教育課程部会 芸術ワーキンググループ(第8回) 議事要旨

1.日時

平成28年5月26日(木曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. 芸術教育の改善充実について
  2. その他

4.議事要旨

1.芸術系教科・科目を通じて育成すべき資質・能力について

取りまとめ(案)全体について

 芸術教育については、これまで心の教育という面が強調されており、それはもちろん重要なことであるが、本取りまとめ(案)においては、知識や技能などの資質・能力を獲得していく上で、体とも密接に関わっていること、身体性が大事であるということが色濃く打ち出されていて、よいのではないかと思う。

 このワーキンググループでは、感性や知性のところで、知識の問題からより深く話し合えたと思っている。特に「感性は知性と一体化して創造性の根幹をなすものである。」という一文が良いと思う。このような他の教科にはない特性でありながら、人間性などの点でこれからさらに大切になっていくところを、もっと強調できるのではないか。

 今回の改訂においては、資質・能力の三つの柱や見方・考え方など、新しい概念がいくつか出てきた。誰にでも分かる学習指導要領にしていくという視点から、表現の仕方ということについては、まだ工夫の余地がある。

 1ページ目について、教員の先生方もこのワーキンググループの取りまとめを読まれることを考えると、「課題に適切に対応する」だけでなく、「現行の学習指導要領の成果を踏まえる」ということも記載してほしい。

 例えば、調査において音楽が将来役に立つと回答する子供たちが少ないことを考えると、7ページの生活や社会の中での働きということについての記述は、とても良い記述だと思う。

 21ページについて、哲学の世界では「内容」と「形式」という対語があり、そういう意味で「内容」と使うと、客観的なことである「音楽的な特徴に関する内容」と矛盾が出てくるので、「音楽的な特徴に関することと歌詞や曲想に関することとに分けて」としてはどうか。

見方・考え方について

 小学校図画工作科について、「形や色などの造形的な視点で対象を捉え」というところが現行の共通事項のアと関わり、「自分のイメージを持ちながら」というところが現行の共通事項のイに関わると見れば、非常にすっきりとしていて教員の方たちにも分かりやすいと思う。

小・中・高・の系統性について

 子供たちにとって、これは美術で、これは音楽で、これは書道でという区分けはない。高等学校のさらに上の段階に広く芸術文化、伝統文化という枠組みがあって、そこから高等学校、中学校、小学校という流れの中で教育課程が位置付けられているということを確認したい。

 全体として、小学校、中学校、高等学校芸術1までの系統性がもう少し色濃く書かれてもいいのではないかと思う。

 中学校音楽科においても、高等学校芸術科(音楽1)のように、何のために音楽を学ぶのかということに関わり、生活や社会に生かしていく、つまり生きて働く力というものを求めるのだということを入れていただきたいと思う。

言語活動について

 美術において素描させるということは、ビジュアルコミュニケーションの力を見ていることでもある。この取りまとめ(案)には、芸術の表現そのものにもコミュニケーションの力があることが示されているので、今後の教育に向けて大きな意味があると考えている。

 目に見えない感じたことを、言語に置き換えることは「喩えたり」に近くなるが、動いてみたり形にしてみたりして何かに置き換えるということも大事である。

 音声言語(言葉)による話合いだけが言語活動であるかのようなイメージをもたれているので、「芸術系教科・科目の特質に応じた」充実を図るとしておくと誤解が払拭されるのではないか。

特別支援教育について

 最近は、特別に支援を必要としない子供はいないのではいかとも思っている。教員は児童生徒一人一人に応じて細やかに配慮する必要があるので、18ページから始まる様々な配慮の例は、特別支援教育というよりは、ごく当たり前に配慮すべき事項ではないかと思っている。

 配慮の例として、1単位時間の学習の経過を時間ごとに挙げ、今、どこをやっているのかが分かるようにするということが有効なので、加えてはどうか。

 芸術科(書道)における配慮の例について、用具・用材の一覧を視覚化して手元に示したりするよりも、その用具をその範囲の中で実際に使わせたりした方がいいのではないか。

アクティブ・ラーニングの視点

 新しい教育改革というと、何々法とか何々型、何々式という安易に一つの形式にとらわれた形をやりがちなので、そういう安易な方向ではなく、しっかりと中身を考えた上でやらなくてはいけないということを示すことが重要であり、教育課程の改善の方向性を打ち出す時の冒頭でしっかりと述べてもらいたいと思う。

 音楽について、歌唱、器楽、鑑賞の例示はあるが、創作に関する例示がないので、追加した方が親切ではないか。

 音楽科の「深い学び」において、子供たちが最初に音楽と出会う場面について、もう少し豊かに出会うということを表現できないか。

 中学校音楽科の「対話的な学び」において、「自分なりの考えを持つ」ことと「価値意識を構築すること」を併記にせず、「自分なりの考えを持つ」ことと「考えを深め広げる」ことをもって「価値意識を構築していく」というように、従来の対話的な学びの考えを広げ深めることとつなげていくとよいのではないか。また、授業の中での子供同士の対話だけでなく、教員や地域の人などとの対話にも広がっていくような説明をしてはどうか。

 図画工作科、美術科、芸術科のすべてで、学習活動を自ら振り返り、自分の成長やよさに気付いて次の学びにつなげていく、といったこと書かれており、ここが非常に大事だと考える。また教員の方でも、短い期間でその子供を見取るのではなく、長いスパンで見取っていくという視点で、子供と一緒に振り返るような活動が行われると良いと思う。

 芸術科の中で、美術と工芸は密接に関わっており内容が非常に似ているのは当然であるが、「対話的な学び」において、美術の鑑賞とは違い、工芸作品の鑑賞は難しいところがあるので、普段自分たちが使っているお箸や湯飲みなどの身近な工芸品をしっかりと受けとめるというような内容をいれていただきたい。また、工芸の場合、鑑賞において、手に触れた時の心地や実際に使ってみるということが非常に大事になるので、単に見るだけでなく、触れたり使ったりということを加えてほしい。

 芸術科(書道1)において、表現領域の「漢字仮名交じり書」は、我々の日常生活で使っている言葉を作品にしていく分野である。成立の歴史の順で学習していくと「漢字の書」と「仮名の書」を学習した後の最後になってしまうという実態がある。今後、日本の言葉を書くという観点から、この「漢字仮名交じりの書」の指導を充実していく必要がある。

 鑑賞教育においては、日常的な書から芸術的な書まで色々なものがあるので、たくさん見てほしい。また、特に漢字仮名交じり書というと、最近の近代のものを中心に考える傾向があるが、実際には平安時代からあるので、そういったことも学ぶということが伝わるようにしてほしい。

ICTについて

 ICTの力を育てていくのはこれから絶対に必要ではあるが、人間としての実感を伴う体験がだんだん少なくなっているという危惧があるので、17ページにおいて実感を伴った学習というところにしっかりと触れていて良いと思う。

 美術や工芸においても、作品を作っていく過程を振り返る資料作りに活用するなど、生きた使い方というのは積極的に実践していくべきだと思う。

 これからのICTが日々進歩していくことを考えると、創造的な思考を養うことを目的とする教材の開発なども考えていく必要もあることに触れてはどうか。

教材の示し方について

 音楽においても、育てたい資質・能力を踏まえて、教科書の中で教材をどのように示すかと言うことを記載してほしい。

条件整備等について

 情報があふれる社会の中で価値付けということが重要になっており、その中で教員の果たす役割が今後ますます大きくなっていくと考える。このため、教員養成や教員研修の重要性を再認識し、教員養成系の大学・学部において、定員削減などの厳しい状況がある中で、芸術教育に携わる人たちの教育をどうしていくのかを考える必要がある。

専門学科について(資料1の別紙2の参考)

 芸術の専門学校における教育を単なる芸術家養成と考えられては困る。専門の芸術の力を育てるということは人間性、ヒューマニズムのところが大事で、社会に寄与する力、寄与する人材の育成というところが強調されていることは、非常に良いと思う。

以上。

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