算数・数学ワーキンググループ(第6回、第7回)における主な意見

【第6回】

1.算数・数学の見方や考え方、アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた資質・能力の育成のための不断の授業の改善について

(1)算数・数学における見方や考え方について
○ 資料3において、どこに着目するかという見方を示したところと、実際に考えをどう進めていくのかというところが、前半と後半で明確に示されており、前回より改善されている。

○ 全体の会議でも、算数・数学は高等学校、中学校、小学校を通じて共通した考え方がはっきりしていて、しかも、それが段階的に積み重なって進んでいく形がはっきり表れているということで高く評価された。数学的な見方や考え方もそのような形で整理されておりまして、大変いい形でまとまっている。

○ 資料3の5ページ目の小学校のところの数学的な見方・考え方の表組みの一番上の見方・考え方の後の説明が、中高とは違っている。記述を整理した方が良いのではないか。

(2)算数・数学におけるアクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた資質・能力の育成のための不断の授業の改善について
○ アクティブ・ラーニングの三つの柱について、深い学び、対話的な学び、主体的な学びということで、過程を含み込んで、より広く規定されたことは賛成。学びの過程が消えた分、深い学びにおいては、プロセス及びその学びの結果得られた成果の両方を裏側に含んでいるということは、説明の際には、是非強調していただきたい。

○ 資料4のマル1のところの「例えば」の活動を設けることの例示の後に、「このような活動を繰り返すことによって数学的な見方や考え方も成長する」という説明が加わっているが、マル2とマル3はこれがない。マル1と同じトーンで例示すると、参考資料2で示されている、スパイラルに高まっていくことの意味が一層はっきりすると思う。

○ アクティブ・ラーニングの三つの視点を新しく提案された見方・考え方との関係で考える。深い学び、対話的な学び、主体的な学びは、今回提案された見方(何に着目しているか)や考え方(どのように考え方を進めていくか)と関係している。お互いに相互作用しながら、見方がより明確になったり、あるいは前提が違うもの同士が話をする中で、お互いの前提を認めながら、よりよい物の考え方にしていったり、さらに、そういう形で関わっていく中で知識がだんだん深化していき、自分自身でもよく分かっていく。深さ、対話、主体性と、見方・考え方がお互いに成長させるよう、アクティブ・ラーニングの視点と今回の見方・考え方というものがうまく絡まっていけるのではないかと思う。

○ 他の教科と比べて、算数・数学で強調すべきアクティブ・ラーニングへの切り込みがもっとはっきり出るとよい。そういう意味では、「算数・数学では」というところをマル2、マル3でも記述した方がよい。特にマル2は、「例えば」の中にあるものを読んでも、算数・数学の特徴が本当に出ているのか、他教科との差があまりないのではないかと疑問に思う。

○ 算数・数学であるからこそ前提をきちっと明確にして、何か主張するときには、その根拠になるものがあり、その前提が変われば結論も変わるということを明確に指導できる。そこをきちんと主張し、算数・数学の特徴が明確になればよいと思う。前提を明確にすることでお互いの主張の相違点を明確にしたり、何かの主張の背後には前提がありその前提自体の大切さを認識したりするなど、もう少し算数・数学の特徴が出る記述があればよいと思う。

○ 算数・数学の資質・能力については、以前議論したときにも対話的と主体的の話があった。論理的に数学的な表現をするということは、対話若しくは協働に対しても必要であるというようなお話があったかと思う。そのときの議論を是非生かしてほしい。

○ マル1、マル2、マル3で書かれていることは、教室の中だけのことではなくて、これまでの先哲の考え方とか社会的な数学の活動など、数学的活動が社会においてどうなされているかも含めて記載されていて、この大枠はすごく大切。一方、例示の方は、どちらかというと教室内の対話で閉じているように見えるため、社会における数学的活動への注目とか、社会とのつながりを考えた討論、議論など、そのような例示があっても良いと思う。

○ 例示について、マル2のところは、「教師や地域」となっているが、もう少し大きくとらえ社会ではないかと思う。また、マル3の下から二つ目の「学んだ数学を日常生活や社会で活用したりする学習などを通して」はマル2ではないか、その上の「問題解決の過程を振り返り」云々というところは①ではないか等、事例と説明との関係がマッチングしてないところがあるように思う。

○ 「例えば」のマル2の一番最後にある、「数学的に洗練し」とか、「客観的で合理的な説明に高め合う活動」というのは、非常にいい言葉だなと思うが、それに加えて、例えば、中学生が今学んでいることを小学生に説明できるかとか、あるいは地域の方に、今日学んだということが説明できるかといった活動を繰り返すことによって、例えば小学生に説明したときに、質問を受けたら、やっぱり自分でも分かってなかったことに気づき、新たな学びにつながる。そういったことが、算数・数学における対話的な学びの一つの視点かなと思う。今一度検討してほしい。

○ アクティブ・ラーニングで大事な場面は、教室レベルで考えたときには、生徒と教師が授業を作り上げていく場面にある。見方・考え方のマル1、マル2、マル3で、「過程」という言葉を落としたということであるが、その過程自身が重要なところではないかと思う。算数・数学でものを考える時、最初から論理的に考えるか、統合的に考えるかというと、必ずしもそうではない。「着目して捉え」の表現に含まれているかもしれないが、間違ったことも含めて、いろいろやってみる。そういったことが重要であるが、見方・考え方の中で、それが含まれているかどうか疑問に思う。

○ 「主体的な学び」の記述が、原案では、現場に伝わりにくいのではないか。例えば、方程式の学習をしていくとき、単なる計算であっても、昨日までの学習の上にさらに、どういう力を付けたいかといったら、もっと難しい方程式が解けるようになりたいと言う。では、難しい方程式ってどういうもの?と聞くと、小数が入ってくるとか分数が入ってくるとか係数がもっと大きくなる、何千とかになる、そういう方程式と言う。そういう言葉が子供の中から出てきて初めて授業がスタートする。そういうことが主体的な学びと考えられるし、授業が終わったときには必ず自己評価を行うので、自分が今日、どういうふうに進歩したか、成長したかを自己評価させる。自分の成長の度合いを見れるというか、自己の成長を振り返るところで見ることができるそういうことも主体的な学びなので、このマル3のところにうまく入れられないかなと思う。

○ 深い学びということが実現しない限り、アクティブ・ラーニングそのものの目的が非常に薄まってしまう。マル2、マル3で示されているような、算数・数学で非常に大切にしたい学習の営みというのが、深い学びの実現につながることに留意してマル2、マル3を記述していくべき。

○ アクティブ・ラーニングの三つの柱の立て方を、教科算数・数学らしくという点に関して、参考資料4の「算数・数学における問題発見・解決のプロセス」という、まさに算数・数学で活動していくプロセスの中で、必然的に対話的、主体的になり、深まるのではないかと思う。そのような意味で、このアクティブ・ラーニングといったものを数学のプロセスの中に位置付けることで、三つの視点のそれぞれがばらばらにならずに、一つの数学をする営みの中に正統に位置付けられるのではないかと思う。

○ マル3の主体的な学びでは、算数のよさについて書かれているが、現行では、子供たちの主体的な学びを支えるものとして、「楽しさ」という文言を入れている。「楽しさ」ということが入ると、学びのエンジンの中核が見えてくるのではないかと思う。また、「数学的な見方や考え方のよさ」と示されているが、数学的な見方・考え方は、この後、別の使い方をしていくわけで、見方・考え方の高まりが学びの深まりというふうに使っていくとすると、「見方や考え方のよさ」とここで示すと不都合が出てくるのではないかと思う。

2.資質・能力の育成のために重視すべき算数・数学の評価の在り方について

○ 「事象を数学化したり、数学的に解釈したり表現したりする技能を身に付けている」の「技能」という表現が気になる。数学的に表現することのよさののひとつに、処理ができることがある。形式的な処理ができるところに数学的表現の特徴がある。数学的な表現をすると機械的に処理することができて、その結論が簡潔になって、それをまた元の事象に戻せるという特徴があり、数学的な表現の最も際立った特徴である。形式的に処理ができるということは、数学的な表現のよさの一つであり、「処理する」という文言は是非明記すべき。

○ 高等学校の数学レベルでは、例えば、数学的な処理というのが意思決定の支援にもつながるというような話が、これまでの議論でもあった。例えば、高校では生徒が意思決定をする場合に必要に応じて数学を活用して数理的に意思決定をするということも実際あり得るのではないかと考える。

○ 知識と技能のところで、知識というのは理解をすることから来ていることは分かるが、「知識を身に付ける」の部分は削除しても良いのか。

○ 5月10日に出された文部科学大臣メッセージの中でも、「アクティブ・ラーニングの視点は、知識が生きて働くものとして習得され」という記述がある。「知識を身に付け」だけだと、現場の先生は知識をインプットしてしまうので、知識が生きて働くものとして習得されるためには、「理解」の方がいいかなと思う。

○ 深い学びの概念と知識の「定着」という言葉は本当は矛盾すると思う。知識は常に深まっていくし、広がっていくし、豊かになるものだという前提に立つと、「定着」という言葉も使いたくないし、定着を匂わせるような表現も避けたいところだ。ここでは学校現場が定着を狙って一生懸命知識を注入することがないように、「生きて働く」とか、そういう表現があるとよいと思う。

○ 事象等を数学化する行為そのものを技能と捉えることは、これから大事ではないかと思う。これは全国学力・学習状況調査のB問題の数学的プロセスという問題作成の枠組みにも同じような文言が入っており、すでに評価の試みが行われている。それと整合するために、この「するための知識」を取ったというのは、賛成である。しかし、それにより抜け落ちてしまっているものがあるため、もう一度文章を精緻化する必要があると思う。

○ 看板が「知識・技能」なので、知識・技能の観点の最初の黒ポチ(・)には「知識」という言葉を生かせないか。それから、二つ目は、やっぱり「技能」という言葉を生かせないか。では、理解はどうするのかというと、知識においても技能においても、その裏付けにおいて理解が必要だと。その理解の深さが、先ほどの見方・考え方の成長と関わってくるため、その辺の整理の仕方についてよく検討する必要がある。

○ 「知識・技能」について、上を知識に特化し、下を技能に特化したとしても、上の内容については、多分、技能的なものも含まれてくると思う。また、下の方でも、技能といっても、数学化するというのはどういうことなのかという知識を持たないと意味をなさないという面もあり、一つの言葉で置き換えたとしても、内容としては両方のニュアンスが出てくる。それらを全部書くと簡潔に書けないため、仮に上を「知識」を使って書き、下を「技能」を使って書くとしても、理解がそれぞれに深く関わっていることと、それらの知識・技能には、知識のところには技能も関わるし、技能には知識も関わるという、この二つのことを解説とか説明でしっかりする必要がある。

○ 「思考・判断・表現」と「態度」のところの語尾は従来と同じスタンスで、「思考・判断・表現」の方は、どちらかというと断定的に状態を説明し、「態度」の方は、努力目標として「しようとするという」としており、伝統的にこうなっていると思うが、先ほど既に議論された資料4の見方・考え方の整理の中では、「する」というのと、「しようとする」というのが混在している。できるようにしてもらわないと困るということと、努力目標として頑張るとことで、「する」と「しようとする」を整理すべき。

3.統計的な内容等の改善について

○ 資料はこのままで良いが、問題解決のプロセスの資料に、Problem、Plan、Data、Analysis、ConclusionというPPDACサイクルのことが書かれていたことがあるが、これを学年進行に応じて見えるような事例にして示す方がよい。先ほどのアクティブ・ラーニング等では大変有用ではないかと思う。

○ 小学校の説明の中での「別の視点から吟味する」というイメージの与え方が心配。中学校では、「多面的に吟味する」というのがあり、資質・能力の三つの柱でも、小学校で育てたい力として、多面的に考えようとする態度というのもあるため、そのような表現の方が小学校でも無理がないのではないか。

○ 小学校の「理科や社会」という表現について、中学校「他教科等での」という表現にそろえ、小学校でも「いろいろな教科や学習活動と関連させて」という形の方がすっきりするのではないか。

○ 中学校の説明で、「現状や分布の傾向を把握したり」となっているが、現状の把握の中に分布も含まれているため、並列な表記はおかしい。また、「調査を行いデータを集めて」となっていて、高校では「必要なデータを集め」となっているが、中学校では、どういう調査の結果のデータなのかが分かることが大事なので、高校のような表現の方がよいのではないか。

○ 高等学校の事例の偏差の絶対値のところの紫の説明のところが、「偏差の絶対値の平均は指標にできるが、処理が面倒なところがある」となっていて、これは処理が面倒なのか、解釈が分かりにくいのかが分かりにくい。

○ 高等学校の事例の偏差の絶対値に係る記述について、数学の伝統からすると、2次式を最小化するのは非常に簡便だが、絶対値でいろんなものを処理するのは大変だということで、恐らくこういう表現になったのではないかと思う。

○ 4ページのところの紫色の帯のところの、「物事の判断することができる」では、「を」が抜けている。

4.算数・数学において育成すべき資質・能力について

(1)幼・小・中・高等学校を通じた算数・数学教育のイメージについて
○ 小学校のマル3の赤字の部分について、「友達の考えから学んだり」という部分は対話的な学びではないと思う。分からない子ができる子の考えを黙って聞いているというような授業になったら困る。

(2)高等学校の理数・数学・理科において育成すべき資質・能力について
○ 研究倫理の記述について、例えば、先人のやった研究を自分が使うときの引用の仕方とか、そういう研究者としてのお作法的なことも含まれているということで理解すると、もちろんそれは倫理なのかもしれないが、知識・技能としては、研究倫理以前に、そういう研究のお作法のようなことも書いた方がよいかもしれない。

○ 「知識や技能」のマル2のところにある、「事象を科学的、数学的に探究するための知識や技能」について、一般的な科学的な探究であれば、仮説があって、それを解決するための方法があって結果があって結論を得るというような、そういう古典的なアプローチがあるように、そういうことをプロセスとして強く意識してほしい。

○ 数学の方には、「事象を数学化したり、数学的に解釈・表現したりするための知識・技能」という、解釈・表現のための知識・技能というのが入っているが、理数には、「思考力・判断力・表現力等」のところで、「表現する力」というのはあるが、それに対応する知識・技能というところがないため、それもあった方がよい。

○ 「科学的・数学的」という書き方が、知識・技能や思考力・判断力のところはカンマになっていて、「学びに向かう」のところは中黒になっているので、統一した方がよい。

○ 思考・判断・表現の部分などで、「しようとする」というような表現が使われている。また、「新しい進歩を生み出す創造的な力」という、言葉としては美しいかもしれないが、果たしてそれを教科の資質として挙げたときに、具体的なイメージがなかなかつかみくいような、そういう表現がまだあるように思われる。

○ 「思考力・判断力・表現力等」のところで、理数のところでは、「科学的、数学的な見方・考え方」、理科のところでは、「科学的な見方や考え方、自然に対する多面的なものの見方」ということで、前半で議論された、いわゆる見方・考え方と比べると、やや狭い意味で使われている印象があるため、言葉遣いを整理してほしい。

第7回

1.科目構成の見直しについて

○ 数学IIIの5単位というのは、現場の先生方に話を聞く限りでは、5単位をやるかやらないかという選択で数学IIIという科目を置くことになるので、できれば5単位ではなく、もう少し少なくしてどこかに分けるとか、そういった意見はよく聞くので、そのあたりが反映できたらと思う。

○ 数学AとBには全ての単元をしなくていいという状況に、内容としてはなっていると思う。A、Bどちらということではないが、例えば数学Aだけでも、教科書にあるものは全部学ぶような形の数学の科目になればいいなと思う。

○ 理数探究の方の前回の資料等を見ると、数学の範囲、高等学校数学科の中に入るものという位置付けとはちょっと違う感じのものになってきている。それを数学の範囲でやるべきこととしてこういう構成でいいのか、もしかしたらやっぱり数学活用的なものというのが残るべきではないかという印象を、示された案を見た限り感じる。

○ 数学活用についてはA、B、Cに分けて、内容として移行するということは理解できる。ただ、数学活用の現行のものについて、目標で示されている数学と人間の活動との関わりとか、あるいは社会生活における数理的な考察の必要性あるいは意義といったことは、今回の趣旨である深い学びや、その動機付けとしての主体的な学びを促す意味で大変重要な要素である。

学習指導要領の中で、主体的な学びを促すためのポイントの一つとして、この数学と人間の活動との関わりとか、あるいは世の中における数理的な考察の意義というようなことについて、配慮するというようなことを明確に示す必要があるのではないか。例えば数Iまでのところで、配慮事項として明示するということを検討してはどうか。

○ 現行の学習指導要領が作られたときに、離散数学的な内容をどうするかということが話題になったかと聞いている。その背景には、中学校3年までの数学に不安を持っていたり、生徒によっては数学に嫌悪感を持っていたりしているようなこともあり、できるだけハードルを低くして学べる数学をセットできないかということがあった。例えば数学Aあたりで選択的にそれが選べるということになると、それをきっかけに数学への学びがより積極的になる可能性が生まれるのではないかと思われる。高校に入ってスタートするときの内容としてチャレンジできるようなきっかけを与えるくくりを是非数学Aないしは数学Bのに入れていただきたい。

○ 第6回ワーキングの資料6の統計教育のイメージのところで示されていた、高等学校の必履修科目の内容は、小・中・高の内容を踏まえて充実するということと、問題解決で使える統計になるよう改善するということ、この二つを是非数学科の中できちんと実現する形をとる方向で考えていただければと強く希望する。

2.必要な支援・条件整備等について

(1)小・中・高等学校におけるICTを活用した効果的な実践例について

○ 資料4の実践例について、例えばいろいろコンピューターやタブレットで視覚的なことを通じて理解を深めるというのは非常に意味があるし、効果もあるため、重要だと思うが、危惧するのは、それにより、すぐに結果が得られてしまうので、それでもって勉強したというふうにならないようにしていただきたい。実践例の書き方等を工夫してほしい。

○ 情報科とも関連するが、プログラミングをするというか、プログラミングをしつつ、算数・数学の理解を深めるというか、そういった類いの利用の仕方も入ってくるのかなと思う。例えば小学校の早い段階で演算の仕組みとか、そういったものをプログラミング的に理解するいったようなこともあり得るだろうし、小学、中学、高校に上がるにつれて、既存のものだけではやりにくくて何か開発するということもある。そういったことも含めて効果的なコンピュータの利用というのがある思う。

○ ICTを活用することによって教えるべきところを手っ取り早く教えて、子供たちが主体的で対話的で深い学びを生み出す時間を確保するというスタンスであればこれでいいが、主体的で対話的で深い学びを作り出す上にもICTをうまく使えるという事例を示すことができたらなおよい。例えば、タブレットに書いてある考えをクラス全員のタブレットに表示して全員共有するというのはそれに近いと思う。コンパスの使い方を分かりやすく示すというのは、例としては適切でなく、過度にそういった例を挙げ過ぎない方がよいと思う。

○ 電卓等を使って計算をする、問題を解決するということも、特に小学校算数や中学校数学の例としてあるとよいと思う。先生方の中には電卓を使うことによって計算力が劣ってしまうと考えている方々もいらっしゃるが、もちろん計算はしっかりやるという前提のもとで、数値が複雑になったとき、電卓等を使って処理をし、問題を解決するということを取り入れていきたい。そうすることでICTのよさが出ると思う。

○ 中学校の現場で、例えばセンサーを取り付けて動的な事象に対する資料の収集をすることもしている。しかし、この教具自体は非常に高価で、そういうものは実際にはあまり現場に普及していない。コンピューター室が一つしかなかったり、ソフトが思うようにインストールできなかったり、35人、40人で授業をやろうと思うと、そのうちの3人分ぐらいがコンピューターのぐあいが悪かったりして現実的にはICTを使う授業は困難を伴っているのが事実。子供たちはICTを使いこなすし、大人よりもはるかにそういうことには慣れているんですが、それを使う環境を整える方が苦労しているという状況。せっかく社会に開かれた教育課程ということ言っているので、是非そういうことに協力的な企業にも呼びかけ、官民が一緒になって子

供たちを教育していくという視点を持って、今後の教育活動の方に生かしていければいい。

○ 子供にもある程度探究の道具として、ICT環境を与えるという立場に立つと、地球規模で見て、日本の場合は子供たちにテクノロジーを委ねて探究の道具として使わせるということについては非常に消極的。例えばセンター試験でもそうで、グラフ電卓を持ってこないと受けられない科目を作るという発想はない。学校教育の中に子供が探究の道具として使うものをどの程度用意するかということを一度踏み込んで議論しないといけない。旧態依然の態勢のままで提示用の指導をいくら豊かにしても、本当の活用にはならないのではないかと、外国の例を見ると強く思う。

○ ICTの活用をまず幾つかのパターンに分類してみるとよい。コミュニケーションのツール、あるいはそれを加速する可視化のツール、あるいはさっきの計算とか分析の機能を人間がやっているのでは限りがあるのでそこを広げるためのツール、あるいは数学の本質的な部分をより直感的に分かるような形にするツールなど、小・中・高の段階に応じて幾つかに分類して示していくと、先生方もICTをこういう場面ではこう使ってみようというような形になるんじゃないかと思う。

○グラフ電卓などを入試で使えれば、出せる問題のバラエティーが全く変わってくる。今はセンター試験でも、グラフは見せてそれを解釈しろというような出題になっているが、本来はこういうデータがあったときにどうグラフ化するのがいいのかなど、自ら分析する力量を評価しなければならない。そういう入試をこれから前提とするのかしないのかという議論は非常に重要。

○ 人間が手計算でやっているところを補うとか、すぐにグラフ化して見られるというか、そういったことは非常に便利になって、それで理解が深まるという面もあるが、一つ間違えると、とにかくボタン一つ押せば答えが全部出てくるというようなツールを与えてしまい、結局それがないと何も考えられないというのはとても心配。こういうときにはこれが便利だよとか、この機能がなくても、数学的な見方・考え方を使えばそれを補えるんだとか、そういった組み合わせをうまく提示して、アクティブ・ラーニング的な面でいう深い学習とか、主体的な学習とかにつなげていけるようすべき。

○ ICTを活用して新しいことを見出すこと、対数の底が小数のような場合を扱うことで実社会に役に立つことを分かること、あるいはグラフィックなどを使って考え方を説得的に伝え合うこと、そういうアクティブ・ラーニングの三つの視点に寄り添ってICTの在り方ということを整理するというのも、一つの手なのではないかと考える。

○ 入試に出ないことは勉強しないという現実もあり、入試でどういう問題が出るのかということと、併せて考えないと、現実には勉強されないような気がする。また、ICTとか分析のツールは、子供の方が先生よりもはるかに早く習得するが、そのときに使い方を間違えないように、現実に合わせて教えられるようにする必要がある。

○ 一つのモデル事例のようなものを出して、資質・能力を育てるためのアクティブ・ラーニングはどういうことなのかということについて、それが必要なんだというふうに思える環境を作ることが非常に大事だと思う。

○ 30年前のコンピューターが入るときも全く同じような状況があったと思うが、目的に応じて上手に使うというのはいつでも大事。是非いいとこ取りではなくて、その陰の部分もセットで示していただくということが必要。

(2)その他
○ やはり必要な支援・条件整備という視点に立つと、日々努力されている先生方に対するお願いを述べるべき。一つは、今回は資質・能力並びに見方・考え方という新しい概念でのくくりなど、新しい枠組みが提案されているため、今までの続きでそのまま理解されないよう意識改革を先生方にしてもらわなくてはいけない。昔は指導資料のようなものが計画的に出版され、情報の提供が頻繁に行われていたように思う。その辺の意識改革のための適切な情報の提供が必要。

○ アクティブ・ラーニングに関連して、それぞれの先生方がそれぞれの理解に基づいての授業改善だとすると効果が現れないという懸念があるため、いわゆる世界的に今有名になっている(日本の)授業研究を、特に高校、中学などを中心に進める。先生方も頑張るし、教育委員会もサポートするというような、そういうメッセージを発する必要がある。また、中学校とか高校の先生、あるいは小学校で算数を教えている先生方の中には、数学の勉強は暗記だと思っている人が結構いるが、これまでの学会等での議論を踏まえれば、その数学観はほぼ否定されている。そこで、算数・数学の授業をしている先生方の持っている数学的な素養についても、日々努力をしてその点検とその補充に努めることが必要ですよというようなことを、教える先生方自身に対する啓発、奨励ということで、是非加えていただきたい。

○ 今、実施されている全国学力・学習状況調査は平成19年から実施されており、4年間は今の基準のコンセプトを先取りして、前の基準で学習した子供たちに新たなコンセプトから問題を作って協力をしていただき、それでようやく少しずつ世の中に理解が広がっていったという経緯がある。今回の資質・能力とか、プロセスなどについても今の議論が固まった段階で今の作成方針等を作り変えて、全面実施を待つのではなくて、できるだけ早い時期から全国調査などの仕組みを上手に使い、具体的に啓発をすることが必要。

3.算数・数学ワーキンググループにおけるとりまとめイメージについて

○ 冒頭の記述について、国際的な視点で見るとまだ努力をしなきゃいけないというような感じであるが、現場の先生方がもう少し気楽な気持ちで意欲的に取り組めるような雰囲気を出してほしい。

○ 参考資料3では、小・中・高、若干のグレードをつけて整理をし、欄外で、この学習過程については、自立的に、ときに協働的に行い、それぞれに主体的に取り組めるようにするとしている。いわば算数・数学におけるアクティブ・ラーニングの典型をもし数学的活動とするのであれば、その重要な要素をここで整理して説明をしていますので、これは表として示されると同時に、文章化し、しっかりと位置付けていただきたい。

○「知識の定着」という表現は、教える側の表現であるため、知識の獲得にすればよいのではないかと思う。

○ 「資質・能力の育成に向けた教育内容の改善充実」に関し、(1)に高等学校の科目の見直しというのが最初に来るのは、何かぶっきらぼうな感じがするため、小・中・高を通じて、このタイトルの視点から共通に配慮すべきもののようなことが数行入るといいかなと思う。

○ また、(2)のところの構造化というタイトルから見た場合に、その下の小・中・高の例示は7-1の資料の黒ポチ(●)が反映されていると思うが、黒ポチ(●)は二重丸の総括とマル1、マル2、マル3の具体の枠組みを実践していくために、今日的な課題が多分学校種別で整理されていたため、そこだけ突出し全体の構造や枠組みが見えにくくならないよう、この構造についてのところを最初の黒ポチの丸との関係で、キーワードを上手に使って整理をしていただく必要があると思う。

○ 同様に(3)も、現代的な諸課題というところの中で統計的な内容だけになっているが、もうちょっと高い立場から、個別具体の当面の緊急の課題としての統計というような感じでまとめた方がよい。

○ 前回の学習指導要領改訂時に、数学は汎用的にいろいろな問題解決に寄与できる科目であるということで、数学活用という科目を設置してそういったことを明示した。今回、先ほど科目の構成の見直しというところで、それを崩して理数探究の方にある程度、そういう実際に使う部分が吸収されるということだが、統計だけではなくて数学自体が実際様々な問題解決に寄与できる、そういった科目であるといったことをもっと示すべき。数学、理科とか、そういったものとは違う科目として理数探究というものを設定するように読めたが、数学の中での位置付けというのが、本当に前から引きずってきて考えている方向に沿っているかどうか疑問に思う。

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