教育課程部会 算数・数学ワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

平成27年12月17日(木曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省 東館3階 3F2特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 算数数学教育の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【仲教育課程課専門官】    それでは、定刻となりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会算数・数学ワーキンググループを開催いたします。
  開会に当たりまして、文部科学省大臣官房教育改革調整官の平野誠より御挨拶申し上げます。
【平野教育改革調整官】    失礼いたします。ただいま御紹介いただきました文部科学省大臣官房教育改革調整官の平野でございます。
  中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会に新たに設置されました算数・数学ワーキンググループの第1回会議の開催に当たりまして一言御挨拶させていただきたいと思います。
  このたびは、委員の皆様方におかれましては、大変御多用のところ、本ワーキンググループの委員をお引き受けいただきまして大変ありがとうございます。また、この師走のお忙しい中、お集まりいただきまして、本日はどうもありがとうございます。
  文部科学省におきましては、昨年11月の中央教育審議会総会におきまして、初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について諮問させていただきました。その後、中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会の下に教育課程企画特別部会を立ち上げ、14回の審議を経まして、今年8月に論点整理をまとめていただいたところでございます。後ほど、この論点整理の内容については説明させていただきますけれども、この論点整理におきましては、各学校段階、各教科等の改訂の基本的な方向性を示しているというところでございまして、特に算数・数学におきましては幼児期に育まれました数量、図形への関心、感覚等の基礎の上に、小・中・高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力を明確化し、実社会との関わりを意識した算数的活動、数学的活動の充実を図ってくことのほか、統計的な内容の改善といった内容についても検討していくことの必要性ということについても御提言を頂いたところでございます。こういった内容を踏まえまして、本ワーキンググループにおきましては、この論点整理の視点を踏まえた算数・数学教育の改善、充実について御議論をお願いしたいと考えているところでございます。
  スケジュール的なことを申し上げますと、本ワーキンググループの議論は、本年度末あるいは年度明け、来年度の明けの4月、5月ぐらいまでを目途に、大体8回ぐらいの開催を予定しておりまして、そこで一定の方向性をお示しいただきたいと考えているところでございます。その結果につきましては、教育課程部会などでの議論を踏まえまして、最終的には中央教育審議会として平成28年度中に取りまとめいただく予定の答申に反映させていただくということを予定しているところでございます。
  委員の皆様方におかれましては、是非、それぞれの御知見や御経験を踏まえまして、様々な観点からの忌憚のない御意見を頂きたいと思いますので、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
【仲教育課程課専門官】    議事に先立ちまして、本ワーキンググループの主査及び主査代理について御報告いたします。資料2の「初等中等教育分科会教育課程部会運営規則」に基づき、本ワーキンググループは教育課程部会の決定により設置されており、主査及び主査代理は教育課程部会長が指名することとされております。教育課程部会長と御相談し、小谷元子委員を主査に、清水静海委員を主査代理にお願いしておりますので、よろしくお願いいたします。
  それでは、次に、委員の皆様を御紹介いたします。資料1として本ワーキンググループの名簿を配付させていただいておりますので、御紹介いたします。
  まず、小谷元子主査でございます。
【小谷主査】    小谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    清水静海主査代理でございます。
【清水(静)主査代理】    清水でございます。よろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    宇野勝博委員でございます。
【宇野委員】    宇野と申します。よろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    大谷実委員でございます。
【大谷委員】    大谷でございます。よろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    齊藤一弥委員でございます。
【齊藤委員】    齊藤でございます。よろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    清水宏幸委員でございます。
【清水(宏)委員】    清水と申します。よろしくお願いします。
【仲教育課程課専門官】    椿広計委員でございます。
【椿委員】    椿と申します。よろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    戸谷圭子委員でございます。
【戸谷委員】    戸谷でございます。よろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    中川愼一委員でございます。
【中川委員】    中川でございます。よろしくお願いします。
【仲教育課程課専門官】    中村享史委員でございます。
【中村委員】    中村です。よろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    藤井斉亮委員でございます。
【藤井委員】    藤井です。よろしくお願いします。
【仲教育課程課専門官】    真島秀行委員でございます。
【真島委員】    真島です。よろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    山田知子委員でございます。
【山田委員】    山田です。よろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    本日は御欠席でございますが、板垣章子委員、丸橋覚委員が本ワーキンググループの委員に就任されております。
  委員の紹介は以上でございます。
  次に、文部科学省の関係者を御紹介させていただきます。まず、初等中等教育局主任視学官の清原でございます。
【清原主任視学官】    清原でございます。よろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    初等中等教育局視学官の長尾でございます。
【長尾視学官】    長尾です。よろしくお願いします。
【仲教育課程課専門官】    教育改革調整官の平野でございます。
【平野教育改革調整官】    よろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    教育課程課教育課程企画室長の大杉でございます。
【大杉教育課程企画室長】    大杉です。よろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    教育課程課課長補佐の米原でございます。
【米原教育課程課課長補佐】    米原です。よろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    教育課程課教科調査官の笠井でございます。
【笠井教科調査官】    笠井です。どうぞよろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    教育課程課教科調査官の水谷でございます。
【水谷教科調査官】    水谷です。よろしくお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    私は、教育課程課専門官の仲でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは、議事に入ります前に、小谷主査、清水主査代理から御挨拶を頂ければと思います。
【小谷主査】    主査を拝命いたしました小谷と申します。どうぞよろしくお願いいたします。座って失礼させていただきます。
  10年に一度の学習指導要領の改訂に当たります本算数・数学ワーキンググループは大変重要な役割だと考えております。私、まだなじみがないところもございますので、皆様に助けていただきながら、何とかいい方向でまとめていきたいと思っております。もちろん、算数・数学教育の指導要領は未来の日本を支える大変重要なものでございまして、これまでの全ての改訂に関しましては、同じように重要であったかと思いますが、特に今回のこの時期の算数・数学教育の在り方ということに関しましては、大変に重要な時期だと私は考えております。
  実は私、総合科学技術・イノベーション会議という内閣府の会議にも属しておりまして、そこで今、第5期の科学技術基本計画を策定しているところでございます。御存じの方も多いかと思いますが、日本では科学技術、人事育成も含めて5年に一度、基本計画を作っております。第5期が次年度から始まりますけれども、そこにおける一番大きなメッセージは、我々は大変革時代を迎えているということです。ここで言われる大変革時代といいますのは、今まで我々がなじんできた現実の社会、物理的な社会としておりますが、それと同じような存在感を持った新しい世界が開けている。それはサイバー社会とかデジタル社会と呼ばれているものですが、そういうものが同じようなリアリティーを持って我々の社会構造を大きく変革する時期に来ているということがメッセージでございます。それがどのようなものになるかということは、我々の経験を越えたところですので、全く見えない。そういう中で、これから若い人が育っていき、日本をリードしていくには、算数や数学、数理的なものの考え方が、これまで以上に重要になるかと思っています。
  そのような意味も込めまして、このワーキンググループで今後の算数・数学教育の在り方についてしっかりとした議論をしていくことが大変に重要だと思っております。私、力不足ではございますが、皆様のお力を頂きまして、いい提言をできればと思っております。どうぞ御協力をよろしくお願いいたします。
【清水(静)主査代理】    主査代理を指名されました清水でございます。ただいま、小谷先生から大変格調の高い、先見性のあるお考えをお示しいただきました。私の専門は算数・数学教育でございます。実は、ちょうど教育の量的な充実から質的な充実に変わる平成元年の頃、実はこちらでお世話になっておりまして、その後、研究者として算数・数学教育の研究に少し貢献をさせていただいたかなと思っております。どちらかというと、小学校の算数と中学校の数学がフィールドでありますので、数学の専門の先生方、小谷先生をはじめ大勢いらっしゃると思いますけれども、力を合わせて、今、小谷先生からお話がありました、将来予測不能な社会をたくましく生き抜いていく子供たちのためには、やっぱり算数・数学の学びを通して、しっかりとした資質・能力を身に付けていく必要があると私も考えますので、よろしくお願いします。
【仲教育課程課専門官】    ありがとうございました。
  それでは、本ワーキンググループの進行は、これより小谷主査にお願いいたします。
【小谷主査】    それでは、これより議事に入ります。
  初めに、本ワーキンググループの審議等につきましては、初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づき、原則公開による議事を進めせていただくとともに、第6条に基づき議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱うこととさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
  なお、本日は報道関係者より会議の撮影及び録音のお申出があり、これを許可しておりますので、このことについても御承知おきください。
  それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    配付資料の確認をさせていただきます。本日は、議事次第に記載しておりますとおり、資料1から9、その他、机上に参考資料を配付させていただいております。不足等がございましたら事務局にお申し付けください。なお、机上にこちらのタブレット端末を置いておりますが、その中には本ワーキンググループの審議に当たり参考となる審議会の答申等をデータで入れております。また、本ワーキンググループの設置に係り、新たに中央教育審議会初等中等教育分科会の委員になられた先生方におかれましては、机上に辞令をお入れしたクリアファイルを置かせていただいておりますので、御確認をお願いいたします。
  以上でございます。
【小谷主査】    それでは、教育課程企画特別部会論点整理、改訂の検討体制、今後のスケジュール等について事務局から御説明をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    失礼いたします。それでは、お手元の資料4、それから資料5、それからお手元に緑色の冊子がございますけれども、これが論点整理の本文でございます。これらに基づきまして、少しお時間を頂きまして、本ワーキングに関連する部分を御説明申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  まず、資料4でございます。「学校段階等別部会及び教科等別ワーキンググループ等の設置について」という資料の4の紙でございますけれども、これを1枚おめくりいただきますと、次期学習指導要領改訂に向けた検討体制ということで組織図が載ってございます。御覧のように、全体的な議論のお取りまとめを頂く教育課程部会、それから基本的な方向性の御審議を頂く教育課程特別部会の下に22の専門部会を御設置いただいたところでございます。今回は、教育課程の相対的な構造ということと、教科それぞれの本質的な意義ということの双方を検討していくということでございまして、例えば下の一番左側にあります総則・評価特別部会におきましては、教科横断的な全体的な審議の状況を見ていくというようなこと、一方で各教科ワーキングにおきましては各教科の本質的な意義、資質・能力の在り方、それらと内容の関係性、バランスということも御検討いただくということで、いろいろ相互調整をさせていただきながら進めさせていただくことになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  御覧のとおり、算数・数学ワーキンググループは左から7番目にございます。その隣に理科ワーキングがございますけれども、その間に高等学校の数学・理科にわたる探究的科目の特別チームというのが今回設置されてございます。一部の先生方はこちらにも御協力を頂いておりますけれども、後ほど御説明させていただきます、高校における、いわゆる、今、数理探究と呼んでいるものですけれども、これにつきましては、こちらの特別チームの方で議論いただくと。随時、両方の審議の状況も結合させていただきながら進めさせていただきたいと思っております。
  それから、資料5でございますけれども、今後のスケジュールでございます。冒頭、平野教育改革調整官からも御挨拶の中で御説明を申し上げましたけれども、昨年11月に諮問が出されまして、それを受けて14回にわたり教育課程企画特別部会が開催されたところでございます。そして、この緑色の冊子として基本的な方向性をお取りまといただきました。それを受けて、現在、各教科等別ワーキングについて論点整理を踏まえた御審議を開始していただくという段階でございます。これを大体、年度明けぐらいにおまとめいただき、それを、下に平成28年というところがございますけれども、教育課程部会又は企画特別部会において全体の取りまとめを審議のまとめとしていただきます。その後、平成28年度内でございますけれども、中教審としての答申が28年度内ということでございます。一部、小学校の授業時数の在り方、これにつきましては、論点整理の中にもございますけれども、少し全体に関わる早めの整理が必要ということで、年内ということはちょっと難しくなってまいりましたけれども、年明け、小学校部会などで少しまとめの議論を別途行うということにしております。
  そして、この下にございますように、こうしたスケジュールを踏まえた場合、幼稚園は平成30年から、小学校が32年、翌年が中学校、そして34年から高校が年次進行という形での実施というスケジュールでございます。
  それでは、緑色の冊子の方にお移りいただきまして、諮問の内容と基本的方向性としておまとめいただいた論点整理の概要を御説明させていただきたいと存じます。冊子の右肩に諮問という附箋が付いているかと思いますけれども、その辺りをお開けいただきますと、昨年11月の諮問文がございます。諮問文本体がございまして、その裏面が理由ということで、諮問理由でございます。かいつまんで御説明申し上げますが、今の子供たち、これからの子供たちが社会で活躍する頃、その頃の社会の在り方、冒頭、主査からも大変革時代というお話がございましたけれども、様々な変化を迎える中で子供たちにどういう力が求められるのか、そしてそれを教育を通じてどのように養っていくのかということもイメージしながら教育課程の在り方について御議論いただきたいということ。現行学習指導要領前回改訂の様々な成果や課題というものも踏まえながら、理由の次のページになりますけれども、一人一人の可能性をより伸ばし、新しい時代にふさわしい学習指導要領の在り方ということを考えていく必要があるということ。ESDなども含む様々な教育の新しい取組の成果も踏まえながら、子供たちに何を教えるかという、知識の質や量の改善はもちろんのこと、それをどのように学び、どのような力として身に付けていくかという観点から改善を図っていく必要があるのではないかということ。具体的には三つの柱でございますけれども、その下にございますように、「第一に」というところで、教育目標の内容と学習指導方法、学習評価の在り方を一体として捉えた学習指導要領の基本的な考え方。この基本的な考え方としておまとめいただきましたのが本論点整理ということでございます。
  そして、さらに次のページの中ほどに「第二に」ということでございますけれども、育成すべき資質・能力を踏まえたそれぞれの教科・科目の在り方ということで、これをまさにこれから各ワーキングで御議論いただくというところでございます。
  そして、更にその次のページの下にございますように、「第三に」というところで、学習指導要領の理念を実現するためのカリキュラム・マネジメント、学習指導方法の改善、評価の改善、様々な条件整備、こういったことも学習指導要領の在り方にとどまらず、併せて御議論いただこうという、この三つの柱に沿って諮問をされているというところでございます。
  これに基づきまして14回にわたり御議論を重ねていただき、基本的な方向性としておとりまとめいただいたのが論点整理でございまして、冊子の冒頭に戻っていただけますでしょうか。論点整理ということで目次がございまして、1枚おめくりいただきますと1ページというところで「2030年の社会と子供たちの未来」ということでございます。先ほどスケジュールで御説明申し上げましたように、小学校におきましては2020年からの新しい学習指導要領の実施ということになるわけでございますけれども、指導要領自体がおおよそ10年に一度の改訂ということで考えますと、大体2030年頃までその役割を担っていくということでございます。その2030年頃の社会、そして、また、その先ということも見通しながら、子供たちに初等中等教育を通じてどのような力を育んでいくのかというような御議論を頂いているところでございます。
  そして、今回、学校種あるいは教科を超えた共通の視点として御提示いただきましたのが、3ページ目にございます「社会に開かれた教育課程」という視点でございます。社会に開かれた教育課程ということで、3ページの一番下に1ということでございますけれども、社会や世界の状況を幅広く視野に入れながら、より良い学校教育を通じてより良い社会を創るという目標を、教育課程を介して社会と共有していくということ。それから、次のページになりますけれども、これからの子供たちに求められる力を明確にし、そしてそれをしっかりと育んでいくという教育課程であるということ。そして、3番目に、教育課程の実施に当たって、様々な地域の資源を活用したり、社会教育との連携を図るなど、教育課程の在り方、学校教育の在り方を学校内に閉じずに、目指すところを社会と共有、連携しながら実現させていく。こうした社会に開かれた教育課程という理念を共通に目指していこうという御提言を頂いているところでございます。
  そして、5ページ目には、前回改訂の成果と次期改訂に向けた課題ということでございますけれども、前回改訂、現行学習指導要領におきましては、子供たちの生きる力の育成をより一層重視するという観点から、特に学力に関しましては、学校教育法30条2項を踏まえた学力の3要素ということで、知識、技能、思考力、判断力、表現力、そして主体的に学びに取り組む態度ということ、この三つをバランスよく育むということが目指されたということ。そして、教科を超えた視点として、言語活動でありますとか、体験活動の重視ということが出されたところでございます。これを踏まえまして各学校では真摯な取組が重ねられているということ。そして、その成果の一端として近年、改善傾向にある国内外の学力調査の結果があるということではないかということ。こうした成果を踏まえましたら、前回改訂において重視されたこうした学力のバランスの取れた育成でありますとか、言語活動、体験活動の重視といった点については、その成果をしっかりと受け継ぎ、充実を図っていくということが重要であるということと考えられます。
  一方で、6ページ目でございますけれども、こうした真摯な取組が着実に成果を上げつつある一方で、我が国の子供たち、判断の根拠や理由を示しながら自分の考えを述べたり、実験の結果を分析、解釈して考察して説明したりといったこと、また、社会参画の意識などにつきましては課題が見受けられるという指摘がなされているところでございます。こうしたことにつきましては、例えば学力にとどまらず、生きる力という全体像について教育課程あるいは各教科の授業への浸透や具体化、こういったことを更に考えていく必要があるのではないかということ。6ページ目、一番下にございますけれども、教育課程の全体像を念頭に置いた教育活動の展開という観点から、更なる見直しということを考えていく必要があるのではないかということ。
  7ページ目の冒頭にございますけれども、これまでの学習指導要領は、知識や技能の内容に沿って教科ごとに体系化されているけれども、今後は更に、教育課程全体で子供たちにどういった力を育むのかという観点から、教科を超えた視点も持ちつつ、それぞれの教科を学ぶことによってどういった力が身に付き、そしてそれが教育課程全体の中でどのような意義を持つのかということを整理しながら、教育課程の全体構造を明らかにしていく必要があるのではないかというふうな御提言を頂いているところでございます。
  そして、新しい学習指導要領が目指す姿として、7ページ目下にございますように、何ができるようになるのかという観点から育成すべき資質・能力を整理するということ。その上で、7ページ目でございますけれども、その観点から、何をどのように学ぶのかという子供たちの具体的な学びの姿を考えながら構成していくということ。また、学ぶとはどのようなことか、知識とは何かといった、学びや知識に関する科学的な知見の蓄積ということも生かしていく必要があるのではないかということでございます。
  9ページ目から、育成すべき資質・能力についての基本的な考え方ということでございますけれども、11ページ目をお開きいただきますと、11ページ目の下に、特にこれからの時代に求められる資質・能力ということでございます。将来の予測が困難な、複雑で変化の激しい社会、あるいはグローバル化が進展する社会、そのような社会にどう向き合い、一人一人が幸福な人生を送っていくためにはどのような力が求められるのかということ。
  12ページ目にございますように、様々な情報を受け止めて主体的に判断しながら、自分を社会の中でどのように位置付け、社会をどう描くかを考えながら他者と一緒に生き、課題を解決していくということが求められるということ。また、そうしたことのためには、情報活用能力でありますとか、クリティカル・シンキングと言われる力でありますとか、統計的な分析に基づく判断する力でありますとか、こういった力が求められるのではないかということ。また、我が国が科学技術・学術研究の先進国として将来にわたり存在感を発揮していくためには、子供たちがそうしたキャリアに関心を持つことができるよう、理数科目等に関する学習への関心を高め、裾野を広げていく、そういったことも必要ではないか。また、自己の感情や行動を統制していく力ということも求められるのではないかということでございます。
  また、13ページ目でございますけれども、グローバル化する社会の中で、言葉や文化に対する理解を深めて、自国の文化を語り、継承したり、異文化を理解して多様な人々と協働したりということ、こういったことも求められるということでございますけれども、このように資質・能力、多種多様であるわけでございますけれども、これらを教育課程に落とし込んでいくというためには、こうした資質・能力を構成する共通の要素ということを整理して、それらに基づき教育課程を構造化していく必要があるのではないかというような御議論を頂いたところでございます。
  そして、具体的にその要素の構造としてお示しいただきましたのが、冊子に小さい附箋が、諮問とは別の附箋が付いているかと存じますけれども、そこをお開きいただきますと、そのページの左下に27という番号が付いているスライドになりますけれども、育成すべき資質・能力の三つの柱ということでございます。三つの柱、「何を知っているか、何ができるか」「知っていること、できることをどう使うか」「どのように社会・世界と関わりよりよい人生を送るか」、この三つの柱に沿って教育課程を今後構造化していく必要があるのではないかというような御提言を頂いたところでございます。
  本文13ページの方にお戻りいただきますけれども、こうしたことをイメージしながら、それらを幼児教育から高等学校までを通した見通しを持ってつないでいくということ。また、14ページ目にございますように、特別支援学校から通常の学級まで、多様な学びの場ということで連続性を持たせて子供たちの学びを確保していくということ。そういったことを考えながら、全体的な構造を検討していくということ。15ページ目の真ん中より下のところに、教育課程の総体的構造の可視化というところがございますけれども、各教科で育まれた力ということと、教科以外の文脈における実社会の様々な場面で活用できる汎用的な力ということの双方を教育課程の総体的な構造の中で育んでいくということ。そのためには、15ページ目下にございますように、各教科を学ぶ本質的な意義ということをいま一度捉え直しながら、それらの教科等で育成される資質・能力の間の関連付けや内容の体系化を図って、資質・能力の全体像を整理していく、こうしたことが重要であるという御提言を頂いているところでございます。
  16ページ目からはアクティブ・ラーニングについてでございますけれども、18ページ目の最初の丸にございますように、アクティブ・ラーニングにつきましては、特定の型を普及させるということではなく、ここに1、2、3というふうにございますけれども、習得・活用・探究というプロセスの中で、問題発見・解決を念頭に置いた深い学び、あるいは自分の考えを対話を通じて広げていく対話的な学び、それから粘り強く学習に取り組み、振り返って次につなげる主体的な学び、この三つの観点から指導や学習ということを見直していく、こうした視点として御提示いただいているところでございます。
  19ページ目からは、学習評価の在り方、20ページ目には評価の三つの観点ということでお示しいただいているところでございます。
  それから、21ページ目からは、指導要領の理念実現のための必要な方策でございまして、カリキュラム・マネジメントの重要性、22ページにはカリキュラム・マネジメントの三つの側面ということでございますけれども、カリキュラム・マネジメント。それから、24ページ目からは、教員の養成、採用、研修の在り方といった点。また、ICTも含めた必要なインフラ環境の整備等につきましても併せて御提言を頂いているところでございます。
  ここまでが総論部分でございまして、26ページ目から各学校段階、教科等における改訂の具体的な方向性ということで御提示いただいております。時間の関係で全ては御説明しきれませんけれども、26ページ目、幼児教育、27ページ目、小学校でございます。それから30ページ目、中学校、高等学校という形で順次、御提言を頂いているところでございます。32ページ目には特別支援教育、そして33ページ目からが各教科・科目等の内容の見直しというところでございます。算数・数学につきましては37ページをごらんいただければと思いますけれども、37ページの丸4、算数・数学でございます。現行学習指導要領の改訂に基づく充実の状況、その一方でTIMSSの結果等にも出ておりますけれども、学習する楽しさや学習する意義の実感等については更なる充実が求められるのではないかということ。数量や図形に関する知識や技能ということは、生活や学習の基盤となるものであり、また、数学的な思考ということは、根拠に基づき考えを深めたり、意思決定を行ったりというために欠かせない力であるということ。子供たちがこうした算数・数学の良さを認識して学ぶ楽しさや意義を実感できるように、次期改訂に向けては幼・小・中・高という見通しの中でどのような資質・能力を育むのかを整理し、実社会との関わりを意識した活動ということを重視していく必要があるのではないかということ。
  また、社会生活の様々な場面において必要なデータを収集、分析して傾向を捉えて課題を解決したりしていく、こうしたことも求められていることから、高校の情報科との関連も図りつつ、統計的な内容の改善について検討していく必要があるのではないかということでございます。
  37ページ目、一番下の丸は、高等学校教育でございますけれども、先ほど申し上げた数理探究、これにつきましては別途、特別チームにおいて検討させていただくところでございます。
  こうした、いずれにいたしましても、48ページ目にございますように、各教科の検討に当たりましては、企画特別部会がまとめたこの論点整理の議論も踏まえながら、教科や学校の中に閉じた議論ではなく、カリキュラム全体としてどのような資質・能力を育成すべきかという点を踏まえて検討を行うことが求められるということでございます。
  最後に、先日、第2回の総則・評価特別部会、先ほど御覧いただきました検討体制図の一番左にございました、教科横断的な視点で議論の取りまとめを行っていくところでございましたけれども、こちらにおきまして、算数・数学は今回、第1回でございますけれども、既に議論が行われている教科等別ワーキングの状況につきましては、御報告をさせていただいたところでございます。議論の状況につきましては、論点整理に沿った検討が各ワーキングで進められているということに関して特別部会で感謝の意が述べられますとともに、以下5点を各ワーキングにお伝えしたいということで言づかってまいりましたので、総則・評価特別部会の羽入主査に代わりましてお伝えをさせていただきます。
  1点目は、各ワーキンググループの検討事項のうち、他教科の検討にも関わる重要な内容に関しましては、早い段階で議論を行い、総則・評価特別部会でありますとか教科等別ワーキングにおいてもしっかりと検討できるようにスケジュールを御検討いただきたいという点でございます。
  それから2点目でございますけれども、論点整理にもございましたように、社会に開かれた教育課程という観点からは、学習指導要領の公的な性格は踏まえつつも、学校関係者のみならず、例えば教職課程で教員を目指す学生さんでありますとか、学校に関わる地域の方々が読んで、学習指導要領の趣旨が十分伝わるような構成や文章とすることを心掛けて御検討を頂きたいということでございます。
  それから3点目は、発達に応じた目標や内容の系統性という縦の軸と、現代的な課題に教科横断的に対応するという横の軸の双方を意識しながら、各教科が持つ意義を明確にしていくという観点から育成すべき資質・能力の御検討を頂きたいということでございます。
  それから4点目でございますけれども、特に小・中学校の教科、あるいは高校の共通必履修科目につきましては、卒業後、特定の学問分野や職業に進む場合だけではなく、どのような職業に就くとしても生かすことができるような教科の本質的な学びということを重視し、資質・能力の在り方を御検討いただきたいということでございます。
  それから、最後になりますけれども、各教科ワーキンググループにおきまして、教科の特性、独自性を踏まえて検討を進めていただく一方で、総則部会あるいはこれから学校種別部会、小・中・高それぞれ立ち上がりますけれども、これらの部会における全体的な構成に関わる議論の状況も踏まえながら御議論をお願いしたいということで言づかってまいりましたのでお伝えをさせていただきました。
  大変長くなりまして恐縮ですけれども、以上になります。ありがとうございます。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。大変中身の濃い情報を短い時間で端的に伝えていただきました。
  それでは、今までの御説明について質問等ありましたらよろしくお願いいたします。挙手をお願いいたします。
  特にございませんでしょうか。それでは、続きまして、本ワーキンググループにおける検討事項、算数・数学における目標、指導内容等について事務局より御説明をお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    それでは、資料8及び資料9を用いて簡潔に御説明させていただきたいと思います。
  最初に資料8を御覧ください。当ワーキンググループにおける検討事項をまとめております。1から4の四つの内容を検討事項として記載しております。まず1、算数・数学を通じて育成すべき資質・能力についてです。それぞれ、算数・数学を学ぶ本質的な意義や他教科との関連性について、三つの柱に沿った育成すべき資質・能力の明確化について、幼稚園・小学校・中学校・高等学校を通じた算数・数学において育成すべき資質・能力の系統性について、算数科・数学科において育成すべき資質・能力と指導内容との関係について、そして統計的な内容等の充実についてとなっております。そして2は、アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、指導等の改善充実の在り方について。3として、評価の在り方について。4は必要な支援、条件整備等について。この中の支援とは、特別支援教育の観点から必要な支援等を含みます。
  全体的な内容は他教科と共通となっておりますが、統計的な内容等の充実につきましては、資料7の2ページ目、4番目の白丸に記載しておりますとおり、先ほど御説明いたしました中間取りまとめにおける算数・数学固有の検討事項となっております。
  次に、資料9をごらんください。こちらは、現行の学習指導要領、学習指導要領改訂に向けた方向性、算数・数学の現状と課題の3点について簡単にまとめたものでございます。
  まず、現行の学習指導要領についてです。右下にページ番号を付しておりますが、まず2ページ目、こちらはこれまでの学習指導要領の変遷を記載しております。3ページ目では、現行の学習指導要領はこれまでの理念を継承し、これからの社会において必要となる知・徳・体のバランスのとれた「生きる力」をより効率的に育成することを目指しているということが記載されております。
  4ページ目以降は、現行の学習指導要領における算数・数学についてまとめたものです。4ページ目には、小・中・高、それぞれにおける目標、学年又は分野の目標、指導計画の作成と内容の取扱いについてまとめております。
  5ページ目には、現行の学習指導要領における改善等をまとめております。小学校及び中学校の授業時数を増加し、内容を充実するとともに、思考力・判断力・表現力等の育成の重視、言語活動の充実を図りました。高等学校では科目編成の改善を行っております。
  続きまして、学習指導要領改訂に向けた方向性についてですが、7ページ目及び8ページ目は、先ほど御説明いたしましたので省略させていただきまして、9ページ目を御覧ください。こちらは、資料7の2ページ目、5番目の白丸に記載しております数理探究(仮称)について記載したものでございます。本件は高等学校の数学、理科にわたる探究的科目の在り方に関する特別チームにおいて検討が始まっているところですが、文部科学大臣から中央教育審議会に対する諮問文に記載のあった、より高度な思考力・判断力・表現力等を育成するための新たな教科・科目の在り方の検討として、スーパーサイエンスハイスクールにおける取組事例なども参考にしつつ、数学と理科の知識や技能を総合的に活用して、主体的な探究活動を行う新たな選択科目として検討を開始したものです。したがいまして、前述しました特別チームにおける検討内容を当ワーキンググループでの検討に反映させる、又はその逆もあるかもしれませんが、そういったことが必要になることも考えられます。
  続きまして、11ページ目以降が算数・数学の現状と課題についてまとめたものです。11から19ページにかけましては、PISA2012、TIMSS2011及び全国学力・学習状況調査の結果について御紹介しているものです。11ページ目では数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーの3分野全てにおいて平均得点が過去最高となっている一方、上位層の割合につきましては下の方の図になりますが、トップレベルの他国等より低くなっているという結果になっております。
  次に、小学校及び中学校についてです。12ページ目は学習意欲面についての調査結果ですが、いずれの項目も国際平均からかなり低い結果となっており、特に数学ですとか理科の楽しいかどうか、職業に就きたいかどうかという面については顕著に差が出ております。また、13ページ目と併せて御覧いただくとよいと思いますが、児童生徒は算数・数学の重要性は認識しているものの、興味や理解度について課題があるというふうに思われます。
  14、15ページ目では、関心や意欲が高い児童生徒の方が平均正答率が高い傾向にあること、16、17ページ目では中学校において教師と生徒の認識に差が出ていますが、実生活との関連付けについて、徐々にではありますが意識が高まっていることがうかがえます。
  18ページ目は算数における内容に係る傾向についてまとめたものです。
  19ページ目に参ります。学級やグループでの話し合い活動と平均正答率の関係についてまとめたものです。グループでの話し合い活動などができていると思っている児童生徒の方が平均正答率が高いという結果が出ております。
  続きまして高等学校についてです。ページ数が消えてしまっておりますが、20ページ目に、数学教育の現状として科目構成、履修率、スーパーサイエンスハイスクールについて記載しております。
  次の21ページ目は課題をまとめたものですが、興味・関心等につきましては、小学校、中学校と同様の課題があることが分かります。
  22ページ目に参ります。理数科の現状と課題をまとめたものでございます。理数科では、生徒の確保に苦心しているという状況や、学校や地域によって課題が異なっているという面が見られます。
  最後のページでございますが、算数・数学固有のものではありませんが、中学生、高校生の意識についてまとめたものです。調査は2009年2月のものですが、アメリカ、中国、及び韓国に比べて日本の生徒は、自己肯定感、社会参画意識が低いという結果が出ております。
  以上、少々駆け足となりましたが、検討事項及び現状と課題について御紹介いたしました。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  それでは、本日は第1回目ですので、初めての顔合わせでもあります。皆様から御自由に御意見を頂きたいと思います。先ほど御説明がありました、教育課程企画特別部会論点整理や本ワーキンググループにおける検討事項を踏まえて意見交換をお願い申し上げます。委員の先生方の御専門に関連して、特に検討事項に関して、日頃からお考えになっていること、取り組んでおられることなどあれば御発言いただいても結構でございます。なお、限られた時間でございますので、お1人当たり3分程度で御発言いただきますようよろしくお願いします。
  御意見を頂くときのルールでございますが、御意見のある方はあらかじめ名札をこのように立てていただきます。立てていただきました方を私の方で順次指名させていただきます。発言が終わりましたら、このように元に戻していただきます。御発言の際にはマイクのスイッチをオンにし、発言後にオフにお願いいたします。
  それでは、どなたからでも結構でございますので、御意見をお願いいたします。お願いいたします、椿委員。
【椿委員】    独立行政センター統計センターの椿です。
  今回の諮問というのは、今、説明いただいた限り、大変重要な意義があるということが分かりました。私は、統計という分野から来ております。基本的に統計自体を数学教育、算数教育の中で見れば、既存のいろいろな数学理論の構成体という形でできています。先ほどからありますように、数学や数理科学的な素養をどのように社会に生かしていくか。すなわち、問題を発見する能力、意思決定を行って問題を解決していく能力、あるいは実装していく能力というものをどのように開発するかということに関しては、統計学はもともと科学を作る、計量科学を作る方法論として生じて、数学を利用してきました。数学を言語とすれば統計は文法であるというような形で統計的体系を作ってきたわけです。私は、数学や数理科学のかなりの部分も、科学とかシステムを作る文法といいますか、言語という機能だけではなくて文法であるという意識を持っています。
  その意味では、先ほどありましたように、日本の生徒さんが数学に対する興味とかおもしろさというのが低下している。諸外国よりも知識に関する能力はあるにしても、それを生かすという感覚がないということは非常に問題だろうと考えているところです。
  例えば小学校のかけ算にしても何かがかけ算的に動いていくという世界と、たし算的に動いていくという世界とがあることを理解し、その上で、高校で習う対数というものの機能、数学が世の中に果たす機能というのを明確にしていただくということを是非示していただきたい。そうすれば、私は日本の生徒さんたちにも、数学はやはり美しいということと同時に、世の中の思考の本質の部分であるということをきちんと理解していただいて、「分かる」ということの楽しさの中に、ありそうな世の中との関係性ということを十分示してあげて、理科あるいは社会というような科目と連携できる数学教育をやっていただければと思います。私ども統計の人間は、統計科学についてもそのような立場で、指導要領の中に反映させていただければ幸いだと考えています。
  極めてジェネラルなことでございますけれども、以上でございます。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  ほかにどなたか。中村委員、お願いいたします。
【中村委員】    山梨大学の中村です。私の専門は算数・数学教育ということで、今回の諮問を受けて、この算数・数学ワーキンググループで検討していきたいと思うことについてちょっとお話をさせていただきます。
  学習指導要領を作るというか、考えるときには、やはり不易と流行という言葉がありますけれども、過去に学ぶことが非常に重要だと私は考えております。そういう点、算数・数学では、昭和43年の学習指導要領、これに書かれた数学的な考え方を通して現代化と言われた簡潔・明確・統合という観点、これをもう1回議論し直す、見直すということが必要ではないかと思います。
  例えば、簡潔というのは、ここで言いますと資質・能力に関わる、いわゆる能率性や形式性、明確には論理的に正しく明らかに考える、あるいは分かりやすいというようなやり方ですね。そして、統合は一般や拡張というように、ここで算数・数学で育成すべき資質・能力がある点、明確になるのではないかと思います。そういう意味で、また、高校では昭和30年に数学1のところで中心概念という形で、数学的な考え方の内容の例示をしております。これが、例えば概念を記号で表すこととか、あるいは演繹的な推論によって知識を体系立てることとか、対応関係や依存関係を捉えることなど、数学的な考え方についての様々な資質・能力も含めたものが書かれています。
  そういう意味で、まずこれまでの先ほどの資料の中に学習指導要領がどのような改訂をされてきたかということがありますが、算数・数学のカリキュラムはどういうふうな形で教育課程から来たかということをもう一度振り返り、その中で、今までの中で重要だというものを残さなければいけない、いわゆる不易の部分と、それから新しく未来に向けて加えていかなければいけない、これをきちんと峻別してやっていくべきだと私は考えています。
  全体的な進め方というか、方向性についてちょっと発言させていただきました。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  ほかにございますでしょうか。中川委員、よろしくお願いします。
【中川委員】    小学校の校長の立場で話をさせていただきます。育成すべき資質・能力を考えるときに、教員の資質・能力ということが参考になると思います。教材を見る力、授業テクニック、子供を掌握する力などからなっている力だと思います。しかしながら、ベテランでなく、そういった能力を十分に持っていない初任の先生がすばらしい授業をすることがあります。それは、心のエネルギーが大きいからだと思うんですね。そう考えると、資質・能力には心のエネルギーがもしかしたら大きな役割があるのかもしれない。小学校の学習指導要領は事柄の羅列で作られています。他教科は学年目標にまで態度等が示されていますが、小学校算数の学習指導要領は教科目標に態度が示されているだけです。知っていること、できることをどう使うかというときに、どう使おうとするかという態度や心のエネルギーにも少し光を当てることが重要なのではないかなと考えます。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  大谷委員、よろしくお願いします。
【大谷委員】    私は、現行の中学校の指導要領の作成協力者をさせていただき、また、現在の教育課程実施状況調査の実施にも関わらせていただきました。その観点で、今回、アクティブ・ラーニングという言葉が非常に鍵となることかと思いますけれども、三つの視点というのは大変、算数・数学にとっては正に的確な視点ではないかと思っております。すなわち、問題発見や解決をするということに当たり、構想を立てていくということ、そしてそれを評価・改善する機会というのが、今の中学校の教員では4割ほどしか実施されていないという、そういう現実もございます。
  また、学んだ内容を振り返って新しいことを見出したりする、前に学習したこととの関わりを見出すという、そういう振り返るということについても6割程度の実現状況にとどまっております。
  また、視点の2にありますけれども、数学はそもそも議論をする前提や仮定がコミュニティの間で開かれているから発達しているというところがございますので、その上に算数・数学をする本質がアクティブ・ラーニングに象徴されて語られているかと思いますので、アクティブ・ラーニングという言葉の背景には、算数・数学そのものの算数的活動や数学的活動を充実するという今回のポイントを非常にうまく反映した形で実現できるのではないかという期待を持っております。
  以上でございます。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  ほかにございますか。今日、皆さんから必ず一言頂きますので、早い者勝ちということもありますので、是非、積極的に御発言いただければと思います。じゃあ、目の合った清水委員、お願いします。
【清水(宏)委員】    山梨県の教育委員会の清水と申します。私は4年前まで国立教育政策研究所にお世話になっておりまして、中学校数学の全国学力・学習力調査の問題作成と分析に携わってまいりました。
  その中で、中学生の子供たちの何が課題かというところを端的に申し上げますと、この論点整理の6ページの、一番上の丸にも書かれていますように、実験結果を分析して、解釈、考察し、説明したりすることなどについて課題があるということです。これはPISA調査などの国際調査も含めて課題が指摘されているかと思うのですが、数学に限って申しますと、やはり日常事象、これは全国調査のB問題に象徴されるような、子供たちの身近な問題を数学化して問題解決することや、それから数学的事象、それは図形の証明あるいは文字式で説明をするというような、様々な事象の中で、それを自分なりに解釈して数学の舞台に載せて、その数学を使って結果を出す。その結果を出すところまでは先ほど椿委員もおっしゃったように、中学生は非常によくできる。ただ、その結果に基づいて、それを根拠にして、例えば理由を説明しましょうとか、それから、数学的に表されている事実をきちんと数学の言葉を用いて説明しましょうといったことに対して非常に課題が大きいということがあると思います。
  その中で、先ほど私が数学の舞台に載せてという話をしたのですが、そのときに事象を式に表すとか、関係式で表すとか、あるいはもう数学の舞台に載せて表されている式を事象に即して解釈するとか、関係式を解釈するとかという、こういうところに非常に課題があるということです。先ほど椿委員が、数学は言語であり、文法が大事であるとおっしゃっていたのですが、そのところに大きな課題があり、浮き彫りになっているという状況を考えますと、やはりこれからの新しい学習指導要領の、先ほどの三つの柱の、どう使うかというところに関わると思うのですが、もちろん何ができるかというところにも関わると思うのですが、そういう子供たちの今の課題を踏まえて、現行のものを更に充実させていきながら、これからの算数・数学の学習指導を考えることが必要ではないかと考えております。
  ありがとうございました。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  ほかに御発言。戸谷先生、お願いいたします。
【戸谷委員】    明治大学の戸谷でございます。私は、バックグラウンドが数学とは何の関係もなく、指導要領にも関係をしたことがございませんで、もともと文系ですし、社会に出て、必要になって統計を使わざるを得なくなったというか、社会に出て、大学院に戻って、そこで初めて必要なことを勉強し始めたというようなバックグラウンドです。
  現実の問題として、私が勉強した頃の数学というのは、高校では進学校で文系、理系どちらを受験するかを決めると、数学とは全然関わりなくなると。むしろ数学は暗記科目というような意識でひたすら暗記の勉強をするというような形でした。社会に出て銀行から、それからコンサルティングに行きまして、社会人大学院に戻って、椿先生に御指導いただいたのですけれども、そこで初めて、現実の問題を解くのに数字がいかに大事かとかデータがいかに大事かというようなことが分かって、七転八倒して数学統計を勉強したというような経験がございます。もっと若い頃から、小学校だと理想的なのかもしれないですけれども、中学・高校のときから数字と社会の問題というのがどういう関連があるのかということを意識を持って勉強していたらもっと楽だっただろうなというようなことを感じていました。
  そんな経験があるので呼ばれたのかなと、ややアウトサイドな感じがするのですけれども、そういうふうに思っています。
【小谷主査】    大変貴重な御意見をありがとうございました。
  ほかにございますでしょうか。真島委員、よろしくお願いします。
【真島委員】    私は大学の数学の教員として、専門が数学の者としておりますけれども、高校でも教養基礎という形で自然現象を解析するといいますか、そういった関連で高等学校の学習指導要領の内容全てを使って見ることができるという、そういった話をしております。
  私自身、数学の教育に携わってきまして、常に頭にあったことは、先ほどおっしゃったように、数学はあらゆる科学の言語であるという認識の下に、役立つに違いないのですけれども、それを教えたことがどうやったら児童生徒、学生が本当に役立てられるようになるか。いわゆる転移、トランスファーなのですけれども、それをどうやって起こせるのか、ずっと私は課題として持っておりました。単に知識を教えて、そして練習問題をさせて、それで自得しなさいと、自分でそれを学習しなさいという、それだけではどうも教育学者の方とか心理学者の方々の話を聞くと、だめで、ワンステップ、自分自身で先生がやってくれたことを自覚的にいいものだというふうに思って、それを更に自分自身で練習するといいますか、そういったことが必要だというふうに思って、なるほどなと思っているところですけれども、私が子供の頃にあったものについては、例えば理科の教材、力学的な話が微積分のところに入っていたりということが、何年か、最近のところでは離れてしまった。そこで数理探究という科目を今また作ろうとしている。そういったのはいいことだと思いますし、また、前の学習指導要領で高校のところで数学活用というものを作りましたけれども、そこが利用されないという残念なことがあります。
  結局は時間数になってしまうと思うんですね。ただ、それを数学だけが突出して増やすということは難しいのは当然分かっております。総合的な学習のテーマがあっても、そこのところに割と数学の先生たちは控えめに、余り乗り出さないというところがあって、通常、高校までの先生とかとはそんなに応用に関心を持って教えるという気がないといいますか、そういうところがあって、そこのところを開発するという必要もあり、総合的な学習時間を含めて、より汎用性のある力を育むものというのは、一般的に教える、各教科一緒になって教えるというか、そういうシステムを考えた方がいいんじゃないかと最近思っております。
  私、附属中学校長を経験しまして、そこで研究開発されていることがコミュニケーションデザインということで、各教科横断的に共通の論理的な思考法とかそういったことに関してはある程度一緒にしてA問題的な基礎的なものとし、そして各教科や総合的な学習の時間で応用するB問題的なものをやっていこうという、そういったことを考えているという、そういうところも見ております。ということで、どうやったら応用できるかというそこの部分を私自身も考えて提言していきたいと考えております。
  以上です。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  ほかに。では、山田委員、よろしくお願いします。
【山田委員】    お願いいたします。私、高校で校長をやっておりますので、高校現場という立場で少し発言させていただきたいと思います。高校は御承知のように、義務教育の学び直しからやらなきゃいけない学校から、SSHのような学校まで非常に幅広く、多種多様な高校があって、一律に高校ということで語るのはとても難しいです。それぞれの学校に応じた、育てたい生徒像、資質・能力というのを定めてやっているという現実であります。
  現行の学習指導要領で共通必履修科目というのが入って、やっぱりそういう共通なものを高校としてどこの学校、どういう学校に入ろうと、こういう力が必要なんだっていうものを示せてもらえたというのはとてもやりやすいというか、ありがたかったなと思っていますし、「データの分析」が新たに入って、社会に出てから、多分、どんな分野に行っても必要とされる、統計の充実が図られたというのはとてもいいことだなと感じております。
  また、当然、高校を出てすぐ就職する子もいるし、引き続き学んで社会のリーダー的立場に立つ子もいるんですけれども、どんな分野に進もうと、やっぱり数学的な見方や考え方は絶対必要だと私自身は思っていますので、そういう意味で共通必履修科目、さらに、見直しを進める中で、どの分野に進む子供たちにも高校を出た段階でこういう力を身に付けてほしいということで改めて検討していきたいなと思っております。
  それから、アクティブ・ラーニングなども含めて授業改革ですが、高校は小・中学校に比べて、恥ずかしながらなかなか進んでいないという現状があります。ただ、遅まきながら「やっぱり変わらなければいけない」という意識は出ているというふうに学校にいながら感じております。今まで知識伝授型の授業が多く高校の場合実施されているのですけれども、どうしても大学入試というところで、先ほど真島委員からも時間数という話が出ましたが、本当に高校の先生は時間との戦いというところがあって、やらなければいけないことがたくさんあって、早く進まないといけないという気持ちと同時に、やっぱり子供たちがもっと興味や意欲を持つように、いい授業をしてあげたいというところのジレンマを抱えながら進んでいると思うのですけれども、やっぱりアクティブ・ラーニングとかやる中で、「もしかしてこんなことをやっていると進度が遅れて入試に間に合わなくなるんじゃないか」という不安が、なかなか進まない背景にはあったんじゃないかと思うんです。けれども、今、大学入試とも併せて、評価とも併せて、改善しようという動きがある中で、今度こそそうは言っていられないぞ、真剣にやらなければいけないぞという、逆にそれがありがたいと思って、やるチャンスだと思っている教員も少なくないと思うのです。非常に変革時期であると小谷主査からもお話がありましたが、本当にこれはチャンスだなというふうに私も考えております。
  以上です。
【小谷主査】    ありがとうございました。
  齊藤委員、よろしくお願いします。
【齊藤委員】    私は小学校の校長をしております。今朝、5年生のクラスで、算数の割合の授業を見てまいりました。「A、B、Cの三つのお店があって、どの店でも同じ1,000円の靴を売っている。Aのお店は4割引き。Bのお店は3割引きして、そこから更に1割引。Cのお店は2割引して、そこから更に2割引き。さあ、どれが一番安いでしょう」と教師が発問したところ、「うわ、みんな同じだ」と子供たちが言いました。これではだまされる日本人がどんどん増えていくことになるわけですね。それを見ていたアシスタントの大学生が、「校長先生、私たちはこういう授業をやってきませんでしたが、今はこういう授業をするのですか」と、話してきました。そうしましたら、授業をしていた担任が、「自分もこういう授業を考えていたわけではなかったけれども、今年の全国学力テストのB問題で似たようなスーパーのレジでの問題場面があって、それを参考にしてやったんですよ」と、話していました。
  平成19年度以降行われている全国学テのB問題の不振のその背景に、先生たちが教師の原体験の影響もあって、相変わらず算数・数学というものはどうしても教えて記憶させて、もう1回おうむ返しのように反復して再生させている。そういった指導に慣れている教員が非常に多くて、どんな子供たちにしていきたいかということではなくて、どんな技能を持っていて、それをいわゆる間違いなく使うことができるかという、そこに終始しているわけです。今日の午前中の授業を見ていた何人かの教員らの驚きというのは、やはりこれからの算数・数学の授業というものを変えていかなければならないことを確認する非常に象徴的な場面だったなと私は思っています。
  是非、先ほど大杉室長の方からの御説明もありましたけれども、論点整理で言われているように、将来を生きる子供に必要とされる資質・能力を身に付けていくためには、きっと我々小学校現場でいうと、目の前にちょこたんと座っている子供たちの20年後、30年後をいかに描くかという、そういう心構えというんですか、考え方で指導していかなければいけない。そのために算数・数学を授業を通して子供たちに伝えていくためには、論点整理の中でも指摘されている、資質・能力が目指していることをもっと現場の教員に、丁寧に伝えていくことが大切だと思います。それによって、私はきっと授業が変わっていくという、そういう期待感を持っているとともに、それが教師の意識改革にもつながっていって、いずれそれが将来を築く子供の力として、きっと実現していくんじゃないかなと。そういう意味でこのワーキンググループでの審議というものが非常に重要なのだろうなということを改めて感じたところです。
  大変重要な会議ですけれども、公務の関係で後ほど少し失礼しなければなりませんけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  まだ御発言されていない先生。
【宇野委員】    大阪大学の宇野と申します。
  私は、いろいろな学力の調査とか、それから、かつて教育大学にもおりまして、附属の校長とか、あるいは教員養成課程の学生の指導とかありまして、やはり何人かの委員の先生も言われていましたが、言葉、文法の重要性を如実に感じています。特に教員養成の課題として今も続けているのですけれども、いわゆるB問題をきちんと指導できる先生をどう養成できるかということがあります。また、大学生の数学力の調査でも、自分の知っていることをどう言葉で説明するかという問題。その2点の経験から見ても、やはりそこに非常に不安を感じるといいますか、それをどうやって今後育成していくかということは次期の学習指導要領にとって極めて重要だと感じております。
  それともう1点は、今期の指導要領から少しは入っていますが、スパイラル方式でいろいろ繰り返しながら学ぶということも増えていったと思うのです。しかし、どうもこれまでの数学では、先ほど暗記ものという意見も出ましたけれども、新たな単元に入るというときに、ほとんどの生徒は、新たに覚えるものが増えるという意識を持つんじゃないでしょうか。それは前へ進むという意味では確かにそうで、いろいろなことを習熟していく必要はございますけれども、ほとんどのことは以前どこかで習っていることを整理したり、統合したり、新たな記号で書き直したりとか、そういったことになっていると思います。それが残念ながら、これは時間の余裕のなさか、先ほどありましたような、何か、心の問題もあるのかもしれませんけれども、先にどうしても行きたくなるので、「君たち、これ、ほとんど一緒のことを小学校でも実は非常に簡単なものはやっていたんだよ」というふうな振り返りは全くない。微分とか積分で距離を出したりとか、いろいろしますけれども、そこで出てくる、積分って面積に通じるわけですけど、それは小学校でも時間と速さをかけて、つまり、かけ算で面積を出して距離を測っていたじゃないか、あれと同じだというような振り返りというのは授業を見学しても見たことがありません。そういった縦のつながりというのをもう少し検討してはと思います。
  最後に、社会への、これは諮問の冊子にもありましたけれども、やはり社会で生かせるようにということであれば、仮に先ほどの微分の例でいきますと、微積分の技術的な習熟はなくても、どのような考え方のものかということがどこかの時点できちんと教えられていたら、それは社会で生かせる力の一つとなるのではないかというようなことを考えておりまして、そういったことが盛り込めればという思いで議論に参加させていただければと思っております。
  以上です。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  では、藤井委員。
【藤井委員】    なるべく最後にならないようにと思ったのですが。論点整理の中で、24ページにレッスン・スタディって片仮名語が出てきて、日本の授業研究が国際的な広がりを見せていると出ています。実際そういう状況となっています。学芸大が、もう9年ぐらいになりますか、JICAとの関係で授業研究を世界に発信し、また、国際算数数学授業研究プロジェクトを立ち上げました。プロジェクトは、今、5年目です。教科の中では算数・数学だけですよね。つまり、我が国では授業研究はどの教科もやっているけれども、世界に発信しているのは算数・数学だけ。ほかの教科はなかなか難しい面があるわけです。例えば芸術科目ですとか、どの国でも学校教育にきちんと入っているかというと、そうでもない。そこで、共通の話題で展開できるのは算数・数学なわけです。算数・数学に関わっている者としては、世界に発信する中で、世界中で今、レッスン・スタディがまねされていますので、そこで起こっていることを相対的・客観的に見ることができ、日本の教育の特徴がよく分かるわけです。
  その視点から申し上げますと、各国で授業研究をやり始めたときにうまくいかない原因は、きちんとした教育課程があるかないか、これが決定的なんですね。その点、日本は学習指導要領をきちんと積み上げてきておりますし、下手に削ったら大変なことになるということも経験していますので、きちんとした系統的な教育課程を持っていることの強さというのは絶大なんです。これが国民の学力を支えている決定的なものです。
  その点については、自覚と自信を持って、より一層いいものを作ろうということを今回やらなければいけないなと思っています。もう一つは、今回、結局、コンテンツなのかプロセスなのか、内容なのかプロセスなのかというと、プロセスの方にシフトしようと。内容か過程かといったら、過程をある程度大事にしないとだめだと。資質・能力という話は結局、プロセスの話だと思うんです。けれども、プロセスは見えないので、非常に難しい。授業研究の視点から言いますと、日本は、算数・数学の場合は、特に算数の場合は、問題解決型の授業をしています。問題解決型の授業を世界に発信したときに、世界の人達は本当に不思議がったんですね。何かというと、扱っている問題が1題ということです。確かに算数の研究授業を見ますと、1時間で扱っている問題は1題です。たった1題だけど、よく考えた問題を1題出して、自力解決に入って、比較検討して、まとめに入るという、この問題解決型の授業が行われています。研究授業を見るとほぼ100%これで流れます。世界から見ると、算数の時間にたった1題しか解かないのかということになる。けれども、1題なんです。その1題でプロセスの部分をきちんと日本はやっているんですよ。
  私、国際会議などで証拠で挙げるのが、2003年のTIMMSのデータです。そのときのカリキュラムのカバー率というのは大変低くて、日本は54%です。国際的な調査なので、この問題を教えていないよという国がありますので、カリキュラムに照らしてカバー率を出すわけです。日本の小学校4年生は54%しかカバーしていない。ですが、正答率は69%です。教わっていないことまでできてしまうのは、やはり問題解決型の授業を受けているからだと。プロセスのところがある程度日本は伝統的にやってきている。それが結果に出ていると思うんです。この辺のところは、もう少し自覚したい。無自覚に皆さんやっていますので、大事なところをきちんと自覚し、もっと、高くなるようにすることが今回大事かなと思います。
  中村先生から、43年の学習指導要領を振り返ってみると、ある程度基本的なものは出ていますよというお話もありましたけれども、今回特に授業研究とセットにしないと、プロセスまで踏み込んだ新しい時代を担う学習指導要領に行かないのではないかと思っていますので、その点が大事かなと思っています。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  あとは清水主査代理から。
【清水(静)主査代理】    では、よろしくお願いします。
  論点整理を拝見して、算数・数学のところに「良さ」が入っていますね。実は、私が文部省でお世話させていただいた頃、平成元年の改訂で「良さ」を教科目標に、小・中・高の算数・数学科で一緒に、当時、同僚は正田実先生ですけれども、長尾先生の先輩に当たる方だと思いますが、位置付けました。それが今日までずっと目標に残っています。ただ、その後、算数的活動や数学的活動が強調され、先ほどの中村先生のお話でいくと、どっちかというと流行の方に関心が向けられてきまして、影が薄かったのです。それが今回登場したというのは、私としては大変ありがたいし、また、話題にできる機会ができたかなと感謝しています。
  そのときに議論したのは、活用についてもそうですけれども、どんなところに役に立つか教えてくれないと算数勉強しない、数学勉強しないという子が結構いるのではないかと思うのですね。それは当然あってよいのですけども、もう一つ大事なことは、苦労して勉強したのだから、「どこでこれが役に立つのかな」ということを楽しみに学習できる子供にできないかと、つまり、発想の転換を促すことによって、今回の改訂でも一番大きな命題である、算数・数学を楽しく学ぶという、あるいは算数・数学の学びに楽しみを見出すといったときに、その辺のところをどういうふうにしていったらよいか、今回仕組みとしてできればよいなということが一つです。
  それから二つ目は、ここ20年、活用ということが大変話題になっておりますけれども、全国調査のB問題の結果からも明らかなように、今勉強したことをすぐ活用しなさいと言っても、活用できる子供は多く見積もっても3分の1程度だろうと思うのです。やっぱり1年前、2年前に苦労して勉強したことを使うのだったらできるのだけど、今学んだことはすぐ使えないという子供も、同じ問題場面で自分の数学力に応じてチャレンジできるような活用の文脈の教材というか、内容の位置付け方についてです。ということで、活用を議論するときには、そこで使う数学の範囲を見ていただくと、これまで今はどっちかというと、直前に勉強したことを活用することを前提としておりますので、その辺にどうやって風穴を開けられるか、これが算数・数学の学びに楽しみを見いだすことや自己効力感を持って算数・数学の学びに積極的に関わることに深く関わっていくと思います。その辺の仕組みが基準のレベルでどんな工夫ができるか、これが二つ目です。
  それから三つ目は、社会に開かれた教育課程ということで、今回重要なポイントだということを大杉室長さんからお話がございました。どっちかというと算数・数学は学校で教わるもので、多くの人たちは学校にお任せということでありますけれども、やっぱり学校も民間も、地域社会の算数・数学に関心を持っている方も含めて、子供たちと算数・数学との関わりをつなぐ、そういう概念をどんどん広げていただく、つまり、学校だけに閉じこもらないで開いていくことが、正に今回の改訂のコンセプトから見て重要なポイントになるかと思います。世の中の人たちからは一番遠いところに存在している教科を、もっと近いところに引き寄せるための作戦ですね、これをどうしたらうまく打ち出せるかなと思います。
  細かなことはまだこれからおいおい話題になると思いますけれども、以上3点、皆さんのお話をお聞きして思いました。どうもありがとうございました。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  一通り皆様から御意見を伺いまして、皆様、問題意識や御意見が共通しているように感じました。皆さん共通でおっしゃられたのは、算数・数学が自然現象や社会現象を捉える言語であり、文法であり、非常に重要であるということ。しかしながら、その教育においては知識重視であったり、結果を導くという点については日本は非常にレベルは高いけれども、それを解釈・分析するところが課題になっていること。さらに、学んでいることに対する意義や楽しさを感じることが難しくなっているということでした。特にいろいろな形で御指摘いただきましたのは、学んでいることの縦のつながり、特に小学校、中学校、高等学校でそれぞれに習うことが、今習っていることにどのようにつながっているのかという縦のつながりが見えにくいということ。それから、事務局からも御指摘いただきました、横のつながり。算数・数学が他の教科とどのようにつながっているかということが見えにくい。更に進んでは自分たちが今後生きていく社会の中でどのように活用され、つながっているかということが見えにくいということから、そのような能力の開発若しくは意義、楽しさというのが見えにくくなっているのではないかという御指摘がございました。
  さらに、こういうことに関しましては、コンテンツ、何を教えるかということも大切ですけれども、教育の仕方、授業の仕方ということにも課題があるであろうとの御指摘もありました。その中で特に二つ観点がございまして、授業の在り方として数学活用という科目がありますが、それが今までどのように生かされてきたかを把握すべきであるということ。また、数学探究やアクティブ・ラーニングとかスパイラル方式とか、いろいろな言い方で表現されましたが、現実にどういうふうに実装していくかについての御指摘です。一方で、教員の方では、特に小・中・高の教育において、教えたい気持ちはあるけれども、時間の制限、特に入試という境界条件があり、なかなか苦労しているというようなことを教えていただきました。しかしながら、変えなくてはいけないという意識改革の気持ちは高まっているということで、特に心のエネルギーという言葉を頂きました。
  最後に、大変心強く感じましたのは、日本の算数・数学教育リテラシーは世界の中で非常に高いけれど、それが国際社会でどのように受け入れられているのかということが、私自身、以前から気になっておりましたが、藤井先生の方から、授業研究の在り方を世界発信されているということをお聞きして、大変うれしく思いました。
  このような皆様の経験を生かして、共有した問題意識があるということが分かりましたので、これを今後生かしていきたいと思います。
  きょう、まだあと少し時間がございますので、今までの皆さんの御意見をお聞きになられた中で、更に何か御意見がありましたら頂ければ幸いでございます。じゃあ、中川委員から。
【中川委員】    小・中・高の議論の中で、小学校のことだけ申し上げるのは大変申し訳ないのですが、中・高の数学先生たちは専門家で、小学校では音楽の先生も体育の先生など算数専門でない先生も算数を教えているということを考慮する必要があります。それから、教育学部が教員養成機能を持った一般学部になって、いろいろな大学出身の初任者が入ってくるようになりました。本校にいる初任者にいろいろ入試の実情を聞くと、中には、推薦入試のため論文と少しの英語だけで数学を全然勉強しないで入学して、小学校の教員になっている人もいるということです。
  それで、先ほどからの総則・評価特別部会からの社会に開かれた教育課程ということに勇気を得て申し上げるのですが、小学校の学習指導要領は、長い時間を掛けてとても丁寧に作られているのですが、少し算数を分かっている小学校教員でも行間を読む必要があるようになっています。例えば、5年生の「小数の乗法及び除法の意味について理解を深め」という記述は、「これまでに学んだ整数のかけ算を、かける数を小数に拡張する」と翻訳しなくてはいけないんです。このような拡張場面では、数理の眼鏡で見ると新たな世界が見えてくることとか、これまでの学びとつなげてみることで、その学びの汎用性が高まることとか、算数が子供たちの資質・能力を育成するのに大きく貢献できる大事な部分なのですが、そのことが分かるような平易な表記にしていく必要があるのではないかと思って、蛇足として申し上げました。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  大谷委員。
【大谷委員】    既に委員の皆様からお話があったこととの関わりになろうかと思いますけれども、2点ございます。1点目は、資料の7にございます教科の本質的意義ということで、数学という部分に下線が引かれておりますけれども、社会科や理科と違って、数学は事象という広い言葉を使っているというところが大切なのではないかと思います。つまり、数学が役立つ、様々な実社会や生活等に役立つということの重要性は当然かと思いますけれども、数学そのものが持っている美しさ、あるいは厳密さというのでしょうか、数学そのものが考えられた後に、全く知らないところでそれが利用されるということもままあろうかと思いますので、数学そのものを楽しんで考えるというところも数学の活動として大切にしていただくことを希望申し上げます。
  2点目は、これは私が今、附属高等学校の学校長を仰せつかっておりまして、新しく高等学校で理科と数学に関わる教科が検討されているということで、SSHを参考にということもありますが、本校は今、SGHの指定を受けておりまして、SGHの様子を拝見させていただいておりますと、非常にグローバルな視点で、探究的で協働的な数学というものもたくさん事例が出てきているようでして、そのような意味でSGH等も含めた数学の視点を取り入れることによって、社会に開かれた教育課程というのがより一層幅を持たせることができるのではないかと感じております。
  ある意味で、高校に関わった若干の経験からのお話になりますので、専門とは違っておりますけれども、思い付いた点でございます。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  椿委員、よろしくお願いします。
【椿委員】    先ほど、統計の人間として話したのですけれども、私には今、中学1年の子供がまだおります。小学校の算数は、さっき言ったように、面白かったとやっぱり言うのです。何か、一つのものを自分自身が考えていて、日常の問題を解決しているというのに役立つという、そこでまた結構難しい問題を考えていくこと自体が楽しかったと言います。ところが、中学に入ると、何か数学がやけに暗記科目になってしまったということで、余り面白くないとはっきり言うのです。先ほどの言語能力ではないですけれども、問題みたいなものにしていただいてやっているときは、面白いと言うのです。数学のコンテンツの問題もさることながら、やはりどういう意味で数学の楽しさを伝えるかという話は非常に大きな問題だと思います。これは恐らく中学、高校に行くに従って、大きな問題になってくるのではないかと思うのです。
  一方で、私は社会人の夜間大学院で10年ほど教鞭をとっていたのですけれども、私どもの大学院はある頃から、入学式をやらないで、最初に数学の試験をやるということをしました。高校程度の数学の試験問題を出すのですが、入学生の3割ぐらい、実はアジアから来ている人が多いのですけれども、あるいはヨーロッパの人も少しいたのですけれども、その人たちは怒るのですよね。なぜこんな当たり前の問題をやらせて入学式もやらないのかと。ところが、実は日本人の方々はほとんど全滅なのです。要するに、日本人は30代後半になると、大学で恐らくこの方、理系を出ていたはずの方ですら、数学がほとんど日常から消えてしまっているという感覚です。バングラデシュから来ている社会人院生に、なぜそんなに数学をきちんとできるのと聴いたら、それはもう当たり前で、自分たちの日常に欠かせないからだと、はっきり言うのですよね。
  やはり、日常のありとあらゆる問題解決は、実は数学の本質的な考え方に動かされている。数学を応用するというよりは、もっと原理的な部分に数理的なものがある。特に、今でも日本の産業界で製造業などは、システムを中心に考えているから、ほとんどの改革とか新しいものをやろうと思ったら数理的な原理になる。一方で、逆に、ホワイトカラーといいますか、サービス分野というのは、システムで考えるというよりはシナリオをきちんと作るという感覚ですね。今日頂いた文書は、正にそういう意味でシナリオがきちんと書かれている。シナリオは、本当は数学教育の役割かというと、数学は論理とかもきちんと扱っているわけですから、論理的にきちんと目的を達成させるような文章を作るという機能すら持っている。日本では作文は、国語教育なのでしょうけれども、そういうものではないかと思うのです。
  自分自身は統計の人間ですけれども、いろいろな方々と共に、もっと数学のミッションというか、数学の本質に迫れるようなことが、初中等・高等教育の中で、大学も含めてなのですけれども、できるのではないかとつくづく思うし、それが日本の社会人の問題解決能力の裏支えにもなってほしいと思うのです。高校まで、せっかくよくできた数学で、指導要領で達成されたことが、本当に社会まで残ってくれるのかということに、非常に危機意識を持っているということです。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  じゃあ、中村委員、お願いします。
【中村委員】    先ほど、藤井委員がお話をした問題解決型のことについて話をしたいと思います。今、椿委員の方のお話もあったと思うのですが、私も小学校と中学校の授業を拝見させていただくことがあるのですが、小学校は問題解決型の授業というのがかなり定着しております。これは四つの段階があって、初めに問題の把握、そして自分で解決をするという個人解決。比較検討といって、これは集団で解決する。最後に振り返り、あるいは発展という、四つの段階の授業があります。そこの、非常に私が大事だと思うのは、比較検討という集団思考の場、意見交換をする場というのがとても重要だと思うんですね。これは、自分の考えたアイデアがほかの人とどういうふうに同じなのか、違うのか。あるいは同じであっても表現の仕方が違う。そうすると、考えているということの答えは同じだけれども、そのプロセスが違うんだなとか、あるいは表現の仕方、式で表したり、あるいは表で表したり、図で表したりと、そういったものをお互いが感得し合う。それぞれの解決のよさを味わうというようなことが行われていると思います。
  そういう意味では、アクティブ・ラーニングの中にある、いわば他者との協働や相互作用というのがございますけれども、それは算数・数学の授業の中においては問題解決型の授業の中である程度小学校、中学校も多少されているんじゃないかと思います。高校の授業を見にいきますと、問題解決型の授業は見たことがありません。残念ながら。大体、先生が解決を示して、説明をして、生徒に演習させて、ここが違う、ここは合っている、もっと効果的に解くのはこうだとなっているんですね。つまり、そこに他者の存在がないんです。ほかの子供たち、生徒と一緒に何か物事を考えて、自分はあの子と違うじゃないかとかいうことがなかなか見受けられない。
  そういう意味で、授業をどう改善していくかということというのは、学習指導要領の中にあるいはそれが加えられるかは難しいかと思うのですが、そこに対して、例えば数学においても小・中と高校とのギャップはある。もっと言うと、中学校でも1年生と3年生のギャップがあるというのがあると思います。そういう意味で、その辺りのところを踏まえて考えていかないと、資質・能力を育てましょうということをやっても、指導法がそれについていかないということが起こり得るのではないかというのを危惧しています。
【小谷主査】    事務局にお聞きしたいのですが、これは学習指導要領の改訂ということですが、今、中村委員から御指摘があったような、授業の在り方とか改善についてもここで議論してよいのかどうかということを。
【大杉教育課程企画室長】    ありがとうございます。
  先ほど諮問で御説明を申し上げた三つ目の部分が、学習指導要領の理念を実現するためには、授業方法の改善でありますとか、様々な条件整備ということはどうあるべきか、ということも併せて御議論いただきたいという諮問でございますので、この点も含めながら、一方で学習指導要領にはこういうポイントということも併せながら御議論いただければありがたいと思います。
【小谷主査】    ありがとうございました。大切なポイントだと思っております。
  ほか、ございますか。じゃあ、戸谷委員。
【戸谷委員】    私は今、社会人大学院で教えているのですけれども、今の問題解決型授業というのがケースメソッドとすごく似ているなというふうに思いました。個人でまずケースを読んできて、それを小グループで共有して議論をして、その後、クラス全体に持ってきてそこでまた議論をすると。一つ違うのは、答えが一つではないということですね。答えがいろいろな形がある。数学も現実にはそうなのかもしれないと思うのですけれども、年齢差がありますけれども、社会人大学院の学生さんを見ていると、ケースでさえも、たった一つの正しい答えがあると思って、それを見付けようという、そういう探し方をされる学生さんは、年齢が上になればなるほどそういう傾向がある。ビジネスのケースなので、答えは一つではないですと、現実にあったことが答えでもないですということは常に言っているのですけれども、それでも何か正しい答えがあるはずだというような形になる人がいます。そこが少し、数学でも統計でも答えは一つではないというケースというのは、私は大学院に入ってから線形代数をやりましたけれども、そういうことがあるのだろうなと、そういうことがちゃんと伝わるといいなと思います。
  あと、シナリオだとか言語、文法というお話があったのですけれども、私が所属している学会で、マーケティングサイエンス学会というのがあるのですが、マーケティングサイエンス学会の投稿要領に、美しさを追究するためだけに数式を多用しないことという注意書きがあります。文系の私からすると、それが美しいことなんだっていうのが、結構、最初読んだときはびっくりしたんですけれども、数学の勉強、それから研究までずっとしてきて、そう思っている方と、そうでない人たちの間にはそれぐらいのギャップがあると。美しさというのがどこでどう伝わるのかは分かりませんけれども、そういうことが伝わると随分違うのだろうなと、共通言語で話ができるのだろうなと思います。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  ほか、ございますか。藤井委員、よろしくお願いします。
【藤井委員】    先ほどコンテンツとプロセスだと、今回どちらかというとプロセスにかなり焦点が当たるのではないかとお話をしましたけれども、コンテンツについては、今回は検討事項の1番目の一番最後にある、統計的な内容等の充実、これは決定的だと思います。今回、ここに本腰入れないと、世界から日本は本当に取り残されるんじゃないかと思うぐらいです。今回は高校が勝負かなという気がしています。
  現状では、数学Bの中にあることはあるが、ほとんど履修されていない。履修の仕組みまで踏み込んでいかないとだめかなというのが一つと。それから高校の数学の先生方は、どちらかというと数学的な厳密性を大事になさるので、統計を使っていこうみたいな発想になかなか切り替わらないと思う。逆に言うと、統計的な内容を持ち込むことによって、高校生も一方的な授業から、統計的な内容の題材によってはいろいろな意見が出てきて、それこそ小学校でやっている問題解決型の授業、今はやりの言葉で言うとアクティブ・ラーニングが具現化できるかもしれない。そのきっかけにもなるかもしれないので、統計的な内容の充実については、コンテンツの面とプロセスの面と両方からきちんと今回やるべきだなと思っています。
【小谷主査】    ありがとうございました。
  真島委員、お願いします。
【真島委員】    今の統計のお話はもっともだと思っておりますけれども、先ほどから議論されている、小学校レベルであるとアクティブ・ラーニングができる、中学校もある程度できるけれども、高校は難しいという点に関してなのですけれども、小学校段階では算数で数の概念を拡張していくとか、その学び自身が常にアクティブ・ラーニング的に実現可能な題材になっていると思います。ところが、中学校、高校に行きますと、やはり歴史的に見ても相当に高いレベルの凝縮された知識になってくるわけですよね。それをいかに、先ほども言いましたけれども、限られた時間の中でどうやって教えていくか。そこのところがやはり常に問題になると思います。
  統計的なところから題材を拾ってという実際のところから上げていくというのはいいんですけれども、やはり時間が掛かるところで、知識としてやっぱりきちんと教えなければいけないところは教える。そのある程度の時間は取る。そのほかにアクティブ・ラーニング的にやるべきというか、やった方が効率的であるというところはそのようにする。そういう、ちょっとめりはりをつけるというところも大事かなと思います。限られた時間の中でどうするかという議論であれば、そういうことだと思います。
【小谷主査】    どうもありがとうございます。
  じゃあ、清水委員。
【清水(宏)委員】    私、先ほど全国調査に関わってきた者としての立場としてお話をさせていただきまして、主に先ほどはプロセスの話をしましたので、現在、私は、県の行政に携わっておりますので、その立場から、今度は内容についてお話をしたいと思っています。その一つとして、小・中の連携が、私どもの県の義務教育課の中では課題になっています。特に、算数・数学でいいますと、例えば数直線です。小学校6年生まで非常に丁寧に先生方が指導されています。けれども、中学校へ行くと、その数直線の扱い方は全く別物になっている。また、文章題についても、小学校6年生が解く方法と、中学校での方程式を使って解く方法が違っており、それを踏まえず中学校の先生方は方程式に表すことを指導する。そういうギャップがある。それから、学習内容でいうと、例えば拡大図、縮図を相似な図形として学習すること、そして、点対称、線対称を図形の移動として学習することなど、ほぼ同じような内容をもう1回中学校で勉強する。先ほど、スパイラルの話があったのですが、そういうふうに学習内容が組まれている。それから、関数もそうですね。比例、反比例も小学校と中学校で学習する。
  そのときに、例えば私は中学校の教員だったので、中学校の教員として感じることは、小学校ではどういう狙いを持って、どこまでやっていて、どこに主眼が置かれているのか。それを基に中学校ではどうするのかということが、もちろん学習指導要領にもそれは書いてありますし、分かるようにはなっているのですが、なかなか実際に指導する先生が意識をされていないということです。このことが大きな課題となっています。ですので、そこも今回、学習指導要領を作るときに、小・中の連携、もちろん高校も含めて、学習内容の連携について、どのように学習指導要領に反映するかということを考えてみたいと思っております。
  どうもありがとうございました。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  宇野委員、お願いします。
【宇野委員】    先ほど、小学校の先生の中川委員がおっしゃったように、小学校は確かにPBLが多くて、研究授業を見にいくと、ほぼ100%それに近いのだと思うのですけれども、中川委員がおっしゃったように、これは私が間違っていたら申し訳ないですが、算数・数学を専門に近くしている先生がああいう授業をされるからそうなっているのであって、例えば、体育なり音楽なり、ほかの教科をどちらかというと専門にされている先生が授業研究でPBLの算数の授業をされたというのは、私の経験では余り見たことがありません。
  一方では、いろいろな統計によると、教材プリントとかそういうのは、どんどん市販のものの使用率が高まっています。自分でなかなかそこまで教材を作り込めないとか、それはいろいろな、一言では解決されない問題がたくさんあると思うのですけれども、そこら辺を、全ての教科をほぼ1人で教えられる小学校の先生にとって、うまく指導できるような体制、さっきの授業の在り方の問題になるのですけれども、そこまでもし何か見えるものがあれば考えていくべきではないかと思います。
  2点目は、統計のことがよく出ておりますが、例えばスーパーサイエンスでも、大阪での発表会に行きますと、数学は純粋に学問的な問題をやっている生徒も多いのですけれども、統計を扱っている生徒が増えてきているように最近は思います。それは実際に社会統計的なものとはちょっと言いがたいですけれども、高校生に人気のあるスポーツ統計というか、スポーツを統計的に見て、どういうチーム作りをすればいいのかの研究とか、あるいは実際に駅の混み具合を統計的に分析するという研究を、スーパーサイエンスでの数学の課題として捉えている生徒はいると思います。
  また、先ほど、大谷委員がおっしゃったように、SGH、スーパー・グローバル・ハイスクールは社会とのつながりが大きいですから、統計的なところは確かにそういった面で社会科との関連性と捉えることもできるでしょうし、これから非常に期待できるところかなと感じました。
  以上です。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  じゃあ、そろそろ時間ですので、最後に清水主査代理、まとめていただければ。
【清水(静)主査代理】    いや、まとめることはできませんけれども。論点整理の18ページのところに、先ほど大杉室長さんから説明がありました、アクティブ・ラーニングを上手にやっていくためのポイントが三つありました。その第1番目のところに、いわゆるアクティブ・ラーニングに関わることについての説明が5行ありますけど、その後半ですね。教員はこのプロセスの中で、「教える場面と、子供たちに思考・判断・表現させる場面を効果的に設計し関連させよ」と。私の解釈ですと、ゴールは子供一人一人が、いわゆる活用・探究のプロセスで思考・判断・表現する場面を設けるということは、ここは主体的に、協働的に、自立的に行う問題解決を想定していると思うのです。そうなると、それができるためには何を教えるべきかという議論をしなくてはいけなくて、一般に教育内容とか指導内容と言ってしまうと、どうしても狭い意味の知識・技能になってしまいがちです。
  例えば、この場合ですと、問題発見とありますので、問題を見付けやすい場面ってどんなところにあるのでしょうか、そこでどのように見たら見付けられるのでしょうか、といったこともやっぱり内容として教えるべきことではないかと思うのです。となると、今まで内容という言葉が普通に使われておりましたけれども、それを捉える人によって、いろいろな捉え方があったようです。となると、指導内容、教育内容ともし言った場合に、ここではそれをどう整理するのか。少なくとも狭い意味の知識・技能に絞ってしまったのではちょっとまずいですよというようなことをちょっと思いましたので、今後の議論の中で、いろいろな情報が提供されると思いますけれども、内容というとき、その具体的な内容をできるだけしっかりと示す、そんな視点で考えてみたいなと思いました。
  ありがとうございました。
【小谷主査】    どうもありがとうございました。
  今、特に御発言どうしてもという方がいらっしゃればお願いできますが。よろしいですか。
  きょうは皆様から大変重要な御指摘を頂きました。皆様が考えられていることが、大きな意味では同じ方向を向いているのかなということも大変心強く感じましたし、考えるべき観点、視点を幾つか御指摘いただきました。これにつきましては、こちらでまた整理させていただきたいと思います。本日はここまでにしたいと思います。先ほど申し上げましたように、本日お出しいただいた御意見については、事務局で論点ごとにその趣旨を整理していただくようお願いいたします。また、きょう、限られた時間内での討議でしたので、更に御意見やお気付きの点などありましたら、ペーパーで事務局にお送りいただければと考えております。
  本日予定されていました議題はここまででございます。
  最後に、次回以降の日程などにつきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【仲教育課程課専門官】    次回の日程につきましては、調整させていただいた上で御連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。
  また、主査からもお話がありましたように、ペーパーによる御意見等も頂戴したいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。ファックス又はメール、郵送でも結構です。
  なお、本日の資料は机上に置いたままにしていただければ、後ほど郵送いたしますので、よろしくお願いいたします。
  以上です。
【小谷主査】    それでは、本日の算数・数学ワーキンググループを終了させていただきます。どうもありがとうございました。

──  了  ──

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