援団長が言います。体育館で声を出しているのに比べて,外だと声が余り通らない。だから,150%の声を出さなければいけないと,みんなに宣言をします。そのことによって子供たちが,自分はどうだったかなと,そんな振り返りをする姿が出てきます。
  運動会当日は,よく皆さん御存じなんですが,これ前日です。3年生が4年生の姿を見ています。相互評価になります。これは5年生が6年生の評価を。そしてこのように手を挙げて,どうでしたか,こんなふうな。これは究極のキャリア教育でもあると思うんですね。あんな6年生になりたい,あんなすてきな踊りができるためには,どうしたらいいんですか。これは次につながる学習にもなろうかと思います。
  そんな姿がいろいろある中で,1年生だって負けてはいません。1年生,運動会の翌日に,近くの幼稚園,保育園,全てを呼んで,自分たちの演技を見せます。そのことによって,どうだったかと問います。
  つまり,今,各学年で見られているこういう姿が,私たちをまた支えてくれているということにもなろうかと思います。
  二つ目,現状の課題。指導者が複数で行うときの評価,これは非常に難しいものがあります。これは栄養士さんと担任の先生によって授業をしています。小学校の中では,こういう姿が非常によく見られます。英語のAET,地域の方,出前授業,様々な形でありますが,その辺りを価値観を共有すること,指導する,そういった指標を一緒に論議すること,それが必要かなと考えています。
  それから,配慮を要する児童への評価,主体的に学習に取り組む態度の評価。この辺りは,三つが今,課題として表れています。
  例えばこれ,学年で行っています。つまり,4人の教師がいて,そして学年で行っているときに,同じ評価観を持って,そして多様な,多面的なということで,両方の良さを生かしながら,どんなふうに子供を評価していくか。この辺りは,まだまだ課題が残っているかと思います。
  主体的に学習に取り組む態度の評価。この辺り,非常に難しいものがありますが,例えばこれは,今お話しさせていただくのは,地域の方が来て,そしてその方に質問したり,一緒に授業を作っていったりする中で,その中で,その方にも,こんなことがありましたよというためには,やはり,そういった出前授業の方にも,同じようなスケールを持っていただけるといいかなと思っています。
  最後になりました。今後の取組です。系統立てたカリキュラム作成の必要性があろうかなと思います。これも誤解しないでいただきたいのは,新たに作るということではなく,今あるものを,どう整理するか。
  本校では,こんなことを今,手掛けています。教科固有のもの,それと汎用的なもの。いろいろ教科の中には,これが織り交ぜて,そして混在しております。それをきちんと分けるのではなく,こういうことなのではないかということを,私たちはそろそろ,もう考えなければいけないねという動きになっております。
  例えばということで,今申し上げたのが,一番上が教科固有,一番下が汎用的なもの。これに学習の基盤となる資質・能力の部分がたくさん入ろうかと思います。言語能力や問題解決,それから情報活用能力等も,ここに入るかと思います。
  どうしても,それに入らない真ん中のものというのが当然出てきます。それに我々は今,苦労しながら,今こんなものを作っているんですけれども,これは何も新たなものということではなく,多分この辺りの真ん中のものや下のものがうまく融合して,複数的に私たちの評価となる指標になるかなと考えています。
  今,自分たちがやっていること。多分どの学校においてもワークシート的なもの,それから資料的なものを作成しているんですが,やったことを残していく,そういったことで,これを評価できるものにならないだろうか,今あるものを利用できないものだろうかということで,例えばこんなものが今できています。ただし,これだけで評価するわけにはいきません。ですから,当然これと教科特有のものと併せながら,学ぶ内容と学び方の両方からの評価という感覚を持っていなければいけないなと思います。
  三つ目,外部機関の積極的な活用による充実。これは,先ほどの地域の方を招いたときの評価をどうするかということと話がつながっていくと思います。
  例えば,こんなICT関係も今どんどんやっていかなければいけない中で,DeNAさんが入っておりますが,その中で,こうやってDeNAの方にも,子供の評価という視点で,いろいろ一緒に授業を作っていくという,その姿勢が大事かなと思います。
  そして学校長として一番悩ましい問題が,組織的にカリキュラムをどう作っていくか。本校では,もともとあるいろいろな組織というよりは,プロジェクト型を行っています。プロジェクト1は学習に関すること,そしてプロジェクト3は家庭学習に関することということで,今,特化して印を付けさせていただきました。ちなみに2は体力向上,4は心の教育,そして5は地域連携ということですが,プロジェクト型で,ここで今カリキュラムを中心にやっていこうかなというふうにして,ほんの少し歩み始めているところであります。
  そして一番これが,先ほど幼稚園,保育園の話がありましたが,同時に中学校との連携というのも大事になっていくかと思います。学校での学習は家庭にどうやってつないでいくか,そしてそれは中学校にどうつないでいくか。
  まず見ることが大事だということで,向こう側にいるのは,これは小学校の先生です。手前にいるのが中学校の先生です。一緒に英語の授業をやってみませんかということで,今4こまやっております。こんなふうにして,卒業したばかりの小学生が,中学校になると,こんな英語をやっていく中で,どんな価値観でやっていくのか。まず見ることからスタートしなければいけないねということで,やっております。
  いずれにしましても,私からの話はここまでですけれども,資質・能力を連動させたカリキュラム作り,それから現場においては,がらりと変わる認識ではなく,今行っていることをどう整理していくかということ。学習評価はカリキュラム作り,児童指導,授業改善,全てに連動することだなと,私はこれをまとめながら思ったのが正直な感想です。
  私からのお話は以上です。ありがとうございました。
 【市川主査】  ありがとうございました。それでは次に伊藤委員,お願いいたします。
 【伊藤委員】  それでは失礼いたします。山口県の光市立浅江中学校校長をしております伊藤と申します。
  私からは近隣の中学校の校長等から聞き取ったものも含めまして,先日配られました論点案の幾つかの点について,学校の立場からの意見を述べさせていただきたいと思っております。前回欠席をしておりましたので,ちょっと様子の分からないところもございますけれども,今後の検討の参考になればと思っています。
  お手元に資料をお配りしております。資料に沿って,まず御説明をさせていただき,途中から前のスクリーンを少しお示しをさせていただきたいと思います。
  まず学校現場の状況でございますが,学校現場は,このたびの,例えば特別の教科・道徳が入ってきて,これに評価が伴うというようなこともあり,今後ますます忙しくなっていくんじゃないかという思いを持っている教員が大変多いように感じています。
  そこで1点目は,「教職員の働き方改革」との関連から3点ほど。
  評価を充実させようとすれば,それだけ負担が増えるのは仕方がないだろう。しかしながら,その前提として,教員が本来の業務に集中できるような働き方改革が着実に進んでいくことが大事だ。教員の人数を増やすことができれば,その分,評価の精度も高まっていくと,こういう思いを持っている教員が多くございます。
  このことは別の場で検討がなされる内容であるとは思いますが,教職員の定数改善でありますとか加配措置等による対応を文部科学省でしっかりと進めていただければ大変ありがたく思っています。
  そうした中で,評価の在り方についてでございます。二つ目の丸ですが,現場の実態に即した,より効率的で現実的な評価の在り方を検討していただきたいということ。そして,分かりやすく,余り負担を感じさせない示し方を工夫するということも大事な視点ではないかと思います。
  また研修につきまして,三つ目の丸になりますが,学習評価の研修を通じて,教員が評価をより効果的・効率的に行うための知識やスキルを身に付けることは,長い目で見れば教員の業務改善につながってくるのではないか。
  実は授業研究などは比較的,学校現場では頻繁に行っているものの,学習評価の研修ということになりますと,余りやられていないような感じがしております。ですから,研修そのものは時間をとられ,負担に感じますけれども,長い目で見れば,こういうことをしっかりと研修することは業務改善につながってくるのではないかという意見もありました。
  次に2番の「主体的に学習に取り組む態度」の評価についてです。この観点を大事にしてほしいという意見がたくさんございました。
  一つ目のところにございますように,情意領域の評価は難しさはあるが,一方で「主体的に学習に取り組む態度」が,通知表等において評価項目として存在することが,その重要性を子供や保護者に伝えるための有効な手段となり,一つのメッセージとなるということで,これはとても大事だということです。
  それから二つ目にありますように,評価されるからこそ,多少の背伸びをして成長が促されるプラスの作用は見逃せないんじゃないか。外発的な動機付けによるものも内発的な動機付けに発展するということで,主体的に学習に取り組む態度が本物になっていく可能性もあるのではないか。
  さらに三つ目ですが,「知識・技能」等において低位な状態であっても,課題に向かう意欲は高いというケースもございます。情意領域を評価しない場合は,そのような子供のモチベーションが失われてしまう可能性もあるということでございます。
  次に評価方法に関しまして2点でございます。
  一つは,今行っております観察による評価についてです。目立つ子供は見取りやすいんですが,一人の教員では十分な評価は,やはりできない。ですから,これは先ほどの話に関連しますが,教員数を増やし複数の教員で授業を行う。つまり評価者を増やすことで評価の信頼性を高めることができると。また,場面によっては,子供の性格でありますとか集団におけるほかの子供との関係性といったもので,なかなか集団の場で表現することが難しいような子がおりますから,そうした子供も考慮に入れて評価をする必要があるという,ちょっと観察による評価の難しい面が出てまいりました。
  それからもう一つは,今,前のスクリーンにございます授業の振り返りシートについてでございます。これは,実は山口県では県内の小・中学校で,この振り返りシートを学校ごとに作成し,活用をしております。この様式は本校で作ったものでございます。学校によって様式は様々でございます。
  本校のこの振り返りシートの目的は,二つあるんですが,1番が子供にとって学びの振り返りのためにやっている。それから二つ目は,教師にとって授業評価,授業改善のためにやっているということで,左側に本時の学習内容。2枚目のペーパーにまとめたものをお示ししておりますけれども。そしてその右隣が,授業に関する評価,5項目です。「本時のねらい・課題がわかった」とか,「学習内容が理解できた」とか,「仲間と意見交換の場があった」とかですね。これは常に同じではございません。学校では統一しますけれども,またといいますか,この項目を変えてシートを作るということもございます。
  それから,その右隣が記述欄になっていますが,分かったことや疑問に感じたことなど。
  この新しいバージョンになりますと,その前にキーワードという欄を入れています。このキーワードは,これは教員が子供の質問に対して附箋で,その答えを,コメントを返して,子供が,これ理科のファイルなんですけれども,教員からもらった附箋をずっと貼っていって,自分の学びに活用していると,そういう形のファイルです。
  このバージョンは,途中でキーワードという欄が出てきますけれども,これは教員が提示したり,あるいは子供が授業の中で,これが大事だと思ったものを書いたりしています。これは美術のファイルです。左に作品を一緒にとじています。
  ちょっと見づらいんですけれども,一番上,これデッサンの授業の振り返りシートです。スポーツトレーナーのマッサージをしているところを見たことがないので描きにくかった。でも,調べて,しっかりとマッサージしている様子を表現したいです。最初に書いています。その次の時間は,質を出して,さらに立体感も出すところが難しくて,明度をしっかり考えて出すようにしたいですと書いています。教員が大事なところに下線を引っ張って,頑張って仕上げていこうみたいなコメントを出して。
  こういう形で毎時間毎時間,子供たちの記述したことに対して教員が返してやることによって,子供たちが学びへ向かう態度が少しずつ向上してくるのではないかという,これを一つ狙っています。
  このシートの取扱いについては,教員によってまちまちですけれども,例えば記述欄の内容や,キーワードがちゃんと書けているかどうかを見ながら,これを関心・意欲・態度の評価に活用している教員もいます。
  このシートも完全ではございません。改良も必要でしょうけれども,こうしたものを使って,子供たちの主体的な学びを促し,また見取っていくことができるのではないだろうかと考えているところです。
  できれば子供が書いたことについて,きちんと,その学習をしているかどうか。例えば学習の成果物等を併せて継続的に見ていけば,ある程度ですけれども信頼性の高い評価ができるのではないだろうかと思っています。
  これは先ほど,ちょっと言い漏らしましたが,本校で生徒アンケートをとったときに,「振り返りシートは自分の学習に役立つと思う。」,「よくあてはまる」「あてはまる」が大体80%になっています。あるいは「学習内容を理解できたと思えることが多くなった。」,「よくあてはまる」「あてはまる」がトータル80%ですね。こういう数値を示しています。
  続きまして,資料の3番,評定についてです。これは先ほど髙木先生のお話にもありましたけれども,現状では,私の周囲では,100%に近い教員が,この評定は必要であるという考えを根強く持っている状況でございます。
  理由としては,そこにありますように,評価は,子供,保護者にとって,分かりやすさが大切だ。通常,評定をまず保護者も子供も確認し,その後に,その根拠となっている観点別評価に視線を移し,観点等に応じたフィードバックがなされる。評定がなければ,成果や成長の度合いも分かりにくくなり,達成感や成就感を得ることが難しくなるのではないかであるとか,ABABで評定が4もあれば,ABABで3もあると。現在の形は,こうなっています。観点別評価と評定がセットになって初めて詳細な情報となっている。といったように,まだ評定が必要だと考える教員が大変多いということですから,今後この辺りも踏まえて御検討いただきながら,保護者も教員も納得できるといいますか,そういうことであればというふうに納得できるような出し方,在り方を検討できればと思っています。
  最後に,その他としまして2点ほどです。
  1点目は,「社会に開かれた教育課程」の実現のためには,学習評価の考え方もまた,これまで以上にオープンにされるべきだということです。平成28年1月には「次世代の学校・地域」創生プランが示されましたけれども,今後,コミュニティ・スクールや地域学校協働本部の取組の中で,地域住民が教員とともに授業に入り,学習支援を行うといった場面が増えてくるだろう。先ほど関谷先生の御発表にもありましたけれども。
  これは先ほど,ちょっと言い漏らしましたが,本校で生徒アンケートをとったときに,「振り返りシートは自分の学習に役立つと思う。」,「よくあてはまる」「あてはまる」が大体80%になっています。あるいは「学習内容を理解できたと思えることが多くなった。」,「よくあてはまる」「あてはまる」がトータル80%ですね。こういう数値を示しています。
  これは技術・家庭科の技術の木工の授業の様子です。このように地域住民で木工がある程度得意な方が入ってこられて,正規の教員は一人なんですが,こうした作業を一緒に支援をしていただいています。
  それから,これは道徳の授業です。子供同士で話し合う場面を,これも地域住民ですけれども,大人の方に入ってきていただいて,一緒に議論するというようなことをやったりしています。
  それから,これは英語の授業です。これも地域住民の方,このグループには2人,手前の男の方と向こうの女の方,入っていらっしゃいます。向こうにALTの方がいらっしゃいますけれども。
  こういうふうに地域住民が入られて学習支援をしてくださるという場面が,これから先は,もっと増えてくるだろうと思うんですね。そのときに,評価をする主たる人は教員ですけれども,こういう地域住民の方のお力をかりながら見取っていくようなことができないかということも今後は視野に入れて検討していく必要があるのではないかと思っています。
  もう一つは,小中一貫教育等が進む中で,学習評価の在り方も,校種を超えた,より一貫性のあるものにしていく必要があるのではないかと。先ほど髙木先生からございましたように,例えば小学校では3段階の評定ですね。通知表なんかでは二重丸,一重丸,三角のような形で,よく示されています。ところが中学校に入ると突然1,2,3,4,5という評定が出てきます。ですから,この辺りも,9年間を見通した,より滑らかなものになっていくというふうになればいいのではないかなと思っています。
  なかなか解決策が,こうというところまで申し上げることができませんでしたが,中学校の校長の立場で現在感じていることをお話しさせていただきました。ありがとうございました。
 【市川主査】  どうもありがとうございました。それでは,3人の委員の方々からの意見発表を受けまして,これからは意見交換を進めてまいりたいと思います。御発表に関しての御質問とか,あるいは御意見等ありましたら,名札を,いつものように立てていただければと思います。時間は約50分ぐらいをとりたいと思います。
  それでは,いかがでしょう。では,天笠先生。
 【天笠教育課程部会長】  すみません,途中で失礼せざるを得ないので,まず最初に発言させていただきましたことを,お礼申し上げたいと思います。また,3人の委員の方々の御発表,これからのこのワーキンググループが深めていくべき議論のポイントというんでしょうか,それを大変分かりやすく明示していただいたのではないかなと受け止めさせていただきました。
  特に髙木委員の御発表は,この学習評価が長年抱えている課題,なかなかそれを乗り越え切れない,そういう課題を大変分かりやすく,また大変整理されて,私どもにお示しいただいたと受け止めさせていただきました。
  したがいまして,今後,学習評価の在り方を検討していくに当たって,常に御発表いただいた現場が抱えている課題にどう向き合っていくのか,それをどう越えていくのかということの柱,一つ一つをしっかりと受け止めて議論を深めていくことが大切だと。またそういう方向性を,その後,関谷委員,それから伊藤委員が,現場の実情に沿って,より肉付けをしていただいたのではないかと,こんなふうに,まず受け止めさせていただきました。
  まずそれが一つでありまして,その中には,これまでに余りそこら辺のところが深くは扱われてこなかった,例えば働き方改革と学習評価の関係というんでしょうか,そういうものもどういうふうに整理していったらいいのか,捉えていったらいいのかということも,今後取り上げて,意見の交換等々をしていく必要のあるものではないかと思いました。
  その上でなんですけれども,もう一つ改めて申し上げたいこととして,今回の答申ではカリキュラム・マネジメントが提起されたというのは御承知のとおりかと思います。そのカリキュラム・マネジメントということと,これから深めていく,この学習評価のそれというのを,どういうふうに,ある面をつないでいくのかとか,どういうふうに整合させていくのかというんですか,そういう観点からも,また御検討をしていただきたいし,あるいは御一緒させて,意見を交換させていただければと思っております。
  いわゆる負担感というのは,いろいろな角度から,あるいは実質的な負担ですね。そういうことがあるかと思うんですけれども,こういう答申からいきますと,カリキュラム・マネジメントというのが提起されたと。それは伝えられてきて,また,このたび学習評価の在り方ということで,新しい学習指導要領の趣旨に沿って学習の在り方を変えていくと。そういう発信の仕方は,現場の立場からすると,二つ求められたと,そういう受け止め方というんでしょうか。要するに,カリキュラム・マネジメントを受け止めて,どう消化するかということと,学習評価の在り方は新しい方向性にとって,それをどういうふうに展開していくのかということなんですけれども,実はカリキュラム・マネジメントの展開と学習評価の改善というのは決して二元的な扱いではなくて,やはり一つのつながり,流れの中にあってと,そういうことが大切なんじゃないかと。
  そういうことで,御指摘いただいた関谷委員の御発言の中にもカリキュラム作りと,そういう言葉の中に,方向性とか在り方の検討は,私は位置付けられていたのかなと思うんですけれども。
  要するに,学習評価を非常に狭い範囲でクローズドにするのではなくて,そのこと自体がカリキュラムの評価ですとか,学校の評価ですとか,あるいは,いわゆるカリキュラムのPDCA,そういう一連のサイクルの中に位置付いているものであって,学習評価を充実させていくということがカリキュラムの評価につながる。あるいは,そういう観点の中で学習評価の在り方を提起していくということが,このワーキンググループの,また一つの方向性ではないかと思っておりまして,そういう観点で,また今後,委員の皆さんと御一緒させていただければと思っております。
  私から以上,述べさせていただきます。どうもありがとうございました。
 【市川主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。無藤先生,お願いします。
 【無藤教育課程副部会長】  お三方の発表,それぞれ新しい学習指導要領,大きな方向性の中で多少,特に評定の位置付けは違う部分はあったでしょうけれども,大きな共通で,本ワーキンググループの大きな方向が見えてきたと思いました。
  そのお三方の話と重なりながら,私の意見といいますか,解説めいたことをしたいんですけれども,髙木委員でしょうか。学力という言い方ではなくて資質・能力という言い方でいくんだということを明確におっしゃっていただいたと思いますけれども。正確に言うと,学力という言葉,別に否定しているわけではないので,学力を資質・能力ということで,より構造的明確化したということだと思っておりますけれども。
  実際,資質・能力の三つの柱。特に評価に関わっては3番目が主体的に学習する態度ですから,従来の学力の3要素と呼んでいたものを基本的には引き継いでいますので,そこはそんなに変わっていないと思うんですね。
  ただ,資質・能力という言い方の中で,学力と呼ぶと身に付いた力としての評価という感じが強いんですけれども。同時に従来も学力ということで,学ぶ力という言い方も読み替えといいますか,していたと思いますけれども。資質・能力という場合には,そういう意味では構造的といいますか,身に付いた力という面とともに,プロセス的とでもいうか,学んでいくプロセスにおける働きに注目するという面と,さらに非常に具体的に子供が学習するときのスキルとして押さえる面のいわば統合的な概念だと私は理解しています。
  その辺が,お三方の発表の中でも,特に実践事例の中では出てきているところではないかと考えています。
  2番目は,主体的に学習する態度ということについて,どう捉えていくかでありますけれども。中教審答申でも,学びに向かう力,人間性等という3番目の柱について,特に人間性と呼んでいる非常に広い部分については評価になじまないので,個人内のいわば所見等々で示そうということになったと思うんですけれども。同時に,主体的に学習する態度という,用語は同じでありますけれども,従来の捉え方よりも広げながら,学びに向かう力で議論したことを含み込むという方向が示されていると私は思います。
  何を言っているかというと,従来,主体的に学習する態度というのを,イコール関心・意欲と言い換えることも多かったと思いますけれども,答申などでも意欲に限らず意思,粘り強く取り組むとか,メタ認知といいますか,その子供なりに展望,自分の学びを展望していくということでしょうか。振り返りと今後の学びですね。
  更に言えば私は,子供にとって,その学ぶことの意義付けみたいなものですね。理科なり,算数なり,何でもいいんですが,それが自分にとって意味あることであるとか,あるいは自分の将来を切り開いていくことだということ,あるいは先ほどの発表にも,学びたいことを示すというのが自己評価としてありましたけれども,一つの単元なり教科を学んで,よく分かったということとともに,それを基に,更に学びたいことが生まれてくるみたいなことも含めたらいいと思うんですが,そういうことを含めて,主体的に学習する態度と考えていくということなのではないかと思います。
  そういう意味では,主体的に学習する態度というのは情意的なところを中心としながら,かなり広がりを持っているところなので,その評価の仕方,また学習者である子供に,それをどういうふうに自覚的に把握できるようにするかということについての,より詳細な議論が必要だと思いました。
  3番目,これで終わりです。評定の問題なんですが,どう扱うか,ワーキンググループとしての議論だと思いますけれども,評定というのが,いわゆる説明責任としての働きとともに,総括的な評価の位置付けをある程度持たせていたと思いますが。少なくとも,従来もそうですけれども,特に今回の議論,お三方の議論を踏まえると,仮に総括的な予定みたいなものが必要だとしても,その,いわば背景として,より詳しい記述があるものであって,それが資質・能力に該当する三つの柱に基づくような,よりポートフォリオなり,あるいはもう少し整理した資質・能力ごとの記述,そういうものがあるべきであると。
  そうすると,それを介して,今度は授業,単元における形成的な評価の在り方とつながれているんだと。そういう総括的な評価と形成的な評価の連続的な捉え方と,より詳しい,すてきな記述によって量的評価を支えていく,裏付けていくということが提起されたと理解しました。
  以上です。
 【市川主査】  ありがとうございました。それでは,秋田委員,どうぞ。
 【秋田委員】  東京大学の秋田です。お三方が出された問題提起は,まさにこれからの学習と評価の一体的な展開の在り方を分かりやすく御説明くださったと思いました。
  特に,先ほど無藤委員からもありました,評定と観点別の評価の問題でございますけれども,評定を最終的にどういう形にするかという前に,その観点というところを,どのような根拠で評価しているのかを,誰とどのように共有していくのかということの問題を出していただいたと考えております。
  それは,教員同士の中でもそうですけれども,やはり先ほど髙木委員から御指摘がありましたように,保護者であったり,それから社会一般に対して,どういう説明がこれまでなされてきたのかということを考えますと,私もそうでしたけれども,保護者として子供の学校などに参加しても,学習の狙いや指導は伺っても,学習の評価がどのような観点でなされているのかということを明確に知らされた上で「あゆみ」等が渡されるということは必ずしも,連絡とかお知らせはあっても,共有されていなかったように思います。保護者も学習観というか,評価観を,やはり今後共有していくことが大事と考えます。
  それが先ほど小学校,中学校ともに地域の方にも開かれた形で,複数の目で評価できるような形。それは数量的客観性ではなく,複数,多数の人の目で見て評価するというような形での信頼性や妥当性を高めるお話を頂けたのではないかと思っております。
  もし可能であれば,お三方それぞれが,どのような形で,この保護者が,やはり評価観を共有していくためには,どういう工夫があり得るのかということをさらに伺ってみたいと思っております。そして,子供同士が,子供が,子供自身も自分の学習を振り返り,更に向上させていくためには,本日,お三方ともが,それぞれワークシートに,例えば観点別の評価の観点を示しながら子供が振り返るというようなことを出してくださったわけですけれども,こうした子どもが評価の観点を意識できる在り方がとても重要であろうと考えます。
  私自身が学校に入れていただいている学校では,子供の振り返りと同時に,中高の場合などでは相互評価というものが大事にされています。教師が全員を見ることはできなくても,同じ観点で,友達の方が,教師が全員を見ることはできなくても,かなり客観的に小学校高学年,中・高では,生徒同士が以外に細やかに見ています。それがまた事後の評価を振り返るときにも,学習を振り返るときにも有効になっているように思います。そうしたことを積極的に活用していくということが必要であろうと思いました。
  そして3点目として,先ほど伊藤委員からも出されました。評価に関して,本日見せていただいていると,かなり先生たちがスタンプを押したり,コメントをしたり指導行為であると同時に,かなりの負担が,やはり教師にあるということが感じられています。この業務負担ををどう乗り越えていくかということも論ずべき課題と考えます。
  というのは,教員養成部会に出ていましても,例えばキャリアパスとか,それから,これから育成指標ということが考えられていますが,そのときに,若手の教員が増えてきたときに,ここにおいて,より複雑なルーブリックやポートフォリオの作成や,パフォーマンス評価というものが,どのように学校で機能し得るのかということを問題にしない限り,かなり今の学校では実現が難しくなってきているのではないかと考えます。
  これは教員養成の中での学習評価の在り方の指導とも関わってまいりますけれども,その辺りも今後の検討事項と思っております。
  保護者との評価の共有というところは,お三方に伺ってみたいと思っているところです。ちょっと長くなりましたが,以上でございます。
 【市川主査】  ありがとうございます。また御質問については,少しまとめて答えていただくみたいな形で,後でよろしいでしょうか。今の御質問,私も大事なことで,聞いてみたいなと思ったんですけれども,やはり,どういう評価のシステム,この評定はどうやって出てきているのかとか,一体先生方はどんなことをやった上で評価をしているのかということを子供あるいは保護者ともどうやって共有しているのか,説明していくのかということは非常に大事な点かなと思いますので,またそれは後でお願いいたします。
  河野委員,どうぞ。
 【河野委員】  ありがとうございます。河野です。本日はお三方に非常に分かりやすく,そして課題や今後のことを御説明いただき,本当にありがとうございました。
  早速なんですけれども,先ほど髙木委員から御説明いただきました54ページのところが,私はとても大切ではないかと思いまして。私は立場的に民間で人材育成や人事の評価等をしているものなので,学校教育の評価に詳しいわけではないんですけれども,評価をどう使うかということは,とても重要なことだと考えていました。今,秋田委員から御紹介があったとおり,できれば,私は本人と保護者とに,それぞれ面談をすることを,これからしていくというのも一案じゃないかなと思います。
  民間では,一つ評価が出たときに,又はその前の場合もあるんですけれども,評価面談というのをしたりします。それは,一つは納得性が高くなるということもありますし,それから次へのステップでアドバイスという機会でもあるので,それはとても大切なことかなと考えました。
  それから二つ目なんですけれども,誰が評価するかです。もちろん教師が評価をするということだと思うんですけれども,本日は伊藤委員や関谷委員からも他の学年の方がよく見ているとか,それから地域の方に見て評価していただけないかというような,それ評価という言葉を使っていいか分からないんですが,いろいろな御意見がありまして,これから新しい時代なので,一元的な評価だけではなくて,やはり多面的に。それをいかに,また評価の上にのせるかというのは難しいんだろうと思うんですけれども,やはり,これからは少し多様な人の,違う切り口からの視点というのも,一人の人を見るときに,とても重要なのではないかなと思いました。
  それから,ちょっと細かいことなんですが,最後に関谷委員から頂いた資料で,27ページから29ページのところなんですけれども。とても29ページが興味深く拝見したんですが,これはどんなふうに今後展開させられる御予定というか,なのかなというのを,もう少し詳しく伺いたいと思いましたので,後ほど時間があったら,お願いしたいと思います。
  以上です。
 【市川主査】  ありがとうございます。ほかの委員の方,いかがでしょうか。では,どうぞ。
 【渡瀬委員】  髙木委員,関谷委員,伊藤委員,ありがとうございました。伊藤委員から,よりよい評価をするためには,それに掛ける時間が増えていくので,教員にとっての負担感は増すことになる。しかし評価というのは,もともと教員が為すべき業務だから,それに集中していかれるように働き方全体を改善しなくてはいけないというお話がございましたけれども,私もそのとおりだと思います。
  やはり教員にとっては授業が一番大事なことであって,計画を立てて,良い授業をして,評価をして,そして次の学びにつなげるというPDCAを回すということがセットで必要だと思います。新学習指導要領でいう資質・能力を高めようとすると,どうしても評価は,今までとは違った評価をしなくてはいけないということが出てくると思います。
  そういう中で,髙木委員がお話しされた,多面的,多角的な学習評価ということと,効果的,効率的な学習評価ということ。一見これが相反するもののように感じますが,やはりこれらを両立させることを目指していかないといけないのではないかということを感じます。
  時間を掛けるところには掛けなくてはいけませんし,それから効率的に行えるところは,やはり効率的に行っていくということだと思います。
  私が最近,自分の学校で経験したことなんですけれども。例えば試験の中で記述式の問題が今後増えてくることが多いと思いますけれども,私どもの学校ではIB,国際バカロレアのクラスがございますが,試験はほとんどが記述式なんですね。私,恥ずかしながら,つい最近知ったんですけれども,その試験が終わると,その教科の担当の教員,中学,高校で大体どの教科も三,四人いますけれども,その教員が,各クラスのテストのペーパーを持ち帰り,何人分かを抜いて,名前を伏せて,それを担当の教員が全員で評価してみるんですね。その評価の目合わせをするんです。そして,その目合わせが終わってから,それぞれ担当の教員はクラス全員分の評価をするという手間を掛けています。大変なことだなと思いました。ただ,生徒たちにも,そういうふうにして評価をしているということは知らされているので,そういう意味では,評価が返ってきたときに納得するんですね。
  そういうところには,時間を掛けなくてはいけないと思います。
  一方で,関谷委員がおっしゃいましたけれども,例えば学習活動の中で思考を可視化できるような,そういうワークシートみたいなものを使うことで効率よく評価をする。先ほど秋田委員もちょっとおっしゃいましたけれども,教材研究をする段階から,どういうふうにこれを評価していくかということも考えた上で,教材研究をして,教材を作成していくことで,そのまま成果物として出てきたものが評価のためのポートフォリオになる。それは個人の学習活動だけではなくて,相互評価的なものも含めてだと思いますけれども,やはり,そういうものをポートフォリオとして有効に使うことで,プロセスをなるべく効率よく評価することができるのではないかなとも思います。
  お三方のお話を伺わせていただいて,そのような感想を持ちました。ありがとうございました。
 【市川主査】  ありがとうございます。では鈴木委員,どうぞ。
 【鈴木委員】  高等学校で入試のときに評定をどういうふうに考えているかということ,静岡県を例にして御説明したいと思います。静岡県は評定とペーパーテスト併用で選抜をするという方式をとっております。詳しいことは,ちょっとここでは御説明できませんが,実は非常に悩ましい問題に,いつもぶつかっておりまして,評定は非常に高いんですがペーパーテストは非常に低い,逆に評定は低いんですがテストは非常によくできる子というのが同じ評定で出てくると。進学校は何を求めているかというと,できる子が欲しい。要するにペーパーテストや,そういうのができる子が欲しいと。そうでない学校は,学校のいろいろな秩序の問題からいって,どっちかというと,従来の観点で言えば関心・意欲・態度の高い子が欲しい。余りできることを求めていないと。それが評定で,ごちゃ混ぜになって来られますと非常に困るわけです。
  要するに,評定が非常にいいから入学を許可した生徒が,全く授業の方はできないと。そうなると私どもは,これは関心・意欲・態度,従来の観点で言えば,そちらが高くて評定が高く出ている生徒だと。学校によっては,そういう生徒じゃなくて,とにかくできる生徒が欲しいと。多少,逆に関心・意欲・態度が高くても,実際の授業についていけないと,駄目になってしまう。
  学校によっては,先ほど言ったように,進学校でない学校は逆に,関心・意欲・態度が高くて授業に積極的に取り組んでくれる子,ただし余りできない,でもその子の方が学校としてはやりやすいと。
  ですから,いろいろなものをごちゃ混ぜにして示されても,高等学校としては,その中身が知りたいといつも思っているわけでして,そういうふうにいろいろな情報があって,その生徒の個性を知って,その学校に適した生徒を欲しいというのが高校の願いで,いろいろなものをまとめて示されても非常に困るというのが静岡県の現状です。
 【市川主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
 【佐藤委員】  失礼します。髙木委員,関谷委員,伊藤委員,ありがとうございました。
  私も日頃考えていることの評価の改善点が幾つか整理されて出てきたなと思っております。
  まず第1点は,終末的な評価から過程的な評価への転換ということかなと思っております。終末的にペーパー中心に行われていたものから,単元という一つのまとまりを通して,過程的にどう評価していくかということの一つの方向性が出ているんじゃないかなということを感じさせていただきました。
  二つ目は,一面的な評価から多面的な評価ということかなと思っておりまして,教師が子供を評価するということが学習評価なわけですけれども,それだけではなくて,先ほどありましたように,一教師だけでなくて複数の教師,又は地域の方々はじめ様々な方々の多面的な評価をするというのは,これ観点によるかもしれませんが,そういう方向性が出ているのかなと思っています。
  この後は,私も常日頃考えてきたことですけれども,閉鎖的な評価から開放的な評価へというのは一つ方向性が考えられるかなと思っています。先ほど秋田委員のお話もありましたけれども,本社にすれば,何を基準に,そして何を資料として,どのようなプロセスを経て評価されたかということが,やはり閉鎖性の中で行われてきていて,これを少し開放的に示していく必要があるかなということが出ているかなと思いました。
  あとは私見にもなりますけれども,2点,今日のお話で気付かせていただくことができます。
  一つは,髙木委員の資料の40ページにありますが,平成22年の教育課程部会の学習評価の在り方のときも自己評価のこと,出ていたわけですけれども,多分,評価というのが,教師側からの目を気にするようなことがあって,こういうようなことでやって,学習活動としては主体的に学習に取り組む態度とありますけれども,評価を気にしていては,そういうことはできないだろうという,少し児童生徒がアピールするような形で自己評価ということをアプリシエートしていくことが重要かなと思っています。
  そういうことでは,子供たちがアピールするような自己評価というものをもう少し考えていかなきゃいけないし,これは既に道徳などでは認め励ます評価ということでなされているかと思いますが,個人内評価も含めてですけれども,そういう点は一つ考えていかなきゃいけないということがあるかなと思いました。
  もう一つは伊藤委員の,先ほど長い目で見れば教員の業務改善につながるということで,学習評価の研修についてでございます。確かに教免法の中でも,学習評価に関する免許法上の授業科目という,講義科目というのはございませんです。そういう点から考えれば,全ての学習指導法の中に入っているかと思いますけれども,ただし,やはり,どれほどというのは大学等によって違うかと思います。そういう点においては,学習して,最終的にはどういう資質・能力が身に付いたかという評価に全ては帰結していくわけなので,そういう点での学習評価についての教員の研修ということが授業研究,ひいてはカリキュラム改善にも資するのではないかと考えておりまして,この点も,このことで議論できればなと思っています。
 【市川主査】  ありがとうございました。ほかの委員の方,いかがでしょうか。
  それでは,今,特にないようでしたら,幾つかの御質問がありましたので,少しそれらを整理して,まとめる形でお答えを頂きたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。 それでは,髙木委員からお願いいたします。
 【髙木委員】  お願いします。基本的には秋田委員からの御質問に関する回答になるかと思いますが,二つあります。
1点目は,保護者への評価への考え方の共有・理解ということ,さらには社会的にも評価とは何かを知ってもらうことが重要です。評価ということが,今変わろうとしているんだということを認知していただかないと評価の在り方が変わらないと思います。評価は子どもに序列をつけるためではなく,子どもを伸ばすために行おうと周知する必要があります。日本の教育は約100%近く,皆さん学校教育を経験しているので,自分の原体験を基に評価ということを捉えています。その原体験の中の評価というのは,いわゆる今までの5,4,3,2,1を付けることなんですね。先ほど伊藤委員からも出ましたけれども,中学になったら5,4,3,2,1になるということが出てきたときに,保護者は初めて,小学校でも最初からちゃんと5,4,3,2,1を付けてくれていたら,もっと頑張っていたのに,なんていう意見を結構持っているんですよね。ですから,その5,4,3,2,1をつけるということが評価だと思われていることが問題なのです。
  例えばドイツへ行ったら,1が一番いいんですよね。ドイツは,オール1じゃないと医学部入れないんですよ。
  だから,5,4,3,2,1という学習評価の考え方の呪縛から,まず逃れ転換するということ。それは何かというと,今行われている評価が目標準拠評価であって,その目標というのは学習指導要領の内容にあるんだよということがきちんと社会一般や保護者,児童生徒に理解してもらうことが重要だと思います。そのことについての社会的な認知がまだ低いかなと思います。
  そもそも評価というのは,先ほどから自己評価,相互評価が出ていますけれども,子供を伸ばすために行う評価が大事であって,値踏みして5,4,3,2,1付けることだけではないということ,やはり,これをみんなで考えていかないと。一緒にみんなで良くなろうねという,そういったことの評価観にしていかないと,単なる評価や値踏みや仕分け,さらには序列をつけることで終わってしまうということになります。それが第1点です。
  2点目は,天笠部会長はいらっしゃらなくなりましたけれども,私も基本的には今回の学習指導要領改訂というのは全体像が非常に大事だと考えています。学習指導要領の総則含めて。カリキュラム・マネジメントから,要するに学校目標をどういうふうにするか。さらには,年間計画,教育課程の編成,単元の授業計画と,それらを作成する中で,今度は1時間1時間で何を身に付けさせなければいけないかというところまでのカリキュラム・マネジメントの全体像を,見せていかなきゃいけないと思います。特に何を評価されるかは,やはり見せておくことが重要だということを言わないと,カリキュラム・マネジメントとしての出口が見えないことになります。
  このことを,私の言葉でよく言っているのは,「評価の闇討ちはしない」ということになります。後出しじゃんけんで,これができたら良かったよなんて言うのではなく,こういう資質・能力を付けようねというのを最初から見せていくことが重要です。そういう合意形成を社会的に行われなければ評価という言葉の呪縛から私は逃げられないなと思っています。
  以上です。
 【市川主査】  ありがとうございます。関谷委員,いかがでしょうか。
 【関谷委員】  よろしくお願いします。先ほどの保護者とどうやって共有していくかということについて,まずお話しさせていただきます。大きく5点あるのではないかなと思って,私,ちょっとメモさせていただきました。
  1点目が,先ほどの話のとおり,一番最初に説明をするという意味において,学年の保護者説明会であるとか,全体の保護者説明会,それからPTAの運営委員会,そういった場面で,まず最初に,こういうことで評価をするというのを説明はしております。中に浸透しているかどうかは別として,そういう努力をしています。
  2点目は,これは次の段階として,年間数回,どの学校でも授業参観,懇談会というのがセットで行われておりますが,必ずセットで行われているときには,授業を通して,きょうの授業では,これを狙って,こういうことを良しとしているんですよ。評価規準という言葉を理解していただけなくても,こういう姿なんですよということを,黒板を板書をそのままにして説明をするということを年間1回はやるように努力はしています。そんなことで子供の,自分のお子さんだけを見てしまうのが親心としては当然なのですが,それを含めて,自分のお子さんがどうだったかということを納得していただくということを行っています。
  3点目ですが,個人面談,それから三者面談では,実際に成果物を見せて,ポートフォリオ,テスト,それから記述したもの,そういったものを根拠に,こんふうにして今やっているんですよということを今現在,本日もですけれども,個人面談をしている段階です。そうやって渡す前に,言い訳ではなく,きちんと説明をした上でペーパーでお渡しすると,そういうことを順序として行っています。
  4点目です。これは保護者というよりも,子供を通して保護者にというルートになろうかと思いますけれども,横浜市では通知表のことを「あゆみ」と言っています。それを渡すときには,ただ渡すのではなく,一人一人じっくりと渡しながら,ここはこうだったねと。すごく頑張ったね,でも次はこうしようねということを,特に前期から後期,それから1学期から2学期,そういった場面で,次につなげるということで,一人一人丁寧に行っています。この時間は何でとるのかと言われたら非常につらいものはあるんですが,1時間しっかり掛けて,1時間計上して,お渡ししています。そこで子供から保護者に伝えられるといいなというのが今,理想と思っています。
  5点目です。これは「社会に開かれた教育課程」とつながるのですが,学校運営協議会というものがございまして,いろいろな知識のある方,それからPTAの方,そういった方々から,いろいろ発信していくことも大切かなと思いますので,我々から先に発信をさせていただきます。そしてそういった方々は,学習指導要領の内容でありますとか,そういったことを非常に理解していらっしゃいますので。とにかく学校は発信がとても下手なので,そういった学校運営協議会を通して我々から発信しなければいけないなというのは,これはまだ努力しなければいけない分野ではあるんですが,やっております。
  そういったことが今,お答えになろうかと思います。
  もう一点ですけれども,今,質問がありました29ページに当たるもの。これについてなんですが,本日の趣旨から説明させていただきますと,実は,このスキルリストと呼んでいるものの青い部分をクリックをすると,そこからの学び方の軌跡のカードが出てきます。これは将来的に,これは理想なのですが,主体的に学習に取り組む態度につなげたいなと思っています。一人1個ずつタブレットがあったとしたならば,それをクリックしたら,自分でこういうことをやりたいんだけど,どうしたらいいんだろう,でも学び方が分からない,進め方が分からない,そういえば,あれ使えるかもしれないと,それをクリックしたときに,例えばスピーチの仕方というところをクリックしたら,スピーチするために,こんな準備をしたらいいということを,ある程度一人で学ぶような,そういうツールにできたらいいなということで,これは学習指導要領で言うところの「主体的に学習に取り組む態度」を,よりサポートするツールとして,できたらいいなというふうにして今,進めています。
  以上です。
 【市川主査】  ありがとうございました。それでは,伊藤委員からお願いいたします。
 【伊藤委員】  失礼いたします。今,関谷委員からもたくさんおっしゃいましたが,本校もほとんど似通っています。
  主には1点目,保護者への共有は,一番最初の成績を返すときの懇談会で,どのように評価をしているかという,出せるものを保護者に提示をしているということ。
  それからもう一つは,本校もコミュニティ・スクールになっていますので,コミュニティ・スクールになっているところは学校運営協議会が設置されています。その場で,既に新学習指導要領の考え方は,このような考え方ですよというようなことを御説明をしておりまして,それに伴いまして,これは細かいことはまだ出していませんけれども,評価の観点も,このような形になっていきますというようなお話をさせていただいています。
  それに伴って,先ほど写真でも御紹介をいたしましたけれども,地域の方々が入った様々な学習支援ということが,具体的な教育活動の中で出てきているわけです。先ほどもありましたが,例えば英語の授業の中で地域の人が入ってコミュニケーション活動をやって,地域の方が途中で,そのグループの生徒に,こうだった,ああだった,もう少しこうすれば良くなるよというアドバイスをされる。そしてまたやってみると。そうすると前よりも,こういうところは良くなったという子供がいるわけなんですね。そういう細かい見取りを,この支援の方にやっていただいているので,その辺のところが形成的評価ということになるかもしれませんけれども,評価の参考の情報として教員が得ることができれば,指導の参考になるのではないかなと思っています。
  以上です。
 【市川主査】  ありがとうございます。今のお答えを聞いた上で,さらに,ここをもう少し御質問というようなことありましたら伺いますが,いかがでしょうか。
  では松尾委員,どうぞ。
 【松尾委員】  お三方の発表,本当にありがとうございました。現場の様子が非常によく分かって,これからの議論が深まると思いましたし,私は今日の皆様の御意見を伺って,自分が気付かされたことを,ここで述べたいと思います。
  まず評価ですけれども,細かくすれば,それだけより精度の高い評価になると思いますが,余り細か過ぎると,現場の先生方は,もうこんなのはやっていられないというふうになって,結局,形骸化してしまって,せっかく良いものにしようと思ったのが,もう台なしになってしまうというおそれを非常に強く感じています。ですから,全ての教員が,これならできるよというものに,やはり発信していかなくてはいけないと思います。
  働き方改革のこともおっしゃられていますが,現場の先生たちは少々無理をしても,生徒が伸びようとする,その手助けができるならば,これぐらいのことはやるよと考えている先生は非常に多くいらっしゃると思います。
  もう一つは,私たちが陥りがちなのは,細かくすればするほど,更に良いものができるという錯覚を,やはり捨てた方がいいと思います。3月まで私も学校現場におりましたけれども,私はこういう生徒はすばらしいなと思います。それは,例えば学力の偏差値が高かった子たちです。一方,卒業したり,いろいろなときに,目立たなかった生徒が,えっ,こんな力を持っていたんだというふうに非常に反省させられることがあって。だから,一人の目で見るのではなくて,多面的な人に,その手伝いをしてもらう。それは制度であったり,外部の人であったり,ほかの先生であったり,そのことは非常に大事だと思います。
  だから,私はここで言いたいことは,多面的な評価と,それから細かくなり過ぎない評価,そして余り評価評価というふうに,何か絶対的なものに私たちが縛られないことが,とても大事だと思います。
  しかしながら,今の状況はどういうものかということを外部の人にお伝えするためには,一定程度の評価を示すものは必要だとは思いますけれども,その辺を十分に考えないと,せっかく今やろうとしていることが台なしにならないことが,とても大事だと思います。
  もう一点は,学習指導要領が求めている三つの観点,このバランスを,どの程度,評価の中に組み入れていくかということがとても大事で,今は思考力・判断力・表現力等のことに非常に大きな注目が行っていて,そのことばかりに何かウエートが置かれそうではないのかなという,ちょっと懸念を持っています。
  もちろんアクティブ・ラーニングをするときに,基礎となる知識とか技能というのは非常に必要だと思いますが,現場の今のこの感覚から言うと,何かそっちはもういいよ,ちょっと調べれば,すぐそういうものは出てくるので,それは置いておいて話し合いましょうというような傾向に若干あるのではないかと思います。それは,管理職の方もそういうふうに思っていらっしゃる部分もあって,授業回っているときに,あっ,本日はICTを使った授業で,グループワークもしていた,だからいいと,ちょっと思われている部分もあるのではないかということで申し上げました。
  ですから,そのアクティブ・ラーニング,グループワークが深まり合うためには,やはりある程度の,そういう知識とか技能が忘れ去られてはいけないと思っています。
  私たちのこの場から現場に対して間違った発信をしないように,やはり気を付けて,現場が使いやすい評価にしていくことが一番大切だなと思いました。
  あともう一点は研修です。評価のこの新しく変わろうとしている評価を浸透させようと思うと,やはり,それをいかに一人一人の教員にまで届かせるかということが,物すごく重要だと思っています。確かに管理職とか,主任主事には,そういう研修の場はありますが,それを学校の校内研修とか,いろいろな場に落とし込んでいったときに,どれだけ一人一人の教員に響くかということを,やはり徹底してやらないと,セットでやらないと駄目じゃないかなと感じました。
  以上でございます。
 【市川主査】  どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。川間委員,どうぞ。
 【川間委員】  3人の委員の御発表で,評価について,これからこういくんだなというのが非常によく分かったところであります。そこで幾つか思ったところなんですけれども。特に関谷委員と伊藤委員の学校のすばらしい取組ですけれども,この取組をするに当たって,各先生方が,このことの意義とか意味を,説明してすぐ分かって取り組めたわけではないと思うんですが,これがどのぐらい浸透して,分かって,伝わっていくものなのかということと。
  それから子供たちにとって良ければ,先生方は放っておいても22時,23時までお仕事されるかもしれませんけれども,勤務時間内に終わらない業務を前提とした制度設計というのは,やはり問題があるなというところをちょっと感じますので,その辺について関谷委員,伊藤委員がどのようにお感じになったかということ。
  それからもう一つは,主体的に取り組む態度というところで,例えば発達障害等のある子供たちが集団に入れないとか,やる気にむらがあるとか,そういうところで,相対評価をすると駄目になる子供たちが,個人内の中では大きな変化をしていくんだろうと思うんですけれども。それについては道徳の評価の方で項立てをして,そういったような個人内での変化の観点ということが既に触れられていますので,それがほかの教科でも,そういう観点でいくのかなということを思いながら聞かせていただきました。
 【市川主査】  また後で委員からお答えいただこうと思います。
  善本委員,どうぞ。
 【善本委員】  髙木委員,関谷委員,伊藤委員,本当にありがとうございました。大変貴重なお話を頂いて,また考えることが多くございました。
  私どもは中高一貫校ですので,中学だけ教える教員,高校だけ教える教員もいるんですが,中と高の両方を指導している教員がいます。そうしますと,同じ一人の教員が,中学生を指導するときには観点別評価を行い,高校の場合には観点別評価を行っていないという実態が今,起きているわけで,その様子を見てみますと,観点別評価が生徒の資質・能力の向上において有用であるという有用性の実感が非常に乏しいように思います。先ほどのお話にもありましたけれども,もちろん私どもにとって働き方改革と,この問題を解決していくということは,本当に大事な,しかし難しい連立方程式だと思うんですが,有用性を実感できていないというところが非常に大きいと思います。
  一方で,観点別評価をせねばならないから授業の中でこういう活動をしようみたいな議論というのは,同じ教員の中でも結構出ています。現実の問題としては,自動的に指導を変えていくということは起きているので,それが必ずしも悪いことではないと思います。
  一方で,今回のような,まさにパラダイムシフトを受けて,民間企業によるツールの開発や,また営業活動も今,非常に活発に行われている部分がございます。その中で効果的なツールはどんどん取り入れながらも,評価の主体者としての事業者が,その評価スキルを高めるためには,基本的に非常に研修が重要であって,そのことは有用性を実感できる研修と。技術的な評価スキルではなくて,有用性を実感できるような研修を積んでいかないと,結局,形骸化してしまうというおそれがあると思いますので,そこに我々管理職としても重視をしていきたいなと思います。
  それと同時に,関谷委員の資料の中で,学校の組織的なカリキュラム作成,一番悩ましいところだというお話があったんですけれども,私どものような,特に中・高の場合には,教科の枠組みというのが非常に強固ですから,この中で新しいものを作っていくに当たっては,教科横断的な組織をどのように作っていくかということと,従来的な教務,生活指導,進路指導の枠組みを超えた組織構築というものをどうやっていくかが,カリキュラムを改善していくに当たって大変重要ではないかと思います。
  私どもの学校では今,実は実験的に開発部というものを,教務,生活,進路の上位に当たる組織として置いていまして,新たな教育活動の開発,その中で,関谷委員のプロジェクトのようなものなのですが,この活動目標におけるものを,国語,数学というふうな各教科の中で,どこにこれを入れていっている,どういう活動で,それを見取ってくださいみたいなことを,組織的に開発部が作っていくという活動を現在行っているところで,カリキュラム改善をするために従来の組織をどういうふうにうまく生かしながらも動かしていくかということが,現場の立場では非常に重要なことかなと感じているところです。
  以上です。
 【市川主査】  ありがとうございます。それでは,一度お答えいただくと。
  鈴木委員,何か新たにありますか。
 【鈴木委員】  質問ではありません。
 【市川主査】  では,とりあえず今の新たに出た御質問について,これも現場からということで,関谷委員と伊藤委員,お願いします。
 【関谷委員】  よろしくお願いします。先ほど,それぞれの先生方に浸透していくかとか,それから勤務時間意識して,この2点の答えに総合的になろうかと思いますので,その意味でお話をさせていただきます。
  各先生方一人一人に浸透しているかというと,小学校においては学年研究会というのが週に1回予定されています。往々にして,いろいろな会議が入っていく中で,それがないがしろになっていくことがないように,本当に大きなタイムマネジメントになるんですけれども,教務主任の方には,その辺り,ほかの職員会議以外の会議は,極力なくてもいいものは,ミライムというシステムを導入して,パソコン上で様々な連絡をしています。
  ですから,みんなで一堂に会して会議をしたり,朝の打合わせをしたりするのは,かつて昔に比べたら,物すごく減っています。その分を何をするかというと,学年研究会です。大体4人から5人ぐらいが本校ではメンバーとなっているんですけれども,その人たちを通じて行っています。
  先ほどの組織図でもあるように,各学年にそれぞれのプロジェクトがいますので,それぞれの人がそれぞれの分野でやっていることを伝える,そして一緒に学んでいく,そういうシステムを,なるべく作るようにしています。
  ですから,この二つについてのお答えは,組織作り,それからタイムマネジメント,そこにするかなと思うので,この1点の部分というよりも全体の考え方というのが非常に大事になるんだなと,お話を伺いながら,自分自身,自戒を込めてお話をさせていただきました。
  以上です。
 【市川主査】  ありがとうございます。伊藤委員,いかがでしょうか。
 【伊藤委員】  本校の取組については,授業の振り返りシートのことを,まずお伝えをしたいと思います。もうこれを導入して3年以上たっていると思うんですけれども,その導入のきっかけは,山口県の教育委員会から,こういうものをやりましょうという提案があったわけです。教育委員会主導なんです。それは非常に効果のある取組だという実践事例を基に,それでは県内の小・中学校で,みんなでやろうという,その声を受けて取り組み始めたということなんですね。
  やってみると,この授業の振り返りシートというのは,要は授業における子供と教員の対話なんですよね。そして,それをうまく使いこなしている教員は,ずっと続けている感じがします。 いろいろな工夫をしています。先ほども申し上げたかもしれませんが,例えば,理科の授業では,記述のところを,その時間に学んだことを踏まえて,子供に問題を作らせるとか,英語の授業では,一つ英作文をさせるとか,そういう形でやっている教員もいて,様々な工夫をしながらやっている状況ですね。
  期間限定でやっている教員もいます。この単元のところだけをやろうとか,そういう工夫をしながらやっている状況ですから。余り押し付けにならないようにやっていますけれども,やってみて,やはり良かったという感想を持っている教員が多いんじゃないかという気がします。
  そういうことをやりながら,先ほども何度も出しましたけれども,地域の方に来ていただいて授業支援をしていただくという取組をしていくと,これは教員の負担軽減に,かなりなるわけです。例えば木工教室,35人を一人が木工を教えなきゃいけないということから,8人ぐらいの地域の人が入ってきて,きめ細かな支援をしてくださる。これはかなり負担軽減になっています。
  だから,こっちは時間が掛かるけれども,こっちの方では,今度は軽減がなされるみたいな,そういうトータルでの工夫を続けていくということが一つのポイントかなと思っています。
 【市川主査】  ありがとうございます。
  それでは,鈴木委員も申し訳ないですが,最後の方で。私も最後にちょっと整理させていただこうかと思いますが。
  もう一つ,本日は,現在,別のワーキンググループにおきまして検討中の「高校生のための学びの基礎診断」というのがございまして,これの議論の状況を事務局より御報告いただくのを,まずやっていただこうかと思います。では,お願いいたします。
 【中村高校教育改革PT専門官】  資料4を御覧ください。こちらは先日,「高校生のための学びの基礎診断」検討ワーキンググループにお諮りした取りまとめの原案です。限られた時間の中ですので,ポイントを絞って御説明いたします。
  26ページを御覧ください。まず基礎診断の検討経緯と制度のイメージを御説明いたします。
  高大接続改革の中で従来,高等学校基礎学力テスト(仮称)として検討されてきたものを,本年7月に名称も新たに「高校生のための学びの基礎診断」として実施方針を公表しました。
  上の枠内の二つ目にありますように,目的としては,「高校生に求められる基礎学力の確実な習得」と「学習意欲の喚起」を図るため,文部科学省が一定の要件を示し,民間の試験等を認定する仕組みを創設するというもので,多様な民間の試験等,測定ツールと呼んでおりますが,その測定ツールが開発・提供され,高校における利活用を通じてPDCAサイクルの取組を促進しようとするものです。
  左側のオレンジの枠にありますように,高校現場では教育活動を展開する中で,定期考査,実力テスト,あるいは民間が提供する外部試験等,様々な方法を活用しながら,日々の生徒の学習状況を多面的に評価して,指導の工夫・充実を図っております。
  この多面的な評価のツールの一つとして,右側の青枠にありますように,一定の要件に即して民間の試験等,つまり測定ツールを認定する仕組みとして基礎診断の制度を設けたいと考えております。
  その上で各高校が,真ん中の赤い矢印にありますように,自らの実情等を踏まえ,適切な測定ツールを選択・活用することを想定しております。
  ページを戻って23ページを御覧ください。今御説明しました基礎診断について,今度は文章の形で取りまとめたものを御説明いたします。
  ローマ数字1の認定基準・手続等の中で,1ポツ,2ポツは先ほど御説明したとおりなので,3ポツ,活用の基本的な考え方として,2行目にありますように,基礎診断の結果は,生徒自身の学習改善や教員の指導の工夫・充実,学校における成績評価の材料の一つなどとして活用されることを基本として考えております。
  次に4ポツの(1),認定基準としまして各要件を示しております。
  マル1,出題に関することとして一つ目,学習指導要領を踏まえた出題の基本方針を定め,当該方針に基づき問題を設計していること。二つ目,対象教科は国語・数学・英語とし,共通必履修科目を中心に出題し,義務教育段階の内容を含むこと。三つ目,主として知識・技能を問う問題に加え,主として思考力・判断力・表現力等を問う問題を出題すること。四つ目,主として思考力・判断力・表現力等を問う問題として,一定数の文字や数式等を記述させる記述式問題を出題すること。五つ目,英語は原則「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を測定することを要件としております。
  マル2,結果提供に関することとしては,学習の成果や課題が確認でき,事後の学習改善や教員の指導の工夫・充実に資する結果提供がなされることなどを要件としております。
  マル3,運営その他に関することとしては,学校において実施可能で,学校にとって過度な負担が掛からない方法で実施されるものであることなどを要件としております。
  5ポツ,認定に関する手続としましては,業者からの申請を受け付け,専門家による審査を経て,文部科学省が認定した測定ツールを情報提供するという流れを考えております。
  裏面の24ページを御覧ください。ローマ数字2の1ポツ,基礎診断の具体的な活用方法の二つ目の丸ですが,基礎診断の結果の活用について,生徒,学校,設置者の三つの視点から具体的な活用例を示しております。
  生徒については,学習の成果や達成感を実感させ,自己肯定感等を高めることを通じて,学習の動機付けを行うこと。学校については,学習成果や課題を分析した結果を基に学年全体としての対応策を検討し,受検した生徒たちに対する進級後の学年における対応や,受検後に新たに入学・進級してくる生徒たちへの対応として,次年度の教育課程や指導計画,指導方法などに反映させること。設置者については,基礎学力定着に向けた基本方針等を企画・立案したり,教職員定数の配分や補習指導員の配置などの生徒の学習状況等を踏まえた人材配置や,基礎学力向上に取り組む重点校の指定,重点的に取り組む課題の設定などを行ったりするための判断材料の一つとすることなどが考えられるとしております。
  ローマ数字3は,基礎診断に望まれる事項としまして,測定ツールを開発・提供する民間事業者に対し望まれる事項や,基礎診断制度の発展的な改善を視野に入れた,国としての将来的な検討課題などを整理したものです。
  幾つか取り上げますと,二つ目の効果的な結果提供としまして,スコアや評価だけでなく,きめ細かな情報提供,例えば誤答類型に基づいたアドバイスや復習問題の提供,分析会の実施などがなされることが望ましい。また,学校や設置者に対しても,学級・学年全体の平均点,得点分布,課題が多く見られた分野,経年変化などの情報が提供されることが望ましいとしております。
  また,下から二つ目の結果の副次的な利用として,基礎診断の結果の進学・就職等への活用などに関しましては,従来から議論がありまして,当面の主目的である学習改善,指導改善のために用いるという方針を踏襲しておりまして,本制度の着実な定着を図りつつ,高校生の学習意欲や進路実現への影響等に関するメリット及びデメリットを十分に吟味しながら,高等学校や大学等,民間事業者をはじめとする関係者の意見も踏まえ,具体的な検討を行うことが望まれるとしております。
  最後に29ページを御覧ください。今後のスケジュールのイメージを御説明したいと思います。上段の認定の有効期間イメージですが,第1弾の認定は来年度,2018年度の初冬,冬頃を考えておりまして,そこから3年間の有効期間を考えております。このサイクルを毎年度繰り返していきまして,上の段にありますように,2022年度から学年進行で実施される予定の次期高等学校学習指導要領への対応も含めて,その前に,これまでの制度の検証と必要な見直しを行い,2020年度からは新旧両課程に対応した基礎診断が併存することを想定しております。
  説明は以上です。
 【市川主査】  ありがとうございます。それでは,これはかなり大部なものですし,御質問,御意見,討論という形には本日無理だと思いますので,また改めて,御意見をお寄せいただければと思います。
  最後,本日のまとめということになりますが,鈴木委員,御意見ありますしょうか。
 【鈴木委員】  今の基礎診断の話を聞いて,ちょっと時間がないので,今のうちに言わせてください。
  要するに,知識・技能と思考・判断・表現,大体,各事業者が,どのぐらいで割合でやるかということは,ある程度統一しないと。案はもちろん読んでおりますので,余りに事業者によって違うのはまずいのではないかと思いました。
  それから,先ほど言おうと思ったことは,次回言います。
 【市川主査】  ありがとうございました。
  本日,いろいろな御意見出たんですが,大きく二つの論点が出たかなと思っています。
  一つは,先ほど松尾委員もおっしゃったんですけれども,一方では評価というのは,片方の極としては非常にアバウトなものがありまして,大体先生が子供を見ていて,この子はこうというような評価をアバウトにやっているというのが一方の軸ではあると。ただ,それですと,非常に一面的になったり,あるいは客観性を欠いたりするものになってしまうので,一体どんな評価軸で子供を見るのかとか。これは今,学力の3要素というのを見ていますから,これは是非押さえてほしいと思います。
  それから,どんな基準で,その段階を付けるとかですね。A,B,Cにしても付けるのかというような基準を,ある程度決めていく必要があるんじゃないか,客観性を高める必要があるんじゃないかということがあります。ただ,それが行き過ぎて,相当細かくシステム化されると,これは負担も多くなるし,もらった方もよく訳の分からないというものになりがちなので,どの辺りを落としどころにするのかですね。
  これは共通に是非大事にということと,あと,こういうものを,いろいろ手法とかやり方がありますということが,そこにプラスアルファ,参考として付けられるようなものを出していく必要があるのかなと思いました。
  もう一つは,説明ということなんですけれども,社会に対しての説明,保護者に対しての説明,児童生徒に対しての説明。この説明をしていくということが,やはり重要であろうと。
  これは文部科学省でも,やはり,その説明,評価の説明のための資料,何か社会的に,それから保護者に対して,子供に対してというような,ひな形のようなものがあると学校も助かるとは思うのですが,恐らく,これまで評価について十分な説明をということが十分なされていなかったと。それから,システムとしてこういうものなんですという説明と,あと河野委員からも出た,それぞれの子供たちや保護者に対する個別の説明ですね。何で私の評価はこうなのと言われたときに,こうこうこうだからこうなんです,ここをもっとこうすると良くなるんですよというような個別の説明,これは面談という形になると思いますが,そういうことを抱き合わせにしていくようなことが必要なんじゃないかと,そういうこともあったと思います。
  非常に大ざっぱにしてしまったんですけれども,今後,そういう点から,更に議論を進めていければと思います。
  本日はどうもありがとうございました。
  最後に事務局から,今後についてなど,御説明をお願いします。
 【白井教育課程企画室長】  次回の学習評価の在り方に関するワーキンググループにつきましては,1月後半から2月にかけてを予定しております。また主査と相談の上,具体的な日程については御案内申し上げます。
【市川主査】  では,本日予定した議事は全て終了いたしました。これで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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