教育課程部会 算数・数学ワーキンググループ(第4回) 議事録

1.日時

平成28年3月11日(金曜日) 17時00~19時00分

2.場所

文部科学省 旧庁舎6階 第二講堂
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 算数・数学教育のイメージ及び算数・数学において育成すべき資質・能力について
  2. アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成ために重視すべき算数・数学の指導等の改善充実の在り方について
  3. 統計的な内容等の改善について
  4. その他

4.議事録

【小谷主査】    それでは、定刻より少し早いですが、皆様おそろいということで、ただ今より中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会算数・数学ワーキンググループの第4回会合を開催いたします。本日は、お忙しい中御参集いただき、まことにありがとうございます。
  最初に、事務局から配付資料について御確認をお願いします。
【仲教育課程専門官】    資料を確認させていただきます。本日は議事次第に記載しておりますとおり、資料第1から第9まであります。7は1と2に二つに分かれてございます。不足等がございましたら、事務局にお申し付けください。なお、机上にタブレット端末を置いておりますが、その中には本ワーキンググループの審議に当たり、参考となる資料を入れておりますので御参照ください。以上です。
【小谷主査】    それでは、これより議事に入ります。はじめに本ワーキンググループの審議等については、初等中等教育分科会教育課程部会、運営規則第3条に基づき、原則公開により議事を進めさせていただくとともに、第6条に基づき議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱うこととさせていただきます。よろしくお願いします。
  なお、本日は報道関係者より会議の撮影及び録音の申出があり、これを許可しておりますので御承知おきください。
  本日は、最初に総則・評価特別部会の検討事項等について御報告をいただきます。その後、議題1として算数・数学教育のイメージ及び算数・数学において育成すべき資質・能力について、これまで検討してきた修正内容を御確認いただきます。議題2として、前回から引き続き検討しております、アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた資質・能力の育成のために重視すべき算数・数学の指導等の改善充実の在り方についての自由討議を行います。議題3として、統計的な内容等の改善について、まず統計の専門家として椿委員、戸谷委員から、それぞれの立場からの御意見をお聞きした後に、自由討議を行いたいと思います。なお、お時間も限られていることから、これまで議論を進めてきた議題1と議題2については、合わせて説明を行わせていただきます。
  それでは、総則・評価特別部会の検討事項等について、事務局より御説明をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    失礼いたします。それでは、資料の2を御覧ください。総則・評価部会の議論ということでございますけれども、総則・評価部会におきましては、各ワーキンググループにおきまして資質・能力の議論、あるいは学習プロセスというものの考え方というものの整理がかなりお進めいただいていることも踏まえつつ、各教科共通に少し留意していただきたい事項、あるいは方向性ということについておまとめいただいておりますので、御紹介をさせていただきます。
  1枚おめくりいただきまして、裏面でございますけれども、1ページ目、アクティブ・ラーニングの視点と資質・能力の育成との関係についてでございます。8月にまとめられた論点整理におきまして、既に御紹介させていただきましたとおり、アクティブ・ラーニングの視点、深い学び、対話的な学ぶ、主体的な学び、この三つが重要であるということで提言をされたところでございます。
  こうした視点に基づく授業改善によりまして、二つ目の丸でございますけれども、こうしたアクティブ・ラーニングの視点に基づく授業改善により、各教科等の内容的な理解を、子供たちが深めながら資質・能力を身に付けていくということ、そしてそうしたことが、長年課題とも指摘されております学習意欲というもの、学ぶことの意義や社会との関係の実感ということにつながり、子供たちの学習への動機を高めるのではないかということであります。
  論点整理を踏まえまして、様々な取組が広がりつつあるということの一方で、これは既に論点整理でも指摘されておりますけれども、型に着目した理解がなされているのではないかということ、こうしたことに関しては、引き続き不断の授業改善の視点であるということを留意していく必要があるということでございます。
  一方で、教育委員会等学校現場などからは、理念だけではなく具体的な実践も求められているところであります。こうした実践例につきましては、単に型や方法の種類を紹介するということではなくて、この三つの視点に基づいてどのように授業が改善され、子供たちにどのような変容が見られたかという授業改善に関する実践例の蓄積と普及がなされるべきではないかということ。そして、様々な型や方法、そうした中で一つの手段として使われることはあるわけですけれども、その効果が検証され、不断に見直されていくべきものではないかということでございます。
  それから、深い学びの視点ということでございますけれども、三つの視点のうち、対話的な学びと主体的な学びということに関しては、教科共通で理解しやすいということでございますけれども、一方で深い学びにつきましては、なかなか具体的なイメージがつかみにくいという指摘もあるところであります。これは、各教科等の特性に応じて示される必要があることから、現在正に御議論いただいている内容に関わるということで、まだまだ具体的なイメージはこれからであることにも関わってまいりますけれども、各教科等におきましては、引き続き三つの柱の資質・能力の明確化や、学習プロセスの在り方という検討の中で、深い学びの視点の具体化ということを考えていっていただきたいということ。
  そして、こうした議論の中では、複数の教科等別ワーキングにおきまして、資質・能力の育成、あるいは学習の深まりの鍵となるものとして、各教科等の特性に応じ育まれる見方や考え方が重要ではないかとの検討もなされているところでございます。
  こうした見方や考え方を習得・活用・探求を見通した学習の過程の中で働かせながら、思考・判断・表現を行い、それ自体を更に成長させながら資質・能力を獲得していくということが深い学びであり、そうした関係性を今後わかりやすく示していく必要があるのではないかということでございます。
  アクティブ・ラーニングの視点に基づく学び、深さを欠くことによる失敗事例も論点整理において指摘されていることもあり、深い学びの実現ということは極めて重要であります。また、先生方にはこうした学びを通じて、子供たちの教科等の内容的な理解に責任を持ち、指導内容を組み立てて、基本的な事項をわかりやすく教員が教えるということも含めて、子供たちに関わっていくことが求められるということでございます。
  そして、各教科等の特性に応じて育まれる見方や考え方でございますけれども、これ自体御承知のとおり、新しい概念というわけではありませんので、現行指導要領の中でも、様々な教科において培うということにされているところでございます。ただし、一方でその内容については、必ずしも具体的に説明はされていないのではないかということでございます。
  3ページ目でございますけれども、見方や考え方につきましては、様々な事象等を捉える各教科の視点、あるいは思考の枠組みであると考えられるということ、そしてそれらと資質・能力の三つの柱の関係ですけれども、ポツが三つございますけれども、見方や考え方、知識・技能を構造化して身に付けていくために不可欠であるということ。見方や考え方を働かせながら、知識・技能を習得したり、活用して探求したりすることにより、知識を他と関連付けて定着させたり、構造化された新たな知識として習得したり、技能を習熟・熟達させることができるのではないかということ。
  また、見方や考え方が成長することにより、思考・判断・表現が豊かなものとなり、より広い領域や複雑な事象を基に、思考・判断・表現ができるということにつながっていくのではないかということ。また、どのような見方や考え方を通じて社会や世界に関わるかという点が、学びに向かう力や人間性の育成に大きく関わっているということであります。
  子供たちが、こうした見方や考え方を働かせて、深い学びを行っていくということを通じて見方や考え方自体も成長させ、そして資質・能力の獲得につながっていくということ、そして指導の際には、子供たち一人一人の見方や考え方の困難さというようなことにも目を向けて、必要な支援を工夫していくという視点も重要ではないかということでございます。
  3ポツ、教科横断的な学びということでございますけれども、こうした各教科等の特性に応じて育まれる見方や考え方は、それぞれ独立しているというものではなくて、相互に影響し合いながら成長していくものではないかということ。そして、特に総合的な学習の時間といった領域において、教科横断的な学びということを行うことにより、見方や考え方が総合化・統合化されるというようなことではないかということ。それにより、社会や世界のより幅広い事象を捉えて考えたり、一つの事象を多面的、多角的に捉えたり、現実の中のより複雑な文脈の中で、物事を捉えたりすることができるようになるのではないかということでございます。併せて、各教科の見方や考え方も成長していくということで、各教科の学習と教科横断的な領域の学習をうまく組み合わせていくことが、重要ではないかということでございます。
  二点目でございますが、学習評価につきまして、これも教科共通の考え方を整理していただいておりますので、ページを17ページ、18ページ目までおめくりいただきますと、その後再度1ページ目から振り直されているページがございます。学習評価の改善に関する今後の検討の方向性でございます。
  目標に準拠した評価を資質・能力の育成から実質化していくため、以下のような方向性に基づき御検討いただきたいということでございます。
  育成すべき資質・能力を踏まえた目標や指導内容の明確化ということで、これはもう既に御議論いただいているとおりでございますけれども、各教科の目標を資質・能力の三つの柱に基づき構造化していくということは、目標に準拠した評価の実質化ということにもつながってまいるということでございます。
  そして、先ほどの見方、考え方とは何かということを明確化していくということ。そして、指導内容につきましても、資質・能力の三つの柱に基づき、どのような力を育成するのかを明確化できるような構造化を図っていくということ。
  そして、資質・能力、三つの柱で整理はいただいておりますけれども、これらはばらばらに存在するというよりは、相互に関係し合いながら育成されていくという関係性もございますので、こうしたことについては総則などで示していく方向で、引き続き検討していくということでございます。
  観点別評価についてでございます。前回改訂時に、学力の三要素と評価の観点の関係性は既に整理されておりまして、これにより観点の趣旨が明確化され、観点別評価の実施率も高いという状況であるということ、難しいと言われておりました思考・判断・表現の評価の在り方に関する様々な実践も、進展していることなどの現状が見られるところでございます。
  一方で、子供たちの資質・能力の育成に向けた指導と評価の一体化といった観点からは、質的な改善の余地があるのではないかということも言われているところでございまして、そうした観点から、目標に準拠した評価の実質化や教科・校種を越えた共通理解に基づく組織的な取組ということを、促していく必要があるのではないかということでございます。
  そうした観点から、別添イメージのとおり、観点別評価の共通のイメージということを共有しながら、各教科で考えていく必要があるのではないかということ。具体的な観点の書きぶりや趣旨の記述については、評価の特性を踏まえた表現ぶりを検討していただきたいということでございますけれども、ページおめくりいただきまして5ページ目にございますけれども、知識・技能、思考・判断・表現、主体的に学習に取り組む態度、具体的な書きぶりは各教科等の特性に応じた書きぶりをということでございますが、こうした共通のイメージの下に、評価の観点の在り方を御議論いただきたいということでございます。
  先ほどの1ページの部分にお戻りいただきますと、一番下の丸でございますが、観点別評価については、毎回の授業で全てを見取るのではなく、カリキュラム・マネジメントの考え方のもと、題材や単元を通じたまとまりの中で、評価の場面を適切に設定していくことが重要であるということ。また、現在御議論いただいている学習プロセスの在り方の中で、評価の場面との関係性も明確にできるような工夫が考えられるのではないかということでございます。
  それぞれ三つの観点につきましては、まず知識・技能でございます。事実的な知識のみならず、構造化された概念的な知識の獲得に向かうことや、一定の手順に沿った技能のみならず、変化する状況に応じて主体的に活用できる技能の習熟・熟達に向かうことが重要ではないかということ。ただし、これにつきましては、発達の段階に応じた重点というものもあらかた考えられますので、発達の段階に応じてどのような知識・技能を獲得することが求められるのかを、目標や指導内容の構成の中で明確にできるように工夫していただきたいということでございます。
  思考・判断・表現につきましては、各教科の特性に応じ育まれる見方や考え方を用いた学習のプロセスを通じて、評価することになるのではないかということでございます。これにつきましても、どのような思考・判断・表現が求められるのかを、目標や指導内容の構成の中で明確にできるように工夫していくということ。その際、思考力・判断力・表現力は一足飛びに成長するということではなく、一定の時間をかけて成長していくものであり、学年等を超えた整理も必要になってくるのではないかということでございます。
  主体的に学習に取り組む態度でございますけれども、資質・能力の柱でございます学びに向かう力・人間性との関係について整理をしていただいております。学びに向かう力・人間性には、主体的に学習に取り組む態度として観点別評価を通じて見取ることができる部分と、評定等になじまず個人内評価として見取る部分があるということでございます。
  このマル1の主体的に学習に取り組む態度につきましては、これまで論点整理にも指摘されておりますように、挙手の回数やノートの取り方などの形式的な活動で、評価されているのではないかという指摘があるところでございます。こうしたやり方ではなく、子供たちが学習に対する自己調整を行いながら、粘り強く資質・能力を獲得しようとしたりしているかという、意思的な側面を捉えて評価していただきたいということでございます。
  これは、実は現行の関心・意欲・態度につきましても、本来は同じ趣旨でございますけれども、なかなかこの誤解が払拭し切れていないのではないかという問題点が、長年指摘され現在に至ることから、関心・意欲・態度を改め、主体的に学習に取り組む態度としているところでございます。こうした趣旨に沿った評価が行われるように、見通しや振り返りの場面などを適切に設定していくことが求められるということでございます。
  また教科によっては、観点のうち幾つか示していないものがあるという教科もあるところでございまして、それぞれの観点や趣旨が明確になるように、このペーパーの趣旨を踏まえながら御議論いただきたいということでございます。
  最後に指導要録、3ページ目でございます。こうした方向性を踏まえた指導要録の在り方については、総則・評価特別部会において引き続き議論をするとともに、専門的な議論の場も設けていく必要があるのではないかということでございます。
  また、指導要録に加えまして、子供たち一人一人がみずからの学習状況やキャリア形成を見通し、振り返ることができるようにするための仕組みの在り方を検討していくことということでございます。
  こうした学びのポートフォリオや個々の学びの特性が、校種を越えて共有されるような仕組みの在り方も検討していくことということでございます。その他、残された論点につきましては、引き続き総則・評価特別部会において御検討いただくということでございます。以上でございます。
【小谷主査】    ありがとうございました。それでは、総則・評価特別部会の検討事項等についての報告についての御質問等ございますでしょうか。
  特になければ、議題に入りたいと思います。ありがとうございました。
  それでは、議題1及び議題2につきまして、前回からの変更点等を中心に説明をお願いいたします。
【仲教育課程専門官】    それでは、事務局から説明させていただきます。本日はこちら、算数・数学を学ぶ本質的な意義についてということと、三つの柱に沿った育成すべき資質・能力の明確化につきまして、資料4、5、6、あと参考資料2を使って御説明させていただきます。
  まず資料4でございます。こちら、算数・数学教育のイメージ案につきまして、皆様からいただいた御意見を反映させたものでございます。基本的に赤い文字の部分が修正点になります。まず、小・中・高を通じて赤い二重丸の文章が追加されました。こちらはそれぞれの段階において習得すべきものを、大ざっぱに一文で表したものとなっております。そしてマル2の部分につきましては、協働的な部分の御意見がたくさんございました。協働的な部分につきましては、資料5の方で詳細は御説明させていただきますが、こちらのマル2の文章からは省きまして、そこに含まれておりました表現についての記述を追記いたしました。
  そして、一番下に幼児教育というふうなのが書いております。前回までは幼稚園ということで、例として文章が入っておりましたが、今回幼児担当の文章をお入れしたということでございます。
  高校の黒丸の下の部分は、新たに追記したもので、こちらについては高校の段階で重視したい学習を入れたものでございます。
  続きまして、資料5の方に移らせていただきます。協働的な活動の部分の記述につきましては、能力ですとか態度というよりも、プロセスの枠組みの前提ということで整理いたしまして、一番右端の学習過程の例のアスタリスクを加えまして、欄外に「学習過程については、自立的に、ときに協働的に行い、それに主体的に取り組めるようにする」というものを追加いたしました。
  そのほかにつきましては、御意見を踏まえて修正したところでございますが、小学校の学びに向かう力の方のところで、数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表したりというこの簡潔・明瞭・的確については、小・中・高と一貫して加えたというものでございます。
  続きまして、資料6の方の御説明をさせていただきます。資料6のプロセスにつきましては、参考資料2の一番後ろと、その一つ前のページにございますが、こちらのPISA2012年調査における数学的リテラシーの枠組みの主な特徴と、最後のページの島田茂先生の「オープンエンドアプローチにおける数学的活動」における図を参考にして作成しております。
  前回までは、現実の世界に水色の矢印が算数・数学の世界の方にもございましたが、問題を数学化することによって、算数・数学の世界に入るという概念の下で青いルートは左側だけにしました。あと、御意見ございました赤い四角の枠の中に、問題を解決することができるということを、新たに問題を解決することができるというのを、御意見を踏まえて追記いたしております。
  そして、一番下の欄外の赤いアスタリスク、こちらも協働的ということを踏まえまして、二番目の文章を振り返り、評価・改善につきましては、前回までは図の中に、結果から問題の方に行き来するルートがございましたが、評価・改善というのは特にそこだけでやるものではなくて、全体において行うものという観点から、枠外に出しまして、それぞれのプロセスを振り返り、評価・改善することができるようにするというものを加えております。
  次のページに参りますと、前回までは左から右に流れるように、どのような能力がついているかということを表現しておりましたが、前のプロセスの図との対応がちょっとわかりにくかったという御意見もございましたので、今回はプロセスのどの段階でどういった能力が育まれるかということを、重ねて見られるように修正しております。
  そして最後のページ、こちらは今回初めてお出しすることになりますが、プロセス自体は一回回って終わりなわけではなくて、何回も回していくうちに能力が育っていくということを表すために、こちらはいわゆるこの回っている図についてはXY平面的なイメージで、3ページ目のものについてはZ軸をイメージした感じで、まず素朴な問題の解決プロセス、小学校段階という意味ですけれども、そこで育まれる概念、見方、考え方が、それぞれ段階を踏まえるごとに洗練された領域固有の概念や見方、領域分野横断、そして最終的に汎用的な概念に、課題の考え方に至るというようなことを表したものでございます。
  簡単ではございますが、以上でございます。
【小谷主査】    ありがとうございました。
  それでは、これより意見交換の時間とさせていただきます。毎回のことですが、御意見等のある方は、あらかじめ名札を立てていただきますと、私の方で順次指名させていただきます。発言が終わりましたら、名札を元に戻していただきますようお願いいたします。あと、御発言の際にはマイクのスイッチをオンに、発言後にはオフにしていただきますようにお願いいたします。
  事務局からも御説明ありましたように、議題1の資料4及び資料5につきましては、前回まで詳細に議論いただいたところでございます。いただいた御意見を踏まえて文章を修正し、私と清水主査代理が内容を確認しております。これで特に問題がなければ、この件につきましてはひとまず議論を終了させていただきたいと思いますので、内容を御確認ください。
  議題2の資料6につきましては、これまでの皆様からいただいた御意見が反映されているかどうかを御確認いただくとともに、不十分と思われるところについての修文案等を御提案いただければと考えております。
  それでは、どなたかいかがでしょうか。
【小谷主査】    中村委員、お願いいたします。
【中村委員】    資料4の算数・数学教育のイメージ案の小学校の二重丸のところです。これは先ほど、小・中・高校で統一的に書かれているという説明があったと思います。小学校には、「数学的活動」を通してという言葉が入っています。これまでは、目標の中には「算数的活動」という言葉があります。いろいろな議論の中で、「算数的活動」と「数学的活動」という名前は、分けること自体に課題があるのではないかというような意見も、数学・算数教育の中では言われております。ここでは、小学校も「算数的活動」ではなく、「数学的活動」にするという意味で使われているのか、あるいはこれは、小・中・高校の表現を合わせるという意味で「数学的活動」という表現をされているのか、どのようにお考えになっているかということを伺いたいと思います。
【小谷主査】    それでは、事務局からお願いいたします。
【笠井教科調査官】    今回、学習のプロセスを小・中・高共通に作っております。このプロセス自体が名前を付けるとすると、数学的活動になるのではないかなと考えております。そうしますと、そのプロセスを通すことは、やはり名前としては数学的活動にしておいたほうが、わかりがいいのではないかということで、今そのプロセスを通すという、一つの名前とすることで数学的活動とさせていただいているところです。
【小谷主査】    よろしいでしょうか。
【中村委員】    はい。
【小谷主査】    それでは主査代理、お願いいたします。
【清水(静)主査代理】    皆さんから御発言がないようですので、私の方から二つ申し上げます。
  一つは、今話題になりました資料4の高・中・小のところ、二重丸の一行が入ったことについてですけれども、先ほど大杉室長から総則・評価の部会での議論の説明がございました際に、「資質・能力の三つの柱については相互に関連し合いながら育成する」という一行があったと思います。私も、最初は二重丸の一行のようなものがあったらいいかなと思っていたのですが、マル1、マル2、マル3のままだと、どうしてもそれぞれについての分析的な議論になってしまう懸念がありますので、それらを束ねるものを簡潔ではありますが、この二重丸を位置付けていただいたことは大変重要なことと思いますので、是非そのような方向で進めていただきたいと思います。
  それから二つ目は、資料5の欄外の記述でありますが、この記述が加えられたことで、先ほどのアクティブ・ラーニングを支える三つの学びということで、深い学び、対話的な学び、主体的な学びと三点セットがありまして、深い学びはどっちかというと一人で突き進むという意味で、正に自立的営みということで、対話的な学びというのは協働的、力を合わせてやるということで、そのそれぞれに主体的に取り組むというような枠組みで考えますと、ここにございますように、自立的、協働的に取り組み、それぞれに主体的に取り組める子供を育てるんだということが一層はっきりしたかなと思います。したがって、アクティブ・ラーニングの三つの要素との関係も、これですっきりできるのではないかと思います。算数・数学ワーキンググループの思いを、是非頑張っていただいて、ほかの教科にも及ぶようにしていただいたらと思います。以上です。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。前回までの議論を踏まえて、主査代理の方から御説明いただいたとおりでございます。御確認いただければと思います。
  何かございますでしょうか。資料の4、5に関しては御確認いただくということで、もしなければですが、資料6につきましては、前回から変わっているところもございますので、もし不足、もしくは御発言いただいたことについて、漏れているようなことがないか、正しく伝わっているかどうかを御確認の上、御意見いただければと思います。
  真島委員。
【真島委員】    前回の図に対して、ちょっと今日は持ってきていないので、確実な文章がないのですけれども、確かに私が概念を形成するとか、そういったことだけしか書いていなくて、赤の方ですけれども、問題解決するという部分がないと、そういう指摘をしたと思います。
  それで、今回の方は、逆にこの赤の部分のところで問題を解決することができる、ここまでになってしまって、概念を形成するというか、そういう部分が逆になくなってしまったということになったと思うのですね。前回の会議の後で、少し数学関係者で話し合っていたところでは、やはり概念を形成するというか、そういうところもこのプロセスにあって、間違いなくあって必要ではないかという、そういう話だったので、それは残るのかと私は思っていたので、こちらだけになったのはちょっと意外でした。
【小谷主査】    これには事務局からコメントございますか。
【長尾視学官】    概念を形成するという部分も、統合・発展のところへ込めたつもりではあったんですけれども、言葉の座りが悪かったもので、このような形にしています。概念を形成するという言葉を残した方がいいという御意見でしょうか。
【真島委員】    はい。
【長尾視学官】    再度、考えさせてもらいます。
【小谷主査】    今回は「数学化」というところや、「数学的表現にした」というところに、その「概念の形成」が入っているということでしょうか。
【長尾視学官】    資料6の3枚目を見ていただきますと、D2と書いてあるところの下から二つ目の丸のところに、見出した事柄を既習の知識と結び付け、概念を広げたり深めたりする力とか、あるいは統合的・発展的に考える力と書いてありますので、そこへ言葉としては込めたつもりではあったんですけれども、もう一度概念を形成するという言葉を表に出せるかどうか、考えてみたいと思います。
【小谷主査】    清水主査代理、お願いします。
【清水(静)主査代理】    すいません。今、長尾視学官からお話がありましたように、私もプロセスと資質・能力というふうに二つの表がありますので、プロセスの方はすっきりとプロセスの記述にしてしまって、例えば問題解決することができるということは、つまり結果として新しい概念が生まれたり、既にある概念の意味が広がったり、深まったりし、また結果としていろんな性質、アルゴリズムを獲得するということが含まれますので、初めの図では正に解決のプロセスに絞り、簡潔に明示し、結果として生まれいずる数学的な事柄、新しい概念、性質やアルゴリズムなどは、ここでは触れないことにして、どちらかというと資質・能力絡みと、今日初めて出てきている3枚目の図との関連で、概念、見方や考え方等の獲得がスパイラルといいますか、累積的に高まっていくというところでしっかり強調されることの方が適切で分かりやすいかなと思います。つまり、初めの図において概念ということで一つ出してしまうと、ほかの性質やアルゴリズムなどをどうするのかという話に必ずなってしまいますので、その辺のところを解決するにはこの三つの図でうまく分担して、それぞれでクリアにできるのが一番いいかなと思いました。
【小谷主査】    真島委員、いかがでしょうか。2ページ目、3ページ目とも、特に3ページ目は概念という言葉がたくさん表に出ていますが、これでいかがでしょう。
【真島委員】    いや、十分、事務局及び主査の委員方のお考えで反映させていると思うのですけれども、ただやっぱり、一つの表のところで出ているか出ていないかの違いは大きいかなと思いましたし、それからあんまり前回会議後の話のところで、やはり問題解決自身が概念形成ではないかという、そういった数学者からのやりとりもありましたので、そこのところで、ちょっと皆さんそれでいいかなということを確認したいということもありました。
【小谷主査】    この件について、何か御意見ございますか。2ページ目、3ページ目では説明されているので、どうしても1ページ目に入った方がいいかどうかというところですが。
  宇野委員、お願いします。
【宇野委員】    私も前回とその後の議論に少し参加していたのですが、小も中も高も、新たな概念を得るということが大事だということは、御理解いただけると思います。あとは先ほど解説していただいたように、二枚を用いてそれをまとめるという書きぶりの問題ではないかと思います。そういった意味では二枚目に概念という言葉が、D2の中にきちんと書かれているので、気持ちとしては確かに、もう少し強調できればいいなという思いはありますが、概念という言葉がD2に二カ所ですかね、出てまいりますので、書きぶりの問題として十分理解できるものと私は思います。
【小谷主査】    よろしいですか。じゃあ、事務局に自然に入るようであれば工夫していただいて、そうでなければ2ページ目、3ページ目で十分尽くされているということで御理解いただければと思います。
  それでは、ほかにございますでしょうか。
【中村委員】    今回の資料で特に2ページ目のプロセスと育成すべき資質・能力を加えた図が非常にわかりやすいと思います。特に、先ほど概念の話がありましたけれども、その部分は3ページのところで「洗練された領域固有の概念」、あるいは「教科横断の問題解決プロセス」、「汎用的な概念」というように、解決プロセスと関連付けることによって、概念がより汎用性のあるものになるというイメージがわかります。
  先ほど清水主査代理がお話しされていましたけれども、ここでも※印で「プロセスが自立的に、ときには協働的に行い」を入れることが、大事だと思います。私は、この今回のプロセス案については賛成です。
【小谷主査】    ほかにございますでしょうか。
  それでは中川委員、お願いします。
【中川委員】    私も、前回のものから見るとすごくバージョンアップしていて、大変御苦労いただいたなと、ありがたいなと思っております。せっかくここまで高めていただいたので、念のためつまらないことを聞きますが、表現したというのと、その下にされたというのと、わざと違えてあると思うんですが、その意図、もしありましたらお聞かせください。
【小谷主査】    1ページ目の真ん中のですか。
【中川委員】    すいません、1ページ目の数学的に表現した問題、これは自立的にというニュアンスが含まれていると思うんです。で、その後の焦点化されたというのは、もしかするとみんなで議論して、協働的にということで焦点化したではなく、意図的にされたとしてあるのであれば、それでいいかなと思うんですが。
【小谷主査】    事務局の方からお答えいただけますか。
【笠井教科調査官】    すいません。この言葉は、まだ詳しくは検討中でして、前回こう問題が三つあるといった、問題と課題といった議論があったと思うんですが、三つあるといった中で、最終的にもともとの数学的な事象、日常生活や社会の事象の問題と、数学的にそれを表現してきた問題、表現できた問題と、さらにその問題を解くに当たって焦点化してきた、もちろん焦点化されてきた問題というのがあるのではないかといったその言葉を、そのまま使わせていただいたということで、また少し検討させていただければと思います。ありがとうございます。
【小谷主査】    ほかはございますか。
  戸谷委員、お願いします。
【戸谷委員】    すいません、同じところに関してなんですけれども。単に表現の問題だけだと思うので、大したことではないんですが、焦点化された問題というのがすっと入ってこなくて、どういう意味なんだろうと思って、内容を読むとわかるんですが、具体的な式を解いたりとかいうようなことだろうと思うんですが、もう少し表現か何か、アイデアがなくて申し訳ないんですけれども、焦点化されたというのがちょっとわかりにくいかなと思います。
【小谷主査】    問題のありかや、どういう手法を使うかがはっきりわかった問題というような意味だとは思いますが、誰か日本語の上手な方がいらっしゃれば。補足的な説明は2ページ目等にあるので、全部見ていただければ誤解はないかと思います。  皆さん共通の認識でおられていますので、少し考えさせていただいて、案があれば変える、なければこのままこれで行くということでよろしくお願いします。
  ほかございますか。
  それでは、資料の4及び資料の5につきましては、合意が得られたものとさせていただきます。また、資料6につきましては、おおよそ合意が得られたと思いますので、今のような文章の細かい部分、言葉遣いについては主査に御一任いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の言葉あり)
【小谷主査】    本日は、議題の3に時間を取りたいと思います。議題の3、統計的な内容等の充実についての御説明をお願いいたします。
【仲教育課程専門官】    それでは、統計についての御説明をさせていただきます。資料は7-1、7-2、あと参考資料3を使用いたします。
  まず資料の訂正をさせていただきます。7-1の2ページ目の表がございます。ここで、中学校の部分の算数的活動と数学的活動の欄の線が入っているのが、3年生と2年生の間に入っているんですが、これは間違いでして、1年生と2年生の間に線が入るのが正しいです。あと、参考資料3の右下の5ページ目でございますが、一番下のところに引用文献が書いておりまして、ページ数が49及び52とありますが、正しくは52ではなく50が正しいので、こちらを訂正させていただきます。
  では説明に入らせていただきます。まず、資料7-1でございます。統計的な内容等の改善につきましては、中間取りまとめの中で言及されておりますが、どのような背景で改善が必要なのかということについては、そこでは記載されておりませんでしたので、事務局で背景として記載いたしました。
  要するに、生活の中で統計というのはいろいろ使われていますが、実際きちんと勉強されている方が少ないという事情もございますので、印象や偏見に惑わされことなく、正しい情報を見極め、客観的かつ中立的な観点から判断していくことは、社会において重要なことであり、基礎的な統計の知識や技能、及びその活用能力はこれからの社会を生きていく全ての児童生徒が獲得するべきものであるという観点から、改善が必要だろうと考えております。
  2ポツの現状につきましては、まず現行の学習指導要領になるときに、どのような改善がなされたかということを、小・中・高でそれぞれ記載しております。その結果が2ページ目の表でございます。
  そして、もう一枚おめくりいただきますと、こちらのワーキンググループで我々が具体的に審議していただきたいことを、マル1からマル4として記載しております。まず、統計教育によって育まれる資質・能力について。マル2が中学校卒業段階で習得しておくべきことは何か。マル3が高等学校卒業段階で文理共通に習得しておくべきことは何か。そしてマル4が社会との関係を踏まえた統計教育を実践するための方策について、御検討いただければと考えております。
  そして、各学校種・学年における個別具体的な内容の組替え等の詳細につきましては、こちらのワーキンググループで提案された方向性に基づいて、別途検討させていただければと考えております。
  4ページ以降につきましては、これまでのワーキンググループで統計に関する御意見がどういうものがあったか、そして論点整理の中でどのような記載がされているかということを記載したものでございます。
  続きまして、資料7-2の方に移らせていただきます。7-2では、それぞれの段階でどのような資質・能力をつけていくべきかということのたたき台を記載いたしました。
  小・中・高で共通的なところは、統計的に分析するための知識や技能を理解するということ、そして問題解決の材料として統計を利用していくということでございます。そして、それぞれについてはデータを集めるというプロセスがございますが、小・中学校ではある程度、教師の方からデータを提示して、そこから必要な情報を取り出す、中学校の場合はその問題に合わせて調査を行う、そして高校では、調査計画自体を立てるというところがございます。そのほか、分析、予測ですとか、中・高ではデータの二次利用における批判的な考察というものが必要ではないかということを記載しております。
  下の方の表の資質・能力及び内容等の整理につきましては、基本的には算数・数学の、今回で言うと資料4と5の中に含まれるものでございますが、データに基づいた合理的な判断、もしくはその推測、予測といったことは統計独特のものではないかということで記載しております。
  参考資料3につきましては、これまでの学習指導要領で、統計に関する記載がどのように変わってきたかというものをそれぞれ記載しているものと、最後のページは総務省の統計局のものでございますが、統計を使った問題の発見から解決までというのを図に表しているものがございましたので、参考に付けさせていただきました。
  簡単でございますが、以上でございます。
【小谷主査】    続きまして、椿委員と戸谷委員から御説明をお願いいたします。
【椿委員】    統計センターの椿と申します。今、総務省の統計の方向性のことを出していただきましたけれども、まさにそういうことを担当しているものでございます。
  今日の資料、本当でしたらパワーポイント等で整理すればいいと思ったのですけれども、構成として私ども統計のコミュニティの方で、学術会議で大学教育の参照基準というのを作ったときの議論の中で初等中等教育に関わることということが関係しているということを、まず要望ということを整理させていただきます。
  それから、次に問題解決に必要な算数・数学的活動への統計的考え方の反映ということ、これは小・中・高を横断する視点として、私見を述べさせていただければと思います。それ以外には、小学校、中学校、高校に関して、どのような知識としての項目、あるいは算数・数学活動が必要かということを総括させていただければと思います。
  1ページ、「はじめに」にございますように、大学の分野では、最初に数理科学という分野の教育に関する参照基準を学術会議が発表したわけです。この中で数理科学を、数学と統計学と応用数理の三分野に整理したわけです。特に統計的方法というのは、数学が一般的に科学の言語と言われているように、統計的方法は科学の文法と呼ばれていて、その重要性、汎用性を指摘していただいているところです。
  実は学術会議の参照基準、学術の参照基準に関しては、統計学の必要性に関する記述は以下の経営学分野から始まって、地球惑星科学分野に至るまで、文理を越えた非常に多くの基準の中で記述されているところです。
  こういう背景もございまして、日本には統計学科というような統計学を教育している分野、大学の機関は現在ないわけですけれども、昨年12月に大学教育分野の質保証の基準、統計学分野というのを規範として認めていただきました。その中で、統計学自体はデータを基に現象を記述し、現象のモデルを構築し、知識を獲得するための方法論として定義して、自然や人間社会における不確実性の理解とそれへの対処方法の習得、課題解決型思考力の育成ということを学ぶことの意義としました。これはあくまで大学教育としての意義と位置付けております。
  大学の基準ではございますけれども、この基準に関しては、小・中・高の教育を意識して市民性の涵養と統計学教育というところを設けております。ここに課題を解決するということで、先ほど総務省の資料の最後にありましたProblem、Plan、Data、Analysis、ConclusionといういわゆるPPDACサイクルという、英国連邦圏を中心とした初中等の数学・算数教育に導入されている課題解決の手順というものを、位置付けたという形になります。基本的に、統計的方法をPDCAサイクルないしはPPDACサイクルという問題解決のサイクルの中で活用し、いざとなったら科学的なマネジメントないしは自立的問題解決を実践できるよう、前提としてのデータの収集の涵養を市民の教養として必要と位置付けておりました。
  そのほかにも、初等中等教育、大学教育、社会教育が連携して、統計教育に関しては生涯学習の視点が必要だということを述べているところです。
  2ページに行っていただきます。合理的意思決定の基本、データに基づく合理的意思決定の基本としての統計的考え方に触れ、初等中等教育も前提として、高等教育、社会教育でも必要な統計的、まあ倫理も実は重要なのですけれども、能力を持続成長させなければならないという形になっています。
  ただ、現在初等中等教育の指導に関して、演繹的な考察によって正解が一意に定まる数学の問題とは異なり、効果的な統計教育が困難であるという問題指摘もしているところです。
  日常的管理、マネジメントと問題解決のサイクル、PDCAサイクルとPPDACサイクルをどう結合するか。やはり、PDCAという日常生活の中からチェックの段階で何らかの問題を発見し、それを実際にプロブレムを定式化した上で、Plan、Data、Analysis、Conclusionという形でPDCAサイクルのAction、Solutionにつながるような解を出すという、こういう一般的サイクルの中で、算数・数学の教育の中でも、今回の指導要領の中で議論していただいたもの、非常にすばらしいものができていると認識しておりますけれども、問題解決のプロセスの中に必要な統計的方法、ないしは数理的方法が配置されればと考えています。
  その意味では、問題を発見するための方法論、原因と結果との関係性を明らかにするための方法論、それから対策、ないしはソリューションの効果を検証するための方法論というような視点が、組み込まれていただければと思います。
  これまでややもすれば統計教育は統計量の計算方法の習得に時間をかけるということがあったわけですが、新たな統計的な教育というのは、必要な可視化と共に、計算をコンピュータなどの支援の下で、アクティブ・ラーニングのよさを発揮して行っていただくことを強く期待するということです。
  次に、小・中・高を貫く統計的な考え方の反映ということです。これは統計のみならず確率の考え方にもつながるわけです。まず数理的問題・課題に関する基本的な考え方としては、数学的な課題の評価ないしは発見のためには、誤差を認めることが必要です。まあ誤差という漢字に誤りという字が入っているのが問題ですけれども。問題というのは、そもそもあるべき姿と現状の姿です。数学的な問題・課題と言われているものは、現状とあるべき姿の差、ないしは小・中・高での比として、定量的に評価されるというような考え方を、どこかの段階で明確に導入していただきたい。統計学ないしは計測科学の基本概念である誤りとか誤差とか不確かさが、評価行為の中に存在するということを強く打ち出していただければと思うわけです。
  方法的には、視覚的な表現、グラフによる可視化、それから記述統計量による数値的な表現、それからそもそも誤りや誤差を含む数理モデル、関数と関係性のモデルを利用した事象自体の表現という形で、学年進行として発展していくのではないかと考えています。現時点で、私自身は可能な限り視覚的表現は小学校で、数値的な表現は中学校で、このモデルという考え方、現象をモデル化するというところが高校ぐらいで入るという、切り分けがいいのではないかと考えていますが、後に述べますように、これは学年進行、ほかの知識との関係性の中で整理しなければなりません。
  それから、次に原因と結果に関するいわゆるアナリシスですけれども、これも現在数学教育では関係性ということは強く打ち出されているのですが、やはり統計的な問題を考えるときには、もちろん相関という形のニュートラルな方法もあるのですけれども、原因と結果の関係性の分析、これが問題解決行為の基本となるものであります。統計の中ではその関係性の中に不確かさがあるという、先ほども申し上げたことが明確に位置付けられる必要があると思います。
  第3に、総則的な話としては、選択された行動を評価し、最適化するという、数学的行動ないしは統計的活動がありまして、これについても、実測で評価する、実際に観察してどういうことになっているかを、効果がどれぐらいあったかということを評価する。対策の結果を数理的に予測して評価するという方法。それから、感覚的に、まあよく初等、小学校等の中では行われているとは思うのですけれども、どういう方法がいいかというようなことを多数決で決めるような主観的な評価。これは、学年進行の逆かどうかわかりませんけれども、主観というのが非常に初等的なものであって、それが予測ないし実測につながっていくという、そういうことがあればと考えているところです。
  以上、まず原則的な立場を申し上げました。
  3節以降は小学校教育ということですけれども、これは簡単に項目だけ紹介して、後で見ていただければと思います。先ほど申し上げました誤りとか誤差というものに関して考えていくということですけれども、先ほど言いましたように、問題というのはあるべき姿と実際の差なので、3.1.1に書きましたけれども、実はものとものとを対応させるというところの中で、実は誤りがある。まず、何か数え上げをすれば誤りがあるというようなこと自体を認識するということがあります。
  小学校の中でいろいろな数え上げはあるわけですけれども、例えばこの3.1.1節の私が書いた文章の中で、平仮名の「の」という字は何個あるかを数えると、人間はまずまともには数え上げられないのです。これは、実は企業に入ったときの研修で必ずそういうことをやるのですけれども、小学校の算数教育でも数え上げですら実は誤差があるというようなことを、誤りがある、人間はそういうものである、真実と現実には乖離がある、そこに問題があるというようなこと、これが統計のかなり基本ではないかと思います。
  その上で、次に問題を数理的に発見するというところにグラフィカルな方法を使う、3.1.2節にあるとおりでございます、どういう形で、どれくらいの問題がどれくらい起きているかという定性的な問題かもしれませんが、その把握にグラフを活用する。今までのグラフの表現というのは度数でした。特に何が重要かを度数の大きさの順番に選択する、並べるという操作をしておりませんでしたけれども、そういうグラフ表現も必要かと考えます。
  3.1.4には近似ということ、近似分布ということを挙げました。実はその直前に小学校4年で四捨五入というところがあって、もう既に概数という形で近似概念が小学校で入っている近似概念は、実は非常に便利なもので、有用であるということを考えた上で、近似分布というようなものを評価する。測定値の平均とか人口密度ということを入れている段階で既に密度という概念が入っています。確率密度は非常に高級な概念ですけれども、ヒストグラムのようなものを既にこの段階で対応がつけられると考えられます。そして、それらのグラフ表現の背後にある統計量は、最低限は小学校でも教えられるかもしれないということです。
  次に非常に重要な話として、小学校ですらクロス集計というものを教える場合に、単なる集計ではなくて、原因と結果ということを非常に強く意識付けていただければということがあります。原因と結果ということに関しては、数学あるいは算数の活動かということがあるのです。図3に、特性要因図、フィッシュボーンチャートを書かせていただきましたけれども、どういう問題にどういう原因があるかというようなことに関する定性的な分析のようなことを、特にアクティブ・ラーニングのようなところで行っていただければと思っております。
  それから、3.2.2ですけれども、数量関係の意識というところに関しては、グラフに関しては散布図です。原因と結果がどういうグラフになって、その中で比例式、比例関係というグラフ、直線的なグラフが散布図の中に位置付けられているといった可視化の早期導入ができればと考えています。
  同様に、中学の数学に関しても、誤差に関しては、中学になると負の数というのが出るわけで、正と負という誤差が教えられる。これによって、いわゆる偏り、バイアスという概念を導入することができるわけで、問題としての課題、数学的課題として偏りを統計的な概念として出せるのではないかと思います。
  それから、不確かさの記述で、いよいよ中学では、確率分布というようなもの、確率という概念を教えることができるので、誤差概念、ヒストグラムのようなものが偶然変動を表現する確率分布の近似となっているということを教えていただきたい。今まではどちらかというと、数学的確率が非常に多くて、統計的な確率、相対度数が確率の近似であるという概念があまり強調されていなかったと思うのですけれども、そういうことを行っていただき、その中でグラフの位置付けをしていただきたい。小学校と同じですけれども、原因と結果を分析する活動、原因と結果との散布図を中学で習う関数のような活動の中できちんと与えていただくということです。
  それから、3年生の中で標本抽出の話があるのですけれども、ここらあたりにやはりシミュレーション、数学の計算として中学で実現することは難しいのでしょうから、4.3にありますように、ICTを活用した乱数実験、実験的活動で、確率現象をいわばゲームのような形にする、ゲームを設計するような活動で実施していただければと思っています。
  高校の方も簡単に触れますけれども、先ほど課題として挙げられました数学1が、文理共通で行われている科目だと思いますけれども、記述統計的なグラフを、中学でやっていただくという前提の下で、この方がいいのではないかと思うのですが、数学1では、データの分析だけではなくて、データからの推論、現在相関というものは扱われているのですけれども、できれば思い切って関数の関係性を定量化する、データから定量化する単純な回帰分析と言われているものを、数学1の段階で導入してはと考えるところです。
  それから、相関も単に計算ではなくて、一次関数や二次関数で予測される数値と、実際の観測値との間の相関を計算することによって、一次関数とか二次関数という概念がどれくらい適切であるかという評価行為につないでほしい。それによって、いろんなアクティブ・ラーニングが加速するのではないかと思います。
  もう一点、これも記述統計を全面的に中学に落とせるという前提ですけれども、統計的な推論、本格的な推論、仮説検証を数1で一部導入してはと考えます。数学1の数と式における集合には、背理法のロジックが導入されているわけですけれども、背理法は矛盾があれば仮説が棄却されるわけです。けれども、統計的仮説検定は矛盾ではなくて、仮説の下で計算された確率が小さければもとの仮説を否定しようと論理で、極めて背理法の論理と密接な関係があります。背理法に不確かさがあるということと考えていただければよいと思います。
  あと理科系においては、今までの話との重複になりますけれども、最終ページにあるように、数学Aの確率というところにむしろ確率の利用、リスク評価、期待損失の最適化に基づく最適な行動というような原理が入ってはどうかと考えます。これが現在の確率という項目を非常に活かす方法になるのではないかと思います。
  現行数学Bの確率分布と統計的な推測に関しては、先ほど事務局からありましたように、今の平均の検定ということの中で、母平均を比較するという概念が入れば、かなり一般的に有効ではないかと思います。
  大変すいません、時間がオーバーいたしました。恐縮でございます。
【小谷主査】    ありがとうございました。
  続きまして、戸谷委員からお願いします。
【戸谷委員】    では、資料9をごらんください。画面にも映していますけれども、内容は全く同じですので、どちらを見ていただいても結構です。
  まず最初に、私のバックグラウンドなんですけれども、実務家です。大学で、MBAで社会人に対してマーケティングを教えています。数学の研究者でもないですし、統計の研究者でもないですけれども、実務の中で非常に頻繁に統計を使っていると。特に、金融サービスのマーケティングをやっていますので、今よく言われているビッグデータというようなものを使っているというようなところが背景にあります。
  今日お話ししたいのは、なぜ早い時期から統計教育が必要なのかという必要性について、少し実例をお話しできればなと思っています。お話ししたい内容は、よくある統計の落とし穴、それから実務で使われている統計手法の紹介、ここは簡単にしたいと思いますけれども、必要最低限と考えられる知識ということで。
  よくある統計の落とし穴というところは、特に最近の社会的背景として、インターネット、それからインターネット調査会社のモニターというような形で、非常に手軽に調査ができるようになった。早いし、低コストでできるということで、マスメディアであるとか、インターネットの中で調査結果ではというような形で、頻繁にそういった報告がされていると思うんですけれども、結果の数値だけが一人歩きするということが非常に多くて、危険であるというふうに普段よく思っています。
  ちょっと後でもお話ししますけれども、サンプルが母集団を代表しているのかという代表制の問題であるとか、それから回答のさせ方、何点尺度で聞くのか、というようなこと、それから集計の方法、そこからの結論の出し方というようなところで、いろんな操作が可能であると。そこの背景がわかった上でその数字を見るのか、そうでないのかというところで、非常に信憑性を判断できるかどうかというところがあるということです。
  それから、もう一つの大きな背景としては、ビッグデータとよく最近言われますけれども、コンピュータの性能が上がったということで、いろんなものが数値化されて記録に残るようになった、人の行動だとかそういったものが、システムの中にあるデータで記録をされているということです。
  ツールも出てきていて、データマイニングツールであるとか、そういったものを使うと、とりあえず回答が出てくるという形なんですけれども、システムデータの取扱いというのに、やはりこれも問題があると、問題があるケースがあると。
  例えばシステムの中では、銀行の口座がある、ないというのが、普通預金口座がある人、それから定期預金口座がある人というようなものが、全部顧客として番号が振られていて、普通預金口座を持っていなくて定期預金だけを持っていても、その人は番号が振られているので、残高がゼロというような形で出てくるようなシステムになっているものがあります。そこのない人は、欠損なんですね。で、欠損値というようなデータクリーニングをしないで平均値を出すなんていうことは、実務ではわりと平気でやられているということですね。データ・数値の意味を正しく理解して、考察できるかどうかということが非常に重要であると。
  次は例ですけれども、私はマーケティングのバックグラウンドですけれども、経営戦略なんかを議論するときに、平均値というのは日常的に非常によく使われます。満足度調査、例えば自社の満足度調査をしたときに、男性が5点満点の4点、女性が4.35点というようなデータが出てきたときに、女性の方が満足していますというような議論をしています。
  ですけれども、例えばこの調査はどういうふうに行われたのかというときに、電話調査を例えばしたとして、昼間の時間帯にだけ電話をしていたというようなことがあると、母集団をおそらく代表していないと、主婦が答えていて、男性の側はもう退職した方というような方しか答えていないというようなことになったり、サンプルが非常に少なくて、これも驚くような例ですね、企業が公表していたり、公的機関が公表しているもので、平均値を出しているけれども、データが数件だというようなものもわりとあります。
  調査方法のところですけれども、これも調査方法というようなことが統計かどうかという話はあると思うんですけれども、それも非常に重要な問題で、担当者が店に来たお客さんに対面で調査をするというようなことをすると、必ずよい方に回答が偏ります。どういう調査方法かということがあると。
  それから、回答方法も偏りを生む。つまり、5点満点であれば、真ん中というどちらでもないという選択をすることができるんですけれども、4点満点だと、いい方か悪い方かの態度を必ずお客さんに決めろというふうに、それを迫るわけですね。ですけれども、完全にニュートラルだと、どちらでもないという人がいたときに、それが選べないというようなことを調査会社は勧めます。なぜなら、日本人はどちらかといったときに、いい方に答えるという傾向があるので、いい結果を出したいとなると、偶数の尺度で聞きましょうというようなことが勧められたりすると。
  元に戻って、4点と4.35点には、ほんとうに差があるのかという誤差があるのかという、先ほどの椿委員のお話ですけれども、そういったことを検証する、つまり平均値の差の検証するとかというような発想がほとんどなく、数値を受け入れていると。これは一般人の、一般の人の話ではなくて、企業で経営戦略を議論するような場でこういうことが行われているということです。
  ちょっと時間もあれなので、平均値といっても、平均3点といっても全然違いますねという話なんですけれども。
  それから次のページ、6ページも、平均値を議論するのであれば、最低でもデータの分布が目に浮かぶような代表値というのは出した上で、それを議論する必要があるであろうというようなことで、6ページになっています。
  7ページですけれども、ここは手法をいろいろ並べているんですけれども、一般的にある程度マーケティング部署がきちんとしている企業であれば、統計手法は非常に頻繁に使っています。基礎統計、クロス集計、相関、因子、重回帰分析・ロジスティック分析というようなものは、ごく当たり前ですし、それを使う目的によって、主成分分析、因子分析、判別分析、クラスタリングというような方法というのも、ごくごく一般的に使われていると。
  次のページを見ていただくと、今の7ページのところはほとんど当たり前に使われているものと考えていただきたいんですけれども、8ページのところも、目的別でいろんな手法が、統計的な手法が使われていますと。
  連関分析というのは、併買行動ですね、あるものを買った人はあるものを買う確率がどれぐらい高いかという分析をする。で、次に買ってもらう商品を勧めるというようなときに使います。クラスタリングは、顧客をセグメント分けするというときに使いますし、後で例もお話ししますけれども、因子分析、それから重回帰、それから多次元尺度構成法であるとか、それから医療の分野で使われる生存分析なんていうのは、お客さんがどれぐらい長くとどまってくれるかというので、マーケティングに応用されて使われていたりします。共分散構造分析というのは、非常にマーケターが好きな方法で、全体の構造がわかるというようなものになっています。商品開発のところではコンジョイント分析というようなものが使われていると。
  ちょっとその下のところは、統計手法と厳密に言うと違うのかもしれないですけれども、ビッグデータというふうになってきたときに、コンピュータを使って機械学習というような呼び方になっていることが多いんですけれども、データマイニングというようなことをするというので、決定木・ニューラルネット・ベイジアンネットというようなものも多くの企業が使っているものだということです。
  ちょっとイメージが湧きにくいかもしれないので、一つだけ例をお話ししたいんですが、9ページ、10ページですね、10ページのところ、皆さんのところにも、企業からダイレクトメールというのがしょっちゅう送られてくるのではないかと思いますけれども、完全にランダムに、お客さんのリストからランダムにダイレクトメールを送っている企業というのはそんなにはないんです。
  どういうふうに顧客を選んでいるかというところで、例えば調査をして、その回答傾向から因子分析をして、因子、左下の図にあるような因子1と因子2というのを置いてプロットをしたきに、これサプリメントの例なんですけれども、サプリメント懐疑派、健康オタク、サプリメント愛好家というようなセグメントに分かれましたと。うちの会社がターゲットにするのは、サプリメント愛好家のところのオレンジのところの顧客セグメントにしましょうというようなことをまず決定すると。
  これは、調査をした顧客だけでわかることなので、全顧客に当てはめようというときに、機械学習というのを使ったりします。決定木、ニュートラルネットとかサポートベクトルマシーンというような方法を使って、調査をしていないけれども、自社の商品を買ってくれているお客様のデータを使って、似たような人を探してくるというようなことをすると。それでリストを作って、その人たちに送る、DMを送るということもします。
  じゃあ、どんなDMを送るのかということで、次のページなんですが、DMの内容をお客さんに合わせて購入確率を上げたいといったときに、先ほどの連関分析というようなことをします。ある商品を買った人は、商品Aを買った人は、商品Bを買う確率が高いというルールを発見する方法です。そうすると、全くランダムに送ったときには、この条件なし確率というところで、1割ぐらいの人が買うだろうということがわかるんですけれども、条件を付ける、つまりサプリAを買った人という条件を付けると、その確率が5倍になる、Eを買った人であると3倍になるというふうに購買確率を上げて送ることができるということです。
  その次のページは、これは多次元尺度構成法というものですけれども、お客さんの頭の中で、どんなイメージで自社が見られているかということがわかると、DMの広告の内容を決められるということで、自社と他社の位置付けをプロットするというようなことを、これも統計の手法を使ってやります。
  最後が、共分散構造分析というような形で、これは全体構造を理解するためにやるというようなものです。というふうに、これ一例ですけれども、日常生活の中で非常に頻繁に統計手法というのはもう入り込んでいて、使われているということを申し上げたい。
  最後のところですけれども、じゃあどういう知識が必要なのかということで、義務教育までのところでは、先ほど最初にお話ししたインターネットやマスメディアで目にするような統計の値が出てきたときに、その確からしさを判断できる知識が必要であろうということです。高校卒業までのところでは、社会の課題解決、つまり因果関係であるとか社会の構造、社会とか企業の構造とかというようなところに、統計がどういうふうに使えるのかというところに関しての基礎知識が必要であろうということで、例を出しています。椿委員が御説明いただいたところの方が、もっと詳しく個別の手法について具体的なレベル感まで御提案されているので、私の方は少しざっくりした御提案になりますけれども、というようなところです。
  どうもありがとうございます。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。それでは、これより意見交換の時間とさせていただきます。御説明いただきました両委員への御質問を含め、御意見等をお願いいたします。どなたかいかがでしょうか。
  では、真島委員。
【真島委員】    お二人の御説明、ありがとうございました。今の社会に生きていく人間として、子供たちを育むときに統計的な力というのがどうしても必要だということはよくわかっているつもりなのですけれども、算数・数学教育の中で御提案いただいている部分を実現するのに、先走った議論になるのですけれども、どれぐらいの時間数というか、そういったことが必要かとか、そういった外国の例だとか、あるいは日本でもしかしたら実践したとか、そういった事柄についてありましたら教えていただければと思います。もしかしたら、ある程度取り込むのは大事なことだと思っているのですけれども、全てを取り組みますと数学本来学ぶべき、あるいは知るべきことができなくなる可能性もないではないというふうに危惧するところではございますので、お伺いしております。
【小谷主査】    椿委員、お願いします。
【椿委員】    初中等教育専門家ではないので、今の真島委員のことに対して正確にお答えできるかはわからないですけれども、少なくとも例えば英国連邦圏ということで申し上げます。これ統計教育を数学教育の中で孤立したものとしてしまうと、統計教育にウエートを置くという誤解を受けるとまずいのですけれども、数学を使ってPPDACという実践的、数学的活動をやる教育、例えばニュージーランドだとおおよそ算数・数学教育の3分の1を占めています。
  一方で、統計的活動はあくまで数学的な活動を前提として行われている、先ほど言いましたように、実は関数とか関係性というのは極めて数学の本質のもの、それに対して統計は、それに若干のプラスアルファをしているというのが、私自身の認識です。
  それから私が申し上げているところは、実はほとんど現行の指導要領の中にも、前回の指導要領の改訂から、導入されています。例えば小学生において、既に資料の平均とか度数分布と言われているものが導入されているわけです。一方で、先ほどのヒストグラムとか確率とか標本調査の、この資料7-1の2ページにありますように、既に相当な部分導入されているわけです、高等学校に関しても導入されているのですね。
  どちらかというと、項目において、今日例えば回帰分析みたいなものをやったらどうかと申しましたけれども、そういう追加条項というのは比較的限定して、むしろ例えば確率というものを教えるときに、確率的に考えたときにどちらがリスクが大きい行動になるかといった数学的活動をむしろ重視して入れていただきたいと考えています。むしろ、そのカリキュラムのマネジメントみたいなところを工夫していただいてということが多いのです。これが第1です。
  それから、統計教育の充実にとって、計算ということはできるだけICTを活用するということをやらないと、真島委員の危惧のように、やはりカリキュラムの構成、時間構成という意味で、なかなか難しいことがあるのではないかと思います。できれば今回の指導要領の中で、統計的な例えばグラフの記述とか、あるいは統計量の計算、そういうものに関しては、可能な限り計算機による時間を授業に使うという考え方、活動の方に時間をかけていただいて、それがやはり先ほどのように、限られた時間の中で何をするかということを考えていただく一つのポイントになるのではないかと感じております。
【小谷主査】    戸谷委員、何かございますか。
【戸谷委員】    私も数学を教えているとかというようなところは全然わからないので、他国がどういう状況かというのはわかりませんけれども、今椿委員がおっしゃったところが正に必要だと思っています。つまり、考え方ですね、計算を手で一生懸命やってというよりは、むしろ出てきている数字が文学的な表現って、私たちよく実務の中では言うんですけれども、どういう意味を持っているのかということがちゃんと捉えられるというようなところがないと、世の中で出回っている数字というのに惑わされるとか、うまく理解できないというところがあると思うので、そこが重要だと考えています。
【小谷主査】    どうもありがとうございます。
  宇野委員。
【宇野委員】    いろいろ御説明ありがとうございます。これは、小・中・高において随分違うのではないかという印象を持ちました。特に、小学校のことについて申し上げたいと思います。多分もっとよく御存知の先生いらっしゃると思いますが、低学年、あるいは中学年だと、仮定したというか、自分の目の前にあるのを超えた範囲のことは、現実的になかなか実感できないと思います。例えば、低学年で言いますと、人が何人か並んでいる様子を図とか絵を用いて数量で表現したとしても、5人とか6人だったら実感できるのですが、100人とか200人で、実際には描けない、途中が点々の図になると、もうついていけないというようなこともあります。
  誤差のことも、のの字のテストの話も出ましたけれども、小学生にとっては、じゃあどの人の数えたのが正しいのかというところに考えが行って、そこに誤差があるという方向に行くかなという懸念があります。その辺の発達段階的な背景を押えるべきではないかと思ったのが1点です。
  それから、2点目です。これも実際小学校の授業で見たのですが、学年は覚えていませんが、各クラスごとにどういった本を読んでいるかという調査をしていた授業例がありました。その中で、歴史の本がどのぐらいとか、漫画はどれぐらいとかいう調査をしていたのですが、実はあるクラスでは漫画による歴史入門という本を漫画として計算、別のクラスでは歴史の本として計算していて、全く比較できなかったということがありました。生徒たちが気づいて、それからは深く検討しました。このようなデータの取り方のところから、小学校ではスタートすべきではないかと思います。今日のお話の中に、小学校の授業においてのデータの取り方の妥当性という点はあまりなかったような印象を受けましたが、その辺のところにも注目すべきだと思いました。以上です。
【小谷主査】    丸橋委員、お願いします。
【丸橋委員】    お二人の話お聞きして、本当に統計というものの力が重要なものなんだなというのを感じました。これからの若者にとって、非常に大事な力なんじゃないかなと感じました。また、論点整理の中でも、統計のことについて大分紙面を割いて書いてありますので、現場の先生方にも伝わっていると感じております。
  資料7-2の高等学校のことについて少しお話をしたいと思います。高等学校においては、問題を発見し、適切な調査計画を立て、データを集め、そして予測や推測をして問題解決や意思決定をする。こういう体験をさせてあげる、そういった時間を取ってあげるということが大事だと思います。
  そして、今もデータの分析等をやっておりますが、現場の先生方にとってみると、教科書にあるデータの分析ですと、文言の確認とか語句の確認が、ややもしたら中心になっているということもあるのではないかなと思います。現場の先生方とすると、先ほどお二方の委員さんが紹介してくれたようないろいろなデータを別冊のデータ集のような形で紹介していただいて、少し豊富なデータを提示してそれを基にして議論をしていくような時間を作ってあげるということも、現場の先生方には非常に助かるのではないかと感じます。
  それで、そういたしますと、そういった時間を高等学校の中に入れていくとすれば、どこを削るかということになるかと思います。今後生きていく若者の力として、何が重要なのかということをしっかり考えて、例えば高等学校の数学1で、数学を勉強しなくなってしまう文系の生徒さんもおりますので、その中でどの力をつけてあげればいいのかということを議論することは、とても大事なことだと思います。
  また、その数学1の中だけでなく、数学だけではなく、例えば数理探求という科目の中で、統計的な力をつけていくということも考えられると思いますし、また、総合的な学習の時間の中で、課題探求をしていく中で統計の力を活用していくということも考えられると思います。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  それでは、清水主査代理。
【清水(静)主査代理】    お二人の委員、ありがとうございました。2点、もしお考えがありましたら教えていただきたいと思います。
  一つは、論点整理のところで、高等学校の情報科との関連ということが触れられているけれども、今日のお話では、小学校の算数から中・高の数学との関連で、精密に検討していただいておりますけれども、もし高等学校の情報科との関連ということになった場合、数学で分担すべき部分はどの部分なのかということを明らかにすることが一つです。
  それから二つ目は、統計的な処理をして、最終的に一度データ、結果が出てくるわけですけれども、それを解釈したり、判断をしたりするときには、どうしても数学だけの素養では結論が出せないことが多いように思います。例えば、社会科学関係の課題があって、その結論を導くために数学を使うとなると、数学的には一定の結果が得られますが、結果の解釈では社会科学の素養が必要になります。これら双方をやるとなると合科的なアプローチといいますか、課題について複数科目なり教科が関わるような状況を設計しないと、多分うまくいかないかなと思います。その辺をどうしていったらいいのかということについて、是非お伺いしたいと思います。
【小谷主査】    御回答ございますか。
【椿委員】    今の情報科、特に情報教育の中では、ICTを活用した問題解決は相当大きく出てくると思います。その意味では、数学・算数が与える方法論的な教育以外に、先ほど言ったデータ分析の中で、数学・数理の部分では高校では扱い切れないような分析技術が、今や世の中ではかなり使っています。そういうものをやはり問題解決の一つのツールとして情報科の中でやっていただく、連携していただくということは非常に意味があるのではないかと思います。
  今、情報科の「社会と情報」の現行のカリキュラムですと、実は今回問題になっている問題解決のプロセスみたいな教育は、情報科の中でも扱われているという印象があるのです。やはりそこの部分の中で適切なグラフィックだとか、そういうようなものをうまく入れて、数学の教育を更に発展させる、小学・中学の中で、出てきたグラフィック、可視化のようなものをどんどん発展させていただくということは、あり得るのではないかなと考えるところです。
  それから、今委員がおっしゃられたことの中で、例えば社会科学的な仮説検定のようなものというのは、極めて重要、極めて統計にとっては重要です。それについては、本当は高校の中で、数理探究と言われているものと同様に、社会科学的な課題解決、総合学習的なものがあればよいということ、このことは先の委員会の中で、数理探究が数学的問題に過ぎるということを申し上げたことがあるのですけれども、それはやはり、そういう場がある方がよい。
  先ほど申し上げました統計的推論の基礎的なもの、その原理は例えば背理法で二項確率の範囲で何かを数学的に仮定すれば、こういう現象、8回連続コインの表が出るとかいう現象は、極めて珍しい現象でしょうという教えで、その数学的原理は数学1の中で教えられるのではないかと思うのです。しかし、その実践は、やはり数学的、物理的な現象のみならず、委員がおっしゃるような多分、いろいろな分野の総合的な学習の中で行われるべきものと思います。
  先ほど、宇野委員の小学校の中のデータの取り方が重要だというのは、まことにそのとおりだと思って、私自身反省しております。本当は、きちんと数学教育、論理学教育の中でデータの曖昧性を排除するというようなことが、基盤になることなのです。それはおっしゃるとおりかなと思います。
  それから、誤差概念に関しても、小学校4年ぐらいにならないと、概数の概念が入らないと、委員がおっしゃるように無理があるのかなということを改めて感じ入りました。どうもありがとうございました。
【小谷主査】    続きまして、藤井委員、お願いします。
【藤井委員】    お二人の委員、ありがとうございました。社会人として統計の素養が大事だということがよくわかりました。
  少し先走ってしまうかもしれませんけれども、カリキュラムをきちんと考えようとしたときに、履修の実態も視野に入れる必要があります。例えば今日の資料7-1の2ページ目に統計に関する内容が並んでいます。一見すると、これらを一応履修するかのように見えてしまいますけれども、しかし例えば数学Bの中にある「確率分布と統計的な推測」は、今の日本の高校生ほとんど履修していない。
  文科省は、多分何かデータをお持ちかもしれませんけれども、私が入手したのはセンター試験の予備校が出しているデータですけれども、どのくらい数学Bの中の「確率分布と統計的な推測」のところをセンター試験で選択するかということを見てみますと、もうほとんど選択していない。数学Bは三つあるうちの二つ取ればいいわけですから、どれを取るかといったら、「数列」と「ベクトル」が94.7%となっています。統計の内容は、カリキュラム上にあって、数学Bに置いてあるけれども、日本人は誰もほとんどそこを履修していないという実態があります。
  だから、一方では情報科との関係だとかいろいろ考えなければいけませんけれども、きちんと国民の素養として統計の内容を履修できるシステムをどう作るかということを一歩踏み込んで考えないといけない。カリキュラムに並べてあっても、それはもう本当にただそれだけになってしまいます。是非、実態まで踏み込んだ検討もしないと。どこまで小学校で、どこまで中学校で、どこまで高校で必要かということを見極めて、それが履修できるシステムまで踏み込んで考えるべきだと思います。
【小谷主査】    ほか、何かございますでしょうか。
  お願いします。
【齊藤委員】    お二人の委員、どうもありがとうございました。私も、お二人の御提案を伺って、統計教育を進めていく価値を、どのような日本人を育てていきたいのか、小学校で言えばどのような子供にしていきたいのかという視点から、見直したらいいのではないかというお話ではなかったのかと思います。
  具体的な例ですけれども、今、藤井委員が御指摘されたカリキュラムでいきますと、小学校4年生の子供たちが、折れ線グラフの学習をします。理科で学習した一日の気温の変化の様子を折れ線グラフに表します。子供によっては、下に波線をつけて表現します。これによって、縦軸の単位が変わってきますから、グラフによっては非常に変化があるようにも見えたり全く見えなかったりするので、このような典型的なグラフを比較しながらその表現方法について学習していくわけです。波線によってそのグラフの形状が変わったりしてしまうので、よく注意していかねばならないという、よくある事例です。
  その授業の最後に子供が何と言ったかというと、「グラフにだまされたな」というふうに言ったわけです。統計教育が目指す方向とは、このようなだまされない子供にしていかなければいけないと言うこともあると思います。そのような子供にするために、先ほどマーケティングにおいても、データをしっかりと、クリーニングしていかなければいけないんだというお話があったこととも通じることではないかと思います。
  また、6年生が、これは数量関係ではありませんが、比例の学習で、図書室にある本の数を全部数えるという課題に取り組みました。だけど、とてもじゃないけれども、これを数えるわけにはいかないので、それを中3の標本調査のような学習になりますけれども、一つのロッカーのボックスに入っている本の数を数えて、そこから類推して、大体どのくらいだろうかと考えていこうとした授業でした。図書の司書が何冊あるかというのはわかっていましたから、その結果と比例関係で算出した冊数とを比較したとき、子供はこう言ったんです。「正しくてもいいならわかるけれども、結局この方法ではだめだ」と言ったわけです。
  更に子供たちは、「やはりきちんと数えなきゃいけない」と言い始めたわけです。統計的にはある程度認められる範囲内での仕事にも関わらず、小学校ではしっかりと正しい答えを見つけなければいけないと刷り込まれている子供たちからすると、今度はここでの結果については認められないんです。この二つの例というのは、ある意味、今日の小学校での統計に関わる教育を通して、子供たちに本来身に付けさせていかなければならない資質・能力とは、やはり少し違ったところに収まってしまっているというような感じがするわけです。
  7-1の2ページの資料にある現行の学習指導要領で示されている内容を、例えば批判的に物事を見つめる、目的に応じて柔軟に表す、多面的に分析する、このような視点から整理し、もっと内容と資質・能力とを密接につなげていくような取組をしていく必要があるということを、お二人の委員のお話を聞いて感じたところでした。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。ほかにはございますでしょうか。
  まず事務局からお願いします。
【米原教育課程課長補佐】    数理関係について、幾つかお話が出ておりましたので、少し御説明させていただきたいと思います。
  数理関係でございますけれども、数学的なものの見方、科学的なものの見方といったものを活用し、取り組んでいくという探究的な活動ということになってございますので、先ほど社会科学的なものは対象ではないんじゃないかみたいなお話がありましたけれども、統計的手法を用いて社会的な事象を分析するというのも、おそらくは対象になってくると思いますので、そこはもう少し幅広く数学的手法というか、数学的ものの見方を用いてやっていくということがあろうかと思いますので、御理解いただければということを御理解いただけると思います。
  また、数理探究でどういった知識、技能を身に付けていくかというところもあるんですけれども、もちろん共通的にどういうふうに探求、研究のお作法ではないんですけれども、そういったことを身に付けていくのかというところはあるんですけれども、それ以外に当該生徒ないしその生徒が属するグループが、ある研究テーマを設けてそれを探究していくと。その中で、必要な知識・技能というのをそれぞれ身に付けていくということもございますので、当然何か実験観察して、それを統計的に処理しなければならないというときに、全ての生徒が同じ統計的手法を学ぶということは、その数理探究の中ではなくて、本当に必要であれば、そのための手法をそれぞれ別途学び、大学生が自分の研究分野について深めていくときに学んでいくような、そういうイメージですけれども、そういう形の学びというのも、一方であるということを御理解いただければと思いますが。
  以上、補足でございます。
【小谷主査】    清水委員、お願いします。
【清水(宏)委員】    お二人の委員、ありがとうございました。私、お二人の委員のお話を伺って、改めてこの7-2のイメージを見返しました。私はこの中で、黒いポチが四つあるうちの、小学校は三つなのですが、そのうちの三つ目の項目の文末にある問題解決や意思決定をするというところ、ここが私は非常に大事なことであると思いました。ただ単に問題解決をしただけではなくて、そこで意思決定して、判断をするという、ここが大事なことだと思います。
  それはもう数学の範囲ではなくなると思うのですが、さらに中・高では、意思決定をしたら、決定した事柄を自分たちの行動におこしていくということが必要ではないかなと思っております。このイメージは、今日のお話と合致したところであります。
  カリキュラムをどうするかを真剣に考えようと、先ほど藤井委員の方からあったと思うのですが、私は中学校の立場から見て、例えば6年生で今の意思決定ということを考えると、6年生で資料の平均、度数分布、柱状グラフという言葉でヒストグラムをやっていて、確率は場合の数をやっている。学習することがここまででいいのかという議論があると思います。この後、中学校1年生でもう一度ヒストグラムをやり、2年生で確率をやるというのが現行のカリキュラムです。この6年生、1年生、2年生のつながりを更にうまくできないかと思います。ここをうまくすることによって、発達段階に応じてきちんと問題解決して意思決定するというところまでできるのではないかと考えております。以上です。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  それでは、中村委員。
【中村委員】    お二人の説明、本当にありがとうございました。私は、椿委員の資料8の中で、2.1.3「選択された行動の評価と最適化」が、重要だと思います。ですから、小学校の主観的評価から中・高校で実測的、あるいは予測的評価と系統付けることだと思います。また、データの収集というのも大事だと思います。
  そういう意味で、現状で行われている統計指導は、小学校ですと数量関係領域の授業で行い、どうしても知識、技能に偏っています。グラフを描くこと、グラフを読むこと、表を作ること、表を書くこと。そのグラフや表を作って何を考え、判断するのかということが、問題解決のサイクルの中では欠如していると思います。小学校で考え、判断することはどこでやっているかというと、社会科や理科が担っていることがあります。
  先ほど、清水委員の方から高校の情報科との関連も出てきましたが、小・中学校では、社会科や理科の中で統計的な表現、あるいは統計的な結果を活用していることもあります。そのような中で、算数・数学の役割はどこなのかと。時間数が限られていますので、それを明らかにする必要があると思います。
  特に資料7-2のところに、「資質・能力及び内容等の整理」で、思考・判断・表現、それから学びに向かう力のところで、批判的に解釈する力や、予測や推測をしたり判断したりしようとする態度、これは非常に重要です。しかし、これを算数・数学の統計指導の中で行うには、知識・技能を習得・習熟することも考えると、やはり時間がかかるということです。
  例えば小学校の場合ですと、これらの見方・考え方ができるのは5年生、6年生の高学年になると思います。しかし、高学年は内容が多く、もう時間がありません。知識・技能を教えるだけで終わってしまっていくということがある。そういう意味では、どこに重点を置くかということと、やはり算数・数学の中で統計的な力を付けるというのならば、時間数の確保というのは非常に重要だと思っています。以上です。
【小谷主査】    ほか、ございますでしょうか。
  戸谷委員。
【戸谷委員】    すいません、先ほどの情報科というところとの協働というか競争みたいなところなんですけれども、現実にコンピュータ、計算機科学と統計はもう切っても切り離せない状況になっていて、私が御紹介した手法の中にも、機械学習と言われて、コンピュータでやるものというのがあるんですけれども、基本的には、根本的な考え方は統計的な考え方で共通しているんですね。大学院で、計算機科学と統計と別々にそれを学んで、違う名前で呼ばれて、違う手法のように教えられるけれども、ふと気が付くと同じだということがわかるというようなことがあって、一緒に教えてほしいと思います。
  現実の社会でも企業でも、データサイエンティストと言われるような人が今もてはやされていて、そういう特別なそこの知識を持った方というのを雇ったりするんですけれども、社会科学の問題と、これもまた切っても切り離せないところで、そこのリアルに実務で何をしているかということがイメージできない方が、データ分析のところのスキルだけでデータを見ると、やはり戦略的に非常にまずいものが出てくるというのが現実です。
  科目数とか時間というところがどういうふうになっているのか、私はちょっとそこは全然わからないんですけれども、是非一緒に教えてほしい、そういう科目があってほしいなと思っています。
【小谷主査】    おそらく、最終的には資料7-2をもう少し深めていくのだと思いますけれども、今皆さんから御指摘のあったように、情報科目との関係や数理探求やアクティブ・ラーニングで扱うことと、この算数・数学のカリキュラムの中に何を入れていくかというところは、それぞれ役割分担を整理していただけると議論しやすいですね。その間のつながりは、もちろん戸谷委員が言われたようにとても大切ですが。今日はもう時間がございませんけれども、次回その辺のことも少し御説明いただければと思います。
  板垣委員。
【板垣委員】    私は中学校の現場ですので、中学校の立場からお話しさせていただきます。資料の活用の現行の学習指導要領による内容が入ってから、かなりやっぱり現場では意識して、数学的活動を子供たちの方にやらせるようにしております。具体的には、実際に一つのもの、データについて自分たちで興味を持って、それを分析してグラフ化したり、度数分布表を作ったりという、そういう作業を行っております。
  ただ、先ほどから出ていましたが、やはり時間が授業時数が足りないというところが問題であり、内容的にも例えば中学1年ですと、ちょうど細部の単元になってきますので、どうしてもそこら辺で時間を取り切れずに、ただ知識だけを詰め込んで終わってしまうという、そういう現実もあるのではないかなというふうに危惧しております。
  具体的に、自分などが授業でやったときなどは、学校にはスポーツテストのデータが豊富にございますので、そういうものの、子供たちのもちろん名前を全部伏せまして、それもいい方から全部一つ一つの項目について並べたデータを自由に使えるように与えて、例えば部活動でバスケットボール部の人たちの分析をしたり、1年生と2年生で比べたときに、2年生になるとこういう分野が非常に伸びていくとか、そういうのを見ることで、このまんま1年間バスケットボール部で頑張っていれば自分もこんなふうになるのかなとか、そういうことを子供たちもイメージしながら楽しく作っているという現実があります。
  ただ、まあ時間がないという問題点もありますが、もう一つやはりICTの整備という部分で、現場では非常に困っております。コンピュータ室は校内に一つしかございませんので、それを使いたい時間に使えないというもどかしさがあります。このような現実を今後どういうふうに改善していったらいいかということも、大きな課題ではないかと思います。以上です。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  ほかに何か御意見ございますでしょうか。
【清水(静)主査代理】    では、簡単にいいですか。
  二つお願いします。アクティブ・ラーニング、数学的活動がこれから中心に置かれようとしていますので、その素材としては大変よい材料もたくさん含まれている分野だと思います。となると、いろんな概念とか手続、アルゴリズムなどを身に付けなくてはいけないのですけれども、それを欲張ってしまうと、それぞれの意味とか働きがぼんやりしてしまいますので、基本的に、一つは先ほど椿委員からも御指摘がございましたけれども、一連の活動を重視する方向で内容、あるいは目標を見直していくというのが必要かなというのが一つです。
  となると、例えば先ほど齊藤委員、中村委員から、資料7-1の2ページ目のところに、現行学習指導要領における手続的な内容が整理されておりますけれども、やはりそこにそれらを使ってどうするのかという、資質・能力の三つの柱でいくと、マル2とマル3を絡めたようなものも、場合によっては明確に示していかないと、どうしてもこの表にあることを中心とした授業になってしまう危険性がありますので、内容の整理の仕方も、この分野については特に考えていかなければいけないかなということを思いました。以上です。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。ほか、ございますでしょうか。
  それでは、議論が大体尽きましたかと思いますので、この議題につきましては、本日の御意見を踏まえて事務局で資料の作成をお願いいたします。
  議題の4として、その他としておりますが、何か委員の方から御意見ございますでしょうか。
  それでは、ないようでしたら、本日様々な御意見いただきましたが、そろそろ時間でございますので、本日はここまでにしたいと思います。本日お出しいただいた御意見につきましては、事務局で論点ごとにその趣旨を整理していただくようにお願いいたします。
  また、なお限られた時間内での議論でしたので、特に御意見やお気付きの点などがあれば、ペーパーで事務局にお送りください。
  本日予定されていた議題は、ここまででございます。
  最後に、次回以降の日程などについて、事務局より御説明をお願いいたします。
【仲教育課程専門官】    それでは、最初に椿委員と戸谷委員におかれましては、お忙しい中、資料作成とプレゼンをしていただきまして、まことにありがとうございました。
  次回の日程につきましては、調整させていただいて、改めて御連絡させていただきます。
  また、主査からもお話がありましたように、ペーパーによる御意見等をちょうだいいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  なお、本日の配付資料は机上にございます封筒に入れていただければ、こちらから郵送いたします。以上です。
【小谷主査】    それでは、本日の算数・数学ワーキンググループを終了いたします。どうもありがとうございました。

──  了  ──

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