学校における働き方改革特別部会(第11回) 議事録

1.日時

平成30年4月5日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

東海大学校友会館 望星の間

3.議題

  1. 学校の組織運営体制の在り方について
  2. その他

4.議事録

中央教育審議会初等中等教育分科会学校における働き方改革特別部会(第11回)平成30年4月5日


【小川部会長】
 おはようございます。定刻数分前ですけれども,既にもう委員の方全員そろわれていますし,事務局の方も全員そろっているようですので,1分半前ですが始めさせていただきたいと思います。今日は第11回になりますけれども,学校における働き方改革特別部会をこれから開催したいと思います。
 本日の議事に入る前に,今回より新たに参加いただく委員がいらっしゃいますので,事務局から御紹介をお願いいたします。

【鈴木初等中等教育企画課課長補佐】
 それでは,御紹介させていただきます。
 まず,早稲田大学政治経済学術院教授の稲継裕昭委員でございます。

【稲継委員】
 稲継でございます。

【鈴木初等中等教育企画課課長補佐】
 続きまして,武蔵野市立第五小学校校長の嶋田晶子委員でございます。

【嶋田委員】
 よろしくお願いいたします。

【鈴木初等中等教育企画課課長補佐】
 どうぞよろしくお願いします。

【小川部会長】
 ありがとうございます。よろしければ,せっかくですのでお二人の委員から一言ずつ御挨拶いただければと思います。まず稲継委員,よろしくお願いいたします。

【稲継委員】
 ありがとうございます。早稲田大学の政治経済学術院の稲継と申します。私自身は公務員制度をずっと研究している人間でございまして,国家公務員制度,それから地方公務員制度を研究してきております。教員の制度は若干,地方公務員制度とは異なる部分がございますけれども,共通する部分も多くございます。何らかの形で貢献できればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【小川部会長】
 よろしくお願いいたします。では次に,嶋田委員,お願いいたします。

【嶋田委員】
 改めまして,おはようございます。私,全国の公立小学校長会,全連小の理事,そして東京都の公立小学校長会の副会長をしております武蔵野市立第五小学校校長の嶋田晶子と申します。今回より委員に加わらせていただく形になりました。学校現場の状況,これまでの三十数年の教員経験を少しでも皆様の御意見に反映させていただければというふうに思っているところでございます。微力ですが頑張りますので,よろしくお願いいたします。

【小川部会長】
 ありがとうございます。それでは次に,本日の配付資料について事務局から御説明をお願いいたします。

【鈴木初等中等教育企画課課長補佐】
 お配りしております議事次第にありますとおり,机上には資料1-1から1-5として,これは前回の特別部会から本日までの間に文部科学省で実施した取組に関する資料でございます。資料2-1から2-7として,学校組織運営体制に関する基礎資料や,本特別部会におけるこれまでの議論についての資料をお配りさせていただいております。資料3として,この後,神奈川県教育委員会様より御説明いただく資料,資料4として,同じくこの後,佐古委員より御説明いただく資料をお配りしております。また,参考資料1から4をお配りしているところでございます。併せて前回までの配付資料につきまして,御参考までに机上に置かせていただいているところでございます。過不足等ございましたら,事務局までお申し付けいただければと思います。

【小川部会長】
 資料の確認の方,よろしいでしょうか。それでは,議事に移りたいと思いますけれども,その前に,前回の特別部会から今回まで文部科学省において実施した取組があるということですので,その報告をお願いしたいと思います。事務局の方,よろしくお願いいたします。

【佐藤初等中等教育局企画官】
 それでは,3点ございます。まず1点目でございます。資料1-1,1-2をごらんいただければと思います。前回の特別部会におきましても,こういった通知を発出する予定ということで申し上げておりましたけれども,資料1-2にございます2月9日付けの文部科学事務次官から各都道府県,指定都市の教育委員会の教育長宛ての通知でございます。こちらにつきまして資料1-1の方に概要がございますので,そちらの方で簡単に御紹介をさせていただきます。
 本通知の目的でございますけれども,1ページ目上の枠囲みのところにございます。昨年の中教審の中間まとめを踏まえまして,文部科学省として12月26日に緊急対策をまとめさせていただいております。その緊急対策につきまして各教育委員会の方に周知するとともに,中間まとめの中で各教育委員会等においても取り組むべきという方策をいろいろ頂いておりますので,それの徹底を改めて呼び掛けるというものでございます。
 中身といたしましては,大きく3点ございます。まず1点目,学校における業務改善ということで,その中の(1)でございます業務の役割分担・適正化のために教育委員会が取り組むべき方策ということで,そこにございます1から13まで整理して,示しております。例えば5でいいますと,中間まとめにございますように,文部科学省においてもこれまでの反省を踏まえて,各学校,教員に新たに業務を付加する場合には,その必要性あるいはその支援体制等についてチェックして調整を図るということにしておりまして,こういった文科省の取組も参考にして,各教育委員会においても同様に業務量について俯瞰(ふかん)し,調整を図る部署を設ける等の体制の構築を依頼しております。また8では,統合型校務支援システムということで,都道府県単位でそういった支援システムの導入を図るようなことで促しているというところでございます。
 1ページおめくりいただきまして,大きな1番の(2)でございます。中間まとめの中で整理を頂きました,そこにございます1から14までの個別の業務につきまして,中間まとめで示された考え方を踏まえつつ,各教育委員会の方で取り組んでいただきたいということを整理しております。例えば3の学校徴収金の徴収・管理であれば,銀行振り込み,口座引き落とし等の方法に変更する,あるいは教育委員会事務局や首長部局による徴収・管理の方法等に切り替えるということ。また,5であれば調査・統計等の回答ということで,調査の対象,内容等の精査を図る,また民間団体から学校に各種の依頼を行う際の,その対応の精選というのを教育委員会の方でも検討いただくというようなことをお願いしているところでございます。1から14まで以外の業務につきましても,ここの整理を踏まえまして,それぞれの教育委員会においてその受皿の整備,確保を進めつつ,中心となる担い手を学校・教師以外の者に積極的に移行していくという視点に立って検討を行うということをまとめております。
 1枚おめくりいただいて,3ページ目でございます。1の(3)ということで,学校が作成する計画等及び学校の組織運営に関する見直しということで,個別の指導計画,教育支援計画等について複数の教師が協力して作成し,共有化する。あるいは校内の委員会等について合同設置や構成員の統一を図るといったことを促しております。
 そして,大きな2番目,勤務時間管理の徹底及び適正な勤務時間の設定ということでは,ICTの活用やタイムカードなどによって勤務時間を客観的に把握,集計するシステムの構築,あるいは登下校,部活動等の適切な時間設定,休憩時間の確保,留守番電話の設置,長期休業期間中の学校閉庁日の設定ということを促しております。そして,大きな3番として,働き方に関する意識改革ということで,管理職のマネジメント能力を養成する研修の実施,あるいは人事評価の活用,学校評価への業務改善や教職員の働き方に関する項目の導入ということをそれぞれ整理して,教育委員会の方に通知して,対応をお願いしているということでございます。
 文部科学省といたしましても,各教育委員会の取組につきまして定期的にフォローアップを実施していきたいというふうに考えております。まず資料1-1と1-2については,以上でございます。

【小川部会長】
 続けてスポーツ庁学校体育室の塩川室長から,お願いいたします。

【塩川スポーツ庁政策課学校体育室長】
 資料1-3及び1-4でございますが,昨年11月の本部会におきましても検討状況を御報告申し上げていた運動部活動のガイドラインにつきまして,先月,3月19日に公表いたしました。1-3に基づいて,簡単に御説明させていただきたいと思います。
 まずガイドライン策定の趣旨についてですが,生徒に望ましいスポーツ環境を構築するという観点に立って,地域,学校などに応じた,多様で最適な形での実施を目指した運動部活動の改革を進めていくというものでございます。
 そうした中,次の丸でございますけれども,主な対象は義務教育の中学校,その上で,多様な教育が行われている点に留意しながら高校についても原則適用していくということで,学校,それから教育委員会と学校設置者においてはガイドラインを踏まえた検討,取組を行っていただくこととしております。
 1の体制整備でございます。(1)にございますように,運動部活動の方針の策定等として,都道府県,それから学校設置者,校長,それぞれが運動部活動の方針を策定していく。それから,顧問については,年間の計画あるいは毎月の計画,実績を校長に提出していくということで,校内,それから学校設置者の体制整備,透明性を図っていくことで,いわば部活動の見える化を図っていくというものでございます。
 (2)でございますが,指導・運営に係る体制の構築ということで,校長が適切な数の運動部の設置をすることや,市町村教育委員会などにおきます部活動指導員の積極的な任用・配置,それから研修の実施などを位置付けているとともに,ガイドライン本文の方におきましては,まさにこの年末の働き方改革の緊急対策なども踏まえた業務改善,勤務時間管理等についても示させていただいているものでございます。
 それから,2でございます。合理的,効率・効果的な活動の推進のための取組ということで,部活動においては当然,適切な指導ということで,生徒の心身の健康管理,事故防止,体罰等の根絶を徹底することを改めてお示しさせていただくとともに,次の丸でございますが,スポーツの競技種目の中央団体に御協力いただきまして,指導手引,部活用の手引きを作成していただくということで,次の丸でございますが,学校の運動部の顧問においては,その手引を使って,短時間で効果が得られる,生徒の技術の向上というニーズにも沿った指導を実施していくこととしております。
 3の休養日等の設定でございます。こちらの最初の丸でございますが,スポーツ医・科学の観点も踏まえ,日本体育協会の研究結果も踏まえまして,休養日の基準として,学期中は週当たり2日以上,長期休業中については,学期中に準ずるとともに,長期休養等を設けること。それから,1日の活動時間については,平日2時間程度,休業日,土日等については3時間程度という活動時間を示させていただいております。まさに,手引も使って,短時間で,科学的な,メリハリある練習・活動を部活動で進めていただきたいということをお示ししているものでございます。
 それから,次の丸でございますけれども,1で書いてある方針の中で,それぞれはこの基準を踏まえて休養日,活動時間などを設定いただいて,運用を徹底していただくことということを示しております。
 4のスポーツ環境の整備ということで,(1)にありますが,今までのような競技種目に応じた運動部だけではなく,多様な運動部を設置していくこと。それから,次の丸でございますけれども,生徒のスポーツ活動の機会が損なわれないよう,拠点校を設けるような形の合同部活動等の取組も推進していくことを示しております。
 (2)の地域との連携ということで,まさに学校,地域が一体となってスポーツ環境を整備していくこと。それから,そういった取組に当たっては,次の丸でございますけれども,スポーツ団体においても積極的に御協力いただいて,地方公共団体等の取組と連携を図ることとしております。
 おめくりいただいて,次のページの5でございます。大会の見直しということで,こういった部活動改革を進める中では,当然,主催する大会の見直しも重要になってきますので,そういった観点から,主催者である中体連等においては大会の在り方を見直していくこと。それから,次の丸でございますけれども,全国各地では中体連あるいは教育委員会と学校の設置者が連携して,学校が参加する大会の全体像を把握し,目安を策定して,それを踏まえて各学校長においては,それぞれの運動部が参加する大会についても生徒の観点から何が適切か精査していただくこととしておるものでございます。
 最後に「終わりに」ということで,さらに,18歳以下の少子化が加速する中でございますので,そういった中で,学校単位のこれまでの部活動に代わり得る地域のスポーツ環境の整備についての充実方策についての検討を地方公共団体にお願いするという構成にしております。運動部活動のガイドラインについては,以上でございます。

【小川部会長】
 報告が続きますけれども,最後に資料1-5について,鈴木補佐から説明をお願いいたします。

【鈴木初等中等教育企画課課長補佐】
 続きまして,資料1-5につきまして御説明させていただきます。4月3日,一昨日でございますけれども,初等中等教育局長通知を発出させていただきました。これにつきましては昨年12月,この特別部会でも御議論いただいた中間まとめにおきまして,児童生徒ごとに作成される計画については,複数の計画を1つにまとめて作成するということ。例えばということで,日本語能力に応じた指導が必要であって,かつ不登校など,児童生徒が複数の課題を抱えていて,個々の課題に応じたそれぞれの支援計画の作成が求められている,そのような場合については1つの支援計画でまとめて作成すべきであるということ。そのためにも,文部科学省や教育委員会が必要な支援計画のひな形を示すなどの支援を行うべきであるという御指摘を頂いたところでございます。
 これを踏まえまして,不登校児童生徒,障害のある児童生徒,及び日本語指導が必要な外国人児童生徒等についての支援計画をまとめて作成する場合の参考様式を作成するとともに,この参考様式の作成と活用に関するマニュアルを併せて都道府県教育委員会等に通知したところでございます。以上でございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。ただいまから,事務局から説明のありました資料1-1から1-5まで,何か委員の方で確認したいこと,質問等がございましたら若干時間を取りたいと思いますが,いかがでしょうか。意見交換とか議論は今回はしませんので,質問,確認したい点があれば。よろしいでしょうか。では,相原委員,どうぞ。

【相原委員】
 ありがとうございます。資料1-3で総合的なガイドライン,部活の関係の御報告を頂戴しました。3番の適切な休養日の設定の関係について,一言だけ考えを申し上げておきたいと思います。
 医・科学的観点を踏まえて以下の基準をということですので,相当広範囲にわたっての観点も含めてこういう休養日の設定を改めて文字に落とし込まれたということについて多とするというふうに考えておりまして,大変結構なことだなというふうに思っております。ジュニア期のスポーツ活動期間におけるということですから,生徒の立場に立った観点としてお考えいただいたことを結構なことだと思って,評価したいと思います。
 一方で,この特別部会においては,やはり学校の先生方の働き方をどうするのかということについて重要課題というふうになっておりますので,これの反対版として,学校の先生にこの基準を照らし合わせたときに,いかなる形で長時間労働の削減につながるのか,若しくは生徒との向き合う時間の質を高めていけるのかという観点も同時に,並行して考えておく必要があるというふうに思っています。
 御報告にもあったかもしれませんが,昨年末の中間まとめの段階では,働き方についてガイドラインを設けて,先生方の働き方をよりよいものにしていこうということもうたわれております。ただ,ここで書かれている3つ目のポチのところ,1日の活動時間は2時間程度,学校休業日は3時間程度ということを学校の先生の方に照らし合わせたときに,それなりのオーバータイムがやはり発生してくるということにもなっておりますので,このままガイドラインを,勤務時間の上限の目安を示したとしても,果たして実行性あるものとして,先生の働き方にいかなる形で好影響を及ぼしていくのか,若しくはどのような変化が生まれるのか,その点についてはよくよく注視をし,引き付けてお考えいただくことが大事ではないかというふうに思っております。1点だけ申し上げておきたいと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございます。事務局の方から今の御意見について,何かありますか。

【佐藤初等中等教育局企画官】 
 重要な御指摘だと思いますので,今後,今お話のあった教員の勤務時間についての上限の目安を含むガイドラインの検討に当たりまして,今の御意見を踏まえて検討していきたいというふうに考えております。

【小川部会長】
 ほかに,いかがでしょう。冨士道委員,どうぞ。

【冨士道委員】 
 失礼します。今の関連で,この部活動のガイドラインなのですが,これはこの部会でもいろいろな議論をする中で出てきたのは,部活動の場合には保護者の意識がやはり大きな課題になるだろうと。これはもう本当に学校に向けて,また教育委員会等含めて,具体的な形で示されたということは大変高く評価をしたいのですが,一方,学校現場では保護者のニーズ,これがやはり大きな,校長としては板挟みになっている部分があるのですね。ですから,ガイドラインをお示しいただいたわけですが,これを例えば対保護者に対してはどういうような働き掛けをしていくのか,今後,是非これは検討していただきたいというお願いでございます。

【小川部会長】 
 ありがとうございます。ほかに。では,清原委員。

【清原委員】
 ありがとうございます。三鷹市長の清原です。資料1-5についてお伺いします。この資料1-5につきましては,第一義的に,支援を必要とする児童生徒のために学校における適切な支援計画の統合の方向が示されたことは,大変重要だと思います。2点目に,それと同時に,このように調査が集約化されることによりまして,多様な様式に対応していた教員にとってもシート作成の負荷が軽減されるという,両方の効果があるというふうに拝察しているところです。何よりも支援を必要とする児童生徒に効果的なものになる方向性が、文部科学省において検討されたことは,望ましいことだと思っています。
 学校現場でこのような調査が多数あって,類型も多様で,調査の意義は理解していても回答に対しての負担が多いというような現状を反映して,あくまでも児童生徒の教育や,あるいは必要な支援に有効であるということが大切ですけれども,今後もこのような報告書や調査等における改革を進められる御予定でしょうか。そのことについて確認をさせていただきます。よろしくお願いします。

【小川部会長】
 事務局の方,この場で何か御回答ございますか。今後こういうふうな見直しの作業というのは,これ以外にも継続して検討していく予定かどうかということで。

【佐藤初等中等教育局企画官】
 全般的に,中間まとめでも御指摘いただいておりますし,文科省でも以前から取り組んでいるところでございますので,引き続きそういう意識を持ちまして進めていきたいというふうに考えております。

【清原委員】
 ありがとうございます。よろしくお願いします。

【小川部会長】
 ほかにいかがでしょうか。橋本委員,どうぞ。

【橋本委員】
 先ほど冨士道委員から,部活動に関して保護者の理解が非常にキーファクターを握っているというお話があったのですけど,それは本当におっしゃるとおりで,休養日の設定等,賛成する保護者もいれば,必ずしもこれに賛同しない保護者もおられるというのが実態かなというふうに思います。それだけに我々教育委員会がしっかり学校の後ろ盾となる,そして学校では全て,本当に足並みをそろえて確実に守っていただく,これがないと,また気が付けば形骸化しかねないなというふうに思っております。そういう意味では我々としても,これからの実施状況とかのフォローアップをしっかりやっていきたいなと,そんなふうに考えております。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございます。では,この辺でよろしいでしょうか。特に部活の先ほどのガイドラインについては,この中身を本当に実行性あるものにするために,さらなる様々な取組が必要かと思いますので,その辺,今日の委員からの御意見も踏まえて,事務局の方で更に取組を進めていっていただければと思います。ありがとうございました。
 それでは,次の議題,本日の本題でもあります学校の組織運営体制の在り方について議論を進めていきたいと思います。前回の特別部会におきまして,今後,特別部会の主な論点として,今日の配付資料の一番後にありますけれども,参考資料4に示されているように,3つの論点,学校の組織運営体制の在り方,2番目に学校の労働安全衛生管理の在り方,3つ目には時間外勤務抑制に向けた制度的措置の在り方,この3点について今後,部会として議論を進めていくということを確認したところでございますけれども,この3つの論点のうちの第1番目の論点,学校の組織運営体制の在り方について前回から議論をスタートさせた次第です。本日は,特にこの論点1の中において,学校におけるミドルリーダーの代表的な存在である主幹教諭などを中心に議論をしていきたいと考えております。
 今日の議論の進め方ですけれども,最初に事務局から,今日の論点に関係する基礎的な資料について説明していただきます。その後に,主幹教諭を積極的に活用されている神奈川県教育委員会の取組について御報告を頂き,そして,学校経営,学校組織論が御専門で研究を進めております佐古委員からの御報告を頂く。そして最後,全体で議論を進めていくというふうにしたいと思います。この後の進め方は,そのように進めさせていただければと思います。では最初に,関係する基礎資料について,これは佐藤企画官から説明をお願いいたします。

【佐藤初等中等教育局企画官】
 それでは,基礎資料を準備しましたので,説明をさせていただきます。資料2-1から2-7までということになってございます。まず資料2-1でございますけれども,これは中間まとめの中から,学校の組織運営体制の在り方の部分について抜粋させていただいたものでございます。今後の議論に係る部分につきましては1枚目の下の部分からでございますけれども,もう一度確認させていただきますと,校務分掌の在り方については,問題を共有して組織的に対応できる体制を整えることを前提とした上で,具体の方策についてはこれまで頂いた御意見を踏まえて検討するということになっております。
 これまで頂いた意見としては,例えば学年という単位でのグループ,主任の在り方・役割についても見直す必要があるのではないか。そして,次のページに行っていただきまして,教頭・副校長における校務全体の管理の負担軽減を図るためにも,業務について包括的グループに分けることを進めるべきではないか。また,そのときの責任者となる主幹教諭の役割の明確化と主幹教諭の複数配置等を促進すべきではないか。そして,管理運営に関する校務分掌の担い手として事務職員等の体制の整備を促進すべきではないか。そして,文部科学省といたしましても,校務分掌につきまして教育委員会が参考にできるような優良事例を収集し,周知すべきではないかというふうな意見が出されたところでございます。
 このような意見を踏まえまして,副校長・教頭の職務の在り方や主任の在り方,校務分掌の在り方を含む学校の組織運営体制の在り方について引き続き議論を進めていくということになっておりますので,改めて確認をさせていただいたところでございます。
 続いて資料2-2,横書きのポンチ絵になっております。学校の組織運営体制の在り方に関する参考資料ということで,1枚おめくりいただきまして1ページのところでございますけれども,こちらは,それぞれの教育委員会におきまして,所管の学校に対して管理職マネジメント研修であるとか,教職員の勤務時間管理徹底の指導・助言など,学校の組織マネジメント力の強化にほとんどの都道府県,政令市,市区町村の方で取り組んでいただいているというふうなデータでございます。学校の組織マネジメント力の強化につきましては,それぞれの学校で管理職がしっかりとしたビジョンを示すことによって組織全体が有機的に対応するということで,教師一人一人の業務負担の軽減に直結するものでございますので,文科省といたしましても,こういった取組を引き続き促してまいりたいというふうに考えております。
 そして,2ページ,3ページでございますけれども,そういった組織マネジメントの中核を担う校長,副校長・教頭の1日当たりの学内勤務時間について整理したものでございます。中ほどの下の部分に,事務(調査回答),あるいは事務(その他)というふうにまとめている部分がございます。校長につきましては,そこにございますとおり2時間ぐらい,そして次のページの副校長・教頭の方を見ていただくと4時間程度,そういった事務作業に費やされているということで,非常に管理職が学校の事務に多くの時間を費やすと,そういうこともあって非常に多忙であるという状況がうかがえるかと思います。
 そして4ページの方で,そういったこともありまして副校長・教頭の職務の状況について整理をしているものでございますけれども,それぞれ御本人としては時間,労力を,左にございますような業務,例えば職場の人間関係づくり,児童生徒指導上の課題等に費やしたいということをお考えいただいているわけでございますけれども,現実的には,右側にございますとおり,各種調査依頼への対応,あるいは施設・設備管理というところの対応に多くの時間を費やす状況になっておりまして,結果的に左の方に挙げている職務に十分取り組めていないというふうな現状がございます。
 そして,1ページめくっていただいて5ページでございますけれども,そういった副校長・教頭が,多忙であるということなのですけれども,学級担任につきまして,一部ですけれども小学校で持っておられたりとか,あるいは学級担任を持たなくても,下の方にございますとおり授業を受け持っておられる方というのが半数程度いらっしゃるということで,こういうことも多忙化の一因になっているということが見てとれるかと思います。
 そして,次の6ページでございます。こちらは学校に置かれる教諭以外の職ということで,学校組織の中では,御承知のとおり教諭が大多数でございますけれども,ここに挙げましたようなそれぞれの職務,内容を持った職が置かれているということでございます。副校長・教頭を支えるものとして考えられるものとしては,今までの議論の中では主幹教諭,指導教諭,事務職員というふうなことが考えられるかと思います。これらの参考条文につきましては,資料2-3の方に詳しい条文を載せております。
 そして次の7ページ,8ページを見ていただきますと,今申し上げました主幹教諭,指導教諭についての,実際に配置されている成果と課題についてまとめたものでございます。主幹教諭の配置による主な成果ということでは,例えば分掌間・学年間の調整など学校の総合的な調整が図られて,学校の組織としての力が向上した,あるいは2番の,教職員間の業務調整が円滑になり業務の質が改善し,また業務が効率化した。また,4番にありますように,主幹教諭が管理職と教職員のパイプ役になることにより校内のコミュニケーションが改善されたというふうな成果が出ていると。そして,配置に係る主な課題といたしましては,例えば1番でありますように,学校で主幹教諭の役割や職務内容,権限が十分に理解されていない,また,4番にありますように,主幹教諭となる者の人材育成が十分にできていないというふうな課題が指摘されているところでございます。
 続けて8ページの指導教諭の方を同様に見ていただければと思いますけれども,指導教諭につきましては,配置による主な成果ということで,1から3にございますように,教員の指導力の向上につながった,あるいは指導体制,研究体制が充実された,OJT,校内研修の活性化,質の向上につながったというふうな成果が出ていると。そして,主な課題といたしましては,主幹教諭と同様でございますけれども,学校で指導教諭の役割や職務内容が十分に理解されていない,また指導教諭の授業時数が多く,指導教諭に期待される校務を十分に処理できないというふうな課題が指摘されているところでございます。
 最後の9ページでございますけれども,こちらは,学教法の施行規則におきまして学校には主任が原則必置になっておるということでございまして,学校種別ごとに主任の種類,そして総数というものを示したデータとなっておりますので,御参考に付けております。
 そして,資料2-4から2-6につきましては,これも特別部会の方で以前にお配りして説明をさせていただいている資料でございます。今回改めて配付させていただいておりますのは,組織運営体制を議論するに当たりまして,個別の職だけでなくて学校の組織全体の在り方についても議論いただければということで,それに資するものとして出させていただいております。資料2-4だけ少し,もう一度紹介させていただければと思います。
 資料2-4,A3を折りたたんでいるものでございますけれども,広げていただきますと,1枚目につきましては学校の一般的な組織図ということになっております。下の部分に説明がございますけれども,まず校務に関する部につきましては,それぞれの学校の実情において設置する部の数,あるいはその区分というのは異なっていると。一般的にはだいたい3つから5つ程度の部に分けている学校が多く見受けられるというところでございます。また特別委員会につきましても,学校の規模にかかわらず大きく異なっておりますので,例えば10以上の委員会を設置している学校もあるというふうになっております。そして,1人の教員が担当する業務でございますけれども,これも様々でございますが,例えば分掌を細分化している学校や委員会を多く設置している学校では,1人が多くの分掌や複数の委員会を担当するというふうなケースもございます。
 2枚目に付けておりますのは,こういった1人の方が多くの分掌や複数の委員会を担当している実際の学校の組織図の例ということで,参考に示しております。今回新たに,少し色付けをさせていただいた部分がございまして,教務部門の中のそれぞれの,教務部,学習指導部,生徒指導部の部長さんにつきましては,そこにございますとおり,それぞれ教務主任,研究主任,生徒指導主任の方が担っておられるんですけれども,例えば教務主任の方,青色を付けさせていただきましたけれども,教務部の業務以外のところでも,例えば学習指導部とか生徒指導部の中にも出てきますし,右側の庶務,あるいは渉外,事務というところにもそれぞれ職務を持っておられると。同様に研究主任はh,緑を付けさせていただいておりますし,生徒指導主事についてはjということで赤を付けさせていただいておりますけれども,それぞれ部長として担当されておられる以外のいろいろな場面で,別の仕事を割り振られているというふうな状況になっております。
 こういうのは一例でございまして,学校の実情を踏まえるとやむを得ない部分も当然あるかと思いますけれども,こういったことを踏まえて,更に校務分掌をグループ化,再編・統合すると。例えば主幹教諭等を配置しながら,ある程度そういった管理業務というところに業務を整理して特化するということは,1つ学校全体の負担軽減につながるやり方ではないかと考えられると思いますので,改めて参考としてお配りさせていただいたところでございます。
 最後に資料2-7につきまして,ごらんいただければと思いますけれども,こちらもA3を折りたたんだものになってございます。中身としては,都道府県,政令市別の校長等人数及び登用者数ということで,昨年4月1日現在のものでございます。
 まず1枚めくっていただきまして,校長等の人数及び登用者数ということになっております。先ほどから話の中に出ております主幹教諭,指導教諭というところで,下の部分でございますが,見ていただきますと,例えば小学校では,主幹教諭については9,791名,そして中学校では6,508,高等学校では3,525,特別支援学校では1,212ということで,全体の総数としては2万1,036人と。うち女性の方の比率は34.3%というところでございます。
 そして,その下の指導教諭につきましても同様に,小学校について1,100人,中学校については727,高等学校については521,特別支援学校については151ということで,こちらは全体で2,499名ということ。そして,その中で女性の方の占める比率は48.2%というふうな状況でございます。
 そして,その次のページに,全学校種を通じまして,都道府県,政令市ごとに,今申し上げましたけれども校長,副校長・教頭,主幹教諭,指導教諭のそれぞれにつきまして実際に何名配置されているかというデータを示させていただいたところでございます。例えば主幹教諭,右から2つ目の欄でございますけれども,見ていただきますと,かなり多く配置されているところとしては,例えば東京都,神奈川県,兵庫県,そして政令市では横浜市あたりがかなり配置をされていると。その一方で,全く空欄になっておりますのは主幹教諭が1名も配置されていない地域でございまして,見ていただきますと分かるとおり,それぞれの地域におきまして,主幹教諭あるいは指導教諭の配置人数が大きく異なっているところでございます。それ以降は,小学校,中学校等の学校種別ごとに示した資料でございますので,こちらの方は参考にごらんいただければと考えております。事務局からの組織運営体制に係る基礎資料の説明は以上でございます。

【小川部会長】
 ありがとうございます。質問とか確認があるかと思いますけれども,全体の意見交換の時間に行っていただければと思います。それでは次に,神奈川県教育委員会から御報告を頂ければと思います。今日は神奈川県教育委員会より,教職員人事課専任主幹兼グループリーダーの市川幸春様以下3名の皆様にお越しいただいております。
 それでは,神奈川県教育委員会の方から御報告をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【神奈川県教育委員会(市川)】
 御紹介いただきました神奈川県教育委員会の市川と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本県では小中高と総括教諭というものの導入を進めておりますが,本日は,最も組織的に機能していると考えている高校のことを中心にお話をさせていただきます。
 資料1ページをごらんください。まず本県が学校運営組織というのを見直した背景についてですが,従前は校長,教頭以外は全て教諭職という,いわゆる鍋ぶた型の組織で,職員会議の決定を経て学校運営が進められているというような状況でした。今日的な様々な教育課題に組織的,機動的な対応ができる学校運営組織の構築が必要と判断して,教育委員会の方で組織の見直しを行ってまいりました。そのポイントは,お示しした1から3までの3点でございます。
 1つ目が,細分化されていたものを,組織を簡素化させよう,それによって会議の削減,責任の所在の明確化を図るため,組織の再編統合を大胆に行っております。2点目が,従来の主任というのが組織上の職としては位置付けられていないことから,その役割には限界があったということで,新たな職として総括教諭を位置付けたということです。3点目が,校長がつかさどる校務を補助するため,学校運営上の重要事項に関する企画立案を行う企画会議というのを設置した,この3つが組織改編の重要なポイントとして考えております。
 2ページをごらんください。制度構築までの流れは,1の経緯にお示ししたとおりです。平成15年に教育委員会の方で検討会を設置しまして,新たな学校運営組織の検討を開始し,18年に新たな職としての総括教諭を配置しております。そして学校教育法の改正を受け,本県の管理運営規則を改正し,総括教諭の役割というのを2のとおりに定めました。学校教育法における主幹教諭を本県の総括教諭として,職務内容を(1)から(3)までのように定めております。(1)は,管理職と教諭のパイプ役としてだけではなく,学校経営に参画する一員としての役割として定めております。2点目は所掌するグループのリーダーとしての役割,3点目が,リーダーとして職員の人材育成を行うというのを明記しております。この3点目が学校教育法における主幹教諭と若干違うところというふうに認識しております。
 それでは,3枚目をごらんください。具体的な組織,こちらは県教育委員会の方で各校に示しているモデルというふうに考えております。図の上のカテゴリーという,この3つについては,この中で各校において定めてくださいというように示している3つのカテゴリーです。その下に,小学校は4グループ,中学校は5グループ,高等学校は6グループとありますが,ここではお示しした6つのグループ編成を基本として考えています。このグループ編成と各グループの業務内容というのは,生徒の実態や各校の教育課題,校長の経営方針に応じて柔軟に定めることができるようにしております。例えば学校行事や部活動が盛んな学校においては,6つの右から2つ目,健康・相談というグループが示されていますが,ここの代わりに生徒会活動というようなグループを置いている学校が多くあります。そのほかにも専門学科高校では,総括教諭,グループリーダーというのを7名配置して,7グループ編成を行っている学校もあります。また,特定課題に対応するため期間限定のグループの増設を行っている学校だとか,指定事業,例えばSSHに指定された学校について,それに対応するグループを7グループ編成で行っていると,このように学校経営を行っているところもございます。
 それらの各グループの状況を学校全体として捉え,課題として共有してグループ間の連携を図るなど,運営上の重要事項の企画立案を行う場合として企画会議というのが位置付けられております。構成員はお示ししているとおりなんですが,そのほか校長が必要と判断した場合には担当者,あるいは今後,外部人材というのも参加していただくことを教育委員会としては検討しているところです。
 では,4枚目にお進みください。現状として我々が考えている成果と課題ということなんですが,成果の第1番としては,一番上にある組織的な学校運営による経営効率の向上,これが一番と考えております。まず委員会等を減らしたことで,会議の回数というのが物理的に削減され,また職員会議の時間が大幅に短縮されております。また,指示伝達の方向性が明確になって,学校運営が組織的にできるようになったということ,先ほど申し上げました責任の所在が明確化されたこと,企画会議において管理職と教諭,総括教諭が綿密な意見交換ができるようになったこと,これが学校経営会議としての位置付けに結び付いております。また,迅速な意思決定,これが可能になったというふうに考えております。新しいこと,企画から実施までのスピードがかなりアップしたというのを現場の職員からは聞いております。
 2番目に,中長期的な改革の取組が可能になっていることでございます。従前の主任制度というのでは,主任が互選であるなど,場合によっては持ち回りで担当するような場合がありましたが,職の意識を持った総括教諭がミドルリーダーとして,自身の所掌グループだけでなく学校全体を意識して,同一校で数年,業務に取り組むことが可能になっております。そのため学校課題を複数年にわたって改革していこうという意識が,総括教諭の間,企画会議の間で引き継がれております。これが学校経営力の向上にもつながっているというように認識しております。
 3点目が人材育成面です。役割として明確に位置付けておりますが,例えばグループの中にサブリーダーというのを置いている学校が現在多く出てきております。これは職としては位置付けられていませんが,学校が運営上置いているものであって,このサブリーダーというのが次期総括教諭候補であるなど,ひいては管理職へとつながる人材に育てるために,組織的に人材育成を行っているところです。若手職員のマネジメント力を高めていくためにも,30代前半の職員というのをサブリーダーに配置するなどして,学校経営参画意識を高めることが学校運営の活性化にもつながっていると考えております。
 続きまして今後の課題ですが,1番は,担当する総括教諭の学校運営,マネジメントに係る時間の確保,やはりこれが一番の課題というように認識しております。我々,総括教諭をプレーイングマネージャーというように呼ぶことがございまして,生徒の教育もつかさどり,学校経営もつかさどる。その中でいかに時間のバランスをとっていくか,授業の準備,生徒対応の時間をどう確保していくか,グループリーダーとしての業務,どのように確保していくか,ここは大きな課題というふうに捉えております。やはり総括教諭というのは力のある職員が任命されており,業務が集中する傾向は見られております。先ほど役割のところで,グループの統括に関することとして役割を定めておりますが,私ども人事を所管する課としましては,総括教諭はグループ業務の進行管理に徹するようにと指導しております。グループ内の特定の業務を担当せず,グループ員がどのように業務を遂行しているか,そこをマネジメントするようにと指導しているところですが,やはり職,役割,これに対する認識が,総括教諭自身,管理職,教諭職の者に対しても認識が不足しているところ,理解が不足しているところもありまして,やはり総括が仕事を抱えてしまうという場面も見られます。そういう場合に,やはり時間の確保が非常に難しくなっているなというふうに考えております。その中で,教諭職よりは若干授業時間数を減らそうというようなことで,各校で取組の工夫をしているところです。
 2つ目の課題として,人材確保と育成というところです。50歳代の職員が半数以上を占める本県の高等学校なんですが,一番の課題は教育力の継承,これを喫緊の課題として捉えております。現在40歳代の職員というのが極端に少ない状況のため,次代の総括教諭,管理職候補となる人材が不足しております。このため,数年前から総括教諭の昇任条件というのを若干緩めまして,30代後半から総括教諭に任命できるようにしております。これによって若手の登用を積極的に進めているところです。一方で,学校運営にはベテラン,若手,両方のよさが必要であると考えており,年齢層も考慮して任命しているところです。この人材不足のところでは,例えば再任用の総括教諭,こちらも3年ほど前から導入して,人材確保に当たっているところです。そのほか,例えば管理職への昇任というのは考えていなくても,学校運営に協力したい,力を発揮したいと考えるベテラン,50代後半の職員なんかも,若手へのバトンを渡してもらうために総括教諭に任命しているという現状がございます。
 総括教諭に対しての研修というのがやはりなかなかできていない,こちらも1つの課題と育成面では考えています。新たに任命された新任の総括教諭には総合教育センターにおける研修制度,あとは私ども人事課が主管する研究会議というので人材育成を図っているところですが,なかなか組織的にというか,年次研修のように組織立ってできているところがないので,総括教諭自身のマネジメント力をどうやって育てていこうか,これを教育委員会としてどのように取り組んでいくのかというところは今後の課題として考えております。私からのお話は以上とさせていただきます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。それではここで,神奈川県教育委員会からの今の御報告について,質問,確認をとりたいと思います。少し理解を深めるために質問,確認等の御発言をお受けしたいと思います。発言の際には,恐縮ですけれども名札を立てていただければと思います。どなたからでも,どうぞ。では,こちらから冨士道委員,橋本委員,天笠委員,時久委員,善積委員の順でお願いいたします。それでは,どうぞ。

【冨士道委員】
 失礼します。3点お聞きしたいと思います。1点目は,3ページ目にありますが,このグループ編成の基本的な考え方には柔軟な対応ができる,これは校長が意見具申をした後,所管教育委員会が判断をするというような表記がございますが,例えば,中学校は5つのグループですが,本校ではこれを6つにしたいという場合には,これは本来ならば5ですが,逆に,例えば6人の総括教諭というのは派遣,配置されるものなのかどうか。
 2つ目は,4ページになりますが,先ほど課題のところにもありましたが,いわゆる総括教諭の授業の軽減ですが,工夫をなさっているという話があったんですが,実際,東京都で言えば教務主任,主幹であれば当然授業の軽減があるわけですが,こういう制度としての軽減というのがあるのかどうか。
 3つ目は,この総括教諭の選考というのはどんなシステムなのかを教えていただきたいと思います。

【小川部会長】
 その都度答えていただいた方がいいですね。では,今の3つの質問について,お願いいたします。

【神奈川県教育委員会(南雲)】 
 まず1つ目の,総括教諭の配当という形で行っているんですけれど,中学校5名という形なんですが,やはり学校の規模によって人数の調整はしております。市町村全体で何名という形で配当しているので,その中で市町村の方で実際に調節をしながら,例えばうちの学校では6名欲しいということであれば,そこの中で調節をしてという形で,かなり柔軟な対応はしているという状況です。

【神奈川県教育委員会(市川)】
 2点目の授業の軽減というのに対しては,組織的に定めているものはありません。各校が2時間なりを非常勤講師として教科の担当になってもらうというような工夫にちょっと委ねているような状況です。
 3点目,選考については,総括教諭の試験制度はとっておりません。校長からの推薦と私ども人事課の評価,場合によっては学校訪問による面接の結果などを踏まえまして任命しております。

【小川部会長】 
 冨士道委員,今の回答を受けて何かございますか。よろしいですか。

【冨士道委員】
 結構です。

【小川部会長】 
 では,橋本委員。

【橋本委員】
 質問1点だけなんですけれども,先ほどの説明の中でも少し触れられたと思うんですが,こうやってしっかりと主幹教諭を活用される一方で,主任はどういう役割を果たされているか。主幹教諭と主任の関係はどうなのかというのをお聞きしたいと思います。と申しますのは,恐らくこの問題を考える上で,府県によってそれぞれ主任の役割も違うと思いまして,私どもの場合は比較的主任制度が定着している。特に教務主任はもうかなり中間管理職的に働いていらっしゃって,お話の総括教諭会議ですか,我々でしたら部長会議というので主任クラスが集まってやはりやっていますので,非常に近いのかなと思いまして,そういう意味で主任の役割を教えていただきたいと思います。

【小川部会長】
 お願いいたします。

【神奈川県教育委員会(市川)】
 本県は今,主任というのはとっていませんので,以前も主任制度としてどこまで,すみません,古い話になってしまって,はっきり職としては位置付けておりませんでした。飽くまで分掌の代表者ということで,余り管理職からの任命というのは行っておらず,先ほどお話ししました分掌の委員の中の互選であるなど,去年は私がやったから来年はあなたねというような持ち回りの部分があったところで,今,本県の例えば高校で言いますと,その主任というのが残っているのが教科の代表ぐらいになっております。全て今,このグループリーダー,総括教諭に充てているということで運営しております。

【小川部会長】
 橋本委員,よろしいですか。

【橋本委員】
 はい。

【小川部会長】
 では,天笠委員,どうぞ。

【天笠委員】 
 1つ,お願いいたします。それは,総括教諭あるいは主幹教諭の育成ということについて御説明いただきましたけれども,その件について御質問させていただきます。これまでは,そういうお立場に立たれようとされる方に対して,あるいは立った方に対して,どういう研修,あるいは人材育成というのでしょうか,それがなされてきたのかどうなのか,行おうとしてきたのかということを含めてで結構ですので。その際,いわゆる組織マネジメントというのは,こういう立場の方々はどういう存在としてあったのか,ある意味での意味をなしていたのかどうなのかということを含めて,どんなふうに。この立場の方の育成と組織マネジメントの研修というのは,どういうそれだったのかということです。
 あわせて,これから先の,こういうお立場の方の育成に当たり,教職大学院の活用ということはどうお考えになっているのかということで,神奈川県の場合も教職大学院がスタートした段階かというふうに思いますけれども,教職大学院ということと,それからこういうお立場の方の,あるいは将来のリーダーの育成ということを関わらせて,そこら辺というのはどういうふうに考えられているのかということで,現在御検討のことがありましたらお話聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。

【神奈川県教育委員会(市川)】 
 まず育成面については,先ほどちょっとお話ししました新しく任命された総括教諭に対しては新任総括研修というのを,年間を通して数回行っております。あとは総括教諭研究会議ということで,2年目以降の総括教諭,各校1名程度に参加してもらって,全部で百数十名にわたって,協議をさせることによってマネジメント力を高めさせるようにしています。各校の課題に対してどのように取り組んでいるかというような協議を踏まえまして,私ども教育委員会の方から指導,助言をすることによって育成を図っているところです。ただ,それが系統的に,では3年たって,5年たったから,では年次研修のように研修制度となっているかというと,そこまではまだ提示できておりません。
 マネジメント力というところでは,その中でやっていることと,あとは教諭,職ではなく,法定研修ですね,年次研修。その中で,中堅,11年目に当たる職員の研修において,そういったマネジメントということも若干内容に盛り込んでいるところです。
 教職大学院の活用については,現在のところまだ検討に入っておりません。

【小川部会長】 
よろしいですか。

【天笠委員】 
 はい。どうもありがとうございます。

【小川部会長】
 では,時久委員,どうぞ。

【時久委員】 
 御発表ありがとうございました。組織について非常に新鮮な風が吹いたというか,大変有り難い発表でした。それで,お聞きしたいのは,総括教諭イコール主幹教諭ということで,たくさんの人数ということもありますけれど,在籍校が変わるというか,異動等の関係で変わっていったときに,それがどうなるかなというのを1つお聞きしたかったのと,もう一つは,非常にいい中身の取組だと思って聞かせていただきました。私が今やっているのは小中学校が対象だったりするものですから,小中学校でもこういうふうな形でいけたら非常にいいなと思って聞いてはいたのですけど,小中で,学校数も多いということもあったりするでしょうけれど,何か高等学校とまた違う課題というか,小中もこんなにですよと実践が沸き起こるようにあったらいいなと思うんですけど,その辺の課題がもしあれば教えていただきたいと思ったのです。

【小川部会長】
 それでは,2点,お願いいたします。

【神奈川県教育委員会(市川)】
 異動については,総括教諭は総括教諭の間での異動です。役職は変わりません。ただ,配置校によって所掌グループが変わったりというのは当然ございますが,職は変わりません。小中等の課題については,担当の方から。

【神奈川県教育委員会(八矢)】 
 小中を担当しております八矢と申します。よろしくお願いいたします。小中学校,特に小学校ですよね。小学校は学校の規模が多少小さくなってきますので,それぞれのグループの人数が,4つに割ったとしても非常に少ない人間でのグループ編成になります。ですからグループの内容が非常に多岐にわたったり,でもメンバーは少なかったりというところでは,総括教諭が学級担任をしながらどうしてもというところがありますので,先ほど高校のお話もありましたけれども,授業や学級担任の業務と併せてグループをマネジメントしていくところの時間の確保というんですかね,というのは非常に大きな課題になっています。ただ,人材育成であったりグループをマネジメントしていくなんていうところの課題については高校とさほど変わらない,ただグループの規模がだんだん小さくなってくるのは否めないというところでございます。

【小川部会長】
 時久委員の方から何か,今のを聞いて,どうぞ。

【時久委員】 
 分かりました。小さい学校が多いので,それはもう本当にそうだと思います。それで,一定規模の,高校に匹敵するぐらいの大きな学校については,高校のような取組になっていらっしゃいますか。

【神奈川県教育委員会(八矢)】
 そうですね,大きな学校についてはそういうふうに高校と似たような,また中学校と似たような組織運営ができていますが,小規模校,これはグループに分けなくても,そもそも小さいのではないかみたいな話はあるんです。ただ,グループに分けていくことによって,総括教諭がそれぞれの教諭を抱え込みながら,マネジメントしながら直接指導,助言をして,次世代の人材を育成していくという,非常にこれはミニマムに,直接指導できて人材育成にということになりますので,非常に効果を上げられているのではないかなという感触を持っております。

【小川部会長】 
 よろしいですか。

【時久委員】
 ありがとうございます。分かりました。

【小川部会長】
 善積委員,どうぞ。

【善積委員】
 ありがとうございました。2点お尋ねできたらと思いますが,総括教諭の役割という2ページの(3)教諭等の職務遂行能力の向上に関すること,これが通常の主幹教諭と違うところだとおっしゃっておられたのですが,この職務遂行能力の向上というのは具体的にどのあたりを指していらっしゃるかというのが1点と,もう1点は,総括教諭に昇任することを皆さんが目指されるための何か,仕掛けですね。モチベーションを持ってそういう職務を遂行したいと思わせるような動機づくりみたいなもの,そういったことをされているかどうか教えてください。

【神奈川県教育委員会(市川)】
 職務遂行能力の向上といいますと,当然授業に関する指導なんかも行ったりはしています。多くが新採用の指導に当たったりという場面が多いので,そのような授業だとか,大学を出てすぐのような職員も多数配置されておりますので,社会人としての心得から,業務については,先ほど申し上げましたが,総括教諭はやはり力のある職員が非常に多いです。だから自分がやった方が早いからやってしまうという職員が多いんですけど,そこをやらないで職員にやらせてくれと,そこを我慢してくださいというように総括教諭には私ども指導しているところです。そういった取組が一人一人の職務遂行能力に関わってくるのではないかというふうに考えております。
 目指すための動機付けということなんですが,1つがサブリーダーというのの配置,これが,来年誰がサブリーダーになったよ,じゃあ私もそうやって学校経営に参画していきたいなというような若手職員が今増えてきているというふうに認識しております。ただ,こちらから具体的にこういった取組で,総括教諭を目指すようなという取組はしておりません。魅力ある職として皆さん振る舞ってくださいというように,学校経営もできて生徒にも関われるプレーイングマネジャーとしての魅力を存分に発揮してくださいというように総括教諭にはお願いしているところです。済みません,なかなか回答になっていないところなんですけど。

【小川部会長】 
 何かございますか。どうぞ。

【善積委員】
 正直,なり手の確保というところでは苦労はされないでしょうか。

【神奈川県教育委員会(市川)】
 高校で言いますと,配置定数に対して,やはり若干足りていないところがあります。6人配置,定数6人というところに5名しか配置できない学校,こちらからこの総括に任命したいんですけれどと働き掛けても,本人がどうしても固辞するような場合というのもございます。

【神奈川県教育委員会(南雲)】
 あと年齢が。

【神奈川県教育委員会(市川)】 
 年齢ですね。ある程度要件は定めておりますので,本人に意欲があったりしても,なかなかその要件にまだ達していないのでちょっと我慢してもらうというようなこともありまして,数が十分に足りているというようには認識しておりません。今後,年齢層のこともありまして,もっと配置数については苦しくなっていくなというふうに考えております。

【小川部会長】 
 善積委員,よろしいですか。はい。ほかにいかがでしょうか。3人挙がりましたね。では,青木委員,川田委員,そして嶋田委員の順でお願いします。

【青木委員】 
 ありがとうございます。2ページのところで総括教諭の役割について書かれているので,そこをまず伺いたいのですが,主幹教諭であって総括教諭でない教員というのが神奈川県ではどのぐらい存在しているのかということと,それから,総括教諭である主幹教諭は,主幹教諭のみの教諭がいた場合には給与は同じかどうかということと,それから,法律で定められている主幹教諭に求められている職務に追加されて(3)が入っているんですけれども,これは制度設計上どういう意図があったのかということを伺いたいんですね。あと,最年少の総括教諭は,小中高でそれぞれ何歳ぐらいかというのを教えてください。

【小川部会長】 
 では,お願いします。

【神奈川県教育委員会(市川)】
 県の中の職として総括教諭を定めておりまして,それが国でいう,学校基本調査なんかで報告する主幹教諭として報告しております。ですから,どっちであってどっちでないというのはありません。

【青木委員】 
 イコールなんですね。

【神奈川県教育委員会(市川)】
 はい。と考えています。ですから給料もそのとおりです。
 あとは何でしたか。

【小川部会長】
 職務の中で,3の職務を加えた意図はどういうことかという。

【神奈川県教育委員会(市川)】 
 これは,やはり導入に当たっては,すぐに受け入れられたものではありません。ただ,主幹教諭,そのままなった人が管理職になっていくというのではなくて,学校現場におけるベテランの役割というのを明確にしたいという意図です。あと,最後は。

【小川部会長】
 3番目は,最年少の。

【神奈川県教育委員会(市川)】
 すみません。最年少,高校で言うと,平成30年,37歳というのが最年少でおります。小中は36歳です。

【小川部会長】
 青木委員,今のことでいいですか。

【青木委員】
 はい。

【小川部会長】
 では,川田委員,どうぞ。

【川田委員】
 本日は貴重なお話,どうもありがとうございました。2点,伺わせてください。1点目ですが,この総括教諭という制度が,大きな流れとしては,冒頭お話あったような鍋ぶた型の組織から組織運営力を高めるという新しいことを試みているという中で,当然いろいろな課題が明らかになってくるだろうという文脈での質問として,実際,総括教諭として働いている方が何か現場で問題意識を持ったときに,それを教育委員会として把握するということについて,何か特別な仕組みとか取組があるのかどうかということです。それが1点目です。
 それから2点目は,先ほど天笠委員からもお話があった総括教諭のマネジメント力との関係で,例えば研修の在り方,あるいは総括教諭に求められるマネジメント力をどういうふうに捉えるかということに関して,例えば民間の企業におけるミドルマネジメントの能力とか研修,あるいは公務員でも,学校ではない知事部局の職員の,やはりミドルの方のマネジメント力とか研修の在り方と共通する点,あるいは違うと思われる点などについて,どういうふうに捉えておられるのかという点です。

【小川部会長】 
 お願いいたします。

【神奈川県教育委員会(市川)】
 総括教諭自身が,その課題というのはやはりお持ちだろうというふうに考えています。ただ,それを組織的にくみ上げる仕組みというのは実際にはありません。先ほど私どもが所管している研究会議というところで,今現状はどうなのか,運用制度の課題は何なのかだとか,サブリーダーというのは具体的にどんなように活用しているのかというのはアンケート調査をとっています。それを全校に発信して,今学校で,現場の総括教諭はこんな課題を持って,こんな取組をしているというのは集めて発信している。私どもの今後の制度設計,これから整備していく上でも参考にしているところです。

【神奈川県教育委員会(南雲)】
 マネジメントに関しての研修ということで,例えば知事部局のマネジメント研修とか,そういうところに参加という形は今はやっておりません。今はというか,最初からやっていない状況で,学校の中でのマネジメントという部分と,組織としてのマネジメントという部分では,結び付けていきたいなと考えてはいるんですけれど,実際には行えていないと。小中であれば市町村の方で,各市町村で独自に総括を集めての研修というのはあるんですけれど,県の方でこういうふうにやってくださいというお願いをしているわけではなく,それぞれ独自のスタイルでやっていただいていると,そういう状況です。

【小川部会長】
 よろしいですか。

【川田委員】
 ありがとうございました。

【小川部会長】
 では,嶋田委員,どうぞ。

【嶋田委員】
 先ほど総括教諭で管理職を目指さない者がいるというお話だったと思いますが,学校経営への参画という視点から,そこでの課題とか今後の方向性についてどうお考えなのか,教えていただければと思います。
 もう1点は,小学校の立場から申し上げますと,やはり1週間,二十数時間,学級担任を持っているという状況で,行政としてその時間軽減とか,そういう視点を。学校ごとに,先ほど講師ということもお話がありましたけれども,県単位とか市単位とか,そういう視点での組織的な軽減措置というところを考えていらっしゃるのかどうか,教えていただければと思います。以上です。

【神奈川県教育委員会(市川)】
 導入当初は各校3名配置でした,高校は。最初から6人配置の予定であったんですけど,いきなり6人というよりは,まずカテゴリーの3人配置ということで,どんな職員が任命されるのかということで,それこそ今後管理職を目指していくような人材というのが任命されてきた経緯はあります。これは,その人材だけではなく,私ども総括教諭の数の確保というところもやはり課題としてありますので,例えば自校,この学校だけ定年まで,最後まで総括教諭をこの学校でやりたい,オンリー総括だとか,どのグループでも所掌できるオールラウンドタイプ,あるいは,このグループしか,例えば生徒指導に特化した人材ということのオンリータイプというような,ある程度分類をして,これに当てはまる職員について登用していくということも考えており,それを校長の方に伝えて,こういった人材を是非育てて推薦してくださいというようにお話ししているところです。

【神奈川県教育委員会(八矢)】
 2点目につきましては,各市町村で様々な加配要件があろうかと思いますが,そこと絡めながら,組織として総括がどう機能していくのかという課題を持っていただいて,そこに明確な加配要件を,合致させるようにして支援していく。ただ,これは十分には加配要件が,本数がありませんので,それをうまく絡めながら組織を支援していくようなことは取組として行っています。その中で組織を十分に機能させてください,総括さんをうまく活用してくださいというようなことをお願いして,組織としてうまく軌道に乗せていく。乗せていくと,また次の学校へ,次の学校へと移っていくんですけれども,そんなような支援はさせていただいております。

【小川部会長】
 よろしいですよね。非常に意欲的な取組で,様々な問題意識を刺激されて,質問だけでも30分ぐらいやって,報告を含めると本当に1時間近い時間が経過しました。残りもう一つ報告がございますので,恐縮ですけれども,ここで一旦打ち切らせていただきたいと思います。貴重な実践報告ありがとうございました。それでは続けて,佐古委員の方から御報告をお願いいたします。

【佐古委員】
 よろしくお願いいたします。資料4に説明の要旨をまとめておりますが,先ほど神奈川県の方から非常に具体にわたる総括教諭の取組について説明がございました。私も大いに参考にさせていただくところが多かったんですけれども,私の方はそういう具体的なものというより,むしろどちらかというと観念的な内容になろうかと思いますが,その点お許しいただきたいということと,それから,この働き方改革の議論の本流といいますか,これまでの質疑とやや離れたところで若干考えることがございますので,それも含めてお話をさせていただきたいと思っております。
 まず資料の1枚目をめくっていただきますと,学校の組織体制と教育活動という,これは私なりの問題意識の整理なんですけれども,まとめさせていただきました。真ん中のところに,個業型の組織ということと,それから全人格的成長に関与する学校教育という2つの箱を置いております。個業型組織というのは,私が専攻しております教育経営学ではほぼ常識的な言葉なんですが,なかなか説明することが難しくて,何といったらいいか私も改めて頭を悩ませたところなんですけれども,やや硬い言葉ですけれども,教員が自己完結的に職務,特に教育活動を遂行することとして捉えております。説明を加えると長くなるんですけれども,例えば授業の準備をどれぐらいやるか,学級経営をどのようなところにどれだけ時間を使うかとか,あるいは特定の子供にどう関わるかという,その時間の配分なり労力の配分は,ほぼ,具体の場面では教員に任されているというところが学校の先生方の仕事の特徴であるというようなことでございます。したがいまして,ほぼ時間の管理は個人任せということが今までの学校の特徴だったと思います。
 もう一方は,これは本部会でも随分と議論されてきたことですけれども,我が国は学校教育の中にいろいろな要素を取り込んでしまっていると。つまり教科の認知的な能力の向上だけではなくて,家庭教育や社会教育が本来担わなければならない非認知的な能力,例えばしつけとか社会性とか規範意識とかということを含めて取り込んでいるということに特徴があると。
 この全人格的成長に関与する教育と,それから個業型でそれをこなしていくという2つの軸がございまして,そのことから,上の方にありますけれども,先生としては非常にやりがいを持ちやすいと,大変だけれども,自分の思うような教育活動を展開しやすい。社会的に見ると,多面的な教育活動を非常にローコストで我が国は実現してきたということがあるかと思います。これは,学校の教育の特色をポジティブに見ればそうなんですけれども,この特別部会の議論の関連で言うと,その枠の中にありますが,教師の仕事がシャドーワークしやすいと。つまり,誰がどこまで何をやっているのかということが見えにくい。一方では,先生方に求められる専門性が非常に拡散してしまって,日本の教員はゼネラリストとしての教員像が求められる。つまり教科のスペシャリストよりも,人格的な要素が強く出てくるような教員像として押さえられるというような特徴を持っていると。したがいまして,長時間化の歯止めが困難という特徴を持っていて,ほぼ先生の自主的な活動として勤務時間の範囲なり内容が定まってしまっているということは出てくるということでございます。
 それからもう一つは,今後,新指導要領との対応でいうと,チーム学校とか言われておりますけれども,この個業型と全人格的な学校教育という2つの軸によって構成される学校教育は,組織的に物事に対応することが非常に苦手だという特徴を持っていると思っています。つまりチームで仕事をすることが非常に苦手な組織として今までは頑張ってやってきたと。そうなりますと,働き方改革については,業務の量的観点から見直すことは当然ですけれども,この真ん中にありますような個業型組織でやってきたということに手を付けないと,なかなか学校での勤務の進め方なり勤務の見直しが進まないというように思っています。これが基本的な私の,この部会に参加しましての認識でございます。
 さて,2枚目でございますが,今までのように個業でやってきた組織を学校で変えていこうというときに,恐らく2つの方向性があると考えています。あるいは2つの方向性があるというふうに言うことができると思っております。1つは統制化という方向でして,これは校長が明確なリーダーシップを発揮しながら,ライン系列を強化することで先生の仕事をコントロールしていくという方向でございます。一般の組織で使われている手法が,ほぼこれに該当するような方向であると思われます。もう一つは協働化というふうに,ちょっとこれもこなれない言葉ですけれども,これは何かというと,学校の中で様々出会う課題とか,あるいは教育実践について,先生方が,同僚性的な情報交換を活性化するという方向で組織化を図っていく。つまり,その都度その都度,うちの学級ではこんなことをやったけどうまくいかないわとか,あるいは,うちの学校でこんなことをやっているけど,本当にこれは子供のためになるのかなというような,そういう学校の課題とか実践情報を水平的なコミュニケーションで活性化することでまとめていくというやり方でございます。これを協働化と呼んでおります。
 この統制化と協働化の2つについては結構実証的な研究も蓄積しておりますけれども,端的に言いますと,個業型から統制化,あるいは協働化,いずれの方向をとりましても,先生方の動機付けはかなり高まるということが分かっておりますが,その効果は協働化の方が顕著であるということは,これはほぼ見えております。つまり,学校で働き方改革をするのはいいんですけれども,先生の教育活動に対する意欲を下げるような方向でそれが働いたのでは意味がないと。当たり前ですけれども,そうなると,組織運営の改善の方向性は,この協働化を押さえながら,校長先生がリーダーシップなりライン系列で組織を動かすということを併せてやっていくことが重要かと思っております。
 そのための校長先生のやり方とすれば,我々が高知県の教育委員会と一緒にやってきましたけれども,まずシンプルなビジョンの構成能力が必要です。それから,それを踏まえた先生方の実践改善の非常にフランクな,あるいは自由な情報交換の場をきちんと設けておくということが大事だということが分かっておりますので,そういうことを踏まえたマネジメントの質の刷新ということ,多分これが必要ではないかと思っています。
 それで,次のページでございますが,今のような組織状況の問題点を踏まえまして,働き方改革の方向性を少し大ざっぱに把握するつもりでまとめております。1つは,学校ないし教員の業務の量的な整理,役割の見直し,これはこれまで議論が重ねられてきたことでございますけれども,これが1点。ただし,これは見直すだけでは多分,実効性が伴わないことは明らかでありまして,業務量、勤務時間に関する規制というような措置を併せて入れるということが必要かと思っています。
 もう1点は,一人一人の先生の業務量を軽減するという立場からすると,当然ですけれども学校への人的措置ということを十分に考えてやらなければならないと。これは教員の配置や,あるいは支援人材の確保ということをこれからもお願いしていかなければならないなと思っています。これが2点目でございます。
 3点目,それらと併せまして,組織状況の改善措置としましては,そこに,現時点で5つぐらい並べております。1つは,先ほども申し上げましたが,学校マネジメントを刷新するということが必要です。タイムマネジメントを校長先生がきっちり推進するということもありますし,それから,先ほど申し上げましたが,拡散しがちな学校の教育活動を焦点化し,構造化するという能力のマネジメントが必要だと。つまりシンプルなビジョン形成と,それに基づくマネジメント,この力が多分,これからの学校教育には非常に必要だろうと思っております。これが1点目です。
 2つ目は,先ほどのページで説明いたしましたが,学校の中で,やはり教育活動が活性化していくための仕組みを積極的に取り込んでいく。これは働き方改革のラインからいいますと,若干逆行するようなことがあるんですけれども,しかし教育実践に関するセミフォーマルなコミュニケーションをきちんとできるような学校づくりが必要だと。それから,その中で今後増えていくであろう若い先生が学び育つような学校づくりが必要だと。このためには当然,そういうことを推進するようなミドルリーダーが必要だと考えております。
 それから3点目,連携業務の遂行でございます。これは冒頭で,今回の部会でも文部科学省の方から説明がございましたが,例えば業務の見直しをして,今後一層家庭や地域との連携を促進するというのはいいんですけれども,連携業務は誰がするのという話があります。恐らくチーム学校の実施あるいは業務の見直しに伴いまして学校に増えてくる仕事は,地域や家庭との連携業務だと思います。これは膨大に増えるだろうと思っています。そうすると,その連携業務を,今の状況ですと,ほとんど教頭さんが担うということがあるかと思います。それは,後でも説明しますが,教頭さんの仕事そのものが非常に膨れ上がっておりますので,これでは学校がパンクするということが明らかなように思いますので,連携業務を遂行するような新たなミドルリーダーをきちんと配置しないと新学習指導要領への対応も遅れてしまうと,これが3点目でございます。
 4点目が,校務のグループ化。これは今,神奈川県の非常に先進的な事例がございましたけれども,遂行体制を整えていくと。それから5点目は,先ほど述べましたが,教頭職の負担が大きいので,教頭職の負担軽減というものを図りながら学校が回るようにしていくというようなことが必要かと思っています。
 このような5点ほどを働き方改革に合わせまして実行していくことが,学校の教育活動を前向きに進めていく条件になるのではないかと思います。
 最後,5ページ目ですが,これは主幹ということに少し焦点を当てまして,まとめております。これも文部科学省から説明がございましたが,主幹教諭のこれまでの配置によって,コミュニケーションの円滑化であるとか,総合的な調整機能に効果があったということが示されています。ただし,右側のグラフは先ほどの文部科学省の資料からコピーしたものでございますけれども,よく見ると,そうはいいながら,例えば「生徒指導など緊急事案への組織的な対応が向上した」というようなところでは余り高くないとか,あるいは6番目の「OJTが改善されるなど人材育成機能が強化された」,あるいは「渉外・広報機能が充実した」というようなところについてはそれほど高まっていないということでございまして,これからの新しい学校づくりにとってみると,主幹教諭が今まで果たしていた役割だけではなくて,そういうものも含めてやはり取り組んでいく必要があるだろうと思っております。
 それから,課題としましては,これも今まで説明がございましたように,都道府県によって配置状況に差があると,裏を返せば主幹教諭の役割は実態的に非常に不明確でして,主幹教諭自身の授業時数も多くて,何をしているか分からないというような状況があるのではないかということでございますので,1つの方向性として,今述べてきましたような組織状況の改善という筋道で主幹教諭を活用するということになりますと,例えば,これも神奈川県の総括教諭のところで新たに付け加えられた3番目の役割と重なるんですけれども,教育活動の協働推進体制を担当するような,研修・研究のリーダー若しくは人材育成担当のような役割で置いておく。それから,先ほど言いましたが連携担当ということで,地域の連携,校種間連携を推進するような役割として担っていただく。それから,校務総括担当で,これは教頭先生の補佐役かも分かりませんが,そういう役割でやっていただくというように,この3つぐらいのポジションは恐らくどの学校でも今後必須の役割になると思いますので,そういうことも含めて,学校規模等も勘案しながら,複数配置を考えながら,配置して活用するということが重要かと思っております。
 それだけではなくて,もう一つは,主幹の先生方の授業負担がやはり多いので,こういう役割は必要ですよねというふうに指定してあったとしても,なかなかそれに割く時間が出てこないということがございますので,これは是非,主幹教諭の負担軽減措置を,端的に言うと持ち時数軽減を考慮して,新しい学校づくりに貢献できるような,働き方改革につながる学校づくりを推進できるようなポジションとして活用していただきたいと思っています。以上でございます。

【小川部会長】
 ありがとうございます。時間も余りないんですけれども,貴重な報告内容ですので,質問,確認等含めて一定の時間をとりたいと思います。御意見のある方,名札を上げていただければと思います。
 では,今度はそちらから行きましょうか。相原委員,清原委員,天笠委員,青木委員の順でお願いいたします。相原委員から,どうぞ。

【相原委員】
 佐古先生,ありがとうございました。先生からおっしゃっていただいたストーリー,大変おなかに落ちる部分が多いなというふうに思って伺わせていただいたところです。2点ほど大きな,先生に御質問というよりは,触発された部分を意見として申し上げたいと思うんですが,この特別部会の中で私たちが解決策を見いださなければいけないのは,学校現場,とりわけ先生方の負荷をいかに是正していくのか,子供と向き合う時間,本来業務にどうやって集中できるかという体制を全力で作り上げていくと,こういうことだと思います。
 ちょっと大ざっぱな言い方で大変恐縮ですけれども,管理職においても,教員,先生一人一人においても,全体として業務がオーバーフローしている実態は,かねてからここで共有してきています。したがって,主幹教諭そのものは私,否定はしませんけれど,主幹教諭というポジションを全国に張りめぐらせることができれば負荷が軽減するというものにはなっていないということは,ちょっと新たな,もう一つの理解として持っておいた方がいいのではないかというふうに思っています。先ほどの神奈川の事例を引いても,職員会議の在り方を見直すとか,セットで見直しをする,周辺のところもあって初めて幾つかの改善点が見いだされているようにも伺いましたので,魔法のつえ的に主幹教諭を配置すること全てが問題解決につながるものではないという一方の理解をどこかで持っておかないと,少し議論のポイントが,ちょっと失礼な言い方になりますが矮小(わいしょう)化していきかねないというふうに思っております。それが1つです。
 したがって,これは佐古先生のところにもつながるんですが,仮に主幹教諭を本当に置くとすれば2つの条件があって,1個はエビデンスです。ポストを配置したときに完全に効果測定ができて,労働時間の削減につながっているのかどうかというエビデンスがしっかり背景に,私たち持たないと,責任ある議論がしにくいのではないかというのが1つです。もう一つは,これは佐古先生のところにつながりますが,主幹教諭を本当に配置していくことを全力でやるということになるとすれば,その際には,マネジメントという言葉がきょうはたくさん出てきていますけど,マネジメントは何かというところをもうちょっと掘り下げてやっておかないと,セルフマネジメント,タイムマネジメント,オーガナイズのマネジメントも,マネジメントは魔法のつえみたいなことに,マジックワードになりかねないので,主幹教諭たる者は本来業務を削減していくための新たな仕事を作っていくとか,相当ポイントを絞って対応していかないと,漠としたマネジメントを強化しようということだと,先生たちも真面目なので,新しい仕事をまた作っちゃうみたいなことになりかねませんから,大変気を付けた方がいいと。
 先ほど1つ話がありましたけど,主幹教諭のなり手問題も結構深刻なところでして,やりがいがあっていいんですけど,乗っかり過ぎると,もうやりたくないみたいな話も出てきてしまうので,これはもう主客逆転の話になるので,ちょっと気を付けないと,現場実態をよく見てやる必要があるのではないか。
 もう一つは,最後になりますけど,これも佐古先生から触発されますが,トップダウン型でいくのか,ボトムアップ型でいくのか,学校の先生たちが持っている有効な知見をみんなですり合わせて学校現場を作っていくのかとか,今回目指す学校の姿というのをどういう形で持ち得るのかというのも結構大事な観点だなというふうに承知したところです。事務長を作ることも今回の中には1つポイントとして入っていますので,学校の先生たちの,若しくは管理職の校務分掌をよくするためには,管理運営に当たって事務に当たる職長というところについてサポート体制を強化することも大変重要な点だということを申し上げておきたいというふうに思っています。長くなりました。恐縮です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。相原委員の方からは質問ではないというふうに断られて,御意見を伺ったんですけれども,今の御意見を伺って佐古委員の方から何か御発言があれば,よろしくお願いします。

【佐古委員】
 おっしゃっているように,業務量を軽減するということは基本であることは私も認識しておりますし,その手法とすれば仕事を減らすという方向と,それから人を増やすという2つの方向が多分あるだろうと思っています。ちょっと私がこんなことを言うと語弊があるか分かりませんが,どちらかというと人を増やす方向がむしろ基本ではないかというように思っております。したがいまして,4枚目のスライドで書いてございましたように,学校への人的措置ということが多分,もちろんこれを抜きにしては語れないということが1つです。
 それと,最後に主幹教諭の配置の課題で,持ち時間数を軽減しないと動かないと申し上げましたが,当然それは連動しておりまして,主幹教諭の配置もある意味で学校の人的な措置に結び付けばいいというようなことを少し考えております。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございます。清原委員,どうぞ。

【清原委員】
 ありがとうございます。大変重要な枠組みを御示唆いただきまして,佐古委員,ありがとうございました。簡単に,三鷹市の平成30年度の取組を御紹介して,2点,コメントいただければと思いますので,よろしくお願いします。
 おかげさまで平成30年度予算を三鷹市議会で可決していただきましたが,その施策の柱の中に「働き方改革によるライフ・ワーク・バランスの推進」を位置付けさせていただき,とりわけ「学校における働き方改革」については,「教員が担うべき職を明確化し,業務に専念できる環境を確保することで学校教育の質の向上を図る」ということを明確に示させていただきました。教育委員会においても3月に,『三鷹市立学校における働き方改革プラン』を示してくれております。私が提案した予算の具体的な施策としては,教員の勤務時間縮減への支援として,副校長の業務を支援する副校長補佐を配置すること,また教員からの指示を受けて授業支援を行うスクール・サポート・スタッフの配置,それから学校外活動の引率も含めて部活動の指導を行う部活動指導員のモデル配置,それから,いわゆる周年事業の集約化・簡素化,またタイムマネジメントに資する留守番電話の設置や校務支援情報システムの更新などを実行したいと,教育委員会との連携の中で考えているところです。
 そこで,今日,佐古委員がお示しいただきました働き方改革の方向性の4ページのところのことについて,1つコメントいただければと思います。私も,教員が意欲を下げずに授業に臨んでいただくために,「協働化の推進」は欠かせないというふうに感じています。と同時に,法令等の定めによって,学習指導,生徒指導,学校運営等に関する委員会や担当者を設置することが定められていますので,校務をグループ化したり,統合化したりしていくということは密接不可分だと思うんですね。そこで私は,「協働化の推進」と「校務のグループ化」というのを結び付けながら,負担ではなくて,むしろ授業がよくなるために連携が深まるとか,長々会議をするのではなくて,成果が上がるというような進め方をすることによって効率化ができるのではないか。そして,多忙化の要因とされる校務がむしろ,そうではなくて,軽減につながるのではないかと思っておりまして,2番目と4番目の先生が御示唆いただいたものの運用によって円滑化ができないかなと感じたんですが,いかがでしょうか。
 それから2点目は,これは東京都が進めていただいていて,三鷹市も運用させていただいたのが,校務分掌組織に経営支援部を設置していない学校に,学校経営補佐を配置するということで,昨年度,ある中学校に,いわゆる副校長補佐を置かせていただいたら,効果が上がったんですね。すなわち副校長不在時の保護者や来客等の対応に有効とか,調査,印刷,出勤簿の整理等の対応が軽減されたとか,副校長に余裕ができて本来業務である教員指導に時間を割くことができたとか,生徒対応や保護者対応を迅速に行うことがあって,問題行動や不登校の生徒の減少につながったとか,かなり,たった1年のモデル配置なんですけれども,効果が上がりました。そこで今年度は,経営支援部を設置して,副校長補佐を正式に実施する対象校を,教育委員会と連携して拡充することにしました。
 先生は主幹教諭の活躍ということを念頭に置きながら,教頭職・副校長の負担軽減を提案されているんですけれども,東京都は,もちろん主幹教諭も三鷹市に,昇任者もいますし,たくさん配置をしていただいているんですが,主幹教諭等を経営専任主任に選任して経営支援部を設置し,副校長補佐を配置することによって副校長機能を活性化するという事例を持っています。こういう事例についてどんなふうにお感じになったかなということも教えていただければ,今後の励みになりますので,よろしくお願いします。以上です。よろしくお願いいたします。

【小川部会長】
 では,2点,よろしくお願いします。

【佐古委員】
 ありがとうございます。協働化の推進という事柄と校務のグループ化に関する2つが,これは相互に連動してできるのではないかと,私も総じてそうかも分からないと思っております。特に研究部とかそういう部分でありましたら,これは十分に,この2つは結び付くことができるだろうというふうに思っております。
 それから,副校長補佐とおっしゃいましたですかね,要するところ経営スタッフの補佐役を計画的に配置することによって,学校経営の質が変わるということもあり得るかと思います。ただ,先生,私,主幹職ということに今,少し話を焦点化してお話をしているんですけれども,問題は多分,それが何をするかということが大きいのではないかと思っています。教頭先生の仕事は,私も幾らか資料を見ると,ほとんどもう限界に近付いているというか,限界を超えているので,そういう状況で教頭先生の補佐を入れるということは,これはもうやむを得ない措置として必要だと思います,やらざるを得ないと。だけど,よく考えてみると,教頭先生の補佐役が増えたからといって,では学校の仕事の質が変わるかというと,そうではないわけですよね。行う人が1人増えただけで,だから担当者の負担は軽減されるけれども,学校全体としては仕事の性質は変わっているわけではないと。
 そういう事柄として押さえる場合と,ちょっと話を戻しますけれども,私は,今回お話ししたように,例えばこれから連携を推進しなければならないと,地域連携とか,そういう新しい学校に求められる役割を積極的に,新しく推進するという役割で入れるかによって,やはり少し考え方も変わってくるかなと思っています。だから,何をやっていただくかということを議論して,ミドルリーダーの配置,活用を考えていかなければならないかなと思っております。

【小川部会長】
 ありがとうございました。

【清原委員】
 先生,よろしいですか。1点だけ。

【小川部会長】
 ちょっとごめんなさい。天笠委員,どうぞ。

【天笠委員】
 御質問させていただくことについて,もう既に今の佐古先生のお話の中に答えがあったというふうに受けて,今聞いておりました。何を申し上げさせていただきたいかというと,御提案いただいた教頭職の負担という1点,ここのところについて,私も同意見であるということで,その方策とか対策等でお考えがありましたら聞かせてくださいと,そういうことを尋ねようと思った次第なんですけれども,既に今お話の中にあったかなと思いました。
 その上で,それに関わって少し申し上げさせていただきます。先ほど,学校の組織運営体制の在り方,参考資料ということで実態等出ていましたけれども,教頭職に今就いている方がどのぐらいの年数で,どのぐらいの分布なのかということについて,機会がありましたら,このデータに補足していっていただけると有り難いかなというふうに思っています。私の認識ですと教頭職は,結構年数長くそこにいらっしゃる方が相応にいらっしゃるようにも思うんですけれども,メンタルな面も含めまして,かなりハードなお立場に,長期的にそこに据えておくということ自体が実は大きなテーマである。そうすると,丁寧に見ていくとすると,各都道府県ですとか市町村の人事行政の在り方というんでしょうか,集約的に教頭のところにそれが出てきているというか,そこを見ると,その県,市町村のある種の人事行政に対する体質とか,あるいは考え方が見えてくる部分があるのではないかというふうに思うんですけれども,こういう働き方改革という視点で,そのあたりのところについての人事行政の転換とか改善とか修正ということがどういうふうに動いているのかどうなのか。少なくとも今,この3月末にいろいろな教職員人事が広報されましたけれども,そこら辺のところはどうなのかというあたりは丁寧に見ていく必要があるんじゃないかというふうに思います。
 そういう点では,この働き方改革の,私の捉え方の中には,教頭職の職務の縮減とか軽減というのが象徴的なそれとしてあるというふうに思っているんですけれども,結果としてそれが表れるのか,それともそこから,ターゲットとして,窓口として話を詰めていくのかどうなのか。幾つかのやり方があると思いますけれども,いずれにしろそこのところを,ポイントを外さないようにしなければいけないのではないかとかということで,今既に佐古先生から御指摘あったように,もう満杯状態であるというふうなことの共通認識の上に,ここのところをどういうふうな手だて,方策,考え方で縮減を図っていくかというところに1つの視点を集中させていくということも,また大切なことではないかと思います。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。では,青木委員,どうぞ。

【青木委員】
 ありがとうございました。佐古先生に2点伺いたいんですけど,主幹教諭は,このテーマに関する政策手段の1つで,天笠委員もおっしゃったんですけれども,教頭を副校長化するとか,教頭の複数配置という政策手段もあるわけで,あと教頭の補佐,副校長の補佐というのは先ほど清原委員がおっしゃいましたが,そういう複数のオプションの中で,主幹教諭の優位性みたいなもの。これは恐らく資料の3ページに出ているんだと思うんですけれども,例えば教頭の副校長化とか教頭の複数配置と比較して,この辺をこう考えると優位性があるみたいなことを伺えればというのが1つと,もう一つは,主幹教諭はやはりフルタイムの雇用が前提として考えた方がいい仕事かどうかというのを,ちょっと御所見を頂きたいです。

【小川部会長】
 よろしいですか。どっちがプライオリティーが高いかというような。

【佐古委員】
 基本的に私は,主幹教諭は今後学校で強化すべきミドルリーダーシップの一形態だと思っています。したがいまして,ミドルリーダーシップにこだわるのは,先生方との距離感といいますか,先ほど協働化ということを私,少し申し上げましたけれども,基本的にそれを含めて学校組織を動かしていくという発想に立つと,先生方の距離感からすると,ミドルリーダーとしての役割をこれから学校で位置付けて機能させていくことがいいのではないかという発想がございましたので,副校長の,要するに管理職として定着しているものの複数配置という点では,ちょっと私は今,そういう発想はございませんでした。
 それから,フルタイムかどうかという話は,そこは全く考えていませんでしたので,むしろ青木先生の御所見を頂けたら有り難いなと思っています。

【小川部会長】
 青木委員,何かございますか。いいですか。

【青木委員】
 はい。論点出しです。

【小川部会長】
 残り5分ちょっとしかございませんので,今まで,事務局からの説明,そして神奈川県からの御報告,そして佐古委員からの御報告を伺った上で,全体を通じて何か意見,言いたいという委員がいれば,一,二,受けたいと思います。一,二ですよ,時間がないので。
 どなたですか,橋本委員,清原委員,そして時久委員。5分内で3人,よろしくお願いします。1人1分程度でお願いします。

【橋本委員】
 では手短に。きょうのお話は本当に参考になりました。その中で,やはりターゲットをどこに当てるか,その1つに,余りにも忙しい,限界に来ている教頭等の仕事をどう本当に楽にさせてあげるか。そういうときに具体的に教頭が持っておられて,今忙しいというのが,いろいろな文書関係の事務とか渉外関係の事務,この辺は大きいと思うんですけれども,こうしたあたりは本当に,教頭補佐的な役割で主幹教諭が入ることで確実に軽減されるなと思いますし,加えて,特に地域連携というのはこれから大事な役割ですので,こうしたところを主幹教諭で受け持っていただくと,非常に校内の業務運営が円滑になるかなと思います。
 その際に,主幹職の負担軽減措置の充実,これはやはり大事かなと思います。今は多分,4人で1人,実質10時間軽減だと思うんですけど,これがもうちょっと増えると,我々はやはり現場で教える先生の方が大事みたいな感覚もありまして,それを主幹教諭の定数で食われるのはもったいないなという,そういう現場感覚があります。この辺の軽減措置が充実することで,ちょっとそこの流れが変わるかなと思いますし,あと最後にもう1点は,主幹教諭という名前がちょっと,地域連携をやるときに,この名前自体が認知されていない,あるいはどれぐらいの地位にある方かというのが分かりにくいので,いっそのこと本当に教頭補佐とか副教頭とか,そんなふうに分かりやすくした方がいいのかなと,そんなことを考えております。以上です。

【小川部会長】
 清原委員,どうぞ。

【清原委員】
 一言だけ。佐古委員の最後におっしゃった地域との関係について申し上げます。三鷹市は「コミュニティ・スクールを基盤とした小中一貫教育」を進めておりますので,学校内の協働も大事ですが,地域との協働も大事です。そこで,地域と学校を結ぶ学校支援ボランティアと学校との連携につきましては,副校長が中心でしたが,改めまして地域学校協働活動推進員(三鷹市では「コミュニティ・スクール推進委員」と呼ぶ)を市民の中から選ばせていただいて,しっかりとその調整を市民に担っていただくということで,副校長だけが何から何までやるというのではなくて,教員が補強するところもあるでしょうが,市民がむしろつなぎ役として活躍していただくという取組をしておりますので,事務局機能の強化にも,またコミュニティ・スクールの展開にも,こうした「協働」というのが意義あるものと感じていますので,付け加えさせていただきます。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。では時久委員,最後,お願いします。

【時久委員】
 私も同じ中身で,佐古委員さんの5ページの連携担当というところに関わってです。今日,最初に説明ございました資料2-2の参考資料4ページの,副校長・教頭が主に時間と労力を費やしている職務という中に,調査の依頼,赤で囲んでいる部分はちょっと別として,その後のところを見たら,保護者・PTA・地域関係諸団体と云々(うんぬん)という,これが突出している。それから児童生徒指導上の課題への対応,それから苦情対応と,こういうようなところが学校の中では,何が大変かというと,一生懸命やってゼロ状態へ戻してくる。マイナスから出発の仕事というのは,とても大変なのです。ここを,もう本当に走り回ってやっているというのが実情ということがありまして,そのもとには,地域や家庭で教育をしてこないといけなかったしつけ面だったり,体験活動であったり,もろもろのことを学校がだんだん取り込んで膨らみに膨らみ切っている。しかも一生懸命やっても,それに対して苦情が来るという,こういう状態ですので,そこをとにかく,今言った職種の方々が中心になって努力しているんですけれど,それを何とか解決するシステムを作らない限り駄目だと。そして学校で取り込んでいるものを地域とか家庭の本来の姿に戻していく作業をしないといけないというのは,とても思っています。
 それで,この連携担当が主幹教諭なのか,また別のことかというのはいろいろあるとは思うんですけれども,実は今,予算面のところでいくと学校地域支援本部の事業の中にコーディネーターを置くという措置があるんですけれど,それを全部の学校がとって,連携の面ではやってくれています。非常に機能的にうまく進んでいるのですけれど,この職との関係で,もっと重みを持ってやるときには,きちんとした位置付けをしないといけないと思っています。今は1日数時間,週に本当に少しで,手当としても経済が成り立つような手当ではなくて,幾らやってもそんな金額ではないというものでやっているのを,きちんとした仕事に位置付けてやらないと,そこの役に当たってくれる方も中途半端,学校としても盛大に頼んでいくことできないということがあります。
 それで,非常に機能している学校は,例えば企業なんかを辞められて,早く,私だったら高知県の方に帰っておいでで,じゃあ学校のそういうところをやりましょうといってやってくれていても,やはり余りにも手当が少ないので辞めていかれるということがあります。けれども学校の先生は,学校の先生の世界の中で生きてきた人たちですので,発想が非常に乏しいのです。地域とつながるのには,やはり多くの,別の世界でやってきた人が飛び込んできてくれると,学校が非常に活性化するということがあるので,そういう人たちを雇い込んで,きちんと位置付けて,しかも校長先生,教頭先生,主幹さんの補佐をきっちりしながら機能していくという,そういうところを何かきちんと位置付けることができないかなと思っているところです。

【小川部会長】
 ありがとうございました。ちょうど12時ジャストですので,この辺で今日は終わらせていただきたいと思います。本日は本当にありがとうございました。最後に,次回以降の予定について事務局から御連絡,お願いいたします。

【鈴木初等中等教育企画課課長補佐】
 本日も長時間にわたる御議論ありがとうございました。次回の学校における働き方改革特別部会の日程につきましては,追って御連絡させていただければと思います。なお,本日の資料につきましては,机上に置いていただければ郵送させていただきたいと思います。

【小川部会長】
 それでは,予定していた議事は全て終了しましたので,これで閉会といたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

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