教育課程部会 社会・地理歴史・公民ワーキンググループ(第10回) 議事録

1.日時

平成28年4月22日(金曜日)10時00分~13時00分

2.場所

文部科学省 3階 3F2特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 社会・地理歴史・公民の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【土井主査】  それでは,定刻となりましたので,少しまだお見えになっておられない委員の先生もおられますが,ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会社会・地理歴史・公民ワーキンググループの第10回の会合を開催いたしたいと思います。
本日は,お忙しい中,御参集を頂き誠にありがとうございます。
まず,会議に先立ちまして,先週14日より続いております熊本県を中心とする九州地方での地震についてでございますが,この地震により尊い命を落とされた方々に対しまして深く哀悼の意を表しますと共に,大変厳しい状況の中で不安な日々を過ごしておられる被災地の皆様には,心からお見舞いを申し上げます。現在,被災地におきまして昼夜を分かたず救命・救助活動を行っておられる関係機関の方々をはじめとしまして,国を挙げて多くの人々が支援に当たっておられます。被災者の皆様の一刻も早い救援を心からお祈り申し上げたいと思います。
それでは,会議に入らせていただきます。本日は,主に高等学校地理歴史科,公民科等について御議論を頂く予定としております。また,進行は前回と同様に私が務めてまいりますので,よろしくお願いいたします。
それでは,最初に事務局より,4月にございました人事異動の御報告と配付資料の確認をお願いいたします。

【大内学校教育官】  失礼をいたします。本年度もどうぞよろしくお願いいたします。
まず初めに事務局に異動がございましたので紹介させていただきます。4月1日付で澤井教科調査官が初等中等教育局の視学官に就任しております。
また,3月31日をもちまして中尾視学官が退任されまして,その後任として日本史担当になりますけれども,藤野調査官が着任をしております。

【藤野調査官】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  続いて配付資料の説明,確認をさせていただきます。
本日は,議事次第に記載しておりますとおり,資料1から資料18,ちょっと多くて恐縮ですが,参考資料1から3でございます。それから,参考資料の3でございますけれども,この4月に御異動がございました委員の先生方の分も含めまして,内容について反映をさせていただいております。資料等につきまして不足等がございましたら事務局の方へお申し付けいただければと思います。また,机上のタブレット端末につきましては,関係資料等をデータで入れておりますので,議事次第の3ページ目に目次がございます。こちらも参照なさっていただければというふうに思っております。
以上でございます。

【土井主査】  それでは,これより議事に入ります。
本日は報道関係者より会議の撮影及び録音の申出があり,これを許可しておりますので御承知おきください。
さて,本日は,第1に高等学校の「公共(仮称)」や公民科選択科目についての検討,第2に,社会科等における見方・考え方や,小・中・高を通じて育成する資質・能力などを柱として意見交換を行いたいと考えております。
議事の流れとしましては,事務局から資料に基づき説明を頂いた後,議論の内容ごとに御意見を伺いたいと考えております。
本日は,高校の公民科の検討課題のほぼ全体を御審議いただくことになりますし,今,御説明がございましたように,資料がかなり大部になっております。そこで,時間の管理上,議事進行で御無理をお願いすることが出てくるかもしれませんけれども,本日,会議の場で御発言いただけなかった場合につきましては,最後にもう一度確認をしますが,ペーパー等で事務局にお寄せいただければと存じますので,御協力のほど,お願いいたします。
では,意見交換に入る前に,教育課程部会の下に置かれております総則・評価特別部会における議論について事務局から御紹介を頂きます。総則・評価特別部会におきましては,各教科等に関わる検討がなされておりますが,今般,第1に,「アクティブ・ラーニング」の視点と資質・能力の関係,第2に,学習評価の改善のポイントについて議論が行われ,各教科等ワーキンググループで更に議論すべき事項が整理されました。本ワーキンググループにおける審議を深めますためにも,こられの状況について事務局から御説明をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。それでは,資料6と資料7をお手元に御用意いただけますでしょうか。年度が改まりまして,中教審の審議の方も教育課程部会,教育課程企画特別部会,総則・評価特別部会,それから学校種別の部会も,昨日,中学校部会がございましたけれども,取りまとめに向けた御議論を進めていただいているところでございます。後ほど土井主査よりも御紹介いただきますけれども,総則・評価特別部会におきましては,各ワーキングの審議状況のヒアリングを実施させていただいたところですし,教育課程部会,教育課程企画特別部会におきましても,事務局の方から全てのワーキングの議論の状況を御紹介させていただきながら全体的な取りまとめの御議論を頂いております。各部会におきましても,この短時間で各ワーキングで精力的な御議論を頂き,これだけの成果等をお取りまとめいただきつつあることに対して感謝の意が申し述べられていたということをお伝えさせていただきます。
それでは,簡単に,資料の6でございますけれども,先生方によっては,もう何度もお聞きになっている方もいらっしゃいまして大変恐縮でございますけれども,総則・評価特別部会におきまして,「アクティブ・ラーニング」の,特に「深い学び」,それから学習評価の改善について,教科横断的な方向性をお取りまとめいただきましたので御紹介をさせていただきます。
1枚おめくりいただきまして,下に2ページと振ってあるページでございますけれども,「アクティブ・ラーニング」の視点,「深い学び」,「対話的な学び」,「主体的な学び」,そしてこれが型に着目した理解ということではなく,習得・活用・探究の学習過程を見通した不断の授業改善の視点として用いられるべきであるということ。また,具体的な実践例をというときには,様々な型や方法のカタログということではなく,こうした視点に基づく授業改善の実践例の蓄積をお願いしたいということを改めておまとめいただいております。
それから,下に3ページと振ってある次のページでございますけれども,「深い学び」の視点でございます。「対話的な学び」,「主体的な学び」については理解しやすい視点であるということは指摘されておりますけれども,一方で,「深い学び」が少し分かりにくいというような現場の先生方からの声もあるところでございます。現在,「深い学び」の在り方は,各ワーキングで教科の特質に照らしながら御議論を頂いている最中ですので,具体像を示していくのがまだまだこれからであるというようなところも関係しているかと存じます。
「深い学び」の視点の三つ目のマルのところでございますけれども,改めて総則・評価特別部会におきまして,本ワーキングにおいても御議論いただいている「見方や考え方」ということを鍵としながら,習得・活用・探究を見通した学習過程の中で,見方や考え方を働かせながら思考・判断・表現し,資質・能力を獲得していくということに向かうということが「深い学び」であるという御整理を頂いたところでございますので,引き続き,見方や考え方,あるいは学習過程の在り方について御議論を深めていただければというふうに存じます。
3ページ目下にございますように,「見方や考え方」,これまでも指導要領で使われてきた用語ではございますけれども,その内容について必ずしも具体的に説明されてきていないということ。次の4ページにございますように,事象を捉える教科ならではの視点や,思考の枠組みとして考えながら知識・技能を構造化して身に付けていくために不可欠であり,また,思考・判断・表現・学びに向かう力,人間性の育成,それぞれに作用するものであるという考え方。そして,この「深い学び」ということと併せて,子供たちの一人一人の「見方や考え方」の困難さを捉えて支援していくという視点も重要ではないかということでございます。
そうした「見方や考え方」,教科等の特質に応じ育まれながら,それらが相互に影響し合いながら成長していくということ,また,総合的な学習の時間等においては,各教科の見方や考え方を総合的に活用しながら,様々なより広範な事象を捉えたり,多面的,多角的な捉え方,複雑な文脈の中での捉え方ができるようにするというのが,教科の全体構成の中での意義ではないかということでございます。
続きまして,評価の方に移らせていただきます。同じ資料の25ページでございます。「学習評価の改善に関する今後の検討の方向性」。現在,資質・能力を踏まえた目標の構造化,指導内容の構造化を御議論いただいておりますけれども,こうした取組自体,明確化ということ自体が目標に準拠した評価ということの改善につながっていくものであるということ。一方で,資質・能力の三つの柱でございますけれども,相互に関係し合いながら育成されるということでもございますので,これは,教科横断的な視点として総則などでしっかりと示していきたいということでございます。
そして,観点別評価,前回,改訂時に学力の三要素と評価の観点は既に整理されておりまして,観点別評価の実施率自体は高い状況でございますけれども,子供たちの資質・能力の育成につなげる指導と評価の一体化という観点からは,まだまだ改善の余地があるのではないかという御指摘。そして,こうした「目標に準拠した評価」の実質化や,教科・校種を超えた共通理解に基づく組織的な取組を促すという観点から,教科共通に,28ページ目にございますような知識・技能・思考・判断・表現,主体的学習に取り組む態度ということで評価の観点と,その趣旨を御検討いただきたいということ。具体的な書きぶりや趣旨の記述については,教科の特質を踏まえた表現ぶりを御検討いただきたいということでございます。
そして,観点別評価,毎回の授業で全てを見取るということではなくて,単元を通じたまとまりの中で評価の場面を適切に設定していくということでございます。
26ページ目にございますように,知識・技能でございますけれども,今回のここの知識ということには,事実的な知識のみならず,構造化され,様々な場面で活用される概念的な知識の獲得ということも含めて考えるということでございます。また,思考・判断・表現につきまして,目標や指導内容の構成の中でどのような思考・判断・表現を求められるのかを明確していくように工夫していただきたいということ。既に,社会科系科目の思考・判断・表現力,四つの整理を小・中を通じてしていただいておりますけれども,一定の時間をかけて成長していくものであることから,学年を超えた整理ということも考えていただきたいということでございます。
「主体的に学習に取り組む態度」でございますけれども,資質・能力の柱である「学びに向かう力・人間性」との関係性を整理していただいております。「学びに向かう力・人間性」には,一つは「主体的に学習に取り組む態度」として,観点別評価を通じて見取ることができる部分と,思いやりや感性など,評点になじまず,個人内評価を通じて見取るべき部分があるのではないかということでございます。
  そして,その観点別評価の部分,「主体的に学習に取り組む態度」につきましては,診断的評価のみで判断したり,挙手の回数やノートの取り方などの形式的な活動で評価することがないよう,今回,様々な誤解を払拭するということからも,「関心・意欲・態度」を改めて「主体的に学習に取り組む態度」としているということでございます。
27ページ目にございますように,それに照らした指導要録の在り方,あるいは,指導要録のみならず,子供たち一人一人が自らの学習状況やキャリア形成を見通し振り返ることができるような仕組みの在り方。学びのポートフォリオや,個々の学びの特性が校種を超えて共有されるような仕組みの在り方など,残された論点については引き続き,総則・評価部会において検討していくということでございます。
以上でございます。

【土井主査】  ありがとうございます。ここで私の方からも報告させていただいたほうがよろしいですね。
それでは,私からも報告をさせていただきます。総則・評価特別部会では,特別チームの田中主査と私の方から,特別チーム及び本ワーキンググループの議論の状況について報告をさせていただきました。それに対しまして,総則・評価特別委員の先生方から頂いた御意見,御指摘について少し御紹介をさせていただきます。
御議論の中心は探究学習との関係にございました。探究学習をさせる場合には,与えられた問題を考えるだけではなくて,やはり,そもそも,問題を発見して問題を構造化し,それについて解決策を考えていく,そういうトータルなプロセスが重要なのではないかという御意見ですとか,それから,探究学習に際しまして,やはり,資料を収集して,例えば,その資料の信憑度,信用度を判断し,選別し,その資料からどのようなことが推論されるのかという,資料を使った学習,そういう点も重要なのではないかというご意見。それから,探究学習を実際の学校現場で充実させていくためには,やはり,評価の在り方とどう結びつけていくのか。とりわけ,高大接続との関係では,入試の在り方が大きな影響を及ぼすので,その点についても十分検討する必要があるのではないかといったような御意見を頂いたところでございます。
私の方からの御報告は以上でございます。
大杉室長,あるいは私からのただいまの説明につきまして,何か御質問等があれば御発言を頂ければと思いますが,いかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
今の点も含めまして,本日,資質・能力,評価についても議論になりますので,後ほどまた御意見を頂ければと思います。
それでは,次に事務局から,本ワーキンググループにおける高等学校の地歴科及び小・中・高等学校を通じた資質・能力についてのこれまでの検討状況について御紹介いただきます。よろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  それでは,私の方から御説明させていただきます。主に資料2を使って御説明させていただきますので,資料2を御覧ください。
まず,資料2の62ページを御覧いただければと思います。横の表ということで,「歴史総合(仮称)」に関する議論ということを,まず御紹介させていただければと思います。
「歴史総合(仮称)」につきましては,現代的な諸課題にある歴史というものを日本史,世界史,それを統合するような形で見ていくということ,こういうところで御検討いただいていたところでございます。また,近代化,大衆化,グローバル化という歴史の転換というものに着目して近現代史を見ていくという方向で御検討いただいておりました。
今回,この62ページの図を御覧いただければと思いますが,全体までのものと大きく変わったところが,やはり,歴史という中に近代化,大衆化,グローバル化というのは分かるのだけれども,全体の中の時系列というものが少しはっきりしないと,なかなか歴史というところで考えにくいのではないかというところから,左にあるようなところというもので,近代化であれば18世紀後半から現在まで続く,このような姿なのだということを明示してはどうかというところを付け加えさせていただいたということと共に,一番上といいますか,タイトルの下にありますが,現代的な諸課題につながる歴史的な状況というものを見ていくということが考えられるのではないかということから,aからeにありますようなところを,その考察を深める問いの中に考えていくということがいいのではないかと,このようなところから御議論を頂いているところでございます。
また,63ページを御覧いただければと思います。いわゆるB系科目でございます。こちらにつきましては,一番上に,先ほど御紹介いたしました,現代的な諸課題の背景にある歴史を,グローバルにつながる近現代の歴史の転換について追究するわけでございますが,その新教科で,新必修科目で習得した歴史の学び方を活用し,追究・探究を深める科目として,世界史,日本史に関する「探究科目」というのを設けるということではどうかということ。特に,例えば,世界史を御覧いただければと思いますが,前近代のマルのところに2ポツ目ですが,近現代につながる諸地域世界の文化の多様性や複合性,これを時間軸と空間軸の変化に着目して理解するようなところを前近代でやった上で,近現代につきましては,諸地域,世界の歴史の相互作用性,多元性に着目して,諸資料を活用し,広い視野から考察し表現する学生を通して,現在につながる諸課題を多面的・多角的,歴史的に追究,探究するようなものではないか。
また,右でございますが,日本史に係る探究効果につきましても,前近代におきまして多様な資料を活用して歴史を考察し表現するということ。近現代につながる各時代の展開に関わる重要な概念を習得すると共に,我が国の伝統や文化への理解を深めるということ。また,近現代におきましては,「歴史総合(仮称)」で獲得した概念や前近代の学習で高めた歴史を解釈,説明し考察する力を用いて,地域等の様々な資料が日本の場合はありますので,そういうものを活用し,現代につながる諸課題を多面的・多角的,歴史的に追究,探究する,このようなことで御議論いただいているところでございます。
64,65ページにつきましては,それぞれの「探究科目」についての説明でございますので,これについてはちょっと割愛させていただければと思います。
次に,66ページを御覧いただければと思います。これは,後ほどまたこの会議での御検討いただくものでございますが,先ほど大杉の方からも御説明させていただきましたように,各教科の本質とも言われる見方や考え方が,思考力,判断力,表現力とどういう関係で高まっていくのか,その思考力,判断力,表現力を高める課程にどういうふうに影響していくかというものをまとめたものでございまして,前回,小学校,中学校までの状況については御覧いただいたところでございます。今回,高校の状況も含めまして,このような整理をさせていただいているところでございます。
公民科におきましては,人間と社会の在り方を捉える見方や考え方ということで,人間と社会の在り方を捉える諸概念に着目して社会的事象を見出し,それらの事象を選択・判断の基準となる考え方と関連付けて考察して,思考・判断,表現を行っていくということ,これが社会科の思考,判断,表現における本質的なイメージになっていくのではないかということをここに示しているところでございます。公民科につきまして,具体的に本日御検討いただければというふうに思っております。
また,次のページを御覧いただければと思いますが,そちらにおきまして,思考,判断,表現の見方・考え方ということにつきまして,真ん中の右のところに整理すると共に,それにおいて,問いを立てて考えていくということを今回,学習のプロセスとして非常に重視して考えていくべきではないかというところがあるわけでございます。その際の考えられる追究の視点というもの,それから,追究の視点を生かした,考察や構想に向かう問いの例,それから,最終的に,その結果として獲得される知識や概念の例というものを学校現場の方に,ある程度,例示的なところで示すものとして,こちら,イメージを出すものとして作らせていただいたものでございます。
小学校,中学校,それから,次のページ,高等学校の地理歴史科,高等学校の公民ということで,それぞれ書かせていただいているところでございますが,こちらにつきまして,特に高等学校の公民につきまして本日,御議論いただければと思います。
なお,地理歴史における議論につきましては,全体としてはあれでございますが,例えば,一番右にあるような考察,構想した結果の例というものに関して,もう少しエッジの効いたものといいますか,どういうことが考えられるかというものについて検討すべきだというような御意見を頂いておりますので,随時ここについては検討していくことが必要ではないかと考えているところでございます。
それから,次のページ,70ページを御覧いただければと思います。基本的に,このような見方・考え方を踏まえて資質・能力を育んでいくわけでございますが,今回,学力の3本の柱に沿ってどのような資質・能力を育んでいくかというものを小・中・高で整理していくということが重要でございます。個別の知識や技能,それから思考力,判断力,表現力,学びに向かう力や人間性というもの,こういうものに関してこのような形でまとめてはどうかというところでございます。
なお,この赤字の部分がございます。赤字の部分に関しましては,論点整理におきまして,例えば,我が国の政治の動きでありましたり,中学校における世界史の教育の充実など,そういうことに関して充実することの検討が求められているところでございますが,そういうことも踏まえて,例えば,小学校の社会科でありましたら,その社会的事象について主体的に調べたりしようとする態度の中に,我が国の政治の働きなどは,やはり重要な要素なのではないかということ。それから,個別の知識や技能ということで,中学校の歴史的分野について,今まで直接的な関わりというものを日本史につなげるような世界史というものをやっていたわけでございますが,世界史部分について,間接的な影響を及ぼすものについて,そういうところを含めた理解というのも必要なのではないかというところ。
それから,公民的分野のところでございますが,他者と協働して考え,社会に参画しようとするというようなこと。こういうところについても資質・能力として重要なのではないかというところから,このようなところも追加してはどうかというところを,この赤字のところで入れているところでございます。
また,高等学校の地理歴史,それから次を御覧いただければと思いますが,高等学校の公民科につきまして,特に公民科につきまして本日,御議論いただけばというふうに思っております。
また,最後に,教育のイメージというものが,この資料の最後にございます。それぞれ,思考力,判断力,表現力,3本柱に沿ってどのようなものをそれぞれの学校で育んでいくのかという,いわば,大きな目標と考えられるものでございます。そちらにつきましては,例えば,その公民科のところを御覧いただければと思いますが,広い視野に立って,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家・社会の有為な形成者として必要な公民としての資質・能力を養うために,社会的な見方や考え方を用いて,以下の三つの資質・能力を育成するということで三つのことを書いているところでございます。
こちらは,全体的なところで少し長いというところもありまして,修正したものを,また本日御覧いただければというふうに思っております。
それから,資質・能力系ということで大体御説明したところがあるのですが,説明が漏れたところを補充的にちょっと御説明させていただきたいと思います。
48ページ以降に,これは小・中学校や資質・能力を特に御検討いただいているところで御検討いただいている資料をつけております。48ページというのは先ほどと同じ資料でございまして,49ページも同じようなところでございます。
まず,51ページを御覧いただきたいと思います。51ページで,思考力,判断力,表現力というものを学校段階ごとにこのような形で育んでいくのではないかという資料,この資料は前回御覧いただいたところでございますが,その検討をより進めまして,小・中・高というところで,例えばマル1でございますと,社会的な事象の意味や意義,特色や相互の関連を多角的に構成するべきものである。2番目のところに関しましては,相互の関連を多面的,多角的に考察できるようになる。それから,3番目のところでございますが,概念等を活用していくということ。小・中・高というものの重なりはあるわけでございますが,その段階的なところとして,4段階というよりも3段階的なところではないか,そういうところに合わせて修正を図っているところでございます。
それから,次のページを御覧いんただければと思います。先ほど来,どのような学習において授業を行っていくかというプロセスが非常に重要だという御議論があるわけでございますが,それについても御検討いただいておりまして,課題把握,課題追究,課題解決というところで,どのような学習過程が考えられるか。その際にどのような資質・能力を見ていくのか,そのようなものについてもまとめております。こちらについても後ほど御説明をさせていただければと思います。
また,次のページ,53ページについては,同じく,技能の部分でございます。社会科におきましては,様々な資料について調べまとめる技能というのが重要でございますが,それにつきまして,その内容を考えていくと,このような考えになるということの議論も行っていただいているところでございます。
同じようなところはちょっと省かせていただきまして,57ページは後で御説明させていただいて,最後に61目ページだけ御覧いただければと思います。61ページにおきましては,小・中学校において,先ほど来,御説明申し上げているような内容ということと加えて,どのような内容につきましてやっていくということを整理したほうがいいのだろうということで,まず,内容の枠組みというものを,もちろん重複する部分もございますが,分かりやすいような形で整理してはどうかというふうに考えているところで,このような資料を御検討いただいております。地理,それから現代社会の仕組みの話,それから,歴史と人々の生活ということで,対象をそれぞれ地域,日本,世界であったり,経済・産業,政治,国際関係,地域,日本,世界ということに分けまして,現行でこういうことをやっていますというところ。
それに加えまして,例えば,赤字の部分でございますが,論点整理等で御議論いただいているときも,このようなものに関して,より充実,発展していくことが考えられるのではないかというところ,このようなところの整理をこちらで図っていかれればというふうに思っております。
例えば,小学校3年生のところでございましたら,市役所というところにおける役割を,政治というところに関して,そのようなところを考えていくことも重要なのではないかということ。次の三つの例がありますが,外国との関わり,国際交流というもの,こういうところは考えられるのではないかということ。それから,小学校5年生で言います,今回の地震ということも含めまして,ここでは防災に関する内容ということが非常に重要でございますので,そういうところをここに入れたり,それから,より充実させたり,一番下でございますが,様々な産業ということを小学校5年でやりますが,産業の変化というものを踏まえた見直しというのも当然必要なのではないかというところ。それから,歴史のところに関しましては,世界の歴史図を小学校で活用したり,先ほどの中学校の歴史分野のところでございますが,世界の歴史を充実するというようなことが考えられるのではないか。また,公民的なところにおきましては,中ほどの政治のところで,その参政権の取扱いであったり,政治の扱いなどを充実することが考えられるのではないか。
ただ,このようなことをやっていく際には,例えば歴史の,一番右の上のところの「昔の道具と暮らし」とか,地域の社会的な歴史ということをやるところがございますが,このようなことを含めて,再構造化を図っていくということを行っていく必要があるのではないか。このようなところがあるかと思っております。このようなところを含めて,本日の議論と重なる部分はございますが,今までのワーキンググループの御議論を簡単に御紹介させていただきました。
以上でございます。

【土井主査】  ありがとうございます。今後とも引き続きまして,本ワーキンググループにおける検討状況について各委員の理解を共有していきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
それでは,本日の審議事項に移りたいと思います。
まず初めに,高等学校学習指導要領における「新必履修科目『公共(仮称)』の方向性として考えられる構成」等について意見交換を行いたいと思います。
まず事務局の方から,前回会議における御意見なども紹介いただきつつ,資料について御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  それでは,お手元に,本日,御議論を頂きます新設科目,「公共(仮称)」につきましての資料といたしまして,資料9-1,9-2,9-3が,御説明させていただきます。
まず,資料9-2をお手元に御用意いただけますでしょうか。資料の9-2でございますけれども,こちらは,前回の会議の配付資料の束として,今ほど梶山主任視学官から説明がありましたが,資料の9-2の脇に資料2をお手元に御用意いただきまして,資料2の中の前回の公民関係を集中的に御議論いただきましたワーキンググループとしては,第6回に当たりますので,ページ数で申し上げますと,資料2の27ページが前回,配付をさせていただいて御検討いただいた資料ということでございます。
こちらの資料2の27ページの資料を本日,御意見を踏まえ,リバイスをさせていただきまして,資料9-2の形で取りまとめをさせていただいております。少し間も空きましたので,構造だけ再度確認を頂ければと思います。資料9-2は全部で3枚で構成されております。この新必履修科目「公共(仮称)」につきましては,1ページ目のところで示しておりますように,「公共の扉」というものをまず用意をいたしまして,今まで受け継がれてきました先人の知恵でありますとか取組,あるいは知的蓄積などを踏まえて,個人と社会との関係について考えさせる,あるいは,個人の判断基準を形成していくというために必要となる考え方をア,イ,ウの中で学び取っていくといような構造にしておりまして,これを導入的に学習するという位置付けで検討がなされてまいりました。
こうした(1)における考え方を基にしまして,2枚目のところでございますけれども,(2)の項目,「自立した主体として社会に参画し,他者と協働するために」というような項目におきまして,社会を構成する主体となるために習得した知識,あるいは概念を活用しながら考察を深めていく。あるいは,社会に参画し,他者と協働するなど,自立した主体として必要となる力,こういったものについて各主体の学びを通じて育成していくというような構造をとっております。
最後,3枚目でございますけれども,そうした(1)や(2)における学び方,あるいは主体としての必要となる力の育成の学習を通して,(3)におきましては,持続可能な地域,あるいは国際社会作りというような,ア,イ,ウのそれぞれ項目を設けまして,それぞれの役割を担う主体としてどういったことが必要となってくるかということについて,ここは探究をしていくということで,(3)の項目としては探究学習の内容で構成をしているという構造になっておりました。
前回頂いた御意見を主に紹介させていただきますと,資料9-2の1枚目にお戻りを頂きまして,まず初めに(1)の「公共の扉」のところでございますけれども,イのところで,「公共的な空間における人間としての在り方生き方」ということで,社会に参画し,他者と協働する倫理的主体として個人が判断するための手掛かりとして大きく二つお示しをさせていただいておりました。その中に,一つ目として,行為の結果として,従前,前回の資料でございますと,「行為の結果における効用として,個人の幸福と共に,社会全体の幸福を重視する」というような整理にしておりましたが,今回,効用の部分については,語句の使い方が懐疑的なところもあるという御意見も頂戴いたしましたので,ここの「効用」という表現を削除し,「個人の幸福と共に」という形でつなげさせていただきました。
同様の箇所が,その5行ほど下に,点線で囲われている中の中点の三つ目のところにも同様に「行為の結果における効用について,多面的・多角的に考えていくことが重要である」ということを前回示しておりましたけれども,こちらについても同様の趣旨で削除をしているというようなところでございます。
9-2の2枚目でございますけれども,「(2)自立した主体として社会に参画し,他者と協働するために」の箇所でございます。資料の2の方で申し上げると28ページになります。こちらにつきましては,(2)の趣旨分,リード分のところで,従前,小・中学校社会科で習得した知識等を基盤にする,これは従前と変わらないのですが,前回までは,「社会的事象の見方や考え方を働かせながら」,あるいは,その後のパートの部分で,「公共的な空間における基本的な原理等を活用して現実に社会的事象について考察・追究する」という形になっておりましたが,今回,見方や考え方の部分につきまして,小・中・高を通じた資質・能力を中心に御議論いただいているワーキンググループの御意見を踏まえて修正を図りました。その修正を反映させる形で,高等学校の「公共(仮称)」におきましては,9-2の2枚目に示しておりますとおり,「人間の社会の在り方を捉える見方や考え方」という形で「公共(仮称)」の見方や考え方を整理してはどうかというふうに考えております。
また,同様に,その後段部分につきましては,「現実の社会的事象」ということでございましたが,より「公共(仮称)」という科目において実践的に学習を進めていくということから,「現実社会の諸課題」という形での修正を図っております。
また,中央部分で,ア,イ,ウ,エの各主体の中の題材例というものを示してございます。こちらの題材例につきましては,前回,経済的な主体の例として示しているものに比べて政治的主体の部分が,先ほど御覧になっていただきました「公共の扉」の部分に一部移し替えを行ったことによって,やや薄かったのではないかという御意見を頂戴いたしました。これを踏まえまして,「政治的主体となる私たち」の題材例といたしまして,政治参加,世論の形成,国際貢献に加えまして,地方自治,あるいは国家主権,領土を含むということでございますけれども,そういったような点を今回例示をさせていただきました。個人から地方,国,あるいは国際というような広がりの中で題材を示させていただいたということでございます。
また,3枚目になりますが,(3)の「持続可能な社会づくりの主体となるために」の箇所でございます。こちらにつきましても,(2)と同様に,題材の例のところを一部,加筆修正をさせていただいております。一番最後のところで,「国際平和」の後でございますけれども,「国際経済格差の是正と国際協力」という題材例という形で示しておりまして,国際協力に係る視点が国際平和に加えて少し必要なのではないかという御意見を頂戴しておりましたので,こういった点についての修正を行ってございます。
これらの修正に関わる前回の主な意見といたしましては,本日配付をしております資料の1でございますけれども,資料1の(1)の扉に関わりましては47ページから48ページを中心に,(2)の部分につきましては51ページを中心に,(3)につきましては53ページを中心にそれぞれ記載をさせていただいておりますので,後ほど参照なさっていただければというふうに思っております。
それから,資料9-1の方でございますけれども,本ワーキンググループにおきまして,「公共(仮称)」につきまして集中的に御議論を頂戴してまいりましたけれども,これら3枚つづりになっておりましたので,この3枚で整理しておりました「公共(仮称)」を1枚にまとめたものが資料9-1になります。内容的な部分については,9-2の部分のエッセンスに当たるような部分を中心に再整理をしておりますので,内容的な変更箇所はございません。ただ,示し方といたしまして,資料9-1の左側でございますけれども,まず,この科目,新必履修科目「公共(仮称)」につきまして,育成する資質・能力というものを四つのマルで再整理をさせていただいております。これは,後ほど「公共(仮称)」以外の科目も含めて,あるいは,地歴科の科目,小・中学校社会科における教科の資質・能力と併せて再度,御議論いただく時間をお取りしたいと思っておりますが,今回,「公共(仮称)」として資質・能力という形で,一つは,現代社会の諸課題を捉え,考察する基準となる概念や理論を含めた知識,理解に関わる事柄。それから,2点目として,諸資料から,倫理的,政治的,経済的,法的,様々な情報を発信・受信する知的主体となるために必要な情報を効果的に収集する・読み取る・まとめるといった技能という,技能的側面を二つ目に。
三つ目につきましては,これまでも何度か御議論を頂戴しておりましたが,思考・判断・表現に関わる部分といたしまして,選択・判断の手掛かりとなる考え方や公共的な空間における基本的な原理を活用して,現代の社会的事象や現実社会の諸課題について,協働的に考察し,合意形成を視野に入れながら構想したことの妥当性,あるいは効果,実現可能性,こういったものを指標にしながら議論していくというような力を,この科目においてつけさせるということ。
さらに,最後のマルでございますけれども,「現代社会に生きる人間としての在り方生き方についての自覚,我が国及び国際社会において,国家及び社会の形成に積極的な役割を果たそうとする自覚など」ということで,学びに向かう力,あるいは態度形成という部分についての資質・能力を最後に示させていただいているところでございます。
なお,一番下の二重線で囲われている枠のところでございますけれども,こうした「公共(仮称)」における学びというものが,非常に現実の社会的事象を取り扱うということもございまして,前回の小・中・高の資質・能力の際にも別な学びのプロセスの資料で示させていただいているのですが,二重線の枠の中のコメジルシの二つ目のところでございます。「取り上げる事象については,生徒の考えが深まるよう様々な見解を提示することなどが求められる。その際,特定な事柄を強調し過ぎたり,一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど,特定の見方や考え方に偏った取扱いによって,生徒が多面的・多角的に考察し,事実を客観的に捉え,公正に判断することを妨げることがないよう留意すること。また,客観的かつ公正な資料に基づいて指導するよう留意することというような部分について付け加えをさせていただいたところでございます。
こうした資料の9-2,あるいはそれらをまとめた9-1を今回,新必履修科目「公共(仮称)」の方向性として考えられる構成を文章化したものが資料9-3でございます。資料9-3につきましては初めて示させていただきますので,ざっと御確認を頂ければというふうに思っております。
まず,高等学校公民科における科目構成及び新必履修科目「公共(仮称)」の構成については,以下のように考え,整理することとしてはどうかということでございます。
一つ目のマルにつきましては,これは後ほど資料の10のところで併せて御議論を頂く予定にしてございますけれども,公民科の科目構成の見直しの基本的な考え方といたしまして,共通必履修科目「公共(仮称)」を設置し,その上に選択履修科目「倫理(仮称)」,それから「政治・経済(仮称)」を設置する。また,前回も資料として御議論,御意見を頂戴しておりましたけれども,現行の選択必履修科目でございます「現代社会」については,「公共(仮称)」との関連性を考えまして設置しないということが考えられるのではないかということでございます。
また,二つ目のマルでございますけれども,新必必履修科目「公共(仮称)」においては,先ほど来,育成する資質・能力として御覧いただきましたけれども,まずは現代社会の課題を捉え考察するための基準となる概念や理論,あるいは,古今東西の知的蓄積を通して習得していくということでありますとか,第2に選択・判断の手掛かりとなる考え方,あるいは基本原理,こういったものを活用しながら協働的に考察し,合意形成を視野に入れて,構想したことの妥当性,効果,実現可能性,こういったものを指標としながら議論する力を育成するという形で整理してはどうかということでございます。また,最後の部分,第3のところでございますが,「平和で民主的な国家及び社会の形成者」として必要な資質・能力を養うということを大きな目標として据えたらどうかというふうに考えてございます。
次のマルでございますけれども,そのためにその科目の構成の仕方についての御説明でございます。先ほど申し上げましたが,三つの項目で構成するということで,第1の「公共の扉」についての構成の考え方。例えば,これまで受け継がれてきました蓄積,先人の取組,知恵,こういったものを踏まえながら,個人が判断するための手掛かりとなる考え方を理解させることと併せて,公共的な空間における基本的な原理について考えさせる。そういったことを通じて人間と社会の在り方を捉える見方や考え方を培っていくことが考えられるのではないかということでございます。
また,次のマルにおきましては,大項目の(1)に当たります「公共の扉」において行う学習として,次以降の学習への接続,あるいは,学習の狙いを明確にした上で思考実験等の学習活動の例示をさせていただいております。
2ページに移りまして,第二の「自立した主体として社会に参画し,他者と協働するために」の箇所についてでございますけれども,こちらについては,小・中学校社会科で習得した知識を基盤とした上で,公共的な空間を形作る政治,経済,法などのシステムの基本を理解させるということと併せまして,自立した主体として生きるために必要な知識を身に付けさせるという項目になります。この大項目の(2)に学ぶ学び方といたしましては,社会に参画し他者と協働していく,今,どのように他者と協働していくかを考察,あるいは追究させていくというような学習のスタイルをとるということでございます。
また,その際に,第二で学んだ内容を第三,先ほど,探究する部分が第三のパートということで申し上げましたが,ここにつながるような形を意識する,問題意識の醸成に努めていただくということでありますとか,あるいは,第二のパートの部分で,各主体,四つの大きな主体がございましたけれども,政治・経済,法,情報,知的主体というような四つの主体がございましたが,これらの主体に示されている題材につきましては,複数の観点からアプローチをするというような部分も少なからずあるというふうに考えておりますので,そういったことについての説明。あるいは,様々な主体となる個人を支える家族や家庭,あるいは地域等にあるコミュニティを基盤として,自立した主体として社会に参画し,他者と協働することの意義について考えさせるということも,この第二のパートの部分で行っていってはどうかということでございます。
その下のマルにつきましては,先ほども少し御紹介いたしましたが,題材として取り扱うことが考えられるものを例示的に示させていただいております。また,併せまして,関連する専門家,あるいは専門的な機関との連携,協働についても示させていただいております。
2ページ目の下から二つ目のマルでございますけれども,第三のパートにつきましては,「持続可能な社会づくりの主体となるために」ということで,地域,国家,国際というような大きく三つのパートから,それぞれ現実の諸課題について例示をしているような事柄について探究する学習を行っていってはどうかということが示されております。
また,2ページ目の一番下のマルにつきましては,先ほど少し口頭で御紹介しましたが,この「公共(仮称)」の指導に当たって取り上げる事象が現実の社会的な事象であるということに関わる指導に当たっての留意事項というものを示させていただいております。
また,最後,3ページ目のところでございますけれども,一番最後のマルで,「公共(仮称)」においては,キャリア教育の観点からインターンシップの準備や振り返りを行うことなどを通して,経済,法,情報発信などに対して主体的に参画する力を育む中核的機能を担うことが求められているということで,実は,今,現時点で特別活動に関するワーキンググループにおきまして,キャリア教育の系統性等についての検討がなされております。こちらの進捗状況も踏まえながら,キャリア教育の観点からの「公共(仮称)」における位置付け,あるいは在り方につきましては更に検討していくということとさせていただければというふうに思っております。
長くなりましたが,資料9-1から9-3につきましては以上でございます。

【土井主査】  ありがとうございました。それでは,資料9-1から9-3につきまして,大体11時15分ごろを目途に意見交換をしていただきたいと思います。御意見のある方は,いつもどおり,あらかじめ名札を立てていただきますと,私の方で順次指名をさせていただきますので,よろしくお願いいたします。
それでは,いかがでしょうか。一ノ瀬委員,それから岡﨑委員。

【一ノ瀬委員】  ありがとうございました。前回の委員会から1か月以上あって,その間,私が所属する団体などの方々からも,こういう「公共(仮称)」という科目についての関心が非常に高くて御意見を伺ったりして,時間がありましたので,私も過去の資料などを見ていろいろ咀嚼して考えたことがありますので,四つか五つあるので,手短に,箇条書き風に申し述べさせていただきたいと思います。
  一つは,この(1)の「公共の扉」と,(2)の「自立した主体として社会に参画し」という,この部分との間の関係が,やはりちょっと断絶しているのではないかというのが,まず一つ,私が思い当たりました。それをどうしたらいいのかということで申し出たいのは,「公共の扉」のアのとんところのマル1,マル2で目標を立てているところで,「自分らしい生き方」を問い,自らを成長させることや,対話を通じてお互いを高めへ合うことの両者によってよりよい集団,社会を作り出していくという,この部分が,ある意味で,現場の方々の意見などを伺うと,自分らしい生き方というのは,どうも,人と違うということと生徒たちは理解してしまいがちで,人と違う,更にそれが進むと,人それぞれで意見もそれぞれで正しいということは非常に総体的なことだというふうなことにどんどん考え方が進みがちな表現ではないかと,そういう考え方があり得るということで,私自身もなるほどと思ったのです。
その点も考えまして,さらに,「公共の扉」と2番の「自立した主体うんぬん」というところとの連続性をも考えて,「自分らしい生き方を問い」というところを,「自立した主体」という2番で使っている言葉に替えて,「自立した主体とは何かを問い」というふうにしたほうがよいのではないかというのが第1の提案です。
それから,2番目は,(2)の「自立した主体として社会に参画しうんぬん」と,この部分のア,イ,ウ,エの政治的主体,経済的主体,法的主体,そして知的主体なのですが,4番目の知的主体というのは,どうも,ア,イ,ウの政治的,経済的,法的というのと水準の違う分け方になっているような,つまり,経済的主体や政治的主体も知的主体なはずです。なので,ちょっとここが,もっと違った言い方がないだろうかということでいろいろ意見を頂いて,私も咀嚼したのですが,「様々な情報を発信受信する文化的主体」というふうにしたほうが文化の創造というようなことまで考えて,より適切ではないかということを御提案いたします。
それから,3番目の「持続可能な社会づくりの主体となるために」というこの部分の,やはりア,イ,ウとある点ですが,アの「地域の創造への主体的参画」というところで,これを余り強調し過ぎると,場合によっては,現行の高等学校の先生方で「倫理」とか,そういうものを専門に大学で学んでこられた方のパーセンテージが低いということも考えると,もしかしたら,郷土の偉人などの話を延々としてしまうという,そういう懸念があるのではないか。それを多少,制限をしておく必要があるのではないかということを私は思いましたので,その点も意見として述べたいと思います。
それから,キャリア教育ということが3番,あるいは,「公共(仮称)」という科目全体の後ろ,一番最後に,キャリア教育の観点から経済情報発信などに対して主体的に参画する力を営むということが述べられているのですが,このキャリア教育という点に対しても,私の同僚などから若干懸念があります。キャリア教育ということをやってしまうと,各地方の代表的な企業の方などを,もしかしたら講師としてお呼びして,そして,職業教育のようなことをしてしまう傾向に陥らないか,そういう懸念が示されております。したがって,キャリア教育という点ばかり強調されると,一応,学問というのはちょっと大げさかもしれませんが,学習としてされているものという趣旨とちょっと違ったものになってしまう恐れがないだろうかということが言われております。
それから,5番目です。「公共(仮称)」の学習において関係する専門家・機関,これは資料9-2の3枚目のところの一番下の方にあるので,選挙管理委員会とか,企業とか,経済団体とか,起業家というところです。これだと非常に政治・経済的な例が挙がっているので,点々となっていますからその他もということも含まれているとは思うのですけれども,あえて,例えば,博物館とか芸術家というのも入れたらどうだろうかということを考えております。
以上,箇条書き風で申し訳ありませんが,余り長くなってしまうと申し訳ないので,以上五つの点を申し上げました。

【土井主査】  ありがとうございます。岡﨑委員にお願いする前に,4番目のキャリア教育の点なのですけれども,キャリア教育としてどういうものが想定されているかという一般的な話と,それから,先ほど少し触れていただきました特別活動とか,「公共(仮称)」で期待されているキャリア教育の内容としてどういうことが想定されているのかについて,少し事務局から御説明いただけますか。

【梶山主任視学官】  ありがとうございます。キャリア教育につきましては,公民科だけではなくて,学校教育全体を通じて図っていく必要があるのだと思っております。その際に,例えば,社会人に共通して必要とされているような社会人基礎力と呼ばれるようなもの,そういうところも含めて扱っていくことが非常に重要なことだと思っておりまして,その際に,インターンシップを行うといったことも考えられることでございます。
今回,「公共(仮称)」として考えられるのは何かというときに,前々回の御議論のところに,そのようなインターンシップ等を通じてどのように働いていくかというところ,個別の産業について何か知識を得るというよりも,社会としてどう関わっていくのか,労働としてどう関わっていくのかということを扱っていくのではないかというようなお話があったのではないかと思っておりますので,個別のことということではないのではないかとは思っているところでございます。

【土井主査】  恐らく,キャリア教育の概念を,職業教育よりは広い意味,自分の人生設計,生きていく上でのキャリアをどう考えるかという広い意味に理解したうえで,かつ,「公共(仮称)」の科目の適性に即した部分についてやっていくということだろうと理解しておりますので,その点はそういう理解でお願いしたいと思います。
それでは,岡﨑委員。

【岡﨑委員】  恐れ入ります。3点ほど申し上げたいと思います。一つは,資料9-1で全体を総括していただいていますけれども,この中ほどの(2)の本文の2行目に,「その際,自立した主体として生きるために必要な知識を身に付ける」としていただいています。これまでも「公共(仮称)」の科目の中では,私どもでは経済的主体のところを特に重視しておりますが,各主体として生きていく力をつけるということが非常に重要です。社会の事象や仕組みをマクロ的な観点から理解するだけではなく,個人の観点から学んでいくということを取り入れていただきたいとお願いしてまいりましたが,この点,各論点に取り入れていただいき,有り難く存じております。
改めてこの記述を拝見しまして,「自立した主体として生きるために必要な知識を身に付ける」,ここに多くのことが集約されていると思います。これまで申し上げてきたことも踏まえましてもう1点お願いしたいのが,「自立した主体として生きるために必要な知識や態度を身に付ける」というふうにしていただきたいと思います。よく言われていることかと思いますが,知識は次々と社会の変化と共に陳腐化していきますので,「知識を身に付ける」ですと,現在起こっていること,現在の仕組み等について知る,既に存在する事柄を知るというような内容になるかと思いますけれども,これらの学習を通じて態度を身に付けるということによりまして,情報を収集し,選択し,判断していくということを含めまして,自立した主体として生きていく力をつけるということにつながると思います。
2点目ですけれども,この表の中でも,(3)の下の方の点線,オレンジ色の太い点線の括弧の中に書いていただいております「自立した主体となる力を育む家庭科との連携」ということがございます。この点について,是非とも引き続き強調していっていただきたいと思います。
家庭科においては,現行の学習指導要領策定時に,生活設計,経済的な計画を立てるということが大幅に拡充されております。この内容が非常に重要ですが,経済主体として生きていくための力をつけるという意味で十分な教育が行われているかどうか,まだ,施行され始めた段階ということもあろうかと思いますけれども,まだまだ不十分ではないかという声が,私のところにもいろいろな関係者から寄せられているところでございます。生きていく上では,消費者としての権利や責任ということも大事ですし,(2)の中にあります様々な事柄が重要な事柄でありますが,特に,この(2)の「経済的主体となる私たち」のすぐ右下にあります金融の働きに関しまして,家庭科の中で生涯の生活設計とからめて保険については教科書にもかなり明確に書かれておりますけれども,その他の金融取引につきましては余り触れられていないというのが実情であります。
私どもで調査を行っていますけれども,大人の方々の金融リテラシーというのが各国に比べてかなり低いという結果が出ております。直近の国際比較結果の発表はこれからですけれども,ただ今,刻々とOECDも調査結果をまとめているところでございまして,内部者として入手したデータと,今,日本が行っている調査結果を比較しますと,主要二十数か国の中でも相当低い方のレベルになるというところがあります。これは,金融に関する知識の面だけではなく,態度とか考え方の面でも,他国に比べてさほど優位にはないというところがありまして,強化しなくてはいけないところになっています。ただ,生涯学習といっても体系的な取組みは難しいところでありますので,学校を卒業するまでの段階で力をつける必要があります。この点について,経済的主体となる私たちのところにあります金融の働きの理解で十分なのかどうかという危惧がございまして,是非,家庭科と連携をして強化していきたいところだというふうに考えております。
3点目となりますが,支援活動について申し上げます。資料9-2の3ページ目のところに,先ほど一ノ瀬先生も言及されました専門家機関との連携ということを書いていただいております。この関係で,私どもの活動で,金融教育という名のもとに,お金や金融経済に関する教育のお手伝いをさせていただいております。いろいろな形態で行っておりますけれども,学校への出前講座,研究校の委嘱,先生方向けのセミナー,刊行物,教材の提供ということを主に行っております。出前講座に関しましては,典型的には県教育委員会の御支援を頂きながら,都道府県下の学校に御案内を出させていただき申込みを頂いて,専門知識を持っているボランティア的な講師の方々,全国で500名ほど当委員会で委嘱しておりますが,これらの方々を派遣させていただいております。
昨年度の全国での派遣回数は,小・中・高を中心としまして学校で1,000回に上っておりまして,高等学校では350回弱となっております。まだまだ力不足でございますけれども,典型的には,「これであなたもひとり立ち」という教材を使いまして,巣立ち講座という形で複数の県で,県も共催のような形で派遣をさせていただいております。これは,公民科の先生,あるいは家庭科の先生,そして様々な教科の先生が担当されるロングホームルームなどを使って,高校卒業までにこういった出前講座を行って,社会で生きていく力をつけようという先生方の熱意の表れかと存じております。
教材に関しましては無償で生徒の人数分を提供していることから活発に御利用いただいておりまして,人気の高い教材では年間10万部ほど出させていただいているところでございます。このような形で行っていく際に,中立・公正な内容で展開することが非常に重要だと考えております。このような考え方を共有いただいているほかの関連する団体,金融,経済の団体や,先生方が作られる団体などもありまして,私どもも連携させていただいております。自立した主体として社会に参画していく力をつけるためには,学校外からの中立・公正な立場からの協力というのが非常に重要かと考えておりますので,私どもの取組みを紹介させていただきました。ありがとうございます。

【土井主査】  はい,ありがとうございます。そのほか,いかがでしょうか。上村委員。

【上村委員】  高校の校長の立場から3点お話をさせていただきます。まず,最初の二つは,(1)で「公共の扉」という中身を持ってきている科目の構造に関することでございます。一つは,まずウのところなのですが,「公共的な空間における基本的原理」ということで,民主主義とか自由・権利と責任・義務ということが挙がっているのですが,例えば,大学で法学教育をやるときに,冒頭でリーガルマインドを指導しましたというようなことは多分やらないと思うんです。いろいろな学習をやった結果,リーガルマインドが形成されてくるだろうと。科目の構造上,こういうことを最初に持ってこなければいけないと思うんです。そうするとどうしたらいいかというと,レベルをどこに,どう設定するのかということをきちんとやらないと,繰り返し,繰り返しやって,多分これで終わってしまう恐れがあるんです。だから,導入部分でどういうことを,どう学ぶのか,そして,求められる水準がどれくらいなのかということをきちっとしていかないと,せっかくこういった科目の構造を考えたことが生きてこないのではないかなと思います。
2点目です。今度は(1)のイのところです。「人間としての在り方生き方」ということです。これは,これまで倫理の中でこの内容が出てきたときには,要するに,ザインとゾレンみたいな説明を今までされていたと思うんです。要するに,事実上の問題として存在がどういうものかということと,どうあるべきかという,そういう順番で言っていると思うんです。これも恐らくイントロ的に最初に出てくると思うんですけれども,先ほどのリーガルマインドと同じことで,最初に提示するとしたら,どういう提示の仕方がいいのかということをやらないと,これも,こればかりやってしまう恐れがあるのではないかと思います。
それから,三つ目はちょっと別の角度なのですが,科目の中身そのものではないのですけれども,現在,高等学校の教育課程というのは非常にいろいろな教科,科目キチキチになっております。公民科としてこういう科目の構成をしますと,多分,「公共(仮称)」という科目しか生徒全員が自分の学校で履修するということはないと思います。そうすると,「政治・経済(仮称)」や「倫理(仮称)」の内容にこういったものがありますから,こういった学習を高校の間にしますという理屈は通らなくなって,「公共(仮称)」だけをとった子が高校卒業の資格が取れるのだから,これでどういう資質を育んでこれでいいんですという理屈にするのか。多分,理系の子は絶対に「公共(仮称)」しかとらないと思います。そういう前提で物を考えないと,せっかくいいプログラムを作っても履修者がいないという話になってしまうのではないかと思います。以上3点でございます。

【土井主査】  はい,ありがとうございます。それでは西村委員。

【西村委員】  お願いします。先ほど一ノ瀬委員からも少し指摘があったのですけれども,特に(2)の内容について少し意見を言いたいと思います。
先回,ここのところは,課題追究学習をやるのだということで,法的な主体というものから入っていくという話があったかと思うんですけれども,今回を見ますと,必要な知識を身に付けるということで,考察とか追究という言葉が先ほどの説明でもありましたように,ここのところはやや,扉から入って四つの主体からやや知識というものを身に付けていくようなイメージで再構成されたのかなということを思うんです。生徒の立場からすると,(2)のところで課題追究的なことをするということを考えると,政治,経済,法,先ほど,「知的」なところは「文化的」という言葉に変えてもいいのではないかという御意見がありましたけれども,この四つの構成の並びが,この並びで本当にいいかということをもう一度御検討いただければと思います。
それは,教科書会社等が,恐らくこの順序で学習指導要領が出てくると,教科書会社は工夫されてやればいいということにはなるかと思うんですけれども,せっかく(1)のところで,「公共の扉」で倫理的なところとか,こういうものが入っているので,生徒の側からすると,例えば,情報倫理などは非常に今,生徒の立場からは重要なので,そういう身近なところから入っていかないと,せっかく(1)の扉でやっておいて,また「政治・経済」ですよというと,生徒にとっては課題追究学習と言いつつ,やはり遠いところになってしまうのではないかということを思いますので,個人的には,例えば,エとかウ辺りから入っていかれればいいのではないかというふうに思います。この辺,四つの構成,これでア,イ,ウ,エがいいのかどうかをちょっと皆さんに議論していただけると有り難いと思います。
以上です。

【土井主査】  はい,ありがとうございます。それでは,谷田委員。

【谷田委員】  失礼します。資料の9-1からの全体的な意見なのですけれども,これまで意見を積み上げられてきましたから,ここで特段にとは思っていないのですが,ちょっと誤解を生じる恐れがあるかもしれませんので,お話をさせていただければと思います。
この構成案を見させていただいたときに,様々な理由があってそうなっているのだと思うのですが,いわゆる「主体」という文言が非常にたくさん並んでいるのです。いわゆる,倫理的主体から始まり,(2)の自立した主体,政治的主体,経済的主体うんぬん,そして,様々な主体となる個人とか,(3)についても,主体的参画という形で出てきます。その後の家族・家庭うんぬんでも,個人を起点とした自立した主体というふうな形で出ています。恐らくは,学校教育法の規定などにもありますように,主体的に学習に取り組む態度であったりとか,18歳選挙権等を踏まえて,こういった主体の確立ということが求められているということは十分に考えられることであろうし,我々も,一定度,そういったことについては了解をしている部分かと思います。
ただ,この図だけを見ると,そういった主体,この主体をどう捉えるかというのは大変難しい問題ですが,こういった形で自立した主体を確立することが困難な状況にある方々,あるいは,そういったことが個人だけでは難しいといったような状況があったとすると,この主体をどのように捉えたらよいのでしょうか。つまり,一方で,協働的な取組といいますか,世代間協力・交流,自助,共助・公助等による社会的基盤の強化うんぬんということが(2)の下に書かれてはいるのですが,そういったような視点をもう少しバランスよく押さえておかないと,これは,そういった近代の思想的な流れなどの中で,もう完全に個人の自立ということ,言葉が適切かどうか分かりませんけれども,ある意味,分断化された個人といったようなイメージに捉えられかねないのではないかというふうな懸念もあるわけです。
そういったことからすると,こういう表現を押さえつつ,社会の中でどういうふうなネットワークを作っていくのか,あるいは,倫理的に言えば,ケアの部分であったり,配慮の部分であったりとか,協力の部分であったりとか,「公共(仮称)」という科目の名称が提案されているわけですから,その辺りのところをバランスよく押さえておかないと,ややもすると,これ1枚が出たときに,そういった何か孤立した主体の確立という形にとられかねないだろうかということを考えてしまうのですけれども,いかがでしょうか。
もう一つだけお話させてください。先ほど,事務方から御説明がありましたように,それぞれの題材の内容が今回新たに付け加わっております。国家主権や国際貢献,更には地方自治,国際経済格差との是正,国際協力ということが出ておりますので,言うまでもないことですが,生徒が多面的,多角的に考察して事実を客観的に捉え,公正に判断することを妨げることがないよう,この辺りのところをしっかり押さえて取りまとめていくということが求められるのではないかと思います。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。それでは池野委員。

【池野委員】  ありがとうございます。私の方からは三つ意見を申し上げたいと思います。一つは,「公共(仮称)」という科目名といいますか,それがどのような科目の中で「公共」が理解されて子供たちの中に培われてくるかという問題です。
二つ目は,地理歴史科,公民科も含めた目標かもしれませんけれども,9-1の資料の右上に書いてある「『平和で民主的な国家及び社会の形成者』を育成する」というのが多分,公民科を含めた目標だと思いますが,この目標との関係みたいなものをどのようにするのか。多分,資質・能力の四つのマルが,その具体的なものだと思われますけれども,そのつなぎみたいなものがどのように理解できるようになっているかということです。これが二つ目です。
三つ目は,もしもそのようにした場合に,「公共(仮称)」という公民科の必履修科目では,先ほど何人かの先生方から言われていましたけれども,「主体」という言葉が非常に多く出ていて,個人的な私のレベルから公共なり社会のレベルに行く方向性の考え方が強いのだと思うのです。「公共」というのはパブリックスペースを作ることでしょうし,パブリックスペース自体は存在するし,直されたり,新たに作ったりすることができるものだと思います。そういうものをどういう形でこの中に持ち込んで理解できるようにするかという観点が非常に少なく,どうしても知識理解の方に重点化されそうに,私から見るとなっているように思います。
どうしても,知識を教えて,そこから個人の在り方生き方を学んでくる。社会の課題なり,社会の中のいろいろな状況なり,公共的に思考したり,公共的に何かをつくったり,関係を作り直したりということを理解することを,どうしても知識ベースで進めていく。例えば,(1)の「公共の扉」のアのところでも,「これまで受け継がれてきた蓄積や先人の取組,知識などを踏まえ」みたいなことが出てくると,そこにずっと重点化されるでしょうし,(2)でも同じようなことが書かれていて,最後に必要な知識を身に付けるという,岡﨑委員の御指摘もあったと思うんですけれども,そういうほうに行ってしまって,資質・能力論で行くと,マル1のような基準となる概念や議論の理解にとどまってしまうと懸念をするので,少し全体的に知識から,もう少し高めて,公共的な議論や作り替えや,そういうものをするような方向にしないといけない。どうしても,必履修科目だから先生方は知識をベースに組み立てていかれていると思うんですけれども,私自体は,この考え方は丸山真男以来の「やることからすることへ」をそのまま使っているように思うので,それはもう少し進めて作り替えたりするものまで行かないといけないのではないかと思っています。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。それでは,今,フラグを立てていただいている棚橋委員,諸富委員,権丈委員の順で御発言いただいて,もう時間が来ておりますので,次の論点に移らせていただきます。それではよろしくお願いします。

【棚橋委員】  それでは,私からは2点,意見を述べさせていただきます。
1点は,最初に一ノ瀬委員から御指摘のありましたキャリア教育ということについてです。私も少し危惧を抱いているところがあります。キャリア教育は学校教育のあらゆる場面でという考え方はそのとおりだと思いますが,逆に言えば,各教科の学習が,キャリア教育を目的とする,つまり,キャリア教育が教科の目標や内容を規定するということに陥らないように注意しなければいけないと思います。
先ほど主査の方から,キャリア教育というのは広義のものなのだと御説明がありました。そのとおりであって,「公共(仮称)」でも,あるいはそれ以外の公民科,地歴科で行う内容も全て社会のキャリアにつながることですから,キャリア教育と切り離すことはできないと思います。しかし,先ほど言いましたように,キャリア教育の観点からという言い方を使うと,やはり,主客が逆転してしまう恐れがあるのではないでしょうか。「キャリア教育」という言葉,それぞれの教科の中では,可能な限り使わないで,総論のようなところで使うようにする程度にしたほうが誤解を生まないのではないかと思っております。
それと(2)と(3)の関係でございます。私も西村委員の御指摘のように,最初に思っていたよりも,(1)が問題意識を育んで,(2)でそれに必要な知識や技能を育成して,(3)で実際の問題を解決するというような形に受け取られるような構成になってきてしまっていないかなと,少し危惧します。趣旨はそうではないというのは何度も議論の中で聞いているので分かるのですけれども,それはやはり,(2)のところで,「その際」という言葉を使いながら「必要な知識を身に付ける」という言葉が出てくると,今の池野委員のお話にもありましたように,この必履修のこれだけで,従来の公民科でやってきた,要するに,「政治・経済」,「倫理」の体系的な知識をここで全部やらなければいけないと解釈されるのではないでしょうか。それはどこだ,(2)だという形になって,せっかく「公共(仮称)」という新科目を作ろうとする趣旨と違って,従来の公民科と同じような形で(2)の体系的な知識が肥大化していくという現実に陥らないかということを考えております。この「必要な知識を身に付ける」という言葉が一人歩きして科目の性格をゆがめるという危惧を持っておりまして,極論すれば,私は「公共(仮称)」では体系的な知識を求めなくてもよいのではないかとさえ考えています。
以前の議論で私は,(2)も(3)も,いわゆる社会への主体的な参加であり,具体的な課題について子供たちに考えさせるような単元だと理解しました。(2)と(3)は,実はどちらも問題解決的だけれども,縦軸と横軸であって,(2)は政治的な観点とか経済的,法的な観点というので切っていき,(3)は今度,持続可能とか地域とかという横の総合的な問題解決をさせるのではないかと意見を申しました。その際,政治や経済という縦軸を完全に切り分けることはできないのだというような御意見も頂きましたけれども,やはり,(2)と(3)は,どういう主体的な参加の性格の違いがあるのかというのが伝わらないと,(2)が体系的な知識の獲得に陥ってしまう危険があると危惧します。やはり,そこをきちっと,この趣旨を伝えることが新科目「公共(仮称)」を設立する意義として伝わるのではないかと思っております。
以上でございます。

【諸富委員】  初めて出席いたします諸富と申します。よろしくお願いいたします。文脈をよく理解しないまま話をしてしまうかもしれませんが,複数の委員の先生方から大変興味深い御発言がありまして,私もそれに絡んでと思いまして,やはり,個人と社会の関係をどう考えるかというのが,「公共(仮称)」の非常に大きなテーマ設定だと思います。
その中に,「個人」を強調し過ぎ,あるいは「主体」を強調し過ぎるという点があるのではないかと,谷田委員からもそういう御指摘がございましたけれども,私自身は,この全体の御説明と資料を拝読させていただきまして,「主体」という言葉,あるいは「個人」という言葉が強く打ち出されているという懸念はあるかもしれませんが,全体の基調については支持したいというふうに考えておりまして,やはり個の強さというものがなければ社会としての,個人によって織りなされる社会の強さというのもあり,生まれてこないのでばていか。そういう意味では,まず個を強くしていく,主体というものをしっかり構築することが日本の文脈の中では非常に大事ではないかと思います。やはり,対立や意見の違いというのも恐れないということも,また非常に重要で,それが多様性の承認につながっていくわけで,問題は,それを超えて,単にあなたと私は違うということで終わってしまうのではなくて,そこから意見の対立を踏まえながらどうやって協調的を見いだしていくか,そして社会を形成していくかというところを学んでいく,そのすべを学んでいくというところが「公共(仮称)」というところの非常に重要な論点ではないかと思っております。
そういう中では,国際社会の中でどうしても日本,あるいは日本人の発信力が弱いのはなぜかというところを考えていきますと,どうしても我々,コンフォーミズムじゃないですけれども,割と主流のところに同調していく,日本人というのは内在的に,学生もそうですけれども,なかなか人と違う意見というのを教室の中でも言ってくれない,言おうとしない。どうしても,メインストリームがこれだなと思ったら,違う意見を言うのは何かはばかられると。これでは社会は強くならないというふうに思うんです。
ですので,そういう意味では,違った意見でも言う。ただ,違った意見を自分は持っているということについてしっかり自覚的に学び,そしてそれを表現する力と勇気,それを個々の人たちに与えてあげる。ただ,それは,単なる喧嘩や論争に行くのではなく,対話と,ここに「協働」という言葉がたくさん散りばめられていて非常にいいと思うんですけれども,社会を構成していくわけですから,違いというところからどう一つの社会を形成していく方向へ向けて対話をし,協働していくのか,これを学んでいくというところですので,出発点を個とか主体というところに強調を置いて,社会形成というのを構想していらっしゃるというふうに,私は今日の御説明を聞いて思いましたけれども,基本的な方向性というのは非常に望ましいものであり,これからの国際社会の中での日本の生き方を考えますと,是非,その方向があるべきだというふうに私は感じました。

【土井主査】  では,権丈委員。

【権丈委員】  ありがとうございます。先ほど何人かの先生方がおっしゃられておりましたように,(2)のところが知識の詰め込みにならないようにというのは,そのとおりだと思います。また,キャリア教育が職業教育になってしまわないようにということも大事な指摘だと思います。そういった点に留意して取りまとめをしていくことは重要だと考えます。
そういう点に気をつけた上で今回の構成を考えますと,「公共(仮称)」の(2)においてキャリア教育を取り扱うというのは,やはりよいことではないかと思います。キャリア教育の方で課題となっていた中核的な教科を明確にするということもありますし,キャリア教育を「公共(仮称)」で取り扱うことで,経済活動や社会の動きを理解した上で,自分のキャリアや人生を考えていくことができるにようになることが期待されます。現実に,多くの人が職業を持ち働くことで所得を得て消費活動をしていくわけですので,そういった経済活動を理解しておくことは重要だと思います。
さらに,「公共(仮称)」のほかの領域との関連で言えば,当然ながら,人々が稼いだお金から税を納めるわけですので,その税の使い道にも関心を持つ。それによって政治への参加や世論の形成にも関わってきます。生徒たち一人ひとりが自分の将来と重ね合わせることによって幅広い分野の学習に関心を持つことを促すことにもつながります。そういう意味で,社会の動きを理解できる「公共(仮称)」という教科の中でキャリア教育を行うということは有効だろうと考えております。
(2)のところは,知識を詰め込むことが目的ではなく,使える知識を身に付けることが重要ですので,体験学習を取り入れてみるなどしていくとよいと思います。最近では,消費者教育や金融教育,またほかの幾つもの分野でも「アクティブ・ラーニング」を取り入れた事例なども蓄積されてきています。それらも参考にして,知識偏重ではないけれども,しっかりと必要なことを身に付けられる,そういった科目にしていければと思っております。
以上でございます。

【土井主査】  はい,ありがとうございます。各委員から貴重な意見を頂いたと思っております。
第1点目は,主体,あるいは個人というものを大切にしていくということと,それから,障害を持っておられる方,いろいろな事情で,自分自身で自立して生きていくことが困難な方もおられるわけで,その辺りのバランスをどうとっていくかという問題を御指摘いただきました。私としては,自立した主体であるということは,勝手に一人で生きていけと言っているわけでは決してなくて,人は勝手に生きていけないから協働するわけです。協働するから,そこに社会が生まれ,公共空間が生まれるということを全体として教えていく必要があるという御指摘だと受け止めました。個人を強くしていくということと,全体の利益を考えていくこと,いずれも重要なわけで,そういうバランスを考えながら,自分らしく,また社会全体をうまく動かしていくことを学ばせるのが本科目の目的になると思いますので,その辺り,個々のご要望だけを捉えるといろいろあると思うのですが,全体としてうまくバランスよくまとめていくことかと思いますので,その点は最終の取りまとめに向けて注意してやらせていただきたいと思います。
それから,もう一つは,やはりこれは必修科目で,場合によっては,この科目だけで公民的なものを学ぶという生徒もいれば,政治・経済等を受ける生徒もいるという中で,どこまでをこの科目に期待するかという問題がございます。これもまたバランスの問題でして,何もかもこの科目に突っ込むと多分何もできないということになりますし,かといって,内容を薄くしてしまうと,これで十分かという議論が出てきますので,その辺りは,これもまたバランスの問題だと受け止めさせていただいて,調整をさせていただきたいと思います。
その中で,御指摘いただいている中で重要なのは,(1)と(2)の関係をどうするかという点で,恐らく,(1)で取り扱う事項をかなり精選していく必要があるだろうと思います。正に,公共空間ということを考えていく上でのエッセンスになる部分に集約していかないと,ここのところが膨らんでしまい,(1)と(2)の区別がつかないことになるという御指摘かと思います。この点も,そのとおりだと思いますので,この辺りも注意をさせていただきます。
それから,(2)と(3)の関係についても御指摘を頂いておりまして,ここも整理していく必要があると思います。私自身が考えておりますのは,「政治的主体」とか「経済的主体」という言葉を使っておりますけれど,結局,現代社会は高度化・複雑化しておりまして,やはり,制度とかシステムを用いないと,なかなか抽象的に参加を考えにくいのです。あるシステムを通じて参画をしていく,選挙制度であるとか,政治制度であるとか,マーケットであるとか,そういう制度を通じて各人は参画していくことになります。その結果として,ここで表されている政治的主体になるというのは,その政治的システムの中のプレーヤーになる,経済的主体になるというのは,経済システムの中のプレーヤーになるという意味がありますので,そうしますと,そういうシステムのルール,そのシステムがどういう意義を持ち,どういう役割を担っているのかという理解抜きに参加を考えることは,やはり難しい。その辺りが,この(2)で学んでもらうエッセンスだと思います。
ただ,システムごとにばらばらになってしまうと,全体として課題を解決していくことにはならないので,したがって,(3)のように,そういうシステムに区分せずに,ある課題について,全てのシステムを視野に入れながらどう取り組んでいくかという学びも必要であるという整理になるかと思います。この辺りも今後検討させていただいて,誤解のないようにまとめさせていただきたいと思います。
それでは,次に移らせていただきます。続きまして,「公民科目の改訂の方向性として考えられる構成」(公民科の選択科目)について意見交換を行いたいと思います。
まず,事務局の方から,資料10-1から10-4までについて説明をお願いいたします。

【大内学校教育官】  それでは,お手元に資料10-1から10-4を御用意ください。また,前回の会議資料として参照していただきますのは,資料2の32ページ以降が,前回の本ワーキンググループで御意見を頂きました資料にありますので,こちらも参照にしながら御確認を頂ければと思っております。
まず初めに資料10-1でございますけれども,「公民科目の改訂の方向性として考えられる構成(案)」ということで,今ほど御議論,御確認を頂きました新必履修科目「公共(仮称)」の構成についてでございます。こちらについては,主な変更点といたしまして,上から二つ目の中グロのところでございますが,「選択・判断の手掛かりとなる考え方や公共的な空間における基本的原理を活用して,現代の社会的事象や現実社会の諸課題について協働的に考察し,合意形成を視野に入れながら構想したことの妥当性や効果,実現可能性などを指標にして議論する力を養う」ということで,小・中・高を通じた資質・能力部会の方で検討していただいている部分も含めての修正を「公共(仮称)」部分で図っております。これは先ほども御確認いただいたとおりのところでございます。
また,この資料自体としては,「現代社会」のところでございますけれども,一番最後の行でありますが,「『現代社会』については科目を設置しないこととする」と。前回,重複が見られるということであれば廃止が適当ではないかという御意見も頂戴しておりましたので,設置をしないことも含めて検討するということから,「設置しないこととする」としてはどうかということでございます。
それから,資料の10-2でございますけれども,こちらは公民科目の新選択科目である「倫理(仮称)」についての資料でございます。資質・能力の箇所については,これも前回資料と比較していただければと思いますが,資質・能力を中心に御議論を頂いているワーキングの御意見を踏まえまして,例えば,上から二つ目のマルのところで,今回,技能というのを整理させていただいております。これは,先ほど「公共(仮称)」の部分でも御確認いただいたとおりでございます。
また,3点目のところで思考,判断,表現に関わることで,一番最後のマルのところが,学びに向かう力,人間性に当たるものという構造は変わってございません。四つで示させてはいただいております。
なお,「倫理(仮称)」につきましては,前回の御意見の中で,課題例のところで幾つか御指摘を頂戴しておりましたので,今回改めて(1),(2)の中でそれぞれ示させていただいている課題例について,委員の先生方の御意見なども踏まえながら修正を図らせていただいております。また,学習活動の例,一番右側にございますけれども,こちらについても,先哲の原典を読むということで,原文で読むのかという御意見も頂戴しておりましたので,「原典の口語訳を読む」という形での修正を図っております。
それから,資料10-3,3枚目でございます。資料10-3でございますけれども,こちらは新選択科目「政治・経済(仮称)」についてですが,資質・能力について,先ほど来,御説明しておりますとおり,技能,二つ目のマルのところを追加しているという点。それから,資質・能力の中では,一つ目のマルのところですけれども,必要な概念や理論を含めた知識ということで,少し表現の修正を図っております。また,実際の大項目の内容のところでございますけれども,こちらについても,先ほども例示をいたしましたが,(2)の課題例のところで,「国際経済格差の是正と国際協力」,ちょっと同じ文言にあえてしているのですけれども,そういった形での修正を加えさせていただいております。
また,(1)(2)それぞれの項目の趣旨といたしまして,例えば,(1)でありますと,「『公共(仮称)』で取り扱った法や民主政治,現代経済について,それらを構成する様々な専門領域を深く追究し,複雑な現代政治・経済の特質を捉えると共に,その解決策を探究する」という形であったのですが,「解決に向けて」ということで少し文言の修正を図っております。(2)の方についても同様の修正を図ってございます。
前回の主な意見につきましては,資料1の方で記載しておりますけれども,こちら,選択科目に関わることについては56ページから57ページにそれぞれ記載しておりますので,後ほど御参照いただければと思います。
最後に資料の10-4でございますけれども,これらの文言を整理したものでございます。まだ,本日の御議論を踏まえてということになりますので,趣旨の部分しか整理ができておりませんが,まず,資料10-4といたしまして,以下のように考え整理することとしてはどうかということでございます。
一つ目のマルでございますけれども,先ほど申し上げましたが,再掲になっておりますけれども,必履修科目として「『公共(仮称)』を設置し,その上に選択履修科目の「倫理(仮称)」,「政治・経済(仮称)」を設置するということと,併せて,「現代社会」について設置をしないこととすることが考えられるのではないかということでございます。
また,二つ目のマルでございますけれども,新選択科目「倫理(仮称)」は,共通必履修科目「公共(仮称)」で習得した個人が判断するための手掛かりとなる考え方を基盤とし,古今東西の幅広い知的蓄積を通してより深く思索するための概念や理論を理解し,それらを活用して現代の倫理的課題を探究すると共に,人間としての在り方生き方についてより深く自覚し,人格の完成に向けて自己の生き方の確立を図る主体を育む「倫理(仮称)」に発展させるということであろうということでございます。また,そのために思想史の断片的な知識の暗記中心から,「倫理的価値の理解」を基にしまして「考える倫理」に転換するということが考えられるのではないかということでございます。
最後のマルでございますけれども,新選択科目「政治・経済(仮称)」については小・中学校社会科で身に付けた現代社会を捉える見方や考え方や共通必履修科目「公共(仮称)」で身に付けた人間と社会の在り方を捉える見方や考え方を基盤にしまして,「公共(仮称)」で習得した選択・判断の基準となる概念等を活用し,現代日本の政治や経済の諸課題や国際社会における日本の役割などについて,正解が一つに定まらない現実社会の諸課題を協働して探究し,国家及び社会の形成に,より積極的な役割を果たす主体を育む「政治・経済(仮称)」という形に発展させてはどうかということでございます。
前回の御意見を踏まえての修正,並びに考えられる方向性のまとめとして資料10-4のような形で示しておりますので,御意見,御審議いただければというふうに思っております。
以上でございます。

【土井主査】  はい,ありがとうございました。それでは,資料の10-1から資料10-4につきまして,12時過ぎごろを目途に意見交換をしたいと思います。いずれについてでも結構ですので,御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。では,上村委員,諸富委員。

【上村委員】  私は専門が「政治・経済」なのですが,「倫理(仮称)」についてちょっとお伺いしたいと思います。この10-4のところで,一番最後のところ,二つ目のマル,「そのために,思想史の断片的な知識の暗記中心から,『倫理的価値の理解』を基にした『考える倫理』に転換することが考えられる」とお書きになられていて,指導実態の問題としてはそうかもしれないのですが,現在の学習指導要領に「思想史の断片的な知識の暗記をしろ」なんてどこにも書いてないわけです。物事って,多分,前回もこういうことを考えたのだと思うんです。にも関わらず,現在こういう文章をお書きになられるような状況になっているというのは,原因はどういうふうに認識されているのでしょうか。というのは,それをクリアしないとまた同じことになると思います,いかがでしょうか。

【澤田調査官】  「倫理」を担当しております澤田でございます。御質問ありがとうございました。現科目の構成が(2)のアというところが「人間としての自覚」となっており,ここが源流思想になっております。(3)の「現代に生きる人間としての倫理」が近現代を,ここはテーマ別,主題別になっているのですが,近現代という時間で区切っているということです。実際にテーマで設定しているにも関わらず,近現代の部分は従来の通史的なイメージの教科書づくりになっているということがございます。そのため,この近代的な部分,その時間設定をどこまでにするかというのは問題なのですけれども,今のところは,1960年代ぐらいまで,今から50年前ぐらいまでを考えています。そこまでの部分は新科目では(1)のところで扱いまして,時代区分で思想史的ということではなくて,価値で行うという形にして考えております。(1)の部分の課題例のところを,人間観,倫理観,世界観,宗教観,芸術観というような形でお示しして価値を示しているというのは,要するに,そのテーマで近代,現代と言ってもいいですけれども,1960年代ぐらいまでの思想家も含めた先哲の原典を基にした学習ということで考え直していきたいということで,今回この(1)を示させていただいております。

【土井主査】  上村委員,それでよろしゅうございますでしょうか。

【上村委員】  はい。

【土井主査】  では,諸富委員。

【諸富委員】  私も倫理ですので同じ疑問を持っています。この方向性です,倫理的価値の理解を基にした考える倫理に転換すること自体はすばらしいのですけれども,どうしても教育の現実の倫理の教育のプロセスの中で,「先哲の」という言葉も出てきますけれども,思想史,歴史を追う思想史の発展という構成になってしまいますと,先哲の考えの思想の理解ということにどうしても行ってしまって,テストとかになると,その知識を問うことにどうしてもなってしまう。しかし,経済の方におりますと,倫理の重要性を逆にすごく感じるのは,どうしても経済学における効率性の判断の基準というのは,何がよくて,悪いかというのは効率性しかないのです。
しかし,世の中,効率性を追求していくプロセスの中で格差が発生し,社会で正に問題になっています。どういう社会が望ましいのかということを考えた場合に,成長を求めるのか,より公正な社会を求めるのか,それから,税制を通じた所得再分配を考えなければいけないとしても,それをどの程度平等にするのが社会にとって望ましいのかというテーマです。これは,実は経済学では答えが出ない問題,経済学では答えられないということで,哲学や社会哲学の問題ですよねというふうになってしまっている問題なのです。
正にそのときに,従来の哲学,思想がその問題に対する価値判断の問題に対してどういう答えを出してきたのかということを学んでもらって,それを議論して,どの程度,我々の社会が分配というものを考えるのかについて一定の合意形成を図っていくのは非常に大事だと思うんです。そういう問いに「倫理」という科目が応える学習をやっていただいているのかどうかというのが,今のところ,はなはだ疑問なのです。つまり,社会の課題に対して応えることができる思想を課題先行というか,課題横断的と言うんでしょうか,そこから思想を見ていくというようなことはできないのでしょうか。素人質問で申し訳ございません。

【土井主査】  よろしいでしょうか。

【澤田調査官】  日本学術会議哲学委員会哲学・倫理・宗教教育分科会の方々にも「考える倫理」というご提言を頂いているところです。今回,分科会幹事の一ノ瀬委員はお見えです。諸富委員にご指摘いただいた意味での,本当の思想的なものを子供たちに考えさせる,そのためにはやはり,先哲を精選して原典をしっかり読んで,実際の問題を考えさせる,対話的,議論的に考えさせるという時間をきちんと取れるような「倫理(仮称)」に変えていきたい。そのためには,学術会議の方々から何が大事で,どんな議論が高校生にふさわしいかということに関しても御意見を頂いて,科目を生徒たちのためになるものに変えていきたいと考えているところでございます。

【土井主査】  では,一ノ瀬委員。

【一ノ瀬委員】  私は哲学・倫理を専攻している者で,先生方の御指摘,非常に厳しく受け止めました。実は,哲学・倫理を研究する大学の研究者全体の問題でもあると思うのですけれども,どうしても,何といいますか,「おける論文よれば議論」というふうによく自嘲気味に言うのですが,何々における何とかとか,何々によれば何とか,デカルトとか,個人名が入って言う議論というのがずっと主流だったので,大学の研究者自身が考える倫理ということに対して,少し足りない面があったというのは,我々自身としても反省しております。
ただ,資料10-2にあります,今,問題になっているところの右側の方の(1)と(2)ですけれども,現代の諸課題と倫理という(2)の方,ここで課題例として挙がっている技術の倫理,医療の倫理,動物の倫理,それから,福祉の倫理,宗教の倫理,平和の倫理,これは近現代において,哲学者の誰々,先哲がどうのというのとは一応独立して,問題そのものとして展開されているものでもありますので,若い研究者の中には,こういうことを主題として研究されている方も,今はもうたくさん輩出されておりますので,医療の倫理,ケアの倫理,動物の倫理となりますと,生命倫理と環境倫理の両面にまたがりますし,命というのをどう考えるのか,それから権利というものをそもそもどう考えるのかということにも関わってきます。また,福祉の倫理となりますと,財の分配というのをどう考えるべきなのかということで,格差を埋めるべきなのか,あるいは,市場マーケットのメイザルテに委ねて本当にいいのかとか,そういう問題がありますし,ここでは「平和の倫理」という言葉になっていますけれども,実際,我々がこういうことを論ずる場合,「平和の倫理」という言い方もありますが,もっと端的に「戦争倫理」という言い方があって,日本では,戦争というのは憲法でしないということになっていますけれども,ほかの国では戦争は憲法上も認められていて,場合によっては戦争をするということがあるのですけれども,その中で,とりわけアメリカ合衆国などでは,戦争には,いい戦争と悪い戦争がある,正しい戦争というのもあるのだけど,いけない戦争もあるのだと,そういう議論さえあるくらいなので,正しい戦争というのはどういう戦争なのかという議論は盛んに行われているわけです。
なので,そういう問題は,必ずしも,先哲のテキストをそのまま知識として受け取るというのとはちょっと違った形の議論になり得ると思いますので,(2)の現代の諸課題と倫理の課題例のようなものを広範において前面に出すことによって,先生方の懸念を多少なりとも払拭できるのではないかと思います。ただ,それは,教える人材をどう育成するか,そういう問題とも関わってきますので,この問題は直ちにパッと解決するというよりも,高大連携の中で,我々自身,大学人としても,しかと肝に銘じて考えていくべき課題であるというふうに自覚しております。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。今の点はとても大事な点でして,この点は冒頭で,「アクティブ・ラーニング」のところの「深い学び」との関係でしっかりバランスをとっていく必要があると思うんです。論点について,ただただ意見交換をさせると,自分の思いつきを語り合って,議論しましたねで終わってしまう可能性があり,それでは不十分だと思います。それなりに知の蓄積というものがあるわけですから,そこで人間が考えてきたことを踏まえながら議論しようしなければなりません。ただ,従来考えてきたことを学ぼうとすると,そればかりになってしまって,結局,それを学んで議論につなげるところにたどりつかなくなる。どちらも極端で問題があるわけですから,基本的には,両者をどうつなげるかが,「深い学び」を実現していく上で重要なのだろうと思います。
この点は,一ノ瀬先生におっしゃっていただいたように,現場の先生方だけにうまくやれと言っても多分難しい問題だと思いますので,倫理学とか哲学の先生方の知見を頂きながら,どういうやり方があるのかを実際に考えていただく必要があるだろうと思います。
では,髙橋委員。

【髙橋委員】  はい,ありがとうございます。私は,「政治・経済(仮称)」の方について申し上げたいと思います。
新選択科目「政治・経済(仮称)」のところは(1)と(2)になっておりまして,(1)の方は「公共(仮称)」を踏まえて探究すると。(2)の方は,グローバル化が進む国際政治・経済となっておりますが,「公共(仮称)」の分野において,国際的なところというのが結構少ない。「公共(仮称)」の(3)で我が国と国際社会への主体的参画というものが出てきますが,ここでの学習を深めるためには,それなりの知識も必要だと思うのですが,それについて余り言及されておりません。それもあって,この「政治・経済(仮称)」の方では,(1)と(2)の書き方が違うのだと思うのですけれども,やはり,これだけグローバル化が進展しておりますので,グローバルな視点,多様に物を考えるということは生徒にとっても興味深いところですし,必要だと思いますので,そこのところを「公共(仮称)」の方でもうちょっと増やしていただくとか,あるいは,グローバル化についてどういうふうなアプローチをしたらいいのかということについて,何らかの言及があったほうがいいのではないかと思います。
それから,先ほど上村委員がおっしゃっていましたが,現場では,今の現代社会でも結構アップアップな状況です。「公共(仮称)」というのが,まずは「公共の扉」をやって,知識を深めて,それから探究的な活動をするという流れの中で,なかなか時間が取れないという苦しい状況が予想されます。ただ,今の現代社会は大学の入試科目にされているところもありますので,それなりに知識を一生懸命得た後,探究するということを,ある程度やっているのではないかと思います。それを考えますと,この「公共(仮称)」という科目しか現場ではやれないのではないかという状況の中で,この科目が大学の入試や,大学の入試といっても今,多様化しておりますけれども,それにどういうふうに評価されていくのかというところがとても重要になっていくのではないかと思います。高大連携に絡むと思います。
それから,18歳選挙権,これは生徒もとても興味を持っています。ただし,学校によっても,生徒によってもいろいろな温度差があると思うんです。是非やってみたいという生徒もいれば,いやいや,という生徒もいる中で,「公共(仮称)」の方で,18歳選挙権を踏まえて選挙権を行使してみたいというふうに思えるような,チャレンジする意欲みたいなものが育てられることがとても重要ではないかなと思います。これは資質・能力に関わるところです。
それに関して,「政治・経済(仮称)」においては,幾ら投票しようと思っても,では,何を考えて投票すればいいのかというところを多角的に見られる,そういったことが体系的に学べればいいなというふうに思っております。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。よければ,事務局の方で,この「政治・経済(仮称)」の(1)の方にだけ「『公共(仮称)』で取り扱った」という文言が入っている点について,趣旨などを御説明いただけますか。

【梶山主任視学官】  申し訳ございません。当然,全ての内容につきまして,その必履修科目である「公共(仮称)」というものを踏まえるということは当然のことでございまして,(2)におきましても「公共(仮称)」でというところを考えております。ただ,「公共(仮称)」で取り扱った法や他のものについて,それを構成する様々な専門領域ということで,説明上これをつけさせていただいたところでございます。(2),御議論としては当然,前後を,ということだと思いますので,何かそれが分かるような工夫を文章上にしたいというふうに考えているところでございます。

【土井主査】  ありがとうございます。整理が少し難しい部分がありまして,政治や経済はシステムで,これは国内政治システムも国際政治システムも国内経済システムも国際政治システムもあるのです。それに対して,地域の問題,国内の問題,国際的な問題というのは社会の広がりの問題ですので,軸が少しずれている部分がある,その辺がちょっと影響しているのかなと思うので,意識的に「公共(仮称)」では国際は扱わないということではないという御理解でお願いいたします。
それでは西村委員。

【西村委員】  はい,お願いします。今まで「公共(仮称)」に目が奪われていて,「政治・経済(仮称)」がこんなに大きく変わるということにちょっとうっかりしていたのですが,私も「政治・経済」が専門なので,少し意見を述べたいと思います。
現行までは,(1)と(2)で大きく政治と経済を学んだ後,(3)で現代の政治・経済を国とか国際関係を実ながら諸課題として課題探究的な学習をしましょうという大きな構成になっていたのですけれども,実際,学校現場の先生方は,(1)と(2)をやるのが精一杯で,せいぜい(3)というのは大学受験等の小論文対策とか,そういうことで扱えるということで,大変やりにくいというお話は聞いていたのですけれども,今回ガラッと変わって,(3)はなくなって,(1)が「政治・経済(仮称)」ということで,「公共(仮称)」を受けてやりながら,(2)では,グローバル化を意識した国際政治・経済をやって,しかも,(1)と(2)の中で課題探究学習も入れていきましょうという,大変大きな内容構成の変化だなというふうに思います。
こういう方向でいいかも分かりませんが,実際,学校現場で行くと,どれだけ課題探究的な学習が(1)とか(2)の中で,現代のように(3)でやるというような位置付けがなくなると,どの程度やっていただけるのか,あるいは,構成的にちょっと心配をするわけです。この辺が大きく変わったというのは,何か,「公共(仮称)」だけ議論をしてきたので「公共(仮称)」のことはわかったのですが,「政治・経済(仮称)」がこんなに変わるとは思っていなかったのですが,大体こういう方向で行くというのは,もう決まったことなのでしょうか。

【土井主査】  御説明をお願いいたします。

【梶山主任視学官】  全体の中で御議論いただければと思いますが,今回,大きく,「倫理(仮称)」と「政治・経済(仮称)」の性格が変わっているのは,今までは「倫理」と「政治・経済」をとれば,「現代社会」と併せて全体のことを公民科の目標を達成できるというところの選択必履修科目でございました。ただ,今回については,必履修科目の「公共(仮称)」というものをとって,それにプラスアルファする選択科目として置くということでございますので,その性格としては当然変わっていくものだというふうに思っております。また,そういう性格でありますと,やはり,そのベースというものを含めて探究をしていくというのが,そもそもの方向性として,「地理歴史」を含めて大きく考えられるのではないかということで,この(1)(2)の内容というところから探究を行っていくということが適当ではないかということで,このような資料として御覧いただいているところでございます。

【土井主査】  西村委員,よろしゅうございますか。

【西村委員】  はい,ありがとうございます。

【土井主査】  では,村松委員。

【村松委員】  今さらなのかもしれないですが,ちょっと質問で教えていただきたいと思います。「公共(仮称)」の学習を踏まえて「政治・経済(仮称)」とか「倫理(仮称)」の学習をしていくわけなのですが,その関係がまだちょっとイメージが湧かないのです。分かりやすく言うと,「公共(仮称)」で使った知識を使って,それを更に深めるような形で「政治・経済(仮称)」とか「倫理(仮称)」をやっていくのか,あるいは,「政治・経済(仮称)」,「倫理(仮称)」の学習の中でも,更に新しい知識をまた入れて,それも踏まえてやっていくのか。二者択一,どっちの方向に考えているのかということをちょっと教えていただけますか。

【梶山主任視学官】  今おっしゃっていただいたことに関しまして,二者択一ということではないのかなというように思っております。ただ,資料10-1「公民科目の改訂の方向性として考えられる構成」ということで,この新必履修科目の重要な点として三つのところを挙げているわけですが,そこをより深めていくという学習が,「倫理(仮称)」とか「政治・経済(仮称)」にあるのではないか。その際,深めていくというものに関しましては,「公共(仮称)」で学んだ,ある程度,自分としての考え方の基準なり判断基準などを使って,この課題について考えていくという,そのような大きな考え方の部分。それから,それに伴って見つけていくような,中学校からの連続で得られるような知識というもの,その両方があるのだと思います。その両方をより深めていくということが,この探究的な科目に求められているものではないかというようなことが言えるのではないかと思っております。

【村松委員】  恐らく二者択一ではないのだろうなとは思ったのですが,そうすると,深めていくということになったときに,考えを深めるというのと,新しい知識がそこに加わってくるのだろうと思うので,「公共(仮称)」ではこのレベルの知識とか探究を目指すのだと。その上の「倫理(仮称)」とか「政治・経済(仮称)」では,このレベルの知識まで要求するのだというところをもう少し明確にしていただかないと,何となく全体のイメージが湧かないのかなと思いますし,実際これから組み立てていく上で,そこをどこに設定するのかということは大事なのかなと思って伺いました。

【土井主査】  それでは,池野委員で,今日,この論点は終えさせていただきます。

【池野委員】  今,大内さんが御説明された10-1の,多分皆さん方がなかなか理解できないのは,この二つの新選択科目「倫理(仮称)」と「政治・経済(仮称)」のピンク色で囲ってある部分,公共的な事柄に自ら参画しようとする意欲や態度を育み,現代社会に生きる人間としての在り方生き方についての自覚を一層深める学習をするのだと,いわゆる,発展的「探究科目」としてそういうように,この二つの科目がそれぞれ,「倫理(仮称)」の方は,自立して思索を行うと共に,他者と共に生きる主体を育む「倫理(仮称)」にすることによってピンク色の部分をしようとしているし,「政治・経済(仮称)」の方は,より積極的な役割を果たす主体を育む「政治・経済(仮称)」として組み替えたらピンク色の部分ができるだろうという構図だと思うんですけれども,科目構成になると,先ほど村松先生が言われたように,どのレベルの知識を教えればいいのかという話に,どうしても転化してしまいます。
本来は,多分それぞれの「倫理(仮称)」や「政治・経済(仮称)」の(2)の課題をどのように取り扱って,それぞれ他者とどのように関係づけたり,先ほど土井先生が言われたように,それぞれのシステムとそれぞれの課題がどういう関係になっていて,その中でどのように我々が関わったり,その問題を解決したりするのがいいのかということを取り上げることだと思います。知識がどこまであって,例えば,政治学や経済学でどこまで解決したかということの手段としては利用されるけれども,それが目的化するわけではないと思われますが,なかなかやはり,その理解が,この構成で理解できるものになっていないような部分に,ちょっと懸念があると思います。そこの部分を解決しなければいけないのではないかと思いました。
以上です。

【土井主査】  はい,ありがとうございます。次の論点に移る前に一言だけ私の方から申し上げさせていただくと,本日は,公民を中心に御説明いただいて,御議論いただいていますので,その公民の必履修科目になる「公共(仮称)」と選択科目の関係を整理していただいて御説明していただいたと思うんです。しかし,やはり次のステップに進む上で重要なのは,必履修科目相互間の関係もしっかり議論しておく必要があるのだと思います。「歴史総合(仮称)」,「地理総合(仮称)」,「公共(仮称)」を必履修科目としてしっかりまとめて学ばなければいけない意義,それぞれがどういう関係に立つのかということを考えていただかないといけないと思うんです。それを必履修科目にする理由は,例えば,選択科目で「政治・経済(仮称)」や「倫理(仮称)」を学ぶ際にも「歴史総合(仮称)」で学んだことに意義があり,「地理総合(仮称)」で学ぶことに意義がある,そういう構成をとる必要があります。「政治・経済(仮称)」を学ぶためには「公共(仮称)」さえ学んでいればよいという話ではないのだと思うんです。
今回検討している必履修科目を学ぶことで,社会を歴史軸,空間軸,あるいはシステム制度などを考えながらトータルに考えていくという目的が実現できるのではないかと思いますので,今日すぐというわけではありませんので,また,今後のワーキンググループの議論の中で,その面についても少し整理をしていただければと思います。
それでは,引き続きまして,小・中・高等学校社会科・地理歴史科・公民科における見方・考え方と育成すべき資質・能力等について意見交換を行いたいと思います。
それでは,まず事務局の方から資料について御説明をお願いいたします。

【大内学校教育官】  それでは,資料の11から資質・能力関係の資料がずっと続きまして,資料17-2というところまでが今回の資質・能力関係資料です。大部なもので,他方でちょっと時間のこともございますので駆け足になってしまうかもしれませんけれども,説明をさせていただきたいと思います。
まず初めに,資料11の方なのですけれども,これは前回の公民中心に御議論をちょうだいしました会議の際には,例によって,これまでの配付資料の資料2で行きますと,4ページ目のところが前回の会議資料に当たります。ずなわち,資料2の4ページのところで,これまで,思考力,判断力,表現力について集中的に資質・能力の部会の方でも検討していただきまして,その検討を始める前に,まず公民ワーキングの方で,この形で示させていただいておりました。そこからの変更点は,冒頭に梶山主任視学官の方から説明がありましたとおり,考察する力と構想する力については,従前,4階建て,4層構造になっていたのですけれども,これは,それぞれの学校種のおよその卒業時点と考えられる範囲で三つにしたほうがいいのではないかということも踏まえ,今回3本にさせていただきました。
ただ,他方で御意見としては,小学校にも,社会科は3年生から開始するわけですけれども,中学年から始まっていくということから2層あってもいいのではないかという御意見も頂戴しておりましたが,ほかの力との関係性も踏まえまして,今回,特に今日お配りしております資料につきましては,マル1,マル2について,マル3,マル4等と同じように3層構造でそれぞれ小・中・高で育成すべき考察する力,マル2としては判断力に当たります構想する力,マル3,マル4と,説明する力,議論する力という形で示させていただいているところでございます。
特に高等学校段階につきましては,一番上の桁のところがそこに当たりますので,表現ぶりについては,基本的には同じ表現をとっておりますけれども,この後,御説明します社会的な見方や考え方という,従前までの御意見ですと,「社会的事象」という表現をとっていたのですが,今回,資質・能力ワーキングの方の御意見も踏まえまして,特に高等学校の社会科全体にわたりまして,「社会的な見方や考え方」という表現で統一をしましたので,その資料が次の資料12になってまいります。
こちらにつきましては,本ワーキンググループにおいて配った資料としては,資料2の20ページがそれに当たります。その後,資質・能力ワーキングの方での御意見を踏まえ,先ほど梶山の方から説明させていただいたような構造になり,それを更に御意見を踏まえて修正した形で示させていただいているのが本日の資料12ということでございます。こちらの方の資料で示させていただいておりますとおり,前回までは小・中学校までを中心に社会的事象という点から見方・考え方を整理していたところでしたが,高等学校段階の状況を踏まえまして,特に社会的な,中央に位置する公民科の縦系列のところでは,例えば,小学校でありますと社会的事象の見方や考え方を基にして見ていく。それが中学校,公民的分野になりますと現代社会を捉える見方や考え方,さらに,高等学校の公民科においては人間と社会の在り方を捉える見方や考え方というような形で,社会科,あるいは公民科における追究の視点や方法を整理してはどうかということで再整理がなされてきているところでございます。
この社会的な見方や考え方につきましては,資料13の方です。こちらにつきましても,前回のこちらの,公民を中心として御議論をちょうだいしておりますワーキングにおいては小・中学校しか示していなかったのですが,その後,資質・能力部会での御議論も経て,公民については3枚目に示すような形で今回,再整理がなされているところでございます。
繰り返しになりますけれども,社会的な見方・考え方というのは,各小・中,中学校の各分野,それから高等学校の地歴科,公民科に示す見方・考え方を含めた総称として「社会的な見方や考え方」というふうに,今回,表題上,整理をしております。それは,「社会の在り方や,社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連等を考察する際の『追究の視点や方法』である」ということで,中央右側の方に紫色で表題が塗られているところに示させていただいているわけです。
特に高等学校の「公共(仮称)」の部分で見ていきますと,例えば,人間と社会の在り方を捉える見方や考え方ということで,人間と社会の在り方を捉える諸概念に着目して社会的事象を見出し,それらの事象を選択・判断の基準となる考え方と関連づけながら追究していく。そういった見方・考え方を踏まえて追究していくことによって,その下に出ておりますけれども,人間としての在り方生き方,社会的事象の意味や意義を多面的・多角的に考察する力でありますとか,公共的な空間に見られる課題の解決に向けて複数の立場や意見を踏まえて社会を形成する主体として構想する,選択・判断していくというような力を育成するということが,「公共(仮称)」における見方や考え方として整理がなされているところです。
この見方や考え方を見るに当たって,一番左側のところに,考えられる追究の視点例ということで,例えば,「公共(仮称)」においては,人間と社会の在り方を捉える視点として,幸福,正義,公正,個人の尊厳,自由,平等,寛容,委任,希少性,機会費用,利便性と安全性,多様性とアンデンティティなどという形での人間と社会の在り方を捉える視点として,また,公共的な空間に見られる課題の解決を構想する視点ということで,幸福,正義,公正,これは同じですけれども,協働関係の共時性と通時性,比較衡量,相互承認,適正な手続,自由・権利と責任・義務,平等,財源の確保と配分,平和,持続可能性というような視点を追究する際の例として今回,再整理をさせていただいております。
こうした追究の視点を生かして考察する際に,その右側にございます,「問い」を立てて考察していくというのが,社会科共通して大切にしていくというような学び方になっております。例えば,「社会を成立させる背景にあるものは何か」,「社会に参画し,他者と協働する倫理的主体として個人が判断するための手掛かりとなる考え方は何か」,「人間としての在り方生き方について考えていくとはどのようなことか」というような問いを立て,先ほど申し上げました人間と社会の在り方を捉える見方や考え方を通して,一番右側にある考察,構想した結果獲得する知識の例ということで,例えば,今まで受け継がれてきた蓄積や先人の取組,知恵などを踏まえ,様々な立場や文化等を背景にしてこの社会が成立しているということでありますとか,ここは例の「公共(仮称)」の考え方の部分ですけれども,行為の結果として個人の幸福と共に社会全体の幸福を重視する考え方と,行為の動機となる人間的責務としての公正などを重視するという考え方があって,両者を共に活用し,自分も他者も共に納得できる解を見出そうとして考えていくことが重要であるというような形で社会的な見方・考え方を用いて追究していくことによって,より深い理解に導く,より深い知識を獲得していくというような構造をとってはどうかということでございます。
「倫理(仮称)」,「政治・経済(仮称)」につきましても基本的には同じ構造で作られているところでございまして,特に科目の特性といたしまして,「倫理(仮称)」でありますと,人間としての在り方生き方を捉える視点,あるいは現代の倫理的諸課題の解決を構想する視点ということで,この視点の部分がそれぞれの科目ごとに違ってくる,あるいは,課題を追究する際の視点としてそれぞれの科目ごとに固有のものとなっております。
それから,社会的な見方や考え方を踏まえまして,次の資料14の方ですけれども,さらに,育成すべき資質・能力の整理ということで,こちらは,今,御議論をちょうだいしておりました新必履修科目「公共(仮称)」,それから選択科目「政治・経済(仮称)」,「倫理(仮称)」の中核部分でも示しておりましたけれども,今次の検討におきましては,左側から,知識や技能という枠組み,それから思考・判断力・表現力等という枠組みと,学びに向かう力・人間性という大きく三つの柱で育成すべき力というのを整理してはどうかということで,これまでワーキングにおいて議論がなされてきたところでございます。
こちらの中の公民科に関しては3枚目のところでございまして,先ほど来,御検討いただきました科目の中でその要素というのは入っているのですけれども,これを特に小学校,中学校,あるいは地歴科との縦系列との比較も含めて御確認いただければと思います。
知識や技能につきましては,まず,一番上のところですけれども,高等学校の公民科,教科としての形では今まで示しておりませんでしたので,こちらのような形で整理をしております。具体的には,諸課題を捉え考察し,国家及び社会の形成者として必要な選択・判断の手掛かりとなる概念や理論の理解。それから,倫理的主体等に関する理解という部分。それから,社会的事象等について効果的に調べまとめる技能ということで,知識や技能を概念や理論の理解と各主体において獲得していく理解,それから調べまとめる技能という形での整理がなされております。
また,思考力・判断力・表現力については,諸課題について,概念等を活用して多面的・多角的に考察したり,公正に判断したりする力。合意形成を視野に入れながら,社会的事象や課題について構想したことを,妥当性や効果,実現可能性などを指標にして議論する力ということで,ほぼ「公共(仮称)」と同様の示し方になってございます。「公共(仮称)」につきましては,先ほど来,見ていただいたように,大項目の(1)で選択判断の手掛かりとなる考え方,あるいは,公共的な空間における基本的な原理,そういうものを活用しながら思考判断していくというところが違っておりますけれども,教科全体としては,今,申し上げたような形での整理をしてはどうかということでございます。
また,学びに向かう力・人間性ですけれども,人間と社会の在り方に関わる事象や課題について主体的に調べたり分かろうとしたりする態度。現実社会の諸課題を見出し,その解決に向けて他者と協働して意欲的に考察・構想し,説明・議論することを通して社会に参画し,よりよい社会を形成しようとする態度。三つ目が,多面的・多角的な考察や深い理解を通して寛容される,先ほどの知識・技能や思考力・判断力,表現力を通して寛容される人間としての在り方生き方についての自覚。自国を愛し,その平和と繁栄を図ることや,各国が相互に主権を尊重し各国民が協力し合うことの大切さについての自覚というような形で整理をしております。
この学びに向かう力・人間性の部分は,もちろん思考力・判断力・表現力,それから知識や技能の育成すべき力の部分ですが,これと大きく関わりまして,資料15の部分でございますけれども,こうした力をどういう観点から評価していくのかという部分が,その資料15の部分でございます。育成する力として,今,申し上げました3本の力なのですが,特に学びに向かう力,人間性,これは育成する力としては,今,見ていただいたような形で整理してございますけれども,社会科全体としては,評価の観点,評価の観点というのは,生徒の学習状況を評価する際に分析的に捉えるための視点みたいな形でこれまで,現行の指導要領においても採用されている評価の考え方でありますけれども,その評価の観点としては,主体的に学習に取り組む態度ということで,これは冒頭,室長の大杉の方からも説明がありましたけれども,特に関心・意欲・態度の部分から態度という形で評価をできる部分に重点化をして観点面も併せて書いているということでございます。
その主体的に学習に取り組む態度の中では,大きく二つの事柄について評価をするということが,下の枠組みのところが,この評価の観点に関わる趣旨の部分なのですが,具体的には,学習対象(社会や社会的事象)について主体的に調べたり分かろうとしたりしているということでありますとか,課題(学習上の課題,社会に見られる課題)を意欲的に解決しようとしているということで,調べたり,分かろうとしたりする,あるいは,意欲的に解決しようとするということが,この主体的に学習に取り組む態度を評価する際の観点の趣旨ということで整理をさせていただいております。
なお,一番下のマルについては留意事項なのですけれども,学習状況を分析的に捉える評価になじまずに,一人一人のよい点や可能性,進歩の状況について評価する個人内評価というものが別にございまして,これが適当である部分が,この主体的な学習に取り組む態度の中にはあるということで整理をしていってはどうかということでございます。
また,その左側,中央部分でございますが,思考・判断・表現に関する評価の観点として,この評価を見取る趣旨としては,例えば,社会的な見方や考え方を用いて,社会的事象の様子や仕組みなどを見出し,社会の在り方や社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を考察しているということ。真ん中については,こうした社会に見られる課題を把握し,その解決に向けて構想するという判断をしているというところ。さらに,考察したことや構想したことについて,説明したり議論したりしているということで,ここは,いわゆる思考・判断・表現で育成しようとする資質・能力の部分と対になるような形で考察,あるいは構想,説明・議論ということで,思考・判断・表現に当たる部分をこの評価の観点でも採用しているということでございます。
最後の知識・技能のところでございますけれども,知識・技能につきましては,社会的事象について,○○について,○○であると理解する。理解し,その知識を身に付けているというのが基本的な構造になっているのですが,この知識の中には,これも先ほど大杉の方から説明がありましたけれども,主として事実に関わる知識と,一方で概念等に関わる知識と二つあるのではないかというふうに考えて,その観点から評価場面に応じて評価の趣旨,観点の趣旨を整理していってはどうかということでございます。
また,技能については,本日は資料の説明を省略しておりますけれども,小・中・高等学校を通じて情報を収集,読み取る,まとめるという形でこの技能を整理してございますので,こちらを技能の観点の趣旨として社会科全体としては整理をしているところでございます。
なお,これらについては,小学校,中学校,高等学校,それから地理・歴史家,公民科を踏まえて社会科全体として示すとこういう形になるということでございますので,これは,それぞれの学校種,あるいは教科,科目に応じて,この中身というのはもうちょっと具体的に変わっていく必要があるのだろうというふうには考えております。社会科全体としては,こういう形で評価の観点と,その観点の趣旨を整理してはどうかということでございます。
これらの学ぶ力,資質・能力と,それからその評価の観点を全体として1枚にまとめたものが資料16という資料になります。これは関連性を示したイメージ図のようなもので,中央の部分に社会的事象,これは小学校の例なので社会的事象のままの表現になっておりますが,社会的事象の見方や考え方を社会科として大切にする見方・考え方として中央に据え置き,これを用いて,下の方に行きますけれども,先ほど来,申し上げております思考力,判断力,表現力を社会的な見方・考え方を通じて育成していく。その先には,矢印で,左下の方に,主として概念等に関わる知識を獲得することと,一方で,右側の方にございますけれども,主として公正な判断力を育成していくということを,見方・考え方を中心に,思考力,判断力,表現力と関わらせながら知識を獲得し,力を育成していくというふうに考えられるのではないかということでございます。
また,見方・考え方から左側の方に派生してまいりますと,見方・考え方を生かして技能を活用し,社会的事象に関する知識を獲得していくということ。また,右側に社会的事象の見方・考え方,社会的な見方・考え方を生かして主体的に取り組む態度,先ほど申し上げたように,主体的に調べたり分かろうとしたりするような態度でありますとか,社会に見られる課題を意欲的に解決していこうとする態度,こういったものにも,この社会的な見方・考え方,小学校であれば,社会的事象の見方や考え方というのが生きていくのではないかということで,総則・評価部会における議論も踏まえまして,こういった形でイメージ図で整理させていただいております。そうした資質・能力を,下の方に示しております各観点ごとの観点別評価を通じて見取っていくというものが,育成する力と評価の関係性を示した図ということでございます。
ちょっと長くなっておりますけれども,最後に資料17でございます。資料17の方は,今,申し上げましたような育成する資質・能力,それから見方・考え方,そして評価をベースにして,社会科,地理歴史科,公民科における教育のイメージということで,重要な要素,目標のベースとなるような重要な要素を抜き出したものでございます。
公民科については右上に書いてございますけれども,広い視野に立って,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を養うために,社会的な見方や考え方を培い,以下の三つの資質・能力を育成するということで,先ほど来,申し上げている知識・技能に関わること,思考力・判断力・表現力に関わること,学びに向かう力,人間性に関わることをそれぞれ以下,三つのマルでそれぞれ示しております。
これは今回,文言として少し整理をしましたものが資料17-2のところになります。高等学校公民科において育成すべき資質・能力について,以下のように考え,整理することとしてはどうかということでございます。
高等学校公民科においては,小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力を整理すると共に,現行学習指導要領における教科目標の趣旨を勘案しつつ,今,申し上げたような広い視野に立って,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を養うために,社会的な見方や考え方を培い,三つの柱に沿って整理した資質・能力を育成するということが求められると考えられるのではないかということです。
また,これは,現行学習指導要領公民科の目標に示されている「平和で民主的な国家・社会の有為な形成者として必要な公民としての資質を養う」ということの趣旨を一層明確にすると共に,人,商品,資本,情報,技術などが国境を超えて自由に移動したり,企業など,国家以外の様々な集合体の役割が増大したりしてグローバル化が一層進むことが予想されるこれからの社会において,教育基本法,学校教育法の規定を踏まえ,国家及び指呼階の形成者として必要な資質・能力を育むことの大切さへの意識を持つことを期待してこのような表現とすることが考えられるのではないかということでございます。
その上でということで,先ほど来,見ていただいております,知識・技能,それから思考力・判断力・表現力,並びに,向かう力,人間性に関わる部分についての記述を掲載しているということでございます。
内容については,先ほど御覧になっていただいているところと同様でございますので,説明は省略したいと思います。
長くなりましたけれども,育成すべき資質・能力,それから見方・考え方,それを評価する際の評価の観点と趣旨,そして,最後に,この教科に関する教育のイメージということで,小・中学校の社会科及び地歴科との関わりも踏まえて教育のイメージとして整理をしてございますので,これら一連の資料につきまして御意見を頂戴できればというふうに思っております。
以上でございます。

【土井主査】  はい,ありがとうございました。私の議事進行の不手際でかなり時間が押しております。ただ,この部分はとても重要な部分かと思いますので,はしょるよりは少し時間を取りたいと思います。それで,大変申し訳ないのですが,1時までこの点について議論をさせていただきます。その後,10分か15分ぐらい延長して残りの議事をこなしたいと思います。既に1時に退席しなければいけないという事情を伺っている委員もおられますので,その委員におかれましては,早目に発言があれば,順次指名をさせていただきますので,御発言をお願いしたいと思います。恐縮ですが,よろしくお願いいたします。
非常に資料が多くございます。最初はちょっと区分してということも考えておりましたが,時間の都合もございますので,まとめて御意見を頂ければと思います。資料11から17につきまして,御意見がございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。では,村松委員。

【村松委員】  意見ではなくて質問なのですけれども,この会の冒頭で土井主査の方から,総則・評価特別部会で報告をしたところ,部会の方から,資料の収集だけではなくて,その資料の信用度をちゃんと調査・検討することが必要だというお話が出ていましたが,そこで言う信用度というのを検討するというのは,この資料15,評価の観点で行きますと,知識・技能の,技能のところに当たるという理解でよろしいのでしょうか。

【大内学校教育官】  先ほど資料として説明を申し上げ切れなかったのですが,こちらの議論,資質・能力の議論は集中的に資質・能力ワーキングの方で今,行っていただいておりまして,本日の資料2の53ページが,こちらの技能に当たる箇所でございます。53ページの情報を収集する技能の一番上のところの右側に【3】というのがございまして,「情報手段の特性や情報の正さに留意して」というような形で今,村松委員の方から御指摘があったような,資料の表題,出典,年代,作成者などを確認して情報を集めるというのは,例えば,歴史の場合,こういったことに留意するということでありますとか,情報手段の特性に留意して情報を集める。あるいは,情報発信者の意図,発信過程などに留意して情報を集めるというような,情報を集める際に,どういった情報なのか,情報の確かさ等について当たっていくという形で技能の部分での整理はなされております。
本日,御説明をきちんとしておりませんでしたが,こういった形で,今,別には整理をしていただいているところでございます。

【土井主査】  よろしいですか。

【村松委員】  はい。

【土井主査】  それでは,岡﨑委員。

【岡﨑委員】  ありがとうございます。2点,申し上げたいと思います。資料17-2と先ほどの資料9-1の関係ですけれども,資料9-1の中でいろいろ御議論いただきましたが,自立した主体として生きるために必要な知識,これに態度を加えて,知識・態度を身に付けるということをうたっていただきたいということを先ほど発言させていただきました。この点が「公共(仮称)」の中で今後の社会を考えますと非常に重要だと考えております。もちろん,他者と協働してということを踏まえてということでございます。
そのことを踏まえましたときに,資料17-2が「公民科において育成すべき資質・能力について」という根幹を記した資料となっているかと思いますけれども,こちらでこのことをどこで読み取ったらいいのかということが余りよく分かりませんでした。情報を効果的に調べ,まとめる技能を身に付けさせることが考えられるなどというところで集約されておりまして,自立した主体として生きるために必要な知識,態度を身に付けることを目指すということを明示的に言及いただけたら有り難いというふうに感じたところです。
2点目はもう少しさ末なのですが,資料13の大きなA3サイズの資料ですけれども,3ページ目に,「公共(仮称)」,「政治・経済(仮称)」の内容がございます。右の欄が「考察,構想した結果,獲得する知識の例」となっております。例ですのでこれでよいのかとは思うんですけれども,ただちょっと気になるところがございました。「公共(仮称)」の右の項目の二つ目,それから「政治・経済(仮称)」の項目の2点目に,いずれも「地域づくり」でありますとか,「持続可能な地域社会となる在り方を考察,追究することが大切である」とございます。「公共(仮称)」や「政治・経済(仮称)」の中で,地域について考え,学ぶということも重要ではあるかと思いますけれども,このように例示が限られている場合に地域を挙げることが適当かどうか,若干疑問に思いました。
居住している,あるいは,学校が所在する地域の特質などもあるかと思いますけれども,地域について主なテーマとして取り上げて学ぶことが適切な場合と,国としてどうあるべきか,国の制度や仕組みとしてどうあるべきかなどを限られた時間の中で取り扱っていただくほうが重要なケースもあるのではないかと思いました。このため,「公共(仮称)」であれば,「持続可能な社会づくりに向けた」と,「政治・経済(仮称)」につきましても同様に,「持続可能な社会の在り方を考察,追究することが大切である」としたほうが適切なのではないかというふうに感じたところです。ありがとうございました。

【土井主査】  それでは谷田委員。

【谷田委員】  教育課程部会の方で取りまとめに大変御尽力を頂いているところです。本当に頭が下がります。ただ,このワーキングの最初で私の立場上,申し上げなければいけない部分,整理しなければいけない部分がありましたので,お話をさせていただければと思っています。
御存じのように,私が公民科,そして道徳教育と関わってきたということの中で,この整理図をどういうふうに考えるかということだと思うのですけれども,例えば,資料12のところで,「社会的な見方や考え方」,そして,資料13の3枚目でも,「社会的な見方や考え方の例」というふうな形で示されているわけですが,言わずもがな,「公共(仮称)」にしても「倫理(仮称)」にしても,現段階では,高等学校の在り方生き方教育,いわゆる道徳教育の中核的な指導場面として,位置付けられようとしているとなると,果たして「社会的な見方や考え方」というふうなくくりでまとめられるのかどうなのか。あるいは,「社会的な見方や考え方」という用語が,いわゆる,社会科関連の科目をまとめる際の便宜的な言い方だという形で留意事項をつけてまとめるのかどうなのか。その辺りのところを御検討いただきたいと思っています。
言うまでもなく,「倫理(仮称)」については,善だけではなくて,真,善,聖,美といったようなことを扱うわけでありますから,当然,「社会的な見方や考え方」の枠の中だけに入るものではありません。厳密にこの中に入りますよと言われるとかなり厳しいものがあろうかと思います。また,高等学校について,現段階で地理歴史科,公民科という形で分けられていますけれども,果たしてここら辺りがどういう考え方の枠組みを持っているのか,社会科教育の枠の中で考えるものとして整理されるのか,そういった点について再度,調整をしていただければと思っています。
そういう面からすると,道徳の方のワーキングがどう動いているのか,ちょっと私は知り得ないところがあるのですが,道徳で求めるいわゆる「資質・能力」といったようなところと,「公共(仮称)」の部分や「倫理(仮称)」で求めるところの「資質・能力」といったところが,思考力・判断力・表現力等で仮に示す場合には当然重なる部分があろうかと思いますが,そこを調整していただきたいと思います。あるいは,調整が不可能で新たな枠組みを示すのであるとするならば,そこは分けて別物だよというふうな形で整理するのか。そうすると教育内容も大きく異なってくることになるわけですが,そういった点について再度整理をお願いできたらと思います。
以上です。

【土井主査】  はい,どうぞ。

【大内学校教育官】  ありがとうございました。1点目の「倫理(仮称)」を含めた社会的な見方や考え方の表現のところにつきましては,丁寧に御説明申し上げなかったので失礼いたしました。資料12で,全体図のイメージのところの一番左側の上の方に書いてあるのですが,「『社会的な見方や考え方』は,小・中・高等学校の各『見方や考え方』を総称する呼称である」ということで,便宜上,「社会的な見方や考え方」という大きな用語として使わせていただいています。
先ほどの「倫理(仮称)」に関わりましては,資料13のところで,これもきちっと御説明申し上げていなかったのですけれども,当然,「倫理(仮称)」の見方としては,人間としての在り方,生き方を捉える見方や考え方ということで,その見方や考え方についての整理をしております。それが社会的なところに入るかどうかというよりは,現時点においては,表現といたしまして「社会的な見方や考え方」というところで総称させる呼称ということで扱わせていただいております。
ただ,本来的には整理しておく必要があるのだろうと思っておりますが,現時点での取扱いとしては総称であるということで御理解いただければと思います。

【土井主査】  よろしいでしょうか。

【谷田委員】  はい。

【土井主査】  では,ほかにいかがでしょうか。がなり大部ですので,資料に目を通しているだけでもかなりの時間がかかるかとは思うのですが,いかがでしょうか。村松委員。

【村松委員】  では,皆さん,検討していただいている間に補足でもう一つだけ伺いたいのですが,冒頭,やはり土井主査の方から,総則・評価の部会の方から出た意見として,与えられた問題を考えるだけでなく問題発見も大切だという御意見を頂いていたと思います。問題発見を重視するかどうかというのは,またこの部会での考え方だと思うのですが,私は基本的に賛成しています。そうしたときに,その力とかというのは,なかなか評価は難しいのかなと思いながら,この資料15との関係で見ておりました。
資料15で,「評価の観点等」とありまして,一番右側に「主体的に学習に取り組む態度」というのが幾つか出ているわけです。一つ目のマルは,与えられたものに対して一生懸命に調べて,二つ目のマルが,それを意欲的に解決するという話になるのだと思います。そもそも,課題を発見しよう,問題を発見しようというのは,学習をした後,次の課題に向かって課題で発見しようという意欲が育まれるということになるのだろうと思うので,評価という観点では難しいのかなと思いながら,それでも何か位置付けられるのか,その辺を教えていただければと思います。

【澤井視学官】  視学官の澤井でございます。本日,提出していない資料でございますが,資料2の52ページに学習のプロセスという資料がございます。資料名は「社会,地理歴史,公民における学習過程の例(たたき台)」です。御指摘のように,課題発見の力というのは大変重要な力でございまして,それは,課題の発見,あるいは把握,追究,解決のプロセスを繰り返しながら磨かれていくといいますか,身に付いていくものであると。
このプロセスで見ていただくと,まず,一番右側の端の方に,学習を振り返って考察するというところに,新たな問い,課題を見出したり追究したりすると。まとめが一定の知識の獲得,あるいは共通理解で終わるのではなく,そこから新たに発展した自分たちの社会生活に関わるような課題を見いだして追究する,そんなイメージで,これがスパイラルに繰り返されるようなイメージを表現しております。
したがいまして,評価の例示ところでも,主体的に学習に取り組む態度に,「見方や考え方を用いて新たな課題を見出し追究している」というような,そういう文言も入れてございます。そんなふうに繰り返しながら子供が身に付けていく姿を,思考力,判断力,あるいは知識・理解,そういった側面ももちろんあるわけですが,主体的に学習に取り組む態度,課題を発見しようとする態度と,それを軸にして評価をしながら育てていこうと,今のところそういう設計で整理をしてございます。
以上です。

【村松委員】  私も恐らくそういう,学習をした上で,学習を踏まえて新しい課題を解決する態度が育まれるのかなと思ったのです。ただ,課題発見の態度というのを評価できるかというと,学校での,教室での学習というのは一つのプログラムがあって,そこで1回終わるわけです。終わって,子供たちが新しい課題を解決する意欲が出たかどうかというのは,更にその先に何か別の課題を見つけてやっていくわけですから,閉ざされた一つのプログラム,教育課程の中,学習カリキュラムの中だとなかなか評価がしにくいのかなと思ったのです。もちろん,評価できるのであれば,それはそれでいいことだと思うのですが,その辺はいかがお考えでしょうか。

【澤井視学官】  おっしゃるとおりで,様々な能力,学力を観点で評価していくことには,当然ながら評価は技術ですから限界がございます。しかしながら,今回,見通しと振り返りを重視した学習過程,あるいは資質・能力の育成ということが言われておりまして,多くの場合,課題の発見が,教師が提示したり構成した教材の中から見出させるように意図するわけですが,最初の出会いから大きな課題を持つ,その先に,実は,予想とか,見通しという言葉を使っていますが,予想を立てたり,あるいは学習計画を立てたり,仮説を立てたり,調査方法を吟味したり,そういうことを重視しながら,このプロセスで言うと方向付けということになりますが,その中から子供が真の課題,あるいは,,自分の問いに近づいて課題をしっかりと把握する。つまり,課題把握といっても,教師が提示して,これをやりなさいと命じるものではなくて,その子たちの中にしっかりと落ちていく課題にする。そうすると,そういう課題をしっかりつかんだ子供たちは,その課題の解決に向けて意欲的に動き出す,その辺りを動機付け,方向付けという表現をしていますが,この辺りを重視する。それから,振り返りで新たな課題に気がついたり,そこに向かわせたりする。これをスパイラルで繰り返していく。
ですから,現状は,主体的に学習に取り組む態度で評価の枠組みの中に入れてございますが,育っていく力としては,恐らく,思考力・判断力・表現力,あるいは知識と一体となって育っていくのだろうというふうに捉えているところでございます。

【村松委員】  ありがとうございます。

【土井主査】  それでは,池野委員。

【池野委員】  前の別のワーキングでも言ったのですけれども,非常に資料がたくさんあって理解するのがなかなか難しいというのが正直なところです。多分,大きくは六つぐらいのことが組み込まれていて,それを我々聞き手の方が理解しないといけないのだと思うんです。
一つは,小学校,中学校,高等学校の社会科系科目が全体としてどういうものになるかというのを,大内さんが説明してくださったように,社会的な見方・考え方というものでくくって説明できるようにしようとしていることが一つです。
二つ目は,この今回の学習指導要領全体が資質・能力論をベースにして,三つの観点がありますけれども,知識・技能,思考・表現,あるいは人間性というものの三つありますけれども,ある面それは三角形になっていて,人間性とか生きることに関する,一番右側のところが目的的なレベルに作られているというふうに読み替えなければいけないのですけれども,三つの観点として評価の場合は横並びに出てくるということです。
それから,三つ目と四つ目は,ある面,学習過程の問題で,先ほど説明された11番のように,考察するとか,構想するとか,説明するとか,議論するとかいう,基本的に社会科系の科目で取り扱わないといけない一種の学習過程みたいなものがここにも出ていて,それがどのレベルでも取り扱えますよと。それが,澤井先生がちょっと説明されたように,課題解決的な側面で説明し直すと,また別の説明の仕方になるという形になっていると思います。その四つの学習的な側面と課題解決の術が,また組み込まれて行われていると思います。
それから,5番目は多分評価で,これは資質・能力論の三つの観点がそのまま出てくるのですけれども,評価の仕方が知識ベースではしませんよ,知識ベースもするけれども,個人内評価も含めて,より細かな,パフォーマンス評価とかで個人自体がどこまで成長したのか,それが学習過程のところに出てきた,小学校ではこのレベル,中学校ではこのレベル,高等学校ではこのレベルというのですけれども,多分,英米系では,今それを「ラーニング・プログレッション」という言葉で表されています。学習の進行度というか,進歩度,向上性というか,どういう訳語になるのか分かりませんけれども,そういうもののレベルが説明されていて,そこまで小学校ではしなければいけない,中学校はここまでしないといけないという目標的な部分も作られている。
  この六つがガバッと説明されていて,最後の大きな図16などは,それを分解したら,私,池野から見れば六つぐらいの部分に読み替えられると思うんですが,それが一つの図の中にガバッと入っているものだから,私も一遍に見せられるとなかなか理解できないので,何かうまく説明する手段を誰かしないと,多分誰も分からないという状況に陥るので,是非やはり,少し説明をうまくできる方法を議論していただきたいというお願いです。
それをしないと,一生懸命に作られたもの,あるいは,我々が一生懸命に考えたものが学校の先生方に伝わっていかないという最悪のパターンのなりそうな形なので,ちょっとお願いしたいと思います。
整理して,ただ,我々自体がやろうとしているのは資質・能力論なので,資質・能力に従って社会科がどのように,より小学校,中学校,高等学校で作られるかを理解できるようにするには,どのように説明すればいいのかということだと思います。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。岡﨑委員,それから一ノ瀬委員。

【岡﨑委員】  ありがとうございます。資料15につきまして,前回出席した際にも御議論いただいていたかと思いますけれども,右の青い色を塗っている欄が「主体的に学習に取り組む態度」となっております。前回,発言させていただいたことなども取り入れていただいて,例えば,二つ目のマルですと,「課題(学習上の課題,社会に見られる課題)を意欲的に解決しようとしている」というふうに書いていただいて,三つ目の点に「よりよい社会を目指して」とありますので,「公共(仮称)」や「政治・経済(仮称)」で目指している内容は,内容的には従前に取り入れられているかと思います。ただ,この項目を全体にまとめるタイトルが「主体的に学習に取り組む態度」ということで,これは違う部会で議論を尽くされていて,ここで発言しても意味はないのかもしれないのですけれども,普通の理解ですと,「主体的に学習に取り組む態度」という言葉を伺いますと,生徒が自ら進んで勉強しようとしている態度というふうに聞こえます。この資料がどのような方の目に触れるのか分かりませんけれども,「主体的に学習に取り組む態度」という言葉では,この薄い水色の四角の中に書かれていることを包括する表現にはならないのではないかと思います。これを言おうとするのであれば,例えば「主体的に課題に取り組む態度」というふうにすることが考えられます。ほかの御意見もあろうかと思いますが,少なくとも,「主体的に学習に取り組む態度」ではちょっと違うのではないかというふうに思いました。

【土井主査】  ありがとうございます。では一ノ瀬委員。

【一ノ瀬委員】  細かいことですけれども,この資料13の高等学校公民の部分で,まず,一番左側の考えられる追究の視点例の中に挙げられている概念についてなのですが,私,多分最初のころに申し上げたと思うのですが,「公共(仮称)」でも「倫理(仮称)」でも共通すると思いますが,「倫理(仮称)」の一番基本は,ある考え方によると,メメント・モリで,要するに「死を銘記せよ」ということなので,死という問題をここに概念として入れないというのは,やはり不十分だと思うのです。少なくとも生死という基本概念は,できれば入れていただきたいと思います。
それから,どちらかというと善とか,徳とか,愛とか,共感というポジティブな概念を挙げられているのですけれども,人間の社会はポジティブ的なことだけではなくて,影の部分というのも現実に存在するので,「悪」を視点として挙げるというのも変ですけれども,そこまで行かなくても,例えば,「正義」という中に「罪刑」に関わることも考慮するということを入れていただきたい。特に,死刑存廃論などは高校生などにとっても取っつきやすい話題だと思うので,そういうことに対する効用を含意していただきたいということです。それから,「平和」というのがありますけれども,これも「平和」でよろしいと思うのですけれども,意味としては「戦争と平和」ということを含意していただければというふうに思います。それが一つ目です。
それから,その右側の「追究の視点を生かした,考察や構想に向かう『問い』の例」の「倫理(仮称)」の三つ目のポチのところです。「人間は何を知ることができるのか,なぜ世界が存在するのか,人間はどのような位置付けで存在するのか」という,3番目の「人間はどのような位置付けで存在するのか」というのは分かりにくいので,ここは多分,「人間」,「世界」と来たわけですから,「人間と世界はどのような関わり方をすべきか」というほうが,よりよいのかなと思います。
それから,もう一つ,同じ「倫理(仮称)」の一番右側の段,「考察,構想した結果,獲得する知識の例」,これは例なので細かく言う必要性はないのかもしれませんが,一つ目の「それ自体価値あるよいものを求め」というところの「それ自体」は削除したほうがよいと思います。つまり,「それ自体価値ある」,価値がリアリティの中に存在するというのは一つの立場ですけれども,例えば,ダイヤモンドが価値があるというのは,犬猫にとってはダイヤモンドは全然価値がないので,価値というのは人間の心が作り出す面が非常に大きいので,「それ自体」というのは誤解を招くので避けたほうがよいのではないかと思います。
以上です。

【土井主査】  はい,ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。先ほど岡﨑委員がおっしゃった点は,私も気になっております。総則・評価部会の整理との関係があるのですが,「公共(仮称)」において合意形成を問題にするわけですが,社会に課題があって,それを解決するために合意を形成しようとしていく,それ自体を科目で学ぶことになったときに,話し合って議論をまとめることが単に勉強の仕方の問題なのかという問題があります。例えば,数学や理科などでもいろいろと話合いながら結論をまとめていくということをやるわけです。それは学習の態度の問題であり,学習の方法の問題として位置付ける,それはそうだと思うんですけれども,「公共(仮称)」においては,社会的課題について合意を形成していくということ自体が,科目の学習の目的ではないかと思うのです。ですから,知識にしたって,そういう問題を解決して合意を形成するために必要な知識であり,判断力,思考力,表現力というのも,正にそこのために目指してやっていくという形になるんです。
したがって,「課題を意欲的に解決しようとしている」というその表現が,「公共(仮称)」という科目が好きで一生懸命に頑張ろうとしているという科目への関心とか意欲の問題と,科目が取り扱おうとしている,その求められている力を十全に発揮しているかという問題が二面的に出てきてしまうのだと思うんです。特にこの社会科や公民科の科目にはそれが出てくることになるんです。それを主体的に学習に取り組む態度だけで一面的に受け取られてしまうと,それは困る話になってくるので,その辺りどういう形で整理をしていただくかについては,考えないといけない問題かなと思うんです。
ちょっと時間を取って申し上げると,それは社会科,地歴科,公民科の重要性に関わる点で,先ほど来,「社会的事象」とか「社会的見方」という言葉が出ていますけれども,例を挙げますと,地理という科目と地学と生物はどこが違うという問題があると思うんです。地学で地形や地質を扱いますし,気候変動を扱います。生物でも動植物の分布を扱います。しかしそれらと地理はやはり違うわけです。その違いは何かというと,社会,あるいは人間というものにあるのだと思うんです。では人間とは何かというと,人間は目的を持って,その目的の実現を目指して行為する存在で,意識的にそういう行為を行う。それは個人としてもそうだけれども,個人だけではなくて,それが協働して,時として対立しながら集合的に活動するという側面がある。そこがやはりポイントになるから,地学や生物のような自然科学と社会科学は分離することになると思うのです。
それで,社会科,地歴科,公民科で伸ばす資質を考えようとすると,やはり,目的に関する理解とか,その目的の背景にある人間の利害関係,利害がどのように分布しているのか。しかも単にバラバラに分布しているのではなく,ある人にとっての利益が,他の人にとっての不利益になる場合もあるし,ある人の利益が,他の人の利益につながるような場合もあるという,利益と不利益の相関関係みたいなものがある。そうしたものを把握して,それを踏まえて,どう調整して社会を動かしていくかということを考えさせる部分がコアなはずなのです。
そこの部分がうまく落ちないと,何となく,理科でもそうだし,国語でもそうだし,どんな科目でもやる学習活動がずらっと並んでいて,そこの前に「社会的見方」という言葉がついているという,それだけになってしまう。ある種の統一感を各教科,横串で出そうとするかぎり,そういう意味での統一感がる整理は必要だと思います。しかし,こういう科目,教科を学ぶのは,ほかの科目とどこが違って,ここのところがコアなのだという点を示していこうとすると,恐らく,今,申し上げているような社会とか,人間とかというものを見ていく上でどういう資質・能力が必要なのかという部分が出てこないと,すごく分かりにくい。その教科を指導する,あるいは科目を指導する際の指針になりにくい,一般的な学習活動の指針になってしまうという懸念があるのかなと思うんです。それが多分,岡﨑委員などが気にされた位置付けに表れてきているので,その辺りを少し整理していただくほうがいいのかなと思います。
そのほか,いかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。時間が短いこともありますし,まだ資料をじっくり読み込んでいただかないとしっかりとした御意見もおっしゃっていただけないと思いますので,また後ほど意見をお寄せいただければと思います。
時間も過ぎているのですが,1点だけまだ審議をしていただかなければいけない事項があります。それほど時間は取らないと思います。
続きまして,資料18,必要な支援,条件整備等に係るこれまでの主な意見について意見交換を行いたいと思います。
事務局の方から資料について御説明をお願いいたします。

【大内学校教育官】  資料18をお手元に御用意ください。こちらの資料は初めてなのですが,これまでの委員の先生方からの主な意見のうち,必要な支援,条件整備に係るものを特出しして整理したものが資料18でございます。これは,本ワーキンググループにおきまして検討事項の一つに,公民であれば公民科の学習,公民科の授業を展開するに当たっての必要な条件整備が検討事項の一つに残ってございますので,こちらについて御議論を頂ければということで用意した資料でございます。
具体的には,今,現時点で頂いている御意見としては,示しておりますとおり,専門家との連携ということで,「公共(仮称)」を課題を取り上げる際に関係する専門家・機関同士とどのように連携をして,どういう課題について解決していくことができるのかという事例を集めて交通整理をしたらどうかというような御意見ですとか,教材のところですけれども,ICTの活用,データベースを充実させるという御意見。それから,いわゆる,いろいろな教育課題,現代的な教育課題に関する教材。例えば,二つ目のマルであれば消費者教育,三つ目のマルでありましたら金融経済教育のような形の,それぞれ副教材の作成,あるいは事例の掲載,そういったものについての御意見を頂戴しておりました。
次ページにもあるのですけれども,当然,必要な支援,条件整備を考えるに当たりましてですが,今のような専門家との連携,教材の作成以外にも,これまでも本ワーキンググループで御意見,本日もたくさんいただきましたが,他教科との関係でありますとか指導体制,あるいは,地域人材の活用等,必要な条件整備,支援等についてどういったものがほかに期待されるべきか,ほかに望まれるのかということについて御意見を頂戴できればということでございます。
資料につきましては以上です。

【土井主査】  ありがとうございました。それでは,資料18につきまして,何か御意見がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。髙橋委員,岡﨑委員の順で。

【髙橋委員】  高校の現場から申し上げます。やはり,現場では,専門的な知識を持たれた方に協力していただけるのはとても有り難いことだと思います。ただ,時間的なこととか,あるいは,折衝とか,そういったことに時間を取られてしまうというところがありますので,使いやすさが一番だと思います。ICTについても,例えば,東京都は,全ての教室にプロジェクター等を用意してあります。ただし,それをインターネットにつなげてはいけないとか,使いにくいので使わないということがどうしても起こってきてしまっておりますので,いいものがあれば利用できるような仕組み,指針等を用意していただければうれしいと思います。
また,これは中学校でやったということを高校で繰り返してやる必要はないので,他教科との調整だけではなくて,違う校種との調整もできていると利用しやすいのかなというふうに思います。
以上です。

【土井主査】  それでは,岡﨑委員。

【岡﨑委員】  ありがとうございます。「アクティブ・ラーニング」全体について言えることかと思いますし,さらに,本日,「政治・経済(仮称)」について「アクティブ・ラーニング」的なことを全面的に奨励していくということが分かりましたので,大変,危惧をし,また,重要なことだと思っている点がありますので,発言させていただきます。
先ほど発言させていただきましたように,当委員会は都道府県全ての教育委員会と連携し,また関連する金融経済団体と連携して,学校におけるお金や金融経済に関する教育のお手伝いをさせていただいておりますけれども,日ごろ,御協力,御支援を頂いております体制でやっていくだけではとても不十分なように思っております。
結論を手短に申しますと,文部科学省及び教育委員会主催の教員研修でこういった議論を促し,協働して問題を解決していくような学習の仕方を取り上げて,実践的に教員の方々を支援していただくような教員研修を,できれば,もう直ちに始めていただきたいと思います。
このような流れをくんで,上村先生の全公社研,そのほかいろいろな団体で,そういった力をつけるよう研修を企画され,実施されていますけれども,そういったものに参加される教員の方は特に熱心な方であるように思います。教員の方々から,特に「政治・経済」では習得させるべき知識内容が多いことから,知識を教えるというスタンスが強く,体験的な学習を取り入れることに躊躇される先生方も多いと伺っております。教育委員会主催の正規の教員研修で取り上げていただくことになれば,そういった様々な主体が企画する教員研修において,「アクティブ・ラーニング」や課題解決的な学習の指導方法についての研修がより積極的に取り入れられるのではないかと思います。
また,私どもの教材などにつきましてもお願いをして,文部科学省から教育委員会に奨励をする通知を出していただくことができたケースがございますけれども,こういった様々な主体を活用して,学校における体験的な学習,「深い学び」につながる学習に役立つ取組みについては大いに奨励をしていただく手立てを具体的に行っていただくことを希望いたします。

【土井主査】  はい,ありがとうございました。それでは,御意見もほかにあろうかと思いますけれども,時間もかなり過ぎてしまいましたので,本日はここまでにさせていただきます。
なお,限られた時間での討議でしたので,更に御意見,あるいはお気付きの点などがあれば,資料を十分読み込んでいただいて,ペーパーで事務局にお送りいただければと考えております。
それから,本日及び今後開催予定のワーキンググループにおいて頂きました御意見を踏まえて,5月に開催予定の高等学校地歴・公民科目の在り方に関する特別チームにおきまして,本ワーキンググループにおけるこれまでの議論について報告をさせていただく予定です。
なお,本ワーキンググループにつきましては,特別チーム等の御意見などを受けて,その後,開催させていただきたいと考えております。
本日予定されております議題はここまででございます。
最後に事務局から補足があればお願いいたします。

【大内学校教育官】  長時間にわたりましてありがとうございました。次回の会議の開催スケジュールなのですが,今,土井主査からも御案内がありましたとおり,この公民科を中心としてのワーキンググループにつきましては特別チームの開催後に開催をさせていただきます。
なお,本ワーキンググループとは別に高校地歴科,それから小・中・高の資質・能力を中心にワーキングも別に動いておりまして,こちらの開催が4月27日水曜日ということで御案内をさせていただいているかと思います。お時間,御都合のよい委員の先生がいらっしゃいましたら,是非,御参画いただければと思っております。内容につきましては,小・中・高の資質・能力でございまして,27日水曜日の10時から13時で,場所は3階の隣の部屋で,3F1特別会議室で予定しております。
以上でございます。

【土井主査】  それでは本日のワーキンググループはこれで終了させていただきます。長時間ありがとうございました。

── 了 ──

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