教育課程部会 社会・地理歴史・公民ワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

平成27年12月7日(月曜日)10時00分~12時30分

2.場所

主婦会館プラザエフ 地下2F「クラルテ」

3.議題

  1. 社会・地理歴史・公民の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【大内学校教育官】  皆様おはようございます。定刻となりましたので,ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会社会・地理歴史・公民ワーキンググループを開催いたします。
開会に当たりまして,文部科学省初等中等教育局主任視学官,梶山正司より御挨拶申し上げます。

【梶山主任視学官】  おはようございます。ただいま御紹介に当たりました文部科学省初等中等教育主任視学官をしております梶山でございます。中央教育審議会の初等中等教育局分科会教育課程部会に新たに設置されました社会・地理歴史・公民ワーキンググループの第1回の開催に当たりまして,一言御挨拶申し上げます。
まず,この度は,委員の皆様方におかれましては,御多用のところ,本ワーキンググループの委員に御就任いただきまして,誠にありがとうございます。
文部科学省におきましては,昨年11月に中央教育審議会に対しまして「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」という諮問をさせていただいたところでございます。その後,教育課程部会の下に教育課程企画特別部会を立ち上げまして,14回の審議を経まして,今年8月に論点整理というものをまとめていただいたところでございます。
論点整理におきましては,各学校段階,それから各教科等における改訂の基本的な方向性を示しておりまして,これを受けて各部会,ワーキンググループ,また特別チームにおきまして,具体的な議論を進めていただくことにしておるところでございます。
この社会・地理歴史・公民ワーキンググループにおきましては,幼児期に育まれたいろいろな人との関わりなどの基礎,また生活科をはじめとする小学校低学年における学習を通じて身に付けた資質・能力の上に,小・中・高等学校教育を通じて育成すべき資質や能力を明確化するということ,これが非常に大きな課題だと思っております。
その上で,国家及び社会の形成者として必要な知識や思考力などを基盤として選択,それから判断を行い,課題を解決するために必要な力,また歴史的に考察する力,地球規模の諸課題や地域課題を解決していく力などの育成,また高等学校に新設する,仮称でございますが「歴史総合(仮称)」,同じく仮称でございますが「地理総合(仮称)」,同じく仮称でございますが「公共(仮称)」の内容構成等の御検討,また小・中学校の社会科と高等学校の地理歴史科,公民科との円滑な接続のための具体的な内容等の在り方の検討,このような内容について御提言を頂いたところでございます。
特に高等学校に新設いたします,仮称でございますが「歴史総合(仮称)」,「地理総合(仮称)」,「公共(仮称)」,こちらの内容構成等につきましては,中教審の教育課程部会の下に「高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チーム」というもの,こちらを設けられておりまして,こちらの議論を踏まえつつ,更に細部について本ワーキンググループで御検討していただくことになっております。
本ワーキンググループでは,これらの視点でありましたり特別チームの議論を踏まえつつ,社会・地理歴史・公民教育の改善・充実について御議論をお願いしたいと考えているところでございます。
この議論でございますが,時間的には平成27年度末頃までを目途に開催し,一定の方向性をお願いしたいと考えておるところでございまして,その結果については,教育課程部会等での議論を踏まえ,最終的に中教審として平成28年度中に取りまとめいただく予定の答申に反映させていただきたいと考えております。
委員の皆様方におかれましては,是非それぞれの御知見,また御経験を踏まえ,様々な視点から忌たんのない御意見を頂きたいと思いますので,よろしゅう御議論のほどお願い申し上げます。よろしくお願い申し上げます。

【大内学校教育官】  議事に先立ち,本部会の主査及び主査代理について御報告いたします。
資料2でございますけれども,初等中等教育分科会教育課程部会運営規則に基づきまして,本ワーキンググループは教育課程部会の決定により設置されており,主査及び主査代理は教育課程部会長が指名するとされてございます。教育課程部会長と御相談をいたしまして,土井真一委員を主査に,原田智仁委員を主査代理にお願いしておりますので,よろしくお願いをいたします。
次に,委員の皆様を御紹介いたします。資料1として,本ワーキンググループの名簿を配付させていただいてございます。名簿順に御紹介をさせていただきます。
浅川俊夫委員でございます。
池野範男委員でございます。

【池野委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  石上和宏委員でございます。

【石上委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  磯谷正行委員でございます。

【磯谷委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  井田仁康委員でございます。

【井田委員】  お願いいたします。

【大内学校教育官】  一ノ瀬正樹委員でございます。

【一ノ瀬委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  大石学委員でございます。

【大石委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  岡崎竜子委員でございます。

【岡崎委員】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  小川幸司委員でございます。

【小川委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  小倉勝登委員でございます。

【小倉委員】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  加藤寿朗委員でございます。

【加藤委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  上村肇委員でございます。

【上村委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  桐谷正信委員でございます。

【桐谷委員】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  久保純子委員でございます。

【久保委員】  久保でございます。

【大内学校教育官】  栗栖ゆみ子委員でございます。

【栗栖委員】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  権丈英子委員でございます。

【権丈委員】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  坂本正彦委員でございます。

【坂本委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  関裕幸委員でございます。

【関委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  仙田直人委員でございます。

【仙田委員】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  高木優委員でございます。

【高木委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  髙橋朝子委員でございます。

【髙橋委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  田中雅彦委員でございます。

【田中委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  済みません,失礼いたしました。館潤二委員でございます。

【館委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  田中雅彦委員でございます。
棚橋健治委員でございます。

【棚橋委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  谷田増幸委員でございます。

【谷田委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  土屋武志委員でございます。

【土屋委員】  お願いします。

【大内学校教育官】  永田成文委員でございます。

【永田委員】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  韮塚雄一委員でございます。

【韮塚委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  廣嶋憲一郎委員でございます。

【廣嶋委員】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  村松剛委員でございます。

【村松委員】  よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  矢ケ崎典隆委員でございます。

【矢ケ崎委員】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  矢吹香月委員でございます。

【矢吹委員】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  頼住光子委員でございます。
失礼いたしました。遅参でございます。
また,本日御欠席でございますけれども,浅子和美委員,西村公孝委員,羽田正委員,羽場久美子委員,諸富徹委員が本ワーキンググループの委員に就任されてございます。
委員の御紹介は以上でございます。
次に,文部科学省の関係者を御紹介させていただきます。
文部科学省主任視学官の梶山でございます。

【梶山主任視学官】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  初等中等教育局教育課程企画室長の大杉でございます。

【大杉教育課程企画室長】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  初等中等教育局視学官の中尾でございます。

【中尾視学官】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  教育課程課教科調査官の澤井でございます。

【澤井調査官】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  同じく教科調査官の濱野でございます。

【濱野調査官】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  同じく調査官の樋口でございます。

【樋口調査官】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  同じく教科調査官の村瀬でございます。

【村瀬調査官】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  同じく教科調査官の澤田でございます。

【澤田調査官】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  私は教育課程課学校教育官の大内でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,議事に入ります前に土井主査,原田主査代理から御挨拶を頂ければと思います。どうぞよろしくお願いします。

【土井主査】  皆さん,おはようございます。この度本ワーキンググループの主査を仰せつかることになりました土井でございます。先ほど既に御説明がありましたように,本ワーキンググループでは高校地歴・公民科の新しい必履修科目の在り方の検討ですとか,社会科,地理・公民科を通じて育成すべき資質・能力の明確化や「アクティブ・ラーニング」を取り入れた指導の改善・充実策等,非常に重要な事項について先生方に御検討いただくことになります。別に設置されております特別チームとも十分に連携をとりつつ,先生方には充実した御議論をしていただけるように,主査として微力ながら努めたいと存じますので,どうかよろしくお願いいたします。

【原田主査代理】  副主査を仰せつかりました兵庫教育大学の原田と申します。よろしくお願いいたします。
このワーキンググループでの検討並びにその後の改訂を通じて,小学校や中学校や高等学校の先生が改訂して良かったなと言われるような社会科,地歴科,公民科を目指していきたいと思いますので,何とぞよろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  ありがとうございました。それでは,本部会の進行は,これより土井主査にお願いをいたします。

【土井主査】  それでは,これより議事に入らせていただきます。
初めに会議の公開等に関する事項の確認をさせていただきます。本ワーキンググループの審議等につきましては,初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づきまして,原則公開により議事を進めさせていただきます。また,第6条に基づき,議事録を作成し,原則公開するものとして取り扱うこととさせていただきますので,よろしくお願いいたします。
なお,本日は報道関係者より会議の撮影及び録音の申出がございますので,これを許可しております。御承知おきください。
それでは,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【大内学校教育官】  配付資料の確認をさせていただきます。本日は,議事次第に記載しておりますとおり,資料1から資料12,その他机上に参考資料を配付させていただいております。不足等がございましたら,事務局にお申し付けください。
なお,机上に,お二人にお一つぐらいの間隔でなんですが,ファイルを置かせていただいておりまして,その中には,本ワーキンググループの審議に当たり参考となる審議会の答申等でございますとか,関連するデータを入れさせていただいております。
また,本部会の設置に係り,新たに中央教育審議会初等中等教育分科会の委員になられた先生方におかれましては,机上に辞令をお入れした封筒を置かせていただいておりますので,御確認をよろしくお願いいたします。

【土井主査】  よろしゅうございますでしょうか。
それでは,引き続きまして諮問,教育課程企画特別分科会論点整理,改訂の検討体制,今後のスケジュール等について,事務局から説明をお願いいたします。

【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。それでは,先生方,お手元資料4,資料5,それから資料6という,ちょっと分厚い冊子状のものがございますけれども,御用意いただければと思います。先生によっては何度も同じ説明になってしまうんですけれども,初めての方もいらっしゃいますので,改めて御説明の時間を頂くことをお許しください。
また,前半,机上が少し狭い中で恐縮ではありますけれども,少し御辛抱いただければと存じます。
それでは,資料4からになります。資料4,本ワーキングの位置付けでございますけれども,学校段階等別及び教科等別のワーキング等の設置についてということで,教育課程部会で御了承いただいたものでございます。
1枚おめくりいただきますと,検討体制とございまして,今回の諮問を受けた答申に向けての全体の御議論をおまとめいただく教育課程部会及び全体の方向性の御議論を頂きました教育課程企画特別部会の下に22の専門部会を設置いただいているところでございます。
本ワーキング,社会・地歴・公民ワーキングでございますけれども,左側から5番目辺りにございます。位置付けでございますけれども,各教科と同様に,各教科の議論に関する議論をお深めいただくことと共に,先ほど主査及び主任視学官からの冒頭挨拶にもございましたように,特別チームというものが設置されてございます。高等学校の地歴・公民科科目につきましては,今回新たな科目の設置ということが論点整理で御提示を頂いておりますので,これに向けて大きな骨格を御議論いただく特別チーム,それから,その方向性を踏まえた,更に詳細な専門的な御議論を頂く本ワーキングを,御議論をうまくつなぎながら進めさせていただくということで,事務局といたしましても両チームの議論がうまくつながりますように尽力をさせていただきたいと思ってございます。
今後のスケジュールでございまして,資料5になります。今後のスケジュール,昨年11月の諮問を受けまして,その後,教育課程企画特別部会で14回にわたり議論を重ねていただき,資料6にございます論点整理,全体的な今回,改訂の基本的方向性ということでお示しを頂いたものでございます。
これに基づきまして,先ほど御覧いただいた22の専門部会におきまして,それぞれのテーマごとに専門的な御検討を頂き,年度末から年度秋を目途に議論のお取りまとめを頂きたいと思ってございます。
28年というところにございますけれども,教育課程部会又は教育課程企画特別部会における議論を踏まえまして,審議のまとめをお取りまとめいただき,28年度内には中教審としての答申という流れでございます。
このスケジュールどおりに進みました場合,幼稚園は平成30年度から,小学校は32年度と2020年から,中学校は1年遅れて33年度から,高校は34年度から年次進行という形での新しい学習指導要領の実施という形になるということでございます。
それでは,資料6の論点整理の本文の方に移らせていただきたいと思います。
まず附箋で諮問というものがタグで張ってございますので,そのページを,資料6の諮問と書かれた箇所をお開きいただければと存じます。昨年11月に中教審に対してなされました諮問文がございます。
諮問文本体がございまして,1枚おめくりいただきますと,理由ということで記されてございます。
今の子供たち,これから誕生する子供たちが成人して社会で活躍する頃の社会の在り様を描きながら,様々な変化を乗り越え,新しい未来を切り拓いていく力として,どのような力が求められるのか。そのために教育課程については新たなやり方を構築していくことが必要であるということ。現行学習指導要領の様々な成果も踏まえながら,また一方で指摘されております課題も踏まえながら,理由の次のページにございますように,一人一人の可能性をより一層伸ばし,新しい時代にふさわしい学習指導要領の在り方を考えていく必要があるということ。様々なESDなどを含む新しい教育の成果なども踏まえつつ,何を教えるかという知識の質や量の改善はもちろんのこと,どのように学ぶかという学びの質や深まりを重視しながら,学びの成果として,どのような力が身に付いたかを考えていくということでございます。
具体的には3本の柱が示されてございまして,理由の2ページ目の下でございますけれども,「第一に」ということで,教育目標・内容と学習・指導方法,評価の在り方を一体として捉えた,新しい時代にふさわしい学習指導要領等の基本的な考え方ということが一つ目でございます。
この基本的な考え方につきましては,今御覧いただいている,この論点整理の冊子が基本的な考え方として,お取りまとめいただいた内容ということになってまいります。
そして,さらに,次のページをおめくりいただきまして,真ん中辺りでございますけれども,「第二に」ということで,そうした基本的な考え方などを踏まえつつ,新たな教科・科目の在り方,既存の教科・科目の見直しについてということでございます。これが,正に,これから各専門部会で議論を深めていただく中心的な内容になってこようかと存じます。
グローバル化する社会の中で,どのような力がということ,また二つ目には高等学校教育について,高大接続や様々なキャリア教育答申なども踏まえつつ,どのような方向性を考えていく必要があるかということ。
さらに,次のページには,少し具体的に示されてございますけれども,国民投票の投票権年齢,また選挙権年齢18歳以上となることなども踏まえ,18歳をもって「大人」として扱おうとする議論なども踏まえながら,国会及び社会の責任ある形成者となるために必要な力を実践的に身に付けるための科目の在り方,地歴科の見直しの在り方,より高度な思考・判断・表現を育成するための科目の在り方,総合的な学習の時間の在り方などなどについて具体的な御議論を頂きたいという諮問内容でございます。
そのほか,その下にございますように幼児教育の在り方,体育,保健体育,インクルーシブ教育システムなどなど,様々な社会の変化,これからの社会の在り方を踏まえた教科・科目の内容の見直しを,発達段階のつながり,各教科とのつながりを見据えながら御議論いただきたいということでございます。
また最後に「第三に」でございますように,今回,指導要領の具体的な在り方にとどまらず,その理念を具体的に実現するためには,どのような,例えばカリキュラム・マネジメント,評価方法,様々な条件整備等,こういうことが必要かということも併せて御議論いただきたい。こういった3本の柱が,今回の諮問内容ということでございます。
その基本的な方向性としておまとめいただいた論点整理の内容について,関係部分を中心に御紹介をさせていただきたいと思います。
資料6冒頭お戻りいただきまして,目次を開いた後,ページ数1というところを御覧いただければと存じます。
2030年の社会と子供たちの未来ということでございます。先ほどのスケジュールで御説明申し上げましたように,新しい学習指導要領,小学校からは2020年からの実施が予定されているところでございます。おおよそ10年に一度の改訂の見直しということを踏まえますと,おおよそ2030年頃まで,その役割を担うということ。2030年の社会と,更にその先の在り方を描きながら,新しい指導要領の在り方を考えていくということでございます。
今回,論点整理の中で具体的に教科や学校種等を超えて目指すべき方向性として御提示いただきましたのが,3ページの下にございます社会に開かれた教育課程ということでございます。
社会に開かれた教育課程,三つ御提示いただいておりますけれども,一つ目が3ページ目の下にございます,社会や世界の変化を受け止めながら,よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創ることを社会と共有していく教育課程であるということ。
それから4ページ目の上にございますように,これからの社会に求められる力を子供たちにしっかりと育んでいく。そうした資質・能力は何かということを明確化した上で,それをしっかりと子供たちに身に付けていく教育課程であるということ。
そして三つ目でございますけれども,教育課程や学校教育を学校内に閉じずに,目指すところを社会と共有しながら,地域の様々な資源も活用したりしながら,社会と一緒になって実現していく教育課程であること。
この三つを目指すところとして御提示を頂いているところでございます。
その上で5ページ目,前回改訂の成果と次期改訂に向けた課題というところでございます。前回改訂,現行学習指導要領でございますけれども,平成20年及び21年に実施をされまして,子供たちの生きる力の育成をより一層重視するという観点で見直しが行われたところでございます。
特に学力につきましては,知識・技能,思考力・判断力・表現力,それから主体的に学習に取り組む態度,この三つが学校教育法において明確化されたことも受けまして,この三つをバランスよく育むことを目指すということ。また,教科を超えまして言語活動を取り入れていくということなどが改訂の基本的な方針としてなされたところでございます。
そうしたことを踏まえまして,各学校の様々な真摯な取組が重ねられてきております。そして,その成果の一端が近年の様々な学力調査の結果としても表れてきていると考えているところでございます。
そうしたことを踏まえますれば,5ページ下にございますように,現行学習指導要領において重視されている学力の三要素のバランスのとれた育成や,各教科を貫く改善の視点として言語活動,体験活動を重視ということを取り入れたことについては,その成果を受け継ぎ,引き続き充実を図ることが重要であるということでございます。
一方で6ページ目上にございますように,我が国の子供たちについて,例えば自分の考えを判断の理由や根拠を示しながら述べたり,実験結果を分析して解釈・考察して説明したり,また社会参画の意識といったことについて国際的に見て総体的に低いことなどの課題も,これは長年の課題でございますけれども,引き続き指摘されているところでございます。
こうしたことを踏まえますれば,学力のみならず豊かな人間性,健やかな体といった生きる力の全体像,これを教育課程,更には各教科の授業へしっかりと浸透させ具体化していくこと,これが一層求められるのではないかということでございます。
6ページ目一番下にございますように,教科ということを超えて,教育課程の全体像を念頭に置いた教育活動の展開という観点から,更なる見直しを考えていくということ。
7ページ目上にございますように,これまで学習指導要領,知識や技能の内容に沿って教科等ごとには体系化されておりますけれども,今後は更に教育課程全体で子供にどういった力を育むのかという観点から,教科の本質的な意義と,更には教科の関係性,全体構造を明らかにしていく必要があるのではないかということでございます。
そうした観点から,7ページ目下にございますように,「何ができるようになるのか」。そして8ページ目上にございますような「何を学ぶのか」。そして,それを「どのように学ぶのか」という観点から,また「学ぶとはどのようなことか」「知識とは何か」といったような知見の蓄積も生かしながら,指導要領の在り方を考えていくということでございます。
こうした,どのような力を身に付けるのかという資質・能力についてでございますけれども,11ページ目下にございますように,変化の激しい社会,グローバル化が進展する社会の中で,幸せな人生を生きていくためにはどのような力が必要か。
12ページ目にございますように,様々な情報を受け止めて主体的に判断しながら,他者と一緒に生き,課題を解決していくための力。例えば情報活用能力でありますとか,クリティカル・シンキングでありますとか,統計の力,思考のための力,様々なことが指摘されているわけでございます。
また13ページ目にもございますように,グローバル化する社会の中で言語や文化に対する理解を深め,自国のことを語り継承し,また異文化を理解したような人と協働していくこと。自国のこと,グローバルなことの双方を捉えながら,社会の中で自ら問題を発見し解決していくことができるようということ。
こうした様々な資質・能力が考えられるわけでございますけれども,これを教育課程に落とし込んでいく,具体化していくことの中では,一定の構造として捉える必要があるのではないかということで,お手元資料6,附箋が1か所付いている箇所がございますけれども,その附箋の箇所をお開けいただければと存じます。
育成すべき資質・能力の三つの柱ということで,スライド番号27のページをおめくりいただいて,左下の三角形の図でございます。何を知っているか,何ができるか。知っていること・できることをどう使うか。そして,どのように社会,世界と関わり,よりよい人生を送るか。この三つの柱で資質・能力を捉えていくということ。
そして,これから各専門部会で御議論いただく際には,各教科において,この三つの柱,それぞれどのような資質・能力が重要かという整理をしていただき,それを全体の構造としてつなげていくことが重要ではないかという御提言を頂いているところでございます。
本文の方お戻りいただきまして13ページ目でございますけれども,こうした資質・能力を幼児教育から高等学校までを通じた見通しを持って,また14ページ目ございますように,通常の学級,通級による指導,特別支援学級,特別支援学校といった連続性のある「多様な学びの場」において十分な学びを確保していくという観点から,様々なつながりを配慮しながら考えていくということでございます。
15ページ目の下に教育課程の総体的構造の可視化ということがございますけれども,教科の中で育まれる力と実社会の中で活用できる汎用的な力の一つ双方を育成していくような教育課程の構造上の工夫ということ。
15ページ目一番下にございますように,各教科を学ぶ本質的な意義を捉え直すと共に,教科で育成される資質・能力の間の関連付けや体系化を図り全体像を整理していくという御提言を頂いているところでございます。
16ページ目から「アクティブ・ラーニング」の意義というところでございます。「アクティブ・ラーニング」につきましては,18ページ目の最初のマルにございますように,特定の型を普及させることではなく,下の三つ,「深い学び」,「対話的な学び」,「主体的な学び」という視点に立って,学び全体を改善し,子供の学びへの積極的関与と深い理解を促すような指導を実現していく。こういった観点から議論していくということでございます。
また19ページ,学習評価の在り方,20ページ目にございますように評価の三つの観点ということで御議論いただきたいということ。
また21ページ目にございますように,指導要領の理念を実現するためには様々な方策が必要だということで,「カリキュラム・マネジメント」の重要性。
また24ページ目からは,教員の養成・採用・研修の充実。ICTも含めた様々なインフラ環境等の整備についても御提言を頂いているところでございます。
ここまでが総論でございまして,26ページ目から各学校段階,教科等における改訂の具体的な方向性ということでございます。
26ページ目から幼児教育,小学校,中学校ということで,おまとめを頂いておりますけれども,本ワーキングに特に関係性が深いところといたしましては,30ページ目の高等学校というところでございます。
30ページ目の一番下にございますように,昨年12月に取りまとめられた高大接続答申なども踏まえながら,31ページ目上にございますように,「共通性の確保」と「多様性への対応」を軸に御議論をおまとめいただくということ。「共通性の確保」という観点からは,地歴科,公民科における必履修科目の在り方を御議論いただきたいということなどでございます。
具体的に各教科・科目の内容の見直しということが33ページ目から記されてございます。本ワーキング関連,35ページ目の社会,地歴,公民というところでございます。これまでの充実の内容。一方で,例えば主体的に社会の形成に参画しようとする態度の育成,資料から読み取った情報を基にして事象について考察,表現することなどについては,更なる充実が求められるということ。次期改訂に向けては,幼児期に育まれたいろいろな人との関わり等の基礎や,生活科をはじめとする低学年における学習において身に付けた資質・能力の上に,小・中・高を通じて育成すべき力を,三つの柱を通じて明確化していくということ。
特に高等学校教育につきましては,自分の参加により社会をよりよく変えられると考えている若者の割合が国際的に見て低いことなどを踏まえながら,課題解決的な学習を取り入れた授業が十分に行われていないことなども指摘されていることなども踏まえながら,そして二つ目のマルでございますけれども,これからの時代に求められる資質・能力も踏まえながら,高校生に必要な力,共通的に育むべき力を考えていく必要があるということ。
上記のような課題を踏まえますと,地歴科においては,共通必履修科目として「歴史総合(仮称)」,そして地理におきましては「地理総合(仮称)」,そしてまた公民科におきましても,御覧のような内容について実践的に育む「公共(仮称)」の設置を御議論いただくことが求められるということ。「公共(仮称)」についてはキャリア教育やインターンシップとの位置付けも御議論を頂くということ。
こうした科目の設置に当たって,様々用語の在り方等について御議論いただきたいということ。
また,こうした方向性を踏まえますと,37ページ目の上にございますように,小学校の社会科,中学校の社会科につきましても,併せて小・中・高を通じたつながりの中で見直しを図っていただきたいということをおまとめいただいているところでございます。
いずれにいたしましても,御覧いただいている冊子の48ページ目にございますように,各学校段階・教科等別の検討におきましては,この本冊子,論点整理を踏まえつつ,教科や学校段階に閉じた議論ではなく,カリキュラム全体としてどのような資質・能力を育成すべきか,その中で各教科等が果たすべき意義とは何かといった点を踏まえた上で検討を行うことが求められるということでございまして,この観点からは特に,先ほど御覧いただいた検討体制の中で,小学校部会,中学校部会,高校部会,それから総則・評価特別部会との関係性を密に図っていく必要があるということでございまして,この辺りの議論のつなぎを事務局としてもしっかり図らせていただきたいと考えているところでございます。
大変長くなりまして恐縮でございますけれども,私からは以上になります。ありがとうございます。

【土井主査】  ありがとうございました。多岐にわたるポイントについて要領よく御説明いただいたと思いますが,今の説明につきまして,特に質問等がございましたら,いかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
それでは,続きまして事務局から,まず本ワーキンググループにおける検討事項,社会・地理歴史・公民における目標及び指導内容等について説明を頂き,引き続いて「高等学校における地歴・公民科科目の在り方に関する特別チーム」の検討状況について御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  失礼をいたします。そうしましたら,まずは資料9から10につきまして私から御説明させていただきたいと思います。その後,高等学校の状況につきまして梶山から説明させていただきます。
まずは,お手元に資料9を御用意いただければと思います。社会・地理歴史・公民ワーキンググループにおける検討事項というペーパーになります。
こちらに示しております4点が,本ワーキンググループにおける検討事項ということで,各委員の先生方に御検討いただきたい事項となってございます。先ほどの大杉の説明の中にもありました資料6のピンク色の附箋が付いている箇所があったのではないかと思ってございますが,こちらのスライドの26の上の部分に示しておりますのが学習指導要領改訂の視点ということで,こちらに示してある図が,この検討事項に落とし込まれているとお考えいただけると分かりやすいかなと思ってございます。
具体的にはですけれども,まず一つ目,資料9に戻ります。まず1点目でございますけれども,社会・地理歴史・公民科を通じて育成すべき資質・能力についてということで,今ほど御説明いただいたように,本ワーキンググループにおいて検討いたします育成すべき資質・能力として当然,社会科,地理歴史科,公民科,これらを通した形での育成すべき力はどういったものであるかをはっきりさていく,具体化させていただきたいということでございます。
この中に大きく五つ中点が示しておるんですけれども,まず初めに,社会・地理歴史・公民科を学ぶ本質的な意義や他教科との関係性についてということで,社会科,地理歴史科,公民科でなければ育成することができない,社会科,地理歴史科,公民科において育成することが望まれている力は一体どんな力なんだろうかということを是非整理を頂きたいというのが1点目の中点になります。
また併せて他教科との関連性ということでございまして,例えば環境に関しては理科でありますとか,経済の観点で言えば算数,数学の教科等,それから消費者教育などもございますけれども,そういったものであれば家庭科等との関連する教科との関わり方,そういったものも出てまいるかと思います。こういった点についての御検討をお願いしたいというのが,まず一つ目でございます。
2点目でございますけれども,三つの柱に沿った育成すべき資質・能力の明確化についてということで,これも先ほど大杉から説明ありましたとおりⅰ,ⅱ,ⅲということでローマ数字を示しておりますが,何を知っているか,何ができるかということで,個別の知識や技能はどんなものであるのかという点。それから知っていること・できることをどう使っていくか。思考力・判断力・表現力等の視点。更には3点目として,どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか。学びに向かう力,人間性。この三つの柱というのが,いわゆる今回の論点整理に示しております育成すべき資質・能力の柱でございますので,これに沿った形で社会科としてどういう力を付けさせるかと,こういうことについて明確化を図っていただきたいということでございます。
特にローマ数字ⅱの部分と関わりまして,どのような思考力・判断力・表現力等,事象を捉える教科・科目特有の視点や考え方,これをどう育むかということについても併せて御検討いただきたい。
特に社会科につきましては,社会的な見方や考え方というようなものですとか,それから地理的な見方や考え方,歴史的思考力というような,それぞれ教科固有の,あるいは学ぶべき事項に関わって固有の見方や考え方があるかと思います。こういったものを,その育成すべき資質・能力とどういう関係にあるのか,どう整理していくべきか,こういった点についても,特にローマ数字2点目,思考力・判断力・表現力の観点から少し整理を頂きたいと考えております。
今申し上げましたことが,資料6で参りますと,資料6のスライドの26で申し上げると,学習指導要領改訂の視点とあるんですけれども,ちょうど上側に示している,何ができるようになるかというところがここのところに当たっているということでございます。
また,ちょっと行ったり戻ったり恐縮なんですが,資料9でございますけれども,資料9の1の四つ目の中点です。四つ目の中点で,幼稚園・小学校・中学校・高等学校を通じた社会・地理歴史科・公民科において育成すべき資質・能力及び系統性ということで,先ほどの論点整理の説明の中にもありましたが,例えば小・中学校における世界に関する学習であるとか,政治的教養を育むための教育の取扱い,今次の,今現在検討しております中教審において,高等学校の世界史の必修を見直しをしまして,「歴史総合(仮称)」ということで,日本史と世界史の内容を融合したような内容を新設する科目の検討を3として出しておるわけですけれども,そのことに伴って,例えば中学校や小学校段階において,世界に関する学習内容を一体どう扱うべきかといったことでありますとか,これも先ほど御説明いただきましたが,選挙権年齢の引下げに伴いまして,18歳で有権者としての権利を実施することができるような場合に,果たして,では18歳までにどういう力を付けさせるのかという議論と併せて,高等学校の前に小・中学校の段階で,どういった政治的教養を高めるような力を付けさせるべきか,あるいはどういう学習活動を展開すべきかという点も含めて,この小・中・高等学校のワーキンググループで御検討いただきたいということで示させていただいているのが1の4点目の中点でございます。
それから1の最後の5点目の中点でございますけれども,高等学校における新設科目等の具体的な内容についてということで,これは後ほど別に設置をいたしております高等学校の地理歴史・公民の関係の特別チームの検討状況の説明があると思いますので,こちらの検討を受けまして,本ワーキンググループにおいて更に具体的な内容を,特別チームとの関係で明確にしていくというのが,このワーキンググループに課せられているミッションでもございます。
こういった点が,一つ目の育成すべき資質・能力と関わりまして示してある事項ということでございます。
それから2点目でございますけれども,「アクティブ・ラーニング」の三つの視点,下の方に米を付したものが示しております。先ほどもこれも御説明ありましたけれども,この三つの視点を踏まえた,資質・能力の育成のために重視すべき社会科,地理歴史科,公民科の指導等の改善・充実ということで,「アクティブ・ラーニング」の視点を踏まえた形での指導の充実の在り方をどう考えるべきかというのが2点目でございます。
また3点目といたしまして,その際の評価の在り方,新しい学び方,学習・指導の在り方を受けての評価の在り方をどう考えるべきかというのが3点目。
さらに,4点目といたしまして,必要な支援,特別支援教育の観点から支援等が必要なケースも増えてきてございますので,こういった点も含めまして,あるいは先ほど申し上げました高等学校の新設する科目への対応という観点からの教員の養成あるいは採用・研修というようなことも含めての条件整備等について御議論いただきたいのが4点目ということでございます。
これが先ほど資料6のスライドの26,附箋の付しておるところの上の方のスライドですけれども,1点目が,先ほど申し上げましたように,上段に必要となる資質・能力の育成というのが示されておりますし,また左下の方の何を学ぶかで,新設する教科・科目の目標・内容の見直しということも示されてございます。また具体の内容についても,このワーキングにおいて検討していただくということ。
それから,右下の方でございますけれども,「アクティブ・ラーニング」の視点からの授業改善。更に真ん中の部分において学習評価の充実という形で示させていただいておるような構造になっております。
続きまして資料10でございます。資料10は現行の指導要領の状況についてまとめた資料でございまして,ちょっと時間の関係ではしょりながらの説明になります。恐縮でございますけれども,資料10を御用意いただければと思います。
資料10のスライドの1の1ページ目のスライドの下の方でございますけれども,指導要領の変遷ということで,これまで6度にわたりまして学習指導要領改訂をされてきてございます。現行の指導要領につきましては,先ほど説明のありましたとおり,2ページ目になりますけれども,平成10年,11年,今から見ると二つ前になるんですが,平成10年から11年に改訂をされました指導要領の「生きる力」を育むということを受けまして,また学校教育法の改正ということで右側に示しておりますけれども,「生きる力」の三要素がしっかりと規定をされた,確かな学力,豊かな心,健やかな体と。「生きる力」の三要素がしっかりと示されたことを受け,さらに,その確かな学力ということで,確かな学力の中に知識・技能,思考力・判断力・表現力,それから主体的に取り組む態度という形で,「学力の三要素」が規定されております。
これを受けまして,現行の指導要領では,こういった「生きる力」の理念を継承し,「ゆとり」か「詰め込み」ではなく,知・徳・体のバランスのとれた力を育成しましょうという形での構成がなされているということでございます。
2ページ目の下段,それから3ページ目の上段は,小・中学校における学習指導要領の今の6度にわたる改訂の経緯をお示ししてございます。後ほど御覧いただければと思います。
また3ページ目の下段です。社会科,地理歴史科,公民科に関する指導要領の改訂の経緯ということで,青枠で囲われているところでございますけれども,社会科,地理歴史科,公民科の改善の基本方針ということで,現行においては多面的・多角的に考察し公正に判断する能力と態度でありますとか,社会的な見方や考え方を成長させることを一層重視した改訂が図られているということでございます。
また2点目でございますけれども,習得すべき知識や概念の明確化,必要な情報の読み取り,社会的事象の意味や意義の解釈,それから事象間の関連の説明,あるいは自分の考えを論述するような言語活動の充実という点にも力を置いて改訂がなされております。
更には,我が国の国土や歴史に対する愛情を育み国際社会で主体的に生きるということ,あるいは持続可能な社会の実現,公共的な事柄に自ら参画していく資質・能力の育成と。これらの点を重視して,下段以降に示しております,それから次ページにわたりまして示しております小・中・高等学校の社会科,地理歴史科,公民科の改善がなされているということでございます。
4ページ目の下の段になります。授業イメージということで,小学校社会科における重視する授業のイメージの一つとして,問題解決的な学習ということを今次の改訂において力を入れてございます。
具体的にはマル1のところからですけれども,「社会的事象と資料などを通して出合う」という,資料を通し事実を集め,更には学習課題を設定し,調べたり話し合ったりする言語活動を通して子供たち自身が結論をまとめ上げていくというような学習を通して,事実を基に言語活動を通じて,社会の仕組みや意義を,実感を持って理解をさせるような学習活動が小学校において今現在行われているということでございます。
また5ページ目ですけれども,上段の方になります。これは中学校の地理的分野の内容でございまして,様々な事象の地図を重ね合わせて関係性を読み取り話し合う事例ということで,「身近な地域の調査」の単元において,コンビニエンス・ストアとスーパーマーケット,駅でありますとか,駅の乗降客数であるとか等,複数の分布図を生徒がコンピュータ上で重ね合わせて情報を読み取ると。立地の仕組みに気付くであるとか,それから施設の立地条件はどういうものがあるのかを考えさせる,更には新たな情報を引き出すというような取組が中学校の地理的分野では行われております。
また,その下の方でございますけれども,下のスライドとして,歴史的分野でございます。時代の特色を捉えるための問いを工夫して立てているような例。明治時代とはどういう時代であったかを,何が変わったのか,何が変化したのかということであるとか,なぜそのような国づくりを目指したのか,どういう背景があって,何が原因でそういうことを考えたのかという問いを工夫して,毎時の授業の中で常に意識をさせているような例でございますとか,次の6ページになりますけれども,6ページ目の上段のところで,中学校の公民的分野の例として,知識を活用して特色を説明するような事例の中で,実際に自分の考えをまずは整理をさせ,その後に賛成できる他者の考え,あるいは賛成できない他者の考えを議論の後に記入をさせると。そういう活動を通じまして論理的に説明する力を付けさせることでありますとか,それから様々な根拠に基づいて,いろいろな考え方に触れながら,複数あるような考え方の中から選択するような力を付けさせる。あるいは判断したり合意を形成するような力を付けさせていくような学習活動が今現在行われているということでございます。
7ページ以降でございますけれども,今現在整理されている,課題も含めての現状ということで,こちらの資料,8月の論点整理の際に示させていただいているものと同様でございます。本日の資料6にも掲載されておりますけれども,例えば小・中学校の社会科でありましたら,情報を基に考察したり表現したりする力にやや課題があるとか,高等学校の歴史教育に関する現状としては,近現代史の学習の定着状況が不十分であるとか,そういったことを整理させていただいているものでございます。
また9ページ以降でございますけれども,社会科,地理歴史科,公民科の目標ということで,教科目標と学年目標・分野目標の抜粋版を御用意させていただいております。本日のこのワーキンググループの検討事項,特に育成すべき資質・能力に関わりまして,目標の規定の中に,そういった育成すべき資質あるいは能力が含まれてございます。御議論する際に,こういったものを参考にしていただければということでございます。
資料10につきましては以上でございます。
それから資料11,資料12でございますけれども,説明は省略させていただきます。資料11につきましては,今の関係する教科の内容,指導事項の抜粋を示したもの,一覧表でございますけれども,こちらを御用意しております。また,資料12でございますが,先ほど御説明をいたしましたとおり,学習指導要領で世界に関する部分,あるいは政治的な教養を高めるという観点から,関連する記述の抜粋を御用意させていただいております。
本小・中・高等学校の社会・地歴・公民のワーキンググループにおきまして,先ほどの資料9に基づくような検討事項についての御検討をよろしくお願いしたいと思います。

【梶山主任視学官】  それでは引き続き私から,高等学校における新科目の検討につきまして御説明をさせていただければと思います。資料8-1を御覧ください。
資料8-1の26ページ目を,申し訳ございませんが,御覧いただければと思います。この資料8-1が前回の特別チームで配られました資料の特にこの部分というものを全部ホチキス留めさせていただいたところでございますので,26ページ以降を簡単に御説明させていただきたいと思っております。よろしゅうございますでしょうか。
26ページに,その特別チームにおける検討事項というものを示しております。1ポツ,2ポツ,3ポツ,4ポツということで,四つ大きなことを考えておりまして,1ポツが新しい科目の内容の検討について御検討いただきたいということ。2ポツ目が,新しい科目を置いた際に,それとほかの科目との関係について御検討いただきたいということ。例えば「歴史総合(仮称)」と「地理総合(仮称)」の関係でありましたり,今いわゆるA科目,B科目と呼ばれているものがございますが,そのように同じような必履修科目とそうではない科目を置くことを想定しておりますが,その関係をどう考えていくのかという話。3ポツといたしまして,高等学校と小・中に関してどう考えていくかという話。それから4ポツといたしまして,そのための条件的なものについて御検討いただきたいと。このようなところを特別チームにお願いしているところでございます。
次の27ページを御覧いただければと思います。各科目ごとに,このようなところを特にというところで,具体的に御説明させていただければと思っております。
先ほど申し上げました1から4に関して,「歴史総合(仮称)」でブレークダウンしたものが,上にあります9の2の1から7の項目でございます。「歴史総合(仮称)」につきましては27ページの下を御覧いただければと思いますが,この検討素案というものが,先ほどの論点整理に併せて公表されております。論点整理の本文なども踏まえて,大きな方向性として,このようにしてはどうかというところが示されているところでございます。
課題のところを御覧いただければと思いますが,マル1にありますように,近現代の学習の定着状況がいまいちではないかというところ。マル2のところで,世界史か日本史の二者択一ではないのではないかというところ。それからマル3というところで,調べたことを発表させるような活動がいまいちできていないのではないかと。こういうところから資質や能力を,このようなマルで書いております必要な育むために,新科目のイメージを一番右に書いております。自国のこと,グローバルなことが影響し合ったり,つながったりする歴史の諸相を学ぶ科目を作ろうというところでございます。
それに当たって,2番目のマルのところを御覧いただければと思います。先ほど来,資質や能力を育むという意味で,思考力・判断力・表現力などを育むことが非常に重要だというところがございますが,それに当たって,歴史の見方・考え方を重視して考えていく必要があるのではないかと考えているところでございます。
2番目でなく3番目でございます。申し訳ございません。3番目のところで,歴史に当たっては,やはり「継続と変化」でありましたり,「因果と結果」,それから「類似と差異」などの歴史の考察を促すような概念を重視して指導を行っている,授業を行っていくことが重要なのではないかというところが,こちらに示されておるところでございまして,現在こういうところでいいのかどうかというところ,これを踏まえて何か追加することであったり,こういうところはこういうことだということを深く考えていくと。このようなところが今必要になっているんだと考えております。
また,2番目でございます。マルの2番目のところに関しましては,恐縮でございます,マルが付いている2番目の下線部にありますけれども,現代的な諸課題を歴史的に考察するためには歴史の転換点というもの,こういうものをつかまえた学習を中心にすることがいいのではないかというところが示されているところでございます。
現在,学習指導要領においても,いわゆる何々科みたいなところが示されているところが,この9-2の上のところを御覧いただければと思いますが,近代化,大衆化,グローバル化,このようなところが近現代においては大きな転換点となるのではないかというところが,現行の学習指導要領でも大きな意味を占めているところでございます。このようなところで,その新しい科目も見ていっていいのかどうかというところ。
それに関連して,近現代をどの程度の範囲で学習対象となる時代として考えていけばいいのかということ。この点についても御検討が必要であると思っているところでございます。
それから,上のマル3でございますが,日本と世界の動きの関連付けというところで,先ほど申し上げましたところでございますが,世界史か日本史の二者択一というわけではなくて,様々なところが影響し合ったり,つながったりするところでございますので,その関係性,それから全体としての日本と世界の動きをどう関連付けていくのかということ。これらについて特に御検討いただき,4以降につきましては,先ほど御説明した内容を「歴史総合(仮称)」においても御検討いただくということをお願いしているところでございます。
それから,次の28ページを御覧いただければと思っております。「地理総合(仮称)」に関する御検討ということでお願いしているところでございます。「地理総合(仮称)」につきましても,まず下の検討素案というところを御覧いただければと思いますが,課題としまして,地理的な技能を持たずに高校卒業する者が多いということ。それから,防災であったり,GISなどを利用できるスキルの育成。防災に関する教育とかそういうところに重要であるという御指摘。それから,観察や調査,様々なこのような体験的な授業等が十分に行われていないというところ。このような御指摘があるわけでございます。
そのような御指摘を踏まえ,育むべき資質や能力を踏まえ,新科目のイメージとして,持続可能な社会づくりに必須となる地球規模の諸課題や,地域課題を解決する力を育む科目として「地理総合(仮称)」を作ると,こういうところが示されているところでございます。
これに当たって御検討いただきたい点に関しましては,また2番目のところでございますが,位置と分布,場所,地域などの概念を捉える地理的な見方や考え方を育成すると,このようなところが示されているところでございます。
これに関しましては,29ページの上のところを御覧いただければと思っております。先ほど歴史のところで因果とかそういうところも御説明しましたが,地理的なものを考えるに当たっての中心的な概念をどうするかというに当たって,下の参考にありますように,国際的な地理関係の学会において既に,下のポツにありますように,「位置と分布」「場所」などのように,このようなところが子供たちに理解してほしい概念なんだよというところが,おおむね合意されているようでございます。
それを踏まえまして,現行の学習指導要領の解説においても,上のaからfまでありますように,どこに,どのようなものが,どのように広がっているかという地理的な見方や考え方と,こういうものをベースにして地理をやっていこうというところが示されているところでございます。
前の28ページに戻っていただいて,恐縮でございますが,先ほどの上にありますように,歴史でも御紹介いたしましたが,マル1にありますように,どのような思考力・判断力を育むかに当たって,今見えておりますような地理的な見方・考え方,こういうものでいいのか,又は変えていく必要があるのかどうかということ。こういうことについて御議論が必要だと考えておるところでございます。
それからマル2でございます。地理教育における今日的要請への対応ということで,先ほどの課題でありました資質や能力のところ,こういうところで言われているところでございますが,GISであったりESD,それからグローバル化,防災,このようなところにどう対応していくのか。また,これ以外のところでも,これはというところがありましたら,今日的な要請というところで育むべき資質や能力を考えつつ,そのような内容に対応していく必要があると考えておりまして,その御議論を頂ければと思っております。
また3以降に関しましては,先ほどの最初に御説明したように他教科との関係というところでございますので,こちらについても御検討いただきたいと思っております。
それから30ページ以降は,先ほど「地理総合(仮称)」における実際の具体的な指導の例を置かせていただいております。こちら,紹介は省かせていただきますけれども,GISなんかを使って,このような指導をして,このような見方・考え方を使って指導を行っていく例として付けさせていただいていますので,これも後ほど御覧いただければと思っております。
それから,35ページを御覧いただければと思っております。「公共(仮称)」のところでございます。
「公共(仮称)」についても御検討を頂きたいと思っているところでございます。こちらも下の検討素案というものを御覧いただければと思いますが,課題にありますように,積極的に社会参加する意欲が国際的に見て低いというようなこと。現代社会の諸課題について,その理論や概念の理解,こういうところに課題があるのではないかと。先ほどありますような課題解決的な学習というところ。それからキャリア教育の中核ということも考えていかなくてはいけないのではないかと。
このような課題の中で,新科目のイメージというところで,花びらみたいな感じになっているところでございますが,「国家・社会の形成者として,必要な知識を基盤として選択・判断の基準を形成し」と,このように選択・判断の基準をまず考えていって,それを使って主体的な選択,それから判断を行い,他者と協働しながら様々な課題を解決していくために必要な力を,それぞれの主体というところになるに当たって考えていくと。このようなところが検討素案が言われているところでございます。
こういうところから,上にありますマル1にありますように,例のところにある,様々な課題を捉え,考察するための基準となる概念や理論を,古今東西の知的蓄積を通して習得する力というところが示されているところでございます。この力というのは,では具体的に何なんだというところ,どのような概念であったり理論が見ていくことが必要になるのかというところ,このようなことについて御検討をお願いしたいということを思っているところでございます。
それからマル2で,そのようなところを踏まえて,先ほど申し上げましたような様々な課題を解決するために必要な力を育んでいくわけでございますが,どのような課題に対して,そのようなところに取り上げていくのか。例を様々挙げておりますし,先ほど花のところにも様々なところを挙げていますが,このようなところの中で,どこをとのように取り上げていくかというところ,こちらについて御検討いただきたいと考えているところでございます。
マル3以降につきましては,個別の先ほど申し上げました,済みません,前と共通するようなところで省かせていただきますけれども,今御紹介いただきました検討素案を踏まえて,どのような概念でありましたり,見方・考え方を,それぞれのところで考えていったらいいのかということであったり,内容についてどのように考えていったらいいのかと。このようなことについて,特別チームの方で御議論をお願いしているところでございます。
資料の8-2を御覧いただければと思います。基本的に11月12日に第1回目の会議を行わせていただきました。今回のこの会議につきましてはキックオフということもありまして,それぞれのことにつきまして,今申し上げたものに関して総括的なお話を自由に頂いたところでございます。
例えば「歴史総合(仮称)」ということに行きますと,2ページ目を御覧いただければと思いますが,一番上にあります,転換の軸とは,歴史を動かすエンジンと理解したということで,転換の軸がそのようなものであって,産業化ということが捉えやすいと思うが,例示された捉え方もあるだろう。このような御議論も頂いておるところでございます。
また,2ページ目の下から二つ目のマルも御覧いただければと思います。先ほど来申し上げているところでございますが,子供たちに何を身に付けさせたいかを考えることが必要であって,高等学校の授業はどうしても先生が講義されることが多いので,子供たちが調べたり,疑問を出し合ったりして一定の何かをつかんでくる,学んでくることが大切だと。このようなことを忘れずに議論にも必要があるんだと,このようなところを頂いているところでございます。
また,「地理総合(仮称)」についても一つ御紹介いたしますと,4ページ目を御覧いただければと思いますが,「地理総合(仮称)」については,グローバル,ローカルとか,そのような議論でありましたり,小・中学校の連携の話があったところでございます。3番目のマルのところを御覧いただければと思います。GISというところ,今回一つの大きなターゲットとしてあるわけでございますが,技術そのものというよりも,古い地図に新しい地図を重ね合わせると見えるものが分かるという捉え方。教員も受け入れやすくなるというような観点。どのようなことをやることによってGISを教えていくかと,こういうところの観点からお話を頂いているのではないかと思っております。
それから「公共(仮称)」についてが,5ページ以降に御議論として頂いているところでございます。「公共(仮称)」というところで,一番上にありますように,他科目との連続性をどう考えていくかというところもございますし,5ページ目の一番下を御覧いただければと思いますが,「アクティブ・ラーニング」というところに関して,その共有が非常に重要なんだ。その3行目にありますように,正解が一つに定まらない学び,学習したことを活用して解決策を考える学びと,こういう学習活動と,こういうことを公民,新しい「公共(仮称)」なんかでも重視していく必要があるということ。
このような,先ほど申し上げました議論というところにとどまらず,1回目でございますので,幅広い議論を頂いたところでございます。この特別チームにおける御検討いただきたい内容,それから主な意見に関して御説明申し上げました。
以上でございます。

【土井主査】  どうもありがとうございました。事務局から今回の諮問の趣旨,これまでの特別部会等におけます議論の取りまとめ状況,あるいは我々のミッション等につきまして,まとめて御説明を頂きました。
この後,委員の皆様に意見交換を行っていただくことになりますが,その議事の進め方について,私から御提案をさせていただければと思います。御覧のとおり,本ワーキング,総勢40名でございまして,検討事項も高等学校の地歴科,公民科の新設科目を含めて大変多くございます。
今回の教育課程の見直しに当たりましては,育成すべき資質・能力を明確にする観点からも小・中・高等学校を一貫した議論が必要と考えておりますが,一方で,高等学校における新設科目についての検討など,より深く具体的に御議論いただく必要もございます。
このため,本日お配りしている資料のうち,資料番号がないものでございますが,「各委員のみなさまへ」という表題でお示ししておりますとおり,二つの小グループに分かれて議論を行っていただいてはどうかと考えております。
具体的には,小・中学校社会科及び小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力を中心に御議論をお願いしたい委員の先生方,それから高等学校地理歴史科,公民科を中心に御議論をお願いしたい先生方に分かれていただきまして,残り1時間半程度,それぞれで御議論を進めていただければと思っております。
その際,小・中学校の社会科及び小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力を中心に御議論をお願いする小グループの進行につきましては,館委員にお願いをしたいと思います。
本日もそういう形で進行させていただきますが,次回以降も議題に応じて,今回のような小グループに分かれていただいたり,専門的な知見を有する委員の皆様に適宜お集まりいただいて,集中的に議論したり,情報は十分に共有したりするなど連携を密にして,柔軟な形で議論を深めることができればと思っております。また,議題や議論に応じて40名の本日のような本ワーキンググループ全体で会議を開催するのが適当な場合には,そのようにさせていただきたいと思います。
各委員の皆様方には,次回以降の会議におきまして,開催案内と共に出席依頼等をさせていただくことになりますが,その際,御希望がございましたらほかのグループへの出席も可能と伺っておりますので,その場合は事務局へお申し付けいただければと思います。
このような議事の進め方でいかがでございましょうか。ありがとうございます。
それでは,本ワーキンググループ全体の議事は,ひとまずここまでとさせていただきまして,二つの小グループに分かれて,引き続き御議論をお願いしたいと思います。
大変恐縮でございますが,この後,小・中学校の社会科及び小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力を中心に御議論をお願いしたい委員につきましては,4階のシャトレへお荷物をお持ちいただいて御移動いただくことになりますので,よろしくお願いいたします。
事務局から何かございますでしょうか。

【大内学校教育官】  ありがとうございました。御移動いただく委員の先生方におかれましては,係の者が御案内をさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いします。また,移動に当たりましては,机上の資料は置いておいて結構でございます。御自身の封筒に入っております配付資料,こちらのみをお持ちいただきまして,筆記用具等も移動先にございますので,そのまま置きおいていただければと思います。
それから,傍聴の皆様方に御連絡だけさせていただきます。傍聴の皆様方の御移動につきましては,委員の先生方の終了後ということにさせていただければと思いますので,こちらの方からお声掛けするまで,しばらくそのままお待ちいただければと思います。
以上でございます。

【土井主査】  それでは,御移動の方,よろしくお願いいたします。


<高等学校地理歴史科、公民科に関するグループの議論>

【土井主査】  それでは,高等学校地歴科・公民科に関するグループの議論を始めさせていただきます。
本日は第1回目でございまして,初めての顔合わせということもございますので,皆様から自由に御意見を頂きたいと思います。先ほど説明のありました教育課程企画特別部会論点整理や本ワーキンググループにおける検討事項を踏まえて意見交換をお願いすることになりますけれども,委員の先生方の御専門に関連して,特に検討事項に関して日ごろからお考えになっていること,あるいは取り組んでこられたことなどがあれば自由に御発言いただいて結構かと存じます。
御発言希望される場合には,お手元の名札,あらかじめ,こうして立てておいていただきますと,私の方で適宜拝見をして指名をさせていただくことにさせていただきます。また,発言が終わりましたら,元に戻していただきますようお願いいたします。
本日お忙しい中,20名余りの先生方に御出席を頂いておりますので,できるだけ全ての先生に御発言を頂きたいと考えております。限られた時間でございますので,大変恐縮でございますが,一人当たり3分程度ぐらいを目安にして御発言を頂くよう,よろしくお願いいたします。少々延びても構いませんけれども,少し御発言が長引いているかなというときには,司会としてお願いを差し挟むことがあるかもしれません。そのときは,どうか御容赦ください。
それでは,自由に御発言を頂ければと思いますので,どなたからでも御希望があれば御発言ください。いかがでしょうか。それでは高木委員。

【高木委員】  神戸大附属の高木です。よろしくお願いします。
本校では研究開発校の指定を受けまして,地理基礎,歴史基礎という科目の開発を行っております。ただし,4年間の3年目になっていますので,その開発に伴って,少し本校で考えていることということを御紹介させてもらうんですけれども,まだ未熟な点があるかもしれませんが,御容赦ください。
本校の地理基礎,歴史基礎の開発においては,学習内容と資質・能力の両方の育成のバランスがとれた育成ということを重視しています。そのバランスをとれた育成をするために,生徒の学習活動,特に生徒参加型の学習活動を重視するという科目で今,研究開発をしております。新しい「地理総合(仮称)」,「歴史総合(仮称)」も,そのような科目になればいいかなと思っています。
そこで,お願いなんですけれども,学習活動の段階として,例えば資料からの読み取り,資料から知識を読み取る場面,それから読み取った知識を概念化する場面,概念化した知識を更に違う事象,知識に当てはめる場面,それからそのような形で,更に概念を再構成する場面とか,学習する場面には段階があると思うんですけれども。そのどの段階において学力的なものが育成されているのか,それから,どのような段階において資質や能力的なものが育成されているのか,それぞれあると思うんですけれども,資質や能力が大事な科目になる以上は,そのような学習活動のしやすい構成になればいいと思っています。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございました。
ほか,いかがでしょうか。御遠慮なく御発言いただければと思いますが,いかがでしょうか。それでは磯谷委員。

【磯谷委員】  愛知県立岡崎高校の磯谷でございます。世界史を中心に教えてまいっております。それで,やはり歴史科目においては,通史があるわけですけれども,その通史が一次資料から成り立っているということを何か意識させたいなと思っております。
私の実践といたしましては,通史を教えながら,風刺画とか。ヨーロッパの近現代ですと,風刺画がいろいろありますものですから,そういったものを見せて,生徒にいろいろなことを聞くわけですけれども,必ずしも,その資料。私にとっては通史を補強する資料を出したつもりでも,生徒はいろいろなことを言いまして,必ずしも私の言ったとおりにならないと。あるいは,いろいろな近現代では条約等もあるわけですけれども,その条約をコピーして生徒に渡したりすると,通史のことを教えたのに全然条約が解読できないということもあるわけです。
そんなことから,やはり生徒に一次資料を見せながら,いろいろな意見を生徒が議論しながら,何か通史に近づいていくような,そんな授業をやりたいなと思っております。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。
お二人,現場の先生方から授業の工夫等を伺わせていただきましたが,ほか,いかがでしょうか。頼住委員。

【頼住委員】  東京大学の頼住と申します。よろしくお願いいたします。先ほどは遅参いたしまして大変申し訳ございませんでした。
今お二人の先生から資料の読み取り,第一資料の読み取りが大切だということを御指摘いただきまして,私,倫理学分野でございますけれども,正にそのとおりだなと思いながら読んでおりました。
ただ,哲学関係,倫理学関係の資料と申しますのは,かなり硬い文章でありますので,その辺り見せ方を生徒たちが興味持つような形で,いろいろな形で見せていくことは大切だと思いますけれども,一次資料ということを私たちも大切にしたいなと思っております。
ちょっと気になったのが,特別チームの方で,資料8-2のところなんですけれども,8-2の一番最後のページですかね。6ページで,一番最後のマルのところで,これまでの文献を基にした教育は興味持たれないと書かれていて,応用分野が大切ではないかと書かれております。確かにこういうことは言えますし,大変貴重な御指摘だとも思いますけれども,興味を持つような,一次資料の興味をもっと上げていくような,そういう工夫もできるかなと思いますし,応用を考えるためには基本が大切ですので,やはり両方,両面必要かなと,私自身は思っております。
以上でございます。よろしくお願いいたします。

【土井主査】  ありがとうございました。
ほか,いかがでしょうか。上村委員。

【上村委員】  都立墨田川高校の校長の上村でございます。私は専門は政治経済なんですが,今の話とも絡むんですが,「公共(仮称)」の場合に公民的資質を身に付けるということで様々,具体的な態度形成であるとか,スキルを身に付けるとか,そういうところにつなげるということが重要になっております。
前回というか,この特別チームの中にも契約の話が例として出ております。実は契約という話,今まで消費者教育等でやってきているわけなんですが,大学では民法で,かなり法理論的なことを分かった上でやらないと,非常に底の浅いものになってしまうおそれがあるわけです。恐らく今の一次資料の倫理の問題とも絡むと思うんですけれども。要するに,理論的なこと,原理的なことをどこまでしっかりやって,そしてどういうスキルを身に付けさせるかということのバランスの整理をしっかりやることが大事なんじゃないかと思っております。
以上でございます。

【土井主査】  どうもありがとうございました。基礎・基本をどこまでしっかりやるかという問題と現代的課題への対応といいますか,そういう問題をどう子供たちに考えさせるかという,そのバランスをどうとるかという,基本に関わる非常に重要な御指摘だと思います。
そうしたら岡崎委員,お願いします。

【岡崎委員】  失礼いたします。金融広報中央委員会の岡崎と申します。私どもではお金や金融,経済について学ぶことを通じて,よりよい生活やよりよい社会を作っていく態度の育成に取り組んでおります。全国都道府県ごとに委員会がございまして,教育委員会や,こちらに御列席の先生方を含む様々な先生方のお力を頂きながら,こういった教育の支援に取り組んでおります。
昨年度を通じて内容の分析をしまして,現在の学習指導要領に関連する内容が多岐にわたり含まれているということを一覧の表にして公表し,全国にお配りしたりしております。全ての教科に関連する内容がございますが,中心的な教科としましては社会,公民,家庭科かと考えております。家庭科におきまして近年,生活設計の重視が行われ,この分野との関連でも重要性が増しております。
公民科,特に高等学校の「政治・経済」ではマクロ的な視点から扱うということが定められていることや,内容が非常に豊富で多くのことを学んでいただかなければならないということとも関連しているかと思いますけれども,生徒さん一人一人が自分たちの人生,あるいは生活,人生に関わる社会をどうしていくかということについて,よく分かり,よく考え,また発言したり行動していく力が付いているのかどうかというところについては,もっともっと強化していきたいと思っているところでございます。
まして18歳選挙年齢ということがあります。社会の大きな変化に際して若者たちは自分たちの考えを主張していかなければいけないんですけれども,その力が付いているのかというところにつきまして,今回の改訂において重視していただければと考えているところでございます。

【土井主査】  ありがとうございます。
それでは,浅川委員。

【浅川委員】  埼玉県立浦和第一女子高校の浅川と申します。三十数年にわたって地理を教えているんですけれども,私は,この検討事項の4について必要な支援,条件整備について,ちょっとお話をできればと思います。
いろいろなことがございまして,「地理総合(仮称)」,それから「歴史総合(仮称)」という形で,それぞれ必修科目が置かれるような状況になってきているわけですけれども,現場の方を見ますと,例えば地歴の中では,地理が歴史を教えるとか,歴史が地理を教えるという,そういった相互乗り入れが余りないといいますか,そういう状況があります。ただ,地理は歴史の方を相互乗り入れ。必修科目ではございませんので,歴史をやることが多いんですけれども,歴史の先生方,特に日本史とか世界史とか履修者も多いものですから,そちらの方を中心に教えて,地理を教えられる機会はそんなに多くないだろうし。いろいろな調査を見ますと,歴史の先生方は地理を教えるのは,まあ,嫌だとは言いませんけれども,なかなかつらいというような調査がございます。
これが,今こちらのワーキングの理論とか特別チームの理論で科目が固まっていって,いざ地理を教えるとか,歴史を総合的に教えるといったときに,それを教えられる方がいるのかと,そういう問題が出てくると思うんです。
何を言いたいかといいますと,早めに,歴史の方でも,地理の中心的な内容になってくるような,例えば地図とか,それから地域とか,そういう概念に。新しくなる方はいいんですけれども,現職の方を研修できるような,そういう体制を早めに。指導要領が始まるから,その後研修というのではなくて,新しい指導要領の実施を見据えて事前に,教科の内容でも結構ですし,それから「アクティブ・ラーニング」的な学習の指導方法の研修でもいいんですけれども,都道府県の教育センター,市町村の教育センター等が中心になって,移行研修といいますか,そういったものが非常に内容の検討と並んで,実際に作り上げられる指導要領が実効性を持っていくためには必要なんじゃないかなと考えております。その辺の検討も,是非並行してできればなと思っております。
以上です。

【土井主査】  どうもありがとうございます。
それでは土屋委員。

【土屋委員】  愛知教育大学の土屋でございます。今の浅川委員の御意見に賛成なんですけれども,ここの自分なりの課題として大きいなと思っているのが二つあって。
一つは,今日の資料8-1の5ページに。私,高校の地歴を多分中心に考えるかなと思ってはいるんですけれども。もちろん公民との連携の中での話なんですけれども。この5ページに,平成17年度の教育課程実施調査の質問で,教師に「課題解決的な学習を取り入れた授業を行っていますか」というのが12%とか14%で,否定的が87%とか,「観察や調査・見学,体験を取り入れた授業を行っていますか」とかになると,「世界史B」が8.3%とか,日本史に至っては4.3%という,10%を切っている状況ですよね。なので,ここをどうやって。
私は「アクティブ・ラーニング」だとかを中心とした生徒主体の学習とか,あるいはカリキュラム・マネジメント,それを支えるマネジメントが重要だと思って,今回の論点整理,非常に肯定的に見ているんですけれども,実際にこういう状況を前に,それをどう実現できるのかなというところも併せて考えていく必要もあるのかなと。今,浅川委員が言われたことなんですけれども。
もう一つは,小・中・高となると,連携といいますか,同じことを歴史なんか繰り返していると何度も言われますよね。同じことの繰り返しと。そうすると,小と中と高を思い切って変えていいのかどうかですね。学習の方法とか内容を,もう変えていいのか,それとも今までのベースをそのまま引き継ぐのかということの論議を,ちょっとやっていければいいのではないかなと思います。でも,それが,今のこの8%とか4%の状況を前に,どうなるだろうと思っております。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。
それでは一ノ瀬委員。

【一ノ瀬委員】  東京大学の哲学研究室から参りました一ノ瀬と言います。二つあります。
一つは,先ほど,私の同僚ですけれども,頼住先生から頂いた8-2の最後のところ,実は私が述べたことで,ちょっと誤解を招くような表現になっているかなと思って,今気が付きました。その点について言及すると,結局,先哲の一次資料を学ぶときに,例えばカントで叡智界と現象界とかと言われても,高校生には何かちょっと取っ付きにくいので,比較的身近な問題を,まず取っ掛かりとして,それに沿って基本的な原理的な考えを学ぶやり方がいいんじゃないかという意味で,応用的なものを一つ切り口にしたらどうかという趣旨で発言したわけです。それが1点です。
それからもう1点,私は自分の大学で,つい数年前までグローバルCOEで死生学というのをやっていまして,それで今日のお話を伺っていて,どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るかと,よりよい人生という言葉が何度か出てきていますけれども。人生というのは,これ当然なんですけれども,死というのが必ずやってくるので。しばしば今日,子供たちがゲームなどで戦争ゲームなんていうのをサイバー空間でやって,人の死とか動物の死を比較的軽く扱う傾向があるということは以前から指摘されているんですが,やはり死。デス・エデュケーションという言葉がありますけれども,死というものについて学ぶのは,これは歴史であれ,あるいは「公共(仮称)」であれ,やはり必要なことなので,「アクティブ・ラーニング」という形で死についての教育というのを是非,今回少し強調的な形で交ぜていただけないかと思います。
なかなか実現可能性はないかと思いますけれども,一つには,可能であるならば,子供たちをホスピスに訪問させるとか,あるいは場合によっては畜殺の現場というか,そういうもの。比較的社会の中で隠蔽されがちな現場ですけれども,そういうものについて。以前,1960年代ぐらいまでは教室で豚を畜殺するという実演の授業なんかあったそうですけれども。その後,いろいろ反対があって,現在では行われていないそうですが。そこまで極端なことはなかなか難しいかと思うんですけれども,それに触れるというか,それに言及するような,そういう教育もあってしかるべきかなと思います。
要するに,2番目に私が申し上げたいことは,いわゆるデス・エデュケーションと。つまり,人間は必ず死ぬんだよということを小さいときから教えていくという側面を一つ盛り込んでいただければ大変有り難いなということです。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。死の問題は命の問題と表裏一体だと思いますので,重要な御指摘だと思います。
では,小川委員を先に。

【小川委員】  長野県長野高校の小川と申します。今まで世界史を教えてきたんですけれども,今の日本の世界史教育の課題とか,これからどんなふうに変わっていくべきかということを様々,私なりに問題提起をしてきたつもりです。
その中で,今日の前半の御議論を聞いていて抱いた感想を申し上げますが。とかく新科目を,いかに時代の要請に応えた,いい科目を作るかということに関心を奪われがちなんだけれども,その科目が学校の現実の中に置かれたときに,どういうふうにそれが教えられていくのかということを考えれば,新科目じゃないものをどういうふうに,それに合わせて改革をして,新科目との間に,よりよい整合性を作っていくということ,両方考えていかないと,必ず失敗すると思います。
これは今まで「現代社会」が作られたとき,それから「世界史A」が作られたとき,それらが理想として掲げたプランが,現実の学校の中に置かれたときに,「政治・経済」の簡略版,「世界史B」の簡略版になってしまってきた面が,やはり否めないわけです。その失敗を,ここで繰り返すわけにはいかない。
今,私自身はこれまで,例えば世界史の教科書に盛り込まれた用語が,戦後のこの70年近い中で,どれぐらい増えたのかということを調べてきました。2倍になっています。よかれよかれと思って知識を教えていることが限界になっている。日本史も似たようなものです。
そういう現実を踏まえながら,地歴・公民科の全体の中で,あくまで育成すべき資質・能力とは何か。それに向けて,どのように教え方をリニューアルしていくのか。これは考えていかなきゃいけないと思っております。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。
それでは仙田委員。

【仙田委員】  都立三鷹中等教育学校の校長の仙田と申します。よろしくお願いいたします。
私は全国歴史教育研究協議会という高校の教員で組織している会の会長をしておりまして,毎年,全国大会や関東大会だとか,いろいろとやらせていただいています。20分から30分の授業研究を聞いたりするわけであります。
二つ言いたいことがあって,一つは「アクティブ・ラーニング」について。非常に今の若手の先生たちは,それに取り組もうとしています。ただ,「アクティブ・ラーニング」は何なのかということがまだ明確には出ていないものですから,いろいろな方法でアプローチをしているということだと思います。中には生徒を動かすだけが「アクティブ・ラーニング」だと思ってしまっているのを逆に指摘されたり,自分が動き過ぎて指摘されて,生徒がどうやって頭を使うかということをやっています。
ですから,そういう意味ではとてもいいと思っているんですが,彼らの課題は何かというと,これを全部の授業でやるのは無理だよと。そうすると,それ以外の授業で,今ここでいろいろな論点が出ているところを達成するにはどうしたらいいかということを考えていると思います。
そのときに問題は,そういう手法と共に,では知識はどうしたらいいのかということに悩んでいます。どこまで知識を教えて,そして考えさせるのかと。こことのすみ分けが非常に厳しくなります。そして最後にぶつかるのが受験です。大学受験とのはざまで,どうしても受験科目のことがあるので,「アクティブ・ラーニング」をやっていた授業も,後半からは受験の対応に変えますというのが現状になってしまいます。この辺のところを少し切り込めるといいかなと,私自身も思っています。
二つ目は,私は日本史の教員だったんですけれども,世界史と日本史とのつながりの「歴史総合(仮称)」ということになると,さっきここでも出ました,小・中学校で世界史,世界的な分野をどう教えていくかということが,やはり重要になってくると思います。
私は少ない公立の中高一貫高の校長をやっておりますので,教員には中学も高校も両方教えるようにさせています。そうすると,割と学習指導要領の中を含みながら背景で世界史を教える日本史の教員だとか,そういう者もいるわけですので,この辺のところを。先ほど神戸大の附属の先生もいらっしゃいましたけれども,こういうところを実践事例として考えていくといいんじゃないかなというのが私の考えであります。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。先ほど基礎・基本と応用をどうするかという問題を指摘していただきました。また,今,知識の確実な習得と思考力・判断力等を「アクティブ・ラーニング」を通じてどう育成するか。そのバランスをどうとるかということを御指摘いただきました。重要なポイントだろうと思います。
それでは谷田委員,お願いします。

【谷田委員】  失礼します。兵庫教育大学の谷田でございます。私は道徳教育と公民科の倫理の方を主に専門にしておりますので,そういった観点から少しお話をさせていただければと思っております。
ここの場で議論することなのか,企画特別部会,あるいは在り方に関する特別部会で御議論いただくことなのか,その辺りは分かりませんが,教育課程全体で考えたときに,いわゆる高等学校における道徳教育。一般には人間としての在り方生き方に関する教育という形で学習指導要領上は規定されているわけですけれども,これを,特に公民の部分については,どう考えていったらいいのか,その整理ということが一方で求められるのではないのかと考えております。
そうしたところで,まず一つは,今回いろいろな御議論,経緯があったわけですが,小・中学校において「特別の教科 道徳」という形で位置付けられて,そのことと高等学校における道徳教育といいますか,在り方生き方教育とをどう接続するのか。あるいは,もう少し距離を置いて考えるべきことなのか。そういったことが一つ,論点の整理としてはあろうかと思います。
続いて二つ目ですが,そうしたときに,今回,仮称で考えられています「公共」でございますけれども。ここではキャリア教育の中核となる時間ということで,キャリア教育の視点が設けられているのですが,これまでの学習指導要領を踏まえて,あくまでも「現代社会」と同様に,この「公共(仮称)」が,高等学校における道徳教育の中核的な場面として設定されるのか,それとは違うものとして設定されるのか,そういった論点の整理ということが一つ必要なのかなと考えています。
当然そのことは,公民科で考えますと,その後の「政治・経済」あるいは「倫理」ということとも係わって,在り方生き方教育,道徳教育という視点からすると,「現代社会」あるいは倫理,そして特別活動が,何度も申しますが,中核的な指導場面として位置付けられているので,「公共(仮称)」と「倫理(仮称)」とをどう接続していくのか。特に「公共(仮称)」の部分や「倫理(仮称)」の部分については,先ほど一ノ瀬委員,あるいは頼住委員がおっしゃったことを十分踏まえながら検討していくことは必要かと思っていますが,その辺りの接続をどうするのか,またどういう形で内容や方法等を整理していくのかということは議論のポイントになろうかと思っています。
大変申し訳ないのですが,さらに,取りまとめもう一つ付け加えさせていただきますと,現段階で,全ての都道府県ではないにしても,高等学校では総合的な学習の時間等を使って,いわゆる道徳教育が実施されている県等がございます。茨城県とか,千葉県とか,東京都などいろいろな試行をされているだろうと思うのですが,そういった部分と,今回考えられている「公共(仮称)」の部分を,どう整合性を図っていくのか。あるいは,それとは別のものとして考えていくのか。今回の方向性が学習指導要領として告示されたときに,各都道府県で,それへの対応等も当然求められてくると思いますから,一定度そうした整理ということも今後,どこかの部分で検討しておかなくてはいけないと考えております。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。新科目の在り方に関する重要な御指摘ですし,ワーキングチームの検討にも関連するかと思いますので,つなげていきたいと思います。
それでは韮塚委員,田中委員の順番で。

【韮塚委員】  埼玉県立本庄高等学校の韮塚と申します。検討事項の2番の「アクティブ・ラーニング」について,少しだけお話をさせていただきたいと思います。
今,本校では,今回の指導要領の改訂は文科省は本気だぞという先生方の受け止めがあります。例えば「アクティブ・ラーニング」に関して大きな期待と,そして大きな不安があるのが現状だと思います。
期待に関して言えば,今まで知識偏重で来たものが,更にここに来て,生徒の思考力・判断力を含めた大きな転換になるのではないかという期待です。
一方の不安に関して言えば,先ほど先ほど小川委員からありましたが,現行の学習指導要領の,例えば内容がこのままで,その上に新たな「アクティブ・ラーニング」をはじめとした新しい指導方法が入ってくるとなると,これは現場の先生方にとってみると,かなり大きな負担になってくるだろうということだと思います。
この点について,具体的に現場レベルにどうやってこれを実現していくのかという視点が大事かなと思っております。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。
では田中委員。

【田中委員】  ありがとうございます。国際協力機構,JICAというところから今日来ております。私,教育現場ではないので,グローバルな仕事の面での今回,貢献できればなと思って参加させていただきました。
2030年の世界がどうなるかというのは,いろいろ新聞とかメディアで出ていますけれども,日本のプレゼンスがどんどん落ちていって,新興国,中国,インド等がどんどん出てきて。しかしながら紛争があって,難民が発生して,感染症とか気候変動の問題が大きくなっていくという問題が身近に迫ってきております。この世界と日本とか,グローバルと国内という二項対立的な問題は既に,先ほどのどこかの委員会でも指摘されていましたけれども,そういう時代では,もう確実に違ってくると。世界の中の日本という形で来るのではないかなと思っています。
そこで私どもは非常に不安というか,思っているのは,日本の若者,特に20代,30代の若い世代が,どんどん内向きになってきているというのが,非常に我々,危機感を持っております。情報がITがどんどん進化して,新聞,テレビ見なくなってきた若者が多くなっているんですが,関心が高いものはセグメンテーション化されていくような情報世界で生きてきているというのはあるんですが,やはり,その前の高校,中学校で勉強していることが,彼らの若い人たちの基礎になっている面は非常にあると。
ただ,我々の2030年迎えて内向きになる日本の,先ほど申し上げたような世界の中で,日本のグローバルな企業から,それから国内で多文化共生がますます浸透する中で,日本の若者が内向きになっていってはいけないんじゃないかという危機感を持っております。
今日のお話で,例えば最近話題になっています難民問題。中東から出ている難民問題一つ考えるときも,その難民たちがどういう地域から発生しているのか。地理的な知識。それから,どうしてそういうものが発生するのかという歴史的な問題。そして,その地域に入っていけば,雇用とか社会保障の問題はどうなるのかという問題。総合的に,難民という一つの事象を考えるときにも必要になってきているということがあると思います。
こういう,先ほどの議論,私,専門外なので分からないんですが,地理,歴史,「公共(仮称)」等の一つ一つの要素を積み上げていっていく部分も必要だと思うんですが。一方,一つの課題というんでしょうか。難民とかいうものを考えるときに,それらを総合的に組み合わせて考えていく力。これは,こちら側も一緒にやっていかないとだめなんじゃないかなという感じをいたしております。
これから,今日初めてなので,いろいろ勉強させていただいて,グローバルな世界で生き抜くために必要な力という点で,また考えさせていければなと思っています。どうぞ,ありがとうございます。

【土井主査】  どうもありがとうございます。
それでは髙橋委員。

【髙橋委員】  都立戸山高校の髙橋と申します。よろしくお願いします。
「政治・経済」をずっと教えてまいりました。「アクティブ・ラーニング」に関してですが,結構生徒は発表授業というものが,かつてに比べて,うまくなっていると思います。それは小・中学校からの積み上げの成果が表れているのではないかなと思います。
ただし,それをいろいろな教科で試みようとすると,先ほど仙田委員のお話にもありましたが,生徒があっぷあっぷになってしまう嫌いがありまして,やはりそこら辺は,他教科との整理というものが必要ではないかなと思います。
それから,知識とのバランスは必要で,「政治・経済」におきましては,新聞等,現実の情報に接してやるということが望ましいと思っているのですが,やはり読んでいる量が減っているとは思います。なので,新聞などの資料,あるいはインターネットの資料をどう活用するかという情報リテラシー絡みの問題というものについても考えていく必要があると思います。
それから,一応受験高なので,とても現場は心配しているところなのですが,センター試験に替わる試験が導入されるようになる,その時期とかの関係で,また授業が圧迫されていく中で,どういうふうにやりくりをして,生徒に力を付けさせるのかというのが課題になっていくと思いますので,そこら辺のことも御議論の中に入れていただけたらなと思っております。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。高大接続との関係,重要なポイントだと思います。
それでは矢ケ崎委員。

【矢ケ崎委員】  矢ケ崎でございます。私,三十数年間,大学で地理学を教えてまいりました。現在,日本大学ですが,その前に教員養成系の大学で教えておりました。
地歴科なんですが,歴史と地理比べますと,歴史は圧倒的に人気があるんですけれども,地理は人気がない。それで,社会の中においても,やはり地理というのは今まで正当に評価されてこなかったんだろうなと私はずっと思ってまいりました。
ヨーロッパの教育制度の中には地理というのは欠かせないものですけれども,それが今回やっとといいましょうか,また「地理総合(仮称)」という形で高校で学んでいただける。これ,非常にうれしいことだなと思います。
といいますのは,小・中・高の先生になる教員養成で教えていまして,高校の地歴科あるいは社会科の免許状を取る学生が,地理的知識の非常に,それが貧弱ということを実感してまいりました。中学で教わった地理で大学にやってきて,教員免許状を取るわけですね。それで地理歴史の高等学校の免許状を取るわけです。もちろん地理大好きで勉強してきた生徒,学生もいるんですけれども,教員養成系の免許状を取る授業科目を大学で受講している学生の知識と経験のレベルの非常に大きなギャップというのを感じてまいりました。
ですから,先ほど高校現場で,これからどんなふうに対応するかというお話ありましたが,高等学校,非常にこれから大変になるんじゃないかなと私,思っています。
例えば情報化,地理的技能を育成しなきゃいけない。GISの話が出ておりますけれども,どんどん進化していまして,これをどんなふうに取り入れていくのかということ非常に重要だと思いますし,大学で教えていてGISに関心を持っている学生は,現場に関心がないんですね。ですから,情報を使って,きれいな地図を作って,それで何か満足して,「君,現地に行ったことあるの?」「いや,行ってない」と言うわけですね。つまり情報の世界と,それから現場の世界が非常にかい離してしまってですね。
ですから,地理では,やはり地域調査ですね。現場の体験と,それから様々な情報,分析技能ですね。これをどうリンクさせて,より現実的なものにしていくのかということですね。これ,非常に重要だと思っています。
それからもう一つ,大学で地理学専攻の学生を教えていて思いますのは,卒業論文の季節で,卒業論文の発表会,聞くわけですが。いろいろ調査してくるんですけれども,ではその先,君はどんなこと考えているんですか。君の研究といろいろなグローバルな視点,あるいは課題がどんなふうにつながるのか。やはり,そういう大きな社会の地球的な課題とか,グローバルな課題に我々の日常的な生活が結び付いているんだということを小さいときから認識していただくような,そういうプログラムを作ることが必要かなと思います。
知識の量。やはり,たくさん知っていれば,より深く考えることができると思うんですね。ですから,やはり知識の量と分析の技能ですね。それ,どういうふうにバランスをとっていくのか。そこにどういう課題意識,問題意識,そういうものを育成していくのかと。
田中委員,さっき,いろいろなグローバルな課題のことをおっしゃいましたけれども,正に地理は,そういうグローバルな課題に総合的にアプローチする。自然の問題もあるし,社会・人文の問題もあるし,政治的な問題,そういう点を総合的に,いろいろそれを踏まえて,地球的な課題について考えていく。それは,やはり地理の教育の大きな課題であると思いますので,その点いろいろ今後,具体的なプログラムを作っていく過程で何らかの貢献をしたいと思っております。
どうもありがとうございます。

【土井主査】  ありがとうございました。
まだ御発言になっておられない先生方,いかがでしょうか。では村松委員。

【村松委員】  弁護士の村松でございます。私は小学校,中学校,高校に行って法教育の授業やったり,あるいは弁護士会の法教育委員会で法教育の普及ということで活動している者です。
学校では,ロールプレイであるとか,模擬裁判といった形で,活動型の学習を取り入れるようにしています。例えばロールプレイであれば,いろいろな立場の人になってもらって,みんなで課題を解決するルールをつくるであるとか,模擬裁判であれば,検察と弁護側に分かれて,情報を読み取りながら最終的に有罪か無罪かを判断します。いずれも答えが定まっていない問題を子供たちが考えて答えを見付けていく,あるいは課題を解決していく,そういった活動になっています。
やっていて思うのは,やはり非常に子供たちは――高校生は生徒と言った方がいいかもしれないですが,生徒たちは自由に考えながら活発に議論をしています。机で単に授業を聞いているときとは,また違う表情で授業に取り組んでいるというのが,学校の先生からの評価でもあります。ある意味,主体性が育まれるでしょうし,そのことが社会参加につながっていくんじゃないかなと,やっている者としては考えているところです。
そういう意味では,今回の指導要領の改訂の方向性,すなわち,これまでの課題解決型の学習を更に進めていくという方向性,あるいは学び方として「アクティブ・ラーニング」を取り入れていくという方向性について,私はいいんじゃないかなと賛成しているところです。
ただ,やっていて思うのは,単に課題を与えて解決しなさいというのであれば,そこはもう一歩工夫が要るんじゃないかなと思っています。課題を解決する上では,やはり視点というものがあるわけでして,生徒たちに,その視点をどう与えるのか。表現を変えると,判断の枠組みをどう与えるのかということが大事かなと思っています。
それの枠組みの与え方は,課題をやってもらって,そこから概念を抽出するやり方なのか,先に概念を与えた上で,それを使って課題を解決するのか。そのやり方は教育手法の問題であり,私より学校の先生方の専門分野だと思うんですが,いずれにしても,その判断の枠組みは大事かなというのは,やっていて考えているところです。
資料の9番で,今回のワーキングにおける検討課題は幾つか出ていまして,一つ目で,知識・技能と思考・判断・表現力というのが出てきています。それぞれは個別にあるものではなくて,やはり相互に関係しているものでして,何か課題に対して考えようとすれば,無限に広がっている情報の中から,どの情報が大事なのかということをピックアップしながら,取捨選択した上で課題解決に取り組んでいくことになるんだろうと思います。そうすると,何を取り込んで,何は要らないのかという判断するためには,やはり判断する枠組みがないと,それはできないのと考えています。
法というのは社会のルール,枠組みを決めている,社会の構成原理です。そういった意味では,法律家として,法という視点から,判断の枠組みについて何らかお話ができることになるんじゃないかなと思っておりまして,また,それが私の役割なのかなと思っているところです。
そういう観点からも,今後,「公共(仮称)」がどうなっていくのか,その新しい科目と,それから既存の教科の関係性がどのようになるのか,教えていただきたいところなんです。前回の指導要領の改訂の中で,「現代社会」に幸福,正義,公正という鍵概念が入ったと理解しています。これはある意味,社会を捉える上での枠組みを考える視点だったわけですけれども,それが新しい,この「公共(仮称)」になったときに,そういう視点がどうなっていくのか。引き継がれるのか,引き継がれないのか。あるいは引き継いだ上で,新しい枠組みとして,もう少し新たなのが出てくるのか。その辺の方向性が一つ,まだ見えてきていないので,もし今の時点で分かれば教えていただきたいなと思っています。
それから,前回の指導要領の改訂の後,学校,高校にも行って,いろいろ授業をしました。幸福,正義,公正という鍵概念は入りましたけれども,それを使って実際に課題を見てみようという授業は余り現場でやられていないんじゃないかなというのが私の感想です。ある意味,知識は知識である。だけれども,その活動は活動で,知識とは別にある,あるいは活動をやっていない,というのが実態なのではないかと思われます。
今度の改訂で,何ができるのか,あるいはできること,知っていることをどう使っていくのかという方向性で大きくかじを切るのであれば,知識と,それからそれをどう使っていくのか,そこの関連性は意識しながら組み立てていった方が,よりいいものになるのかなという印象を持っております。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。今御指摘いただいた,例えば「公共(仮称)」なら「公共(仮称)」の鍵となる概念,あるいは見方をどうするのかということは,特別チーム,あるいはこのワーキンググループで今後御検討いただくことになろうかと思いますし,またそういう枠組みをどう授業に実際に活用していくのかということも含めて御検討いただくことになるだろうと思います。
では権丈先生。

【権丈委員】  亜細亜大学の権丈でございます。専門は,社会保障論,労働経済学です。働き方や家族の変化,関連する社会保障や人口,労働政策などの研究をしております。 私からは主に「公共(仮称)」について述べさせていただきます。
  御承知のとおり,少子高齢化,人口減少社会において,グローバル化が進行し,経済社会環境が大きく変わっていく中で,労働力の質の向上と量の拡大が求められているところです。最近は,女性の活躍推進が政策目標として掲げられ,男性だけではなく女性も働く社会になってきています。まだ働き方も,学校卒業後正社員として一つの会社に長く勤めるというのではなく,かなり多様なものになってきています。そうした社会で働き,生きていくための力を身に付けることができるようにすることが,一つのポイントになると考えております。
変化の激しい時代において,生涯を通して学び知識を高めていくことができるようにすることが,先ほど申し上げた人材の質の向上にもつながります。個人から見ますと,仕事についても,家庭を持つことや,そのタイミングについても,多様化しており,その中で自ら主体性を持って選びながら生きていく必要があるわけです。
「公共(仮称)」についての教育課程企画特別部会での日ごろ,その方向性は,こうした時代の変化の中で意義のあることだと考えております。また,働き方を取り巻く変化を理解した上で,キャリア教育に取り組めるという点で,「公共(仮称)」にキャリア教育の中核的機能を持たせるというのは,とてもよいことだと考えております。
  生徒たちには,しっかりとした知識と,思考力・判断力・表現などを身に付けてもらいたいわけですが,その際,情報リテラシー,情報教育との関係はございますが,今後,情報収集は比較的容易になる中で,そうした情報を活用していけるだけの基礎的な知識や思考力を伸ばすことを,重視すべきであろうと考えます。
18歳選挙により,政治に参加するということになります。政策の中身を知った上で判断できるように,そういった知識を身に付けることも重要だと思います。知識といっても,単に歴史的事象や制度の名称を暗記するということではなく,やはり理念や概念をしっかり押さえた上で,基本的な内容を知り課題を考えることができるようにする,その点を重視した教育ができればと考えております。以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。
では,ほか。大石委員,久保委員でお願いします。

【大石委員】  東京学芸大学で日本史,江戸時代を専門に教育と研究をしています大石です。
日本史の中で近代化,大衆化,それからグローバル化,これを基準に再構成していくというところなんですが,そろそろ歴史学自体が西洋基準というんですかね。欧米基準から少し距離を置く必要があって,例えば古代中世だったら中国とか朝鮮とかの関係はとても大事で落とせないですし,近世始まるところでしたらヨーロッパがスペイン,ポルトガル入ってきて,イギリス,オランダが来てというような視野もありますし,明治維新から,今の「日本史A」みたいに重く教えるという,それはそれとしていいかもしれないんですけれども,世界史と少しクロス,リンクしながら,もうちょっと長いスパンで日本の歴史をゆっくり追い掛けるような見方というのも必要だろうと思います。
と同時に,政治的な変化,年表な変化だけではなくて,日常の庶民生活とか,日常生活とか,市民とか,そういうレベルを視点に置いた変革と日常,継続ですかね,そういうことは,それも必要になってくるだろうと思います。
それから,科学的に物を見る目としては,それを絶えず検証できるような文化財とか,資料とか,そういうものを提示しながら教育していくような。ただ理念だけで教育するのではなくて,証明がついていくような,そういう工夫が必要かなと思います。
以上,3点です。

【土井主査】  ありがとうございます。
では久保委員。

【久保委員】  早稲田大学教育学部の久保と申します。自己紹介みたいな内容になりますけれども,現在,早稲田大学教育学部では社会科の中に地理歴史専修と社会科学専修に入り口が分かれております。それで,地理歴史専修に入ります学生は,日本史,西洋史,東洋史と地理学の科目をたくさん必修で勉強してもらっています。それ以外の学科や専修の学生たちも高校の地歴の免許をもちろん取ることが可能ですが,その場合は少し重みが違っております。やはり数が違っているという現状でございます。
それで,先ほど地理の分野ですと,浅川さんや矢ケ崎先生もいらっしゃいまして,大変心強いんですけれども,地理歴史科というので免許がございますし,今回の改訂の後も,ずっと地理歴史科で免許を取った先生方が担当されることが続くと伺っております。
ですから,それぞれの地理と歴史という,場合によっては大分性格の異なる分野を両方教える教員を養成していくことが今後も求められておりますし,先ほどの指摘もありましたように,数で言えば圧倒的に歴史を専門に勉強されて,地理歴史科の免許を取られた先生が多い中で,地理的な技能,スキルとか,そういうのも生徒に教えるようにするためには,やはり何らかの仕組みを作ることも大切かなと考えております。現職の先生方の支援ですとか,大学での教員養成の仕組みを少し考えるとか,そういうことが必要かなと考えておるところです。
それから,時折,教育実習校を訪問させていただいたりしておりますけれども,学校によっては,例えばパワーポイントとか,何かスクリーンで映すにも,カーテンが白いカーテンしかなかったり,暑い時期にエアコンがないと,風が吹いてくるとカーテンがひらひらしてしまって,スクリーンが明る過ぎて何かよく見えないなとか,そんなようなところも拝見したりしております。技術的なことかとは存じますけれども,いろいろな学校で,いろいろな先生が,同じようなことができるようになることも考えないといけないかなと感じました。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。
それでは原田委員にお話しいただいたら,大体一巡すると思いますので,その後,土屋委員に。では,お願いいたします。

【原田主査代理】  失礼します。私は地理歴史科のB科目とか,公民科の「政治・経済」や「倫理」という既存の科目は,中教審の論点整理を踏まえつつ,基本的に各学問,ディシプリンのリテラシーをより深めていく。例えば地理ならGISを利活用するとか,歴史なら一次資料を,提示の仕方はいろいろあるにしても,読解する方向で,より歴史認識を深めていくというふうに,多分なっていくだろうと思うんです。高校ですからね。
でも,やはり「地理総合(仮称)」,「歴史総合(仮称)」,「公共(仮称)」という新科目はそうじゃないだろうと。いろいろな先生がおっしゃるように,地理の先生も「歴史総合(仮称)」を教えなきゃならないだろうし,ひょっとしたら歴史の先生も「公共(仮称)」を教える可能性は十分あるし,そうでないと学校では成り立たないと思うんですね。
であるならば,地理の専門でないと教えられない「地理総合(仮称)」とか,歴史の専門家でなければやれない「歴史総合(仮称)」では,私は地理歴史科の「総合科目」にならないと思います。ですから,やはり地理の先生が積極的に「歴史総合(仮称)」はこうあってほしい,歴史の先生は「地理総合(仮称)」はこうあるべきだ。
何でそんなことを申しますかといいますと,やはり「総合科目」というのは,専門家,いわゆる歴史学者,地理学者,政治学者を育てるわけじゃなくて,市民として,いろいろな先生がおっしゃるようなグローバル化の時代,少子高齢化の時代,多文化共生の時代にどういう生徒を送り出していくか,どういうスキルや社会の見方が必要かという観点から,その科目があるわけですから,もう少し垣根を越えて,地歴科の免許がある,公民科の免許があれば誰でも教えられるようにする必要があると思います。
そのために条件が二つあって,これ皆さん御存じのとおり,一つは大学入試に象徴される評価が,はっきりと現場の先生が変わったな,これは従来のような授業ではだめだなと思っていただく評価に変わらないとだめで,そのための検討は別途なされていると思います。
もう一つは,やはり教科書が明らかに変わったな。何だかんだきれいごと言っても,結局,教科書を教えている先生が圧倒的なんです。地理でフィールドワークなんかやっている授業,ほとんどありません。みんな教科書を教えています。であるならば,教科書がはっきり変わるような形で,どう指導要領を提示し,その中に資質・能力につながるような教科固有のリテラシーとして,思考・判断・表現につながるような個別的な知識・技能が示せるか。多分それが課題になると思いますので,一緒に議論していきたいと思います。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。
皆様方には非常に御協力いただきまして,謙抑的に発言をしていただいておりますので,まだ時間の余裕がございます。言い足りない等々ございましたら,まだ御発言いただけると思いますので,札の方,立てていただければと思います。
では土屋委員,お願いします。

【土屋委員】  今の原田副主査の先生の後で,ぶち壊しちゃいけないんですけれども。先ほどの議論で知識というものをどうするかという問題が出ていたと思うんですけれども,例えば今回の資料6の論点整理の35ページの下の方にある,社会,地理歴史,公民の課題として,一方で,主体的に社会の形成に参画しようとする態度の育成や,資料から読み取った情報を基にして社会的事象について考察し表現することなどについては,更なる充実が求められるところであるというのは,こういうことこそ知識といいますか,理解というか,これができて,正に分かっているということなんだと思うんです。だから,これができていないということは,知識・理解もできていないということだと思うんですね。だから,そこを考えると,我々が言っている知識とは何だというですね。
先ほど村松委員が,判断の枠組みとか,そういった本質に関わるようなものこそ重要ではないかとおっしゃっていただいたのが,正に我々が本来,子供たちに育てるべき知識と言っていいのじゃないかなと思うんです。
だから,ここで論点整理で言われていることは,知識と思考を分断して対立して考えるものではないと思っていいし,ここでやっていることをきちんとやっていけば,正に理解が深まっていくと。
もう一つ,ここで今出なかった議論で,この論点整理の中で,世界の子供たちの学びを後押しするというのが最初の方に出ていたんですけれども,留学生とか,海外から,特に東南アジアとかから日本の小学校や中学校を見たときに,ものすごく評価するんですね。ああ,こういう生徒が自分たちで考えて調べたり意見を言ったりしているから日本は経済発展するんですねとか,ああ,日本の民主主義はこうやって小学校のときから教育されているんですねと言われるんです。
だから,そういう我々が持っている,評価される学びというのを,正に高等学校のレベルでもしっかりとやっていけば,アジアからの評価は高まると思います。なので,そういった我々が今取り組んでいるのは,後ろ向きにならずに,少しでも前に向いていけば,大きな意味でプラスになっていく。
先ほど一桁はないので,先生たちのあれがちょっとマイナスだと思われないようにしていただきたいのは,そういう先生が何%かいたら,その先生たちを支えて,その先生たちがいい先生だと。変なことやっている,変な先生じゃなくて,そういう先生こそ,いい教育をやっているというふうに支えていけばいいかなと思いますので,数%でも「アクティブ・ラーニング」だとか,カリキュラム・マネジメントをやられてる,ここの中にもいらっしゃる先生たちが生かされればいいかなと思うんです。
なので,否定的な意見ではないので,申し述べておきます。済みませんでした。

【土井主査】  ありがとうございます。
ほか,いかがでしょうか。では,一ノ瀬委員。

【一ノ瀬委員】  ちょっと問題提起というか,出口が見えないことなんですけれども。先ほどからずっと,このワーキンググループで「アクティブ・ラーニング」の話が出ていたんですが。高大連携ということも関係しますが,「アクティブ・ラーニング」を今度どう教えるかということではなくて,どう評価するか。生徒の成績を付けなきゃいけないので,それをどうするかという問題も,このワーキンググループで課題として論じていいのではないかと思います。
更に言えば,これは大学の側の視点ですけれども,「アクティブ・ラーニング」の実践を大学入試でどう取り入れて,どう評価していくのかという問題も,とても難しい問題だと思うんですが,何かアイデアとか方向性があればいいのではないかと思っています。
もちろん,先ほど原田先生からもありましたように,大学の側でもいろいろ,AO入試もそうですし,私どもの東京大学では今度,推薦入試というのも行いますので,極力知識だけを問うものではない入り口の在り方を考えてはいるんですけれども,それにしても「アクティブ・ラーニング」の評価ということになると多分,生徒さんたちは,やっぱり心の底では評価ということ,随分気にされると思うんですね。だから,そこの辺りについての何か指針なり,ガイドラインなり,そういうものにつながるような議論があれば,よりよいのではないかと感じております。

【土井主査】  ありがとうございます。評価の問題は,先ほどの検討事項の中に含まれておりますし,また大学入試の在り方,高大接続に関連して現在,別途御検討になっておられるところですので,ここで何か有益な意見が出れば伝えられればと思います。
そのほか,いかがでしょうか。はい。

【仙田委員】  三鷹の仙田です。今,一ノ瀬委員が言われた,私どもにとって,現場にとって,やはり「アクティブ・ラーニング」をやるのがいい。でも,それをどう評価するかというところが大きな問題だと思っています。手を挙げた,積極的に発言すればいいのか。そうではなくて,やはり,いろいろなことを考えて,思考能力を表現するという力が必要になるかと思います。
そのときに,大学入試なんかもそうなんですけれども,私ども公立の中高一貫校は,学力試験というのはできません。適性検査というのをやっております。これは,そこにあるものから回答をやって,論理的に解説する。つまり,1足す1は2であるという問題は出せないですね。そういう数式は使ったはいいけれども,なぜだというような問題を出すのであります。
これが,実を言うと,私学なんかの中高一貫校では,それを逆に今,取り入れています。将来的に論理的に説明するような問題が出てくる。一番,課題は何かというと,採点にものすごい時間がかかるという課題があるんですけれども,そういうのをどうやって取り入れていくかというのが一つの目安になっていくかなと思っています。
ただ,この適性検査についても,全く知識のところを入れてはいけないとか,いろいろと制約があるんですけれども,そこはまた,こういうワーキンググループで御議論いただいて,こういう知識をベースに,こういうふうにやればいいか。
先ほど土屋委員が言われたように知識を構築することも大事だと思うんですけれども,ただ我々現場からしてみると,どこまで教えたらいいのかというのは,やはり,どうしても出てくるので,その辺のところが何か,足掛かりが逆にこの議論の中から生まれていただければ,とても現場としては有り難いなと思っております。

【土井主査】  ありがとうございます。
ほか,いかがでしょうか。よろしゅうございますか。どうぞ。

【磯谷委員】  「歴史総合(仮称)」,「地理総合(仮称)」なんですけれども,やはり大学入試に使われないとなると,どうしても現場は,それをスポイルし始めるといいますか,そういうおそれがありますので,何らかの形でといいますか,やはり大学入試を変えていくというか。その「歴史総合(仮称)」なり「地理総合(仮称)」が,やはり大学入試でも,それを学んでいないと大学入試も解けないような,そんな形になっていけばいいのかなと思っております。
以上です。

【土井主査】  ありがとうございます。
ほか,いかがでしょう。では大石委員。

【大石委員】  大石です。テーマの部分なんですけれども,社会科といって各教科が一つになっていくときに,やはり掲げるテーマというのが必要かと思うんですね。そのときに,日本発だったりして,地球規模で,世界規模で,生徒が学んでいく,世界で活躍していくといったときに,やはり平和の問題とか,人権の問題とか,環境の問題,ここをきちっと掲げられるような社会科であってほしいと思います。
その下で歴史や地理や公民というのが改善あるいは創造されていけばいいかなと思います。

【土井主査】  ありがとうございます。
ほか,いかがでしょう。よろしゅうございますか。
では,私も最後は一委員として,公民科の在り方を中心に少し意見,述べさせてもらいたいと思います。
新科目もそうでございますが,公民科における学習をどう考えるかについては,やはり第1に,1人の人間として,各自が自己の在り方や生き方について考えるということ。第2に,自己が存在する社会の在り方について考えること。そして第3に,自己の社会に対する関わり方について考えること。この三つが,基本になるんだろうと思います。
この三つをどの順序で考えるかが,それ自体,重要な思想的な課題で,一ノ瀬先生の御専門かとは思いますけれども,究極的には,この三つをうまくどう循環させて考えていくか。そして,その考えた結果を実践につなげていくかということが国家・社会の形成者として必要な知識,判断,そして行為する能力の育成につながるんだろうと思っています。
この三つの点を考える場合に,やはり我が国においては,基本として人間の尊厳,生命の尊重,あるいは個人の尊重というものを基礎にして考えていく必要があるんだろうと思います。何よりも,まず人間としての在り方,自己の生き方を考えることを出発点として,人間の尊厳ですとか個人の尊重をしっかり考えていく必要があります。
それを基礎として社会の在り方を考えるということになれば,その際に重要になる一つのキーコンセプトとして,協働といいますか,協力があると思います。
一人一人の人間を,人格として尊厳を認める,あるいは個人として尊重すべきだと考えるのであれば,その社会は,一方的に誰かの支配に服するという従属的な関係でもないし,各人が互いに孤立した空間でもなく,対等な人格が,どうして互いに協働,協力していくかという問題を考えていく必要があるんだろうと思っています。
それを基本的に考えるとすると,なぜ,その人は協働していく必要があるのか。協働関係を通じて何を実現しようとしているのか。あるいは,そういう協働関係を妨げる要因として,どんなものがあって,それを克服するために,どういう知恵あるいは仕組みが必要になるのかということを考えていくことが大事だろうと思います。
また,家族ですとか,地域ですとか,国家,国際社会という協働関係の単位がどういうものがあって,それぞれにどういう役割を果たしているのか。あるいは政治プロセス,市場,法システムというような協働関係を現実に動かす仕組みとしてどういうものがあって,どういう役割を果たしていくのかを学んだ上で,最終的には自分自身が,こういう協働関係の中でどういう役割を果たしていくのかを考えてもらうというのが大事なのではないかと思います。
その際に,やはり先ほど来出ていますように,原理原則からこうした問題をどう理解するのか。それから,その原理原則に基づいて,現代社会の諸課題について考え,その考えに基づいて,社会に現実に関わっていく技法といいますか,手法,ノウハウといったものを身に付けていっていただく必要があるんだろうと思います。
これをどういうバランスで学んでもらうのかということが非常に重要な課題だと思いますし,場合によっては,各学校の個性や制度のニーズに応じて選択できるようにしていく必要があるのかなと思っています。
また同時に,こういう形で公民を考えていく際には,家庭科,情報科などのほかの教科との関係,あるいは総合的学習の時間,特別活動とどう連携を図っていくかということを考えていく必要もあるだろうと思います。
とりわけ,今申し上げましたように,協働を妨げる要因がどのようなものがあるのか,それを克服するためにどういう方策を考えるべきかといったことを検討するためには,歴史,地理で学んでいることを前提にしないと,なかなかそういうことを導くことはできないと思いますので,やはり新科目については歴史,地理との連携を重視して,新しい必履修科目が全体として人間社会を総合的に考えることができる科目にしていく必要があるんじゃないかと私自身は思っています。
少々長くなりましたが,以上です。
ほか,何か先生方の方で一言言っておきたいということがあれば,いかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
それでは,先生方には時間の方もしっかり御協力を頂きまして,ありがとうございました。様々な御意見頂きましたが,時間も参りましたので,本日はここまでにしたいと思います。本日お出しいただいた御意見につきましては,事務局で論点ごとにその趣旨を整理していただくようにお願いをします。
また,限られた時間内での討議でしたので,更に御意見やお気付きの点などがあれば,ペーパーで事務局にお送りいただければと考えております。
本日予定されておりました議題はここまででございます。最後に,次回以降の日程などについて,事務局から説明をお願いいたします。

【梶山主任視学官】  ありがとうございます。次回でございますけれども,日程調整の上,追って御連絡しますので,よろしくお願い申し上げます。
また,主査からもお話ございましたように,ペーパーによる御意見を是非頂戴いただければと思っております。メール,ファクス,郵送でも結構でございますので,頂ければと思っております。
また,本日の配付資料でございますが,後で結構だということでございましたら,机上に置いていただければ郵送いたしますので,その場合はお名前を書いていただきまして置いておいていただければと思います。
以上でございます。

【土井主査】  それでは,本日の社会・地歴・公民ワーキングをこれで終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。


<小・中学校社会科及び小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力の議論>

【館委員】  では,皆様お集まりのようですので,ただいまからこちらの方の会合を始めたいと思います。
私は司会を仰せつかりました大正大学の館と申します。先ほど原田先生の方からは,児童生徒にとって非常に役立つ改訂を行いたいという話がありましたが,私もそのとおりだと思っています。加えて,やはり現場を支えている教員にとっても有意義な改訂でありたいなと,そんな願いを持ってこの委員会を進めさせていただきたいと思います。
では,本日は第1回目で初めての顔合わせでもありますので,皆様から自由に御意見を頂きたいと思います。初めて顔を合わせて自由にというのもなかなか難しいとも思いますが,限られた時間ですので皆さん,是非積極的に御意見をお願いします。先ほど説明がありましたように,教育課程企画特別部会の論点整理や本ワーキンググループにおける検討事項を踏まえまして,意見交換をお願いします。もちろん先生方の御専門に関連して特に検討事項に関して日頃からお考えになっていること,取り組んでこられたことなどがあれば御発言いただいても結構であります。御意見のある方は,あらかじめ名札を立てていただきますと,私の方で順次指名させていただきますので,また発言が終わりましたら元に戻していただきますようお願い申し上げます。このようにするということでよろしいでしょうか。
ということで,なお,限られた時間でありますので,お一人様当たり3分程度で御発言いただきますようお願いいたします。今日初の会合ですので,お一人様必ず何らかの形で御意見を頂ければというような,これは事務局からのきついお達しでありまして,是非先生方も御意見を積極的に出していただければというふうに思います。余計なことを口挟みまして申し訳ありません。もちろんなかなか手を挙げにくいということあるかもしれませんけども,まず,先生方の御感想も含めまして,御意見というものをいただければと思います。少し整理の時間をとりたいと思いますので,先生方,よろしくお願いします。意見がまとまった方から順次,先ほども言いましたように名札を立てていただく形で進行させていただければと思います。よろしくお願いします。

【廣嶋委員】  お願いします。

【館委員】  では,廣嶋委員,よろしくお願いします。

【廣嶋委員】  聖徳大学の廣嶋と申します。
この会でどんなことを議論していくかということですが,中心的な課題として,やはり小・中・高をつなぐ資質・能力を明確にするという視点が極めて大事じゃないのかなと思って考えておりました。
三つほど検討するポイントがあるのかなと思っているわけですけれども,例えばその一つとして,いわゆる小・中・高等学校をつなぐ鍵というのがどこに見付けられるだろうか。一つの考え方としては,社会的な見方や考え方ということが言われていまして,これを整理してはどうかと思います。これについては社会科の大きな課題,非常に重要なキーワードとして言われてきているのですが,現場の先生方には非常に分かりにくい,なかなか浸透してきていないのではないのかなと思っております。そういう点からいいますと,現場の先生にこれを分かりやすく伝える必要があるのではないかということをずっと思ってきております。例えば社会的事象を見る視点という捉え方もあるでしょうし,あるいは方法として捉える捉え方もあるでしょうし,概念とか獲得した内容として捉えるという見方,考え方もあるのではないかなと思いますけれども,小・中学校をつなぐ鍵として,一つこれが整理できないのかなと思っております。
それから二つ目に,今日の説明の中にもやっぱり三つの柱があって,一番大事という言い方はいいかどうか分かりませんが,中心になるのは,思考力・判断力・表現力の育成をどうするかと。従来のものとつなげて考えていくと,ここのところがやっぱり統一的な説明がなされる必要があるのではないのかなと思っています。国立教育政策研究所から評価規準例等が示されて,その中には小学校,中学校それぞれに社会的な思考・判断・表現に関してはこういう趣旨でというようなことが述べられておるわけですけれども,例えば平成26年の中教審の高等学校部会で,身に付ける資質のコアについて,その例として考察する力だとか構想する力だとか説明する力だとかというようなことが掲げられております。これなどをポイントにしながら,小・中・高とつながる思考力・判断力・表現力ということをもう一回整理できないのかなというふうに思っているのが2点目であります。
3点目に,学習指導要領の記述の仕方,このことまで今回検討する事項になっているのかどうかはちょっと分かりませんが,感想的に述べさせていただくと,私は実は平成元年,11年の小学校の学習指導要領に関わらせていただいて,11年の指導要領改訂のときに,内容の表記の仕方を,学習のテーマとなる社会的事象について,次のことを――次のことというのは学習の対象に当たるわけですけれど,何々の方法で調べて,社会的事象の意味や特色を考えるようにするという記述で統一したのです。その11年の改訂から,指導要領が非常に読みやすくなった,分かりやすくなった,あるいは私どもも現場の先生方に説明する,今,大学で教員養成をしていますので,学生に説明していくときに,割合説明しやすいのかなという感じがしています。最終的には何ができるようになるかというのが,こういう記述の仕方からはかなり分かりやすくなったような気がしております。このような言い方をしていくと,何ができるようになるのかというあたりが見えやすくなるような感じがしています。中学校の学習指導要領にもそういう発想で整理が可能なのかどうか,そういうことも検討していくと,資質・能力がかなり明確になってくるのではないのかと思っております。その辺のところを御検討いただけると有り難いなということで,冒頭ちょっと意見を述べさせていただきました。失礼します。

【館委員】  廣嶋委員,どうもありがとうございました。
今,学習指導要領の記述の仕方ということが出たわけですが,そのあたりに関しては,文科省の方としてはどのようにお考えでしょうか。

【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。
いずれも重要な点を御指摘いただきまして,特に記述の仕方につきましては,まさに同じ観点からの問題意識といいますか,御議論を総則・評価特別部会でも頂いているところでございます。教職を目指す学生さんにとってもということももちろんですし,今回社会に開かれた教育課程ということで,そういう意味では,社会と学校とで育成すべき資質・能力のありようを共有していくという観点からは,読んで分かる,特に最近1文がかなり長くなる傾向にございますけれども,しっかりと分かりやすい,それから英語に訳せるという観点も国際化の観点から必要だという御議論を頂いておりまして,まずは資質・能力のありようを御議論いただくことになると思いますけれども,それをしっかりと内容の方にどう落とし込んでいくかという中で,これは本ワーキングとしても御議論いただきたいと思いますし,その御意見をしっかり総則・評価部会の方に伝えまして,これは各教科共通の課題になると思いますので,そちらの方でも方向性を御議論いただけるようにしたいと思います。ありがとうございます。

【館委員】  ありがとうございました。
ほかの委員,いかがでしょうか。
では,坂本委員,よろしくお願いします。

【坂本委員】  私は小学校の校長ですので,小学校の立場から今の廣嶋先生の発言をちょっと付け足すような形でお話をしたいと思います。
廣嶋先生がお話しした小・中・高をつなぐ資質・能力の部分で,社会的な見方,考え方でつなぐものがあるのではないかという,この社会的見方,考え方は小学校でもよく使っているんですけれども,社会的な見方はどういうふうに見るんだとか,こういうふうに考えるんだというはっきりした定義的なものはないんですよね。それぞれ問題解決の学習の中で,社会を見る目としていろんな言われ方をしているんです。なので,ここはやはりこの中で見方とはこういうふうに見るんですよ,考え方はこういうふうにするんですよということをはっきり出すことが,現場の教員にとってはすごくやりやすいなと思っています。
社会的な事実を見る観点としては,地歴・公民とのつながりを考えると,やはりある社会的な事象を歴史的に見ていく,時代の流れというよりも時間的な流れ,そういう部分で見ていく見方とか,それから地理的な見方に関わるんですけど,空間的な広がりでどういうふうに広がっているかという形で見ていくという考え方とか,公民的な部分でいうと,現在のところ,諸課題についての自分との関わりの中でどういうふうに見ていくか,そういうはっきりとしたものを出していくとか,考え方としては,思考力とかぶるところがあるんですけども,社会的な事実を比べて考えるとか,つなげて考えるとか,関連させるとか,いろんな事象をまとめて考えていくという思考の仕方で社会的な事象を考えていくので,是非見方,考え方についてのはっきりした,こういうものだという,学力の三要素がしっかり示されたので,ああいう形で示されると,すごく現場の先生にとってはやりやすいなと思っています。
また,2点目の思考力・判断力・表現力に関しても,これもよく「思考力・判断力・表現力」というふうに言われていて,それぞれの関連していく中で,これはどの教科も言われているところなんですけれども,特に社会科に関しては,判断力というところがすごく重要な部分であって,主権者教育の部分でいいますと,自分はどう判断するかということ,社会科的な事象を扱うときにはどう判断するかということがすごく重要になってくるというふうに思います。ですから,ここの部分の判断力というのが,特に社会科の部分では大事かなと思います。また,表現力に関しては,言語活動とすごく関わりがありますので,言語をどう使うかという部分ですよね。ここのところも少し明らかにしていくといいのかなというふうには思っています。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。
小学校の立場から,思考力・判断力・表現力,その中での判断力の重要性,そして,社会的な見方,考え方とは一体具体的に何なのか,それを明白にする必要があるという御指摘だったかと思います。
ほかにいかがでしょうか。よろしくお願いします。
加藤委員,お願いします。

【加藤委員】  失礼します。島根大学の加藤といいます。
先ほど廣嶋委員,坂本委員の話で出てきた社会的な見方や考え方ですけど,私もこれが今回明確にすべき資質・能力の鍵になると考えています。中学校では,分野によって地理的な見方や考え方とは何かを明確に出されている分野もあれば,そうでもない分野もあったりします。特に小学校の場合は,解説書にも社会的な見方や考え方は育てるべき力だとは書いてあるんですけど,また,こういうふうにしたら育つものですよとも書いてあるんですけど,残念ながらというか,社会的な見方や考え方の中身が明確にされていない。そういうことを,廣嶋委員,坂本委員から先ほども指摘があったと思います。ですから,今回社会的な見方や考え方の中身は何かということを明確に打ち出すことが資質・能力の明確化に直接つながっていくと思います。これが1点目,私が強く感じるところです。
2点目は,見方や考え方の系統性をどう考えるのかということです。小学校の社会科で育てる社会的な見方や考え方は,小学校の中でも3年,4年,5年,6年の中で成長させ,育成していくべきものだと思うのですが,それが中学校の三つの分野の見方,考え方にどうつながっていくのかが不明確では。先ほど廣嶋委員の方から指導要領,解説書の書き方の話も出ていたのですけど,もし可能ならばその系統性を系統表のような形で指導要領,解説書等に明確に打ち出せたら,実践される先生方にとっては大きな手掛かりになるのではないかなと感じました。
三つ目は,幼稚園教育,小学校の低学年の生活科,小・中学校の社会科,高等学校の社会的教科がどういうふうに見方,考え方を成長・発達させていくのかということ。社会科は小学校の3年生からスタートするわけですけど,当然,幼児期を経て,そして小学校の低学年での生活科をくぐってきている子たちなので,下からというんですか,子供たちの成長に合わせた系統性というものは常に意識していかないといけないのでは。幼児教育,あるいは生活科での学習を踏まえながら,小学校の社会科,中学校の社会科を検討していくこともやっぱり見方,考え方を考える大きな鍵になると思っています。
以上,3点,二人の委員のお話につなげて私が強く感じることを述べさせていただきました。
【館委員】  ありがとうございました。
では,小倉委員,よろしくお願いします。

【小倉委員】  東京学芸大学附属小金井小学校の小倉です。
小学校現場の教員として,先ほど現場に分かりやすくという廣嶋先生や,坂本先生,加藤先生のお話もありましたが,私も今回,社会的な見方や考え方を小学校と中学校でどのようにつなぐのかということが一つ大切なことかなというふうに思っています。現場で実践している方としても,社会的な見方や考え方を育てるという文言はあっても,なかなかそれをどのように育てるのかですとか,どのように捉えるのかということが非常に難しいかなというふうに,捉え方も様々あって,方法面で捉えてみたり内容面で捉えてみたり,様々あるような気がしています。私は社会的な見方や考え方は,実際の授業に当たった場合には,やっぱり社会的事象の仕組みとか様子とか,それをどのように見ていくと世の中が分かるのかという感じで捉えているんですけども,そのときに中学校の地理的な見方,歴史的な見方,それから公民的な見方という切り方では,なかなか小学校は切れないものですから,そう考えた中で,やっぱり先ほど坂本先生からも話がありましたように,時間的な流れの中でどのように社会的事象を見ていくのか,それから空間的な広がりの中でどのように見ていくのか,関係的な関わりというもので関係的な中でどのように見ていくのか,また,立場を変えて――多面的,多角的につながると思うんですが,見ていくのか,そのようなものを授業の中に意図的に仕組んでいくことが授業改善にもつながり,またそれが中学校の地理的,歴史的,公民的にうまくつながっていくような形で,小学校から見方,考え方をきちんと考えていく必要があるんじゃないかなというふうに,3人の先生方の話を受けて,現場としてそう感じました。

【館委員】  ありがとうございます。
小学校の委員からの発言が続いたわけですが,どうでしょうか,ほかの先生方,委員の方々,御意見ありますでしょうか。
ごめんなさい。棚橋委員。

【棚橋委員】  失礼します。広島大学の棚橋と申します。
今の御議論を聞いて私も全く同じなのですけれども,皆さんよく御存じのとおり,前回というか現行の中学校公民的分野で,対立と合意,効率と公正というのを一つの例として様々な見方,考え方の基礎となる概念というものが打ち出されました。もちろん対立と合意,効率と公正というのが出たために,あたかもそれだけのように受け取られたところも一部ありましたけども,そうではなくて,様々な見方の基礎となる概念なんだという考え方だと思います。私は,あれは非常に斬新というか,画期的なことで,それまで見方,考え方と抽象的に言われていたものは,社会科の基盤となるような社会学や経済学や政治学や歴史学などの概念の中でどういうものを取り上げたらいいのか,きちっと体系立てて考えなさいというような趣旨だったのではないかと私は受け取りました。あのような考え方で,いわゆる歴史的な分野とか地理的な分野,地理学の方では,例えばまずは希少性とか,それから空間配置とか様々な考え方があると思いますが,そういうものを一度全部全領域について,あれと同じような考え方で整理してみるというのは有効ではないかと思っております。
それから,別件ですが,先ほどの御説明にもありましたように,今回は各教科等を学ぶ本質的な意義ということで,先ほどの御説明では「言い過ぎかもしれないけど」とおっしゃりながら,社会科でしか学べないことは何なのかという御説明があったと思います。私はこれは社会科という教科の特性を考えたときに,非常に大事だと思っています。もちろん理科や国語もそうですが,例えば理科は,自然環境の中で子供たちは暮らしているから自然に身に付くということもありますけど,実験室の中で暮らしている子供はいません。しかし,社会の中で暮らしていない子供はいません。指導要領が,当然子供の成長教育は学校の中だけで完結するのではなくて社会との関係が重要だと述べていることは,そのとおりだと思います。だから,そのときに社会科が考えなければいけないのは,では,社会で暮らしている中で自然に子供が身に付けることと,学校教育で体系的に教育として行うことの同じところと違うところ,同じならばなぜ同じことをしなければならないかと,それと,学校教育でしかできないことというのをやはり明確にしていかないと,なぜ学校でわざわざ社会科をやる必要があるのか,家庭でニュース番組を見ていたり,家族と政治的な話をしている方が効果があるということになってはいけないと思います。その辺のところがやはり社会科の中でしか育成できない資質・能力は何なのかという議論のときに,我々は考えていかなければいけないことなのかなと思っております。
感想的なことでございます。

【館委員】  ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
では,桐谷委員,お願いします。

【桐谷委員】  埼玉大学の桐谷です。よろしくお願いいたします。1人1回ということで早く言わないと全部言われてしまいますので,済みません,ちょっとあせった形ですけど申し訳ありません。
今,お話しいただいているのが,やはり社会的な見方,考え方というのが一番重要なポイントだということで,今までの議論の中では共通していたのかなというふうに思っています。私はこれを考えているのが,今,棚橋先生もおっしゃったんですけど,子供たちがやっぱりいろんな中で関係性を持って生きていく,その関係性を持って生きていくための力をどう育てるかというのが今回の改訂でも一番重要なポイントで,恐らく資質・能力の方を重要視している,若しくは技能ですとか,それから思考力・判断力・表現力ということが問われているのはそこなのではないかなと。そう考えたときに,先ほど棚橋先生がおっしゃったように,社会科でしか,若しくは社会科で中心的に育成をするべき力ということが今ずっと社会的な見方,考え方という言葉で語られているんですが,それだけだと,見て考えるというところがどうしても中心になってしまって,大事なのは,それを踏まえた上で関わるということなので,これから社会科で培うべき力というものを,社会的な見方,考え方と関わり方というような言葉で少し組まれていくと,整理されるのではないかなと考えています。それは資料9でしょうか,検討事項の中で,三つの柱に沿った育成すべき資質・能力の明確化という中でローマ数字の1のところで,何を知っているか,何ができるか,これは技能ということですよね。それから2の方では,知っていること・できることをどう使うか,この知っていることやできることをどう使うのかといったときには,やはり社会と関わっていくために使うという文脈で考えるのが社会科で考えるべき技能であったりいろいろな力なのではないかなと思いますので,そうしますと,子供たちの学習の中で培う力がもう少し整理されるのではないかなと思っています。
2点目なんですが,そのように考えると,先ほどの学習指導要領の記述の仕方なんですけど,今日お配りしていただいた資料の中のどこかの資料で見たんですが,高等学校の地理総合,歴史総合,それから公共という新しく設置される科目の中では,目標・内容・方法という三つのカテゴリーで内容を記述していくような方向で考えているというワーキングの方ですか,ありましたけども,やはり目標・内容・方法で考えると,どうしても資質・能力や見方,考え方,関わり方は目標の中で処理されてしまって,内容の中になかなか入っていきづらいと。そういうことで,廣嶋先生が先ほどのような書き方を工夫されたという話になったと思うんですけど,少し内容の書き方を考える必要があるのかなと思っています。今の書き方はどちらかというと,中・高になればなるほどコンテンツベースで,内容,中身そのものが書かれているんですけども,やはりそこはイシューベースのような,課題を中心にした書き方にするとか,そういう工夫をしないと,なかなか力中心の,資質・能力中心の学習の方に転換が難しいのかなというふうに私は考えています。
それから,申し訳ございません。もう1点,これは今考えるべきことじゃないのかもしれませんが,資質・能力を中心に考えていこうとした場合,小・中・高の内容構成のやっぱり一貫性,関係性をどう考えるかということを考えないと,せっかく資質・能力を考えても,内容の構成の順番によって,なかなかそれがうまく接続できないということが多々あろうかと思います。小学校の社会科は,基本的には,大分ずれていますけど,同心円拡大的にやっていきながら,中学になるとばつっとそれが切れてしまって,例えば一番分かりやすいのが地理だと思うんですが,同心円拡大で行って,中学校でいきなり世界地理から入るわけですよね。そうすると,子供の思考というのは,なかなかつながっていかない部分があったりとか。そういう資質・能力の一貫性と内容構成の一貫性というのをどう考えていくのかを議論することが重要なのではないかなと考えております。
以上です。ありがとうございました。

【館委員】  小・中・高の資質・能力と学習内容の接続といったことも考えていかなくてはいけないという御意見だったかと思います。最後にはそのようにまとめていくことができるかと思いますが。ほかにいかがでしょうか。
では,関委員,お願いします。

【関委員】  東京の小石川中等教育学校の関と申します。今,桐谷先生の方から系統性,内容の方に話が移ったものですからちょっと発言させていただきます。
今部会が二つに分かれたということで,これでこちら側の小・中学校は,もしかすると高等学校の新科目のことよりも小・中学校の関連性とかの方が大きなテーマになるのかなと勝手に予想しておりまして,資料9の中で,このワーキンググループにおける検討事項というものが書いてあります。この中で,今少しの間議論されていたのが1の黒マルの二つ目,資質・能力の明確化ということだと思うんですけども,四つ目に,幼稚園・小学校・中学校・高等学校を通じた社会・地歴・公民科において育成すべき資質・能力まではもしかして議論するのかなと思ったんですが,及びその内容の系統性ということで,具体的に小・中学校における世界に関する学習とか政治的教養を育むための教育の扱いとか,内容的なものが書いてあるんですが,ここの部会の中で内容的なものの提案というか,そこまでするのかどうなのか。
実は現行の指導要領の中学校の部でちょっと関わらせていただいたときに,途中で社会科全体,中学校全体の導入単元というか,小学校の学習から中学校につなぐ最初の部分の学習などを検討できないかという話がちょこっとあったんですね。多分どちらかの委員会で出たと思うんですけども,いつの間にか立ち消えになったという経緯があって,もしかすると,そういうことまで継続審議でこちらの方の部会で,資質・能力はきちんと,多分小学校・中学校で身に付けるべき資質は提案できると思うんですが,内容的なものまでこちらの方で提案できるのかどうかというのは,もしかすると事務局の方にお伺いしたいことなのかもしれないんですが,そこまで立ち入るのかどうかというところが個人的には関心があるところです。

【館委員】  では,事務局お願いいたします。

【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。
資質・能力と内容に関わっていろいろ御議論を頂いているかと思います。まずは総論的な部分なんですけれども,これは先日の総則・評価部会でも議論が出たのですが,各教科が,割と内容の系統ベースになっている傾向があるのではないかという意識に立ちますと,資質・能力の議論というのを今後しっかりやっていく必要があるという観点からの論点整理でございますけれども,一方で,それで内容が大分減るということではなくて,そこは,コンテンツとコンピテンシーのバランスをしっかりと御議論いただきたいというのが総則・評価部会の御議論でございます。一部,例えば高等学校の歴史科目に関連しまして,用語の選定ですとか,そういう部分はございますけれども,基本的に小・中学校の社会科に関しまして,何かしら大幅に内容を減らして,その時間を全て別のことに充てることを目指しているという論点整理ではございませんで,今やっていることを生かしながら,いかにその中でコンピテンシーということも実は育んでいるというところも,いろんな現場の実践を拝見しますとございますところで,そのすぐれた実践が実現しているコンテンツとコンピテンシーのバランスということもいかに指導要領の中で実現していくか,これを御議論いただきたいということが総則・評価部会の観点であるということを踏まえつつ,御議論をさらに深めていただければということが総論的な点で一つでございます。
もう一つは,今回お分かれいただきました中で御議論を頂く趣旨でございますけれども,小・中のみならず小・中・高を通じた本日はものの見方,考え方を中心に御意見を頂いておりますけれども,資質・能力の在り方を御議論いただきたいということ。必ずしも小・中までをぶつ切りにした御議論ではなくて,ここまで見通したときにどんな形が望ましいかという観点から御意見を頂きたいという趣旨でございます。本来では40人でやるべきことですけれども,向こうの方が新科目に注力しなければいけないという事情がございますので,是非その部分を少し見通して,あらかじめこちらで土台となる御議論を頂きたいということ。そうしますと,こちらの御議論と向こうの御議論がある程度進んでまいりますと,逆に向こうは新科目の様相が見えてくるという中で,こちらに新科目の形が多分見えてくる形になりますので,それを踏まえて内容も含めて,小・中をどうしていくかという御議論が恐らく後半可能になってくるのではないかということでございます。そうした中で,関委員から御指摘いただきました内容の入れ替えということも併せて御議論いただく機会が今後出てこようかと思いますけれども,まずはそうした観点で,向こうの議論がなかなか及ばない資質・能力ということを高校のありようも少し見通しながら御議論いただきたいという趣旨でございます。
済みません,長くなりましたが恐縮です。

【館委員】  関委員,よろしいでしょうか。

【関委員】  はい。

【館委員】  ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。1度だけということではありませんので,2度,3度なさってくださっても結構です。
では,よろしくお願いします。

【池野委員】  池野と申します。
4点お話しさせていただきたいと思っています。一つは,社会科の課題についてです。二つ目は社会科の在り方です。社会的見方,考え方が今議論されていますけれども,社会科の在り方について。3番目は,先ほどから出ていますようにコンテンツとコンピテンシーとか言われる目標と内容,方法に関する関連の在り方ですよね。それから,多分一番課題になるだろうと思われるいわゆるグローバル化だとか,新しく政治的教養と言われる選挙権問題等を含めた社会科が関わらざるを得ない状況についての対応についてお話しさせていただきたいなと思っています。
一つは,社会科の課題というのは,やっぱり一番大きなのは社会的事象を社会科が取り扱ったり,地理や歴史の事象を取り扱ってくるわけです。どうしても事象を取り扱うことだけにとどまってしまって,先ほどから出てきたように,概念を取り扱ったり,見方,考え方と言われるスキルや技能,あるいはまた,そういう視点だとか,分かり方みたいなもののところまで発展しない。例えば,地域の学習をしても,地域をいろいろ分かってくる,あるいは歴史だったら享保の改革だったら享保の改革の幾つかの改革の中身は分かるけども,じゃ,享保の改革の改革とは一体どんなことをやっているのか,江戸時代とはどんな時代だったのかというところまで発展せずに,享保の改革そのもののいろいろな個別事象を理解するにとどまってしまう。ですから,事象を取り扱うとともに,そこから取り扱われる方法と目的にしているものを明確に学習指導要領の中では書いてあるんですけど,それを先生方に理解できるようにするためにはやっぱりそのものを取り扱うようにしないといけない。多分小学校の先生は,かなり教科書もそういう形に組み立てられているので,できているように思うんですけど,中学校や高等学校になると,事象そのものを取り扱うような形にならざるを得ず,概念にも至らないし,またスキルや能力まで至らないし,公民的資質と言われるものを培うところまで至らないということだと思います。そういうことを先ほど説明されたような三角形の図で,今回資質・能力を中心にした形に,各教科を組み立て直すように学習指導要領を改訂しようということだと思うのですね。そういう形にするために,社会科がどういう形の社会科をするのか。
このときにちょっと悩ましいのが,私がずっと社会科という言葉で表してきたんですけど,地理歴史科と公民科というのは,教科としては別個になっています。この向かいにも一つの部会,ワーキンググループとしてまとまってやっているんですけど,多分皆さん方も一つのものだ,あるいは関係するものだと理解されていると思います。しかし,法律上は別個の教科になっています。だけど,一つの国家・社会の形成者を育成するために重要な三つの教科だと理解されていると思うんです。そういうものをどこに中心を持ってくるのか。基本的に社会的見方,考え方だと思いますが,多分今求められているのは,やっぱり国家・社会の形成者というのを育てることからいえば,先ほど桐谷先生が言われたように,社会との関わりというところをどういうように組み込むかということがやっぱり重要だと思われます。
そのときに,例えば小学校や中学校にしても,最後の公民的分野のところで社会との関わりをするという構造に,今大きく見ればなっていると思うんです。だから,それでいいのかということだと思うんです。小学校の3年生や4年生のときにそれぞれの地域の学習をするときにも,社会との関わりみたいなものは当然必要なことだと思うんです。商店街の中のスーパーマーケットをする中で,子供たちが一定程度,地域社会との関わりをやっぱり必要としているし,その中で買い物や消費,生産,いろいろなものを考えながら,自分たちとの関わりがどういうようになっているか,社会がどういう構造になっているか,私は広島に住んでいますけど,今新たな広島というものがどういうものになろうとしているのかということをやっぱり考えていく必要があるんだと思うんですよね。その中で社会との関わりで,将来いろんな形のものを身に付けていくんだと思います。そういうように,基本的に社会との関わりをやっぱり組み込まないと,一つのコンピテンシーなり資質・能力と,それから概念や内容とは結び付かないと思われます。そういう一定の構造が必要じゃないかというのが二つ目です。
三つ目は,そういうことを考える場合に,評価との関係なんですけど,四つの観点から今度は三つの観点に,大きく見れば変わる形になります。それを個別にするのかどうか。私自体は立体的なキュービックのような関係になっていると理解しているんですけど,そういうようにした場合に,それぞれのときに一つの塊といいますか,関係するものとして見ていくときに,一定のこういう状態からこういう状態へ,例えば地域学習から都道府県の学習,あるいは日本の学習に広がっていく,また,地理や歴史の学習というようにさらに広がっていくときに,子供たちが,そういうキュービックみたいなもの,立方体みたいなものがどういう形に変化していって,系統性を帯びるような形に,我々の小学校から中学校,中学校から高等学校に見える,先生方に理解できるようなものにするのかということだと思うんですね。だから,取り扱う事象が変化する形にするのか,一定程度取り扱うものを,小学校段階で取り扱うこと,中学校段階で取り扱うこと,高等学校で取り扱うこととともに,子供たちを育てたいことが一定程度変化していって,成長するような形に見えるようにする。先ほど加藤先生が言われていましたように,系統的な育てたいものが概念的というか,系統表的に出せれば一番いいと思うんです。これは昭和22年とか26年版のときはそういう形で出ていたんですけど,そういうものに戻すのか,一定的に,表のように出すようにするのかということが課題かなというのが三つ目です。
それから四つ目は,先ほど言いましたように,実際に事象との関わりだけでとどまらざるを得ない。例えばスーパーマーケットをしているときに,どうしてもスーパーマーケットの中で,教科書でも出てくるんですけども,パイナップルとかバナナが出てきたらフィリピンということが必ず出てくる。それから,いろいろなミカンやリンゴは値段が変わるけども,バナナやパイナップルなんかは余り値段が変わらない。そういうときにやっぱり外国との関わりのことは必ず出てくるわけですね。ですから,地域の中を取り扱っていても,外国との関わりやその中で我々が消費や生産というものとどう関わってきて,経済と関わるか。それとともに,やっぱり我々がそれを通して政治や経済だけじゃなくて,社会の中のいろいろな関係を作り出してくる。フィリピンやそういうものまで考えるかどうかは別にしても,そういうものを,地域としては出てくるのに教えないというか,余り取り扱わない。だけど子供たちは見つけてくる。スーパーマーケットに行ったら見つけてきたり,いろいろ関わってくることになる。それをどういうように子供たちの中で生かす,止めるんじゃなくて生かしていく方向で多分考えていかないといけないのではないか。
だから,私たちは,社会が分かってくることとか,社会をさらに概念的に分かってくるだとか,あるいは社会で生きてくるように関わるというのは,どうしても階段的に上の学校段階の方に移行したときに初めて実現できると思われがちですけども,必ずしもそうではなくて,大きくはそうなると思うんですけど,小学校3,4年生は小学校3,4年生なりにやっぱり社会との関わりや社会との生き方を考えざるを得ないのだと思うんです。それは,3年生,4年生レベルの一種の関係性を持てるようにしておかないと,世界との関わりは,ある一定のことを5年生,6年生において取り扱う,極端に言うと6年生の国際理解の単元だけに移行してしまうと,それはやっぱりグローバル化ではない。確かにそれは同心円拡大になりますけど,今の地域は,世界がグローバル化しているなら地域もグローバル化しているんだと思うんです。そういうことをやっぱり子供たちに理解できるようにさせないといけないんじゃないかなと思います。
以上です。ちょっと長くなりました。

【館委員】  ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
では,永田委員,よろしくお願いします。

【永田委員】  失礼いたします。一言しゃべって帰れということですので,非常に不勉強なもので,ワーキンググループにおける検討事項のところで,まずは三つの柱というのが出されまして,先ほど池野先生が言われましたように四つが三つになったと,新学力観で一番重要視された関心・意欲・態度というのはなくなったのかなと,3番目に入っているんだろうなと思いました。だから1,2,3というのは社会参画の順序なのでこうなったのかなということと,資質・能力ということが書いてありますけれども,広い意味で,関心・意欲・態度から知識・技能・思考力・判断力が入っていたので,資質と能力というのはどのように分けるのかと思いました。私が考えていることだったら,能力というのは思考・判断・表現・技能の分が細かい能力だろうと思っていましたので,このところで知識と技能というのが何でくっついているのかということですね。先ほど前回の分で,思考・判断に表現力が付いたということでしたが,表現力が付いたのはどういった意味なのかとか,関心・意欲・態度の態度に関わる部分が3番目に来ているということをしっかり現場に分かりやすいように,私の方がよく分かっていませんでしたもので,教えていただきたいなと思っております。
それと,小・中を中心にということなんですけれども,今回の改訂の目玉であります高等学校の総合というのがありますので,それが歴史総合,地理総合,ここだけ公共になっているので,何で公民総合じゃないのかなと。公共と書いてあるからにはそれだけの意図があるということです。とる,とらないじゃないんですけれども,私は地理が中心なもので,地理でESDとかグローバル化とか防災とか焦点化されております。元々思っていたのが,地理教育が,社会科的に公民的な資質を身に付けていくと非常に公民に近づくということで,地理総合と公共というような関係で,何で公共になったのかというのを具体的に教えていただければなというか,ここではっきりしなければいけないのかなと思っております。
ずっと出ております社会的な見方,考え方というのがありまして,地理的な見方,考え方というのは,今日の参考で示していただいた資料8-1の中の9-3の資料でもよく出てきていて,地理的な見方,考え方ですね。歴史だったら多分,歴史的思考力,歴史的な見方,考え方じゃなくて。棚橋先生が言われたように,公民だったら公民的な見方,考え方じゃなくて今回対立と合意,効率と公正というのが出てきたということで,社会的な見方や考え方というのが一番アンブレラの傘の部分になって,その下に地理的な見方,考え方――ないと思うんですけど,歴史的な見方,考え方,公民的な見方,考え方があるのかということで,社会的な見方,考え方についてはどのように考えるのかというのが非常に重要だなと思っております。
それと,やっぱり継続性,系統性ということを言われまして,地理だったら世界に関する学習というのがありまして,それは同心円的拡大とか入れ子型構造ということで,先ほど池野先生が言われたようにスーパーマーケットだったら世界をやるとかいうことがあります。現状だったら小学校6年生の異文化の学習についての中・高との関係になりますけれども,そのような入れ子構造になるような接続の仕方というのは非常に大事になってくるんじゃないかなというふうに思っております。
それと,地理の方で重要目標とされて,これはずっと言われていることでありますけれども,地域調査というのがありまして,これは小学校でも中学校でも高等学校でも,実地状況というのは,身近な地域の調査ということで小学校ではある程度やっているということなんですけれども,今まで課題として,中・高では1時間で難しいとか,外に行ったときに交通とかが難しいとかいうことがありました。地理におきましては,調査見学の学習というのは,小学校・中学校・高等学校で言葉だけじゃなくてどのように実現させていくのかというのは非常に重要じゃないかなと思っております。
それと,最後に思考・判断・表現力でどなたかが言われた,判断が一番重要ではないかと思いました。判断がまさに重要だと思いますけれども,これは言語活動の充実とかいうこととセットで思考・判断・表現力という言葉になっていると思います。社会科における思考・判断・表現力というのは何なのか,そのほかの教科と違いは何なのかということで,価値的な判断だと思いますけれども,社会科としての思考・判断・表現力というのはどういったことなのかということも考えていかなければいけないなと思いました。
以上でございます。

【館委員】  事務局への質問も幾つか入っていたかなと思うわけですけども,3観点と4観点のつながり,あるいはそれらの関係性だったり,公共という名称に関しての質問内容だったかなと思うのですがいかがでしょうか。

【大杉教育課程企画室長】  3観点と4観点に関しましては,前回改訂におきましても,学力の三要素,知識・技能,思考力・判断力・表現力,それから主体的に学習に取り組む態度,この三つをベースとしつつ四つということで,根っこが三つで今四つというようなことになっております。論点整理の議論では,今回の資質・能力の整理,それから前回までに積み重ねられた議論,この延長線上として三つに整理していってはどうかということで,今回いきなりというよりも,前回からの議論の流れの中でそうなっているということでございます。
それから資質・能力の三つの柱ということでございますけれども,議論の中では,学力の三要素という,学教法に元々30条の2項でございますけれども,基礎的な知識及び技能を習得させるということ,そしてその知識と技能を活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力ということ,そして主体的に学習に取り組む態度ということ,この三つが学力の三要素として整理されているところでございますけれども,これも議論のベースとしつつ,ただ先ほど冒頭の御説明でも申し上げましたように,学力のみならず生きる力全体像を捉えたときに三つの柱になるのではないか。特に三つ目の柱というのを,少し人間性ということで幅広く捉えているところが特徴的ではないかと思います。
こうした議論は,論点整理をおまとめいただく企画特別部会で,様々な現場でいろいろ資質・能力の整理をしながらカリキュラムの在り方を考えている研究開発校の取組でありますとか,あとは本日の資料6の冊子を見ていただきますと,少し諸外国の例も載っているんですけれども,例えば178ページという後ろの補足資料がカラー刷りでいろいろ付いているところになってまいりますけれども,スライドでいうと177,178のあたりになります。OECDのDeSeCoがまとめたキーコンピテンシーでありますとか,様々な国の能力に関する整理も分類しますと,知識・技能のような基礎的リテラシー,それから思考判断に使うような認知スキル,それから,主体的に学習に取り組む態度や様々な情意や社会的スキルなども含めて社会スキルというようなもの,大まかにこの三つに整理できるのではないかという国研の調査の結果もございます。
また,様々後ろの方にも諸外国の動向を付けておりますし,それからお戻りいただきますと165,166のあたりには,今週もOECDと日本のセミナーがございますけれども,カリキュラムデザインのための概念ということで,何を知っているか,知っていることをどう使うか,そして社会の中でどのように関わっていくか,165の上の部分でございますけれども,こういったことを世界的にも重視していこうという流れがあるということ。その下には,資質・能力を踏まえた目標内容と評価の在り方に関する検討会の概要が166,176にございまして,これは11月の諮問の前に少し資質・能力の専門の方にお集まりいただいて,議論をしていただいたところでございますけれども,167のマル2にございますように,教科等に固有の知識や個別スキル,それから見方,考え方,そして汎用的なコンピテンシーというような今後三つの構造でございますけれども,こうした構造で捉えられるのではないかといった国内外の様々な研究成果を踏まえまして,今回三つの柱ということを出させていただいているところでございます。
資質・能力というものをどう捉えるのかということにつきましても,かなり長年の議論がございますけれども,そもそも資質というのは学校教育で育てられるのかですとかいうのがございますけれども,社会科教育でも公民的資質ということを大事にしていただいておりまして,今回指導要領の中でも議論いただいて,資質は育てられる,あるいは磨ける,教育を通じて発展させていくにはどうしたらいいかという観点で考えていて,先天的なのでもう固定的でどうしようもないということではなくて,それをいかに子供たちの社会との関わり,自分の人生をよりよくするという観点でどういうふうに発展させていけるかというものとして捉えていく。その中で,資質と能力を分けて捉えられるかという議論もあったんですけど,これはなかなか分け難いのではないかということで,資質・能力ということで,資質寄りのもの,能力寄りのもの,いろいろあるとは思いますけれども,そういった使い方をしているところでございます。
それから,最後に「公共」の名称でございます。「公共」の名称につきましては,「歴史総合」も「地理総合」も全て(仮称)ということでございますので,今後,中身にふさわしい名称を御議論いただくことにはなろうかと思いますけれども,特に「公共」につきましては,家庭科や情報科なども含めた教科との関連性も大変大きいということ。それから,まさに公共的空間の中で自立した個人が他者と協働し,新しい価値を創造していくことに向けてどのようなことが求められるのかといったこと,そのようなことの観点から御議論いただく必要があるのではないかということで,教育課程企画特別部会は,教育関係者のみならず民間等々を含めて幅広い分野から御参加いただいて御議論いただきましたけれども,社会に開かれた教育課程の観点から申しますと,「公共」という名称で考えていく必要があるのではないかという御議論を頂いているところでございます。
済みません,毎度長くて恐縮でございます。

【館委員】  ありがとうございました。
「地理歴史」が,地理を学ぶ歴史を学ぶという言葉で表わせられるのに対して,「公民」の場合は,公民を学ぶのではなくて公民になるための学びであるという意味があります。「公民」の学習対象は,政治経済,社会であることを考えますと,「公共(仮称)」とは一体何の名称なのだろうか,目標なのか学習対象なのかということも質問の背景にあるのかなと思いますが,ほかにいかがでしょうか。時間の方があと5分弱ぐらいになってまいりました。
では,井田委員,よろしくお願いします。

【井田委員】  筑波大の井田と申します。後出しじゃんけんの方があれだと思って最後の最後まで頑張ろうかと思っていたんですけど,まだ最後はいらっしゃるので,ちょっと早めにやらせていただきたいと思います。
まず,ワーキンググループにおける検討事項ということで今話されていた内容で,社会科の本質的な意義というものがどういうものかということだと思うんですけども,本質的な意義は,社会的な見方や考え方というのを作るとすれば,そこに反映されるだろうと思いますけど,多分そうなってくると,かなり抽象的かなということで再三議論がありますけど,そうなってくると現場の先生には分かりにくいという反面があるんですが,ただ,本質的な意義という抽象的な概念を小学校で表わすとなるとどうなるのか,中学校レベルでどうなのか,高校レベルでどうなのかというような,レベルで表わすという方法もありますけど,そういうものが具体的にはこういう小学校,中学校,高校というのはやっぱり必要かなと思います。それから,スキルも同じで,先ほどの野外調査がありますけど,小学校,中学校,高校で全部やれと言われているんですけども,小学校で何をやって,中学校で何をやって,高校で何をやるという段階性も全く示されていないと。そういう意味でも,ある意味段階性を考える,その根本にはもちろん全部で共通する本質はあるんですけども,その本質に基づきながら,そういう具体的に段階性を示すということが一つ大きなやり方だというふうに考えております。
それから,先ほど事務局の方から178ページということで見させていただいているところですけども,そうなってくると,反対に今度は,見方や考え方から教科の内容を作っていくという考え方が一つあって,いつの間にか日本はどちらかというと,コンテンツが先にあって,それに強引に見方や考え方がどこにくっつくかという考え方をとっているんですけども,今の諸外国のやり方は,むしろ見方や考え方が中心にあって,それに対するふさわしい内容をくっつけていこうという感じだと思うんですけども,ただそれもやり過ぎると,イギリスのように今度は反対に知識が重要だということでまたぶり返しが来るので,そこら辺のバランスをどう考えるかということも重要かと思います。ですから,今,日本で急遽,見方や考え方や何なりという,スキルとか技能を中心としたような,あるいはコンピテンシーを中心とした内容を急に組み始めるというのはちょっと無理があるかもしれないけども,そういう見方も必要だろうとは思います。
それから3点目ですけれども,他教科との関連ということもありますけど,他教科のみならず,実は社会科の中での関連性というのはやっぱり一つ重要だと思っていまして,例えば中学校で市民的育成を地理でやるというと,それは公民じゃないか,地理じゃないじゃないかという。野外調査をすると,それは地理であって,歴史でも公民でもないじゃないかという議論の方が先に出てきていて,結局社会科という枠組みの中でみんな社会科をやっているはずなのに,みんなが壁を作っているのではないか。そういう意味では,そこら辺の整理というのは必要で,本当に兼ねちゃいけないのか。実際今の中学校の地理的分野の防災と環境と,公民の防災環境を見ていると,全く公民が地理と同じ教科書になっている。それというのはいいのか悪いのか,復習という意味もあるでしょうけども,本来そこら辺が社会科として兼ねているべきなのか,あるいは本当に分けて考えていくべきなのかというのはやっぱり議論するべきところで,これは社会科の中でもそうですし,他教科の関連でもそうではないかと考えております。
それから,もう一つ最後ですけども,先ほどからやっぱり社会科のグローバル化という問題があると思うんですけども,我々大学を見ていますと,外で勉強したい,外国で勉強したいというのがだんだん減ってきている傾向があります。それはグローバル化に反するものなのかということなんですが,彼らにとっては,海外の情報は幾らでも入ってきて,かえってグローバル化するから外に行かなくてもいいんじゃないという考え方もあるようなので,そう考えていくと,グローバル化というのは何なんだろうという根本的な問題に立ち返っちゃうんですけども,そういう意味では,今後の子供たちを考える上で,どういうふうに日本,世界で活躍できる人間を育てるかといったときに,やっぱりどういう仕組みを考えていくのか,グローバル化で知識,情報はたくさん入ってきますから,学校の勉強でもほかの社会でも一杯入ってくる中で,本当にそこで世界に活躍できる人間というのはどういうふうに育てられるのかというのはまた大きな課題かなというふうには考えています。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。
では,矢吹委員,よろしくお願いします。

【矢吹委員】  皆様方のお話をお伺いしながら,私のようなものがお話をしていいのかとこの場に来るのに随分とちゅうちょしたのですけれども,岡山県の消費生活センターで消費者教育コーディネーターをしております矢吹と申します。私自身は,中・高の社会科の教員免許も持っておりまして,非常勤で働いておりました。また,大学で日本国憲法を非常勤で教えたりしております。こうした中で,消費生活センターで消費者教育,あるいは消費生活相談を受けています。学校の先生方,あるいは生徒,学生に教えるところでいつも感じているのが,身近なことから教えることが一番大事なことだということです。概念とかそういった知識を中心にどうしても学校では教えてしまうので,自分の身近な出来事がどう社会の事象と関わっているのかということを生徒,学生たちが全然理解していないというのを感じているのが実態です。消費者庁では,消費者教育推進に関する法律が成立したことに伴い,消費者教育をどのように進めていくのが良いか検討を重ねております。消費者教育は,生涯を通じて学ぶことが重要ということで,幼児期から高齢者までの各年代の発達段階に応じて,学ぶべき内容と育成すべき資質を分類した上で,イメージマップというものを作っております。イメージマップは,常に皆さんで考えながら改訂していくという形態のもので,今一応イメージマップバージョン10が出来上がっています。学校現場の先生方に消費者教育を,小学校の段階では具体的にこういった内容でということでお示しすることができるようになったので,先ほど系統立てた体系的なマップのようなものという御意見があったのはしかりで,あれば皆さん助かるのかなと思ったところです。
また,,岡山県では,消費者庁先駆的プログラムで教材開発を今年度しております。その中で,今私が考えているのは,幼・小・中・高を通じて体系的に消費者教育ができるような教材を開発するというものです。それはやはり毎日の生活の中で何を一番しているのかといったならば契約であって,その契約という視点から,幼児期だったらまずは約束を守ろうということをしっかりと教える。なぜ約束をしないといけないのか,守らなかったらどういった困ったことになるのかといった内容の紙芝居です。それから小学校では,今消費生活相談の現場にたくさん上がってきている事例として,オンラインゲームの課金という問題があります。子供たちは課金をするという仕組みが分かっていない状況で発生している問題です。そこで,親のクレジットカード等を利用して課金をする,100万近い請求のクレジット決済が翌月に来るという現状を取り入れた教材を作成しています。,オンラインゲームは楽しいものですが,架空の世界の中であればなんでも好きなことをしてよいのか,課金という自分が判断をしないといけない時に何が必要か,その判断をするについては何が大事なのかというようなことが考えられる子供たちを育成することが重要だと思います。これからの社会はいろいろと目まぐるしく変わっていく中で,自分で考える力というものが育っていかないのではないのかなと思っております。
中・高で今出来上がっているのは,未成年者契約についての教材です。そこで一番大事にしているのは,契約自由の原則と私的自治という基本です。現状の公民教育では,教科書の中で余りなかったので,そこの部分をしっかりと伝える中で,なぜ未成年者契約の取り消しができるのか,取り消しができない場合はどういったときなのか,それはどういう社会を作るためにこういう基本原則があるのかというのを考えさせるような内容の教材を作成し,この教材を使用してモデル校で授業をしています。こういった各発達段階に応じた体系的な,学び,そこで一番大事なものは何なのかというのが考えられるようなものが提案できるようになればいいのかなと思って,参加させていただいております。
すみません,とりとめもないことをお話ししてしまいました。

【館委員】  どうもありがとうございました。
では,よろしくお願いします。

【栗栖委員】  失礼します。京都市教育委員会から参りました栗栖と申します。
私自身この会議に参加させていただきまして,本日聞きました小・中・高を通して社会科で育てなければならない資質・能力について考えるということは難しいことだとは思いますがすごく魅力を感じています。私自身が小学校籍なものでして,小・中のつながりを通して学ぶということはしてきたんですけれども,そこに高校が入ったということで,これはすごく今求められていることだなと思っております。
私は自分の仕事の関係で,学校現場とあと教員養成という仕事をしておりますので,将来先生を目指している学生,あと教職大学院で院生に指導するということもさせていただいております。実際に学生,それから院生の様子を見ていますと,やはりそれぞれ自分の希望している校種に関しての勉強はすごくしてきてはいるんだけれども,小と中とのつながり,中と高とのつながり,小と高とのつながりがものすごくあいまいで,例えば学生が中学校の歴史学習の指導案を作成したり模擬授業をしたりするときに小学校と同じ目標にしか見えないと感じる授業になってしまう場合があります。それは,小学校でどの内容をどんな目標で指導しているのかというところが十分理解できていないから,そういうことになるのではないかなと思っています。もちろん子どもたちが同じことを何度も学ぶというそれは大事なことではあるとは思いますが,指導者が目標の違いを明確に持っておくということは必要であると痛感しております。
ただ,学校現場でいいますと,現場の先生方は,自分の校種のことで手一杯で,なかなか他校種のことについて学ぶという機会が,したいとは思っていてもとりにくいのが現状でございます。そこで,今度検討された内容が,現場のどの校種の先生方にとっても一目で分かりやすいようなものになればいいなと私は思っております。
それから,ここでは出ていなかったんですけれども,「アクティブ・ラーニング」という言葉が今すごく現場の中で飛び交っております。「アクティブ・ラーニング」が大事だとは思うんですけれども,私自身,社会科の授業をしておられる学校現場に行かせてもらうと問題解決的な学習という学び方を社会科では求められているのにも関わらず,現場の特に若手の先生方自身が,なぜこの学び方が求められているのかというあたりも十分理解できないまま社会科の学習を進めてしまっているという場面も見ることがあります。今までも言われてきたんですけれども,問題解決的な学習の意義もすごく大事にしていけるような内容になったらいいなと思っております。
以上です。

【館委員】  どうもありがとうございました。
様々な御意見ありがとうございました。時間がまいりましたので,本日はここまでとしたいと思います。本日お出しいただいた御意見につきましては,事務局で論点ごとにその趣旨を整理していくようにお願いいたします。
なお,今回御意見がまだあるという方は,ペーパーなどで事務局にお送りいただくことも可能ですので,そのあたりも配慮していただければと思います。
本日予定されていた議題はここまでですが,次回以降の日程などにつきまして,事務局から連絡をお願いします。

【大内学校教育官】  ありがとうございました。
次回の日程でございますけれども,調整の上,追って御連絡させていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
また,館先生からもお話がございましたように,ペーパーによる御意見も頂戴したいというふうに考えてございまして,ファクス又はメール,郵送でも結構でございますけれども,教育課程課の担当が総括係になりますので,こちらの方にメール等をお寄せいただければと存じます。
なお,本日の配付資料につきまして,もし後ほど郵送を御希望される場合は,机上に置いていただければこちらからお送りさせていただきます。
以上でございます。

【館委員】  それでは,本日の社会地理歴史・公民ワーキンググループを終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――


お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程総括係

電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2073)