学校安全部会(第8期~)(第4回) 議事録

1.日時

平成28年9月29日(木曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省 東館3F2特別会議室 【東京都千代田区霞が関3-2-2】

3.議題

  1. 学習指導要領改訂の議論を受けた安全教育推進のための具体的方策について
  2. 防災教育の効果的な取組について
  3. 意見交換
  4. その他

4.議事録

【小原部会長】  それでは,定刻となりましたので,ただいまから第4回中央教育審議会初等中等教育分科会学校安全部会を開催いたします。
本日は,お忙しい中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
本日,有識者からのヒアリングを行いますので,事務局から御紹介をお願いいたします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  本日は有識者のヒアリングとして,岩手大学の森本准教授にお越しいただいております。
【森本准教授】  どうぞよろしくお願いいたします。
【小原部会長】  それでは,議事に入ります前に,配付資料の確認を事務局からお願いいたします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  本日は学習指導要領改訂の議論を受けた安全教育推進のための具体的方策について等,御議論いただくということでございますので,議事次第に沿って御説明申し上げますけれども,資料1-1から資料1-4まで,指導要領のスケジュールや審議まとめに関する資料をお配りしてございます。そして資料2-1といたしまして,安全教育推進のための今後の取組ということで,平成29年度概算要求に関する資料を付けてございます。また資料2-2といたしまして,既存の安全教育に関する実践事例の御紹介の資料をお配りしております。そして資料3といたしまして,今日御発表いただきます小川委員と森本先生からの御説明の資料をお配りしております。さらに,資料4が前回の先生方からの主な御意見という資料で,資料5が今後の日程(案)について,でございます。そして参考資料1といたしまして,五十嵐委員から安全教育に関する資料を提供いただいております。さらに,参考資料2が,毎回お配りしております参考のデータ集,参考資料3として部会の名簿。最後,机上配付のみでございますけれども,中川委員から防災に関係する資料を頂いておりますので,こちらも紹介させていただきます。
以上でございます。
【小原部会長】  ありがとうございました。
また,本日は,報道関係者より会議の撮影及び会議内容の録音を行いたい旨の申出があり,これを許可しておりますので,御承知おきください。
それでは,議題に入ります。最初に学習指導要領の改訂の方向性,学習指導要領改訂を見据えた安全教育推進のための今後の取組について事務局から説明いただき,その後,五十嵐委員より5分程度で,参考資料1の御説明をお願いいたします。その後,5分程度,質疑といたします。
まず事務局から,よろしくお願いいたします。
【石田教育課程課教育課程企画室専門官】  失礼いたします。教育課程課の石田と申します。
私の方から資料1-1,資料1-2に基づきまして,学習指導要領改訂の全体スケジュール,あるいは先般8月26日に教育課程部会においてお取りまとめを頂きました審議のまとめの基本方針について御説明申し上げたいと思います。その後,学校安全に関する具体的な改訂の方向性について,健康教育・食育課より御説明申し上げます。
まず全体のスケジュールということでございます。お手元に資料1-1,横表を御準備いただければと思います。
教育課程部会における審議でございますが,一昨年,平成26年の11月に諮問をお願いいたしまして,学校安全部会の委員をお願いしている五十嵐委員,尾上委員,野津委員,渡邉委員も加わっていただき,500名近い専門家の方にお集まりを頂いて知見を結集いただき,約200回,400時間を超えて精力的に御検討いただきまして,このたび,お手元に御用意いたしました審議のまとめをまとめていただいたということでございます。
今後,この審議のまとめにつきましては,パブリックコメントを経まして,年内から年明けを目途に中教審としての答申を頂戴したいと事務局では考えております。それを受けまして,幼稚園,小学校,中学校については年度内に教育要領,学習指導要領の改訂を行いまして,周知期間を置きまして,幼稚園は平成30年度から,そして小・中学校につきましては32年度,33年度から,それぞれ全面実施をと考えているところでございます。また高等学校につきましては,29年度中に改訂を申し上げて,34年度から順次実施することを想定してございます。これが全体のスケジュールでございます。
次に審議のまとめにお示しいただいた改訂の基本方針ということで,資料1-2を御準備いただけますでしょうか。
次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめのポイントということでございますけれども,まず改訂の基本方針といたしまして,1番目のポツにございますように,今回の改訂では,教育基本法等が目指す普遍的な教育の根幹を踏まえながら,グローバル化,人工知能の飛躍的な進化など,社会の加速度的な変化を受け止め,将来の予測が難しい社会の中でも,伝統や文化に立脚した広い視野を持ち,志高く未来を創り出していくために必要な資質・能力を子供たち一人一人に確実に育む,こういう学校教育の実現を目指していこうということ。
また二つ目のポツにありますように,学校の先生方の真摯な取組によりまして,子供たちの現状としましては,学力については改善傾向にある一方で,判断の根拠や理由を示しながら自分の考えを述べる,あるいは社会参画の意識についてはまだまだ課題があるということ。また,社会において自立的に生きるために必要な「生きる力」の理念をより一層具体化して,教育課程がその育成にどうつながるのかを学習指導要領において分かりやすく示していくことが重要であるというような御提言を頂戴しております。
こうした現状と課題を踏まえまして,「何を学ぶか」という指導内容の見直しにとどまらず,「どのように学ぶか」「何ができるようになるか」と,こういうところまで見据えて指導要領を改善してはどうかということ。
また,よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創っていくんだと,正に未来の創り手となる子供たちを育成していくと,そういう目標を学校と社会が共有し,連携・協働しながら,新しい時代に求められる資質・能力を子供たちにしっかり育んでいくと。こうした「社会に開かれた教育課程」の実現を図るべきであるとの御提言を頂戴しているところでございます。
そのための具体的な資質・能力ということで,1ページめくっていただいて,2ページのところでございます。
この「生きる力」をより具体化ということでございますが,「生きる力」を以下の資質・能力の三つの柱に沿って具体化ということでございまして,生きて働く「知識・技能」の習得,未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成,学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性」の涵養と。こういう三つの柱で「生きる力」を具体化し,教育課程の枠組みを分かりやすく整理していってはどうかというような御指摘を頂戴しております。
また,「どのように学ぶか」という視点で申し上げますと,学びの質を高めていくために,「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指した「アクティブ・ラーニング」という視点から,授業改善を活性化していくことが必要であるということ。なお,必要な資質・能力をしっかりと育成していく観点から,知識の量は削減しないということで,学習内容の削減は行わず,知識も思考力も両方重視をしていくと。それをつなぐ懸け橋としてアクティブ・ラーニングを位置付けていくということで御議論を頂戴しているところでございます。
また,次のポツでございますけれども,こうした教育課程の枠組み,あるいは新しい時代に求められる資質・能力の在り方等について,全ての教職員が校内研修や多様な研修の場を通じて理解を深めることができるよう,学習指導要領の要である教育課程に関する基本原則を示す「総則」も「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」といった視点から抜本的に改善し,「カリキュラム・マネジメント」の充実に生かしていくということ。
また,そうした指導要領の趣旨を実現するためのICT教材の整備,あるいは教員定数の拡充,教材の改善・充実など,必要な条件整備をしっかりと進めていくということで御議論を頂戴しているところでございます。
この全体の考え方を説明した資料が3ページ,4ページでございますが,まず3ページ,何ができるようになるか,何を学ぶか,どのように学ぶかということで,学習指導要領の改訂の方向性ということでございます。
何ができるようになるかということでは,学びに向かう力・人間性,知識・技能,思考・判断・表現の3つをバランスよく育成していく。そのために何を学ぶかということで,教科の目標・内容を見直していく。そしてどのように学ぶかということで,主体的な学び,対話的な学び,深い学びを実現するための授業改善の視点を明らかにしていくということでございます。
また,もう1ページおめくりいただきまして4ページでございます。先ほど申し上げましたように,学習指導要領には総則がございまして,総則をカリキュラム・マネジメントの観点から見直すということでございまして,第1が小学校教育の基本で,どういう目標を小学校教育で設定していくのか。それに基づいて,第2以降で教育課程を編成し,そして教育課程を実施し評価し,児童の発達をしっかりと支え,そのための校内体制,あるいは家庭・地域との連携・協働を図っていくということで,何ができるようになるか,何を学ぶか,どのように学ぶか,何が身に付いたか,子供の発達をどのように支援するか,実施するために何が必要かという視点から,学習指導要領・総則も構造的に整理してはどうかと,こういう御指摘を頂戴しております。
ここまでが基本方針ということでございますが,具体的な改善の方向性が5ページ目に書いてございます。
5ページのところでございます。まず一つ目のポツでございますが,全ての教科等について,先ほど申し上げました育成を目指す資質・能力を三つの柱により明確化し,教育目標,内容,学習評価を一貫して見直しをしていく。こういった資質・能力を,各教科を通じて確実に育成していくということ。
また二つ目のポツでございますけれども,さらには教科を越えて育むことが求められる力として,上の方にございます言語能力,情報活用能力,多様な他者と協働する力など,全ての学習の基盤となる力をしっかりと育成していくこと。また,現代的な諸課題に対応して求められるということで,特に健康・安全・食に関する力,主権者としての力,グローバル化の中でというところも含めて,多様性の尊重というようなこと,こういった現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を各学校において確実に育成できるようにということで,健康・安全・食のところのパラグラフの下2行でございますが,各学校が,地域や子供たちの実情に応じて教科等横断的な視点で,こういった力をしっかりと育むことができるように,関係する教科等のつながりをしっかりと整理していくというような御指摘を頂戴しておるところでございます。
後ほど安全に関する部分も担当より御説明申し上げますが,安全に関する部分につきましても,関係する教科とのつながりを整理したペーパーを審議のまとめに盛り込んでいただいているところでございます。
その下二つでございますが,学校と家庭・地域との連携・協働と「社会に開かれた教育課程」の観点から,より一層活性化していくこと。また学習評価についても,指導の評価,改善に生かすということで,目標と評価の観点を一致させるというところも御指摘を頂戴しております。
長くなりまして恐縮でございます。6ページ目でございますけれども,教科等横断的に資質・能力をしっかり育んでいくといった場合に大切になってきますのは,正に「カリキュラム・マネジメント」ということでございまして,各教科と特別活動,総合的な学習の時間といった教育双方の強みや良さを生かしながら,教育課程全体としての力を発揮させて資質・能力をしっかり育成していく。こうした観点から「カリキュラム・マネジメント」が大切であるということで「カリキュラム・マネジメント」を三つの側面から整理いただいております。
一つ目は,各教科の教育内容を相互の関係で捉えて,教科等横断的な視点で,目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくということ。
学校安全に関する教育内容も,教科等横断的な視点で捉えながら,達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。また,二つ目は,教育内容の質の向上に向けて,各種データに基づいて教育課程を編成し,実施し,評価して自己点検評価をしていくと,こういう一連のPDCAサイクルを確立することが大事であるということ。また,三つ目には,教育内容のPDCAと併せまして,必要な人的・物的資源を適切に組み合わせながら教育活動を展開していくことが大事であるといった御指摘を頂戴しているところでございます。
6ページ目の下でございます。「アクティブ・ラーニング」ということでございますが,「主体的・対話的で深い学び」の実現ということで,7ページのところに○1,○2,○3で,「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」というのが,それぞれ整理をされておるところでございます。
まず「主体的な学び」につきましては,学ぶことに興味や関心を持ちながら,自己のキャリア形成の方向と関連付けて,見通しを持って粘り強く取り組み,自己の学習活動を振り返って次につなげると,こうした学びが実現できているかどうか。
あるいは「対話的な学び」で言いますと,子供のみならず教職員や地域の人との対話,あるいは書物等とした先哲の考え方を手掛かりに考えていくと,こういった中で自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているかどうか。
あるいは「深い学び」につきましては,各教科ならでは身に付く物の「見方・考え方」をより生かしながら「深い学び」を実現していくということでございまして,特定の指導方法―例えばディベートをすれば「対話的な学び」ということではなく―様々な指導方法があるんだけれども,「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」が,それぞれで実現されているかどうかという観点から,今の授業の在り方を見直していくと。そういう授業改善の視点として整理してはどうかという御指摘を頂戴しておるところでございます。
以上,教育課程の基本的な方向性,あるいはカリキュラム・マネジメント,アクティブ・ラーニングということで御提言いただいている内容を当方で御説明を申し上げました。安全教育に関するより具体的なところにつきまして,健康教育・食育課より御説明を申し上げます。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  失礼いたします。続きまして,健康教育・食育課の方から,具体的に安全に関するものがどのような形で位置付けられているかというところで御説明申し上げたいと思います。資料1-3を御覧いただけますでしょうか。
24ページに,5としまして「何ができるようになるか -育成を目指す資質・能力-」ということで,資質・能力についての基本的な考え方が記載されてございます。
ここの○の二つ目でございます。育成を目指す資質・能力とは何かということで,以下の三つのように大別できるということで,○1,○2,○3と書いてございますけれども,この○3のところで,安全で安心な社会づくりのために必要な力など,現代的な諸課題に対応できるようになるために必要な力が育成を目指す資質・能力の一つとして掲げられるというところで,更にその一つ下の○に移りますと,こうしたものをどのように育むかということで,更にまた○1,○2,○3と書いてございますけれども,その○3の部分で,「現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力と教科等の関係を明確にし,どの教科等におけるどのような内容に関する学びが資質・能力の育成につながるのかを可視化し,教育課程全体を見渡して確実に育んでいくこと」ということで御提言されてございます。
さらに,この現代的な諸課題に対応する資質・能力ということに関しまして具体的に,40ページに移っていただけますでしょうか。(現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力と教育課程)ということで,具体的な例示とともに記載がされているところでございます。
それで,その現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力としては,以下のようなものということで,一つ目に健康・安全・食に関する力が記載されてございまして,そこから○を二つ下に下がっていただきますと,ここでは例示的に健康・安全・食に関わる資質・能力について整理をしたということで,例示がその下に書かれてございます。
(健康・安全・食に関する資質・能力)というところでございます。特に安全の部分に関しましては,41ページの上から三つ目の○,「さらに」から始まる部分ですけれども,東日本大震災をはじめとする様々な自然災害の発生や,情報化やグローバル化等の社会の変化に伴い子供を取り巻く安全に関する環境も変化していることを踏まえ,子供たちが起こり得る危険を理解し,いかなる状況下でも自らの生命を守り抜く自助とともに,自分自身が社会の中で何ができるのかを考える共助・公助の視点からの教育の充実も課題となっている。
こうした課題を乗り越え,生涯にわたって健康で安全な生活などを送ることができるよう,必要な情報を自ら収集し,意思決定や行動選択を行うことができる力を子供たち一人一人に育むことが強く求められている,ということで御提言を頂いております。
そしてさらに,その下の○でございますけれども,こうした健康・安全・食に関する資質・能力の具体的な内容は,この後で御説明しますが,別紙4で整理されておりまして,これらを教科等横断的な視点で育むことができるように,教科等の相互の連携を図っていくことが重要である。そして学校安全計画などについても,同様の資質・能力に関する整理を軸に作成・評価・改善をし,地域や家庭とも連携・協働した実施体制を確保していくことが重要である,ということで,御提言を頂いているところでございます。
さらに,別紙4を御説明したいと思います。資料1-4の20ページのところを御覧いただけますでしょうか。
健康・安全・食に関わる資質・能力ということで,先ほど教育課程課の方から御説明があったように,資質・能力を「知識・技能」,「思考力・判断力・表現力等」,「学びに向かう力・人間性等」という三つの柱に沿って整理いたしますと,以下のようになるのではないかということで,これは体育・保健体育,健康,安全のワーキングで御議論いただいた内容を基に整理をさせていただいているところでございます。
まず,「知識・技能」の部分に関しましては,様々な健康課題,自然災害や事件・事故等の危険性,健康・安全で安心な社会づくりの意義を理解し,健康で安全な生活や健全な食生活を実現するために必要な知識や技能を身に付けていること。
さらに,それらを踏まえて,「思考力・判断力・表現力等」という部分につきましては,自らの健康や食,安全の状況を適切に評価するとともに,必要な情報を収集し,健康で安全な生活や健全な食生活を実現するために何が必要かを考え,適切に意思決定し,行動するために必要な能力を身に付けていること。
そしてさらに,社会との関わりというところにありますが,「学びに向かう力・人間性等」という観点では,健康や食,安全に関する様々な課題に関心を持ち,主体的に,自他の健康で安全な生活や健全な食生活を実現しようとしたり,健康・安全で安心な社会づくりに貢献しようとしたりする態度を身に付けていることと。このように,この三つの柱に沿って整理されています。
22ページのところに,防災を含む安全に関する教育のイメージということで,これは第1回の部会のときにお配りしていたのと大体同じようなものでございまして,各教科等において安全を,例えばこのような形で位置付けてみたらどうかということの教科等横断的な視点からの編成のイメージでございます。
そこでは特別活動,社会や理科,体育ということで,それぞれの観点からの安全に関する課題が記載されてございまして,飽くまでもイメージでございますので,ここに書いていないから安全とは関係ないとか,重要でないということではございませんで,飽くまで一つのイメージとして,こういった図を併せて御提示いただいているところでございます。
これを踏まえまして,資料2-1を御覧いただけますでしょうか。こうした御提言などを踏まえて指導要領の改訂などが行われていくところでございますので,これに併せて,施策ベースで見たときに,これまでどのような形で予算事業などがあって,更に今後どのようなことが考えられるのかということで,事務的にイメージとして書かせていただいているものです。
左側の第1期は現行の学校安全推進計画で,第2期とは,今正に御議論いただいている今後の計画になりますけれども,第1期の期間中に関しましては,モデル事業で「実践的防災教育総合支援事業」や,「地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業」などを行うとともに,指導の資料ということで,「『生きる力』を育む防災教育の展開」や「安全に通学しよう」というDVDの作成など,さらに,研修ということで,地域の研修を支援する「学校安全教室の推進」や,国としての「学校安全指導者養成研修」ということで,教員研修センター等々でやってきている取組がございます。
こういったものに関しまして,29年度以降,モデル事業に関しましては,実際に今年度予算にもあります「防災教育を中心とした実践的安全教育総合支援事業」というものを少し充実させる形で今要求をしているところでありますし,指導資料などに関しましては,正に指導要領の改訂を踏まえた教育関係の資料の改訂や危機管理マニュアルの手引きの改訂も行っていくことが考えられるのではないかということで要求をさせていただいているところでございます。
後ろに付けてありますポンチ絵は,来年度の概算要求に関する資料でございますので,是非御参照いただければと考えております。
続きまして,吉門調査官の方から,これまでの教育の実践事例について御説明申し上げたいと思います。
【吉門健康教育・食育課安全教育調査官】  引き続き失礼いたします。吉門でございます。
それでは,お手元の資料,資料2-2を御覧ください。
まず1枚目は安全教育の目標を,学校安全の参考資料「『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」,この中にも書いてありますが,「自他の生命尊重を基盤として,生涯を通じて安全な生活を送る基礎を培うとともに,進んで安全で安心な社会づくりに参加し貢献できるような資質や能力を養う」ことを目標に掲げて,ア,イ,ウの重点とともに位置づけ,取り組んでいただいているところでございます。
1枚おめくりください。さらに,防災教育につきましては,東日本大震災の後,『生きる力』育む防災教育の展開という資料を改訂いたしまして,安全教育の目標をベースに防災に特化した三つの重点目標を設定し,さらには発達の段階ごとの大まかな目標をお示ししております。
そして巻末には具体的な実践事例も掲載しまして,全国の学校にお届けをし,それぞれの学校で取組の参考として進めていただいております。
先ほどの資料2-1にもございましたとおり,東日本大震災の後,平成24年から実践的防災教育総合支援事業を立ち上げまして,学校の先進的な取組を行っていただき,そこで得られた成果を全国に発信することによって,全国に優れた実践をたくさん生んでいくという事業を行ってまいりました。
その結果,従前は「防災教育と避難訓練」ということが主流でございました。東日本大震災以降,特に避難訓練の在り方も変わってまいりまして,従前は放送で「地震が発生しました。机の下に潜りなさい」,そして先生の引率によって校庭に避難して集まることで終わっていた避難訓練が,本当に実践的な訓練に変わってきているというところがございます。
それについても,この事業の中で緊急地震速報の装置も付けて,それを教育に活用するという事業も展開してきまして,随分と全国の学校に広げてきたところでございます。
資料の3ページ目を御覧ください。この事業で取り組まれてきた実践について,写真でお示ししたものでございます。
まず上段の三つの写真は,避難訓練の改善が図られてきたというところでございます。一番左,ある小学校で,これは清掃活動中に子供たちに予告なしに緊急地震速報が鳴った瞬間を捉えた写真でございます。トイレの中で頭を守ってうずくまっている子供たちの様子が御覧いただけます。こういう訓練を子供たちに予告なしに,あるいは学校によっては先生方にも予告なしにされているという先進的な取組,より実践な取組に変わってきております。
また,津波の被害が想定される地域では,保育所と小学校,中学校が隣接する地域においては,例えば午後のある時間帯に突然緊急地震速報が鳴って,保育所においてはお昼寝の時間帯でありましたので,子供たちはパジャマでございます。そこで一緒に避難をすると,何も言われなくても中学生は,そういう小さい子供の姿を見ると,自然に中学生が小さい子供の手を引いているという状況でございます。
こういう実践的な体験を通して子供たちが気付き,考え,そして,いざというときの行動の在り方を体験的に学んでいくという学習の場に避難訓練が変わってきております。
さらには,地震・津波だけではございません。火山の噴火が想定される地域では,例えば登下校中にもし噴火したときにはどうするかということ,地元の気象台と連携した,取組も行われております。
さらに,この避難訓練だけが防災教育ではありません。最も重要なのは,いざというときの適切な行動につながるためには,きちんと知識を身に付けて,その知識を生きて働くものにしていくことが重要でございます。
各教科等の中で,知識を身に付ける学習を行っていく。こういうことが現行の学習指導要領の中で行われているという事例でございます。
例えば小学校の社会科の中で「くらしを支える情報」という単元で,緊急地震速報を取り扱った教科書を使っている地域ではその仕組みを学習し,また小学校の理科では「流れる水のはたらき」,どういう浸食作用があるか。そのことが土砂災害にもつながり得ることを,子供たちが簡単な実験装置を使いながら学んでいくという実践が行われています。
次に,右の写真は,特別活動の学級活動の中で,登下校中に地震が起きたら,どう行動するかということを,実際に子供たちが通学している場面の写真を使いながら,話合い活動によって自分の行動を考えていくという学習が行われています。
このように身に付けた知識を行動につなげる学習も行われるようになってきました。
さらには,地域の状況を知り,総合的な学習の時間の中でもフィールドワークを通して,地域の課題,災害が発生したときの課題を知るということ,そして,聞き取り,調べたことを基に解決策を考える活動を通して,自分たちの安全を守るために取り組まれている施策などを体験的に学んでいます。そして学んだこと,自分たちが身に付けたことを言語化して誰かに向かって発信するということを通して,より子供たちの中に深い理解が得られる。気付く,調べる,そして考え,伝え合う,こういうサイクルを通して深い学びに向かうという実践も行われております。
さらには,あらゆる時間や,場面を工夫した実践としまして,学校行事である運動会の中に防災を視点とした種目を取り入れている学校。これも地域によっては,地域の方々とともに行うという学校も出てきておりますし,また指導の時間は全く要らない。これはある学校の女子トイレの個室に入ったときに見付けた掲示でございます。こういうふうに日常の中で子供たちに見える化していくということも,時間も要らない,労力も要らない有効な方法でございます。
次期学習指導要領のキーワードの一つでもある,カリキュラム・マネジメントということを視点として,これから,学校で行っていただかなければならないことでありますけれども,例えば,中学校区の小中学校の教員が全員集まって,小学校,中学校一貫して,どのような力を身に付けさせるべきかということ,そこから全教職員が共通理解を図り,そして年間指導計画を作成していくという取組も生まれてきております。
とは申しましても,今御説明したような実践が全国の学校において行われているという状況には,まだまだ至っていないところでございます。先進的な事例を基に,それが少しずつ地域の中で広がり増えてきているという,まだその段階でございます。
次期の学習指導要領が進んでいく中では,全ての学校において,こうした取組が行われ,子供たちに自ら命を守るとともに,地域の安全にも貢献できる資質や能力が育っていくような指導が望まれるところでございます。
4年前から,文部科学省において初めて,防災教育を視点とした安全の観点での研究開発学校を2校指定しまして,お取組を頂いてきたところでございます。ちょうど本年度が4年次の最終年度でございます。本部会の五十嵐委員の学校にも,そのお取組をお願いしておりましたので,この後は平山小学校のお取組を御発表いただきたいと思います。
最後に,文部科学省では,学校での安全教育が行われるようにするための適切な資料をお示ししているところでございますけれども,各自治体におきましても,それぞれの地域の課題に合わせた資料が調えられているところでございます。
今日お集まりの遠藤委員のいらっしゃる宮城県,それから今日御発表いただきます森本先生のおられました岩手県,また福島県,それから太古委員のいらっしゃいます兵庫県など。これまで大きな災害があった県はもちろんでございますけれども,例えば,これから発生が懸念されています南海トラフ地域である高知県などにおきましても,防災教育の指導資料の充実が図られてきているところでございます。
こうした全国の自治体の取組も文部科学省において,いつでも,どこでも,どの学校でも瞬時に,どこの県の取組も取り入れることができるようにポータルサイトを開きまして,全国に公開しているところでございます。
長くなりました。以上でございます。
【五十嵐委員】  失礼いたします。平山小学校の校長の五十嵐です。参考資料1を御覧ください。簡単に説明をさせていただきたいと思います。
今御説明ありましたように,本校は文部科学省の研究開発学校として4年目になります。「生きぬく科」という新しい教科を作っています。このきっかけは東日本大震災です。被災地の学校から学び,今のままでいいのか,変えていかなければならないことは何かということを教員と悩みながら,研究を進めました。
まず変えたことは,形式的で受け身の避難訓練をやめたことです。今では,危機発生時対応訓練といって,教員にも子供にも知らせないで,今まで学んできたことを実践する場として捉えて,月1回行っています。
この「生きぬく科」という教科は,自然災害の多い日本に住む未来の創り手である子供たちに「生き抜く力」を育むことが目標です。防災教育が主となりますけれども,先ほど御説明ありましたように,現代的ないろいろな課題に対応する,そういう力を育む教科だと考えています。
2ページをお開きください。
本校の今研究している「生きぬく科」と,最初に御説明のあった学習指導要領改訂の方向性は同じです。偶然に同じになった部分もありますが,国の流れも見据えながら進めてきました。
まずはどんな資質・能力を身に付けたいかを考えました。学んだことを生かしてどんな状況にも対応できる力,これを「生き抜く力」として六つの実践力として示しました。
次に生きて働く知恵・技能。災害知識や防災知識に関することも追加しています。そして,その未知の状況にも対応できる資質,思考・判断・表現力。これを五つの能力に分けて構造的に示しました。
知識・技能や能力を身に付けるための学習活動も,図の下に示しました。これは,学び方の変革にも関わっています。もともと東日本大震災の前に,ICTを活用した新たな学び,子供たちが主となる学びを研究していましたので,それらの実践研究も十分生かしています。教科横断的に学ぶ内容を再編成することと学び方を変革すること,この二つの柱で,この「生きぬく科」を作っているところです。ちょうど8月26日に出てきた論点整理の図と全く同じ方向でぶれていないことを私たちも確認したところです。
今年は4年次の最終年次ですので,全国に広めたいと思っています。未来の子供たちに全ての学校で本校が実施しているような防災教育を学べるようにしたいと思います。
そのための提案の一つ目は,教科化を目指すことです。次期学習指導要領では教科にはなりませんが,学ぶ内容と方法を生かしてもらいたいと思います。
二つ目は,生きぬく科の教科横断的なカリキュラム・マネジメントを参考にしてもらいたいことです。そのPDCAサイクルの一つである評価も工夫しています。児童の変容を明らかにしながら,カリキュラムの改善に反映させています。
そして最後に,実践を広げることです。教科でなくても,既存の教科,特別活動,総合的な学習の時間の中で,これだけはやってほしいというものをピックアップしたミニミニ授業セットというものを作っています。どの学校でも防災教育を実施する必要があることを提言していきたいと考えているところです。
4ページをお開きください。生きて働く知識・技能です。今の教科にはないものもあります。1年生から6年生まで発達段階に応じて,細かい表にして作っています。知識・技能の内容区分については,5ページにありますように,新しい高等学校の教科・科目を参考にして,「生きぬく科」の内容区分としました。6ページをお開きください。具体的には,その知識を何年生で扱うのかということを細かい表にしています。これも最終段階で少し改善を図っているところです。
次に,未知の状況にも対応できる思考・判断・表現力。これを本校では五つの能力に分類しました。8ページを開いてください。それぞれの能力のルーブリックを作りました。授業や,その場面に応じて,子供たちの能力を伸ばしていくように考えています。
そして9ページは学習活動。いろいろな活動を通して知識・技能や能力を身に付けていきます。主体的で対話的で深い学びを目指す学びの改革も図っているところです。
続きまして10,11,12ページです。PDCAサイクルで,子供たちの変容を明らかにしながら,生き抜く力となる実践力について絶えず振り返ってカリキュラムの改善を図っています。
具体的には,六つの実践力に沿った具体的な行動の調査で振り返っています。
続いて14ページです。生きて働く知識・技能についての評価です。こんなときにどうするかといった状況設定問題を作って評価しています。そのためのデジタル評価コンテンツも,全ての内容区分で開発しました。それが15ページ以降です。
このような取組をしているところですが,研究開発学校だからできるんじゃないかということで終わらせないために,「生きぬく科」の成果の普及を目指しているところです。
この19ページの下に標語みたいなものが載っています。これは本校の合い言葉です。あきみかん。あわてない・あきらめない,聞く,見る,考えて行動する。これは防災に限ったことではなくて,いつも,いろいろな学習や生活の場面で言い聞かせています。
20ページ,これがミニミニ授業セット,先に説明したように,「生きぬく科」の中で,それぞれの学年が三つ大きなものを選んで,授業展開例や実際の授業の様子,資料,ワークシートなど全部含めて,セットとして提案し,全校へ普及・啓発します。
最終ゴールの6年生は,専門家から学ぶ機会が多くあります。最終的には自分たちの住む地域に再度繰り出して,自然の恵みと地域のリスクをしっかりと把握し,このすばらしい町をどうやったら災害に強い安全になるのかというまちづくりという観点でまとめます。日野市の防災安全課に提言したり,地域懇談会等に参加したりして,地域の貢献者になるような学習活動をしていきます。
21ページになります。今年度は4年目,研究開発学校の最後のまとめの発表会を開かせていただきます。ちょっと宣伝になってしまうのですが,来年2月18日に行います。午前中に授業を見ていただいて,午後に全体会。尊敬する本部会の委員でもいらっしゃいます今村先生にも登壇していただきますので,本当に心強く思っています。是非集まっていただいて,見ていただければと思います。
以上です。
【小原部会長】  ありがとうございました。ただいまの説明を受けて御質問等がございましたら,どなたからでも結構ですので,御発言をお願いいたします。なお,発言の際には机上の名札を立てていただきますようお願いいたします。中川委員,お願いします。
【中川委員】  中川です。
まず,学校安全教育の前の全体の中で少し関わることとか,私の視点で関わることかなと思っているところなんですが。枠組みの見直しのところの5ページ目の二つ目のポツの後段にあるところと多分つながってくるのかなと思って,私は理解したんですけれども。
最初のページのところに,伝統や文化に立脚したという話があるわけですが,それと同じような文脈の中で,現在まで受け継がれてきた我が国固有の領土や歴史について理解し,伝統や文化を尊重しつつというような文脈があるんですが,これは多分,私たちが関わったジオパークで考えているような「日本列島の大地に立脚した人間との歴史」というような,自然科学,地球科学サイドの話も含まれている。ただ単に人間だけの文化とか伝統ではなくて,地質年代的な視点も含めて,そういう大地に立脚した私たちの先祖たちの育んできたものというのも含まれていると考えていいんだろうなと理解して私はチェックを入れたんですが,そういう理解でよろしいんですかね。
【石田教育課程課教育課程企画室専門官】  伝統や文化を理解する上では,地域の伝統や歴史のみならず自然環境も含めて学ぶ視点は大切かと思います。ただ「審議のまとめ」は,伝統や文化の尊重などを含め,関係する教科等のつながりを学習指導要領において整理することを求めており,具体的な内容は今後取りまとめられる答申を受けて検討することとなろうかと思います。
【中川委員】  ありがとうございました。
【安武委員】  安武と申します。よろしくお願いします。
学習指導要領の話が出て,スケジュールが出ておりましたけれども,幼稚園とか小学校,中学校,高等学校についての学習指導要領が特別支援学校のベースになるとは分かっているのですが,特別支援学校の新学習指導要領の今後の予定が分かりましたら教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【石田教育課程課教育課程企画室専門官】  ありがとうございます。特別支援学校の学習指導要領については,おおむね幼稚園,小・中・高校の指導要領が出そろった段階で告示するのが,これまでの改訂でございますけれども,今回については,多様な学びの場の確保というインクルーシブ教育システムの推進の観点から,具体的にいつかということは今の段階では申し上げられませんが,なるべく早めにお示しをしていこうということで議論が進んでおるところでございます。
【安武委員】  ありがとうございます。普通学校の中にも障害のある方がおられると思うので,特別支援学校の学習指導要領を逆に活用できるということも考えられるので,できるだけ早く,できれば同じ時期にと思っております。よろしくお願いします。
【小原部会長】  それでは最後,田村委員,お願いいたします。
【田村委員】  いろいろな方たちの御努力で,ここまで進んだのかなと,すごく有り難いなと聞いていたところでございます。すごい一歩なんだなと思っているんですが,質問を,事務局と五十嵐委員にさせていただきます。
生き抜く力が,いわゆる全体の中に入りましたということと,それに関連する防災とか安全の関連のところを教えていただいたんですけど,ほかにも生き抜く力ということに関連して何かあるのか,それとも,ここに強くひもづいているという理解でいいのかということを教えていただきたいのが一点。
それから,もし可能であれば,これが世の中に広まっていくと,学校教育の中で具体的に,どんな感じに変わっていくのか,イメージがなかなか難しいので教えてください。
それから,五十嵐委員の方には,こういう試みをずっと進めてこられたのが,こういうものにつながったと思うんですけど,どういうふうに評価されているかというのを教えていただければと思います。こちらの方に書き込みがされたということについて,どのように評価されているか教えていただければと思います。
【吉門健康教育・食育課安全教育調査官】  生き抜く力というのは学習指導要領の中では生きる力ということで,全体の中では生きる力という言葉でありますけれども,そこは,その理解でよろしゅうございますか。
【田村委員】  はい,結構です。
【吉門健康教育・食育課安全教育調査官】  平山小学校では「生きぬく科」ということで,どのような状況にあっても生き抜くということは,いろいろな資料の中では出てくるところでございますけれども,学習指導要領の中では生きる力ということになってまいります。
今御説明申し上げたのは,具体的な事例を申し上げたのが防災だけでございましたけれども,実は学校安全の3領域であります生活安全,交通安全も,従前から指導要領の中には盛り込まれております。
先ほどの説明の資料のカリキュラム・マネジメントのイメージ図があったかと思います。資料1-4の22ページ,これはまだイメージでございますが,現行の内容を基にしましてイメージ化が図れるように作ったものでございます。
防災についての記述が多くなっておりますけれども,例えば体育や保健体育の中では,けがの防止という観点で,危険予測とか,いろいろなことが出てまいります。
傷害の防止の理解というところでも,自然災害によるけがという流れで防災のことも出てまいります。生活安全については,例えば小学校の低学年では登下校の安全を守ってくれる人たちとの交流ということも入っておりまして,その考え方は次期の学習指導要領の中でも引き継がれていくと考えられます。
具体的なところはたくさんございますが,説明が防災に特化してしまったことで少し混乱を招いてしまったこと,申し訳なく思っています。
以上でございます。お答えになりましたでしょうか。
【田村委員】  ありがとうございます。
【五十嵐委員】  ありがとうございます。小川委員,森本先生の御発表にあったように,実は本校も最初,釜石から学びました。釜石の震災の前からいろいろ取り組まれていることを,とても勉強させていただきました。実際に大人に影響を与えるんだという言葉が印象的で,子供から大人を変えることを私たちも目指しています。
先ほど今村委員が安全に対してどのような子供の変容があったのかと問われたときに,ずっと考えていたのですが,例えば最近,気象がとても変動しやすくて,大雨が急に降ったりします。つい先日もいきなりすごい雨が降ったとき,下校中の児童が,近くのクリーニング屋さんに入って雨宿りをしたということがありました。そのときに近くにいた低学年の児童も誘って一緒に入ったんです。知り合いではなかったらしいのです。そして,その店の方に連絡をとっていただくという対応をとったのです。「あっ,すごいですね。学校で防災教育をよくやっている影響ですね」と言われました。また,最近よく起こるちっちゃな地震で,あ,揺れたかなというときに,校長室の上でがたがたって,すごい音がするんです。みんな子供たちが,さっと安全姿勢をとっている。
また,本校で行っている危機発生時対応訓練では,教員にも児童にも予告なしで,状況の設定を変えて実施していますが,休み時間でも,きちっと行動がとれています。また,登校時に台風が来ることが予測されるときに,警報が出ていたら登校を見合わせるということを徹底しています。メール配信はしていません。児童の方が,意識が高く,低学年でも気象情報を確認するようになって,今日はどうだろうということを話せるようになったと聞いています。やっぱり,これは生きぬく科の学習がいい影響になっていると思います。それぞれの学年で発達段階に応じた地図を与えて,大雨が降ったとき,どういうふうに帰るかとか,どう避難するかというような,こんなときどうするといった課題に協働的に取り組んでいます。これは教科の枠を超えた学習です。理科的な発想もあれば社会科的な発想もあります。いろいろな見方や考え方を取り入れるそういった生きぬく科の学びの成果というのが徐々に付いてきているのではないかなと思っています。
本校では,いつ,どんなときでも,ちゃんと考えて行動できる子を育てるという目標をもって学習に取り組んでいます。各教科の授業でも,内容達成よりは,むしろ,算数であれば数学的な見方や考え方,理科であれば科学的な見方や考え方,そういうものが統合して,いざというときに生きて働く力になると考えています。教科の枠にとらわれず,内容よりも見方や考え方,行動の仕方を学んで力を付けるんだというように,少し発想を転換して学び方も工夫し始めているところです。
防災は,これからの日本に住む以上,どの学校の子供たちも絶対に学ばなければいけないと,私は真剣に考えています。そのためには,教科としてきちんと学ぶ時間を設定することが必要です。教科でなければ幾ら工夫しても限界があり,時数にも限りがあります。ですから,次々期学習指導要領には絶対にその時間を確保してもらいたいと願っています。まずできることは,次の学習指導要領で,どういう資質・能力を培うかというところを大事にして教科を結び付け,横断的に学ばせる努力を学校はしなければいけないと思いますし,例えば,まずは地域から学ぶ。地域の自然の恵みもリスクも併せて見る。低学年の生活科は地域を歩くことから始まりますので,そういう目線に立って,地域とつなげて,地域のお年寄りには,過去こんな災害があったということを知っている方もかなりいらっしゃいますので,そういう地域の人材を学校がつなげていくこと。たくさんの専門家やいろいろな教材の情報をうまく結び付けるということも大切だと思います。この先の教科化を目指して,皆さんで真剣に検討していきたいなというのが私の本音です。
以上です。
【田村委員】  ありがとうございます。
【小原部会長】  よろしいですか。それでは次に小川委員,森本准教授から,防災教育の効果的な取組について御意見を伺います。
【森本准教授】  先ほど御紹介いただきました岩手大学の森本でございます。少しお時間を頂きまして,震災前の学校防災教育の成果と今後の方向性ということで,前半,私から概要と聞き取り調査の内容について,後半,小川委員の方から分析等について御説明させていただきます。
それでは,資料3と補足資料を御用意いただければと思います。資料3の2ページをお開きください。
今回のこの調査研究の目的についてお話しさせていただきます。私,震災の前年度まで釜石東中学校に勤務していたのですが,そこで取り組んだ防災教育の効果を,震災から5年半たっているわけですが,改めて検証することで,実際震災前に取り組んだ学習が避難時,どういうふうに効果をもたらしたのか。そして5年たって,彼らの中に何が残っていて,震災を経験した彼らが何を大切に思うのか。こういったことを明らかにしていくことで,今後の防災教育をどのように進めていけばよいのか。カリキュラム,学習方法,評価についての基礎資料が得られるのではないかということで,現在,調査研究をしているところです。
対象になっているのは釜石東中学校の当時発災時の2年生です。私が1年生のときに学習に関わっていた生徒たちになります。現在,男子4名,女子7名の11名の子供たちから聞いているところです。
調査方法は二つ,聞き取り調査とアンケート調査で行っております。聞き取り調査では地震発生時,避難状況がどうだったのか,そのときどういうふうに危険を予測したのかというのも含めまして聞いております。そして印象に残った防災教育,大切だと思う防災教育と,その理由についても,子供たちから聞いています。
そして別にアンケート調査の方では,震災前に学習した防災教育の印象度や重要度について聞いて,これについては後で小川委員から説明があります。
では,資料3の補足資料の方を御用意ください。1ページ目に震災前,釜石東中学校で取り組んだ内容の概略を紹介してあります。詳しくは,同じ資料の8ページから,これは2014年のこの部会で紹介させていただいたときの資料になりますので,後で参考に御覧いただければと思います。
では1ページに戻っていただきまして,震災前に,自分の命は自分で守る,助けられる人から助ける人へ,防災文化の継承ということで,三つの狙いを定めて,いろいろ学習を組んだところです。正に教科,領域,特に防災の時間があるわけではありませんので,それらを結び付けてカリキュラムを組んだところです。
全校分のカリキュラムについては同じ資料の13ページに載っていますので,御参考に見ていただければと思います。
また1ページの方に戻っていただければと思います。発災時,中学校2年生だったわけですが,1年生のときに総合的な学習で,「てんでんこ」というテーマで,オリエンテーションであるとか,津波を体感する学習,フィールドワーク,そして最後は,それらを学習のまとめとして,劇や「てんでんこレンジャー」というDVDも作ったところです。総合以外では道徳や学活,あとは生徒会活動,全校でもオリエンテーション,避難訓練,防災ボランティーストという,地域のために自分たちができることを全校で取り組んだりしているところです。
2年生では,盛岡の宿泊研修のときに県の総合防災センターで学習をし,全校では避難訓練。また,宮古工業高校の生徒に来てもらい,津波模型の実演をしてもらったり,安否札を作って,これを1,000世帯分ぐらい配布したというのもやっているところです。
それらの具体的な内容につきましては2ページに写真等を入れて紹介してありますので,参考に御覧いただければと思います。
では,同じ資料の5ページをお開きください。時間も少ししかありませんので,1人だけ発災当時の様子について御紹介させていただきたいと思います。
この女の子は発災時,体育館でバスケットボールの練習を始めたところで,あの大きな地震があったわけですが,そのときに,もうこの体育館では危ないというのをすぐ判断して外に出た。外に出たときに,重いスクールかばんを持って避難している生徒に「下ろせ」という声も聞いた。そのときにそのとおりだと思った。それは,なぜそう思ったかというと,太字の部分ですが,様々な状況を想定して,津波の例えば速度を体感するような学習をしたときに,重いかばんを持って走ったら揺れて大変なんだということを友達とも話していた。やっぱり,そういった知恵が,このときに働いたんじゃないかと改めて思うということを言っておりました。
そして体育館からございしょの里というところに避難するわけですが,そのございしょの里でも大きな崖崩れが起きているということで,更に第二避難場所へ移動する。そういったときに,小学生も一緒でしたので,不安そうな小学生に手をつないで大丈夫だよというふうに声を掛けながら避難したり,今度は逃げた場所で過呼吸の子供がいれば介抱したり,そしてさらに,第二避難場所へ来たときには,もう本当に津波が押し寄せてきているという状況だったわけですが,その中に保育園の先生お一人が3人ぐらいの子供の手を引いて,本当大変そうな状況だったと。これはまずい,やばい,逃げ遅れるんじゃないか,自分もこれは助けに行かなければというふうに思ったと。そう思ったのが,学校で「助けられる人から助ける人へ」というのを学んでいて,自分自身,生徒会のリーダーでもあって,これは困っている人を助けなければという思いがあったと話していました。
そのときに,振り向いたときに,この距離であれば自分は戻っても大丈夫だと判断した。そう思えたのには,やはり学校で「てんでんこ」を学習していたということがあったと言っていました。
逆に,その子供を抱えて坂を上るときに,この坂は自分の力では無理だ。近くに知っているお父さんがいたので,お父さんにお願いしたと。
聞いている中で,「てんでんこ」で今は逃げるべきかどうなのかという判断があったという話がありました。
また,この子供は当時,防災ボランティーストなど様々な取組の中で,地域の「てんでんこ」という言葉を学習して,家族が心配なのに,なぜ戻ってはいけないんだということを深く疑問にも思い考えたと。よくよく考えて,一人一人が自分の命を守るためには,それぞれが逃げていかなきゃいけないということを改めて考えた。そして,この子は,家庭で家族会議を開いて,避難経路を確認して,「お願いだから,お父さん,お母さん,それぞれで逃げてほしい」ということを話したと。実際,今回の東日本大震災のときに,これが大いに役に立ったという話でした。
よく防災は,実際起きてみないと,どう行動できるか分からないから,評価が難しい,どういう学習をすればいいか難しいということも言われることがあるんですが,改めて,この震災を経験した彼らから,聞いて整理することで,どういうカリキュラムがいいのか,どういう学習内容,方法,そして評価をどうしていけばいいのかということが見えてくるんじゃないかと思い,今取り組んでいるところです。
具体的なところを,この後,小川委員から御説明させていただきます。
【小川委員】  それでは,引き続きまして小川から,聞き取り調査とアンケート調査の結果について御報告します。まだ11名の人からしか聞いていませんので,統計的な安定さを考えるならば,少なくとも20名は聞きたいと予定しております。今回は中間報告ですので,結果が変わる可能性があるということを御了解の上,話を聞いていただけたらと思います。
資料3の3ページ目になりますが,ここでこういう質問をしております。震災前に取り組んだ防災教育の内容について,印象に残っている学習は何ですかということを聞きました。この段階では,こちらの方では,先ほど森本先生からお話がありましたように,どういう教育を受けたかという資料は一切示しておりません。生徒さん自身が,当時のことを思い出して,印象に残っていることを言葉で表現していただきました。
思い出した内容についてはメモをとりまして,こういうふうに整理してみました。11名中10名とか8名とかいうふうに,人数が多いものを上に挙げております。
一番多く思い出された内容というのは,自分たちで作った映像教材,「てんでんこレンジャー」というDVD映像です。それから,ボランティア活動をしたこと,小学校時代に外部講演を聞いたこと,安否札を地域に配ったこと,津波の高さや速さを体験学習したこと,あるいはフィールドワークをやったことというように,主体的に積極的に関わった,アクティブに学んだことを非常に印象に残っているようで,そのことを強く覚えているということを報告してくださいました。
それから,これらの教育がなぜ印象に残ったのかということも併せて聞いてみました。お手元の資料の4ページを御覧ください。
当時の生徒が話してくれたことをメモ書きしまして,そのメモのキーワードを森本先生と一緒にKJ法を用いまして分類してみました。
大きく分けますと,課題意識を強く持ったということが挙げられます。実際,自分の目で見て歩いたことで津波の被害を想像したりとか,グループでマップを見ながら,津波がもしここで来たらどうするんだろうということを考えたりというふうに,自分自身と関わりのあることを今勉強しているんだということが意識に残って,こういった学習内容をよく覚えているということです。
それから,右側になりますが,学習の主体性があったということが,印象に残った理由として挙げられています。
例えば価値・目標の共有化のところにおきましては,「助けられる人から助ける人へ」ということを学んで,みんなで助かりたいと思ったことなどです。ここから自分の学習の主体性が出てきて,積極的に防災教育の学習に関わっていったということを話す人もいました。
それから,ここの意見は多かったのですが,自分で考えたことがやはり良かった,それが印象に残った原因だということを話していました。
学習経験がつながったということも印象に残る理由のようで,今まで学んできたこと,あるいは祖母や家族から聞いた話が,実際,学校で学んだことと結び付いて,それが印象に残ったということを言う人もいました。
三つ目の大きな枠組みは,真ん中になるのですが,やはり学外,地域,社会へ,自分たちが勉強してきたことを展開していった,発信していった,あるいは安否札を配って地域の人との関わりができたということが印象に残っているようです。
これらが印象に残った理由であります。
引き続きまして,質問のローマ数字3の12,資料の5ページになりますが,これは震災前に学んだ防災教育の内容について,大切だと思った学習は何ですかという質問内容です。
ほとんどの人が,やはり避難訓練は大事だということを話していました。ただ逃げるだけの訓練ではなくて,被害のことをイメージしながら逃げたとか,あるいは,もしけがする人がいたらどう逃げるのかとか,あるいは荷物を担いで逃げたら,どれだけ時間が掛かるかということを体験しながら逃げたというように,知識と実践を融合させながら行った訓練だったということです。それがとても大切で,自分たちが,実際津波が来たときに適切に逃げることができたことと結び付いているのだと話してくれました。
それから,やはり自分たちで考える,右側の枠になりますが,学習の主体性がある教育が大切だ,自分で考える教育が大切だということです。主体的に自分たちで活動する教育が大切だということを言ってくれました。
真ん中に,地域・家庭と一緒に学ぶことも大切だということも示しました。参観日に家族と一緒に学んだ,家族と一緒に考える機会があったということを話していました。実践的な内容であるということと,学習の主体性があるということが大切であり,その真ん中に地域・家庭との連携があると,それらがより強まっていくという構図が見えてきました。
さらに,なぜ大切かという質問に対しては,繰り返しにはなりますが,実践力が身に付く,生き抜く力が身に付くということで,実際自分たちはこういう教育を受けて助かったんだということがあり,この点を一番の理由として強く話してくれました。
課題意識,主体性,自分で考える教育が大切だということを生徒さん自身も,そう思っているようです。
それから地域との関係におきましては,共助という視点が示されており,みんなで助かることが大事だということであります。
あと,先生方が熱意をもって伝えることが大切であり,そのことで心に残るということを言う人もいました。
さて,その後,一通り話していただいた後,私たちの方から,実際どういうことを学んだのかというリストを提示しました。これは資料3の補足資料の3ページ,4ページに示されています。
こういうことを実際皆さん学んだのですよということで,私たちの方から,その資料を提示して,一つ一つ解説しました。この段階で,ああ,こんなことをやったなということを思い出していただきました。その上で,3段階で,これらに挙げた項目に対して,どれだけ印象に残っているかということを,それから同じ項目ですが,4ページ目は判断の仕方を少し変えまして,どれだけ大切かということを聞いております。
まず,どれだけ印象に残っているかという3段階評価で,印象に残っている割合の高いものから,ここにグラフに表しました。上位に来るほど強く印象に残っているということを意味します。
やはり,主体的に積極的にアクティブに学んだものが上位に挙げられています。これらは強く印象に残っていると。ボランティア活動や避難訓練は,非常に印象に残っているということです。
残念ながら,先生としては大切だということで伝えようとしたこと,例えば「語り伝えよ」という話を道徳の時間で行ったとか,あるいは「避難しない人の心理」という問題を学活の時間で行ったのですが,子供たちにはほとんど印象に残っておらず,こんなことしましたっけというような反応が返ってきております。このように残るものと残らないものの違いがありまして,その違いは学習の主体性ではないかと思った次第です。
次ですが,同じ項目について判断基準を変えて,大切さの程度を聞いてみました。そうしますと,避難訓練がやはり最も大切だと,ただ逃げる訓練ではなくて,様々なことを想定した避難訓練,より実践的な避難訓練が,やはり重要だということを回答してくれました。
ということで,上にある項目ほど,学ぶ価値というものを子供たちが理解して学んでいたということを示します。
これらをクロスしまして,横軸に大切だと思う,縦軸に印象に残るということで,横,縦に項目を分けてみました。中央値として,両方ともに3以上が付くものを黄色い背景で,右上のところに表しております。
これら右上の項目,背景が黄色の中にある項目は,とても大切だと思い,とても印象に残ったという内容です。ここに挙がっているものは,先ほどから申し上げていますように,主体的に学んだものであり,その学ぶ価値を共有したものということになります。
残念ながら,下にある,「語り伝えよ」とか,「避難しない人の心理」というのは,やはり主体性が足りなかったのか,課題意識を子供たちが持てなかったためか,印象に残らなかったようです。この点は,教育のやり方を工夫する必要があるかと思いました。
それから左の上に,美術で「津波避難の家」のステッカーをみんなで作ったということがあげられています。これは主体的に考えて印象には残っているのですが,子供たちからすると,なぜこれが必要なのかという疑問があったようで,学んだことの意味が実感できなかったということで,大切さという観点からすると評価が低いということになっています。
こんなふうに,先生が良かれと思ってやったことが,必ずしも子供たちがそのとおり受け入れてくれるわけではなく,子供たちには子供たちが受け入れる枠組みというものがあるなと思いました。指導者中心から学習者中心に教育を展開する必要があるのではと思った次第です。
最後まとめます。資料の10ページをお読みいただけたらと思います。
まず1番目ですが,なぜ主体的な学習が記憶に残るのかということを考えてみました。それは課題意識を持つ入り口は様々だということです。
みんなで助かりたいと思った,そのことが印象に残り,その後の学習を熱心に取り組んだという人もいれば,数字から津波の高さや速さを想像することで被害がイメージできて興味を持ったという人もいる。地域に役立ちたいということで関心を持って積極的に取り組んだ人もおり,課題意識を持つ入り口は様々であると。だから,主体的に子供たち自身に任せた教育を進めることによって,ある方向に向かって,自分独自の組み立て方で内面化していったのではないかと思います。
先生は,価値や目標だけは共有させ,助けられる人から助ける人へという目標を提示することで,その目標に向かって,生徒は独自の組み立て方で内面化していったのではないかと考えております。
それから2番目ですが,どのように評価するかという問題に関しましては,防災教育の場合,その効果を測定するのが非常に難しいです。実際に災害に直面したときに,その人が生き抜く力を発揮するかどうか,それで評価されるわけですが,このような評価の仕方は非現実的で実施不可能です。じゃあ,どうしたらいいのかということで考えてみました。
健康の領域では生活習慣や食生活から,それを評価することで将来の成人病の発症率を予測するように,防災教育,安全教育の場合も,学習のプロセスを評価すれば,その後,その人が将来生き抜く力を発揮できるのかどうかということを予測できないだろうかと考えた次第です。
今回のインタビュー調査でも,子供たちが印象に残ったという理由を挙げていきますと,やはり主体性であるとか,課題意識であるとか,家庭・地域の連携ということを,その理由に挙げていました。
であるならば,自分たちで考えて発表できたとか,自分の問題として意識できた,地域の中へ自分たちから関わることができたというように,学習のプロセスをこれまでの評価の視点に加えることで,比較的永続的な意識・態度が生徒の心に定着するのを予測できるのではないかと考えた次第です。
最後,どういうふうに防災教育のカリキュラムを作成していくかという問題ですが,学習経験がつながったとか,あるいは現実感,現実味ある防災教育であり避難訓練であったという意見が多かったことから,やはりカリキュラムを作る段階においては,そういった経験がつながっていくように,なおかつ,学習の主体性や課題意識が強く持てるように学習プロセスを有機的に組み込んだ防災教育のカリキュラムを作成し,それを評価していく。そういった防災教育のカリキュラム・マネジメントが求められているのではないかと考えた次第です。
以上でございます。
【小原部会長】  ありがとうございました。
それでは,ただいまの説明を受けて御質問等がございましたら,どなたでも結構ですので,御発言をお願いいたします。それでは中川委員,藤田委員の順番でお願いいたします。
【中川委員】  中川です。ありがとうございます。
私,この釜石がやっていただいた文科省の防災教育支援事業でお手伝いしていたので,本当にこの釜石の話は当事者として,すごく有り難いし,結果を出していただいたと思っております。
幾つかあるんですが,子供たち,これから含めて20人というときに,一つ,特に鵜住居地区の場合,保護者が亡くなっている方もいらっしゃるのかなと思いますので,話を伺う場合に,その辺のことの関連性を抑えておかなきゃいけないなと思っているのが1点。それから恐らくこの中に,裏にある話なんですが,今,カリキュラム・マネジメントということで,いろいろな教科の中に学校安全,防災の話を入れていこうという中で,釜石の場合のやった全ての教科の単元を取り上げて,その中で防災に関するテーマを入れるという工夫をしたわけですよね。私もいつも話の中で紹介しているネタで言うと,小学校2年生の算数の単元の長いものと長さの単位のところで,津波の高さを使って課題にするとか,4年生の国語の単元で,新聞記者になろうという単元のときに,津波に関する記事を例として用いるとか,何でもかんでも,そういうものにくっつけていくということをやってみて,時間不足を補っておられたというのは承知しています。
その辺のことは,子供たち,きっと,そんなん覚えていないと思うんですね。ある意味では。ただ,子供たちにとって,そういう当たり前のように津波とか災害の話がずっと入っていることによって,例えば中学校になって,てんでんこレンジャーみたいなものがすっと入ってくるとか,そういうものが,今の子供たちだったら,当時の小学生か中学生が来たときにどうだったかみたいな話が入ると,多分これから私たちがやっていかなきゃいけないカリキュラム・マネジメントの視点で,いろいろな教科の中にどう入っているかみたいなものが,どういうふうに成果が出たかみたいなものが見えてくるとうれしいなと思うんですけど,それについて何か手掛かりがもしありましたら教えてくださいというのが2点目です。
それと,同じような教育の実践の例として御紹介をさせていただきます。参考資料でお配りさせていただきましたが,気仙沼の階上中学校。この階上中学校も実はこのときに,震災前の文部科学省の防災教育支援事業で取り組んだモデル校だったんです。実はここの中学校は,震災の後,避難所になり,避難所になったときにOBたちがたくさん駆け付けて,みんなで活動していました。さらに,地震から2週間余りの時期に,避難所になっている体育館で卒業式をやったときに,答辞を読んだ当時の中学3年生の言葉が余りにすばらしい内容だったので,その年の文部科学白書にも全文が載っているような学校なんですね。
この間,内閣府が防災国民大会というのを初めてやったときに,気仙沼の子供たちが来て,今年の熊本地震の一番被害ひどかった益城町の婦人会長がたまたま来られて,パネルディスカッションで,私がコーディネーターをしたときのやりとりを紹介します。中学生の発表が余りにすばらしいので,「何であなたたちみたいに元気になれるの。あなたたち,5年前,小学生だったでしょう」という話をしたら,「私たち勉強してきたから,怖くなくなって,立ち向かえるようになった」みたいなことをおっしゃっていたので,ちょっと御紹介させていただきました。やはり,そういう教育の力はすばらしいなということを是非,釜石の子供たちの例で,うまく調査で出していただければと思います。
質問とコメントと,それから私の資料の紹介でした。以上です。
【森本准教授】  1点目の御質問の答えになりますが,保護者の方を亡くされている子供たちもおります。亡くされていなくても,やっぱり心に大きな傷を持っておりまして,私,3月まで県の教育委員会だったのですが,心のケアにつきましては,ずっと継続して,県でも,学校でも取り組んでいるところです。
この子供たちは今ちょうど二十歳になっておりますので,ある意味,高校を卒業すると,心のケアの対象から落ちてしまいますので,正直,非常に配慮しながらということを心掛けております。
私の場合,教え子になりますので,避難のときの様子や防災,震災前に取り組んだことを聞きたいんだけど,大丈夫と言ってくれる人はいないかなということで,子供たちがどんどんつないで紹介していただいて,今取り組んでいるところです。
ただ,小川委員と話を聞くんですが,こんなに体験を話したのは初めてですという子供さんも中にいて,場合によっては聞くことがケアにつながっている部分もあるかなというのを正直なところ感じながらやっておりました。
続いて2点目の教科でやっている部分とかと小・中の部分ですが,ちょうどこの子供たちは小学校でも,鵜住居小学校で取り組んでいる子供たちでしたので,小学校でも覚えていることと聞いたりしています。なかなか教科までは出てこないんですが。
ただ,ある子供は,あのときに漠然と学習していた知識が中学校でよりよく分かった。あっ,こういうことだったんだと分かったという子供さんもいますし,中学校でも教科でもやっていましたので,その辺りは,もうちょっと本格調査になったときに,更に検証できればなとは思っております。
【小川委員】  私の方から少し補足しますけれども。私も専門,心理学なので,子供たちの心の問題,少し気にはなって,今回慎重に調査をしていったんですけれども,やりながら感じたのは,先生との信頼関係,まずできているので,本当に素直にしゃべっていただくと。むしろやりながら,我々が話を聞くということに対して,すごく喜びというか,聞いてほしいという気持ちが伝わってきました。聞いた内容を私たちは今後の防災教育に役立てますので,どうぞ率直な意見を言ってくださいと言ったら,本当に喜んで話してくださって。中にはつらいこともあったんだろうけど,それは別に言わなくてもかまわないと。言える範囲内でかまわないので,おっしゃってくださいということで,非常に積極的に,むしろ話してくださったというのが非常に印象に残っております。
それからもう一つクロス的な部分なんですけれども。ほかの教科と絡めて,算数なら算数,数学なら数学を絡めて授業を組み立てていくんですけれども,これも,やっぱり人それぞれだなというのが今回分かりまして。ある子は数字をイメージして,床で縦に寝て,つなげて,これを立てたらどんな高さになるかと。そこにすごくこだわって,それが印象に残っている子もおれば,全くそのことをおっしゃらない子もいて,むしろ,みんなと助かりたいと私は思ったんです,だから積極的に関わったというふうに言う女の子もいて,それもまたすごく印象に残りました。あるいは,自分は積極的には学習に関わらなかったんですということを,最初におっしゃって,自分は,ただ書記係をやっていただけなんだと。だけども,ほかのお友達が,級友が,文化祭か何かで発表するのを見て,あっ,こんなことやっていたんだということで,改めて友達が発表するのを見て自分の中に取り込んだという子もいまして,その組み立て方は様々です。だから,主体的に学ぶ部分を少し要素を広げて,その余地を広げてあげる方が,子供たち自身が独自に組み立てていくんじゃないかなと思った次第です。
【中川委員】  ありがとうございます。多分これ,防災とか学校安全だけじゃなくて,教科書に書いてある話って一般解ですよね。それを,だから我が事に近いところへ課題を,例題を持っていくことによって,よりそれが我が事になって学びが,知識が入ってくるということが,多分その子たちは,きっと何も意識しないで,すっと入ってきているんだと思うんですけど。何かそういうのって,うまく比較してできるといいんですけど。釜石だけなので,比較がしにくいかもしれませんけど。
そうすると,今度の防災教育の中のカリキュラム・マネジメントの何か手掛かりにならないかなと思っていますので,是非期待したいと思います。ありがとうございました。
【小原部会長】  藤田委員,お願いします。
【藤田委員】  発表ありがとうございました。大阪教育大学,藤田です。本日発表いただいた内容で1点お伺い,確認させていただきたいことがあって質問させていただいたんですが。
私も安全教育を子供たちにやる中での教育の成果をどう評価していくのかという観点で,いわゆる子供たちが事象を受け止めて分析して,それを自分の中でどう消化して理解していくのかという心理学,小川委員の心理学の領域になりますが,いわゆるナラティブ分析のような観点が今後重要になってくるんじゃないのかなと思っています。
今日御発表いただいたデータの中で,印象に残っているとか大切に思っているという3段階の評価と,それと今回,子供たちの聞き取り調査の中で分析して出していただいた,なぜ大切だと思うのかとか,なぜ印象に残ったのかという課題意識とか実践力,この間で,逆に何か関連性。いわゆる子供たちが印象に残っているという傾向と,この子供たちのナラティブとの関係性で何か,もし知見があれば教えていただきたいと思います。要するに,高く評価している子供に,例えばここで出ている実践力の育成の中の「生き抜く」であるとか,みんなで共助とか,こういった評価と回答内容の傾向に何か特徴や違いがあったのかどうかということです。
【小川委員】  基本的には印象に残るものが,やっぱり大切だと思うようで,大切だからこそ印象に残ったという傾向はあります。ただ一部,食い違うものがありまして,自分たちは活動したんだけれども,これがなぜ大切なのかは分からないというのは恐らく,その学ぶ意味だとか学ぶ価値は理解されないまま進んでいったんじゃないかなというものもありました。それと,先生の思いと子供たちの学ぶ側のずれというのが感じた次第です。
そういうのもあるし,あるいは先生は一生懸命教えたんだけれども心に残っていないというのもありまして,これは恐らく習った分の分析をすれば分かってくると思うんですけれども,子供たちが組み立てていく,そのストーリーから外れてしまっている,あるいは結び付ける関連の働き掛けを先生がやらなかったということもありますね。必ずしも時間数の問題ではないし,単発かどうかも,また違うんですよね。
できれば単発は余り良くない。つなげていくような教育をすればいいんだけれども,必ずしも時間数とかいう問題でもないですね。ただ結び付くかどうかの働き掛けを考えながらカリキュラムを組む必要もあるのかなと思います。どうもありがとうございます。
【藤田委員】  ありがとうございました。
【小原部会長】  それでは,これまでのヒアリングを受けて意見交換を行います。意見,質問等がございましたら,どなたでも結構ですので,発言をお願いいたします。今村委員,どうぞ。
【今村委員】  いろいろ発表ありがとうございます。この防災教育,安全教育,非常に重要なんですけれども,恐らく学校側としては,最終的には学習の能力といいましょうか,やはり学ぶ力自体も上がるというのが非常に求められるところで,例えば現段階において,安全とかそういうのが通常の学習能力に結び付くという研究成果とか活動があるかどうか。もしあるとしたら御紹介をお願いします。なかなか難しいということであれば,どこが難しいのか,ちょっと教えていただければと思います。どなたにというのではないんですけれども。
恐らく学習能力というのは,それぞれの教科の知識になっておりますけれども,そこと今回のような安全を確保するための知識が結び付くかどうかというところが将来の大切なところかなと思うんですけれども。
【小原部会長】  それに関係するデータが,今回の森本委員の資料になかったですか。
【森本准教授】  分かる範囲でお答えします。実は自分は中学校教員でしたので,教科の中で,正に教科の目標があって,知識や技能を習得していくわけですが,今回改めて子供たちから聞いていて,それが,先ほど小川委員からありましたが,実際に,例えば避難訓練であるとか,そういうときに結び付くということは,教師がどういう指導をしているかという,ここが非常に大きなポイントになってくるのかなと思いました。
ただ,それぞれが単発でやってしまうと,子供たちの中ではばらばらの知識になっているわけですが。それが例えば避難訓練とか,それは交通安全も防犯も同じだと思うんですが,例えば特別活動,学級活動で事前指導するときに,きちっと子供たちの中の,そういった習得したものをちょっと触れながら,想起させながらやっているかというのが,子供たちの中で自分のストーリーとしてきちっと落ちていくかどうかというところを教師側がどれだけできるか。そこが今度のカリキュラム・マネジメントに大きく関わってくる部分じゃないかなと思って。済みません,十分な答えになっていません。
【小原部会長】  今村委員,よろしいですか。
【今村委員】  はい。
【小原部会長】  是非,清水委員,お願いいたします。
【清水委員】  的外れな話になるかもしれません。お許しいただいて。1996年にユネスコが,21世紀の教育はこうあるべきだという四つの柱を全世界に向けて発信しました。全部 ”Learning to” で始まるんですけれども, ”Learning to know” ,知る,ですね。それから ”Learning to do”,どう行動するか。それから3番目が “Learning to live together” ,ともに生きるということ。surviveではなくlive together。そして最後に ”Learning to be” ,人としてどうあるべきかを学ぶという四つの柱を出しました。日本では,1996年に中教審の答申があって,「生きる力」というのをちょうど出した年でございました。ニュースではこの日本の「生きる力」の方が盛んに話題になりましたが,ユネスコから出されたものは余りにぎわわなかったような感じがいたします。
本校は女子校で,集団の中で生きるということを相当強調しておりますので,この「ともに生きる」ということがキーになっております。またこの会での議論でもこの「ともに生きる」がベースになっているように感じます。単に自分さえ生き抜けばよいということではなく,「ともに生きる」ため,学んだことをどう ”to do” し,そして自分の生き方として,どう “to be” であるかをいつも考えるんだよということを教師が発信し続けると,この防災系の教育も,キャリア教育も全部つながっていくのではないかと思います。
これは中・高を想定した話なので,小学校レベルではそうじゃないかもしれませんが,中・高の段階では,底辺がそこにあるような気がしております。底流を流れる共通性を持った上で,いわゆる学びとこの防災教育は連動しているのだという意識を,教員側がちゃんと持って指導していかなければいけないのではないかなと思っています。今村委員のお話を伺っていて,そんなふうに思いました。
【小原部会長】  中川委員,お願いいたします。
【中川委員】  今も出てきたカリキュラム・マネジメントの話を少しお伺いしたいところがあるんですが。特に,この資料1-3の20ページ,21ページ辺りに書いてあることなんですけれども。先ほどの釜石の話に戻る感じもあるんですが。
いわば教科等横断的にいろいろなことをやったこと,いろいろな教科の中で防災に関わる,少しネタを仕込んだみたいな私,イメージでいるんですが,それができたことは一つの,総合でやったとか,防災でやったというところを支えたものではないかと私は理解をしていて,それのときに,実は各教科で小学校や中学校の先生が集まってワーキンググループを作って,それで,たしか各教科で何をやるかということを決めて,それで取り組んでいただいたという,正にカリキュラム・マネジメントをやっていただいた実践の事例だと私は理解をしています。
その中で,ダイレクトに防災だと完全だということを言うのか。1メートルを,先ほど津波の高さを3メートルという津波の高さにしたわけですが,一方で,例えば農業を大事にしたいという食育とか考えるような地域だと,その1メートルを,全然あれですけど,例えばネギの高さとか何でもいいんですけど,そういう自分たちの身近にあるものに課題に振り替えていくような。教育というものを単に,山は全て富士山で,川は全て利根川とかではなくて,自分たちの身近にあるようなものを使いながら問題を取り組んでいくとかいうものにしていくようなことをやれと言っているのは多分,今回の大きな方向なのかなと思うんですが,そんな中に多分,防災なんかが自然に入ってくれば,先ほど私が冒頭にお伺いした,そもそもどういう場所に住んでいるのかというような話の深い理解みたいなものが入っていく。それは日本国土というよりも,自分たちの地域みたいなものになっていくということが多分,そのカリキュラム・マネジメントできっと出来上がってくるのかなと理解をしているんですが,そういうビジョンで良いのかどうかという確認と,21ページなんかに書いてありますけど,実際に釜石でも学校だけじゃなくて,いろいろな方がお手伝いいただいたりとか,あと自分の先生が一人でやるんじゃなくて,同じ教科のグループで議論したことだとか,必要な人的資源,物的資源を,地域と外部の資源含めて一緒に活用していくというのは,正にカリキュラム・マネジメントもオープンスクール,コミュニティ・スクールみたいなこととずっと絡んでくるんだと思うんですけど。その真ん中で,どういう資源が生かせるのかという話なんかは,例えば学校の先生からすると,そう見えないと思うんですけど。ただ町内会とかだけじゃなくて,先ほどもちょっと出てきましたけど,地方気象台であるとか,もちろん大学だとか,いろいろな資源があるわけですが,そんなものも,この学校安全側からは,こんな資源が使えますよなんていうことは,もう一度ブラッシュアップして,最終的に示していく必要があるのかなと思っているんですが,そんなものまで見えてくるような形が,我々のところからアウトプットしていくことになるのかどうか。その辺も,ちょっとお伺いできればと思います。
【小原部会長】  それでは尾上委員,お願いします。
【尾上委員】  尾上です。まずお話をお伺いしまして,保護者とともに,学校の中で子供が学習することが,一番広がっていくイメージが付くというのが感想であります。
保護者に伝えるだけではなく理解をしているかどうかの確認はということからしますと,伝えることはすぐ,子供から伝えるとは思うのですが,それを釜石さんのように理解した状態で,自分で逃げなければいけないというレベルまで,どうやったら達成するのかという,そのやり方を保護者の立場としても,しっかり,家庭学習等を通して,この防災に関しては特に理解するまでに至るような流れにならないかというように思います。
それと,地域の方に目を移しますと,民生委員が安否札を配るような役割を担っているという事例から,例えば自治会がそのことに関してどういった構造になっているのかということを私の地域でいいますと,新しく住人になられた方には自治会の資料等を配付します。ごみの回収表は配られますが,避難する場所であったり,防災に関するものは一つも配られないのが現状であります。子供のある家庭では,どんどん,その地域での防災意識は高まってくるのですが,それ以外の方に関しては,自治会との動きが一緒に加速していかない限りは,その機運は広がってこないというのが,お話をお伺いしてきた中でのイメージであります。
広げていくことは難しいかもしれませんが,その意識をどんどん広げ,学校教育で学習した子供からの発信が地域に広がってくるという流れを作るには,我々保護者もそうですが,地域への伝え方をしっかり地域の中で勉強する機会を持つ必要があるということだと思います。この流れをうまく活用しない限り,また起こってしまったときには,勉強不足だったというような感想にならないように,釜石さんのこういった事例をどんどん進めていく人が要るかということでは,私たちの役割,保護者としての役割も,これから大きく変わってくると思いますし,この学習をした子供が大人になったときに,防災意識が広がるということより,今,手を打たなければいけないところは,すぐにでも,そういった展開ができるかというようなことも考えていただけたらと思います。
以上です。
【小原部会長】  それでは次,佐々木委員にお願いいたします。
【佐々木委員】  森本先生,小川委員,ありがとうございました。私も釜石東中学校に震災後に子供たちのヒアリングに行きまして,その子供たちのことが思い浮かびました。
この調査の中で幾つかキーワードがあるなということを改めて実感しました。それは,子供たちが避難訓練を意識している,大事だと思っていることなのですが,なぜ,この避難訓練が大事と思ったのかなと考えてみますと,彼らは防災教育と訓練が相まって現実味が増しているのだと。先生は「こういう教育を受けて自分は助かったのだ」と言っていますが,それが大きかったと思います。実感を伴ったともおっしゃっていて,その実感というのは物すごく大事だなと。その実感が,もう一つは学んだことの意味を実感できるということにもつながる,つまり教師が子供たちに何を学ばせるのかという,この学びが何につながっていくかということを,やはり抑える必要があるのかなということ。それから防災訓練というのは,学校の中で年に数回,必ずありますね。でも,理科で学ぶこととか社会で学ぶことは,学年を通して,その時期でしか学べない。でも,防災訓練は年に2回あるということですから,その学びを引き起こせるチャンスは2回あるということになるわけですね。
この学習経験を反復するところに,そういう学びを,時間を伴えるような学びの工夫というか,私たち教師側の工夫が必要なのかなということ。あともう一つは,やっぱり地域とのつながりというか,人とのつながりが必要ではないかなと思いました。
釜石の子供たちのところに,震災の後に伺ったとき,今自分たちは被災したお年寄りの家を回っていて,そういう人たちの話を聞いてあげるボランティアをしていると言っていたのが,とても印象に残っています。それだけで終わるのではなくて,つなげていって,そして人を大事にして,その人の話を聞くという。それが子供たちにとっては,すごく身近な人間ではなく,すごく年上のおばあちゃんであったり,おじいちゃんであったりしていたということから,よく教訓伝承と言いますが,そういう人とのつながりも,大事なキーワードだったんだなということを改めて実感いたしました。ということをお話ししたくて意見を申し上げました。
以上です。
【小原部会長】  渡邉委員,お願いいたします。
【渡邉副部会長】  先ほど森本先生のお話を伺って,やっぱり釜石東中学校の生徒の皆さんが,すごくすばらしい行動をとったということで注目されることが多かったと思います。その背景には,学校,先生方の努力という,優れた指導もあったということがよく分かりますし,やはり,それが背景にあってこその防災教育,安全教育なんだと思います。
日本中にそういう優れた防災教育,安全教育の実践というのはあるわけですけれど,私も防災教育チャレンジプランの審査をやったときに,ある学校がとてもすばらしい活動をして,別の年に他の学校が同様の優れた実践を報告したことがあったのですが,実は同じ校長先生だったなんていうこともありました。結局,一部の優れた指導者がいなければできないものになってしまいがちじゃないかというところもあるわけです。でも,安全教育は,どこの学校でもできないといけませんし,かといって,今のその状況では,教育現場の全ての先生方の力量が高いとは言えず,教員養成の段階でも十分な教育がされているわけでもない。まして安全教育が一つの教科でもないような状況の中で,どうやって教員の力量を高めていくかということは,この学校安全部会でもずっと以前から,どうしたらいいかという議論をしてきたわけなんですね。
対策の一つは先生方の研修を増やしたり,教員養成系で安全教育をしっかり教育したりということも必要なんでしょうけれど,ここ何年かチーム学校ということで,外部の人材をどんどん入れていくということもあって,防災教育では既にそういうことを積極的にやっていたと思うんです。今日のお話の中でも地域資源の活用というのが出ていましたので,それはどんどんやっていくべきですし,それは防災だけじゃなくて,防犯なども可能だと思います。
また更に広げていきますと,例えば企業などもCSRとして安全教育の取組を積極的にやっているところもあるかと思うんですけど,なかなかそういった情報というのも広まってこない部分もあるかと思うんですね。ですから,そういう資源の開発と,それらの周知が学校教育を充実させていく上で,すごく役に立つと思います。
安全教育全てを先生方にお願いするというと,さすがに負担が大きくなってしまいます。もちろん先生方も,努力していただく部分はあると思いますけれど,そこをサポートするような仕組みといいますか,使える資源をどんどん使っていこうということが必要だと思います。
それがまた,子供たちが地域を知る一つのきっかけになるかと思いますし,例えばキャリア教育にもつながってくるなんていうこともあるかもしれません。このような環境づくりにも目を向けていけたらいいと思いました。
以上です。
【小原部会長】  それでは野津委員,お願いします。
【野津委員】  今日の御説明で,これまでに有効な実践事例の開発とか,効果的な指導資料作成といったものの蓄積ができてきたということは,よく分かりました。また,今後に向けてカリキュラム・マネジメント,アクティブ・ラーニングなどの考え方に基づいて安全教育が推進されていくということに大いに期待しております。
そうした中で非常に気掛かりなことが,教師の安全教育に対する指導意欲ということに関してでございます。カリキュラム・マネジメントという考え方の下で安全教育の推進が追い風を受けると思いますが,ほかにもいろいろなテーマの教育を,カリキュラム・マネジメントという枠といいますか,考え方でそれぞれ実践していくことになります。そうするとどうしても,それを実際に行う教師の指導意欲ということが,やっぱり非常に関わってくる。この部会の中においては,非常に安全教育に関心があって意欲的な方ばかりであるわけですが,関心や意欲が低い地域,低い学校,低い先生方への手立てということを,もう少し丁寧に考えていく必要があるのではないか。
明らかにこれについては地域差があると思うんですね。データとして,教師の安全教育への指導意欲の格差といいますか,地域差,学校差,あるいは実態の把握というのはしておくべきではないか。そういう把握の下に意欲を高めていく具体的な手立てを考えていくということを重視していく必要があると思います。
今,渡邉委員も正に言われたのですが,チーム学校という考え方で,そうした活動の中で教師自身が意欲を高めていくことが考えられます。また,教職課程の中で学校安全というものを位置付けていくことも考えられていくわけですが,教職課程のところは少し時間が掛かります。教員養成を受けて,そして現職の教員として採用されて1年目といったときに,学校において学校安全の意識,あるいは重視する雰囲気がなかったりすると,そうした学びなどはうせてしまう。
今日は具体的な対策についてということですので,例えばですけど,今,避難訓練という名の下に,少ないところですと年1回とか2回。数回やっているところも出てきているというんですが,もっと安全全体としていろいろな題材で,例えば月1回,教職員は安全訓練を行うというのはどうか。
防災といっても,風水害もあれば,地震も津波もあれば,いろいろなものがあるわけで,そういった題材を変えることで訓練を実施する。また実際のリアルな形で,予告せずにやる避難訓練のタイプもあれば,防火に対して実際に実習でやってみる訓練もあり,いろいろなバリエーションも考えられます。月1回,教職員にはそうした安全訓練を繰り返してやり,学校における安全対策が常に重要だということを植え付けていくことが,生徒への安全教育の指導意欲を高めることにつながるのではないか。
いずれにしても,児童生徒も含めて,もう少し避難訓練,安全訓練ということを強力に推奨するようなスタンスを持ってはどうかと思います。
それからもう一つは,教科等横断的な安全教育をしたときの評価です。評価についてしっかり手立てができていますと,実践も推進されるのではないか。教科ごとでの安全教育を含んだ評価は,それはそれで各教科で行うはずですが,教科等横断的に安全教育をやったところでの全体としての評価の仕組み,手立ても考える必要があるのではないか。
まだまだ慎重に議論する必要はあると思うんですが,新たにもう一つ進める,詰める具体的なものを考えて示していくことが必要だということで述べさせていただきました。
以上です。
【小原部会長】  それでは太古委員,お願いします。
【太古委員】  失礼いたします。今,私の勤める高等学校で,実際に,教科・科目の指導内容の中に,この安全教育を意識して指導していくためにはどのようにしたら良いのか。高等学校は教科指導が主になってきますので,大分意識付けが必要であるなということを感じました。そして,意識付けをした上で,教科間の連携が要るのかなということを特に感じました。学校の分掌なり組織の中に安全教育の内容を取りまとめることが必要になると思います。もちろん安全・安心は生徒,職員が学校生活をおくる上で一番の基本であるので,そういうアプローチが要ると思いました。
もう一つ,小川委員,森本先生が大切であるとおっしゃった「印象に残る主体的な学習」ということですが,本校でも,避難訓練をきちんとやっております。環境防災があるなしに関わらず,東日本大震災の後,大きく意識が変わっていることを感じます。本校では850人ほどが在籍していますが,生徒は5分ぐらいで集合します。避難訓練の実施に当たっては,「練習でやったこと以上のことは本番ではできない。真面目に一生懸命,避難訓練をやろう。」と職員が指導します。多くの高等学校が,真面目に避難訓練を実施していますが,これからも効果的な避難訓練を一生懸命やっていきたい,今日のお話をお聞きしまして,改めて避難訓練は大事だと思っています。
【小原部会長】  次,五十嵐委員,お願いします。
【五十嵐委員】  ありがとうございます。小川委員,森本先生の御発表にあったように,実は本校も最初,釜石から学びました。釜石の震災の前からいろいろ取り組まれていることを,とても勉強させていただきました。実際に大人に影響を与えるんだという言葉が印象的で,子供から大人を変えるんだということを私たちも目指しています。
先ほど今村委員が安全に対してどのような子供の変容がといったときに,ずっと考えていたんですが,例えば最近,本当に気象がとても変動しやすくて,大雨が急に降ったりします。つい先日も大雨が,いきなりすごい雨が降ったとき,下校中にあった3年生の子供が,近くのクリーニング屋さんに入って雨宿りをしたんです。そのときに近くにいた低学年の子供と一緒に入ったんです。知らない子供だったらしいんですけど。そして,そこの方に連絡をとっていただいてと,そういう対応をとったというんです。「あっ,すごいね。その学校よくやっていますね」と言われたんですけれども,そんなことであるとか,あるいは危機発生時訓練,本校ではやっています。ちっちゃな地震,結構ありますよね。あっと揺れたときに,校長室の上でがたがたって,すごい音がするんです。みんな子供たちが,さっと安全姿勢をとっている。
それで,危機発生時対応訓練のときには,音を出したり,いろいろな状況や設定を変えるんですけれども,本当に子供の方が,しっかりと休み時間なんかでも,きちっと行動とれていてできるということ。それから,いろいろな朝,登校時に何か台風が来そうだなとか,そういうときに,今まででしたら学校休みなのかどうなのか,学校で連絡待ちの保護者が多かったです。ですので,丁寧に丁寧に学校,前もってお便りを出したりしていましたが,本校では登校時に警報が出ていたら見合わせるということを筋を通して,やたらとメール配信なんかはしていません。子供たちの方が,それについて,低学年でも情報をとるようになって,今日はどうだろうということを話せるようになったということも聞いていますので,やっぱり,これは日頃,そういう危機発生時対応訓練もそうなんですけれども,よく2年生なり,5年生なり,6年生なりに地図を与えて,大雨が降ったとき,どういうふうに帰るかとか,どう避難するかというような,こんなときどうすると,そういう共同学習をよくやっていますので,これは教科の枠を超えています。理科的な発想もあれば社会科的な発想もありますので,そういった学びの成果というのが徐々に付いてきているのではないかなと思っています。
ですので,本校でやっているように,いつ,どんなときでも,ちゃんと判断して行動できるようにするということで,各教科も,今日は国語のこれをやるという内容達成ではなくて,結局,算数であれば数学的な見方や考え方,理科であれば科学的な見方や考え方,そういうものが統合して,いざというときに生きて働く,そういう力になると思いますので,教科の枠にとらわれないで,教科の中で学習したいことは教科書のこれを教えるのではなくて,力を付けるんだというふうに少し発想を転換して学び方も工夫し始めているところが今日出ているのではないかと考えたいなと思っています。
ですので,本当に防災は,これからの日本に住む以上,絶対に学ばなければいけないと私は真に思っていますので,そのためには教科にするしかないんです。きちんと学ぶ時間を設定しないと,幾ら工夫しても限界があるので,時数も限りがあります。なので,次期学習指導要領には絶対その時間を確保したいなと本当に思っているわけですので,まずはできることは,次の学習指導要領に,どういう資質・能力を培うかというところを大事にして教科を結び付ける。その努力を学校はしなければいけないと思いますし,そのためには,とにかく地域から学ぶのが第一ですから,地域の自然もリスクも併せて見る。それは低学年の生活科から,地域を歩くことから始まりますので,そういう目線に立って,地域とつなげて,地域のお年寄りには,過去こんな災害があったということを知っている方もかなりいらっしゃいますので,そういう地域の人材を学校がつなげていくこと。それから,やっぱり専門家もたくさんいらっしゃって,いろいろな専門のサイトからもたくさんの教材がありますので,そういう情報をうまく結び付けるということ。そのような結びをしていって,実際に子供たちに,いざというときの力を付けていく,そういう努力が必要じゃないかなと思います。
でも,本当この先の教科化を目指して,皆さんで真剣に検討していきたいなというのが私の本音です。
以上です。
【小原部会長】  それでは桶田委員,お願いします。
【桶田委員】  貴重な御発表ありがとうございました。幼稚園でも東京都の公立幼少中は,毎月避難訓練をやっていますので,避難訓練が大切ということをはっきり言っていただけてうれしく思います。幼稚園でやっていることもきっと,記憶としてはないかもしれないけれども,何かしらつながっていくんだなという自信を持つことができました。
先ほど避難訓練の回数の話になりましたが,東京都は月に1回,それから安全指導ということで交通安全,生活安全も月1回ということで決まって,もう私の新卒より前からずっとつながっていますので,それも繰り返し,そういう教育ができることが有り難いなと思いつつ,10回,12回あると,やはり,だんだんマンネリ化していくので,それこそ教師の指導力がないと積み上がっていかないという意味では,先ほどのポイントを抑えてということも確かにそうだなと思いました。
それから,もう一つです。今,学習指導要領の改訂に向けて教科等横断的というお話があります。教科のない幼稚園は,関係ないように言われてしまいますが,幼稚園には5領域というのがあって,領域「健康」の中に安全のことが入っています。そうすると,防災教育関係の資料が出るときに,幼稚園は領域「健康」の内容しか出ません。でも,今いろいろなお話があったように,例えば領域「人間関係」では,人との関わりで自分や人を大切にするということも幼稚園でやっていますが,それも防災につながります。それから領域「言葉」では,先生の話をしっかり聞く,自分の思いをちゃんと相手に伝えるということがある。いろいろな領域の中に防災のことが入っていますよということを幼児教育に携わる人に伝えることで,安全教育への意識が違ってくる,教師の指導力・資質向上につながると思います。
【小原部会長】  最後になりますけれども,遠藤委員,お願いします。
【遠藤委員】  宮城県でも防災教育の推進協力校ということで,カリキュラムのモデル実践については,二十数校でやっております。その中で,各学校が取り組んでいる,共通した先生方の取組としては,子供たちにどういう力を身に付けさせたいかというところが,各協力校の中ではしっかりと議論されております。
そういったところが全ての学校に広がっていくといいかなと思っておりまして,県としても,そういう協力校の取組を県内にしっかりと広めていかなくちゃならないというところで考えておりましたので,今後についても,そういった取組の普及については,やっていく必要があるかなと思っております。
以上です。
【小原部会長】  ありがとうございました。本日は,この辺りにいたします。
なお,追加で御意見のある場合は,10月7日,金曜日まで,事務局の方にメール又はファクスで御連絡いただければと思います。
最後に,次回以降の予定について,事務局からお願いいたします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  次回以降の日程につきまして,資料5を御覧ください。第5回,次回は10月17日の月曜日,15時から17時を予定してございます。場所は3F2特別会議室の,ここと同じ場所でございます。
次回は教職員の資質・能力や,また校内体制,組織体制の関係についてヒアリングについて,また御議論いただければと考えております。
以上でございます。
【小原部会長】  それでは,本日予定した議事は全て終了いたしましたので,これで閉会いたします。どうもありがとうございました。

お問合せ先

初等中等教育局健康教育・食育課防災教育係

(初等中等教育局健康教育・食育課)