学校における働き方改革特別部会(第15回) 議事録

1.日時

平成30年7月19日(木曜日)13時00分~15時00分

2.場所

東海大学校友会館 望星の間

3.議題

  1. 学校の労働安全衛生管理の在り方について
  2. その他

4.議事録

中央教育審議会初等中等教育分科会
学校における働き方改革特別部会(第15回)
平成30年7月19日


【小川部会長】  それでは、定刻になりましたので、第15回目になりますけれども、学校における働き方改革特別部会を開催いたします。
 議事に入る前に、本日の配付資料について事務局からお願いいたします。

【鈴木初等中等教育企画課課長補佐】  お配りしています議事次第にありますとおり、机上には資料1から資料5と、参考資料1から参考資料5をお配りしております。あわせて、御参考までに前回までの配付資料を机上に置かせていただいております。過不足等ございましたら、事務局までお申し付けいただければと思います。

【小川部会長】  資料の確認はよろしいでしょうか。
 それでは、早速議事に入っていきたいと思います。きょうの議題は、前回に引き続きまして、「学校の労働安全衛生管理の在り方について」議論をしていきたいと思います。
 前回は、労働安全衛生管理体制の整備について意見交換を行いましたけれども、きょうは、最初に、メンタルヘルス対策について取り上げたいと考えております。きょうは、公立学校共済組合九州中央病院の十川博先生にお越しいただいております。後ほど御報告をお願いしたいと思います。
 その後に、十川先生の御報告と質疑応答を終えた後に、最後に50分ほど時間を取りまして、前回の議論も踏まえつつ、学校の労働安全衛生管理の在り方について、委員の間で意見交換を進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、最初にメンタルヘルス対策について、事務局から基礎資料について説明を頂きます。その後に、十川先生から御報告を頂きます。
 十川先生は、公立学校共済組合に係る病院におきまして、数多くの教職員の診察に当たってこられ、教職員のメンタルヘルス支援の第一人者でございます。
 それでは、最初に、基礎資料について、初中局の佐藤企画官から御説明をお願いいたします。

【佐藤初等中等教育局企画官】  よろしくお願いします。それでは、資料1を御覧いただければと思います。
 資料1でございますけれども、教員のメンタルヘルス対策に関するこれまでの文科省の取組等についてまとめた資料でございます。
 1枚おめくりいただきまして、まず、教育職員の精神疾患による病気休職者数でございますけれども、そこの棒グラフ、折れ線グラフにありますとおり、ここ10年程度、約5,000人ということで推移しております。割合としては、全教育職員数の約0.5%ということで、200人に1人という状況になっております。ちなみに、この棒グラフには表れておりませんけれども、例えば、平成10~13年ぐらいにおいては、この人数の半分くらい、そして、平成の初めの方で見ますと、約1,000人強ということでございましたので、この30年間ぐらいの間に4倍程度、こういった精神疾患による病気休職者数が増えているという状況でございます。
 そして、2ページに行っていただきまして、それぞれの学校種別・性別等に分けて、どうなっているかというデータでございます。左側が病気休職者一般でございまして、右側が、うち精神疾患者数でございます。まず学校種別で見ていただきますと、小・中学校、そして、特別支援学校について、精神疾患者の割合が多いということになっております。性別で見ていただきますと、病気休職者の割合でいくと、女性がかなり多いんですけれども、精神疾患者の割合でいきますと、男性・女性が同程度、女性の方が少し多いという状況でございます。
 1枚めくっていただきまして、3ページに行っていただきまして、職種別でございます。職種別に見ますと、病気休職者、そして、精神疾患者、両方とも一般の教諭の方が比較的高いということになっております。また、年代別で見ますと、病気休職者については、年齢が高くなるほど割合が高くなっておりますけれども、精神疾患者というところでいきますと、40代が一番多いという状況になってございます。
 続いて、4ページで、こういった教員のメンタルヘルスに関するこれまでの文科省の取組についてまとめております。
 まずは、一番初めにありますとおり、有識者会議を過去に実施しております。平成24年1月に、教職員のメンタルヘルスについて原因と課題を整理した上で、専門的見地から必要な取組を検討する「教職員のメンタルヘルス対策検討会議」を設置しております。そして、平成25年3月に「最終まとめ」を公表しております。
 「最終まとめ」の概要については、この資料6~9ページに、参考資料ということで付けておりますけれども、ポイントとしましては、4ページのところに書いてございますとおり、教職員本人のセルフケア、そして、校長、副校長、教頭、主幹教諭、教諭というふうなラインによるケア、教職員が心身ともに健康を維持して教育に携わることができるような良好な職場環境・雰囲気の醸成等も含めた予防的な取組を推進するということ、そして、復職支援については、心身の快復状況に加えて、業務を滞りなく行えるか等の本人の状況、産業医・嘱託精神科医等の意見などを踏まえて、教育委員会において慎重に判断することや、復職後の適切な経過観察、日頃からの職場の雰囲気づくり、校務分掌上の配慮、体制整備・充実が必要とされてございます。
 また、過去に委託事業を実施しておりまして、平成26・27年度でございますけれども、「精神科医を活用した教職員のメンタルヘルス対策調査研究事業」ということで、都道府県・指定都市教育委員会に精神科医等を配置しまして、いろいろな相談事業であるとか、事前の予防活動等に当たっていただくということを行っております。また、これについては、平成28年度には、有識者等によるサポートチームを教育委員会に設置する「学校サポートチームの構築推進事業」の一部として、継続して実施をしております。
 また、一番下のところでございますけれども、研修の実施ということで、独立行政法人教職員支援機構が実施する教職員等中央研修において、校長研修、副黒鳥・教頭等研修、中堅教員研修のそれぞれにおいて、メンタルヘルスマネジメントについての研修を実施しております。
 また、文科省が実施する管理主事等研修においても、講演テーマや演習の題材として取り上げ、メンタルヘルス対策についての研修を実施しているところでございます。
 次のページに行っていただきまして、5ページでございますけれども、これは毎年出させていただいておりますけれども、公立学校の教職員の人事行政状況調査結果に係る留意事項についてということで、初等中等教育局長名で今年も3月に通知をさせていただいておりますが、その中で、メンタルヘルス対策の推進ということで、先ほどの有識者会議の「最終まとめ」及び、そこにございますとおり、予防的な取組の推進、あるいは、ストレスチェック等の取組の推進、復職支援の取組の推進ということに留意の上、それぞれの教育委員会でメンタルヘルス対策に一層積極的に取り組むということを依頼しているところでございます。
 資料1についての説明は、以上でございます。

【小川部会長】  ありがとうございました。
 今、事務局から説明のあった内容に御質問がある場合には、最後50分ぐらい時間を取って総括的な意見交換をしますので、その際に出していただければと思います。よろしくお願いします。
 それでは、引き続いて、十川先生、御報告、よろしくお願いいたします。

【十川九州中央病院メンタルヘルスセンター長】  ただいま御紹介にあずかりました、九州中央病院の十川と申します。どうぞよろしくお願いします。着席させていただきます。
 資料2-1を開けていただきたいと思います。教職員のメンタルヘルス向上に向けてということで、スライド番号が右下に打っていますので、それに従って御説明していきたいと思います。
 2番のスライドは、先ほど御説明があったような、精神疾患による休職者数が非常に高くなっているというようなグラフでございます。
 次のスライドの3ですけれども、きょう、この3つについて若干お話ししたいと思っております。
 スライド4ですけれども、教職員の母集団をこういうふうに考えますと、1番の事例検討というやり方、それから、2番のある特徴を有する小集団の分析、そして、3番目として大規模集団の分析というのがあるかと思いますけれども、きょうは、2番のある特徴を有する小集団の分析と大規模集団の分析を少し発表させていただきたいと思います。
 スライド5ですけれども、教職員のストレスの原因については、いろんな見方があると思いますけれども、先ほど言いました小集団の分析、それはスライド5の1番と2番、そして、大規模が第3番というふうに分けております。
 最初の1番ですけれども、当院の心療内科を受診した教職員のデータから、データを少しお示ししたいと思います。スライドの7になります。これは私どもの病院の心療内科を受診していただいた教職員の内訳でございますけれども、平成21年~29年度まで、これは実数で約1,400名の教職員が受診していただきました。女性が若干多いと。平均年齢は、40代後半でありました。
 どういう理由で受診していただいたかというと、それについてはスライド8番でお示ししますけれども、受診した教職員の訴えを私どもが傾聴して、当該教職員が何を困って来院したのか、それを担当医師が判断したものが、次のグラフであります。原因は複数でも可としております。
 スライド9が、これは職場内に限定いたしましたけれども、職場内でのストレスの内容を、そのようにまとめました。これ、ちょっと見にくいと思いましたので、拡大したものをスライド10に示していますけれども、上位10位は、このようになっております。
 これは一番下に書きましたけれども、人間関係が非常に多くなっておりますけれども、これは何らかのイベントが発生したときに、それに対応する管理職や同僚のサポートに問題があると思われました。サポート力の不足を示唆している可能性があるのではないかなと。この上司との関係とか同僚との関係にちょっと驚かれるかもしれませんけれども、これは、例えば、保護者への対応の中で、いろんな問題点が上司との関係、同僚との関係で出てまいりますので、複数挙げますので、そういう人間関係が上位に来ているのかなと思います。
 スライド11に参りたいと思います。これは当院で病気休暇あるいは休職の診断を行った教職員のデータからであります。先ほどとはちょっと日数が違いますけれども、スライド12は、これはある研究会での発表ですので、ちょっと中途半端な日にちになっていますけれども、平成16~28年1月まで集めた教職員で、総数は1,323名なんですけれども、このうち、次のスライド13に参りますけれども、病気休暇・病気休職を診断した方は、138名でございました。女性の方が若干多かった。平均年齢は、やはり40代の後半ぐらいかなと。
 では、どういう理由で休まれたのかということなんですけれども、これは、この138名というのは、私が診ている患者様でありまして、いろいろカルテを非常に詳しく調べて、そこの下に書いていますけれども、ある教職員が病休あるいは休職に入るときには、複合的な原因が背景にあると思われますけれども、そのうち「休むに至った主たる原因」、これがこの方が休んだ原因であると私が判断いたしまして、それを集計したのが、次のスライド14番であります。
 これは病気休暇・病気休職になった原因ですね。1番、2番、3番、そういうふうに書いてありますけれども、最も多かったのが、対処困難な児童・生徒への対応、それから、保護者への対応、そして、3番目、管理職との関係というのが来ております。
 これをもうちょっと詳しく分析いたしました。それがスライド15であります。これは校種別に分けてみました。そうしますと、対処困難な児童・生徒への対応なんですけれども、これはやはり義務教育のところで非常に多くなっているような、小・中が多いと思います。保護者への対応も小・中が多かったと。
 これをもうちょっと分析してみたいと思います。スライド16に行きますけれども、原因の中の一番下に、その他というのがあります。これは、例えば、親の介護等で心身ともに参って休んでしまったというような方も含まれていまして、これは一番右下に来ますと、33名ということであります。
 そうしますと、次のスライド17を見ていただきたいんですけれども、分母に138名からこの33名を引いた、この33名というのは、どのような職場でも起こり得る原因、そういったものを引きまして、それを先ほどの小・中の対処困難な児童・生徒、あるいは、保護者への対応で休まれた63名を分子に持ってきますと、そこに書いていますけれども、病気休暇・病気休職になった教職員特有の原因の60%は小・中学校教員の対処困難な児童・生徒及び保護者の問題であったと。これを解決すれば、精神疾患で休む教職員は大幅に減少することが予想できるのではないかなと思いました。そこの下に書いていますけれども、病休とか休職に至るような深刻な問題点は、「対処困難な児童・生徒」及び「保護者への対応」が原因として多いことが分かりました。
 先ほどのグラフも見ていただいたのですけれども、管理職の対応が3番目に入っていますので、やはり管理職の対応というのも、職員を守らなければいけないはずの管理職が原因になってしまっているというようなこともございますので、この辺は管理職の研修が必要かなと思いました。
 それから、次に、大規模データの方に入りたいと思います。スライド18になりますけれども、これは公立学校共済組合はWEB版でストレスチェック制度からのデータです。これは日本全国からの参加があります。私は、九州・沖縄地区のデータが見られますので、そのデータを分析してみました。この中で、教職員の5万名ぐらいのデータを分析しております。この公立学校共済組合のストレスチェック制度の特徴は、教職員特有のストレスの原因を質問の選択肢に組み入れておりますので、教職員特有のストレスの原因が分かるのではないかなと思います。
 スライド19に参りたいと思います。これは九州・沖縄地区の教職員特有のストレス要因、これは全員であります。小・中・高・特別支援と分けて分析してみました。ストレスが多かった順から並べていますけれども、事務的な業務量がやはり大きなストレスになっているというのが分かるかなと思います。
 次のスライド20は、これは全員ではなくて、高ストレス者と判定された人たちですね。非常にストレスが多い方と判定された方は、どういったことがストレスと感じているのかということの表ですけれども、小・中・高・特別支援、それぞれの特徴が出ていると思いますけれども。例えば、小学校で第1番は、対処困難な児童・生徒、中学校では事務的な業務量、高等学校では事務的な業務量、特別支援では人間関係(同僚)となっております。
 スライド21番を開けていただきたいと思います。このストレスチェックから見えてくる、今、大規模なデータを御紹介いたしましたけれども、これから見えてくることは、例えば、高ストレス者に関しては、「事務的な業務量」がどの校種でも第1位か第2位に入っている。それから、中学校・高校では部活動がストレスの上位に入っている。職場内の人間関係(上司、同僚)、これもストレスの上位に入っている。義務教育の小・中では、特に「対処困難な児童・生徒」「保護者対応」もストレスの大きな原因になっているというのが見えてまいります。
 22のスライドは、これはちょっと別な観点からこの大規模データを分析してみました。これは上司からのサポートと抑うつ感の関係をグラフにしたものであります。これも5万人ぐらいのデータからですけれども、これから分かるのは、上司からのサポートが高いと職員の抑うつ感は低いし、上司からのサポートが低いと職員の抑うつ感は高いというような結果になっております。
 それから、次のスライド23番でございますけれども、同僚からのサポートも似たような感じになっておりまして、同僚からのサポートが高いと職員の抑うつ感は低いし、同僚からのサポートが低いと抑うつ感は高いと。
 こういうことから見えてくることの2番目として、教職員のストレス対策では、管理職のみが頑張ればいいというわけではなくて、職員全体がメンタルヘルス向上に向けて取り組まないといけないのかなと感じました。
 次に、スライド25ですけれども、これはまた別な分析であります。すみません、これ、私の不手際で棒グラフが見えにくいのですが、上に抑うつ感の点数が書いています。就労時間と抑うつ感でありますけれども、これは就労時間が延びれば延びるほど、抑うつ感は高くなると。これも大規模データから分かったことであります。この就労時間というのは、1日当たりの平均的な就労時間ということで、12時間以上だと、恐らく、少なくとも月80時間以上の時間外になっているのではないかなと思います。
 次、26番、そのことから見えてくることの3番目として、就労時間が長くなればなるほど、抑うつ感は高まると。今回は割愛いたしましたけれども、就労時間が長くなればなるほど不眠とか身体的な愁訴も高まるというようなデータがあります。
 そうしますと、スライド27番ですけれども、まとめますと、1番として、事務的な業務量、校務分掌がどの校種でも負担である。また、中学・高校では部活動も負担。特に事務的な業務量というのはストレスの第1番と第2番を占めるということあります。
 2番目として、どの校種でも職場の人間関係は問題になっている。管理職や同僚のサポートと職員の抑うつ感は相関があると。これは統計学的に有意な相関でありました。
 それから、3番目として、病気や休職に至るような重篤なことに関係しているのは、「対処困難な児童・生徒」及び「保護者対応」であったということであります。
 次に、28番は、ストレスへの対応に参りたいと思います。対応については、29番のスライドですけれども、スライド27番で御紹介した1番として、先ほど挙げたものに対しては、長い就労時間は抑うつ感を高めますので、どうしても就労時間の短縮が必要であろうと。この中で、「事務的な業務量」の負担軽減は喫緊の課題であろうと。これは以前から言われていることだと思いますけれども。
 じゃ、どういう内容が負担なのかというのは、今回調べていませんけれども、例えば、スライド30にありますけれども、これは小・中の教頭の就労時間であります。四角で囲ったところが、12時間以上働いている割合ですけれども、小学校教頭などは、66%ぐらいが、恐らく月80時間以上の時間外をして、中学校の教頭に関しては、73%ぐらいが80時間以上をしていると。
 じゃ、どういうことで働いているのか、あるいは、どういうことで困っているのかというのは、次の31番のスライドで、これは文科省の方からのデータをお借りしましたけれども、副校長・教頭の業務に対する負担感率の状況ということで、例えば、国や教育委員会からの調査、アンケート、これがすごく負担になっているのではないかと。これをまずどうにかしないといけないのかなと、ちょっと僭越(せんえつ)ですが、思ったわけであります。
 それから、32のスライドですけれども、この対応について、じゃ、管理職はどういうふうに考えているのかということですけれども。これは後でお時間があれば御説明したいと思いますけれども、これは今、割愛させていただきたいと思います。
 スライド33番に行きたいと思いますけれども、スライド27番でお示しした2番として、どの校種でも人間関係は問題となっていると。ただし、直接人間関係を扱うのは難しいと。メンタルヘルスを長くやっている私ですけれども、やっぱり人間関係は難しいなと思います。代替の方法は、なかなか難しいんですけれども、解決の1つのヒントは、休職されたけれども実際に復帰できた教職員の実態調査といいますか、私が聞き取りしたものから少し御紹介したいと思います。
 これがスライド34番ですけれども、教職員が休職の後に元気に職場復帰いたしますけれども、その復帰するときに、私が次のような質問を行っております。「今思い返してみて、その当時――当時というのは、つらかったときですね――どうすればよかったと思いますか」ということを、元気になってから聞いたわけですね。60名のアンケートを採ってみましたけれども、それはスライド35番にまとめております。
 どうすればよかったですかと聞いたときに、1番は、「あのときにやっぱり話を聞いてもらえばよかった」ということが多かったです。それから、「休養を取る」とか「病院に相談する」とか、こういったものなんですけれども。
 若干のコメントを36番のスライドに書いていますけれども、「話を聞いてもらえばよかった」というのは、悩んでいるから当然だと思うんですけれど、なかなかこれができないということ。そこに書いていますように、実際に悩んでいるときは、相談するにも勇気が要る。周囲はアドバイスとか指導ではなくて、まず「傾聴」するような姿勢が大切なのではないかなと、私は臨床をやっていて、非常にこれは感じました。私自身は、この「傾聴法」の実習等が必要なのかなと思っております。周囲が「聴く」姿勢を持っていますと、人間関係の改善につながる可能性があるのかなと思います。
 2番、3番については、割愛させていただきます。
 37番のスライドは、これはA病院のデータ分析なんですけれども、ここでちょっと言いたいのは、今までのようなデータをもっと信頼性のある解析の方法、例えば、ロジスティック回帰分析とか多変量解析分析によって、もっと詳しく調べていくのが必要なのかなと、ちょっと余計なことですけれども、思いました。
 それから、38番のスライドですけれども、ストレスの原因の2番、じゃ、管理職はどんな対策を考えているのかということですけれども、これは後でまた資料を見ていただければと思います。今は割愛させていただきます。
 次に、39のスライドですけれども、3番目の病休とか休職に至るような重篤なことに関係しているのは、やはり「対処困難な児童・生徒」及び「保護者への対応」であったんですけれども、これはなかなか難しい。これは教育の根幹と関わる問題ではないのかなと思われますので、これについては、様々な分野の専門家と協力していくことが必要なのかなと。ただ、「保護者への対応」を管理職はどういうふうに考えているかというのは、また資料で参考にしていただければなと思います。
 最後に、今後の方向性について、スライド41を見ていただければと思いますけれども。今まで述べましたけれども、教職員のストレスの大きな原因となっているのは、事務的な業務量、あるいは、対処困難な児童・生徒への対応、部活動、校務分掌、人間関係、保護者への対応等が上位を占めていることが明らかになっております。この具体的な内容について、更に詳細を明らかにして、一つ一つ対応を検討していって、2番目に書いていますけれども、何らかのガイドラインみたいなものを作るのも有用かなと思います。それから、もっとデータを細かく分析するためには、大規模なデータをやはり集めないといけないので、日本全国の、例えば、公立学校共済組合の直営病院の多施設合同調査とか、教職員の病休者のデータを集積・分析して、対応策を考えると。
 すみません、そこに載せていませんが、4番目として、ストレスチェック制度で高ストレス者が出るわけですけれども、高ストレス者の中で面談を申し出る件数というのは極めて少ない。恐らく、高ストレス者というのは10%が大体出るんですが、その10%の中のまた1%程度、数%程度しか申し出ない。こういうことに関して、もっと受診しやすいような対応を考えなければいけないのかなと思います。
 以上でございます。すみません、ちょっと長くなりました。

【小川部会長】  十川先生、ありがとうございました。
 それでは、時間を30~40分取りまして、今の十川先生からの発表の内容について、委員の方から質問、意見等がございましたら受けたいと思います。どなたからでも構いません。いかがでしょうか。
 冨士道委員からお願いします。

【冨士道委員】  では、失礼いたします。大変データに基づいたお話をお聞きしながら、納得する点が多くありましたが、一点質問させていただきます
 スライドでいきますと、9番でしょうか、職場内ストレスの内容というところで、上司との関係、同僚との関係というのが実は第1位、2位ということで、大変高いストレスの要因になっているようなデータが出ております。またスライドの14を見ますと、管理職との関係ではなくて、今度は児童・生徒、そして、保護者への対応等、また、最後の結論のところでも、最終的には、対処困難な児童・生徒、また保護者というのが出ているわけですが、ここをもう少し説明を頂くと助かります。

【十川九州中央病院メンタルヘルスセンター長】  御質問ありがとうございます。
 スライド9は、これは私どもの心療内科を受診していただいて、必ずしもすごく深刻な状況で来ているわけでない方もいらっしゃいます。ただちょっと相談に来たという方も多いので、そうしますと、いろんな人間関係のことを悩んでいらっしゃっているわけでございます。先ほども言いましたが、例えば、保護者への対応なんかで困っている場合なんかは、どうしても管理職との関係とか、同僚が助けてくれないとか、そういったところも問題になるので、そこにも丸を付けるわけですね。そうすると、上司の方の問題というのが、やはりかなり上の方に来ると。
 ところが、14は、これは休職された方です。病休あるいは休職されて、もうあなたはメンタル的に無理ですよ、もう休みなさいよと私が診断した方なんですね。より重篤な方です。この重篤な方は、じゃ、どういう原因が一番多かったかというと、やはりここに書いていますような対処困難な児童・生徒、保護者への対応が多かったと。ですから、それほどひどくない方と本当に休まざるを得ないようなひどい方との違いというのが、このスライドに出ているのかなと思います。
 大規模なデータは、またこれはいろんな要素が含まれていますので、多くの方はこんなふうに考えているということかなと思います。
 すみません、あんまり答えになっていなかったかもしれませんが。

【小川部会長】  ありがとうございます。冨士道委員、今の御回答でよろしいでしょうか。

【冨士道委員】  結構です。

【小川部会長】  多く名札が立っていますので、順番にこちらから進めさせていただきます。妹尾委員、どうぞ。

【妹尾委員】  詳しい説明ありがとうございました。3点ほどお聞きしたいと思います。
 1つ目は、こちら、スライド番号で言いますと、22ページに関係することなんですが、あるいは、その他のページもそうなんですが、ちょっと基本的な質問なんですけれども。抑うつ感の部分は、これはもちろん低いほどいいんでしょうけれども、幾ら以上だとかなり危険だよとか、何か目安があれば、教えていただければと思います。例えば、この13.57とかいうのがものすごく高いんですよとかいうことの何か目安があれば教えてくださいというのが1つ目の質問です。
 あと、2つ目は、上司からのサポートというのも、「上司からのサポートがたくさんありますか」とか、そういう質問なのか、あるいは、何か複合的な質問での合成的な指標なのかとか、そのあたりも分かれば教えてくださいというのが2点目です。
 次に、3点目は、先ほどの14番のスライドのように、病休とかになる方は、困難な児童・生徒とか保護者への対応が大きいという話なんですが、一方で、ストレスの話だと、いろんな事務量等々も大きいという話だったんですけれども。僕の勝手な解釈かもしれませんが、多分、事務量の多さとか、いろんな調査ものがストレスが掛かっているというのは、ストレスの原因にはなるんでしょうが、多分、それで心がぽきっと折れるというシーンは多分あんまりなくて、恐らく学級経営とか、児童・生徒との関係とか、保護者との対応がこじれるというのが、かなり心が折れる1つの大きな原因になるのかなと推察しているんですが、そのあたりの感触とかいうのも教えていただければと思います。
 以上3点です。

【十川九州中央病院メンタルヘルスセンター長】  質問ありがとうございました。
 最初のスライド22番に関しての抑うつ感ですけれども、抑うつ感とか上司からのサポートというのは、これはストレスチェック制度に基づく職業性ストレス簡易調査票、あれの点数でありまして、何点以上かというのは、今ぱっと思い付かないんですけれども、恐らく10点以上だったかな。すみません、私、はっきりとまだ分かりません。
 それから、上司からのサポートというのは、これは職業性ストレス簡易調査票にあります3つの点数を足し合わせたもので、まず上司が頼りになるか、上司が個人的な相談に乗ってくれるか、それから、上司に気軽に話せるかその3つのものを足し合わせた点数ということです。
 それから、スライド14に関しては、これは先生がおっしゃるとおりであります。私も、実際に教職員の方が来られて、これはもう本当にひどいなと、もう診察室に入ってくるときから泣いていらっしゃるんですよね。どういうことでというと、やはり保護者からの非常なクレームとか、もうその教職員の方は学校自体が怖くなってきてしまうというような、実感的には、やはり対処困難な児童・生徒と保護者への対応が、実感として第1番であります。
 以上です。

【妹尾委員】  ありがとうございます。

【小川部会長】  よろしいですか。御意見あれば、また後でよろしくお願いします。
 青木委員、どうぞ。

【青木委員】  十川先生、どうもありがとうございました。
 簡単な、短めに4つぐらい伺いたいんですが、1つ目は、2枚目のスライドにお示しになっていらっしゃる精神疾患による休職者数、これは教員についてですけれども、他業種と比較して、こういった数の推移というのはどういうふうに評価できるかということを教えていただきたいのが1つ目です。
 それから、2つ目は、教員の方が病気休職、特に精神疾患を原因とする病気休職に至る初診からの期間というのはどのぐらいで、それは他業種と比較してどういう特徴があるのかというのを伺いたいのが2つ目です。
 3つ目は、児童・生徒や家庭への対応が病気休暇や病気休職の原因の上位に来ていますが、これは顧客を抱えるいわば対人サービス業、感情労働のような業種では、やはり同じような傾向かどうかということを伺いたいのが3つ目です。
 最後の4つ目ですが、事務的な業務の量がストレスの原因として上位に来ているんですけれども、これは、やはり先生方という集団は、そういった業務にストレス耐性がもともと弱いと評価することができるのかどうかということを伺いたいのが4つ目です。

【十川九州中央病院メンタルヘルスセンター長】  御質問ありがとうございました。
 スライド2に関して、他業種は、すみません、私も分かりませんで、むしろ私の方が教えていただきたいなと思います。
 それから、2番目の御質問で、病休に、初診からどのくらいしたら休むかということでしょうか。割と本当にいっぱいいっぱいで来られる方が多いですね。症状があるからちょっと行ってみようかというのではなくて、もう本当にいっぱいいっぱいの状態で来て、もうその日に診断書を書いて休まざるを得ない方の方がむしろ多いと思います。ですから、そういう意味では、もっと一次予防といいますか、そういったところに力を入れていかないといけないのかなと思っております。
 それから、3番目の問題ですけれども、私も、教職員のこういう診察に携わる前は余り想像できなかったんですけれども、なぜ児童・生徒、あるいは、そういったもので、感情労働といいますか、対人サービスを休まざるを得なくなってしまうのか。それは、1つは、やっぱり義務教育なんですね。義務教育で毎日子供が来る、毎日問題があった子供が来る。その背後には親がいる。毎日会わざるを得ない。そういったところがすごくストレスなんだろうなと。例えば、企業なんかでクレームがありますよね。でも、そういう方は毎日来るわけではない。ところが、義務教育というのは、毎日毎日いらっしゃる。毎日ストレスに対応せざるを得ない。そういったところがすごくストレスなのではないかなと、私、感じました。
 それから、4番目の事務作業ですけれども、もともとそういうストレス耐性が弱いのかどうかというのは、私は分かりませんけれども、学校の先生方は、とにかく子供と接していたいんだ、子供と接するのが喜びなんですけれども、それとは関係ない、これはあんまり言うのはあれですけど、調査についての業務とか、いろんなあんまり関係ないようなところに携わるのが多分ストレスなのではないかなと、私、お話を聞いていて、そんなふうに思いました。
 以上でございます。

【小川部会長】  ありがとうございます。
 清原委員、どうぞ。

【清原委員】  十川先生、ありがとうございました。三鷹市長の清原です。2点お伺いします。
 1点目は、スライド36ページから分析されておりますが、「復職した教職員が今思い返してみて、その当時どうすればよかったか」という回答の分析をしていただいたこと、これはまさに具体的な環境整備に向けて重要な分析をしていただいたものと思います。特に「話を聞いてもらえばよかった」というのが1位でございまして、「傾聴」という言葉を御提案いただきました。三鷹市でも、実は、高齢者の一人暮らし等が多いので、10年前から「傾聴ボランティア」を養成しておりまして、ボランティアの皆様に一人暮らしの高齢者や施設にいらっしゃる高齢者を訪問して、お話を聞いていただいているんですが、学校内での「傾聴」ということについては、改めて重要性を再確認させていただきました。
 教師はともすると話すのが仕事と思っていて、なかなか聞くことが苦手とも言われておりますが、実は、子供たちの声を傾聴することも、同僚の声を傾聴することも重要だと改めて思いましたが、具体的に、こうした調査結果を受けて、学校で傾聴法などを実践されている事例があれば、御紹介いただきたいのが1点目です。
 2点目は簡潔に。きょう資料で御説明はなかったんですが、資料2-4で、「保護者対応に関する対策」ということで、貴重な御意見を頂いていて、スライドの5ページに、保護者対応の「さしすせそ」とあり、最悪(さいあく)を想定する、真摯(しんし)に捉える、すばやく、誠意(せいい)をもって、組織(そしき)でとあります。これはきょうの御報告に一貫していて、管理職だけが頑張るのではなく、複数で、組織として取り組んでいくことがストレスを減らすという御提案とも関係していると思います。これにつきましても、臨床的なデータですが、復職された方が、また再発しないための環境整備にこうしたものが有効に働いているというような具体例がおありでしょうか。もしそういう再発防止に役立つ取組としての御提案があれば、補強していただければと思います。
 以上です。よろしくお願いします。

【十川九州中央病院メンタルヘルスセンター長】  御質問ありがとうございます。
 スライド35番に関してですけれども、これは、傾聴法、ある県では、管理職に対して、私が3時間ぐらいの管理職の傾聴法の実習をやっております。管理職というのは、その場でも言うんですけれども、アドバイスに慣れている。もう何か相談事があると、ぱっとアドバイス。アドバイスに慣れていると、余り聞くことはしなくなってしまうんですね。そういったところを傾聴法の実習で感じ取っていただいて、まず聞くことですよと、そして、相手を理解すること。その上でのアドバイスだったらいいんですけれども、すぐにアドバイスしてしまうような癖を、傾聴法の実習ではやって、ある県では、もう6年ぐらいですか、こういう実習をやっております。私自身の感触としては、この傾聴法の実習というのはすごく効果があるんで、是非、他の県でもやっていただきたいなと思います。
 それから、先ほどの保護者への対応で、管理職の「さしすせそ」のことなんですけれども、保護者からのクレームがあって、多分五、六年前は、担任に丸投げだったんですね。ところが、最近は、もう組織で対応する、管理職も一緒になって対応する、複数で必ず対応するというようにお答えしているところが多いので、これは割と広く行き渡ってきているのかなと感じております。
 以上でございます。

【小川部会長】  天笠委員、どうぞ。

【天笠委員】  どうもありがとうございました。
 私の方からは、1つ御質問させていただきます。御発表、一つ一つが示唆に富む、そういうふうに聞かせていただいたんですけれども。質問はこういうことで、専門的なお立場から、いろんな患者さんに出会われているというようなことについては御報告いただいたんですけれども、そのお立場から、学校に一歩踏み込んだら、この学校は危ないとか、この学校は何とかいけているんじゃないかとか、要するに、いわゆる組織の健康度というふうなことで、こういう学校のこういう状態だと、いろんな意味で疾患を抱える一人一人がよりたくさん出てくる、こういう学校の組織の在り方でしたら、そこら辺のところはあんまり心配ないとか、というふうなことで、いろんな専門的な知見を積み重ねられているお立場からすると、恐らくそこら辺のところは、学校のありようというのがきっとお見えになっているのではないかという気がしてならないんですけれども。
 それは、情報はお一人お一人の、ある意味で言うと、患者さんからデータを収集するということであるかもしれませんが、ただ、それをこういう形で御説明いただくと、1つの組織の見方とか、そういうものについての示唆というのが随分あったように私は聞きまして、例えば、上司のサポートが非常に乏しいとか、あるいは、教職員仲間集団があんまり聞く耳を持っていないとか、それから、その立場からすれば、気軽に相談できないようなという、まさに複合的な要因が、まさに組織のありようそのものと非常に重なるものがあって、それらのことが、ある意味で言うと、うまく吸い上げられると、組織としての予防というんでしょうか、組織として、そういう深刻な個人を生み出さないような手当てとかありようということも、きっとそこから生まれてくるんじゃないかという気がしているんですけれども。そういう意味において、お立場からして、この学校はレッドカードじゃないですけれども、黄色信号をともすとか、関係の方に一定の警告をお伝えするとか、そういう組織としての在り方というところから、何か助言とか、アドバイスとか、注意喚起とかというふうな、ありようということについて何かお考えになっていること等々がありましたら、お話しいただければと思うんですけれども。よろしくお願いいたします。

【十川九州中央病院メンタルヘルスセンター長】  御質問ありがとうございます。
 ちょっと難しい質問で、上手に答えられるかどうか分かりませんけれども。教職員の方が常々言われていることは、管理職によって全然雰囲気は違ってくるんだということはよく言われます。じゃ、どういう管理職がいいんですか、どういう管理職があんまりよくないんですかというと、ちょっとした思い、ちょっとした言葉掛けで、褒める、ねぎらう、そういうさりげない配慮ができる管理職、そういったところは非常に職員も明るいような気がします。
 ところが、いつも指導していこう、教職員を、こうしなさい、ああしなさいというような、そういう感じのところは、私の印象ですけれども、メンタルヘルスではうまくいっていないのかなという気がいたします。これは私の感触です。
 それから、これはストレスチェックをやっていて思ったことなんですけれども、このストレスチェックは、実は非常にいろんなことができます。例えば、ある県の学校ごとに、これはストレスが多い順から少ない順まで並べられるんですよ。ばっと並べられます。そういったときに、ストレスが多いところと少ないところの比較というのはまず考えるところなんですけれども、まずストレスが少ないところの学校を選んで、例えば、どんな工夫をしているんですかというような、そういう聞き取り調査なんかをしたらいいのかなと、個人的に思っております。
 お答えになっていなくて申し訳ありません。

【天笠委員】  いえ、どうもありがとうございます。

【小川部会長】  相原委員、どうぞ。

【相原委員】  委員の相原です。先生、ありがとうございました。
 2つあります。1つは、これは感想めいたことですが、先生がおっしゃったとおり、まだ症状が重篤でない方の回答に、人間関係で悩んでいるという数字が多いことから、今後、症状が重篤になりかねない予備軍であると理解した方がいいと思います。
 もう一つは、35、36ページのパワーポイントに、大変興味深いところが出ております。35ページの一番上の「話を聞いてもらえばよかった」という回答と、36ページの「相談するにも勇気が要る」という回答の、2か所がポイントであると感じました。
 35ページの「話を聞いてもらえばよかった」というのは、どの段階がいいのか。学校全体のストレスに対するスキルを持ち上げていくためにも、大変重要な点だと思いますし、個人においても、先生にその技量を獲得してもらわないと、どの段階が黄色メッセージになっているのか、話を聞いてもらうタイミングというのはここだというスキルも個々の先生に持ち合わせていただくというのも大変大事だと思います。それをチームで集合し、課題のあるお子さんがいるときに、複数で対処するなど、勘どころがあって、先生が泣きながら診察室に入ってこられるような、もういっぱいいっぱいのところに行く前に、幾つかのタイミングがあるんだろう、若しくは、サインが出ているんだろうと思います。そのサインに気が付かない学校現場の雰囲気があるのだとしたら、それを直していく必要があります。「話を聞いてもらえばよかった」というのが、後で振り返ったときに、あのタイミングだったと理解している方がおられるかどうかという点が、評価・分析は難しいかもしれませんが、そのタイミングが重要だと思います。
 もう一つは、これも学校現場を大きく変えていかなければいけない点だと思っています。民間企業で傾聴をトライアルし、長年やってきましたが、何回も引っかかって、足を取られてきたのは、相談センターに足を運ぶ姿を見られただけで、将来の評価査定に響くとなると、足が遠のいてしまうということです。したがって、先ほど、重篤でない方もたくさんいらっしゃっているということが大事なことで、それこそセルフコントロールで、誰でも行けるということが重要です。カウンセリングと言った瞬間にハードルが高くなったり、相談センターと言うと足が向かない、この文化自体を変えていかないといけないと思います。
 先生には、話を聞くタイミングについて、引っかかるような点があれば、教えていただきたいと思います。

【十川九州中央病院メンタルヘルスセンター長】  ありがとうございます。
 タイミングですけれども、本当に皆さん、いっぱいいっぱいになってきてしまうんで、その前の段階で来ていただければ、もっと軽く済んだんじゃないかなと私も思います。
 ただ、こういうタイミングということと、それから、受け手の問題、いつでも来ていいですよ、相談に来てくださいねという、その両面があると思うんですね。相談するタイミングと、それから、受け手、来ていいですよという、その2つの要素があって、少なくとも、いつでも来ていいですよという、傾聴する、それは整えておかないといけないのかなと思います。
 黄色のタイミングは、私もはっきりしたことは言えないんですけれども、やっぱり何か悩んだときに、そういう聞ける、信頼できる同僚がいればいいのかなと。あんまりお答えになりませんけれども、すぐにアドバイスするような人ではなくて、まず聞こうと、まず相手の言うことを聞こうというタイミングがあると、その黄色いタイミングのときでも何か言っていただけるのかなと思います。すみません、ちょっと答えになっていません。
 それから、誰でも行けるというようなところは、そうだと思います。例えば、心療内科とかメンタルクリニックなんかへ行くというのは、すごく敷居が高いと思うんですね。ですから、この公立学校共済なんかは、電話相談なんかも結構受けているし、そういう面では、学校共済組合、非常に頑張ってやってくれているので、結構その辺は充実しているのかなと思います。

【小川部会長】  ありがとうございました。
 それでは、あと3人ですけど、嶋田委員、どうぞ。

【嶋田委員】  小学校長の立場から、東京都の公立小学校長会の調査でも、特にメンタルヘルスに関する調査では、問題発生が4月、5月、6月、この3か月、1学期の最初の部分が非常に多いという調査結果も出ているんですが。私、やっぱり47歳前後の先生方の状況を考えたときに、今、新たな取組への対応力がなかなか難しくなってくる世代かなと感じたり、子供、児童・生徒との年齢差とか、また、以前の指導法でうまくいっていたのに今回はうまくいかないというようなことが、実感として今感じているところでございます。
 資料の17の重篤な状況で、実際に、黒枠で囲んであるところでございますけれども、さらに、管理職の対応によって休みに至ってしまうと。ここの部分、先ほど先生の方は、校長が守るべき職員を守れないという部分をちょっとおっしゃいましたけれども、もう少し具体的に教えていただければと思います。
 以上です。

【十川九州中央病院メンタルヘルスセンター長】  ありがとうございます。
 例えば、これは教頭先生で休んだ方がおられて、その方はどうしてかというと、とにかく校長が厳しいと。毎朝、間違いとか、いろんな指摘を受けると。その教頭先生がおっしゃるには、校長は自分を鍛えようとしてやっているのだろうけれども、自分としては非常につらいということで、結局、その方は休まれまして。後に校長先生にもなった方なんですけれども。
 ですから、指導するとか、誤りを指摘するとかだけではなくて、やっぱり褒めるとか、ねぎらうとか、管理職はそういう意識を持ってもらいたいなと、そのときに非常に深く思いました。
 以上でございます。

【小川部会長】  ありがとうございます。
 東川委員。

【東川委員】  日本PTA、東川と申します。十川先生、どうもありがとうございました。
 お話を伺っていまして、何となくそうかなと思っていた部分と、それから、実際にデータ化されて数値化されたものを拝見しまして、かなりショックといいますか、という印象を受けました。特に17ページ、先ほど嶋田先生もおっしゃった、病気休暇・休職になった原因の60%は、対処困難な児童・生徒及び保護者の問題といったところが、2人に1人以上がそのような状況といったところに非常にインパクトを受けておりまして。
 表紙の2ページのところのグラフがありますけれども、平成18年度と言えば、教育基本法が改正されて、第10条に家庭教育というところが加わった以降に、これがどう捉えたらいいのか分かりませんが、角度が後に弱まったと捉えていいのか、それとも、引き続き、いろんな社会環境等もあって、微減はしているものの依然多くなっているというふうに捉えていいのかと。教育機能を分け合うというところで、学校教育、家庭教育といったところの家庭教育が余り貢献できていないというところは、伺いながら、反省も大いにしたところであります。
 それで、保護者や対処困難な児童・生徒と丸めて表現をなさっているんですけれども、例えば、この対処困難なというところで言いますと、家庭環境が複雑で対処困難であるとか、あるいは、特別な配慮が必要な児童・生徒であるのかとか、その辺が少し分けられているのかどうかといったところがもしお分かりでしたら、教えていただければなと思います。
 というのが、先生方によっては、現場の対応で、例えば、とくべつな配慮を必要とする発達障害であるとかいうようなお子さんがいらっしゃったときに、特別支援の教育を十分に受けて経験もある先生方が実践しているところと、さほどそこの経験や知識等がない先生方が、現場で結構ぶつかって意見が対立しているというようなところもときどき見聞きします。そういうようなことも含めて、孤立感があったりだとかいうこともあるのかなというようなところを感じたりしますので、その辺は少し教えていただければというところと、それから、私自身の感想としては、学校だけでは厳しいというところの、この60%を少しでも軽減していくには、やはり家庭教育が非常に重要だなといったところを改めて思った次第でございます。
 以上です。

【十川九州中央病院メンタルヘルスセンター長】  ありがとうございます。
 この2番のスライドの急カーブからちょっと高止まりみたいになっているのが、これは何から来ているのかは私も分かりませんで、好意的に考えると、ストレス対策が功(こう)を奏してきて、あんまり高くなっていないのかなという気もいたしますけれども、そこら辺は分かりかねます。
 それから、スライド17の対処困難な児童・生徒というのは、これはいろんな方が含まれているみたいです。この調査を始めた当初は、現在でいうところの発達障害系のお子様で、先ほど校長先生がおっしゃったように、今までの方法が通用しなくなって休まれたというような方が多いように感じましたけれども、それから、先ほどおっしゃいましたように、家庭環境での問題もかなりあると思います。というのは、いろいろ対処しにくいお子さん、どんな御家庭なんですかと聞くと、やっぱりいろいろと御家庭に問題があったり、そういう方が多いように感じます。
 それから、例えば、クラス内である一部のお子さんがいろいろ難しいと。そちらの方ばっかりに気を取られていると、今度は残りの子供たちが、何で俺たちを構ってくれないんだみたいな感じでなってしまうパターンもあれば、やっぱり保護者の問題が結構多くて、保護者が背後に付いていると、なかなかその子を注意できない。その子を注意すると、また保護者からクレームが来る。結局、その子は野放しになってしまう。言葉は悪いんですけれども。そうするうちにクラスが崩壊していくというようなことがあるみたいで、これについては、いろんなそういうお子様たちが含まれているのかなと思いました。
 あと3番目は何だったですかね。

【東川委員】  あとは感想でしたので。

【十川九州中央病院メンタルヘルスセンター長】  感想ですか。すみません、以上です。

【小川部会長】  では、最後、善積委員、どうぞ。

【善積委員】  非常に納得できるお話でございました。ありがとうございました。
 私どもも民間コンサルとして学校現場に入るときに調査をしたりするのですけれども、「職場で誰でも自由に意見や考えが述べられるか」という設問と、「連携がうまくいかなくて仕事がやりにくくなることがありますか」という調査項目をクロスすると、意見が言えないと感じる人たちは、連携がうまくいかなくて仕事がやりにくかったという経験を持つ人が100%だったんです。本当にそういう関係性だというので、職場の中の風通しの良さというのはかなり大事なことだなと思っておりましたので、きょう、本当にすごく有り難(がた)い情報を頂戴できたと思っております。
 3点ほどお聞きしたいと思います。先ほど嶋田先生の方から、アドバイスというか、そういうお話もありましたが、なぜ40代が多いのかというところの背景について、もし先生の方にも御意見あれば教えていただきたいということが1つと、学校種で年齢分布による差はないのか。平均は40代なんだと思うんですが、学校種で、例えば、小学校だともう少し若い方にシフトするのかどうかとか、そのあたりがもしあれば教えていただきたい。
 3点目は、先ほどの厚労省の報告でも、特別支援学校が実は一番出現率が高かったんですね。今回、先生が御覧になっていらっしゃるデータ上は人数なので、多くはないんですけれども、これだけ同僚との関係とか、他の学校種よりも職場の関係が影響しているように見えるんですが、このあたりの背景で何か御存じのことがあれば、教えていただければということです。

【十川九州中央病院メンタルヘルスセンター長】  ありがとうございます。
 まず、なぜ40代が多いのかというのは、いろんな背景があると思うんですけれども。1つは、やはり責任感が重くなる世代で、いろんなことを任されるし、校務分掌でもいろんな指導的な役割をとらないといけない、それから、やっぱり学年主任とか、そういったことになる年代で、やはり責任が重くなるということですね。
 それから、もう一つは、先ほどの校長先生が言われましたように、今までの方法が通じないような子供たちが出てきていると。若いときに通用していたものが、40代ではもう余り通用しなくなっているというようなところもあるのかなと思います。
 それから、もう一つは、40代というと、率直に言うと、ちょっとくたびれてきていると。ずっともう二十何年間やってきて、ちょっとくたびれて、エネルギーが枯渇しつつあるような年代ということで、いろんな複合的な要因が絡んでいるのかなと思います。
 それから、学校種での年齢の違いというのは、これは調べてみないと分かりませんので、大変いい御示唆を頂いたので、これからちょっと調べてみたいと思います。
 それから、特別支援で、なぜ同僚との関係がストレスの上位に上がってきているのかというのは、これは私もずっと不思議に思っていたところなんですけれども。特別支援の先生方にお聞きしますと、特別支援というのは、少人数のグループを複数の先生方で見ていると。その複数の先生方のチーム一丸となってやっている場合はいいんですけれども、中でいろいろ意見の相違があると、たちまち人間関係がストレスになってしまうというようなことはよくお聞きしていますので、これは特別支援学校のそういうやり方といいますか、そういったものに基づいている可能性はあるのかなと思いました。
 以上です。

【小川部会長】  よろしいですね。ありがとうございます。
 十川先生も、御報告ありがとうございます。委員からの数多くの質問に対しても御丁寧にお答えいただきまして、本当にありがとうございました。
 それでは、残りの時間、学校の労働安全衛生の在り方について、全体的に意見交換をしていきたいと思います。きょう取り上げたメンタルヘルスの対策に関する論点、また、前回意見交換しました労働安全衛生管理の体制整備の在り方等々に関わる論点も含めて、学校の労働安全衛生管理の在り方全体について、これから意見交換をしていきたいと思います。
 その前に、事務局から2点、追加の資料の御説明を頂ければと思います。
 最初に、健康教育・食育課の三谷課長からお願いいたします。

【三谷健康教育・食育課長】  健康教育・食育課の三谷でございます。
 前回、お手元の資料の中で4という資料を出しております。これは今回も全く同じで、資料4というのを出しているんですけれども、前回御説明させていただいたときに、まだ29年度の調査について調査中でございましたので、それについて御報告をさせていただければと思っております。
 資料3が、その資料なんですけれども、資料3の1ページ目、全体で、衛生管理者の設置状況からストレスチェックの実施状況までということで、データを載せております。
 まず、前回のデータと比較するために、次ページ、2ページ目を御覧ください。こちらで見た方が分かりやすいのかなと思いましたので、こちらで簡単に御説明したいと思いますが、まず、御覧のとおり、これは2年おき、5月1日現在で、ただ28年度につきましては、後ほど説明しますストレスチェックが実施されるということで、29年度に後ろ倒しして実施したものでございます。
 御覧いただければ分かりますように、幾つかの項目、例えば、産業医の選任率であるとか、衛生委員会の設置率であるとか、それから、面接指導体制の整備状況、こういったようなところでは高校が若干下がっている。それから、衛生推進者の選任率では、前回に比べてどの校種もちょっと下がってしまったというような状況となっております。
 この理由につきまして、詳細はなお分析中でございますけれども、幾つか目立って悪化したようなところに聞いてみたところ、やはり担当者の異動というようなところや、それから、やはり担当者の認識不足といったような理由であったというふうなことでございます。
 それから、1ページ目にお戻りいただきまして、ストレスチェックの実施状況でございます。御案内のとおり、これは50人以上がマストで、50人未満が努力義務というような形にはなっておりますけれども、全体として、50人以上の職場、学校でありますと、一番下のところ、98.7%ということで、だいたい実施されているところでございますが、やはり50人未満というところになりますと、64%程度であったと伺っております。
 これも、先ほど資料1の方で御案内させていただきましたように、毎年度いろいろと通知を出しておりまして、特に5ページ目に30年3月のものを局長通知で出しておりますけれども、この中では、やっぱりしっかりと学校の規模にかかわらず、全ての学校において適切に実施してくださいということをお願いしているわけでございますが、結果としてはこのようになってしまったということで、やはり今後とも、こういったような、研修会等も含めて、周知をしっかりと行っていきたいと思っているところでございます。
 資料4は前回の資料でございますので、説明は省略させていただきます。
 以上です。

【小川部会長】  ありがとうございます。
 もう1点、事務局から御説明いただきます。学校の労働安全衛生管理の在り方に関する検討の視点について、これは初中局の佐藤企画官から御説明をお願いいたします。

【佐藤初等中等教育局企画官】  それでは、資料5の1枚紙の方を御覧いただければと思います。学校の労働安全衛生管理の在り方について、これから御意見を頂くところでございますので、その際に検討の視点ということで、参考になればということで、6点ぐらい挙げさせていただいております。
 1つ目でございますが、労働安全衛生管理体制の整備の観点から、法例上の義務が必ずしも遵守されていない場合の要因としてどのようなものがあり、これを改善していくために、国、教育委員会、学校はそれぞれどのようなことに取り組んでいくべきかということ。
 そして、2点目ですけれども、労働安全衛生管理体制の整備の観点から、国、教育委員会、学校がそれぞれ促進すべき事項としてどのようなものが考えられるかということ。
 3点目、学校の規模、常時50人以上の労働者がいるかどうかというところで、法例上の義務に差がございますが、具体的な学校現場の取組として、学校規模に応じてそれぞれどのような取組を行うべきと考えられるかということ。
 4点目、学校現場における労働安全衛生管理の観点からの役割分担をどのように考えるかと。具体的には、管理職、養護教諭、学校医、その他、スクールカウンセラー等の専門スタッフということ。
 そして、5点目が、メンタルヘルス対策につきまして、予防的取組と復職支援のそれぞれの観点から、国、教育委員会、学校はそれぞれどのようなことに取り組んでいくべきかということ。
 そして、最後ですが、その他、学校におけるメンタルヘルス対策も含めた労働安全衛生管理の観点から論点とすべき事項はあるかということ。
 こういったあたりを参考にして、御意見を頂ければと考えております。
 説明は以上です。

【小川部会長】  ありがとうございます。
 残り40分ほど時間がありますので、前回ときょうの前半の議論を踏まえまして、学校の労働安全衛生管理の在り方全般について、委員の方から御意見を頂ければと思います。どなたからでも構いませんけれども、妹尾委員が、参考資料5ですか、提出されていますので、これを含めて、最初に妹尾委員の方から御意見いただければと思います。よろしくお願いします。

【妹尾委員】  よろしくお願いします。参考資料5をお開きいただければと思います。幾つか話題提供と提案をしていきたいと思います。また、どんどん御意見は頂ければと思います。
 1ページですけれども、これはたまたま名古屋市さんのデータが豊富なものがあったので使わせていただいていますが、全国を代表するデータではもちろんありませんが、1つの例として御覧いただければと思います。この表は、直近の2017年度のデータでありますけれども、市立の小学校、中学校、次のページは高等学校になりますけれども、時間外在校時間の分布の状況です。ただし、これは休憩時間、実質的には、小学校なんかではなかなか休憩も取れていないという状況だと思いますが、それは含んではいないというものでありますけれども、このような分布になっています。
 右の方の表が大事でして、医師の面接の指導実施件数というデータもあったので、それをくっつけております。このパーセンテージ、一番右は、あくまでも目安として見ていただければと思いますが、その前の月に80時間以上働いていた教員数を分母にしまして、医師の面接の実施をした人が何人かというのを単純に割り算しているだけです。1つの目安ですけれども、医師の面接指導実施件数というのが一桁台でして、少ないというのがもう一目瞭然だと思いますけれども、要は、1%も面談を受けていないということがお分かりだと思います。8月だと若干上がりますけれども、中学校に至っては、どの月も0コンマ数%しか受けていないという状況であります。次のページの高等学校に至っても、合計で年間3人だけですけれども、そういう状況であるという状況であります。
 何が言いたいかといいますと、前回の話の続きではありますが、こういった産業医等の体制整備があるかどうかというのももちろん大事なんですが、それがあったとしても、結局、先生方はそういうのを受けない、あるいは、受けるような余裕がないというようなことが問題ですので、このあたり、実際外形的なものだけではなくて、中身がどうなっているのかということを問いたいものとして、一例として挙げました。
 あるいは、先ほど十川先生も、面談をなかなか受ける人がいないという話をされていましたので、恐らく名古屋だけではなくて、全国的にもかなりのパーセンテージは少ないのではないかと推察しております。
 次の3ページ目は、これは以前、大分前にもお知らせしたかと思うんですが、いろんな業界を、総務省さんの労働力調査を元にパーセンテージを測っております。小中学校につきましては、教員勤務実態調査で、平均的な自宅残業も加えて、若干かさ上げして――かさ上げしたというわけではないですが、この方が実態に近いかなということで私の方は見ておりますけれども。こういうのを見ましても、飽くまでこれも目安にしかすぎませんが、いろんな忙しい業界、飲食店だとか情報産業ありますけれども、小中学校が、過労死ラインを超えているであろう人の比率は突出して多いというわけであります。
 次の4ページ目ですけれども、これはちょうどおとといの毎日新聞に報じられていたのをそのまま貼り付けさせていただいておりますけれども、富山で中学校の先生が2016年にくも膜下で亡くなったという、40代の先生でありますが、発症直前の2か月の時間外勤務は120時間前後ということで、やはりこれも過労死ラインを超えている方であったと。このケースの場合は、部活動がかなりの比重を占めていたというものであります。下のアンダーラインを引いたところも御覧いただければと思いますけれども、土日もほとんど練習か練習試合があり、2か月間の土日の休みは計2日しかなかったということであります。
 こういうことも含めて、これはかなり極端なケースかもしれませんけれども、休みも取れない、あるいは、このような形で、不幸にしてお亡くなりになる方もいらっしゃるということで、労働安全衛生と考えたときには、教師の命がかかっているということであります。
 次の5ページ目をお開きいただければと思いますけれども、文部科学省さんの統計で、学校教員統計調査というのがあります。これで離職者なり退職者で、定年で退職された方はこの表には載せておりませんけれども、そういった方はかなり多いですけれども、それ以外の、病気だとか、転職だとか、いろんな事由別の状況を小学校、中学校、高等学校についてピックアップしたものです。
 後で足し算してもらえば分かりますが、毎年死亡という方が、小学校、中学校、高校と合わせますと、400~500名ぐらいの方がいらっしゃいます。もちろん、これは健康上の理由というか、純粋に御病気だとか交通事故で亡くなるというケースも含まれておりますが、一方で、先ほどのように、過労により亡くなる可能性ももちろんありますし、最悪の場合、自殺というような方も中には含まれているということだと思われます。また、精神疾患で退職されるという方も、毎年700名近い方が教壇を去っているということでありますので、こういった部分も含めて、まだまだ表立っていろんな報道とか、我々が見ているのは恐らく氷山の一角であろうということでありますし、残念ながら、この統計では、これ以上の理由は分からないです。つまり、死亡の、先ほどの交通事故なのかとか、過労が原因なのかもしれないとか、その辺の背景などは全く分かりませんので、正直分からないということが多いということであります。
 次の6ページ目は、幾つかそういったデータを見ながら、皆さんと一緒に是非考えておきたい、議論をしたいことを3点まとめております。
 1点目は、過労死ラインを超える方がたくさんいらっしゃって、しかも、きょうはデータはお示ししておりませんが、教員勤務実態調査等を見ましても、休憩時間がほとんど取れていないであろうということは、いろんな調査で分かることであります。あるいは、休日に勤務する方も多いということで、労働安全衛生がこんなにひどい業界は、正直、学校をおいてほかにはなかなかないということであろうと思います。
 教師の仕事は、子供たちの成長に関われるということで、やりがいは感じていらっしゃる方がいろんな調査でも高いということが明らかなんですけれども、やりがいだけに期待していても、もう限界だろうと思います。これでは働きやすい職場とは言えないし、よい人材は集まらないということは、皆さんも御案内のとおりですけれども、このあたりの認識ももっと共有していく必要があるだろうと思っております。
 2番目、先ほども申し上げましたけれども、衛生管理者を指定していますとか、何かの対策会議をしていますとか、産業医の面談の制度がありますよとか、電話相談を受けられますよとか、ストレスチェックがありますよといったような、こういった体制整備はもちろん大事ですけれども、形を整えるだけでは全く十分とは言えない現実があります。先ほどのように、医師の面談は受けない、受ける暇もないという教師も少なくないということから、やはり中身、質を問わないといけない。この中身、質をより変えていくためには何が必要かということを、是非議論したいと思っております。
 それから、3番目、前回の議論とも関係しますけれども、きょうの議論もありましたが、よっぽどひどくなってから来るのでは、やはりかなり時間がかかるし、正直しんどいということがありますので、現状把握をなるべく早くして、予防に努める、早期発見、早期対応する方法をもっと考えていかないといけないだろうと。
 この3つのことを踏まえながら、具体の話を7ページ、8ページでしております。5点申し上げますけれども、1点目といたしましては、現状把握とか予防対策に必要となる基礎的なデータを、まずはしっかり学校なり教育行政なり等々で取れるようにしておかないと、何も始まらないということだと思います。
 勤務時間の把握は、もう既にこの中教審の中でもさんざんやりましたとおり、基本中の基本ということで、まずこういうのがないといけないということだと思います。
 ストレスチェックは、先ほどの話だと、努力義務に既になっているようなんですが、ただ、50人未満のところは実施率がまだまだ6割とかいうことですので、これも、義務化がいいのか何がいいのか分かりませんが、もっと多くの方にしてもらうためにはどうするかということを考えたいと思っております。
 それとも関係しますけれども、結局、ストレスチェックをやっても、正直役に立つのかどうか。個人としてはフィードバックにはなるんでしょうけれども、組織としてうまく活用されているのかどうかということが多分ないと、自治体さんも、じゃ、お金をかけてやろうかということになかなかならないということだと思いますので、個人に返却するだけではなくて、もちろん、個人情報等はうまくマスクした上で、自分の学校の状況とか、自分の自治体の状況が、例えば、学校種別とかごとに、全国の状態からして、うちはどこのあたりに位置付くんだというようなことが分かった方がいいのではないかなと思うので、こういったことも、例えば、公立学校の共済組合さんなんかとも連携しながら、うまくできるといいのかなと思います。
 私、前の職場のときに、組織風土改革を民間企業でコンサルしたことがありますけれども、そういったときには、いろんなアンケート調査で風通しのいい職場かどうかというのをチェックするんですけれども、やはり他の民間企業の全国的な姿からして、あなたの企業さんは相当組織風土がやばいですよというようなデータを示すと、危機感がかなり高まるということがありますので、やっぱり経験と勘で学校経営に走っている校長先生たちは非常に大きいと思いますので、経験と勘ももちろん大事なんですけれども、データなり根拠をもっと示さないと前に進めないだろうと思います。こういったことも、そんなに大きな予算をかけずにできることだと思いますので、考えたいと思います。
 それから、せっかく毎年取っているので、経年変化も取れると思いますので、相当悪化しているような学校には、これこそまさに、アドバイスというよりも、まずはどういう状況なのかという聞き取りの状況とか、こういったこともできるようにならないといけないのではないかなと思っております。
 以上、データの話が1点目ですね。
 次、2点目、これも読んでいただいたとおりなんですけれども、やっぱり養護教諭の負担軽減を大幅に進めないといけないと思います。つまり、先ほどのストレスチェックなり、何かのいろんな調査というのは、かなり遅行指標といいますか、後になって出てくる話ですので、もっと危険サインとかを事前にキャッチするのは、やはり調査とかではなくて、日常の観察とかだと思います。もちろん、管理職も頑張っていただいていると思いますが、養護教諭さんの力というのも大きいと思います。
 ただ、養護教諭が、いろんな仕事でとても忙しいという状況がありますので、これをどうするんだということで、せめて養護教諭のバックオフィス的な、いろんな入力作業などについて、スクールサポートスタッフさんが活躍している自治体さんも出てきましたけれども、それをもっと拡充してほしいとか、あるいは、ちょっと小さい話かもしれませんが、就学時健診なんかも、もう学校でやるというのではなくて、自治体さんでやってもらうとか、あと、もっと根本的には定数の話とか、こういったことも含めて、もっと考えないと、養護教諭頑張ってねと言うだけでは非常にしんどいだろうなと思っております。
 次、8ページ目です。早期対応という意味では、軽度のときになるべく産業医等に受診なり面談ができるようにしていくことが大事だと思いますが、これも教師の意識改革とか言うだけでは不十分だろうと思います。と言いますのは、多少授業に穴を開けるのは申し訳ないとか、やはり周りに迷惑がかかると思われる先生が多いので、これをどういうふうにアプローチしていくかというのは非常に難しいですけれども、考えていく必要はあるだろうと思います。
 本来的には、小学校とか中学校は、級外の方、特に小学校は少ないので、結局、自分が休むと自習になるという部分が大きなボトルネックになっておりますので、そこをどうするのかということ、これは定数の話にやっぱり関わりますけれども、そういうことも含めて考えていかないといけないと思います。
 次、4点目ですけれども、過労死とか病気による不本意な退職はもちろんゼロにしたいところですけれども、起こってしまったことについては、全国的にしっかり検証して、教訓を活(い)かせるような仕組みづくりが必要ではないかなと思います。
 先ほどの統計調査においても、なるべく詳しい背景、もちろん、過労なのかどうかとか、そのあたりは断定できないにしても、純粋に死因の理由なんかは医師の診断で分かりますので、そういったぐらいはせめて分かるようにしたいとか、あるいは、子供のいじめ問題とか、何か大きなことが起こると、曲がりなりにも検証報告書とか第三者委員会がありますけれども、教師が死亡した場合には何もないということであります。先ほど富山の話をしましたが、私がいろいろ見ているところ、同じような事案が10年前とか20年前もよく起こっているんですね。結局、これまでの反省から我々は何か学んできたのかと言われると、かなりこれはしんどいといいますか、「この人はかわいそうだったよね」というぐらいで置いてきぼりになっているということだと思いますので、やっぱりしっかり検証して、どんなことが今後の教訓としてあるのかということをもっと、これは全国的に収集して、しっかりやっていくべきだろうと思います。
 それから、5番目は、前から言っていますけれども、労基署に当たる機関が公立学校にはないので、人事委員会等が、なかなか限られたスタッフでは限界があるということですので、ここもどうしていくかというのを考えないといけないだろうということを申し上げておきたいと思います。
 以上5点もよろしくお願いします。

【小川部会長】  ありがとうございました。
 ほかに、いかがでしょうか。清原委員、どうぞ。

【清原委員】  ありがとうございます。1点の情報提供と1つの意見を申し上げます。
 1点は、先ほど十川先生の御報告でも、就労時間が長くなるほど抑うつ感は高まるということが御紹介ありました。休みやすい環境、早く帰りやすい環境、そして、時間管理がしやすい環境を作っていくということが第一義的に重要だと思います。
 そこで、三鷹市の事例ですが、この3月にまとめました『三鷹市立学校における働き方改革プラン』に基づきまして、何よりも超過勤務を減らすための取組を進めていますが、それを保護者の皆様に御理解いただくということも重要と考え、今週末から小中学校は夏季休業に入りますが、夏休みに入る前に、保護者に向けた各学校の取組についての通知を配布しています。
 その通知の中には、意外と知られていないんですが、きちんとこのように紹介しています。すなわち、「三鷹市立小中学校では、教員の勤務時間の始業時刻を午前8時15分、終業終業時間を午後4時45分としている」こと。なお、「教員は、給食指導等の関係で昼食時の休憩が取れないため、午後3時45分から午後4時30分までが休憩時間となっています」。
 こういう就業時間に関する内容を明示してお伝えするということ、さらに、小中学校において放課後に保護者から電話等の問合せがあるとき、教職員の負担を減らすために、留守番電話を設置して、19時以降の夜のお問合せに対応することにしました。
 その上で、各県でも進んでいますが、三鷹市でも、山の日の前後に、日直を置かない完全学校閉庁日を5~6日、最大9日まで各学校は自主的に設けて、それもしっかりと保護者の皆様にお伝えするようにしています。
 やはり保護者の御理解があって、こうした勤務時間についても縮減が図られると考えておりますので、この夏は一つの文字通り山場となって、保護者の御理解を頂きたいなと思っています。
 2つ目として、意見は、こういうことです。実は、本日はメンタルヘルスがメーンテーマですけれど、メンタルヘルスを維持していき、深刻な疾病にならないために、意外とハード面の環境整備も重要だと考えています。三鷹市役所の事例では、例えば、照明の明るさとか、あるいは、隣の机と机との距離であるとか、そうしたことについても職員から提案があって、改善して、職場環境が良くなった事例があります。
 さらに、私からの提案ですが、7月15日、岡山県の総社市と倉敷市の豪雨の被災地を訪ねました。そして、倉敷市の東小学校の体育館の避難所を訪問しました。エアコンが付いていました。これは発電機によるものでしたけれど、被災者も、そして、支援する人も、ほっとされていました。しかし、一般的には、エアコンは普通教室にまず入り、次に特別教室に入りますが、体育館に入っている例はほとんどありません。しかし、平時だけではなくて、災害時のことも考えますと、こうした整備も大事で、教職員も、熱中症が危険なので児童生徒を外に連れ出せないときに、代替にエアコンのある体育館があるかないかで、対応が違ってくるのではないかと思います。
 命に関わる避難所の現場の場合、学校にエアコン、洋式トイレ、そして、女性や障害者がほっとできる個室のスペースなど、やはり平時と災害時、両方に配慮した整備をしていくことも、メンタルヘルスに有効なのではないかなと思いました。
 ほとんどの職員室が大部屋です。パソコンは1人1台あるでしょうか。そうしたことなども含めて、メンタルヘルスということを考えるとき、ハード面についてもやはり論点に入れていただくことも必要なのではないかなと考え、御提案いたします。
 以上です。よろしくお願いします。

【小川部会長】  ありがとうございました。
 ほかに、いかがでしょうか。では、相原委員、そして、稲継委員の順でお願いいたします。

【相原委員】  資料5で頂いた検討の視点の例のところ、下に幾つかポチがありますが、どれも重要な論点設定だと思っております。上から3つ目のポチの法例上の義務に差があるという点については、指摘のとおりです。50人未満の事業所には、産業医の配置の必要がないことや、労働安全衛生法と学校保健安全法の間で、とりわけ学校医と産業医の責任の所在について、課題指摘が既にされていると思います。
 したがって、法令上の義務に差があること自体をどう考えるかという論点の設定の仕方が望ましいのではないかと思います。50人未満の学校には産業医の配置がなくてもいいということを是(ぜ)とした上での議論ということよりも、それ以前に、法令体系をどうするのかという論点があってもいいのではないかと、考えています。
 あともう一つは、既に十川先生の話でも明らかになっていますが、一番下から1つ目、2つ目の、メンタルヘルスについて、お話しいただいた最先端を担っている先生方には大変失礼な言い方になるかもしれませんが、学校の安全衛生体制というのは、まだまだ確立には至っていないという現状認識に立つのが、先回のヒアリング、今回の実態のデータをもってお示しいただいたことで、明らかになったと思います。
 ストレスチェックについても、50人以上の学校は義務ですが、50人未満の学校は努力義務となっており、そもそものコンディションに学校規模で差を付けること自体が、労働安全衛生法の観点や健康安全配慮の義務からして許されるのかどうかというのを、原点に立ち戻って議論する必要があるのではないかと思っております。現状を是(ぜ)とせずに、メンタルヘルスやコンディションの確立のためにできることを、この部会として議論すべきではないかと、考えるところです。
 ちなみに、50人未満の学校でも、市町村単位で複数の学校をまとめて必要な体制を整えるなど、工夫を凝らしているところもあると承知しています。しかし、そういう工夫、努力に任せるのではなく、大もとのところをどうするんだということを繰り返し申し上げておきたいと、思っております。
 以上です。

【小川部会長】  ありがとうございます。
 稲継委員、どうぞ。

【稲継委員】  資料5の下から3番目の論点に関わる話かなと思うんですけれども、先ほど先生の方からプレゼンがあった中で、話を聞いてもらえばよかった、傾聴の話が非常にポイントが高かったということが非常に引っかかっておりまして。それを聞く人は誰なのかと考えた場合に、恐らく3種類ぐらいあって、1つは、産業医の先生ですとか、あるいは、病院に電話をかけて相談するとか、そういう窓口というのが1点あると。
 2点目に、周囲の教諭ですとか、あるいは養護教諭とか、そういう人たちがいらっしゃると。その人たちの傾聴の能力を上げるということも、これは重要なポイントかと思っていて、先ほど先生がおっしゃった実習等でも、そういう人たちにも是非やっていただきたいなと思うのが、これが2つ目です。
 それから、3つ目なんですけれども、これはこの部会の大きな論点の1つ目の学校の組織運営体制の在り方とも関わることかなと思うんですけれども、校長ですとか、あるいは、主幹教諭とか、そういう組織のかなめにいる人たちがしっかり傾聴をとれるような体制を作っておく必要があると思います。もちろん、そういう人たちに対する研修を一般的にやっておられるようなんですけれども、果たしてそれで十分なのかということ。
 それから、機会、チャンスを無理にでもつくる必要があって、これは、平成28年4月から改正地方公務員法が施行されまして、人事評価が義務付けられていて、小規模な自治体でも、今、人事評価が完全実施されています。その場合に、1年のサイクルで回した場合に、期首、期中、期末の3回の面談があります。半年のサイクルで回すと、年間6回の面談の機会があって、これはどうしても面談をする、必ず面談の機会がある。そこで傾聴ができる管理職がいた場合に、いろんなものをキャッチして、未然にいろんなことを防ぐことができる可能性がありますので、そういう体制、システムを作っていくことも必要ではないかなと思いました。
 以上でございます。

【小川部会長】  ありがとうございます。
 冨士道委員、どうぞ。

【冨士道委員】  今日の資料5の在り方の視点のペーパーに基づいて、少しお話をさせてください。
 まず1点目は、先ほど妹尾委員からも話がありましたけれども、こういうような労働安全衛生管理の体制づくりが進んでいるなという印象は持っています。しかし、問題は、箱を作って、その箱に何を入れて、その中に入れたものをどう使うのか、つまり、運用がどうなのかというのが問われてくると思っています。特に現場では、こういうシステムの構築やストレスチェックも含めて、確かに進めてはいますが、実際にそれがうまく運用されていないのではないか不安を感じています。そういう意味で、これから、該当するより多くの教員が、気軽に相談に行けるよう、この制度自体が運用されていくことが重要だと思っています。
 それに関わっては、先回の会でもお話を申し上げたんですが、ここで資料5でいきますと、4番目にもありますが、いわゆるその他専門スタッフをどう活用できるか。例えば、それは、先回申し上げたのは、学校に定期的に入ってきているスクールカウンセラーさんも、しっかり教員の悩みを、傾聴するという意味では一番適しているわけですし、そういう方をどんどん活用することによっても、解決方法の一つになるのかなと思います。
 そして、もう一つは、なかなか忙しい時間を教員は過ごしていますので、長期休業をうまく使いながら、カウンセリングを受けられる機会を保障してやるか、そしてまた、関連機関に相談に行くようなものも、長期休業中に行けるような体制作りを行いながら、進めていくことが重要だと考えております。

【小川部会長】  ありがとうございます。
 こちらから、川田委員、どうぞ。

【川田委員】  ありがとうございます。
 私も資料5を見て、検討の視点というか、論点の設定・整理の在り方について幾つか述べたいと思います。
 まず、問題を幾つかのレベルに整理できるだろうと思います。例えば、私なりの整理としては、1つは、法令で定められている事項について、効果的に使っていくやり方をどうすべきかというのがあるのかと思います。既に前回、あるいは今回の話の中で出てきたように、制度だけあっても、うまく機能していないのでは問題ではないかという点もありますが、法令の意義として、何をやることが求められているのかが明確な形で示されているということがあると思いますので、そこは重要な点だと思います。
 その上で、この点を更に細かくみると、もう既に出ている意見と重複になりますが、まず1つは、現行の制度の在り方自体について検討すべき点があるのではないかということ、それから、存在している制度がちゃんと機能するように使われるために、どのようなことを考えたらいいのか。この点は、まだ現場では、制度自体はあることが分かっていても、それがどのように機能して、学校における労働災害の予防につながるのかというイメージがなかなか持たれにくい状況が少なくないのかなと思いますので、例えば、先ほどの資料でも、面接指導が行われたケースというのは少ないとはいえあるということだと思われるので、その中で、効果的に健康被害の予防につながったと言えるようなケースがあれば、それを周知するなどして、具体的にそれぞれの制度がどのように機能して、学校における健康被害の防止につながるのかというイメージを広めていくということが大事なのではないかと思います。
 それから、この点に関連しては、先日、いわゆる働き方改革関連法案が成立して、安全衛生に関わるような部分についても、例えば、安全衛生法の改正等がなされたりということもあり、また、法令そのものではありませんが、ちょっと大きな話としては、審議の過程で、参議院の厚生労働委員会では、教員の働き方改革について1項目挙げて、附帯決議が行われているというような法改正の動きがありますので、そのようなものについては、この部会の中でも、情報として共有した上で、検討を進めることが望ましいのかなと思います。
 あと、若干長くなってしまっておりますが、法制度以外に、学校の現場で、よりインフォーマルな形でのやりとりの中で、健康被害の予防等を図っていくというような視点もあるということなのではないかと思います。
 それから、さらに、学校から見ての第三者、医師もそれに当たると思いますし、民間企業では、例えば、メンタルヘルス等については、ホットラインを作って、苦情とか悩みがある人がそこに相談できるというような体制を整備しているところもありますので、そういう、学校から見て第三者を通じた枠組みというのも、1つの視点にはなるかなと思います。
 それについては、概括的な話にとどまってしまいますが、私の考えとしては、そういうものについては、安全衛生管理という視点に特化したようなものを考えるというよりは、日常的に仕事を進めていく上での問題を適切に解決したり、あるいは、個々の教員をサポートしたりという枠組みの中に、安全衛生管理の視点を取り込んでいくというような考え方が重要なのではないかなと思います。
 本日の話の中でも、例えば、問題のある生徒への対応とか、保護者への対応というところが重要なポイントになるという話が出ましたが、そういった問題というのは、別に安全衛生管理のことだけを考えて対応すればいい問題ではないので、教員の業務として対応していくための体制という中に、安全衛生の考え方を取り込むというような視点が大事なのではないかということです。あと、最後になりますが、学校とか学校から見ての第三者というような切り口での安全衛生管理体制については、恐らく、事前の予防という段階の対応と、それから、何か健康被害が起きてしまった場合の事後的な対応としての、例えば、復職支援であるとか、再発防止体制を作るといったようなことも、意識して区別した上で検討することが必要なのかなと考えております。
 以上です。

【小川部会長】  ありがとうございます。
 青木委員、どうぞ。

【青木委員】  ありがとうございます。私も資料5について幾つか考えたことを、少しまとまらない部分もあるとは思うんですが、申し上げたいと思います。
 1つ目のポツについてなんですけれども、特に国を想定した場合、こういうことができるかなと思うことを申し上げます。やはり先ほど清原委員もおっしゃったように、実は、働いている先生方も、保護者も、職場としての学校というのが余り意識していないと思うんですね。そういうことを改めて認識した上で、対外的に、対内的に、学校というのも職場なんだということを表示していく必要があるんだと思います。
 そのために、具体的には、学校評価にそういった要素を盛り込むことがあり得るなと思います。学校評価は、私の理解では、3つの学校評価の類型の中で、特に自己評価と学校関係者評価では、どうしても教育活動に傾いていると思います。これに対して、これから職場としての学校を評価するという観点を入れればいいのではないかなと思います。
 関連して、学校要覧ですとか教育行政のあらましって大体作っているわけですけど、ああいうところに、職場としての学校の要素というか、情報が何ら書かれていないような気がしますので、そういったことも検討して、認識した方がいいのかなと思います。
 それから、2つ目のポツのことなんですが、学校を想定した場合に、やはり何か不調を感じたときに休みを取って医師に受診するとか、少しリフレッシュするでもいいんですけど、そういったことができるためには、やはり年休を取るということが必要なわけですが、それは授業期間中には無理だろうと思ってしまう先生が大部分だと思います。
 そこで、私が調査したある学校では、時間割の組み換えをやりやすくしている工夫をされていて、これはもちろんマンパワーにも関わってくる部分はあるんですが、いずれにしても、事前に申請してもらえば、前の週の真ん中ぐらいまでに申請してもらえれば、翌週年休が取れるような工夫をしているということですので、こういったのは優良事例だと思いますので、そういうのを国として収集して、広げていくということもあり得るのではないかなと思います。
 以上です。

【小川部会長】  ありがとうございます。
 天笠委員、よろしくお願いします。

【天笠委員】  この論点というんでしょうか、検討の視点として、それぞれ挙げられているんですけれども、もちろん、一つ一つは大変大切な点だと思います。また、当然、体制の整備の観点からという、そういう言葉が出てきます。環境の整備、体制の整備、制度の整備というところからしてどうかということが、当然、検討のそれになるかと思うんですけれども。その際、こういう視点というのも、また併せて検討していく必要があるのかなと思うのは、それは教員研修の体系化というふうな視点からということも、実は必要なのではないかなと思うんですけれども。
 教員研修の体系化というのは、そういう意味で言うと、さんざんやってきたテーマでもあるわけですけれども、それは教師が職に就いてから退職するまでの期間、どう教師として成長していくか、あるいは、させていくか、そして、その間に必要な資質・能力をどういうふうに身に付けていくかということで、年来、時代を背景にしながら、そのありようということを検討し、そして構想し、そして具体的に教員研修という形で下ろしてきたという、そういう歴史と蓄積を持っているわけですけれども。その一連のときに、今ここで私どもが議論しているような、こういう教師の心の在り方ですとか教師としての成長の在り方ということとそれとがうまく連動しなかったというふうなところというのも、1つの反省点を含めて、検討すべき視点というのがあるのではないかと思うんですけれども。
 言うならば、入職してから退職するまで、ありていに言えば、一直線の成長の軌跡を前提にしながら、そこに必要な研修を付加していくというふうな、極めて単純に申し上げると、そういうことなんですけれども、そこにこういうメンタルヘルスという始点を加えたときには、そこにどういう成長のありようですとか、教師としての姿というのがあるのかどうなのか、そこのところにそれらを付加していく、組み立てていくと、また新たな生涯学習を始点にした教師の成長の姿ということがある程度描けるのではないかと思うんですけれども、そのときに、ここに挙げられている、これら労働安全衛生管理の体制と重なり合わせながら、関係させながら検討していくという視点があるのではないかと思うんですけれども、この検討の視点にそのあたりのところも加えていただきながら、これから検討していくことの必要性があるのではないかと思っております。
 なお、私はこういうふうに考えるんですけれども、自らの健康は自らが守っていくというんでしょうか、維持していくということで。ただ、そういう理念とか精神とかというのをどれほど支えていくような制度であったか、環境であったかという、そういう観点からもう一度見詰める。先生方お一人お一人が、自らの健康を自ら維持していただく、そのための手当て、制度、支えというふうな形をすると、どういうことを検討していかなくてはいけないのか、あるいは、これまでなかった点を更にどういうふうに補塡していったらいいのかどうなのか、こういう視点で議論を重ねていくことが大切なのではないかなと思います。
 以上です。

【小川部会長】  ありがとうございます。
 あとお二人からの御発言が残っておりますが、時間がもう定刻になりましたので、短めにお願いします。嶋田委員、お願いします。

【嶋田委員】  3点目の部分です。学校規模に応じてというところがございましたけれども、小さい学校ほど、一人一人の分掌はやはり大きくなりますので、そういう視点でのサポートスタッフの配置とか、そういうこともあるかなと思いました。
 2点目、下から2つ目、メンタルヘルス対策についてですが、なぜ管理職が傾聴的なものが持てないかというところは、また考えなくてはいけないかと思いました。つまり、法的な部分についての専門家の人がいてくださるとか、こういうときは校長が相談ができるとかいう場所が、やっぱり私が校長をやっていても、後ろは絶壁というふうに感じているところがあります。そういう視点が必要かなというのが、校長にもやっぱりメンタルヘルスの部分というのは必要かなと思いました。
 最後に、やはり学校の廊下は外と一緒です。今の廊下は35度ぐらいあります。寒いときには、本当に0度みたいなときもあります。是非、清原委員がおっしゃっていましたけれども、ハード面のことも、衛生管理という視点からは、必要かなと感じています。
 以上です。

【小川部会長】  ありがとうございます。
 では、最後、善積委員、お願いします。

【善積委員】  手短に頑張ります。
 まず、そういう休職の方が一人でもいらっしゃった時点で、再発防止策というのを学校で考えるという流れを作っていかれた方がいいと思います。考えて、何か具体的な対策が作り得なくても、考えるということは非常に大事なことで、そういう手間を掛けるのであれば、もう次は起きないようにしようという意識付けにもつながっていきますので、校長先生にはお仕事を増やすようで大変申し訳ないのですが、そういう再発防止について、きちんと考える流れというのを作った方がいいというのがあります。
 あと、チューターの考え方というのがあってもいいかなと思っています。年齢の離れた先生に御相談をするというのも、キャリアが違い、考え方に追いつけない部分があるので、若い先生が相談しにくかったりしますし、逆に、40代の先生方が誰に相談すればいいのかというのもあると思います。チューターは、普通は若い先生、新入社員とかの相談相手として、1年とか少し先輩の人を、話を聞いたり悩みを相談するという対象として位置付けるものですが、それをもう少し学校に合うような形で、この人に相談するというパートナーを明確にしてあげる。そういうチューターが、ある程度情報が集まった時点で、お互い情報を共有して、「こういうことを変えていく必要があるよね」と学校の風土改革につなげていくようなイメージができたら、カウンセリングという大きな枠に行く前の、もう少し気軽な相談パートナーとして作っていただけるのかなと思いました。
 以上でございます。

【小川部会長】  ありがとうございました。
 きょうも委員からたくさんの御意見を頂きまして、ありがとうございます。これを最終答申にどうまとめていくかというのは、また事務局とも相談していきたいと思います。ありがとうございました。
 時間がもう終了予定時刻を過ぎてしまいましたので、きょうはこの辺にしたいと思います。
 最後、次回以降の予定について、事務局から御連絡をお願いいたします。

【鈴木初等中等教育企画課課長補佐】  本日も長時間の御議論ありがとうございました。
 次回の日程につきましては、また追って御連絡させていただきます。
 本日の資料につきましては、机上に置いていただければ、郵送させていただきます。

【小川部会長】  それでは、きょう予定した議事は全て終了しました。これで閉会いたします。ありがとうございました。

―― 了 ――


お問合せ先

初等中等教育局財務課