学校安全部会(第8期~)(第6回) 議事録

1.日時

平成28年11月9日(水曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館3F2特別会議室 【東京都千代田区霞が関3-2-2】

3.議題

  1. 第2次学校安全の推進に関する計画の策定に向けたこれまでの審議経過について
  2. その他

4.議事録

【渡邉副部会長】  定刻となりましたので,ただいまから第6回中央教育審議会初等中等教育分科会学校安全部会を開催いたします。
本日は,皆様,お忙しい中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
本日は小原部会長が御欠席のため,副部会長の渡邉が司会進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず,議事に入ります前に配付資料の確認を事務局からお願いいたします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  議事次第に従いまして配付資料を確認させていただきます。
資料1といたしまして第2次学校安全の推進に関する計画の策定に向けたこれまでの審議経過について,資料2といたしまして前回,第5回学校安全部会における委員の皆様からの主な御意見,資料3といたしまして今後の日程(案)について,参考資料1といたしまして学校安全に関する参考資料でございます。参考資料2といたしまして,部会委員名簿でございます。机上配付の資料といたしまして,国崎委員から地震に関する教育の資料,また,中川委員から山形大学のシラバスに関係する資料,前回の議事録(案)を配付しております。
以上でございます。
【渡邉副部会長】  ありがとうございました。
また,本日は,報道関係者より会議の撮影及び会議内容の録音を行いたい旨のお申出があり,これを許可しておりますので,御承知おきください。
それでは,本日の議題に入りたいと思います。本日は,これまでの当部会での審議経過について,事務局から御説明を頂いた後,皆様に御議論いただくことになっております。
まず,審議経過につきまして,事務局から御説明をお願いいたします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  前回まで,外部有識者の先生方も含めまして各課題についてのヒアリングなどを進めてきていたところでございます。今回,答申案に向けて,これまでの御意見を資料1のとおりに事務方で項目立てをして整理してお示しいたしました。今回から,これをたたき台として,答申案に向けた御議論を頂ければと思います。
資料1を御覧ください。「中央教育審議会(第8期)学校安全部会第2次学校安全の推進に関する計画の策定に向けたこれまでの審議経過について」という表題でございます。
1ページ目は目次で,「はじめに」が括弧で書いてありますけど,これは最終的に全体の答申としてまとめていくタイミングでまた御記載いただくということで,今回は空欄にしております。1として児童生徒等の安全を取り巻く現状と課題,次にまた括弧で2となっておりますが,これも全体の施策の方向性ですので,今回,御議論いただくようなことを踏まえて最終的にまたお決めいただくということで,今回は空欄にしております。
3といたしまして,学校安全を推進するための方策は各論になってございます。ここの各論の部分を,1,2,3,4,5と,大きく5本柱の形で現状は整理させていただいております。
1つ目は,学校における安全に関する組織的取組の推進ということで,学校における人的体制の整備や,学校安全計画及び危機管理マニュアルの策定,教職員の研修・養成に関することを記載させていただいております。
2.安全に関する教育の充実方策といたしまして,指導要領の改訂議論も踏まえまして,「カリキュラム・マネジメント」の確立を通じた系統的・体系的な安全教育の推進,優れた取組の普及を通じた指導の改善・充実,現代的課題への対応ということでまとめさせていただいております。
さらに,3.学校の施設及び設備の整備充実といたしまして,これは現行計画からもずっと書かれておりますけれども,学校施設の安全性の確保,非常時の安全に関わる設備の充実ということでまとめております。
そして,4.は,現行の計画にはこういった形で柱立てはしておりませんでしたけれども,文科省でも本年3月に学校事故対応に関する指針をまとめたり,学校事故が発生した後の対応も現場でいろいろ課題になってきておるという現状がございますので,そういったことも含めて,事前の安全点検をしっかりやることと,事件・事故発生後の対応もしっかりやるということで,PDCAサイクルを確立していくということで1つ,柱としてまとめさせていただいております。
さらに,5.「チームとしての学校」の推進と地域社会,家庭,関係機関等との連携・協働による学校安全の推進といたしまして,地域・家庭との連携はもちろんのこと,様々な関係機関と連携することによって実践的な安全対策を進めていくというようなことでまとめさせていただいております。
内容について御説明させていただきますので,1枚おめくりいただければと思います。
2ページ目からでございますけれども,まず「はじめに」という部分は,先ほど申し上げたように空欄としております。
1,児童生徒等の安全を取り巻く現状と課題ということで,どちらかというと,今の統計上の数字みたいなものをベースに子供たちの安全に関する現状を中心に書いておりまして,課題といった部分の視点がまだ少し薄いかなという印象を我々も持っておりますので,そういったところについて,また後で御意見を頂ければと思います。
まず,生活安全については,日常の学校管理下における事故の現状として,独立行政法人日本スポーツ振興センターによる災害共済給付の給付実績をベースにして,平成27年度には負傷・疾病が108万件あって,死亡事故が63件発生している。現行計画策定時点(平成22年度実績値)と比べますと,数自体は減少しているということでありますけれども,子供の数も減っておりますので,発生率で見ますと,負傷・疾病は全体として横ばいであり,死亡事故は下げ止まりでございます。特に,負傷・疾病を少し細かく見ますと,高校生の段階で発生率の増加傾向が見られるところでございます。
また,今度は防犯の観点ですけれども,児童生徒の犯罪被害認知件数や学校における刑法犯認知件数も,過去10年間で減少傾向であります。一方,部会でのヒアリングの際にも少しそういったお話がありましたけれども,平成26年には13歳未満の子供の略取誘拐事件が100件を超えるということもあったりする中で,通学中を含めて,児童生徒等の安全を脅かす事件は依然として発生しているということが,まずは1つ大きな課題として残っているかなと考えております。
交通安全に関しましても,全体として減少傾向であると思いますけれども,3行目真ん中ぐらい,児童生徒等の交通事故による死者数は114人に上っている。また,児童生徒等が加害者となるようなケースも含めて,自転車乗車中の事故が依然として発生している。さらに,細かく状況を見ていきますと,歩行中の交通事故を年齢別に見ると,7歳の事故が突出して多いといった特徴も明らかになっているところでございます。
災害安全につきましては,これまで我が国は多くの自然災害を経験しておりまして,平成23年の東日本大震災以降も,各地で地震や風水害といった大きな被害が発生しているところでございます。また,近年,こうした災害の経験が少なかった地域においても災害が発生していて,被害をもたらしている例もあると考えております。さらに,東日本大震災に伴う東京電力の原発事故の影響はいまだ大きく残っている部分があることは認識をした上でいる必要があるだろうということで,そこに記載しておるところでございます。
2,今後の学校安全の方向性に関しましては,先ほど申し上げたとおり,3以降の各論を踏まえて,大きく計画としてどういった目標を出していくのかということに関わることでございますので,現状は空欄にしておりますけれども,今後の5年間の大きな方向性も念頭に置きながら,各論を含めてまた後で御意見を頂ければと考えております。
3ページ以降,各論部分について御説明を申し上げたいと思います。
3で学校安全を推進するための方策というタイトルにしておりますが,1.学校における安全に関する組織的取組の推進ということで,まず1つ目は,学校における人的体制の整備という形でまとめております。各論部分は,これまでの取組と課題というくくりと,それを踏まえて今後の取組の方向性というくくりの大きく2つに分けて,項目ごとに記載しております。ここもやはり事務方としていろいろと考えるところは書いたところでございますが,課題の具体性や今後の取組の具体性が少し足りないなというところが残っておりますので,また後々,御意見を頂ければと思っております。
まず,(1)学校における人的体制の整備にかかる,これまでの取組と課題でございます。現行計画では,学校において,学校安全計画の立案・実行の中心となる者を校務分掌において位置付けることの有効性や,教科担任制である中高において,総合的な安全教育のコーディネートをする担当を明確化することの必要性が提起されておりました。それを踏まえまして,平成25年度末時点では,学校安全計画を策定している学校のうち97.9%においては学校安全の中核となる教職員が位置付けられているという調査結果が出ております。
ただ,学校の設置者によっては,各学校に防災主任を配置して,学校での防災教育や防災管理の実践活動に生かしている例がある一方,優れた安全教育・安全管理の取組は,一部の意欲のある先生方によって担われているという御指摘もありますので,全国の学校において優れた取組を普及・定着させていくためには,全ての学校における人的体制整備に引き続き取り組んでいく必要があるだろう。これが1つの課題になっているだろうと考えております。
これを踏まえまして,今後の取組の方向性として,国は,学校安全の中核となる教職員が担うべき役割や効果的な実践事例を整理・検証していくことが必要であろう。さらに,学校やその設置者においては,そうした国の取組を踏まえて,中核となる教職員の役割を明確化して,その者に対する研修の充実などを通して各学校における取組を推進していくことが求められるのではないか。
また,「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策」ということで平成27年12月に答申が出ておりますけれども,その提言にありますように,教職員が安心して教育活動に取り組むことができるように,学校事故や訴訟が提起された場合など,法令に基づく専門的な対応が必要な事項について,また,子供の安全管理など専門知識が必要な事項に関しては,その学校だけじゃなくて,教育委員会において学校や教職員を支援していく体制整備も併せてやっていくことが重要であろう。
さらに,各学校においては,警備員の配置やボランティアによる巡回・警備も既に行われているところでありますけれども,「チームとしての学校」や家庭・地域との連携の推進方策,最後の5.に出てきます内容も踏まえながら,外部人材を活用した人的体制を充実する取組を今後とも進めていく必要があるだろうと掲げさせていただいております。
(2)は学校安全計画と危機管理マニュアルの策定・検証の徹底でございます。
これまでの取組といたしましては,もう御案内のとおり,学校保健安全法があって,各学校は学校安全計画と危機管理マニュアルの策定を義務付けられておりますけれども,平成25年度末時点を見ますと,それぞれ94.9%,95.5%と,本来100%でないといけないところが,法律の施行後5年以上が経過しておりますけれども,まだ策定されてない部分がある。こうしたことは非常に大きな問題であると考えております。
現行計画においては,東日本大震災の教訓も踏まえまして,災害時に保護者等の迎えが不可能な場合の対応など,地域の特性を勘案して,起こり得る様々な状況に応じた具体的な対策やマニュアルの必要性が指摘されておりました。これを踏まえて,国としても,学校において防災マニュアルを作成するための手引きの作成などをしまして,一定の取組の支援を行ってきたところであります。平成25年度末時点で見ますと,そうした引き渡しや待機方法について,保護者との間で手順やルールを決めている学校の割合は,79.4%となっておりまして,8割方ではありますが,一方,まだできてないところもありますので,そうした災害時の対応も引き続き改善が求められるであろうと考えております。
さらに,大学等の高等教育機関も学校保健安全法の対象でありますので,学校安全計画の策定等は当然,義務の対象でありますけれども,学生の状況や施設の状況がやはり初中段階とは少し違っていることから,これまで高等教育機関における取組は各機関の自主的な取組にゆだねられてきたところでございます。ただ,状況を我々も具体的に把握していないところもありましたので,今,それを調べようとしておりまして,まだ本文中は調査中になっておりますけれども,これも当然,必要なことではあろうかと思いますので,そうした現状を踏まえて,その実態に応じた対策を促進していくことが必要だろうと記載させていただいております。
これを踏まえまして,今後の取組の方向性でございます。まず,当然全ての学校において学校安全計画や危機管理マニュアルを早急に策定することが必要である。また,学校や児童生徒等を取り巻く環境は年々変化しますので,そうしたことを踏まえますと,既に計画や危機管理マニュアルを策定していたとしても,不断の検証・改善が必要であろう。学校安全計画は毎年その見直しが必要であることは当然でありますけれども,全国各地において発生する様々な災害,事件・事故等を踏まえますと,適宜検証・改善を行っていくことが,当然必要である。そうした検証・改善の場合には,外部専門家の助言や,実際の訓練をやってみて,その結果を反映するなどして,実証的なものにしていくことが重要であると記載しております。
次に,災害時の児童生徒等の引き渡しや待機方法など危険が発生した場合の対処方法だけでなくて,日常的な安全教育の推進に当たっても,保護者や地域住民との連携が不可欠であるわけでありますから,可能な限り学校安全計画や危機管理マニュアルの内容を保護者や地域住民と共有して,地域一体となった学校安全の取組を推進していくことが必要である。
さらに,学校安全計画や危機管理マニュアルに盛り込むべき内容については,国において一定,参考とすべき資料や情報提供が行われてきたところでありますけれども,必ずしも網羅的な情報が整理されて提供されていたとはなかなか言い難いというのが正直なところであると思いますので,国においても,各学校における安全計画等の改善・充実に資する情報をしっかりと整理して提供していくことが必要であろう。その際,学校安全計画に関しましては後述の安全教育における「カリキュラム・マネジメント」の確立にも資するようなものとしていくこと,また,危機管理マニュアルに関しては,学校を取り巻く危機事象を網羅的に捉えるとともに,幼稚園や特別支援学校を含めた各学校種に対応したものとし,学校種に対する配慮も考えていく必要があるだろうと考えております。
次に,(3)教職員の研修・養成の推進を書いてございます。
これまでの取組と課題のところでありますけれども,現行計画でも指摘されているように,当然,学校安全の中心になるのは教職員ですので,児童生徒等の健康と安全を守る上で必要なことや,児童生徒等に対する指導内容・方法は,教職員が身に付けておくべき基礎的な資質の一つである。
このため,現職教員の研修については,現行計画期間中,国においても,最新の安全知識や優れた取組事例などに関する参考資料の作成・普及や,地方公共団体による研修の支援などが行われてきたところでございます。また,独立行政法人教員研修センターにおける管理職等を対象とした研修なども行われてきたところであります。
地方公共団体におきましても,各地域において安全の中核となる教員を対象とした研修が実施されており,それ以外にも,法定研修である初任者研修や10年経験者研修などにおいても安全指導や危機管理に関する内容が扱われているところでございます。一方で,地域の実情によって実施内容が異なっていることも事実であるといった課題があると認識しております。
さらに,養成段階につきましても,学校安全に係る基礎的内容に関する講義を必須科目として開講するなど,教員を志す学生の資質・能力の向上に力を入れている大学もある一方で,全ての大学でそうしたことが行われているわけではないことは一つの課題であると認識しております。
こうしたことを踏まえまして,今後の取組の方向性であります。1つ目は,「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」という平成27年12月の中教審答申において提言されておりますように,東日本大震災をはじめとした自然災害や学校管理下における事件・事故,災害が繰り返し発生している現状から,全ての教職員が災害発生時に的確に対応できる素養を備えておくことが必要である。
教員の資質・能力の向上に資するため,国は,管理職,中堅,初任者など教員がそれぞれのキャリアステージに応じて身に付けるべき資質・能力の具体化・明確化を検討するとともに,教員を志す学生が身に付けておくことが望ましい知識を整理して,それを教育委員会や養成を行う大学に提供することが必要であろう。さらに,都道府県教育委員会においては,独立行政法人教員研修センターにおける研修と連動した研修を充実していく必要があるだろうと,その必要性が書かれております。
さらに,上記の答申で教職課程の「見直しイメージ」というものが出ておりますけれども,この中では,学校安全への対応に関する内容の必修化が提言されておるところでありますので,各大学の教職課程における安全の取扱いの充実が期待されると記載しております。
さらに,この答申の中には,今後の方向性として,学び続ける教員を支えるキャリアシステムの構築のための体制整備といたしまして,教育委員会と大学等との協議・調整のための体制(教員育成協議会)の構築,教育委員会と大学等の協働による教員育成指標,研修計画の全国的な整備,国が大綱的に教員育成指標の策定指針を提示して,教職課程コアカリキュラムを関係者が共同で作成するということも提言されておりますので,こうした中にも学校安全に関する内容が適切に位置付けられていくように努めていく必要があるだろうと考えております。
次のページから,安全教育の充実方策についてでございます。
まず,(1)「カリキュラム・マネジメント」の確立を通じた系統的・体系的な安全教育の推進と書いております。
これまでの取組と課題といたしましては,現行計画においては,各教科,道徳,特別活動など学校の教育活動全体において行われる総合的な安全教育によって,児童生徒等に安全を守るための能力を身に付けさせることが学校に求められる第一の役割だとして記載されているところでありました。
具体的には,そこに1,2,3と書いてある目標に従いまして,発達の段階に応じて,児童生徒等の能力を育むことが目指されてきた。特に,日常生活においても,状況を適切に判断し最善を尽くそうとする「主体的に行動する態度」,危険に際して自らを守るための「自助」だけではなく,進んで安全で安心な社会作りに参加し,貢献できるような力を身に付ける「共助,公助」という視点からの教育の重要性も指摘されていたところでございます。こうしたものを実現するために教科等を横断する総合的な指導計画の下に,系統的・体系的に教育を行っていくことが必要だと現行計画では提起されていました。
また,安全教育については,現行の学習指導要領総則において,「体育・健康に関する指導は,生徒の発達の段階を考慮して,学校の教育活動全体を通じて適切に行うものとする。特に,安全に関する指導については,保健体育はもとより,技術・家庭科,特別活動などにおいてもそれぞれの特質に応じて適切に行うよう努めること」とされていたり,幼稚園教育要領においても当然,安全に関する記載がありまして,こういったことを踏まえながら,先ほどの現行計画の目標も併せて,様々な教育活動を通じて安全教育が行われてきているという現状であります。
一方で,現行計画では,学校における系統的・体系的な安全教育の実施によって,安全教育の質・量の両面での充実を図ることや,これに資するよう,国が各教科等における安全に関する指導内容を整理して提示することなどの必要性が示されているところではありましたけれども,各学校における取組状況については当然のことながら地域差があることや,国が作成している資料は,大まかな目標や実践事例の提示はされているものの,関係する各教科等の内容や教育課程全体とのつながりが十分に整理されていなかったということが課題に挙げられているかと思います。
8ページの今後の取組の方向性でございます。こうした課題を踏まえつつ,次期学習指導要領に向けた御議論が今,行われているところでありまして,今年8月に教育課程部会で提言されました審議まとめの中では,「安全で安心な社会作りのために必要な力」は,現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力の一つとして,「教科等の関係を明確にし,どの教科等におけるどのような内容に関する学びが資質・能力の育成につながるのかを可視化し,教育課程全体を見渡して確実にはぐくんでいくこと」とされておりまして,各学校におけるカリキュラム・マネジメントの確立や,主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善によって,安全で安心な生活や社会作りに必要な資質・能力を,各学校段階を通じて教科等横断的な視点で体系的にはぐくんでいくことの重要性が指摘されているところでございます。
現行計画において必要とされた系統的・体系的な安全教育を推進する上では,各学校における安全教育に係るカリキュラム・マネジメントの確立が不可欠なものであることから,国は,現行計画の目標を踏まえて育成を目指す安全に関する資質・能力と,各教科等の内容や教育課程全体とのつながりなどについて整理・検討を行っていく必要があるのではないかと考えております。
その際,この安全教育の内容は先述の学校における人的体制の整備や教員の研修・養成の推進とももちろん関連していますので,そうしたことにも留意して整理していくことが大事だろうと考えております。
各教科等の内容と安全教育の関係については,「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議まとめ」に防災を含む安全に関する教育のイメージとしてカリキュラム・マネジメントの例示がなされていたところであります。各学校においては,このようなイメージに基づいて,国の検討内容を踏まえながら,地域や児童生徒等の実情に応じて,各教科等の安全に関する内容のつながりを整理して教育課程を編成していくことが求められる。また,教育課程の編成に当たっては,自助,共助,公助の視点を適切に取り入れていくことが求められると考えております。
各学校においては,児童生徒等が安全に関する資質・能力を教科等横断的な視点で確実に育むことができるように,児童生徒等の意識の変容などの教育課程の実施状況に関する各種データの把握・分析を通じて,安全教育に関する取組状況を把握・検証し,その結果を改善につなげていくということを踏まえて,カリキュラム・マネジメントの確立を通じて安全教育を推進していくことが重要であろうと書いてございます。
次に,(2)優れた取組の普及による指導の改善・充実というところでございます。
これまでの取組と課題について,安全教育の目標である,安全で安心な生活や社会作りに向けて主体的に行動する態度の育成の観点から,現行計画においては,様々な体験的学習の重要性が指摘されていたところでございます。これを踏まえまして,現行計画期間中,各学校においては,通学路の安全マップの作成,緊急地震速報を活用した予告なしの避難訓練など,地域の安全課題に応じて,専門機関等と連携した教育や実践的活動が行われてきたところでございます。国においては,こうした取組を促進するために,実践的で効果的な指導の工夫改善の在り方を研究して,その成果の普及を目指したモデル事業を行ったり,参考資料の作成,研究開発学校を活用した先進的取組の研究等を行ってきたところでございます。
現行計画期間中の取組によって,そうした活動は全国的に広がっているところではあると思いますけれども,一方で,取組状況には地域差があることも事実であります。
また,現行計画で,学校における安全教育の効果検証の必要性についても指摘されていることを踏まえまして,先ほど申し上げたモデル事業の中でも,国としてその効果検証の取組は実際に行ってきたところでございますけれども,各地域の取組を外部専門家の参画によって改善していくという,飽くまでも個別的な試みにとどまっていて,総合的に教育の取組状況を把握・検証するという段階にはまだ至ってない状況であるかと思います。
また,現行計画において指摘されているように,運動能力や判断能力は,個々の児童生徒等によって相当異なるとともに,児童生徒等の心身は在学中に極めて大きく変化するため,児童生徒等の発達段階や個々の状況に応じた指導を適切に行うことは当然,必要なことであります。こうしたことでありますので,国は,防災教育に関して,例えば児童生徒等の発達の段階に応じた教育目標の設定や教育展開例などを作成してお示ししてきたところでありますけれども,各学校において効果的な安全教育を実施していくためには,引き続き,そうした子供たちの状況に応じた適切な配慮や工夫を進めていくことが必要であろうと考えられるところでございます。
近年,教員の多忙化が指摘されているところでありますので,こうした指導事例や教材などを示していく際には,既にその学校で行われている取組を念頭に置きながら,それらの取組をより効果的に実施していくことに資するものを適切に提供していくという視点も一つの課題として考えられるかなとは思っております。
学校の教育活動全体において子供たちの安全を確保することは大前提でありますけれども,保護という観点に偏るのではなく,子供たちの危険予測・危険回避などの安全に関する資質・能力の育成とのバランスを取っていくことも,教育に当たっての視点としては重要なものではないかということで書いております。
こうしたことを踏まえまして,今後の取組の方向性として,災害等発生時に自ら主体的に行動する態度を育むためには,児童生徒等が自ら危険予測し,安全な行動を考えられるような体験的な学習が引き続き必要であることは言うまでもないところでございます。次期学習指導要領等の改訂に向けた議論でも提起されているような,主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点からの授業改善という観点も踏まえつつ,児童生徒等の行動変容につながるような指導の工夫改善の在り方を整理して,お示ししていくことが必要であろうと記載しております。
これまでのそうした先進的な事例はあるわけでございますけれども,安全教育の推進に向けた指導の工夫改善の取組をしっかりと学校教育活動の中に定着させていくためには,学校の教育課程全体を見通してどの教科等で何を取り組むのかということや,それぞれの活動がどのように関連しているのかということについて,あらかじめ整理・検討しておくことが必要であろう。これは,1で述べていたカリキュラム・マネジメントの整理とも非常にオーバーラップしてくる内容かとは思っております。
例えば,地域の防犯,防災,安全に関する安全マップ作りは,子供たち自身に周囲の環境における危険箇所の確認や危険予測を行わせたり,具体的な行動を考えさせたりする上で有効であるということでもありますけれども,安全教育の観点だけではなくて,教科等の目標と関連付けて地域学習の一環として位置付けていくような工夫が一つ考えられるのではないかと書いております。
次に,安全教育の効果的な実施に向け,教育課程や指導方法,指導体制などを不断に改善していく視点は必要不可欠であって,児童生徒等の意識の変容など,安全教育の実施状況を把握・検証して,教育課程の改善につなげるための方策について引き続き検討が必要である。
その際,児童生徒等の発達の段階や地域の実情は多様であることから,例えば,指導方法を固定的にとらえるのではなくて,様々な試みを関係者間で共有しながら,その教育効果を検証して,効果的な在り方を見いだしていくといった仕組みを考えていくこともまた必要であると考えております。
児童生徒等が安全であると言われている場所にいたり,ルールを守って行動しているつもりであっても,適切に周囲の環境に注意を払いつつ安全に行動できる能力を身に付けさせることが必要である。また,地震・津波などの自然現象自体は防ぎようがないことや,交通事故等の危険がない環境はないといった前提に立って,児童生徒等が自らを取り巻く環境における危険を適切に認識して,適切な行動に結び付けられるようにすることは,指導方法の改善に当たっては重要である。そうしたことに取り組んでいく上では,外部有識者の知見を積極的に取り入れて,例えば,これまで教職員では気付き得なかった危険を認識していくことも有効な方法ではないか,こうしたものを引き続き進めていく必要があるんじゃないかということで書かせていただいております。
安全教育に関する各種指導資料の作成に当たっては,特別支援学校や幼稚園を含めた学校種や児童生徒等の発達の段階を踏まえた留意点もしっかり整理・検証するなど,一層効果的な取組へと改善をつなげていく必要があるだろう。また,それらの取組により得られた知見を広く共有して,全国における安全教育の質的な向上につなげていくことが大事だろうと考えております。
避難訓練は,現行計画期間中の取組によって,いわゆる予告なしに行うもの,緊急地震速報を活用したものなどが次第に浸透してきている状況ですので,こうしたものも一層推進していく必要があると考えられる。
また,これまで述べてきた全般の安全教育の改善・充実を図っていくためには,そうした手法を研究する専門家の養成も引き続き考えていかなきゃいけないであろうということで,そうした方向性をここに記載させていただいているところでございます。
次のページは現代的課題への対応です。
これまでの取組と課題といたしまして,現行計画の策定前から,携帯電話やコンピューターに関して,違法・有害情報サイトを通じた犯罪被害や,携帯電話等を使ったいじめなどの問題はあったところでございます。近年では,スマートフォンやタブレットも普及してきまして,様々な電子機器からのインターネットの接続機会が増えているとともに,SNSなどインターネットを経由したコミュニケーションツールも多様化していることから,技術の進展に柔軟に対応した対策が求められていることは一つの課題として考えられるかと思います。
諸外国において日本人が巻き込まれるテロや犯罪被害も相次いでおるところでございますので,児童生徒が成長してその活動範囲が海外に広がっていくことも念頭に置いて,その教育を行っていくことが大事であろうと考えております。
こうしたことから,今後の取組の方向性といたしまして,子供たちをインターネット上の有害情報から守り,また,児童生徒等の情報モラルを育成するためには,教職員や保護者がそうした環境を正確に理解して,関係省庁,企業,地域社会が一体となって取り組むことが大事である。
さらに,海外を含めて,自分がいる様々な環境において安全に関する情報をしっかりと主体的に収集して危険予測をして,必要な行動を取っていくといった基本的な能力を身に付けていくことが,こうした新しい課題への対応においても基本となってくるということだということで,その重要性を記載しているところでございます。
次に,3.学校の施設及び設備の整備充実でございます。
(1)学校施設の安全性の確保のための整備について,これまでの取組といたしましては,現行計画で指摘されているように,学校施設は,児童生徒等の学習・生活の場であるということでございますし,地域コミュニティの拠点であるということでもありますので,安全性を確保することは極めて重要である。
国公立学校における構造体の耐震化及び吊り天井の落下防止対策については,これまで平成27年度までの完了を目指して取組が進められてきたところでございまして,その結果,おおむね取組は完了しているところでございます。他方,吊り天井以外の非構造部材の耐震点検,耐震対策については,取組がまだ十分に行われていない状況がある。また,私立学校については,国公立に比べて耐震化が大幅に遅れているということもありますので,そうしたものが引き続きの課題となっているところであります。
先般の熊本地震におきましても,古い工法のものや経年劣化が進んだものの被害が顕著であった。また,国公立学校については,耐震化はある程度進んできている一方で,老朽化の進行などもあって,安全面・機能面の不具合も発生している状況であり,こうした状況を踏まえると,非構造部材の落下防止など,安全対策の観点から老朽化対策もまた一つの課題として挙げられるかと考えております。
これを踏まえまして,今後の取組の方向性でございます。構造体の耐震化や吊り天井の落下防止については,現行の方針に従って,引き続き推進すべきである。私立学校の耐震化については,集中的な財政支援を図っていくことはもとより,学校法人や都道府県とも連携して,きめ細かな対応が求められるところであります。
また,古い工法で設置されている非構造部材や経年劣化が進行している施設については,災害時に大きな被害につながる可能性が高いことだけでなくて,平時においても不具合が発生することもありますので,安全対策の観点からの老朽化対策は引き続き必要だろうと考えておるところでございます。
さらに,今後,南海トラフ巨大地震等の発生の懸念などもある状況でありますので,東日本大震災における津波被害の教訓を踏まえ,津波による浸水が想定される地域では,引き続き必要な対策を講じていく必要があると考えております。
次に,(2)学校における非常時の安全に関わる設備の整備充実でございます。
これも,現行計画で指摘されているように,子供たちの安全確保をするという観点からは,外部からの不審者等の侵入防止や,災害発生時の応急的な対応のための設備も充実していくことが不可欠であろう。
例えば,AEDにつきましては,平成25年度末では92.2%の学校において設置又は設置予定となっておりまして,防犯設備につきましても,ボランティアや警備員の巡回等と併せて,学校の実情に併せた対策がなされているところでございます。
こうした状況を踏まえまして,今後の取組の方向性であります。一方で,こうした設備があっても,非常時に有効に活用できなければ意味がないことから,定期的な点検・管理や複数配置なども含む設置場所の適正化,訓練などは引き続き取り組む必要がある。
また,学校以外の施設における事件・事故等も参考にしながら,対策を講じていくことが大事であろうと考えられるところでございます。
児童生徒等に関する情報が災害時に散逸することがあり得ることを考慮すると,ICTを活用した情報管理なども引き続き進めていく必要があろうと考えられるところであります。
次に,4.学校安全に関するPDCAサイクルの確立でございます。
(1)は学校における安全点検です。
これまでの取組といたしましては,学校保健安全法に基づいて,毎学期1回以上の安全点検を行わなければいけないということで,平成25年度末時点では98.1%の学校で行われているが,これもやはり,ほんの一部ですけれども,まだ全ての学校で実施されてない部分は引き続きの課題として取り組んでいく必要があるだろうと考えております。
通学路の安全点検に関しては,以前から,交通安全,生活安全,災害安全,それぞれの観点から取り組まれてきたところであり,25年度には全国の99%の小学校において,少なくともいずれかの観点からの安全点検が行われているところでありますけれども,分野別に見れば,災害安全は取組がまだ低いところもありますので,こうしたものは引き続きの課題になると考えております。
特に,交通安全の観点からの点検については,平成24年に起きた事故を踏まえて,合同点検の推進が図られてきたところでありますけれども,これもまだ自治体によっては取組状況に少し温度差があるのも事実でございますので,こうしたものも引き続きの課題としてとらえていく必要があるだろうと考えているところでございます。
こうしたことを踏まえた今後の方向性でございます。やはり,定期的な安全点検の重要性は極めて高いということでありますし,平常時の安全性のみならず,災害に対する構造上その他の安全性の確認も当然,重要なことでありますので,学校設置者は,経年劣化等による危険箇所等の点検を法令に基づいてしっかりと確実に行うとともに,支障となる事項があった場合には,遅滞なく,改善措置を講じていく必要があるだろうと書いてございます。
通学路の安全点検に関しては,いまだ取組が不十分である地域もありますので,その改善を図ることはもちろんのこと,周囲の環境の変化に合わせて,継続的な点検は重要ですので,そうした一連のサイクルをしっかりと継続していくことが大事だろう。その際に,専門機関と連携して科学的なデータを活用していくことも効果のある方法ではないかと書かせていただいております。
(2)学校管理下における事件・事故災害発生後の対応でございます。
これまでの取組と課題といたしまして,当然,未然防止が事件・事故に対しては一番重要でございますけれども,事故対応という意味では,発生原因の究明や既存の安全対策の検証,児童生徒等に対する心のケアも併せて重要なところであります。
これまで,事故発生時の初動対応は,主に危機管理マニュアルを作ってやってきたところでありましたけれども,事故の検証や保護者への対応は,まだなかなか十分になされていないということも一方で指摘があったところであります。このため,文科省では,平成26年度から検討して,平成28年3月31日に,「学校事故対応に関する指針」を取りまとめたところでございますが,この方針については,学校現場における認知度,浸透度がまだ低いことであったり,設置者においてこの趣旨に沿った適切な対応がなされていないのではないかという課題も指摘されているところでございますので,こうしたところは引き続き取り組んでいく必要があると考えております。
学校管理下の事故については,日本スポーツ振興センターに災害共済給付に伴う多くの事故データが蓄積されている状況でありますから,こうしたものを活用したさらなる事故対策の推進が引き続き考えられるところではないかと考えております。
こうしたことを踏まえまして,今後の取組の方向性です。まずは,学校や学校設置者が,学校事故対応に関する指針を十分に理解して,適切な対応を行っていくことが大事である。このためにその周知・研修をしっかり推進していくべきだろうということと,その指針の内容に係るところですけれども,しっかりと事故に至る過程や原因の分析を行う「詳細調査」を行っていくことや,保護者の意向を十分に踏まえた運営が強く求められているところであります。
国としても,その運用状況を適切にフォローアップして,指針の改善に向けた検討を行うことが併せて重要だろうと考えておりますし,学校事故の未然防止の観点からは,日本スポーツ振興センターにおけるデータの活用も引き続き考えられているところであります。
学校は,関係機関が連携して科学的・実証的な安全対策に取り組むというセーフティプロモーションの考え方に基づいて,安全に関する情報分析を適切に進めていって,その際に指標も設定していくといった形でPDCAサイクルの構築に取り組んでいくことが望まれるということを記載させていただいております。
最後の,5.「チームとしての学校」の推進と地域・家庭連携の関係でございます。
(1)地域・家庭との連携・協働の推進について,これまでの取組といたしましては,近年,学校が抱える課題が複雑化・多様化しているという背景を踏まえまして,地域や家庭と連携した教育活動の推進が全般として不可欠となっているところであります。安全に関する課題も,同じように平素からの学校と地域の連携が重要だということで,以前から進められてきたところでございます。
現行計画においては,こういうことを踏まえまして,コミュニティ・スクール,学校支援地域本部の活用や,2にあるような警察,消防との連携,3にあるような防犯や防災に関するマップの作成といった取組が行われてきたところでありまして,こうした取組を進めていくことは,地域を守る意識の向上につながる,町自体の防災機能,防犯機能の強化にも効果が生じているということで取り組まれてきたところであります。
こうしたことを踏まえまして,現行計画期間中には,コミュニティ・スクールや学校支援地域本部における安全に関する取組,スクールガード・リーダーを活用したボランティアの取組が推進されてきたところでありますが,一方で,やはり地域により取組の差があることに加え,学校安全を担う先生方が異動すると取組がしぼんでしまうといった継続性に関する課題も,一つの地域の連携の課題として指摘されているところでございます。
次に,家庭のお話になりますけれども,当然,家庭教育が全ての教育の基礎でありますけれども,行政のアプローチには限界があって,必要な情報が届きにくい保護者もやはりいるという課題があったところであります。
今後の取組の方向性でございます。中教審の各種の答申でも提言されているように,子供の安全確保のためには,様々な関係機関やボランティア等の地域人材との連携・協働は欠かすことができないので,引き続き取組を進めていくことが必要である。
学校においては,例えば,地域学校安全委員会や学校警察連絡協議会等の設置・活用を引き続き進めていくことや,コミュニティ・スクールや地域学校協働本部等の仕組みを生かして,そういったところに学校安全の視点をしっかり取り込んでいくことが大事であろうと考えております。
学校は,安全計画や危機管理マニュアルを基に,学校がどういう形の安全教育・安全管理をどういう方針で行っているのかをしっかりと地域や保護者との間で共有しまして,例えば,保護者参観日やPTA総会といった,様々な保護者等の関係者が来る場でそれをお示しして共有していく,さらに,実践的な訓練などにつなげていくような取組が必要であろうと考えております。
現行計画でも指摘されているところでありますけれども,地域の私立学校や国立学校に関しては,なかなか地域の情報が入りにくいという課題もあると指摘がありますので,地域におけるネットワークの形成も重要であると思いますし,国としても,しっかりと私立学校,国立学校に対する情報提供の在り方を考えていく必要があるだろうと考えているところでございます。
(2)関係機関との連携による安全対策の推進でございます。
当然,こうした関係機関,外部機関との連携は学校安全の取組においては不可欠なものでありますので,これまでも取り組まれてきているところでございますけれども,引き続きやっていく必要があるだろうと考えております。
最後のページになります。今後の取組といたしまして,例えば原子力災害への対応では原子力関係の専門部署との連携,新たな危機事象への対応として,犯罪予告やテロなどの対応も関係の専門機関との連携をしっかりと密にしていくことが必要であろうと考えられるところでございます。
大変説明が長くなって申し訳ございませんでした。以上でございます。
【渡邉副部会長】  ありがとうございました。
これからただいまの御説明につきまして皆様から御意見を頂きたいと思うんですけれども,本日ここで頂きました御意見を,今後,答申素案の作成につなげていくことになっております。ですので,今後の方向性や具体的な方策といったことにつきまして,皆様から御意見を頂きたいと思います。
それでは,御意見のある方は,どなたでも結構ですので,またどの部分についてでも結構ですので,御発言をお願いします。御発言の際は,いつものように机上の名札を立てていただきたいと思います。中川委員。
【中川委員】  中川です。5点ございます。
まず,全体の構成で,読んでいてうーんと思ったのと,前回の計画と見比べて気づいたのが,「3,学校安全を推進するための方策」の1が「組織的取組の推進」で,2が「教育」になっています。前回の計画は「教育」から始まっていますし,今回の案には現時点で「はじめに」がないからかもしれないんですけど,学校の中の組織的な安全管理が強く出ている感じがします。後ろの方に細かく書いてあるように,やはり学校は教育の場であって,しかも,小中高,大学まであります。生涯を通じて実社会の中で,安全教育や防災教育に接する機会は余りない中で,学校が果たすべき教育面での役回り,生涯学習の入り口みたいな話も含めて「教育」はすごく重要だと思います。したがって,「組織的取組の推進」から入るのではなくて,やはり「教育」を先にして1番と2番をひっくり返した方がいいんじゃないかと私は全体を見ていてすごく感じました。もしひっくり返したら全体的にすっとするなと思いました。
2点目は,何度か申し上げてきたことなんですが,「Ⅰ 児童生徒等の安全を取り巻く現状と課題」というところに,地域の特性を理解する機会が減少していることの必要性も伝えていくのがよろしいんじゃないかと思います。例えば,6ページ目の教員の養成・研修のところに「全ての教職員が災害発生時に的確に対応できる素養(知識・技能等)」とありまして,これは自然災害だけでなく,交通事故にしても防犯にしても,学校の立地条件という地域特性の適切な理解を得るような知識・技能も重要なんじゃないか。10ページ目の3つ目の○「自らを取り巻く環境における危険を適切に認識し」というところも,地域特性の理解が重要です。12ページ目の「学校施設の安全性の確保」の課題や今後の取組でも,もちろん耐震化や非構造部材の問題も大事ですが,立地の問題という地域特性にどこかで触れておかないといけないんじゃないかなということも感じました。16ページの「チームとしての学校」で,今後,取り組む方針の中に,地域人材との連携・協働というようなことが書かれていますが,チーム学校でやっていくときに,やはり地域特性の理解が重要です。それはもちろん自然条件もありますし,人的や歴史的な条件などもあると思いますので,そういうのもうまく入れると,地域のコミュニティの方々とのいろんな学び合いや,場合によっては地域コミュニティの方と一緒に更に深く学んでいける場にもなっていくのかなと思いました。
3点目でいいますと,今,「体験の風」なんて言葉がありますけど,自然体験が減少している。一方で,「『生きる力』を育む防災教育の展開」で「留意点」と書いている「自然には恩恵と災害の二面性がある」ということに対する話も,視点として入れていただければと思いました。主に最初の「安全を取り巻く現状と課題」の災害安全についてのところになると思いますけれども,自然体験の減少の中で,自然に対する二面性を感じる機会が減っていることも背景に,自然を体験する機会を提供していくことも通じて,学校や地域の周辺で災害が起こり得るという認識を伝えていく必要があります。それは6ページの教員養成のところの知識・技能にも入るでしょうし,11ページの現代的課題でも,現代的課題として自然体験が減少していることによって体験的認識が不足しているところを教育でどう補っていくかみたいなことも学校安全の一つの課題ではないかと思います。
4点目として,我が事感の大切さを盛り込みたい。事故や災害にはめったに遭わないので,どうしても人ごとになってしまうところを,どう我が事にしていくかの視点が欲しいです。それが多分,PDCAの話にもなってくると思います。例えば4ページで「不断の検証・改善が必要である」とありますけど,具体的にどうしていくか。実は,自分の学校じゃなくても,ほかの学校やほかの地域では事故や災害に遭っているんですね。そういう経験をどうやって共有していくか,どうやって経験がないところのPDCAに戻していくかという視点がもう少しあった方がいいかなと思いました。具体的には,日本スポーツ振興センターが学校共済保険の情報を分析して事故経験などを現場に伝えていますけれども,そういう中に自然災害の経験などがもう少し入れていくことができないか。そういう経験を踏まえた情報が,教育委員会を通じて現場の学校に伝わっていくことによって,それぞれの学校が,言われてからやるマニュアル作りじゃなくて,我が事としてやらなきゃいけないことを実感できるのではないかと思いました。
もう一つ,私の業界的な話で感じたことです。事故や災害で何かがあったときのサポートの在り方の問題です。14ページで紹介されている「学校事故対応に関する指針」を改めて読ませていただいたんですが,私も何度もそういう場面で取材をして,本当にすごく辛いなと思うのは,学校や企業の対応で,自分の組織の担当者だけだとどうしてもいっぱいいっぱいになってしまう。周囲からのサポートがないとしんどいです。この指針には,学校から教育委員会に報告しろとだけあって,教育委員会が具体的に何をしてくれるのか。学校現場には,子供たちの心のケアのサポートがすぐ動くようになっていて,それだけでも学校は実はすぐれているなと思うんですが。校長以下皆さんを,教育委員会が組織としてサポートするようなことによって,現場にクールヘッドもできるし,今後どうしていったらいいかも見えてくる。幾らマニュアルがあってもそれどおりで動かないのが現場ですし,ましてや大きな事態があったらいっぱいいっぱいになるというところの支援体制みたいなものも必要なんじゃないか。もう少し書いてあるかなと思ったら余り書いてなかったので,その部分がこの指針の足りないところだと私は思いますし,是非もう少しそういう視点を意識していただいて今後の取組に入れていただけると有り難いなと思いました。
あとは細かいことが幾つかあるんですが,また後日にしたいと思います。
以上です。
【渡邉副部会長】  今の中川委員からの御意見,最初は構成のことなどもありましたが,事務局からは何かありますか。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  御意見を踏まえて,また相談していきたいと思います。
【渡邉副部会長】  分かりました。
それでは,次,戸田委員からお願いします。
【戸田委員】  戸田でございます。よろしくお願いします。感想が1つと,幾つか気が付いたことをお話させていただきたいと思います。
1つは,ただいまの中川委員と大分似ているなと思ったんですけど,最初のところで学校はやっぱり教育の場であるという視点をきちんと立てないと駄目ではないか。子供たち自身が主体者となって自分自身の安全を確保すること,そして,自分自身と同じ大切な存在である他の人,家族を大切にし,地域や社会の安全に参画し貢献していくという,安全に関する主体者を育てるという視点がとても重要ではないかなと思っています。
具体的には,大人や他者に守ってもらうだけでなく,子供自身が危険を予測して危機を回避する能力を身に付けることが,必要だろうと思います。ただ,その底流として持っておかなければいけないのは,「『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」の初版でも強調されていますが,自他の生命や安全を大切にする。その自他の生命や安全というのは,実はその基盤として私たち自身の人権や人格がそれぞれ本当に深い基盤を持っていて,そういうものを大切にしないと,安全や生命尊重などと言っても絵空事になってしまう。そういう深い理解や態度を全ての教育活動の中で徹底していくという基本的な考え方,それを「安全文化の創造」と言ってきたわけです。そういう理念を底流としながら,危険予測をしたり,自分で危機を回避したり,あるいは環境を改善したり,自分でできないところは保護者や先生や,いろんなところからサポートしていただいて安全を主体的に確保していくというような基本的な態度がないと,いろんなことをあれやれ,これやれといっても,どうも無理かなという感じがあります。そういう基本的な考え方に立って,どんな子供たちを育てていくか,長い人生の中で,安全を確保しながら,しかも健康で,豊かな人生を生きるために安全というのは不可欠なんだという問い掛けがまずは必要なのではないかなと思いました。
そういう前提の中で,そういうことを実現するためにこれからどんなことがあればいいのか,できるだけ簡潔に申し上げたいと思います。
4ページで計画などのことが触れられていますが,各学校では,確かに大半のところで作られているんですけど,ただ作っただけになってないだろうかというところが非常に問題なんです。例えば,表に作った計画があり,その前の部分に役割分断などが記載されている。しかし,一応,形はあるんだけれども,この学校安全計画若しくはマニュアルが一体どういう考え方で作成され,子供には,教員には何を狙っているのか,うちの学校では安全はこういうふうにして確保していくんだという構想のようなものが必要であると考えます。つまり,きちんとした考え方,コンセプトがちゃんとあってこの学校安全計画ができている,そして,その具体的な内容として教育があり,管理があり,組織活動があり,それぞれ具体にうちの学校ではやっていますよという計画が見える構想のようなものも一緒に作らないと,どうも駄目かなと思っていますので,学校安全計画という形式のみに陥らないで,もう少し質的に高めていく,考え方をしっかり位置付けていくことが1つ大事かなと思っています。カリキュラム・マネジメントはもちろんその中の重要な部分を占めると思います。
2つ目は,6ページあたりの研修です。ここに書いてあることはこのとおりだと思うんですけど,行政その他でいろいろ準備してあげている研修は,全体のレベルを担保する,向上させるという意味で漏れなくやっていくということは,非常に重要だと思います。実はそれだけでは学校の組織体の中では不十分で,教職員の中には,安全についてすごく関心があって,もっと一生懸命勉強したいという人がいるわけですよね。そういう人をリーダーとして育ててあげたい。
そういう人はどういうところで育つんだろうなと思うと,やっぱり主体的に学ぶ場を何とかできないだろうか。副部会長の渡邉先生が理事長をやられている安全教育学会,桶田委員が役員をなさっております全国の学校安全教育研究会,あるいは公的機関でやるのについても,一律に平らにやるというだけではなくて,個人として主体的に参加できる新たな機会を何か設けられないか。例えば,本部会のヒアリングで,私も本当に勉強になりましたが,科学警察研究所の原田先生の犯罪被害防止の研究をはじめ,交通安全のことなど,私がもし学校の現職の先生だったら,これをやってみたいな,取り入れてみたいなというのがたくさんありました。そういう研究者の取組であるとか,研究開発学校などの研究の取組,学校,家庭,地域での実践の交流を,全都道府県は無理かもしれませんけど,国の企画で実施できればいいなと思います。何らかの形でそういう場があるといいなと思いました。以前は,日本スポーツ振興センターの学校安全研究大会の研究校が集まって,その研究成果を発表した機会がありましたけど,あれだけでは不十分なので,実践したものと,研究者とうまく交流できるような魅力ある機会を設けることも考えられたらどうかなと思いました。
3つ目は,8ページあたり,教育の今後の取組の方向性のところで,基本的に書いてあるところは3つ目,「各教科等の内容と安全教育の関係については」ということで,教育のイメージは私も勉強させていただきましたけど,大変すばらしいことがしっかり書いてありまして,これが実現できたらいいなと本当に心から思っています。でも,あれを実現するにはまだちょっとハードルというか橋を架ける部分が何か所かあるなと思います。その1つは,非常にうまく書かれてはいるんですけど,その時間的な裏付けがない。内容や考え方はどんどん示されて,とてもいいものがあるんだけど,それを一体どこでやるのか。今まで以上の質の高いものをやるといったときには,当然,時間数も必要ですよね。そういうものをどこで保障してあげるかということは,もう少し提示してあげないと,「学校安全の推進に関する計画」に記載されていても学校ではできないというのが現状であると思います。
私なりにちょっと考えているのは,1つは,私は保健体育が専門ですので,保健体育の時間の中での保健学習で安全に関する学習がありますが,内容に比較して授業時数が不足しています。保健そのものの授業時数が不足なのです。具体的な一例を申し上げると怒られるかもしれませんが,今回の学習指導要領ができるときに,例えば中学校で保健体育の時間が各学年90時間から105時間に増えました。じゃ,今は安全なんかも問題があり,健康なんかも問題があるから,せめて15時間のうち,5時間ぐらいは保健に配当されるのかと思いましたが,健康や安全はいろいろ問題があって,前回の答申でも重要と言われていたんですけど,そうではなかった。でも,中身は頑張ってやれということだったのでなかなかうまくできなかったというのがあるので,そういうバランスを考えながら,体力の向上も大体横ばいになっていて,そんなに下り坂一方じゃないので,その辺のバランスも,教科内では少し考えてほしいということもあります。
それから,学級活動,ホームルーム活動は,私の感触では,非常に実施がいいかげんです。ある研修会のとき,私も言われました。安全をやれ,健康をやれと言っているけど,私のところはいろんな要望があって,とてもそんなにいっぱいできないと。でも,逆にお聞きしたんですけど,「じゃ,先生は35時間の学級活動あるいはホームルーム活動を,どのような内容で,どのようなことをやっていますか。大ざっぱに教えてください」と言ったら,教えられないんですよ。言えない。つまり,計画などほとんどない。行き当たりばったりで,ほとんど無計画。失礼な言い方ですけど,だらだらとやって35時間やっている。下手をすると「テストが近いから勉強していろ」で終わったりするという,いいかげんな使い方をしているんですね。教育課程の1コマというのは,教科担当とか,いろんな人にはすごく重要なところなんですけど,その1時間が意外とおろそかに使われているのではないか。その辺の中にきちんと保健や安全,進路指導があるわけですので,そういうものをもう少ししっかりした形で実施できるように少し指導を強めていかなくちゃいけないんじゃないかなと思っています。
それから,これは私の夢ですけど,前にも計画にもありましたし,答申もあったわけですけど,例えば総合的な学習の時間,場合によっては学校行事のところで,ある程度まとまった体験,北海道教育大学でやられた経験の紹介がありました。ああいうことをやるには,やっぱり相当まとまった時間がないとできないわけです。そういうことを各学校でやるためには,少しまとまった時間,前の外国語活動の時間のように,ある程度,総合的な時間でこのぐらいは是非やってよなんていうところがもしもあるといいなと思います。最近,東京などいろんなところで,学校に宿泊して防災の学習をしているところが結構あります。大変意義のある教育活動と考えますが,そういうところは時間を生み出すのに非常に苦労しています。それで,課外であるとか,時間は計算しないことにしようとか,いろいろな工夫をしているようですけど,時間の確保に苦労しています。中長期的に「安全科」につながるような一押しをしていただければ有り難いなと思っています。
4番目は,次の9ページにありますが,避難訓練は当然,私どもは教育としてしっかりやらなければいけない。地域の方と連携してやらなくちゃいけない。これは当然なんですが,それに加えて,どうしてもやっぱり気になるのは,法律上は避難訓練になっているのですが,私は避難訓練じゃなくて防災学習の一環として,防災訓練と名前を直した方がいいと思うんです。というのは,最近では,逃げる(避難する)訓練だけでなく,炊き出しをしたり,いろいろな内容で幅広く学習や体験をやっているのも防災訓練です。逃げ方は避難訓練だけど,防災訓練の一つですよね。そういう中で,実は地域の方々に,教育委員会などがリードして,学校にとっても地域にとっても大きな課題である避難所になったときの運営の仕方をうまくシミュレーションしておく必要があると思います。私は今,東京に住んでいますけど,東京は非常に怖い。どうしたらいいんだろうと思うぐらい,いわゆる帰宅難民と呼ばれる方なんかもいらっしゃいます。いざとなったら,子供がいる,保護者が来る,地域の方が来る,うちに帰れない方も学校に来るから,すごく大変なわけで,東日本大震災のときにも,仙台やいろんなところですごく御苦労されているんです。その辺は,本気で対策と訓練をする必要があります。これは学校の教職員の本来的な仕事ではないという言い方はしませんが,学校の子供たちも,その中で先生方も影響を受けるわけですが,本来は地域の方が主体になって運営する避難所運営を,学校も一生懸命,後押ししながら,年1回でもいいですから,とにかくシミュレーションして,問題点を整理して,改善してという避難所の運営なんかも含めた幅広い防災訓練を推進し,実施していくことを計画に入れる必要があると思います。そのためには,教育委員会が防災当局と連携して支援する必要があります。
あとは,研修その他の部分がありますけど,先ほど言ったように,研修は,教職員の全体を底上げするものと,本当に興味があって,どんどん自分が一番勉強したい,それを学校に返したいという者が希望で参加できる研究と実践校の交流を狙いに,国が場を設定できるとよいと思います。そうすると,教員養成課程での安全科目の導入と併せて,日本の安全教育の実践や研究が一歩も二歩も進むのではないかなと思っています。
【渡邉副部会長】  ありがとうございました。これは御意見を承ったということでよろしいですね。
【戸田委員】  結構です。
【渡邉副部会長】  それでは,太古委員,お願いします。
【太古委員】  私は学校の現場で勤める者として読んできました。それぞれの学校の取組状況は学校により違っている現状です。
まず,今,お二人の委員がおっしゃったように,子供たちに,「安全に対する育てたい力」について,指導する学校の教職員がどのようにイメージできるかというところが,たくさん書いていただいているのですけれども,少しイメージしにくいなと思いました。例えば,どんなことが理解できて,どんなことができると子供たちはこんな力が付いていくんだ,これを考えるのがカリキュラム・マネジメントにつながっていくと思いますが,そこの部分がちょっと分かりにくいのかなと思いました。
それと,子供たちの安全・安心に関わること,命の大切さに関わることであるので,どの事柄に関しても当然,大切であり,取り組む必要があるけれども,1点目の指導者としてのイメージに加えて,管理職のリーダーシップや,教職員の知識や理解,実践力をどのように付けていくかという指導力の向上,地域や保護者の理解,関係機関との連携は,組織として取り組む必要があるということも思ったことです。
もう一つは学校の設置者の役割で,例えば教職員の研修については,兵庫県では,教育委員会が主体となって研修を年に数回,実施しています。本校の先生がその講師となることもありますが,自分の学校で研修しなさいと言われると難しいところがあるのではないかなということを実感しています。
モデル事業につきましても,例えば防災教育についてのモデル事業は,本校が手を挙げるということは当然だと思うが,先進的にやっている学校,指定を受けたからできるということではなかなか全県に広がっていかないので,どこの学校でもできる,やってみようと思うようなことを視点にしてモデル事業を受けるということも必要なのかなと思いました。
以上です。
【渡邉副部会長】  ありがとうございました。
それでは,五十嵐委員,どうぞ。
【五十嵐委員】  ありがとうございます。今のお二人の委員からお話しいただいたことと本当に全く同じように考えていましたので,そのことについて,私も一緒に感想を述べさせていただきたいと思っています。
まず1つ目に,全体を通してこの計画のビジョンといいますか,未来の担い手としてどういう子供たちを育てるのか,どういう資質・能力を育てるのかというものがないと本当に単なる末端の議論になってしまいます。危機を回避したり予測したり,そこを超えて本当に安全で幸せな社会を作っていくということ,子供たちは世の中の作り手なんだということを,ここでしっかりと書く必要があると,お二人の先生のおっしゃるとおりです。
もう一つは,ちょうど手元に資料を頂いている24年の学校安全の推進に関する計画を見比べながら感じたことです。先ほどと同じように議論になったのが,どこでその時間を確保するかということだったと思います。やらなきゃいけないのは分かっているけれども,実際に教科はなくて,ではどこでやるのかという話に,あのときもなりました。そこで明記していただいたのが,「時間の確保」という,実に具体的であり具体的でない言葉だったんです。教科の中に関連するところは連動してやることと,もう一つは,総合的な学習の時間の中の福祉・健康,環境に加えて,安全というものを明記したらどうかという提案があのときにあったと思います。
今,ここに書かれて新しく案として出されたものと総合して考えますと,ここがカリキュラム・マネジメントということになると思います。本校はこれを研究したくて研究開発学校の指定を頂きました。そこで最初にやったのは,国語,算数,理科,社会など教科を並べて,防災に関連あるものをつなげたことです。総合的な学習の時間は,もう少し深く活動するための時間,少し発展的な発想ができる時間という位置づけです。こうしてカリキュラムを組んで思ったことは,全てがつながっているということです。保健体育だけじゃない,社会だけじゃない,理科だけじゃないのです。それを,校内の全教員が感じ,深く考えるようになりました。正直言いまして,最初は,これだけ大きな災害が起こっているのだから,もう少し理科の自然のメカニズムを国民全体が正しく理解して,正しく恐れること。自然の恵みが第一で恩恵を受けながらも自然災害も起こり得るという認識をまずしっかりと持たなきゃいけないのではないかということを考えていました。ですから,理科を中心に研究し始めていったんですが,やってみると,たくさんいろいろな教科が絡み合っていることが分かりました。最終的には,こういうことを含めて安全な国を作っていく担い手を育てること,そういう国作りを目指していく必要性に気づきました。そうなりますと,保健体育の時間,社会の時間,家庭科の時間,理科の時間の中でやりました,やったからいいんです,のままでは駄目だと思うんです。
研究開発学校の役割は,次の提案をすることだと思っています。ほかの学校で次の日からすぐにまねすることはできないと思います。でも参考にしていけるようにしなくてはいけません。
まずは教科間をつなげること。中学校,高校になるとそれぞれの専門家から指導されることになりますが,子供の頭は1つです。全部の教科を1つの頭で理解していくわけです。とにかく教科はつながっているということを教える側の教師が意識して,教科間の連携を図る必要があります。今,担当の教科ではこういう内容をやっているけれど,他の教科ではどこをやっているのか尋ね,学ぶ内容の単元を並べ替えながら,子供がつなげて理解できるようにしたいものです。ちょっと難しいかもしれませんが,年間指導計画を組み直して,関連のあるものをまとめることが基本のカリキュラム・マネジメントだと思います。そして,総合的な学習の時間の中で探究する時間を確保します。こうやって,どこの学校でも,ちょっと頑張って教科間の連携を図ってつなげていく必要があると思っています。
そして,最終的に提案したいことは,次期の学習指導要領ではかなわなかったのですが,次々期の学習指導要領で,防災について学ぶ教科を創設することです。これは日本人として大事な教科になると思っています。生き方や道徳的なことも含めて,どんなことがあっても生き抜いて,乗り越えて,協働的に創造していこうとする姿勢。知識や技能,そのための能力。現行の学習指導要領の中にないけれども必要な防災知識やスキル,避難所を運営するときのノウハウなども盛り込みながら,しっかり考えて行動し,みんなで協力し合って作り上げるという能力を身に付ける,そういう日本人を育てたいと思うのです。今,私たち研究開発学校がやっているのは,その次々の提案です。そこに近付けるために,教科をつなげていって,子供たちが本当に,主体的に協働的に創造的に考えていけるような,今は防災を中心としてお話しさせていただいたんですが,安全面は全てつながっておりますので,そういったカリキュラムを作っていく必要性をもっと重点的に書き記してもいいのではないかと思います。
最後に1点,先ほど戸田委員がおっしゃったんですが,避難訓練ということは安全管理上,法律にありますが,子供の側(がわ)は単なる訓練にしてはいけないと思います。学習だと思っています。防災や不審者など,いろいろ最後に書かれていますが,時代とともにもっといろいろなことが想定されます。これにしっかりと対応できるために,本校では,危機発生時対応訓練として行っていますが,危機発生時対応学習かなとも思いながら取り組んでいます。ここの書きぶりも少し変えていいかもしれません。
以上です。
【渡邉副部会長】  ありがとうございました。
それでは,遠藤委員,お願いします。
【遠藤委員】  まず,組織的な取組というところで,本県では防災主任を全ての学校に入れて取り組んでいるわけなんですけれども,組織として動くに当たっては,やはり防災主任だけでは駄目で,管理職といいますか,しっかりしたリーダーシップの下に教職員全体で共通理解していくことが最も大事かなと思っております。校内研修等も含めて,そういった管理職の安全に関する部分でのリーダーシップのところまで言及できないものかななんて,まず思いました。
もう一点は,安全を取り巻く現状と課題というところで,子供たちの被害に関する部分プラス,例えば交通安全の部分に関すれば,自転車の加害者になる視点も,県の報告の中でもレッドカードの点数の多さや違反件数の多さもまだまだ減っているわけでもございませんので,教育に関連していくところもあると思いますので,入れていただくといいかななんて思っておりました。
最後ですけれども,安全教育について,宮城県では学校安全基本指針,防災に関しては副読本を発達段階に応じて作成してございまして,その中でどういった部分を学ばせ,どういった力を付けさせていったらよいのかを改めて示させていただいて,各学校に取り組んでいただいているところでございます。副読本の教材についても,この教科で主に使うこともできますし,幅を持たせて例示しているところもございまして,各学校では,社会,体育をはじめとして各教科の中で学習が進められております。特に,小学校段階だけではなくて中学校,高校段階になりますと,なかなか時間の確保は難しい部分があって,そういったところから教科の中でしっかりと位置付けていく必要があると思いますし,そのためにも,先生方の研修というか,どういったところで学習をさせることができるかという先生方の話合いがより必要になってくるかなと思っております。昨日も交通安全の研修会を県内で全部やりましたけれども,そういった視点が先生方の話合いで導き出せるところがやっぱりありますので,そういったところをしっかりやれれば,この計画の中でも十分いけるのかなと思っております。
以上です。
【渡邉副部会長】  ありがとうございました。
では,小川委員,お願いします。
【小川委員】  3点ほど申し上げます。
まず,2ページ目の安全を取り巻く現状と課題なのですが,この文面の全体のイメージとしては,何か小学生というか小さいお子さんだけをイメージしているように思えます。しかし,実際のところ,中学生,高校生の問題も大きく,高校生が犯罪に巻き込まれる割合が結構高いです。つきまといや,迷惑防止条例に関連するような犯罪に巻き込まれている事件も多いわけですから,中学生,高校生にとっても大事な問題だということを文言として入れるべきだろうと思います。もちろん,交通安全については,高校生の自転車事故は断トツで多いわけです。これらの問題がこの中では読み取れないなと思いました。それがまず1点目です。
それから,この中で,現状として数値やデータを出すのはいいのですが,私たちは何を問題解決しようとしているのか,現状の課題は何であるかをもう少し書かないといけないと思いました。前回の学校安全の推進に関する計画では,安全教育を充実していきましょうということを強く打ち出したわけですね。実際,この5年間で,私たちは安全教育の推進を目指して一生懸命,努力してきました。特に東北は本当に必死に防災教育を中心として安全教育を進めてきたのですけれども,それでもやはり充実化しない原因というのがあるわけです。その充実化しない原因とは何であるかを列挙して,それに対してこういう施策を打っていこうということをうたっていかないと,何となく,全体として今回の提案が形式的に終わっているように思います。
私自身,昨日は気仙沼へ行って学校安全の研修会に携わってきました。ほかの県についても携わる機会がありますので,感じたことを申し上げますと,やはり教員の意識の差,指導能力の差は感じます。それは,いろいろな個人的な差でもあり,地域による教員の意識差でもあるし,校種による差でもあります。昨日行った沿岸部の気仙沼の先生方の意識はすごく高かったです。やはり,大きな震災を経験し,実際に子供たちが亡くなったということを目の当たりにした先生方の意識の高さをすごく感じました。交通安全であれ,防災教育であれ関係なくその意識は強く,昨日は交通安全の研修会だったのですが,非常に具体的で教科横断的な安全教育の提案をしていただきました。内陸部の先生方と比較した場合,やはりどうしても差があるということを感じます。であるならば,その地域差をどう埋め合わせていくのかを,今回,この文面の中でうたっていかないと,より充実したものになっていかないと思っています。
それから,校種の差もやはり大きくて,教科横断的な考え方でカリキュラム・マネジメントのアイデアを提示して,それに基づいて学校安全計画を立ててくださいと言いますと,小学校の先生方は比較的取り組みやすくて,具体的なものを出してこられます。けれども,教科担任制の中学校,高等学校の先生方は,やはり抵抗感があり難しい面を感じました。特に高等学校の先生方には,教科横断的な考え方はなかなか受け入れてもらえないという大きな壁があります。そもそも,自分の教科については詳しいけれども,ほかの先生が担当している教科で何をやっているか自体,まず分かっていないのではないかということもあって,一般の教員レベルでこの教科横断の話を進めていくにはちょっとハードルが高過ぎるということも感じました。この校種の違いをどうするかという問題がすごく大きいです。先ほど申し上げましたように,中学生,高校生の事故や犯罪に巻き込まれる割合が非常に高いにもかかわらず,中学校,高校の先生方の意識が追い付いていないということがあるので,それは非常に問題だなと思いました。
地域の差もすごく大きくて,地域がまとまっている学校でありましたら,学校安全の取組は非常にやりやすいと感じました。地域の方々がバックアップして,「校長先生,何でもおっしゃってください」と地域の方々自ら声を上げてくださる地域もあります。そういう地域だと,学校安全の様々な活動は非常に進みやすいと感じました。一方で,地域との連携がうまくいってないところは,学校安全の管理にせよ,教育にしても,なかなかスムーズに進まないというのも分かってきました。そうすると,地域との連携が大事だと何遍もうたっていますが,やればやるほど,地域がまとまっているところはどんどん進んでいくし,まとまっていないところは置いてきぼりにされていくということで,この格差がどんどん広がるのではないかと思います。課題としては,地域がまとまっていない,地域との連携がうまくいっていない学校をどうやってサポートしていくかが大きなテーマになっていると思います。この問題を今後5年間で解決していかないと,地域による格差が大きくなって,子供たちの命に対する地域連携への依存度が高まれば高まるほど,結局,子供の命を守ることに差が生じてくると心配しております。
そんなことをいろいろと感じたものですから,そういう課題をまず2ページ目でばんと打ち出して,こういう施策を打っていくんだということを書くと,すごく説得力が増すのではないかと思いました。
それから,2点目,全体を通して工程表みたいなものがなくて,5年後,どうなるのだろうというのが見えません。来年度はこうする,その次はこうするというところまで具体的にはなかなか書けないのでしょうけれども,こうしてこうするとこうなるというステップ的なものが何かあるといいと思います。例えば研修については,次の年度は教科横断的な内容を含めた研修を展開しよう,それができたら授業研究やカリキュラム研究をして,その研究事例をみんなで共有しようじゃないかとか,何かステップを踏んでいくような書き方をされたら説得力が増すのではないかと思いました。
最後,3点目ですが,今回は教科横断的ということを前面に打ち出してきていますよね。その教科横断的というものをより実のあるものにしていくためにどうしたらいいかという具体性の部分が少し足りないと思っています。教科横断的というものを充実化していこうと思えば,まず安全教育の方法論をもっと勉強して研究しないといけない。それから,カリキュラムについても,学習経験がどういうふうにつながっていって子供たちの態度の育成や能力の育成につながっていくのかをいろいろと研究しないといけない。あわせて,教材開発をどうするのか,一番難しいのは評価をどうするのかという,いろんな課題があります。そういう側面をもう少し具体化して落としていかないと,教科横断的というのが何か絵に描いた餅のようになってしまって宙に浮いてしまう。教科化はできないわけですけれども,教科横断的としたときに,それも宙に浮いてしまうということは心配しております。
以上です。
【渡邉副部会長】  ありがとうございました。
次に,野津委員,お願いします。
【野津委員】  総論的なところで,まずは3つほど述べたいと思います。
1つは,今,小川委員が言われた教職員の意識のことに関わります。前回の会議でも私もその点を述べたわけですけれども,教員の意識の問題について,もう少し触れて書くことが必要というのが1点目です。それは養成や研修の項目のところになるのか,最初の方の安全を取り巻く現状と課題あたりで書くのか,考える必要はあるとは思いますが,少し検討願います。なお,安全を取り巻く現状と課題のところに書いてある内容は安全被害のことがずっと並んでいて,確かにそれも安全を取り巻く現状なんですけれども,もう少し広くとらえて課題を示していく書きぶりが説得力があるような気がしております。こんなに子供たちは危険な状況にあるんだよということばかりが並んでいる書きぶりは,もう少しうまい手を考えた方がいいんじゃないかということです。
2つ目としまして,学校というと教育ということが前面にというお考えは私もよく分かって,確かにそうだと思うんですけれども,学校では児童生徒等の命や健康を守ることを最優先するんだ,しなければならないんだということをまず高らかに宣言するといいますか,示すことが必要ではないか。これは「はじめに」という,この後,検討されるところに書くことになるのかなとも思います。このことは,当たり前と皆,思っているんですけれども,学校はそういうところなんだとここでしっかり示すことによって,国民といいますか,納税者といいますか,皆さんの学校へのその点に関する信頼,信用を得ることにつながってくるんだろうと思うんです。そういう意識を持って「はじめに」を書いていただくと,それは教職員の意識の発揚にもつながると思います。
3点目,時間の確保という論点はカリキュラム・マネジメントという視点で今回,取り上げていると私なりには理解しています。これは非常に前進だと思います。総則・評価特別部会などで,学校教育に対して○○教育という要望が140ほどあるということをちょっと聞いたんですけれども,言語教育,情報教育等々のいずれも非常に重要なものの中で,時間の確保のレベルで議論していてはどうにも打開していかない。そのために,カリキュラム・マネジメントという考え方が今回,重視されて改訂されることをしっかり受け止めて書き込むことが望まれると思います。そういった意味では,2は,とてもいいんじゃないかとも思いました。
なお,先ほど言い忘れましたけれども,学校は子供の命を守るところなんていうことをまず前面にといった点でいきますと,今のように組織的に対応するうんぬんがまず前の方の章に位置付いている今回の提案は,私は賛成します。教育ということが一番に出てきてしまうよりはという意味です。
あとは,細かいところになります。
6ページの○の下から2つ目で,教員養成のところでございます。ここだけが末尾が「期待される」となっています。これは,担当部局が大学ですので「求められる」,「必要だ」と書きにくいという配慮があるのかもしれませんが,大学の財政のことを考えても非常に厳しい中で,「期待される」程度で自ら改善して位置付いていくかというと非常に難しいので,是非「求められる」レベルで書いていいんじゃないかと思いました。
それから,前に戻りまして5ページ,「研修・養成の推進」というラベルの表現になっていますが,「教職員の研修及び教員養成」として,中ポツにしないで「及び」でつないだらどうか。また,「推進」という言葉が多用されていますので,ここはあえて「拡充」とか,「充実」とかいう表現に変えた方がいいんではないか。
また,この項目のところで知識・技能ということが表現されてきているんですが,是非,教員の意識の改善といいますか,意識ということも文言として入るように文章を工夫していただければと思いました。
あと,9ページになります。下から2行目の「授業改善という観点も踏まえつつ」の後に「行動変容につながる」という表現があるんですけれども,授業というところからいきますと,「適切な意思決定,行動選択につながる」ぐらいの表現の方がいいのかなと思いました。
最後です。15ページの5番目の項目のラベルの表現です。これは,私は非常に理解しにくいというか,分かりにくいです。「『チームとしての学校』の推進と地域・家庭,関係機関等との連携・協働による学校安全の推進」の「推進と学校安全の推進」という表現は,もう少し工夫の余地があると思います。
長くなって申し訳ありません。以上です。
【渡邉副部会長】  ありがとうございました。
それでは,尾上委員,お願いします。
【尾上委員】  10ページにもありますように,「交通事故等の危険のない環境はないという前提に立ち」うんぬんという流れですが,安全という部分に関しては,大人,社会がルールをしっかり守っていかないと,学校教育の中で行っても,いきなり外に出てみると大人がルールを守ってないというところを見ると子供たちは迷うと思います。つい先日,愛知県一宮市で小学校4年生の子供がポケモンGOをしながら車を運転していた方にはねられて亡くなった。その保護者は,正に大人がルールを守っていないこの世の中があるからこうなったんだということを言われていました。そういうことを考えますと,社会の,大人の改善なしに学校教育だけを進めてもよくならないことなので,「はじめに」で書くのか,最後の部分で書き込むのか,しっかりそういうことを伝えていくことは大事かと思います。
また,保護者に対しての啓発という部分も書かれておりますが,これも同時に社会に対する啓発という部分もしっかりと入れないと駄目だと思いますし,例えば,この中で学校安全計画,マニュアル等について保護者に周知されている割合は,参考資料にもありますように半分以下と。その保護者の中でも,母親は知っているけど父親は知らないというパターンがあって,本当にその家庭に浸透しているのかというようにアンケートの取り方も考えないと,本当に四十数%なのかというのが少し疑問なところでもあります。そういったところをしっかり見極めて判断して,こういうのを作り込んでいかないと,また学校だけのものになってしまうという危惧はあります。
それと,何名か意見が出ておりましたが,自転車の運転に関してです。特に高校生は,スマホは学校内では使用は禁止ですが持ち込んでもいいとなっておりまして,ながらスマホ,結構,自転車を運転しながらスマホを触っている。高校生も忙しいかもしれませんが,実際,そこから発生する事故の確率は今,相当高くなっておりますし,歩いていても触っていることを考えますと,通学途中の部分がここは抜けているのかと思います。いじめとか,スマホのいろいろな問題の部分はありますが,そういったところもしっかり関連付けて書き込むことによって子供たちにも伝わっていくということとともに,5年の計画であれば,例えば最終的にながらスマホ撲滅をやるということも含めて書き込んでおくべきなのかと思います。
啓発の仕方,周知の仕方は本当に難しいかもしれませんが,保護者としては知っておくべきことであると思いますので,責務として,子供を持つ保護者としてはきっちり対応していくということとともに,学校の変化,改正等に対応するような発信の仕方も,うまく取り組めるように,私たち,例えばPTAも動けるような形を取っていきたいなと思います。
以上です。
【渡邉副部会長】  ありがとうございました。
それでは,桶田委員,お願いします。
【桶田委員】  丁寧にまとめていただいて,ありがとうございました。幼児教育の方から2つ感じたことがありますので,お話しさせていただきます。
1つは,今回の検討は安全に関する資質・能力を教科横断的にというのが大きい視点だなと理解しています。そしてもう一つ,縦のつながりもあることを忘れていただきたくないなと思います。幼児教育部会でも,小学校教育と教育内容を接続させていくため,幼児教育で育てているものを分かりやすくしようという検討をずっと重ねています。今回の資料の中に「体系的」「発達」という言葉はありますが,小学校教育の中での体系的・発達のこと,小学校は小学校で完結,中学校で完結というように読み取れてしまいます。安全に関しても,幼児教育から始まり,各校種でそれぞれ経験したことを積み上げていくことが大切という書き方ができないかと思いました。
もう一つは尾上委員からお話がありました保護者・家庭のことです。16ページに「家庭は全ての教育の出発点であり」と書いていただいて,とてもうれしく思いました。ただ,その先の文章にある「生活習慣・生活能力」ですが,生活能力の中に安全も含まれているのかもしれませんが,安全のルールやマナーを教えるのも家庭の役割として,もう少し具体的に書けないかと思います。また,次の文に「行政のアプローチに限界」とありますが,前にお話ししたのは,行政等から頂いた情報を,学校側は地域や子供たちの実態とともに話しても伝えたい保護者にはなかなか伝わらないということです。「行政が」ではなく,学校はやっているのだということを書いていただきたいと思いました。
家庭のことで付け加えていただきたいことは,家庭との協力関係です。今回の資料に家庭や地域との協力ということはたくさん出てきています。しかしその内容は,子供たちの安全を確保するために見守ってもらおうという協力関係ばかりです。啓発,喚起という内容は,スマホなどのインターネット関連のところぐらいのように思います。幼児期だからかもしれませんが,御家庭で自分たちも我が子の安全に関して育てているという意識をもう少し持ってもらいたいと思っていますので,学校と家庭が一緒に子供の安全に関わる資質・能力を育んでいこうという文言もあってもいいと思いました。
【渡邉副部会長】  ありがとうございました。
それでは,安武委員,お願いします。
【安武委員】  ありがとうございます。私から2点ぐらい,お話しさせていただきたいと思います。
連携の話は,先ほど幼稚園の方からもお話がありましたように,地域の連携も本当に大切なのですが,幼小中高の学校間の連携が非常に大切と考えます。実際には,幾つかの幼稚園から一校の小学校に,幾つかの小学校から一校の中学校が登校する学校域制になっています。幼小中と学校の規模がだんだん大きくなっています。その中での連携が非常に重要になって,各幼稚園で安全指導をやってきた内容が異なると思うので,どこの幼稚園で何をしたか,どういう安全の教育をしてきたかの把握は,小学校で十分できているかは疑問な部分があると考えています。それは,中学校でも同じではないでしょうか。地域的には同じ環境にあると思いますので,防災教育についても,連携していないと,避難場所がふたを開けてみれば同じだったとかいうことがないのでしょうか。都立と区立の学校の連携はまだまだだと思っています。
それから,不審者事件では池田小学校の事件,防災のことでは,近年東日本大震災や熊本地震などが起こり,児童・生徒たちはこのことに関して非常に興味関心を持っていると思います。この興味関心をどのように知識や技能に結び付けていくのかが,具体的になっていない部分がまだあると感じます。学校で不審者や防災の研究指定を受けられている学校は,学校を挙げてやっているので児童・生徒たちには非常に伝わるというのがあると思うのですが,指定を受けていない学校の中には,教員や職員に安全教育の大切さが十分に伝わっていいないことがあり,それが児童・生徒を十分に刺激しきれていないことがあるのではないでしょうか。ここ何年かで全ての学校が安全教育についての指定校として研究をやりなさいというような刺激がないと児童・生徒・教職員は育っていかないのではと感じています。知識・技能が付いていくと,それが思考判断力に変わっていって主体的に行動できる子供たちができるのではないでしょうか。このような図式みたいなものも,載せていただいた方がいいのではと思いました。
危機管理マニュアルや学校安全計画が出されていると思うんですけど,私の経験では,文科省でもそうだと思いますが,こういうものは形式があって,形式の中でそれを学校に合ったものに変えていくという形が多いと思っています。それをどこの段階で誰がやっているかによって教員などへの伝わり方が変わっていくと思います。危機管理マニュアルや学校安全計画を教員皆に知らせる時間を具体的に設けて一つ一つ確認していかないと,児童・生徒に安全教育が,大切なことが下りていかないとも思っています。よろしくお願いします。
【渡邉副部会長】  ありがとうございました。
皆様から一通り御意見を頂きました。時間もないところで申し訳ないんですが,最後に,私からも2点ほどお願いといいますか意見があります。
1つは,安全教育によって育てる子供たちの資質・能力のこと,「資質・能力」という言葉が何度も出てくるんですが,具体的な資質・能力は,7ページの最初の○にあります3つが能力と書いてあるので,これがそれに該当するとは思うんですけれど,明確に資質・能力として示されて書いていないことと,次の8ページや9ページを見ますと,何か所か「資質・能力」という言葉が出てくるんですけど,書きぶりが少しずつ違うんですね。8ページですと,最初の○には「安全で安心な社会作りに必要な資質・能力」という言葉があり,次の2番目の○には「安全に関する資質・能力」,9ページですと,今度は4つ目の○に「児童生徒等自身の危険予測・危険回避などの安全に関する資質・能力」というのがあって,これは読む方が少し混乱するかなという気がしますので,次期学習指導要領では資質・能力が明確に出しているんですから,安全教育でも明確に出すことが一つの手なのかなと思います。それができますと,恐らく次の学習指導要領等の改訂の後にまた「『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」に出されるんじゃないかと思いますが,そこで新しい学習指導要領に基づく安全教育が作られるんじゃないかと思いますので,御検討いただければと思います。
2点目は,ここ最近の文科省の活動の一つの成果だと思うんですけれど,学校安全のポータルサイトが4月からできているわけですね。そこで全国のいろいろな実践の情報が提供されています。それは非常にいいんですけど,更にポータルサイトを充実させていくということも必要ではないかと思います。具体的にすぐに何ができるかということではないんですけれど,例えば気象庁や内閣府のサイトですと,eラーニングとまではいかなくても子供たちがそこで学べるようなものが出されていたり,JSCのホームページですと,最近,スポーツ事故防止の映像などがそこで紹介されているなんていうのがありますので,文科省がこれまで作った交通安全の教材などもそこで紹介できるかなと思うんです。予算の関係があるので,すぐにというわけにはいかないと思いますけど,そこで子供たちが学べる,先生方が研修に使えるようなポータルサイトになっていくといいと思いますので,そういったことも少し方向性として出していただくことも重要ではないかと思いました。
時間になりましたので,今日の御意見につきましては,まず小原部会長に報告して,この審議経過については来週,11月14日の初等中等教育分科会に報告することになります。次回は,本日の御意見,分科会の御意見を反映したものを再度,提示させていただくことになります。
今日,まだお話が足らなかったようなこと,あるいは,お話ししたんだけど,例えばここの文章はこういうふうに変えた方がいいのではないか,こういうものを入れた方がいいなど,いろいろあるかと思うんですね。そういったものにつきましては,事務局へメール若しくはファックスで御連絡いただければと思います。恐らく具体的に書いていただいた方が事務局も作業しやすいかと思いますので,そういった文面や修正案を出していただくと,必ずしもそれが全部反映されるということではないとは思いますけれど,十分参考にできるかと思いますので,またそれにつきましては,委員の皆様からメール,ファックスで御連絡いただければと思います。急ぎの場合といいますか,今日,まだ話し足らないものについては,11月11日金曜日まででお願いいたします。
それでは,次回以降の予定につきまして,事務局からお願いいたします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  次回以降の日程ですが,資料3を御覧ください。残すところ,もうあと2回となっております。次回は12月14日水曜日の10時から,場所はここ3F2,同じ場所でございます。今回,頂いた御意見を踏まえて反映したものをまたお諮りしたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【渡邉副部会長】  それでは,本日予定しました議事は全て終了しましたので,これで閉会いたします。
ありがとうございました。

お問合せ先

初等中等教育局健康教育・食育課防災教育係

(初等中等教育局健康教育・食育課)