教育課程部会 社会・地理歴史・公民ワーキンググループ(第2回) 議事録

1.日時

平成28年1月18日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 社会・地理歴史・公民の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【館委員】  まだ定刻前でありますけれども,皆様御出席くださっているようですので,ただいまから社会・地理歴史・公民ワーキンググループ第2回目の会合を開きたいと思います。正式には中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会社会・地理歴史・公民ワーキンググループという非常に長い名前ですが,今日の会合をこれから開きたいと思います。
今日は足元の悪い中,御参集いただき,誠にありがとうございました。
前回の第1回の会議におきまして本ワーキンググループの土井主査から提案がございましたとおり,本ワーキンググループは総勢40名でありまして,検討事項も高等学校の地歴科,公民科の新設科目も含めて大変多くあります。また,今回の教育課程の見直しに当たりまして,育成すべき資質・能力を明確にする観点からも,小・中・高等学校一貫した議論が必要であること,また一方で,高等学校における新設科目についての検討など,より深く具体的に御議論いただく必要があることなどから,議論する事項に応じまして小グループに分けて議論をさせていただくことで委員の皆様に御了解を頂いているところであります。
本日は,主に小学校,中学校社会科を中心に,社会科,地理歴史科,公民科における見方や考え方,思考力,判断力,表現力の育成等に関する内容について御意見を頂く予定としておりますので,その関係の委員の皆様を中心にお集まりいただくと共に,進行は前回と同様に私が行ってまいります。よろしくお願いいたします。
それでは,最初に,事務局から配付資料について御確認をお願いいたします。

【大内学校教育官】  配付資料の確認をさせていただきます。
本日は,議事次第に記載しておりますとおり,資料1から資料10,参考資料1から3,その他,机上に参考資料を配付させていただいてございます。不足等ございましたら,事務局にお申し付けください。
なお,机上にタブレットを御用意してございますけれども,その中には本ワーキンググループの審議に当たり参考となる関係する審議会の答申でありますとか,関連する資料等をデータで入れてございます。こちらにつきましては,議事次第の裏面にリストを掲載しておりますので,御参考になさってください。
以上でございます。

【館委員】  では,これより議事に入りたいと思います。
本日は,報道関係者より会議の撮影及び録音の申出があります。ただし,本日,撮影はありませんが,録音は行われます。これを許可しておりますので,御承知おきください。
本日は,先ほど言いましたが,社会科,地理歴史科,公民科における思考力,判断力,表現力の育成,そして社会科,地理歴史科,公民科における見方や考え方,大きくこの二つについて意見交換を行いたいと考えております。議事の流れとしましては,事務局から資料に基づき説明を頂いた後,議論の内容を基に御意見を伺いたいと思います。
これに先立ち,高等学校の地理歴史科,公民科に関わる検討の状況として,12月21日に行われました高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チームにおける高等学校の地理歴史科及び公民科に置く新科目の内容構成の考え方についての審議や,前回12月7日に開催されました本ワーキンググループのうち高等学校の地理歴史科,公民科を中心に行われた審議について,意見の概要を事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  それでは,私のほうから資料1,2,3を中心に御説明をさせていただければと思っております。
まず,資料3を御覧ください。
この資料3が,前回,高等学校の地歴・公民科に関する特別チームで配付されました資料でございます。
1ページをはぐっていただきまして,この会におきましては,それぞれの「歴史総合(仮称)」,「地理総合(仮称)」,それから「公共(仮称)」,それぞれ仮称でございますが,そちらのたたき台案というものが議論されました。まず,こちらを御説明してから議論の中身を御紹介させていただければと思います。
まず,2ページ目を御覧いただければと思いますが,「歴史総合(仮称)」の在り方というところでございます。「歴史総合(仮称)」につきましては,科目の本質ともいうべき歴史の転換の軸というものを具体的に何にするかということについて御議論いただいたところでございますが,近代化,大衆化,グローバル化といった要素が学習指導要領にて重視されているというところでございまして,これをたたき台としてこのような転換の軸ということでどうかというような御議論を頂いたところでございます。こちらにつきましては,おおむねこのような転換の軸というものが考えられるのではないかというような御意見を頂いておるところでございます。
また,その次に,考察の手立てというところを御覧いただければと思いますが,歴史を見ていく際の見方・考え方として,こちらも前回御検討いただいた三つのものがありました。ここに書いてありますけれども,類似と差異を見ていく比較,これについては特に近代化といったようなところで転換の軸を考える際に,地域間,それから前の時代の比較といった意味で重要な概念となるという意味で比較というところ,それから2番目に書いておりますが,因果と結果を見ていく因果,これにつきましては,大衆化などでいいますと,科学技術と様々な社会的な事象について,その関係性を考える上で重点事項になるもの,それから一番後に書いてあります相互作用というところで,関係性やつながりという意味で歴史的事象のつながり,複雑になっていくというところと共に,研究においても,因果とまでは言い切れないような社会事象が出てくるようなときに,社会事象を取り扱う場合に必要な見方・考え方として,この三つが考えられるのではないかというところがたたき台として示されたところでございます。
また,このことにつきまして,次の枠を御覧いただければと思いますけれども,このようなことを踏まえて,指導の在り方として,これは前回の御議論にもなり,論点整理にもあったところでございますが,教育課程全体が「アクティブ・ラーニング」の視点から学習,指導方法の改善を行う必要があるというところで,「歴史総合(仮称)」についても学習課題を設定し,資料を活用して考察する,それから,歴史を捉える概念を理解していく,このような学習活動が重要であることを示させていただいております。さらに,このような学習の課程を前提に,各転換の軸に対応する内容のまとまりを設定し,具体的な学習内容について検討していくことが必要である。このような考え方から,このたたき台を示させていただいているところでございますが,現在の考えられる例については,現行の学習指導要領を踏まえて記述しているところであり,今後ワーキンググループにおいて御検討いただくことが必要であるということで御議論を頂いているところでございます。
また,一番下の米印のところを御覧いただければと思います。これは,前回の高等学校のことに関して御検討いただくワーキンググループ,また特別チームでも御議論になったところでございますが,どの時期やどの地域の歴史的事象について取り上げるかという議論,それから近現代とはいつからというような御議論が多くされたところでございますが,本科目につきましては,通史的に,ある時代から現代まで網羅的に取り上げるということではなく,転換の軸に沿った内容のまとまり,必要な歴史的事象を取り上げるような性格なのではないかと。その際,学習内容によっては取り上げる時期を広げて設定したり,多様な地域を取り上げたりすることによって理解を深めていくことが考えられるということをこちらに記述させていただいているところでございます。
最後に,この内容に関して,下に考えられる三つのところが書いてあるところでございます。左上のところを御覧いただければと思いますが,ほかの科目と同様に,科目の導入部分について歴史的学習の目的・意義を理解させるということ,それからまた,取り上げる時代の前史となるようなことについて若干取り上げる構成とすることで,このたたき台案を御覧いただいたところでございます。
これにつきましては,資料2を御覧いただければと思いますが,資料2におきまして,4ページ以降が第2回目の議論というところで御議論いただいたところでございます。4ページの上以前については,前回,先生方にも御覧いただいたところでございます。
こちらでいろいろな御意見を頂いたところでございますが,特に5ページ目の下から三つ目のところなどを御紹介させていただきますと,原案は時代の転換の軸と考察の手立てが一対一対応をしているように見える,これはちょっと違うのではないかという御意見でありましたり,その下にありますように,歴史の学び方やその学びを通じてどのような力が育まれるかという観点も非常に重要なので,それを踏まえて検討が必要だという点でありましたり,6ページを御覧いただければと思いますが,6ページの上から三つ目のマルにございますが,現代にある問題提起を受けて遡って考えるような視点も非常に重要なのではないか,現代との関係も考えていくことが必要ではないかと。いずれにせよ,ワーキンググループにおいて,また検討を進めてほしいという御議論があったところでございます。
次に,恐縮でございますが,資料3に戻っていただいて,3ページを御覧ください。
地理について,こちらも簡単に御説明申し上げます。
地理についても,前回こちらの高等学校のほうで御議論いただいたところでございます。1回目の議論は前回こちらでも御紹介させていただいたところでございますが,4ページ目,5ページ目を御覧いただければと思います。
5ページにあります地理教育国際憲章で示されている地理学の中心的な概念,位置と分布とか,こういうところがございますが,これについて,その在り方に関して,概念そのものについてはおおむね理解が図られているのではないかという状況がございます。
また,これらの概念を身に付けている上での見方・考え方となる地理的な見方・考え方についても,4ページを御覧いただければと思いますが,学習指導要領上に記述された内容でおおむね理解が図られているのではないかということを前提に,3ページ目を御覧いただければと思います。このような中で,歴史と違いますけれども,どのような構成にするかということについて示したことが,このたたき台案の3ページ目でございます。
(1)におきまして,今回育むべきGIS活用の能力であったり,この教科を学ぶ意義に関して取り扱った後で,(2)にありますけれども,地球規模の課題について見ていくという観点で国際理解と国際協力という件を取り上げてはどうかと。こちらについては,ア,イと分かれまして,多様な生活・文化と国際理解,イとしまして地球的な諸課題と国際協力について,そのたたき台とさせていただいているところでございます。
それから,(3)でございますが,その後,国際的な課題のみならず,日本や地域の状況について取り上げるものとして,防災であったり,持続可能な社会の構築と内容を取り上げてはどうかというところで,こちらにつきましては,アで防災関係をやった後,イで国内や地域での防災対応策について考察するというところについて全体の考え方を論点整理,それから,今までの御議論を踏まえて,たたき台として御審議いただいたところでございます。
すみません。先ほどの資料2に戻っていただければと思いますが,7ページ以降で議論が行われているところでございます。基本的に,この内容に関して,このようなところではないかという御議論が多かったところでございますが,特に7ページの下から二つ目でございますけれども,GISとか地図活用を指導していって,地理に関わる概念を学ぶと共に,どのように問題解決をできるか,どのように問題解決をしていくかというのがこの教科でも非常に重要なのではないかという話があったと思っております。
それから,次に,「公共(仮称)」でございます。こちらは資料の,すみません,ページ番号が消えておりますが,6ページ目以降を御覧いただければと思っております。
こちらにつきましては,論点整理において(1),(2),(3)が示されておるところでございますが,大きく分けまして,「公共の扉」といった「公共(仮称)」での学習の意義を含めて,物の見方・考え方,その基準となるものを考えていくようなパートと,(2)にあります具体的な物事について考えていくということ,この二つのパートに分かれるのではないかということ,それぞれについて資料をたたき台として御審議いただきました。
最初の「公共の扉」のところは,7ページ目を御覧いただければと思います。
7ページ目のところで特出しにしているわけでございますけれども,こちらにつきましては,公共的な空間に生きる私たち,それから公共的な空間における人間としての在り方生き方,このようなタイトルとして,アといたしまして,今まで受け継がれてきた蓄積や先人の取組,知恵などを踏まえ,様々な立場や文化等を背景にして社会が成立していることなど,社会について考えさせること,その上で,自立した個人として社会に対していく際に自分らしい生き方を問いながら自らを成長させていくと共に,人間は社会的な存在であることを認識し,対話を通じてお互いを高めることが重要であって,その両者により,よりよい集団・社会を作り出していくことについて学ぶ,このようなところが考えられるのではないか。また,ここにおいて勤労や職業観の育成ということを考える上でのキャリア教育の中核的な科目であるというところについても,ここの中で触れていくことが必要なのではないかという御議論があったわけでございます。
このようなことに関しましては,一番下の括弧にあるわけでございますけれども,囚人のジレンマであったり,共有地の悲劇などの思考実験であったり,環境保護や生命倫理等について概念的に考える学習活動を通じてアなどを教えていくと共に,イで考察となる基準に関しては,マル1とマル2でございますけれども,いわゆる最大多数の最大幸福というようなマル1の考え方であったり,マル2の,結果よりも,行為の動機となる人間的責務などを重視する考え方について理解させ,その際とありますような内容につきまして留意していく,こういうことを取り上げてはどうかというところを御議論いただいたところでございます。
それから,前のところに戻って恐縮でございますが,6ページ目の(2),(3)でございます。
先ほど申し上げました「公共の扉」における,基準というものを考えて,具体的にその主体として考えていく個別の学習をやっていく際にどのようなことを取り上げるかというところにおきまして,この(2),(3)をたたき台として御議論いただいたところでございます。論点整理において,様々な主体となるというところを挙げられていたわけでございますが,(2)のア,イ,ウ,エにありますように社会に対して自立した個人として協働していくという観点から,社会を構成する主体となるために協働の必要な理由,協働を可能とする条件,協働を阻害する要因などについて考察を深めていく,このようなところではどうかというところ,併せて自立した個人ということと(3)をつなぐような家庭やNPO等の地域におけるコミュニティの重要性についても取り上げてはどうかという点,それから最後に,家庭科や情報科のように個人を起点として自立した主体となる力を育む教科の学習とも連携しつつ,持続可能な地域,国家,社会,それから国際社会に向けた,参画していく主体となることについて必要な探究を行う,このようなところを考えていってはどうかということで御議論いただいたところでございます。
こちらにつきましても,資料2を御覧いただければと思います。
資料2の10ページ以降に第2回目の議論が書かれているところでございます。こちらにつきましては,特に,先ほど「公共の扉」と申し上げたところでございます。どういう基準が自分として考えていく際の基準となるということを指導していくかという部分でございますが,そちらのほうを多く御議論を頂いているところでございまして,こういういろいろなところを考えていったほうがいいのではないかという御議論がございました。
例えば,紹介いたしますと,10ページの下から三つ目のマルでございますけれども,協力が重要だという観点から,囚人のジレンマなどを挙げているわけでございますが,もっといい例があるのではないか,そういうところも考えていく必要があるのではないかという御意見でありましたり,例えば11ページのマルの2番目でございますけれども,社会的効用と人間的責務のバランスをとることが重要ということで示されているけれども,なかなかこれ自体は難しい話である,こういうところをどうやっていくかきちんと考えていく必要があるのではないか,このようなお話があったわけでございます。
また,12ページを御覧いただければと思います。
12ページの一番下のところでございますが,先ほどいろいろな主体について教えていく,いろいろな主体として社会と協働していくという点について教えていくという話がございましたが,それについての御意見でございます。社会の基本的な仕組みについては,生きる上で必要となるシステムであるが,その仕組みを使うことの意義と限界を知らせることが重要であり,社会的な見方が分からないとそれはできないということ。法,経済,政治それぞれで異なっておって,それに関しての考え方がある,そういうことをきちんと教えていく必要があるのではないかという御意見があったところでございます。
時間の関係で全部の御議論について御紹介できませんけれども,高等学校における新しい科目について,たたき台を基に御議論いただき,またワーキングのほうで御検討いただき,このような状況になっているところでございます。
以上でございます。

【館委員】  ありがとうございました。
ただいま事務局より説明のありました内容について,御質問や御意見はございますでしょうか。いかがでしょうか。よろしいですか。
御意見等ないようですので,それでは社会・地理歴史・公民ワーキンググループのうちの高校を中心に御議論いただいた際の検討状況や,高校地歴・公民科特別チームでの検討状況について,今後引き続き共有をしていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
では,本日議論していただきたい内容に移りたいと思います。
本日は,冒頭に申し上げましたけれども,社会科,地理歴史科,公民科における思考力,判断力,表現力の育成,そして社会科,地理歴史科,公民科における見方や考え方,この二つについて意見交換を行いたいと考えております。
初めに,事務局から前回会議における御意見なども紹介していただきながら,資料について説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  失礼をいたします。それでは,資料1,それから資料5,資料6を中心に御説明させていただければと思います。
まず初めに,前回,本ワーキンググループ,特に小・中学校社会科,それから小・中・高等学校を通じた資質・能力の育成について,本日お集まりいただいている委員の先生方を中心に御議論を頂いた状況を取りまとめた資料が資料1,第1回の主な意見というものでございます。
こちらについて御紹介させていただきますと,まず1ページ目でございますけれども,1ページ目の一つ目のマルのところで小・中・高校の資質・能力のかぎについては,社会的な見方や考え方である。ただ,これは従来,社会科の課題であって,キーワードでもあったんだと。しかし,実際のところ,現場には浸透していないということがあるので,これを分かりやすく伝えることが必要ではないかという御意見を頂戴しております。
また,思考力,判断力,表現力の育成に関しては,社会科として,統一的に説明する必要があるのではないかという御意見を頂戴しておるところでございます。その際には,国研で示された評価規準の資料で趣旨が示されておりますし,また26年の中教審における高校教育に関する報告書の中では,身に付けるべきコアな能力として,考察力,構想力,説明力といったことが指摘されているので,これらも踏まえて整理してはどうかという御意見を頂戴しております。
また,次のマルですけれども,社会的な見方や考え方はこのように捉えるという定義がないのではないか。これを明らかにすることが学校現場には分かりやすい。ある事象を歴史的に,時間の流れの中で捉える,空間的な広がりの中で捉える,諸課題と自分との関わりの中で捉えるというような捉え方を考えてはどうか。また,考え方も,比べて,まとめて,関連させるという考え方があるのではないかという御意見を頂戴しております。
それから,その次のマルでございますけれども,社会的な見方や考え方については,社会科で育てるものだと。このような活動を通じて育まれるということが社会科の解説の中では書いてあるけれども,具体的な中身が記載されていない。社会的な見方や考え方の系統性を小・中学校などでどのように確保していくかということも重要な課題である。その際には,成長に合わせた系統性を考える必要があって,生活科の内容も踏まえて考える必要があるのではないかという御意見を頂いております。
2ページ目に移りますが,2ページ目の上から一つ目のマルでございますけれども,社会的な見方や考え方については,小学校の授業では,社会的な事象の様子や仕組みの見方と捉えて指導に当たっている。これを中学校にどのようにつなげていくかということが課題だと。その際には,中学校は地理,歴史,公民の3分野に分かれているわけでございますけれども,中学校の地理的な物の見方や考え方,歴史的な物の見方や考え方,政治・経済的な物の見方や考え方というような分化する考え方は,小学校の内容をうまく捉えることができないのではないか。あるいは,時間的な流れ,地理的な広がり,関係的な捉え方,こういう形で捉える必要があるのではないかという御意見を頂戴しております。
次のマルですけれども,現行の中学校社会科,公民的分野でございますが,対立と合意,効率と公正という考え方の基礎となる概念を例示している。これは斬新な試みで,社会的な事象を,概念をもって体系的に捉えてみようという考え方と理解はできる。このことが今後の検討の参考になるのではないかという御意見。
それから,社会科でしか学べないことを整理することは非常に重要であって,社会の中で自然と身に付けられることと,学校の中でしか身に付けられないこととの違いを明確にする必要があるのではないかという御意見を頂戴いたしております。
次のマルですけれども,子供が関係性を持てるようになる力を育むことが重要ではないか。社会科で中心的に育むべきものといたしまして,社会的な見方や考え方とありますけれども,それを踏まえて関わる力を併せて育むことが必要ではないかという御意見を頂戴しております。
少し飛びますけれども,下のパラグラフで小・中・高校の内容構成の一貫性を考えることが必要である。その際,小学校は同心円的拡大ということで地域から日本へと広がるが,中学校ではいきなり世界地理から始まっているという御指摘を頂いております。
次に,3ページのほうにまいります。
3ページですけれども,社会科の課題としては,社会的事象を取り扱うことにとどまりがちで概念や能力の習得に至らないということがあるという御指摘,あるいは社会・地理歴史・公民では,社会的な見方や考え方に加えて,社会との関わりをどのように組み込んでいくかが重要ではないかという御指摘を頂いています。
次のマルですけれども,社会科においては判断力の育成が重要ではないかという御意見を頂戴しております。
また,次のマルですけれども,概念の整理に当たっては,小・中・高校それぞれのレベルを考える必要があるのではないか。これまでは内容があって,そこに社会的な見方や考え方をくっつけて説明をしてきたけれども,今後はコンピテンシーを中心に整理し内容を配置していってはどうかという御意見を頂戴しております。
一番下のマルでございますけれども,身近なことから考えることが重要ではないか。学校は概念から教えていくために,生徒は自分との関わりが十分認識できないのではないかという御意見を頂戴しております。
そのため,4ページにまいりますけれども,例えばということで,社会科として指導する内容あるいは育成すべき能力を体系的に示したイメージマップのようなものを示してはどうかという御意見を頂戴しております。
最後のマルでございますけれども,学校種ごとの目標の違いをしっかりと理解して指導に当たることが重要ではないか。その際には分かりやすいものを示す必要があるのではないかという形で,本日御議論いただきます見方や考え方あるいは思考力,判断力,表現力につきまして,第1回のワーキングで御意見を頂戴したところでございます。
具体的に本日御検討いただく内容でございますけれども,まず資料4ということで本ワーキンググループにおける検討事項ということを,前回の会議資料と同じ資料になりますけれども,示させていただいてございます。
こちらの資料4において,本ワーキンググループにおける検討事項の一つ目の中に,社会・地理歴史・公民科を通じて育成すべき資質・能力が示されております。この中で,特に二つ目の中点のところでございますけれども,三つの柱に沿った育成すべき資質・能力を明確にすべきではないかということで,特にⅱ)知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)ということで,その下の三つ目の中黒ですけれども,特に今のⅱ)に関わりまして,どのような思考力・判断力・表現力等を育むかについて,事象を捉える教科・科目特有の視点や考え方など,こういったものも含めて御議論いただくということから,本日の議題ということで設定をさせていただいてございます。
資料5につきましては,社会科,地理歴史科,公民科における思考力,判断力,表現力等の育成のイメージということで,現行の学習指導要領を基にしまして,これまでの中教審の御議論,それから教科的各特別部会におけます論点整理を踏まえまして,社会科,地理歴史科,公民科における思考力,判断力,表現力等の要素を整理したものでございます。これらにつきましては,論点整理の中でも示されておりますけれども,育成すべき資質・能力につきまして系統的に示す必要があること,また今次の選挙権年齢の18歳への引下げ等を踏まえまして,18歳の段階で身に付けておくべき力は何かという観点でありますとか,あるいは義務教育を終える段階で身に付けておくべき力は何かという観点を共有しながら,幼児教育,小学校教育,中学校教育,高等学校教育のそれぞれの在り方を考えていく必要があるという論点整理を受けまして,今回思考力,判断力,表現力等の要素を整理したということでございます。
具体的には,資料5のマル1,マル2,マル3,マル4ということで大きく四つの力を今回整理させていただいております。具体的には,思考力,判断力というものを踏まえて,マル1,マル2という力を考えてみました。また,表現力ということを考えまして,マル3,マル4に関わる力ということで整理をしております。
具体的に見てまいりますと,マル1でございますけれども,社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を考察する力ということで,左側に文章で書かれておりまして,右側に矢印で小・中・高という学校のグレード,段階が示されております。資料としては,中黒のところの左側の下から御覧いただければと思いますが,社会的事象の見方や考え方を用いて社会的事象の意味,特色や相互の関連を考察できるということや,同じように,社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を多角的に考察できる,こういったことが小学校段階あるいは中学校に一部重なるような形で必要な思考力を示しているという見方になってございます。
もう少し見てまいりますと,中学校段階の一つ上の中点,下から三つ目の中点でありますが,社会的事象の見方や考え方を用いて,社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を,中学校になってまいりますと,多面的・多角的に考察できるという点,更に高等学校段階においては社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連について,概念等を活用して多面的・多角的に考察できるという形で,思考力を小・中・高を通じた形で整理することを試みております。
同様に,マル2でございますけれども,社会に見られる課題や問題を把握し,その解決に向けて構想する力,判断しながら構想する力ということで,判断力を受けるような形で整理をしております。左下から御覧いただければと思いますけれども,小学校段階においては,社会に見られる課題や問題を把握できる,あるいはそういった課題を把握し,解決に向けて自分たちにできることを選択・判断できる力,更に中学校段階になりますと,社会に見られる課題や問題を把握して,複数の立場や意見を踏まえて,解決について選択・判断できるということ,高等学校になりますと,社会に見られる複雑な課題や問題を把握して,身に付けた判断基準を根拠に解決に向けて構想できるという形で整理をしてございます。
また,表現力といたしまして,マル3,マル4として整理をしてございます。
マル3でございますけれども,考察したこと,構想したことを説明する力ということで,小学校段階では,根拠や理由を明確にして,社会的事象についての自分の考えを論理的に説明できる。中学校になりますと,主旨が明確になるように内容構成を考え,社会的事象についての自分の考えを論理的に説明できる。これが高等学校段階になりますと,適切な資料・内容や表現方法を選び,社会的事象についての自分の考えを効果的に説明できるというような,説明する力については三つのグレードで分けて整理をしたところです。
また,マル4でございますけれども,考察したこと,構想したことを基に議論する力ということで,小学校段階であれば,他者の意見につなげたり,立場や根拠を明確にしたりして,社会的事象について自分の考えを主張できる。小学校,中学校と重なるところもありますが,中学校としては,更に他者の主張を踏まえたり取り入れたりして,社会的事象についての自分の考えを再構成しながら議論できる。高等学校においては,合意形成を視野に入れながら,社会的事象について構想したことを,妥当性や効果,実現可能性などを指標にして議論できるという形で,表現力については,説明する力,議論する力と二つに分けて整理をしたところでございます。
特に,現行の思考力,判断力,表現力を踏まえて考えてまいりますと,マル2社会に見られる課題や問題を把握し,その解決に向けて構想する力でありますとか,マル4の考察したこと,構想したことを基に議論する力は,今現在,論点整理としても示されております課題の発見・解決に向けて主体的・協働的に学んでいくという「アクティブ・ラーニング」のような視点を,特にマル4のところで具現化するような形で整理をしてみたところでございます。
なお,一番下段にございますけれども,参考ということで,思考力,判断力,表現力として,こういった力がなじむかどうかというところはあるんですが,一方で,先ほどの主体的・協働的な学びを成立させていく観点からも,例えば,学習の見通しを持ち追究の結果を評価する力も重要視してはどうか。ただ,こちらについては,思考力,判断力,表現力と言えるかどうかというところもございましたので,参考で示させていただいているわけでございますけれども,小・中学校でありましたら,学習問題の課題を把握し,追究の見通しを持つ,あるいは追究の結果を振り返り,学んだことの成果等を自覚できるという見通し,振り返りという部分,それから高等学校になりますと,追究の過程において修正・改善していく,あるいは追究の結果を評価して,よりよいものに修正・改善していくというような評価をしていく力も考えてもいいのかなということで,下段のほうに参考として示させていただいているところでございます。
こういった力につきましては,資料7を御覧いただければと思います。
資料7でございますけれども,社会科,地理歴史科,公民科の目標ということで,教科目標が左側に,学年目標・分野目標が右側に示されております。特に,思考力,判断力,表現力に関わるような学年・分野目標といたしましては,例えば小学校第5学年の(3)社会的事象を具体的に調査すると共に,地図や地球儀,統計などの各種の基礎的資料を効果的に活用し,社会的事象の意味について考える力,あるいは調べたことや考えたことを表現する力を育てるようにするというくだりがございます。第6学年においても,(3)において同様の趣旨が育成する資質・能力の一つとして示されているところでございます。
中学校になりますと,2枚目でございますけれども,教科目標において多面的・多角的に考察するということが示されておりまして,それが分野の目標の中に散りばめられている構造になっております。具体的には,各分野の(4)の部分で,多面的・多角的に考察し公正に判断すると共に適切に表現する能力を育成するということが示されておりますが,それ以外の箇所においても,(1),(2),(3)の中で,例えば地理的分野でありますと,(1)でございますが,国土及び世界の諸地域の地域的特色を考察し理解させ,地理的な見方や考え方の基礎を培う。あるいは(2)において,環境条件や人間の営みなどと関連付けて考察をする。(3)におきまして,日本や世界の諸地域を比較し関連付けて考察する。あるいは,それらの地域は相互に関係し合っていることを理解させるという形で,育成する資質・能力と,もちろん理解事項である基礎的・基本的な知識あるいは技能,そういったものとの関わりの中で理解させるという形での示され方をしてございます。
高等学校でございますけれども,3枚目になりますが,高等学校におきましては,各科目の目標ということで,例えば「世界史A」におきましては,現代の諸課題を歴史的観点から考察させることによって,歴史的思考力を培うということ,あるいは地理でございますけれども,「地理A」でございましたら,地域性や歴史的背景,日常生活との関連を踏まえて考察し,現代世界の地理的認識を養うと共に,地理的な見方や考え方を培うという形での科目の目標として,やはり思考力,判断力,表現力に関わる要素ということが入ってございます。
最後のページの公民についても,基本的には同様の形でとってございます。
こうした思考力,判断力,表現力の整理,小学校,中学校,高等学校を一貫した形で資質・能力の一つとして思考力,判断力,表現力に着目し整理をしてはどうかというのが資料5でございますけれども,それと関わりまして,資料6でございますが,前回会議でも多数御意見を頂戴いたしました見方や考え方に関するものと,思考力,判断力,表現力とのイメージを示したものが資料6でございます。
資料6でございますけれども,最初に,2ページ目以降の参考のところを御覧いただければと思います。
2ページ目,3ページ目につきましては,現行学習指導要領において社会科,地理歴史科,公民科等におきまして,見方や考え方に関する主な記述を抜粋しているものです。
現行指導要領を検討していただきました中教審の答申,平成20年1月に答申を頂いておりますが,この中の社会科に関する改善の基本方針として,一番上のところでございますけれども,社会科,地理歴史科,公民科においては,その課題を踏まえ,小学校,中学校及び高等学校を通じて,社会的事象に関心をもって多面的・多角的に考察し,公正に判断する能力と態度を養い,社会的な見方や考え方を成長させることを一層重視する方向で改善を図るとされてございます。
これを受けまして,現行学習指導要領,例えば小学校でございますけれども,内容の取扱いにおきまして,各学年の指導については,児童の発達の段階を考慮し社会的事象を公正に判断できるようにすると共に,個々の児童に社会的な見方や考え方が養われるようにすることというのが,指導要領の本則におきまして,内容の取扱いにおきまして規定をされているところでございます。
これらを受け,小学校の学習指導の解説の社会編におきましては,中略の後の二つ目の段落になりますけれども,このように,小学校社会科においては,前述した基本方針を受けまして,地域社会や我が国の国土,歴史などに対する理解と愛情を深めることを通して,社会的な見方や考え方を養い,そこで身に付けた知識,概念や技能などを活用し,よりよい社会の形成に参画する資質や能力の基礎を培うことを重視しているということでございます。
また,こうした,中略の後ですけれども,公民的資質の基礎を養うためには,社会科の学習指導において,社会的な見方や考え方を養うと共に,問題解決的な学習を一層充実させると指導要領の解説編に記載がなされているところでございます。
また,最後のところになりますけれども,児童一人一人に社会的な見方や考え方が養われるよう,社会的事象を比較・関連付け・総合して見たり考えたり,社会的事象を空間的,時間的に理解したり,公正に判断したり多面的に捉えたりできるようにすることが大切である。そのためには,児童一人一人が社会的事象を具体的に観察,調査したり,地図や地球儀,統計,年表などの各種の基礎的資料を効果的に活用したり,調べたことや考えたことを表現したりできるように,問題解決的な学習や体験的な活動,表現活動などを工夫する必要があると,社会的事象に関する記述が小学校段階でこういった形で解説に記されております。
同様に,3ページ目には,中学校における地理的分野に関する内容として,マル1で地理的な見方の基本が示されておりまして,例えば諸事象を位置や空間的な広がりとの関わりで捉え,地理的事象として見いだすこと,また,そうした地理的事象にはどのような空間的な規則性や偏向性がみられるのか,地理的事象を距離や空間的な配置に留意して捉えることが見方の基本として示されております。同様に,考え方の基本として,地理的事象がなぜそこでそのようにみられるのか,なぜそのように分布したり移り変わったりするのか,地理的事象やその空間的な配置,秩序などを成り立たせている背景や要因を,地域という枠組みの中で,人間の営みとの関わりに着目して追究し,捉えるという形での地理的な考え方の基本が同様に示されております。
また,公民的分野でございますけれども,公民的分野については,現代社会を捉える見方や考え方の基礎として,対立と合意,効率と公正などについて理解させるということで,社会的存在である人間が行う行動,例えば,政治的な活動や経済的な活動などを捉え説明するための概念的な枠組み,先ほどの対立と合意,効率と公正という枠組みですが,概念的な枠組みである見方や考え方の基礎を養うことを狙いとしているという形で示されております。
これらを踏まえまして,資料6でございますけれども,中央の部分に,外側に五角形で矢印のような形で示されておりますのが,先ほどの資料5で御説明をしました思考力,判断力,表現力を要素として少し整理をしました,力が成長していくというイメージのもので,マル1,マル2,マル3,マル4がそれぞれ関係する力という形で示させていただいております。その中央に社会的事象の見方や考え方として,今回は社会的事象,具体的な学習課題,学習対象を追究する視点や方法ということで,社会的事象の見方や考え方を定義し,それらを小学校から中・高等学校に移るに従って社会的事象の見方や考え方が育成されていくという図にしたものが,こちらのイメージのたたき台になってございます。
もう少し詳細に見ますと,小学校段階ですけれども,オレンジ色のバケツの下のほうの部分で枠で囲まれているところになりますが,社会的事象の見方や考え方の基礎を培うというのが小学校段階の例として示してございまして,地理的な見方の基礎として,位置や空間的広がりに着目する,あるいは歴史的な見方の基礎として,時期や時間経過に着目する,更には社会を支える働きの見方の基礎として,事象相互あるいは人々の立場相互の関係に着目してという形で,着目すべき視点,追究をする際の視点のようなものを示すと共に,これらの視点を基に,社会的事象の様子や仕組みを見いだし,事象を比較・分類したり総合したりして考えるという考え方,あるいは国民の生活と関連付けて考えるという社会的事象の見方・考え方を小学校段階で養ってはどうかというのが一番下段の枠で囲われているところでございます。
これらが,中学校地理的分野,歴史的分野,公民的分野において,先ほども御説明いたしましたけれども,例えば地理的な見方や考え方としては,オレンジ色の左上のほうになりますけれども,日本や世界にみられる諸事象を位置や空間的な広がりとの関わりで地理的事象として見いだし,それらの事象を地域等の枠組みの中で考察するという地理的な見方や考え方。歴史については,現行指導要領上ございませんで,先ほどの高等学校の「歴史総合(仮称)」の検討の中でも出てまいりましたけれども,歴史については社会的事象の歴史的な見方や考え方を育成するということで,時間に着目して,事象の推移や変化を見いだし,相違や共通性,因果関係などに着目して,考察させるという追究の視点や方法を示してはどうかと。
最後に,公民的分野,中学校段階において,社会的事象の見方や考え方として,概念的な枠組みを基礎としながら,現実の社会的事象と関連付け,習得した概念を当てはめて考察する社会的事象の見方や考え方ということで,小・中学校段階においては,このような見方・考え方で整理をしてはどうかということでお示しさせていただいているのが今回のイメージ図になります。
ちなみに,一番下のほうに幼児教育あるいは小学校生活科に関する視点が示されておりますが,これは現行の生活科の学習指導要領におきましても,例えば比較する,分類する,関連づけるなどの思考でありますとか,伝える,相互交流する,振り返るなどの表現に関わる要素は入ってございます。こういったものが小学校の社会科における思考力,判断力,表現力の中にまたつながっていくと考えてございます。
資料6のたたき台につきましては,以上になります。よろしく御審議のほど,お願いしたいと思います。

【館委員】  今の説明に関して補足説明等はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。もしありましたら,よろしいでしょうか。

【澤井調査官】  失礼いたします。調査官の澤井と申します。
恐らく補足説明は御質問等をお受けする中でさせていただいたほうがよいかと思いますが,簡単に2点だけ,このたたき台に至る経緯と,それからここで見方や考え方を検討していくことの意義についてお話をさせていただこうと思います。
まず,経緯でございます。
社会科の学習指導要領,昭和22年試案というものが示されて改訂を繰り返してきたわけですが,その中で,試案当初から,物の考え方とか,あるいは社会生活に対する見方や考え方,物の見方・考え方などなど,社会生活に対する見方・考え方の基礎,そして平成元年,10年には社会的な物の見方や考え方,平成20年になって,社会的な見方や考え方,言葉は様々変えながらも,一貫して見方・考え方を養うことの重要性が書かれてきております。しかしながら,今御紹介させていただきましたように,小学校あるいは中学校の各分野等々で明確に社会的な見方や考え方がどのようなものであるかということが説明されているわけではありません。「地理的な」という地理的分野については説明されておりますが,「社会的な」となると,なかなか明確な説明がないということで,教育現場には十分に全体像が届いていませんでした。この度,一度地理的な見方や考え方を参考にして,追究の方法や視点として統一していく方向性を持たせたらどうだろうかと。そういった意味から,「社会的な」という言葉ではなく,いったん「社会的なものの」という時代もございましたので,「社会的事象の」ということで,学習対象に対する追究の視点や方法,言ってみれば社会科らしい学び方ということで整理をしてみたらどうだろうかということで,まず,このたたき台案が示されたということでございます。
そのことによって,これをベースに検討していくことの意義ということになりますが,4点ほどございます。
1点目は,社会科,地理歴史科,公民科における思考力,判断力,表現力を明確にしていくことに資するのではないだろうかということ。これにつきましては,論点整理の冊子がございますが,この111ページに学力の三つの要素で学習内容,目標内容を整理していくと。その真ん中の柱に,思考力,判断力,表現力等を検討していく中に,教科等の本質に根差した見方や考え方を検討してはどうだろうかという考え方の基本が示されてございますので,それに基づいて思考力,判断力,表現力を明確にすることにも資する。これが1点目でございます。
2点目は,社会科,地理歴史科,公民科ですから,地理,歴史,公民という三つの分野が入り交じっているわけですが,接続,発展をなかなか説明しづらい社会,地理歴史,公民を資質・能力でつなぐ柱がしっかりできるのではないか。資質・能力をつなぐ柱として位置付けることができるようになるのではないかというのが2点目でございます。
そして,3点目は,これらを明確にすることにより,社会科,地理歴史科,公民科ならではといいますか,本質的な学びのプロセス,特に確かな理解のためのプロセス,何に着目して見出し,何を考察するという社会科らしい学びのプロセスを明示できるようになるのではないか。これは「アクティブ・ラーニング」の趣旨にも沿うのではないかということです。
そのことによって,最後,4点目になりますが,能力は評価しながら育てるということです。今回,能力と評価を一体的に明示していこうということですから,社会科における思考力,判断力,表現力の評価の指針にも見方や考え方がなっていくのではないかと。
こういった可能性に目を向けて検討する,そのことが見方や考え方を検討する意義と私どもは考えてございます。
以上,補足説明でございました。

【館委員】  どうもありがとうございました。
それでは,議論の順序としまして,最初は資料5,社会科,地理歴史科,公民科における思考力,判断力,表現力等の育成のイメージに関して,しばらく意見交換をしたいと思います。御質問であっても結構ですので,よろしくお願いします。その際,検討すべき視点としましては,思考力,判断力の要素として,そこにマル1,マル2でまとめられていますが,考察する力や構想する力でよいか,それから表現力の要素としましては,マル3,マル4の説明する力,議論する力でよいか,そして,それらを通しまして具体的な内容が小・中・高の段階で適切かどうかということ,それから最後,参考で示されている評価についての力はどうかなどが一つの考えられるものとして挙げられるかなと思います。
今から御意見を頂きたいと思いますが,前回同様,御意見のある方はあらかじめ名札を立てていただきますと,私のほうで順次指名させていただきたいと思います。また,発言が終わりましたら,もとに戻していただきますようお願い申し上げます。大変難しい課題だろうと思うわけですけれども,御意見のある方,いかがでしょうか。積極的に御意見をよろしくお願いいたします。では,よろしくお願いします。

【井田委員】  まず,このように段階的に示されるのは非常に画期的で,これは非常に面白いな,分かりやすいなと思って見ていたんですけれども,問題となるのは,この四つがどのように関連しているのかなと。一つ一つを見れば,それなりに理解はできるんですけれども,この四つが,思考力,判断力,表現力というものがどうやって絡み合っていくのか。これは学習のプロセス,つまり学習を始めて,課題があって,資料を集めて分析して,それからまとめて発表するという流れに沿っているとも言えないので,これを実際に現場でこうですよといったときに,分かやすいんですけれども,実際にこれをどう入れていくのか。ばらばらには入れられるかもしれないですけれども,これを関連性を持って入れるというのはどう入れていくのか。その関連性がもうちょっと見えてくると,これがもっと生きるかなと。
もうちょっと言うと,これと先ほどの,次に進んで申し訳ないですけれども,見方や考え方の発展性,ここもすごくまとめられてよくなったと思うんですけれども,そことやはりどう絡んでいくのかということが重要かなと思います。過去,いろいろな国でもこういうことがされていて,いろいろ複雑に示されていて,それがどう結び付くのかが分からなくて,結局,撤退してしまうという例がやはりあるので,そういう意味では,できるだけ関連性が分かるような形で進められると,よりいいかなと。そのときに,考察するのか,構想するのか,説明するのか,やはりその関連性の中でそういう言葉が決まっていくのではないかと考えます。

【館委員】  ありがとうございました。
では,お二人に御意見を頂いた後,今の関連性も含めましてお答え願えればと思います。よろしくお願いします。坂本委員。

【坂本委員】  坂本です。今のをつなげてですけれども,関連性という部分は本当によく私も分かります。私は小学校ですけれども,小学校の部分の小の部分を見てみると,今,実際,小学校で皆さんが頑張ってやっているところがうまく整理されて出ているので,すごく分かります。
関連性付けるというところを説明するときに,学習の流れ,つまり指導計画を立てたけれども,1時間目から最後の部分,学習を流れに沿って説明するとすごく分かりやすくなるかなと思っています。社会事象を調べるところで,事実を調べて考えるということで事実を考察したりとかいうことができてきますし,事実,事実を相互に関連させて自分はどう考えるかという部分で構想する,判断するというところが見えてきて,それをどうほかに説明するとか表現するという中で出てくるので,学習の流れの中に沿って説明できるようにすると分かりやすくなるかなと思います。
特に,参考というところが重要で,やはり学習の見通しを持ち,どう評価する,この部分をもう少し明確に出してくれると分かりやすいのかなという気がします。

【館委員】  ありがとうございました。
では,最初に井田先生のほうからありましたマル1からマル4の関連性に関してですけれども,今,坂本委員のほうからは,いわゆる学習のプロセスに沿った説明というのが一つ考えられるのではないかという御意見だったと思うんですけれども,この辺り,いかがでしょうか。

【澤井調査官】  ありがとうございました。
関連性については,まだまだこれから議論を要するところだろうと思います。現行も,思考,判断したことを表現するというような説明の仕方になっておりますので,マル1,マル2,これは思考力,判断力,表現力は関連的な能力ですから,一体的に評価していくということ。これはこれまでの説明になっていますが,一旦その要素を説明する意味で分けて整理をしてみたということですから,例えば授業によっては,マル1を経てマル3,あるいはマル2を重視するとマル4というような,思考,判断したことを表現するというような大まかなプロセスで結び付けることが考えられるということと,これがそのまま全て評価基準といいますか,そういう要素になるというよりは,ここに書かれていることをうまくピックアップしながら評価の文章を作っていくような,そんなイメージとして説明をしてございます。ですから,学習の流れ全体というよりも,今この四つは,考えたことを表現するという過程を,この四つ分解したところで,あとは組合せ方は様々あろうかという想定で書いてございます。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。
今の点でなくても結構ですけれども,どうぞよろしくお願いします。永田委員。

【永田委員】  失礼いたします。井田先生のほうから,四つがどのように関連しているかということですね。先ほど,学習の流れもプロセスで示したほうがいいんじゃないかと2番目に発表された方がおっしゃいましたけれども,思考力,判断力,表現力というものがこのように書かれますと,思考して,判断して,表現すると,まずとれるということを感じます。先ほど言われましたように,マル1があってマル3とか,マル2があってマル3とかいうのもあると思います。このマル1とマル2というのは,社会科の分で社会の仕組みが分かるようなものがマル1に相当しまして,その解決だったら,社会の問題について考えるということで,内容によってマル1,マル2というのが大体分かれてきますし,社会の仕組みが分かって,それでプラスアルファして社会の課題が分かるという場合だったらマル1とマル2がつながって,それについて何でそのように思ったのか,解決策とかマル3,マル4にもつながると思いますので,マル1とマル2のところで内容とかによって違うかなという気がいたします。
それと,このままでいったら思考と判断というのが,思考については,判断には私は事実判断というものと価値判断があると思っていますので,正にマル1のところはどんなものがあるか考えて,事実は実際こうなのではないだろうかと考えるのが事実判断として,マル1でもいいと思っているんです。何か問題の解決とかありまして,このような解決策がいいのではないだろうかということで価値判断ということでマル2,それについても思考・判断,の過程を踏みますので,今の段階でいったら,マル1の思考というのが社会の仕組みを分かるために考える,マル2の判断力というのが社会問題を解決するためにどのように考えるのかと分かれているような気がいたします。
井田先生が言われていましたように,社会科の場合,学習のプロセスというふうに,思考,判断,表現力をどのように位置付けるかというのは,正に学習過程ともとれると思っています。
それと,マル3とマル4ですけれども,説明する力と議論する力ということで,自分は,解決策とか,多分マル2を想定してマル3,マル4があると思います。その場合だったら,議論するためには必ず相手に説明しなければいけないので,マル3だったら,自分はこのように事実を判断したよとか,このように考えたよとか両方が入るんですけれども,マル3とマル4,どうしても議論する力の中に説明する力が入ってきますので,その辺の関連を考えていかなければいけないかなと思いました。
以上でございます。

【館委員】  ありがとうございました。
では,桐谷委員,お願いします。

【桐谷委員】  桐谷です。皆さんおっしゃっているように,今回の資料5,資料6は非常に分かりやすくて,非常に面白いなと思って私も見させていただきました。
資料5に関してですけれども,2点ございます。
1点は,マル1とマル2,それからマル3とマル4で色がオレンジとブルーに分けてあるという,これが一つポイントなのかなと思っております。社会科ならではのという話になると,やはりマル1とマル2のような能力,それから学習が想定されて,その中でマル3とマル4が展開されて育成されていくというような構造で捉えたときに,マル1,マル2とかマル3,マル4の構造がどう作られるのかという観点で整理していただくと非常に分かりやすくなるのかなと思いました。
そのように考えていったときに,先ほど館先生のほうから,マル2でいうと構想でいいのか,それからマル4でいうと議論でいいのかという,ある意味では学習の,若しくは能力の到達点をどこに考えるかということについてのポイントが示されたと思うんですが,私自身は,やはり社会については構想するだけでいいのかとか,それに対して解決に向けて何らかのアクションを起こす,例えば今まで議論されている社会参画のようなことが最終的な一つのゴールのイメージとして考えられたほうがいいのではないか。そういう参画なり参加を考えていった場合には,必ずきちんと解決策を構想し,そして構想の実現性を考えないと参画できませんので,そういうことを考えていくほうがいいのかなと思っています。
そういう意味では,マル4の議論するということに関しても,議論だけでいいのか。合意とか,そういった何らかの社会的な関わり若しくは社会的な活動,営みが入ってくるほうが,これからのことになるのではないかなと思います。それは恐らく今後議論されていきますような見方・考え方という問題,資料6の中で少し私自身は意見がございますので,そのときに言わせていただければと思っております。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。
では,棚橋委員,よろしくお願いします。

【棚橋委員】  2点ございます。
1点目は,資料5の先ほど議論になりましたマル1からマル4の関係,構造というのは,今は置いておきまして,参考として書かれたところがもっと大きく扱われていいのかな,重要なことなのではないかなと思っています。この参考というのは,マル1からマル4の力全てに関わる基盤になる,あるいは全ての上に来るかもしれないのですが,これは様々な意味を考察したとか,それから解決に向けて構想したとか,それぞれについて子供たちというのは,自分はどんな思考プロセスでそういう結論になったのだろうか,友達はどんな思考プロセスでやったのだろうかといった,言ってみれば自己の思考プロセスを対象化して客観視するということであって,これは思考力の中で非常に重要なことだと思います。自分がどう考えたのかというのを客観的に見ることができて,他人の考え方との違いを比べることによって自分の足りなかったところ,よかったところを見いだして,次の思考に改善していくという,正にここで言われている評価というのは,自己の思考プロセスの客観視ということになると,これはどの力にも当てはまると思います。ですから,参考という扱いではなくて,もっと重要な力として明示してもいいのではないか,そしてそれは,深さの違いはあれ,小学校でも中学校でも高校でもやはり自分の思考過程を自分で見直すというのは大事なことだと思うので,高校だけしかないとか,そういうものではないのではないかなという気がしております。
それから,ついでにもう一つ,次の資料6のところですけれども,例えば地理的な見方や考え方を,諸事象を位置や空間的な広がりとの関わりで捉えることが地理的な見方や考え方なのだと言っています。そのとおりだと思うのですけれども,ただ,まだこれでは実際に授業をやろうと思ったときに,地理的な見方・考え方を育成するというのは何をどう教えたらいいのかなというのがなかなか難しいのではないかと思います。実際,空間的な広がりとの関わりで事象を考えるというときに,例えば立地であるとか,分布であるとか,地理特有のそれぞれ考え方といいますか,概念を使わないと空間的な見方ができないと思うので,前回,私は公民で入った対立と合意とか,効率と公正という概念がもっとほかのところでも広がるのがいいのではないかと申しましたけれども,正にそういうことであって,空間的な見方という地理的な見方を支える,あるいは実現するためにはどういった道具が必要なのかというのをもっと明確にしていかないと,具体的な授業で使うことが難しいのではないかなと思っております。

【館委員】  では,続きまして,加藤委員,お願いします。

【加藤委員】  加藤です。実は,今,棚橋先生と同じようなことを考えていまして,重複するようで恐縮ですけれども。まず今回,小・中・高を資質・能力でつなげるという大きな命題に対して,非常に工夫され,分かりやすい提案をされたのではないかなと思っています。資料5も資料6も,今後,中身について具体的なものは出てくるとは思いますが,実践者にかなりメッセージが届くような分かりやすい内容になっているのではないかなという第一印象を受けました。
その上で,先ほど棚橋先生がちょうどおっしゃったのですが,資料5の参考に挙がっている評価する力,見通し,振り返る力が,まさしくメタ認知の部分の力であり,思考力という部分では非常に上位の力ではないかなと思います。そして,ある意味では,これが社会科で目指す力の核になるものではないかなと思うのです。これをマル1からマル4の力にどう関連付けて表現するかというのが非常に大事になるけれども,それが参考という形になっているので,もしかして思考,判断,表現力の中には位置付かないのかどうなのか,その辺のお考えを聞きたいというのが一つあります。
もう一つ,マル1,マル2,マル3,マル4の中黒側の数が四つあったり三つあったりしている。これについては,まだ今後検討課題なのでしょうか。
さらに,赤,緑,青の矢印が極めて緩やかなものなのか,小がここ,中がここ,高等学校はここなんだと,かなりはっきりとした段階性を意識されたものなのかという,以上三つのことを確認したいと思いました。質問させてください。

【館委員】  ありがとうございました。
では,もうお一方,矢吹委員の御発言の後,今の何点かに関してお答え願えればと思っております。よろしくお願いします。

【矢吹委員】  矢吹でございます。桐谷委員のおっしゃったところに同感するところであります。表現力というのを,説明する力と議論する力だけではなくて,これを行動する力とか,社会に参画するというところ,更に連携をするといった部分で考えたならば,行動して表現することによって,それをまた振り返って更なる行動につながっていくので,表現力のところに行動力のようなものを入れるといいのかなと思ったところです。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。
では,何点かありましたけれども,文科省のほうからよろしくお願いします。

【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。まずは私のほうから,参考とされている評価する力,メタ認知の扱いについてでございます。これについては二つございます。
一つは,論点整理における整理でございます。資質・能力の三つの柱ということが整理されてございますけれども,学力の3要素の三つ目の主体的に学びに取り組む態度ということとの関連性もございまして,論点整理におきましては,メタ認知に関するものが三つ目の柱,どのように社会,世界と関わり,よりよい人生を送るかというところに整理をされているところでございます。これは認知的な能力であるのでという御意見もあると思います。御議論あるところだと思いますけれども,そういったことを踏まえて,ここでは少し参考扱いにしています。
もう一つは,この力というのが社会科ならではなのか,むしろ学習全体を通じて大事な力でございますので,そういった整理をしていく必要があるのではないかということで,御指摘のとおり大変重要で考えていくべきポイントではございますけれども,そういう意味で,違う扱いにさせていただいているところでございます。

【澤井調査官】  それと,アクションとか行動する力,連携する力,これももっともな御意見でございます。今,室長のほうからお話がございましたように,学力,言ってみれば資質・能力を三つの要素でこれから全体像を検討していくという流れでございますので,恐らく情意とか態度とか,そういった側面も思考力,判断力,表現力に併せて考えていくと。その中で相互に関連性を持たせるような表現はどのようにしていったらいいかということを今後検討していくと。参考にさせていただきたいと思います。
それから,見方や考え方の具体とか3段階,4段階あるいは矢印の範囲とか,これはまだまだ確定は,当然ながら,たたき台でございますので,御意見を頂きながら検討を重ねてまいりたいと思います。
以上でございます。

【館委員】  仙田委員,よろしくお願いします。

【仙田委員】  仙田と申します。私は高校の歴史のほうの部会ですけれども,中高一貫の校長なものですから,今回中学の部会のほうも見させていただいてということです。
資料5は,この四つある力というのは是非とも,今までずっと言ってきたところだなと思っています。ところが,主題学習だとかいいながら,これをやろうとしても,逆に,なかなか主題学習をやらずに,教員が社会的事象の確認で終わってしまっているというのが問題点だと思っています。例えば,うちの学校では1単位で学校設定科目を作って,社会科のそういうものを,結局,事前事後の学習をしないと意味がない。ですから,そういう枠組みが,変な話ですけれども,何か手立てを考えないと,また形骸化してしまうようなことがあるので,それを是非ともお願いしたいなと思っています。私など現場の立場で言うと,これだと,例えば授業の中でこの四つを入れるということは絶対無理だと。一つの授業だったら,例えば先ほど言われたようにマル1とマル2とか,だったらマル3だけだとか。ところが,ほかの委員も言われていたと思うんですけれども,やはりマル1からマル4内を全部通してやるということもとても大事なことだと思っています。ですから,是非ともそういう機会をつくっていただく。今,我々はつくるように努力をしてやっております。
そして,それを実際に先ほど言った行動力に,例えば特別活動だとかボランティア活動だとかの実際の場面でそれを使える力を是非ともそこの関連付けのところに入れていただきたいと思っています。例えば,本校は,中学では奈良,京都ですけれども,高校はマレーシアに行きます。例えば,マレーシアだと,出ていましたけれども,世界史の分野と地理の分野と日本史と全部出て,何でそれが重要なのか考えさせるというと,彼らは事前の指導ではすごく時間をとりますので,そういうところでこういうことが是非ともできるのではないか。「アクティブ・ラーニング」を使っていけば,それをもって行動を起こすことが非常にいいことにつながると考えています。
ですから,その具体例をなるべく分かりやすく示していただけることがいい結果につながるかなと思っておりますので,よろしくお願いしたいと思っています。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。
池野委員,よろしくお願いします。

【池野委員】  まず,遅れてきてすみませんでした。雪の影響で飛行機が遅れてしまって,申し訳ございませんでした。
私は,資料5に関しては意見が三つあります。
一つは,思考力や判断力や表現力の力という問題です。確かに,日本では思考力だとか判断力だとか表現力を力と表現しているんですけれども,マル1とかマル2とかマル3に落ちたときに,本当に力という言葉を付けていいのかということです。実際には,私としては,確かにこれは段階だから力が伸びていったというようになるんですけれども,一般的には考察するとか構想するとかいう動詞のレベルを同様に設定しているのであって,力を設定しているわけではないと思うので,本当に力というのが要るのかということが一つです。
それから,二つ目です。私は前半の議論あるいは説明を十分聞いていないので,不確かなことですけれども,御質問された先生方のお話から聞くと,マル1からマル4あるいは参考までを含めて,一種の授業といいますか,1時間の授業の中でこれが行われるというように多く解釈されているようです。それは無理だと思います。基本的に,単元のレベルでこれは行われていくんだと思いますし,基本的に,マル1から参考までの中を使って単元が作られてくる。これは,小学校から高等学校まで全て同じだと思っています。
それは,次の資料の6のものとも関連するんですけれども,一番左側と右側のところに,左側のほうでは評価する力,多分参考のことだと思われますし,右側のほうの青い社会との関わりを意識した問題解決的な学習の充実というものが,本来,基本的に,単元そのものの中に位置付けられてなされないといけないと思います。その中で,社会科的な地理歴史科や公民科を含めて,主にマル1からマル4を付けたいということだと思います。ただ,桐谷先生も言われたように,私としては,もっと右側の社会との関わりを意識したという,非常にアクティブといいますか,社会科の中で私たちは社会ともっと積極的に関わる必要があることを育てないと,いけない。確かに説明,解釈はできるかもしれませんけれども,社会との関わりはそんなに多くない。冷めた目で見ることは大事なことですけれども,やはり何か社会との関わりを若者たちが持たないと,これからの社会の力を育てることにはならないだろうということになります。
そこで,3番目ですが,判断力から表現力まで書いてありますが,見方・考え方の中で,後から話が出てくると思うんですが,地理歴史,公民が中学校の中の一種のパイ型的な構造をここで作られていますけれども,パイ型的なものの構造をより積極的にしようと思うと,マル4の議論するから設計するとか,あるいは作り出すとか,そういう非常に社会の中のことが,―それはマル2の中に入っていると言われればマル2の中に入れられているのかもしれませんけれどもー,もっと積極的に社会に関わるような側面が必要ではないかなというのが私の意見です。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。
では,村松委員,よろしくお願いします。

【村松委員】  村松です。私が着目しているのは,資料5の1番目の概念という単語です。「概念等を活用して」と高校のところで出てきます。この概念が何を指しているのかというのがまだぴんと来ていませんので的外れになるかもしれませんが,私の中でイメージするのは,高校であれば幸福,正義,公正という概念がイメージされます。この表でいきますと,概念というのは高校で取り扱うようですけれども,中学であっても対立と合意,効率と公正という鍵概念を前回の改訂で入れましたので,恐らく中学でもその概念を活用してというところが出てくるんだろうと思っています。実際に,資料6を見ると,中学校の段階で概念的枠組みを基礎としてうんぬんという記述がありますので,恐らく中学の段階でも概念を用いるんだという前提での議論なのかなと思っているところですが,この辺の理解が,資料5と資料6と若干違うので,どういう位置付けになっているのか教えていただきたいと思います。
それから,概念の関係でいうと,私の理解では,中学校になってから,いわゆる鍵概念を使って社会を見るという学習をしているんだろうと思っています。では小学校では必要ないのだろうかということについて,私は考えているところでありまして,必ずしも中学からに限定する必要はないのではないかと思っています。
私は弁護士ですので,法教育の観点から学校にいろいろ授業に行っています。例えば,ルール作りという授業がありまして,それは法の必要性であるとか意義を子供たちに教えるプログラムなんですが,それを現行の学習指導要領の枠組みで位置付けると,対立と合意,効率と公正の授業になってきます。ルール作りの授業を学校の先生とどうやってやろうかと議論すると,中学校よりも,これは小学校のほうが盛り上がるよね,なじむよねという声が小学校の先生からも中学校の先生からも出てきます。実際に,課題を与えて,子供たちがいろいろな立場でロールプレイをしながら課題を解決していく,合意形成をしていく,それは小学校でもできるんだろうと思うんです。その授業をしたときに,これは「対立と合意」だよと教えれば小学校高学年であれば分かります。「効率と公正」の「効率」は教材にもよりますし,すぐに分かるかどうかは分からないですが,公正に,あるいは公平に判断しましょうねというのは,小学生だって多分分かるだろうと思うんです。例えば,子供が幼稚園のときにブランコに並ぶ,あるいは滑り台に並ぶときに,お母さんたちは「順番だから,順番だから」と必ず言います。順番というのは,みんなで公平に使っていきましょうねという価値判断があるから,お母さんたちは順番ですよと子供に教えるんだと思うんです。小学校の低学年であっても,公平と言えば,みんな納得する。公平にしましょうねと言えば,納得して授業に取り組んでいく。そうなってくると,必ずしも概念を中学からに限定する必要はないと私は思っていて,小学校の段階でも小学生なりに分かる概念があるんだろうと思います。私は専門家ではないので,詳しいことは分かりませんけれども,物の本によると,大体10歳くらいになると抽象的な概念を理解できるようになってくるといいますので,そうであるならば,小学校の高学年であっても概念はある程度理解できるのかなと思います。
実際に限られた財をどう分けるのかという,法教育でいうと配分的正義の授業を小学校5年生とかでもやるんですけれども,うまく課題を与えれば,子供たちも,どういう視点で分けるのが公平なのか理解して,ある程度使えるんです。今回のテーマは,恐らく小・中・高の中で連続性を持って,社会科としてどのような力を育むかということですので,そういう観点から,小学校段階でも概念的なものを入れるのか入れないのか,そこはこれからの議論で構わないと思うんですが,もう少し柔軟な形で御検討いただいてもいいのかなと考えております。

【館委員】  文科省のほうから,何か今の3点ほどに関しての御説明はありますでしょうか。

【樋口調査官】  失礼いたします。調査官の樋口と申します。ありがとうございました。
中学校には概念等を活用することがないのかという御指摘かと思いますけれども,資料5を御覧になっていただきますと,社会的事象の見方や考え方を用いて多面的・多角的に考察をすると,このように示しているところでございます。資料6に関わる話になってまいりますが,社会的事象の見方や考え方とは何なのかといったときに,こちらに概念的枠組みを基礎としてとありまして,御指摘のとおり,現在の中学校学習指導要領,公民的分野では,現代社会を捉える見方や考え方の基礎として,対立と合意,効率と公正などを理解させて,それらを概念的枠組みの基礎として用いていく,このように書かれているところでございます。したがって,概念等という表現で小学校,中学校,高等学校を通すのか,あるいは中学校等においてはこちらに示しているような表現で内容を表していくのかということが,正にこれからの議論に資されていくことであろうと思っております。

【館委員】  どうぞ。

【澤井調査官】  補足でございます。私は,小学校社会科の担当をしております。
小学校でも概念はないのかというお話がございました。今回の見方や考え方のたたき台資料には追究の視点という言葉がございまして,概念と知識をどう説明し分けるかということは常に議論をされているところでございます。ですから,例えば小学校では,工夫も3年生なりに捉えれば,概念と捉えることができます。最終的に理解すべき法則性の高い抽象化された概念と,追究の視点ぐらいの概念と,こういうことをどう言葉分けをしていこうかということは,今現在,検討中でございます。

【館委員】  先ほど力の問題が出たんですけれども,それに関しては何かありますでしょうか。

【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。今回,資質・能力という中で,考察できるという語尾で書かせていただいているところでございますけれども,正にそれぞれ考察できるようにすること,構想できるようにすること,説明できるようにすることを社会科を通じてどのように追究していくかということ,その中で,今回も学習のプロセスというお話が出てきておりますけれども,プロセスの要素と,そういった資質・能力の在り方をうまく整理していかなければいけないということの中で,しっかり誤解がないようにしていきたいと思っております。この点は,今日の場ではないかもしれませんけれども,また引き続き御意見を頂きながら,全体を通じてまとめていきたいと思っております。

【館委員】  では,時間の関係もありますので,資料5と資料6の内容はかなり重なっておりますので,次の段階の話合いの中で一緒に出していただければと思います。
今,基本的には資料5のほうの話合いで進んでいたんですが,資料6の社会科等における見方や考え方と思考力,判断力,表現力のイメージたたき台ですけれども,それなどを中心に,会的事象の見方や考え方ということに少しシフトした議論に移っていきたいと思います。
廣嶋委員,是非そのことも関連して御意見をよろしくお願いします。

【廣嶋委員】  こういう示し方で出てきたというのは非常に画期的なことだろうと思っています。今回,育成のイメージというタイトルになっていますよね。要するに,この後,どうやってこれを示していくのか。それぞれの小・中・高の学習指導要領の目標的なものとして示すのか,あるいは同じ目標でも方向目標的な形で示すのかによって,この議論がどうなるのか,収束するかしないかという辺りが出てくると思うんです。例えば,私も参画する力というのは今回特に極めて重要なことだなと思っていますけれども,この四つの枠の中に入れられるのか,入れられないのかとか,あるいはもっと新しく五つ目を作らないと,それがうまくいかないのか。私は,何か四つの枠の中に入れられるのではないのかなという気もするのですけれども,そういう形の議論のほうが何かうまくいくのではないのかなということを思っています。
それから,もう一つは,連続性の問題で,資料4の右側のほうには小・中・高別の矢印が出ていますよね。これを見て,どなたも,例えば小学校ではここまでしかやってはいけないとは読み取らないと思うんです。もちろん,すぐれた授業になればなるほど,もっと先のレベルまで展開していくこともあるでしょうし,だから,連続性の見方をどのように見ていくか,示し方がこういう矢印でいいのか,あるいは底辺が太くて先に行くと少しずつ細くなるみたいな示し方も,同じ矢印でもあるでしょうし,その辺の示し方の問題もあるかなと思っています。
ただ,私が申し上げたいのは,今回提案してきたようなものがないと,なかなか連続性の問題ですとか,思考力,判断力,表現力等がどう成長していくのかという辺りのことが,またあいまいになっても困るなという感じがしていて,出てきたものを補いながら完成させたいということです。恐らく四つの枠も26年の中教審の高校教育に関する報告書で言われている思考力,判断力,表現等の枠組みの中から,出てきているのではないのかなと思います。資料6番もそういう枠組みになって,マル1,マル2,マル3,マル4が考察する力,構想する力,説明する力,議論する力となっているわけです。この具体的な中身がどういうものなのかというのが,今回資料5で提案されているのだと思いますけれども,ここのところをもう少し掘り下げていけば,何かうまくまとまって,実際の授業の中に生かせるような提案ができるのではないのかなと思いました。

【館委員】  今の議論の中にありましたけれども,資料6のほうにはマル1からマル4まで紫色で書かれたものがあって,その内容は,ある意味では資料5のほうの具体的な項目として説明されているということもあったわけですが,社会的な見方・考え方の捉え方に関しての話に移っていきたいと思います。
学校種や分野別の見方や考え方は,イメージにあるような要素を主として考えていけばいいのかどうなのか,あるいは今議論なされています思考力,判断力,表現力との関わりだとか,それから社会的事象の見方や考え方と個別の知識,技能あるいは上位的な,あるいは対等的な問題との関わりに関することなど,いろいろあると思うわけですけれども,御意見をお願いできればと思います。
小倉委員,よろしくお願いします。

【小倉委員】  小倉です。ちょっと乗り遅れたところがありまして,資料5とも関連してくるんですが,このように要素を段階性をもって,系統性というんでしょうか,示されたということに関しては,私も小学校の教員ですので,現場で実際に授業をしていく中でイメージしていくとなると,授業レベルのイメージに非常に近いものが見えてくるのかなと思っています。例えば,1番のところでも特色や相互の関連を考察できるというふうに段階の一つとしてはあるんですが,次に多角的に,小学校でいうと立場を変えてとか立場を考えてというふうになると思うんですが,このように示されたということは,現場からすると非常に分かりやすい部分が一つあり,また,これを四つに分けられたものを,つまみ食いではないですが,組み合わせながら単元構成ができるんだろうと感じているところです。
6番とも関連をして,授業というか,学びのプロセスが非常に分かりやすくなっているのではないかと私も思っています。私も正に,どちらかというと身に付けた見方や考え方を活用しながら社会的事象の意味を考えるなどの学習展開を考えているんですが,こちらもやはり見方や考え方が追究の視点や方法と示されていますし,資料5のほうでも社会的事象の見方や考え方を用いてとなっていますので,授業展開としては,恐らく社会的事象の見方や考え方,追究の視点として示されて,それによって問いができ上がり,そして最終的には確かな知識といいますか,社会的事象の意味の確かな理解につながっていくような授業の流れをイメージしていくのかなと,勝手にですけれども,読み取れるような構造になっているので,具体的にどうしていくかというのはまた難しい問題がありますが,現場としては,学びのプロセスという意味では非常に分かりやすくなってきているのかなという感想を持っています。

【館委員】  ありがとうございました。では,桐谷委員,よろしくお願いします。

【桐谷委員】  すみません。先ほどの資料5と6の関係性の中で私は考えていることがあったものですから,続けさせていただきたいと思います。
今回の資料の中で,資料5でマル2とマル4が「アクティブ・ラーニング」を中心的に考えるような力という形で想定されているというお話があったと思うんですが,私自身,このマル2とマル4が非常に重要だろうと思っております。そう考えたときに,資料6を見させていただくと,このようなマル2,マル4の,実際にそれを力としてどう育成していくのかという発達段階的な図の中に,余りマル2とマル4がうまく表現されていないように私には読めてしまって,紫のところでマル1,マル2が左側,マル3,マル4が右側というところでマル2とマル4が入っているんですが,真ん中を見ると,やはり社会的事象の見方・考え方で上がっていくという構造ですので,ここに課題を把握して構想する,若しくは,私ですと参画なり協働するとか,そういった力が真ん中のオレンジのところに余り書かれていないので,是非マル2とマル4の内容を真ん中のほうに書いていただくと,資料5と資料6の関係性がより明確になるのではないかと考えています。
申し訳ありません。私は前回からずっと関わるとかということにこだわっているものですから,池野先生も先ほどおっしゃいましたけれども,資料6の右端のほうに社会との関わりを意識した課題解決的な学習の充実とありまして,やはりこれが今回非常に重要なポイントとして考えられているんだろうと思います。先ほど,いみじくも澤井調査官から昭和22年版の学習指導要領がありましたけれども,そこで一番重要視されていたのは,社会に参与し,社会の進展に貢献する態度や能力の育成というのが社会科の原点として言われていて,そのためにどのように社会を見るか,考えるかということが考えられてきたと。そういう意味で考えますと,今回の改訂の中で考える資質・能力としては,やはりマル2とマル4は中核に来るだろうと考えていますので,是非ここを入れていただいた形に示していただくと非常によいのではないかと思っています。
そういう意味では,先ほど村松委員や廣嶋委員から,小学生でも概念は使える,それから小学生でもいろいろ考えたり,若しくは構想したりすることができるというお話がありましたとおり,私も小学校や中学校を含めて現場の先生と授業作りなどをしていますと,社会的な課題に対する解決策を構想し,それから社会に提案する学習は小学生でもできる実践がございます。この矢印などの書き方もそうだと思うんですが,資料6のほうでも見方・考え方だけではなくて,やはり関わり方も含めて示していただくと非常に資料5,6が連動しますし,今までの社会科における社会事象というものが,理解する,若しくは考察する,判断する対象から,今回の改訂で恐らくそれプラス関わる対象として社会を捉えて,若しくは作っていく対象として,より明確にしていくことが今回の改訂の趣旨だろうと思いますので,そういうものが出てくるような形で書いていただくと非常にいいと思います。
小・中・高で連動して考えるならば,高校では「公共(仮称)」で協働して解決していくとか,「地理総合(仮称)」でもESDとか防災などのような社会的問題に対して解決するような形が入ってきています。歴史などでは,そもそも社会的諸課題なり歴史的な諸課題みたいなものの追究というものは既にありますので,そういったことを考えると,小・中・高を連続して考えていくポイントとしては,非常に明確にすることのほうがよりよいのではないかと考えております。是非御検討いただければと思います。
以上です。

【館委員】  では,続いて,高橋委員,よろしくお願いします。

【高橋委員】  高橋です。高校の教員をやっておりますので,今日は連携,小・中・高の連続性が大切だと思って参加させていただきました。
先に資料5についてですけれども,やはりマル3,マル4という学習活動は大変重要だと思うのですが,高校で生徒に聞いてみますと,生徒の中にはパネルディスカッションとか資料を使って説明するのが大変得意な子がいるんです。それは中学校のときにきちんとやっているからであって,マル3の中学の矢印は適切な資料のほうまでいっていませんが,これは何度やってもいいことだと思いますので,私の意見としては中学校でも資料の活用等々まで考えていただけたらと思います。
それから,資料6に関しましては,バケツに入っているのが社会的事象の見方・考え方になっているので,そこである程度ミックスされるみたいなイメージがあるのかなという感じがするんですけれども,生徒は,歴史は歴史,地理は地理とばちばちと分けて考えてしまう嫌いがありますので,それらも関連して考えていかないといけないんだよというイメージが湧くような図にしていただけると更にいいのかなと思います。
それから,「アクティブ・ラーニング」に関しましては,さっき桐谷委員が言っておられましたように,構想したりして議論を高めていく,実際に説明,議論,行動に移していくということがどこかに一貫して表示されるとよろしいのかなという感想です。

【館委員】  ありがとうございました。
では,田中委員,よろしくお願いします。

【田中委員】  ありがとうございます。グローバルな視点でということで申し上げたいと思います。
世界の中で,それから日本の中でという視点が今回様々な分野で前面に出てきているのは,私どもは非常に評価したいと思っています。
その上で,最近,世界価値観調査を,59か国かな,したら,日本の若者が世界一チャレンジしない若者だと。冒険心でもクリエーティビティーでも世界最低だと言われたのがショックでした。それから,最近ですと,日本から海外への留学生が少なくなって内向きだったり,それから自己肯定感が低い若者が増えているという報告もありました。
今回,先ほどちょっと議論に出ていましたけれども,私はこれを見ていて,この見方・考え方,力の議論で,門外漢なのですが,やはり日本の若者がチャレンジする力,そして問題を,世界と日本の課題が一体になってくるこの世界で,世界の人たちと一緒になって問題を解決していく力というようなものが今後求められるのではないかなと思います。今日の資料を拝見して,私の印象は,やはり力と幾つか,四つの力,静的というんですか,待っているような感じがしたというのが正直なところで,先ほど桐谷委員等からもありましたけれども,関与する,それから行動する,問題解決に直接自ら動くようなものを,5と6の資料でどう表現するのか私には分からないのですが,そういう点を是非強調していただきたいなというのが私の意見であります。ありがとうございました。
【館委員】  では,岡崎委員,お願いします。

【岡崎委員】  ありがとうございます。岡崎です。
資料6の台形の中の下のほうに,「国民(人々の)生活と関連付けて考える」という言葉があるんですけれども,こちらの色彩が資料5と6にもう少し色濃く出てくるといいかなという感じを受けております。社会の中のニーズに照らして考えますと,少子高齢化の下で児童・生徒たちがこれから直面し,考え,発言,行動していかなければいけないというときに,自分たちの暮らしがどうなっていくのかということを我が事として考えることが非常に重要になってくるかと思います。
資料5のほうは既にお考えいただいていて,表現の問題かと思いますけれども,「社会に見られる」ということで自分の外にある事象のような印象を与えるような気がいたしまして,我が事として考えるということが重要ではないかと思っております。
具体的には,マル2の一番下の小学生の辺りのところの4項目め,「社会に見られる課題や問題を把握できる」のところに,例えば自らの生活と関連付けて把握できるとしたり,マル2の1項目めの「構想できる」の前のところ,今までの先生方の御議論とも関連するかと思いますが,自分たちの暮らしや社会をよりよくする観点から構想し,行動する態度を養うとか,そういった観点を入れていっていただけると,有り難く存じます。実際に社会科の学習,その他の教科も含めまして,自分たちの暮らしや身の周りの社会をよりよくしていこうという提案をしていく学習が効果を上げていると思います。また,高校の社会科の教科では学ぶべきことが多過ぎて,制度や事象の解説であるとか,その知識,理解にとどまりがちであるということとも関連するかと思いますけれども,個人の生活,国民の生活と関連付けていただけると,より意味が深まり,学習の成果も上がるのではないかと存じます。

【館委員】  では,ここで文科省のほうにお願いします。

【大杉教育課程企画室長】  途中で申し訳ございません。先生方の御意見を伺いまして,これだけは一つ情報提供させていただいたほうがいいかと思います。
本日の資質・能力の議論ですが,実は三つありますうちの一つ,思考力,判断力,表現力のところの中核となる物の見方・考え方を中心に御議論いただいております。実は,別の柱の中に,どのように社会,世界と関わり,よりよい人生を送るかという柱がございまして,実は今日の資料の中にその要素が抜けておりますので,恐らくそれを全体として見ていただくと,今日御指摘の世界との関わりでありますとか,方向目標をどうするかということでありますとか,自分の人生の関わりということは見えてくるということで,そういう意味で,何でもかんでもここに盛り込むというよりは,全体の柱の中で考えていくということも前提の一つとして申し上げておきたいと思います。

【館委員】  たしか前回学習指導要領の構造化のイメージ図のところで,三つの柱として,学びに向かう力,人間性等といったところに書かれた内容もそちらでまた考えなければいけない点であるということでしょうか。
では,時間が非常に迫ってきたんですけれども,あと3名の方でよろしいでしょうか。では,栗栖委員,よろしくお願いします。

【栗栖委員】  失礼します。小学校籍の栗栖と申します。
私も,この資料5と6を見させていただきながら,自分が小学校の現場で授業を作っていくときにどう使えるかなという視点で見させていただきました。そうした場合,こういう例が挙がっていると大変分かりやすいというのはあります。実際に授業を作るとなると,先ほどから出ているように,私も実際,これは小学校でも授業したなですとか,ここまでやってきたんだなというのがやはりありました。例えば,概念という言葉もそうですけれども,単元を構想する際に,まず,そこの単元の最後,子供たちがどういう概念にたどり着いたら,この単元で身に付けなければならない力が身に付いたと言えるのかなというところを明確にしてから授業を作っていきますので,小学校においても概念というものは使ってきたという思いもあります。
社会的事象の見方や考え方についてもですけれども,小学校は3年生から初めて社会科学習が始まりますが,3年から6年の4年間でもやはりレベルが違うと思うんです。いろいろな見方・考え方を子供たちはしていると思います。また,これは3年生だから,6年生だからではなくて,どの学年でも言えることですが,子供たちは社会科の学習の導入の時点で本当にいろいろな見方・考え方でその学習に入っていきます。導入の場面では物すごく差があります。それはやはり子供たちの生活経験の違いですとか,それまでの既習事項等との関連で本当に差があって,例えば中学年で上水道の学習をしたときに,よく導入で子供たちに問います。水道をひねるときれいな水がいつでも出てくるけれど,ではこの水道の裏,見えないけれども,どうなっていると思うか予想させると,すごく差があります。例えば,後ろに川が流れていて,せめてごみが出てこないような何か網のようなものが途中にあって,川から水が来ているのではないかなと考える子もいますし,中には,それまでに浄水場に連れていってもらっている経験がある子などは,いや,川の水をどこかきれいにする工場できれいにしてポンプでくみ上げて蛇口につながっているのではないかなと,導入の時点でもこれだけ差があるんですよね。その差がある社会的事象の見方や考え方を学習を通してどんどん大きく育てていかなければならないというのがあって,各学年,各単元によって,どこまでその見方・考え方を育てていったらいいのか,考えながら物すごく苦労して授業作りをしてきたという思いがあります。
資料5にもありました,小学校で,例えば3番,説明する力の辺りでも,自分の考えを論理的に説明できる,とありますけれども,これもやはり3年生から6年生によってどこまで論理性を求めるのかという各学年のレベルもあると思いますので,この辺りも何か上手に示すことができると,現場の先生方は,ここまで育てていったらいいのだというのが分かりやすくなって,更に意欲を高めて社会科の授業をしていただけるようになるのではないかなと思いました。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。
では,池野委員,よろしくお願いします。ちょっと時間が迫っていますので,できるだけ端的に,すみません。お願いします。

【池野委員】  手短に。それでは,資料5も6も,ある面,成長拡大するような形になっているので,それは評価したいなと思っています。
私の意見は,ここから四つです。
社会的事象の見方・考え方が資料6の真ん中に出てくるんですけれども,もう一つ上に社会的事象と出てくるんです。私としては,確かに社会的事象の見方・考え方を活用するんですけれども,子供たちに付けるのは,やはり社会の見方や考え方だと思うんです。現代の地域社会や日本という社会あるいは世界という社会をどう見るか,どう考えるかということだと思うんです。個別の社会的事象を取り上げるときには必要だと思いますけれども,その目的的な部分としては,社会的事象をするだけではなくて,社会をどのように見たり,考えたり,そして関わったりすることではないかというのが私の1番目の意見です。
それから,先ほど高橋先生が,これはバケツに見えると言われたんですけれども,見えるとちょっと困るなというのが僕の意見です。バケツになると入れ物のようになるので,そうではなくて,やはりこれは作られるものにならないといけないのではないかと思うんです。下から上へ作ってくるようにならないといけないのは,黄色い矢印が3本出ていますけれども,多分これは意図的にはこう書いてあるんだと思うんです。一種のスパイラルな形で上がってくるイメージを作っていかないと,多分この図はなかなか,バケツ論になってしまって,困るというのが私の意見です。少しスパイラルな,らせん的な部分を入れてほしいということが二つ目です。
それから,三つ目は,スパイラルにしたときに,下のほうから上のほうに,先ほどから概念の話が出ていたんですけれども,当然,3年生や4年生でも,例えば北とか方位とかいうのがありますね。北とか南も概念ですけれども,方位というものは地理的なものではずっと絶対必要な概念です。道具としての概念と,公正や公平のような目的的な概念と2種類あると思うんです。だから,どっちの概念を優先するのか,目的的なもののほうを優先するのか。小学校の場合は,やはり道具的な側面の概念が必要だと思うんです。農業だとか工業だとか産業だとかいうものは,目的的であると共に道具的な部分も持っておるわけです。道具的なときにどんな構造を持っているか,農業の構造,工業の構造はどうなっているかが大事なもので,コンビナートだとか,そういうものは一種の概念として,働いてきて集積化していったり,分散化したりということが問題だと思っています。
それから,4番目ですけれども,先ほど,一番上は一体どこまでいくのかというお話があって,多分社会的な関わりのほうにいくんだろうという考え方で作られているように思います。それぞれのところで本当はよりよい生活とか幸せな生活だとか,そういうものを持ち込まないと,子供たちがどこまで関わることができるか。確かに,地域社会自体を社会的事象として見たり,考えたり,説明したり,議論したりすることもできると思うんですけれども,やはり豊かな社会だとか,幸せな社会だとか,よりよい社会とかいうものを持ち込まないと,子供たち自体がなぜ今ここで,私だったら,広島のまちを考えないといけないのか,なぜ,ただ単に生きている,ここで生活しているだけなのか,もっと子供たち自体が関わり方を感じて,それを自分たちで小学校3年生,4年生なりに考えることができることをしないといけないのではないかなと思っています。
以上です。

【館委員】  どうもありがとうございました。
では,議論のほうは以上にいたしたいと思います。
では,もう一つ,報告事項があるということですが,それはよろしいでしょうか。

【大杉教育課程企画室長】  お時間もございませんので,簡単にいたしたいと思います。
資料10でございます。
特別支援教育に関する議論についてということで,おめくりいただきますと,特別支援教育部会における検討事項がございます。ここにおきまして,各教科における学習の困難さに配慮するため,必要な支援も含めて御議論を頂き,年末の総則部会で全体的な御議論を頂いたところでございます。それを各教科ワーキングにおつなぎするようにということで,資料をお配りさせていただきました。
3ページ目から5ページ目,6ページ目までにございますように,総則を含めて,幼・小・中・高における特別支援教育の記載の充実を図っていくという方向性でございます。その中で,各教科におきましても対応をお願いしたいということでございまして,30ページ目にございますように,これまでは総則において障害別の配慮の例をお示ししてきたところでございますけれども,これも30ページ目の右側にございますように,各教科別に,障害別の配慮に加えて学習の過程で考えられる困難さごとに示すということでございます。
具体的に,社会科におきましては,33ページの上にございますように赤字が学習の過程で考えられる困難さの状態でございますけれども,それに対する緑色の配慮の意図をもって青色の手立てを行っていくということを各教科においてお示しいただきたいということでございます。
これは,社会科の関係の先生にも御協力いただいて,特別支援の関係の先生方と整理をさせていただいたものでございます。これは小学校の例でございますけれども,今後,中学校,高校においても順次整理をしていくということでございまして,次期改訂におきましては,こういったことも併せて示していくことが必要になるということで,今後の参考のためにお配りさせていただいたものでございます。
以上でございます。

【館委員】  ただいまの御説明に質問ありますでしょうか。よろしいでしょうか。
では,時間もまいりましたので,本日はここまでとしたいと思います。司会の不手際がありまして,時間が押してしまって申し訳ありません。
本日お出しいただいた御意見につきましては,事務局で論点ごとにその趣旨を整理していくようお願いいたします。前回も申し上げましたけれども,限られた時間内での討議でしたので,更に御意見やお気付きの点などありましたら,ペーパーで事務局に送っていただければと考えております。
では,最後に,次回以降の日程など,簡単にお願いいたします。

【大内学校教育官】  ありがとうございました。
次回でございますけれども,第3回は,1月25日月曜日の13時から15時で予定をしております。内容につきましては,高等学校の地理歴史科を中心に御議論いただく予定でございまして,本日のような形で高校の地歴を御議論いただく方を中心に御案内させていただくと共に,関係するグループの方々からの御出席ということをお待ちしたいと思ってございます。
以上でございます。

【館委員】  今のは,あくまでこの分科会とは,中心は違う分科会の話と考えてよろしいですね。

【大内学校教育官】  厳密に申し上げれば,社会科,地歴・公民科のワーキンググループの第3回ということで,その第3回の議論の内容は,本日は小・中学校社会科,それから小・中・高の資質・能力を中心に御議論いただく先生方にお集まりいただきましたけれども,次回は高等学校の地歴科を中心に御議論いただく先生方にお集まりいただくことを念頭に置いてございます。

【館委員】  こちらの分科会から参加なさっても,もちろん結構であると考えているとのお知らせであるということですので,そのように御理解ください。よろしいでしょうか。この小・中の分科会とは違うものを開くので,もし参加する方がいらしたら,そこにいらしてくださいという御案内でよろしいですね。

【大内学校教育官】  はい。ワーキンググループとして行うものであります。ただ,議題としては高校の地歴科を中心に御議論いただくということでその先生方を中心にお集まりいただくということでございます。

【館委員】  では,よろしいでしょうか。
では,本日,社会科,地理歴史・公民ワーキンググループ,これで会合を終了させていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。御苦労さまでした。

―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程総括係

電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2073)