小学校部会におけるこれまでの議論のとりまとめ 補足資料

小学校における外国語教育の改善・充実については、第二期教育振興基本計画等(※1)を踏まえ、文部科学省に設置された「英語教育の在り方に関する有識者会議」報告(平成26年9月)(※2)において提言がまとめられ、諮問においても、同報告の提言を踏まえつつ検討を行うことが求められているところである。
これらを前提に、今後の方向性を踏まえた取組も含め、これまでの英語教育の成果・課題や今後検討すべき小学校教育を中心とした課題を整理するとすれば、以下のとおりである。

(1)小学校中学年における外国語活動と、高学年における教科化の必要性について

○ 前回改訂において、中学校における四技能を通じた学習の素地(そじ)として、「聞く」「話す」の二技能を中心に小学校段階でコミュニケーション能力の素地(そじ)を養うため、「外国語活動」(年間35単位時間)が創設された。

○ その後の「外国語活動」の充実により、児童の高い学習意欲、小学校で外国語活動を経験した中学生の成果や変容、指導に当たる教員の肯定的な捉え方といった成果とともに、教育課程の特例を活用して小学校低学年・中学年から外国語活動を取り入れることにより、中学校とのカリキュラム上の接続を意識した先進的な事例の成果が得られるなど、外国語活動を通じた学習の成果(※3)が認められる。

○ 一方で、児童の「読む」「書く」も含めた更なる言語活動への知的欲求が高まっている状況にある。例えば、中学生一年生の8割が、外国語活動で「英単語・英文を読む」「英単語・英文を書く」ことをもっとしておきたかったと回答(※4)するなど、(1)小学校の外国語活動において音声中心で学んだことが、中学校での段階で音声から文字への学習に円滑に接続されていないこと、(2)国語と英語の音声(※5)の違いや英語の発音と綴(つづ)りの関係の学習、文構造の学習において課題があること、(3)高学年は、児童の抽象的な思考力が高まる段階であり体系的な学習が求められることなどが課題として指摘されている。

○ こうした課題に対応するためには、現行の成果も踏まえつつ、中学年から外国語活動を通じて外国語に慣れ親しみ、「聞く」「話す」の二技能を中心に外国語学習への動機付けを高めた上で、高学年から発達段階に応じて四技能を総合的・系統的に扱う教科学習が必要である。

○ また、教科として系統的に学ぶことにより学習内容の定着を図る英語教育の充実は、言語能力を向上させ、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成や、国語を学ぶことに対する関心の向上にも大きな効果がある。

〇 言語能力の向上に関する議論を踏まえつつ、外国語教育としては、他者とのコミュニケーション(対話や議論等)の基盤を形成する側面を、資質・能力全体を貫く軸として重視しつつ、他の側面(創造的思考(とそれを支える論理的思考)、感性・情緒等)からも育成すべき資質・能力が明確となるよう整理することを通じて、外国語教育を更に改善・充実(※6)することが必要である。

○ このため、各学校段階を通して言語や文化に対する理解を深め、他者を尊重し、聞き手・読み手・話し手・書き手に配慮しながら、外国語でコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図る。あわせて、身近な話題から幅広い話題について理解したり、情報や考えなどを伝え合ったりすることができる能力を養うため、小学校段階では、相手意識を持って外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度の育成などを掲げつつ、目標、指導内容、学習・指導方法、学習過程、学習評価等の在り方について検討する。

(2)指導内容と、指導のために必要となる時数について

○ 小学校教育では、義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すことが目的となる。小学校段階の学びを、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、教科ごとのより高い指導の専門性が確保されている中学校、高等学校段階までの一貫した学びに円滑に接続させることにより、更なる英語教育の質向上を図る。このため、小・中・高等学校を通じて、英語の基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、次代を担うために必要な四技能を総合的に活用して思考・判断・表現する力を将来的に育むのに必要な主体的に学習に取り組む態度を養成していくことが重要である。

○ 次期改訂では、各学校段階の学びを円滑に接続させるため、小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力を、前述の三つの側面を踏まえつつ、「英語を使って何ができるようになるか」という観点から、国として小・中・高一貫した指標を設定(※7)、学習・指導方法、評価方法を改善することが必要である。

○ 小学校における改善の方向として、これまでの成果・課題を踏まえ、今後の小学校中学年における「外国語活動」の導入と、高学年でのより系統性を持たせた体系的な指導を想定し、次のような目標・内容の改善を図る。

(小学校高学年)

○ 小学校高学年においては、これまでの成果・課題を踏まえ、
・教科としての外国語教育のうち基礎的なものとして、中学年からの高学年及び中学校への学びの連続性を持たせながら、これまでの体験的な「聞くこと」「話すこと」に加え、「読むこと」「書くこと」の四技能を扱う言語活動を通じて、より系統性を持たせた指導(教科型)を行う。その際、外国語の基本的な表現に関わって聞くことや話すことなどのコミュニケーション能力の基礎を養う体系的な指導を行う教科として位置付ける。

・教科として位置付ける際、単に中学校で学ぶ内容を小学校高学年に前倒しするのではなく、身近なことに関する基本的な表現による四技能の豊かな言語活動を行うため、発達段階に応じた「読むこと」、「書くこと」に慣れ親しみ、積極的に英語を読もうとしたり書こうとしたりする態度の育成を含めた初歩的な運用能力を養うことが考えられる。
(例)馴染(なじ)みのある定型表現を使って、自分の好きなものや家族、一日の生活などについて、友達に質問したり、質問に答えたりすることができる。

・言語能力向上の観点も含め、文構造など言葉の規則性に関する気付きを意図的に促す指導や、文字の認識、単語への慣れ親しみも加えることで、発達段階に応じて、知的好奇心に応えるものとする。例えば、
【1】アルファベットの文字や単語などの認識
【2】国語と英語の音声の違いやそれぞれの特徴への気付き
【3】語順の違いなど文構造への気付き
等を促す指導を行う。

・国語教育をはじめ他教科等と関連付けた学習内容や言語活動を設定することにより、思考力・判断力・表現力や主体的に学習する態度を身に付けることも重視する。

(小学校中学年)

○ 小学校中学年においては、これまでの成果・課題を踏まえ、
・外国語学習への動機付けを高めるため、体験的に「聞くこと」「話すこと」を中心とした外国語活動を通じて、発達段階に適した形で、言語や文化について体験的に理解したり、音声等へ慣れ親しんだりする。

・このため、中学年では、言語や文化についての体験的理解や、外国語の音声等への慣れ親しみ、コミュニケーションへの積極性を中心とする「外国語活動」(活動型)を行い、コミュニケーション能力の素地(そじ)を養うこととする。

・指導内容・方法や活動の設定、デジタル教材を含めた教材の工夫、他教科等で児童が学習したことを活用するなどの工夫により、指導の効果を高めることが必要である。

○ このような方向性を目指し、小学校高学年において「聞くこと」「話すこと」の活動に加え、「読むこと」「書くこと」を含めた四技能を扱う言語活動を展開し定着を図り、教科として系統的な指導を行うためには、年間70単位時間程度の時数が必要である 。また、中学年における外国語活動については、従来の外国語活動と同様に年間35単位時間程度の時数が必要である。

○ 上記の方向性を踏まえた改善・充実を図るため、小学校教員の理解・共有を図る観点から、第5、6学年における年間70単位時間分の系統的な教科、及び第3、4学年における年間35単位時間分の学習内容についても、具体的なイメージ(※9)を共有しながら検討する。

(短時間学習等の活用など、柔軟なカリキュラム設定に関する考え方)

○ これまでの成果・課題を踏まえつつ、教育課程全体の枠組みの状況(※10)を考慮すると、小学校高学年において年間35単位時間増となる時数を確保するためには、ICT等も活用しながら10~15分程度の短い時間を単位として繰り返し教科指導を行う短時間学習(帯学習、モジュール学習。以下「短時間学習」という。)(※11)を含めた柔軟なカリキュラム設定の在り方と必要なカリキュラム・マネジメントを検討する必要がある。

○ 弾力的な授業時間の設定に関する研究開発学校等の先行的な取組状況や全国的な教育課程実施状況調査(平成26年度実績)などの、これまでの成果・課題等を踏まえ、次のような観点からの検討が必要である。
・ 短時間学習では、目的に応じてその時間に集中して、テンポ良く、効率的に繰り返し学習することを通じて効果が得られるというメリットがある。一方で、準備に過度な負担がかからないようにするための方法等について十分検討することが必要である。

・ 現在、英語教育の短時間学習を実施する小学校は少ないが、研究開発学校等の中で、短時間学習を通じて一定の効果を上げている学校もある。一方で、アルファベットや英単語を、場面設定をせずに単に繰り返し書く活動を行った場合、児童の意欲が低下するなどの報告もある。短時間学習を行う場合は、系統性を確保し、その効果を一層高めるため、教育課程における位置づけの明確化を図り、45分授業との一体的な指導計画に基づいて実施すべきである。

・ 従来は、短時間学習を授業時間外の扱いとし、授業内容との直接的な関係性を教育課程に位置付けていないことが多かったが、今後、外国語の特性を踏まえた指導内容のまとまりや教育効果を高める観点から、短時間学習を行う場合には、学習指導要領上の標準授業時数内で、その時間を年間授業時数に含め、その目標を明確にし、まとまりのある授業時間との関連性を確保した上で実施することが必要である。

・ 短時間学習を効果的に位置付けるため、その目的・実施のねらい、中心となる45分授業とそれを補完する短時間学習との関係性を明確にしたカリキュラムや、両者における指導の順序性などを明確にしていくことが必要である。

・ 前述の全国の小・中学校における短時間学習の状況の調査結果によると、算数、国語の学力向上を目的とする計算ドリルや読書活動など、授業時数内外で様々な教科も含めた取組が行われており、実施状況は様々であるため、全ての小学校において、外国語に特化した短時間学習を一律に行うことは困難な状況にある。このため、年間70単位時間における一定の短時間学習の在り方を横並びで求めるのでなく、ある場合には45分授業を60分授業の扱いにして、その中の15分を短時間学習として位置付けることや、また別の場合には外国語の短時間学習を2週間に3回程度実施する、さらに別の場合には夏季、冬季の長期休業期間において言語活動を行うなど、地域や各校の実情に応じた幅のある柔軟なカリキュラムの設定が必要であると考えられる。

・ 外国語教育の特質に応じ、まとまった時間を活用して言語活動を行うことなどが効果的な場合には、夏季・冬季休業や、学年末等の休業日の期間に授業日を設定する場合を含め、これらの授業を特定の期間に行うことができるような方向性を検討し、各校の取組に柔軟な対応が可能となるようにすることが必要である。

(例) 短時間学習や柔軟なカリキュラム設定等のイメージ
・45分授業との関係を明確にした一定の効果が得られる15分程度の「繰り返し学習」などの短時間学習
・45分+15分などの組合せにより、深みのあるコミュニケーション活動の設定などの組合せも可能となる指導
・イングリッシュ・キャンプ、補習などの夏季、冬季の長期休業期間における活用 等


○ 以上のような論点を踏まえた検討とともに、担当する教員が、その指導内容の決定や指導の成果の把握と活用等を責任を持って行う体制整備が必要であるといった観点から、教員養成、教員研修及び教材開発に関する条件整備が不可欠である。
・ 10~15分の短時間で円滑に効果的な学習を行うためには、児童の学習規律が確立されていることが前提となるため、低学年からの学びの在り方も含め、学校全体の学習規律の確保が必要である。

・ 短時間学習について、教員が指導できる指導計画、教材の整備、指導法の確立が必要である。

・ 指導計画については、学校が定めた標準の授業単位時間により実施される授業の指導計画と連動させ、短時間学習に適した活動が選定されることが必要である。

・ 教科化を前提とした場合、短時間学習を含めた学習における評価の在り方を確立することが必要である。

※授業の内容との系統性を確保して短時間学習の活動を可能とする場合
・ 教科化に向けて、70単位時間のうち、例えば、【1】アルファベットの文字や単語の認識、【2】国語と英語の違いや音声のそれぞれの特徴への気付きなどを一定の言語活動を含めたまとまりのある学習を行った上で、ICTなども活用しながら15分程度の短い時間を単位とした活動を関連付けて「繰り返し学習」を行うことによって定着を図る。(【1】関係では、例えば年間15単位時間程度の短時間学習の実施が考えられるが、【2】関係なども含め、更に効果が期待される短時間学習の可能性について、引き続き、専門的に検討。)

・ さらに、研究開発校等の取組の結果等を踏まえ、高学年における外国語教育において、「書くこと」「話すこと」だけではなく、「聞くこと」「読むこと」に関する短時間学習など、様々な可能性があるので、四技能を含めた活動として位置付けを明確にして検討。

○ 中学年においては、年間35単位時間、週当たり1コマ相当の外国語活動を、短時間学習で実施することは困難であり、小学校の教育課程全体を見通した「カリキュラム・マネジメント」が必要であると考えられる。

(3)小・中連携の改善・充実

○ 小・中学校の接続については、中・高等学校の接続と同様に、高等学校卒業段階で求められる資質・能力を明確にした上で、各学校段階で児童生徒の実態を踏まえて育成すべき資質・能力を明確にする必要がある。それらを実現するための目標を設定し、学校種間における具体的な接続につながる学習・指導方法等について検討が必要である。

○ 中学校では、小学校の「外国語活動」で学んだ内容が十分に生かされていないことや、言語活動が十分ではないという指摘も踏まえ、義務教育終了段階として、小学校での学びとの連続性を図りつつ、身近な事柄についてコミュニケーションを図ることができるようにする。あわせて、高等学校における目標の高度化に対応するための基礎を培う観点から、発達段階に応じて、身近な話題についての理解や表現、簡単な情報交換ができるコミュニケーション能力を養うことが必要である。
その際、例えば、学校生活、地域行事、生徒の体験、他教科等での学習内容等と関連付けて、互いの考えや気持ちを外国語で伝え合う言語活動を中心とする授業を行うことを重視する。また、授業を実際のコミュニケーションの場面とする観点から、中学校においても授業を英語で行うことを基本とする(※12)。

○ 特に、前回改訂において大幅な時数増を行った中学校における指導を最大限に活用する観点からも、小学校段階で「聞くこと」「話すこと」に加えて「読むこと」「書くこと」を含めて学んだ語彙や表現などの学習内容、文字の認識や語順の違いなどへの気付きを生かして、中学校の言語活動において繰り返し活用することによって着実な定着まで高めることが重要である。
また、中学校においては、生徒にとって身近なコミュニケーションの場面を設定した上で、学習した語彙や表現などを実際に活用する活動を充実させるなど指導の改善を図る。あわせて、新たに四技能を測定する全国的な学力調査の実施(※13)により、指導改善のPDCAサイクルを確立することが重要である。

○ 小学校で学んだ語彙や表現などの学習内容は中学校の言語活動で、中学校で学習した語彙・表現・文法事項等は高等学校の学習において、意味のある文脈の中でコミュニケーションを通して繰り返し触れることができるよう、様々な言語活動を工夫し、言語の運用能力を高める。

○ 小学校高学年を含めた小・中学校における指導語彙数については、これまでの成果や諸外国の状況等を踏まえながら引き続き検討(※14)する。

(4)小学校外国語教育における必要な指導体制の充実等

○ 小学校外国語教育の改善・充実においては、校長がリーダーシップを発揮し、学校全体の取組方針を明確にした上で、全教員の共通理解を図りながら、各学校の中核教員を中心とした校内の英語教育に係る指導体制の強化に取り組むことが重要である。また、指導体制の強化においては、【1】効果的な教材開発とともに、【2】児童のコミュニケーション能力を総合的に育成することができる指導者の確保を含めた充実が必要である。

○ 地方自治体においては、各学校における外国語教育充実のため、学校や地域全体で取り組むことが必要である。例えば、市町村単位で、地域の指導的立場にある教員が複数の小・中学校を受け持ち、英語教育担当指導主事や外部専門家等とチームを組んで指導に当たるなど、地域の実情に応じた柔軟かつ効果的な指導を行う体制づくりが期待される。

○ このような環境の中で、小学校高学年の教科化においては、英語指導力を備えた学級担任や、専科指導を行う教員を含めた、より専門性を重視した指導体制について検討する必要がある。現在、小学校の学級担任の役割として、指導計画立案、教材準備、授業における児童への働きかけ、評価などが求められる。英語教育の専門性を重視した体制として、【1】担任を持ちながら高学年の教科担任として複数学級の専科指導を行う教員が授業を実施(その場合、他の教科の教員と専門性が求められる授業を持ち合いで対応)、【2】担任を持たず高学年の専科指導を行う教員が学級担任と連携しながら授業を実施(※15)、【3】中学校区を基盤として中学校の英語担当教員が校区内の複数の小学校と連携して研修会や、専科指導者としてティーム・ティーチングに参加する授業を実施する事例(※16)などが少なからず見られる。

○ 次期学習指導要領の改訂においては、このような事例を想定した指導体制が重視される。このため、指導者の養成・採用・研修の充実が必要である。また、小学校の指導者は、次期学習指導要領改訂も見据えた中長期的な観点から専門性を有する指導者の英語力・指導力向上が必要であり、教員養成の改革とともに、現職研修の抜本的な拡充、採用における取組の改善などを一体的に進め、指導体制の強化を総合的に進めることが重要である。

○ 小学校高学年における外国語指導に求められる指導体制を強化するため、求められる教員と外部人材の資質・能力・資格要件などについて、次のような観点から具体的な指導体制の改善を進めることが必要である。

・児童への指導に当たっては、外国語教育に関する専門性を前提としながらも、児童理解の観点、他教科等と連動した学習内容・活動を行う観点から、学級経営を基盤とした授業の実施等に対応できる指導者が求められる。

・小学校では、児童の実態をよく知る学級担任が重要な役割を果たしているが、高学年の教科を指導する場合、学級担任が外国語の指導力に関する専門性を高めて指導する、あわせて専科指導を行う教員を養成・確保することにより、専門性を一層重視した指導体制を構築する。

・外国語活動において役割を果たしてきた学級担任の中で、更に小学校高学年の専科指導にも当たることができるようにするため、小学校の教科化において必要な新たな指導法等とあわせて修得が可能となる講習の開設支援等を行う。例えば、小学校の現職教員が、中学校の英語の免許状を取得し、外国語の教科化に対応して専科指導が可能となる環境を整備する。

・小学校高学年における英語の教科化に当たっては、専門性を有する適切な人材に特別免許状を積極的に授与し活用することや、英語が堪能な地域人材、英語担当教員の退職者等の外部人材を非常勤講師として活用するための支援(※17)を行う。

・加えて、外国語講師や、補助的な役割を果たす外国語指導助手(ALT)(※18)、英語が堪能な地域人材等の活用など、地域の実情に応じた柔軟な指導体制を充実させることが必要である。

・小学校における外国語活動では、外国語を使った活動を通じて、人とコミュニケーションを図る大切さや楽しさを体験し、国際理解を図り、視野を広げることを目的として、ALT等の外部人材の活用などによる指導体制の充実を図る。

・小学校における学級担任と外部人材の連携については、それぞれの役割を明確にしつつ、適切かつ適正なティーム・ティーチング等が行われるための体制整備の充実を図る。

○ 小学校段階では、積極的に外国語を聞いたり話したりすることを重視する必要があり、専門性の高い教員との連携、外部人材やICTの活用を含めた教材開発等を通じて指導の充実を図っていくことが重要である。

(教材の充実)

○ 外国語教育については、音声や映像を活用した効果的な教材開発と、それらを活用して効果的に指導を行う指導力が必要である。先進的な取組も含めたこれまでの外国語活動の成果・課題を踏まえ、小学校中学年では、発達段階に応じた外国語活動に必要な教材の開発を行う。小学校高学年では、英語の教科化に伴って教科書の整備が必要となる。
また、教科化され、教科書が整備されるまでの間、国において、新たな補助教材(※19)の検証を行い、その結果を踏まえ、次期学習指導要領移行期に各学校において活用することを想定した新たな教材を平成29年度に開発し、平成30年度には先行実施を行う小学校で活用できるよう作成・配布する必要がある。

○ あわせて、それらを効果的に活用するためには、教員の指導力の向上が必要である。ICTを用いた指導方法についての研修の充実を図るため、授業の展開を明確にイメージできるような映像等を用いた指導事例の作成や研修教材・研修マニュアルを作成し、普及を図る必要がある。

○ 外国語学習においては、効果的な学習方法として、音声も含めた学習効果の高いコンテンツの導入、デジタル教材の活用による子供たちの興味・関心を高めるような個別学習や、協働学習(※20)などの学習活動に応じた多様な教材や、ICT活用を推進するためのハードウェアの充実を促進する。

○ 教育の情報化の推進については、学校における情報機器等の安定的かつ計画的な整備を促進するため、第2期教育振興基本計画(平成25年6月14日閣議決定)で目標とされている水準の達成に必要な所要額(平成26年度から4か年にわたり総額6,712億円)を計上した「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画(平成26年度~平成29年度)」に基づき、地方財政措置を講じることとしている。これを十分に周知し、英語教育を含むICT活用に必要な環境整備、学習用ソフトウエア、ICT支援員の活用について、地方公共団体における予算措置を促進する必要がある。

(外部人材の確保)

○ 児童生徒が外国語に触れる機会を充実するため、外国語を母語とする外国人やこれに準ずる者を教員として受け入れ、単独授業を含む教育活動全般に登用していくことも必要である。各都道府県教育委員会においては、文部科学省が示した指針(※21)も参考とし適切に基準を定め、各学校が特別免許状制度を活用した効果的な外国語教育を行えるよう、外国人も含め英語力・指導力の高い外部人材を活用することが期待される。
また、外国語が堪能な地域人材や外国語担当教員の退職者等を非常勤講師として活用するための方策も講じる。その際、自治体においては、必要な外部専門人材の確保が困難な学校もあることに配慮した適切な配置等を行うことが必要である。
○ 児童生徒が外国語母語話者や外国語英語が堪能な地域人材とのコミュニケーションを通じて、
(1) 標準的な音声に接し、正確な発音を習得する、
(2) 間違いを恐れずに、外国語で情報や自分の考えを述べるとともに、相手の発話を聞いて理解するための機会が日常的に確保されること
が重要である。そのため、外国語講師、ALT、地域人材等の活用など、指導体制を充実させることが大切である。少なくとも、次期学習指導要領の実施が想定される2020(平成32)年度の前年度までに、その質を確保しつつ、すべての小学校にALTが参画できるよう確保するとともに、その活用の在り方について学校や地域全体で十分に検討する必要がある。

(教員養成の改善・充実)

○ 教員の英語力・指導力の向上のためには、新たな外国語教育に向けて、その養成段階から見直すことが重要であるが、あわせて現職教員の研修も充実すべきである。そのため次期の学習指導要領改訂に向けて、中央教育審議会教員養成部会において指摘(※22)されているように、小学校における外国語の教科化への対応や中学・高等学校の「話す」「書く」の指導力の向上を図るため、大学、教育委員会等が参画して養成・研修に必要なコア・カリキュラム開発を行い、各大学における教職課程の改善・充実の取組活用できるようにする。

○ また、小学校中学年の外国語活動導入と高学年の外国語の教科化に向け、音声学を含む英語学など専門性を高める教科の科目とともに教職に関する科目を教職課程に位置付けるための検討を進める必要がある。このような取組を推進し、教員の意識改革を進めるとともに、新たな英語教育に対応した現職教員研修及び教員養成を確実に実施することが必要である。その際、ICTも活用しながら、効果的な研修を工夫することが不可欠である。

(教員研修の改善・充実)

○ 現職研修の充実に当たっては、教育委員会と大学・外部専門機関等との連携を図る体制を構築し、継続的な現職研修や養成カリキュラムの開発・実施につなげていくことが必要である。その際、例えば、現職の小学校教員が、初歩的な文字指導、外国語によるコミュニケーション活動、小中連携に留意した指導などが可能となり、外国語の教科指導に自信を持って当たることができるよう教科化に対応した新たな指導法等の修得(※23)とともに「免許法認定講習」の開設支援等を行い、中学校外国語の免許状取得が促進される環境を整備することが重要である。
また、その講習を受講した教員は各校の「中核教員」として、教科化に対応するための校内体制の整備、校内研修等の実施などを担うことが期待される。

○ 平成26年度から開始した国による「英語教育推進リーダー」研修を受講した教員を中心に、次期学習指導要領の改訂に向けた域内研修の体制を充実し、研修成果を確実に波及させることで、域内教員の英語力・指導力を向上する。

「英語教育推進リーダー」に期待される役割
国による「英語教育推進リーダー」中央研修(外部専門機関と連携した英語指導力向上事業)を修了し、
・各地域において「英語教育推進リーダー」が講師として各校の「中核教員」等を対象に行う研修・助言
・地域の研究会・研究授業等における講師・助言者 等
「中核教員」に期待される役割
・校内指導計画の作成、校内研修、教材研究、指導方法・評価の共有・改善のための日常的な指導・助言、カリキュラム・マネジメント、専科指導 等

○ 国・地方公共団体による地域の教員研修のシステムづくりに当たっては、地域の中心となる「英語教育推進リーダー」の養成とともに、そうした者が地域の研修の企画・運営に参加することが可能となるよう、後補充の定数措置や非常勤講師等外部専門人材の活用への支援を充実する。その際、研修の質の改善のため更なる取組を支援する。

○ 研修に参加する教員の研修効果が高まるよう、その目的・趣旨等の周知徹底を図る。あわせて教員の負担軽減を図るため、研修期間を夏休み等に集中して行うことや、単位制にするなど、教員が研修に参加しやすい環境整備が必要である。

○ 引き続き、次期学習指導要領改訂に向けて、小学校全体の現状や、学校、大学、教育委員会、学会等の関係者の意見を踏まえつつ、中央教育審議会等の場において、教育課程及び教員養成などの観点から、専門的に検討を行うとともに、先行して実施可能な取組について支援の充実を図る。



(※1)補足資料参照。
(※2)補足資料参照。
(※3)補足資料参照。
(※4)補足資料参照。
(※5)脚注83のとおり、引き続き、専門的な見地から検討を行う必要がある。
(※6)補足資料参照。
(※7)補足資料参照。
(※8)中央教育審議会 教育課程企画特別部会「論点整理」(平成27年8月)においては、「さらに、仮に105時間(週3コマ程度)実施することについては、指導体制などの条件整備や小学生の生活への負担等を考えると、教育課程の特例としてではなく全国一律に実施することは極めて困難。また、現段階で教科ごとの指導の専門性が中学校以降ほど確立されていない小学校段階でこれを強いることは、英語嫌いを生み出すことにつながりかねない。今後、児童への指導に当たっては、教科化に対応できる指導力を備えるとともに、児童理解、学級経営を基盤とした授業の実施等に対応できる指導者が求められる。」との指摘がなされた。
(※9)次期学習指導要領の小学校3・4、5・6年生の年間指導計画イメージ(案)たたき台
(※10)「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」(平成20年1月中央教育審議会)(抜粋)
6.教育課程の基本的な枠組み
(1)小・中学校の教育課程の枠組み
【2】(小学校の授業時数(年間の総授業時数)においては、)小学校第4学年から第6学年にかけては現在の週27コマから1コマ増加し、週28コマを年間35週以上にわたって行うこととなる。これについては、学校では、一週間の中で、各教科等の授業以外にも、特別活動として児童会活動やクラブ活動が行われているほか、個別の児童に対する補充指導や生徒指導といった取組もなされている、9.にあるとおり学校が組織力を高め、教育課題に組織的に対応するに当たっては、校長や副校長、教頭、主幹教諭、教師との間の情報交換や意思疎通のための時間の確保なども必要である、ことなどから、学習指導要領上の標準授業時数を増加する場合、週28コマが限度と考えられる。
(※11)中学校学習指導要領:「10分間程度の短い時間を単位として特定の教科の指導を行う場合において、当該教科を担当する教師がその指導内容の決定や指導の成果の把握と活用等を責任をもって行う体制が整備されているときは、その時間を当該教科の年間授業時数に含めることができる」との規定がある。
(※12)「授業は英語で行うことを基本とする」こととは、教師が授業を英語で行うとともに、生徒も授業の中でできるだけ多くの英語を使用することにより、英語による言語活動を行うことを授業の中心とすることである。これは、生徒が、授業の中で英語に触れたり英語でコミュニケーションを行ったりする機会を充実するとともに、生徒が英語を英語のまま理解したり表現したりすることに慣れるような指導の充実を図ることを目的としている。英語に関する各科目の「特質」は、言語に関する技能そのものの習得を目的としていることである。しかし、このような技能の習得のために必要となる、英語を使用する機会は、我が国の生徒の日常生活において非常に限られている。これらのことを踏まえれば、英語に関する各科目の授業においては、訳読や和文英訳、文法指導が中心とならないよう留意し、生徒が英語に触れるとともに、英語でコミュニケーションを行う機会を充実することが必要である(出典:高等学校学習指導要領解説外国語編)。
(※13)現在、英語調査については、「学力調査の在り方に関する専門家会議」の下で「英語調査の検討に関するワーキンググループ」において、その具体的な在り方について検討が行われ、28年2月には「論点整理」がまとめられている。
(※14)外国語ワーキンググループにおいて、高校卒業時までの目標とともに検討中である。
(※15)小学校英語を教科として導入し英語力を向上した韓国では、小学校で学級担任が専科指導を行う教員と、専科指導のみを行う教員を配置する指導体制となっている、導入時に全員120時間以上の研修を受講することが求められるなど教員の英語力・指導力向上が進められてきた。
(※16)補足資料参照。
(※17)補足資料参照。
(※18)補足資料参照。
(※19)平成27年度より、英語教育強化地域拠点事業における研究開発学校等において、新たな補助教材「Hi friends ! Plus」を活用し教科科に対応したカリキュラム開発を実施。現在の補助教材は、「Hi friends !」を活用しながら、アルファベット文字の認識、日本語と英語の音声の違いやそれぞれの特徴、文構造への気付きを促す指導ができるようなものとなっている。28年度に検証を行い改訂、指導案、事例集(校内研修等において活用が可能な映像資料など含む)等の充実を図る予定。
(※20)「学びのイノベーション事業」実証研究報告書(平成26年4月11日:学びのイノベーション推進協議会)では、「「個別学習」では、デジタル教材などの活用により、自らの疑問について深く調べることや、自分に合った進度で学習することが容易となる。また、一人一人の学習履歴を把握することにより、個々の理解や関心の程度に応じた学びを構築することが可能。」、「「協働学習」では、タブレットPC 、電子黒板等を活用し、教室内の授業や他地域・海外の学校との交流学習において子供同士による意見交換、発表などお互いを高め合う学びを通じて、思考力、判断力、表現力などを育成することが可能となる。」とまとめている。
(※21)平成26年6月19日「特別免許状の授与に係る教育職員検定等に関する指針」の策定について(文部科学省通知)
(※22)中央教育審議会 教員養成部会「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について(答申)」(平成27年12月) (抜粋)4.改革の具体的な方向性(4)新たな教育課題に対応した教員研修・養成(略)
・「英語教育の在り方に関する有識者会議」(平成26年9月)においては、教職課程では、小学校中学年から外国語活動を導入するに当たり、その目的、目標、指導法、授業実践、教材開発・活用法、教室英語の活用などに加え、児童の発達、他教科等での学習内容、学級経営等についての知識理解等を取り扱う必要がある。さらに、小学校高学年の英語を教科化するに当たり、小学校段階で系統的な指導を行うため、児童の発達段階に応じた、英語を「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の四つの技能にわたる総合的なコミュニケーション能力を身に付けるための英語の指導力を高める内容が求められる。そこで、教職課程において英語指導法に関する科目を履修させることについて検討が必要である。その際、学習指導要領の内容を踏まえた指導計画の作成、模擬授業、教材研究、効果的な評価方法などの内容を含むことが必要である。具体的には、例えば、小学校における英語指導に必要な、基本的な英語音声学、第二言語習得、実際の場面で使うことができる語彙、表現、文構造、文法の特徴に関する理解と運用、異文化理解、発達段階に応じた適切な指導法、小学校における教室英語など教職課程において実践的な内容を扱う必要がある。あわせて、実践的な指導力を身に付けるため、ALT等とのティーム・ティーチングを含む模擬授業、小・中連携に対応した演習や事例研究などが取り扱われることが必要である。また、これらを踏まえ、国の調査研究事業において、小・中・高校の教職課程に係るコア・カリキュラム等の開発・実証を実施している。
(※23)

(※24)平成27年度「英語教員の英語力・指導力強化のための調査研究事業」において、新たな指導法等のモデルが提示されている。

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